634: 2014/11/26(水) 08:12:18.20 ID:RGK9H7Jp0


【IS】一夏(23)「人を活かす剣!」 千冬(24)「お見せしよう!」【6】

第10話A+ ひと夏の想いでに焦がれる多重奏・表
Lightside Bloom

――――――織斑邸


ミーンミンミンミーン! ミーンミンミンミーン!

シャル「………………」ゴクリ

シャル「大丈夫、大丈夫……」

シャル「『今日は家に居る』って言ってたんだから」ドクンドクン

シャル「…………うう」ソー ――――――インターホンにおそるおそる指を伸ばす!

シャル「………………うう」ソー

シャル「え、えい!」ポチッ

ピィンポーン!

シャル「あ……」ドクンドクン

シャル「よ、よし!」


一夏「あれ? シャルロットちゃんか?」(両手には袋いっぱいに膨らんだ買い物袋がある)


シャル「ハッ」ビクッ

シャル「へ!? へ、へ、うわああああ!?」

シャル「い、一夏さん?!」

シャル「あ、あの……、ほ、本日はお日柄もよく!」

一夏「は」

シャル「――――――じゃなくて、あの……、」

シャル「IS学園のシャルロット・デュノアですが、織斑さんはいらっしゃいますか?」モジモジ

一夏「何 言ってんだ、シャルロットちゃん……?」

シャル「ふわぅううう……」アセアセ

シャル「き……、」

一夏「『き』?」


シャル「来ちゃった」ニコー


一夏「………………」

シャル「(うわぁ……、僕の馬鹿、僕の馬鹿! 何 馴れ馴れしく一夏さんにこんな大胆なことを…………!)」

シャル「(そりゃ、確かに一夏さんは僕の後見人をしてくれてるアルフォンスさんとは仲良しだし、)」

シャル「(アルフォンスさんも熱烈に僕と一夏さんとの関係を薦めてくれてるけどさ!)」ドキドキ
IS<インフィニット・ストラトス>1 (オーバーラップ文庫)

635: 2014/11/26(水) 08:13:20.03 ID:RGK9H7Jp0

一夏「そうか。じゃあ上がっていけよ」

シャル「上がっていいの!?」パァ

一夏「遊びに来たんだろう? それとも、別に予定でもあるのか?」

一夏「俺がこっちに来ているのを知ってるってことは、千冬姉から日にちを聞いてここに来てるってことだろう? 違うのか?」

シャル「ううん! 無い! 全然! まったく! 微塵もないよ!」 ――――――身体全体を使って表現する!

一夏「ははは、変なやつだな~」(直球)

シャル「あはは……(――――――『変なやつ』って言われた)」ニコッ


箒『――――――ちゃんと結婚してくれるか? 私は千冬さんとなら同居してもいい! 私だってISドライバーなんだから!』


シャル「………………」

シャル「(――――――ごめんね、箒)」

シャル「(………………箒との関係のこともあるけれど、やっぱり僕はこの人のことが気になるから)」

ガチャ

一夏「あ」


友矩「そうですか。どうぞどうぞ、くつろいでいってくださいね、シャルロットちゃん?」ニヤリ


友矩「ふふふふ」ゴゴゴゴゴ(三角巾にエプロン姿の実に所帯染みて滲み出るオーラ!)

シャル「いっ」ゾクッ

友矩「――――――『来ちゃった』からにはちゃんとおもてなししてあげませんとねー」ニコニコー

シャル「…………あ」


――――――――――――

箒「だから ほら、早く。私を強く抱きしめてくれ……」ドクンドクン

一夏「…………まさか9歳も歳下の子と情熱的な抱擁をすることになるとは思わなかったよ」ドクン

一夏「こうでいいか?(うぅ、こうして見ると本当に綺麗になったな。いい臭いもするし、この胸の膨らみと弾力…………)」ギュッ

箒「ああ………………」ドクンドクン

箒「そうだ。もっと、もっとだ……」ドクンドクン

一夏「…………だ、大丈夫なのかよ?(うわっ、凄く色っぽい…………股倉のあたりに血流がいっちゃうよ、これは!)」ゴクリ

友矩「………………」グースカースヤスヤー

一夏「(…………友矩ぃ! 早く止めてくれぇ! 友矩としてはどこまでがセーフなのぉ?!)」アセダラダラ

――――――
シャル「ああ…………」ドキドキ
――――――」

友矩「………………!」チラッ

――――――
シャル「…………!」ビクッ
――――――

友矩「………………」グースカースヤスヤー

――――――――――――


636: 2014/11/26(水) 08:13:47.91 ID:RGK9H7Jp0


シャル「ひゃ!?」アセタラー

シャル「え、えと…………(うわぁ! 聞かれてた聞かれてた聞かれてた聞かれてた~!)」アワワワ・・・

一夏「うん。どうしたの、シャルロットちゃん?」

シャル「な、何でもないよ、一夏さん?」ニコニコー

シャル「(ぼ、僕の馬鹿ぁ! 何 忘れてるのさ! 一夏さんの隣にはこの人がいるってことをおおおおおおおお!)」トホホホ・・・

シャル「(やっぱり、箒って凄いや…………この人がいる前であんな大胆なこと、よくできたもんだよ)」

シャル「(そう、箒が言うように『最初の一歩を踏む勇気』ってやつが僕には足りてないのかな?)」

シャル「(これが箒と僕との差ってやつなのか。ホントに箒って凄いな…………)」


箒『お前も案外 不器用なやつなんだな、私が言うのも難だが』

箒『ああ。最初の一歩を踏み出す勇気が一番難しいんだけどな』

箒『けど、その一歩さえ踏み出すことが覚えれば、あとはもう行くところまで行くさ』フフッ


箒『よ、喜べ! 私のような見目麗しい女の子が長年お前を恋い慕ってるんだぞ……?』ドクンドクン

箒『…………これからもずっとな』イジイジ

箒『お前も人間として感謝の念を持つのなら、いつかちゃんと私に恩返しをしろ』モジモジ


箒『およそ20年近く一途に想い続けることになるんだ。私がどれだけ本気だったのかを周りの連中に見せつけてやるんだ』





637: 2014/11/26(水) 08:14:48.31 ID:RGK9H7Jp0


シャル「ああ…………」キョロキョロ

シャル「(ここが織斑先生と一夏さんの家か…………マンションとは違ったこのマイホーム感がたまらない)」

一夏「はい。いつものアールグレイ」コトッ

シャル「う、うん。ありがとう」

シャル「ああ ホント……、この味 好きだな」ゴクッ

シャル「(一夏さんっていい旦那さんになりそうだよね。――――――だ、旦那さんか)」ドキドキ

シャル「(あ、憧れたって別に罰は当たらないよね? だって、織斑先生の弟さんだし、カッコイイし、朗らかで優しいし……)」

シャル「(ぼ、僕にだってまだチャンスはあるはずだよね! アルフォンスさんだって応援してくれてるし!)」

シャル「(一夏さんと二人っきり――――――妙にその響きが僕を捉えて放さない。どうしてなんだろう、この気持ち?)」

シャル「けど――――――」チラッ


一夏「友矩、今日のホームパーティの準備は大丈夫か?」

友矩「うん。前にちゃんと整理整頓しておいたおかげですぐにバーベキューできるよ」

一夏「よし、今日はIS学園御一行様だからな」

一夏「甘いモノの準備はちゃんとできてるか?」

友矩「できてるよ。今日はティラミスとパンプキンパイとシフォンケーキ」

一夏「うんうん。やっぱり我が家の調理場は広いし整っていて料理が捗るな」

友矩「大学時代、パーティ専用の別荘と言われたぐらいだもんね。――――――誰もいないから」

一夏「…………今年も俺んちで同窓会やるのかな? 勘弁してくれよなー、神社の集会所だけにしてくれよな」

友矩「いつものことじゃない」

一夏「それもそうだな」

友矩「ま、一夏は僕がいないとこんなハードスケジュール一人でこなせないんだけどね!」

一夏「それを言うなって! お前も俺がいなきゃダメなくせに!」

男共「ははははははは!」


シャル「うう…………」ジー

シャル「(すでに僕が入り込む余地がまったくないのが辛いところ……)」トホホホ・・・

シャル「(母さん、アルフォンスさん……。僕に『最初の一歩を踏む勇気』をください……)」


638: 2014/11/26(水) 08:15:32.94 ID:RGK9H7Jp0


ピンポーン!


シャル「あ」

一夏「あ、セシリアさんが来たのか」

シャル「ええ?!」

友矩「……一夏? まだ顔を合わせたことはなかったんじゃ?」

一夏「ついさっき買い物の途中で会ったんだよ」

友矩「え」(嫌な予感しかしない)

一夏「それじゃ、お出迎えするよ」

友矩「う、うん……」

シャル「お母さん、アルフォンスさん…………」トホホ・・・



セシリア「ど、どうも、ごきげんいかがかしら、一夏さん?」ドキドキ

一夏「ようこそ、セシリアさん。ここが“ブリュンヒルデ”織斑千冬の実家ですよ」ニッコリ

一夏「あ、ちゃんと片付けてありますから、安心してくださいね」

セシリア「は、はい」ドキドキ

一夏「うん? あっ、そう緊張しなくていいぞ? 千冬姉はまだ帰ってきてないから」

一夏「それとも、日本の邸宅にお邪魔するのが初めて? それなら靴を脱いでスリッパを履いてくれればそれでいいからね」

セシリア「わかりましたわ、一夏さん」ニッコリ

ガチャ

セシリア「あら」

シャル「あううう……」ドヨーン

セシリア「まあ、シャルロットさんが一番乗りでしたのね。先を越されましたわ」

一夏「それじゃ、セシリアさん? 傘はこっちに置いて、こちらの席にお座りになって、靴はここで脱いで、こっちのスリッパを――――――」

セシリア「は、はい……」ドキドキ

友矩「明らかに初めて会ったばかり距離感じゃなーい(まあ、一夏の方からは会ってはいるし、為人はよくわかってはいたけど)」(悟り)

シャル「はあ…………(そうだった。今日は『学園のみんなで織斑先生も交えてホームパーティをしよう』って話だったよ……)」トホホホ・・・

セシリア「あら、こちらの方は?」

友矩「お初にお目にかかります、夜支布 友矩です。織斑一夏のルームメイトです」

セシリア「ご丁寧なご挨拶 痛み入りますわ。私は、イギリス代表候補生のセシリア・オルコットですわ」

セシリア「それであなたは一夏さんの『ルームメイト』ですか。一夏さんと同じく素敵な方ですわね」

セシリア「こちらこそよろしくお願い致しますわ」ニコッ

セシリア「(『ルームメイト』――――――いったいこの方は一夏さんとどういう関係なのかしら?)」



639: 2014/11/26(水) 08:16:24.05 ID:RGK9H7Jp0

セシリア「これ、美味しいと評判のデザート専門のケーキですわ」

一夏「お、ありがとうございます」

セシリア「それと、これは私のメイドが手土産にと贈ってくれたアールグレイのセットですわね」

一夏「え」

シャル「――――――『アールグレイ』!?」

友矩「――――――『メイド』!?」

セシリア「あら、どうしましたの、みなさん?」

一夏「あ、いえ、実は俺もアールグレイを嗜んでまして――――――、試しに俺んちのアールグレイ、飲んでみません?」コトッ

セシリア「まあ、それではいただきますわ」

セシリア「私、フレーバーティーはあまり飲みませんけれど、アールグレイだけは比較的良く飲みますのよ」

シャル「………………」ゴクリ

友矩「…………すぐにわかるはずだ」

セシリア「では、いただきますわね」ゴクッ

一夏「…………どう?」ジー

セシリア「!」ドキッ

友矩「…………!」

セシリア「え、え!?」

シャル「ど、どう? 僕、凄く気に入ってるんだけど、美味しいでしょう?」


セシリア「こ、この味って、チェルシーの淹れるアールグレイとそっくり――――――」


一夏「!」ガタッ

友矩「すみません、セシリアさん! 早速ですが、手土産のアールグレイのセットをここで開けていいですか?」

セシリア「か、かまいませんことよ……(きゅ、急に顔色を変えてどうしたのかしら、みなさん……)」

友矩「一夏!」

一夏「あ、ああ……」


スタスタスタ・・・、バッバッバババ!


セシリア「あの、いったいどういうことなのでしょうか? アールグレイにいったいどういった因縁が…………」

シャル「そっか。セシリアはまだ知らないんだよね」

シャル「実は、これは“アヤカ”のことで――――――」

シャル「(僕もなんだけどね。――――――アールグレイとの因縁ってやつは)」

シャル「(飲んでいると、何か大切なことを忘れているような気がしてきて、切なくなってくるんだよね…………)」


640: 2014/11/26(水) 08:16:56.88 ID:RGK9H7Jp0


パカッ


一夏「!」

友矩「どう?」

一夏「…………これだ。たぶんこいつで間違いない」

友矩「これで『3年前のトワイライト号事件』について訊けば、おそらく全てがはっきりする」


友矩「――――――『トワイライト号事件』に乗船していた誰かが“彼”という可能性!」


友矩「本当なら日本政府が全てを知ってるんだから、僕らがこんな探偵ごっこをしてまで真実を追いかける必要はなかったんだ……」

友矩「そして、『トワイライト号事件』において禁忌のシステムが初めて確認されて、最重要機密事項と化して――――――」

友矩「けれど、これも“パンドラの匣”の奥に封じ込められている真相に辿り着くための重要な手掛かりだ……」

友矩「まさか、こんなにも世界が狭いだなんて思いもしなかったよ……」

一夏「ああ……」


――――――俺、何か巨大な運命というものの存在を強く感じてるよ。


一夏「俺はもう『トワイライト号事件』から一生 逃げることができないのかも……」

友矩「…………一夏」ポンッ

一夏「友矩?」

友矩「たとえどんな事実がそこにあったとしてもそれは所詮は過去でしかないんだから」

友矩「一夏は今 すべきことをやっていればいい」

友矩「だから、一夏は今の内にセシリアにそのメイドと『トワイライト号事件』の関係を確かめて、」

友矩「そしてすぐに、今日のホームパーティの準備に取り掛かって」

一夏「……わかった、友矩。まったくもってその通りだよ」



641: 2014/11/26(水) 08:18:09.27 ID:RGK9H7Jp0

――――――庭:ウッドデッキ周辺


一夏「よし。バーベキューの準備はできたぜ」

友矩「テーブルにイスに取り皿――――――その他諸々の準備も完璧!」

一夏「まったくもう! みんなして、俺の実家をパーティ会場にしやがって」

友矩「おかげで、団体様20名がお越しになっても対応出来るだけのイスとテーブルが寄贈されたんだからいいじゃない」

一夏「千冬姉さまさまだぜ……」

一夏「………………」キョロキョロ

友矩「どうしたの?」

一夏「どうやって千冬姉はこんなにも大きなマイホームを建てられたんだろう?」

友矩「……10年以上前の記憶が欠落していることについて?」

一夏「ああ。千冬姉は頑なに両親のことを話してはくれないし、今はこうやって自立できてるからもう気にならなくなったけど、」

一夏「それでも、帰ってくる度に『俺の家ってこんなにも大きかったんだー』って驚いて、昔のことが気になりだすんだ……」

友矩「一夏」

一夏「わかってる。今の俺にはまったく関係ないことだし、考えてもしかたがないことなのはわかってる」

一夏「ただ、『そろそろ教えてくれてもいいんじゃないか』って思っただけで」

友矩「………………」

一夏「悪い。さっきからウジウジと。らしくないよな」

一夏「それじゃ、こっちのピクニックテーブルにパラソルを差してくれよ」

友矩「ああ」


「いぃーちかぁー!」タッタッタッタッタ・・・!


友矩「うん?」

一夏「この声は――――――!」


鈴「いええええい!」ピョイーン!


一夏「おお?!」

鈴「久しぶり、一夏!」ギュッ

一夏「どこ乗ってんだよ、お前!」フラフラ・・・

鈴「ふふん。移動監視塔ごっこってやつ?」ニコニコ

友矩「相変わらずだな、鈴ちゃんは」

鈴「そういうあんたこそ! いつまで一夏と一緒にいるつもりなのよ! ベタベタと!」

鈴「あんたは一夏と千冬さんの母親なわけ?」

友矩「ずいぶんな言われようだな……(ああ 改めて見ると、――――――わかりやすい娘だな~)」

鈴「それに、せっかくご贔屓にしていた中華料理屋の看板娘がわざわざ会いに来てやってるのに、一夏からは何かないわけ?」

一夏「こんなんで感動もヘッタクレもあるか! いいかげんに降りろ!」ジタバタ

鈴「はーい」ピョイン、シュタ


642: 2014/11/26(水) 08:19:12.81 ID:RGK9H7Jp0

友矩「まったく、何の連絡も無しにこの街から居なくなって、急にまた何事も無かったかのように出てこられたら感動も何もあったもんじゃないね」ジロッ

鈴「そ、それは……、悪かったわよ」

一夏「……でも、こうやってまた元気な姿で会えたんだし、特にわだかまりもなく前と同じように付き合えるんだったらそれでいいさ」ニコッ

鈴「う、うん。あ、ありがと……」

鈴「で、でも……、『前と同じ』ってわけにはいかないのよね……」モジモジ

一夏「へ」

鈴「あ、何でもないわよ、馬鹿ぁ」

一夏「そうだ、中国の代表候補生なんだっけ、今? しかも、専用機持ちの!」

鈴「なんだ、知ってるんじゃない! 知ってるんだったら私の応援に来なさいよね。招待券だって贈ってあげたのに」

一夏「ごめんごめん。俺も社会人で勤勉だからさ?(――――――鈴ちゃんが頑張ってるのはクラス対抗戦で具に見ていたし、これで勘弁な)」

鈴「あ、そっか。あんた、今 23歳になるんだっけね。――――――私と9つの違いか」ボソッ

一夏「え」アセタラー

鈴「え、ううん。何でもない。こっちの話よ、こっちの話……」モジモジ

友矩「やっぱりねー」(察し)

一夏「にしては、代表候補生にもなったのにあんまり変わってないような――――――ま、1年しか経ってないし当然か?」ジロジロ

鈴「」イラッ

友矩「あ」(察し)

鈴「ふんっ!」バキッ

一夏「あうっ!?」

鈴「なんてこと言うのよ、あんたはぁー!」ウガー!

