327: 2014/09/23(火) 08:52:16.71 ID:3zEhG37Z0
328: 2014/09/23(火) 08:53:31.06 ID:3zEhG37Z0

第7話A 日は落ち、墓へ墜ちる
SETTING SUN of Graveyard

――――――大会5日目:決勝トーナメント

――――――第2ピット


箒「いきなりラウラと戦うことになるのか……」

雪村「………………」


本日の内容
――――――
第1試合:Bブロック VS.Dブロック

第2試合:Aブロック VS.Cブロック

第3試合:3位決定戦

第4試合:優勝決定戦
――――――


箒「大丈夫か?」

雪村「問題ありません。単一仕様能力『落日墜墓』があれば勝てます」

箒「――――――『落日墜墓』か」

箒「『日は落ち、墓へ墜ちる』――――――何度聞いても不吉なものだ」

箒「そして その効果も、これまで雪村が使おうとしてこなかっただけのことはある」

箒「(確かに、『落日墜墓』が決まればどんなISでも簡単に倒せるだろう)」

箒「(しかし、勝たなければならない理由があるとはいえ、そんなものを使わせて勝利を得て大丈夫なのだろうか?)」

箒「(けど、それ以外にここまで勝ち上がってきた専用機持ちに勝つ見込みはない)」

箒「(――――――覚悟を決めろ! 元々 専用機持ちに対しては負けて当然の考えでいたんだぞ、“アヤカ”と組むまでは)」

箒「(そして、“アヤカ”は見事 持てる全てを使ってこれまで対峙してきた代表候補生を打ち破ってくれたんだ)」

箒「(今更、私がその頑張りを否定してどうする!)」

箒「(それに、雪村だからこそ『PICカタパルト』を発見できたのだ。ならば、単一仕様能力だって積極的に活用しても文句はあるまい)」

箒「(だいたいにして、訓練機に向かって性能が何割増しの世界最新鋭の第3世代機が圧倒的な戦力差をつけて我々に迫ってくるのだぞ!)」

箒「(それが当然のものとみなされているのだから、こっちとしてもやり過ぎるということなんてないはずだ!)」

箒「よし!」


329: 2014/09/23(火) 08:54:52.80 ID:JZmH5Y3h0

箒「そろそろ時間だな。――――――装着だ」

箒「行くぞ、雪村! 今回の登場は私に送られていくか?」

雪村「それでかまいません」

整備科生徒「準備できてます」

教員「がんばってください」ニヤリ

箒「ありがとうございます」スタスタスタ・・・

雪村「…………?」

雪村「ハッ」


雪村「――――――『知覧』!」(IS展開)


教員「へ!?」

整備科生徒「何!?」

箒「――――――雪村?!」


雪村「はあああああああああああ!」ズバーン!


それは学年別タッグトーナメント5日目の決勝トーナメント開始前の出来事であった。

すでに、予選ブロックを勝ち抜いた猛者たちはそれぞれのピットで待機し、観客席も来賓席も最後の勝者が誰になるのかを見届けるために満席になっていた。

トーナメントの組み合わせも発表されて、選手には2時間前に最終調整として他のアリーナで30分だけウォーミングアップの時間を与えられていた。

そうして、いよいよ決勝トーナメント第1試合・準決勝1試合目の開始時刻になろうとしていた矢先――――――、


――――――篠ノ之 箒が搭乗しようとしていた待機状態の『打鉄』を“アヤカ”は突如として斬りかかったのである!




330: 2014/09/23(火) 08:56:31.95 ID:JZmH5Y3h0

箒「な、何をするんだ、雪村!? 危ないじゃないか!」

整備科生徒「あ、ああ…………」ビクビク (腰が抜けた)

教員「ちょ、ちょっと“アヤカ”くん……?」アセダラダラ

雪村「…………替えてください」ジロッ

教員「は」


雪村「『機体を替えろ』と言っているんですよ、今すぐに!」ゴゴゴゴゴ


一同「!?」ゾクッ

教員「な、何を言って――――――」

整備科生徒「あ、あああ…………」ポロポロ・・・

箒「ゆ、雪村…………?(――――――『雪村が初めて怒った』だと? 何がどうなっているのだ?!)」アセタラー

雪村「………………」ギロッ

教員「ひっ」

雪村「できないのならば棄権します!」

教員「な、何のこと…………?」

箒「お、落ち着け、雪村! 何のことか全然わからないぞ! ――――――おい!」

雪村「できないのなら、あんたが乗れよ!」ガシッ (無抵抗の教員を乱暴に掴み上げる!)

教員「きょ、教員にこんなことをして、ただですむと思っているの……!?」グググ・・・

箒「やめろ、雪村!(誰に対しても無害だった雪村がここまで激昂するだなんて、どういうことなんだ?!)」

箒「あ……!」

教員「や、やめて! ほ、ほんとに!」(すると、途端に声を張り上げて嫌がる!)

箒「…………え?」


雪村「どうして嫌がるんですか? たかだか乗るだけじゃないですか?」ジロッ


教員「あ、ああ…………!」ポタポタ・・・

整備科生徒「あ、そうだ! ――――――精鋭部隊! 早く来てぇ!!」ピッ

箒「私はどうすれば――――――」オロオロ

箒「あ」


教員「あ」(『打鉄』のコクピットに無理やり入れられて物理装着させられた)


雪村「これでよし」ジトー

箒「…………雪村?」


331: 2014/09/23(火) 08:58:09.40 ID:3zEhG37Z0

精鋭部隊A「何があった!」

精鋭部隊A「!」

整備科生徒「た、助けてぇ……」ポロポロ・・・

箒「あ……」オドオド

雪村「………………」(IS展開中)

教員「ああ…………」(ISに無理やり乗せられた)

精鋭部隊A「――――――そこの男か?」ジャキ

精鋭部隊B「そのようね」ジャキ

精鋭部隊C「やっぱり、所詮は“男”ってことか」ジャキ

箒「!」

箒「や、やめろ! きっと何かわけがあるんだ! 今からそれを――――――」

整備科生徒「きゅ、急に襲いかかって来たんですぅ!」

箒「誤解を招くようなことを言うな!」

精鋭部隊A「そう」ジャキ

精鋭部隊B「いい機会じゃない。ここで晒し者にしましょう?」

精鋭部隊C「賛成ね。『調子に乗ってくれた黄金ルーキー、暴力沙汰で逮捕』ってね」

雪村「………………」


「………………………………フフッ」


教員「ああ…………」

雪村「よっと」(IS解除)

精鋭部隊A「!」

精鋭部隊B「動くな! さもなければ撃つ!」

箒「何を言ってるんだ! 生身の人間だぞ!」

精鋭部隊C「関係ないね。犯罪者を野放しにするわけにはいかないじゃん」

箒「くっ……」

箒「――――――雪村!」

雪村「何です?」

箒「早く事情を説明するんだ! このままだとお前は――――――」


雪村「機体を交換してください」


箒「はあ?!」

精鋭部隊A「何を言っている、こいつ?!」


雪村「わかりませんか? 『篠ノ之 箒のために他の『打鉄』を持ってきてください』と言いました」



332: 2014/09/23(火) 08:59:11.02 ID:JZmH5Y3h0

整備科生徒「じ、自分でパートナーの機体を攻撃してどうしてそんなことを言うの!?」

精鋭部隊B「………………?」

精鋭部隊B「なに、『自分でパートナーの機体を――――――』?」


雪村「そうしてくれなかったからこそ、暴力的手段で訴えるしかありませんでした」


精鋭部隊C「……なんだと? 寝言は寝てから言え」

箒「あ……(確かに、雪村はそのことで何か腹を立てていたようだが――――――)」

整備科生徒「確かに、そのことで突然キレて――――――」

教員「…………!」

精鋭部隊A「ハッ」

精鋭部隊A「先生、いつまでその状態で居るのですか? 何があっても我々で“アヤカ”を取り押さえますから安心して降りてください」

教員「………………!」アセダラダラ

精鋭部隊B「どうしました? 怯えることはありませんって! 私たちの実力は先生もよくご存知でしょう?」

教員「そ、それは…………」オドオド

精鋭部隊C「先生! ふざけてないで早く降りて、“アヤカ”の犯罪を学園に報告してきてくださいよ! こっちは待ってるんですから!」

教員「…………うぅ」

箒「……どういうことだ?」

パンパン!

一同「!」


雪村「わかりましたか? その『打鉄』は不良品です。すぐに新しい機体を準備してください」


一同「!?」

精鋭部隊A「つまり、――――――どういうことだ?」

箒「まさか、学園が私に嫌がらせをするつもりでいたのか! 機体から降りられなくして!」ジロッ

教員「!」ビクッ

整備科生徒「知らない! 私は何も知らない! 知らないから!」ガクブル

箒「………………」

精鋭部隊B「これは、きな臭いわね」


333: 2014/09/23(火) 08:59:48.74 ID:3zEhG37Z0

精鋭部隊C「…………先生?」

教員「…………何?」

精鋭部隊C「いくら相手が憎いからって、自分の手を汚して相手を陥れようとするなんて最低ですよ」
            ・・・・・・・・・・・・・
教員「ち、違うの! 私はただそうするように言われただけで――――――!」

精鋭部隊C「へえ? そうなんだ」ジトー

教員「あ…………」

精鋭部隊C「もういい。この場は私が押さえておくから、このことを早く大会運営本部か現場責任者に知らせてきて」

精鋭部隊B「わかったわ」

精鋭部隊B「疑ってごめんなさいね」

雪村「いえいえ」

精鋭部隊A「あなたのことは気に喰わないけれど、大した嗅覚ね。もし学園に残り続けるのなら精鋭部隊に入らない?」

雪村「そういう道もあるんですね」

精鋭部隊A「そうよ。代表候補生に選ばれない二番手がやるような仕事だけれど、代表候補生とは違った教育が受けられるから」

雪村「考えておきます」

精鋭部隊A「生意気な答え方ね」

精鋭部隊B「行こう。もしかしたら他にも嫌がらせがいっているかもしれないわね」

精鋭部隊A「そうだな……」




334: 2014/09/23(火) 09:00:51.91 ID:JZmH5Y3h0

精鋭部隊C「まさか、こんなことになるとはね……」

教員「くっ……」

雪村「………………」

箒「雪村?」

雪村「…………はい」

箒「その、つまり……、なんだ?」


箒「さっきのは、私を助けようとしてくれたんだよな? 私のために怒ってくれた――――――そういうことなのだな?」オソルオソル


雪村「はい……」シュン

箒「ど、どうした? そんな悄気た顔をして」

箒「確かに、こんなことになってしまったけれども――――――」


雪村「ごめんなさい。僕のせいです」


箒「え」

雪村「僕のせいで、“初めての人”であるあなたを危険に巻き込むところでした」

雪村「もう、大会どころじゃありません……」

雪村「何者かは知りませんが、僕の存在を消そうとなりふりかまわずやぶれかぶれになってきた……」ブルブル・・・

箒「…………あ」

雪村「………………」

箒「………………」


――――――その時、私には返す言葉が見つからなかった。


雪村はどうしようもないぐらい不器用なやつで、こんなふうにわざわざ危険を冒してまで人から誤解されるような振る舞いしかできなかった。

いや、雪村が危険を冒してまで仕組まれた罠の存在を明らかにしてくれなければ、私は何も疑わずに罠に引っかかっていたかもしれない。


――――――他にやり方がなかった。


雪村の言葉を信じきれずに罠に嵌って雪村の重荷になる自分が想像できてしまい、ここまで自分自身を恨めしく思ったことはない。

結局、私も雪村と同じく正直に思ったとおりにしか振る舞えない不器用な人間であり、自分の気持ちに嘘を吐いて『気にするな』と言えなかったのだ。

なぜなら、雪村がこれほどまでに過激な行動に移ったのも、そうしなければ私が納得できず罠に嵌っている未来しか想像できなかったからなのだろう。

そして、私自身も想像して『そうだ』と思ってしまっていた。




335: 2014/09/23(火) 09:01:27.25 ID:3zEhG37Z0


――――――嫌な気分である。


助けてもらったけれど結果として後味の悪い展開にしかならず、『雪村はこうするほかなかった』と自分の不甲斐なさを私は責任転嫁しているのだ。

私がもっと聡明で『そうする必要はなかった』と言って『もっと私を信じろ』と笑って言い聞かせるだけのものを持っていなかったからだ。

結局のところ、雪村の善意を私は素直に受け取ることができなかったのだ。客観的に見れば雪村のコミュニケーション不足がそうさせたのだが、


――――――そうではないのだ。そうでは。


男なのにIS適性が見つかって重要人物保護プログラムで普通の人生を送ることができず、

――――――人には言えないような、――――――言ってもしょうがないような苦悩を背負ってきた少年に“普通”を求めてはいけないのだ。

“普通”でない以上は“普通”になれるように教え支えて見守ってやるべきなのに、人は情け容赦なく叩きのめしてダメにするのだ。

そもそも、どうして雪村は直前になって私が乗る『打鉄』に罠が仕掛けられていたことに気づいたのか、まるで謎であり、

おそらくは雪村が独自に発見した『PICカタパルト』で他の機体をフォーカス(=意識を向ける)してPICを共有できるように、

何気なくフォーカスしてみて雪村の勘の鋭さから直感的に通常の機体にはない何かを感じ取って異常に気づいたのではないかと思う。

しかし、不幸にも私が乗る間際であったために余裕がなく、結果として人に誤解されるようなものに終わってしまったのであろう。

そういう意味では、雪村はとことん運が無かった…………

いや、今にして思えば――――――、


――――――“朱華雪村”最大の不運というのが“ISを扱える男性”になってしまったそのことだろう。




336: 2014/09/23(火) 09:02:10.28 ID:JZmH5Y3h0

――――――某所


千冬「――――――そうか。報告ご苦労だった」

千冬「試合は延長させてもらうぞ。これは徹底的に調べあげる必要があるな」

精鋭部隊A「わかりました」

千冬「山田先生」

山田「はい」

千冬「私は来賓の警護で動けない――――――となれば、だ」

山田「はい」

千冬「どうする?」


山田「明日の予備日に試合を延期して、今日中に内部粛清を完了させるほかないと思います」


千冬「うん。私もそう思う。現場の最高責任者としてそう報告させてもらおうか」

山田「わかりました」ピピッ

千冬「やつら、もはや手段を選ばないつもりか……」


千鶴「お困りのようね?」


千冬「……千鶴か」

千冬「ああ、面倒なことになった」

千冬「何が狙いかはわからんが、このまま黙ってみているわけにもいかん」

千鶴「そうね。“アヤカ”を排除したいのは確実なんだけれど、その手段や狙いがわからない以上は後手に回るしかないわね」

千冬「その上で、今日駆けつけてきたIS業界のお偉方の面倒を見なくてはならん。それも3つのアリーナのな」

千鶴「そうそう。3年にはスカウト、2年は途中経過、1年は成長株の見定めでそれぞれ忙しいものね」

千冬「“ヴァルキリー”クラスの警備員が何人居ても足りんよ、こんなのは」

千鶴「だからこそ、生徒の中から有志を募って精鋭部隊を組織して警備しているわけよね」

千冬「ああ そうだとも。そのほうが実社会では役に立つだろうからな」

千冬「今日もよく働いてくれたよ」

千鶴「そうね。今日は忙しくなりそうだから、もっと頑張ってもらわないと」

千冬「ああ」




337: 2014/09/23(火) 09:02:52.71 ID:3zEhG37Z0

――――――第4アリーナ観客席


ザワ・・・ザワ・・・

セシリア「いったいどうしたというのでしょうか?」

谷本「始まらないわね……」

相川「ねー」

鷹月「……何かあったのかな?」
――――――

ラウラ「…………」

――――――
鈴「何やってんのよ、“アヤカ”のやつ! ラウラのやつが待ちぼうけ食らってるじゃない!」

鈴「あんたは私の代わりにあの生意気なドイツの代表候補生をギッタンギッタンにするのよ! このまま不戦敗になるわけ!?」フン!

簪「…………どうしたんだろう?」

実況「――――――大会運営本部、聞こえますか? 応答してください」ピピッ


ザワ・・・ザワ・・・


一方、開始時刻から10分経っても片方しか相手が出揃わず、第1試合が始まらないことで当然ながら静かに待っていた観衆たちがどよめいた。

普通ならばこの時点で、場に現れていない篠ノ之 箒・“アヤカ”ペアの不戦敗が宣告されるべきところなのだろうが、

学園側としてはそれは興行的にまずいと考えて不戦敗を認めず、それでいつまで経っても始まらないのかと邪推する者も出始めていた。

だが、それは来賓席に詰めているお偉いさんや各ピットの管制室で様子を見守っている教員たちも同様であった。

そして、何がどうなっているのかを訊くために大会運営本部に連絡を入れる者も現れていたが、どれも連絡がつかないのである。

他のアリーナでは、――――――2年生・3年生の試合はすでに始まっているらしく、それを知る者を起点に更に動揺が拡がっていた。


それから、本来の試合開始時刻から30分が過ぎ、同じ頃には準決勝2試合目も他では終わりを迎えようとしていた頃、ようやく事態は動き始めた。



338: 2014/09/23(火) 09:04:11.55 ID:JZmH5Y3h0


ラウラ「…………」ピィピィピィ

ラウラ「…………ようやくか」ピクッ

夜竹「やっとか……」


ヒュウウウウウウウウウウウウウウン!


箒「………………」シュタ

箒「よし。背中を貸すのはお前ぐらいなんだからな」

雪村「はい」

夜竹「おお! “アヤカ”くんが篠ノ之さんに背負われて出てきた!」

ラウラ「む………………他にも来るな」


ヒュウウウウウウウウウウウウウウン! ヒュウウウウウウウウウウウウウウン! ヒュウウウウウウウウウウウウウウン!


シャル「…………よいしょっと」シュタ

岸原「おっとっと……」ヨロッ

夜竹「あれ? デュノアくんにリコリン? それに――――――」

四十院「さて」シュタ

国津「よいしょっと」シュタ

ラウラ「決勝トーナメントのメンバーが勢揃いということか」

箒「どういうことだ? 私の機体の交換のために待っていたのではなかったのか?」

夜竹「え」

ラウラ「やるのならば、さっさとやればいいものを……(何だ? 何かがおかしい……!)」

雪村「………………」キョロキョロ

ラウラ「どうした、“アヤカ”? 何か感じるものがあったのか?」

ラウラ「それとも、このまま乱戦と洒落込むか? そのほうがおもしろくていいがな」ニヤリ

夜竹「え」ビクッ


――――――
1「さあ、楽しいショーの始まりよ」ピッ
――――――


・・・・・・・・・・・・ドッゴーン!


雪村「――――――!」ゾクッ

雪村「!」クルッ

一同「?」

シャル「どうしたの、“アヤカ”くん?」

箒「どうしたというのだ? まさかまた――――――」

雪村「あっちの方――――――、何かが起こった」

ラウラ「『あっち』――――――?」クルッ


――――――第3アリーナの方角



339: 2014/09/23(火) 09:05:24.14 ID:3zEhG37Z0

ラウラ「――――――大会運営本部、応答願う」ピッ

ラウラ「………………」

ラウラ「…………またか。何をやっているのだ? かれこれまた時間が過ぎ去っていくぞ」

夜竹「いつまでこうしていればいいのかしら……」

岸原「さ、さあ? とりあえず出るように言われただけで……」

シャル「うん。特に何かしろとは言われなくて――――――」

ラウラ「…………なんだと?」

箒「!」

箒「まさか――――――!」

雪村「…………しまった!」

夜竹「え」


――――――
1「さあ、始まりよ!」ピッ
――――――


夜竹「あ、あれ…………」ERROR

ラウラ「どうした?」

夜竹「な、何だかデータが書き換えられ――――――」ERROR ERROR 

夜竹「きゃあああああああああああああああああああああああああ!」ERROR ERROR ERROR ERROR

ラウラ「なっ!?」

岸原「きゃあああああああああああああああああああああああああ!!」ERROR ERROR ERROR

四十院「い、いったい何が!?」ERROR ERROR ERROR

国津「う、うぅううううううう…………!」ERROR ERROR ERROR

シャル「うわああああああああああああああああ!」ERROR  ERROR ERROR

雪村「シャルル!? 夜竹さん! みんな!」

箒「早く機体から降りるんだ!(たぶん無理だと思うがこれは言わなくてはならない――――――!)」

ラウラ「な、何が起きていると言うのだ……!?(機体がパイロットを呑み込んでいく――――――!?)」

夜竹「た、助けて…………」ERROR ERROR ERROR

箒「く、くっそおおおおおおおおおお!(私だけが助けられたというのかああああああああ!)」

雪村「そうか。そのための罠だったのか……」

ラウラ「本部! 本部! なぜ応答しない!」

ラウラ「これは――――――!」ピィピィピィ


千冬?「――――――」

千冬?「――――――」

千冬?「――――――」

千冬?「――――――」

千冬?「――――――」



340: 2014/09/23(火) 09:06:21.71 ID:JZmH5Y3h0

ラウラ「な、なにぃ!?」

箒「な、何だ、これは……? みんな同じに姿に――――――」

雪村「………………」アセタラー

ラウラ「これは『暮桜』!? 織斑教官が5人も!?」

箒「あれ全部が千冬さん――――――いや、コピーだって言うのか!?」

ラウラ「……これは『ヴァルキリートレースシステム』か!」

箒「――――――『ヴァルキリートレースシステム』?」

ラウラ「ハッ」

ラウラ「わ、私は何を……(何だ? 私はこれが何なのかを理解している? どういうことだ?)」

雪村「…………巻き込んだ、また」


――――――
1「そして、追加よ」ニヤリ
――――――


ヒュウウウウウウウウウウウウウウン!

箒「あ、精鋭部隊……」

精鋭部隊A「な、何だこれは!?」

箒「こっちが聞きたいぐらいですよ!」

精鋭部隊C「機体を届けてやってようやく試合が始まると思いきや――――――」

雪村「あ…………!」ビクッ

ラウラ「なぜ本部は応答しない! それに、織斑教官はどちらに!」

精鋭部隊B「本部が応答しない理由はわからないわ!」

精鋭部隊B「けど第3アリーナでテロが起きて、織斑先生が向かわれたのよ。外は大騒ぎよ」

ラウラ「なんだと……」

ラウラ「ハッ」チラッ


雪村「ダメだ! あなたたちも早く降りてください!」


精鋭部隊A「え」

精鋭部隊A「ハッ」ERROR ERROR ERROR ERROR

精鋭部隊A「きゃあああああああああああああああああああああああああ!」ERROR ERROR ERROR

精鋭部隊B「な、何よ、これぇえええ!」ERROR ERROR ERROR

精鋭部隊C「ふおおおおおおおおおおおおおおお!」ERROR ERROR ERROR

箒「そ、そんな…………(まさか、この大会に使われる訓練機全てに――――――!)」ゾクッ


千冬?「――――――」

千冬?「――――――」

千冬?「――――――」



341: 2014/09/23(火) 09:07:25.10 ID:JZmH5Y3h0

ラウラ「これで、8体か……(マズイな。このまま放置しておく訳にはいかない!)」

ラウラ「(VTシステムの危険性は、コピー対象の動きを完璧にトレースすることによって、搭乗者が生体CPU――――――部品として扱われることだ)」

ラウラ「(そして、搭乗者に「最適化」した安全装置も合わなくなり、しかも制御不能となって暴走状態に陥ってしまうのだ)」

ラウラ「ハッ」
         ・・・・・・・・・・・・
ラウラ「(だから、なぜ私はそれを知っている? 確か、アラスカ条約でも極秘事項に含まれるはずのそれを――――――)」


ガコーーーーーーーン!


箒「見ろ! 観客席や来賓席に障壁が――――――!」

雪村「…………搬入路も塞がれた!」

ラウラ「まさか、この状況は――――――!」アセタラー

ラウラ「一旦 距離をとれ!」

――――――
1「そう。これで心置きなく皆頃しにできる」

1「さて、このVTシステム機の特性はよっく把握しているわ」

1「だから、私が囮になって守ってもらわないとね?」コツコツ・・・・・・
――――――


状況は混沌へと突き進んでいった。

今日まで順調に進んでいたIS学園名物:学年別トーナメントはタッグマッチに内容を変えて5日目を迎え、いよいよ準決勝が始まるところまで行こうとしていた。

しかし、こと1年の部が開かれている第4アリーナでは30分経つまで何の予告も連絡もなく、みなが待ちぼうけを食らう結果になった。

そして、ようやく試合に出場する選手が出揃ったと思ったら、今度は決勝トーナメントに出る選手が勢揃いすることになり、

競技場の中の選手も、来賓席から見下ろしてる来賓も、ずっと見守り続けてきた観客も大いに混乱することになった。

だが、何か出し物でも始まるのかと周囲がようやく何でもいいから始まることを期待した矢先――――――、

アリーナに現れた8機のISのうち5機が激しいスパークと共にドロドロに溶けていき、別の何かへとメタモルフォーゼしていくのである!

