230: 2013/03/18(月) 20:05:56.02 ID:Kp1zcsNko

【まどマギ】都会から来た転校生・暁美ほむら【前編】
     となると、国会議員クラス?

さいかいー

231: 2013/03/18(月) 20:06:24.66 ID:Kp1zcsNko

可愛い可愛い、可愛いまどか。まどかぁーーっ!
……ごほん。

……まどかを家まで送り、マミに連絡を入れる。

まだ、佐倉杏子のアパートに居るようだ。

一応、向う事とする……


――佐倉杏子の部屋のドアをノックをし、出迎えてくれたのは、マミだった。


マミ「ママ、鹿目さんは、どう?」

ほむら「問題ないと思うわ。杏子の方は、どう?」

マミ「……佐倉さん、マミより心が強いみたい。そんなに心配要らないよ」

マミ「先輩なのに、情けないなぁ」

ほむら「貴方が居てくれたから、そう見えるだけかもしれないわよ」

ほむら「それに、弱さを認めるのも強さ、よ」

マミ「……そっか、そうだね」
もう誰にも頼らない
232: 2013/03/18(月) 20:07:13.68 ID:Kp1zcsNko

杏子「おい、なに玄関でコソコソ話してるんだ。
    入ってくるなら、入ってくればいいだろ」

ほむら「お邪魔するわね、杏子」

杏子「どーぞ。わざわざ来てもらって悪いけど、アタシはそんなに心配されるほど、
    柔じゃないよ?」

ほむら「ふふ、心強いわね」

杏子「……なぁ、アンタ。疑うわけじゃないが、
    アンタは、どうやってあの真実に辿り着いたんだ?」

ほむら「過去、仲間が魔女化して。その時にインキュベーターに聞いたのよ」

杏子「そうかい……。じゃあ、アンタ、何かやってるみたいだが……
    それって、インキュベーターへの復讐かい?」

ほむら「違うわ」

杏子「……へえ、なんだ。そっか」

ほむら「復讐などどうでもいいわ。私達の未来を勝ち取る為よ」

233: 2013/03/18(月) 20:07:41.56 ID:Kp1zcsNko

杏子「私達の未来……? んなもん、あるわけが……」

ほむら「あるわ。私が作るから」

杏子「……」

ほむら「……」

杏子「いいだろう……。おい、何をやってるか、聞かせろよ」

ほむら「……そうね、ある程度、考えは纏まってきたわ。
     準備も順調に進んでた。
     いい機会ね。魔法少女の二人に、私の考えが現実的か聞いてもらうとしましょう」

杏子「……たのまぁ」

マミ「うん」

234: 2013/03/18(月) 20:09:52.74 ID:Kp1zcsNko

……私は、私の考えていた事を話した。

魔法少女の負担を少しでも減らし、
明日に繋ぐ事が出来るような、計画を。


杏子「……私は、学がねぇから、現実的かは、わからない。
    だが、危なそうな面が幾つかあることは分かる」

マミ「……私も、佐倉さんと同じ。けど、もし、もし、上手く行ったら……」

ほむら「危険な面が多くあるのは私も承知よ。
     私は強くなって、信頼できる仲間を、増やさなきゃいけないわね」

ほむら「どうする? 貴方達は、協力してくれる?」

マミ「うん、勿論だよ。マミは、ママの味方」

ほむら「ありがとう」

235: 2013/03/18(月) 20:10:41.11 ID:Kp1zcsNko

杏子「ああ……。あたしも、手伝ってもいいよ」

杏子「あたしは戦うくらいしか まともに出来ないがな」

ほむら「そう……、ありがとうね、杏子」

杏子「へっ、礼を言う位なら、契約期間を延長してくれよ。
    大金が入る、こんなうまい契約はないんだからな」

ほむら「そう……」

杏子「どうだい?」

ほむら「……だけど、提示したお金が払えるのは、この一ヶ月だけよ。
     私がやろうとしている事は、お金もかかる事だから……」

杏子「……なんだ、そっか。まあ、そうだろうな」

236: 2013/03/18(月) 20:12:01.01 ID:Kp1zcsNko

ほむら「だけど、魔女と使い魔の討伐料以外に関しては
     続けたいと考えているわ」

杏子「討伐料以外?」

ほむら「貴方の事、私が養う」

杏子「……私を、あんたが?」

ほむら「ええ。貴方が嫌じゃなければ」

杏子「えっと、お金掛かるのは困るって言ったじゃねぇか……。無駄金だろ。
    そりゃ、ありがたいとは思うけど、そんな事してくれなくても、
    あたしは協力するつもりだぞ?
    インキュベーターの悔しがる顔を見てみたいからな」