一夏「ええ……」グハッ

友矩「言葉はもっと選びましょうね、一夏」

一夏「ま、マジかよ……? い、いったい何に引っ掛かったんだ…………(悪い意味での高校デビューとかしてなくてホッとしただけなのに…………)」

鈴「はあ……、やっぱり一夏は一夏だった…………」ハア

鈴「けど、――――――『帰ってきたんだな』って」フフッ


※第1期OVAの冒頭を見ると、いかに織斑邸が広いかがよくわかります。ウッドデッキ付きで家を取り囲むように広々とした庭までついてます。


643: 2014/11/26(水) 08:20:00.92 ID:RGK9H7Jp0


セシリア「そろそろ お時間でしたわね」

シャル「そうだったね」

鈴「くぅー、せっかくの感動の再会の余韻を味わう時間が…………(――――――先に二人が来ていただなんて予想外!)」

ピンポーン!

一夏「お、来た来た!」

スタスタスタ・・・・・・ガチャ


箒「よ、よう、一夏……」モジモジ

ラウラ「こ、この前は世話になったな……」イジイジ

簪「こ、こんにちは……」ドキドキ

雪村「………………一夏さん」ハラハラハラ 


一夏「おう、よく来てくれたな、みんな」ニッコリ

一夏「千冬姉はまだ帰ってきてないけど、ホームパーティを始ようぜ!」

箒「お、おう! 今日はみんなで楽しもー!」ニコー

ラウラ「あ、ああ!」ニコー

簪「う、うん!」ニコー

雪村「…………助けてください、友矩さん」

友矩「あれ? もしかして、一夏って1年の専用機持ち全員攻略してない?(――――――世界を股にかける口リコン確定?)」


織斑一夏への好感度

篠ノ之 箒:「私が立派な社会人になったら結婚してくれ!」

セシリア・オルコット:素敵な殿方(ついさっき会ったばかりとは思えない距離感)

凰 鈴音:親公認。年頃の女子が年上の男性の家に何度も入り浸る

シャルロット・デュノア:記憶が消えてもアールグレイで繋がる幻想的な慕情

ラウラ・ボーデヴィッヒ:織斑一夏の男の大器に知らず知らずに魅了される

更識 簪:誘拐事件で助けてくれた上にアフターケアまでしてくれたみんなのヒーロー

朱華雪村:最も信頼している人物 =“仮面の守護騎士”織斑一夏



644: 2014/11/26(水) 08:20:42.17 ID:RGK9H7Jp0

箒「ところで、なぜ3人は先に来ていたんだ?(まさかとは思いたくはないが――――――)」

シャル「ぼ、僕は、その……、遅刻しないように早めに来ていたら一番早く着いちゃって……」アハハ・・・

セシリア「私も今日のために予約していたケーキを取りに行く都合で、早めに参らせていただきましたわ」

鈴「何? 悪い? 私はね、一夏の家には何度も遊びに来ていた仲なのよ?」

箒「なにっ!?」

小娘共「!?」ジロッ ―――――― 一斉に一夏の方を見る!

一夏「!!!?」ビクッ

簪「みんな、やっぱり気になってたんだ。そうだよね」

雪村「…………またですか、一夏さん」(呆れ)

鈴「それだけじゃないわ」

鈴「一夏はしょっちゅうウチに来て食事してたのよ。私がこの街に引っ越してきた時からね」ドヤァ

箒「一夏! どういうことだ! 聞いてないぞ、私は!」

友矩「一夏?」ニコー

一夏「…………!」アセタラー

一夏「まあ落ち着け、みんな!」コホン

一夏「よく鈴の実家の中華料理屋に行ってただけだ……」アセタラー

一夏「確かに出来た当時は本場中華料理ってやつにメチャクチャはまってよ? よく通い詰めてたわけでしてぇ…………」アセアセ

箒「なにっ、――――――店なのか」ホッ

シャル「お店なら何もおかしなところはないね」ホッ

小娘共「ホッ」

雪村「…………フゥ」

鈴「………………」ムスッ

一夏「え」ビクッ

友矩「わかった、一夏?(年頃の乙女は気になってる男性が身近な同性と付き合っていることに生理的な嫉妬心を覚えるものらしいんだよ?)」ジロッ

一夏「わかった。助けてくれ、友矩ぃ……(たかだか飯を食いに行くだけでこの反応――――――、世知辛い世の中だよ)」トホホ・・・

箒「なら、私の勝ちだな、凰 鈴音」

一夏「は」

鈴「はあ?」ジロッ

箒「私は一夏とは生まれた時からの付き合いなのだからな」ドヤァ

鈴「なんですって?!」

小娘共「!!」

一夏「やめてくれええええええええ! 油を注ぐのは鉄板の上だけにしてくれえええ!」ガバッ


※“童帝”織斑一夏は大学時代に血で血を洗う修羅場や血を見るような地獄を何度も味わっているので痛い目に遭った分だけ経験値が積まれています。



645: 2014/11/26(水) 08:21:57.19 ID:RGK9H7Jp0

一夏「ゼエゼエ」

一夏「まったくもう! 人の家に来て喧嘩はやめてくれ!」ゼエゼエ

箒「す、すまない、一夏」

鈴「わ、悪かったわよ……」

一夏「そういえば、箒ちゃんと鈴ちゃんはわかる気がするけれど、」

一夏「どうしてみんな 俺ん家に来たんだ? ――――――あ、ホームパーティの準備はすんでるよ」

箒「そんなの決まっているではないか」

鈴「そうよ。久々にあんたの顔が見たくなったから来たのよ」

一夏「いや、二人には聞いてないよ」

箒「気のせいか? やけに私への扱いがぞんざいではないか?」

一夏「そんなつもりは――――――」

鈴「それとも何? いきなり来られると困るわけ?」

鈴「――――――工口いものでも隠すとか」ニヤリ

一夏「いや、俺はマンションにだいたいの私物は持ってってるから」

鈴「え」

箒「ああ、確かにな」

鈴「え!」

シャル「そうだね。ここも大きくて素敵なところだけど、あっちのマンションも立地条件が良くて違った趣きがあるよね」

ラウラ「そうだな。居心地がいい場所だったな」

鈴「え?!」

一夏「むしろ、見られて困るのは千冬姉の方――――――」


雪村「――――――それ以上はいけない!」


一夏「え、“アヤカ”?」

一同「!!??」

雪村「………………」


646: 2014/11/26(水) 08:22:36.67 ID:RGK9H7Jp0

鈴「そ、そうね……。千冬さんの名誉のためにこれ以上は言わないでおいてあげる……」アセタラー

友矩「うん。それが賢い選択だね(よくやった、“アヤカ”。悪い話の流れをきみが言うことで断ち切れたぞ)」ニッコリ

鈴「ん?」

セシリア「え?」

友矩「どうかしましたか?」ニコニコ

鈴「………………ううん」アセタラー

セシリア「な、何でもありませんわ……」アセタラー

一夏「そういえば!」

友矩「あ」

一夏「箒ちゃん、似合ってるな、それ」

箒「!」 ――――――ポニーテールを結う白のリボン!

箒「あ、ああ……」テレテレ

セシリア「そういえば、リボンが変わってましたのね。確か前は緑色でしたかしら」

箒「そうだぞ。ラウラとシャルロットならわかるだろう? この前 もらったアレだ!」ニッコリ

ラウラ「おお、そうだったのか!」

シャル「へえ、それを誕生日に?」

箒「そういうことだ。大切に使わせてもらっているぞ、一夏」ニッコリ

一夏「そりゃよかった」ニッコリ

鈴「むむむ!」ムスッ

友矩「情報量がいくら多いからって脇道に逸れすぎ!(しかも、その度にあっちではアゲて、こっちではサゲてしまうから爆弾処理が大変だ!)」ハラハラ

雪村「…………大変ですね、ホントに」ハラハラ

簪「……一夏さんってこんな人かぁ(普段はこんな感じでも、いざとなったら――――――)」フフッ



647: 2014/11/26(水) 08:23:23.75 ID:RGK9H7Jp0

友矩「話を戻そうか」

一夏「あ、うん。何の話だったっけ?」

友矩「みんなが今日のホームパーティに参加してくれた理由について」

一夏「あ、そうだった そうだった」


セシリア「私は“ブリュンヒルデ”織斑千冬先生の生家を訪ねる貴重な機会として参らせていただきましたわ」

セシリア「(それに、チェルシーと一夏さんの接点について興味が湧きましたことですし、何か土産話となるものを得て帰りたいものですわ)」

シャル「僕は機会があればまた『一夏さんとお話できたらなぁー』って」アハハ・・・

シャル「(それで、僕が感じている一夏さんへのこの感情の正体がわかるといいな…………)」

ラウラ「私が尊敬している二人の偉人の家ということで興味がある」ゴクゴク

ラウラ「(さて、マンションの時は織斑一夏の常に隣にいるあの男が目を光らせていたから探れなかったが、ここならどうだ?)」

簪「私は、この前のお礼がしたくて……」モジモジ

簪「(よかった。一夏さんは私生活でもカッコイイ人で。私も代表候補生なんだからこの人を見習って頑張らないと)」

雪村「僕はただの付き添い 兼 荷物持ち。別に来たいと思っていたわけじゃないです」

雪村「(だって、一夏さんとは学園でちょくちょく会ってるし)」


一夏「そうか。なるほど、なるほどね」

一夏「千冬姉は正午になってから来るかな。午前の仕事が終われば直帰だったはずだから」

一夏「ただ、この人数だとあっという間に食材が切れて間が保たない気がするな」

友矩「じゃあ、正午になってからバーベキューを始めようか」

一夏「そうだな。外は暑いし、家の中で何かするか」

小娘共「賛成!」

箒「(当たり前だ! わざわざ一夏が帰省している日を狙って来たのだ)」

箒「(いつまた会えるとも知れないのだから、会える時にはしっかりと会っておくのは、その……、婚約者の勤めだろう?)」

鈴「(外に出て 五反田兄妹にでも出会ったら台無しじゃない、馬鹿ぁ!)」

鈴「(それに、まさか専用機持ち全員が一夏に興味があるだなんて知ったからには、――――――ますます退けない!)」

一夏「さて、この人数でやれることっていうと――――――」



648: 2014/11/26(水) 08:24:27.54 ID:RGK9H7Jp0

――――――ボードゲーム:バルバロッサ


ラウラ「ほう? 我がドイツのゲームだな」

一夏「ああ。他には『トランプ』とか『ジェンガ』でも良かったけど、せっかくだし、ここはドイツのやつで」

鈴「確か、カラー粘土でいろいろ作って、それが何か中てるゲームよね」

友矩「カラー粘土の色は4つしかないけど、1色ごとに2つあるから――――――、」


一夏、友矩、雪村 男×3 箒、セシリア、鈴、シャルロット、ラウラ、簪 女×6 = 計:9人


友矩「僕がゲーム進行――――――ゲームマスターを務めますから、2人1組になって4組になって競争してもらいまーす」

小娘共「!?」

一夏「え、友矩?!」アセタラー

雪村「………………!」ハラハラ

友矩「はいはーい! カラー粘土4色8個はこのブラックボックスの中に入ってま~す!」

友矩「一夏と組みたいのなら、一夏と同じ色を引かないとねー」

小娘共「!」

雪村「…………ホッ」

一夏「なんだ、それなら大丈夫だな」フゥ

箒「こ、ここは一夏の……として絶対に同じ色を引くっ!」グッ

セシリア「まあ、私としては誰でも良いのですけれど……」ハラハラ

鈴「一夏と組むのは私なんだからね!」フフン

シャル「できれば一夏さんと組みたいけれど…………」ドキドキ

ラウラ「誰と組もうと結果は見えているがな」ドン!

簪「……ここは狙ってみる!」ビシッ


649: 2014/11/26(水) 08:25:05.04 ID:RGK9H7Jp0

友矩「さあ、最初に引くのは誰かな?」

小娘共「………………」チラッチラッ

雪村「それじゃ、僕から行きます」

箒「あ、雪村」

友矩「はい」

雪村「…………」ゴソゴソ、バッ


――――――青


セシリア「まずは青ですか」

鈴「次は誰が行く?」

シャル「………………」


一夏「それじゃ次は俺が(俺が動けばみんなも動く!)」


友矩「ん!?」

ラウラ「え」

一夏「よいしょっと」ガサゴソ

一夏「じゃじゃ~ん」バッ


――――――青


雪村「え」

友矩「一夏?」

一夏「えええええええええええええ!?」

小娘共「!!!!??」ガタッ

鈴「ノーカンよ、ノーカン!」

箒「よりにもよって、男同士でくっつくとはどういうことだ!」

友矩「……まあまあ! 優勝したペアにはここにいる誰か一人に倫理的に問題がない範囲で自由にしていい権利を差し上げますので」ニコニコー

友矩「(ここに来て話を拗れさせるわけにはいかない! ったく、なんでこう簡単に導火線に火を点けることが簡単に起こる!?)」アセアセ

箒「そ、そうか。それなら問題ない」ホッ

鈴「絶対に勝つわよ! 足を引っ張るんじゃないわよ!」

一夏「ちょっと待ってくれ、友矩! 何だそのルールは?!」

友矩「やだなー、空気を読まない結果を招いたきみへの罰ゲームに決まってるじゃないですかー」ジトー

一夏「友矩ぃいいいいいいい!」

雪村「ごめんなさい……」

一夏「いや、お前は謝る必要なんてないからな! な!」アセアセ



650: 2014/11/26(水) 08:25:47.16 ID:RGK9H7Jp0

――――――組み合わせの結果

お昼前のボードゲーム:バルバロッサ


ゲーム進行(GM):友矩

1,青:一夏 & 雪村

2,赤:箒 & 鈴

3,黄:シャルロット & ラウラ

4,緑:セシリア & 簪


ハウスルール

1,プレイする順番はペアが決まった順から

2,ペアで情報を共有してもいいがターン毎に交互にプレイすること

3,プレイの持ち時間は1分

4,粘土細工について質問する時は必ず製作者を名指しすること。「これ」とか「それ」で指定してはならない

5,回答が正式名称でなくても、GMの判断でおまけすることがある(あらかじめGMが製作者に回答の許容範囲を確認済み)

6,みんな初心者なので、質問マスでの回答権は質問終了後も消失しない

>>8つそれぞれの粘土細工の製作者は異なるために、誰がどれを作ったのかを覚えておくこと



651: 2014/11/26(水) 08:26:32.35 ID:RGK9H7Jp0


友矩「さて、ここでボードゲーム:バルバロッサについてご説明しましょう」

友矩「“バルバロッサ”とはイタリア語で“赤髭”を意味し、神聖ローマ帝国皇帝:フリードリヒ1世に由来します」

友矩「このボードゲーム:バルバロッサは『2つのボード』にプレイヤー分の『カラー粘土』に『ダイス』という珍しい構成なのが特徴ですね」

友矩「『2つのボード』のうち、片方はメインボード、もう片方は得点・宝石チャートボードと呼ばれており、」

友矩「基本的には正六角形でそれぞれの辺にイベントマスがついたメインボードを使って遊びます」

友矩「つまり、メインボードにはたった6つのマスしかなく、それを延々とダイスを振ってぐるぐると回ることになります」

友矩「この正六角形のメインボードの中央にカラー粘土で作った何かをそれぞれ見せ合うわけです」

友矩「さて、イベントマスは4種類」

友矩「まず1つ目は、ドラゴンマス。停まったら自分以外のプレイヤーに1得点」← 重要!

友矩「次に、宝石マス。ここでは宝石が1つもらえ、この宝石をサイコロを振る前に消費することで使った分だけ進めるようになります」

友矩「ドラゴンマスと宝石マスはそれぞれ2つずつ用意されており、全6マスのメインボードの半分以上を占めるわけなのです」

友矩「さて、残り2つがこのバルバロッサの肝となります」

友矩「1つは、小人マス。ここで粘土細工を1つ指定してその粘土細工の正式名称の中の1文字を質問者に開示します」

友矩「もちろん、ゲーム進行の僕にあらかじめ粘土細工が何なのか伝えてあるので、嘘を言った場合はしっかりと罰を与えますのでご安心を」

友矩「そして、もう1つは質問マス。粘土細工を1つ指定して質問し、『まったく違う』『的外れ』と言われるまで質問ができます」

友矩「この時、粘土細工が何なのかがわかれば回答をし、製作者にだけ聞こえるように答えましょう。ハズレでも減点はないのでご安心を」

友矩「注意すべきは、『まったく違う』と言われた時点で質問権や回答権を失うので、少し質問したらすぐに答えに行くのがいいでしょう」

友矩「ただ、ハウスルールで回答権は残るようになっているので、質問権を失うまで心置きなく質問できるので難しく考えなくていいです、今回は」

友矩「このゲームの勝利条件ですが、こうしてメインボードでのやりとりを繰り返していく中で、」

友矩「もう一方のチャートボードで、得点チャートの渦巻の中心に最初にゴールした人が勝利となります」

友矩「そして、粘土細工のクイズで最初に正解した人には5点、次点で3点もらえるようになっています」

友矩「正解が出た時には、その証の矢を粘土細工に刺します。2本までしか刺せませんので、それ以降はその粘土細工への回答権を失うことになります」

友矩「そして、この矢が刺さった時には製作者にも得点が入るのですが、最初や最後に中てられた場合は減点になるので、」

友矩「粘土細工は初見ではわかりづらく、中盤戦での説明で理解されるようなわかりやすさを兼ね備えていないと首位独走は難しいでしょう」

友矩「また、矢が13本刺さった場合でもゲームは終了となり、その時点で最も得点が高かったプレイヤーの勝利となります」

友矩「最後に質問者が回答中以外ならいつでも回答に挑戦できる呪いのチップも存在します」



652: 2014/11/26(水) 08:27:07.22 ID:RGK9H7Jp0

要約 -バルバロッサ-

・メインボード
マスは6つのみ。時計回りに「質問」「宝石」「ドラゴン」「小人」「宝石」「ドラゴン」→「質問」のループとなる。
また、その中央にそれぞれの粘土細工を置いて見せ合うことになる。

