27: 2013/05/08(水) 10:53:40.50 ID:19zO7Iut0


第一話『両想いになれる自販機』

――学園都市七大不思議探訪 第二話 『トイレの時計屋』

とある魔術の禁書目録 31巻 (デジタル版ガンガンコミックス)
28: 2013/05/08(水) 10:54:56.80 ID:19zO7Iut0
――某高校校門前 16時30分

佐天「うっいっはるーーーー!愛っしてっるぞーーーーーーーーーーーーーーーーっ!!!」

佐天「さーて今週もやって参りました学園都市七大不思議探訪っ!お相手は先週に引き続きっ、ワタクシっ佐天涙子があなたをナビゲートしちゃいます!」

佐天「打ち切り上等っ、スポンサー凸やってみろコラっ!かかってコいや○田イミフと特定日○人っ!そんな感じで今日も無敵にやっていきたいと思います!」

佐天「あーでも、今日はあたしの姿が映ってないのがお分かりでしょうか?代わりに何処かの学校の校門の絵ですよね」

佐天「丁度今、放課後なので続々と生徒が帰宅していますねー。あ、あの人達手繋いでる」

佐天「いいですよねー、あーゆーのを見ると青春っ!て感じがしますね」

佐天 イラッ

佐天「あ、すいませんちょっといいですかー?」

女子生徒「はい?中学生?」

佐天「今どんなパンツ履い――」

上条「ちょおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉっと待てやゴラアアアアアアァァァッ!?」

佐天「チッ」

上条「何やってんのっ!?ねぇキミ人の学校の前で何やってんのっ!?ねえぇっ!?」

佐天「おはようございまーす上条さんっ。視聴者の皆さん、この人が学園探訪のカメラマンの人です。今一パッとしませんよねー?」

上条「俺の事はどうでも良いっ!それよっか今何やらかそうとしてやがった!?一発で放送免許剥奪されるような事しようとしてなかったかっ!?」

佐天「いや、あたしは別にいつもしてますもん」

上条「君達のプレイで常識を測るなっ!後初春さんに謝れって!」

佐天「さーせん」

上条「あぁもうハラ立つっ!いーからこっち来いっ!」

佐天「えー、折角高校なんですからオープニング、校門前で撮りましょうよー」

上条「今のやりとりのどこに流せる部分があった!?」

29: 2013/05/08(水) 10:56:07.44 ID:19zO7Iut0
――体育倉庫

佐天「へー、ここが体育倉庫ですかー?ウチの中学とそんなに変わりませんねー」

佐天「で、何です?珍しいモノがあるから、佐天さんにも見せてあげたいって……言ってました、よね?」

佐天「――えっ!?上条さん、右手に持っているの、カメラですか?あぁ、見せたいのってそれですかー。あはは、だったら別にこんな所にまで来なくたって――」

佐天「ちょっ、すいません。目が怖いですよ?えっ?今なんて――」

佐天「『ここの体育倉庫は、誰も来ない』?そんな情報もらっても、誰も嬉しくな――」

佐天「『まずは俺の幻想頃しをペロペロして貰おうか?』いやだなー、あたしそんな冗談言う上条さん嫌いですよぉ。ねっ?」

佐天「近寄らないで下さい!そ、それ以上こっち来たら、あたしっ上条さんと絶交しますからっ!」

佐天「ちょっ!いやっ!?誰かっ、誰か助けてっ!?」

佐天「ダメっ!?あたしが肌を見せるのは将来の旦那様だけなんですからっ!」

佐天「っくぅ!?」

佐天「殴らないでっ!もう殴られるのヤですっ!……あたし、言う事、ききますからっ」

佐天「お願いですっ!殴るのだけは――」

上条「いい加減に小芝居するのやめろよっ!?つーか演技がリアルすぎて引くわっ!」

佐天「え、でもあたしを連れ込んで乱――」

上条「しねーよっ!そもそも普通の学校に使われてない体育倉庫なんて無いよっ!取り壊すもの!」

上条「つーかカメラ横に動かせば、陸上部の人らが『コイツら何やってんだろう?Vシネ?むしろお前氏ねば?』って目で、ハードルと棒高飛びマット用意してるんだからなっ!」