ほむら「インキュベーターとの事がなくても、私はそうするつもりだったわ。
     無駄なんかじゃないの、私にとって」

杏子「……なんで」

237: 2013/03/18(月) 20:12:49.65 ID:Kp1zcsNko

ほむら「貴方の事、大事だと思ってるわ。幸せになってほしいのよ」

ほむら「これからは、貴方には学校に行って欲しいし、
     普通に友達と遊ぶ時間だって作って欲しい」

ほむら「将来に対する夢や希望だって持って欲しい」

ほむら「その為に、必要な事は、私が全て用意する」

杏子「……な、なんだよ、それ。大体、マミに悪いよ」

ほむら「マミに?」

杏子「あ、当たり前だろ!
    あたしは、そんな、あんたとは何でもないのに、
    あたしがそんな援助うけるなんて、おかしいだろ」

杏子「マミは、あんたと親子の契りを結んでるんだろ?
    マミはあんたと一緒に居て、幸せそうだった。

    あたしが、それを邪魔するなんてこと、あっちゃいけないんだよ」

ほむら「……」

238: 2013/03/18(月) 20:14:19.48 ID:Kp1zcsNko

ほむら「マミは……反対かしら?」

マミ「……私は、反対なんて、しないわ」

杏子「えっ」

マミ「むしろ、佐倉さんに、変に大金をあげる契約をするより、
   そっちの方がいいって思う」

マミ「この子、きっと、無駄遣いしちゃうし」

ほむら「確かにね」

杏子「そ、そんなことないよ!」

杏子「それより!」

杏子「マミは、なんで……あたし、あんな別れ方しちゃったし、
    またこっちに帰ってきてからも、あたしはつっけんどんな態度とっちゃったし」

杏子「なんで……あんた達……」

239: 2013/03/18(月) 20:14:52.87 ID:Kp1zcsNko

マミ「佐倉さん……いえ、杏子。私は、貴女に嫌われたと思ったから
   仕方なく距離を作っていたけど」

マミ「本当は、仲直りしたいと思ってたわ」

マミ「魔女狩りの時だけでも、一緒に過ごせて、
   貴女の根っこの部分は以前のままだって、知る事ができたし」

マミ「以前みたいに、その、仲のいい、先輩と後輩……
   いえ、姉妹みたいになりたいなって、思ってるわ……」

杏子「……」

マミ「……あの、ママ」

マミ「ママも、そうでしょう?」

ほむら「ええ、そうね……」

ほむら「杏子、私の子供になりなさい」

240: 2013/03/18(月) 20:16:32.38 ID:Kp1zcsNko

杏子「……へ、へへ。わけわかんねぇ」

杏子「あんたの子供……しかも マミの妹かよ」

杏子「やだよ、やーだ」

マミ「杏子……さん」

ほむら「……そう言われると、意地でもしたくなるわ」

杏子「そう言われると、意地でもなりたくないな」

ほむら「私は、あなたの事。氏んでもお母さんって呼ばせてやるから」

杏子「なら、アンタが氏ぬまで絶対に呼ばない」

ほむら「悲しい事言ってくれるじゃない」

杏子「氏ぬって言うからだ」

ほむら「……」

241: 2013/03/18(月) 20:17:04.77 ID:Kp1zcsNko


杏子「お前の事は絶対氏なせねぇ、マミも絶対氏なせねぇからな」

杏子「ワルプルギスの夜も、どんな魔女だって、あたしが倒してやる」

杏子「……あんたらの、あたしへの想いは、それでチャラって事にしてくれ」

ほむら「……そう、ありがとう」

マミ「……」

杏子「悪いけど、二人とも。今日のところは、帰ってくれないか」

杏子「今日は、もう、本当に独りになりたいんだ」

ほむら「……そう」