それにはこのアリーナに居た誰もが驚くものの、30分間の静寂を打ち破る何かを期待してただただ見ているだけだった。

――――――否、もちろん異常が通報され、そこに精鋭部隊も駆けつけるのだが、その精鋭部隊3人全員が同じようにメタモルフォーゼしてしまうのである。

もはや、事態は収拾のつかないところまで行ってしまった。

極めつけは、いつの頃からか応答しなくなった大会運営本部であり、アリーナの遮断シールドレベルが4に設定され、

かつて4月のクラス対抗戦で起きたような無慈悲なセキュリティの牢獄に再び誰もが閉じ込められることになったのである。


そして、アリーナの中心に残されたのは3人と8体の“ブリュンヒルデ”織斑千冬の似姿――――――。





342: 2014/09/23(火) 09:08:41.97 ID:JZmH5Y3h0


千冬?「――――――」

千冬?「――――――」

千冬?「――――――」

千冬?「――――――」

千冬?「――――――」

千冬?「――――――」

千冬?「――――――」

千冬?「――――――」


ラウラ「な、何もしてこないようだが、このまま放置しておくと人命に関わる……!」アセタラー

箒「まさか、学園の機体にこんなものが仕組まれていただなんて……(私は本当に雪村に守られていたのだな…………)」

ラウラ「そういう貴様はどうしてVTシステムに取り込まれなかったのだ?」

箒「それは……、雪村がそれを看破して修理が終えたばかりのこの機体に交換するようにしてくれたおかげなんだ」

ラウラ「なに?」


雪村「また僕のせいで…………」orz


ラウラ「……なるほど。もはや“アヤカ”が何をしても驚かない自分が恐ろしいよ」

箒「私はそうはいかなかったがな……(すまない。本当に雪村のやることには間違いがなかったのに…………)」

ラウラ「ん? ならなぜ、専用機のシャルルまで――――――」

箒「あ、確かに――――――(いや、なんとなくだけど『シャルルの機体に仕組まれていてもおかしくない』と思ってしまった……)」

ラウラ「――――――そうか。この襲撃を企てた連中の仲間だったというわけか」ギリッ

箒「あ……(ああ。きっとそうなのだろう。けど、そんなのはシャルルは望んでいなかったはずだ!)」


箒「みんな! 聞こえているのなら返事をしてくれ! みんな!」


千冬?「――――――」

箒「くっ」

ラウラ「無駄だ。VTシステムが発動したら最後――――――人間はISを動かすための部品となる」

箒「な、なんだと!?」

ラウラ「あれもISの1形態に過ぎない」

ラウラ「ならば、シールドエネルギーを空にすれば解除されるはずだが…………」

箒「し、しかし! あれ全部が千冬さんのコピーということは――――――!」

ラウラ「そうだ。ヴァルキリートレースシステムは『モンド・グロッソ』の部門優勝者である“ヴァルキリー”の動きを完全にコピーしている」

ラウラ「よって、目の前に8体もいるあれはまぎれもなく第1回『モンド・グロッソ』で総合優勝を果たされた織斑教官そのものだ」

箒「…………!」


343: 2014/09/23(火) 09:09:50.11 ID:3zEhG37Z0

ラウラ「幸いにもこちらを攻撃してこないのは、おそらくは能力の再現だけで具体的にどうこうする命令を受けないと動けないのだろう」

箒「すると、ただの木偶人形ということなのか?」

ラウラ「いや、さすがに自動防衛システムぐらいはあるはずだ」

ラウラ「攻撃したが最後――――――“ブリュンヒルデ”の疾風怒濤の剛剣が一斉に襲いかかってくるはずだ」

ラウラ「この『シュヴァルツェア・レーゲン』の第3世代兵器『停止結界』を持ってすれば、“ブリュンヒルデ”相手でもなんとかなると信じたい……」

ラウラ「しかし、問題の相手が8体もいたら、『停止結界』や機体性能でどうこうできる問題ではない!」アセダラダラ

箒「た、確かに……」アセタラー

ラウラ「ここは撤退だ! 戦力を整えて撤退する他あるまい! 人命が関わっているとはいえ、この状況でできることなどない……」

箒「くっ……」


1「あら? そうはさせないわよ」


ヒュウウウウウウウウウウウウウウン!

雪村「………………!」

ラウラ「――――――IS反応! しかも『未確認』だと!」ピィピィピィ

箒「まさか――――――!」ジロッ


1「そう、その『まさか』よ」


箒「貴様は!」

ラウラ「…………『ラファール』系列の機体か」

1「名乗る名はないわ」

1「だってあなたたち、ここで氏ぬんだもん」ジャキ

箒「なにぃ!」

ラウラ「1つ訊かせてもらおう」

1「断る。あんたには貴重な機体と同志をやられた借りがあるんでね」

ラウラ「…………やはりか」

箒「ラウラ?」

ラウラ「箒、“アヤカ”。やつの相手は私が引き受ける。お前たちは撤退しろ」

箒「な、何を言うんだ!」

雪村「………………」スクッ

ラウラ「やつの狙いは私にもあるようだ。それならば――――――」

ラウラ「!」

箒「――――――って、雪村!?」


雪村「僕が氏ねばみんなを助けてくれるのか?」


344: 2014/09/23(火) 09:10:58.43 ID:JZmH5Y3h0

箒「何を言っているんだ! ラウラと言い、お前も!」

ラウラ「馬鹿なことを言うな、“アヤカ”! 私はお前の面倒を見ることを織斑教官に――――――」

1「はあ? 今更 何を言っているんだい?」

1「ここまでてこずらせてくれた礼に、みんなが敬愛してやまない“ブリュンヒルデ”の刃にかかって氏ぬんだよ、みんなぁ!」

箒「げ、外道が……」

ラウラ「…………ターゲット・ロック(――――――先制攻撃を!)」ピピピピッ!

1「おっと。下手なことをするなよ、“ドイツの冷水”!」

1「私を怒らせたら、あんたが大好きで大好きでしかたがない織斑教官からたっぷりおしおきを受けることになるんだからよぉ?」

ラウラ「くっ……」

箒「で、何がしたい、結局!」

1「だから! 私をここまでコケにしてくれた連中に復讐して、IS学園の存在もろとも抹頃するってことだよ!」


雪村「言いたいことはそれだけか、臆病者め」ピカーン!


1「ああん?」ピクッ

箒「ゆ、雪村……?(さっきから普段の雪村から想像がつかないような強烈な言葉が次から次へと――――――)」

ラウラ「…………!」


雪村「殺れよ。殺せよ。自分一人では何もできないような口だけのやつに僕は殺せないぞ」(IS展開)


雪村「頃してくれるんだろう? だったら、早くしろよ、ノロマが」フフッ

1「……なんだと、こぞう」イラッ

1「だったら、望み通りに頃してやるよおおお!」

1「殺っちまいな!」

千冬?「――――――!」

箒「8体全部、一斉にこっちを向いたぞ!」

ラウラ「どちらにせよ、こうなるか――――――(織斑教官! ハジメ! たとえこの命がここで尽きようとも――――――!)」バッ

雪村「お前たち、…………『日は落ち、墓へ墜ちる』ぞ?」

箒「!」

ラウラ「?」


345: 2014/09/23(火) 09:12:13.34 ID:JZmH5Y3h0

雪村「ボーデヴィッヒ教官。教官はあの『ラファール』を追い詰めることだけに集中してください」

ラウラ「……何をするつもりだ?」

雪村「そして――――――」

箒「わかった。例の作戦でいくんだな? お前を信じてるぞ」


――――――お前の『落日墜墓』で決めろ!


雪村「はい。援護をお願いします」

箒「まかせろ! お前の背中は私が守る!」ジャキ

雪村「それじゃ行きます、――――――先制攻撃!」ザシュ(太刀を大地に突き刺す!)

ラウラ「!」

雪村「はああああああ…………」ゴゴゴゴゴ

箒「す、凄い気迫だ……!(そういえば、相手に当たった時の効果は聞いたがそれがどういう手段なのかまでは――――――)」アセタラー

1「なに!?(何だ、あの構えは!? まだ私の知らない兵器が内蔵されているとでも言うのか!)」アセタラー

1「何だかわからないが喰らえ! 殺れ、操り人形たち!」

千冬?「――――――!」ヒュウウウウウウウウウウウウウウン!

ラウラ「き、来たぞ……!(――――――速い! そして、物々しく迫る織斑教官のコピーたち!)」アセダラダラ

箒「雪村!(雪村を信じるんだ……! 今度こそ――――――)」ドクンドクン

雪村「はあああああああああああ――――――、」ゴゴゴゴゴ



雪村「デコピン」ピッピッ(VTシステム機に向けてデコピンをする! もちろん届かない!)



箒「は」

ラウラ「“アヤカ”?」

1「お、驚かせやがって! ここでコケオドシかい……!(ふざけやがって! そのままおっ氏んじまいな!)」ドクンドクン

千冬?「――――――!」ヒュウウウウウウウウウウウウウウン!




346: 2014/09/23(火) 09:13:05.35 ID:3zEhG37Z0

3対9という素人が見ても圧倒的に不利な状況――――――、

しかも、代表候補生クラス3人と代表操縦者クラス8人(とテ口リスト1人)という圧倒的な実力差があり、

まさに、“アヤカ”たちは絶体絶命の危機を迎えていた。

だが、“アヤカ”はいつになく大胆不敵な態度を以ってしてこれを単身で迎え撃つという常人には理解できない賭けに出た。

格闘戦の力量は確かに代表候補生を超えて代表操縦者に届くところがあるのかもしれない。

しかし、今回の相手はISの世界大会『モンド・グロッソ』の格闘部門と総合部門の覇者となった世界が認める“ブリュンヒルデ”が相手なのである。

何から何までその力量差は圧倒的なものであった。しかも、それが8体も襲いかかってくるという悪夢のような状況である。


だが、“アヤカ”は前回のセシリア戦同様に勝利を確信してさえいた。――――――この圧倒的に不利な戦力差でありながら!


太刀を大地に突き刺し、“かめはめ波”でも“北斗神拳究極奥義”でも放つかのように大仰に構えると同時に肌に刺さるような気を発散する!

ラウラは目の前に迫った危機的状況を打開する術が思いつかず、“アヤカ”の自信満々な様子を見てやむなく頼ってみたのだが、

やはり、“アヤカ”が何をするつもりなのか何も聞かされていないので、迫る8体の鬼神と“アヤカ”の気迫に押されて汗と震えが止まらなかった。

だが、ラウラとは違って篠ノ之 箒は“アヤカ”のことを今度こそ信じ抜く決意を固めて、すぐにでも逃げ出したい恐怖心を必氏に抑えて毅然としていた。

そして、全てを“アヤカ”に委ねて結果を待つことだけを考えることにしたのであった。

周囲の誰もがこの状況を覆すだけのとんでもない何かの存在を想像しながら、固唾を呑んで見守ってしまっていたが、しかし――――――、


――――――放たれたのはデコピンだった。




347: 2014/09/23(火) 09:13:53.03 ID:3zEhG37Z0


ラウラ「くっ……(――――――『停止結界』で少しでも多くのVTシステム機を捉える!)」ピィピィピィ

箒「………………雪村」チラッ

雪村「勝った」

箒「!」

ラウラ「!?」


千冬?「――――――!」ズコー


一同「?!」

雪村「………………フフッ」

1「なんだと!?」ビクッ

ラウラ「…………な、何が起きたというのだ!?」アセダラダラ

ラウラ「我々の目前に迫ってきた8体もの織斑教官のコピーが一斉にコケた?!(――――――『ISがコケた』だと!?)」

1「ど、どういうことなんだい!?(いくらコピーだからって素人じゃあるまいし、どうしてPICで浮いているISが急にコケるなんてことに…………)」

箒「こ、これが雪村の『落日墜墓』…………!」

雪村「さあ、行くぞ!」ジャキ

箒「あ」

ラウラ「ハッ」

雪村「おおおおおおおおおおおおお!」ダダダダダダ!

箒「わ、私も続く!」ヒュウウウウウウウン!

ラウラ「だが、これで活路が開けた!(――――――ここは“アヤカ”の言うとおりに、主犯格を墜とす!)」LOCK ON

1「ちぃ……!(嘘だろう? こんな馬鹿なことが…………何の魔法を使ったっていうんだい!)」ピィピィピィ LOCKED!





348: 2014/09/23(火) 09:15:24.22 ID:3zEhG37Z0


雪村「はあああああああああああああ!」ブン!

箒「はああああああああああ!」ブン!

ズバーン! ズバーン! ズバーン! ズバーン!

千冬?「――――――!」ビターンビターン!

1「ば、馬鹿な! どうして起き上がれない! さっさと起きろよ!(まるで陸に上げられた魚のようにのたうち回っているぞ、おい?!)」

ラウラ「しぶとい!」ガコン、バーン!

1「ちぃ! ふざけんじゃないよ、この野郎! 今 氏ね! すぐ氏ね!」ヒュン!

1「氏ねよやああああああああ!」バン! バン!

雪村「…………!(――――――直撃コース!)」ピィピィピィ


ラウラ「やらせない! この『シュヴァルツェア・レーゲン』がいる限り!(――――――『停止結界』!)」ヒュウウウウウウウウウウウウウウン!


ラウラ「フッ」

1「くっそ、『AIC』ぃいいいい!(実弾兵器は完全に防がれてしまう! これでどうやって勝てって言うんだい!)」プルプル

雪村「助かりました……」

ラウラ「お前の作戦通りだ。あいつは私が抑える。お前たちは早くVTシステム機のエネルギーを空にしてくれ!」

箒「わかっている!」ブン! ズバーン!

千冬?「――――――!」フワァ

箒「あ」

雪村「ふん!」ブン!

千冬?「――――――!?」ビターン!

箒「この! この!」ブン! ブン!

千冬?「――――――!」ビクンビクン!

ラウラ「まるで雉撃ちだな……(敵とはいえ、織斑教官の似姿がこうもあられもなくのたうち回って一方的に叩かれている様は――――――)」


現在、集団暴行が行われていた――――――集団が暴行されていた。

8体ものVTシステム機の“ブリュンヒルデ”のコピーたちは地上の蚤のようにのたうち回り、そこを容赦なく“アヤカ”と箒が叩きのめすのである。

それを妨害しようとするテ口リストの『ラファール(亜種)』の攻撃は全て実弾攻撃なので、『シュヴァルツェア・レーゲン』の『AIC』で完全防御可能!

その隙に、再び飛び立とうとする蚤がいれば、そこを“アヤカ”が素早く叩き落として再び飛び立つ翼をもいでやるのである。

その光景はもはや地獄に行っても見ることができないような面白ショーと化していた。

第1回『モンド・グロッソ』総合優勝時の織斑千冬のデータをそっくり使ったVTシステム機は複製された通りの思考しかできないために、
   
まさかの『PICが機能しなくなる』という異常事態に対処できずに、ただひたすらにPICによる緊急離脱を試みようとして上半身が上向くのを繰り返すのだ。

その様は、まごうことなき“まな板の上の鯉”とも言えるものであり、飛べずにビターンビターンして足掻いている様が滑稽であった。

こいつらには人間が腹這いの状態から起き上がるように自分の身体を使って立ち上がろうという発想がないのだ。

そして、ズバーンという表現よりもペチペチと包丁でまな板の上の魚を叩いている感じでもあった。あるいはもぐらたたきのようでも――――――。




349: 2014/09/23(火) 09:16:06.54 ID:JZmH5Y3h0

これはいったいどういうことなのだろう? “アヤカ”と『知覧』の単一仕様能力『落日墜墓』とはいったい――――――?

さて、その正体を探る上で重要な場面がすでに載せられているので、そこを振り返ってみるとその正体が掴めるはずである。

――――――
3年生A「気をつけろ! 何かする気だ!」

3年生C「はあ? 確かに私の方に向かってはいるけど、地上10mまで上がれば――――――」(地上10m)

3年生C「は」

箒「――――――雪村?」


雪村「やあ」(渾身の『打鉄』部分展開の右ストレート!)


3年生C「え」

箒「ぬぅ(――――――危なっ!)」クイッ

3年生C「ぬぁっ?!」ボガーン!

箒 「……雪村!」ギュッ
雪村「………………」ギュッ

3年生C「ふざけやがって――――――あ、あら? 落ちる? 落ちてる? この私がああああああああああああ?!」ヒューーーーーーーーーーーーーーーン!

雪村「………………」ヒューーーーーーーーーーーーーーーン!
箒 「雪村、私たちも落ちてる――――――!」
――――――
雪村「それじゃ行くよ、――――――先制攻撃!」ザシュ(太刀を大地に突き刺す!)

ラウラ「!」

雪村「はああああああ…………」ゴゴゴゴゴ

箒「す、凄い気迫だ……!」アセタラー

1「なに!?(何だ、あの構えは!? まさかまだ私の知らない兵器が内蔵されているとでも言うのか!)」アセタラー

1「何だかわからないが喰らえ! 殺れ、操り人形たち!」

千冬?「――――――!」ヒュウウウウウウウウウウウウウウン!

ラウラ「き、来たぞ……!(――――――速い! そして、物々しく迫る織斑教官のコピーたち!)」アセダラダラ

箒「雪村!(雪村を信じるんだ……! 今度こそ――――――)」ドクンドクン

雪村「はあああああああああああ――――――、」ゴゴゴゴゴ



雪村「デコピン」ピッピッ(VTシステム機に向けてデコピンをする! もちろん届かない!)



箒「は」

ラウラ「“アヤカ”?」

1「お、驚かせやがって! ここでコケオドシかい……!(ふざけやがって! そのままおっ氏んじまいな!)」ドクンドクン

千冬?「――――――!」ヒュウウウウウウウウウウウウウウン!



千冬?「――――――!」ズコー


一同「?!」

雪村「………………フフッ」
――――――


350: 2014/09/23(火) 09:17:21.60 ID:JZmH5Y3h0

ここまで読んでくださった熱心な読者ならば、いかに単一仕様能力『落日墜墓』がヤバイ能力なのかが理解できたであろう。

これこそが“アヤカ”が『使えば『シュヴァルツェア・レーゲン』にも勝てる』と大言できた理由であり、同時にこれまで封印してきた理由でもあった。


――――――『AIC/停止結界』はPICを発展させた武器である。


後は言わなくてもわかるはずである。また、衝撃砲『龍咆』もPICを利用した空間圧兵器なので――――――。

まさしく、朱華雪村“アヤカ”と“呪いの13号機”『知覧』の二人が歩み寄って生み出した究極の対IS用単一仕様能力の1つであり、

織斑一夏と『白式』の単一仕様能力『零落白夜』がバリアー無効化攻撃ならば、“アヤカ”と『知覧』の単一仕様能力『落日墜墓』は――――――!


『日は落ち、墓へ墜ちる』のはまさしくIS〈インフィニット・ストラトス〉のことだったのである。


そして、“アヤカ”の専用機として覚醒した黄金色の『打鉄/知覧』は、実は自力で「一般機化」のリミッターを解除したことによって、

外見こそは銀灰色から黄金色に変わっただけだが、内部では形態移行を果たしたことになっているらしく、それ故に単一仕様能力が発現したのである。


初期形態(未登場)→第1形態(訓練機)→第2形態(黄金色)


だが、『知覧』には秘密がまだまだあるらしく、現在も“アヤカ”の行動に関して不明なことがある…………

しかし、“アヤカ”と『知覧』の関係をこれまでの“アヤカ”自身の言動や奇行から推測すれば、自ずとわかるのではないかと思われる。

それでも忘れてはいけないのが、それ以外は普通の『打鉄』なので、1対1で全力で世界最新鋭の第3世代機と戦えばまず負けることであろう。

格闘戦だけならば代表候補生に匹敵するレベルなので『打鉄』の第2世代最高の防御力と安定性で粘れるだろうが、

射撃戦に移ってしまったら機動力が初心者の中でも下の下のレベルなので逃げることが叶わず、普通に蜂の巣にされてしまうのだ。

つまり、本質的に第3世代以降のISバトルにはとことん向かない機体であり、活躍するにはそれ相応のパートナーを宛てがう必要があるのだった。


だが、十分な援護が得られるのであれば、その時 ISキラーとしての本領を発揮する比類なき反逆の刃なのである!



351: 2014/09/23(火) 09:18:34.91 ID:3zEhG37Z0

1「こんな、馬鹿な…………完璧だったはず。最強の戦力をこれほどにまで投じたというのに」BIND!

1「どうして負けてしまったのだあああああああ!」BIND!

ラウラ「黙れ」ボゴッ(――――――腹パン!)

1「ぐふぅ……!」BIND!

1「夢よ。そう、これはただの悪い夢――――――」BIND!

1「」ガクッ DOWN!

ラウラ「……貴様らの敗因はたった1つだ」


――――――“アヤカ”を本気にさせたことだ。


箒「はあ!」ブン!

千冬?「――――――!!!!」ガクッ

箒「機能を停止した! もう1回!」ブン!

スパーン!

箒「…………こうしないといけないのはわかっているが、あまり気分がいいものじゃないな」グググ・・・(薄くフルスキンを裂いて、腹をこじ開ける!)

箒「これは――――――」

夜竹「」

箒「夜竹さん! しっかりしろ! 今、出してやるからな!」

夜竹「うぅ………………」

ペチペチ! ガクッ

千冬?「」

雪村「これで終わり!」

箒「雪村! まずは夜竹さんを出すのを手伝ってくれ! なかなか出すのが難しいぞ、これぇ……」

雪村「わかりました!」


1「」

ラウラ「さて、私も救助活動に移るか――――――」ピィピィピィ

ラウラ「!」

ラウラ「“アヤカ”、後ろだ――――――!」


352: 2014/09/23(火) 09:19:40.12 ID:JZmH5Y3h0

雪村「!」ピィピィピィ

千冬?「――――――!」ヒュウウウウウウウウウウウウウウン!

雪村「あ……(これは、――――――間に合わない!?)」ビクッ

ズバーン!

雪村「ぐわああ!?(マズイ! ――――――エネルギーが! こんなにも早く!?)」

千冬?「――――――!」ブンブン!

雪村「ぐあっ!?」ズバーン!

千冬?「――――――!」ドン!

雪村「うわあああああああああああ!」ゴロンゴロン・・・(強制解除)


箒「雪村!?」

箒「馬鹿な! 全て沈黙したはず――――――」

ラウラ「もう1機――――――、もう1機、このアリーナに居たのか!」

箒「あ」ゾクッ


教員『や、やめて! ほ、ほんとに!』


箒「あれは、私が乗るはずだった機体なのか…………」アセダラダラ

ラウラ「“アヤカ”! 早く逃げるんだ!(どういうことだ!? あれは特別製なのか!? 真っ先に“アヤカ”を狙って――――――!)」

箒「雪村ああああああああ!」


雪村「ぐぅうううう…………」ズキズキ

雪村「!」ゾクッ

千冬?「――――――!」ブン!

雪村「うわっ!」ヒョイ

千冬?「――――――!」ブンブン!

雪村「うわああああああ!」タッタッタッタッタ!

千冬?「――――――!」ヒュウウウウウウウウウウウウウウン!



353: 2014/09/23(火) 09:21:24.84 ID:JZmH5Y3h0

箒「雪村!?」

箒「馬鹿な! 全て沈黙したはず――――――」

ラウラ「もう1機――――――、もう1機、このアリーナに居たのか!」

箒「あ」ゾクッ


教員『や、やめて! ほ、ほんとに!』


箒「あれは、私が乗るはずだった機体なのか…………」アセダラダラ

ラウラ「“アヤカ”! 早く逃げるんだ!(どういうことだ!? あれは特別製なのか!? 真っ先に“アヤカ”を狙って――――――!)」

箒「雪村ああああああああ!」


雪村「ぐぅうううう…………」ズキズキ

雪村「!」ゾクッ

千冬?「――――――!」ブン!

雪村「うわっ!」ヒョイ

千冬?「――――――!」ブンブン!

雪村「うわああああああ!」タッタッタッタッタ!

