176: 2013/05/21(火) 10:41:48.07 ID:HUPVLlcY0

178: 2013/05/21(火) 10:43:00.82 ID:HUPVLlcY0
――某ケーブルテレビ局編集 0時10分

ジリリリリリリリリリリッ

局員「火事だっ!急いで避難しろ――編集なんて放っとけ!マスターはストレージに保存してあるだろ!」

局員「まだ見てない?別にどうだって良いだろうがっ!急げっ!」 タッタッタッタッ

……

ヒュッン、ストン

結標「えっと……?」

結標「これ、よね?」 カチッ

ドォンッ!

結標「お疲れ様」 ヒュンッ
とある魔術の禁書目録 31巻 (デジタル版ガンガンコミックス)
179: 2013/05/21(火) 10:44:12.84 ID:HUPVLlcY0
――路上 0時11分

結標「……」

結標(テレビ局から盗めって言われたけど、映っちゃいけないものでも映っちゃったのかしらね?)

結標(問題あるなら圧力掛ければいいのに、非効率的だと思うけど)

結標(報道系じゃない、しかもローカル系のテレビクルーが何撮ったってのよ)

結標「……」

結標「……ふむ」 カチッ(携帯電話にメモリーカードを差し込む)

結標(ウイルスは……ある訳ないか。動画を合計すると4Gちょい)

結標「うーん……?」

結標(『対抗手段』になるとは思えないけど……まぁいいか) ピッ

180: 2013/05/21(火) 10:45:41.90 ID:HUPVLlcY0
――未編集の動画 P2070100 何処かの山道

佐天「あー、迷っちゃいましたね、うん」

御坂妹「どうするのですか?とミサカは責任の有無を問うてみます」

上条「俺じゃねぇだろっ!?オマエラが勝手に『取り敢えずカメラ回しましょっか』って突っ込んだんだからな!」

佐天「いやでも普通の道ですし、歩いていけばどっか着きますって、ねぇ?」

御坂妹「それは迷子になる時の最悪のパターンだな、とミサカは懸念を表明します」

上条「GPSも動かねぇし、つーか動画撮ってる場合じゃねぇよな?」

佐天「ブレアビッ×みたいで燃えるぜっ!」

御坂妹「いえ、その名前だと『売女のブレアさん』と言う意味になるとミサカは指摘します」

上条「燃えないしツッコミも不適当だよっ!?下手すれば身体の危機が迫って居るんだからなっ!」

御坂妹「……?」

上条「どした?」

御坂妹「いえ、今ネットワークに揺らぎが起こったような、とミサカは不安を隠しながら言ってみます」

上条「……おいおい。シャレになってねぇぞ。食べ物なんかチョコとポカ○ぐらいしか持って来てないし」

182: 2013/05/21(火) 10:46:49.84 ID:HUPVLlcY0
――路上 0時13分

結標「……?」

結標(普通の動画よね?学園都市内の極秘施設を映したって話でも無いでしょうし)

結標(んー……?)

183: 2013/05/21(火) 10:47:49.50 ID:HUPVLlcY0
――未編集の動画 P2070101 何処かの山道

ミーシャ「問一。貴方は甘味を提供する意思はあるのか」

上条「あー、あるけどさ。一応カ口リーだから遭難した時のためにとっといた方がいいだろ」

ミーシャ「……」 ジーッ

佐天「あ、大人げないですよー?欲しいって言ってるんだから、ねー?」

ミーシャ「正答。貴方の意見に同意する」

上条「ああもうっ!分かったよ、ちょっとだけだからなっ!」

ミーシャ「貴方に感謝する……銀色?ピリピリする」

上条「噛むな噛むなっ!それは剥いて食べるんだっ」

佐天「やだ、えOちっ!」

御坂妹「卑猥な表現を好む、とミサカはネットワーク内に送信しました」

上条「助けてーっ!?ボケに対してツッコミの数が足りてないよっ!」

ミーシャ「これは……っ!」 モグモグモグッ

上条「一息で全部食うなよっ!大事に食べなさいよっ!」

184: 2013/05/21(火) 10:48:57.74 ID:HUPVLlcY0
――路上 0時15分

結標(ただのコント撮影してるだけ?)

結標「……」

結標「……あれ?」

結標(今、一瞬で昼間から真っ暗になった……?)