佐天「Vシネと氏ねばってかかってますけど、面白くないですよ?」

上条「ウルセエよっ!?そもそも今の絵をテレビで流せる訳が無いだろっ!?」

佐天「でもここからが良い所だったんですよ?まずは『お口で満足させたら最後までしないかも?』とか言ってしゃ――」

上条「それ以上言うなっ!?公共の場で使っていい内容じゃないよねっ!」

佐天「えー、折角チュ○音勉強してきたのにー」

上条「ねぇ佐天さんこの間も言ったけど、君あんまり頭良くないよね?義務教育ナメない方が良いよ?」

佐天「き、聞きますか?あぁでもやだっあたし恥ずかしいですよぉっ!」

上条「照れるならしなきゃいいだろうがよぉっ!?ねぇ佐天さん、君は俺の事をどういう目で見ているの!?」

佐天「釣った魚に餌を与えず飼い頃すク×ヤロー」 グッ(中指を立てる)

上条「心当たりは全くないけど妙に心が痛いなその言葉っ!心当たりはないんだけどもっ!!!」

佐天「謝って!御坂さんに謝って!」

上条「いやあの、俺はあいつの事助けたし、貸し借り的にはむしろ貸してる方かなー、なんて?」

佐天「お買い物すっぽかしたり、スキルアウトとやり合わせた御坂さんにゴメンしなさいっ!」

上条「ごめんなさい御坂さんっ、いつもありがとうなっ!」

上条(でもスキルアウトじゃなくって猟犬部隊だったっけかな?)

30: 2013/05/08(水) 10:57:05.94 ID:19zO7Iut0
佐天「『愛しているぞーーーーーっ!御坂ーーーーーっ!』」

上条「言わないよ?俺、こないだ各方面からものっそい怒られたんだからね?そもそもご本人様から問答無用で超電磁砲食らったから」

佐天「んー、照れ隠し的な奴じゃないですかねー?好きな子には意地悪したくなるってヤツ?」

上条「氏ぬからっ!俺以外の人間にアレやったら即氏だからっ!」

上条「って言うか佐天さん何で来たの?学園探訪の撮影ってのは分かるけど、俺聞いてないよね?」

佐天「きちゃった、てへ」

上条「……そろそろ突っ込みすぎて喉枯れそうなんだけど、話して貰っていいかな?」

佐天「『トイレの時計屋』って怪談知ってます?」

上条「花子さんとか赤マントとかだったら知ってるけど、初めて聞いたよ。つーかマットに座ろうぜ?」

佐天「何かセーラー服でマットに腰掛けるって、イメージビデオ風になってません?ちょっとアイドルみたいで恥ずかしいですよっ」

上条「うん、君はもっと別な所を恥ずかしがるべきだし、そこら辺のアイドルより可愛いけどもさ」

佐天「はいっ?」

上条「で?時計屋さんってどんな話?」

佐天「――え?えぇえぇ、えっと、そうですねっ、最初は共働きが良いですっ!」

上条「え?」

佐天「え?」

佐天「いやいやいやっ!あの――何の話でしたっけ?」

上条「『トイレの時計屋』の内容。また調べてないの?」

佐天「あ、いえいえっそれは大丈夫です。あの後初春にものすごく怒られまして」

上条「そりゃあんだけ名前連呼されてりゃなぁ」

佐天「あぁいえ、『下調べもせずに行くとは何事だ』、と」

上条「そっち!?そっちでいいの?怒らなきゃならない所いっぱいあったよな!?」

佐天「諦めてるんじゃないんですかねー、あっはっはっはー」

上条「反省しよう?もうちょっと人生振り返ろうぜ?」

佐天「媚びぬっ!引かぬっ!……あー、後何でしたっけ?」

上条「俺に振るなよっ!?」

佐天「いえすっ口リコ×っ、のー?」 ハイタッチ?

上条「知らねぇよ!どっから覚えたその言葉っ!?」 ノーハイタッチ!

