1: 2011/09/25(日) 06:15:46.45 ID:qjVvlndM0
京子は昔から、私がいないと駄目だった。
泣き虫で弱っちくて友達づきあいが苦手で、
いつも私の後をちょこちょことついてまわってた。
一方の私はといえば、男勝りで腕っ節が強く、いつも京子を守る側だった。
私は、なにか妖精みたいに可愛らしい容姿を持った京子が、
私を姉のように慕ってくれるのがいつも誇りだった。
そして私は、何時か京子が私から離れていくのではないかと、いつも不安だった。
ゆるゆり: 23【イラスト特典付】 (百合姫コミックス)

2: 2011/09/25(日) 06:16:49.86 ID:qjVvlndM0


私がおかしなことを覚えたのは、小学校低学年の頃だった。
記憶はぼんやりとして定かではないが、寒い冬の日だったように思う。
当時の京子はとても泣き虫で、痛いことや悲しい事があればすぐに泣き出し、
外でそうなったからには私が手を引いて帰らなくてはならなかった。

私と京子はその日、学校で課題になっていた縄跳びを二人で練習していた。
二重跳びがなかなか出来なくて、二人であーでもないこーでもないと四苦八苦していた。

あるとき、二重跳びを試みた京子の膝に縄跳びが思い切りぶつかってしまった。
ピシリ、ときつい音がして、京子の膝はみるみるうちにミミズ腫れになった。
私はあーこれは泣くな、と思った。冬場の厳しい寒さは、痛みを倍増させる。

うずくまってしまった京子に手を伸ばそうと私が近づいたそのとき、京子はさっと顔を上げて、
私の目を捉え、目尻に涙を浮かべながら無理やり笑って言ったのだ。

「大丈夫、泣かないよ、一人で立てる」

その瞬間、何故だろう、私は猛烈に頭に血が上るのを感じたのだ。
私は手に持っていた縄跳びで、京子の二の腕を痛打した。
冬のピンと張り詰めた空気に、高い鞭音が響き渡った。

「あうっ!?」

京子は信じられないといった顔で私を見た。
京子を叩いてしまった私も、自分で自分が信じられなかった。
しかし、一度ふりあげてしまった拳はもう止まらなかった。
何度も何度も、勢いをつけて京子に縄跳びを叩きつけた。
そのたびに京子は、小さく高い悲鳴を上げた。

5: 2011/09/25(日) 06:18:26.98 ID:qjVvlndM0
京子がぐったりと地面に這ったまま動かなくなってしまった頃、私は我にかえった。
ぷるぷると震える京子をおぶって、ますます気温の下がる住宅街を家まで歩いた。

家に帰ると両親が驚いた。
どうしたの、と聞かれて、私は小狡く喧嘩したの、と答えた。
説教しようとする両親を、仲直りしてくる、と抑えて私は京子を自分の部屋へと持ち帰った。

部屋に入って、暖房をつけて、京子をベッドに座らせた。
京子はまだ泣いていた。よっぽど私が怖かったのだろう。

「見せて」

京子の足を取ると顔を近づけた。
薄暗い部屋に、京子の白い足が浮き上がった。所々赤く腫れ上がっているのが分かる。
私のつけた傷だった。

「治してあげるね」

私は京子の傷に口をつけた。
ちゅ、ちゅ、と唇を押し当て、滑らせていった。

「結衣ちゃん、しみる」
「治療だから、我慢しないと駄目だよ。いたいの治らないよ」

そう言いつつ、京子の肩を押してベットに寝させ、二の腕や首筋にも唇を這わせた。
そこにも沢山傷があった。
私はときおり舌で唾液をまぶしながら、”治療”を続けていった。

8: 2011/09/25(日) 06:20:33.87 ID:qjVvlndM0
私はその時すでに、夕闇に浮かび上がる京子の白い肌に魅了されていた。
京子はもう泣き止んでいて、嫌がる素振りひとつ見せず、私に身を委ねていた。

無防備なその姿を見ていると、私はなぜだかとてもいい気分になって来るのを感じた。
これは私のもの。傷つけるのも癒すのも、私の自由。私だけの権利。
私は京子のブラウスに手をかけ、ボタンを外していった。
そこにも傷があるかもしれなかったからだ。
京子は恥ずかしいのか少し嫌がったが、押えつけると簡単におとなしくなった。

