1: 2013/03/15(金) 21:41:41.70 ID:l5AcOoEYo

ほむら「……また、何時もの白い天井から始まる、新しいループ」

ほむら「何度繰り返してもワルプルギスの夜が倒せない……」

ほむら「誰にも頼らないって強がっても、無理なものは無理」

ほむら「……」

ほむら「今回の一ヶ月は、仲間作りに全力を尽くす事にしましょう」

ほむら「ただの協力関係にあるだけでない、本当の絆で結ばれた仲間……」

ほむら「そのために必要なのは……」

ほむら「高い確率で敵対した挙句、魔女になって まどかを苦しめる
      さやかをも受け入れる『寛容さ』の向上に」

ほむら「いつも言葉足らずで 皆に余計な誤解を招いてしまう『伝達力』不足の改善……」

ほむら「もう、私も繰り返しの中で、長い間生きてきた。何が駄目なのかは分かってるわ」

ほむら「……今度こそ……」



※注意

タイトルはペルソナ4を意識していますが、
ペルソナ4世界に入り込んだほむらの話じゃありません。
ペルソナも使いません、一部が似た描写はありますが。

番長補正のはいった、中身はおばちゃんに近い ほむらの話です。
明らかなキャラ崩壊しています

VIPで落ちたスレですが、
折角書き上げてはいるのでスレ借りて投下させてもらいます。

のんびりやってくのでお付き合いくださると幸いです

もう誰にも頼らない

2: 2013/03/15(金) 21:42:40.10 ID:l5AcOoEYo

…………見滝原中学校。
その中の、ガラス張りの教室の中。
朝のホームルームがはじまる。

いつもの様に、女教師・早乙女和子が転入生である私を紹介する前に、
意味不明なことを喚く。

1人の男子生徒に飛び火した後、ようやく私の話題となった。

和子「はい、あとそれから、今日はみなさんに転校生を紹介します!」

和子「ただれた都会から地方都市に飛ばされてきた上、
    この地の病院に半年間も入院していた哀れな子……

    いわば、落ち武者よ!」

ほむら「誰が落ち武者よ」


何時もの様にという表現は前言撤回することとする。

和子という女教師は自分の感情の赴くまま
話が脱線する事は しばしばだったが、

目の前の、しかも初対面に近い相手を
クラスメイトの面前で罵倒する事はなかった。

内心 首をかしげていると、
視界の隅で青いのが立ち上がり、大きな声を上げた。

???「ああああーーーっ!!! ほむほむ!」

ほむら「誰がほむほむよ」

青いのが喚いた後、少し弱気そうな、
しかし聞くものを和ませる柔らかな声があがる。

???「さやかちゃん、今 ホームルーム中だから、迷惑だよ。
     ほむらちゃんも困ってるじゃない」

3: 2013/03/15(金) 21:43:20.82 ID:l5AcOoEYo

和子「あら、すでにクラスメイトに知り合いがいるのね」

ほむら「はい、病院でちょっと……」

和子「成程、上条くんですね……
    さすが、ただれた都会から来た女。手が早いわね……」

ほむら「……」

和子「……一部の子は既に知っているようですが、落ち武者さん、自己紹介を」

ほむら「……落ち武者でも、ほむほむでもない、暁美ほむらです。

     ただでさえ、転校生としてここの事を知りませんし、
     半年間入院していた所為で色々ご迷惑をおかけする事もあるかと思いますが……

     一日も早く、ここの学園生活に慣れるよう頑張りますので、
     皆さん、これからよろしくお願いします」

和子「よし、自己紹介終わりね!
    さあ、貴方の席は……」


女教師が空いてる席に私を誘導する間、
さきほどの2人のクラスメイトはこちらに手をパタパタ振ってくれる。

ちょっとドジでのろまっぽいけれど、
癒し系のかわいい、超絶かわいい子が鹿目まどか。

青いのが、美樹さやか。

女教師が察した通り、同じ病院に入院していた上条恭介という少年を通し、
この二人とは接触済みである。

……席に着き、静かにその時の事を思い出す。

自分の病室を間違う振りをして、
私が上条恭介の病室に居座ったのだ。

ある意味 一番厄介な、さやかの問題を解決する為に。

4: 2013/03/15(金) 21:44:43.46 ID:l5AcOoEYo

「あんた、何もかも諦めた目をしてる

 いつも空っぽな言葉を喋ってる。今だってそう

 あたしの為とか言いながら、ホントは全然別な事を考えてるんでしょ?

 ごまかし切れるもんじゃないよ、そういうの」


……何周目のループかは忘れてしまったが、美樹さやかに言われた言葉だ。

妙に鋭い所のある あの娘のこと。

前と同じような対応では 見透かされるのがオチだろう。

数々のループであった対立さえ無視すれば、
青いのだって悪い娘ではない。

うざいけど。

今度の私はまどかだけじゃない、目の前の人……美樹さやかや 上条恭介

2人のことを見すえた上で進めようと思う。


ほむら「……病室、間違えてごめんなさいね」

ほむら(まあ、病院自体違うし、わざとだけどね)

恭介「いや、構わないよ。誰もいなくて、退屈していたところだし……」

ほむら「上条くんは、私と同い年くらいにみえるけど、中学生?」

恭介「うん。見滝原中学の2年生」

ほむら「そう、偶然ね。私、退院したらそこの中学に転校する予定なのよ」

恭介「へぇ、そうなんだ」

ほむら「学年も一緒ね。もしかしたら、同じクラスになるかもしれないわね」

恭介「そうなったら、よろしくね。友達も紹介するよ……」

5: 2013/03/15(金) 21:45:12.25 ID:l5AcOoEYo

恭介「あ、そうだ!」

ほむら「?」

恭介「たぶん、もう少ししたら、友達が僕の見舞いに来てくれると思うんだ」

ほむら「へぇ、仲がいいのね。男の子?」

恭介「いいや。女の子だよ。幼馴染と、その親友の子」

ほむら「へぇ……興味が湧いたわ。私、ここで待っててもいい?」

恭介「いいよ。検診とか問題ないなら、話し相手になってよ」

ほむら「ええ。私でよければ……」



中学の事について、全く知らない振りをして
上条恭介に質問する。

そんな風にして時間を潰していると、
突然 扉が勢いよく開いた。


さやか「可愛い女の子かと思った? 残念、さやかちゃんでした!」



さやか「……って、あれ……っ!? 本当にかわいこちゃんがいるんですけど!」

6: 2013/03/15(金) 21:48:55.77 ID:l5AcOoEYo

まどか「さやかちゃん……かわいこちゃんって氏語だよ……」

さやか「恭介、この子だれっ???」

恭介「今度 うちの中学に転校してくる暁美ほむらさん」

ほむら「なるほど、この子が美樹さんか……」

さやか「えっ? 私を知ってるの?」

ほむら「はい。とっても元気ないい子だって、上条くんから聞いたところよ?」

さやか「えっ? そ……そう? いい子?」

恭介「ちょっと! 暁美さん、何言ってるんだ!」

ほむら「……? あなたから聞いた内容を纏めると、そう聞こえたのだけれど……
     違うのかしら?」

恭介「……はぁ。ち、違いはしないけどさ……」

さやか「え、えへへ……」

ほむら「それから、あなたが、鹿目まどかさんね。よろしく」

まどか「あ、うん。よろしく。私の事も聞いてるんだ」

ほむら「ええ、今日 上条君のお見舞いに おそらく二人が来るって聞いたから
     もうすぐ転校する身としては、挨拶しておこうと思って」

まどか「そっかぁ、わざわざありがとね!」

さやか「そっか、転校生なんだよね、よろしく。
     暁美さんは……恭介と、元々知り合いなの?」

ほむら「いえ、私も病院に入院中だったのだけど、うっかり病室を間違えちゃって……」

ほむら「上条くんとは、今日は初対面。
     話しているうちに、偶然、同じ中学になることが分かったから……」

さやか「そっか、なんだ……」

7: 2013/03/15(金) 21:49:51.69 ID:l5AcOoEYo

ほむら「……」

さやか「……」

ほむら「……安心してる?」

さやか「へっ!? な、なんでっ!?」

ほむら「鹿目さん…… 彼女、これで隠せてるつもりなの?
     初対面の私でも分かったわよ?」

まどか「てへへ……、さやかちゃん達は、ちょっと鈍い所があって……」

さやか「ええっ!? まどかまで 何言っているの!?」

恭介「……? さやかちゃん達には、僕も含まれてるのかい……?」



真っ赤になって何やら必至に弁解している美樹さやかに、
対照的に分からない風な上条恭介。

彼女達が嫌がるギリギリの線を越えないよう、
その二人を煽り続けた。

まどかが、時計を気にし始める。

それを見て、煽るのが楽しくなりつつあった自分の気持ちを抑え、
この場を切り上げる事にした。

8: 2013/03/15(金) 21:50:18.02 ID:l5AcOoEYo

ほむら「……そろそろ、検診の時間ね。病室に帰らないと」

さやか「おっとぉ! こんな時間。さやかちゃんも そろそろ帰らないと」

まどか「それじゃ、お開きだね」

恭介「さやか、鹿目さん。お見舞いありがとうね。
    暁美さんも、また暇なら遊びにきてよ」

ほむら「あら? 美樹さんの前でそんな事言っていいの?」

さやか「こらあああっ! だから、そんなんじゃないの!」

ほむら「……転校前から、こんなに弄り甲斐のありそうな人と知り合えて良かったわ。
     美樹さん」

さやか「いい性格してるわ、暁美さんって……」

ほむら「……ほむら」

さやか「ん?」

ほむら「もし良かったら、ほむらって呼んで欲しいわ」

さやか「あ! うん、ほむら。私の事もさやかでいいよ」

ほむら「ありがとう、さやか。鹿目さんもいい?」

まどか「うん! よかった、仲間外れにされなくて。ほむらちゃん、まどかって呼んで?」

ほむら「あらやだ。まどか、仲間外れだなんて……ないわよ。可愛いわね、この子……」

まどか「えっ、か、かわいい? ……てへへへ」

さやか「ふふん。まどかは私の自慢の嫁なのよ」

まどか「もう、さやかちゃんたら」

9: 2013/03/15(金) 21:51:04.03 ID:l5AcOoEYo

ほむら「私も嫁にしたくなってきたわ」

さやか「だめだー、まどかは渡さん!」

ほむら「ですよね。それなら、まどかの2号さんならどう?」

さやか「それならよし!」

まどか「もー……二人とも……」



まどかと美樹さやかと一緒に、上条恭介の病室から退室した。

その日は、それで終わり。

夜に病院から抜け出し、虐待される幼女を助けたりとか色々とやったが
さやか達とは関係が無い。


それからまた翌日、私は上条恭介の病室にお邪魔し、煽っていた。

10: 2013/03/15(金) 21:51:46.76 ID:l5AcOoEYo

ほむら「いいわね、上条君。私も恋人でも居れば、入院生活も少しは楽しいだろうに……」

恭介「……えっと、何度も言ってるけど、僕とさやかはそんなんじゃ……」

ほむら「……ふーん、そうなの」

恭介「そうだよ」

ほむら「……実際、さやか、貴方に好意を持っていると思うけど?」

恭介「からかわないでくれよ。そんな訳がない」

ほむら「そうかしら?」

恭介「そうさ。僕みたいな軟弱な男……さやかがそんな風に思うはずがない」

ほむら「えっ?」

恭介「……なんだよ、その顔。鳩が豆鉄砲くらったような」

ほむら「それ、本気でいってるの? あんなに甲斐甲斐しくお見舞いに通っているのに」

恭介「さやかは……優しいんだよ。
    バイオリンしか特技の無い僕が、それすらも無くなって 元気をなくしている。
    それを心配してくれているんだ」

ほむら「……」


上条恭介は、美樹さやかに対して強い劣等感を持っていたらしい。

頭がいいとはいえないけれども、元気一杯で
クラスの中でも目立つ存在の美樹さやか。

決して根明とはいえない 上条恭介なら、
そういう気持ちがあっても不思議はない……か?

この時間軸で 初めて知った。

今まで、上条恭介と親しく話そうとした事など なかったのだから……。

11: 2013/03/15(金) 21:52:58.63 ID:l5AcOoEYo

ほむら「……私を基準にして考えれば……」

恭介「……」

ほむら「中学二年生の女の子よ?
     勉強に、部活に、遊びに、恋愛。やるべき事、やりたい事が一杯ある」

ほむら「そんな時に、同情で毎日の様にただの幼馴染の為に病院に通うと思う?」

ほむら「CDだって一、二枚買うだけで
     普通の中学生の女の子は月のお小遣いが吹っ飛ぶの」

ほむら「色々と犠牲にした上で、貴方と一緒にいる事を選ぶさやかは、
     本当に凄い努力をしていると思うわ。」

恭介「……だから、それは さやかが優しいからなだけだって!!!」

ほむら「……そう」

恭介「君はさやかが僕の事を好きだって言いたいらしいね!
    そんな事があるはずがない!」

恭介「あいつは何時だって元気で、まっすぐで友達想いで……
    それと比べて、僕には何も無いじゃないか……」

ほむら「……」

ほむら「本当に?」

恭介「……」

12: 2013/03/15(金) 21:54:00.35 ID:l5AcOoEYo

恭介「いや……あった。そうだ、僕はあいつに認めて欲しくてバイオリンをはじめた」

恭介「僕にはそれだけだったのに、それなのに、僕はそれすら……失ってしまった」

恭介「今のところ、この手は治るかどうか分からないらしい」

恭介「あいつに認められる事なんて、何もないんだよ……そんな僕を……」

ほむら「……そう。でも、貴方間違ってるわ。何もないわけじゃない」

恭介「何がだよ!」

ほむら「貴方、さやかの事が好きだったのね。誰にも負けないくらい」

恭介「……えっ」



上条恭介の頬は 心なしか赤く染まっているようだ。

見当外れの事を言った訳でもなかったらしい。


ほむら「……上条君、否定しないのね」

恭介「……あ、その……友達として、幼馴染として、僕は……」

ほむら「そう……。本当に?」

恭介「……」

13: 2013/03/15(金) 21:54:33.42 ID:l5AcOoEYo

ほむら「あの子の気持ちが信じられないなら、
     今度見舞いに来てくれたときに、聞いてみるといいわ」

ほむら「「さやかは僕の為にどうして、こんなに尽くしてくれるんだい?
      友達だから? 幼馴染だから? それとも、僕の事好きでいてくれるのかい?」って」

ほむら「あの子は恋愛ごとはへたれ、
     そして貴方が真剣に聞けば、嘘はつけなくて、否定はしないとみた。
     でも、肯定も出来ない。

     こう、顔を真っ赤にして、あたふたするのが目に見えるわ」

ほむら「本心を晒すのが怖いのよ。
     上条君と一緒」

恭介「……好き勝手、いってくれるよ……」

ほむら(ま、咄嗟の嘘をついてしまうルートに入ってしまったら、
     あの子 自己嫌悪で手の負えないルートに行っちゃいそうだけど)

ほむら「さやかが、私の言ったとおりになったら、貴方達は両想いよ。
     間違いないわ」

恭介「君は僕達と会ってそんなに経ってないのに、なんではっきり断言できるの……」

ほむら「人生経験が違うの。私は人を見る目はあるわ」

恭介「自信満々だな……」

ほむら「あたりまえじゃないの。私を信じなさい」

14: 2013/03/15(金) 21:55:11.05 ID:l5AcOoEYo

恭介「……ははっ…… そうだね、もしさやかが、暁美さんが言うとおりの反応だったら、
    信じる事にする」

ほむら「なるほど。じゃあ、一歩進めるのね?」

恭介「えっ?」

ほむら「相手が動揺していると、自分は落ち着けるものよ。
     普段以上の、勇気を出せると思うわ」

恭介「そうかな」

ほむら「そうよ。うふふ、楽しみだわ」

恭介「……なんで、そう僕達をくっ付けたがるのか」


上条恭介は苦笑しながら、私の提案に否定も肯定もしなかった。

私のやった事が、どの様な結果を生むか、
まだ分からない。

上条恭介に言いたい事だけ言って、その後はまた
別のやるべき事に取り組んでいたからだ。

例えば、とある黒猫を助けたりとか。

青いのの反応を見る限り、
私がやった事に対して問題は起きてなさそうだが……

15: 2013/03/15(金) 21:56:12.43 ID:l5AcOoEYo

――
まどか達と既に友達であった事から、
転校初日の質問攻めイベントをスルーし、2人にくっ付いていた。

そのため、休み時間は平和に過ごせた。

放課後に、見滝原のショッピングモールにあるハンバーガー屋さんにて、
まどか、青いの、それから緑色でウェーブがかった髪質の志筑仁美が一緒に、
私の歓迎会を開いてくれた。