千冬?「――――――!」ヒュウウウウウウウウウウウウウウン!


戦いは実質的に“アヤカ”と『知覧』の単一仕様能力『落日墜墓』によって制されたと言ってもいい。

“ブリュンヒルデ”を8体生み出して襲いかかったテ口リストではあったものの、第3世代兵器を超越する単一仕様能力の前に敗北したのである。

そして、8体の“ブリュンヒルデ”と1人のテ口リストを無力化して、ようやくVTシステムに取り込まれた1組や精鋭部隊のみんなの救助に入った時、


――――――生き残っていた悪魔が一直線に“アヤカ”を背後から襲ってきたのである!


さすがは“ブリュンヒルデ”であり、一瞬の隙で剣豪である“アヤカ”を振り向かせることなく、一方的に叩き斬ってしまったのである。

ISの剛体化に守られて細切れにされることはなかったものの、世界最強の斬撃を立て続けに食らってしまい、一瞬でISを強制解除させられてしまった。

よく背後から薙ぎ払われて大地に伏してしまう“アヤカ”であったが、今度は勢いよくスッテンコ口リンと転がっていった。

そして、このVTシステム機は他とは何かが違うらしく、自動防衛システムより優先される何らかの命令に従って無防備の“アヤカ”に執拗に迫った!

容赦なく頭を潰そうと振り下ろされた剛剣を間一髪で躱して、堪らず“アヤカ”は一目散に駈け出していった。

その後をどこまでもどこまでも最後の“ブリュンヒルデ”は追いかけまわして、IS用の太刀を肉切り包丁のようにして“アヤカ”に襲いかかるのだ!


354: 2014/09/23(火) 09:22:00.68 ID:3zEhG37Z0


――――――“アヤカの教官役”であるラウラはすぐに行動を開始していた。


しかし、『シュヴァルツェア・レーゲン』は空中戦は苦手であり、機動力も『打鉄』よりは高いが突出しているとは言えないものであった。

日本最初の世代機である『G1』こと『暮桜』の機動力は旧式ながら今も圧倒的であり、しかもレールカノンで狙い撃っても簡単に避けられるのである。

生身の“アヤカ”を救うべく、あの忌まわしい複製品を始末するために必氏にヘイトを集めて最後のVTシステム機の注意を引こうとするが、

やはり何か特殊な措置が施されているらしく、偽の“ブリュンヒルデ”は容赦なく“アヤカ”を肉塊にするべく剣を振り続けていた。


――――――“アヤカの母親役”である箒はラウラに制されて人命救助に専念する他なかった。


悔しいことだが、『打鉄』には遠距離攻撃できる武装もないために援護ができず、機動力も劣るので助けに行くことすらできなかった。

今できることといえば、“アヤカ”と一緒に沈黙させてきた忌まわしい“ブリュンヒルデ”の皮を被った化け物の体内からみんなを救い出すこと――――――!

本当は一目散に“アヤカ”をこの手で守りたいという欲求に駆られながらも、必氏に抑えて帝王切開して巻き込まれた人たちを救い出すのであった。

脇目で“アヤカ”の安否をつい確認して動揺してしまうのだが、ある時から一心不乱に太刀を振り下ろし、腹を引き裂いて中身を取り出す作業に没頭し始めた。



355: 2014/09/23(火) 09:22:51.28 ID:3zEhG37Z0


――――――壁際!


雪村「うっ……(――――――搬入路の隔壁か)」

千冬?「――――――!」ジャキ

雪村「………………先生が乗ってるわけですか。そりゃあしつこいわけだ」

雪村「ここまでかな」フフッ


ラウラ「諦めるな、“アヤカ”ああああああああああああ!」ヒュウウウウウウウウウウウウウウン!


千冬?「――――――!」

雪村「(よく頑張れたんじゃないかな? こんな僕でも人は十分に救えたんだ――――――マッチポンプだけど)」

雪村「フッ」

千冬?「――――――!」ブン!


箒「くっ…………」ズリズリ・・・

精鋭部隊A「」

箒「…………雪村? ――――――雪村!?」


そして、“アヤカ”のささやかな氏への抵抗として始まった競争もすぐに終わりを迎えた。

生身の人間とISとでは何もかもが違い過ぎて、逃げようにも相当入り組んだ場所に誘い込むことがなければ、振り切ることは不可能であった。

ましてやここはだだっ広いアリーナであり、遮蔽物など何もなく、まさしく狩場として打ってつけの場所でもあった。

唯一の可能性として、地上の搬入路に逃げ込めればさすがに大振りの得物は触れないと賭けに出たのだが、“アヤカ”の当ては外れたようだった。

“アヤカ”は壁際に追い詰められた鼠のようになり、目の前で圧倒的威圧感を放つ狩人にこのまま狩られようとしていた。


ああ……、これまで“アヤカ”を勝利に導き続けてくれた壁際で最期を迎えようとしていた。


それは、壁に囲まれた中でしか生きられない翼を持たない地上の生物としての宿命なのやもしれない。

人はそれ故に壁の遥か上を自在に飛んでいける鳥に憧れ、空への憧れを抱き続けてきた。

そして、その願いは空戦用パワードスーツ:IS〈インフィニット・ストラトス〉として形となり、

今まさに翼を得た新たな人類は捕食者となって、翼を持たない古き人間を駆逐しようとしていた。


――――――その時、不思議なことが起こった。


ガキーン!


箒「何が起きた?! 無事なんだろうな、雪村!?」


356: 2014/09/23(火) 09:23:38.46 ID:JZmH5Y3h0


――――――脇を開けろ!


雪村「!?」ドクンドクン

千冬?「――――――!?」

ガキーン!

雪村「あ……」


――――――伏せろ!


雪村「!」

ザシュザシュ!

雪村「うわっとと!(――――――何だ!? 後ろの隔壁から光の何かが!?)」

千冬?「――――――!」ビクッ


その時、雪村に声が響き渡った。

その直後に、なんと背後の隔壁を貫いた聖なる光の剣が振り下ろされた人頃しの剣を受け止めていたのである。

それは雪村の脇をかすめて目の前で剣を振り下ろそうとしていた“ブリュンヒルデ”の剛剣を受け止めており、

雪村としては目の前に圧倒的な威圧感を放って迫る剛剣と息つく間もなく背後から脇を通って突き出された光の剣が急に現れたのだから、

その2つが激突しあって一命を取り留めたことよりも、前後より刃物で迫られた恐怖のほうが遥かに強く、生きた心地がしなかった。

そして、“ブリュンヒルデ”が怯んでいる隙に光の剣は隔壁の中へと引っ込んで一瞬のうちに再び声が響き、咄嗟に雪村は言われるがままに屈んでいた。

すると、隔壁をガンガン突き飛ばす勢いで光の剣が何度も前後したのである。伏せていなかったら容赦なく雪村の胴体にいくつもの穴が開いていた。

そして、その地獄突きに圧されて“ブリュンヒルデ”は攻めあぐね、ついには人間の頭ぐらいの隔壁の破片が飛び散った――――――。


357: 2014/09/23(火) 09:24:39.19 ID:3zEhG37Z0

ラウラ「“アヤカ”! ああ よくぞ、無事で――――――」

ラウラ「む、何だ? あの光は――――――」

バン! バン!

ラウラ「――――――後方より銃声!?」

ラウラ「!」


千冬?「――――――!」ドゴン! ドゴン!

雪村「!」

雪村「え、援護射撃? ――――――誰?(――――――ピットの方からの狙撃だ!)」

――――――

千鶴「間に合ってよかったわ」ジャキ(IS用対IS用ライフルを匍匐射撃!)

千鶴「まさか、VTシステムがこんなにも用意されていたなんてね…………驚きを通り越して呆れたわ」

千鶴「さ、後は“アヤカ”くん次第というわけね」ヒュー

――――――

――――――――――――――――――
――――――受け取れ、“アヤカ”!
――――――――――――――――――

コトン!

雪村「!」(その声が聞こえたと同時に、隔壁から薄青色の淡い光を放つ剣が落とされた)

雪村「その声――――――!(――――――光の剣! 夢の中で何度も見た無双の剣だ!)」

千冬?「――――――!」ブン!

雪村「――――――っと!」ドン!(咄嗟に飛び込んで攻撃を躱すと同時に光の剣を手に取り、そのままの勢いで力強く立ち上がる!)

雪村「これでぇええ!」ジャキ

千冬?「――――――!」ビクッ

雪村「終わりだああああああああああ!」ブン!


ズバーン!


ラウラ「!」

箒「!」

――――――

千鶴「…………!」

――――――

――――――――――――――――――――――――
――――――フッ、『壁際』の“アヤカ”が負けるかよ。
――――――――――――――――――――――――



358: 2014/09/23(火) 09:25:15.26 ID:JZmH5Y3h0

そう、勝負は決した。

最初に雪村が搬入路の閉ざされた隔壁にまで追い込まれていたところを、突如としてその隔壁を貫いた光の剣によって一難を逃れ、

更には弾幕射撃のように隔壁を穴だらけにした地獄突きによって容易に攻めこめないところを、背後より超精密射撃で狙い撃つ――――――、

そして、目の前に存在する“ブリュンヒルデ”という邪教の偶像を打ち壊すために、天は雪村に光の剣を渡すのであった。

それは台座に収まっている伝説の剣を引き抜くように荘厳なものではなく、隔壁より開けた穴より投げ入れられたものであったが、

殺人鬼と化した“ブリュンヒルデ”の非道なる一撃を間一髪で飛び込んで躱したと同時に光の剣を手にした雪村はいよいよ天機を得た。

勢いのままに力強く立った雪村に対して、“ブリュンヒルデ”は勢い余って壁際に追い詰められて振り返るまでの大変大きな隙を晒していた。

いや、『壁にぶつからないようにする』というアリーナを自在に飛び回るISバトルでは普通考慮しない事態に直面して判断が遅れて動きが鈍ったのだ。

そこを見逃す雪村ではなく、実力は“ブリュンヒルデ”に劣ってはいるが確かな実力を擁する“彼”からすればそれで勝利は確定していた。

再び地上にそびえ立つ壁は雪村の味方をし、その絶好の機会を仕損じるわけもなく、雪村の全身全霊の一撃必殺の一振りが炸裂した。

皮肉にもそれは“ブリュンヒルデ”『暮桜』の単一仕様能力『零落白夜』と同質の一太刀であり、偽りの存在はそれによって成敗されたのである。


359: 2014/09/23(火) 09:26:10.19 ID:JZmH5Y3h0


雪村「………………」

千冬?「――――――!」

千冬?「…………!」

千冬?「……!」

千冬?「」バタン!

雪村「………………」ジャキ

雪村「…………フゥ」

雪村「ハッ」

雪村「…………フッ!」ドドーン!(光の剣を天に掲げる!)


一同「!!」


ラウラ「よくやったぞ、“アヤカ”!」

箒「ゆ、雪村……、ば、馬鹿者…………、心配させやがって…………」ポタポタ・・・

精鋭部隊A「…………う、うぅん?」

――――――

千鶴「さすがね。さすがは――――――」

――――――


戦いは終わりを告げた。3+2対9+1の圧倒的に不利な戦いはこうして少数の側の勝利に終わったのである。

圧倒的に不利と思われた戦いではあったが、雪村と守護の陰の刃がもたらした単一仕様能力によって覆されて最終的な勝利をもたらしたのである。

元々 第3世代兵器というのは単一仕様能力以外のISが備えている特殊能力を一般化しようという試みから始められた兵器群のことである。

そのことを踏まえると実用性はさておき、単一仕様能力を扱えるISのほうが基本的に高い次元に存在していることは理解できるはずである。

だが、単一仕様能力だけで勝てるほど現実は甘くはない――――――同じように最新鋭の第3世代兵器があれば必ず勝てるわけでもない。

今回の勝利は、己が持てる叡智と力量と精根を搾り出した結果による執念の勝利であり、

それをやりきった雪村の表情には安堵の表情とこの事態を招いておきながらも不謹慎ながら晴れやかなものが一時的に満ちていた。



360: 2014/09/23(火) 09:27:06.13 ID:3zEhG37Z0









雪村「………………」ヨロヨロ・・・

雪村「………………フゥ」ペタン! ――――――壁際!

――――――
「伝説の光の剣を振るった感想はどうだ?」フフッ
――――――

雪村「また、助けてくれましたね…………今度は現実世界で」ハアハア

――――――
「…………遅れて本当にすまなかった」
――――――

雪村「いえいえ、本当に感謝しています。――――――結果が全てですよ」アセビッショリ!

――――――
「そうか。それじゃ、俺は行くぜ。後処理が他にも残ってるんだ」
――――――

雪村「はい。また会いましょう」ニコッ

雪村「今度は、仮想空間で――――――」


――――――“ブレードランナー”。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――
――――――役目を終えた“ブレードランナー”はしめやかに鞘に戻るぜ。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――



361: 2014/09/23(火) 09:27:41.28 ID:3zEhG37Z0

――――――その夜


ラウラ「…………結局、決勝トーナメントは無期限中止だ」

ラウラ「第3アリーナでも同じようにテロが起きた以上は、決勝トーナメント進出できた者全員に賞を与えてうやむやにするそうだ」

雪村「そうですか」

箒「……そうか」


ラウラ「残念だったな。優勝できなくなって」


箒「あ」

ラウラ「私が教官より与えられた任務は『“アヤカ”をベスト8に入れること』――――――故に、私だけ目標を達成したようだ」

ラウラ「すまなく思う」

雪村「………………」

ラウラ「お前は、その……、振り向かせたい相手のために――――――」

箒「…………いや、そんなことはもう気にしてない。ああ 気にしてない」

箒「特別病棟に運び込まれたみんなのことを思うと、私だけ助かったことが何よりの褒美みたいなものだし……」

箒「それに、雪村が無事でとりあえずホッとしているよ…………まったく、お前というやつは」フフッ

雪村「………………ホッ」

ラウラ「そうだな。どこまで信用していいのか困るぐらいだな。あんな隠し球を持っていたとは驚きだよ」フフッ

雪村「けど、これでシャルル・デュノアの正体は公然のものとなるね」

箒「あ」

ラウラ「しかたがないだろう。今回の一件にデュノア社が絡んでいるのは間違いないことだからな」

箒「え、ラウラ――――――?」

ラウラ「どうした? 私がシャルル・デュノアが性別詐称していることを知らないとでも思ったのか?」

ラウラ「そもそも学園側がその事実を伏せていたのだ。よくこんな茶番を興じることができたものだな」

ラウラ「まあ、おそらくはハニートラップを狙ってのことだったのだろうが、」

ラウラ「――――――こいつ相手にそんなものが通用するわけがなかったな」

雪村「………………?」

箒「た、確かにな……(――――――『ハニートラップ』ぅ!? 何を言い出すのだ、こいつは!)」ドキドキ


362: 2014/09/23(火) 09:28:17.69 ID:JZmH5Y3h0

箒「しかし、私たちはいつまでここで待機していれば…………」

箒「今回の件でIS学園に対する信頼が落っこちたな……」

ラウラ「まさかここまで公然と“アヤカ”を抹頃するために襲ってくるとはな………………正気の沙汰ではなかったな」

雪村「ごめんなさい」

箒「い、いや! お前のことを責めたわけではない! 憎むべきは罪だぞ!」

ラウラ「そうだぞ。お前のせいではない」

ラウラ「むしろ、やつらの蛮行を強行させた原因の1つに私も一枚噛んでいるのだからな」

箒「なに?」

ラウラ「シャルル・デュノアがIS学園から逃げ出した翌日に、2人組の男に送り届けられてだな」

箒「え」

ラウラ「その2人組の男を尾行してみたら、同じようにIS乗りのテ口リスト2人組が彼らを抹殺せんと襲撃したのだ。――――――ただの一般人を」

ラウラ「そして、私はそのテ口リスト2人を拘束した」

ラウラ「だから、少なくとも私も目の敵にされていた」

箒「そ、そうだったのか……」

雪村「………………」

ラウラ「しかし、学園内部に魔物が大勢潜んでいることは確実で、織斑教官はそれを退治するために忙しいようだ」

箒「ああ…………」

ラウラ「世の中くだらないことで争ってばかりだな。戦争がなくならないわけだ」

箒「…………そうだな(私がそもそも重要人物保護プログラムを受けなければならなかったのはISの軍事的優位性が認められたから――――――)」

ラウラ「私は軍人だ。軍人は文民統制に従うものだが、その文民の采配次第で我々は剣にも盾にもなることを忘れないで欲しいものだな、お偉方には」

箒「なるほどな(――――――これが専用機持ちの覚悟と苦悩というやつか)」

箒「(私は馬鹿者だな。私は安易に“姉さんの妹”だから専用機を暗に求め続けていたが、私なんかに務まるはずがない……)」

箒「(私は“普通の人間”としての当たり前の暮らしを取り戻したいだけであって、別に千冬さんや姉さんのように目立ちたいわけじゃない……)」

箒「(けれど、今回のような事件で『ISに対抗できるのはISだけ』という事実が深く突き刺さる……)」

箒「(私は私以上の不運に苛まれてきた“朱華雪村”という少年のためにやれるだけのことをしたい……)」

箒「(それなのにそう考えれば考える程ますます『専用機が無ければ雪村と同じ土俵に立てない』という現実に直面してしまうのだ……)」

箒「(私はどうすればいいのだろう? ただ普通の女の子として高校生活を送って人並みの暮らしをして生きていたいと思っているのに…………)」

箒「(やはり、姉さんがISを開発してしまったのがそもそもの間違いだったのではないだろうか? これは抗えない宿命なのだろうか?)」

箒「(どうすればいいのだろう? 今の私は“篠ノ之 箒”だ。今までの与えられるだけの存在じゃない。まぎれもない“私”自身だ)」

箒「(逃げちゃダメだ。ここで逃げたら私が“私”でなくなってしまうような気がして――――――)」

箒「(雪村。私はお前を独りになんかさせないからな、絶対! だから、だから――――――!)」

雪村「………………」


――――――ごめんなさい。



363: 2014/09/23(火) 09:28:58.28 ID:JZmH5Y3h0

――――――大会後の休日(予備日の2日間)


鈴「結局、何がどうなったって話よ?」

雪村「わかりません。クラス対抗戦の時と同じです」

鈴「あ、ああ…………そう(そう言われちゃ、私も口止めされてるからこれ以上は………………)」

雪村「ところでどうしたんですか、2組の…鈴さん? 僕なんかに相手をして。珍しい」

鈴「ああ……、あんたにはそこそこ期待してたのよね」

鈴「あのドイツの生意気な少佐殿を倒してくれることをね」

鈴「なぜだかわからないけれど、あのセシリアにも奇跡的に勝利したことなんだし、ラウラ相手にも何かしてくれるんじゃないかって」

鈴「――――――『楽しみにしてた』ってわけ」

雪村「そうなんですか」

鈴「あんた、最初に会った時と比べてずいぶんと変わったわね。少しはマシになったって感じ」

雪村「そうですか。ありがとうございます」

鈴「もしかして、あんた……、今までわざと手を抜いてきたとかないでしょうね?」ジー

雪村「いえ。必要に応じて全力は出してきたつもりですが」

鈴「いちいち引っかかる言い方するわねぇ……(なるほど。そういう意味では確かに嘘はついてないわねぇ……)」

鈴「けど、わかった」

雪村「何がです?」


鈴「あんたはこれから私のライバルってことよ。覚悟なさい」


雪村「???」

鈴「…………そこは察しなさいよ。締まらないわねぇ(――――――何か“あいつ”に似てるわね、ところどころというか)」

雪村「えと……」

鈴「 だ か ら !」

鈴「あんたも立派な専用機持ちだってことをこの私が認めてあげたって意味よ」

鈴「私は1年ぐらいで代表候補生になったっていうのに、あんたは2ヶ月だけで訓練機なんかでここまで強くなってぇ!」

鈴「私はあんたに将来的に追い抜かれないように意識してるってわけ。最新鋭の第3世代機に乗って旧式の訓練機上がりに負けちゃ立場がないでしょう」

鈴「今はPICコントロールが下の下で歩くことしかできなくても、セシリアに使った瞬間移動みたいなアレを自在に使いこなせるようになったら厄介だし」

鈴「たぶん、あんたが今年の入学生の中で一番の成長株だって周囲から注目されてるんじゃないの?」

鈴「私、絶対にあんたにだけは負けないから、見てなさいよ!」

鈴「ふん!」


スタスタ・・・・・・


雪村「…………何だったんだろう、あれ?」

雪村「けど、僕の評判が上がって周囲に迷惑が掛からなくなるのであれば――――――」

雪村「さ、特別病棟に行こうか」


364: 2014/09/23(火) 09:30:46.18 ID:JZmH5Y3h0

――――――特別病棟


千鶴「あら、英雄さん。おはよう」

雪村「おはようございます。誰ですか?」

千鶴「あははは、さすがにまだ知らないわけか。――――――助けてやったのになぁ(まあ あの状況だとしかたないけど)」

雪村「――――――『助けてもらった』?」

雪村「いち――――――ハジメさんの仲間ですか」

千鶴「……うん、そういうことよ」

千鶴「一条千鶴よ。これからハジメと一緒にやっていく仲間だから覚えておいてね」

雪村「わかりました、千鶴さん」

千鶴「けど、まさかVTシステムがこれほどまでに仕掛けられていたなんてね……」

雪村「被害者総数:第4アリーナで9人、第3アリーナで4人ですか」

千鶴「そう。まさか13機も仕掛けられていただなんて、明らかな内部犯行よね」

千鶴「まあ、だいたいはこの一件で不穏分子は粛清されたのだけれど、これからの学園経営は大きく響くわね」

雪村「それを招いた僕はこれからどうなるんです?」

千鶴「どうもならないわ。これはあなたが訪れる以前からの問題であって、安心してこれまで通りに学生生活を送りなさい」

千鶴「日本を標的にしたアラスカ条約によってIS学園の運営は全て日本国の負担にはなってはいるんだけれども、」

千鶴「逆にそれが今回の場合は大きな味方になっていてね」

千鶴「もしIS学園を解体するようなことになれば、アラスカ条約に従ってあらゆるIS関連技術を公表しなければならない義務が適用されて――――――」

雪村「そうですね。IS学園所属として登録された機体に関する技術は3年間独占していていい権利があるわけですからね」

千鶴「それに、IS学園を接収したとしてもその運営費は馬鹿にならないわけだから、『白騎士事件』以降の混乱で大打撃を受けた各国に維持なんかできないわ」

千鶴「日本だけなのよ。得をしたのは」

千鶴「超大国同士の冷戦の最終的な勝者が日本であるように、世紀末の前後から我が国は名実共に世界一の国家になっているわけ」

千鶴「パックスジャポニカ――――――それを抑止する目的でアラスカ条約があるぐらいに日本は強いわ」

千鶴「むしろ、今回の一件で責められるべきなのはフランスのデュノア社であり、主犯格としてきっちり責任は押し付けてあるわ」

千鶴「それのせいなのかはわからないのだけれど、今朝方 デュノア社の工場が爆破されたというニュースが届いているわ」

雪村「そうなんですか」

千鶴「それで、VTシステムの被害に遭った娘はみんな意識を取り戻したわ」

千鶴「ただ、VTシステムによる後遺症が残っているかどうかの検査のためにまだまだここで療養してないといけないんだけどね」

雪村「それはよかったです」ホッ


365: 2014/09/23(火) 09:31:49.41 ID:3zEhG37Z0

千鶴「ところでさ?」

雪村「?」


――――――昔のこと、思い出したい?