中に着ていた綿のシャツを掻き上げて、
肩を、鎖骨を、胸やお腹を、余すところなく唇で味わった。
その頃には、私はなんとなくいけないことをしているのはわかっていた。
お母さんに見つかったらきっと叱られるだろう。
でも止めなかった。
この白く美しい肌に、もっともっと唇を押し当てていたかった。
くすぐったいのを耐えるような、京子のくん、くんという押し頃した声も心地良かった。

しばらく続けていると、もう治療がどうとかは関係なくなっていた。
舌を這わせ、唇で肌を吸い、匂いと、感触と、京子のいつもと違う反応を楽しんでいた。
普通の人なら絶対に止まってしまうところで、私は止めることが出来なかった。
それだけ京子は美しかった。この美しい少女を、自分だけのものにしたかった。

10: 2011/09/25(日) 06:22:08.44 ID:qjVvlndM0
手指をこすりあわせた。
脚やお腹に頬ずりした。
髪に鼻を埋めて、耳の後ろの匂いを吸い込んだ。

自分の中で、なにか途方も無い疼きがだんだんと大きさを増しているのが分かった。
だけど、この時はまだ、それをぶつける先がどこにあるのか私たちには分からなかった。
部屋が真っ暗になっていたのにも気づかず、ただただ京子の匂いと感触を貪り、
そのときはそれでおしまいだった。

私たちはその後、二人で仲良く半裸で寝こけているのを、両親に発見された。
両親は暖房が暑かったから服を脱いじゃったのね、という解釈をした。
実際、暖房が効きっぱなしになった部屋は汗ばむ程度に暑かったが、
そんな健全な理由じゃないのは私が一番良く知っていた。
バレなくてよかった、と私は胸をなでおろした。
と同時に、京子が何も言わなくても口裏を合わせたのが少しだけ意外に感じた。

11: 2011/09/25(日) 06:23:15.99 ID:qjVvlndM0


私は京子が、それ以降その話を一切持ち出さなかったので、
ずっと京子はその日のことを覚えていないのだと思っていた。
それでも私はあの日以来、京子に会う度に、
胸にチクリと小さな罪悪感を感じるようになった。
それは京子にしてしまったことに対する罪悪感というより、
同年代の、しかも同性の友人の体に興奮してしまった自分に対する罪悪感だ。

私と京子は成長し、小学校6年生になった。
成長した京子は人との付き合い方を覚え、
飄々としたキャラクターと美貌でそれなりの人脈をしっかり形成した。
私はそんな京子のツッコミ役として、常に隣に馳せ参じる形となった。

京子は以前よりずっと無邪気な振る舞いをするようになったが、
それにつれて、あの日の罪悪感はますます私を苛むようになっていた。
そしてその罪悪感は、その頃の少女特有の性に対する興味と混ざり合って、
次第に京子への特殊な思い入れにとって変わるようになった。

13: 2011/09/25(日) 06:26:05.55 ID:qjVvlndM0
「私は京子の体が好き」

そういう意識が、私の脳裏に暗い影を落とすようになっていたのだ。
考え始めると、余計意識してしまっていけなかった。
あかりと三人でいる時も、クラスのみんなといる時も、
京子を見る度、スカートの下からのぞく白い太腿や、
服の襟首から見えるなめらかな鎖骨をつい目で追ってしまう。
あの日の京子の脚やうなじに重ねてしまう。
あとからそういう自分に嫌悪感を抱くとわかっていても、
どうにも止められなかった。

私はその頃真面目ないい子で通っていたから、
絶対に周囲や京子にバレてはいけない、バレたら終わりだと思っていた。
誰にもバレないようにこっそりと、しかし頻繁に、
チラチラ、チラチラと京子を見ていた。
絶対にバレるはずがないと思っていた。
しかし、終わりの日は意外にあっさりとやってきた。

15: 2011/09/25(日) 06:29:07.26 ID:qjVvlndM0
それはある冬の日だった。
その日は学校が終わったあと京子の家に行って、
二人でこたつに入り、お茶を飲んだり雑誌を読んだりしていた。