31: 2013/05/08(水) 10:58:26.61 ID:19zO7Iut0
佐天「だもんでリサーチは初春から☆三つ頂いてます、はい」

上条「へー、頑張った。偉い偉い」

佐天「えへへっ、どうですかっやれば出来るんですよっ」

上条「んでさっきから気になってる、時計屋の話ってどんなの?俺は知らないけど、実は有名だったり?」

佐天「いや知らなくて当然かと。興味を持って調べなければ分からないと思います」

佐天「『昔々、この学校に寮があった頃のお話です』――って感じですかね」

上条「……続けないの?怪談ぽい出だしだけど」

佐天「やー、あははー、いやほら多分無理なんじゃないかなー、なんて思ったりして」

上条「何で――」

黄泉川「かーみーじょーおー?」

上条「でっすよねー、普通こうなりますよねー?」

佐天「助けて下さいっ!?あたしっ、あたしっ!」

上条「一瞬で裏切りやがったな!?って言うかその設定まだ生きてんの!?」

黄泉川「ちょぉぉっと生徒指導室まで二人とも来るじゃん?」

佐天「え、いやあたしもですか?あたしは被害者的なあれですし?」

上条「嘘を吐くなっ嘘をっ!」

32: 2013/05/08(水) 10:59:19.42 ID:19zO7Iut0
――生徒指導室 19時

佐天「昔々、この学校に寮があった頃のお話です。当時はまだそれが『寄宿舎』と呼ばれていた時代」

黄泉川「明治から大正にかけて、大学や高校はおっきな街や都会にしかなかったじゃん」

黄泉川「だから地方からの学生は親元を離れ、全寮制の学校が殆どだったじゃんよ」

佐天「ある男性寮へ泥棒が入った所から始まります」

佐天「寄宿舎は親元を離れた学生で一杯。仕送りで貰ったお金や時計を持ってるだろう」

佐天「盗みに入るのは絶好の場所だ、と泥棒は考えました」

上条「時計って昔は高級品だったんですか?」

黄泉川「そこそこ安いのもあったじゃんが、大抵親からは『苦しくなったら質屋へ入れなさいね』って言い含まれてるじゃん?」

黄泉川「仕送りだってATMがある訳で無し、振り込んでから引き落とせるまで、郵送されてくるまでは何日もかかるじゃんよ」

佐天「泥棒はお金や時計をたくさん盗みました。けれどもそこは若くて大勢の男の人達が居る寮です」

佐天「泥棒は見つかってしまい、トイレの個室に隠れるしかありませんでした」

佐天「当然、学生達は泥棒を捜します。押し入れ、使っていない部屋、そして――泥棒が隠れているトイレまでやってきました」

佐天「学生の一人はこう言いました――『時計だ!時計の音がするじゃないか!』」

佐天「そうです。泥棒は沢山の時計を盗んだため、その秒針が、ちっ、ちっ、ちっ、ちっ、と煩い音を立てていました」

佐天「一つ一つなら小さく、誰も気付かなかった音ですが、沢山盗んでしまったお陰で泥棒の居場所を教えてしまったのです」

佐天「学生達は泥棒を怒鳴りました――『おい、出て来い!』」

佐天「本来であれば警察を呼び、逮捕して貰うのが一番だったのでしょうが、生徒達はまだ若い未熟な学生ばかり、泥棒をなじる声は続きます」

佐天「『殺される!』――そう思った泥棒は出て来ません。生徒達は乱暴に泥棒の籠もっている扉を叩き続けました」

佐天「どんどんどんっ、どんどんどんっ」

佐天「一時間ぐらい経って警官が駆けつけました。警官は異常に興奮している生徒達を宥め、泥棒に大人しく出て来るように呼びかけました」

佐天「しかし泥棒からの返事はありません。トイレには、ちっ、ちっ、ちっ、ちっ、と言う秒針の音だけが響きます」

佐天「警官は仕方が無くドアを壊して個室へ入ってみると、そこで見たモノは――個室で首を吊って氏んでいる泥棒の姿でした」

佐天「両腕にいっぱいの腕時計を巻き付けたまま、ちっ、ちっ、ちっ、ちっ、と言う音をさせながら」

佐天「それ以来――泥棒が氏んだトイレではね、聞こえるんですよ。そう、丁度こんな夜には、ね」

佐天「誰も居ない筈の個室から、ちっ、ちっ、ちっ、ちっ、ってね――」

上条「……」

上条「えっ?」

33: 2013/05/08(水) 11:00:37.17 ID:19zO7Iut0
佐天「以上が『トイレの時計屋』さんのお話ですね」

佐天「でも時計をつけていない相手には姿が見えないとか、派生する噂話は結構ありますなー」

上条「いやいやいやいやっ!主旨違くないか!?もっとこう、ダラダラっとした企画じゃないのか!?」

