1: 2013/02/15(金) 00:33:09.71 ID:YPnvmWSq0
ある日の午後 桜田の家

ざわざわがやがや(ジュンと真紅が口論している)

翠星石「そっ 蒼星石 これは一体どうしたのです?」

蒼星石「ああ… 真紅がこの家を出るって言いだしてね…」

翠星石「ええー!」

3: 2013/02/15(金) 00:38:11.80 ID:YPnvmWSq0
ジュン「だから一体どうして…!急に意味が分からないんだよ!」

真紅「いい加減しつこいわジュン
私はもうお人形として貴方に束縛される人生はごめんだわ
自由に生きるのだわ

そう 私は黙っているだけのただの人形だった
それに気が付いたという事よ」

4: 2013/02/15(金) 00:44:37.47 ID:YPnvmWSq0
ジュン「はんっ! 気が付いた?お前は今も昔も人形だろ!
自由に生きるってどういう事だよ!」

真紅「言葉通りの意味よ 私はこの家を出て人生の充実の為に
歩み始めるわ ああ何と無駄な日々を送ってきた事か
人形として座っている事に何の疑問も持たず
ただ漠然と過ごした時間が悔やまれるわ
私の人生は私の人生なのよ」

翠星石「ええー…」

5: 2013/02/15(金) 00:50:16.89 ID:YPnvmWSq0
蒼星石「けれど… この家を出てどこへ行くの?」

真紅「そうね 取り敢えず学問がやりたいわ…
大学に行くわ
この世の中について沢山学んでみたい事があるのだわ」

ジュン「はぁ? 大学って… お前みたいなちんちくりんなのが…
即行でつまみだされるだろwww」

7: 2013/02/15(金) 01:01:02.76 ID:YPnvmWSq0
真紅「あら失礼ね… もうちゃんと入学手続きも済まして
あるわ ほら」

ジュン「なんだこれ… にゅ 入学許可証?!港南大学って…
そこの?! どどど どうやってこんなものを」

真紅「もちろん試験を受けたのよ
センター試験とかいうのも受けたわ 870/900だったわ」

ジュン「し 試験受けたのか」

9: 2013/02/15(金) 01:08:57.83 ID:YPnvmWSq0
蒼星石「でも…こういうのは高校卒業とかの
資格がいったのじゃないかい…?
君高校行ってたの?」

真紅「いいえ 大検を取ったわ
勿論大検にも資格が要るけれど
それは昔アメリカにいた時にお金持ちのマスターがいてね
その時にやって貰ったの
入学金等もその人の遺産の口座を相続してあるから
そこから払ったわ」