242: 2013/03/18(月) 20:18:21.83 ID:Kp1zcsNko

マミと二人で、杏子にあてがった部屋を後にする。

マミの部屋へと、帰りながら……
マミが話しかけてきた。


マミ「ママ、佐倉さんに断られちゃったね」

ほむら「貴女だって、最初は断ったじゃない」

マミ「そうだね。私もはじめは何いってるんだろう この子はって思った」

ほむら「まぁ、体は貴女より後輩だしね」

ほむら「杏子のことだけど……」

マミ「ん?」

ほむら「貴女に話を通さず、突然 決めちゃってごめんね?」

マミ「いいよ。ママはいつもぶっ飛んでる所があるから、慣れちゃった」

マミ「私だって、あの子と仲良くしたかったし」

243: 2013/03/18(月) 20:19:22.20 ID:Kp1zcsNko

マミ「いつか、佐倉さんとも一緒に暮らしたいな」

ほむら「そうね」

マミ「そのためにも、ワルプルギスの夜、倒さなきゃね」

ほむら「ええ。明日からは、ワルプルギスの夜対策をとらなきゃいけないわね」

マミ「対策……どんな魔女かわからないから、どうしていいかわからないや」

ほむら「グリーフシードのストック……
     私達のチームワークの強化……」

ほむら「強力な兵器のストックもあるから、
     私がそれを使う際の打ち合わせもいるわね」

ほむら「それから、出来たら見滝原一帯の一般人には、
     周辺地域に避難しておいて欲しい所だわ」

マミ「避難……って、そこまで必要なのかしら?」

244: 2013/03/18(月) 20:19:52.64 ID:Kp1zcsNko

ほむら「強大すぎる事から結界内に身をひそめる必要がなく、
     放っておくと、現実世界にも多大なる被害をもたらすという事は聞いたことがある」

ほむら「いわば、自然災害レベルという事でしょう」

マミ「うーん……、でも、魔女が来るからって言って、避難してくれるとは……」

マミ「とても、信じてもらえるとは」

ほむら「私が、市内に爆弾を仕掛けるわ」

マミ「……はい?」

ほむら「大規模爆風爆弾兵器……モアブっていう、
     通常兵器としては最大級の破壊力を持つ爆弾があるのだけれど
     それが加害半径150m位あるのよね」

ほむら「市中どこかに隠しており、ワルプルギスの夜が現れる日に起爆するっていう、
     テ口リストからの連絡が入れば、避難せざるをえないんじゃないかしら」

マミ「……念のために聞くけど、ママが持ってるわけじゃないよね?」

ほむら「……設置するのはダミーよ」

245: 2013/03/18(月) 20:20:53.97 ID:Kp1zcsNko

ほむら「そもそも、持っていたらワルプルギスの夜に使うわよ」

マミ「周囲に被害がでちゃうよ……」

ほむら「ワルプルギスの夜の災害とどちらがマシかを計算する必要がありそうね」

マミ「……う、うん」

マミ「それと、警察の方は残って捜索、自衛隊の方は出動する自体になりそうだけど……」

ほむら「彼らは緊急時に働くのが仕事よ。
     それと、ダミーを数箇所設置し、ワルプルギスの夜から一番離れたダミーの場所を通報すれば、
     そっちに掛かりきりになるだろうから、彼らの安全も守る事は出来るわ」

マミ「じゃあ、ある程度見つけ易い設置法を考えなきゃいけないんだね」

ほむら「そうねぇ、でも事前に見つかっても駄目だし……
     そもそも、モアブって長さ10m近くあるし、重量もあるから隠すの骨なのよねぇ」

ほむら「適当な空き地に、魔法と削岩機で地中浅めの所に穴を掘り、隠すとしましょうか。
     通報前に少し陥没させれば、場所さえ特定させれば直に見つけてくれるでしょ」