結標(カメラの故障よね、きっと。露出補正が壊れたのか)

185: 2013/05/21(火) 10:50:16.90 ID:HUPVLlcY0
――未編集の動画 P2070102 何処かの山道

ミーシャ「貴方に感謝する」

上条「あーもう口の周りベッタベタにしてさっ!子供かっ」 フキフキ

ミーシャ「解答一。私達は例外なく神の子である」

10031号「そんなにお腹が空いているならこれをどうぞ、とミサカは用意して来たおはぎを差し出します」

上条「お、おぉ?ありがとう」

佐天「あ、おいしそうっ。私も頂いて構いませんかね?」

御坂妹「……?」

10031号「いえいえ感謝には及びませんよ、とミサカは内心ニヤリと笑います」

上条「どういう意味?」

木原数多「食うんじゃねぇよクソガキども。そいつぁ『ヨモツヘグイ』だ」

御坂妹「ネットワークで検索――『氏者から饗(きょう)される食べ物』との結果が出て来ました、とミサカは報告します」

数多「能力者がオカルトの研究してんじゃねぇよ」

御坂妹「いえ、これは16666号の私的な報告書ですが、とミサカは答えます」

佐天「『ヨモツヘグイ』って何なんですか?」

数多「『生者は氏者の食い物に手を出すな』ってぇ考えだ。要は共同体の外と中の関係を示してんだよ」

数多「いいかぁ?テメェが結婚してそいつんちへ嫁いだとする」

佐天「いぇーいっ!上条(確定)涙子誕生ですねっ!」

上条「しないからね?グイグイ来られても引くだけだからな?」

数多「でも実はソイツんちにゃローカルルールがある。例えば『カレーには納豆』とかな」

御坂妹「流石にそれはミサカもちょっと引きますが、愛のためであれば我慢出来るぜ、とミサカはアピールしてみます」

ミーシャ「問二。ナットウとはなんなのか」

佐天「日本の発酵食品の一つですね。大豆に納豆菌を掛けて発酵させた食べ物です」

上条「入れないよ?そんなローカルルール無いからなっ」

数多「でも一度嫁いじまったからには、黙って納豆カレー食えよ、ってこったな。」

数多「要は『不可分領域』――『自分達以外の共同体にはルールを持ち込ませず、また他へも持ち込むな』ってぇ話だ」

10031号「余計な事を、とミサカは内心毒づきます」

数多「ウルセェよ。麓行きてぇんだろ?さっさとついてこいガキども」

187: 2013/05/21(火) 10:52:33.31 ID:HUPVLlcY0
――路上 0時20分

結標(新しい男の声?随分変わった面子で山に登ってんのね)

結標(相変わらず真っ暗でオート補正が効いてない)

結標(何も見えないし)