・カラー粘土の粘土細工と矢
製作者はゲーム進行役にそれぞれが何なのかを正式名称を書いて知らせる義務がある。
正解した場合には粘土細工に矢が刺さり、最初に正解したら5点、次点で3点となり、それ以降は回答することができなくなる。
つまり、このゲームだと正解者が2人までという厳しい制限があり、ここで差が付けられるわけであり、
正解を言えない人間はドラゴンマスからの得点しか受けられないという極めて過酷なゲームである。
しかし、このゲームの采配だと1~2本目、12~13本目の矢を刺された製作者には-2点、7~8本目には+2点というふうに得点が課せられるので、
一見するとわからず、中盤戦になってようやく分かる程度のわかりやすさを兼ね備えた意匠じゃないといけない。
13本目の矢が刺さった時点でゲーム終了となり、その時点で最も得点が高かったプレイヤーの勝利となる。

・ダイス
メインボード6マスをぐるぐる廻るのに使用。

・宝石
ダイスロール前に消費することで、その分だけマスを進められる確定ダイスの効果を持つ。
デフォルトで12個持って開始し、上限は13個であるが、メインボードが6マスしかないので最初から12個も必要かは不明。
ただし、勝利条件がデフォルトで30得点でかつ自ら得点するには正解するしかないので、序盤からガンガン使っていると確実に足りなくなる。

・呪いのチップ
質問マスにいなくても回答権を得られる。ただし、質問マスにいる質問者が回答権を得た場合は使えない。
そもそも、宝石を最初から12個持っているので質問マスには浪費しない限りは狙って停まれるので序盤は使うべきではない。

・チャートボード
宝石の所持数が13,ゴールとなる得点が30のマスとして表現されている。
つまり、基本的な勝利条件は30得点することである。

得点方法
・ドラゴンマス
“踏んだ人 以外”が1得点。
なので、絶対に踏むべきではないマスであり、ドラゴンマスをどれだけ回避できるかで徐々に差が出てくる。

・回答が正解する
1つの粘土細工について最初に正解すれば5点、次に正解できれば3点。それ以降は回答権は得られない。
これが主要な得点源であり、他の得点源は副産物としてもらえるおまけでしかないので、答えられない人間はただただ淘汰されるのみ。

・正解時に刺さった矢が5~9本目の場合はその製作者に得点が入る
逆に、1~3本目と11~13本目は減点になる。4本目と10本目は無得点。
つまり、中盤に近いほどプラスの得点になる凸状の矢のボーナス分布となっている。



653: 2014/11/26(水) 08:27:45.82 ID:RGK9H7Jp0

――――――ゲームの様子:1ターン目、赤チームの様子から


赤:箒「では、ラウラに質問するぞ」 ――――――質問マス

黄:ラウラ「受けて立とう」

GM:友矩「さて、ラウラちゃんが作ったのはこの巨大な粘土細工! これは何なのでしょうか!」

GM:友矩「(GMだから僕はわかってるけど、これは中てるのは難しいだろうな。――――――逆に)」

赤:箒「Q.それは地上にあるものか?」

黄:ラウラ「A.うん」

赤:箒「Q.人間より大きいか?」

黄:ラウラ「A.そうだ」

赤:箒「Q.人間が作ったものか?」

黄:ラウラ「A.Nein」

赤:箒「え」

GM:友矩「『いいえ』と言われたのでここでの質問権は以上となります」

黄:ラウラ「質問終了。答えてもらおう」

赤:箒「………………ムゥ」

赤:鈴「頑張りなさいよね、あんた! 負けたら承知しないわよ!」

赤:箒「わかっている!」

赤:箒「あ!」


赤:箒「――――――『油田』だ!」


黄:ラウラ「違う」

赤:箒「あ……」ガクッ

一同「(なぜ『油田』……?)」

GM:友矩「こらこら、回答はGMである僕と製作者だけにしか聞こえないようにしてくださいね」

赤:箒「あ、すみません……」

黄:ラウラ「少々難しかったようだな」

GM:友矩「難しすぎても減点になる可能性があるので、回答する順番には気をつけよう」


654: 2014/11/26(水) 08:28:56.79 ID:RGK9H7Jp0

黄:ラウラ「では、次は私のターンだな」

黄:ラウラ「ダイスロール!」 ――――――3

黄:シャル「小人マスだね」

黄:ラウラ「うむ。ここでは回答の1文字を訊くことができる」チラッ

黄:ラウラ「(しかし、ゲーム開始早々の青チームの動き――――――さすがに一夏はやり慣れているだけあって小人マスから攻めてくるな)」

黄:ラウラ「(おそらく“アヤカ”も一夏にならってすぐには質問マスには行かずに、宝石を使って確実に小人マスを周回する可能性が高いな)」

黄:ラウラ「よし、ここは“アヤカ”。お前に質問しよう」

青:雪村「どうぞ」

GM:友矩「あ」

青:一夏「…………ラウラちゃん」

赤:鈴「ねえ、あれって――――――、まさか違うわよね?」アセアセ

赤:箒「あ、当たり前だろう! 雪村が卑猥なものを公然と造るものか!」

赤:箒「というか、GMの友矩さんや一夏が止めないんだから、きっとあれは健全なものに違い…ない」


雪村の粘土細工:2個の球の真ん中に棒を立てたもの


赤:鈴「そこは嘘でも言い切りなさいよ……」

黄:ラウラ「では、Q.一番最初の文字を見せてくれ」

青:雪村「はい」カキカキ、スッ

黄:ラウラ「……うん?」

黄:シャル「何だった、あれの頭文字?」

黄:ラウラ「いや、まだわからん…………何だ、あれは?」

青:一夏「…………“アヤカ”もやるもんだな」ヒソヒソ


雪村の粘土細工:『ネオアームストロングサイクロンジェットアームストロング砲じぇねーか、完成度高けーなオイ』


青:一夏「こんなもの 答えられるか! 友矩もなんでこんなもの認めちゃうんだよ!?」ヒソヒソ

青:雪村「大丈夫です。部分点として『大砲』でも可なので」ヒソヒソ

青:一夏「いや、それでも直立させるとか――――――、どうなんだ、これは?」ヒソヒソ

青:一夏「相手はIS学園のお嬢様たちなんだぞー!」ヒソヒソ

青:一夏「というか、この女尊男卑の世の中であのマンガ よく発禁にならなかったなー!」ヒソヒソ

青:雪村「しかし、これで勝利は堅いです」ヒソヒソ

青:一夏「何 言ってんだ! 終盤までわからなかったら-2点だぞ!」ヒソヒソ

青:雪村「落ち着いてくださいよ。1つの粘土細工に2本しか矢が刺さらず、13本目でゲーム終了ならば――――――、」ヒソヒソ

青:雪村「現在 場に出されている粘土細工は8つですから、16回刺せる余地があるってことじゃないですか」ヒソヒソ

青:一夏「あ」ヒソヒソ

青:雪村「つまり、僕の粘土細工が最後の最後までわからなければ別に減点はされないわけですよね?」ヒソヒソ

青:雪村「それに、正式名称もとてつもなく長いわけですから、小人マスで探りを入れることはほぼ不可能」ヒソヒソ

青:雪村「そして、相手はIS学園の生徒――――――しかも専用機持ち。考えられる上で最高の手だと思いませんか?」ヒソヒソ

青:一夏「そうか? 必ずしもIS学園の生徒が高家の出身とは限らないぞ……」ヒソヒソ


655: 2014/11/26(水) 08:29:42.35 ID:RGK9H7Jp0

緑:簪「宝石を使って質問マスまで行きます」

GM:友矩「はい。使った分だけチャートボードの宝石チャートを残数と同じ場所に動かしてください」

緑:簪「動かしました」

GM:友矩「では、誰に質問しますか」

緑:簪「“アヤカ”です」

青:雪村「!?」

青:一夏「…………そういえば、簪ちゃんは旧家にしきたりに縛られている以外は庶民派だったな」

GM:友矩「最初の質問は何ですか?」

緑:簪「あ、回答します」

黄:ラウラ「なに?! まだ何の情報も出てないのに、あれが何なのか一目でわかったのか!?」ガタッ

青:雪村「!!!?」アセタラー

GM:友矩「では、回答者と製作者はキッチンまで来てください。そこでGMが付き添いで答え合わせを行います」

GM:友矩「なお、完答できなかった場合でも規定の得点よりも低くなりますが、」

GM:友矩「ハウスルールでGMの判断で部分点も認めることがありますので、それで矢を刺すかは回答者が選択してください」


緑:簪「――――――!」

青:雪村「…………正解」

GM:友矩「おめでとう!」パチパチパチ・・・

一同「!?」


緑:簪「やったよ、セシリア! 5点ゲット!」

緑:セシリア「素晴らしいですわ、簪さん!」

赤:鈴「こ、これは意外な強敵!」

赤:箒「更識 簪――――――、だてに専用機持ちではないということか!」

黄:ラウラ「どういうことだ!? どうして頭文字があれなのにわかったんだ?! 部分点でもないのだろう?」アセアセ

黄:シャル「お、落ち着いて、ラウラ! 勝負はまだ始まったばかりだから!」

青:雪村「………………ハア」ガックリ

青:一夏「まあ、気を落とすなって。次はお前の番なんだから」ヨシヨシ

GM:友矩「最初の1本目の矢が青チームに刺さったので2点減点ですが、まだ得点してないので減点は無しでいいです」

緑:簪「あ……」

緑:セシリア「気になさらないでください、簪さん。現時点でトップは私たちなのですから」

GM:友矩「まだ誰も得点していない時はゆっくり情報集めをするのが定番です。勇み足でしたね」


656: 2014/11/26(水) 08:30:50.60 ID:RGK9H7Jp0

GM:友矩「では、2ターン目です。青チーム、前の人と交代してプレイしてください」

青:一夏「“アヤカ”の番だぞ」

青:雪村「くぅ…………」キョロキョロ

青:雪村「お」

青:雪村「宝石を使って質問マスへ!」

GM:友矩「では、チャートボードの宝石の数を減らしてから、質問相手を指定してください」

青:雪村「相手は更識 簪さん!」ビシッ

緑:簪「!」


簪の粘土細工:何かの覆面ヒーローのバストアップか? とても精巧にできている(ただし、緑一色なので輪郭や配色がわかりづらい)。


緑:セシリア「さっきの仕返しですか、“アヤカ”さん!?」

赤:箒「なるほど、宝石は序盤で使っておいたほうがいいのか」フムフム

GM:友矩「質問をどうぞ(これは渋いぞー、簪ちゃん! だけど、ある意味においてはISと比肩するような“夢 戦士”だよね、それ)」

青:雪村「Q.それは結構旧いマンガの変身ヒーローですよね?」

緑:簪「え!?」ビクッ

GM:友矩「正直に答えてください」

緑:簪「A.うん。そう」

青:雪村「Q.原作は石森章太郎ではない」

緑:簪「A.うん」

青:雪村「Q.『ドリムノート』という単語に聞き覚えはある?」

緑:簪「A.うん。出てくるよ(ああ……、これはやられちゃったね……)」

緑:簪「(でも、嬉しいな。結構旧いけれどもこのヒーローは私にとってはアラジンの魔法のランプのような夢が詰まってたから)」

青:雪村「回答します」

GM:友矩「では、キッチンまで」

緑:簪「はい」


青:雪村「――――――」

緑:簪「正解だよ」

GM:友矩「おめでとうございます」パチパチパチ・・・

一同「おお!」



657: 2014/11/26(水) 08:31:33.68 ID:RGK9H7Jp0

GM:友矩「意外な趣味が発覚したもんだね(今日は“アヤカ”について新たな発見が次々と見つかっていくもんだね……)」

青:雪村「やりました」ドヤァ

青:一夏「凄いな。何だったんだ、あれ?」

赤:箒「やはり、雪村と簪は相性がいいのか……」

GM:友矩「では、1本目の矢を刺してください。それで青チームには5点です」

青:雪村「それじゃ」ソー

緑:簪「あ、うん。気にしないで」ニッコリ

GM:友矩「累計2本目なので、緑チーム2点減点!」

緑:簪「ごめん、セシリア」

緑:セシリア「大丈夫ですわ、簪さん。まだ勝負は始まったばかりですから」

緑:セシリア「さあ、次はあなたの番ですよ、鈴さん」

赤:鈴「一夏と“アヤカ”の青チームが首位か」

赤:鈴「ここは私も宝石を使って質問マスへ! 情報を集めるわ!」

GM:友矩「では、宝石チャートを動かして、質問相手を選んでください」

赤:鈴「それじゃ、私は――――――」





658: 2014/11/26(水) 08:32:18.44 ID:RGK9H7Jp0

――――――正午

――――――庭:ウッドデッキ


一夏「よし、バーベキューやるか!」

一同「おおおお!」

鈴「一夏、ここは私にまっかせなさーい!」

一夏「うん?」

鈴「一夏が大好きだった本場中華料理の味ってやつを今ここで思い出させてあげるから!」

一夏「おお! 道具一式 持ってきていたのか」

鈴「キッチン、使わせてもらおうわよ」

一夏「ああ」

鈴「――――――」ニヤリ

箒「むむむ!」

箒「一夏、私に手伝えることはないか?」

一夏「うん? それじゃ、すでにカットしてある食材を串に刺して炙ってくれ」

箒「え」

友矩「やっと火が安定した……」パタパタパタ・・・ ――――――団扇で火を煽ぐ!

一夏「ほら、バーベキューってアメリカのものだろう? みんな、初めてだろうし、手本を示してやってくれよ」

箒「あ!」

箒「一夏……(わざわざ私を選んでくれるとは――――――)」ニッコリ

箒「よし、わかったぞ。この私がみんなにバーベキューのやり方を教えてやろう!」

箒「いいか? この串で材料を刺してだな――――――」

シャル「へえ、ここにある食材を自由に串に刺して焼くんだ」

セシリア「いかにもアメリカ人が好みそうなものですわね……」

ラウラ「なるほど、これがバーベキューか」

簪「何だかワクワクするなー、こういうの」ニコニコ



659: 2014/11/26(水) 08:32:56.79 ID:RGK9H7Jp0


ワイワイ、ガヤガヤ、ジュージュー!


箒「しかし、カボチャにピーマンに人参にじゃがいもにさつまいもにさやえんどうに、果ては茄子やトマトもあるのか」

一夏「そいつは大学時代の友人が毎年 贈ってくれる採れたてだぜ! 生で食べても美味いんだな、これが!」カプッ!

友矩「注目! こっちにはかの有名なナポレオンやビスマルクが愛好した牡蠣もございますよー!」

セシリア「まあ、牡蠣ですか!」(さすがに串に刺して齧り付くなんて淑女にはできないので普通に焼いて食べている)

シャル「うん。牡蠣って美味しいよね!」

ラウラ「なに、ビスマルクが愛好した食材とな!」

箒「よし」

簪「あ」

箒「い、一夏!」ドキドキ

一夏「なに?」ジュージュー

箒「あ、あ~ん!」スッ ――――――バーベキューの串焼き!

一夏「お、おお! あ、ありがとう、箒ちゃん……」モグモグ

小娘共「!!」

雪村「はい、友矩さん」スッ ――――――バーベキューの串焼き!

友矩「お、ありがとう、“アヤカ”くん」モグモグ

鈴「みんな~、酢豚 できたわよ――――――って、何してんのさ、あんたは~!?」

箒「ち、違うぞ、これは! 私たちのために調理を続けている一夏の腹を満たしてやろうとだな――――――」アセアセ

友矩「…………見せつけるんじゃなかったのか、箒ちゃん?」モグモグ

雪村「焼きナス 美味しいです」モグモグ

一夏「よし、鈴の中華料理もできたようだし、俺もこの辺にして食事に専念しよっかな~」

鈴「はいはい、酢豚 食べなさいよ、酢豚~!」

箒「い、一夏。お前の分は皿にとっておいてからな」ドキドキ

一夏「ああ。ありがとう」ニッコリ

鈴「――――――!」ジロッ

箒「――――――!」ジロッ

両者「…………!」バチバチバチ・・・

両者「ふん!」



660: 2014/11/26(水) 08:33:50.32 ID:RGK9H7Jp0


ワイワイ、ガヤガヤ、ジュージュー!


一夏「ここにトウモロコシがあります」

一夏「普通のトウモロコシは焼いても表面が焦げるだけなんですが、」

一夏「このトウモロコシを油を引いた鉄板の上に投げ入れて数秒間炒ると――――――」

シャル「なになに?」ワクワク

パン! パンパン!

セシリア「きゃあ!? トウモロコシが爆発しましたわ!?」ビクッ

ラウラ「な、何だこれは?!」ドキドキ

一夏「はい、ポップコーンの出来上がり!」

鈴「ヨーロッパだとポップコーンはポピュラーじゃないわけね。こんなので心を弾ませるなんて」

箒「バルバロッサの時も思ったが、こういうところでも文化の違いというものが出てくるわけなんだな」

ラウラ「ん、大した味ではないな。油でギトギトではないか」パクッ

一夏「まあ 焦るなって! この秘伝のキャラメルソースを絡めると格別なんだぜ!」

シャル「ああ すっごく甘くていい薫り……!」クンクン

簪「肉汁たっぷりの薫りも良かったけど、こっちも食欲がそそるね」

セシリア「ああ……、一夏さん。いただいてもよろしいですか?」

一夏「うん。火傷しないようにね」

セシリア「は、はい!」フゥーフゥー、ハムッ

セシリア「!」

一夏「どう? 織斑一夏特製の秘伝のキャラメルソースとの相性は!」

セシリア「お、美味ひい、ですわ……」ウフウフフフ・・・

シャル「僕、これ 好きだな……」ウットリ

簪「ホントにね……」ニコニコ

ラウラ「少々甘ったるいが、これは未体験の美味しさだな……」バクバク・・・

セシリア「世の中にはこんな極上のお菓子が存在するだなんて知りませんでしたわ!」キラキラ

一夏「お菓子ってほどのもんじゃないけどさ? 喜んでもらえたんなら嬉しいぜ」ニコッ

セシリア「帰ったら早速 これと同じものを作らせませんと!」

セシリア「一夏さん! どうかその秘伝のキャラメルソースを伝授してくださらない!」キラキラ

一夏「いいぜ。俺もセシリアさんのとこのメイドにこのアールグレイの作り方を教わったんだし、おあいこってことで」

セシリア「ああ……!」ウットリ

箒「……一夏?」ジトー

鈴「ねえ、セシリアってあんなキャラだったっけ?」

雪村「………………」ハラハラ

友矩「マシュマロ 食べる?」スッ

雪村「いただきます」パクッ

一夏「おっと! 食事を引き立てるミュージックを忘れてたな!」

一夏「スイッチ オン!」カチッ



661: 2014/11/26(水) 08:34:29.12 ID:RGK9H7Jp0


♪ ワイワイ、ガヤガヤ、ジュージュー! ♪


千冬「おうおう、我が家に帰ってきてみれば歓談の声が行き交い、心を和ませる音楽が流れ、ヨダレが出そうな臭いが立ち込めているな」

千冬「どうやら、この小さな庭に宮殿が建ったようだな」フフッ

小娘共「織斑先生!」

一夏「おかえり、千冬姉」

一夏「ちょっとばかり遅かった気がするけど、はい。千冬姉の分だぜ」

千冬「ああ……、ちょっと待ってくれ。この日照りの中で帰ってきたばかりだ」

一夏「じゃあ、シャワーを浴びた後にお茶でも淹れよっか。熱いのと冷たいの、どっちがいい?」

千冬「そうだな、外から戻ってきたばかりだし、冷たいものをもらおうか」

一夏「わかった」

一夏「それじゃみんな、ちょっと」ニコッ

ガチャ、バタン

小娘共「………………」

箒「そうだ、一夏は――――――」グッ

鈴「…………やっぱり、あの千冬さんが最大の難敵よね」アセタラー

シャル「何なの、この雰囲気…………」アゼーン

セシリア「まるで夫婦みたいですわ……」シミジミ

ラウラ「自宅での教官はこういう感じなのか」ジー

簪「………………」ドキドキ

雪村「流れが止まった」モグモグ

友矩「一夏が抜けるといつもこうだよ、“アヤカ”くん」ジュージュー!