マミ「ママなら優秀なテ口リストになれそうだね……」

ほむら「照れるわ」

246: 2013/03/18(月) 20:21:26.24 ID:Kp1zcsNko

ほむら「今日からパトロールは私も出るから」

ほむら「実戦で連係プレーの練習としましょう」

マミ「うん、ママ」

ほむら「日中は工作しているわ。
     手伝ってほしいことが出来たら、マミにも学校を休んでもらうかも」

マミ「いつでも呼んで」

ほむら「ふふ……頼もしいわね」

マミ「……ママも、出席日数のことを考えたら、学校 来なきゃだめだよ?」

マミ「ワルプルギスの夜が終わるまではしょうがないかもしれないけど……」

ほむら「大丈夫、根回しは完璧よ。学力的にも、私は大学出るまで全く問題ないわ」

マミ「そ、そう……」

247: 2013/03/18(月) 20:22:31.32 ID:Kp1zcsNko

――独り、とあるビルに爆薬を仕掛けていると、佐倉杏子がやってきた。
私が何をやっているのか、不審そうだ。


ほむら「空きテナント使って、ちょっと悪さしているだけよ」

杏子「悪さ……ねぇ。まぁ、深くはつっこまないけど」

ほむら「貴方って、そういう所いいと思う。付き合いやすいわ。
     ところで、何か用があるのかしら?」

杏子「ん……。そうだな」

杏子「何がって訳でもないんだけど、パトロールの時以外、私暇だし。
    ワルプルギスの夜が相手だ。
    何かやる事があるんなら、手伝うよ?」

ほむら「じゃあ、学校に行ける様 勉強を……」

杏子「ワルプルギスの夜が迫ってるだろ!」

ほむら「じゃあ、終わったら 私が教えるから、勉強なさいね」

杏子「え、えぇー……」

248: 2013/03/18(月) 20:23:13.03 ID:Kp1zcsNko

ほむら「さて。そうねぇ、貴方が現代兵器や爆発物に精通しているのなら、
     手伝ってもらいたい事は山ほどあるけど」

杏子「あんたはあたしに何を期待しているんだ」

ほむら「ですよね。下手に触ると、危険だし……。
     うーーーん、どうしようかしら」

ほむら「貴方達とのワルプルギスの夜対策は、今夜から
     私もパトロールに参加して、連携の強化を図る。

     他の綿密な打ち合わせは、もっと日が近づいてからにするつもりなのよ」

杏子「じゃ、今は特になしかよ」

ほむら「……そうねぇ、パソコンの扱いにでも慣れてもらおうかしら」

杏子「パソコン……?」

249: 2013/03/18(月) 20:23:48.81 ID:Kp1zcsNko

ほむら「貴方のアパートに、パソコン一台、置いてあるけど使ってる?」

杏子「パソコンって、そんなものあったっけ……」

ほむら「居間の机の上にノートパソコンが……」

杏子「机の上……? 変なテレビみたいなのしかなかったけど、
    わけが分かんなかったな、あれ」

ほむら「OK……、貴方、私が昨日言った事、あまり理解できてないでしょう?」

杏子「う……」

ほむら「まぁ、今までの生活考えれば仕方がないわよね。
     よし、話している間に、仕掛け終わったわ。

     一緒にアパートに行きましょう。
     パソコンの使い方、教えてあげる。

     ワルプルギスの夜対策とは関係ないけど、
     私達にとって、将来的に重要な武器となるのだから」

杏子「なんか、面倒そうだな……」

250: 2013/03/18(月) 20:25:42.30 ID:Kp1zcsNko

――佐倉杏子用のアパートの部屋で、
PCを起動し、説明しはじめる。

やっぱり、佐倉杏子は頭を抱え始めた。

涙目の佐倉杏子はそそるものがある。
少しだけ。

……しばらくして、お茶を入れてやると、
思い出したように、懐から茶封筒を出す佐倉杏子。

252: 2013/03/18(月) 20:27:21.23 ID:Kp1zcsNko

見たことがあるような封筒だ。

これは……


ほむら「どういうつもり? これ、前金として渡した五十万よね」

杏子「いや、一万ぐらいは使ったよ」

ほむら「たった一万?」

杏子「……いや、あたし、結局、こんな額のお金渡されても、
    使い切れないみたい。

    駄菓子とか一杯買っても、使い切れなくて。
    ゲーセンにつぎ込んでも、なんか空しくなって。

    あんなに、一杯欲しかったし、やりたかったのに。

    かといって、有意義に使おうとしても、
    住む部屋とか、用意してくれてるし、
    食事とか、色々良くしてくれてるだろ?