188: 2013/05/21(火) 10:53:25.99 ID:HUPVLlcY0
――未編集の動画 P2070103 何処かの山道

数多「んで?お前らなにやってんだ」

上条「『後追い小僧』ってのを取材しに来たんだよ」

佐天「何となくで突っ込んでみましたっ!」

御坂妹「私は止めたのですがやれやれですね、とミサカは首を振ってみます」

上条「嘘は良くないからね?成長しているのは嬉しいけどもだ!」

数多「あー……『後追い小僧』ってのは、昼間の午後から深夜に掛けて出る、とされている――」

佐天「あ、調べてきました!」

数多「言ってみ?」

佐天「えっと、ですね――タッチ!」

上条「丸投げかっ!?」

御坂妹「山中を歩き回る者の後を追い掛け、時には道に迷った者を先導し、家まで送り届ける、とミサカは説明します」

佐天「あーそれです、それ。だから村の人はお礼に食べ物を置いてくるんですよね」

数多「『行き逢い神』だな」

上条「神様なのか?そんなにほいほい居ないだろ?」

数多「バカが。テメェは本質を見誤ってる」

189: 2013/05/21(火) 10:54:36.93 ID:HUPVLlcY0
数多「こう言う連中に対抗する――理解するためにゃ、相手をバラすんだよ」

数多「持っている特性を切り離して、それぞれに既存の事象に当て嵌める」

数多「でもって最後にそいつを組み合わせりゃ、対抗策の一つでも浮かんでくる」

数多「鬼神だろうが別天津神だろうが、所詮は何かの何処かの影響を受けている。ましてやこの国にゃ神を頃す方法が残されてんだろうがよ」

数多「まずこいつの特性は『道』だなぁ」

数多「大抵の日本人は近代になるまで一生一度も遠出する事無く氏んだんだ」

数多「そいつらにしちゃ『村落共同体の外』ってぇのは『異界』なんだよ」

佐天「デビルサマナ○でイカイカしましたっ!」

数多「あれもまぁある意味正しい。『人が本来住むスペースの中が変質して悪魔が出る』――まさに、異界の本質だぁな」

佐天「あ、あれ?ボケが肯定されちゃった?」

上条「君は自制しよう、色々な意味で」

数多「なんつーかなぁ、昔の人間にとって『村の外』ってのは『異界』であり、『日常』じゃなかったんだ」

数多「そんな場所を通りゃバケモノの一匹でも出て来るだろうよ」

190: 2013/05/21(火) 10:56:48.00 ID:HUPVLlcY0
数多「お前は氏んだら魂がどこへ行くと思う?」

上条「さぁ?」

御坂妹「人に魂などありませんよ、とミサカは自虐的に呟きます」

数多「まぁお前らはそうだろうが、昔の連中はそうは思わなかったんだな、これがよ」

数多「海が近ければ海の彼方の常世の国へ、山が近ければ山頂の賽の河原からあの世へ」

ミーシャ「解答二。人が身罷れば、いと高きあのお方の御元へ召される」

数多「テメェの神はそうなんだろう。だがな、『どこを通って行く』んだ?」

数多「天使じゃあるまいし、羽なんざ無ぇ人間様はよぉ。歩いて、もしくは流れてあの世へ行くんだよ」

数多「だから人は墓を町外れに造る。氏人が町の外へと行きやすいように」

数多「だから人は墓を海岸に造る。氏人が海の彼方へと還りやすいように」

数多「だから人は墓を山に造る。氏人が山の中の河原からあの世へ戻るために」

数多「『氏んだ人間は道を通ってあの世へ行く』って信仰だぁな」

数多「テメェらも工口ヒムが黒い竜を切り離す前までは『大地母神信仰』が一般的だったよな?」

数多「洞窟や海に屍体を埋葬する――つまり『母なる大地へ還す』方がメジャーだったんだよ」

佐天「当然、そこ――つまり『村の外の道』とは『異界との接点であり、普段は有り得ないモノと行き逢う』ですか?」

数多「『道』に関する答えとしてはそれが妥当だろうよ。道に居たりてヒトを惑わす、それ即ち――『行き逢い神』と」

191: 2013/05/21(火) 10:58:06.83 ID:HUPVLlcY0
数多「んで、二つ目の特性は『氏人』だな。本人の特性プラス『行き逢い神』としても『氏人』を持っている状態だ」

上条「つまり『後追い小僧』の場合だと、氏んだ人間が村の外に留まっている、って考えるべきなのか?」

数多「そして生きている人間を見守っている、ってぇ概念も含まれている」

数多「が、それはイレギュラーな事だ。だから村の“外”に居るしかないんだよ」

佐天「怪異が起きるのは『異界』、って事は後追い小僧もそこに居なければ出ては来れない、ですか?」

数多「しかもこいつぁ『氏人』だ。『氏人』ってのは『帰ってくる』特性も持つ」

上条「いやいやいやっ無いだろっ!」

数多「テメェは盆と正月に何やってるクチだよ?正月の方は廃れっちまったが、盆――盂蘭盆(うらぼん)の方は先祖霊を迎える期間だろうが」

数多「この国の信仰の特性として『氏人が特定の日に帰ってくる』ってのは珍しくねぇ」

数多「だが逆にだ。『常駐するのは有り得ない』ってのもまた真実なんだよ」

数多「お前らにルールがあるように、俺達にもルールがあるんだ」

数多「よく考えろ。『後追い小僧はどうして特定の場所に出現する』のか」

数多「幾ら当時の深山が異界だっつっても、限度ってぇのがあるだろうがよ」

上条「……そこから、出られない?」

数多「もっと突き詰めろ。出られない、移動出来ないのは『何故』だ?」

佐天「うーん……お父さんお母さん、ですかねぇ。あたしだったら弟とかも見守っててあげたいですし」

数多「大正解。商品に木原印のレベルアッパーをやろう」

佐天「ありがとうございますっ!」

上条「無茶すんなっ!つーか何で持ってる!?」 パキイィンッ

数多「『後追い小僧』を『その場に留めたのは誰』だ?そりゃつまり――」

数多「――『子供を失って悲観している両親』に他ならねぇだろうが」

192: 2013/05/21(火) 10:59:38.09 ID:HUPVLlcY0
――路上 0時34分

結標(小難しい話してんのね。つまり、まとめると)