さやか「ほむほむぅーーー!!!! 改めてよろしくね!」

まどか「さやかちゃん、テンション高いね……。ほむらちゃん、私だって、改めてよろしくね」

ほむら「勿論よ。これからはクラスメイトとして、友達として、更に仲良くして欲しいわ」

仁美「えっと……私も仲良くしたいですわ」

ほむら「ええ。えっと……仁美さんって呼んでいい?」

仁美「はい! もちろんですわ!」

ほむら「じゃあ、私の事、ほむらって下の名で呼んでね。仁美さん」

仁美「はい! ほむらさん」

さやか「それじゃあ、これからの この4人の友情を願って、かんぱーーーい!」

16: 2013/03/15(金) 21:56:43.79 ID:l5AcOoEYo

4人でジュースのコップをぶつけ合う。

わー、仲の良い友達っぽい、こういうの久しぶりね。

珍しいこの時間の到来に感動をかみ締めつつ、
平静を装った。


仁美「……ふふ。文武両道で才色兼備のクールなほむらさんなので、
    ちょっと近寄りがたさを感じていましたが……

    友達といると、顔がゆるんでくれてますね」

さやか「クールぶってるのに 意外と表情に出るのがいいよね!」

まどか「てへへ、ほむらちゃん、かわいいー!」


ばれてた。そっとしておけ。

見滝原の学校の事や、遊び場所、生活に必要な所など、
知らないフリで色々聞いていく。

その中で、志筑仁美が思い出したように、
私に向き直り、質問してきた。


仁美「そういえば、3人はどこで知り合ったんですの?
    さっき聞きそびれましたが……」

さやか「ふふふ、ほむほむはねー、さやかちゃんの恋のキューピッドなのだー!!!」


仁美「……えっ?」

ほむら「え?」

まどか「えっ?」

17: 2013/03/15(金) 21:58:10.94 ID:l5AcOoEYo

ほむら「さやか、貴方、まさか……」

まどか「上条くんと……っ!?」

さやか「はーい、付き合い始めちゃいました! ほむほむのお陰でね」

さやか「私と恭介の事、色々心配して助言してくれたみたいで」

さやか「そしたら、恭介の方から、その、告白してくれて……」

まどか「ほむらちゃん、すごーーーいっ!」

ほむら「いえ……まさか、こんなに早く進むとは思っていなかったわ。
     思った以上に、貴方達、実は固い絆で結ばれていたのね」

さやか「えーーーっ、そんなことは、まぁ……あるかも……にしししっ」

まどか「さやかちゃん。おめでとうね?」

さやか「ありがとう、まどか!」

ほむら「おめでとう、さやか」

さやか「ありがとう、ほむほむ!」

ほむら「ほむほむ……引っ張るわね……」

さやか「いいじゃん、かわいいから」

まどか「ほむほむ、確かにかわいい。私も呼んじゃおっかな、てへへ」

ほむら「……むー」

18: 2013/03/15(金) 21:59:38.93 ID:l5AcOoEYo

ほむほむ……は、回避したい所だが……

回避策を考える為に
まどかと さやかから視線を逸らしたところで、
ようやく気がついた。

今までの時間軸ではさやかを制し、
いつも上条恭介を勝ち取っていた志筑仁美。

この時間軸では、逆となっている。

志筑仁美の表情は硬い。

しかし、私の視線を感じ取ったのか、
志筑仁美は慌てて 外面を取り繕った。

年齢に見合わない、強い子だ。


仁美「あ、えっと、さやかさん、おめでとうございます」

さやか「ありがとう、仁美!」

仁美「まだまだ、上条君は入院が長引きそうで大変だと思いますが……」

さやか「うん、リハビリとか色々あるしね。私も頑張んなきゃ!」

まどか「おー……、さやかちゃん、燃えてるね?」

さやか「うん、まー、燃え上がっちゃってますね、私。

     恭介、まだ怪我とか治る目処が立ってないし。

     変に浮かれるのは間違いだって思うけど……



     恭介の事、これからは このさやかちゃんが、

     今まで以上にガンガン支えまくっちゃいますからねー!」

19: 2013/03/15(金) 22:01:11.75 ID:l5AcOoEYo

それからも、浮かれまくる 美樹さやか。

はやし立てる まどか。

静かに微笑む志筑仁美。


……しばらくして

志筑仁美は「お茶のお稽古がありますので、ごめんなさい……」
そう言って、席を立った。

それを切欠に、歓迎会はお開きとなった。


さやか「ねぇ、まどか、ほむほむ。これからCD屋に寄ろうかと思うんだけど……」

まどか「いいよ、上条君のだね」

さやか「へへ、まあね」

ほむら「ごめんなさい、私はこの後 用事が入っているの」

さやか「えーー! ほむほむとは ここでお別れ?」

まどか「そっか、残念」

ほむら「ふふ、また明日、ね。残念がってくれるのは嬉しいけど」

さやか「そっか、用事じゃしょうがないよね。またね、ほむほむ」

まどか「また明日。ほむほむちゃん」

20: 2013/03/15(金) 22:02:10.60 ID:l5AcOoEYo

……どうしよう、ほむほむが固定になってしまう。

改善策が思い浮かばないまま、
次の目的地へと、私は向った。


「一般の方 立ち入り禁止」の警告を無視し、
無骨なコンクリートが露出する、一見廃屋の様に見える場所に私は居る。

業務員用の通路だ。

そこを歩いていると、綺麗な金色で、
針金を中央に通したかのような 重力を無視した巻いたツーテールが目立つ
グラマラスな女が立っていた。

一見、中学生には見えない。

中学で一年先輩で、
魔法少女としてはベテランの域に達してる巴マミだ。

無論、ベテランと言っても私ほどではないが。


ほむら「もう、来てくれてたのですね。巴先輩」

マミ「今、来た所よ。使い魔らしい反応も確認したわ」

ほむら「近くに魔女もいるはずですよ」

マミ「……そうね。近いわね。ほんとう、貴女のいった通りね。暁美さん」

ほむら「ちゃっちゃと やってしまいましょう」

21: 2013/03/15(金) 22:03:37.46 ID:l5AcOoEYo

美樹さやかと上条恭介を煽った後、
私は巴マミと良い関係を結ぶ為にも時間を充てていた。

今回は、この場に出るであろう薔薇園の魔女を退治するため、
巴マミと待ち合わせしていたのだ。

巴マミは無駄は多いが、
戦闘能力はすこぶる高い。

結界内に入ると、使い魔を蹴散らし、
あっという間に魔女の元へ。

薔薇園の魔女自体も、私と巴マミのコンビの前では大した敵ではなかった。
1分と経たず、グリーフシードへと変化し、結界は解けた。

……よし、この場では、まどかと美樹さやかに
魔法少女の事を知られずにすんだ。

巴マミも二人の事は知らない。

後は、インキュベーターが余計な事をしなければ……


まどか「ほむら……ちゃん? その格好……それに戦って……?」

さやか「今の、お化けは、一体……」

22: 2013/03/15(金) 22:04:08.66 ID:l5AcOoEYo

……まどかと美樹さやかが 巴マミと接触する前に、

私と既に知り合ってる巴マミと協力して使い魔や魔女を倒し、

3人を知り合いにしない……。

そんな私の計画は、あっさりインキュベーターに出し抜かれた。

馬鹿だ、私は。

あいつは、何時ものループでのタイミングより少し早く、
魔女がいる場所に 二人を呼べばいいだけなのに。

私達をちょっと観察していれば、容易に実行できるだろう。

今回は人との関わりを重視するつもりだが、
少なくとも この件に関しては、インキュベーターを監視する方が効果的だった。

内心舌打ちしながら、2人に聞く。

ここから、挽回しなければならない。

別に致命的なミスではないのだから。


ほむら「まどか、さやか……。どうして、ここに……?」

まどか「助けてって、呼んでる声が聞こえて……」

さやか「私はまどかを追っかけて……そしたら、ほむほむが見えたから」

ほむら(やはり……)

マミ「……暁美さん、2人は知り合い?」

ほむら「ええ。私のクラスのお友達よ」

マミ「……転校した初日に、もう友達が出来たのね」

ほむら「え、ええ……」

ほむら(そこ!?)

23: 2013/03/15(金) 22:06:19.22 ID:l5AcOoEYo

マミ「えっと、助けてって呼ぶ声っていうのは……魔女の口付けの被害者かしら?」

???「いや、僕だよ」

マミ「きゅうべぇ!」

QB「使い魔に追われてたんだ。
   それで、近くの魔法少女か、素質のある子に助けを求めたってわけさ」

ほむら「あら? その割に、私達には聞こえなかったわよ?」

QB「……君は、誰だい? 見る限り、魔法少女の様だけど……」

マミ「えっ? きゅうべぇ、貴方が知らないの?
   貴方と契約する以外に、魔法少女になる方法なんてあるのね」

QB「僕が知る限りは、ないはずだけど……」

ほむら「そう言えば、貴方とまだ会ってなかったわね?」

ほむら「私は貴方と契約した魔法少女よ。
     まぁ、私の願いの所為で、貴方は忘れているけどね」

ほむら(もちろん、嘘だけど)

QB「……そうかい。ちなみに、僕にその願いを教えてくれるつもりはあるかい?」

ほむら「ないわ」

QB「……」

マミ「……」


さやか「えっと……」

まどか「そろそろ、私達を放っておかないでくれたら、嬉しいかなって……」

24: 2013/03/15(金) 22:06:59.42 ID:l5AcOoEYo

マミ「私達は、この見滝原を守る魔法少女よ。
   私は、貴方達の一つ上の学年の、巴マミ」

ほむら「そして、さっきの、顔に沢山薔薇が咲いているようなデカ物が魔女、
     タンポポの綿毛にヒゲが生えているようなのが使い魔。

     こいつらを退治し、人々を守るのが私達の役目なの」

さやか「……まじか」

まどか「すごいよ、ほむらちゃん! まさか、本物の魔法少女だなんて!」

ほむら「……黙っててごめんなさいね。貴方達を巻き込みたくなかったものだから」

まどか「そんな、謝らないでよ! きっと、普通の人には秘密なんだよね!」

さやか「そっか、私達、秘密にしなきゃね」

まどか「うん!」

マミ「……ちょっと待って、そこの二人」

ほむら「!」

まどか・さやか「は、はい?」

マミ「貴方達、二人ともきゅうべぇが見えるのよね?」

QB「二人とも、素質がありそうだ。僕と契約して、魔法少女になってよ!」

まどか「えっ?」

さやか「私達も?」

25: 2013/03/15(金) 22:07:28.57 ID:l5AcOoEYo

QB「僕は、君たちの願い事をなんでも一つ叶えてあげる」

QB「何だってかまわない。どんな奇跡だって起こしてあげられるよ」

さやか「うわぁ……金銀財宝とか、不老不氏とか、満漢全席とか?」

まどか「いや、最後のはちょっと」

まどか「……でも、私が、魔法少女かぁ……そっかぁ……

ほむら「……まちなさい」

マミ「暁美さん?」

まどか「ほむら……ちゃん?」

ほむら「そんなに軽々しく 決めていいことではないわ」

マミ「……そうよね。貴方達、この後 時間あるかしら?」

まどか「えっと……、はい、大丈夫ですけど」

さやか「私も、大丈夫です」

マミ「なら、私の家に来ない?
   私と暁美さんで、魔法少女にまつわること、
   そのメリット、デメリットについて、教えてあげるわ」

QB「……」

さやか(恭介に行けなくなったって、連絡しとかなきゃな……)

26: 2013/03/15(金) 22:11:04.44 ID:l5AcOoEYo

――何時も綺麗でおしゃれな、巴マミの部屋。

私やまどか、美樹さやかがテーブルに座っていると、
紅茶とケーキを巴マミが持ってきてくれた。



……ふと、気に掛かることが。

何時もの事といえば、何時もの事なのだが……


ほむら「巴先輩……」

マミ「何かしら、暁美さん」

ほむら「何で、人数分のケーキが出せるの? 先輩の家、直行でしたのに」

マミ「へっ!?」

ほむら「まさか、ケーキとかお菓子ばかり食べてるんじゃ……」

マミ「い、いや、そんな事ないわよ!」

27: 2013/03/15(金) 22:11:35.75 ID:l5AcOoEYo

ほむら「駄目よ、いくら若いからってそんな食生活ばかりじゃ……。歳とってから後悔するわよ?」

ほむら「私がまだ入院中に、よくしてくれたおじさん達も
     糖尿病で片目失明しかけてたり、プリン体の採りすぎで痛風になったりしていたわ」

ほむら「将棋の相手をしてもらいながら よくその辛さを語っていたものよ……」

ほむら「健康って言うのはね、失われてからその大事さに気がつくの!」

ほむら「もっと必要な栄養素をバランスよく摂取する事を……」


……食生活の大事さを語っていると 若干くどくなってしまったようだ。

3人が明らかに引いた顔をしている。

私は軽く咳払いをし、何とか誤魔化そうと考えている所
痛いところを突っ込まれる事となった。


マミ「……えっと」

まどか「ほむらちゃんって……」

さやか「ちょっと おばさん臭いところあるよねー」

ほむら「そ、そんな事ないわよ!」

28: 2013/03/15(金) 22:12:19.23 ID:l5AcOoEYo

今まで無数にループを繰り返していた所為で、
体感的にはかなり長く生きてしまったが。

おばさんはないでしょう。
体は立派に中学2年生だ。

ループを20年分は繰り返してしまったが、
体は若い。


マミ「だいたい、暁美さんこそ、食生活の大事さを語る割には 痩せすぎよ」

まどか「ほむらちゃん、ちゃんと食べてる?」

さやか「ほむほむって逆にサプリメントとかに気を使いすぎて
     食の楽しみを忘れてそうなキャラクターだよねぇ」

さやか「そうか! 外見はクール系美少女で、中身はおばちゃん。
     これがギャップ萌えか! いや、口リばばぁ萌えっ!?」

ほむら「……話がこっちの不利になりそうだから、話題を戻すわね」

ほむら(さやかは、後で殺そう)