    なんか満たされちまって、
    何に使えばいいか、わかんないんだ」

ほむら「……そう」

杏子「あたしのこと、養ってくれるって言うんなら、
    約束の金は全額、そっちに充ててくれていいや」

ほむら「それには及ばないわ」

253: 2013/03/18(月) 20:27:51.93 ID:Kp1zcsNko

杏子「けど……」

ほむら「これは正当な報酬よ。貴方のお金」

ほむら「すぐに使う必要なんてないでしょう。
     貯金しておいて、いい使い道が見つかった時のために
     とっときなさいな」

杏子「うーん、そういわれてもなぁ」

杏子「あたし、学校にもまともに行ってない馬鹿だからさ、
    馬鹿みたいな事につかっちまったら、と思うとね。

    それなら、信頼できる奴に預けたい。

    もしかしたら、私一人で使おうとするより、
    有意義な使い方を、教えてくれるかもしれない。

    だから、あんたに、私にどうやって使えばいいか
    教えて欲しい」

ほむら「杏子にとっての有意義な使い方、直には私もわからないわ」

杏子「そっか、そうだよな」

254: 2013/03/18(月) 20:28:22.95 ID:Kp1zcsNko

ほむら「でも、私に預けたいというのなら……いいわ、預かっておく」

ほむら「信頼してくれて、ありがとうね」

杏子「……こっちこそ、その……」

ほむら「ん?」

杏子「あ、ありがとな!」

ほむら「……かわいいわね」

杏子「なんだ急に!」



……これで、私の大事な仲間4人全て、
深い絆を結べたと言ってもいいのだろうか?