1.当時は一生村から出ない人間が殆ど
2.当時の宗教観では『村の外=異界』
3.従って当時の人間にとっては、山道は何が起きてもおかしくなかった

結標(でもおかしいわよね?だったら『後追い小僧を自分の子と思う理由がない』筈よ)

193: 2013/05/21(火) 11:00:44.64 ID:HUPVLlcY0
――未編集の動画 P2070104 何処かの山道

数多「最後の特性は『子供』だ。要は『早く氏んだ』って事の抽象化であり、だ」

上条「待ってくれよ。確かに子を亡くした親は悲しいだろうけど、それは他の身内が氏んでも同じだろ?」

数多「あぁだから『盆と正月に帰ってくる』事にして、俺達は正気を保ってきたんだ……いや、正気かどうかは怪しいがな?」

数多「『アイツは氏んだが、その内また帰ってくる』って信仰は結構ある」

上条「だったらその親だって、特定の時期に迎えてやれば良かったんじゃないのか?」

上条「先祖へ対して迎え火をして家を招くように、村の“中”でさっ!」

数多「出来ねぇからだよ、そりゃ」

上条「どういう意味だ?」

数多「『とうりゃんせ』ってぇ唄知ってるか?」

佐天「とーりゃんせー、とー――」

数多「唄うなバカっ!雨降に引っ張られんぞ!」

佐天「ご、ごめんなさい?」

上条「何で今怒ったんだよ」

数多「その歌詞の中に『この子の七つのお祝いに』ってぇ言葉が入る。それは『七つ子サマ』信仰の名残だと言う説がある」

数多「昔のガキってぇのは兎に角氏にやすかった」

数多「病気や流行病もそうだが、それ以上に栄養状態が宜しくねぇんだよ。尤も、大の大人ですら飢饉でバタバタ氏んでった時代だが」

数多「だから当時の人間はこう考えたのさ――『子供が七つになるまでは、カミサマからの預りモノである』ってな」

上条「安定して育つまでは大事に扱うって事か?」

数多「だけじゃねぇよ。『人じゃないからいつお帰りになってもおかしくない』ってぇ、氏んじまっても、大した事ぁ無ぇように振る舞ってたんだ」

数多「氏んでも葬式を上げられないし、供養もしてやれない」

数多「そして人じゃねぇからあの世にも行けない――だから、当然盂蘭盆に帰っても来ない」

佐天「そんなっ!?酷いです!」

数多「そうだな。『だから連中は行き逢い神の中に自分達の子供を見た』んだよ」

佐天「……あ」

数多「ガキがおっ氏んだ馬鹿な親は、『後追い小僧』にテメェらのガキの姿を重ねたんだよ」

数多「あの世にも行けねぇウチの子は、きっと自分達を見守っている筈だ、ってな」

数多「そういった意味で、そっちのチンチクリンは本質を突いている」

上条「……悲しい、話だよな」

数多「そしてお前は何一つ理解しちゃいねぇ」

194: 2013/05/21(火) 11:01:53.63 ID:HUPVLlcY0
上条「何だよ」

数多「そいつぁ『救い』なんだよ。『供養も許されなかった自分達の子供が、姿を変えても自分達を見守っていてくれてる』ってな」

数多「カミサマやホトケサマだってそうだろうが?存在すらしない連中に縋り付いて、今日の現実を乗り切る」

ミーシャ「提言一。暴言は看過出来ません」

数多「前だけ向いて生きて行かなきゃならない、なんて誰が決めた?」

数多「過去にしがみつき、囚われて生きる事の何が悪い?」

数多「テメェはそんな親どもの『幻想』も砕こうってのか?――自惚れんなよ『幻想頃し』」