さやか「強引だなぁ、ほむほむは」

ほむら「誰がほむほむよ」

QB「僕も早く話題を戻して欲しいなぁ……」

29: 2013/03/15(金) 22:12:49.47 ID:l5AcOoEYo

マミ「……これを見て頂戴」


巴マミが、美しい黄色の宝石をあしらったネックレスを手に。


ほむら「巴先輩の手にあるのが、ソウルジェム」

マミ「キュゥべえに選ばれた女の子が、契約によって生み出す宝石よ」

ほむら「魔翌力の源であり、魔法少女であることの証でもあるの」

まどか「何でも望みを叶えて貰えて、ソウルジェムまで貰えるんだ」

ほむら「……だけれど、魔女と戦う使命を課されるの」

さやか「あ、そうだよね。魔女……さっきの、化け物かー」

QB「そうだね」

QB「願いから産まれるのが魔法少女だとすれば、魔女は呪いから産まれた存在なんだ」

QB「魔法少女が希望を振りまくように、魔女は絶望を蒔き散らす」

QB「しかもその姿は普通の人間には見えないから性質が悪い」

QB「不安や猜疑心、過剰な怒りや憎しみ、そういう災いの種を世界にもたらしているんだ」

マミ「理由のはっきりしない自殺や殺人事件は、かなりの確率で魔女の呪いが原因なのよ」

マミ「形のない悪意となって、人間を内側から蝕んでゆくの」

ほむら「魔女は、結果内に潜み、人間を誘い込み、喰らう」

ほむら「結界っていうのは、さっき私達がいた 奇妙な世界ね」

マミ「そういう恐ろしい魔女を相手にしなければならないから……」

ほむら「はっきり言って、戦いは命懸けよ」

30: 2013/03/15(金) 22:13:50.58 ID:l5AcOoEYo

まどかと美樹さやかが息をのむ。

当然だ、先程の結果内で、既に魔女と魔法少女との戦いは見ているのだから。

どうせ見られるのなら、苦戦してる様を見せれば良かった。

私の話術で、どうにかなるだろうか……


ほむら「今日の魔女は、平均以下の弱い魔女よ」

ほむら「巴先輩が凄く強いから、楽勝に見えたでしょうけど……」

ほむら「場合によっては、骨折や、手足が千切られて食べられたり、潰されたりする事もある」

ほむら「腹が裂かれ、出血を魔翌力で抑えるので精一杯……
     しかたなく、小腸が飛び出してくるのをガムテープで止めながら戦った事だってあるわ」

ほむら「そもそも、魔女との初陣で魔法少女が生き残る確率は半分よ」

マミ「……暁美……さん、ちょっと言いすぎじゃない?」

ほむら「巴先輩は素質があって元々 強いからよ。

     私は素質に恵まれなかったから、それこそ戦いに慣れるまでは
     涙と鼻水と汗と血に塗れた 汚らしい戦いだったわ」

31: 2013/03/15(金) 22:15:06.14 ID:l5AcOoEYo

マミ「えっと……鹿目さんも、美樹さんも 怯えた顔しているわよ……」

さやか「小腸……ガムテープ……」

まどか「手足食べられるって、そんなのってないよ……あんまりだよ……」

ほむら「私が経験してきた戦いの事実よ。知っておいて貰いたいわ」

QB「……だけど、2人の素質はちがう。
   特に、鹿目まどか。君の素質は素晴らしいの一言に尽きる」

QB「どんな魔女でも、君の前では敵わないんじゃないかな」

まどか「……わたし……が?」

マミ「……そんなに? すごいじゃない! じゃあ、暁美さん、そんな心配……」

ほむら「……」


糞、グロイ体験を詳細に語って、引かせる作戦は失敗か。

それなら、泣き落とししかないじゃない。

既に友好関係にある 今の状況だからこそ、生きてくるものがある。


ほむら「……それでも、私……お友達……頃し合いに、巻き込みたくない……」

マミ「……あっ」

まどか「な、泣かないで、ほむらちゃん!」

さやか「ほ、ほむほむ、泣かないでよ! わかったってば!」

QB「……」

32: 2013/03/15(金) 22:15:49.88 ID:l5AcOoEYo

マミ「た、確かに、暁美さんの言うとおり、魔女との戦いは危険よ」

マミ「私だって、氏にそうになった事は何度もある」

マミ「現状、この街は二人の魔法少女がいるのだし、
   焦ってなる必要もないわ」

マミ「もし、どうしても叶えたい願いがあって、戦う覚悟が出来るのなら、
   その時、改めて考えるというのはどうかしら……?」

ほむら「……グスッ」

さやか「は、はい……」

まどか「大丈夫だよ、ほむらちゃん。私、今、そこまでして叶えたい願いなんてないし」

QB「……しばらく、様子見かな。残念だよ」

QB「まぁ、もし魔法少女になる決心がついたら、何時でも呼んでよ。
   僕の方はいつでも準備できてるからね」


インキュベーターはこの場でできる事は無いと見切りをつけたのか、
部屋から出て行った。

ちょっとは伝達力があがったのだろうか。

話術だけで、事態を好転する事が出来た……。

33: 2013/03/15(金) 22:18:27.65 ID:l5AcOoEYo

さやか「……ほむほむ、でも、恩人のあんたが、そんな辛い戦いをしているなら、私だって……」

まどか「あっ、そ、そっか……」

ほむら「……さっきも言ったわ。巴先輩は強いから、貴方達まで、こんな事に巻き込まれないで」

さやか「……」

マミ「あ、暁美さんの言うとおりよ! 私がいる限り、この子にそんな辛い思いなんてさせないから!」

まどか「巴先輩!!! ほむらちゃんをお願いします!」

さやか「ほむほむ、巴先輩、何か私にできる事があったら、何でも言ってください……」

まどか「私も! 何にも出来ないかもしれないけど……」

ほむら「ありがとう……」

マミ「うんうん、美しい友情ね……。羨ましいわ……」

ほむら「巴先輩も、ありがとうございます」

マミ「ううん、いいのよ。私も、一緒に戦ってくれる貴方の事は大事だし……」

さやか「……それにしても、巴先輩ってやっぱり強いんだ」

まどか「戦い方も格好良かったもんね、こう、華麗というか……」

さやか「ほむほむも格好いいけど、ちょっと違うよね。質実剛健って感じ」

まどか「巴先輩の方が魔法少女っぽいよ! あの、なんだっけ……でっかい大砲みたいな!」

ほむら「ああ……ティロ・フィナーレね」

さやか「ティロ……フィナーレ……?」

34: 2013/03/15(金) 22:18:53.49 ID:l5AcOoEYo

さやか「ティロ・フィナーレって……なに?」

マミ「えっ???」

ほむら「だから、あの巴先輩の得意技の、大砲みたいな銃で……」

さやか「いや、それは分かってるけど……」

まどか「さやかちゃん! 決まってるでしょ!」

さやか「?」

まどか「必殺技だよっ! てへへ」

さやか「……そ、そっか。ごめんなさい、変な事聞いて……」

マミ「あ……あの、おかしいかしら? ティロ・フィナーレ」

マミ「イタリア語で、最後の射撃という意味なのだけど……」

ほむら「いいえ、おかしくないわ。巴先輩、むしろハイカラよ」

マミ「ハイカラ……。そ、そうよね! ハイカラよね!」

ほむら「ええ、ハイカラよ」


さやか「……ねぇ、まどか」

まどか「なに?さやかちゃん」

さやか「魔法少女って…… ちょっと独特な感性の人が……多いよね」

まどか「え? そう? 私もティロ・フィナーレって、かっこ……いや、ハイカラだって思うけど!」

さやか「味方がいない……」

35: 2013/03/15(金) 22:19:28.84 ID:l5AcOoEYo

その後空気は弛緩して行き、
ただのお茶会へと姿を変えていった。

何事も無く、その日は解散となる……。

----

翌日、私は1人で学校に向っていた。

かなり先のほうに、元気のなさそうに歩く女の子が見える。


あれは……ワカメ……じゃない、志筑、仁美……



ほむら「仁美さん、おはよう……」

仁美「あ、あけ……じゃない、ほむらさん。おはようございます」

ほむら「今日もいい天気ね」

仁美「ですわねー……」

ほむら「そんな天気の割りに、貴方一人、憂鬱そうにも見えるけれど」

仁美「……そ、そうですか? そんな事ないですわ」

ほむら「……」

仁美「……」

36: 2013/03/15(金) 22:19:58.47 ID:l5AcOoEYo

ほむら「仁美さん……」

仁美「あ、えっと……なんですの? ほむらさん」

ほむら「私は会ったばかりで、まどかや さやかと比べると、繋がりが薄いかもしれないけど」

仁美「……」

ほむら「でも逆に、そんな私になら言えること、あるんじゃないかなって思って」

仁美「……ほむらさん」

ほむら「……私、口はかたいわよ。吐き出したい事があるなら、いつでも言って頂戴」

仁美「……なんのことか、わかりません」

ほむら「そう……」

仁美「……」

仁美「……ごめんなさい、ほむらさん。私、先に行きますわね。
    通学路が同じなのなら、明日からご一緒しましょう……」


37: 2013/03/15(金) 22:20:28.58 ID:l5AcOoEYo

志筑仁美は走り出す。
親密さが足りなかったか。

私が彼女との距離を縮めようとした事は初めてだ。

美樹さやか以上に勝手がわからない。

上条恭介よりは ましかもしれないが……
どうしたものか。

別に、ワルプルギスの夜への対策に彼女が必要な訳ではない。

現時点では、放っておいてもいいといえばいいのだが。

……その後、まどか達とも会い、
翌日からは一緒に登校することを約束しながら

学校へと向った。


――志筑仁美に振られた日の夕方。

巴マミのお誘いで、市内のパトロールを行う。

……それはいいのだが


マミ「これが昨日の魔女が残していった魔翌力の痕跡」

マミ「基本的に、魔女探しは足頼みよ」

マミ「こうしてソウルジェムが捉える魔女の気配を辿ってゆくわけ」

さやか「意外と地味ですねー」

まどか「魔法で調べるって訳じゃないんですね」

ほむら「……」

38: 2013/03/15(金) 22:22:03.97 ID:l5AcOoEYo

さやか「……ほむほむ、不機嫌そうだなぁ」

まどか「ごめんね、ほむらちゃん……」

マミ「わ、私が責任もって二人は守るから大丈夫よ?暁美さん」

ほむら「いえ…… 魔法少女以外の子が同行するのって初めてだから、
     気が張ってるだけよ。気にしないで」

マミ「そ、そう……」

さやか「えと、私がどうしても 知りたかったから……
     ほむほむがそんな危ない事してるって知ったら、その……」

まどか「わ、私も……ちゃんと、知っておきたかったの……ごめんね、ほむらちゃん」

ほむら「二人も気にしないで。ただ、気を引き締めていてね」


私の気がたっているのは、別に二人がいるからではない。

二人がこの場に居るのは気に喰わないが、
それより重要な問題がある。

今日はよりによって、病院であらわれるお菓子の魔女と
遭遇し易い日だ。

巴マミはこの二人がいると、いい所を見せようとしすぎ、
油断して頭を毟られる可能性が高くなる。

そんな日に見学したいとは……
なんというタイミングだ。

しかも、つかず離れずの所に、奴……インキュベーターの気配もする。

油断してはならない。

39: 2013/03/15(金) 22:22:30.91 ID:l5AcOoEYo

――案の定、病院でグリーフシードが発見された。

美樹さやかが慌てだす。


さやか「きょ、恭介が! ど、どうしよう、はやく何とかしないと!」

ほむら「落ち着きなさい、さやか」

マミ「もう孵化寸前ね。こうなったら、魔女になったばかりを狙うのが一番かしら」

QB「……言ってる間に、結界ができ始めたよ。皆、気をつけて!」

まどか「わわわ!」

ほむら「……やっぱり、いたか。きゅうべぇ」



結界が私達を包み……そして、閉じた。

甘ったるさ漂う、お菓子だらけの空間。

その中にヌイグルミの様な外見の、お菓子の魔女が現れた。

巴マミを先頭に、一歩下がって私。

QBを肩に乗せたまどかと、美樹さやかは 私のさらに後ろにいる。

40: 2013/03/15(金) 22:23:44.12 ID:l5AcOoEYo

まどか「かわいい……っ!」

さやか「くっ、なんてファンシーな外見なの」

ほむら「外見に騙されては駄目よ、あの魔女は強いわ。
     二人とも、下がってて」

マミ「……いえ、暁美さん」

ほむら「?」

マミ「今回は、貴方も見てて」

ほむら「……は?」


マミは突然、私のほうに振り返って
私達の周りに魔法少女の守りの結界を張った。


ほむら「ばっ…… 何を!」

マミ「大丈夫よ、暁美さん。私はずっと1人で戦ってきた」

マミ「貴方も守れるくらいには、私は強いつもりよ」

マミ「この魔女を倒して、それを証明してあげるわっ!!!」

41: 2013/03/15(金) 22:24:36.59 ID:l5AcOoEYo

そして、巴マミは何時もどおりの華麗な……

見せ付けるような戦いを始める。

まどかと美樹さやかは、素直に見とれてた。

私はというと……



ほむら「あんの……馬鹿が……」

まどか「……えっ?」

さやか「ひっ!」



まどかと 美樹さやかが何かに怯えた声を出した。

そんなものは無視する。緊急事態だからだ。

あの人に魅せる戦い方は、巴マミが最も氏に易いパターンであるから。

私は盾から、固い結界を破壊するのに適したものを取り出す。

小型の掘削機械だ。

42: 2013/03/15(金) 22:25:04.32 ID:l5AcOoEYo

さやか「ぎゃっ! なんじゃ、こりゃ! でけえ!」

まどか「ちょ、ちょ、ほむらちゃん、なにこれ!」

QB「……僕も初めて見るね。なんだい、これは」

ほむら「岩盤を掘り進めるための小型の掘削機械よ」

さやか「どこが小型よ! この中 一杯一杯じゃない!」

ほむら「上下水道トンネル等を掘る際の、硬岩掘削に使う機械としては小型ってことよ。
     正式には、小断面用自由断面掘削機よ。

     幅1.5m、高さ1.8m、長さ7.2mあるわ。
     先端の黒いトゲがついたような巨大なドリルがあるでしょう?
     それ、カッターブームといって、回転しながら硬岩だろうが結界だろうが
     削り取るように 破壊してくれるわ!」

さやか「だから何で守りの結界 壊すんだよぉおおおおおっ!!!!」

ほむら「うるさい! あぶないから 機械に近寄るんじゃないわよ!」


掘削機に魔翌力を通し、掘削機が動き出した。

そのまま先端のドリルを結界にぶつけ、破壊する。

巴マミはっ……!

ヌイグルミのような魔女をリボンで封じ、
ドヤ顔でこっちを見たまま固まった巴マミが見える。

巴マミは気がついていないが、
捕まった魔女から本体が抜け出し、巨大な恵方巻のような姿を現す。

大きく裂けた口から見える牙は凶悪だ。

眼前の獲物の頭を喰いちぎらんとばかりに巴マミに迫り……

カチリッ!

43: 2013/03/15(金) 22:26:10.31 ID:l5AcOoEYo

――時間を止めてる間に 体内に投げ込んだ手榴弾にやられ、
お菓子の魔女の中身の恵方巻の化け物が倒れる。

ついでに女装した使い魔を踏み潰し、
お菓子の魔女のグリーフシードを拾った。

巴マミはというと、自分が氏に掛けていた事を悟り、
体が震えだしていた。

言葉はない。

まどかと美樹さやかは、未だ呆けた顔をしている。


ほむら「……魔女と戦うって、こういうことよ。何時 氏に掛けるかわからないわ」

さやか「いやいや! 今、マミさん明らかに
     ほむほむの所為で気を逸らしていたよね!?」

ほむら「そんな事はないわ」

まどか「ほむらちゃん…… マミさんこっち見たまま固まってたよ?」

ほむら「……戦闘中に気を逸らすのは駄目よ」

さやか「こんなものが出てきたら誰だって気がそれるよ!」

ほむら「……む」

44: 2013/03/15(金) 22:26:41.91 ID:l5AcOoEYo

しまった、頭に血が上ってしまった。

確かに、客観的に見ればそうかもしれない。

私はループの所為で、このパターンだと
巴マミが高い確率で氏ぬ事はしっていたが……


ほむら「……だとしても、よ。命に関わる戦いに臨んで、
     ほとんど断りも無く 行き成り 除け者にして。

     怒るなという方が無理よ」

さやか「まぁ、そこ等へんは分からなくもないけどさ……」

まどか「ほむらちゃん……」

ほむら「なに? まどか」

まどか「マミさんは、きっと 前のお茶会の時に、
     ほむらちゃんが不安そうにしていたから、

     自分は強いからって、安心させてあげたかったんだと思う。
     あまり責めないであげて……」

ほむら「……」


……私は寛容さが やっぱり 足りないだろうか?

いや、命のやりとりの場で、あれはないはずだ。

駄目な事を駄目だと言ってあげるのも、本人の為のはず。

だけれど、まどかと美樹さやか。

特にまどかの視線に負け、優しげな声で、巴マミに声を掛けた。

45: 2013/03/15(金) 22:29:17.47 ID:l5AcOoEYo

ほむら「……大丈夫ですか? 巴さん」

マミ「……え、えぇ……」

ほむら「あまり大丈夫じゃなさそうです。
     派手な事をして 気を逸らせてすいません。

     今日はこれで帰りましょう。
     私が送っていきますから」



まどかと美樹さやかは、一瞬 不安そうに互いを見た。

だが、何も言わなかった。

病院に何も無かったことだけを確認し、
二人と別れ、巴マミの部屋へと向う。


46: 2013/03/15(金) 22:31:37.40 ID:l5AcOoEYo

ほむら「……つきましたね。もう、夜です。晩御飯、どうします?」

マミ「……食欲、ないわ」

ほむら「スープなら飲めますか?」

マミ「そうね……それなら……」

ほむら「……台所、借ります」

マミ「……」


盾の中に食材を入れていた事を思い出し、引っ掻き回す。

カボチャや玉ねぎが入っていた。
ついでに、クリームシチューの元も。

まどか用にストックしてたやつだ。

これで、カボチャのクリームシチューでも作るとする。

巴マミの胃に重くないといいが……。

ちょっと重いかな……栄養はたっぷりだが。

台所に立つ私に、
巴マミは ぽつりぽつりと、話しかけてきた。

47: 2013/03/15(金) 22:32:06.79 ID:l5AcOoEYo

マミ「あ……、暁美さん、怒ってる……?」

ほむら「……別に怒ってません」

マミ「ほんと……?」

ほむら「……」

マミ「貴方くらい強ければ、私があんな事したら 怒るわよね、当然よ」

ほむら「……私は、強くなんてないですよ」

マミ「うそ」

マミ「貴方、私なんて必要ないくらいに 強いじゃない」

マミ「私の作った結界を あんなおっきな機械で簡単に壊して、
   あの間合いから 一瞬で 私を助けて 敵を倒すなんて……」

ほむら「……」

マミ「あの機械、なに? あなたの魔法で作ったの?」

マミ「私とは次元が違うわね……」

ほむら「……あの機械は 魔法で作り出したものじゃないわ。
     ちょっと 借りてるだけのものよ」

マミ「実際にある機械を、あんな質量と体積のあるものを、あんな短時間で呼び寄せられるの?
   すごい……」

ほむら「……」

マミ「私なんて、いらないわね」

48: 2013/03/15(金) 22:32:51.25 ID:l5AcOoEYo

巴マミは 追い詰められると 脆い。

どうやら負のスパイラルに入り込んでしまったようだ。

実際、見た事だけから判断すれば、凄い力の持ち主に見えてもおかしくはない。

願いの所為で 能力が特殊、それだけに過ぎないのだが。


ほむら「巴マミ」

マミ「! は、はい……?」

ほむら「私には、貴方が必要よ」

ほむら「私は、貴方と同じなの」

マミ「私と?」

ほむら「1人ぼっちで戦うのは、寂しいわ。

     1人で戦う力があっても、心はそうじゃない」

マミ「……そう、ね。私も……そう……だわ」

49: 2013/03/15(金) 22:33:39.75 ID:l5AcOoEYo

マミ「ごめんなさい、貴方にいい所を見せようとしちゃったの。
   一緒に戦いたい、信用して欲しいって相手に、やる事じゃなかったわね」

ほむら「その事に関して、私は貴方を許せない」

マミ「……」

ほむら「でも、貴方の優しさから来たって事は、
     理解しているつもりよ」

ほむら「貴方の事、ちょっと信用出来なくなったけど、
     一緒にいる事に対して、信頼する事は出来る……と思う」

ほむら「私の事を信じて、一緒に戦ってくれますか? 巴さん……」

マミ「……はい、暁美さん!」


何とか、持ち直したのだろうか。

動く余裕は出てきたようだ。

巴マミには、食事を用意している間、
風呂に入ってもらう事にした。

魔法少女の状態を解除しても、
精神的ショックからか冷や汗で制服が濡れている。

50: 2013/03/15(金) 22:34:22.43 ID:l5AcOoEYo

――随分 長く入っているが、巴マミが出てきそうな気配がない。

シチューはあとは煮込むだけなので、
暇になってしまった。

折角出来た時間、軽く掃除や洗濯でもやってやるかと、
浴室に向って 段取りを聞こうとした。

……その時、巴マミの独り言を聞いてしまった。



マミ「きゅうべぇめ……、やっぱ暁美さんが怪しいなんて、嘘じゃないの」

マミ「私を助けてくれたし、あんなにいい子なのに……」

マミ「ちょっと、堅い所はありそうだけど……」

マミ「……」

マミ「ふふ……。パパ、ママ……マミね、もーちょっと、生きていられそうだよ?」

マミ「一緒に、これからも戦ってくれそうな、お友達ができたの」

マミ「もうちょっと、頑張ってみるね」

マミ「こっちで頑張ったら、そっちに行ったとき、マミのこと迎えてくれるよね?」

マミ「パパとママを、見頃しにしちゃった私だけど……」

マミ「パパ……ママ……」

51: 2013/03/15(金) 22:34:56.08 ID:l5AcOoEYo

マミ「きゅうべぇめ……、やっぱ暁美さんが怪しいなんて、嘘じゃないの」

マミ「私を助けてくれたし、あんなにいい子なのに……」

マミ「ちょっと、堅い所はありそうだけど……」

マミ「……」

マミ「ふふ……。パパ、ママ……マミね、もーちょっと、生きていられそうだよ?」

マミ「一緒に、これからも戦ってくれそうな、お友達ができたの」

マミ「もうちょっと、頑張ってみるね」

マミ「こっちで頑張ったら、そっちに行ったとき、マミのこと迎えてくれるよね?」

マミ「パパとママを、見頃しにしちゃった私だけど……」

マミ「パパ……ママ……」


……巴マミ。

彼女の生い立ちはしっている。

両親と共に交通事故にあい、父母は氏。

自分も瀕氏の状態で、インキュベーターに助かる事を望み、魔法少女になる。

どうやら、その時 願いによっては父母を助ける事が出来たはずなのに、
それをしなかった自分を悔やんでいるようだ。

ずっと、巴マミは私の先輩という立ち位置で……

でも、そう。所詮14歳の少女でしかない。

ループの中で中身だけは年老いた私とは違い、
彼女には本当は、近くにいてくれる親が必要なのだろう。

52: 2013/03/15(金) 22:35:34.20 ID:l5AcOoEYo

ほむら「……巴、マミ……」

彼女の精神的な脆さも、そこに起因しているのだろうか。

本当に支えてくれる人が、いない。

ループによっては、まどかや、美樹さやか、佐倉杏子が近くにはいた。

だが、所詮 後輩。

……もしも、親代わりの人がいれば、精神的な成長を促せる人がいれば
彼女もまた、変わるのだろうか。

そうだとしたら、私…… 私は?

結局、私はまどか以外にも、皆を助けたい。

本当に、仲間となるなら、それはより強くなるだろう。

魔法少女になってる子を救いたいと考えるのであれば、
魔法少女のあり方だって、変えなければ。

色々と、考えねば。


53: 2013/03/15(金) 22:42:10.93 ID:l5AcOoEYo

きりがいいので、今日はここまでにします。

ここまで読んでくださった方いましたら、
ありがとうございます。

残りは、この土日で投下しきろうと思っています。

初まどかSSだったので、
もし何かアドバイス等ありましたら歓迎です。

一応、もう一本書こうかと考えているネタがありますので、
その時の参考にさせてもらいます。

61: 2013/03/16(土) 06:29:23.75 ID:iikZY6eeo

――翌日、朝。

私とまどか、美樹さやか……それに巴マミは、一緒に学校に向っている。

巴マミを誘ったのは 私だ。

朝一番、巴マミの部屋の扉の前に待機して
拉致してやった。

まどかと美樹さやかも、巴マミを連れてきた私を見て、
ちょっと安心したようだった。


ほむら「……そういえば、仁美は今日は如何したの?」

マミ「仁美……さん?」

さやか「あ、マミさんは仁美の事 まだ知らないですよね」

まどか「私達の友達なの!いつも、4人で登校してるんだよ」

マミ「仲良し四人組なのね」

ほむら「これからは、五人組になりましょう」

マミ「! そ、そうね」

さやか「マミさんなら 大歓迎!」

マミ「本当?」

まどか「勿論です、マミさん。……てへへ、嬉しいな」

マミ「……うふふ……ありがとう」

62: 2013/03/16(土) 06:31:02.05 ID:iikZY6eeo

さやか「それでね、仁美は、ちょっと体調悪いみたい。
     私のところにメールが来たよ」

ほむら「そう……それは心配ね」

まどか「大丈夫かなあ、仁美ちゃん。お稽古とかでいっつも大変だもんね……
     症状は、結構おもそうなの?」

さやか「二、三日休むかもって言ってたしなぁ……」

まどか「お見舞い行く?」

さやか「うーーん、学校終わったら行くねって、メール送ったら、
     断られちゃった。うつしたら悪いって」

まどか「風邪かなぁ」

ほむら「……」

さやか「仁美が復活したら、マミさんにも紹介しますね」

まどか「すっごくお上品で綺麗な いい子なんだよ!」

マミ「そう、楽しみだわ」

まどか「ふふふふー、仁美ちゃんにマミさんを自慢するの、楽しみだね!」

マミ「えっ?」

さやか「そうだよねー、まどか。こんな綺麗でかっこいい先輩とお友達になれたんだもん。
     ほむらに続いて、仁美に嫉妬されちゃうね」

まどか「だよね、てへへ!」

マミ「そ、そんな わたしなんてqあwせdrftgyふじこlp」

ほむら「……落ち着きなさい、巴さん」

63: 2013/03/16(土) 06:31:35.20 ID:iikZY6eeo

私が最初からまどか達二人に介入した所為で
巴マミとの仲の進展具合が今一であったが、
それも解消したらしい。

巴マミを私に依存させつつ、
まどかと美樹さやかの二人の仲がいい状態は
理想といっていいかもしれない。

後は、適度に魔法少女になら無いように釘を刺す程度で
この子達は問題ないだろう。

インキュベーターは巴マミには私の悪口を吹き込んでいたようだが、
他に表立っての行動はない。

今後の懸念事項は、志筑仁美か?