その頃はよくあかりと私と京子の三人でつるんで遊んでいたが、
その日あかりは家の用事か何かでいなかった。

「結衣さ、昔、今日みたいな寒い日に、私にいやらしいことしたよね」

京子は何か当たり前の世間話をするように、私にそう言ってきた。
私は飲んでいたお茶が気管に入って盛大にむせた。

「ゲホゲホ……き、京子、何の話……?」

私はとぼけたが、京子はこたつをぐるっと回ってこっちにやってきた。

「覚えてないの?
 2年の頃、私が縄跳びぶつけて泣いて帰ってきたあと……」

いや、覚えているけど。
覚えてるけどどうしてそんな話を今更。

17: 2011/09/25(日) 06:32:27.34 ID:qjVvlndM0
私は混乱していた。
私の目を見据える京子に対して、必氏で言い訳を考えていた。
だがその時の京子は容赦なかった。

「結衣、最近よく私の脚とか胸とか見てるよね。
 あれって、私に興味あるってこと?」

言い訳探しは意味がなかった。バレてた。バレバレ。
終わった。私終了のお知らせ。
同性にいやらしい視線を送ってたなんてバレたら、
レOだヘンタイだと気持ち悪がられて友人は一瞬でいなくなり、
いじめの対象になって水をかけられたり上履きを隠されたりした挙句、
どこか遠くの学校に転校させられるに違いない。
さようなら、真面目で優等生な私。

「いや、そんな顔しないでよ。私別に結衣のこと気持ち悪いとか思ってないから」

「えっ!? なんで!?」

私の心底うろたえた叫びが京子は面白かったらしい。
ケタケタと笑って結衣おもしろーいとのたまった。

18: 2011/09/25(日) 06:35:24.62 ID:qjVvlndM0
「お……おもしろくないよ! ……だって私は、ずっとお前のこと変な目で見てたんだぞ!
 良くないだろ! というかヘンタイじゃん私!」

「やっぱりそうだったのか……。
 だーからー、それはお互い様だからいいって言ってんじゃん!」

「は!?」

「お・た・が・い・さ・ま! 私もヘンタイだから!」

「ど、どういうこと……?」

「どういうことって……結衣がおしえたんじゃん。
 まさか私が忘れると思ってた?」

「教えたって、お前まさか……」

あの日の記憶がフラッシュバックする。
目の前の京子はあの日のひ弱な京子とすっかり変わってしまった。
しかし内面の、本質的なところはちっとも変わっていない。
繊細で感情豊かで頭はいいのに、私がいないと何も出来ない京子。
今の彼女があの日のままに、あの日のこともしっかり覚えていたとしたら。

22: 2011/09/25(日) 06:39:45.59 ID:qjVvlndM0
「私ね、結衣。あの日、結衣ならいいかって思っちゃったんだよ」

「結衣の息とか、指とか、すごい触れてきて、それで、
 ああ、私のこと触って興奮してるんだって思って、うれしくて」

「だからさ、どうしてまたああいうことしてこないのかなって、
 ずっと思ってたんだけど……」

「ずっとしてこないから、変に思うじゃん!
 結衣に触られて気持ちよかった、私がおかしいのかなって」

私はまた混乱の渦に巻き込まれていた。
幼い私が犯した過ちが、
まさか京子にまでおかしな感情を植え付けていたなんて。
喜んでいいのか反省していいのかさっぱりわからない。
だが京子は私との距離をいっそう詰めて言う。

「で、どうなの結衣。私のこと見たいんだよね」

私は反射的にスカートから伸びる京子の脚に目を落としてしまった。
目ざとい京子がそれを見逃すはずがない。
京子は膝立ちになってつい、とスカートの裾をつまんであげてみせる。
白い肌に青い静脈が透けて見えた。
ゴクリ、とつばを飲み込む。

25: 2011/09/25(日) 06:42:45.71 ID:qjVvlndM0
「ね……どうなの、結衣」

何故か潤んだ瞳で私の目を見る京子。
もう一度京子の腿に目を落とす。

「み………見たい」

言ってしまった。
京子は照れたようなかんじでにへらと笑った。

「ごめん京子。私……見たい、と思う」

「いいよ…あ、触るのもありね」

「……き、キスは」

「全然オッケー。結衣限定だけど」

私は恐る恐る、京子の太腿に唇をつけた。
ふわっとした、ハリのある感触が私を受け止める。
キメの細かい肌はサラサラとして心地良かった

26: 2011/09/25(日) 06:45:43.97 ID:qjVvlndM0
唇を舌で湿して、更に感触を味わう。
舌を出して舐めると、塩の味がした。
触ってみる。つかんでみる。懐かしい感触。