雪村「…………?」

雪村「どういう意味ですか?」

千鶴「そのままの意味よ。今のあなた――――――“朱華雪村”である以前の記憶を取り戻したいと思わない?」

雪村「ああ そんなことですか」


雪村「必要ありません」


千鶴「どうして? あなたの家族のことは気にならない?」
   ・・・・・・・・・・
雪村「僕には居ない設定です」

千鶴「…………そう。強いね」
                              イマ
雪村「諦めただけです。僕が欲しいのは過去でも未来でもなく、現在ですから」

雪村「それに、僕は現在の関係がとても気に入っている。だから、卒業するまで大事にしておきたい」

千鶴「そっか。現在こそが満ち足りているのなら野暮な提案だったわね。ごめんなさい」

雪村「いえいえ」

千鶴「“2年前に現れた世界で初めてISを扱えた男子”――――――本来『青松』に乗るべきだった類稀なる剣の才を持った少年」

千鶴「それがまさか、この土壇場になって才能を開花させるなんてね」


――――――周囲に花粉を撒き散らす松の木が2年の時を経てようやく実を結んだのね。

                                ・・・・・・・・ ・・・・・・・・・・・
雪村「僕が“朱華雪村”である以前のことなんて忘れましたよ(へえ、『白式』って元々 僕専用の機体だったんだ……)」

雪村「というか、思い出そうとしても本当に何も憶えてないんです。何となくとしか本当に憶えてなくて」

千鶴「それは確かに過去も未来もないわね(自殺防止のために記憶を消されているわけなのよね。ただ生かされているだけ――――――)」
                                             ・・

366: 2014/09/23(火) 09:32:34.84 ID:JZmH5Y3h0

雪村「そういえば、シャルル・デュノアはどうなるんです? デュノア社の刺客として送り込まれた彼女は」
   ・・
千鶴「彼女なら大丈夫よ。情状酌量の余地があるし、人権団体様に檄文を飛ばしたから手厚く保護されるわ」
                  ・・
千鶴「まあ、この学園に残るかどうかは彼女次第だけれど」

雪村「そうですか」

千鶴「やっぱり、――――――嫌いかしら?」

雪村「別に。嫌いなのは子供にそうさせている連中であって、『子供の罪は大人の罪であっても大人の罪は子供の罪じゃない』から」

千鶴「そうね。そうよね。優しいのね」

雪村「ただムカついたのは『僕と同じ存在を騙るのならばそれ相応の苦しみを味わい尽くしてもらわないと』と思いまして――――――」

雪村「やらされているとはいえ、無性に腹がたちましたね。あの程度で不幸を気取るとかふざけてるからつい、ね?」

千鶴「あららら、…………逆鱗に触れちゃったわけね。道理で大会前にシャルル・デュノアが不安定になっていたわけか」


雪村「その点で、“あの人”は本当に暖かった。僕の人生最大の幸運というのは“あの人”に会えたことだと思っています」


千鶴「よかったわね。私としても“その人”があなたの真の同胞であったことが何よりの救いだったわ」

千鶴「これからも精一杯生き延びて現在を楽しみ抜いてね?」

千鶴「じゃあね。呼び止めてごめんなさい」

雪村「ありがとうございました。さようなら」

千鶴「うん」

コツコツコツ・・・

雪村「……あ、そうか(あの時の射手が千鶴さんだったのかな? 一瞬しか見えなかったけれどあの状況で居たのはそれぐらいしか――――――)」


367: 2014/09/23(火) 09:33:29.38 ID:JZmH5Y3h0

雪村「さて、そろそろ面会の時間かな? みんなのところに行かないとな。早めに来といてよかった」

箒「おお、雪村。ずいぶんと遅かったではないか」

雪村「ごめんなさい。人と話していました」

箒「そうか。ならしかたないな。早く行くぞ」

雪村「うん」

コツコツコツ・・・

本音「あ、きたきた~。“アヤヤ”とシノノン いっしょ~」

相川「やっぱりか。うん、“親子”一緒なのが一番だよね~」

箒「…………諦めたことだが、未だに慣れないな」

ラウラ「遅いぞ、お前たち」

セシリア「まあまあ、約束の時間には間に合っていますし、そう目くじらを立てずに」

谷本「そうだよ、ラウラ。それにここでは『静かに』」シー

ラウラ「む、すまない」

鷹月「それじゃ、そろそろ行くよ」

セシリア「それでは、みなさんのお見舞いに参りますわ」

箒「え、セシリア? その籠に入っているのは全部――――――」

セシリア「はい。祖国でもイチオシの高級フルーツですわ」

ラウラ「私も微力ながら祖国で評判の菓子を――――――」

相川「ひゃー、やっぱり代表候補生って凄いよねぇ」

谷本「だから、『静かに』!」シー

雪村「………………フフッ」

ワイワイ、ガヤガヤ、ワーワー

雪村「あ」


黒服「――――――」グッ

千鶴「――――――」ニッコリ


雪村「……フフッ」

箒「雪村、行くぞ」

雪村「はい」


――――――僕は生きている。“普通”に現在を生きようとしている。


それがどれだけありふれていて、どれだけ尊いことなのかを噛み締めている今日このごろ――――――。

“特別”に憧れていた自分は遠い彼方、“普通”を求めて喘いできた自分も過去のものとなり、今、確かに僕は“幸福”の中に包まれていた。

この“幸福”な日々がいつまで続くのかはわからない。けど、過去の自分にも未来の自分にもなかったものを現実の僕は持つようになった。


――――――そう、僕は“僕”として足掻き続けることを決意したのだ。





368: 2014/09/23(火) 09:34:10.87 ID:3zEhG37Z0

第7話B 大きく疑い、大きく信じ抜く魂
PURSUIT of the Truth

――――――話は遡り、


ヒュウウウウウウウウウウウウウウン! ヒュウウウウウウウウウウウウウウン! ヒュウウウウウウウウウウウウウウン!


シャル「…………よいしょっと」シュタ

岸原「おっとっと……」ヨロッ

夜竹「あれ? デュノアくんにリコリン? それに――――――」

四十院「さて」シュタ

国津「よいしょっと」シュタ

ラウラ「決勝トーナメントのメンバーが勢揃いということか」

箒「どういうことだ? 私の機体の交換のために待っていたのではなかったのか?」

夜竹「え」

ラウラ「やるのならば、さっさとやればいいものを……(何だ? 何かがおかしい……!)」

雪村「………………」キョロキョロ

ラウラ「どうした、“アヤカ”? 何か感じるものがあったのか?」

ラウラ「それとも、このまま乱戦と洒落込むか? そのほうがおもしろくていいがな」

夜竹「え」ビクッ


――――――
1「さあ、楽しいショーの始まりよ」ピッ
――――――


・・・・・・・・・・・・ドッゴーン!


雪村「――――――!」ゾクッ

雪村「!」クルッ

一同「?」

シャル「どうしたの、“アヤカ”くん?」

箒「どうしたというのだ? まさかまた――――――」

雪村「あっちの方――――――、何かが起こった」

ラウラ「『あっち』――――――?」クルッ


――――――第3アリーナの方角




369: 2014/09/23(火) 09:34:56.97 ID:3zEhG37Z0

――――――第3アリーナ


――――――
観衆「ワーーーーーーーーーーーー!」

実況「さあ、今年からツーマンセルに変更されての学年別トーナメントですが、いよいよ決勝戦となりました!」

実況「ツーマンセルに変更されようともこれまでの3年間で培ってきた友情の力で乗り越えて、学園最強の称号を手にするのはどちらなのか!」

実況「最後の晴れ舞台! 勝利の栄光を手にするのは果たして――――――」
――――――


ドッゴーン!


――――――
観衆「?!」

実況「な、何事!? 突然、アリーナで爆発が発生!?」

ザワ・・・ザワ・・・

実況「みなさん、落ち着いてください!」
――――――

2「さて、二正面作戦開始よ」

2「さあ、出てきなさい。千冬様に取り付く寄生虫!」

2「私が千冬様をお救いしますわ!(そして、第4アリーナで“アヤカ”を始末して――――――)」

――――――



370: 2014/09/23(火) 09:35:44.09 ID:JZmH5Y3h0

――――――第4アリーナのどこか


弾「第3アリーナで謎の爆発――――――」

弾「どうするよ? これ、明らかに誘ってるんじゃないのか? 素人の俺でもわかるぜ」

弾「“アヤカ”がいる一番警備が厳重な第4アリーナから人を追い出して、その隙に兵力を投入するつもりなんだろう」(黒服)

友矩「これはどうするべきか――――――千鶴さんの指示を待つしかないですね」(黒服)

一夏「第3アリーナ――――――今、3年生の部の決勝戦が行われている頃だけど……」(黒服)

友矩「大会運営本部は何をやっているんだ?(内部粛清の影響で人員が足りなくなったのか? いや、そんな単純な理由ではないはずだ)」

一夏「今日 何か仕掛けてくるとは思ってはいたけど…………」

友矩「敵の狙いはどこにあると思います? 騒ぎを聞きつけてノコノコと第3アリーナに駆けつけようとする黒服が狙いでしょうかな?」

一夏「…………!」

弾「警備員を増員したのが仇になったか。応援要請無しに駆けつけるのはおかしいもんな」

弾「――――――ん? まるで“ブレードランナー”の正体を敵が知っているかのような言い方じゃないか」

友矩「内部粛清の結果 その可能性が浮上しました。最悪の状況を想定して行動しなければならないわけです」

弾「うぅ……、一夏が駆けつければすぐに事態は解決するっていうのに何だってこんな手間暇 掛かるんだよ」

友矩「『ISに対抗できるのはISだけ』――――――つまり、こちらにしても敵にしても前提として『ISを使うからISを使わざるを得ない』わけなのです」

友矩「ISを扱える“アヤカ”を始末するために戦車や戦闘機を用意してもいいでしょうけど、それをIS学園まで持ってくることは難しい――――――」

友矩「となれば、そんな環境の中で守られている“アヤカ”を始末するにはやっぱり刺客もISを使わざるを得ないんです」

友矩「つまりそれは、“アヤカ”を始末しようと送られてきたISテ口リストを始末しようとしている“ブレードランナー”も同じことなのです」

弾「な、なるほどね。“頃し屋の頃し屋”のこっちとしても“頃し屋”として“頃し屋”と同じ条件を背負わされているわけね……」

友矩「特に、こちらとしては正体を知られてはならないという頭がオカシイ制約を課されているので余計に神経を使うんですよ」

友矩「そんなに知られるのが嫌なら、最初からこんな仕事をさせなければ良いものを…………」

一夏「結局 どうなんだ? 俺たちはこのまま待機でいいんだな?」

友矩「ええ。こういう時のために精鋭部隊が組織されてるんです。ただでさえ戦力が足りてないのですから自分たちのことは自分で守ってもらわないと」

一夏「それで何とかなればいいんだけど」

友矩「…………そうですね。精鋭部隊に鎮圧される程度の陽動じゃ意味がないことは敵としてもわかっているはずです」ピピッ!


371: 2014/09/23(火) 09:36:54.90 ID:3zEhG37Z0

友矩「さて」ピッ

――――――
千冬「急いで駆けつけてくれ!」
――――――

友矩「!?」

友矩「何が起こりました!?」

一夏「え……」

――――――
千冬「私のVTシステムだ。並みの生徒では太刀打ち出来ない。しかも 4機確認された。応援を頼む」
――――――

友矩「なんですって?!」

弾「――――――『私のVTシステム』?」

一夏「友矩!」

友矩「くぅううう……(やられた! そうか、敵の狙いは最初からそこにあったのか!)」


友矩「(長い時間を掛けて訓練機にVTシステムを仕込んで学園のISの強奪も狙っていたのか…………)」

友矩「(それがたまたま、“世界で唯一ISを扱える男性”なんていうのが出てきたからついでにその始末に使う気で――――――)」

友矩「(となると、ほとんどの訓練機に仕掛けられていたのではないのか? どうなんだ、その辺は?)」

友矩「(だが、ならなぜVTシステムほどのものを“アヤカ”がいる第4アリーナで使わない?)」

友矩「(いや、どれくらいの数のVTシステムを用意していたのかは知らないけど、そこをハズすような間抜けが相手とも思いたくない)」

友矩「(――――――やはり、本命は“アヤカ”の始末だ、これは!)」

友矩「(そうだとも! 第3アリーナは大変な状況になっているけれど、第4アリーナだって試合がいつまで経っても始まらない異常事態だ)」

友矩「(それが数分前にどういうわけか、選手全員が場に出てきて、何もわからないまま立ち往生しているんだ)」
            ・・・・・・
友矩「(これって明らかにそういうことなんじゃないのか!?)」

友矩「(間違いない! これは陽動だ! どちらも避けて通れないような完璧な陽動だ――――――!)」

友矩「(けど、困難を超越することこそが“ブレードランナー”の役目だ!)」



372: 2014/09/23(火) 09:37:55.31 ID:3zEhG37Z0

一夏「友矩……?」

友矩「“ブレードランナー”! 無理難題を押し付けられたみたいですよ」

一夏「!」

友矩「敵は間髪入れずにこの第4アリーナで何かをしてくる!」

友矩「それを承知で、第3アリーナまで行ってきて早急に鎮圧して戻ってこい――――――今回の戦いはそういうことです」

弾「時間との勝負ってことか、それは!?」

一夏「…………!」

一夏「なら、俺はすぐに行く!」

友矩「行って! 手遅れかもしれないけれど第4アリーナを封鎖してみます!(制約さえなければこんなことには――――――)」

友矩「使いたくはなかったけど、“ブレードランナー”の特権として学園のセキュリティを掌握させてもらいます!」

弾「お、俺は――――――」

友矩「弾さんはこの中継器を第3アリーナに持って行ってください! 僕はここからできるかぎりのことをしますから!」

弾「わかったぜ! 運び屋としての最善は尽くす!」ガシッ

弾「よし、待ってくれ、一夏よおおおおお!」

タッタッタッタッタ・・・

友矩「どこかに居るはずだ! このアリーナのどこかに“アヤカ”の喉笛を虎視眈々と狙う刺客が!」カタカタカタ・・・

友矩「そいつを閉じ込めてしまえば時間稼ぎにはなるはずだ!(――――――“ブレードランナー”に失敗は許されない!)」カタカタカタ・・・

友矩「普通のIS乗りじゃVTシステム機4体の相手するだけでも大変なんだから急げ!(まあ、それに打ち勝つのが当然だと思ってやらないと!)」カタカタカタ・・・

友矩「にしても、大会運営本部はどうなっているんだろう? まさか、すでにテ口リストの手中に落ちているというのかな?」カタカタカタ・・・

友矩「いや、そもそも大会運営本部はどこにあるんだ? 大会直前に内部粛清が行われて再編成されたはずだけど――――――」カタカタカタ・・・




「ふふ~ん。何か楽しそうなことになってるよね~。これってもしかして楽しんじゃっていいってことなのかな~。あはははうふふふふ……」



373: 2014/09/23(火) 09:38:38.29 ID:JZmH5Y3h0

――――――第3アリーナ


「キャアアアアアアアアアアア!」ガヤガヤ・・・

「ニゲロオオオオオオオ!」ガタガタ・・・

「ワアアアアアアアアアアアアア!」ドタバタ・・・


弾「派手にやってるじゃないか、テ口リストめ!」

一夏「千冬様はどこ? もう突入してるんじゃなかったのか?」キョロキョロ

一夏「しかたがない。時間が押してるんだ。俺だけでもやらないとか!」タッタッタッタッタ・・・

――――――
千冬「ええい、しつこいぞ。私も暇じゃないんだ!」

教員「そんなこと言わずに何とかしてくださいよ! 現場責任者として各国のお偉方に何とか言い聞かせてください!」

千冬「どけ! 現場責任者だからこそ目の前に現れた脅威を取り除こうと必氏になっているんだ! 私に構うな!」

教員「そんなこと言って、織斑先生は私に責任転嫁しようって気なんでしょう!」

千冬「このアリーナでもしものことがあった時にどうするのか決めるのがお前の役目だろうが。お前こそ責任転嫁するんじゃない!」

千冬「いいかげんに手を放せ! こんなことをしている暇があるんだったらお前も修理中の『打鉄』にでも乗って援護しろ!」

教員「そ、そんな! 私なんかが“ブリュンヒルデ”に敵うわけないじゃないですか!」

千冬「」カチン

千冬「当て身」ドスッ

教員「きゃっ」

教員「」バタン

千冬「くそ、手間取らせるな、馬鹿女が(内部粛清のツケが早くも出てきたか。自己保身しか考えられないこんなやつに――――――!)」

千冬「くっ、一夏よ……」
――――――

一夏「で、あれがVTシステムってやつか。ふざけやがって(あの動き――――――第1回『モンド・グロッソ』の千冬姉そのままじゃないか!)」

一夏「弾はここまでいい。これ以上は巻き込まれないように一緒に避難していてくれ(世の中にはこんなふざけたものまで存在するんだな!)」

弾「…………わかったぜ。中継器を運ぶのだけがお役目だったからな」

弾「急げよ!」

一夏「ああ(3年の精鋭部隊はよく粘っているけれど、4人の千冬姉相手じゃ圧倒されるのも当然か…………完全に逃げ腰じゃないか)」


タッタッタッタッタ・・・




374: 2014/09/23(火) 09:40:16.23 ID:JZmH5Y3h0

一夏「さて――――――」キョロキョロ

一夏「確かこの辺だったか?(この辺で展開すれば正体がバレないはずだったな。周囲に人影なし!)」

一夏「来い、『白――――――っ!?」ビクッ

バキューン!

一夏「…………うぅ!?」ズキン!

2「こんにちは、氏ね」バキューン!

一夏「くっ!(右腕をかすったか…………)」ササッ

一夏「…………待ち伏せされていた!(どうする――――――いや、考えるまでもないか。すぐに終わらせて――――――)」ズキンズキン


2「出てきなさい。さもなければこの親子がどうなってもいいの? 千冬様にたかる寄生虫!」ジャキ

幼女「た、助けてぇ…………」シクシク BIND!

母親「だ、誰か 助けてください!」ガタガタ BIND!


一夏「な、なにぃ!?(――――――人質だとぉ!? くっ、しかも一般人じゃなか! 招待券をもらった学園関係者か来賓の身内か?)」

一夏「くそっ、時間が押してるってのに!(いや、友矩が言うようにこれが敵の陽動作戦なんだからこれぐらいして時間稼ぎするのは当然か?)」

一夏「ちっ(けど、“アヤカ”だってただじゃやられないぞ。なんてったって単一仕様能力があるからな。俺と同じIS頃しの力が――――――)」ズキンズキン

――――――
友矩「“ブレードランナー”!」
――――――

一夏「どうすればいい、“オペレーター”……」アセタラー

――――――
友矩「『待ち伏せされていた』ということは完全に正体が割れている可能性が非常に高いです」

友矩「けれども、今回は相手が単細胞だから逆に何とかできる可能性があります」

友矩「――――――『千冬様』と口走りましたから」ニヤリ
――――――

一夏「!」

――――――
友矩「人質に関しては救出さえできれば『ニュートラライザー』で記憶を消しますので、思いっきり吐露してください」
――――――

一夏「え、マジで?」

――――――
友矩「はい。使えるものは何でも使いましょう」ニヤリ

友矩「きみがどれだけの想いを抱いているか――――――格の違いを見せるんですよ」

友矩「それが――――――」
――――――

一夏「――――――“人を活かす剣”ってやつだもんな!」ウズウズ!

一夏「よし!(お、痛みも引いてきたか。もうちょっと続いてくれれば迫真の演技になったろうけど、やるっきゃない!)」


375: 2014/09/23(火) 09:41:20.75 ID:3zEhG37Z0

2「どうしたのかしら? 銃弾を受けて腰が抜けたのかしら?」

黒服「こっちへ来て確かめてみたらどうだ?」ゼエゼエ

2「いいえ、遠慮しとくわ。誰が薄汚い男のところへいくもんですか」

2「さあ、織斑一夏! 姿を現しなさい! 苦しまないように1発で楽にしてあげるわ」ジャキ

黒服「――――――『織斑一夏』だと? 人違いだ!」ゼエゼエ

2「しらばっくれるんじゃないよ! 千冬様の汚点! 出てこないのなら――――――」ジャキ

幼女「いや! いやああああ!」

2「うるさいぞ! このガキ!」

母親「や、やめてください! この娘だけは手を出さないでぇ!」

黒服「やめろ! その人たちは関係ない! 放してやれ! 目的は『織斑一夏』なんだろう!」ゼエゼエ

黒服「それに、脚がブルっちまってほんとに動けねえんだって!」ゼエゼエ

2「本当かどうかはすぐにわかるわ! 千冬様の栄光を汚した罪人には報いが必要だわ!」

黒服「わかった! 俺が『織斑一夏』だ。そういうことでいいんだろう!」ゼエゼエ

黒服「来いよ! 銃なんて捨ててかかってこい。腰が抜けた今ならお前でも勝てるぞ」ゼエゼエ

黒服「楽に頃しちゃつまらないだろう?」ゼエゼエ

黒服「ナイフとか突き立てて、千冬様の汚点である『織斑一夏』をこの手でメッタ刺しにして苦しみもがいて氏んでいく様を見るのが望みだったんだろう!」
                                       ・・・・・・・
黒服「そうじゃないのか? そうじゃなかったらわざわざ赤の他人を人質に使うなんて不確実なやり方に打って出るはずがないだろう!」ゼエゼエ

黒服「俺は別にその二人が氏んだってどうだっていいんだよ! どうせこの事件は闇に葬られんだから!」

母親「ええ!?」

2「………………!」

2「……まあいいわ。ここまでくれば人質なんて邪魔なだけよ」

2「それに、この狭い通路で有利なISを持っている私が剣しか使えないような欠陥機に負けるもんですか!」コツコツコツ・・・

母親「あ……」

幼女「お、お母さん……」

母親「良かった、良かった…………」

母親「さ、早く――――――!」

幼女「う、うん!」

タッタッタッタッタ・・・

黒服「…………ホッ」

――――――
友矩「単細胞で何より――――――おめでたい女ですな。人質は行ってくれたことだし、後はどうとでも」
――――――

黒服「まったくだ……(第2段階へ――――――ここからだ!)」イライラ

      ・・・・・
――――――俺の千冬姉に汚えものを向けるんじゃねえ!



376: 2014/09/23(火) 09:43:23.57 ID:JZmH5Y3h0

2「そうよ。うふふふふふ!」ニタニタ

2「この手で、この手で千冬様をお救いできるのですわ!」

2「氏になさい、氏になさい! 待っていてください、ああ 千冬様ぁ……」トローン!


一夏「へえ、お前は千冬姉のことをそんなに愛してるんだな」


2「当然よ。千冬様は強く、美しく、全てを兼ね備えたお人よ!」

2「それをあなたが――――――!」

一夏「けど、お前のことなんて千冬姉は知らねえよ! お前の愛なんていうのは絶対に届かねえよ!」

一夏「そんなのは自己満足の[ピーー!]って言うんだよ! 人の姉を[ピーー!]のオカズにするんじゃねえよ!」ゴゴゴゴゴ

2「!?」ビクッ

2「ふ、ふざけないで! 私の千冬様への愛がそんな低俗なものなんかじゃないわ!」

一夏「だったら、お前は千冬姉をどこまで愛せるっていうんだ!」

2「私は! 千冬姉の汗や涙だって着ていた服や残り湯だって愛せます!」

一夏「はん! その程度かよ! 俺はすでに千冬姉の脱ぎたての服で[ピーー!]したり、残り湯だって毎日[ピーー!]いたぜ?」

2「ううん?!」

一夏「どうした? お前はしていない――――――俺はしているぞ? 格付けは終わったな?」

2「くっ、この下衆が――――――」

一夏「おいおい? お前がやろうとしていたことをやっていた俺を『下衆』って蔑むのなら、」

一夏「お前は嘘を言ったのか? ――――――千冬姉のことで!」ギロッ

一夏「千冬姉に恥ずかしくないと思わないのか! 俺を辱めるためだけに利用したっていうのか! お前にとっての千冬姉は利用するものなのか!?」

2「うっ…………!」

2「わ、私は! 千冬様の全てを愛しておりますわ! 千冬様のへそも脇も脚もお顔も耳もうなじも全部――――――!」

2「そう! 千冬様を誰よりも深く愛し、誰よりも優しく情熱的に気持ちよくしてさしあげることができますわ!」ドキドキ

2「千冬様に求められたら、私、お断りできませんわ……!」トローン!

一夏「お前、そんなこと言って、千冬姉の[ピーー!]がどこにあるのか知ってるのか?」

2「え」


377: 2014/09/23(火) 09:45:24.11 ID:JZmH5Y3h0

一夏「千冬姉の[ピーー!]はあそこだぜ? 千冬姉は意外と[ピーー!]だからよ? そこをああしたり、こうしたりするとだな――――――」

2「う、嘘よ! 千冬様がそんな――――――」

一夏「お前、また嘘を言ったな! 『千冬姉の全てを愛している』と言っておきながら!」

2「…………うっ!」

2「違うのよ! これは嘘よ! 私を貶めるための口から出任せ! 千冬様がお前のような男に、男に――――――!」ブルブル

2「そ、そうよ! あなたは千冬様の汚点である“織斑一夏”! 千冬様の弟でありながら――――――」

2「え」ピッ

2「ちょっと待って? だって、あ、あなたは千冬様の実の弟で――――――?」

一夏「どうしたんだよ?」ニヤリ

――――――
友矩「…………トドメを」
――――――

一夏「ああ(――――――思い知れ!)」ボソッ


一夏「俺は千冬姉と結婚の約束をして恋人のキスだってしてるんだよ」


2「!!!!?!??」

一夏「だから、俺はそろそろ千冬姉と[ピーー!]しようって――――――」ピン!