全く介入していない佐倉杏子のこともそろそろ考えなければ。

64: 2013/03/16(土) 06:33:31.79 ID:iikZY6eeo

――しかし、問題は幾らでも発生する。

佐倉杏子をどう攻めるか、計画を立てていると
美樹さやか から、電話が掛かってきた。

外は既に暗く、一般家庭では晩御飯も終わった頃だろう。

中学二年生が外出する時間帯ではない。

だが、私と会いたいという。

動揺した声、鼻を啜る様な音。

……嫌な予感がした。

会う事を約束し、待ち合わせ場所の公園へと急いだ。


ほむら「……さやか。待たせたかしら」

さやか「ううん、ごめんね。こんな時間に呼び出して」

ほむら「いいのよ。理由があるのでしょう?」

さやか「う……、うん……」

さやか「……あのね、ほむら」

ほむら「ええ」

さやか「私、魔法少女になる。ならなきゃ……」

65: 2013/03/16(土) 06:35:04.89 ID:iikZY6eeo

ほむら「……何を馬鹿なことを」

さやか「馬鹿な事じゃないよ!」

ほむら「上条君がどうかしたの?」

さやか「……っ!? どうして……」

ほむら「いいから、答えて。もしかして、彼の手の事……?」

さやか「……ほむら。ほむらって、本当 鋭いよね」

さやか「ほむらが忠告してくれた事、忘れたわけじゃないよ」

さやか「でも……わたし、あんな恭介見てられないよ……!」

ほむら「……駄目よ。貴方はその道を選んでは駄目」

さやか「だって! 私が犠牲になれば、恭介は、またバイオリンを弾けるんだよ!」

ほむら「……落ち着きなさい」

ほむら「貴方を犠牲にして、上条くんが喜ぶと思うの?」

ほむら「さやか、自分が上条君を犠牲に助かったと、考えて見なさい」

さやか「……分かってるよ! それでも、それでも、私 美樹さやかは、
     上条恭介の為なら氏ねるんだよ!」

66: 2013/03/16(土) 06:35:43.11 ID:iikZY6eeo

ほむら「さやか」

さやか「何よ!」

ほむら「その道は 上条恭介も 頃すわよ」

さやか「……恭介を、頃す……?」

ほむら「さやか、もう一度言うわ。落ち着きなさい」

さやか「……」

ほむら「いい? さやか。 何で、貴方は 私に相談に来てくれたの?」

さやか「……それは、えっと……」

さやか「……やっぱり、怖かったの。
     マミさん、本当に氏んでたかもしれない。

     私なんて、恭介を残して、いつ氏ぬか分からない……」

ほむら「そうよ」

さやか「……っ!」

ほむら「貴方だけじゃない。私達の仲間になれば、いつ氏ぬか分からない」

67: 2013/03/16(土) 06:36:22.34 ID:iikZY6eeo

ほむら「だから、貴方は私に止めて欲しかったの。
     自分と、上条君が幸せになれる道を、私と一緒に探したかったの。

     わかる?」

さやか「……」

ほむら「そして、お手柄よ、さやか」

さやか「えっ???」

ほむら「命を投げ出すなんて邪道を選ばず、
     貴方は、正解を選べた。

     全て、私に任せなさい」

68: 2013/03/16(土) 06:37:02.53 ID:iikZY6eeo

さやか「え…… 全て……? えっ?」

ほむら「上条君も治るし、貴方達は幸せになれるわ」

さやか「そんな……、いや、でも」

ほむら「出来るわ」

さやか「……奇跡も、魔法も、あるのかな……」

ほむら「魔法はあっても、奇跡はないわ。

     だから、戦うの。戦って、勝ち取るのよ。
     幸せな未来を」

さやか「……ほむら、私、何をすればいい?」

ほむら「貴方にしか出来無い事。上条君の傍にいて、支えてあげていて」

ほむら「残念ながら、時間がかかる事なの」

さやか「何をするの?」

ほむら「私は貴方達のために、魔法少女、医者の双方から
     神経回復の最高のスペシャリストを見つけてみせる」

ほむら「その二つが手を組めれば、不可能はないはずよ」

ほむら「ただ、そこまでの間を持たせるのは、貴方しかできない」

さやか「……うん、わかった」

69: 2013/03/16(土) 06:38:03.31 ID:iikZY6eeo

さやか「でも、そんなお医者様を頼むの、お金もかかるし、
     他の魔法少女の助けって、簡単に得られるものなのかな……」

ほむら「問題ないわ。お金の問題じゃないし、伝手はある。
     他の魔法少女の助けっていうのも、
     この件に関わり無く 魔法少女のあり方を私は変えるつもりだったから、
     成し遂げて見せるわ」

さやか「魔法少女のあり方……?」

ほむら「それはスキームが出来たら 改めて話すから。
     今は頭の中にとどめる程度にしておいて」

さやか「うん」

さやか(すきーむってなんだろう……)

ほむら「枠組みの出来てる計画のことよ」

さやか「!!!」

70: 2013/03/16(土) 06:38:40.52 ID:iikZY6eeo

さやか「と、とにかく……ありがとうね、ほむら」

さやか「私、ほむらに迷惑かけてばかり……じゃない?」

ほむら「ええ、本当ね」

さやか「……」

ほむら「これからも、掛け続けるがいいわ。それが貴方らしい」

さやか「……なにそれ! もう……」

ほむら「ふふ……」

さやか「……ちぇっ、ほむほむさあ」

ほむら「なに?」

さやか「恭介いなかったら、同性でもあんたに惚れかねないね」

さやか「こういっちゃ何だけど、恭介よりずっと男らしいや」

71: 2013/03/16(土) 06:39:46.14 ID:iikZY6eeo

ほむら「あはっ、それはありがとう……でいいのかしら。
     ま、私はそっちの趣味はないわ」

さやか「それは本当かなー。
     ほむほむは まどか見る目は また何か違う気がするんだよね」

さやか「しかも、今日の朝、マミさんとも怪しかったし……」

ほむら「失礼ね。男に興味を持った事もないけど、
     女の子をそういう目で見たこともないわよ」

さやか「……未だ男に興味を持ってない時点で、
     目覚めてないだけで 素質はありそうじゃん……」

ほむら「……ないわよ、たぶん」



美樹さやかが 私に笑いかけてくれる。

不思議な暖かみが、私を包んできた。

今までのループでは反発される事の方が多かった。

その美樹さやかが、そう、まるで私に力を与えてくれるかのよう。

そんな気さえした。

こんな事は初めて……

72: 2013/03/16(土) 06:40:28.01 ID:iikZY6eeo


さやか「ね、ほむほむ。私、ほむほむやマミさんの為にも、
     魔法少女に、なるべきなんじゃないかって、そう思った」

ほむら「……」

さやか「でも、本当に、私達のこと、幸せになってくれるよう行動してくれる ほむらを見てね、
     奇跡に頼らずに、戦う・・・そりゃ、魔法少女だけど、
     過剰に頼らず、現実的に戦おうとする ほむら見てね、考え直したよ。

     私は、今の私なりに、戦うよ。恭介の事、幸せにしたい」

ほむら「そうよ、そうするべきだわ」

さやか「そして、ほむほむの為にも、今のわたしなりに、力になりたいから」

ほむら「・・・そう。ありがとう」

さやか「これは、その証」

ほむら「……?」


73: 2013/03/16(土) 06:40:55.29 ID:iikZY6eeo

美樹さやかは、自分の髪留めを外した。

そういえば、このループの美樹さやかの髪留めは、ff(フォルテッシモ)の飾りがついている。

いつもの髪留めとは、違うような・・・


さやか「この髪留め、付き合いだしてから 恭介に貰った髪留めなの」

ほむら「ええ・・・」

さやか「これね、ffだけど、f(フォルテ)一つずつに分離できるんだ」

さやか「勿論、クリップは片方にしかついてないけど・・・」

さやか「こっちの、クリップのついてる方、ほむほむ、持ってて!」

ほむら「ええっ? ちょっと待って、上条君に貰ったものなんでしょう?」

さやか「ほむほむと私は、これから戦友になるんだよ。
     フォルテは、強くって意味。
     フォルテが二つのフォルテッシモで、非常に大きく、強くって意味」

さやか「ほむほむと、私が一個ずつもってることで、
     私達二人で、より強くなるって、そういう誓い」

ほむら「……そう、わかったわ。でも、クリップなしのほうでいいわ」

さやか「大丈夫、私は髪留め一杯もってるし、すぐ髪につけられるよう加工できるし」

ほむら「ふふ、わかった。じゃ、遠慮なく、貰うわ」

さやか「うん!」

75: 2013/03/16(土) 06:43:06.22 ID:iikZY6eeo
 
私が さやかから髪留めを受け取った瞬間、
先程感じた暖かみが、さらに強くなるのを感じた。

……絶対に、さやかと 上条恭介を幸せにしてやろう。

そう心に誓った。

76: 2013/03/16(土) 06:44:18.90 ID:iikZY6eeo

――さやかを家に帰した後、私はそのままパトロールを始めることにした。

……巴マミと合流するか?

いや。

今日は、上条恭介の手が不治であると判明した日だ。

高い確率で、工場街の一角で箱の魔女が現れるだろう。

志筑仁美が巻き込まれる可能性が高いし、
時間的猶予は少ないかもしれない。

向うとするか・・・


案の定、生気のない人間達がわらわらと
工場内に入っていく姿が見えた。

……! まずい、やはり 志筑仁美の姿が見える。

さやかと上条恭介が付き合いだした事で、
志筑仁美は明らかに元気を無くしていた。

魔女の口付けを受けるまでになっていたとは……

志筑仁美を昏倒させ、拉致。

最悪、毒ガスが発生しても
影響がでなそうな離れた場所に安置した。

77: 2013/03/16(土) 06:45:15.06 ID:iikZY6eeo

それから私は集合場所らしき屋内の様子を窺う。

混ぜちゃいけない2種の洗剤を
混ぜ合わせる準備をしてる人がいた。

ゴム弾を用い、
準備に掛かっている人たちを気絶させる。


それから屋内に侵入、洗剤を始末。

生気のないやつ等が呻き声をあげながら
こちらに向ってきた。

その対抗策として、
床にとある液体を放水銃で撒く。

78: 2013/03/16(土) 06:46:23.91 ID:iikZY6eeo

今散布したものは、地面に撒く事で床の摩擦係数を0.01以下にし、
相手を立っていられなくして無力化する、アメリカ軍が研究中の非致氏性兵器である。

理性を失っている彼らでは、
何も出来ず、立ち上がろうとしては滑って転びを繰り返し、立ち往生している。

魔女の反応がある部屋に向いながら
先程の液体を散布し、魔女の結界に近寄らせないようにした。


――箱の魔女の結界内。

浮遊感過多な空間であり、足場がない。
私はこの魔女は嫌いだ。

人間は地にしっかり足をつけているべきだからだ。

そうでないと 銃火器は狙いにくいし……。

時間を止めても、私自身に触れている物は
時間が流れるし、反動はある。

さらに、魔女は、相手の心を読む力を持ち、
私の様に考えながら戦うタイプには厄介。

実際、この魔女はさやかの様な
近接系でガンガン攻めるタイプの魔法少女の方が相性がいい。

考えるより先に殴れという事だ。

79: 2013/03/16(土) 06:46:49.73 ID:iikZY6eeo

……盾から回転式拳銃 S&W M19 を取り出し、
箱の魔女へ向ってぶっ放す。

だが、弾道が反れる。

やはり飛び道具が当たりにくいのか。

爆発性ガスを結界内に満たして爆発させてやる手段もあるが、
ちょっと勿体無い。

仕方がない、近接戦闘は慣れていないが、やってやろう。
時間さえ止めれば、どうにかなるだろう。

なにか、手ごろな武器は……まだ、ゴルフクラブあったよな……と盾の中を探る。


ほむら「えっ?」

80: 2013/03/16(土) 06:48:27.96 ID:iikZY6eeo

敵の前にも関わらず、思わぬ事態に固まってしまった。

自分の右手には、さやかが魔法少女となった際に
よく召喚して使っていた剣があった。

しかし、今回はさやかは魔法少女になっていないし、
そもそもこの場にいない。

以前のループでもらった事もない。」

似た剣を盾に入れた覚えも無い。

何故……?


考えが纏まる前に、使い魔どもが近寄ってくる。

剣を片手に、盾の中の武器の在庫を思い出しながら、
この魔女を倒す戦略を考える。

しかし、それを実行する前に、
勝手に手が、体が動いた。

剣による近接戦闘はほとんど経験はないが、
不思議なほど自分の手にその剣は馴染み、
敵の攻撃を防ぎ、しまいには圧倒した。

使い魔を駆逐し、次は魔女へ……

グリーフシードが落ちたときに、気がついた。
この動き、さやかの動き。

81: 2013/03/16(土) 06:49:39.42 ID:iikZY6eeo

ほむら「どういうことなの……? 何故、彼女の力が……」


私はソウルジェムを見る。

普段とは違う色の輝き、
美樹さやかを象徴する、澄んだ水色の輝きを放っていた。

その輝きは徐々に弱まり、
私のソウルジェム 本来の色に戻った。



ほむら「さやかの力、便利ね……。そういえば、全体的に筋力も上がってた。
     恐らく、回復力も……」

ほむら「さやかが、力を貸してくれてるというの……?」


妙な暖かみを感じたのは確かだ。

あの時 感じられたのは、さやかからの友情であろうか。

深い友情で結ばれた相手から、
魔法少女は力を借りられるのか?

82: 2013/03/16(土) 06:50:46.20 ID:iikZY6eeo

……そういえば、時間遡行能力に停止能力。

たいして素質の無い自分には過ぎた能力だ。

何故自分にこのような能力が手に入ったかというと、
ワルプルギスの夜が現れる前一ヶ月の期間限定の能力であり、
また祈りを体現する能力であったからだと考えている。

まどかを守れる自分になりたいという強い願いがあってこそだと思っていた。

……それを差し引いても、強力すぎる能力だ。

そう、このような能力、例えば、まどか程の素質の少女が望めば、
手に入るかもしれないが……。

まさか、この時間遡行能力や時間停止は
私と最初の魔法少女まどかの間に生まれていた、絆が産んだのだろうか……

だが、まどかの能力は時間に関するものでは無かったが。

83: 2013/03/16(土) 06:52:16.23 ID:iikZY6eeo

――考えても分からない事は一旦置いて置く。

インキュベーターに聞けば分かるかもしれないが、
どっちかというと 隠しておきたいところ。

むしろ、攻撃手段が増えた、
そう考えればいい。

回復力が さやかの力で上げられるなら、
上条恭介も助けられるのかもしれない。

いい事尽くめ、ということにしておいて。

それより、志筑仁美をこのまま捨て置けない。

錯乱している者達は今は動かなくなっている。

原因不明だが倒れている人たちがいると、匿名で通報し、
私は志筑仁美を抱え、家におくることにした。


……途中で、志筑仁美の目が覚めた。

84: 2013/03/16(土) 06:53:08.67 ID:iikZY6eeo

仁美「あ、あれ? えっと…… ほむらさん」

ほむら「……どうやら、大丈夫な様ね、仁美」

仁美「あ、ええ……。でも、なぜ私は……お姫様だっこされているのでしょう?」

ほむら「嫌かしら? 姫様」

仁美「……え、あの、嫌なわけじゃないですけれど……その……」

ほむら「……貴方、覚えてない? 何も?」

仁美「……えっと、はい……」

ほむら「町工場の小さな工場で、集団自殺に巻き込まれそうになってたの」

仁美「……えっ!?」

85: 2013/03/16(土) 06:54:40.19 ID:iikZY6eeo

ほむら「貴方、明らかに心神喪失状態というか……
     普通じゃない状態で、街をふらふら歩いていたの」

ほむら「ただ、知らない人たちと一緒だったから、
     声が掛けづらくて、様子を窺ってて」

ほむら「……そしたら、工場に入っていって、
     混ぜちゃいけない組み合わせの洗剤を混ぜて

     皆で自頃しそうになっていたの……」

ほむら「助け出して、貴方のお家に向っているって所よ」

仁美「……」

ほむら「……大丈夫?薬を使われたのかもしれない、何か体調に異常は?」

仁美「……たぶん、大丈夫だと思います」

仁美「すいません、ほむらさん。助けていただいて、ありがとうございます」

86: 2013/03/16(土) 06:55:06.58 ID:iikZY6eeo

ほむら「いいわ。貴方が無事なら、それで」

仁美「……えっと、その他の方々は? その、一緒に自頃しそうだったという……」

ほむら「心配要らないわ。無力化している」

仁美「……無力化???」

ほむら「貴方を助けるのに、ちょっとばかし 邪魔だったからね。
     大丈夫。警察には知らせてあるから、その内 助けがいくでしょう」

仁美「……ありがとうございます。えっと、私の事は……?」

ほむら「貴方の事は、伏してあるわ。警察沙汰になりたくないでしょう?」

仁美「……ありがとうございます」

87: 2013/03/16(土) 06:56:06.26 ID:iikZY6eeo

仁美「……私、志筑家の者ですから、その、この辺りではそこそこの名家でして、
    その様な事に関係していると
    家の者どもに知られたらと思いますと……ぞっとします」

仁美「志筑の名を汚すような事をするな……と……お怒りを頂くところでした……」

ほむら「……」

ほむら「……貴女も、苦労しているのね」

仁美「私は志筑の娘として生まれてきたのですし……私にとって、当たり前のことなんです」

仁美「だから、そんなことは……」

ほむら「仁美にとっても、当然なことなのかしら?」

仁美「……」

ほむら「貴女は、私、ほむらの前では、ただの友人の、仁美よ」

ほむら「別に、志筑の名に興味はないわ」

ほむら「貴女の話を聞かせなさい」

ほむら「あんな状況に陥っておいて、何もないとは言わせないわよ」

仁美「……」

仁美「……私、私は……」

88: 2013/03/16(土) 06:56:38.37 ID:iikZY6eeo

腕の中の仁美は、ぽつり、ぽつり愚痴をこぼしはじめた。

家のこと、美樹さやかと上条恭介のこと、友達のこと……

私は、志筑仁美の話を黙って聞いていた。

愚痴をこぼし終わると、志筑仁美はうな垂れた。

そして、消え去りそうな小さな声で一言。

「私って本当、最低……」そう呟いた。


ほむら「……どうして?」

仁美「本当は、志筑なんてうっとうしい。普通に遊びたい」

仁美「本当は、さやかさんの事が妬ましい」

仁美「そして、私は本当の友達なんかいないんじゃないかって、
    勝手に疎外感を感じて……」

仁美「もう、何もかもいやになって……」

仁美「助けてくれたほむらさんに、愚痴ばかりこぼして……」

仁美「最低ですわ……」

89: 2013/03/16(土) 06:57:08.68 ID:iikZY6eeo

ほむら「……いいんじゃない?」

仁美「えっ?」

ほむら「仁美が最低になっても、さやかより随分上よ」

仁美「……それは、さやかさんに失礼ですわ」

ほむら「そっか、友人の悪口を簡単にいう、私って最低ね」

ほむら「貴女と同じよ」

仁美「……くすっ……そうかもしれませんわね」

ほむら「笑ってくれたわね」

仁美「…………はい」

ほむら「その方がかわいいわよ」

仁美「……!」


顔を赤くし、背ける志筑仁美。

私に照れた顔を見せたくないのか。

やっぱり、年頃の娘さんは初々しい。

昔は私も こうだったのだろうか……

90: 2013/03/16(土) 06:57:39.18 ID:iikZY6eeo

ほむら「……貴方の家に着いたわ」

仁美「……着いちゃいました」

ほむら「降ろすわよ?」

仁美「……」

仁美「……ごめんなさい、ほむらさん」

ほむら「なに?」

仁美「最低ついでに、もう一つ」

ほむら「……」

仁美「迷惑だと思いますけど、もう少し、貴方の腕の中に居させてください」



……友人として、少し甘えてくれ始めたという事だろうか。

仁美の我がままに、付き合ってやることにしよう。


今夜はまだまだ、長い夜になりそうだ。

103: 2013/03/16(土) 19:52:29.04 ID:iikZY6eeo

――眠い。魔法で睡魔を誤魔化せなかったら、
今日は休んでいた所だろう。

朝の集合場所で、私が今日は一番遅かった。

迎える4人が、挨拶してくれる。

もう、巴マミと仁美は普通に談笑しており、
互いの自己紹介が済んでいる様だ。


さやかと仁美は 何故かテンションが高い。

ちょっと、まどかとマミが不審そうな顔だ。

104: 2013/03/16(土) 19:54:26.33 ID:iikZY6eeo

まどか「……なんか、さやかちゃんと 仁美ちゃん、
     ほむらちゃんに盗られちゃった気がする」

さやか「何言ってんの、まどか。私は恭介の物で、まどかは私の物だー!」

仁美「ふふっ、盗られたなんて、嫌ですわ」

ほむら「まどか、貴方を仲間はずれにするつもりなんてないわ」

ほむら「それなら、私は まどかの物って事にしましょう」

まどか「ふぇっ!? ほむらちゃんがっ!?」

さやか「おお、じゃあ、まどかの物は私の物だから、ほむらは私の物か!」

ほむら「その理論だと、最終的に 私やまどかは 上条君の物になるのね」

さやか「それ、私が要らなくなりそうだから やめて!」


105: 2013/03/16(土) 19:54:55.89 ID:iikZY6eeo

仁美「ねえ、まどかさん。ほむらさん、幾らで売っていただけますか?」

まどか「と、友達を売ることなんてできないよっ!」

ほむら「つまり、私はずっと、まどかのものってわけね……」

まどか「あ、あうー、そ、そういう意味じゃ……っ」

さやか「ひゅーひゅーっ!」

仁美「妬けますわね」

さやか(あれ……仁美、なんか目が据わってる?)