友矩「あ、最後の牡蠣だよ。はい」スッ

雪村「ありがとうございます」パクッ



662: 2014/11/26(水) 08:36:09.39 ID:RGK9H7Jp0

――――――10分後、


小娘共「………………」ウズウズ

雪村「凄いですね。一夏さんが抜けるとあっという間に活気がなくなりました」

雪村「会話がなくなりました。食欲がなくなりました。笑顔がなくなりました」

友矩「まあ、それが一夏の人間としての器の大きさの何よりの証明だね」モグモグ

友矩「こればかりは本当に生まれ持った才能、あるいは呪いと言えるものだからね」

雪村「――――――『呪い』ですか」

友矩「うん。自分や周りの人の喜びや幸せに繋がらないなら、それは無自覚の悪意の塊でしかなく傍迷惑でしかないからね」

友矩「難しいんだ、これが。自分が立派であろうと努めても周りの人間が自分という存在に毒されることを克服するのはもっと難しいからね」

友矩「一夏は最近になってようやくそれを自覚し始めたから、これからはマシになっていくとは思うけど」

雪村「………………」

友矩「…………臨海学校の時はすまなかったね。守ってやれなくて」

雪村「いえ、あれはしかたがなかったことですから気にしてません」

友矩「――――――大人に対して不信を抱いているのはよくわかる」

友矩「僕たちも同じように、学年別トーナメントの時からIS学園を信用しなくなったから」

友矩「けれども、組織や立場に縛られている以上はこれからも表立った助けはできそうにない」

友矩「結局、きみが嫌ってる大人の力を活かさないとこの先 生き残ることは難しいだろう」

雪村「わかってます、それは。いつもいつも一夏さんはすまなそうにしてますから」

友矩「…………そう」

友矩「それでね? 一応、“彼”のことについての調査も今日になって進展が得られたから」

友矩「詳しいことは後日まとめておくから、もし見たくなったら言ってね」

雪村「わかりました。いつもいつもありがとうございます」ニッコリ

友矩「一夏が一生懸命になれるわけだよ、――――――その笑顔」ニコッ



663: 2014/11/26(水) 08:36:46.96 ID:RGK9H7Jp0


ジリジリジリジリ・・・


セシリア「少し日照りも強くなってまいりましたし、涼ませてもらいますわ」

ラウラ「そうだな。日本の暑さはドイツのそれとは何かが違い過ぎる……」アセタラー

鈴「あ、私も私も……」

友矩「そうだね。それじゃ遠慮することはないから、涼んでおいで」

シャル「あ、僕……、少しトイレに…………」スッ

友矩「うん。行っておいで」

友矩「僕たちは少し片付けをしておこうか。飲み物も温くなってきたしね」

簪「あ、手伝います」

雪村「僕も」

箒「私もだ」

友矩「それじゃ、まずは空のボールやペットボトルを――――――」


テキパキ、テキパキ、テキパキ・・・


簪「終わりました」

友矩「ありがとう」

箒「あっという間に片付きましたね」

雪村「………………フゥ」

友矩「そりゃあね。何度もここでホームパーティをしていたら嫌でも手際が良くなっていくよ」

箒「…………『何度もここでホームパーティ』」ボソッ

友矩「そうだ、箒ちゃん」

箒「あ、はい」ビクッ

友矩「今年の篠ノ之神社の夏祭り――――――、来るよね?」

箒「はい!」ビシッ

友矩「そう。それじゃ頑張って」ニコッ

箒「ありがとうございます」ニコッ

簪「?」

友矩「ああ。盆に箒ちゃんの実家である篠ノ之神社で夏祭りが開催されるんだ」

友矩「“アヤカ”くん、来なよ。一度は来たんだし、僕たちも来るから、ね?」

雪村「わかりました」

箒「そうか。来るのか…………これは張り切ってやらないとな」グッ

友矩「どうだい、簪ちゃんも? 友達を誘ってどうにか“アヤカ”くんと一緒に来てやってくれないかな?」

簪「あ、はい。――――――盆ですか? わかりました。その後に私も実家に帰ろうかと思います」

友矩「うん。それがいい。ありがとう」

友矩「良かったな、“アヤカ”くん。今年の盆はみんな一緒に居てくれるぞ」ニコッ

雪村「ありがとうございます。何から何まで」

友矩「さて、これからホームパーティの続き、どうしようか――――――」



664: 2014/11/26(水) 08:37:35.21 ID:RGK9H7Jp0

――――――

鈴「はあ……、生き返るぅ…………」

セシリア「そうですわねぇ……」

ラウラ「ああ……」

ガチャ

一夏「あ、みんな」

千冬「ああ お前たちか」

一夏「千冬姉、寒くない?」

千冬「大丈夫だ。これくらい」

一夏「はい」スッ ――――――流れるような所作で椅子を引いてあげる

千冬「ああ」 ――――――そして、流れるようにゆったりと腰掛ける

一夏「それじゃ、冷たいのだったな」

一夏「はい」コトッ

千冬「うむ」

千冬「ああ……、お前の淹れた茶は最高だな」フフッ

一夏「そんなに褒めたって何も出ねえよ、千冬姉」ニコニコ

小娘共「…………」ジー

一夏「うん?」

小娘共「ハッ」

一夏「そうだった。デオドラントやタオルを用意するから待ってて」

一夏「あ、それともシャワー浴びてく?」

セシリア「あ、いえ、そこまでお世話になるつもりはございませんわ」

一夏「遠慮するなって。そうしたほうが確実だぜ?」

セシリア「え、ええっと…………」

鈴「確かに使わせてもらったことはあるけど、さすがにみんながいる前でそれは…………」

ラウラ「う~む、悩むな」


665: 2014/11/26(水) 08:38:28.85 ID:RGK9H7Jp0

ガチャ

シャル「あ、おじゃましてます……」

千冬「ああ、デュノアか。そこまで畏まらなくてもいいぞ」

千冬「気にするな。ここは私と一夏の家だが、今はお互い別々に暮らしているから誰が言ったか実家が別荘のような感じになっている」

千冬「だから、ここにいると体の芯から力が抜けていくようだ……」フゥ

一夏「今、仕事がとっても忙しいんだっけ? いつもいつもお疲れ、千冬姉」

千冬「気にするな、それが私の生業だ。私が氏んでもお前が暮らしていけるだけの蓄えはあるからな」

一夏「縁起でもないことを言わないでくれよ、千冬姉」

千冬「そうだな。こんなことはガキ共の前で言うつもりは無かったんだが……」フゥ

千冬「やはり、ここが一番 落ち着くところだよ」ホッ

一夏「千冬姉ったら……」フフッ

千冬「おっと、すまない。ちょっと席を外すぞ……」

一夏「あ、トイレか」

千冬「馬鹿……。わかっていてもそういうことは言うな。恥ずかしい」

一夏「あ、ごめんごめん」ニコッ

ガチャ、バタン

小娘共「………………」ジー

一夏「ん? どうかしたか?」

シャル「一夏さん。なんだか織斑先生の奥さんみたいだった」ムスッ

一夏「え?」

鈴「あんた、相変わらず千冬さんにべったりねぇ」

一夏「普通だろう? 姉弟なんだし」

鈴「はあ……、そう思ってんのはあんただけだよー」

一夏「はあ? どういう意味だよ?(――――――家族が助けあって生きていくことがそんなに変に見えるのかな、この娘たちは?)」

一夏「馬鹿なこと言ってないで、シャワー浴びてこいよ。冷えたら大変だろう? 俺はデオドラントとタオルを用意しておくから」

鈴「あんた、まだそれ言うわけぇ?」ヤレヤレ

シャル「ど、どうしようかな? こ、ここはお言葉に甘えても……」ドキドキ

セシリア「私の両親にもあんな頃があったのでしょうか……」シミジミ

ラウラ「…………織斑教官があんなにも窶れて見えたのは初めてだ」ボソッ



666: 2014/11/26(水) 08:40:29.46 ID:RGK9H7Jp0

――――――それから、大人3人の相談室

――――――織斑一夏の場合、


一夏「そうか。気のいい親父さんだったんだけどな……」

鈴「…………そうなのよ」

一夏「それで、最後に親父さんが残した秘伝のレシピの解明に乗って欲しいと?」

鈴「うん。それをものにしないと、父さんのことを乗り越えたことにはならないから」

一夏「そっか。俺も料理には詳しいことだし、そっちの方面でも顔が利くから、できるの限りのことをしてみようと思う」

鈴「いつもいつもホントにありがとね。最初にあんたが弾と一緒に来てくれたあの日のことを思い出すわ」

一夏「そうだな……(弾と一緒に敵情視察に来て3人前を注文して、それから本場中華料理にハマっただなんて言えない……)」

鈴「最初は日本で経営やっていけるのか不安だったけど、一夏がほとんど毎日のように来て家計を支えてくれたし、」

鈴「芋蔓式で一夏の友人たちも店に来るようになったから、こっちとしては本当に大助かりだったんだから」

一夏「美味いもんは美味いんだから他の人にも紹介しておかないと罰が当たるだろう?」

鈴「うん。ホントありがとね、一夏」


鈴「ねえ、一夏さ? ――――――約束、覚えてる?」


一夏「――――――『約束』?」

一夏「あ、あれか? 『鈴の料理の腕が上がったら、毎日酢豚を――――――』」

鈴「そ、そう。それ!」ニッコリ

一夏「『――――――奢ってくれる』ってやつか?」

鈴「はい……?」ジトー

一夏「…………!」アセタラー


667: 2014/11/26(水) 08:40:59.55 ID:RGK9H7Jp0

一夏「ごめん。やっぱり憶えてない。ホントごめんな(ダメだ。ここは素直に謝っておくべきだな)」←“童帝”としての豊富な女性経験

鈴「そ、そう……(しかたないか。父さんも冗談半分に言ってたところがあったし…………)」

一夏「それに、そういった約束事って大学時代にたくさんしてきたからさ? 何か俺の中でごっちゃになってるっぽいしな」← 余計な一言

鈴「はあ……? ――――――『大学時代にたくさん』?」ギロッ

一夏「あ、あれ? 何か目が不機嫌そう――――――」アセアセ

鈴「サイテー」

一夏「いっ」アセタラー

鈴「もう馬鹿ぁ!」ブン! ――――――思わず繰り出されるISパンチ!

一夏「――――――!」シュッ

鈴「へっ」

一夏「――――――!」バッ、ギュッ

鈴「あ」

一夏「まったく何やってんだよ。今の、生身の人間が受けたらホントに危なかったぞ」 ――――――殴られる前に二の腕を取り押さえて抱き寄せる!

鈴「あ、え……?(今、一夏に抱き寄せられて――――――)」ドクンドクン

一夏「反省してる?」

鈴「え、う、うん。反省してる……(ああ……、一夏の臭いだ…………)」クンクン

一夏「お、おいおい? どうした? もう両手は放したぞ? もしかして力を入れ過ぎてどこか痛めたか?」アセアセ

鈴「………………」ギュッ

一夏「おい! いつまで俺の腹に顔を沈めてるんだよ! 酸欠になるぞ!」アセアセ

鈴「………………一夏ぁ」

一夏「おーーーーい!」




668: 2014/11/26(水) 08:41:36.79 ID:RGK9H7Jp0

――――――織斑千冬の場合、


千冬「今までありがとな、篠ノ之」

箒「い、いえ。当然の事をしたまでです」

千冬「最初はどうなることかと思っていたが、――――――いい子に育っているな、“アヤカ”は」

千冬「あの子の今の笑顔は私だけでは到底成し得なかったことだ」

千冬「教育とは教師だけが司るものではない。教師の一人として感謝の言葉を贈りたい」

箒「大袈裟ですって。千冬さんだって裏でいろいろ雪村のためにやってきたんじゃないかと思います」

千冬「まあな。今年の新入生は最も手間が掛かるガキ共でいっぱいだったよ」

千冬「けれども、それだけ魅力的な発見も喜びもあったことだし、少しは楽しませてもらってるよ」

千冬「しかし、――――――本当に良かったのか? 成り行きとはいえ、『それ』を持ち続けることは怖くはないか?」

箒「あ」チリンチリン

箒「………………」

千冬「“アヤカ”と同じく『テストパイロットとしてその機体をIS学園から借りている』という体裁で良かったのか?」

箒「大丈夫です。どうせ姉さんからは逃げられないようですし、“アヤカ”と一緒にこの運命を乗り越えていこうと思います」

千冬「…………強くなったな。顔付きもだいぶ変わった」

箒「そうですか?」

千冬「ああ」

千冬「もしかしたら、本当に束の妹が私の――――――ふふふふ」

箒「え?」

千冬「何でもない。あんなにも小さかった娘がこうもなるとは、私も歳をとったものだな」フフッ

箒「え!? いや、千冬さんはまだ20代半ばですよね!?」

千冬「そういえば、おばさんにはもう会ってるんだったな?」

箒「はい。初めて家に帰ったその時に一夏とまた会えたんです」

千冬「そうか。思ったよりも元気そうで何よりだ」

千冬「正直に言えば、お前と“アヤカ”の面倒を見ることが決まった時、一番の悩みの種だったからな」

千冬「だが、私から心配するようなことはもうないな」

千冬「これからも手の掛かるガキ共のことをよろしく頼む」

箒「はい! 織斑先生」ビシッ

千冬「ああ」フッ




669: 2014/11/26(水) 08:42:40.10 ID:RGK9H7Jp0

――――――夜支布 友矩の場合、


友矩「これ、使えそうかな?」ピピッピピッ

簪「何です、これ?」

友矩「『打鉄弐式』の第3世代兵器『山嵐』用の軌道パターンのショートカット集」

友矩「これを組み込めば、手動入力の手間が省けるよ」

簪「あ、ありがとうございます!」

友矩「なに、ソフトウェア関連ならこの程度のことぐらい簡単さ」

友矩「――――――板野サーカスを参考にして作っただけだし」

簪「おお! 凄いですよね! 憧れちゃいます!」キラキラ

友矩「いやぁ、こんな女尊男卑の風潮と言われてる中でシリーズ25周年記念の13年振りのTVシリーズとは――――――、全話見た?」

簪「はい! 当然です!」

友矩「第3世代兵器の欠点といえば、イメージ・インターフェイスとPICとで脳波制御が被ってどちらかの機能が使えなくなるということだけど、」

友矩「その欠点は、こうやってイメージ・インターフェイスのコマンドにショートカットを付け足していくことである程度は解消されていくわけだね」

友矩「おそらくは、イギリスのティアーズ型もショートカットを入れたBT兵器の実装に追われている頃だろうけれど、」

友矩「我が国の『打鉄弐式』に関しては、一度は開発を打ち切られたから本来受けられるはずの支援が途絶してしまったわけであり、」

友矩「それを鑑みて、日本IS産業公式サポーターの僕から率先して今年の我が国の代表候補生を支援することにしてみた」

簪「本当にありがとうございます!」

友矩「あとは、荷電粒子砲が実現できれば“某教授”の無念も晴れるんだろうけどね…………」

簪「はい。惜しい人を亡くしました…………」

友矩「ま、我が国としてはもう次の第3世代機の開発着手に至ってるんだけどね?」

友矩「それでも、『打鉄弐式』は今年度の国際IS委員会での査定に使われる予定だった機体だから、できるかぎり結果を残してもらわないとね」

簪「はい! 頑張ります!」

友矩「いい表情だね」


670: 2014/11/26(水) 08:43:07.11 ID:RGK9H7Jp0

友矩「“某教授”が残した荷電粒子砲の実装研究は他に任せるとして、荷電粒子砲の代わりになりそうな装備を募集してみたよ」

友矩「するとだ。『打鉄弐式』の売りである先代『打鉄』とのパッケージの互換性でいろいろな改良プランが集まっている」

友矩「日本政府としては“世界で唯一ISを扱える男性”のPRに追われて、今年度の代表候補生のことはメンツに賭けてとことん無視する構えのようだけど、」

友矩「民間企業としては『打鉄弐式』の再開発プロジェクトの協力に名乗り出た企業が少なくとも5社は確認されていて、」

友矩「新生『打鉄弐式』の標準装備の座を巡って、売り込みのチラシが来ているよ」

友矩「他にも、倉持技研からの鞍替えのお誘いもちらほら見えるね」

簪「………………」

友矩「本当は日本政府が責任持ってこういうのを斡旋して欲しいところなんだけど、しかたないね」

簪「……うん」

友矩「しっかし、――――――話は戻すけど、あの主人公の最後の告白はどうかと思うんだよね」

簪「そうですね。あんな曖昧な答えじゃ視聴者としても台本を渡された声優さんとしても納得がいかないと思います」

友矩「うん。僕としても身近にそういうやつがいるから、尚更この結末に呆れちゃってね――――――」

簪「あ」(察し)