2「ハッ」

2「ふ、ふふふふ……」 ――――――1!

2「と、とんだ食わせ者ね。そうか、あなたが“織斑一夏”のはずがありませんわね……」ニコニコー ――――――2!
         ・・・・・・・・・・・・・・・・・
2「そう。こいつは日本政府が用意した織斑一夏の影武者――――――」 ――――――3!

一夏「――――――!」ヒュッ!

2「そうじゃなければち、千冬様とその血を分けた実の弟が[ピーー!]するだなんて発想が――――――」 

コロンコロン・・・ ――――――4!

2「!?」

一夏「――――――!」シュッ


ピカァーン!


一夏「――――――!」ズドン! (掴みかかって腹に強烈な膝蹴り!)

2「かっはぁ…………」(口から赤色の液体が飛び散る)

2「き、貴様ぁ…………」モガモガ

2「」ガクッ

一夏「――――――4秒だ」ジロッ

――――――
友矩「残念。今のは4.1秒――――――遅れましたね」
――――――


378: 2014/09/23(火) 09:46:56.86 ID:JZmH5Y3h0

一夏「馬鹿な女だな。人間、人を本気で愛するとなったら何だってできるってことを知らないんだ」

一夏「ようやくタクティカルベルトが活躍してくれたな……」

一夏「けど、ちょっと汚れちゃったな。臭い(――――――ずいぶんと中身をやっちゃったようだな)」クンクン

――――――
友矩「確実に再起不能にしてください」
――――――

一夏「ああ。発信機と小型爆弾付きの手錠もな」ガシャン

2「」BIND!

一夏「人を頃すこと以上に罪深いことはない。武器を持って人を脅してその生命を脅かしたその咎は決して安いものじゃないぞ?」

一夏「けど、安心してくれ。俺はどんなことがあっても命だけは助けてやるから」ジー

一夏「そう、命だけは」

一夏「――――――抜刀! ふんっ!」ブン!

ズバーン!

――――――
友矩「これが“ブレードランナー”です」
――――――




379: 2014/09/23(火) 09:47:45.82 ID:3zEhG37Z0

――――――そして、


千冬?「――――――!」ブン!

精鋭部隊P「きゃああああああ!」(戦闘続行不能)

千冬?「――――――!」ブン!

精鋭部隊Q「うぅ…………!」(戦闘続行不能)

精鋭部隊R「先生方でも無理なの!?」(機体放棄)

千冬「どけ、お前たち」

精鋭部隊R「織斑先生!」

千冬「遅れてすまなかった。馬鹿女にお偉方の面倒を押し付けられそうになって手間取ってしまった!」

千冬「幸い、戦闘続行不能になった者を追撃するようなプログラムは組まれていないようだな」

精鋭部隊R「はい。敵に情けをかけられてしまいました…………」

千冬「いい。こんなものが現れるなんて誰が予想できた? 今は命があることを感謝しつつ別の方面で混乱を鎮めるのに尽力してくれ」

精鋭部隊R「わかりました!」ビシッ

タッタッタッタッタ・・・

一夏「千冬姉!」(謎の身長178cmの仮面美女ドライバー)

千冬「うおっ!?(――――――どういうことなのかはわかってはいるが、実の弟がしていると思うと気持ち悪い!)」

一夏「『先行する』って言ってったのどうしてまだ突入してないんだよ!」

千冬「……大人の事情だ」

千冬「そういうお前こそ、私が居なくてもすぐに鎮圧してくれると思っていたのだが」

一夏「テ口リストの主犯格に待ち伏せされていた。人質を用意していた」

千冬「――――――何とかしたんだな?」

一夏「ああ。友矩の適切なオペレートで何とかISを使わせる前に無力化した。人質も逃すことができた」

千冬「フッ、ならいい」

千冬「さっさとこのくだらん騒ぎを鎮めるぞ」

一夏「ああ! どうやら本命の第4アリーナでも同じことが起きてるらしいから、急がないとな!」

千冬「なら、今こそ――――――、」


一夏(23)「人を活かす剣!」 千冬(24)「お見せしよう!」


――――――人としての情けを断ちて、

――――――神に逢うては神を斬り、仏に逢うては仏を斬り、

――――――然る後、初めて極意を得ん。


斯くの如くんば、行く手を阻む者、悪鬼羅刹の化身なりとも、豈に遅れを取る可けんや。


一夏「来い、『白式』!」

千冬「借り物だが、力を貸せ! ――――――『風待』!」


ヒュウウウウウウウン! ヒュウウウウウウウン!



380: 2014/09/23(火) 09:48:36.34 ID:JZmH5Y3h0

精鋭部隊P「う、うぅ…………」

精鋭部隊Q「攻撃してこないのはありがたいことだけど――――――ん?」

千冬?「――――――!」

千冬?「――――――!」

千冬?「――――――!」

千冬?「――――――!」

ヒュウウウウウウウウウン! ヒュウウウウウウウウウン!

精鋭部隊P「あ、あれは――――――」ヨロッ

精鋭部隊Q「お、織斑先生!」ゼエゼエ

千冬「ご苦労だった。後は私とこいつに任せろ」シュタ

一夏「………………」シュタ(いつもの覆面姿――――――というか、ISスーツのモデルが変わっただけで普段通りの装備である)

精鋭部隊P「機体を交換なさったというわけですか……」

千冬「ああ。さすがに剣しか使えないのはどうかと思うのでな」

精鋭部隊Q「そちらの方は?」

千冬「試しに乗せてみた。ここで活躍してくれなければ用はない」

精鋭部隊Q「そ、そうですか。この場はおまかせします……」(機体放棄)

精鋭部隊P「どうか、あの娘たちを救ってください」(機体放棄)

一夏「…………まかせておけ」(重みのある女性の声)


こうして、『G2』と『G3』を駆った織斑姉弟が“ブリュンヒルデ”4体と対峙することになった。

この時、第4アリーナでは1年生3人で8体(本当は9体)もの“ブリュンヒルデ”と指揮官機であるテ口リストと対峙しており、

あちらが圧倒的不利な戦いを強いられていたのと比較すると、読者にとってこの戦いの結果は容易に見えていることであろう。

たとえ2対4で相手が“ブリュンヒルデ”であろうと、織斑姉弟が負けるという可能性は万に一つ感じることはないだろう。

そうなのだ。なぜならば――――――、



381: 2014/09/23(火) 09:49:20.59 ID:3zEhG37Z0

一夏「さて、俺が3体倒す。千冬姉はゆっくりしていてくれ」コキコキ

千冬「馬鹿を言うな。私が3体だ。もしくは4体だ」メラメラ

一夏「いくらあの偽物とは違う本物の雪片の複製品を持っているにしても、それを持っているのは『風待』であって昔のように一撃必殺ができないぜ?」

千冬「フッ、見ていろ! これが『風待』の単一仕様能力!(頼む、うまくいってくれ! 応えてくれ、私の――――――)」


――――――いや、違う! 大きく疑い、大きく信じ抜くこと!


千冬「それが――――――!」


――――――単一仕様能力『大疑大信』!


千冬「はああ!」ブン!

一夏「!」


――――――
……「――――――」ウゴゴゴ・・・
――――――


千冬「ふん」ドヤア (見覚えのある光の剣を発現させてご満悦のご様子)

一夏「まさか、これは――――――」

――――――
友矩「『風待』の後付装備で入れられた雪片壱型が――――――!」
――――――

一夏「これは、――――――かつての千冬姉の『零落白夜』!」

千冬「先に行かせてもらうぞ」ヒュウウウウウウウン!

一夏「ちょっ、そんなのありかよ!?」

一夏「って、俺だってやってやるさ!(――――――3年前とまったく変わらない千冬姉の偽物なんかに遅れはとらねえ!)」ヒュウウウウウウウン!


――――――血の宿命を打ち克ちて、

――――――姉に逢うては姉を斬り、自分に逢うては自分を斬り、

――――――然る後、初めて命を果たさん。


斯くの如くんば、行く手を阻む者、悪鬼羅刹の化身なりとも、豈に遅れを取る可けんや。



382: 2014/09/23(火) 09:50:28.02 ID:JZmH5Y3h0


ズバーン! ズバーン! ズバーン! ズバーン!


千冬?「」ドサァ・・・

一夏「この程度か。俺たちがいつまでも3年前と同じだと思ったら大間違いだ」

一夏「こいつらには心がない! 進歩向上の精神がない! ISにすら心はあるというのに!」

一夏「努力もしない、訓練もしない、心がないから協力も工夫もない。“最強”というただそれだけの称号に溺れてそのまま使ったのが大間違いだ」

一夏「だから、VTシステムなんて3年前から俺と千冬姉の敵じゃないんだよ。――――――トワイライト号の時から何も変わっちゃいない!」

千冬「フッ、2対2か。腕を上げたな」

一夏「この場は頼みます!」タッタッタッッタッタ・・・(IS解除 → 黒服)

千冬「ああ!」


こうして、出せば全てが解決するジョーカー、あるいはデウス・エクス・マキナのごとく第3アリーナの事変は出て1分足らずで鎮圧された。

元々の実力からして織斑姉弟は“ブリュンヒルデ”と呼ばれていた頃の織斑千冬など過去の存在にしてきているのだ。

更には、VTシステムによって取り込まれてしまったパイロットを斬り捨てることなく卵の殻だけを破るように丁寧に出してあげる余裕すらあるのだ。

それでもVTシステムで創りだされた“ブリュンヒルデ”が徒党になって掛かってくれば厄介なことには違いなかったのだが、

一夏が指摘するようにVTシステムで創りだされた“ブリュンヒルデ”には心がなかった――――――協力や工夫などの発展性などあるはずがないのだ。



383: 2014/09/23(火) 09:51:08.16 ID:3zEhG37Z0


――――――この“ブリュンヒルデ”は基本的にISバトルにおける競技規定に則って1人ずつ相手にしようと動くようにプログラムされている。


だが、織斑姉弟は複数まとめて叩き潰そうと立ち回るので、そうするとVTシステム機からすると1対2の戦いになってしまい、

あくまでも“ブリュンヒルデ”としてのVTシステムは1対1の戦い方しかできないためにどちらを攻撃するかの判断に時間を掛けてしまうのである。

普通なら、『こちらは4人いるので4対2で圧倒的に有利』と考えるはずである。読者も客観的に見てそう考えていたはずである。

しかし、VTシステム機は『特に命令がなければ自動防衛プログラムに従うだけ』という非常にシンプルな思考回路であり、

どういうことかと言えば、こういうことである。これが一夏の言う『心のない』動きというものである。


――――――VTシステム機が連携しているように見えるのは、ただ単に他のVTシステム機が襲ってこないから反撃しないだけ。


つまりは、そういうことなのである。まさしく『物の数ではない』のだ。

もっとわかりやすく言うと、VTシステム機は自分以外に味方はいない――――――そういう立ち回りをしているのである。

よって、4体いるようでも実質は具体的な命令が無ければ完全に木偶人形であり、攻撃する意思を見せなければそこに存在するだけなのである。

だから、慎重に1体ずつ捕捉していけば、1体ずつ誘い出して各個撃破も容易であり、ただでさえ『モンド・グロッソ』仕様なので拍車が掛かる。

しかし、VTシステムはアラスカ条約ですぐに禁止された技術であり、その存在に触れた人間は極わずかであることから普通はそれを知らないわけである。

むやみやたらに銃口や剣先を向けてしまうことによって、専守防衛に徹していたVTシステムに先制攻撃の口実を与えてしまったわけである。

だが、そういったVTシステムの性質さえ知っていれば“ブリュンヒルデ”の数など大した問題ではなかった。

ついでに言えば、テ口リストの側もVTシステムの詳しい動作原理や思考回路を理解しておらず、

また、突入前に一夏が具体的な命令を下せるテ口リストを再起不能にしていたので、地上最強の織斑姉弟からすればあんなのは“ただのカカシ”である。

後は、それを正面から捻じ伏せるだけの実力があれば、瞬頃しつつ各個撃破など実に容易い問題だったというわけである・

もちろん、“ブリュンヒルデ”が弱いわけではないが、こればかりは『相手が悪かった』としか言い様がない結果である。


こうして、第3アリーナのVTシステム騒ぎはあっさり鎮圧されたわけなのだが、

しかし、“ブレードランナー”一夏としてはそれで終わりではなかった。

同じように、本来 最も力を入れて守るべき第4アリーナから引き離されて、そこにいる“彼”が今も襲われているのだ。

立ち回り次第で単一仕様能力『落日墜墓』によってどんなISも無力化できるだろうが、何が起こるかなんてわからないために駆けつける必要があった。

それ故に、“ブレードランナー”の節約癖でISでそのまま飛んでいけばいいのにわざわざ解除して己の脚でその場を後にしたのである。


――――――時間との戦いは終わってはいないのである!




384: 2014/09/23(火) 09:51:56.98 ID:3zEhG37Z0

――――――第4アリーナのどこか


友矩「単一仕様能力で単一仕様能力をコピーしたというのか? そこまでできたのか、『大疑大信』の能力は!」

友矩「すると、コピー先は『白式』からか?」

友矩「いや、それは不可能だ! 雪片弐型と雪平壱型は内部構造が異なるし、『白式』の『零落白夜』は通常の単一仕様能力とは違う雪片弐型専用だ」

友矩「いくら『風待』でも『白式』の仕様通りの単一仕様能力を雪平壱型で真似することはできない!」

友矩「『零落白夜』を展開した雪片弐型を『大疑大信』で奪うのならば筋は通る。が、本質的に『暮桜』と『白式』の単一仕様能力は別物!」

友矩「すると、『風待』の単一仕様能力の性質から言って、認識できる範囲のどこかに『零落白夜』を使えるISが別に居たということになるのか?」


ウサミミ「ふぅ~ん。やっぱりこの学園のどこかに『暮桜』が眠ってるんだねぇ」


友矩「!?」ビクッ

ウサミミ「うふふふふ」

友矩「なに!? まさかあなたは――――――」


束 「私が天才の束さんだよ~! はろ~!」ニコニコ


友矩「――――――篠ノ之 束!」ガタッ

束 「そんなにびっくりする必要なんてあるかな~。オーバーリアクションだよ、それは」アハハハ!

友矩「何の用です……!」

束 「うん? そりゃあもう いっくんと箒ちゃんとちぃちゃんを応援しにだよ?」

友矩「では、どうして僕のところに?」アセタラー

束 「…………さあ、なんででしょう?」ジー

友矩「………………くっ!」ビクッ

友矩「ん」ピィピィピィ

友矩「馬鹿な! もう1機のIS反応――――――!(しかも、これは“アヤカ”が事前に看破して監禁させたたはずの――――――!)」チラッ

束 「ふふ~ん」

友矩「まさか――――――!」アセタラー



385: 2014/09/23(火) 09:52:42.65 ID:JZmH5Y3h0

――――――
雪村「!」ピィピィピィ

雪村「あ……(これは、――――――間に合わない!?)」ビクッ

千冬?「――――――!」ヒュウウウウウウウウウウウウウウン!

ズバーン!

雪村「ぐわああ!?(マズイ! ――――――エネルギーが! こんなにも早く!?)」

千冬?「――――――!」ブンブン!

雪村「ぐあっ!?」ズバーン!

千冬?「――――――!」ドン!

雪村「うわあああああああああああ!」ゴロンゴロン・・・(強制解除)


箒「雪村!?」

箒「馬鹿な! 全て沈黙したはず――――――」

ラウラ「もう1機――――――、もう1機、このアリーナに居たのか!」

箒「あ」ゾクッ


教員『や、やめて! ほ、ほんとに!』


箒「あれは、私が乗るはずだった機体なのか…………」アセダラダラ

ラウラ「“アヤカ”! 早く逃げるんだ!(どういうことだ!? あれは特別製なのか!? 真っ先に“アヤカ”を狙って――――――!)」

箒「雪村ああああああああ!」
――――――

友矩「“アヤカ”ぁあ!」

――――――
一夏「“オペレーター”! 第3アリーナの状況はどうなっている!」
――――――

友矩「!」カチッ(咄嗟にマイク機能をオフにする!)

束 「おお いっくん! おひさ~――――――あれ?」

友矩「“ブレードランナー”! そのまま搬入路から中へ入って! ゲートロックを全て解除します!」カチッ

束 「そういうことするんだ? なら――――――」ムスッ

友矩「急いでくれ! “アヤカ”は頑張ってくれたが、最後のVTの1機に追い詰められている!」カタカタカタ・・・

――――――
一夏「わかった!」
――――――


386: 2014/09/23(火) 09:53:37.61 ID:3zEhG37Z0

友矩「遮断シールドレベルを通常に――――――なにっ!?」カタカタカタ・・・

友矩「遮断シールドの管理システムにアクセス制限だと!? システムは僕が掌握しているはずなのに――――――!」

友矩「ハッ」

友矩「何が望みなんですか、あなたは!」

束 「何のことでしょう?」フーフー

友矩「今すぐゲートロックを解除してください! このままだと“アヤカ”が――――――!」

束 「ヤダよ」

友矩「!!??」

束 「箒ちゃんに隣にいるのはいっくんで、いっくんの隣にいるべきなのは箒ちゃんなんだよ?」

束 「お前でもないし、あいつでもない。ちぃちゃんは居ていいけど、どうしてお前もあいつもいるわけ? 余計なんだよ」

友矩「!」

友矩「それが狙いか! 篠ノ之博士といえども、所詮はテ口リストか!(けど、今 言うべきことは――――――!)」ギリッ

友矩「もう一度だけ言う! ゲートロックを解除してください! 今なら見逃してやったっていい!」

束 「ヤダ」

束 「お前はいっくんには必要ないし、箒ちゃんの幸せも邪魔する!」

友矩「どういう意味なんだ、それは!」

友矩「――――――待てよ?」

友矩「まさか、一夏が忘れていた篠ノ之 箒との結婚の約束のことか?」

束 「…………!」


束 「どうして世の中 思い通りにいかないんだろうね」




387: 2014/09/23(火) 09:54:35.76 ID:JZmH5Y3h0


一夏「おい、どうなっている!?」タッタッタッタッタ・・・

一夏「ゲートが開いてないぞ、“オペレーター”! おい、“オペレーター”!」

一夏「どうした! どうして応答してくれないんだ!」

――――――

千鶴「“オペレーター”の代わって“シーカー”の私から指示を出すわ!」

――――――

一夏「千鶴さん!?」

――――――

千鶴「“ブレードランナー”! こっちは今 あなたとは斜向かいの第2ピットまで来ているわ」

千鶴「気懸かりだった 篠ノ之 箒が乗るはずだった機体にもVTシステムがやっぱり搭載されていて発動していたわ」

千鶴「そのせいなのか、厳重に監禁されていたはずなのに脱出していたの! それが最後の1機として“アヤカ”に襲い掛かってるの!」

千鶴「どういうわけなのか“アヤカ”を徹底的にマークしている!」

千鶴「今、“アヤカ”はあなたの目の前の搬入路の隔壁に追い詰められているわ!」

――――――

一夏「な、なに!(――――――センサーとディスプレイだけ展開!)」(部分展開)

一夏「『白式』! わかるか?」ピピッ

一夏「――――――“アヤカ”!(どうして壁際にもたれかかってジッとしてるんだよ! 逃げろ!)」ガタッ

――――――

千鶴「“ブレードランナー”! もう『零落白夜』でも何でもいいから隔壁を打ち破って直接入って!」

千鶴「私も狙撃してみるけど、これまで『シュヴァルツェア・レーゲン』が狙撃してきたのに一向に介さなかったから注意を引けないかも!」

千鶴「『シュヴァルツェア・レーゲン』のレールカノンも弾切れのようだから、今“アヤカ”を救えるのはあなただけなのよ!」

千鶴「急いで!」

――――――

一夏「くっ!(――――――抜刀!)」アセタラー

一夏「『白式』! 『零落白夜』最大出力――――――!」ジャキ

一夏「(イメージしろ! この隔壁を一瞬で貫く巨大な槍の姿を! 大丈夫だ、以前はアリーナの大地を崩落させたぐらいなんだ!)」

一夏「できないことなんて何もなああい!」

一夏「行くぞおおおおおおおお!」



388: 2014/09/23(火) 09:55:18.98 ID:3zEhG37Z0

――――――

千冬?「――――――!」

雪村「(よく頑張れたんじゃないかな? こんな僕でも人は十分に救えたんだ――――――マッチポンプだけど)」

雪村「フッ」

千冬?「――――――!」ブン!

――――――

一夏「――――――脇を開けろおおおお!」ザシュ

――――――

雪村「!?」ドクンドクン

千冬?「――――――!?」

ガキーン!

雪村「あ……」

――――――

一夏「うおっと!?(この手応え! うまく偽物の攻撃を防げたってことか……? 血が付いてなければいいんだけど…………)」ビリビリ

一夏「けど、そんなの確認してる時間がねえんだ! こんな壁をぶっ壊すほどぉお――――――!」ジャキ

一夏「――――――今度は伏せろおおおお!」ザシュザシュ

――――――

雪村「!」サッ

ザシュザシュ!

雪村「うわっとと!(――――――何だ!? 後ろの隔壁から光の何かが!?)」

千冬?「――――――!」ビクッ

――――――

一夏「うおおおおおおおおおおおおおお!」ザシュザシュ

一夏「(ただ無心に突いて突いて突きまくって壁をぶち破れええええええええ!)」ザシュザシュ

一夏「今、助ける!(あれ? わざわざ突きまくる必要はあるかな? メッタ斬りにすればすぐに入れるんじゃ――――――いや、迷わない!)」ザシュザシュ・・・

――――――

千鶴「よし! 動きが止まってる! 今なら確実に当たる!」ジャキ

――――――


389: 2014/09/23(火) 09:56:35.97 ID:3zEhG37Z0

ラウラ「“アヤカ”! ああ よくぞ、無事で――――――」

ラウラ「む、何だ? あの光は――――――」

バン! バン!

ラウラ「――――――後方より銃声!?」

ラウラ「!」


千冬?「――――――!」ドゴン! ドゴン!

雪村「!」

雪村「え、援護射撃? ――――――誰?(――――――ピットの方からの狙撃だ!)」

――――――

千鶴「間に合ってよかったわ(――――――にしても、)」ジャキ(IS用対IS用ライフルを匍匐射撃!)

千鶴「まさか、VTシステムがこんなにも用意されていたなんてね…………驚きを通り越して呆れたわ」

千鶴「さ、後は“アヤカ”くん次第というわけね」ヒュー

――――――

一夏「よし! とりあえず剣だけは渡せそうだ!」

一夏「それっ!」ポイッ

一夏「――――――受け取れ、“アヤカ”!」

――――――

コトン!

雪村「!」(その声が聞こえたと同時に、隔壁から薄青色の淡い光を放つ剣が落とされた)

雪村「その声――――――!(――――――光の剣! 夢の中で何度も見た無双の剣だ!)」

千冬?「――――――!」ブン!

雪村「――――――っと!」ドン!(咄嗟に飛び込んで攻撃を躱すと同時に光の剣を手に取り、そのままの勢いで力強く立ち上がる!)

雪村「これでぇええ!」ジャキ

千冬?「――――――!」ビクッ

雪村「終わりだああああああああああ!」ブン!


ズバーン!


ラウラ「!」

箒「!」

――――――

千鶴「…………!」

――――――

一夏「フッ、『壁際』の“アヤカ”が負けるかよ」

一夏「――――――『お前ならやれる』って信じてたぜ」

一夏「………………フゥ」


そう、勝負は決した。その結果がいかなるものかは言うまでもない。




390: 2014/09/23(火) 09:57:24.35 ID:JZmH5Y3h0







雪村「………………」ヨロヨロ・・・

雪村「………………フゥ」ペタン! ――――――壁際!

――――――

一夏「伝説の光の剣を振るった感想はどうだ?」フフッ

――――――

雪村「また、助けてくれましたね…………今度は現実世界で」ハアハア

――――――

一夏「…………遅れて本当にすまなかった(そう、いろんなことがあって――――――あ、友矩は? どうして応答してくれないんだ?)」

――――――

雪村「いえいえ、本当に感謝しています。――――――結果が全てですよ」アセビッショリ!