「ん……結衣、くすぐったい」

「ごめ……」

謝りながらも、私はもう止める気はなかった。
普段京子に対して感じていた鬱憤を、ここで一気に晴らす心づもりになっていた。
太腿から唇を離して、次は京子の首に狙いを定めた。

頬の感触、うなじの匂い。肩に顔をうずめて確かめる。
幼かったあの日よりも、ずっと鮮明に京子を感じる。
耳を唇で挟んだら、京子はどういう反応をするだろうか。

「ひゃあっ、結衣、くすぐったいってばぁ」

「京子、服、脱いで……」

「わかったよぉー。もう、結衣はせっかちだなぁ」

27: 2011/09/25(日) 06:48:38.62 ID:qjVvlndM0
京子はポロシャツを頭から引っこ抜き、キャミソールを脱いだ。
京子の白い肌が、直に私の目に突き刺さった。
背徳感と興奮で息が詰まりそうだった。
京子がどうしてこんなにも冷静なのか不思議でならなかった。

「京子……まだブラしてないんだ」

「え。うん、まだいいかなって」

「でもちょっと膨らんでるよ。ふにふにしてる」

「うあ、結衣のばか、えOち」

私は早く京子の体に触れたかった。
一刻も早く京子に肌をこすりつけたかった。
京子を床に押し倒すと、覆いかぶさって肩と言わず胸と言わず
唇を押し付けた。

「ちょ、結衣、鼻息荒いよ……」

「京子……京子……」

触れれば触れるほど、私は今までの私と京子の関係が組み変わっていくのを感じた。
私は京子を必要としている。
水のように、空気のように、京子の柔らかな肌は私の唇に吸い付いた。
これがなくなってしまえば、私はきっと枯れてしまうだろう。

28: 2011/09/25(日) 06:52:59.35 ID:qjVvlndM0
「京子……好きだ…」

「ん、結衣…」

私は服を脱いだ。
京子の肌を味わうのに、指や唇だけでは全然足りなかったからだ。
胸を押し当て、お腹を合わせ、腿を絡めた。
温かい。
私は京子にしがみつくように全身で京子に触れた。
京子は私の頭をよしよしとなでてくれた。

「結衣、えOちだね……私にこんなコトしたかったんだ」

「うん、したかった、したかったんだ…」

当時の私たちに、の詳細な知識はまだなかった。
ただ漠然と裸で抱きあうのはとてもえOちでいけないこと、
その程度の認識しかなかった。
だから、イくとか、どこが気持ちいいとか、感じるとか感じさせるとか、
そういうことは全然考えられなくて、
私は砂漠で水を求める人のようにただ京子を求め、
そして京子はただそれを受け入れた。

何時間も何時間もそうしていた。
体が汗や、唾液や、それ以外のよく知らない液体でぬるぬるになった。
『行為』は私が疲れ果ててぐったりするまで続いた。
やめたくなかった。
これを受け入れてくれている限り、
京子が私から離れていくことなど絶対にないと信じる事ができた。

29: 2011/09/25(日) 06:53:57.84 ID:qjVvlndM0
事が終わった後、二人して裸でベッドに潜りこみ手をつないでいたときに京子がボソリといった。

「ねぇ結衣、私のこと嫌いになってない?」

「どうして?」

「だって結衣、昔より口数が減ったし、最近ちょっと怖いし」

「そんなこと無いよ。私は昔からこんな」

「ほんとに? 最近私が調子に乗ってるから怒ってるんじゃないの?」

「……そんなことを気にしてたのか」

実は成長した京子の変化には私も少し不安を抱えていた。
人気ものになった京子が私から離れていくんじゃないか、なんて。
だから私は、京子が少しも昔と変わってないことを知って安心した。