蒼星石「そう… じゃあ君は…
何カ月も前から準備をしていたの」 

10: 2013/02/15(金) 01:15:58.57 ID:YPnvmWSq0
真紅「>>8の人… ええ、小さい鉛筆…

そうね 自分の生き方にふと疑問を持ったのは
半年位前かしら

でも計画を言ってしまったら誰かに邪魔されてしまいそうだから…
黙っていたのよ」

ジュン「お…おい… それで… ちゃんと夕方には
帰ってくるんだろうな…」

11: 2013/02/15(金) 01:18:31.77 ID:YPnvmWSq0
真紅「? 特に戻るつもりはないわ
もう会う事もないでしょうね ジュン」

ジュン「え…」

翠星石「し 真紅ぅ…」

蒼星石「困ったね…」

14: 2013/02/15(金) 01:25:59.60 ID:YPnvmWSq0
玄関

真紅「さて… そろそろ出掛けようかしら
今日は晴れね」

ジュン「ちょっ…! ちょっと待ってくれ!」

真紅「あら…なあに?まだ用があるというの」

ジュン「なあ…! 頼むよ…!お前に出て行かれたら困るよ僕…」

真紅「貴方にはまだ翠星石がいるし、蒼星石も遊びに来てくれるわ」

ジュン「そんなんじゃない!不安なんだ!僕を一人にしないでくれよ!」

真紅「我がままねジュン
ひきこもりという事情は可哀想だけれど
しかしそれは私とは関係ないわ…」

16: 2013/02/15(金) 01:31:38.70 ID:YPnvmWSq0
ジュン「…どうしても行くってのかよ…」

真紅「ええ」

ジュン「じゃあこれは…!これはどうなるんだよ!」

指輪を指し示すジュン

ジュン「お前と僕は契約して…!だから僕の人形だって…!
一生どこにも行かないって…!言ったじゃないか…!」

真紅「あら…そうね では薔薇の誓いを解きましょう」

ジュン「へ?」

ジュンの指をやさしい光が包む
そして指輪は消えていた

ジュン「」

18: 2013/02/15(金) 01:38:09.51 ID:YPnvmWSq0
ジュン「…」ガク…

翠星石「ちょ… ちょっと… 大丈夫です…?ジュン…?」

ジュンはうなだれたまま氏んだような目をしている

翠星石「し 真紅ぅ!」タタッ

真紅「翠星石」

翠星石、真紅に抱きつく

翠星石「やぁですぅ…!いっちゃだめですぅ…!
翠星石達をほうっていかないでぇ…!」ぽろぽろ

真紅「翠星石…」

19: 2013/02/15(金) 01:44:24.08 ID:YPnvmWSq0
翠星石「ぐすんぐすんですぅ」

真紅「… そうね でも貴女にもいつか分かるでしょう
皆自分の時間があり自分の生き方をしているという事を
貴女がここにいるのも
私がいままでここにいたのも それも生き方の一つだったけれど」

真紅「でも 姉妹の繋がりは永遠だわ
私達は無限の時を生きている いつでもまた会えるわ」

翠星石「…くすんくすんですぅ…」

20: 2013/02/15(金) 01:48:09.14 ID:YPnvmWSq0
蒼星石「大丈夫かい?」

翠星石「仕方ないですぅ…」ごし
 
翠星石「真紅は…一度言い出したら聞かないですもの…」

ジュン「…」

ジュンは隅っこで体育座りをしている

21: 2013/02/15(金) 01:55:07.19 ID:YPnvmWSq0
その時 玄関の扉が音もなく開き現れた水銀燈と金糸雀

真紅「あら 御機嫌ようお姉さま」

水銀燈「真紅」

金糸雀「…」

翠星石「あっ 金糸雀…!」

蒼星石「金糸雀は僕が呼んだんだ 僕らだけじゃ多分止められないから」

金糸雀「そしてカナは水銀燈を呼んできたという訳かしら」

22: 2013/02/15(金) 02:06:31.74 ID:YPnvmWSq0
水銀燈「真紅…あんたってとうとう本当に頭がおかしくなっちゃった
んですってね…」くす…

真紅「別になんと言われようとどうでも良いわ
何か御用かしら…」

水銀燈「どこへ行こうと勝手だけれどね…
私には貴女 アリスゲームから逃げているようにしか
見えないわ

雛苺がいなくなってこの方落ち込んでいたもの…」

真紅「逃げる? 逃げて等いないわ
むしろ私は…」

水銀燈「そうねえ… 早い話が
貴女はまだ戦いから降りていない
最後まで残る義務があるの
私はこんな終わり方認めないわ…」

23: 2013/02/15(金) 02:11:12.40 ID:YPnvmWSq0
真紅「つまりローザミスティカの事?」

水銀燈「ええ それを寄越さないうちは…」

真紅「そう じゃあちょっとあっちを向いていてね」

水銀燈「?」

真紅「お… お… うぇ…! ふぅ」

水銀燈「ええっ!?」

真紅の掌には二つのローザミスティカが光っていた

真紅「はい 私のは貴女にあげるわ」

水銀燈「」

24: 2013/02/15(金) 02:21:58.49 ID:YPnvmWSq0
真紅「もう一つ…雛苺のは 貴女にあげてもいいけれど
それでは雛苺に申し訳が立たないし
ゲームのバランスも崩れてしまう
翠星石 貴女にあげるわ」

翠星石「あ え?」

真紅「さて…」

25: 2013/02/15(金) 02:29:58.88 ID:YPnvmWSq0
桜田家の前

真紅「ふぅ… 素晴らしい開放感…
これが生きているってことなのだわ…」

****

港南大学 理学部 大講義室前

教授「そうすると… この星の重力により星が生まれるだけの熱が…」

真紅「あら…これは地球惑星科学の講義の様ね…
面白そうだけれど… 今は講義中だから前から入ったのでは迷惑ね
どこか目立たない所から入らなくては ふむ この廊下から
後ろに回れる様ね…」トコトコ

26: 2013/02/15(金) 02:52:14.36 ID:YPnvmWSq0
キイ…

真紅「なんて大きな部屋なのかしら
一階から二階まで階段になっているのね まるで劇場のよう…」

教授「地球のコアは金属でできていますが
高温でイオン化しており…その巨大電流が地磁気を作るのです」

真紅「はぁ… とても興味深いわ」ほぅ…

27: 2013/02/15(金) 02:59:47.92 ID:YPnvmWSq0
学生「… …」うつらうつら

真紅「お隣失礼しますわ」スト

学生「む… あ はい… むにゃ…」

真紅「そうだ 折角だからノートも取りましょう
こんな時の為に鞄の中に紙と万年筆を入れていたのよ」ゴソゴソ

29: 2013/02/15(金) 03:08:46.03 ID:YPnvmWSq0
教授「写真を見て下さい この星を知っていますか
…そうですね 木星の衛星 エウロパです