――――――

一夏「そうか。それじゃ、俺は行くぜ。後処理が他にも残ってるんだ(そうだ。友矩からの連絡がつかない! まさか――――――!)」

――――――

雪村「はい。また会いましょう」ニコッ

雪村「今度は、仮想空間で――――――」


――――――“ブレードランナー”。


――――――

一夏「ああ。またな!」

一夏「さて、――――――友矩!(まさかとは思うが、無事でいてくれ!)」

タッタッタッタッタ・・・



391: 2014/09/23(火) 09:58:24.39 ID:3zEhG37Z0

――――――第4アリーナのどこか


友矩「…………ぐぅうう」ゼエゼエ

千冬「退け。そして、二度と現れるな」ジャキ(IS展開)

束 「ちぃちゃん――――――それに『風待』か。私とちぃちゃんの『暮桜』の第2世代版という名の劣化版……」

千冬「聞こえなかったようだから、もう一度――――――」ジロッ

束 「どうして? どうしてちぃちゃんまで私の邪魔をするわけ?」

千冬「私はIS学園の現場責任者として、学園に仇なす者を成敗する義務がある」

束 「そんなのおかしいよ。本当はちぃちゃんだって今の学園を煩わしく思っているはずなんだよ?」

束 「どうして嫌な思いをしてまで守ってやろうとしてるわけ?」

千冬「それが大人というものだ」

千冬「それに、お前が弟や妹のために思ってやろうとしていることは今日まで“アヤカ”を害そうとしてきたテ口リストの所業と何ら変わるところがない!」

束 「違う!」

千冬「違わない!」

束 「ちぃちゃんは嘘を吐いている!」

千冬「甘えるな! これまでは幼馴染としての誼で見逃してきたが、お前にはほとほと愛想が尽きるよ」ジロッ

千冬「それに、今の私の手には『零落白夜』があるのだぞ? これでお前の命ごと繋がりを解消しようか?」ジャキ

束 「どうして……、何がみんなを変えちゃったっていうの!? どうしていっくんも箒ちゃんもちぃちゃんも昔のように優しくなくなったの!?」

千冬「それは自分が招いたことだろう!」

千冬「お前には何も見えてないのか! 理解するだけの知能が足りてないのか! “世紀の大天才”が聞いて呆れる!」

千冬「弟も妹も現在を生きているんだぞ! 過去の世界の住人のお前に心を開くはずがない――――――いや、会って話をしてみたらどうだ!」

千冬「こそこそと自分の手を汚さないように自分が不要だと判断した“アヤカ”と友矩を亡き者にしようとした罪は消えないぞ!」

束 「そんなのちぃちゃんの思い違いだよ! 私はみんなと輝かしい未来のために頑張っているんだよ!」

束 「だから、過去の世界の住人じゃない! 私は逆に昔から未来に生きてるんだよ!」

束 「どうしてそれがわからないのかな!」

千冬「過去だろうと未来だろうと、現在の人間じゃないのならお前のことなんて誰が理解できる!」

千冬「お前のいう未来はいったいいつになったら現在に繋がるんだ!」

束 「………………」

千冬「………………」


392: 2014/09/23(火) 09:59:02.14 ID:JZmH5Y3h0

束 「………………わかったよ。今はそう思ってもらっていいよ」

束 「けど、私がみんなを幸せにする! それだけは忘れないでよ」

千冬「くっ、だからその思い込みが周りを不幸にしているとなぜわからない!」

束 「ちぃちゃんは、今の世界は楽しい?」

千冬「そこそこにな……」

束 「そうなんだ……」ピッ

無人機「――――――!」

千冬「――――――IS!(しかも、クラス対抗戦で襲ってきた『例の無人機』と似通ったフォルム!)」

束 「それじゃ、今日は帰るね。今日は残念だったけど箒ちゃんが大活躍で良かったよ」

ヒュウウウウウウウン! ドゴーン! ガラガラガッシャーン!

千冬「くっ!」ガバッ

友矩「……すみません」

千冬「何を言う。お前が居てこその一夏だ」

千冬「お前の適切な判断処理が一夏と“アヤカ”を今日も救ってくれたんだ。感謝してもしきれんよ」

友矩「はは、そう思うのなら家事を少しでも覚えてください。せめて自分の下着だけでも取り込めるぐらいに…………」ニコッ

千冬「…………努力する。お前は私の姑か、逆だろう。まったく」フフッ





393: 2014/09/23(火) 09:59:51.89 ID:JZmH5Y3h0

――――――その直後、


一夏「もう少しだ!(どういうことなんだ? アリーナのロックはもう解除されていいはずだが……)」(黒服)

一夏「ん」

ヒュウウウウウウウン! ドゴーン! ガラガラガッシャーン!

一夏「おわっ!?」ゴロンゴロン・・・

一夏「ぐはっ…………な、何が起こった?」(黒服サングラスが外れる)

束 「ああ! いっくんだああああああ!」ヒューーーーン!

一夏「は?! た、束さん!?」ドキッ

束 「もう会いたかったよ~、久しぶりにハグハグしよ~! 愛を確かめ合おう!」ボイーン1

一夏「うわっ!? ちょ、ちょっと! む、胸が当たって――――――(うわっ! やっぱり妹よりずっと大きいぞ、これぇ!)」カア

束 「ふふ~ん。やっぱり気になる~?」ニヤニヤ

一夏「お、俺も男ですから! は、離れてください!」

束 「はーい」シブシブ

一夏「そ、それよりもどうして束さんがここに?」

一夏「あ! そっか、箒ちゃんの試合を見に来たってことなんですか?」

束 「うん! 大正解なんだよ、いっくん」ニコニコ

一夏「そうなんですか。今日は災難でしたね」

束 「まあ、そうだね」

束 「けど、あの箒ちゃんが予選突破するぐらいの腕前になって、胸だって立派なものを実らせるようになったよね!」

一夏「ええ まあ…………(確かに大きくはなっていた――――――あ! また思い出しちまった、あの弾力!)」ドキドキ

束 「お、おお?」

一夏「ハッ」

一夏「な、何にも考えてませんよ!」アセアセ


束 「へえ、いっくんも箒ちゃんのこと ちゃんと意識してくれてるんだ」


束 「良かった」

一夏「へ? 何が『良かった』って?!」アセタラー

束 「ふふーん! 教えてあーげない」

一夏「え、ええ…………」


394: 2014/09/23(火) 10:00:40.90 ID:3zEhG37Z0

束 「ねえねえ、いっくん いっくん!」

一夏「何ですか、束さん?」

束 「この大天才:束さんがいっくんのお願いを特別に1つだけ叶えてしんぜよう!」

一夏「え」

束 「さあさあ! 何でも言って。いっくんの願いなら何でも叶えてあげるから」

一夏「ああ…………」

束 「さあさあ! 何かお悩みのことがあるんじゃないかな。あるでしょう、いっぱい!」

一夏「あ、それじゃ――――――」

束 「うん! 何々?」


――――――VTシステムを根絶やしにしてくれませんか?


束 「……へえ」

一夏「今日は疲れましたよ。トワイライト号の時にも襲われましたけど、たとえ偽物であろうとも千冬姉の似姿で悪事を働かせるのは許せない!」

一夏「たぶん、デュノア社がこの一件に大きく絡んでいるはずだから、束さんが何らかの証拠を掴んできてくれれば――――――」

束 「了解了解! 合点承知の助! いっくんの願い、叶えてしんぜよう!」

一夏「ああ……、ありがとうございます」

束 「けど、本当にそんなお願いでよかったの? 『お金持ちになりたい』でも良かったんだよ?」

一夏「いや、俺は別にカネや名誉が欲しいってわけじゃないんだ」


一夏「ただ身近な人の笑顔のために、できることがあったらそれって最高のことだなって」


束 「いっくん……」

束 「良かった。いっくんは今も昔も“いっくん”のままだ……」ホッ

一夏「…………束さん?」

束 「それじゃ、いっくん! 私はいっくんのお願いを叶えるためにがんばるからね! またねー!」

一夏「あ、ちょっと! 千冬姉や箒ちゃんには会っていきましたか?」

束 「ふふふふ、それはまたの機会に」

束 「それじゃあねー!」

束 「忍法ドロロンの術!」ドロロン!

一夏「ぎゃっ! け、煙い……!(――――――なんでこんな狭い屋内で煙幕なんか!)」ゲホゲホ・・・


395: 2014/09/23(火) 10:01:22.06 ID:JZmH5Y3h0

モクモク・・・・・・

一夏「来い、『白式』ぃ……!」ゲホゲホ・・・

一夏「………………フゥ(変装マスクさまさまだな)」

――――――
千冬「“ブレードランナー”! 状況はどうなっている!」
――――――

一夏「あ、千冬姉! VTシステム機は全て沈黙しました。今のところ、新しい動きは無いようです」

一夏「それよりも、早くアリーナのロックを解除してくださいよ。“オペレーター”に連絡しても反応がなくて困ってます」

一夏「早くみんなを出してあげてください! VTシステムに取り込まれた人たちも特別病棟に運ばないといけないから!」

――――――
千冬「ああ。今 制御が回復したようだ。すぐに開くはずだ」

千冬「それに、“オペレーター”も無事だ」
――――――

一夏「それは良かった」

一夏「あれ? 今、千冬姉は何て言った――――――?」

――――――
千冬「どうした? 不明瞭なことがあるのか? 緊急でないのなら状況の整理のために一度集合してくれ」

千冬「そうだな。場所は――――――」
――――――

一夏「あ、ああ…………(まあいいや。今は一刻も早く事件の後処理をしないといけないからな!)」

一夏「よし! これから向かいます!」




396: 2014/09/23(火) 10:02:22.52 ID:JZmH5Y3h0

――――――その夜

――――――地下秘密基地


一夏「結局、大会は無期限中止か。惜しかったな、もしかしたら“アヤカ”と箒ちゃんにも優勝の目はあったかもしれないのに」

友矩「そうだね。おかげで一夏は九氏に一生を得たわけだ(まさか、『これが一番丸く収まる結果』だなんて思ってないよね?)」ジトー

一夏「いっ」アセタラー

弾 「どういう意味だ、そりゃ?」

一夏「……何でもないです!(不謹慎だが、そういう意味では中止になってくれてホッとしてる自分がいるのが悔しい!)」

友矩「けど、今回の作戦で『“ブリュンヒルデ”が機体を乗り換えた』という情報が流れました」

友矩「これで“ブレードランナー”は“ブリュンヒルデ”である必要はなくなったので、活動は以前よりもしやすくなったはずです」

一夏「…………そうだな」

弾 「うん? どうしたんだよ、一夏? 何か元気ないじゃないか」

一夏「いや、大会が始まる前に超国家規模の陰謀を間近に感じてたわけじゃん?」

一夏「それを今日、俺たちは一網打尽にしてはみたけれども、これからどうなるんだろうなって」

一夏「敵を倒して『はい、オシマイ』ってわけじゃなくて、――――――これからなんだよ。本当に大変なのは」

友矩「そうですね。今回の計13機ものVTシステムの導入――――――それを看過してきた学園側の責任はどうなるのかと」

弾 「確か学園のISって専用機を除くと30機ぐらいなんだっけな。半分近くをやられていたとあっちゃなあ?」

友矩「それに、大会前の内部粛清の結果として学園職員の人材不足に陥って今日の接客のまずさをお偉方に酷評されているようですしね」ピピッ

友矩「まあ、口止めはされているようですから、VTシステムの騒ぎに関しては何も触れられていませんが」

弾 「不都合な真実を隠し続けていつまで保つかね?」

一夏「…………難しいな、人の世って」

弾 「どうしたんだよ、突然……」

一夏「いや、守られる側・襲われる側って普通は善良ってイメージじゃん? けど、こんなふうに俺たちにも隠していることがあると思うとさ?」

友矩「そうだね。自分が守っていた者が実はとんでもない悪事を働いていたとしたら、やるせないし、これまで通りにはいかなくなるよね」

弾 「ああ…………物語をひっくり返す分にはおもしろい展開だけれど、現実でそれをやられちゃ虚しくなるよな」

一夏「けどさ? だからこそ、考えるんだよ。――――――何が正しくて、何がいけないのかを」


397: 2014/09/23(火) 10:03:03.35 ID:3zEhG37Z0


一夏「大きく疑って、大きく信じ抜く! これしかない!」


弾 「それって、確か『風待』の単一仕様能力の――――――」

友矩「ええ。参禅弁道における三要諦「大信根」「大疑団」「大勇猛心」の――――――簡単に言うと仏教を信仰する上で大切な3つの概念です」

友矩「それに由来するのが、日本最初の第2世代型IS『風待』の単一仕様能力『大疑大信』というわけです」

弾 「えと、具体的には?」

一夏「本当にこの人は『世のため、人のため』と口にした通りの腹積もりなのだろうか?」

弾 「なるほど」

友矩「もっと身近な例がありますよ」


友矩「本当に織斑一夏は心の底から人々を救おうとしているのだろうか? 本当は地位や人気取りのためにそう振る舞ってきているのではないか?」


友矩「とかね?」

弾 「あ、ああ…………!」

友矩「でも、どうです? 疑って疑って疑い抜いて真実に辿り着いた時、強い確信や信頼に変わってるでしょう?」

弾 「ああ! もうどんな時でも一夏は氏ぬまでお人好しだってことは俺の中じゃ不変の事実だよ」

友矩「これが「大疑団」というものであり、ちゃんとした考証に基づいて疑うことは悟りへと繋がるわけなんだね」

友矩「疑うことは悪じゃありません。真実に辿り着く前に結論を出してしまう――――――早計であることが悪なんです」

友矩「で、後は信じ抜くだけだね。もっとも「大信根」っていう根源的な不変の事実や法則があるってことを確信していることが大前提だけど」

一夏「へえ」

弾 「え? お前も知らないのか?」

一夏「いや、俺はしっかりと考え抜くことを教わっただけで、別にそういった神様とか超越者のような哲学的なことは考えたことないな」

友矩「それでいいんですよ。しっかりとした考えを持って疑って、それから信じ抜くことさえできていれば」

友矩「それで、『風待』の単一仕様能力『大疑大信』は「大疑団」に基づいた能力というわけでして――――――」

弾 「はあ……、何か俺、どんどん賢くなっていってるような気がするな!」

友矩「ええ。僕もあなたの人選は正しかったという確信がありますよ?」

弾 「はははは、嬉しいこと言ってくれるねぇ」

一夏「ああ。弾は仲間だ! これからもよろしく頼むぜ!」

弾 「おうよ!」

一夏「さ、明日も早いんだ。今日はゆっくりと休ませてもらおうぜ?」


――――――役目を終えた“ブレードランナー”はしめやかに鞘に戻るぜ。




398: 2014/09/23(火) 10:04:02.33 ID:JZmH5Y3h0

――――――それからの日々、


一夏「そうか。デュノア社は実質的にお取り潰しか。いくつかの工場で謎の爆発事故が起こってもいるし、踏んだり蹴ったりだな」

友矩「ま、当然の報いだね」

弾 「けど、これで一躍 良くも悪くもシャルロット・デュノアちゃんは時の人になったわけだ」

弾 「いろいろと大変だろうな。俺はかわいそうだと思うし、守ってあげたいけれど、そうだと思わない人間も確実にいるわけだからな」

一夏「彼女、学園には残るみたいだな」

一夏「フランス最大のIS企業のデュノア社の没落で祖国は大変だけれども、人権団体の働きかけで公式サポーターがついてひとまずは安心か」

友矩「そうだね。IS適性は高い上に代表候補生としての実力も十分。美男子の子役に見間違えられるぐらいの美貌だからすでに人気はあるようだね」

弾 「そういう友矩も宝塚に出てくるような美人さんだろうが。黙って一夏と並んでいたらカップルのようだっていうのが評判だろう?」

一夏「お、俺と友矩は別にそんな…………」テレテレ

弾 「どうしてそこで言葉を濁すんだよ…………そこが真実味を持たせてしまう原因だろうが」ヤレヤレ

友矩「そういう弾さんも、中学時代の同窓生から話を聞くに、やっぱり一夏とデキていたのではないかという評判ですか?」ニヤリ

弾 「な、なんだとぉおおおおお!? う、嘘だろう!?」

友矩「今日に至るまで何人の女性からお付き合いのお誘いがあったと思うんですか?」

友矩「それに、中学時代の方々の話をまとめると、一夏と弾さんはセットで数えられるぐらいに一緒に居たという印象だそうです」

弾 「お、おホ〇だちじゃねえよ、俺はぁ…………」

弾 「そ、それに! 俺に言い寄ってくる女性は確かにキレイどころは多かったけれど、ピンと来るものがなかったんだよ!」

一夏「何だ? 蘭以外の女性とは付き合いたくないってことか? 弾らしい!」クスッ

弾 「シスコンのお前に言われたくはねえよ、それ……」

友矩「ま、何にせよ、思ったよりも学年別トーナメントの影響は少なかったということだね」

一夏「そうだな。特にIS学園が罰せられたというような情報もないしな」

一夏「平和で何よりだ」

弾 「そうだな(なんか不気味な感じもするけどな……)」


399: 2014/09/23(火) 10:05:02.89 ID:3zEhG37Z0

弾 「ところで、――――――あのラウラちゃん! 結構な人気のようでよ? ファンクラブができてるらしいぜ?」

一夏「へえ、それは良かった。ラウラちゃん、約束は守ってくれてるんだね、ちゃんと」フフッ

弾 「ブロマイド出たら、買ってあげようぜ! インフィニット・ストライプスにも出たら必ず買おう!」

一夏「そうだな。これから楽しみだよ」

一夏「そうだ。知り合いの子のものは全部買っておかないとな!」

一夏「ラウラちゃんと、――――――それから“アヤカ”に、シャルロットに、鈴ちゃんに、箒ちゃんに、いろいろ!」

友矩「『いろいろ』増えなければいいね?」ニコニコー

一夏「あ…………」ビクッ

弾 「…………一夏だもんな。ふとした拍子で『知り合いの子』が増えちまうんだろうなぁ」

一夏「あ、えと……」アセアセ

一夏「そ、そうだ! 俺、第1期日本代表のブロマイドやポスターの類は関係者として全部持ってるから秘密基地に持ってくるよ!」

一夏「あのまま埃まみれにしておくよりもいいし、第一 華やかになるし、やる気が出るとかあるはずだ!」

弾 「ああ ずりい――――――でも、許す! やろうぜ、それ! 全部出せ!」

友矩「そうか。確かに一夏は関係者としていろいろ貰ってるんだもんね」

友矩「――――――肉体的関係も」

一夏「だああ違うって! 俺はただ単に千冬姉御用達のマッサージ師として公式サポーターだっただけだぁ!」

弾 「ははは、わかってるって、一夏。いちいちキョドるなよ。そんなんだから からかわれるんだぜ、“童帝”?」クスクス

一夏「うるさい! 弾だって友矩だってそうだろうに!」

友矩「だったら、学習すればいいじゃないですか」

友矩「『女の子のあられもないウフフな姿や見えちゃいけないウヒョーなものを不可抗力で見てしまい――――――、」

友矩「――――――馬鹿正直に見てしまったことをあからさまにしてそのまま女性から制裁を受ける』ような芸術的な反応はしなくなったじゃない」

一夏「あ、うん…………確かに」

弾 「まあ、確かに中学時代からありましたわな~」

弾 「『一夏と近くにいるとラッキースOベにありつける』って噂されるようにもなったんだけど、同時に『必ず制裁を食らう』とも言われてな」

弾 「当時の色を知ったばかりの若き雄たちは危険と知りながら秘境を目指して一夏と一緒に果てていったものだ……」

友矩「その巻き添えを常に受けてきたのが五反田 弾というわけかな?」

弾 「うん。その辺は否定しない。――――――けど、俺と一夏の関係は入学した時からだから噂が出る以前だから安心してくれ」

一夏「そ、そうだったのか…………そんな頃から俺はそんなふうに思われていたのか」

弾 「ああ。俺だって変だって思ってたもん!」

弾 「工口工口魔神でも憑依していたのか、やたら女子が着替えしているところに突入したり、突風が吹いて女子のスカート全部がめくれたり!」

弾 「思えば、その頃から“童帝”としての片鱗はあったんだな…………」

友矩「けど、一夏は馬鹿だから基本的に痛い目に遭わないと自分から変えようとしないからね! ふん!」

一夏「わ、わかってるつもりだ。――――――それが俺の悪いところだって」

友矩「大学時代に強烈なメンヘラにパンチラをわざとされてそれを口実に関係を迫られてようやく改めたんだもんね!」

弾 「ま、マジかよ……(『羨ましい』って反射的に思ったけど『あの一夏が心を入れ替えるぐらいヤバかったんだろうな』って気づいてしまった……)」

一夏「あまり思い出したくない…………俺の仮想世界を作ったら絶対に出てきそう!」ガタガタ


400: 2014/09/23(火) 10:05:42.70 ID:JZmH5Y3h0

友矩「世の中 広いというわけだね。このノータリンを震え上がらせるようなとんでもない出会いがあったり――――――」

弾 「…………そうだな。想像もつかないぜ」

弾 「というか、こうして俺たちが“ブレードランナー”として活動しているのも、実際に犯罪を鎮圧して人を救ってるのもな」

一夏「ホント、嵐が過ぎ去って平和になったもんだなぁ」

友矩「はたして、そうなんでしょうかね。あるいはその平和は長続きするんでしょうかね」

一夏「ん?」

友矩「学園はVTシステムの濫用の件で今後厳しく管理するように言われましたし、」

友矩「内部粛清の結果、学園組織の人材が不足して今 組織の再建で大変なんですよ」

一夏「あ」

弾 「何かありそうだな……」

友矩「今週、学年別トーナメント以来初めての仮想世界の開拓が行われますが、ここにも何か入ってきそうな気がしますね」

友矩「“パンドラの匣”と呼ぶことになった仮想世界には、“アヤカ”がなぜISを扱えるのかの真相があるとされています」

友矩「それ故に、この極秘プロジェクトは“全てを与えられた者”の名を冠することになったのです」

弾 「けど、さすがに一夏以外の人間にやらせることなんてできねえんだろう?」

弾 「心の世界ってわけなんだからさ? “アヤカ”が信用しない人物にとっては地獄のようなところだろう」

一夏「確かにそうかもしれないし、そうじゃないかもしれない」

一夏「俺以外 電脳ダイブした人間がいないんだし、“アヤカ”自身も心を開き始めているから何とも…………」

友矩「予断は許されない状況がまだまだ続きますね」

一夏「けれど、確実に言えることは1つだけある」

弾 「お? 何だ?」


――――――これからも“人を活かす剣”が全てを解決するってことだ!


友矩「ええ」

弾 「おうよ」

一夏「一人では至らない身だけど、」


――――――これからも力を貸してくれ、みんな!


「おおおおおおおおおお!」


1つの戦いは終わり、また新たなる戦いの幕が開ける。

しかし、今しばらくは戦士に休息と英気を養う時間を――――――。

そして再び、戦いの舞台へと駆け出していくのだ。


行け、“ブレードランナー”! 次なる災厄の根源を断ち切り、人々の平穏な明日のために――――――!