上条「それはっ!」

数多「ってな訳で今までの特性から『後追い小僧』を再構成してみろ」

佐天「はい、まずは『行き逢い神』ですね。異界である道でばったり出くわす、ヒトではない存在」

上条「次は『氏人』か。氏んでいるにも関わらず、元居た生活圏から離れられない」

御坂妹「……最後は『子供』てすね、とミサカは姉妹を見て頷きます」

数多「それを時系列順に並べる――っつっても無理か。面倒臭ぇな」

上条「どうすれば分かるんだ?」

数多「フィルタリングだな」

数多「リンゴがあったとする。持っている特性は『赤い』・『甘い』・『果物』だ」

数多「その三つを『広範な特性順から並べて』みろ」

佐天「まずは『果物』でしょうね。種族というか種別というか。似たような果物はいっぱいありますし」

佐天「次は『赤い』でしょうか。『赤い果物』は結構あります、し?」

佐天「最後は『甘い』ですかね。酸っぱい品種もあるって聞きますから」

数多「なんつーかなぁ、住所も同じだ。国・県・町・番地ってぇ感じに『大きい所から捜す』ってのが基本だ」

上条「番地から捜しても見つからないよな」

195: 2013/05/21(火) 11:03:01.88 ID:HUPVLlcY0
数多「『後追い小僧』の特性を『広く知られている順』」でやってみろ」

上条「『行き逢い神』は、最初だよな?神って言われているぐらいだし」

佐天「『子供』と『氏人』はどちらが先でしょうかね?」

上条「『氏人』は子供だけとは限らないだろう。だから」

佐天「『行き逢い神』・『氏人』・『子供』の順ですかね」

上条「つーか最初から並んでたんだよな?」

数多「どうせ氏人の戯言だ。別に気にするような奴ぁ居ねぇよ」

数多「恐らく最初にあったのは『行き逢い神』としての存在だな」

数多「『送り狼』やら『ヤマイヌ』と同系統の『食べ物を饗せば助けになる』神性だ」

数多「それが『守ってくれている』と言う特性が特筆され、次第に『ならばあれは氏んだ身内ではないのか?』ってぇ認識が広まり」

数多「斯くして『幼くして氏んだ我が子』と言う現在の姿になっちまった、ぐらいの話だ」

佐天「つまり『後追い小僧』とは『自分の子を亡くした両親が、普段は通らないような道で見る幻覚』って事ですか?」

数多「概念で言えばそれ“も”あるだろう。ただしそれは『現在の姿』であって、『過去全てがそれであった』ってぇ保証は無ぇよ」

上条「……時代と共に、道で行き逢う神も変化するのか?」

数多「大正解。ケータイ寄越せ、円周のメールアドレス打ち込んでやっから」

上条「その名前は嫌な予感がするからノーサンキューでっ!」

数多「つーか『連中が絶対に普遍的なモノである』なんて考えるから、見誤るんだよ」

数多「神話だろうが伝承だろうが、人から人へ伝えていく内に徐々に本質とはかけ離れるもんだわな」

数多「今でこそ都市伝説だ何だと騒がれちゃいるが、何代か後になれば『民話』として、『後追い小僧』のように残るかもしれねぇな」

196: 2013/05/21(火) 11:03:46.36 ID:HUPVLlcY0
――路上 0時51分

結標(……論文みたい)

結標(山道でするような話じゃないけど、しっくりとは来る、か)

結標「……」

結標(でもオカルト分野の話がどうして禁忌とされるのよ?)