私は京子の頭を撫でた。

「京子はああやって友だちを作ることにしたんだろ。
 大丈夫、私はずっと見てるから、京子は京子のしたいようにすればいいんだよ」

京子はくすぐったそうに目を細めた。

その日は京子の家に泊めてもらった。
また少しエOチな事をして、私たちは眠った。

31: 2011/09/25(日) 06:57:27.99 ID:qjVvlndM0


次の年、私たちは七森中に入学した。
私は部活なんて入る必要ないと思ったが、京子は吹奏楽部に入部した。

私には京子より先に生理が来た。
それに伴いいろいろな知識を親に吹きこまれたが、どれもリアリティが一切なかった。
男となんて気持ち悪い。
私は京子を思い浮かべた。
あれくらいキレイなら、触るのも触られるのも気持ち悪くないのにな。
京子は中学生になってますます美人になっていた。

部活で忙しくなった京子が、放課後に私の家に来る回数は減った。
体に変化が出てきて恥ずかしくなったのか、服を脱いで触れ合うようなことも京子はしなくなった。
私はまだ小学生のあかりと二人でだべったり遊ぶ機会が多くなった。
ただ、その分京子は来る度に私にキスをねだるようになった。

三人で遊んでいても、ふとしたタイミングであかりの目を盗んで、
キスをねだってきた。

32: 2011/09/25(日) 07:00:57.18 ID:qjVvlndM0
あかりがお菓子を取りに行った隙に。
私がトイレに立った帰りに。
部屋で、廊下で、階段で、私たちはこっそりとキスを楽しんだ。

ただ、昔みたいに体に触ることは、京子は許してくれなかった。
私は不満だったが、京子はそこだけは頑として譲らなかった。
そういう細かな変化を、私は中学に入った忙しさにかまけて見逃していた。
そう、少しずつだけど、京子は変わっていた。

……ある日、それがはっきりと私にも分かる日がやってきた。
その日は京子が部活で遅くなるというので、
あかりと二人で公園で駄菓子を食べたりして遊んでいた時のことだ。

33: 2011/09/25(日) 07:05:30.28 ID:qjVvlndM0
あかりが、ずぶ濡れの制服でとぼとぼと歩いている京子を見つけたのだ。

「ねぇ結衣ちゃん、もしかしてだけど、あれ京子ちゃんじゃない?」

私が気づくのとほぼ同時に京子が私に気づいた。
京子は、見られてはいけないものを見られたような表情をした。
私は嫌な感覚が背中を走るのを感じて、京子に詰め寄った。

「京子!! その服、どうしたの!」

「え、えへへ、水たまりで転んじゃって……」

「……水たまりって…雨なんて全然降ってないじゃないか!」

「う、うえ、じゃあ池に」

「誰にやられたんだ」

「え、ちょ、結衣私は」

「ごまかすな!」

私は一気に頭に血が登っていた。
京子の様子は池に落ちたのでも水たまりで転んだのでもないことは明らかだった。
さもなければ、京子の美しい金髪がこんなに惨めに切られているわけがない。
いじめだ。
私の知らないところで京子はいじめを受けていて、しかも京子はそれを私に隠していた。

36: 2011/09/25(日) 07:09:41.74 ID:qjVvlndM0
私は掴みかかるように京子の肩を揺さぶった。

「誰だ! 誰にやられたんだ! 今すぐ行って頃してやる!!」

「結衣、結衣! 痛いよ、落ち着いて」

「これが落ち着いていられるか、京子を傷つけた奴は……」

京子を傷つけた奴は私がずっと粛清してきた。
小学校の六年間だけでも、何度もそんなことがあった。
美人で成績優秀で悪目立ちする京子には友達は多かったが敵も多かった。
妬みの感情にかられて京子にちょっかいを出してくる奴は、
私が自慢の腕っ節で黙らせていた。

中学に入って、周りも大人になったし、
京子のクラスは生徒会役員にもなった杉浦という委員長が統率していたので、
いじめはないだろうと安心していた。
私としたことがとんだ油断だった。
クラスじゃない。
吹奏楽部だ。