友矩「彼は歌バカじゃなくて、初代主人公のセルフオマージュなんだからそこははっきりさせないとダメでしょ」

簪「でも、セルフオマージュを徹底したらヒロイン共々 謎の失踪を遂げちゃうことになっちゃうかも…………」

友矩「どうなるんだろうね、今年の映画は? やっぱり『愛・おぼえていますか』のように劇中作として表現が変わっちゃうのかな?」

簪「11月が楽しみです」

友矩「うん。でも、やることいっぱいだよ、代表候補生?」

簪「わかってます! 頑張ります!」ビシッ

友矩「よしよし。それでこそ日本代表候補生だ」ニッコリ



671: 2014/11/26(水) 08:44:12.87 ID:RGK9H7Jp0


一夏「さて、4時半の町内放送も流れたことだし、どうしよっか?」

友矩「みなさんはこれからどうします? ――――――泊まっていきますか?」

シャル「え、いいの?!」キラキラ

セシリア「さ、さすがに、それは………………(どうしましょう!? こんなにも貴重な時間が続くのでしたら念入りに準備をしておけば良かったですわ!)」

千冬「私は別にかまわんがな。寝る時はこのリビングか和室で寝てもらうがな。――――――なに、いつものことだ」

鈴「え」

箒「それって、どういう…………」ハラハラ

一夏「ああ。大学時代の友人たちとホームパーティすると、酒を飲み出すやつもいてさ?」

一夏「酔い潰れて、そのまま俺んちで夜明かしするっていうのが定番の流れになりつつあるんだ」

一夏「完全に我が家を公共の別荘地か何かに仕立て上げようとしているのか、」

一夏「ホームパーティのセットだけじゃなく、必要以上の寝道具も押し付けられているんだよ…………」

一夏「おかげで、こっちで布団の管理までやらされていい迷惑だよ」

友矩「でも、面と向かって断ることもできず、ちゃんと手入れしたばかりだよね、今日も」

一夏「ああ」


友矩「今日も僕は一夏の部屋で寝泊まりだね」


一夏「そうだな」

小娘共「!!?!」

ラウラ「ん?」

簪「え、みんな……?」

千冬「…………小娘共が」ヤレヤレ

雪村「………………」ハラハラ


672: 2014/11/26(水) 08:45:40.79 ID:RGK9H7Jp0

一夏「ん、どうかしたか?」

鈴「ちょっ、ちょっと聞き捨てならないわ! 何よ、それ!」

箒「そ、そうだぞ、一夏! ど、どうして男同士で一緒に寝ているんだ…………!?」アワワワ・・・

シャル「い、一夏さんってもしかして――――――」アセタラー

一夏「は?」

ラウラ「そこまでおかしいか? 私たちだって学園では二人一部屋で寝食を共にしているではないか」

セシリア「あ」

千冬「お前たちは男というものを知らなすぎるぞ。そんなんでは目をつけた男に逃げられるぞ」ニヤニヤ

小娘共「………………」カア

鈴「か、確認しますけど、友矩さん」

友矩「はい」

鈴「一夏の部屋で寝泊まりする時はどのようにして寝ていらっしゃるのでしょうか?」ガチガチ

友矩「床に枕と銀マットを敷いてシュラフかな。それでいろいろと今日あったことや明日のことを話し合って眠るんだ」

一夏「どうしたんだよ、みんな? 俺と友矩は大学時代からずっとルームメイトだぞ? 一緒に寝るだなんて俺にとっては生活の一部だぜ?」

セシリア「ああ……、『ルームメイト』って大学時代からずっと――――――え?(ということは、――――――現在も?)」

箒「ああ…………(なんということだ……! これが『正妻の余裕』というやつなのか!?)」

シャル「あわわ…………(やっぱり友矩さんが一番の強敵!? というか、織斑先生といい、ライバルが多すぎるよ……)」

ラウラ「なるほどな……(二人がどういった仕事に就いているかは未だに見えないが、抜群の信頼関係にあることはよく伝わってくる)」

鈴「ど、どうして一夏の周りにはこうもやりにくい相手ばかり…………(千冬さんといい、大学時代の友人といい――――――!)」

雪村「…………友矩さん?」チラッ

友矩「ここは徹底的にやらかしてもらったほうが後々の都合がいいからねー」ニコニコー

雪村「ああ…………(一夏さんの半身たる友矩さんが言うのなら、今はそれに従っておこうかな?)」

箒「い、一夏……!」ドクンドクン

一夏「お、おう……」


箒「今日は私と一緒に寝ろ!」カア


一夏「え?」

小娘共「!?」ドキッ


673: 2014/11/26(水) 08:46:32.10 ID:RGK9H7Jp0

一夏「ちょっと何を言ってるのかさっぱりわからないよ、お兄さん!?」アセアセ

箒「わ、私は一夏の嫁なんだぞ! 一緒に寝ないのはおかしいではないかぁー!」ドクンドクン

セシリア「え!? この方が箒さんの――――――!?」

シャル「………………」

鈴「はあ!? 何言っちゃってるわけ、この人!?」ギロッ

友矩「(よし、これで篩いに掛けられるな。何人脱落するかな?)」

一夏「ちょっと何か勘違いしてない?!」

一夏「確かに大学時代の友人たちには女性だって当然いたけど、ちゃんと男女別々に寝かせてたから!」

鈴「――――――『当然』ってなによ! 自分がモテモテだって自慢したいわけ!?」

一夏「そこ、噛み付くとこ!? 俺、社会人だよ! この狭い世界のうち半分と関わりを持たずにどうやって暮らしていけって言うんだよ!」

箒「なら、どうして友矩さんとは一緒の部屋なのだ?!」

一夏「いや、言っている意味がまったくわからないんだけど!」

一夏「俺と友矩はルームメイトで、――――――家主だぞ、俺たち!」

鈴「はああああ!? それ、どういう意味よ!」

一夏「ど、『どういう意味』って、そりゃあ…………」

鈴「どうしてそこで言葉に詰まるのよ……!?」ハラハラ


一夏「と、とにかく! 男女七歳にして席を同じゅうせず! 年頃の女の子が妄りに男の人の部屋に入るもんじゃありません!」


小娘共「え?」

一夏「え?」

ラウラ「?」

簪「…………大変だね、ヒーローってのも」アハハハ・・・


674: 2014/11/26(水) 08:47:41.60 ID:RGK9H7Jp0

一夏「あれ? 俺、何か間違ったこと言ったかな?」

セシリア「いえ、そんなことは…………(しかし、たくさんの女性とお付き合いしていると思うと、どうも邪推してしまって――――――)」

シャル「…………わかってる(だからこそ、一夏さんは篠ノ之 箒という少女が一生を懸けて愛し続ける人なんだって)」

一夏「なあ、友矩? 俺、正論 言ってるはずなのに、どうしてここまで聞き入れてもらえないのかな?」

友矩「それは、あなたが“童帝”だからです」ジトー

雪村「信用されないっていうのは『それだけ前科がある』っていうことの証拠じゃないんですか?」ジトー

一夏「“アヤカ”までえええ!?」

箒「一夏っ!」

鈴「一夏ぁー!」

一夏「うあっ!?」ビクッ


千冬「 や か ま し い !」


一同「!」

千冬「教師の前で淫行を期待するなよ、15歳?」ジロッ

小娘共「…………!?」アセタラー

ラウラ「???」

簪「ははは……、まるでマンガみたいな展開だよね…………」


675: 2014/11/26(水) 08:48:29.66 ID:RGK9H7Jp0

千冬「やれやれ、これだからガキの相手は疲れる」ハア

千冬「なら、――――――いいだろう、小娘共」ニヤリ

小娘共「?」

千冬「一夏、友矩、“アヤカ”」

一夏「なに、千冬姉?」

友矩「あ」(察し)

雪村「?」


千冬「全員一緒で寝ようではないか」


一同「!!?!」

一夏「ちょっと、千冬姉?! 何を言って――――――」

友矩「そうですね。それがいいですねー」(棒読み)

一夏「いっ、友矩まで?! なんで――――――?」アセダラダラ

ラウラ「ほう、それは楽しそうだな。寝間着は持ってきていないがISスーツに着替えれば寝苦しくはなかろう」

セシリア「その手がありましたか!」キラキラ

簪「これは、凄いことになりそう……」ドキドキ

一夏「は」

鈴「げっ…………」アセタラー

箒「なぜこうなるのだ…………」ズーン

シャル「問題をややこしくした張本人が言うことかな……?」トホホ・・・

一夏「………………“アヤカ”も何か言ってくれ」(棒読み)

雪村「僕は寝るところがあれば何だっていいです」

千冬「――――――だそうだ、我が愚弟?」

一夏「あ、はい(…………どういうことなの? こんなこと初めてじゃないか、千冬姉?)」

千冬「なら、――――――このまま泊まっていくか、――――――夕食まで居るのか、――――――今から帰るか、」

千冬「ちゃんとそれぞれ連絡しておくように。私からは以上だ」

小娘共「はい!」ワクワク

千冬「…………………………フゥ」

雪村「…………?」

友矩「…………わかるか。――――――疲れてらっしゃる」


ホームパーティは一旦これにて解散となり、19時からの夕方の部とそれ以降のお泊り会に向けて各自 自由行動となった。



676: 2014/11/26(水) 08:49:10.55 ID:RGK9H7Jp0

――――――19:00 ホームパーティ:夕方の部


一夏「お、似合ってるね、セシリアちゃん」← 夕食と朝食の買い出しに男3人で出かけてきた

セシリア「そ、そうでしょうか?」← よく考えたらISスーツで寝るのもどうかと思い、近くのデパートでお泊り会の装備を調達

箒「ぬぅ、即金で着替えを買ってくるとは、――――――これが代表候補生か」← 実家まで戻ってお泊り会の準備を整えてきた

鈴「しまった。私もこの機会に新しい服を買っておけばよかった……」← 織斑邸に残って家捜ししようとするも千冬に睨まれる

簪「あ、もうこんな時間か」← 友矩からもらったデータの解析に没頭していた

シャル「ほらほら、ラウラもこれを着て」← セシリアと一緒にお泊り会の装備をラウラのものも一緒に調達

ラウラ「い、いいのか、シャルロットよ? あ、ありがとう……」← 織斑教官と一緒の時間を過ごした

千冬「さてさて、時間が来たか」← 久々の我が家のリビングでくつろいでいる

友矩「ちょっと待っててくださいねー」← ボディーソープやシャンプーを主に調達

雪村「…………フフッ」← やることもないので一夏と友矩に付き従い、充実した男だけの時間を過ごした


ワイワイ、ガヤガヤ、グツグツ・・・


シャル「何作ってるの、一夏さん?」

一夏「昼はバーベキューだったから、夜は軽食中心で行こうと思ってな(明日の朝は和食の予定だから下ごしらえが大変だぜ)」

箒「一夏! それなら私も――――――あ」アセタラー

一夏「どうした、箒ちゃん?」

箒「また食べ過ぎた…………この前 マンションに来た時も私の誕生日祝いであれだけ食べてしまったというのに」ズーン

シャル「あ……、今日も極上デザートを振る舞われったっけな…………」ズーン

一夏「あははは…………今度は食べ過ぎないようにね?(また飯テロをやってしまったな……)」アセタラー

箒「できるか、そんなこと!」

一夏「ええ…………」

箒「ああ こういう時でしか一夏の手料理を食べられないというのに、どれもこれも美味しいというのに…………ああ」


セシリア「今度は何ですの?」

友矩「昼はガッツリ食べたので、夜はサンドイッチを中心にした手軽なビュッフェということで」

友矩「昼のバーベキューと同じように、今度はパンに具を挟んで、主菜や副菜、スープ、デザートをご自由に組み合わせて召し上がってください」

セシリア「わかりましたわ」ニコッ

鈴「セシリア? あんた、サンドイッチぐらいは自分で作って食べられるわよね?」ニヤニヤ

セシリア「あら、それは我が国への侮辱と受け止めてもよいのかしら?」ジロッ

鈴「さあね? ちょっとイギリスの大貴族様がどんなサンドイッチを手ずから作るのかちょっと興味があるだけよ」ニヤリ

セシリア「まあ! 見てなさい!」


千冬「騒がしいやつらだな」モグモグ

ラウラ「まったくもってその通りですね、教官」モグモグ

雪村「………………」モグモグ

簪「あ、隣 いいかな?」

雪村「どうぞ」モグモグ

簪「その……、今度の盆に行われる篠ノ之神社での夏祭りに一緒に行くってことだったけど――――――」



677: 2014/11/26(水) 08:49:45.29 ID:RGK9H7Jp0


夕食の時間もあっという間に過ぎて――――――、


セシリア「ごちそうさまでした……(少し、食べ過ぎましたかしら……?)」

鈴「ちょっと眠たくなってきたわね……」フワァー

一夏「そっか。それなら、早く布団を敷いてあげないとなぁ…………」アセタラー

箒「――――――!」ムカムカ

一夏「えと、俺たちはホームパーティセットの片付けをしないといけないから――――――、」チラッ

一夏「千冬姉! 和室に布団を敷いてきてくれる?」

千冬「私か?」

一夏「布団を敷くぐらい、なんてことないよな?」ハラハラ

千冬「馬鹿にするな。私は子供じゃないぞ、一夏」

一夏「う、うん。そうなんだけど…………」

ラウラ「一夏、心配する必要はない。私が教官の援護を行う」

一夏「あ、そう? それなら大丈夫かな?」

スタスタスタ・・・・・・

一夏「…………大丈夫かな?」

友矩「一夏、早く片付けよう! 明日の朝までピクニックテーブルとか出しっ放しになっているのを見るのはゲンナリするし――――――」

友矩「あ、そうだ」

友矩「まず、先に和室に布団を敷いて、お客様方には順々にお風呂に入ってもらって、」

友矩「その間に僕たちだけでホームパーティセットの後片付けをしていたほうが安全だね」

一夏「あ、そうだな。食器洗いはまかせるとして、さっさと安全を確保にしに行かないと!(そうだとも。『この手順』が大事なんだ!)」アセタラー

一夏「みんな! 和室に布団を敷いてくるから、食べ終わった人はシャワーを浴びて和室で寝る準備をしてくれ」

友矩「食べ終わったら食器などはそのままでけっこうです。僕たちが片付けますので」




678: 2014/11/26(水) 08:50:23.26 ID:RGK9H7Jp0

――――――和室


一夏「で、――――――千冬姉?」

――――――――――――
――――――――――――
千冬「なんだ……?」
ラウラ「うう…………」

一夏「どうしてふすまが外れて、布団に潰されかかってるのかな?」

一夏「ほら、友矩!」ポイポイ

友矩「よいしょっと」ドサドサ

一夏「これで大丈夫。何やってんだよ」ヒョイ

千冬「すまないな」ヨロヨロ

一夏「…………千冬姉?」

千冬「ちょっとばかり羽目を外しすぎただけだ。気にするな」

ラウラ「そうでしたか? 少しお疲れのようにお見受けしますが」

千冬「余計なことは言うな」

一夏「…………千冬姉」

友矩「………………一夏」

一夏「なに?」

友矩「後のことは僕にまかせておいて」


友矩「一夏はお姉さんのことを労ってあげて」


千冬「なっ」カア

友矩「布団もだいたい敷き終わったし、掛け布団や枕は各々勝手に持ってってくれるだろうから」ピチッ ――――――外れたふすまを元通りにした。

一夏「…………わかった」

千冬「待て、私は――――――」

一夏「さあ、千冬姉!」ドーン!

千冬「うおっ!?」ドサッ

ラウラ「!?」

ラウラ「お、織斑教官がいとも簡単に倒された!?」

千冬「お、おい……」


一夏「マッサージの時間だ、千冬姉」ニッコリ





679: 2014/11/26(水) 08:51:47.51 ID:RGK9H7Jp0

――――――和室 前


セシリア「あら? どうなさいましたの?」

簪「和室ってここじゃなかったっけ?」

鈴「しー」
箒「………………」
シャル「………………」ドキドキ

セシリア「?」

簪「そういえば、一夏さんは――――――」

――――――
「千冬姉、久しぶりだからちょっと緊張してる?」

「そんなわけあるか、馬鹿者……」’

「あ……! 少しは加減をしろ……」’

「はいはい。じゃあ、ここは?」

「ま、待て、そこは…………や、止め――――――」’

「すぐに良くなるって。だいぶ溜まっていたみたいだしね」

「ここは?」

「そ、そこは、ダメだって言って…………」’

「ごめんごめん」

「でも、気持ちいいんだよね、千冬姉?」

「そっちこそ、やけに気合が入っているではないか」’ハアハア

「やっぱりその……、大切な人には俺の手で気持ちよくなってもらいたいから……」

「ば、馬鹿……」’

「そう言って、ラウラにも手を出しておいてよく言う……あん」’

「久しぶりだったからちょっとやりすぎちゃったな。それにラウラちゃんの方から初めてを求めてきたんだし、千冬姉だって止めなかっただろう?」

「千冬姉だって教え子のラウラちゃんが気持ちよくなっていくさまを隣で見ていて、本当は自分もああなっていくのを楽しみにしてたんだろう?」

「それはそうだが……うぅ」’


680: 2014/11/26(水) 08:52:44.44 ID:RGK9H7Jp0

「……そうするのは私だけにしておけ」’

「そうしたいのはやまやまだけどさ? (周りの人間が)抑えきれなくて――――――」

「まったく困ったもんだな、お前の(周りの人間)は」’← 姉弟揃って追っかけがいるほどの人気者です

「今一度、姉として弟の立場というものをわからせてやらないといけないな」’

「今ここでそんなこと言われても説得力ないよ、千冬姉?」

「あん……んくっ」’

「ダメだ、力が抜ける……」’

「そうそう、それでいいんだよ、千冬姉。力を抜いて楽になって。あとは俺にまかせて、自分の身体に素直になってくれれば」

「千冬姉は少し頑張り過ぎだよ。俺はもう23の社会人だぜ? 給料だって千冬姉に比べたら少ないけど、今度は俺が千冬姉のために――――――」

「馬鹿を言うな。お前に全てを委ねてしまったら、いったい私に何が残る?」’

「――――――何の取り柄もない ただお前を愛するだけの女になるだけだ」’

「!」

「そんなことあるわけ――――――」

「私はすでにお前に身も心も捧げたのだ。すでに私はお前のものなんだ。お前の色に染まりきったな。今更 普通の女には戻れんよ」’

「だが、私に縛られる必要などない。たまに帰ってくるだけでいいんだぞ? 私は十分だよ、十分過ぎる」’

「なんでだよ! そんなこと言わないだろう、千冬姉は!」

「こうしている時もいつもの態度を崩さずに、逆にやり返して俺の方を悲鳴を上げさせるような、そんな人じゃないか――――――」

「なぜだか懐かしく感じるな。最初の頃は凄まじくヘタクソだったから私が手本を実践してやったら大袈裟に悲鳴を上げていたな」’

「あれはもうやめて! あまりの刺激に何度も意識を失いかけたから!」

「それでは私が楽しめないではないか」’

「うう 悔しい! 男として恥ずかしい…………」

「俺はいつになったら千冬姉から一人前の男として認められるんだ」

「ならなくったっていい。私の前では昔のままのお前でいていいんだぞ」’

「だったら、千冬姉だって俺の前では昔のままの千冬姉でいてくれよ」

「いいのか、そんなことを言って? 今度はこっちから行くぞ?」’

「あ、調子が戻ってきたみたいじゃないか、千冬姉」

「そうだな。どうやらまたお前に元気をわけてもらったようだな」’


681: 2014/11/26(水) 08:53:50.89 ID:RGK9H7Jp0

「それはさておき――――――」’

「………………!」

「さっきの礼だ。今度は私がお前を楽しませる番だ」’

「げっ!」

「あ、俺! 後片付けに行かなくちゃ――――――あぐっ」

「ふふふふ、こうされるのも実に久しぶりだな、一夏よ?」’

「お前はこうされるのが気持ちいいんだろう? ほら」’

「や、やめて! 変な声 出ちゃう!」


ドンドン!