106: 2013/03/16(土) 19:55:25.25 ID:iikZY6eeo

さやか「ところで、マミさんは私達の共有財産だよね」

マミ「えっ? 私? 共有財産なの?」

まどか「みんなのお姉さんだもん、てへへ」

マミ「……ふふ、そうかしら、お姉さん……か」

さやか「うんうん、ほむほむも同い年の癖に年上っぽいけど、
     お姉さんって言うか、頼れる漢って感じ」

仁美「わかる。漢女ですわね」

マミ「私よりも年上みたいに感じるわ」

まどか「じゃ、ほむらちゃんはみんなのパパだ!」

さやか「おかんって感じもするけどね」

ほむら「ちょっと待ちなさい」


107: 2013/03/16(土) 19:56:11.07 ID:iikZY6eeo

……あー、朝から女子中学生のテンション辛い。

あんまり寝て無いのに。

あくびを小さくすると、巴マミに気を使われた。

「暁美さん、何かあったの? 大丈夫?」とテレパシーが飛んでくる。

私は「魔女がらみに魔法少女の契約絡みで昨日ちょっとね。詳しい話は、後で話すわ」と返した。


……巴、マミ。

はあ、おかん……かぁ。


いけない。気持ちを切り替えましょう。

今日こそ、佐倉杏子を攻略しなければ。


108: 2013/03/16(土) 19:57:45.57 ID:iikZY6eeo

――と思い、巴マミに断って 風見野に向おうとする寸前。

魔女の気配を感じた。

こいつは確か 結構強い魔女だ。

仕方なく、巴マミと二人、魔女狩りに向う。


ほむら「……この結界、影の魔女ね。以前、同じタイプの魔女と戦った事があるわ」

マミ「影の魔女?」

ほむら「ええ。結界は一本道で、奥には太陽をモチーフにした塔のようなものがあるの」

ほむら「その塔に一心不乱に祈ってる魔女よ。敵を前にしても背中を向け続けるわ」

マミ「……こちらの攻撃し放題ってこと?」

ほむら「いいえ。木の枝状の触手のようなものを背中から生やすの」

ほむら「手下も用いて全方位から攻撃してくるし、かなり早くて正確よ」

マミ「厄介な相手ね」

109: 2013/03/16(土) 19:58:36.89 ID:iikZY6eeo

ほむら「問題ないわ。貴女という遠距離攻撃のスペシャリストがいるのよ?

     私は貴方に近づく使い魔や触手の攻撃を潰すから、
     魔女本体への攻撃は貴方に任せるわ」

マミ「わかったわ、暁美さん。……でも、近接戦闘って、貴方得意だったかしら?」

ほむら「まあまあ使えるわよ、私。
     貴方がいるなら、こっちにシフトしてもいいかと思ってね。
     弾薬の節約にもなるし」

マミ「なるほど」

嘘だが。

本当は、手に入ったさやかの力を試したい。

私のソウルジェムは青く輝き、さやかの力を体現している。


110: 2013/03/16(土) 19:59:48.82 ID:iikZY6eeo

影の魔女と対峙し、巴マミとのコンビプレー。


……これがかなり嵌った。

私は戦いの経験が さやかとは段違いであるし、
少なくともコンビプレーにおいては、
今までの時間軸のさやか本人より上手く戦えている自信がある。

二人ともほぼ無傷で撃破できた。

私も軽い切り傷が出来たが、
さやかの治癒力のお陰で既に消えている。

私の戦術の幅はこれでかなり広がったといえる。

気になる点といえば、一つ。

これは自分の能力を使うより、ソウルジェムの消耗が激しいらしい……

慣れの問題かもしれないが、研究していくとしよう。

111: 2013/03/16(土) 20:02:53.58 ID:iikZY6eeo

結界が消え、解散しようとした時……

奴が現れた。



QB「やあ、二人とも。君達が揃うと、安定感が違うね」

マミ「きゅうべぇじゃない、どうしたの? 一昨日から姿を見せないけど」

QB「僕にも色々あるんだよ」

ほむら「……じゃあ、今更 何をしに姿を現したわけ?」

QB「……」

マミ「暁美さん……?」

QB「いやね、影の魔女……エルザマリアは中々強力な魔女だ。

   それをいとも簡単に撃破して見せた君達に、
   とっても有益な情報を聞かせてあげようと思って」

マミ「有益な情報?」

QB「うん、彼女の性質は独善。全ての生命のために祈り続ける、心優しい魔女だったんだよ」

ほむら「……それが?」

QB「魔女になる前だって、正義感の強くて、信心深い子でね」

ほむら「!?」

マミ「魔女になる前?」

112: 2013/03/16(土) 20:04:31.31 ID:iikZY6eeo

ほむら「……きゅうべぇ。貴方、何をいいだすの?」

QB「僕が言うまでも無く、君は知っていそうだね。暁美ほむら。
   でも、マミは知らない。だから、何が魔女になるのか、教えてあげようと思ってね」

マミ「……使い魔が成長して魔女になるんじゃないの?」

QB「大元の魔女はどうやって生まれたと思ってるんだい? マミ」

マミ「魔女は呪いから生まれた、絶望を振りまく存在……」

マミ「ん……? 魔法少女が希望を振りまく存在で、人間の少女から生まれる。
   とすると、もしかして魔女だって……」

QB「中々察しがいいね、マミ。でも、それだけじゃまだ足りないよ」

QB「いいかい、マミ。魔女というのは……」

113: 2013/03/16(土) 20:06:22.06 ID:iikZY6eeo

ほむら「そこまでよ、待ちなさい。インキュベーター」

QB「……ふうん。その名前も知ってるんだね」

マミ「いんきゅべーたー……?」

ほむら「なぜ、それを突然 明かす気になったのかしら?」

QB「それは勿論、君の所為だ。
   君の所為で、エネルギーの回収効率が非常に悪くなった」

ほむら「ざまぁないわね」

マミ「きゅうべぇ……あの……」

ほむら「それで、マミに教えようって訳。なるほどね?」

ほむら「真実を知られて対策をとられるリスクをおかしてまで、
     全てを知った時の絶望に掛けようって事?」

QB「そうだね。それだけじゃ、百点満点じゃないけど……
   君に教える筋合いではない。
   マミに魔法少女の真実、教えるまで 黙っててくれるかな?」

ほむら(ワルプルギスの夜の時の戦力を言っているのね……)

ほむら「……私からも一つ、教えてあげる事があるわ、インキュベーター」

QB「なんだい?」

ほむら「なぜ、私が全てを知っているか。なぜ、貴方が私の事を覚えていないか」

ほむら「私の願いの所為だと、言ったわね」

QB「うん、確かに言ったね」

ほむら「私が貴方達がまともに活動出来ないよう、
     貴方達の存在や魔法少女、魔女の存在にバグを生じさせる様、祈ってたとしたら?」

ほむら(嘘だけど)

QB「……なんだって?」

114: 2013/03/16(土) 20:07:56.64 ID:iikZY6eeo

ほむら「早く調査に戻った方がいいわよ。
     貴方の仕事に影響を及ぼしているのも、そのバグのおかげ。
     時が過ぎるほど、さらにその影響が大きくなるわ」

QB「……先程の君が発現したイレギュラーな能力もバグの影響かい?
   まるで他の魔法少女の力を借りているようだったが」

ほむら「ふふっ、そうよ」

ほむら(おお、ナイス勘違い。でもインキュベーターも知らないのね)

QB「……いいだろう、ほむら。僕はこの場を去るよ」

QB「だけど、僕はマミに「魔法少女の真実」というキーワードを吹き込むだけで充分なんだ」

QB「真実を、暁美ほむら、君から聞くか、僕から聞くかの僅かな差にすぎない」

QB「君が嘘を言ったって、マミは僕に確認を取るだろうから……」

QB「君のそのはったりかもしれない発言も、
   ただ事態の進展を少しばかり遅らせるに過ぎないんだよ」

115: 2013/03/16(土) 20:09:41.49 ID:iikZY6eeo

QBは立ち去った。

私のはったりで、上手く立ち去らせる事が出来た。

確かに、マミは真実を知る事で、
絶望して魔女になるか、自頃する可能性が高い。

マミが自頃する場合だって、エネルギーこそ回収できないが
ワルプルギスの夜の撃破の可能性が低くなる分、
インキュベーターに利する事になる。

……だが、インキュベーター達は やはり感情を上手く理解できていないようだ。

同じく真実を知るとしても、
伝える相手、伝え方によって、反応は変わるものだ。



マミ「……」

ほむら「……知りたい? 巴さん」

マミ「もちろんよ、だって、もしかして、私が今まで頃してきた魔女って……」

ほむら「……長い話になるわ」

ほむら「私か、貴方の部屋に移動してから話をしましょう」

マミ「……ええ、わかった。私の部屋に、行きましょう」

116: 2013/03/16(土) 20:19:22.93 ID:iikZY6eeo

道中は無言。

沈黙の時間を利用し、話す内容について考える。

いっそ、ループの事まで、全て話してしまうか?

いや、それは避けたい。

私の繰り返しを明かす事による、メリットは少なかろう。

むしろ、まどかに知れた場合、まどかを追い詰めるデメリットとなる。

これが決定的だ。

インキュベーターにも 時間遡行について知れる可能性が増えるのは避けたい所だ。

私の適当な嘘から生まれた とんでもない誤解を続けて、踊り続けて欲しい。

巴マミ以外にも、魔法少女の真実は兎も角、ループは話さないでおこう。

仲間にも嘘をつくのか、真実を隠すのかと、
全てを知るものがいれば 責めるかもしれないが構うものか。

そんな者はいないし、仲間を守る為なら、
多少の良心の呵責くらい、耐えてみせよう。

ただ、当然 時間遡行その他の事を話さないのだから、
ワルプルギスの夜の警告を予め出来ない。

どの道、余計な不信感を生む事が多いから、どうでもいい。

どうせ、インキュベーターはワルプルギスの夜の出現について、
早めに警告をしてくる。

最初の時間軸でも、巴マミは私と知り合ってすぐに
ワルプルギスの夜について言及している。

あいつが伝えたのだろう。

現状でも、明かした方が まどかに契約を促す事になると思われる。

警告時に、私も初めて知った顔をすればいいだろう。

それまで、秘密裏にワルプルギスの夜討伐計画を進め しらばっくれる。

117: 2013/03/16(土) 20:20:42.28 ID:iikZY6eeo


――そんな事を考えながら、巴マミの部屋に到着。

暗い部屋で、電気もつけずに二人向き合い、
会話を始めた。


ほむら「巴さん……」

マミ「はい」

ほむら「真実が聞きたいのね? どんな真実でも、聞く覚悟はある?」

マミ「……当然よ。私は知らなきゃいけないわ」

ほむら「……なら、一つ条件があるわ」

マミ「条件……?」


ほむら「貴方を抱かせなさい」





118: 2013/03/16(土) 20:22:23.13 ID:iikZY6eeo

マミ「……」

ほむら「……」

マミ「……えっ!?」

ほむら「駄目だというなら、この話はなかった事に」

マミ「えええええっ、いや、ちょっと、待って! 何よ、その条件!」

マミ「……というか、貴女、そっち系だったの!?」

ほむら「何を誤解してるか知らないけど、頬を染めないで頂戴。
     性的なニュアンスで考えているなら、答えはNOよ。

     少なくとも、貴女相手にそんな気分にはなれないわ」

マミ「私相手にはって……。じゃあ、なんなのよ、その条件」

119: 2013/03/16(土) 20:23:40.92 ID:iikZY6eeo

ほむら「貴女を拘束するためよ」

マミ「拘束……?」

ほむら「これから話す事は、貴女にとってかなりショックが大きいと思うわ。
     貴方の想像を超えるぐらい。貴方の正気を失わせるくらいに」

マミ「……」

ほむら「信じる、信じないは貴女の勝手だけれど、
     信じてくれた時に、私と貴女を守る為の手段よ」

マミ「……そんなに、酷い事なの? 魔法少女の、真実というのは」

ほむら「私の昔の戦友に、錯乱して、
     仲間の魔法少女の命を奪った人がいるわ」

マミ「……っ!?」

ほむら「貴女の事を信じないわけじゃないけれど、お願いよ。抱かせて頂戴」

マミ「……そんな事が不安なら、私を縛ればいいじゃない。ロープか何かで」

ほむら「……」

マミ「……」

ほむら「……守りたいのよ」

マミ「えっ?」

ほむら「貴女の、心を。貴女は、大事な人だから」

マミ「……大事な人?」

ほむら「ええ。私じゃ役者不足かもしれないけど、少しでも支えられるなら……」

120: 2013/03/16(土) 20:25:10.95 ID:iikZY6eeo


マミ「……」

ほむら「……」

下を向いて固まっている巴マミを、抱き寄せる。

拒絶するか迷うように 少し体が動いたが、
結局 私の腕から逃げようとはしなかった。

座ってる私の胸に、マミがしな垂れかかっている形だ。

その格好で、マミの髪の毛を手で梳きながら……
それから、私は真実を語った。

魂のありか。

それから、少女が女になる時のこと……。

インキュベーターのこと。

一方的に語る私。

巴マミはというと……静かに聴いており、特に反応は無い。

121: 2013/03/16(土) 20:27:11.15 ID:iikZY6eeo

ほむら「……以上よ。それが私が知る真実」

マミ「……」

ほむら「信じて、もらえるかしら……?」

マミ「……信じたくない」

ほむら「そう」

マミ「でも、落ち着いて考えて見れば、納得の出来る話」

マミ「じゃあ、私達、魔法少女は、氏ぬしかないじゃない」

マミ「いえ、そもそも、私達 氏んでるのよね。それに、元・魔法少女の子を頃して……
   私、化け物なんだ……。消えるしかない……」

122: 2013/03/16(土) 20:28:45.03 ID:iikZY6eeo

ほむら「そんな事ないわ」

ほむら「私達は、生きた、人間よ」

マミ「……どこが? 魂を石ころに封じられて、体はゾンビ……」

ほむら「そんな風に私も捻くれた事があったわ」

ほむら「でも、違う。人間を人間と決定付けるのは、
     魂の在り処じゃないわ、魂のあり方よ」

マミ「……あり方?」

ほむら「そうよ、貴方が実際にどう考えて、どう行動するか」

マミ「……どう行動するか……」

ほむら「そもそも、貴方は生身の人間というものを特別に考えすぎよ」

ほむら「魂が肉体にあったときだって、結局私達の意識は、
     複雑に絡み合った脳神経が 
     電気信号でやり取りしあった結果、生まれてるに過ぎない。

     それを無機的に再現する事だって、人間の脳科学でだって、
     いつかは可能だっていわれてるわ?」

ほむら「それなら、前の体と、今の体……」

ほむら「有機的にやってるか、無機的にやってるかの差にすぎないのでしょう」

ほむら「割り切ってしまえば、些細な事でしかないわ」

マミ「そんなに簡単に割り切れない!」

ほむら「でしょうね。でも、歳をとれば割り切れるようになるわ。
     それまで、蓋でもして 心の奥にしまってなさい」

マミ「……」

123: 2013/03/16(土) 20:30:48.42 ID:iikZY6eeo

ほむら「それより、今まで自分が普通の人たちを
     魔女から救ってきたっていう功績を、誇りに持ちなさい」

ほむら「魔女だって、呪いを振りまく存在から開放されて、喜んでいるはずよ」

ほむら「悪いのは、全てこのシステムを作ったインキュベーター。いい?」

マミ「……それって、自分の都合のいい所しか、見てないだけじゃない?」

ほむら「そうね、でも間違ってもないでしょう?」

ほむら「そうやって、自分の都合のいい所をみるのも人間よ。

     皆、ある程度はそうやって生きてるの。
     でないと、普通の人間だって生きていけないわ。
     生きてる、それだけで、色んな悩みを抱えていくことになる。

     全部、真正面から受け止めていたら壊れるわよ。適度に受け流さなきゃ」

マミ「貴方は、強いのね。切り替えが上手いわ。
   本当に、私より年下なの……」

ほむら「……今回で34歳になるわ」

124: 2013/03/16(土) 20:31:55.26 ID:iikZY6eeo

マミ「……え? 何を言って……どうみても、そんな歳には…… というか、中学は?」

ほむら「魔法よ。外見も、戸籍も、魔法でどうとでもなるわ」

ほむら(勿論 嘘だが)

マミ「うそ……たしかに中学生らしくない所はおおいけど」

ほむら「もう貴方くらいの子供がいても、おかしくないのよね。ヤンママなら」

マミ「……」

ほむら「ふふふ、驚いたかしら?」

マミ「……信じられないけど、貴方ならありえそう……」

ほむら「……それって、おばちゃん臭いってことかしら」

マミ「あ、違うわよ! うん!」

ほむら「そう……」

125: 2013/03/16(土) 20:33:16.58 ID:iikZY6eeo

マミ「でも、何で中学生になったの……?」

ほむら「秘密よ」

マミ「なんで!」

ほむら「その方が格好いいじゃない」

マミ「……なにそれ、なくはないけど」

ほむら(なくはないの?)