38: 2011/09/25(日) 07:12:59.15 ID:qjVvlndM0
「吹奏楽部の連中だな、京子」

京子は首を横に振った。

「どうしてかばうんだ! どうしてそんなひどい事をするやつを!
 そんなの、私に言えばすぐに全部……」

「だって! もう中学生だし! 結衣にこれ以上迷惑かけないようにって!」

私は思わず手を振り上げた。
しかしその手はあかりに捕まれてしまった。

「結衣ちゃん、ダメ!」

「京子は!!
 弱っちいから私が守ってあげなきゃいけないんだ!!
 京子は余計なこと考えるな!!」

沈黙が降りた。
気まずかった。
感情に任せて私は京子に暴力をふるおうとした。
最低だ。
京子は震えていた。
何故かあかりが泣いていた。

39: 2011/09/25(日) 07:17:02.24 ID:qjVvlndM0
「家帰るよ。
 シャワー浴びないと風邪ひくから」

「うん……」

「あかりはどうする?」

「あかりも行く……かな?
 ううん、でも」

あかりはしばらく迷った後、
探るように私の目を見た。

「結衣ちゃん、京子ちゃんと喧嘩しちゃ駄目だよ?」

「………」

「喧嘩しないなら、あかりは今日は帰るよ。
 またあしたね」

何度も念を押してからあかりは帰っていった。
気を使ってくれたのか。
まぁ、あかりは私と京子の一番近くにずっといたのだから、
私たちの間になにか特別なものがあることくらい、
悟ってはいたのだろう。

41: 2011/09/25(日) 07:20:40.29 ID:qjVvlndM0
私は京子の手を握って帰り道を歩いた。
刻一刻と暗くなっていく田圃の畦道を二人で歩いていると、
なんだか世界には私たちふたりだけしかいなくなってしまったような感覚に陥った。
右手に京子の冷たい手の感覚。
震えている。

怖かったのは私か、世の中か、それともただ濡れた服が寒いのか。
私は京子の手をぎゅっと握りなおした。

幸せだった。
自分の身勝手さに吐き気すら覚えた。
こうして、昔と変わらず、ずっと京子の手を引いて歩いていたかった。
私は、自分で歩き出そうとする京子に嫉妬して、
見捨てられる恐怖に勝てず、
京子を恫喝し、抑えつけ、あまつさえ暴力さえ使って、
こうして京子の前を歩いている。

私は、ずっと気弱で泣き虫な京子が本当の京子だと自分に言い聞かせてきた。
でももう、それも変わってしまったのかもしれない。
明るくて人懐こく、少々身勝手な京子が、今の本当の京子の姿なのかもしれない。
そんなふうに考えると、私は寂しくて寂しくて泣いてしまいそうになる。
京子に必要とされなくなったら、私はどうやって生きていけばいいのだろう。

だからその時、私は幸せだった。
家に入る前に、もう一度京子の手を握りなおした。
私の家か京子の家か、どちらの家に帰るか迷ったが、
京子のおばさんに説明するのが面倒だったので、
京子は私の家に連れてかえった。

42: 2011/09/25(日) 07:25:30.97 ID:qjVvlndM0
「ね、結衣」

脱衣場で服を脱ぎながら、京子は私に言った。

「ごめん、私、吹奏楽部やめるよ。
 私、楽譜読めないし」

「……」

「その代わりさ、二人で新しい部活つくろう」

「……」

「実はさ、こないだ偶然茶道部の部室があいてるの見つけちゃってさ」

「……」

「そこ借りてさ、二人で使っちゃおうよ。来年になればあかりも入ってくるし」

「……」

「放課後になったら昔みたいに三人で集まってさ、雑談して、お菓子食べて、マンガ読んでさ」

「……」

「だから結衣、お願いだから泣かないで」

45: 2011/09/25(日) 07:28:53.71 ID:qjVvlndM0
泣いている?
誰が? 私か。
私は涙を流していた。

楽譜?
楽譜なんて京子が本気を出せば3日で完璧に読めるようになるはずだ。
部活内程度なら、京子にはいじめをやめさせる力だってもうある。
知らないふりをしていただけで、そんなこと私はとっくに知っていた。

京子はやさしい。
私が頼めば、頼まなくても、ずっとずっとそばに居てくれるだろう。
そのかわり、京子はずっと私の京子のままだ。

思えば簡単な話だった。
不安に思う必要なんてなかった。
頼めばいいんだ。
ずっと私の京子でいてくれ、と。

ああ、なんて甘美なんだろう。
私にはそれを拒むことなんて、できようはずもなかった。

47: 2011/09/25(日) 07:31:56.71 ID:qjVvlndM0
私は服を脱いで京子をお風呂場に引っ張り込んだ。
京子にくちづける。舌を入れる。
京子は拒まない。絶対に拒まないんだ。
舌を絡め、歯茎や上顎を残らず舐めとった。
京子の匂いが、味が、私の脳の中に染み渡っていく。