401: 2014/09/23(火) 10:06:52.27 ID:JZmH5Y3h0

短いですが今回はここまでです。

これにて、序章(第1期)の起承転結が完結いたしました。

ここからはまさしく消化試合のようなものです。


銀の福音『くっ、ダメだ、飛べん! 浸水だと……!? 馬鹿な、これが私の最後だと言うか! 認めん、認められるか、こんなこと!』


また、“パンドラの匣”をめぐる暗闘や第一部(第2期)に向けた下準備が始まっていきます。

“パンドラの匣”の開拓がアニメ第2期のワールドパージ編に相当するものなので、

今のところ、第2期を創作した中で真っ先に終わるのがこの剣禅編となることでしょう。

ただ、11月末にアニメ第2期OVAのそれが発売となるのでこの剣禅編第一部(第2期)が完成して投稿されるかは別の話ですが。

これ以降の話はキャラクタークエストみたいなものとなります。

明らかに優遇されている篠ノ之 箒とラウラ・ボーデヴィッヒ以外のキャラの救済でもありますので、今度は気楽に読んでいってくださいませ。

なお、今作は文章量削減と謎掛けのために、必要に応じて詳細な描写と事実関係の追求は省いておりますので、

あの場面とあの場面の間に何が起こったのかは読者の想像におまかせしております。

また、物語中に差し込むのが難しい類の心理描写の整理や能力解説などはページを設けて解説していきますのでそのつもりでこれからもお願いします。


それでは、今月中に更なる投稿は難しそうなので、来月、またよろしくお願い致します。


     ご精読ありがとうございました。



402: 2014/09/23(火) 10:07:39.56 ID:3zEhG37Z0

第7話 登場人物概要

朱華雪村“アヤカ”
実年齢:17歳(戸籍上:15歳)
IS適性:A
専用機:『打鉄/知覧』“呪いの13号機”→『打金/龍驤』“黄金の13号機”

“世界で唯一ISを扱える男性”であり、織斑一夏とは違って力を持ってしまったことで全てを奪われて無気力となった少年。
本編開始以前:2年前にIS適性があることが確認されており、そのことで一時期『 “世界で唯一ISを扱える男性”の登場』という怪情報で世間を騒がせた。
そのことはデマや都市伝説として早急に収束したのだが、実際は女尊男卑を推進する過激派女性人権団体によって迫害されて社会的に抹殺されていた。
また、日本政府がその存在を独占するために、あるいは世界各国からのスパイが押し寄せていたために、重要人物保護プログラムを受けざるを得なかった。
その過程で何の罪もなかったのに家族とは離れ離れになってしまい、謂れのない悪逆非道の限りを受けてしまい、精神崩壊を起こして無気力状態となっている。
その体験が仮想世界“パンドラの匣”における“魔王”や魔物たちのモチーフとなっている。

作中における“彼”とは、現在の朱華雪村“アヤカ”を含む不幸な運命を背負わされた少年を一括した表現として使われている。

基本的には“彼”に関する全てが重要人物保護プログラムによって与えられた偽情報であり、もちろん“朱華雪村”なる氏名も偽名である。
“朱華雪村”は一番新しい偽名であり、しかたがないとはいえ無気力・無愛想・無反応に付き合いきれなくなった担当官が皮肉と嫌味たっぷりにつけた偽名であり、
“朱華”とは“ニワウメあるいはニワサクラ=唐棣”“禁色の1つ”であり、“雪村”とは“雪に閉ざされた隠れ村”“同じ読みの“幸村”との対比”としている。

世間的な常識は失われてはいるものの、同じ“ISを扱える男性”織斑一夏とは違って他人の感情には敏感であり、
黙ってはいるが、周囲の人間関係に関しては積極的に調べる意思さえあれば完璧に把握できるぐらい洞察力にも優れている。
その織斑一夏に対しては自分の周りの女の子の心を次々と鷲掴みにしていく様を前にして驚き呆れながらも嫉妬なんてはしておらず、
一夏自身が“童帝”としてのスケコマシの才を制御できずに苦悩していることを非常に心配している。
自分と同じく望まずして得てしまった過ぎたる力に振り回されながらも力強く前を向いて生き、自分に対しても手を差し伸べてくれるために、
「相互意識干渉」がなくても、自身の持ち前の洞察力と一夏の持ち前の至誠から織斑一夏に対しては絶対の信頼と尊敬を抱いている。
ただ、電脳ダイブしていく中での「相互意識干渉」があって加速度的に一夏を通じて人間らしさを取り戻しつつあるのも事実である。


“織斑一夏”の代替キャラ・関連キャラとして命名されており、

苗字=織物業・繊維業関連のもの=“朱華”=“唐棣”=“禁色”
名前=季語+数字に関連するもの=“雪村”=“秋の季語+村八分”

迫害されてきた・社会的に抹殺されてきたことを暗示させるネーミングとしている。
また、他にも――――――、

“朱華”=“アヤカ”=“女っぽい(=男扱いされてない)”=“IS乗り”
“朱華”=“ハネズ”=“跳ねず”=“飛べなくなる”=単一仕様能力『落日墜墓』の暗示
“朱華”=“ハネズ”=“刎ねず”=氏にたくても氏ねない
“朱華”=“唐棣”→“棣”=“隷”=日本政府の監視下、“朱”=“血の色”
“織斑一夏”と苗字と名前の末の音韻(ムラ、カ)が逆=待遇の差、境遇の違い

やはり、ろくでもない由来が込められており、『存在自体が冒涜的』というわけである。

戸籍上は15歳されているが、実際は17歳なので本編における3年生たちと同い年であり、箒たちより年上である。
しかし、IS適性が発覚してからの悪夢の2年間で全てを奪われて虚無感に苛まれて無為に生きてきたので、
“彼”の時間は15歳で止まっているのであながち“彼”が15歳というのは間違いでもない。

日本政府としては“世界で唯一ISを扱える男性”である“彼”を利用してIS業界における地位を確固たるものにしようとするが、
本人は氏んだようにやる気がないために扱いに困ってしまい、貴重な専用機を率先して与えてデータをとることすら思わなくなっていた。
『白式』は本来 非凡な剣の才を持つ“彼”のために調整と開発が進められていた機体だったが、当初の開発目的である「第1形態で単一仕様能力」を実現できず、
搭乗予定の雪村の専属となる案すらも白紙となったので『白式』も開発中止となり、長らく放置されることになった。
その後、“ブリュンヒルデの弟”織斑一夏の登場によって『白式』は一夏の手に渡るのだが、
政府の織斑一夏の扱いが極めて慎重(?)になっていたのも、朱華 雪村の尊い犠牲とその反省によるものである。


403: 2014/09/23(火) 10:08:29.63 ID:3zEhG37Z0

篠ノ之 箒
もはや『誰これ』レベルで青春を謳歌している普通の女子高生。
ちょっと特別なのは『姉がIS開発者であること』『“アヤカ”の母親役』『想い人が9つ上』『一家離散の憂き目に遭ったこと』ぐらいである。
思春期特有の肥大化していく自意識の中で得られるチャレンジ精神でグイグイ進んでいき、非常に明朗で快活な人物に成長している。やっぱり初めが肝心!
“アヤカの母親役”として安定した忍耐とコミュニケーション能力を得ており、更に元々が優れた身体能力に恵まれているので、
ラウラとは違った層からクラスの人気者となっており、“アヤカ”との“母と子”の微笑ましい関係から人脈を拡げていっている。
また、箒の持つ力強さが母性として還元されているので、暴力女としての短慮で粗野な印象は一切ないはずである。

今作における正真正銘のメインヒロイン故に優遇ぶりが過去最高となっているのだが、それだけには留まらない運命を辿ることになる。

彼女にとっての織斑一夏とは“近所の憧れのお兄さん”であり、姉と1歳違いであるために直接的な繋がりは原作と比べるとかなり薄い。
しかし、この一夏は織斑千冬に一歩劣るが相当な実力者であり、歳を重ねていることもあってめちゃくちゃ強いので原作以上に尊敬の念を持たれている。
また、姉からの冗談と一夏の天然ジゴロの口説き文句によって本気にしていることがあり――――――。

原作では、織斑一夏に執着したせいでIS学園入学当初の態度は傍から見れば 最悪なものになってしまっており、
しかしながら、“織斑一夏”こそが彼女にとっての全てであったことから、他がどうなろうと知ったことではなかった。
後に、元凶たる姉から誕生日プレゼントとして贈りつけられる専用機『紅椿』も 彼女からすれば織斑一夏と親しくなるために必要な道具という認識でしかなく、
戦意喪失した際にはその機体の重要性を考慮することなく躊躇いなく放棄しようと思ったぐらいに傍から見ると身勝手で横柄な人物である。
ここまで書くとそれは“依存”でしかなく、織斑一夏がいないほうが箒にとって全面的によかったのではないのかと思われるのだが、
実際はお節介焼きな彼の存在に心の安らぎを得ており、状況としても彼女が“本名”のままに生活をし 心機一転が図れる時期でもあったので、
彼のお節介な性格と彼を通じての縁で得た強敵たちによって確実に良い方向へと変わりつつある。――――――結果論ではあるが読み物としてはそれでいい。
――――――が、それでも悪い意味で頑固者であり、『福音事件』で一夏が瀕氏になる過失を味わっていなければ到底変われなかったかもしれない。

やはり分岐点は、最初に勇気を振り絞って“アヤカ”と“友達”になることを自分から始めたことだろう。――――――最初が肝腎!
最初を逃したら関係が定着して、どちらとしても声をかけづらくなるので、高校デビューとしては最高のスタートダッシュであった。
そのおかげで、周囲からは“アヤカ”のような子にも積極的にふれあおうとする頼り甲斐のある人と見られ、非常に好印象となった。
そこからどんどん調子づいていき、最終的にはラウラを感服させて、“母親”として“アヤカ”を信じ抜く強い精神力を備えるようになった。
(ただし、一夏からは“姉の友人の妹”としか相変わらず思われておらず、やっぱりいろいろとやきもきさせられている)


セシリア・オルコット
深窓の令嬢――――――高嶺の花としてド底辺の存在である“アヤカ”との絡みはほとんどない。今作随一で原作よりも影が薄いキャラである。
搭乗している機体が遠距離射撃機なので訓練相手としても余計に絡みづらく、その距離感がそのまま出番の少なさに繋がっている。

前作の番外編では先輩キャラとして安定した精密射撃による支援で存在感を発揮していたが、
今作の剣禅編では“世界で唯一ISを扱える男性”朱華雪村こと“アヤカ”がいろんな意味で恵まれているので彼女の手を借りる必要がない。
ただし、“アヤカ”の特殊性を受けてセシリアも今までにはなかったリアクションをとっており、新鮮な一面が見られたはずである。

しかしながら、やはりチョロインはチョロインだった…………


凰 鈴音
2組――――――だけではなくなり、今作では同じ接近格闘機乗りの“アヤカ”をライバル視するようになっており、
“アヤカ”の成長性を誰よりも注目しており、将来を見据えた訓練に励むようになっている。

やはり、鈴は友達にするなら良い性格なので、ちょっとしたきっかけがあれば、すんなり友人となって頼りになることだろう。
原作での幼馴染であることを変に強調して自分から壁を作ってしまうような一面はなくなっているので、
適度な距離感を保つ良き友人として“アヤカ”から信頼されていく。


404: 2014/09/23(火) 10:09:14.01 ID:JZmH5Y3h0

シャルロット・デュノア
今作で一番扱いがぞんざいな人。
影が薄いだけならばそれでいいのだが、“アヤカ”からは信用されていなかったので助けられることもなかった。
実際に直面すれば当然といえば当然の扱いかもしれないが、原作との落差が大きいことに堪える人も多かったのではないかと思う。
やはり、物語として盛り上げるのに必要なのは、馬鹿と言われようがお人好しで行動力のある主人公だということなのであろう。

本質的に篠ノ之 箒と同じように他人に依存しないと生きていけないが、今作では箒の方から不器用と言われるぐらいに差が付いている。
子供なので他人に依存しないと生きていけないのは当然のことなのだが、シャルはイメージとして理知的でどこまでもあざとい印象があるが、
“妾の子”として生来的にどこか捻くれているので、織斑一夏相手ならばそれでいいかもしれないが、“アヤカ”に対してはまったくの逆効果であった。
“アヤカ”の方がぶっちぎりで不幸なので、その程度の不幸な境遇では共感してもらえず、自分にすがろうとするシャルを鬱陶しく思っていた。
篠ノ之 箒だから“アヤカ”は心を開いたのであり、もしシャルと最初に会っていた場合は間違いなく“アヤカ”は変わらなかった。

今作における箒とシャルとの差がどこでついてしまったのかと言えば、
“アヤカ”とふたりきりになってカミングアウトした際に――――――、
・箒は自分の内面をさらけ出して“友達”になることを精一杯必氏になって勇気を振り絞ってくれた
・シャルロットはそこで言った言葉が“亡命”であり、結局は本名も明かさずに表層的な関係に終わらせてしまった
人間不信で警戒心の強い“アヤカ”に対してどちらが信頼に値するのか、よっく考えてみれば当然の反応だと思われる。

ただし、これからはシャルロット・デュノアとして新たな関係が築かれていくのでどうなっていくかはこれから次第である。
別に、結果的に助けなかったからといって“アヤカ”としては自分から拒絶していたわけじゃなく、
「助けて」と言ってくれなかったから助けなかっただけであり、“アヤカ”自身に道徳心や正義感が完全にないというわけではない。
人間不信になった結果、どこまで踏み込んでいいのかわからなくなったために、“鏡”のように相手の態度そっくりそのまま返しているだけである。
そういう意味で、内面を見せようとしないシャルに辛辣に当たるのは当然であり、シャル自身も他人を信用していなかったわけである。
原作でシャルが一夏に惚れ込むのも、ひとえに一夏の方からシャルを信用して親身になったからシャルは心を開いたのであり、
今作ではその逆で、自分から“アヤカ”を信用しなければならなかったのにそれができなかったために、最悪な運命だったわけである。


ラウラ・ボーデヴィッヒ
ドイツから来たスーパーヒーロー。
織斑姉弟があまりにもヒーローしているのでその弟子もかなり正義感の強い人柄に変わっている。
今のところ、教官の汚点である織斑一夏とは会ってすらいないのだが、会ったとしても原作ほどの恨みの念をぶつけることはまったくないだろう。
来訪初日の送迎での“ハジメ”との出会いを起点にして、何を考えているのかまったくわからない“アヤカ”とのふれあいや、
『ISが全てではない』と言い切った篠ノ之 箒との邂逅で、彼女の内面や価値観もずいぶんと変わっており、ラブパワー無しで成長を遂げている。

その代償として、原作の無知+ラブパワーによる銀髪の天使は存在せず、硬派な印象がひときわ強くなっている。
その失われたラブパワー分がどこへ流れていってしまったのかというと――――――。
今作ではファンクラブができるぐらいの人気者であり、セシリアの数少ない存在感を食う勢いで箒と並んで物語的にもツートップになっている。


更識 簪
原作よりも出番が多くて扱いが良い人。
むしろ、原作が酷すぎるといっても過言ではない日本代表候補生の最新鋭の第3世代機の専用機持ち。
だって、IS大国:日本の最新鋭の国家の威信を賭けた第3世代機が完成されずに放置されてるってどういう扱いよ!?
地味で内気でウジウジしていてダメな子の印象が強すぎるが、今作では代表候補生として“アヤカ”を圧倒するだけの技量を見せつけており、
原作でも大会が中止されることがなければこうやって地味に存在感をアピールする機会を得られて、幾分かは気分が晴れていただろうに…………

当初は“アヤカ”に対して良い感情を持っていないのだが、実は“アヤカ”とはこれから仲良くなっていくことになる。



405: 2014/09/23(火) 10:10:46.20 ID:3zEhG37Z0

織斑一夏(23)
IS適性:B
専用機:第3世代型IS『白式』

今作の裏の主人公であり、要所要所で表の主人公である“アヤカ”を助けている正真正銘の陰に生きるヒーロー。
原作と比べて――――――も何も、『原作の一夏が社会人になったらどうなるのか』という姿を具現化した存在なので、
当然ながら原作の一夏よりも全面的に遥かに完成された人間性になっているのは疑いようがない(間違っても『そのまま社会人だったら』ではない)。
もちろん、欠点も引き継がれており、相変わらず学ばない馬鹿であり、深く物事を追求せず、判断は他人任せな無責任なところが残り続けている
極めつけは、学年別トーナメントで再会した篠ノ之 束を久しぶりの幼馴染として登場から何まで怪しさ満点なのにのほほんとお喋りして見送った点。
さすがに経験と失敗を重ねて、良き友人を得ていく中で少しずつ自分の性質を自覚していき、少しは改善していくようにはなってはおり、
一方で、そういった彼の人間性が問われるような事態にならない限りは、実に他人が羨む・嫉妬する・崇拝するレベルの高性能ぶりであり、
現代を生きるのに必要な全てを兼ね備えた“童帝”として織斑千冬に比肩する存在として描かれる。

実の姉であり 唯一の肉親である織斑千冬に対して並々ならぬ想いを抱いている真性のシスコンなのは確かであるが、
それを自分の姉の熱心なファンの心を正面から叩き潰すための口実で[ピーー!]なことや[ピーー!]なことまでしたと放言する、悪い意味で大物である。大人げない。
繰り返すが、この織斑一夏は(21)ではなく(23)である。ニーサンである。
だが一方で、“人を活かす剣”――――――“ブレードランナー”に必要な柔軟な発想や冷徹さ、フラグクラッシャーとしての豊富な経験もあるので、
学年別トーナメント最終日にテ口リストの動揺を誘うために吐露した[ピーー!]な内容がどこまで本当なのかは読者の想像におまかせする。

断言できることは、――――――仮に織斑千冬が悪の道に走ったと判断した場合は、たとえ最愛の人であろうとも斬り捨てる覚悟を持っていることであろう。

原作よりも実力がある以上に、原作でもあった攻撃性が遥かに増しているのがこの(23)であり、血を見ることもやむなしの非情さが大きな違いといえる。
もちろん平和的手段による解決を強く望んではいるものの、“ブレードランナー”として与えられた任務を全うするために、
自分でそうすべきだとしっかりと考え抜いた上での決断なので、やるとなったらやり遂げる意思の強さに結びついている。
それでいて、正しく人間らしい愛の精神を持ち続けていることは“アヤカ”との交流で証明されていることである。

ただし、“アヤカ”から“織斑一夏”や“ハジメ”に恋焦がれている少女たちの姿を傍目に見ていてハラハラさせられているように、
一夏の影響力は良くも悪くも一般人から逸脱した巨大なものであり、その非凡な存在感が姉と同じく世界に大きな波紋を呼ぶことになる。

“ブレードランナー”とは『白式』を含めた彼自身のコードネームであり、基本的にISを使用している時はこれで呼ばれる。
代表的な偽名は“皓 ハジメ”であるが、変装の使い分けができていないので偽名も使い分けできておらず、これが後の事件の温床となる。


夜支布 友矩
織斑一夏がいずれ出会うであろう人生のベストパートナーであり、織斑一夏の欠点も長所も全てを認めて尽くす内助の功。
織斑一夏の足りないところを埋められる多才であり、基本的に織斑一夏(23)は友矩がいないと対外的な仕事でだいたい失敗するので必要不可欠となっている。
やはり、織斑一夏と一緒にいることで呆れることも苛立つことも多いわけなのだが、織斑一夏の能力と独特の感性を活かすように付き合っているので、
常人が受けるストレスを3分の1程度に抑えており、自身も学が深いので常人がストレスと感じるものをそう受け取らない高い精神力を持っている。
そうでもなければ、“童帝”織斑一夏の側に居続けて、その馬鹿さ加減に疲れ果ててしまうか、
コンプレックスに苛まれ続けてしまうかで、早々に彼の許から離れていってしまうことだろう。
そういう意味で、織斑一夏も直感的に夜支布 友矩の存在のありがたさを理解しており、末永い付き合いになることを願っている。

“ブレードランナー”のブレインであり、コードネームは“オペレーター”。
代表的な偽名は特になく、必要に応じて偽名や役柄を使い分けている生粋の裏の仕事人であり、一夏と違ってちゃんと立居振舞も性質も変えている。
某動画サイトのアカウントを6つ以上使い分けて見たい動画をアカウントで種類分けしたり、
某オンラインゲームでマルチアカウントで自分だけのパーティを組んで専用コントローラーとディスプレイで同時プレイできたりする超人である。


406: 2014/09/23(火) 10:11:22.22 ID:JZmH5Y3h0

五反田 弾(23)
織斑一夏(23)の設定のために年齢を引き上げられた人。そうしなかったら接点がないので出番が皆無だった。
ローディーとして勤務する傍ら、一般人として“ブレードランナー”の面々との反応の差を描くのに役立っており、
この人が居るか居ないかで読者の内容の理解が大きく差が出ることは想像に難くないことだろう。
専門家だけの軍団になると一般人にはわからない独自の世界に閉ざされがちなので、こういった素人も時として物語の解説役として必要というわけである。
そういう意味では、非常に重宝しているキャラである。

“ブレードランナー”のアキレス腱であり、コードネームは“トレイラー”。
トラックもリムジンも運転できる一級運転手であり、主な役割としては“ブレードランナー”を作戦領域に運ぶ――――――それだけだが、
秘密警備隊“ブレードランナー”としてはそれが極めて重要な要素なので、輸送役の彼の責任は意外と重たく、それだけ信頼されているわけである。


一条千鶴
IS適性:S
専用機:第2世代型IS『風待』

織斑千冬や山田真耶の同期の第1期日本代表候補生であり、現在は織斑千冬の弟:一夏の仕事仲間という奇縁の持ち主。
織斑千冬の格闘能力と山田真耶の射撃能力に匹敵する卓越した戦闘能力を持つが、
二人と比べて頭であれこれ考えてしまうところがあるために、適性としては指揮官や工作員のほうが向いていたために“ブレードランナー”となる。

秘密警備隊“ブレードランナー”の性格上、自身が先代“ブレードランナー”だったことは一夏たちには明かしておらず、
また、最重要機密である朱華雪村の素性についても知っているらしく、今作における謎の一方面についてほとんど知っているキーキャラクター。
さすがに、“ISがどうして女にしか扱えないのか”みたいな方面についてはお手上げであるが、情報通なのは間違いない。

元祖“ブレードランナー”として現在は秘密警備隊の副司令であるが、対応力の乏しい二代目“ブレードランナー”を補佐するために復帰。
コードネームは“シーカー”であり、秘密警備隊の主役である“ブレードランナー”の称号と役割は後輩に譲って、
本人は柔軟な作戦能力と卓越した戦闘能力でISが無くてもたいていのことをやり遂げてしまう凄腕工作員として暗躍する。
生身でIS用の太刀や狙撃銃ぐらいは扱うことができ、生身で幅広いIS用武装を扱えるのはこの人ぐらい。
原作でも、生身でISの武装を使っているのは千冬の他に、ナターシャ・ファイルスも確認されている。



407: 2014/09/23(火) 10:12:21.00 ID:3zEhG37Z0

織斑千冬(24)
IS適性:S
専用機:無し

初代“ブリュンヒルデ”としてその名を刻む女傑。
今作では実の弟である一夏が(23)になったので歳が非常に近く、それだけより親しい間柄になっていることもあって、
基本的に対等の存在として一夏(23)を扱っており、唯一の肉親であることを抜きにしても最も信頼しあっている。

しかし、自分が姉であるという強い自覚から弟を養っていくために働きに出ているために隣にいることは極端に少なくなっていた。
それ故に、大学時代に弟が得た親友である夜支布 友矩の存在にちょっとばかり妬いているところがあると同時に、
自分に代わって公私ともに密接に弟に尽くしてくれている友矩にも強い信頼を置いている。
小姑として友矩にいろいろと言ってみたいことがあるのだが、家のことを握られているので友矩にはなかなか強く出られない。
五反田 弾(23)に対しては、原作と違って歳が近いためにそれなりに交流があり、顔馴染みとして一定の信頼は置いている模様。

一夏の歳が近くなったために、幼少期の養育の苦労が軽減されたのか、対等の存在としての付き合いの影響からか、
彼女自身も弟が掲げている“人を活かす剣”の思想が根付いており、相変わらず立場に縛られて身動きがとれない場面が多いが、
今作では明文化されない影の努力や配慮がうかがえるようにしてみた。

前作:番外編と比べると、彼女自身の人間性が総合的に大きくなっているので安定感が抜群である。
そもそも、番外編では大人がISで戦えない苦悩とそれを補う大人の知恵や教育指導が大きなテーマとなっているのだが、
今作では“ブレードランナー”という学園のためにISを自由に使える大人の味方が登場しているので、
千冬としても読者としても今までになかったとてつもない安心感のようなものを覚えたのではないかと思われる。
剣禅編はまさしく「健全」で安心できることがテーマであり、『大人が本気を出したらこうなる』という例を示せたのでないかと思う。
ただしバランス調整で、今作はヒーロー活劇らしく『ダメな大人が大惨事を招いてくれる』のでスリルは損なわれていない。


篠ノ之 束
今作では学年別トーナメントの段階で登場した全ての元凶。
しかし、明らかに従来作とは態度が異なっており、勘の良い読者ならばこの違いがどこから出てきたのかすぐに思いつくはずである。
だってねぇ? ジャンル:織斑千冬世代 なのに、今作最大の変更点というのが――――――。

今作の篠ノ之 束はかなり感情的であり 同時にどこか冷めた態度を取り続けており、原作の唯我独尊で他人のことなどお構いなしの態度とは何かが違っている。
現時点では情報は少ないが、間違いなく今作の謎に絡んでくるキーキャラクターであり、これからどう出てくるのかご期待ください。
最初から悪の権化として暴れてもらいます。