ほむら「魔法少女なら、中学生の方が都合がいいのよ」

マミ「そんなものかしら……」

ほむら「そうよ。それより、信じてくれたのなら……。マミ」

マミ「なに?」

ほむら「前から、考えていた事があるの」

マミ「……? 考えていた事……?」


ほむら「貴方、私の子供にならない?」


126: 2013/03/16(土) 20:34:01.54 ID:iikZY6eeo

マミ「……」

ほむら「……」

マミ「……ええええええっ!?」

ほむら「……」

マミ「こ、こ、子供? 暁美さんの!?」

ほむら「嫌かしら? 言っとくけど、本気よ?」

マミ「な、な、なんで……」

ほむら「貴方のママになりたいから」

マミ「ま、ママって……」

ほむら「ママって呼んでくれる?」

マミ「い、いやよ。恥ずかしいわ……後輩だって思っていた子を」

127: 2013/03/16(土) 20:35:04.68 ID:iikZY6eeo

ほむら「誰に対して恥ずかしいの。私しか見ていないじゃない」

マミ「だから恥ずかしいのよ!」

ほむら「……ふむ、年頃の娘さんは難しいわね……」

マミ「私より幼く見える外見で何を言ってるの!」

ほむら「細かい事はいいのよ」

マミ「細かいかしら……」

マミ「……それより、暁美さん」

ほむら「呼んでくれないのね……なに?」

マミ「……割り切って生きていて、どうするの?」

マミ「早いか遅いかなだけ、知ってしまったからには、自ら命を絶たなきゃいけないわ」

マミ「それなら、いっそ……」

ほむら「私は、貴方に生きていて欲しいわ」

マミ「だから……!」

128: 2013/03/16(土) 20:37:38.54 ID:iikZY6eeo

マミ「先延ばしすると……余計、怖いじゃない! いつか、自頃しなきゃいけない……」

マミ「それなら……、勢いにまかせてっ!!!」

ほむら「大丈夫よ、マミ。貴方に自殺なんて私がさせないわ。それに、魔女にもさせない」

マミ「魔女に……させない?」

ほむら「もし、貴方が絶望の淵にたって魔女になりかけたとしたら」

ほむら「その時も、こうやって、私の腕の中で……私が眠らせるわ」

マミ「……」

ほむら「貴方に自殺なんて怖い事はさせない。だから、安心して生きて、マミ」

ほむら「貴方の人生、私が責任を取る」

マミ「暁美さん……貴女……」

ほむら「一緒にいるわ、貴方と」

マミ「……」

129: 2013/03/16(土) 20:38:51.90 ID:iikZY6eeo

マミ「……貴方、知ってるの? 知ってて、そんな事を言ってくるの?」

ほむら「……?」

マミ「私、お父さんも、お母さんも、事故で氏んじゃって、
   私も氏にそうで、そのとき、QBが来て……」

マミ「自分が助かる事だけ考えて……」

マミ「私は……パパ……ママ……」


顔を決して上げようとしない巴マミは、
体全身を細かく震わせている。

真実を告げて彼女を苦しめた上、
さらに辛い事を思い出させて、
追い討ちを掛けたようなものだっただろうか……

130: 2013/03/16(土) 20:39:21.74 ID:iikZY6eeo

マミ「ゾンビになって、パパもママも見捨てて、元魔法少女を食い物にして……」

マミ「私はきっと、氏んだ後にもパパやママには会えないのね」

ほむら「……」

マミ「……でも、そうなの。私は、結局、氏にたいと思っても 氏ぬのが怖い……」

マミ「一人で生きるのも怖い」

マミ「ねえ、本当に 甘えてもいいの? 貴方が傍にいてくれて、
   最後の時は、貴方にこうやって抱かれながら……」

ほむら「我慢する必要は無いわ、マミ。私は交わした約束は忘れない」

マミ「……っ、……うぅうううう、おかしいよ、涙が……」

ほむら「……泣きたいだけ、なけばいいわ」


131: 2013/03/16(土) 20:40:17.51 ID:iikZY6eeo

巴マミは静かに泣きつづけた。

30分ほど、そうしていただろうか。
泣き止んだ後、そのまま寝息を立て始める。

強がってても、14、5年しか生きていない娘だ。

今は年齢相応に見える……。

犠牲にしちゃいけない。

まどかだけじゃない、
この子の未来だって変えなきゃ。

私は絶対、魔法少女の未来を変えてやる。



……巴マミの体勢を少しずらし、膝枕をしてやる。

この体勢ではまともに眠れそうにはない。
今夜もまた、長い夜になりそうだ。

痺れや血行の悪化、魔法で改善しなきゃなぁ。

132: 2013/03/16(土) 20:42:37.49 ID:iikZY6eeo

――

ほむら「……ん、んんー…… ほむ……」

マミ「あ、起きた……?」

ほむら「あ…… 朝なのね。おはよう、マミ」

マミ「おはよう……、その……ずっと膝枕させてて、ごめんなさい」

ほむら「いいのよ。それくらい、お安い御用よ」

ほむら「それより、貴方はよく寝れた?」

マミ「うん、久しぶりに、よく寝た」

ほむら「そう……良かったわ」

マミ「……私、結構 年上の貴方に生意気いってて、あなたを振り回したのに……。
   あなたって、本当に心が広いわね」

ほむら「大したことではないわ」

ほむら「今回の私は 寛容さ・おかん級を目指しているからね」

マミ「今回……?」

ほむら「気にしなくていいわ。ママにするみたいに、甘えていいって事よ」

マミ「……う、うん……」


マミ「呼んじゃうから……ね?」

133: 2013/03/16(土) 20:43:07.15 ID:iikZY6eeo


その後のマミは、何かにつけて私の事をママと呼ぼうとしてくれた。

一々 照れくさそうなのが初々しい。


朝ごはんを用意しながら、

私も調子に乗って何度も呼ばせようとして、
あやうく学校を遅刻しかけた……


134: 2013/03/16(土) 20:45:35.69 ID:iikZY6eeo

――さて、今日こそ。

私は風見野の地に立っていた。

目当ての人物を、
スーパーに付属している小さめのゲームセンターで見つけた。



ほむら「……佐倉杏子さん」

杏子「あん……? 何でアタシの事を知っているんだ?」

ほむら「これよ」


左手の甲を佐倉杏子に向ける。

そこに見えるのはソウルジェムだ。

得心したように、佐倉杏子は頷いた。


135: 2013/03/16(土) 20:47:24.63 ID:iikZY6eeo

杏子「なるほどねぇ……。きゅうべぇにでも聞いたのかい」

ほむら「そんなところよ」

杏子「それで? わざわざ風見野まで出張ってきて、一体何の用なのさ?
    ……いや、同じ魔法少女に聞くだけ野暮ってもんか」

杏子「やるかい? 場所だけは変えなきゃな」

ほむら「その必要は無いわ」

杏子「正気か? ここスーパーだぞ? 周りに人が一杯居る」

ほむら「私の用はそんな事じゃないわ」

杏子「……あん?」

ほむら「喰うかい?」

杏子「はぁ……? 飴玉?」

ほむら「飴ちゃんは嫌いかしら。
     困ったわね、ロッキー用意しておけば……」

ほむら「お菓子は手持ちが他に無いから、後はお弁当しかないわ。
     フードコートまで我慢してね」

杏子「いや、意味が分からないんだけど。
    縄張り奪いに来たんじゃないのか?」

ほむら「いいえ、餌付けに来たのよ」

136: 2013/03/16(土) 20:48:24.77 ID:iikZY6eeo

杏子「ちょっと待て! 餌付けだと!? アタシをか?」

ほむら「もちろん」

杏子「ふざけんな! あたしは帰るぞ!」

ほむら「ですよね。じゃあ、1人で食べるしかないし、食べきれない分は捨てるしか……」

杏子「おい、ちょっと待て。食べ物を粗末にするな」

ほむら「だって、しょうがないじゃない。貴方の所為よ」

杏子「はあっ!? なんでだよ!」

ほむら「当然でしょう。貴方の為に作ってきたのに。責任取りなさい」

杏子「なんだよそれ……」

ほむら「まぁ、ご飯食べるくらいいいじゃない。
     どうせホームレスなんだし、魔女狩り以外暇でしょう」

杏子「……こっちの事は何でもお見通しってか。
    いいだろう、話くらい聞いてやるよ。ただし、お前の事も聞かせてもらうぞ」

ほむら「もちろんよ。……と、その前に」

杏子「なんだ、これ。紙袋」

ほむら「女性用の夏用腹巻よ」

137: 2013/03/16(土) 20:49:27.23 ID:iikZY6eeo

杏子「……はあ? なんで腹巻!?」

ほむら「ほら、貴方ってば常にお腹出してるから 心配になって。
     あまり服に余裕もないのでしょう?」

ほむら「夏だからって常にお腹出してると壊しちゃうわよ。
     ここの屋内、ただでさえ無駄に冷房効いているんだから」

ほむら「お洒落したいのは年頃だから分かるけど、
     周りに気を使わなくていい時ぐらいは ちゃんとしなさいな」

杏子(なんだこいつ……おばちゃんくせぇ……ちょーうぜぇ……)



フードコートに移動し、人のいない一角の席につく。

弁当を包んだ風呂敷を広げ、
昼飯タイムとなった。

二つのお弁当箱の前に座る、二人の魔法少女である。


ほむら「ほら、不安なら私が毒見してから食べるといいわ」

杏子「へそ出しルックしてる人間に腹巻を手土産にもってくる様な奴に
    そんな警戒してないよ」

杏子「……いただきます」

138: 2013/03/16(土) 20:51:06.19 ID:iikZY6eeo

ほむら「若い子にしては ちゃんと「頂きます」が言えて感心ね」

杏子「おい、お前 本当に幾つだよ。魔法少女って不老で、実はおばちゃんか」

ほむら「14だったかしら」

杏子「かしらって何だ。……まぁ、あんたがおばちゃん臭いのは素なんだろうな」

ほむら「おばちゃん臭い……やっぱりそうなのね。いいわよ、どうせ中身34だし……」

杏子(あれ……気にしてら……34……?)


杏子「まあまあ、食えるじゃねぇか」

ほむら「ありがとう」

杏子「……そろそろ本題に入るか? まさか、本当に餌付けに来たんじゃないだろ?」

ほむら「本題……そうねぇ」


ほむら「貴方が欲しいの」

杏子「はあっ!?」

139: 2013/03/16(土) 20:52:14.30 ID:iikZY6eeo

杏子「て、て、てめぇ、そういう趣味の奴か!
    あたしにはそんな趣味ねえ!」

ほむら「何を考えているのか知らないけれど、
     魔女狩りのプロとしての貴方が欲しいって意味よ」

杏子「……なんだと?」

ほむら「一ヶ月間、私の住む街で魔女狩りをして欲しい」

ほむら「そして、グリーフシードを集めて、売って欲しいのよ」

杏子「……馬鹿にしてんのか? グリーフシードだぞ? 金で売れるか!」

ほむら「契約してくれるなら、前金として五十万円を渡すわ」

杏子「……」

ほむら「……」

140: 2013/03/16(土) 20:54:10.09 ID:iikZY6eeo

杏子「……五十万だとっ!?」

ほむら「ええ。支払いは、固定給部分+歩合給部分の二つに分ける。

     固定給部分として、
     前金として五十万円、契約期間が終了したら、更に百万円。
     これは、魔女を真面目に狩ってくれるなら、固定で支払うわ」

杏子「えっ……、えっとぉ、全部で百五十万……???」

ほむら「歩合給部分もあるから、それは正確じゃないわね」

杏子「歩合給って何だ……」

ほむら「貴方の能力しだいって事よ。
     グリーフシード一つにつき、五万支払うわ」

杏子「……五万……」

ほむら「魔女を撃破してもグリーフシードが入手できない場合、もしくは、
     自分で使わなければならない場合は三万」

杏子「グリーフシードを売らなくてもくれるのかよ……」

ほむら「ソウルジェムの濁りが激しくないなら、
     二個に一個は私に売ることを義務付けるけど」

杏子「なるほどな。それでも二個に一個か。
    まぁ、濁りを考慮に入れてくれるなら悪かねえ」

141: 2013/03/16(土) 20:55:11.02 ID:iikZY6eeo

ほむら「更に、使い魔を倒した場合も、一体三千円支払う」

杏子「使い魔一体で三千円……!?」

ほむら「簡単に倒せる使い魔で三千なら、
     魔女を養殖しようなんて考えないでしょ?」

杏子(お見通しかよ……)


杏子「しかし、滅茶苦茶な額だな……」

ほむら「そうかしら? 命がけなのよ、当然よ」

杏子「そうかい……。しかし、使い魔にまで金を払うとは……酔狂な奴」

杏子「あ、でも、それどうやって証明するんだよ。
    使い魔なんて何も落とさないから証明できないだろ」

ほむら「貴方一人で戦わせるわけじゃないわ」

杏子「ああ、あんたと戦うのか。そうだよな」

142: 2013/03/16(土) 20:55:43.42 ID:iikZY6eeo

ほむら「違うわよ。余裕があるときは私も行くけど、
     基本的には、私が信頼している魔法少女とのコンビよ」

杏子「あん……?」

ほむら「私が住んでいる街が……見滝原だと言ったらわかるかしら?」

杏子「……巴マミか! 通りで、私を知ってるはずだ!」

ほむら「貴方がこの契約をする最大のデメリットがそこかもしれないわね」

杏子「……」

ほむら「どうする? 佐倉杏子さん……?」

杏子「悪いが、あいつと一緒にっていうのは出来ないね」

ほむら「百五十万が確約されていても?」

杏子「ぐっ……」


143: 2013/03/16(土) 20:57:11.42 ID:iikZY6eeo

ほむら「百五十万あれば、しばらく生活に困らないわね?

     それに、グリーフシードを私に渡さなくても、
     魔女や使い魔を狩るだけで更に額が増える。

     楽に二百万は越せるでしょう」

杏子「……に、にひゃく……」

杏子(グリーフシードをあまり渡さずにそれだけ稼げるってのはでかい……)


ほむら「貴方は生きていくのに魔法を活用しているから、
     その額があれば、かなりグリーフシードの消費も減るでしょうね。

     メリットの方が大きいと思うけど……?」

杏子「……」

ほむら「ま、それでも、いけ好かない人と仕事は出来ないわよね」

ほむら「話はここまで。付き合ってくれてありがとう。それじゃ」

144: 2013/03/16(土) 20:57:47.33 ID:iikZY6eeo

弁当を片付け始めると、佐倉杏子は立ち上がって慌て始めた。


杏子「ま、ま、待て! そんなに急ぐ事ないだろ!」

杏子「まだ弁当だって食い終わってないだろ?」

杏子「その話が本当なら、考えてやってもいいし!」

ほむら「あら、そう?」

杏子「でも、何であんた、そんな額でアタシを雇おうとするのさ」

杏子「マミがいるんだろ?」

ほむら「魔女との戦いは危険な事も多いわ。私は安定性を高めたいの」

杏子「それじゃ、あんたがマミと戦えばいいじゃん」

ほむら「私は忙しいの。お金で時間を買いたい」

杏子「……ふーん」

杏子「マミと戦うってのが引っかかるが、一ヶ月限定って考えればいいか……」

杏子「言っとくけど、私は無駄に馴れ合うつもりはないからな?」

杏子「あんたやマミと一緒にいるのも、魔女狩りの時と金をもらう時だけだ」

杏子「後は、アタシの自由にさせて貰う」

145: 2013/03/16(土) 20:59:20.62 ID:iikZY6eeo

ほむら「それで問題ないわ」

杏子「へっ……。それじゃ、五十万、早速よこせよ」

ほむら「その前に、雇用契約書に記入してもらうわ」

杏子「……うへっ……何その紙、文字小さいし、めんどくせぇ……」

ほむら「これが双方の為よ」

杏子「ちぇ……。ちょっと待て。書いてやるよ」

ほむら「内容も一応、確認して頂戴」



内容を確認しながら、佐倉杏子は
意外にも真面目に、丁寧な字で記入していく。

それから、五十万円の入っていた封筒を、
佐倉杏子に渡した。


杏子「……どうしよう、おい。本当に五十万……本物だ」

ほむら「貴方の自由にしていいのよ」

杏子「あんた、これアタシが持って逃げるって思わないのか?」

ほむら「双方損をする最悪な選択ね、それは。
     貴方はそんな馬鹿じゃないわ」

杏子「……そいつはどうも」

146: 2013/03/16(土) 21:01:00.55 ID:iikZY6eeo

杏子「……ん? ちょっと待て、マミと一緒に戦うなら、
    マミの分のグリーフシードはどうすんだ?」

ほむら「マミと一緒に戦う事で、二人ともソウルジェムの濁りも抑えられると思うわ。
     その分、売ってもらえる数も多くなると踏んでる。

     それに、私は戦う機会が少ないからあまり要らないし、
     二個に一個を売ってもらえれば充分でしょう。

     だから、さっきの契約のグリーフシードの数は
     マミの取り分を考えなくていいわ

     魔女の撃破数についても、止めじゃない、協力すれば数に含む。
     契約書にも書いてあるから」

ほむら(それにグリーフシードのストックは私自身 結構あるしね……)

杏子「あっそう、りょーかい……」

杏子「……にしても、マミと仲がいいんだな」

ほむら「ええ」

杏子「……」

147: 2013/03/16(土) 21:01:38.46 ID:iikZY6eeo

杏子「さて、じゃあ、早速 見滝原にいくか」

ほむら「案内するわ」

杏子「いいよ。私は住んでた事あるから。マミから聞いてない?」

ほむら「違うわよ。貴方が見滝原にいる間に住む、アパートよ」

杏子「はあ!? あんたと一緒に住むのなんてアタシはごめんだぞ!?」

ほむら「心配要らないわ。一人用のアパートよ。
     最低限の家具も揃ってる。自由に使って頂戴」

杏子「……いたれりつくせり、だな」

ほむら「ご飯が食べたくなったら、マミの部屋にくれば
     朝食と夕食もただで食べれると思うけど」

杏子「そいつはごめんだな」

ほむら「そう、残念ね。じゃあ、何か差し入れするわね」

杏子「……ちぇっ。なんだか、あんたには敵わなそうだな……」

148: 2013/03/16(土) 21:03:00.83 ID:iikZY6eeo

佐倉杏子を、滞在期間中に使用してもらうアパートに案内した後、
一応 顔合わせをするために巴マミのアパートに連れて行った。

なにやら不満そうだが、大人しくしている。


インターホンを鳴らすと、巴マミが飛び出てきた。



マミ「あっ! ママ、おかえりなさい!
   チーズケーキ上手く焼けたよ! えへへ、食べて、食べて!」



149: 2013/03/16(土) 21:03:58.22 ID:iikZY6eeo

杏子「……」

ほむら「……」

マミ「……」

ほむら「ご、ごめんなさい、マミ……さん。予め連絡を入れておけば……」

マミ「いいの……ママ……ほむらさんは 悪くないわ……」

マミ「…………ところで、えっと、なんで……」

ほむら「あっと……、魔法少女仲間ということで、私が彼女を雇ったの」

マミ「そ、そう……」

杏子「あ、ども……」

マミ「え、ええ……」

ほむら「……」


ほむら(気まずい……)

杏子(気まずい……)

マミ(気まずい……)

150: 2013/03/16(土) 21:04:30.61 ID:iikZY6eeo

杏子「……あ、あの……さ」

マミ「な、なにかしら!佐倉さん!」

杏子「わ、私は何も見なかったからな、マミ!」

マミ「そ、そ、そう……。ありがとう」

ほむら「優しいのね、杏子」

杏子「うるせぇ!」


マミ「……さ、佐倉さん。また、一緒に戦ってくれるの?」

杏子「そういう契約だからな。こいつと」

マミ「……そう、よろしくね」

杏子「ああ……」

マミ「ほむらさん、後で聞きたい事があるから」

ほむら「ですよね……」

151: 2013/03/16(土) 21:09:06.49 ID:iikZY6eeo

佐倉杏子は早々に立ち去った。

私とマミだけが残される。

やはり気まずい。


マミ「……どうして……? 契約?」

ほむら「私は魔女と戦う時間がないの。どうしてもやりたい事があって……。
     だから、雇ったの。貴方と戦ってくれる人が欲しかった」

マミ「ママ、それなら、私なら別に一人で大丈夫だよ? ……信用できない?」

ほむら「貴方が一人で戦ってると思うと、心配になるのよ。
     大丈夫だと頭では分かっていてもね」

マミ「……」


マミ「……まぁ、いいけど。ママと戦えないんだ」

ほむら「ごめんなさい」

マミ「いいよ、きゅうべぇに、何かしかけてるんでしょう?」

ほむら「そうよ、私は、魔法少女の未来を変えたいの」

マミ「……そっか、私には言えない?」

ほむら「言えるわ。だけど、それはもうちょっと準備が出来て、
     具体的な計画が立ったら、ね。

     あまり不確実な事は言いたくないし」

マミ「うん、わかった」

ほむら「ふふ、いい子ね」

マミ「……」

152: 2013/03/16(土) 21:09:50.38 ID:iikZY6eeo

なんだか、マミが急に挙動不審になった。

もじもじしている。
何か言いたいようだ。

遠慮がちにマミが切りだした。


マミ「えっと、いい子なら、その、お願い、聞いてくれる?」

ほむら「お願い? なにかしら」

マミ「あの、ほむら……さん、ママなんだし、一緒に、住みま……せんか?」

ほむら「……なんで敬語なの?」

マミ「な、なんとなく! それより、どう?」

ほむら「一応、寝具とか、生活に必要そうなもの、持ってきてあるわ」

マミ「! そ、それじゃ!」

ほむら「ありがとうね、マミから言ってくれて。ええ、一緒に住みましょう」

マミ「うん!」

153: 2013/03/16(土) 21:11:54.17 ID:iikZY6eeo

マミは本当に嬉しそうにしてくれている。

私に抱きついてきたあと、
すぐに何かを思い出したのか、

台所に走っていった。

そして、すぐに戻ってくる。



マミ「ママ……これ」

ほむら「なに……、ティーカップ???」

マミ「これ、ママのティーカップ……えっと、ママ、もうマミのママなんだから、
   このカップにね、いつでも、マミが紅茶を用意してあげるから……」

ほむら「……私がコーヒー派だといったら?」

マミ「……あ! じゃ、じゃあ、コーヒーのこと、勉強する!」

ほむら「ふふ……ありがと」

マミ「だからね、その、家族としての、証ってことで……このカップ、受け取って……」

ほむら「ええ……わかったわ」

154: 2013/03/16(土) 21:13:42.72 ID:iikZY6eeo

マミから手渡されたカップを手に取る。

上品なティーカップだ。

マミの手元に残ったカップと御そろいでもある。

……それはいいんだけれど。



ほむら「ねえ、マミ?」

マミ「なに? ママ!」

ほむら「このカップ……私の名前が書いてあるんだけど……」

マミ「え? うん……。家じゃ普通だったんだけど……。あ……おかしい……?」



「名前はちょっと……」の一言がいえず……

私は、何か失敗だったかしらと不安そうなマミの頭を撫でてやった。

165: 2013/03/17(日) 19:45:38.19 ID:OMkFtv4eo

――佐倉杏子とマミのコンビプレーは、やはり強力だった。

第一回のパトロールには私も付き合ったのだが、
着実に、魔女と使い魔を狩っている。

私の出る幕は殆ど無かった。

……ただし、お互い、気を許せてはいない様だ。

昔、仲違いした関係なのだから、当然だろう。

上手く、関係を改善できないものか。

マミを先に帰し、本日の清算の為に佐倉杏子のアパートについていく。

……佐倉杏子の部屋に入り込んで、第一声。

166: 2013/03/17(日) 19:46:13.85 ID:OMkFtv4eo

杏子「……おい! 暁美!」

ほむら「ほむらでいいわ」

杏子「じゃ、ほむら! 昨日の事だが、なんだ、あのマミは。
    何でお前の事をママって言ってんだ!」

ほむら「あの子が私の娘だからよ」

杏子「どう見ても、お前の方が年下だろうが! それに、マミの奴は……」

ほむら「無論、義理よ。それに、貴方。本気で、私が見た目どおりの歳だと思ってるの?」

杏子「……いや。そりゃ、かなり怪しいけど。金持ってるし、おばちゃんくせーし」

ほむら「……貴方の感じたまま事実よ。私は魔法で外見や戸籍を誤魔化しているのよ」

杏子「……おばちゃんくせーって言われて、ちょっと涙目になるなよ。
    悪かったよ」


167: 2013/03/17(日) 19:46:50.44 ID:OMkFtv4eo

ほむら「それより、夕ご飯どうする?」

杏子「唐突だな。あんたにもらったお金で、適当に買ってくるよ」

ほむら「添加物どっさりの物を買うくらいなら、私が作るわ」

杏子「だから、あんたと馴れ合うつもりはないって」

ほむら「大丈夫、作ったら帰るわ」

杏子「あっそう……」

ほむら「盾の中の材料……ふむ、肉じゃがでいいかしら……」

杏子「好きにしな。流石に食べ物を粗末にはしないからさ」

ほむら「わかったわ」


168: 2013/03/17(日) 19:47:19.30 ID:OMkFtv4eo

――その日から、マミと佐倉杏子はコンビで魔女狩りを行ってくれている。

おかげで、私が色々と考えていた計画を進め始める事が出来る。

ループで得た様々な知識を、今 生かすときだ。

私はループの期間に関する世界の知識は「生き字引」級だ。

例えば、お金にしても……

佐倉杏子に渡したお金が、はした金に感じるほどお金を稼ぐ事ができる。

人の弱みを握る事も、付け入る事も、助ける事も容易い。

さて、何から取り掛かるとするか……

169: 2013/03/17(日) 19:47:55.44 ID:OMkFtv4eo

……学校をさぼって色々とやっていたある日。

マミの部屋に帰ってくると、まどかと さやかがいた。


まどか「あ、ほむらちゃん! って、やっぱり元気そう」

さやか「まじで、ほむほむが帰ってきた。マミさんと同棲……きましたわー?」

まどか「さやかちゃん……」

ほむら「さやかが何を言ってるのか、本気でわからないけど。
     最近、ちょっと ごたついててね。
     マミさんに生活の事、色々甘えさせてもらってるの」

さやか「それで最近、学校来ないのか」

まどか「もう一週間だよ?」

170: 2013/03/17(日) 19:49:12.08 ID:OMkFtv4eo

ほむら「それで心配して来てくれたわけ?」

まどか「うん……」

さやか「あたしはマミさんに ほむほむの家の場所を聞いたら、
     「私の家に居るわよ」って言うから。
     むしろ そっちに興味惹かれて……マミさんに鍵借りて来たの」

まどか「さやかちゃんってば、面白半分なんだもん。もう……」

さやか「まどかは運命の人、盗られちゃうかもって不安だったんだもんね」

まどか「さ、さやかちゃん! またそんな事言って!」

ほむら「運命の人……?」

さやか「いやー、まどかってば、
     実は ほむほむと病院で初めてあった日、
     ほむほむと前に夢であったようなとか 言い出してさ」

ほむら「えっ???」



171: 2013/03/17(日) 19:49:49.42 ID:OMkFtv4eo

ぽかり!