風呂場のタイルは冷たかった。
熱いシャワーを出して、足りない温度をごまかした。

私は体を下げて、京子の一番触れてはいけない部分に唇をつけた。
音を出して吸い込む。京子の体が震えた。
震えながらも京子は私を受け入れた。
感じてくれた。

「はぁっ、結衣、結衣気持ちいいよ」

そう言って京子が頭を撫でてくれるのが嬉しかった。
そういえば、私は今まで京子を感じさせるためにエOチな事をしたことがなかった。
全部私が京子を味わうためにしていたことだった。

でも今は、何とかして京子を感じさせたかった。
私で気持ちよくなって欲しかった。イッて欲しかった。
私にとって、それが救いになるような気がしていたのだ。
レOでもいい。
変Oでもいい。
京子がそばに居てくれる、そのための証が欲しかった。

48: 2011/09/25(日) 07:34:50.96 ID:qjVvlndM0
私は持っている知識を総動員して京子を愛撫した。
京子のそこは少ししょっぱくて匂いは薄かった。
出てくる汁を舐めとると喉に少し絡んだ。
息が苦しいのが気持ちよかった。

私は夢中になって京子の敏感な粒を舌で弄った。
シャワーの水音に混じって、
京子のか細い喘ぎ声が私の耳に届く。
それはとても心地よい音だった。

「ふっ、んくっ、あ、結衣、そ、れ、も……いく…」

やがて京子が私の頭を抑えつけて痙攣した。
口の周りが愛液でベトベトになる。
京子に押し付けられて、京子の匂いでいっぱいになって、
私は目の前が白くなるのを感じた。

数秒の硬直の後、二人してもつれるように風呂場の壁に倒れこんだ。

熱湯にしたシャワーが涼しく感じるほど、私の体は熱くなっていた。
なんだかすごくけだるい。
私はもう一度京子にキスをした。

49: 2011/09/25(日) 07:36:36.79 ID:qjVvlndM0
風呂場から出ると、ひどい疲労感が私たちを襲った。
喧嘩したり泣いたりエOチな事をしたりですごく疲れた。
京子がベッドに倒れ込んだ。
私もその横に並んで寝そべった。

「なんか疲れちゃったね、結衣」

「んー、そうだな」

京子は普通の京子に戻っていた。
明るく活発な普通の京子。

「京子、さっき言ってた部活の話……」

「うん?」

「何部にするの? 漫研はもうあるでしょ」

「うーん、特に考えてないけど、じゃあ娯楽部!」

「娯楽……」

それはもはや部活でもなんでもないんじゃないかと思った。
認可なんておりないだろうなぁ。当然不法占拠になるんだろう。
私は少しだけ頭が痛くなった。
それでも、私にはそれを止める選択肢なんてなかった。
そこでなら、もう少しだけ、私と京子は、私と京子のままでいられるような気がした。

50: 2011/09/25(日) 07:37:31.41 ID:qjVvlndM0
おわり

56: 2011/09/25(日) 07:45:05.99 ID:qjVvlndM0
実はこのあと進学で京子が綾乃と同じ高校目指すって言い出して
勢い余った結衣ちゃんが京子ちゃんを殴り頃す娯楽部ディストピア編を考えていたけど、
京子ちゃんが氏ぬのは皆もうお腹いっぱいだし娯楽部設立編がすごくいい感じにまとまって、
どう考えても蛇足だったのでカットしました。

あとVIPには申し訳ないんだけど全く同じものをPixivにも上げています。
ゆるゆりSSが信じられないくらい発展しているVIPの意見も聞きたいけど、
やっぱりある程度愛情持って書いたのでオンライン上で責任持って公開してあげたいので。

59: 2011/09/25(日) 07:47:30.10 ID:qjVvlndM0
>>57
文才があれば工口にも暴力にも頼らなくて済むんだけどね

63: 2011/09/25(日) 07:51:01.60 ID:vgC6Lrno0
おつ

66: 2011/09/25(日) 08:32:28.97 ID:qjVvlndM0
あかりは天使(これは究極)

引用: あかり「結衣ちゃん、京子ちゃんと喧嘩しちゃ駄目だよ」