佐天「いえ、だから段々と怖くしていくぜって話しましたよね?」

上条「聞いたけどさ。何か予想以上に真面目、つーか怖いって言うか」

佐天「いやーでもマシな方ですよ?何には巻き込まれたら100%氏ぬ怪談とかありますし?えっと――『午前4時44分44秒の4つ辻の氏神』が有名ですね」

上条「え?それはしないよね?」

佐天「この佐天涙子に逃げの二文字は無いっ!」

上条「逃げてないよっ!?むしろ必要のないトラブルに首突っ込んでいるんだからねっ!」

黄泉川「――いや、まぁ大体の事情は分かったんだけど、それがどうしてウチの高校に繋がるじゃんよ?」

佐天「よっくぞ聞いてくれました!それはですねっ、この高校が建っていた場所には、昔高校が建っていたんですよ」

黄泉川「あー……聞いた事あるじゃんよ。20年ぐらい前に校舎を建て替えた、って話じゃん」

佐天「はいっ!」

上条「……」

黄泉川「……」

佐天「……はい?」

上条「いやいや、続きは?」

佐天「いえ、それで全てですが?」

上条「じゃあ何で来たのっ!?普通噂の原因となるような何かがあるとかっ、そう言う理由じゃないのっ!?」

佐天「――はい、と言う訳で学園都市七不思議探訪第二話、『トイレの時計屋』、皆さん如何でしたでしょうかっ?」

上条「だからっ!勝手に締めに入るんじゃないっ!もうちょっと頑張ろうぜ、なぁ!?」

佐天「今日は特別ゲストとして黄泉川先生をお招きしましたっ。あ、一言お願いします」

黄泉川「あー……よい子は早く帰るじゃん」

佐天「『――で、ないとあなたの隣にぽっかり口を開けている、奇○な物語に巻き込まれてしまうかもしれません』ですかっ!ナイスなコメントありがとうございますっ」

佐天「ちゃっちゃっちゃっちゃっ、ちゃっちゃっららー」

上条「三倍以上盛った上に、タ○さんのパクリはやめろっ!○妙なテーマも歌うんじゃないっ!――っていやいやっ、これで終われるかっ!」

34: 2013/05/08(水) 11:01:42.91 ID:19zO7Iut0
上条「と言うか、なに?何となくウチが古っぽい学校だから、取材に来たの?」

佐天「いやー、大体怪談のルーツなんて早々見つかる訳が無いじゃないですか?」

佐天「そもそも、こう言う噂ってのは特定の学校だけでなく、地域に跨って語られる訳ですし、無作為に選んだ方がいいかなー、と」

佐天「と言いますか、100%出現する怪異なんて居ませんってば」

上条「……言ってる事は分かるんだけども、せめてそれだったらさ、『○○が評判になってる学校』ってのを調べて、取材した方が良いんじゃ?」

佐天「!?」

上条「いやいやいやいやっ、そんな『天才かっ!?』みたいな顔されてもだなっ!」

上条「つーかよく初春さんオーケー出したなぁ。もしかして俺が知らないだけで、あの娘も実はアレだったりするの?」

佐天「『もう何か上条さんが、適当に突っ込んでくれれば良いんじゃないですかー』って」

上条「初春さんにも投げられたって事か!?☆三つの話はどこ行った!?」

佐天「ノリで言いましたっ。反省はしてませんっ」

上条「ものっそい良い笑顔で嘘を吐くなっ!」

黄泉川「あー……お前らそろそろ帰るじゃん?」

上条「先生っ!お願いします、こんなグダグダじゃあ終われませんからっ!」

黄泉川「トイレでも撮って帰ればいいじゃん?」

佐天「開かずのトイレとか、そーゆーのありませんかね?出現率アップすると思いますっ」

上条「いやそんなレアドロップするモンスターみたいに言われてもな」

黄泉川「あるじゃんよ、確か」

上条「あったよオイ!?――って、もしかして特別教室最上階の?」

佐天「よっしそこだっ行きましょう!ごーごーっ!」

黄泉川「待て待てそう言うんじゃないじゃん。場所が悪いから使わないし、使わないんだから掃除するだけ無駄だって鍵掛けてあるじゃん」

佐天「えーっ!?じゃ、じゃあじゃあ鍵だけでも見せてくださいっ。お願いしますっ」

黄泉川「いやー、なんかオチ見えたじゃん?」

上条「(お願いしますっ!汲んで上げて下さいっ、俺も早く帰りたいんです)」

黄泉川「……これが鍵じゃん」

佐天「へーそうなんですかー。あ、黄泉川先生、鍵のストラップにトラッキ○ついてますよ?」

黄泉川「え、トラッ○ー?あっ、さっき阪○ファンと殴り合った時についたじゃんよ」

佐天「あたし取ってあげますよっ――って、カギっ、とったどおおぉぉぉぉっ!」 タッタッタッタッ(遠ざかる足音)