まどかは本気で怒ったらしく、さやかの頭をぐーパンチした。

ああ、怒って殴る音さえ可愛らしいわ。まどか。

それにしても、夢であったってどういう事かしら。



さやか「殴るなよぅ! 女の子の頭をグーで殴るなよう!」

まどか「うるさーい! さやかちゃんなんて、知らないんだから」

ほむら「まどか、夢であったって……?」

まどか「うー、さやかちゃんってば、言っちゃうんだもん……。
     ほむらちゃんに似た人を 夢で見たことがあるだけだよ?
     内容もよく覚えてないし……」

さやか「だから、それ前世の因果だって。
     あんた達、時空を超えて巡り合った運命の仲間なんだわぁ!
     そう言ってからかってたんだけどね」

さやか「残念、ほむほむと運命の仲間だったのは、さやかちゃんでした!」

さやか「戦友だもんね!」

さやか「まどかはどーかなー?」

まどか「うー……」

172: 2013/03/17(日) 19:50:16.33 ID:OMkFtv4eo

ほむら「上条君の話、まどかには しているのね?」

さやか「無論、まどかは私の嫁だもの」

ほむら「まどか、さやかとは確かに仲間ってことでいいわ」

さやか「えっへん」

ほむら「マミともそう」

まどか「そうなんだ……」

ほむら「そして、まどか、貴方とも 運命の仲間になりたいわ」

まどか「えっ!」

さやか「ほら、やっぱね。まどか」

まどか「わ、わたし……何にも、できないけど……」

ほむら「そんな事ないわ。貴方は超絶いやし系よ」

まどか「ちょ、ちょうぜつ いやしけい……?」

173: 2013/03/17(日) 19:51:17.61 ID:OMkFtv4eo

さやか「あー、わかる。小動物系というか、マスコット系というか、
     まどかってば居るだけで癒されるよね」

まどか「え、ええっ!?」

ほむら「そうよ! ああ、まどか。今日のまどか分を補充していい?」

まどか「ひえっ!?」

さやか「うおー、あたしも補充させろぅ!」

まどか「ひょわわっ!」


私とさやかが意味不明な展開で まどかに抱きつく。

まどかが目を白黒させて顔を真っ赤に。

愛らしい。

本当に充電してる気分だ。



……意識が完全にまどかの温もりにいってたのだろう。

とある2人が部屋に入ってきた事に気がつかなかった。

咳払いが部屋の中に響き、私はようやく気がついた。

174: 2013/03/17(日) 19:53:04.33 ID:OMkFtv4eo

杏子「なにやってんだ? ほむら……。人を働かせといて」

マミ「……」

ほむら「何って……充電中よ。見て分からない?」

杏子「わかるか!」

マミ「…………」

ほむら「……マミさんは、どうしてそんな怖い顔しているの?」

マミ「さあ、何ででしょうね」

ほむら「……ほら、マミ。貴方も混ざりなさい」

マミ「うん!」

杏子「ええっ!? 即答かよ!? しかも、混ざるのっ!?」

さやか「マミさん来た! これでかつる!」

まどか「私はもーいいよう! そろそろはなしてー!」

175: 2013/03/17(日) 19:53:57.81 ID:OMkFtv4eo

ほむら「杏子は来ないの?」

杏子「行くわけがないだろ!」

さやか「えっと、その子は誰?」

ほむら「佐倉杏子、魔法少女。彼女も私達 運命の仲間の一人よ」

杏子「はあっ!?」

マミ「運命の仲間……?」

ほむら「あ、マミさん。勿論、貴方もよ?」

マミ「……えへっ」

さやか「わぁ、マミさん。はじめて見る位のいい笑顔。ニコニコって擬音が見えそう」


176: 2013/03/17(日) 19:56:06.11 ID:OMkFtv4eo

杏子「おい、ほむら。訳わかんねーこと言ってんじゃねーよ」

杏子「アタシとあんた、マミは、金で結ばれただけの関係だ。
    馴れ合う心算はないね」

ほむら「杏子はツンデレなのよ」

さやか「なるほど」

まどか「恥ずかしがり屋さんなんだね」

杏子「誰がツンデレで、誰が恥ずかしがり屋だっ!!!」

さやか「ツンデレ杏子さん、あたしは美樹さやか。よろしくね」

まどか「恥ずかしがり屋の杏子ちゃん。私は鹿目まどか。よろしくね! てへへ」

杏子「うがーーーー!!!!」

177: 2013/03/17(日) 19:57:10.45 ID:OMkFtv4eo

杏子「もういい! 今日の分の清算は明日にするぞ! じゃあな!」

さやか「あっ」

まどか「いっちゃった」

ほむら「からかうと面白いわね」

マミ「あんまり、佐倉さんを苛めちゃ駄目だよ?」

ほむら「……煽りやすいものだから」

さやか「わかる。初対面だけど」

まどか「私ものっちゃった……。怒ってないかな
     今度会ったら謝らなきゃ」

178: 2013/03/17(日) 19:58:15.15 ID:OMkFtv4eo

さやか「あーっと、ところで、清算って何の事?」

ほむら「ああ、私、彼女を雇ってるの」

さやか「……なんですとっ!?」

まどか「雇う?」

ほむら「ここ最近、学校に行かなかったのも、
     私にはやるべき事があってね。
     その時間を確保する為に、彼女に相談したら、
     低賃金で働いてくれるって言うから」

さやか「低賃金……3000円くらい?」

ほむら「それくらいよ」

ほむら(ただし 使い魔一匹の値段がだけどね)

さやか「ふーん、いい子……なのかな」

ほむら「そうよ」

マミ「根がいい子なのは、私も保証するわ……」

179: 2013/03/17(日) 19:58:48.47 ID:OMkFtv4eo

まどか「ほむらちゃん、やるべき事って?
     やっぱり魔法少女絡み……?」

ほむら「そんな所よ」

さやか「あ、まさか、あたしの所為だったり……するのかな?」

ほむら「さやかは関係ないわ。いや、僅かにしか関係ないわ」

ほむら「上条君絡みの話なら、魔法少女の方は問題なさそうよ。
     最近、私は回復系の技術がかなり向上したの」

さやか「へー、すごい!」

ほむら(まぁ、本当は貴方の力なのだけど……)

ほむら「今度、私だけでどうにかならないか、診てみるわね」

さやか「ありがとう、ほむほむ!」

まどか「上条君の手、上手く治るといいね!」

180: 2013/03/17(日) 20:00:22.42 ID:OMkFtv4eo

ほむら「でも一応、専門の医者を探すのも続けてるから。
     まぁ、知人のお医者さん任せだけど」

さやか「お医者さんに知人が居るといいなぁ。頼もしい」

ほむら「そうね」


しばらく続く雑談。

楽しくてたまらないのだが、
もう時間帯は遅い。

まどかとさやかを帰らせ、
私とマミは晩御飯を作り始める。

佐倉杏子に差し入れてから、
マミとの晩御飯の時間。

さて、明日はどうするか。

さやかに話した通り、上条恭介に会いに行ってみるか……

181: 2013/03/17(日) 20:01:15.91 ID:OMkFtv4eo

――見滝原病院、上条恭介の病室。


ほむら「……こんにちわ。上条くん」

恭介「やあ、暁美さん」

ほむら「えっと、手のこと聞いてるけど……」

恭介「うん、今のところ、やっぱり治る見込み、ないんだ。
    でも、暁美さん いいお医者さん探してくれてるんだっけ?
    僕なんかの為に、ありがとう」

ほむら「ふふ、貴方と、さやかの為よ」

ほむら「あの子も頑張ってるでしょ?」

恭介「うん、いつも 歩くリハビリに付き合ってくれるんだ。
    さやかの為にも、頑張って治さないと……」

ほむら「そうね」

182: 2013/03/17(日) 20:02:22.00 ID:OMkFtv4eo

恭介「暁美さんは、体はもういいの?
    退院したばかりだけど」

ほむら「問題ないわ。今までにないくらい元気よ」

恭介「そっか、良かった」

ほむら「……余裕、出てきたのね。私にまで気を回せるくらいに」

恭介「余裕、無かったさ。だけど、さやかがいる。
    僕だって、いつまでも立ち止まってられないさ。

    この手だって、もう動かなかったとしても、
    今の僕なりに、生きていく道を見つけるよ」

ほむら「ふ、いい男になってきたじゃないの」

恭介「あはは、惚れないでくれよ? 僕にはさやかがいるから」

ほむら「大丈夫よ。むしろ、貴方。
     いい男でいないと、さやかが私にとられちゃうわよ?」

恭介「そっち!? 最近、なんかありえそうで怖い!」

183: 2013/03/17(日) 20:03:27.64 ID:OMkFtv4eo

ほむら「しかし、ナンパな事いうじゃない。
     会って間もない頃の上条君にはありえないわね」

恭介「う……らしくなかったか」

ほむら「かなりね」

恭介「ま、暁美さんだからっていうのはあるよ。
    冗談でかわしてくれそうだから」

ほむら「そうね。私ならしょうがないわね」

恭介「ほら、そうやって軽くかわす」

ほむら「年の功よ」

恭介「同い年だよね」

184: 2013/03/17(日) 20:04:07.83 ID:OMkFtv4eo

ほむら「さやかを泣かすんじゃないわよ? いい男ならね」

恭介「勿論だよ」

ほむら「そんなこと言って……。仁美さんあたりに告白されたらころっといくんじゃない?」

恭介「ないよ」

ほむら「本当かしら」

恭介「本当だよ」

ほむら「そう……」

恭介「というか、なんで志筑さんなの……」


185: 2013/03/17(日) 20:04:52.40 ID:OMkFtv4eo

ほむら「いえね。さやかと付き合ってなかったら、あの子と貴方もありえそうだと思ってね」

恭介「……うーん。さやかと付き合えてなかったら、そりゃ、あったかもしれない」

恭介「あの子が、僕の事を好きだって言うなら……だけど。いや、ないか」

ほむら「貴方って本当に受身ね。いや、そこまで仁美に対する想いはないの?」

恭介「志筑さんって、ただのクラスメイトだし……
    いや、お友達って認識かな。お見舞いには来てくれたし」

ほむら「その程度なのに、告白されたら付き合うのね」

恭介「うーーん……。いや、もし、そういう状況の僕なら、だけど。
    自分でも馬鹿だと思うけど」

恭介「……志筑さんみたいな子と付き合えたら、
    さやか、僕の事すごいって、認めてくれるかもしれないだろ?」

ほむら「……」

186: 2013/03/17(日) 20:05:35.20 ID:OMkFtv4eo

おい、ちょっと待て。

私の数々のループの原因の一部は、
この男の虚栄心からか……。


いけない、ソウルジェムが少し、濁ってしまった。

しかも、これは……殺意からかしら



恭介「うう……暁美さんが怖い」

ほむら「貴方、前は本当、ろくでもない男だったのね」

恭介「はっきり言われた……。い、今では、その! ないから……」

ほむら「当然よ。そうじゃなかったら頃すわ」

恭介「こ、ころっ!? わかった、絶対 さやかは僕が幸せにするから!」

ほむら「……よろしい。それなら、貴方の事。また認めてあげるわ」

恭介「……一旦、見捨てられたんだ。はい、ありがとうございます」

187: 2013/03/17(日) 20:06:54.56 ID:OMkFtv4eo

ほむら「……ところで、上条君。その問題の、手。見せてもらっていい?」

恭介「どうぞ」

ほむら「……」


確かに、酷い有様だ。

神経組織はズタズタだ。

私だけでは不可能であろう。

……しかし、交通事故でなるだろうか?
外見は比較的、綺麗なままだというのに……。

まさか、インキュベーター……
一枚噛んでるのか……?

ありうる話だ。

188: 2013/03/17(日) 20:07:31.13 ID:OMkFtv4eo

恭介「……暁美さん、見て分かるのかい?」

ほむら「少し、ね。参考になったわ。ありがとう」

恭介「どういたしまして、というより、こちらがありがとうだね」

ほむら「まだお礼を言われるのは、早いわ」

恭介「僕のために動いてくれる人が居るなら、当然だよ」

ほむら「そう、なら、どういたしまして……かしら」



しばらく雑談を続けたあと、上条恭介の病室を去った。

とある人物との密会の約束が入っている。

ちょっと上条恭介に時間を掛けすぎた。

急ぎ足で向っていると……しばらくぶりのとある存在が声を掛けてきた。

189: 2013/03/17(日) 20:08:02.06 ID:OMkFtv4eo

QB「やあ、暁美ほむら」

ほむら「インキュベーター。何か用かしら?」

QB「君が言及してきたバグについて、それらしい物は見つからなかったゆえ、
   一言物申そうかと思ってね」

ほむら「あら、そう。悪いけど、急いでいるのよね。また今度にしてくれる?」

QB「常に誰かしらと会ってる君じゃ、その今度がいつくるかわからないね」

QB「それに、君が会おうとしている市議会議員より、
   実のある話を教えてあげる事が出来るんだけど?」

ほむら「……ふふ、よく私のスケジュールを把握しているのね」

QB「当然じゃないか。君は警戒すべき人物だからね」

QB「手札が全く見えない、完全なイレギュラーだよ」

QB「ずっと観察していた」

ほむら「私より、まどかの方に注目していると思っていたわ」

QB「それは君が邪魔にならなくなってからだね」

QB「単純なあの娘。君がいなければ堕とすのは簡単だろう」

ほむら「怖がられたものね。心外だわ」

190: 2013/03/17(日) 20:08:28.96 ID:OMkFtv4eo

ほむら「それより、話をするならちょっと待ちなさい。
     貴方と話をするなら遅刻間違いないわ。
     先方に連絡しなきゃいけないわ」

QB「律儀だね」

ほむら「社会人として常識的な行動よ」

QB「君は中学生だよね?」

ほむら「歳は関係ないわ。社会の歯車としての自覚があれば、当然の行動よ」

ほむら(下手したら国際的に指名手配されかねない数々の兵器の窃盗犯だけどね)


……用事をキャンセルし、インキュベーターの相手をする流れとなった。

近くの公園の、ベンチに座る。

191: 2013/03/17(日) 20:09:28.85 ID:OMkFtv4eo

QB「さて、暁美ほむら。マミには嘘偽り無く、魔法少女の真実を伝えてくれたようだね?」

ほむら「ええ、伝えたわ」

QB「ああなるとは、僕も思っていなかったよ」

QB「まさか、マミの心を掴み、自分に依存させるとは……」

QB「君は余程 人心掌握術に長けているようだね」

QB「いい駒を、君にとられてしまったものだ」

ほむら「長く人類に関わってきたくせに、
     ろくに感情の研究をしてないから、こうなるのよ。
     自業自得ね」

QB「……」

192: 2013/03/17(日) 20:10:03.22 ID:OMkFtv4eo

ほむら「さて、実のある話が聞けるというのだから、
     まさか嫌味の言い合いで終わるわけではないでしょう?」

QB「……先に、聞きたい事がある。君の目的はなんだい?」

ほむら「それを、私が貴方に答えるメリットがあるのかしら?」

QB「君も知りたがっていそうな事に、仮説が立てられた。それを教えてあげよう」

ほむら「ふうん……?」

QB「君は、エリー……、箱の魔女と敵対していた時、
   奇妙なソウルジェムの反応、未知の能力の発動に驚かされたはずだ。
   君ほどの手練が敵を前に動揺していたからね」

ほむら「否定はしないわ」

QB「そして、それに留まらなかった。
   今の君は、僕が君を再認識した時より、更に多くの力を得たようだ」

193: 2013/03/17(日) 20:11:48.90 ID:OMkFtv4eo

QB「君は恐らく知っているのだろうが、魔法少女の潜在力というのは、
   少女が背負い込んだ因果の量によって決まる」

QB「一国の女王や救世主なら、莫大な因果を抱え込み、
   普通の魔法少女とは比べ物にならない力を発揮できる」

ほむら「そのようね。以前、貴方から聞いたわ」

QB「……だが、魔法少女になった場合、因果の量を増やすのは容易ではない。
   通常は、その素質は普通の少女時代で大体決まる」

ほむら「それは、そうでしょう。普通の魔法少女が、
     因果の量を劇的に増やすほど環境を変える事なんて出来ないでしょう」

QB「そうだね、そもそも魔法少女は短命なもの、時間的余裕もない」

ほむら「そうね、そして、精神的な余裕もない、疑心暗鬼 渦巻く子が多いでしょう」

ほむら「貴方の所為でね」

QB「だが、君は因果の量を増やした」

ほむら「私は普通じゃないのよ」

QB「知ってるよ、イレギュラー」

194: 2013/03/17(日) 20:12:18.54 ID:OMkFtv4eo

ほむら「ところで、因果の量だけでなく、質にも拠るのかしら?」

QB「さてね、僕には感情がないから推測しか出来ないが、
   同じ人数からの因果でも、魔法少女となる人物との関係性が違えば、
   魔法少女としての力にも差があるようだったよ。