「!」

「!」’

――――――
「部屋の準備はできましたか?」
――――――

「あ、大丈夫! けど、枕やシーツなんかは自分でやってくれると助かる!」

「ちっ、ここからがおもしろいところだったのにな」’

「まあ、今日は客人が来てるんだ。この辺で止めにしておくか」’

「入ってどうぞ」


サァー


千冬「すまないな。少しばかり羽根を伸ばし過ぎていたな」

小娘共「………………」カアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア

一夏「ん? どうしたんだ、みんな?」

雪村「さあ」(すっとぼけ)


682: 2014/11/26(水) 08:54:26.61 ID:RGK9H7Jp0

一夏「あ、雪村もマッサージやってく? 憶えておいて損はないぜ」

雪村「いいんですか?」

一夏「ああ。いいとも」

一夏「あ、その前に男はこっちで、女はこっちね」

一夏「それと、ラウラちゃんは端の方に寝かせておいたから」

ラウラ「スヤスヤー」グッスリ

雪村「気持ち良さそうに寝てますね」

一夏「ちょっとやり過ぎたかなー」

一夏「マッサージ 初体験らしいし、俺も久しぶりだったからウォーミングアップに全身全霊を込めてやったらあっという間に寝ちゃった」

雪村「凄いですね」

小娘共「ああ………………」ゴクリ

千冬「こう見えて、こいつはマッサージがうまい」

小娘共「(…………知ってます)」

千冬「順番にお前たちもやってもらえ」

千冬「次いでに言えば、こいつは私と同年代の第1世代ISドライバー御用達の高級マッサージ師としても有名でな。プロ級の実力はある」

一夏「いやぁ、それは昔のことだって。今やったらセクハラで捕まる可能性が高いから顔馴染み以外にはやらないことにしてるんだけど……」

小娘共「!?!!」

簪「え、えと、ど、どうしようかな……?」ドキドキ

一夏「ま、今から俺は後片付けだから、みんなは順次 風呂に入って汗を流してそのまま寝ていてくれてかまわないから。おやすみー」サササッ!

箒「え」

鈴「あ、ちょっとぉ! 待ちなさいよ!」

セシリア「お待ちになってください、一夏さん!」


タッタッタッタッタ・・・・・・ガチャバタン


シャル「ああ…………」

千冬「さて、私も寝る前に明日の準備を済ませておくか」

千冬「お前たち、明日になったら帰れよ。私も一夏も仕事だからな」

千冬「消灯23時だ。――――――それ以上は言わなくてもわかるな?」

小娘共「はい……」

雪村「………………」

ラウラ「スヤスヤー」グッスリ

箒「羨ましいな、ラウラのやつ…………」ムゥ

箒「(でも、今ので一夏と千冬さんの互いに対する愛情の深さはよくわかったから――――――)」



683: 2014/11/26(水) 08:55:30.21 ID:RGK9H7Jp0

――――――織斑一夏 逃走するも1時間足らずで、


箒「えと、先生?」

千冬「何だ、篠ノ之?」

箒「どうしてこの並びなんですかぁー!」

ラウラ「スヤスヤー」グッスリ

――――――――――――
           セ
ラ シ      シ
ウ ャ 箒 簪 リ 鈴
ラ ル        ア
――――――――――――
隙間(ゆったりと歩いて通れる程度)
――――――――――――

  雪 友 一 千
  村 矩 夏 冬

――――――――――――男は女性の安全のためにシュラフで包まる


千冬「不満なら、私たちは自室で寝ても構わんのだがな。そのほうが部屋を広々と使えて互いにくつろげるだろう?」

箒「わ、わかりました……」シュン

一夏「俺もその方がいいと思うなー………………友矩と雪村は俺の部屋で寝るとしてだな(みんなが寝静まるまで待ってたけど逃げ切れなかった……)」

鈴「どうして男同士で寝ようっていう発想から抜け切らないのよ、あんたはぁー!」

一夏「はあ? そっちこそ、年頃の女の子が健全な青少年と積極的に一夜を共にしようという発想がぶっ飛んでるじゃないか!」

鈴「は、はあ!? な、なななな何言ってんのよ、あんたは! ま、まままるで私の方がおかしいみたいじゃない!」カア

一夏「すまない、鈴ちゃん」

一夏「俺は過去にたくさんの人間と一夜を共にする機会があって、その度にろくでもないことがあったから、」

一夏「一種の人間不信になっているんだよ……」アセタラー ← この織斑一夏は“童帝”です


684: 2014/11/26(水) 08:56:23.73 ID:RGK9H7Jp0

一夏「とにかく夜はなるべく千冬姉以外の女性と一緒に寝るのは相手の安全や名誉のために――――――」

鈴「わ、私が信用できないって言うの? そんな…………」ウルウル

箒「………………勝ったな」ニヤリ

鈴「…………あんたね!」ギロッ

鈴「喰らいなさい!」 ――――――枕投げ!

箒「!」ボフッ

箒「やったな!」 ――――――負けじと枕投げ!

鈴「きゃっ!」ボフッ

両者「ぐぬぬぬ」ゴゴゴゴゴ

一夏「…………この二人、なんでこんなに仲が悪いんだ?」

一夏「(大学時代の女性陣は少なくとも表立った反目は俺には見せない努力をしていたけど、全寮制スポーツ校ゆえの競争意識からなのか?)」

一夏「(いや、これはアレか? ――――――子供の喧嘩か? すると二人は似た者同士ってことなのか?)」

千冬「やはり、この二人か……(――――――『一緒にさせたくはない』と前々から思ってはいたが、ここまで意地の張り合いをするとはな)」ハア

千冬「やれやれ、これだからガキの相手は疲れるというのだ」

一夏「ここは俺が行くから、千冬姉はいいよ」

箒「こんのぉ!」 ――――――枕投げ!

鈴「喰らえぇ!」――――――枕投げ!

一夏「おい、やめないか、二人共」パシッパシッ

鈴「何よ、一夏! 今 私は身内贔屓で専用機持ちになったような生意気な娘に格の違いを教えようと――――――」

箒「一夏! いくらお前が寛容だからってすぐに手が出るような娘と一緒にいるのは止めといたほうが――――――」

一夏「あのな?」ヤレヤレ


――――――いいかげんにしろよ、小娘共が!




685: 2014/11/26(水) 08:57:14.58 ID:RGK9H7Jp0

ジャーーーーーー

セシリア「………………フゥ」キュッキュッ

セシリア「日本のバスルームというものも悪くはありませんわね」

セシリア「小さいながらも機能美に溢れていて――――――」

セシリア「こないだの旅館において、日本では公共の場で水着を着ずに入ることに驚きましたけれども――――――、」

セシリア「露天風呂で火照った身体を夜風で冷ますのが妙に癖になってますわね……」

チャプン

セシリア「あ、いい湯加減ですわね」

セシリア「ふぅ」

セシリア「………………」


セシリア「――――――織斑一夏」


セシリア「私は――――――」

セシリア「(…………この気持ちは何でしょう?)」

セシリア「(織斑先生に弟さんが一人居るということはよく存じておりましたが、その程度にしか思っておりませんでした)」

セシリア「(ただ……、何というのでしょうか? さすがは弟さんというだけあって“ブリュンヒルデ”織斑千冬によく似ていて――――――)」

セシリア「(まさかあれほどまでに素敵な人とは思いもしませんでした――――――)」

セシリア「…………けど」

セシリア「(だからといって、私はあの方に何を求めているのでしょうか?)」

セシリア「(あの方はすでに箒さんの許婚ですし、お熱い仲のようにお見受けしますし…………)」

セシリア「(――――――結婚、か)」

セシリア「(イギリスの名門:オルコット家の主として家を存続させるためにいずれは私も男と結婚をして子を成さなければ――――――)」


『――――――何の取り柄もない ただお前を愛するだけの女になるだけだ』’


セシリア「――――――!」カアアアアア

セシリア「(な、何を考えていますの、私は! ――――――あれはただのマッサージですわよ、マッサージ!)」ドキドキ

セシリア「(で、でも、扉越しで声だけでしたけれども、普段の織斑先生からは想像もできないような甘い声――――――)」ドキドキ

セシリア「(も、もし、私があれを受けたらどうなってしまうのか――――――)」ドクンドクン

セシリア「(あの大きくて力強いあの手で私の身体を――――――)」ゴクリ

セシリア「…………か、身体が熱くなってまいりましたわね」ドクンドクン

セシリア「こ、これはその……、ちょっと身体が茹だってきただけでしてぇ…………」モゾモゾ



686: 2014/11/26(水) 08:57:51.66 ID:RGK9H7Jp0


――――――パシッ


『!』ビクッ ――――――肩に手が当たる!

『何奴――――――』

『ハッ』


『お嬢さん、落とし物ですよ……!』’ゼエゼエ


『あ、はい……(――――――あ)』

『あれ? どうしたのかな? もしかして違った?』’ゼエゼエ

『あ! い、いえ! これは私の――――――あ』ジー ――――――思わず青年の顔を見る。

『?』’

『あ』ジー ――――――そして、ふれあう手と手の温もり

『えと、大丈夫だよね? それじゃあね、セシリアちゃん』’クルッ

『!』

『お待ちになってください!』

『あなたはもしかして織斑先生の弟――――――、』


――――――織斑一夏ではありませんか?