上条「……今の流れ、要るか?挟む意味あるのか?」

黄泉川「まぁ本人が満足するならいいじゃんよ」

上条「満足、しますかねぇ?」

黄泉川「……」

上条「……取り敢えず追い掛けてきます」

黄泉川「あ、正面玄関締めたから、帰る時は一声掛けるじゃんよー?」

上条「うっす」

35: 2013/05/08(水) 11:03:12.73 ID:19zO7Iut0
――特別教室最上階・封鎖されたトイレ 19時30分

佐天「はいっ、と言う訳で来ちゃいましたっ!ここがこの高校の『開かずのトイレ』ですっ!」

佐天「……」

佐天「……いやなんかこう、やっぱ一人で来ると怖いっていうか――」

佐天「いやいやっ入りますっ!それがあたしのお仕事ですからっ!」

佐天「……」

佐天「……よっし!」

佐天「あ、電気――」 パチッ

パチッ、パチパチッ

佐天「電気、着かないんですね。真っ暗、です」

佐天「LEDライトをっ、取り出しまして――あぁすいません、カメラを夜景モードにっと」

佐天「……」

佐天「見えますね。さっすがTATARAのR3D3ビデオカメラはいい性能ですっ!」

佐天「心霊スポットに行く際には、是非お供にっ!」

佐天「……行きませんよね、普通は。すいません今ちょっとツッコミ役が不在でして」

佐天「んじゃまぁ、あたしは行きますっ」 ギギイィッ

佐天「――って何これっ!?湿っぽっ」

佐天「あー……ご覧下さい皆さんっ、天井、壁まで水滴が一杯ですねっ」

佐天「もの凄く、湿度が高いですね。ムシムシとしてて、なんか、ちょっと、いい気分はしませんね」

佐天「外よりも暑い感じですかね?」

佐天「ぬるめのサウナへ入ったみたいな?外よりも気温が高くて、水っぽいと言いますか、湿っぽいと言いますか」

佐天「あー、窓閉まってますし、換気扇も回ってない、か。なるほどー、それじゃジメジメもするってもんですよね、えぇ」

佐天「ってかここ男性用トイレか。あたし初めて入りましたがっ感動はありませんねっ!」

佐天「……」

佐天「個室の方は、これで閉まってたら大当たりなんですが、そう言う話でも……大丈夫、全部開いてますっ、せふせふっ」

佐天「んじゃちょっと、一番手前に入ってみましょうか」 ギギィッ、パタン

36: 2013/05/08(水) 11:04:21.33 ID:19zO7Iut0
佐天「中もまぁ普通の洋式です。汚れが無くってむしろ新品同様です」

佐天「あー、表面にちょっと埃が積もってるかも?指でつー、ほらっ、姑さんが嫁いびりで使うようなアレをすると、ちょっと指先が黒くなります」

『……』

佐天「ほらほら、見えますかー?」

佐天「一応便座上げた方が良いんでしょうね?えーっ、何か気乗りがしませんが、えいやっ!」

佐天「……」

佐天「……目、開けても良いかな?大丈夫?オバケ、居ないよね?」

佐天「――っ!……ってなんだ、いませんいませんっ!居たら怖いですってば!」

佐天「いっやーもう何だ驚かせてくれちゃって何なんですかっもぅっ!あたし実は結構恐がりなんですけどっ!」

佐天「ぬあーっ!何か今頃になって恥ずかしさがヒシヒシとっ!ありません、そーゆー思い出し恥ずかしがり?」

佐天「何かこうっ、あん時あーしときゃ良かっただの、偉そうな口きいたりだのっ、テンション上がって家帰って『うぎゃああぁぁぁっ!?』みたいなの」

佐天「何つーか今も、というか今日も――」

『……ッ……』

佐天「……あれ?なんか聞こえませんか?」

37: 2013/05/08(水) 11:05:22.97 ID:19zO7Iut0
佐天「い、いやいやいやっ、まさかタイミング良く『トイレの時計屋』さんが来るなんては、無いっ。無いですってば」