   一人当たりからの量が違うからかもしれないが」

ほむら「そう。その関係性とやらによって、力の現れ方も違うのかもね?」

QB「……そうだね」

QB「君の考えも、僕の仮説と変わらないようだね。
   感情がないから、仮説の域を出なかったが……」

ほむら「実感として感じ取れているわ」

QB「そうかい。厄介だね……。このシステムに、こんな裏技があったとは」

ほむら「私じゃなきゃ見つからなかったかもね。どっちかというとバグ技かしら」

QB「……何故 君はそう、自信満々なんだ」

195: 2013/03/17(日) 20:13:01.73 ID:OMkFtv4eo

QB「さて、君が知りたそうな情報は話した。
   どうやら、感づいていたようだが、対価は貰えるのかな?」

ほむら「さあて、そうね。勘付いていたこととはいえ、
     おまけしてもいいのだけれど……どうしようかしら?」

QB「じゃあ、僕なりに、君の目的を推測してみた。
   あってるかどうかを、教えてくれればいい」

ほむら「そう。それならいいわ」

QB「……魔法少女の救世主となる事、違うかい?」

ほむら「……救世主、ね」

QB「君がマミやまどか達に隠れて行っている行動は、
   特定の魔法少女だけじゃない、全体に益が出るよう目的とした物だ」

196: 2013/03/17(日) 20:13:35.46 ID:OMkFtv4eo

QB「おそらく、君は契約する前に、僕達インキュベーターと魔法少女の事を知ってしまった」

QB「だから、僕達と敵対することにした」

QB「しかし、戦うためには、力が要る。だが、僕達と契約し、僕達にずっと干渉されるのは迷惑だ」

QB「だから、契約で自分のことに関する記憶をインキュベーターから消すバグを生み、
   魔法少女となった」

QB「そして、影に隠れ、全てをひっくり返す計画を立て、下準備を進めていた」

QB「それが実現可能な段階となり、一気に推し進める為、表舞台に現れた」

QB「……そんな所じゃないかい?」

ほむら「……そうね、百点満点をあげましょう」

QB「それは、ありがとう」

197: 2013/03/17(日) 20:14:44.25 ID:OMkFtv4eo

QB「つまり、君は僕の敵というわけだね」

ほむら「そうなるかもね」

QB「暁美ほむら、百点満点をくれたお礼だ。いい事を教えてあげよう」

ほむら「なにかしら?」

QB「君は表舞台に出てくるのが早すぎたね。
   本当に気の毒だよ……。もっと力をつけてからにすれば良かったんだ」

ほむら「感情もない癖に、気の毒がるんじゃないわよ。なに?」

QB「2週間後、この見滝原にワルプルギスの夜がくる」

ほむら「……なんですって!?」

ほむら(あのセンターよりの顔、ちゃんと出来てるかしら)

QB「やっと、君の引きつった顔が見れたね」

198: 2013/03/17(日) 20:15:14.70 ID:OMkFtv4eo

QB「ワルプルギスの夜は、今の君や、マミ、杏子。
   3人が組んだ所で、倒せやしない」

QB「倒せる可能性があるとしたら、鹿目まどか。
   彼女が契約して、魔法少女になった時ぐらいだろう」

QB「君は大事な友達に、魔法少女にはなって欲しくないようだけどね?」

QB「君がまどかに契約させず、勝ち目のない戦いに挑むのか、
   まどかを闘争の渦に巻き込むのか。

   どちらにせよ、大きく濁ってくれそうだ」

QB「君はまどか程でないにしろ、多くの因果を纏い始めた。
   敵にならないなら、もう少し育ててからにしようかとも思ったけれど、
   君は敵」

QB「はやめに退場してもらおう」

QB「願わくば、氏ぬんじゃなく、魔女化して宇宙の維持に役立っておくれよ……」

ほむら「インキュベィタァアアッ!!!」

199: 2013/03/17(日) 20:15:51.15 ID:OMkFtv4eo

勝ち誇った顔? 無表情だが、
そんな雰囲気を纏って、インキュベーターは去っていった。

時間遡行の事とは程遠い、
百点満点の勘違いをしてくれて、私は嬉しい。

あいつは感情がない所為で、
演技を見破るのも下手なようだ。

精々、私を絶望させたと思い、勝ち誇るがいい。

慢心は油断を生み、必要な判断を鈍らせる。

それに、
ワルプルギスの夜で まどかの契約の危険を煽ってる事から、
奴の策は、もう尽きたのだろう。

精々、他の魔法少女や候補者にも告げ、
不安を煽るくらいか?

こちらから、ケアをしておくとしよう。

しかし、魔法少女の救世主、ねぇ……

力の増やし方に気がついた私が、
その程度で満足すると思っている所が、一番笑える。

200: 2013/03/17(日) 20:16:50.68 ID:OMkFtv4eo

――私は、巴マミの部屋に、まどか、さやか、マミ、佐倉杏子の4人を呼んだ。

各人、既にインキュベーターからワルプルギスの夜の話を聞いているようで、
特にまどかと さやかが動揺している。


まどか「ほむらちゃん、ワルプルギスの夜って、そんなに強いの?」

ほむら「私も見たことはないけど、単独の魔法少女ではとても対処しきれない強力な魔女よ。
     通常の魔女は結界に隠れてるけど、その魔女は結界に隠れる必要すらないという……」

さやか「……た、倒せる……のかな?」

マミ「今、見滝原には3人の魔法少女が居る。問題ないんじゃないかしら?」

杏子「……おいおい、当たり前の様に私をカウントするなよ」

マミ「えっ!?」

杏子「ワルプルギスの夜なんて、聞いてないよ。
    こいつを倒す事は契約には含まれないだろ、ほむら」

ほむら「契約期間全体の支払合計額、倍額にするわ」

杏子「……お、おう。わかった」

201: 2013/03/17(日) 20:17:21.49 ID:OMkFtv4eo

さやか「倍額? ……六千円かぁ。安いなぁ」

杏子「ん? 六千円?」

ほむら「気にしないで。それより、問題のワルプルギスだけど」

まどか「う、うん」

さやか「どうなの?」

ほむら「実物見たこと無いから、私達は何とも言えないわ」

さやか「oh……」

まどか「そっか……、でも、強いんなら」

ほむら「ただね、マミさんが言ったとおり、ベテラン三人ならどんな魔女でも倒せる公算が高い」

ほむら「それに、強敵なのは間違いないんだから、
     成り立ての魔法少女が参加したところで氏ぬだけよ」

まどか「……それでも、私なら」

ほむら「インキュベーターに、何か吹き込まれた?」

202: 2013/03/17(日) 20:17:49.75 ID:OMkFtv4eo

まどか「三人で戦った所で無駄だって。私がならない限りは勝てないって……」

マミ「……きゅうべぇ、そんな事いったのね」

杏子「私の時には、ワルプルギスが来るって伝えに来ただけだったがな」

さやか「あ、あたしも」

まどか「見滝原が廃墟と化して、ここにいる人たち、皆 氏んじゃうって……
     それ位なら……」

杏子「きゅうべぇが認めたってんなら、確かにあんたが魔法少女になれば勝てるんだろうな。
    あいつは嘘はつかない」

まどか「やっぱり、そうなんだ……」

杏子「でも、私もほむらに同意見だ。やめときな」

まどか「えっ……」

杏子「普通の人間をやめたら、帰れなくなるぞ」

杏子「ワルプルギスを倒した所で、今までの生活にはな」

杏子「当たり前の幸せに浸っていられるアンタが、なる必要はない」

まどか「……」

203: 2013/03/17(日) 20:18:26.35 ID:OMkFtv4eo

ほむら「杏子の言うとおりよ、まどか。私は、貴方に安全にくらしてほしいわ」

まどか「でも……」

ほむら「それに、貴方ほどの素質があるからこそ……逆に、危険なの」

まどか「逆に……危険?」

さやか・杏子「?」

マミ「ほむらさん……言うつもり?」

ほむら「ええ……、本当は話したくなかったのだけれど。
     まどか、貴方が決して契約しようと思わないよう、
     大事な事を、教えるわ」

ほむら「杏子、貴方にはショックな事も多いと思う。心して聞いて頂戴」

ほむら「さやかもね」

杏子「あ、ああ……」

さやか「ほむ……ら、目が怖いな」

204: 2013/03/17(日) 20:18:59.32 ID:OMkFtv4eo

私は3人に、魔法少女の真実を語った。

皆、ショックを隠せないようだ。


杏子「ソウルジェムが、あたしで、さらに、濁っちまったら……」

まどか「魔女に……?」

ほむら「そう。そして、強力な魔法少女は、無論 強力な魔女になるわ」

ほむら「貴方の素質だと、地球が危ないレベルなの」

ほむら「ワルプルギスの夜より、更に危険な存在になってしまうわ」

まどか「そ、そんなことって……」

杏子「……ワルプルギスの夜を生んだのも、結局はあの野郎なんだろ?」

ほむら「そうでしょうね」

205: 2013/03/17(日) 20:19:49.17 ID:OMkFtv4eo

杏子「なんだよ、アイツが諸悪の根源か」

杏子「元から、胡散臭い奴だとは思っていたが」

杏子「インキュベーター……あの野郎、頃してやる……」

杏子「私を……ゾンビみたいな体にしやがって……」

杏子「しかも、終いには、魔女化……。化け物か、私は」

マミ「……違うわ、佐倉さん」

杏子「何が違うってんだよ、巴マミ」

マミ「貴方は人間。こんな体になって、ショックを受けるのも まだ人間だからよ」

杏子「……」

マミ「それに、鹿目さんのこと、気遣って、
   魔法少女になるなって言ってあげてたでしょ?

   化け物はそんな事、言わないわ。
   貴方は、昔と同じ、心優しい……人間よ」

206: 2013/03/17(日) 20:21:24.54 ID:OMkFtv4eo

杏子「……へっ、別に、気遣ったわけじゃねぇ、グリーフシードの取り分が……」

ほむら「利己的なのも人間よ。
     感情も欲もない人外とは、違うわ」

杏子「そうだな……。ま、私はこの力で好き勝手に生きてこれたんだ。
    後悔はあってもやり直したいとは思わないよ」

杏子「好き勝手 生きて、魔女化する前に氏んでやらぁ」

まどか「!」

マミ「……佐倉さん」

杏子「おい、まどかと、さやか つったか。
    あんた達は、絶対こうなるな」

さやか「……うん、魔法少女には、私はならない。ありがと……」

まどか「……魔女になっちゃ、いけないもんね」

207: 2013/03/17(日) 20:22:35.53 ID:OMkFtv4eo

さやか「でも、ほむらも、マミさんも、会って間もないけど、佐倉さんも。
     その、あたし馬鹿だから、なんて言ったらいいか、分からないけど。

     あたし、見滝原を守ってくれてる、尊敬する、その……
     大事な、友達……、うん、友達だって思ってるから!」

杏子「……ありがと、よ」

マミ「ありがとう、美樹さん」

さやか「え、えへへ。ま、まどかだって、そう思ってるでしょ!?」

まどか「えっ!? う、うん! 勿論だよ……!
     ほむらちゃんも、マミさんも、佐倉さんも……氏んで欲しくない……」



ほむら「……」

208: 2013/03/17(日) 20:24:06.28 ID:OMkFtv4eo

――佐倉杏子は、一人になりたいと言い出し、
マミの部屋を後にした。

まどかとさやかも、それに続く。

私はマミの紅茶を飲みながら、
先程までの会話について考える。


佐倉杏子のメンタルは中々の強さだ。

割りきりが早い。

さやかも、時々抑制が酷く効かなくなるが、
上条恭介がいる以上、迂闊な行動はとらないだろう。

信頼している相手の話は、聞いてくれる子でもある。

マミも、今は大丈夫。

この3人は、問題ない。


だが、気になるのは……

数々の時間軸で、自己犠牲が過ぎる……


鹿目まどか。



209: 2013/03/17(日) 20:24:35.64 ID:OMkFtv4eo

マミ「……ねぇ、ママ」

ほむら「なに? マミ」

マミ「鹿目さんの、ことなんだけど……」

ほむら「……ええ」

マミ「あの子は、魔法少女にならないとは、言わなかったよね」

ほむら「魔女になっちゃいけない、としか、言わなかったわね」

マミ「まさかとは、思うけど」

ほむら「……マミ、貴方もそう思うのね」

マミ「……ママ、行ってあげて」

ほむら「ええ、そうするわ」

マミ「マミは、佐倉さんの様子を見に行く」

ほむら「……助かるわ、マミ」

ほむら「杏子のこと、頼んだわね」

マミ「うん!」


210: 2013/03/17(日) 20:25:08.06 ID:OMkFtv4eo

マミの部屋を飛び出し、
まどかの家へと向う。

浮かない顔をして、一人歩くまどかに、
私は追いついた。


ほむら「まどか!」

まどか「ほむらちゃん……? どうしたの?」

ほむら「……ちょっと、話せない?」

まどか「え? う、うん……いいけど」

ほむら「じゃあ、私の部屋に来てもらおうかしら」

まどか「ほむらちゃんの部屋?」

ほむら「嫌かしら? 落ち着いて話せる場所がいいんだけど」

まどか「うんん、嫌じゃないよ、ほむらちゃん。じゃ、お邪魔しちゃお」

211: 2013/03/17(日) 20:25:38.04 ID:OMkFtv4eo

二人で、私の部屋へと歩く。

まどかを部屋にあげ、ソファに座らせる。

私の趣味で室内を魔法で広げ、
タブレット端末を宙に浮かばせてる空間。

巨大な振り子が存在感を主張しており、
まどかはちょっと引いている。

変かなぁ、ハイカラなのに。

212: 2013/03/17(日) 20:26:35.65 ID:OMkFtv4eo

ほむら「……えっと、ホットココア。のむ?」

まどか「わあ、ありがとう。ココア好きなんだ。てへへ」

まどか「……あ、美味しい。パパの作ってくれるココアに近いかも」

ほむら「それは良かったわ……」

ほむら「……ねえ、まどか」

まどか「なに? ほむらちゃん」

ほむら「何か思いつめてる事があるんじゃない? そう思って」

まどか「……ほむらちゃんには、隠し事できないや。てへへ」

ほむら「当ててみせようかしら?」

まどか「……うん」

213: 2013/03/17(日) 20:28:00.24 ID:OMkFtv4eo

ほむら「まどか、貴方。自分が魔法少女になって、ワルプルギスの夜を倒して……
     倒したら、魔女になる前に自頃しようかと考えてる」

ほむら「……どう?」

まどか「……ほむらちゃん、すごいや。うん、考えてた」

まどか「ワルプルギスの夜って、実感まだわかないけど」

まどか「でも、魔女はいるし、氏ぬのって意外と身近だなって、思って」

まどか「ほむらちゃん達が、氏んじゃうって思うと怖くて」

まどか「でも、私も、氏ぬのは怖い」

まどか「堂々巡りになっちゃって、なんだか、わからなくなって」

ほむら「まどか……」

214: 2013/03/17(日) 20:28:34.95 ID:OMkFtv4eo

まどか「でも……」

まどか「私って、昔から得意な学科とか、人に自慢できる才能とか何もなくて」

まどか「きっとこれから先ずっと、誰の役にも立てないまま、
     迷惑ばかりかけていくのかなって」

まどか「それが嫌でしょうがなかった」

まどか「だから、私の命で、もし、皆の命が、助かるのなら」

まどか「それは、とっても、喜ぶべき、ことなのかな……」

ほむら「……」

ほむら「まどか、貴方は素晴らしい人よ。
     皆を癒してくれる、可愛らしい人」

ほむら「ワルプルギスの夜程度で、失っていい人じゃないわ」

まどか「ほ、ほむらちゃん……」

ほむら「貴方にコンプレックスがあって、
     そこをインキュベーターが的確に刺激してるのは分かったわ」

215: 2013/03/17(日) 20:29:19.01 ID:OMkFtv4eo

ほむら「まどか、焦っては駄目。貴方は皆の役にたてる人よ」

ほむら「ただ、無理して背伸びしようとしている。
     あなたは、今 自分の力で出来ることを積み重ねて大きくなるべきよ」

まどか「それは……分かっているけど」

ほむら「いいえ、貴方は分かりきれていないわ。
     貴方は力になれない自分に不満を持って、焦ってる」

ほむら「自分が子供だと思って、早く成長したい、大人になりたいって思うのは
     私達くらいの年齢だと皆 思うことよ?」

ほむら「だけどね、魔法少女になっても、大人になっても、
     結局は、ただの子供の頃の自分より、幾らか出来る事が増えるだけ」

ほむら「むしろ、子供の頃より自分への失望感は大きくなるわよ。
     本当の意味での自分の限界が、はっきり分かるだけね」

まどか「……」


216: 2013/03/17(日) 20:30:32.67 ID:OMkFtv4eo

ほむら「それから、大人は後悔するの。子供の頃に、もっと焦らず、将来のことを考えて
     自分を伸ばす努力をすれば良かった、とね」

ほむら「大人になってからは、自分の土台を作るような成長は見込めないから」

ほむら「これは魔法少女になる場合も、同じようなもの」

ほむら「だから、まどか。今は遠回りしてる様でも、じっくり、自分で自分を成長させる努力をしなさい」

ほむら「自分の土台を大きく作れるほど、大人になってから出来る事は大きく増えるわ」

ほむら「貴方が生きて、成長すれば、ワルプルギスの夜のために
     貴方が犠牲になって救える人間より、
     もっと多くの人間を、きっと幸せにできるようになる」

まどか「……でも、ほむらちゃん! そうだとしても、その前に皆が氏んじゃったら!?」

218: 2013/03/17(日) 20:31:34.99 ID:OMkFtv4eo

ほむら「……」

ほむら「まどかが、自分を犠牲にするために、魔法少女になった時の話をするわね」

まどか「う、うん」

ほむら「……貴方が魔法少女になって、魔女になったら。私は絶望するわ」

まどか「えっ」

ほむら「魔女になるつもりは無いから、私も自頃する事にする」

ほむら「私達二人が氏んで、きっとマミも絶望するわ」

ほむら「さやかは、私達の復活を願って、契約するかもしれない」

ほむら「杏子も悲しんでくれるかな……」

ほむら「……ほら。どう足掻いても、絶望よ。
     私の所為で、ごめんね、まどか」

まどか「ほむらちゃん……」

219: 2013/03/17(日) 20:33:25.96 ID:OMkFtv4eo

ほむら「どの道、不幸になるなら、希望が残る方に賭けない?」

まどか「希望……?」

ほむら「私とマミ、杏子が力を合わせて、ワルプルギスの夜を倒せれば
     何も問題ないわ」

ほむら「まどか、インキュベーターより、私を、私達を 信じて頂戴」

ほむら「貴方が、私を信じてくれるなら。それは私の力となる」

ほむら「貴方が、私達がワルプルギスの夜に勝てると信じてくれるなら、
     私達は必ず勝てるわ」

まどか「……」

まどか「……ほむらちゃんには、本当にかなわないなぁ」

220: 2013/03/17(日) 20:34:10.83 ID:OMkFtv4eo

まどか「ねぇ、ほむらちゃん」

ほむら「どうしたの? まどか」

まどか「……ちょっと、じっとしてて!」

ほむら「?」


まどかは、二つ結びを作るリボンを解き、
私の後ろにまわった。

そして、私の髪を弄りだす。



まどか「てへへ、ほむらちゃんの髪の毛、サラサラで綺麗」

ほむら「……うさぎ結びにしてくれてるの?」

まどか「うん。ほむらちゃん、すっごくかわいいな」

まどか「いつもは、なんだかおねぇさんというか、保護者みたいな感じだけど、
     すごく身近に感じられる」

ほむら「そう……」

222: 2013/03/17(日) 20:35:28.69 ID:OMkFtv4eo

まどか「……お守りの代わりって言ったら、おかしいかもだけど」

まどか「ワルプルギスの夜を倒して、全てが終わったら、返しに来て欲しいの」

ほむら「……」

まどか「絶対に、返しに来てよ!」

ほむら「……心配要らないわ」

ほむら「私は、貴方からの力を、得る事ができた」

ほむら「女神の力を貰えた私に、力が強いだけの魔女など、大した敵ではないわ」

まどか「女神って……私……? うひひ、何だか照れちゃうな」

まどか「信じるからね、ほむらちゃん」

ほむら「大丈夫よ、私を信じなさい」

ほむら「貴方が私を想うほど、私は更に強くなれる」

まどか「うん!」


ほむら「皆に……きゅうべぇに……人の可能性を見せてやるわ!」

223: 2013/03/17(日) 20:38:55.62 ID:OMkFtv4eo

引用: 都会から来た転校生・暁美ほむら