687: 2014/11/26(水) 08:58:55.28 ID:RGK9H7Jp0

――――――再び、和室 前


セシリア「あら?」

友矩「あ、ごめんね。今、お説教中だから部屋に入っちゃダメなの」

セシリア「え、何がありましたの?」

友矩「簡単に言えば、一夏の『堪忍袋の緒がついに切れた』ってところかな」

友矩「――――――『親しき仲にも礼儀あり』で、箒ちゃんと鈴ちゃんは一夏の逆鱗に触れることになったってことかな」

友矩「それと、せっかくの休日を踏み躙られた腹癒せかな」

セシリア「…………それは、すみませんでした」

友矩「いやいや。怒っているのは『みんなが来てくれたこと』じゃない。むしろ喜んでる」

セシリア「では、何が?」

友矩「――――――『くだらないことで喧嘩をして周りを不愉快にさせた』ことだね」

友矩「…………気づいているかもしれないけれど、織斑先生は大変お疲れだ」

セシリア「…………はい」

友矩「それで、一夏としては――――――、」


友矩「せっかくの華やかで楽しいイベントを苦い思い出にさせたくないから怒った」

友矩「仕事をして疲れて帰ってきた姉に家に帰ってきてまで新たな苦労を背負い込ませるのを一番の禁忌としているから怒った」


セシリア「ああ…………」

友矩「いくらね? 一夏が天然ジゴロだとしても人生の大半をたった一人の肉親と一緒に過ごしてきたんだ」

友矩「大切な人をもてなす心だけはどんな時があってもぶれないのが織斑一夏なんだ」

友矩「それともう1つ――――――、」

友矩「本当に一夏が見限るっていう時は、――――――彼、物凄く陰湿になるから」

セシリア「え」

友矩「具体的に言うと、やっていることは一見するといつもと同じに見えるんだけど必ず違和感を覚えるんだってね」

友矩「そして、いつの間にか一夏からの除け者にされていることに自然と気付かされ、気付いた時にはすでに孤立している――――――」

セシリア「そんなことが――――――?」

友矩「さあね? 僕は大学時代のルームメイトになってかれこれ5年の付き合いだから自然と彼から離れていく人間の傾向はわかってはいるけどもね」

セシリア「そうなんですの……(5年間もずっと『ルームメイト』をしていた友矩さんもまた、一夏さんにとっては――――――)」


688: 2014/11/26(水) 08:59:30.11 ID:RGK9H7Jp0

友矩「ところで?」

セシリア「はい?」


友矩「ちょっと熱くなかった? 湯加減は自分の好みにしてよかったんだよ?」


セシリア「ふぇ?!」ドキッ

友矩「顔、今も真っ赤だよ? 無理しなくてよかったのに」ジー

セシリア「え!? えええええええ!?」

友矩「はい、鏡」スッ

セシリア「!?」ビクッ


――――――だが、覗き込んだ鏡に映ったセシリアの表情は普段の肌色に落ち着いていた。


セシリア「!?!?」

友矩「………………予備軍か」ボソッ

セシリア「へ」ドクンドクン

友矩「それじゃ、すまないけどリビングで待ってて。それで次の娘に入らせて欲しい」

セシリア「わ、わかりましたの…………」スタスタスタ・・・・・・

セシリア「(い、今のはいったい――――――? ま、まさか――――――!?)」ハラハラ


友矩「ま、あの浴室を使っている人間なんていっぱいいるし、それこそ――――――(ホテルオークラの掃除メソッドを学んでおいてよかった)」




689: 2014/11/26(水) 09:00:07.18 ID:RGK9H7Jp0

――――――消灯前


ワイワイ、ガヤガヤ、ワーワー

トランプ大会 最終回:ババ抜き

鈴「さあ、一夏の番よ」

一夏「2者択一! ――――――南無三!」

鈴「ふっふふーん」

一夏「…………げえ!?」

鈴「それじゃ、はい」ヒョイ

一夏「あ」

鈴「よっし! あっがりぃ!」

一夏「くそー、敗けたなー。ここ一番で……」

シャル「あははは……」

千冬「これで確かお前が最下位になったな?」ニヤリ

友矩「はい。ここ一番で敗けちゃいましたね」

箒「さあ一夏! 悔しいがシャルロットのお願いを聞いてやれ」ムスッ

鈴「あ、そうだった……!(――――――自分が敗けるのと一夏が他の誰かの好きにされるのだったら後者を選ぶつもりだったのにぃ!)」

一夏「うぅ……、お手柔らかにな?」

シャル「え、僕?」

簪「うん。中盤のテキサスホールデムでの連勝が効いたね」

セシリア「惜しかったですわ……(――――――って、私が1番になっていたとしたら、一夏さんに何をお願いするつもりだったのかしら?)」

千冬「やれやれ、最初は私が快勝だったのに、勝負の世界というのはなかなかに難しいものだな」

一夏「それで、シャルロットちゃんは何がお望みかな?」

シャル「え、えと……、ど、どうしようかな?」モジモジ

千冬「言っておくが、消灯時間になったら、――――――寝ろ」ギロッ

シャル「あ、はいぃ!(い、急いで決めなくちゃ!)」

シャル「あ、それじゃ――――――」



690: 2014/11/26(水) 09:01:06.79 ID:RGK9H7Jp0


ゴクゴク・・・・・・


シャル「…………フゥ」

シャル「やっぱり一夏さんのアールグレイはいいなぁ……」カランカラン

一夏「そんなに好きなら作り方を教えてやろうか?」

シャル「え、ううん。一夏さんが作ったのがいいなぁ」

シャル「またごちそうしてくれるかな? ダメ?」

一夏「そうか。そいつは嬉しいな」

一夏「いいよ。俺はいつでもアールグレイを作って待っていてやるからな。これぐらいはサービスでやってあげなきゃ」ニッコリ

シャル「ありがとうございます、一夏さん」ニッコリ

箒「…………ムゥ」

鈴「ぐぬぬぬ」

セシリア「チェルシーと言葉を交わすのが今から楽しみでなりませんわね」ニコニコ

簪「今日は本当に楽しかったなぁ」ニコニコ

ラウラ「スヤスヤー」グッスリ

千冬「フッ」

友矩「さ、歯磨きは忘れずにね。朝の8時には出てもらいたから7時ぐらいには起きてね」

小娘共「はーい」


691: 2014/11/26(水) 09:01:51.39 ID:RGK9H7Jp0

雪村「あ、終わったんですか?」フワァー

一夏「あ、ごめんな、“アヤカ”。お風呂の栓は抜いてくれたか?」

雪村「はい。やっておきました」

千冬「さあさあ。とっとと寝るぞ。私の眠りを妨げたやつはどうなるか覚悟をしておけよ?」

箒「は、はい……」

鈴「わ、わかってますって……」

セシリア「…………あのお二人、どうしたのかしら?」

簪「えと、メガネはここに置いて――――――」ワタワタ

一夏「飲み終わった? もういい?」

シャル「うん。ありがとうございました。本当に美味しかったです」

一夏「そうか。寝る前にちゃんとトイレに行っておくんだぞ」

シャル「はい(やっぱりこの辺がちょっと残念かなって思うところはあるんだけれども――――――)」フフッ





友矩「では、23時――――――、消灯!」カチカチカチッ


友矩「さて、シュラフに包まって――――――っと」モゾモゾ

友矩「…………よし」スィーーーーーー

友矩「………………」



一同「………………………………」






692: 2014/11/26(水) 09:02:32.17 ID:RGK9H7Jp0

ラウラ「スヤスヤー」

シャル「………………」

シャル「(やっぱり何か思い出すようなものがあるな。寝る前に飲むあのアールグレイが『決して初めてじゃない』ということを僕に告げている)」

シャル「(けど、何度 考えてみてもそれが何なのか全然わからない)」

シャル「(変なんだよね、ずっと『アールグレイ』『アールグレイ』『アールグレイ』――――――)」

シャル「(僕とアールグレイとの間に何があるの?)」

シャル「(確かにアールグレイは日本に来てから大好きになったけれど、それはこのIS学園に転校してからの日々の中で、)」

シャル「(“アヤカ”の部屋に行く度に振る舞われてきたからその良さに触れる機会があったわけであり――――――)」

シャル「(けど、アールグレイの話題をすると必ず一夏さんの存在がチラつくんだよね……)」

シャル「(そう、本当にただの偶然――――――、“アヤカ”と一夏さんがたまたまアールグレイを愛飲していたという繋がりがあって――――――)」

シャル「(いや でも、“アヤカ”と一夏さんはもしかしたら同じ人から振る舞われたアールグレイを飲んで愛飲するようになったかもしれないって、)」

シャル「(そんなふうに話が拡がっていっているんだよね、今)」

シャル「(そして、セシリアのメイドさんがそうかもしれないって――――――それが“アヤカ”の記憶の手掛かりだって)」

シャル「(考えれば考えるほどアールグレイで繋がっているんだよね)」

シャル「(でも、僕にとってのアールグレイの繋がりってやつは“アヤカ”との関係とかじゃないような気がするんだ、何となくだけど)」

シャル「(もっとこう…切ないもので、箒の許婚である一夏さんのことが寝ても覚めても気になるのと同じ感覚で――――――)」



693: 2014/11/26(水) 09:03:22.00 ID:RGK9H7Jp0

シャル「………………」

シャル「(――――――何か不思議だな)」

シャル「(こんな風にみんなでお泊り会をするようになるだなんて思いもしなかった)」

シャル「(2年前にお母さんがいなくなってから血が繋がっているだけのあの人の許に引き取られてからの日々には帰りたくない)」

シャル「(でも、あんなような人がフランス最大のIS企業の社長だったからこそ、僕は曲がりなりにも代表候補生になれたんだよね……)」

シャル「(そして、僕はここにいるわけであり、あの人が僕に押し付けたものが今の僕を支えているんだ…………)」

シャル「(今では故郷の名士のアルフォンスさんが後見人になって僕の身分が保障されることになって晴れて自由の身になったんだけれど、)」

シャル「(僕は別にIS学園に入りたくて入ったわけじゃないから、アルフォンスさんが言うようにお母さんとの思い出の場所に帰ってもよかった)」

シャル「(でも、振り返るとお母さんがいなくなってから僕に残されたものは他でもないIS乗りの自分しかなかったから――――――)」

シャル「(ううん。それも理由の1つなのかもしれないけれども――――――、)」

シャル「(僕はIS学園に入ってかけがえのないものを得たから、僕はここに残りたいと思えるようになっていたんだっけ)」

シャル「(そう、箒と“アヤカ”という憧れの二人と、――――――“ハジメ”さんって人が僕を変えてくれたんだ)」

シャル「(思えば、僕って“アヤカ”にそっくりだよね。同じ『IS乗りとしての自分』しか残ってなくて――――――、)」

シャル「(何だか“アヤカ”はあんまり僕のことを好ましく思ってないようだけど――――――、)」

シャル「(“同類”だって思われたくないのかもしれないけれども――――――、)」

シャル「(僕は“アヤカ”とは良い友人になりたいって今では強く――――――ううん、今でも強く思ってる)」

シャル「(どうすれば“アヤカ”ともっと仲良くなれるのかな? “アヤカ”は僕よりもラウラや簪のような子とは仲が良いね)」

シャル「(でも、“アヤカ”が一番信頼している箒とはうまくやれているし、諦めずにがんばっていけば大丈夫だよね?)」

シャル「(そう、これは“ハジメ”さんが言ってくれたことなんだ)」


『生きている限り『不可能』という言葉はないよ』

『心を強く持て。それが今を変える力になるよ』

『自分が精一杯やれる限られたことに全力を尽くせばいい』


シャル「(そう言えば、“ハジメ”さんは今どうしてるんだろう? また会えるかな?)」

シャル「(――――――あれ? でも、僕はどういった経緯で“ハジメ”さんと会ったんだっけ?)」

シャル「(そもそも、どうして僕は学園から飛び出すなんてことを…………思い出せない)」

シャル「(でも、何だろう? 僕の中の“ハジメ”さんのイメージってどこか一夏さんとホントに重なるところが多くて、)」

シャル「(何か、何か感じるものがあるんだよね…………最初にマンションで会った時に初対面とは思えないような感慨が湧いて)」

シャル「(でも、もし一夏さんが“ハジメ”さんだったとしても、それならどうして名を偽ったのかがわからない――――――)」

シャル「(教えてくれてもいいと思うんだけどな……)」

シャル「ウーム」モゾモゾ



694: 2014/11/26(水) 09:03:58.37 ID:RGK9H7Jp0

友矩「………………」

友矩「(さて、どうしようかな~? ここでシャルロット・デュノアの記憶を完全に消しておこうかな?)」

友矩「(でも、プルースト効果で印象づけられた記憶は『ニュートラライザー』では原理的に完全な抹消はできないんだよね~)」

友矩「(そもそも、人間の記憶構造っていうのはハードディスクと同じで一度書き込んだものを書き込んでない状態に戻すことはできず、)」

友矩「(一度 憶えてしまったことは検索効率が落ちるってだけで厳密には絶対に忘れないものだから)」

友矩「(となれば、思い出しそうになったから記憶を消し続けるのは難病再発防止のために劇薬を飲ませ続けるようなイタチごっこでしかない)」

友矩「(これを踏まえた上で一番確実な手というのは、記憶を改竄することで一度書き込んだものを別なものに変えるぐらいしかない)」

友矩「(彼女も専用機持ちだから電脳ダイブさせることができれば、それも可能だとは思うんだけれども、)」

友矩「(つまり、――――――現時点では実行不可能というわけだね)」

友矩「(…………考えるだけ無駄だったか)」

友矩「(しかし、本当に織斑一夏こと“童帝”の魔力は凄まじいな。魔法使いを超えてる)」

友矩「(念入りに記憶を消しても、“童帝”に一度心奪われた女性は図らずも一夏を本能的に求め続ける運命を背負わされるのか)」

友矩「(本当にかわいそうだよね、あれは。そうなったことが運命なのか、運命だからそうなったのか――――――)」

友矩「(まあ、どちらにしろ、一夏はまた一人 図らずも乙女の純情を弄ぶことになったんだ)」

友矩「(一夏は本当に呪われてる。一夏はただ誠実でありたかっただけなのに――――――)」

友矩「(だからこそ、僕は篠ノ之 箒との婚姻には大いに賛成なわけだ)」

友矩「(少なくとも篠ノ之 箒との密な関係が広まれば、それだけで一夏との関係を敬遠する人間が増えてそれだけ多くの女性の人生が救われるんだ)」

友矩「(そして、一夏は生涯を共にする伴侶なんて自分から選べるはずがないんだ。――――――最愛の人との関係もあって)」

友矩「(となれば、僕が何とかするしかないわけなんだけど、――――――何かとてつもなく嫌な予感がする)」

友矩「(果たして、この先 生き残ることができるのか――――――考えていてもしかたがない)」

友矩「(僕は僕の全てを織斑一夏という偉大な存在に捧げたんだ。一夏のブレインとして正しく導かなければ……!)」

友矩「(もしかしたら前世で実際にそういった関係だったのかも知れない。けど、大学時代のルームメイトとなったあの日から5年――――――)」

友矩「(僕は、僕の意思で、織斑一夏という一人の人間に一生ついていくことを決めたんだ)」

友矩「(こんな色欲魔の権化みたいな“童帝”と一緒にいたいのなら、せめて僕を超えるぐらいの気概と覚悟と良識を持った娘じゃないとね!)」




695: 2014/11/26(水) 09:04:39.29 ID:RGK9H7Jp0

一夏「………………」

一夏「(――――――アールグレイ)」

一夏「(『3年前』――――――『トワイライト号事件』から全てが始まったって言うのかな?)」

一夏「(俺があのメイドさんから教わったこの味を守り続けた結果が、“彼”の過去の大きな手掛かりとなっていく――――――)」

一夏「(そして、今度はシャルロット・デュノアの人生にも影響を与えてしまった…………)」

一夏「(まいったな……、リラックス効果を期待してあの時の“シャルロット・デュノア”に飲ませたのがそもそものミスだったのかな?)」

一夏「(俺が作ったアールグレイを口に含んだ瞬間に“シャルロット・デュノア”の目はキラキラと輝きだしたんだ)」

一夏「(俺はその瞬間のことを今でも憶えている。忘れるはずがない)」

一夏「(やっぱり、シャルロットは俺の作ったアールグレイのあの味を今でもはっきりと憶えているんだ)」

一夏「(雨に打たれ続けていた少女は今も温もりを与えてくれたあの恩人をアールグレイを手掛かりに探し続けているんだろうな……)」

一夏「(自分でも嫌になるよ。――――――何が“童帝”だよ。人の心を本当に救えないで何が『人を活かす剣』だ!)」

一夏「(やっぱり話しておくべきなのかな? でも、そうなると彼女が“アヤカ”を毒頃しなければならなかった過去に向き合わせないといけなくなる)」

一夏「(俺も彼女に“アヤカ”と仲良くするように促した手前、そのことで学園から逃げ出した彼女を苛むのは本意ではない)」

一夏「(そうか。答えは決まってた。――――――思い出さなくていい、そんな一人の少女が背負うにはあまりにも重すぎる業なんて)」


一夏「(なんか今年になってから命のやりとりをするのが常態となってきてヘビーなことを考えてばっかだな……)」


一夏「(わかってはいたんだ。俺が去年 そういう人間になったことでこうなっていくだろうことは……)」

一夏「(“アヤカ”と俺、どっちが辛い? 重たい? 苦しい?)」

一夏「(――――――ダメだ、そんなことを考えてどうする!?)」

一夏「(“アヤカ”の存在を踏まえての俺なんだからさ? “アヤカ”とは違った比べようがない過酷な日々を与えられるのは当然じゃないか!)」

一夏「(だからこそ! だからこそ、俺は“アヤカ”の希望となれるように『人を活かす剣』を振るう覚悟ができたんだ)」

一夏「(――――――自分の存在が災いをもたらす者ではないことを自分自身に言い聞かせるために!)」



696: 2014/11/26(水) 09:05:27.45 ID:RGK9H7Jp0


――――――――――――

―――――――――

――――――

―――


ザーザー、ザーザー


男性「美味しい?」

少女「う、うん!」キラキラ ――――――ベッドに横たわりながらアールグレイを飲み干す

男性「そうか。もう1杯どうだ?」 ――――――そのベッドにイスを寄せてアールグレイを注ぐ

少女「い、いただきます……」ドキドキ

少女「………………」ゴクゴク

少女「…………フゥ」

少女「僕、好きだな、これ……」

男性「そうか。それは良かったよ」ニッコリ

男性「それじゃ、ゆっくりおやすみなさい。あっちの怖いお兄さんについては俺から言っておくから」

少女「…………」ギュッ

男性「………………何だ? 一緒に居て欲しいのか?」

少女「う、うん……」モジモジ

男性「まだまだ子供だな」ナデナデ

男性「しかたないな。寝付くまで一緒にいてあげるから」

少女「ほ、ホント……?」

男性「うん。眠たくなるまでいろんなことを喋ろうか」




697: 2014/11/26(水) 09:06:03.29 ID:RGK9H7Jp0


ザーザー、ザーザー


一夏「………………」

シャル「スヤスヤー」グッスリ

一夏「ようやくか」

一夏「――――――変な娘だね」ナデナデ

一夏「今日は良い夢を見なよ」シュタ

一夏「…………この娘も唯一の肉親との思い出に生きるしかないのか」

一夏「俺と同じだな。俺もそのために生きてるようなもんだから」

一夏「さて、それじゃ」


スタスタスタ・・・・・・ガチャ、バタン


一夏「ようやく、寝かしつけることができたか……」

友矩「なるほど。状況が掴めたよ」

友矩「IS学園も一枚岩ではなかったようだね」

一夏「――――――というと?」

友矩「これはまた、“ブレードランナー”としての仕事が一段と険しいものとなった……」

一夏「…………!」


―――

――――――

―――――――――

――――――――――――



698: 2014/11/26(水) 09:06:49.55 ID:RGK9H7Jp0

――――――深夜


ラウラ「う、うう~ん」ウツラウツラ

ラウラ「こ、ここは確か――――――」キョロキョロ

シャル「スヤスヤー」グッスリ

ラウラ「シャルロット?」

ラウラ「あ」

箒「スヤスヤー」
セシリア「スヤスヤー」
鈴「スヤスヤー」
簪「スヤスヤー」
友矩「スヤスヤー」
千冬「スヤスヤー」

ラウラ「そうか。私は一夏のマッサージを受けている最中に寝てしまったのか――――――」

ラウラ「!」カア

ラウラ「あ、あああ…………」ドキドキ

ラウラ「あ、あのようなことで取り乱すとはな、情けない…………」ドキドキ

ラウラ「な、なぜだ? どうして今もあの感覚に心臓が高鳴っているというのだ……」ドキドキ

ラウラ「うぅ…………」ハラハラ

ラウラ「少し喉が渇いたし、汗も酷いな…………」

ソロリソロリ・・・・・・

ラウラ「おお、これが教官の寝顔――――――いかんいかん、教官はお疲れなのだから起こさないようにしないと」

ラウラ「確か、シャワー室はあっちだったな――――――」

スゥー、バタン


――――――――――――
           セ
ラ シ      シ
ウ ャ 箒 簪 リ 鈴
ラ ル        ア
――――――――――――
隙間(ゆったりと歩いて通れる程度)
――――――――――――

     友    千
     矩    冬

――――――――――――男は女性の安全のためにシュラフで包まる



699: 2014/11/26(水) 09:07:45.62 ID:RGK9H7Jp0

ラウラ「シャルロットめ。私が夜中に起きてシャワーを使うことを予期していたか」

ラウラ「ありがたく着替えさせてもらおう」

ラウラ「しかし、これで目がすっかり覚めてしまったな……」

ラウラ「そして、リビングには丁寧に私が起きた時のための夜食も用意されていると――――――」

ラウラ「少し外の空気でも吸ってこようか(自分のことがここまで筒抜けになっているのは、何だか――――――)」

スタスタスタ・・・・・・

ラウラ「うん?」

ラウラ「――――――靴が少なくなっている?」

ラウラ「――――――“アヤカ”の靴がない」

ラウラ「まさか!?」

ラウラ「くっ――――――」ガチャガチャ

ラウラ「…………ドアチェーンが掛かっている?」

ラウラ「リビングかどこかの窓から出て行ったんだな!」

ラウラ「一刻を争う事態だ! ――――――許せ!」


ガチャ、バタン! タッタッタッタッタ・・・!


ラウラ「現在時刻は午前4時になろうとしている頃か」

ラウラ「しかし、“アヤカ”はいったいどこへ――――――」ピピピッ

ラウラ「…………!」

ラウラ「こんな時にプライベートチャネルの通信?」

ラウラ「私だ」ピッ

――――――
雪村「どうしたんです、ボーデヴィッヒ教官? 突然 家を飛び出して」
――――――

ラウラ「“アヤカ”か!? 貴様、今 どこにいる!?」

――――――
雪村「あ、それなら僕はここですよ」パッ
――――――

ラウラ「あ……(――――――ライトの光!?)」チカチカ

――――――
雪村「や」

一夏「どうしたんだよ、ラウラちゃん」
――――――

ラウラ「――――――屋根の上」

ラウラ「…………人騒がせな」ホッ

ラウラ「しかし、やはり“アヤカ”と一夏の二人――――――」



700: 2014/11/26(水) 09:09:10.55 ID:RGK9H7Jp0

――――――織斑邸:屋根


一夏「いやぁ、何事かと思ったよ、ラウラちゃん」

雪村「うん。家から何か黒いのが飛び出してきたのには驚いた」

ラウラ「う、うるさい! それはこちらのセリフだ」(着ぐるみパジャマ)