木星には四つの大きな衛星がありますが
驚くべき事にどれも全く異なった様相を呈しており…」

真紅「…知らなかったわ この数十年の内に
人類は宇宙に飛び立っていたのね… う…ん…」うつら…

教授「エウロパの表層は全域が氷に覆われていますが
その下は海になっています 地球で言うと北極海の様な…
この写真の、不気味な血管のような模様がありますね

これは氷のひびなのです 
エウロパの氷原はひび割れだらけ…
中には数千キロに渡るクレバスも存在します」

真紅「… はっ… どうしたのかしら 私とした事が…
うたたねをしていたわ… 雰囲気に飲まれてしまったのかしらね…」

30: 2013/02/15(金) 03:09:43.84 ID:YPnvmWSq0
実はさしえも書いてきたww

http://uploader.sakura.ne.jp/src/up115971.png

33: 2013/02/15(金) 03:17:41.17 ID:YPnvmWSq0
隣りの学生「ん… あれ… なんだ夢かw」ぱたっ

真紅「すばらしいわ こんなに離れた星の写真が撮れるなんて…」わくわく

教授「それで、エウロパが面白いのはですね、ここからなのです

エウロパは常にその巨大な母…そう 木星によって揺さぶられています
海底では相当激しい火山活動が行われていると推測されているのです…

この写真…なんだか分かりますか
これは地球の北極海の海底火山付近で撮られたものですが…
チューブ状の生物のコロニーですね 何とこんなにも過酷な環境下に
生物がいるのです
エウロパの海底にもですね、これと同じような事が、
もしかすると…」

真紅「そう…宇宙人はいるのね… すばらしいわ… う… ん」カクン…

34: 2013/02/15(金) 03:27:04.08 ID:YPnvmWSq0
****

真紅「ここは… 私は… 大講義室の講義を…
宇宙にはこんなにも不可思議な世界が…

…お昼を食べたら…次は文学部で哲学の授業に…
すばらしい… 楽しみにあふれた人生に…」

***

翠星石「し …ぅ! 真紅ぅ! あっ! 目を開けたですよう!」

真紅「す… 翠星石…? ここは… 私は…?」

翠星石「気が付きましたか? 真紅はお外で…大学の講義室ってとこで
倒れてたのですよ?」

ジュン「はあ… 無茶しやがって…」

真紅「…ジュン」

35: 2013/02/15(金) 03:34:59.35 ID:YPnvmWSq0
蒼星石「ローザミスティカを無くしてしまったら
動ける訳がないじゃないか…もう…」

真紅「… 私…? どうして…」

蒼星石「水銀燈がね
君をずっと探して、連れて帰って来てくれたんだよ…」

真紅「え…」

36: 2013/02/15(金) 03:44:44.83 ID:YPnvmWSq0
翠星石「とにかく無事で良かったですよー
心配かけないでくれやですぅ」

真紅「…そう… 失敗したのね…」ふぅ

ジュン「お前さ… その…」

真紅「あら 小言は聞きたくないわ…」

ジュン「いや さっきはごめんな」

真紅「えっ?」

ジュン「良く考えたら僕酷い事言った… ごめん…
だから…その… また出掛けたくなったら行ったら良いけど…
あんまり心配はさせないでくれな」

真紅「まあ」

ジュン「ん?」

真紅「何でもないわ 少し驚いただけよ
水銀燈は? どこにいるの…?」

38: 2013/02/15(金) 03:52:57.97 ID:YPnvmWSq0
翠星石「水銀燈はとっくに帰ったですよ?」

真紅「そう… はぁ… また一つ貸しを作ってしまったわ…」

蒼星石「で… どうだったの? 楽しかったかい?」

真紅「ええ すばらしい冒険だったわ
特に木星への旅がね… ほらノートをとって来たのよ…」

蒼星石「ふぅん… これはすごいな…」

ジュン「へー…」

****

翠星石「さっ そろそろ寝ましょうかねー
夜も遅いですし また明日ですう!」

真紅「おやすみ 翠星石 今日はありがとう
おしまいだわ」

39: 2013/02/15(金) 03:54:14.74 ID:Dpl9L4Xe0
乙!
ハッピーエンド乙!
おやすみー

引用: 蒼星石「真紅が人形としての自我に目覚めてしまった」