408: 2014/09/23(火) 10:13:09.97 ID:JZmH5Y3h0

第2世代型IS『打鉄/知覧』“呪いの13号機”→『打金/龍驤』“黄金の13号機” 
専属:朱華雪村“アヤカ”
攻撃力:D+無いとは言わないが、格闘戦は搭乗者の力量に左右されるので
防御力:A+第2世代型IS最高の防御力に加えて、“アヤカ”の天性の操縦センスによる防御センス
機動力:D-機動力は最低ではないが、PICの基本移動ができずにマニュアル歩行に頼っているので機動力は実際には最低クラス
 継戦:D+単一仕様能力『落日墜墓』の自在性により、攻撃手段にバリエーションがある
 射程:A 単一仕様能力『落日墜墓』の最大射程
 燃費:S 単一仕様能力『落日墜墓』の圧倒的なエネルギー効率と出力調整に加えて機体そのものが低燃費

コアナンバー36。所属番号『13号機』であることも合わせて、4+9=13,4×9=36となる忌み数通りの不吉な経緯を持った機体。
一般機としてのリミッターが解除された状態となり、銀灰色の部分が黄金色に変化しているのが特徴であるが、機体の基本性能に実は変化がない。
金色の『打鉄』というガラリと印象が変わった機体色故にそれが“アヤカ”のパーソナルカラーとして認知されることになっていく。
カラーリングの違いで印象が大きく変わる例として、制式採用のネイビーグリーンの『ラファール』と競技用のオレンジカラーのシャルルの『ラファール』がある。
色が黄金色なので、巷では『打金』“黄金の13号機”などと呼び替えられることになる。
劇中においても目覚ましい活躍をしたことから、日本政府としても新たな研究対象として『知覧』用にパッケージを送りつけることになる。
ついでに、日本政府が宣伝のためにコードネームを与えており、公式での通称は『龍驤』となり、次第に“彼”も周りもそう呼ぶようになる。

「初期化」(=フィッティング)された一般規格の通常の第1形態から無理矢理リミッターを外した状態へと『進化』したことによって、
外見こそ銀色の部分が金色に変わっただけに見えるが、リミッターが外れたことで「最適化」(=パーソナライズ)ができるようになったことにより、
実は外観そのままに第2形態に形態移行したことになっているらしく、単一仕様能力『落日墜墓』が発現するに至っている。
そのために、機体性能自体は何も変わってないが総合的な戦闘能力は爆発的に向上している。

また、明らかに空戦用パワードスーツ:IS〈インフィニット・ストラトス〉とは思えないような機体運用が特徴的であり、
後述の『PICカタパルト』で垂直方向にPICで移動しているISがパイロットが認識できる範囲で近くにいれば、
重力下でジャンプひとっ飛びでビルからビルへと飛び移れるような超人のような戦いが可能となっており、その動きはさながら飛蝗のようである。
ただし、スラスターによる縦の動きや横の動きは鋭くても、PICに依存する箇所では本当にダメ。ランクAが泣くぐらい悲惨。
それ故に、動きこそ普段はPICが使いこなせてないのでマニュアル歩行でノロノロだが、単一仕様能力を通常戦闘では使用しない制約から、
唐突に『PICカタパルト』で高速で垂直に飛び上がって頭上をとってからの後述の単一仕様能力『落日墜墓』で自由落下しながら地面に敵機を叩きつける、
――――――『昇龍斬破/ライジングドラゴン』が実質的な必殺技となっており、ISバトルマニアを唸らせるロマン技のために人気が沸騰する。


409: 2014/09/23(火) 10:13:46.93 ID:3zEhG37Z0

単一仕様能力『落日墜墓』
あまりに強力な効果のために“アヤカ”は最終手段としてしか使わないようにしている、筆者の二次創作で登場する中で究極のIS頃しの1つ。

たまたま“13番”という番号を割り振られて、往々にして乗り継いできた生徒たちが負けた原因を『13番だから』という理由にして責任転嫁し、
それが一種の伝統や習慣として定着していった結果、同じISなのに『13番』というたったそれだけの理由で不当な扱いを受け続けたコアナンバー36の自我が、
無言のうちに生徒たちのいわれのない恨み辛みや悪意を吸収して、実際に搭乗者を無意識のうちに敗北に引き込む“そういうもの”になっていた。
そんなところに、同じ“IS適性がある人間”なのに迫害を受け続けて人間不信に陥っていた“アヤカ”が搭乗したことによって感応しあい、
最終的に“アヤカ”がコアナンバー36と「深層同調」に成功したことによって第2形態移行したと同時に発現している(気づいたのはもう少し後)。

つまり、くだらない理由で不当な扱いを受けてきた“アヤカ”とコアナンバー36がISに復讐するために編み出した単一仕様能力である。
『知覧』がこの時 伝えるエネルギーに負の感情や雑念を載せたものをアンチエネルギーと呼んでおり、
これ自体は非常に弱々しい無害そうなエネルギーであり、相手のISのシールドバリアーを打ち消すどころか吸収されてしまうほどであるが、
お気持ち程度のエネルギー消費で情報付加できるので燃費が異常に良い。
また、これ自体もISが持つPICのちょっとした応用であるが、アンチエネルギーそのものを指向性を持たせて直線上なら認識できる範囲まで飛ばせる。
そして、このアンチエネルギーを吸収したが最後であり、「深層同調」できるだけの高度な認識力がない限りは、
普通では認識できない次元で搭乗者が意図しない強烈な念がISのシールドエネルギー帯を渦巻き、
取り込まれたエネルギーの中を循環してアンチエネルギーがコアに到達するので、コアの調子があっという間に悪くなって、PICが使えなくしてしまうのだ。

ISと搭乗者の間のコミュニケーションを“アヤカ”とコアナンバー36が受けてきた強烈な負の思念で阻害して操縦不能にしてしまうのである。

シールドバリアーなどはISが『自分の身体を守るために』自動的に発動させているものであるので問題なく使えるが、
PICの効果は基本的に『搭乗者の意思をISが受け取って調整・実現している』ものなので、
ISと搭乗者 間の意思疎通を阻害された場合、突如としてPICが完全停止して機能しなくなるというのはそういうことである。
この原理を解析できる人間はまずいないので、『PIC無効化攻撃をしてくる』とはわかっても根本的な対策ができないのである。
一方で量子化武装の展開は、ある程度の「最適化」された履歴やパターンが実装されているためにパスが別に繋がり続けているので問題なく使える。
完全にパターン・コマンド化された移動ならば問題ないが、PICによる空間移動だけは常に任意で動かさざるを得ないものなので阻害されるわけである。

恐るべきは一瞬でコアと搭乗者とを分断してしまうほどの強烈な念であり、辛うじてISコアにしか効かない程度ですんでいるが、
これが鋭い感性の人間だったり、送り込まれるアンチエネルギーの濃度が異常に濃かったりする場合は搭乗者にも悪影響を与えてしまう恐れがあるのだ。
また、アンチエネルギーの性質でISの装備に任意で付加させることができるので、接近戦で鍔迫り合いになってもアンチエネルギーは伝わってしまうし、
機関銃の弾に付加してしまえば1発でもかすってしまえばそれでPICが急停止して身動きがとれなくなるのでそこから一方的に蜂の巣にしてしまえる。
更に、アンチエネルギー自体が元々“悪意”というとらえどころのないものなので、
アンチエネルギーそのものを飛ばす場合は認識できる範囲で自由な形で直線上に飛ばせるので、見えないし 避けられない。
→ ISから供給されるエネルギーとして物質界に顕現している都合上、物理的な性質で最低でも弾丸と同じぐらいの速さでしか飛ばないのが唯一の欠点か。
→ 光の速さで飛ばないノロノロビームだとしても、『PICカタパルト』や射出手段の工夫でいくらでも速く飛ばすことが可能。
 → “アヤカ”は『PICカタパルト』で相手をフォーカスして自分とを一直線に結んでアンチエネルギーを飛ばしているので相手が静止状態ならば必中である
アンチエネルギーの距離による減衰はかなり緩やかであり、認識できる限りの直線距離ならどこまでも飛んで行く
→ 認識を止めたその時が最大射程であり、シールドバリアーに直撃しなければそこでアンチエネルギーは霧散してしまう
→ ただし、直線上にしか飛ばないので遠くにいる相手を狙うのはそもそも難しい(フォーカスした相手が静止状態ならば必中である)


このように、『零落白夜』のバリアー貫通攻撃と同等以上に非常におぞましい攻撃なのである。
それ故に、PICが使えなくなるという掟破りの表層的な効果の濫用を心配して“アヤカ”が使いたがらないだけではなく、
本質的に自分と同じ心の闇を相手にも植えつけることを忌避して使いたがらないのである。

ただし、元々が弱々しいエネルギーなので、取り込んだエネルギーの部分を消費してしまえば、一過性ですぐにPICが回復してしまう。
そのために『落日墜墓』を使うとなれば、連続してアンチエネルギーを注入し続けて相手のPICを封じてしまう多撃必倒が基本戦術となる。
また、この性質のために燃費が良いISほど『落日墜墓』の効果が長続きしてしまい、燃費の悪いISほど『落日墜墓』に強いという性質がある。
しかしながら、それはどちらとしても短期決戦を挑まないと『落日墜墓』に抗えないという意味であり、
まさしくIS〈インフィニット・ストラトス〉によって虐げられてきた“アヤカ”とコアナンバー36の復讐であり、『日は落ち、墓へ墜ちる』能力なのである。


410: 2014/09/23(火) 10:14:29.30 ID:JZmH5Y3h0

解説別口 実際的な説明が欲しい方へ
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自身のシールドエネルギーを不可視のアンチエネルギーに変換する能力であり、アンチエネルギーが直撃すると自機以外のISのPICが一定時間 効果を失う。
つまり、ISの基幹システムを担うPICを失うことによって浮遊能力や低重力、反重力も失うので、ISは結果的に墜落することになる。
あるいは、自重に押し潰されることになり、場合によってはそれで自壊する場合がある(PICが無効なだけで剛体化は解除されていないのでそこまでいかないが)。
『白式』の単一仕様能力『零落白夜』がシールドバリアー無効攻撃なら、こちらはPIC無効化攻撃であり、違ったベクトルで対IS用究極兵装となっている。
『零落白夜』は雪片弐型でしか使えないが、『落日墜墓』はパイロットのイメージ通りにアンチエネルギーを成形できるために応用性が比類ない。
アンチエネルギーをデコピンで飛ばすことやマニピュレーターにまとわせて直接 掴むことでもISのシールドエネルギーに接触させれば効果は必ず瞬時に現れる。
また、『紅椿』のエネルギーブレード『雨月』『空裂』と同じ要領で武器にまとわせて射出するような使い方ができる。
射程やPIC無効時間は出力に比例し、『打鉄』が持つ太刀の刀身いっぱいにアンチエネルギーをまとわせて力いっぱい射出して地上からアリーナの天井まで届き、
ミリレベルのエネルギー出力でもゼロコンマ秒は必ず相手のPICを無効化できるので凄まじくエネルギー効率が良い。
一瞬でもPICが切れると、高速戦闘になれているベテランパイロットほど取り乱すことになり、それだけでも相手に与える動揺は大きい。
更に、不可視・無反動でかつアンチエネルギーなので計測・察知できず、基本的に回避不可能な攻撃なので、気づいた時には自由落下という恐怖の能力である。
PICを無効化するので、それを応用した『AIC』をはじめとした数々の第3世代兵器も真っ向から叩きつぶせてしまえるので実際に強力無比である。
PICを失ったISはまさしく鉄屑を背負っただけの人間でしかなくなり、持ち前の機動力を活かせずに袋叩きや蜂の巣にされてすぐに撃破に追い込まれることだろう。
この能力が本領を発揮するのは機関銃などで弾幕を張った時であり、アンチエネルギーをまとった弾丸を1発でももらっただけで一瞬でPICが無効化されるので、
PICを失ったその一瞬の隙に連続で畳み掛けて身動きがとれないうちに次々とアンチエネルギーを撃ちこんで完封することが実に容易である。
ISは空戦用パワードスーツであり、空中での展開を前提とした装備も多いためにこの能力の直撃を受けた場合はそれで敗北が確定する機体が存在する。

ただし、激しくエネルギー消費をしている機体に対してはPICコントロールを奪うほどの干渉力が働かないようである。
つまり、『零落白夜』発動中の『白式』に対してはまったく通用せず、あるいは出力最大時の『紅椿』にも通用しない。
またまた、高出力の重たいエネルギー兵器を連発している浪費状態の機体に対しても効果が無効化されてしまうし、
絶対防御などが発動して急激なエネルギー消費をしているダメージ状態でも『落日墜墓』の効果は途切れるので、
よって、賢い戦い方としては一撃必殺ではなく多撃必倒でPICを継続して封じてハメ頃しするのがセオリーとなる。
しかし、そもそもエネルギー消費の激しい燃費の悪い武器を好き好んで搭載している機体は数少なく、それだけで対策は難しいものとなる。
また、よしんばこの単一仕様能力に対抗できる能力を持ったISでもエネルギー消費を続けなければ対抗できないので短期決戦を挑まざるを得なくなる。
それ故に、あらゆるISに対して互角以上に戦えるという点では驚異の単一仕様能力であり、海上や底なし沼の上で相応の出力で直撃を受ければ溺氏は免れない。

しかし、『落日墜墓』の能力がいくら凄くてもそれを発現させている機体が『打鉄』である上にパイロットの“アヤカ”にはPICによる基本移動がままならず、
そもそもの機体性能や機体相性の差でこの能力を活かせないまま撃破される可能性が非常に大きいのが最大の弱点である。
また、直撃すれば自機以外のISのPICを無差別に無効化するので、基本的には1対1にしか向かないし、直撃したかの判定は実際に墜落するまでわからない。
結果として、PICを使いこなせる相手をPICが使いこなせない自分以下の機動力に制限するための能力であり、それを使ってようやく互角の戦いができるのである。
そういう意味では、ハイリスクハイリターンの『白式』よりも相手を選ぶ可能性が高い(『白式』は誰であろうとトップクラスのスピードで踏み込める)。
また、『PICを無効化するだけ』の能力とも言えるので、織斑姉弟のように生身でISと互角に戦える超人やPICに依存しない武装には終始不利となる。
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411: 2014/09/23(火) 10:15:09.04 ID:3zEhG37Z0

『PICカタパルト』
“アヤカ”が発見した、自身と認識できる範囲の対象のPIC力場を合わせて自身の慣性移動能力を増幅させるIS共通能力……らしい。
本来、慣性移動しかできない宇宙空間で推力を失うことはすなわち身動きがとれなくなり、そのまま氏に繋がっており、、
それを克服するための手段の1つとして用意されていたのではないかと、夜支布 友矩は推測している。

基本的に自分と相手のPIC力場を結びつけるためにフォーカスする必要があり、対象を認識できる範囲でしか効果を発揮できない。
しかし、効果は既存のIS運用法に革新をもたらすほどのものであり、宇宙空間での長期運用を容易とするほどの能力を持つ。
逆に、重力下での運用には厳しいものがあり、それ故に発見されてこなかったというわけである。
完全に宇宙空間で使われることが前提なので、『これ』に気づいて、更には使いこなせる人間は今のところ“アヤカ”しかいない。

1,自分と相手のベクトルを合成して、その合成ベクトルで自身を射出する
言うなれば、フォーカスした相手の今現在のスピードをそっくりそのまま自分の今現在のスピードに足して高速移動することが可能。
ただし、カタパルトと呼ばれる所以は計算通りの合成ベクトルの勢いで吹っ飛ぶさまであり、
その速度に対応していなければそのまま昇天もあり得るという危険極まりない運用ができてしまえるところにある。
仮に亜光速と亜光速の機体同士でこれを行った場合は光の速さを超えることができるかの答えを見ることができてしまえる。

本編においては、重力の影響とPIC移動ができないハンデで、垂直方向に動いている相手(今のところセシリアのみ)にしか“アヤカ”はできなかったが、
それが『昇龍斬破』という“彼”固有の必殺技として認識されるようになり、その発動条件が周りにはわからないために迂闊な動きをしなくなったので、
非常事態での氏闘になればアンチエネルギーを飛ばして『落日墜墓』しやすい環境へと変遷していくことになる。

それ故に、“アヤカ”独自の抑止力として『PICカタパルト』の技術と単一仕様能力『落日墜墓』はセットとなっており、
普段は『PICカタパルト』による必殺技『昇龍斬破』と予想もつかない挙動で警戒させて相手の動きを鈍らせて『昇龍斬破』できるように相手を誘い込む。
非常事態においては素知らぬ顔で『落日墜墓』で相手のPICを封印してすぐさま鎮圧させることができるのに一役買っている。
特にこの恩恵によって、IS学園では箒とラウラしか『落日墜墓』を実際に見たものはいないのだが、
ラウラはどれだけ“アヤカ”が模擬戦で負け続けても一切信頼を損なうことはなく、周囲も“アヤカ”の実力を認め続けることになる。


-必殺技『昇龍斬破/ライジングドラゴン』
『PICカタパルト』による垂直急上昇で高所の相手に急接近する、今のところ“アヤカ”専用の必殺技。
PIC力場を合成して相手と一直線に自分を結んで吹っ飛んでいくので、鈍重な黄金像が突如として自分めがけて飛んできたら誰でもビビる。
接近戦の鬼とも評される“アヤカ”に近づかれたら代表候補生でもほぼ負けは確定であり、まさしく必殺技として“アヤカ”を象徴する奥義となっている。

模擬戦においては、直接の殴打や掴み技は禁じ手なので『PICカタパルト』で近づいたらほとんどの場合、
『落日墜墓』をまとわせた太刀の袈裟斬りで相手の肩や首に剣を当て続けて1秒ほどPICを使用不能にして相手を軽いパニック状態に陥れて、
自身もPICのベクトルを垂直方向に修正して一緒に自由落下して地表に叩きつける流れが一般的となる。
相手はPICが停止しているのでIS本来の重量のまま落ちるのでスラスターを噴かせても十分な推進力が得られず地面に激突し、
自分はPICが生きているので地面に激突する前に余裕を持ってスラスターを噴かせて危うげなく着陸して一方的なダメージを与えられるわけである。

最近では、『PICカタパルト』とPICの低重力化を応用して、相手のベクトルを盗んで跳躍力や追尾性の強化などができるようになっており、
明らかに元が『打鉄』だとは思えないようなアクロバティックで機敏な動きができるようになり、動き回るISほど『知覧』の機動力が強化される傾向にある。
何にせよ、相手のベクトルを利用して効果を得るために高度をとって大きく動き回るIS相手だと実に戦いやすい。
逆に、空中でまったく動かない敵に対しては『落日墜墓』で墜落させれば勝利は確定なので隙がない。

――――――ただ、いろいろな制約からきれいに『昇龍斬破』を決めて模擬戦で勝利すること自体が稀なのだが。

2,自分と相手のPICのベクトルを融通する
これは言うなれば、身動きがとれなくなった対象をPIC力場を介して引き寄せることに使える。――――――無重力空間ならば。
1の効果は実際には2の効果の一端でしかないのだが、重力下で“アヤカ”が使う分には1しか使えないのであまり気にしなくていい。
おそらく、本編ではまったく使い道がない。――――――無重力空間で戦うことがなければ。



412: 2014/09/23(火) 10:16:00.63 ID:3zEhG37Z0

第2世代型IS『風待』Ver.5.0 第2形態
専属:一条千鶴 元祖“ブレードランナー”
攻撃力:B+接近格闘機だが、拡張領域で携行可能となった大型火器の恩恵で火力が高い
防御力:B+後の世界シェア第2位となる『打鉄』の基となる機体故に当時としては破格の重装甲だった
機動力:A+旧式機であるが、日本初の第2世代型となる『暮桜』の後継機でかつ第2形態なので機動力は『白式』に匹敵するほどになる
 継戦:B+拡張領域を生かして豊富な武器を使い分けられる。「高速切替」にも対応している
 射程:B+豊富な火器によって射程は自由自在。これが第2世代型である
 燃費:A-第2世代型初期の機体はみな低燃費であり、この機体が重装甲であるために燃費はいいが、武器切替によるエネルギー消費が多くなる

今作で登場したばかりの『G2』であるが、あまりにも力量差がありすぎたために『零落白夜』をコピーして使ったぐらいしかわからないことだろう。
現在は第2世代から第3世代に移る過渡期になるが、着々と基礎の近代化改修がなされて性能そのものは並みの第3世代型IS以上の性能があるわけだが、
第3世代型ISの定義が『イメージ・インターフェイスを利用した第3世代兵器を搭載したIS』という大雑把なものなので、
定義通りに考えれば、第3世代兵器を搭載していない第2世代型の新型の超高性能機が存在していても別におかしくない。
その1機が『風待』であり、旧式でありながら新型であるというとんでもない経歴の機体であり、
“ブレードランナー”として、最初の第2世代型ISとして様々な運用試験が行われ続け、基本的にどんな装備でも受け付ける仕事人なISコアに仕上がっている。
むしろ、現在の第3世代型ISは実験機がほとんどであり、軍事的有用性で言えば普通に銃火器を積んだ第2世代型ISのほうが戦術的に圧倒的に強い。
(それでも、どれだけ強力な弾丸を使っても一撃でISを墜とせないのでコストパフォーマンスが悪く、経費削減のために格闘武器が多く普及した)


特殊装備
「一般機化」のリミッター
通常は一般機などに組み込まれるリミッターであり、「最適化」させないための装置であるが、
専用機の場合は「最適化」して「形態移行」してもらうために普通は取り付けないものである。ましてや、第2形態の機体に取り付けるものでもない。
しかし、一条千鶴の『風待』は、専用機がない織斑千冬のために貸し与えるために特殊な使い方をしており、
常識に囚われない“ブレードランナー”らしい運用の仕方がなされることになった。


単一仕様能力『大疑大信』
またの名を『大義大震』であり、簡単にいえば、――――――相手のISから後付装備の所有権を奪う能力であり、
勝手に相手の後付装備を遠隔展開して使ってみたり、本来の所持者に対して後付装備の使用制限を一方的にしたりと、『ラファール』頃しな能力である。
『零落白夜』や『落日墜墓』と同様に、搭乗者の認識の範囲が卓越していれば能力の適用範囲まで拡大し、
ついには単一仕様能力までもコピーしてしまうことさえも可能なようであり、
乗り手の認識力次第でどんなことでもやってしまえるという、これまた単一仕様能力の究極とも言えるものの1つである。
ただし、標準装備とされるものは相手のISがそれを『生来的に自分の身体』だと認識して解除させることが難しいので(原則的にできないわけではない)、
発現当初はまだ第1世代から第2世代への過渡期だったために役に立たなかったのだが、5度の「最適化」と「形態移行」によって再び発現し、
第2世代型が普及しきったご時世において最も力を振るう単一仕様能力となった。

千冬が『大疑大信』を扱いこなせないのは、まさしく千冬が『暮桜』ばかりにしか乗っていなかったがために他の機体の仕様がわからない点であり、
相手の装備を奪い取るのに必要な認識力が大きく欠けているために(実際はVTシステム機相手だったので後付装備を奪うことはできないのだが)、
気力とド根性と乗り慣れた感覚から無理やり、かつての『暮桜』が使っていた『零落白夜』の光の剣を後付装備の雪片壱型で再現するしかなかった。
むしろ、千冬は『零落白夜』一辺倒であり、それしか使いこなせないために(そもそも借りている機体が第2形態なので余計に使いこなすのが難しい)、
千冬では『大疑大信』の持つポテンシャルの全てを引き出すことができない――――――逆に単一仕様能力『零落白夜』のコピーはできた。

そういうわけで、実に乗り手によって一長一短にしか戦力を引き出せない単一仕様能力であり、千冬のように一辺倒では半分もポテンシャルを引き出せず、
一条千鶴のように幅広い分野の装備に精通した万能型のドライバーでないと『大疑大信』でできることは非常に限られてくる。
しかし、逆を言えば ある一定の十分な認識力さえあれば、単一仕様能力さえもコピーしてしまえるので誰でも一定の戦力強化が望めるとも言える。
何にせよ、秘密警備隊“ブレードランナー”の幅広い作戦領域で活躍するのには千冬では不適任なのは確かであり(ただの格闘機として使う分には問題ない)、
それぞれが培ってきた人間性と真実が問われるのが『大きく疑って、大きく信じ抜く』単一仕様能力の真相というわけである。

【IS】一夏(23)「人を活かす剣!」 千冬(24)「お見せしよう!」【5】

引用: 一夏(23)「人を活かす剣!」 千冬(24)「お見せしよう!」