佐天「……」

佐天「ほら、ねっ!やだなーもうあたしったら、恐がりなもんで聞き間違えちゃ――」

『……チッ……』

佐天「――っ!?え、今」

『……チッ…………ッ』

佐天「秒針の音、じゃないけどっ!え、え、何でっ!?何、何っ!?」

『……チッ………チッ……』

佐天「どうしてっ、さっきまで、聞こえなかったのにっ!?」 バタンッ

佐天「……」

佐天「誰も、居ない、よね?」

『……チッ……』

佐天「隣の、個室、からだよね……?」

ギギギィッ

佐天「誰も居ない、けど」

『……チッ……』

佐天「っ!?最初にあたしの居た個室からっ!?」

『……チッ……チッ……チッ……チッ……』

佐天「いや違うっ!?これ、移動、してる、の……?」

『……チッ、チッ……チッチッチッ……』

佐天「や、やだっ!?こっちに来ないでっ!」

佐天「だめ、やだっ!助けてっ、誰か――」

『……チッチッチッチッチッチッ……』

佐天「助けてよぉっ!?――上条さんっ!!!」

『チチチチチチチチチチチチチチチチッ――』

38: 2013/05/08(水) 11:06:45.77 ID:19zO7Iut0
――特別教室最上階・ 19時40分

上条(夜の学校って結構雰囲気あるなー。昼間煩いもんだから、余計にか)

上条(つーか一人で突っ込むなんて勇気あるよな、佐天さん。廊下のあちこちに非常灯あるからそこそこ明るいけど)

上条(おっ、あそこだったよな。あれが――)

佐天「『――上条さんっ!!!』」

上条「佐天さんっ!?――待ってろ、今行くっ!」

上条(しまった!『アタリ』なのかっ!?)

上条(魔術師連中が居るって事は――もしかしたらっ『それ以外』も居るかもって事か!)

上条「佐天さんっ!俺だっ!どこだっ!?」

佐天「か、上条さんっ!?ほ、本物ですかっ!?」

上条(個室の中から声?閉じこもってるのか?)

上条「いや、他にいないだろうっ!それより今の悲鳴っ!」

佐天「あ、あたしの事どう思ってますかっ!?」

上条「ちょっと頭が良くない子だと思ってる」

佐天「本物だっ!」 パタンッ

上条「どんな確かめ方だっ!?っておわっ」

佐天 ガシッ、ギュッ

上条(こんなに震えて……何があったんだ?)

佐天「あ、あのっ、あたしっ!ごめんなさいっ、あのっ!」

上条「あーうん大丈夫だ。俺がついているから」

上条「何も言わなくていい。このまま落ち着くまで、こうしているから、な?」 ナデナデ

佐天「……はい」

『……ちっ……』

佐天「上条さん今のっ!?」

上条「何か、聞こえたなぁ。確かに」

39: 2013/05/08(水) 11:07:38.80 ID:19zO7Iut0
佐天「ダメだって!『トイレの時計屋』さんかも!」

佐天「『時計屋』から派生する噂は幾つもあって、中には姿を見たら氏んじゃうとかっ!」

佐天「時計を盗まれたら、寿命が減っちゃうんだからっ!」

上条「――大丈夫だ」

佐天「へっ!?いえっそうじゃなく――」

上条「『時計屋』だろうが、何だろうが――」

上条「佐天さんに手を出そうとした奴は、俺がぶん殴る!だから大丈夫だっ」

佐天「そうじゃなくって!ヒトじゃ多分無理――」

上条「やってみなきゃ分からないだろ?逃げる時も必要だとは思うけど、今はそうじゃない」

上条「何が『時計屋』だ。俺がぶん殴ってきた連中に比べれば相手にもならねぇよ」

上条(一方通行に比べたらどうって事はないし)

佐天「そんなっ!?デタラメだよ……」

上条「――後な、佐天さん。俺は佐天さんにも怒ってんだよ」

佐天「え、えぇっ!?あたしなんか、悪い事しました、っけ?」

上条「暗くなったら俺の側離れるなって、最初に約束したよな?」

佐天「あっ……」

上条「だからもう離れるな。そうすりゃ誰が来ようが守ってやれんだから、なっ?」

佐天「……はいっ!」

40: 2013/05/08(水) 11:08:54.12 ID:19zO7Iut0
――特別教室最上階・封鎖されたトイレ 19時50分

『……チッ……チッ……』

上条「――に、しても聞こえるなぁ。何の音だ、これ?」

上条「無害だけど、音の出所が中々掴めない、つーか移動している?間隔も一定してない?」

上条「ここで佐天さん撫でててもしょうがないし、一度外に出よ――佐天さん?」

佐天「……」 ボーッ

上条(震えは止まったけど、何か様子がおかしい?)