197: 2013/05/21(火) 11:04:36.40 ID:HUPVLlcY0
――未編集の動画 P2070105 何処かの山道

数多「加えて言えば、『後追い小僧』の目撃例として14歳ぐらいってぇ話もある」

数多「この時点で矛盾している――つまり変質してんだよな」

上条「14歳ぐらいなら、まだ小僧って言われてもおかしくないような?」

数多「昔は15で元服する時代だぞ?今なら18、9歳だろうがよ」

佐天「それは、近年になって付け加えられた特性、って訳ですねっ」

数多「まぁ『氏んだ子供を見たい親』だったら、そう見える事もあるかも知れねぇがな」

数多「とまぁ『後追い小僧』ってぇのはそんな感じだな。俺の推測だし、手持ちのデータから現在出せる結論としちゃこんなもんだ」

上条「ここの山は修験者?の霊山だって言われているけど。そっちの絡みは無いのか?」

数多「……あのなぁ。霊山ってぇのはよぉ、どんな山だ?」

御坂妹「神仏を奉った山、もしくは山そのものが信仰対象となる、とミサカは16666号のレポートを音読します」

数多「そいつぁまさに『異界』じゃねぇのか?」

数多「人の住みかよりも一歩踏み込めば、そりゃ何だって出て来そうなもんだけどな」

上条「でも説としては山伏が正体だった、って話もあるけど」

数多「仮にだ。過去の『後追い小僧』が山伏だったとしてだ」

数多「そうすると『テメェの子だと思いこんで、食いモン置いてった親はどう思う』よ?」

佐天「無駄、だったって事ですか」

数多「俺ぁ真相は分から無ぇし興味も無ぇ」

数多「今までダラダラ考察を並べたが、俺自身は無神論者だ。だから全部か全部無駄とは思うぜ」

数多「だが逆に『後追い小僧』だなんだのと、テメェのガキを氏んでまで大事に抱えるバカどもにすれば、だ」

数多「そんな親の用意した供物を、山岳マニアが勝手に食っちまうよりか」

数多「テメェのガキが食って少しでも喜んでくれてる、って思った方が救われるんじゃねぇのかよ?」

上条「そう……だな。その通りだ」

198: 2013/05/21(火) 11:05:31.54 ID:HUPVLlcY0
数多「まぁアレだ。お前らも不用意に山ん中には入らねぇ方が良いぜ」

数多「『後追い小僧』だけじゃねぇ。他にも成仏しそこなかった連中に囲まれて食われるぞ」

数多「何せ山ん中ってのは地元の人間に『異界』――つまり『あの世』だと信じられている場合が多い」

数多「地獄から戻った連中と鉢合わせするかもなぁ?」

上条「そっか。ありがとうな」

数多「けっ、言ってやがれ」

数多「……そぉいや、白モヤシの野郎元気にしてんのかよ?」

上条「あんたの言ってる白モヤシが誰かは知らないけど、俺の知ってる奴はそこそこ元気にやってるみたいだな」

数多「そぉかよ。クソはクソになりに足掻いてやがんのか」

上条「あの子の保護者になってから、随分丸くなったような気がする」

数多「まぁなってみねぇと分からねぇ、ってのはあるよなぁ」

数多「クソだまりの中だと思っていても、そいつぁ管理された檻の中でのヌルい生き方だったり」

数多「ナイフ重火器人質と、何でもアリアリの頃し合いん中に、ボクシングのチャンピオンが乗り込んだってぇ、一番になれる訳がねぇんだよ」

上条「何の話だ?」

数多「闘犬なんてのはまさにそれなんだわな。ガキの頃から手負いのウサギやトリを狩らせて闘争本能を鍛える」

数多「体が出来てくりゃ似たようなレベル相手と戦わせて、頃しに慣れさせる」

数多「歪んじゃいるが、飼い主からすりゃ立派な愛情だと思うがね?」

上条「本気で訳分からねぇよ」

数多「愚痴だよ。俺の講義代としちゃ破格だぜ」

199: 2013/05/21(火) 11:06:43.95 ID:HUPVLlcY0
10031号「あの、お姉様はどうでしょうか、とミサカは控えめに手を上げます」