ラウラ「だいたいどうしてこんな夜中に屋根に上って、二人で何をしていたというのだ?」

雪村「何って、――――――天体観測?」

一夏「憶えておいて損はないぜ。ラウラちゃんも訊いてく?」

ラウラ「…………本当にそうなのか?」

一夏「え」

雪村「何ですか?」

ラウラ「1つ訊いていいか?」

一夏「何?」


――――――2年前に日本に現れたISを扱える男性のことについて。


雪村「………………」

一夏「――――――『2年前』、か」

一夏「それで? その噂について何を訊きたいんだよ?」

ラウラ「とぼけるな(あの時は未だかつて無い感情に呑まれて確かめられなかったが、今日こそは――――――)」

ラウラ「――――――答えろ、織斑一夏!」

一夏「…………」


ラウラ「お前がその“2年前に現れたISを扱える男性”ではないのか? だからこそ、“アヤカ”との繋がりがあるのではないのか?」


ラウラ「二人の様子を見ているとそうとしか思えないほどの関係の深さが見えてくる!」

ラウラ「だが、お前たちは数えるぐらいしか会っていないはずだ!」

雪村「…………!」チラッ

一夏「なるほど。賢い娘だね、ラウラちゃんは」

ラウラ「はぐらかすな! 今すぐに答えを言え!」


一夏「違うよ。それはラウラちゃんの勘違いだ。男の俺にIS適性なんてない。それはさんざん調べ尽くされたことだ」


ラウラ「そんなはずが――――――!(そうだ。そんなことは――――――)」

雪村「………………」

ラウラ「“アヤカ”! なら、お前は――――――」


雪村「誰だっていいじゃないですか、そんなの」


ラウラ「え」

雪村「現に、存在しない存在なんですから。少なくとも“彼”と“僕”は違う存在だし」

ラウラ「いや、それでは辻褄が――――――」シドロモドロ


701: 2014/11/26(水) 09:10:08.08 ID:RGK9H7Jp0

一夏「なあ、ラウラちゃん?」

一夏「――――――本当に知りたいことってそれなのか? 噂の域を出ないし、今も生きているのかも怪しいそんな“彼”のことを」

ラウラ「そ、それは…………」

一夏「確かに俺は『3年前』ドイツ軍の情報部に助けられたことがあるから、ドイツ軍の情報網っていうのは世界一なんだと思ってる」

一夏「同じドイツ軍人のラウラちゃんもその伝手で2年前のそんな噂について感心があったのかもしれない」

一夏「けれど、仮に真実に辿り着けたとしてもそれは雑学知識が増えただけ――――――。ラウラちゃんはそれが望みなの?」

一夏「ちょっと、手段が目的化してないかな? 元々の目的は何だったの? ラウラちゃんは情報部の人間ではないよね?」

ラウラ「あ」

ラウラ「私は…………」

ラウラ「(そうだ。私がこのことにこだわり始めたのは――――――、)」


Auf Wiedersehen


ラウラ「私は――――――、」

ラウラ「そう、私は――――――、」


――――――もう一度“ハジメ”に会いたかった。ただそれだけだったのかもしれない。


ラウラ「………………」ドクンドクン

雪村「一夏さん?」ジトー

一夏「………………え」アセダラダラ

ラウラ「けれど、私はどうすれば――――――(私は今 隣にいる織斑教官の弟に、汚点に、私が知り得る中で最強の男に――――――)」クラクラ

雪村「………………」ジー

一夏「………………わかった」ゴクリ


702: 2014/11/26(水) 09:11:08.49 ID:RGK9H7Jp0

一夏「な、なあ? ラウラちゃん? い、意外だなー、ラウラちゃんにも好きな人がいたんだー」

ラウラ「い、いいいや! 私は別にそういうわけでは――――――『ただもう一度だけ会いたかった』それだけであってだな?」アセアセ

一夏「確か何て言ったっけ、『彼』?」チラッ

雪村「――――――『ハジメ』って言ってませんでしたか?」ジトー

一夏「ああ! ――――――『ハジメ』! ――――――“ハジメ”ね!」

ラウラ「…………?」

一夏「ああ、よく知ってるよ! 俺もIS学園には公式サポーターとしてオープンハイスクールなんかで来てるから、たまに会うんだよね!」ハラハラ

ラウラ「ほ、ホントか!」パァ

一夏「そ、そうそう! この前、ラウラちゃんたち1年生が臨海学校に行ってたじゃない?」

一夏「その時、学園は本当に大変だったんだよ! でも、“ハジメ”をはじめとした精鋭たちのおかげで何とか騒ぎは収まったんだ」ニコー

一夏「か、かっこよかったぜ、“ハジメ”のやつ! なんてったって生身でISをどうにかしちゃうんだもんな!」

一夏「お、俺も世界最強の織斑千冬の弟としてあれぐらい戦えたら最高だって思ったぜ……」アセタラー

雪村「え、ちょっと……(あまりにも喋りすぎてませんか、“ハジメ”さん?)」チラッ

ラウラ「おおー!」キラキラ

雪村「え、あれ?(確か軍で英才教育を受けたドイツでナンバーワンのIS乗りだったよね? どうして何も疑わないの?)」

一夏「でも、あいつは本当に神出鬼没で俺も会う程度で話したことは一度もないんだよね…………千冬姉ならあるかもしれないけれど」

ラウラ「そ、そうか……」ホッ

一夏「あ……」ホッ

ラウラ「すまなかった。今までの非礼を許して欲しい」

雪村「…………?」

一夏「大丈夫? 俺は公式サポーターである以上はそうやすやすと他国の国家代表候補生に肩入れするわけにはいかないんだけれども、」

一夏「IS学園の生徒でかつ千冬姉の教え子だから、お前はその中でもとびっきり特別な存在なんだからな」ナデナデ

ラウラ「あ……」ポッ ――――――着ぐるみパジャマのラウラははにかみながらも嬉しそうな表情を浮かべた。

一夏「なんかでっかい子猫をあやしてる気分だな」ナデナデ

雪村「そうですね。シャルロットのチョイスですから周りからもそう見られているということなんでしょう」

ラウラ「…………やはりそっくりだ。この手の温もり」ドクンドクン





703: 2014/11/26(水) 09:12:35.21 ID:RGK9H7Jp0

一夏「そろそろ夜明けだな」

ラウラ「そうだな」

ラウラ「ところで、二人はどれくらいこうしていたのだ?」

雪村「友矩さんと一夏さんが交代で寝ている所をちょっかいかけられないように見張って、みんなが寝静まった頃に連れてってくれました」

一夏「そうだな。3時間ぐらいかな」

ラウラ「ずっと星空を見続けていたというのか?」

一夏「まあ、天体観測の基本的な知識だとか、人生の先輩としてのアドバイスなんかも贈ったかな」

ラウラ「…………どのようなものだ?」

一夏「お、食いつくねぇ」

ラウラ「私は織斑教官を尊敬している。そして、その織斑教官が誇りにしている織斑一夏についても同様だ」

ラウラ「だから私は、織斑教官と同じようになりたくてお前のマッサージを受けてみたんだ」

一夏「そうか。――――――『千冬姉と同じようになりたくて』か」

雪村「確か、『名人と達人のどちらが素晴らしいか』なんて話してくれましたよね」

一夏「ああ。これは別に教わった話だから俺が思いついた話じゃないんだけどさ」


――――――『名人』っていうのは『有名人や著名人』って意味であり、『達人』っていうのは『その道に達した人』っていう境地のことなんだよね。


ラウラ「?」

一夏「まあ、西洋人には『道』って概念は理解しづらいかもしれないな」

一夏「でも、英語でも『道』を表す単語に"way"っていうのがあるけれど、」

一夏「不思議なことに普通に『road』って意味の他に、『道』にかなり近い『method』としての意味も含まれているんだよね」

一夏「だから、『道』については俺はこの"way"っていう単語に置き換えられることから説明してるかな」

ラウラ「なるほど。『道』とは『手段ややり方の形式』というわけなのか」

一夏「そう考えてくれていいよ」

一夏「だからね? 『名人と達人のどちらが素晴らしいか』という問いかけに関して言えば、」

一夏「断然『『達人』のほうが素晴らしい』っていうのが答えなわけ」

一夏「人生っていうのは1つの大きな旅路や航路によく喩えられるじゃない? その人生をより良く豊かにするための手段を日本では『道』といって、」

一夏「『達人』っていうのは、たとえばIS乗りならばIS乗りとして考えられる限りの誠意と努力を尽くした人間が『達人』って呼ばれるようになるんだ」

ラウラ「?」

一夏「『名人』=『達人』っていう構図も確かに成り立つかもしれないけれども、こう考えればいい」

一夏「『達人』と呼ばれるほどの腕前を持つ人の中で世の中で汎く知られているのが『名人』と考えてくれればいい」

一夏「でもだからこそ、『達人』∋『名人』っていう図式が成り立つわけであり――――――あ」

一夏「そうだ! ラウラちゃんはドイツ人じゃないか! なら、いい教科書がある!」


――――――オイゲン・ヘリゲルの『弓と禅』って本を読みなさい!


ラウラ「…………オイゲン・ヘリゲルの『弓と禅』?」

一夏「“ブリュンヒルデ”織斑千冬に近づきたいのなら読んでおくことをおすすめする」

ラウラ「…………わかった。探して読んでおこう」


704: 2014/11/26(水) 09:13:31.81 ID:RGK9H7Jp0

ラウラ「ところで、『達人』とは具体的にはどういう人間のことなのだ? 具体的な特徴を挙げてはくれないか?」

一夏「ちょっとこれが何でもかんでも定義付けようとする西洋人には意識しづらいところなのかもしれないけれども、」


一夏「『最高の達人』は一見すると凡庸な人間にしか見えなくなるのが最大の特長かな」


ラウラ「!?」

雪村「…………あれ?(ちょっとまずくないかな、その説明は)」ハラハラ

一夏「いいか? 『最高の達人』っていうのは――――――、」


自分から力を誇示して無闇に周囲を脅かすようなことはせず、人との軋轢を生まずに、その優れた力を人を活かすためだけに使い、

普段は普通の人間とまったく変わらない平凡な生き方をして社会を一緒に支えていけるような謙虚でやる気に満ちて研鑽努力を惜しまず、

必要な時だけ己が持てる磨いてきた能力を『人を活かす』その一瞬のために使い、大したことを大したことじゃないように見せられる、


一夏「――――――そんな人間のことだ!」ドン!

ラウラ「………………」

一夏「あれ?」

雪村「説明がちょっと長過ぎますし、説明が被ってませんでしたか?(…………良かった。これなら変に疑われることはないかも)」

一夏「あ……、スピーチは苦手なんだよな、今も……」ハハハ・・・

ラウラ「……………………もしかして」



705: 2014/11/26(水) 09:14:23.19 ID:RGK9H7Jp0

自分から力を誇示して無闇に周囲を脅かすようなことはせず、人との軋轢を生まずに、その優れた力を人を活かすためだけに使い、

――――――

ラウラ「どうしてそこまで私のことを気に掛ける?」

黒服「『どうして』って……、人とは極力 仲良くしたいと思うのが人の性だろう?」

ラウラ「私は戦うために生まれた戦士だ。私の前には敵と味方しかいない」

黒服「じゃあ、――――――俺は敵か? 味方か?」

ラウラ「………………」

黒服「味方に対してもそんな冷たい態度なのは寂しいだけだと思うけどな」

黒服「ラウラちゃんにだって大切にしたいって思える人がいるはずなのに、その人の前でもそんな固い態度なのは損だぜ?」

黒服「こう……、笑顔で接してくれたら誰だって気分がよくなるって」ニカー

――――――


706: 2014/11/26(水) 09:14:54.79 ID:RGK9H7Jp0

普段は普通の人間とまったく変わらない平凡な生き方をして社会を一緒に支えていけるような謙虚でやる気に満ちて研鑽努力を惜しまず、

――――――

ラウラ「ほう、よくわからんが 日当たりが良くてこの開放感――――――いい部屋だということはわかる」

雪村「素敵なお部屋ですね」

一夏「あ、ああ……、友矩が見つけてくれたんだ……」

箒「そうそう、いい部屋なんだぞ」ウンウン

シャル「もう箒ったら嬉しそうな顔しちゃって~、夫婦の営みを頭の中でもう描いているのかな~?」ニコニコー

箒「ひ、冷やかすな~!」カア

一夏「だ、だから! 『結婚するにしても社会人になってからだ』って言ったよね、お兄さん!?」

箒「う、うるさい! お前はいつになったら私と交わした約束を思い出してくれるのだー!」

一夏「そ、そんなこと言われても…………」

一夏「ハッ」

ラウラ「………………」ジー

一夏「な、何かな?」

一夏「あ、そうだ! せっかく来たんだからもてなさないとな……」

雪村「て、手伝いますよ、一夏さん……」ハラハラ

一夏「あ、そうかい、“アヤカ"? じゃあ頼もうかな――――――」

箒「わ、私もだ、い、一夏……」ドキドキ

一夏「い、いや! 先着順! 先着1名で十分だから、な?」

一夏「それよりもだ! ――――――そんなことはないと思うけど、家探しなんてしないよね?」アハハ・・・

シャル「え? べ、別に僕たちはそんなことするつもりは――――――、ねえラウラ?」

ラウラ「………………」

シャル「…………ラウラ?」

箒「……わかった。何やらラウラが気難しそうにしているから私たちで何とかしてやろう」

ラウラ「…………!」

シャル「う、うん。どうしたの、ラウラ? そんなおっかない顔をして――――――」

ラウラ「…………どっちなんだ? 確証が得られない」

シャル「え」

ラウラ「いや、何でもない…………すまなかった」

――――――


707: 2014/11/26(水) 09:15:29.44 ID:RGK9H7Jp0

必要な時だけ己が持てる磨いてきた能力を『人を活かす』その一瞬のために使い、大したことを大したことじゃないように見せられる、

――――――

ラウラ「(ここは身体に直接訊く他あるまい! さっきまでの礼だ――――――!)」ジロッ

一夏「なあ、ラウラ――――――っ!?」ビクッ

ラウラ「――――――!」バッ ――――――アーミーナイフ!


一夏「よっと」ササッ ――――――突き出されたナイフを一瞬で避ける!


ラウラ「なっ!?(――――――避けられた!? 馬鹿な、悟られていたはずがない! 私の必殺の一撃が!?)」

一夏「何を――――――!」バッ ――――――足払い!

ラウラ「あ!」グラッ

一夏「するの――――――!」ガシッ ――――――ナイフを伸ばした手を掴んでこちらに引き寄せて!

ラウラ「ああ!?」グイッ

一夏「――――――かなっ!」ギュッ ――――――ラウラの両脇から両手を出して拘束!

ラウラ「くぅうう……(馬鹿な! 最強の兵士であったはずの私がどうしてこんな輩に――――――!?)」

一夏「まったく、こんなことばかり得意になっても嬉しくないんだがな」 ――――――『見てから余裕』の対処!

ラウラ「うぅ……、お、降ろせ…………」ジタバタ ――――――178cmと148cmの身長差なので足が地につかない!

一夏「はい」パッ

ラウラ「え――――――っとと、あっ」(素直に放すとは思ってなかったので着地に失敗して両手をついてしまう)

一夏「あ、大丈夫か!」

ラウラ「――――――っうううう!」ムカムカ


ラウラ「――――――『大丈夫か』は貴様の方だろう!」


一夏「ええ!?」ビクッ

ラウラ「………………」ヨロヨロ・・・

一夏「ど、どうしたんだよ、ラウラちゃん?」

ラウラ「おかしいとは思わないのか! 私はお前をナイフで刺そうと思ったのだぞ!」グスン

ラウラ「そんな相手に何事も無かったかのように平然と――――――!」ポロポロ・・・

一夏「な、泣くなよ……、な?」

ラウラ「泣いてなどいない…………」ポロポロ・・・

――――――


708: 2014/11/26(水) 09:16:06.13 ID:RGK9H7Jp0


ラウラ「………………ああ」

一夏「えと、ラウラちゃん?」

ラウラ「――――――そういうことか(そういうことなら全てに納得だな)」

一夏「?」

ラウラ「いや、何でもない」フフッ

ラウラ「――――――何でもないんだ」ニッコリ

一夏「お、いい笑顔じゃないか! どうしたんだ、急に?」

雪村「………………」

ラウラ「なあ、一夏? もっと話を聴かせてはくれないか、お前の口から」ニコッ

一夏「おう、いいぜ」

雪村「………………あ」

一夏「それじゃ、まずはラウラちゃんのことについて聴こうかな? そこから話を広げてみようかと思う」

ラウラ「ならば、私がドイツ軍IS配備特殊部隊:黒ウサギ隊の隊長であることから――――――」 ――――――そっと一夏の手に重ねられたラウラの手

雪村「…………ボーデヴィッヒ教官(――――――あなたもですか)」

雪村「一夏さん……、やっぱりあなたも僕と同じ『呪い』に掛かっているんですね……」



709: 2014/11/26(水) 09:16:51.45 ID:RGK9H7Jp0


ピカーーー


雪村「…………!」

一夏「おお、朝日だぞ!」

ラウラ「おお! 日中の暑さを忘れるような打って変わった涼しさの中で迎える朝日か……」

雪村「はい」

一夏「綺麗だな」

ラウラ「そうだな。こんなにも冷涼で澄み切った空気なのにあの蒸し暑さに変じていくだなんて想像つかないな」

一夏「だろう? だから俺は、朝日を眺めるのが好きなんだ。いろんな場所でいろんな角度でいろんな高さで――――――」

雪村「どうしてですか?」


一夏「そりゃあ、こうやって屋根の上から眺める朝日っていうのもいろんな新発見があるだろう?」


雪村「え」

一夏「――――――陽はまた昇る」

一夏「それは毎日の営みの中において変わることがない見慣れた光景のように思えるけれども、」

一夏「こうやって朝日を眺めるのを少し変えようとすればそれだけで違った味わいが毎回あるもんなんだぜ」

雪村「!」


千鶴『そう。それじゃ、二人にとっての初めてのこの7月8日の朝日が二人の新しい門出を祝う光となるのね』

雪村『――――――『新しい門出』』

箒『――――――『門出を祝う光』って、そんな大袈裟な』ハハッ


雪村「…………陽はまた昇る」ドクンドクン

一夏「どうだ? 今日の朝日がいつもよりも違って見えたりはしないか?」

雪村「はい」ニコッ

一夏「“アヤカ”もいい笑顔をするようになったな!」ニコッ

ラウラ「そうだな」フフッ

雪村「そういうボーデヴィッヒ教官もです」

ラウラ「むっ! わ、私は……、いつも通りだ! 何度も言わせるな!」ドキドキ

雪村「ふふ、はははは……」ニコニコ

ラウラ「なっ、笑うな――――――って、“アヤカ”が笑った、だと?!」

一夏「やっぱり新発見っていつだって身近にあるんだよ」

一夏「そして、今の自分や世界を変えるきっかけなんていつだって――――――」


710: 2014/11/26(水) 09:17:55.28 ID:RGK9H7Jp0


ガチャ、バタン


千冬「やはり屋根の上にいたか、お前たち」

一夏「あ、千冬姉! おはよう!」

ラウラ「おはようございます、教官!」ビシッ

雪村「おはようございます」ニコッ

千冬「…………見違えるようになったな」フフッ

千冬「とっとと降りてこい。そんなパジャマをしているラウラは特にな」ニヤリ

ラウラ「ハッ」

ラウラ「そ、そういえば、そうだった…………(さすがにこの格好で衆目にさらされるのは恥ずかしい……)」カア

雪村「ふふふふ、はははははは…………」ニコニコ

ラウラ「だから、笑うな!」シドロモドロ

雪村「ごめんなさい」テヘペロッ

ラウラ「…………“アヤカ”? 貴様もずいぶんと生意気になったものだな?」ググッ

一夏「こらこら――――――」チラッ

千冬「………………」ニコッ

一夏「………………」フフッ



一夏「さあ、今日を始めようか!」





『剣禅』編 『序章』第10話A+ ひと夏の想いでに焦がれる多重奏・表  -完-



711: 2014/11/26(水) 09:18:42.49 ID:RGK9H7Jp0


――――――ご精読ありがとうございました。


いよいよ11月26日、IS〈インフィニット・ストラトス〉アニメ第2期OVA『ワールド・パージ編』が発売となります。
長かったような……、早かったような……、そんなこんなで繋ぎの作品を2つも投稿してしまった物好きです。
果たして、どのような出来となっているのか不安が大きいですが、これで筆者のIS二次創作の第2期が進むようになるのでありがたいことです。


【IS】一夏(23)「人を活かす剣!」 千冬(24)「お見せしよう!」【完】


引用: 一夏(23)「人を活かす剣!」 千冬(24)「お見せしよう!」