上条「おーい佐天さーん?聞いてる?」

佐天「子供がおっきくなったらパートに行きますっ!」

上条「えっ?」

佐天「えっ?」

上条「混乱しているのは分かるけど、何の話?」

佐天「あ、明るい将来設計、的な?」

上条「うん、俺には関係無いよね?」

佐天「ありますってば!……あっれー……?無いです、よねぇ?」

上条「いや、そうじゃなく一旦外に出よ――って冷たっ!?」 ポツッ

佐天「上条さんっ!?」

上条「あぁいや大丈夫、つーか何?水滴?」

上条「……あ、もしかして――ちょっと佐天さん離れて貰えるかな?」

佐天「嫌ですよっ!」

上条「いや、正面からハグされてると、身動き取れないだけども。あーんじゃ、左手掴んでて?」

佐天 ガシイィッ

上条(コアラが木にしがみつくような感じ……あ、『佐天さん巨O説』って意外と――)

上条(って相手は中一だっ!ちょい前までランドセル背負ってたんだぞ!)

佐天「ど、どうしましたっ?この体勢イヤなんですかっ!?」

上条「……自分に嫌気がした、ってのが正しいけど――まぁ、このまま移動しよう。一回外へ」

41: 2013/05/08(水) 11:09:58.08 ID:19zO7Iut0
佐天「はいっ」 スタスタッ

上条「どう?暑い?寒い?」

佐天「いえ、どちらでも、と言うか中と同じですけど」

上条「んじゃさっきさ、トイレに入った時どうだった?」

佐天「ジメっとしてて、ちょっと暑かったです」

上条「分かった、音の正体」

佐天「ホントですかっ!?」

上条「ん、水滴。天井からの」

佐天「……はぁっ!?いや、そんな訳無いですってば!」

上条「何で?そもそも水道から水漏れした時の『ポチツ』って音に聞こえないか」

上条「台所のシンクとかに当たると高い音が出るけど、タイルとかだとくぐもった音になるしなぁ」

佐天「だってあたしが最初に入ってすぐは、音はしなかったんですよっ!?だったら――」

上条「雲の出来る方法って習った?」

佐天「えっと……冷たい空気と暖かい空気が交わって、って奴ですよね?」

上条「うん。このトイレは閉じられていたから、吹き抜けになってる廊下と違って、温度の変化があんまりなかったみたいなんだよ」

上条「最初に入った時、ムワっとしてなかった?」

佐天「してましたっ!」

上条「そこへ佐天さんがドアを開けたから、外の冷たい空気が入り込んで、水滴がついたのが大きくなったと」

佐天「それでポタポタ落ちてきた、ですか……?」

上条「っていう推測だけどね――ってどうしたの?」

佐天「うがーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!!!」

上条「ちょっ!?」

佐天「何ですかっ!何なんですかっこのオチはっ!?」

佐天「怪談はっ!?七不思議はっ!?都市伝説はっ!?」

佐天「『幻想頃し』で壊してどうするんですかっ!?」

上条「俺の責任っ!?悪いの俺かっ!?」

42: 2013/05/08(水) 11:10:57.30 ID:19zO7Iut0
佐天「あーもうっ!『トイレの時計屋』さんのネタバレしちゃったじゃないですかっ!一体どうやってこの責任取ってくるんですかっ!?」