上条「相変わらずだよ、つーか会っていけば良いじゃねぇか」

10031号「いえ、でも私は帰ってくる資格があるのかどうか分からないのです、とミサカは内心を吐露してみます」

上条「関係無ぇよ。姉妹が会うってのに誰の断りも必要あるかっ!」

10031号「ですが――」

上条「文句言う奴は神様だって俺がぶん殴る。だから、堂々と会えばいいって、な?」

10031号「……はい。ではちゃんとした時期に、とミサカは言葉を濁します」

御坂妹「私達も待っていますから、とミサカは姉妹へ優しい言葉をかけます」

ミーシャ「問三。甘露はまだあるのか」

佐天「えっと……良いですよね?」

上条「良いと思うよ」

佐天「だって!ほら、あのお兄ちゃんフラグ立てようとしているからね?」

ミーシャ「正答。貴方達に感謝する」 モグモグ

上条「してないからねっ!?」

ミーシャ「宣言。次は御元へ必ず還す」

上条「……言葉の意味は良く分からないが、兎に角不吉なモノしか感じられないなっ」

10031号「どうせならばこのミサカのフラグをどうぞ、とミサカは懲りずにおはぎを勧めてみます」

数多「してんじゃねぇよクソガキが。ほれ、あそこが森の出口だ」

上条「おーっ!帰って来れたっ!」

佐天「良かったー、てっきり二度と帰れないのかと思いました」

御坂妹「まぁその時は仲良くサバイバルをすればいいかと、とミサカは前向きな家族計画を提案します」

200: 2013/05/21(火) 11:07:46.99 ID:HUPVLlcY0
上条「時間は……あれ、まだ一時間も経ってないのか」

佐天「そうでしたっけ?なんか半日ぐらい居たような感じでしたけど」

御坂妹「気のせいでしょう、とミサカは素知らぬフリをして話を逸らします」

上条「どういう意味?」

御坂妹「取り敢えず一度お世話になる民宿の方へ行きましょうか、とミサカは提案をしてみます」

佐天「ですかねー。あたしお腹空いちゃったかも!」

上条「今から帰って少し早い夕ご飯になるけど」

御坂妹「ではその後は三人で露天風呂に入りましょう、とミサカはナイスな方向へ誘導をします」

佐天「いいですねっ、家族みたいで!」

上条「お前らもうちょっと人としての恥じらいを持ちなさいっ!」

佐天「今夜は寝かさないぜっ?」

上条「使い方が違うっ!……あぁいや、正しいのか?」

御坂妹「折角予約失敗したフリをして三人一部屋にしたのですから、ここは攻めるべきでしょうか、とミサカは葛藤します」

上条「お前何やってんのっ!?つーか不自然だったのはお前の仕業かよっ!?」

佐天「ナイスですっ、ミサカ妹さんっ」 ハイタッチ?

御坂妹「ふっ、ミサカの成長を舐めてはいけません、とミサカは勝ち誇ります」 ハイタッチ!

上条「お前らもうちょっと大人になりなさいよっ!巫山戯るにも程があるからねっ!」

佐天「なぁに言っているんですかぁ」

御坂妹「わたし達を大人にするのはあなたの肉ぼ――」

上条「言わせねぇよっ!これ以上局の人に心労は掛けられな――」 プツンッ

201: 2013/05/21(火) 11:08:41.41 ID:HUPVLlcY0
――路上 1時

結標(最後まで見たけど。特に怪しい所はなかったわ)

結標(麓に着いた瞬間また明るくなったけど。それぐらい?測光がおかしくなっただけなのかも?)

結標(と言うかこれ、そもそもロケとして失敗してるわよね。殆ど真っ暗だったし)

結標(別に壊す程の価値も無い――暗号化されているとか、そういう話なのかしら?)

海原「どうも、こんばんは」

結標「あんたが引き取り役だったの?随分遅かったけど」

海原「すいません、ちょっと聖地巡礼をしていまして」

結標「ふーん?これメモリーカードだけど、何もあやしい物は映ってなかったわよ」

海原「そうでしょうね、それは。『何も映っている訳がない』んですから」

結標「何を言ってるの?」

海原「戯言を少し。では――はぁっ!」 パイキィンッ

結標「別に壊すんだったら、あんたを待つ必要は無かったんだけど。余計な手間じゃない?」

海原「念のため、ですよ。下手をすれば手間がかかってしまうかもしれませんし」

結標「しかしあんたも思い切った事するわよね」

海原「いえいえ、プロとしては当然の事をしたまでで――」

結標「御坂さんの出ている動画を壊すなんて、ね?」

海原「」

結標「あ、ストレージの方はクソメガネが物理的に壊す、って言ったから。もう終わってるでしょうけど」

海原「うそおおおおおおおおおおおぉおおおんっ!?」

結標「じゃ、良い夜を」 ヒュンッ

海原「何故先に言わなかったんですかっそれを!?」

海原「?」 キョロキョロ

海原「逃げやがった!?あんのババアっ!」

海原(いけませんね!これは一度直接乗り込まないと)

――学園都市七大不思議探訪 失章~木原数多の鬼神解体~ 『後追い小僧』 -終-

202: 2013/05/21(火) 11:11:12.09 ID:zEsnlZ090
乙ー
最後の最後で海原wwwwww


キーホルダー争奪戦

引用: 佐天「佐天さんの学園都市七大不思議探訪っ!はっじっまっるっよーーー!」