上条「いや、まぁ、ごめんなさい?」

佐天「いーえっ駄目ですっ!罰ゲームを要求しますっ!」

上条「俺関係無いよねっ!?つーかウヤムヤにしなかったんだから、誉めてくれたって良いんじゃないかなっ!?」

佐天「――っという訳で!上条さんはあたしんちまで送り届ける罰ゲームが発生しましたー!はくしゅー」 パチパチ

上条「いや、送れって言われなくたって送るよ?」

佐天「へっ?」

上条「いや八時過ぎに一人で歩かせるのは可哀想だろ?今日怖かったかも――って痛い痛いっ!?」ペチペチペチペチッ

佐天「何なんですかっ!もうっ!もうもうっ!」

上条「あーうん俺が悪かったら!さっさと帰ろうぜ、な?」

佐天「……さっきの事言ったら酷いですからね?」

上条「実は結構恐が――痛い痛い痛いっ!手の甲をちぎるのは地味に痛いからっ!?」

佐天「むー……」

上条「俺、鍵出して。締めるから――よしっと」 ガチャンッ

佐天「あー、何か疲れちゃいましたねー」

上条「先生が一回職員室まで顔出せつってたから。取り敢えずそっちまで行こうぜ」

43: 2013/05/08(水) 11:11:57.80 ID:19zO7Iut0
――廊下

佐天「……あれ?」

上条「どうした?忘れ物?カメラ――は、持ってるしな」

佐天「あ、そろそろバッテリー切れそう。いっか、切っちゃえ」 ピッ

上条「エンディング撮らなくて良いのかよ」

佐天「いっやーテンションがもう上がりませんって。つーか疲れちゃいました」

上条「明日にでも、もう一回撮る?」

佐天「面倒なんで帰りに校門の前でちゃちゃっと撮っちゃいましょう。10分ぐらいはありますし」

上条「他に忘れ物してんの?」

佐天「あー、いえいえそう言うこっちゃないんですけど、ふと気になったんです」

上条「え、なに?実はあそこにはトイレがなかったとか、そういうのはヤメロよっ!」

佐天「ちょっ!止めて下さいよっ!あたしだって苦手ですってば!」

佐天「いえそう言う事でなく。あたし、上条さん呼びましたよね?」

上条「あー、そうだな」

佐天「何であたし上条さん呼んだんですかね?いつもならパパー、ママーとか、ういはるーとかなんですけど」

上条「俺が近くに居たからだろ。つーかその面子に入れる初春さん凄ぇな」

佐天「です、よね?深い意味なんてありませんよね?」

上条「俺に聞かれてもなぁ。疲れた、さっさと帰ろう」

佐天「何かもうあたしテンション上がりませんてば。あー怖がりすぎて疲れたー」

上条「いや、やっぱ怖がってんじゃん」

佐天「こ、怖がってないよっ!普通だもんっ!」

上条「あーはいはい、良かったですねー」

佐天「きーいーてーくーだーさーいーよおっ!」

上条「地味に痛いから手をつねるのは止めろって!?」

44: 2013/05/08(水) 11:13:11.05 ID:19zO7Iut0
――常盤台女子寮・深夜27時57分

佐天(TV)『来週もまたっ、ボクと一緒に冒険しようなっ!』

上条(TV)『覚えよう?君はもうちょっと懲りる事を覚えような?』

佐天(TV)『では皆さんご一緒にっ、勇気の出る合言葉っ』

佐天(TV)『うっいっはるー、愛っしてっるっぞーーーーーーーーーーーーーーーー!!!』 プツンッ

(TV)【エンディング・テーマ -黄昏時のレイライン-】

御坂「……」

御坂(お、思ったより、怖かったわね!いやっ、怖くないけどっ!)

御坂(つーか佐天さんのリアクション凄かったわねー。台本とかあるのかな?)

御坂(中盤から佐天さん視点でカメラ回ってたから、なーんか、こう、あいつに守って貰ってるみたいな……)

御坂(ぎ、疑似デート感覚、みたいな……?)

御坂「……」

御坂(ぎいにゃああぁぁぁぁぁぁっ!?アーカイブっ!アーカイブ永久保存しないとっ!?) ポテッ

御坂「……」

御坂(でもさ、寄宿舎って事はよ) ムクッ

御坂(明治から昭和ぐらいのお話なんだから、当然水洗トイレじゃないわよね?)

御坂(って事は当時『ちっ、ちっ、ちっ』って聞こえたのは、水滴が原因じゃない訳で)

御坂(『トイレの時計屋』の音の正体も別にある、と?)

御坂(……そもそも佐天さん、最初に鍵開けたっけ……?)

御坂(なーんか気持ち悪いモヤモヤが残るん――)

上条(妄想)『俺の側離れるなって約束したよな?』

御坂「」

上条(妄想)『もう二度と離れるなよ?そうすりゃ誰が来ようが一生お前を守ってやれんだから!』

御坂 コテッ(幸せすぎて気絶)

45: 2013/05/08(水) 11:14:32.87 ID:19zO7Iut0
――特別教室最上階・封鎖されたトイレ 27時59分55秒

『ちっ、ちっ、ちっ、ちっ』

『ぼーん、ぼーん、ぼーん、ぼーん』

『ちっ、ちっ、ちっ、ちっ』

――学園都市七大不思議探訪 第二話 『トイレの時計屋』 -終-

46: 2013/05/08(水) 11:15:37.69 ID:vafjUhJQ0
乙ー!!
最後は微妙にホラーテイストになったなー
にしても御坂さん……映像で満足するよりさっさと告白しないと…

第三話『一人多い』

引用: 佐天「佐天さんの学園都市七大不思議探訪っ!はっじっまっるっよーーー!」