影でこの4人以外からも、多くの因果を集めているが、
質、量 共に比にならない。

今までにない力を感じる。

あの舞台装置の魔女との対決の日が迫っているというのに、
恐怖が薄い。

今度こそ……きっと、私は、このループを打ち破る。


255: 2013/03/18(月) 20:29:25.01 ID:Kp1zcsNko

――夕飯時が近づいてきた。

引き続きパソコンについて教えていたため、
そろそろ頭から煙でもあがりそうな杏子を引き連れ、マミの部屋へ。

玄関には、マミ以外の靴がある。

どうやら、まどかとさやかだ。


ほむら「ただいま」

杏子「お邪魔するよ」

マミ「ほむらさん、おかえりなさい。杏子もおかえり」

杏子「……お、おう。ただいま……なのか?」

さやか「おふたりさん、さやかちゃんが 上がらせてもらってるよー」

まどか「わたしもー」

ほむら「よく来たわね、まどか。ついでに、さやか」

杏子「おう、どうかしたのか?」

まどか「ちょっと、ほむらちゃんに話があって……」

さやか「そのまえに、ほむほむに「ついで」って言われた事に言及したいんだけど」

ほむら「瑣末な事よ」

さやか「泣くぞ、ほむほむ」

256: 2013/03/18(月) 20:30:15.87 ID:Kp1zcsNko

ほむら「話って何かしら?」

まどか「えっとね、私とさやかちゃん、ワルプルギスの夜や
     魔女狩りでは、やっぱり役に立てないから……」

ほむら「その必要はないわ!」

まどか「ひうっ!?」

さやか「ま、まぁ、落ち着いて聞いてよ。別に私達が魔法少女になるって話じゃないから」

ほむら「あ、そ、そう……」

まどか「そ、そうだよ、ほむらちゃん! 私の事、信じてよ!」

ほむら「ご、ごめんなさい。正直、その展開はもうトラウマレベルで……」

さやか「平常心保ててない ほむほむは、レアっちゃレアだけどさ」

257: 2013/03/18(月) 20:31:07.32 ID:Kp1zcsNko

マミ「ほむらさんは、二人の事が心配なのよ。怒らないであげて?」

さやか「別に怒ってるわけじゃないですよ」

まどか「……私は、ほむらちゃんってば自分の事を信じてって言ったのに、
     私のことは信じてくれてないんだって思って、ちょっと……怒ったかも」

ほむら「ま、まどか……」

まどか「……だからね、ちゃんと聞いてくれたら、許してあげる」

ほむら「え、ええ! まどか、なにかしら?」


遠くでごちゃごちゃ言ってるのが聞こえる。

「ほむほむって、まどかだけ、ちょっと特別扱いというか、何か反応が違いません?」
「……私も思ったわ」
「ほむらの弱点か」

……反応したい所だが、まどかが優先だ。

258: 2013/03/18(月) 20:32:10.44 ID:Kp1zcsNko

まどか「あのね、魔法少女じゃないなりに、私達でも
     手伝える事があるんじゃないかって思って……」

まどか「戦力にはなれないけど、やっぱり、力になりたいの」

まどか「ほむらちゃんの力に……!」

ほむら「まどか……」

さやか「あーーー、私もだからね! ほむほむ!」

杏子「おい、空気読んだ方がいいんじゃないか?」

マミ「いえ、読まなくていいとおもうわ」

杏子「……そ、そう……なのか???」

259: 2013/03/18(月) 20:33:04.76 ID:Kp1zcsNko

ほむら「……そうね、ワルプルギスの夜対策としては、正直思い浮かばないけど……」

ほむら「魔法少女候補者である貴方達に、将来的にやって欲しい事はあるわ」

まどか「な、なにかな、ほむらちゃん!」

まどか「家事でも何でもやるよ!?」

さやか「あたしだってやるぞー、まどかよりは料理上手いぞ!」

まどか「なにー、さやかちゃん!」

まどか「掃除とか 苦手なくせにー!」

さやか「なにをー!」

ほむら「家事も手伝ってもらえると助かるけど、そうじゃないわ」

ほむら「杏子、お願い。私のPCを起動して、例のページに飛んで頂戴」

260: 2013/03/18(月) 20:33:45.32 ID:Kp1zcsNko

杏子「ほい来た。ちょっと待っててくれ。操作、まだ慣れてないんだよ」

杏子「ええっと……ぶっくまーくは……これか、あった」

まどか「……? パソコンで、何を? ほむらちゃん」

さやか「あれ……このホームページのバナー……」

マミ「ええ、そう。ソウルジェムの画像よ」

まどか「……」

さやか「……」

まどか「えっ??? いいの? それって、魔法少女にとって とっても重要な事なんじゃ……?」

さやか「一般人には秘密なのかと……」

261: 2013/03/18(月) 20:34:41.11 ID:Kp1zcsNko

ほむら「別に魔法少女に関する事って、秘密でも何でもないわよ。
      契約上しなきゃいけないって事はないわ」

杏子「まぁ、下手にばれたら、魔法少女を捕まえてモルモットにしたいっつー
    研究者があらわれるかもしれないけどな」

さやか「笑えないよ、それ……」

マミ「まぁ、一般人が見ても、何かはわからないわよ」

ほむら「そこのバナーをしても、パスワードの入力画面に行くだけだからね」

ほむら「パスワードの入力欄をすると、バーチャルキーボードが起動する」

杏子「画面上で文字選んで入力できるんだと。
    せきゅりてぃ……とやらの問題でこれで入力するようにしてるらしい。
    これで、ソウルジェムって入力すると……」

ほむら「ゲストとして、このサイトに入る事ができるわ」

まどか「……わぁ、魔法少女ネット???」

さやか「初心者支援制度……救援要請システム……グリーフシード売買制度……?」

262: 2013/03/18(月) 20:35:34.89 ID:Kp1zcsNko

杏子「ほむらが考えたんだよ。魔法少女が相互援助 出来る場を作れないかって」

マミ「なりたての子は氏亡率が高いから、戦う術を先輩達で教育する初心者支援制度。

   強力な魔女が現れた場合の、近場の魔法少女への救援要請システム。

   戦闘が苦手でも、お金を払う事でグリーフシードを得られるシステム」

杏子「最後のは、私みたいに金はないけど、魔女狩りは得意って奴にとっても便利だ」

マミ「歳をとれば、働いてお金を稼がなきゃ生活していくのも厳しいと思うわ……
   うまくこの試みが働いてくれたら、いい方向で物事が動くかもしれないわね」

まどか「すごい……」

さやか「これ、もう機能してるの???」

ほむら「まだ、試作版みたいなものよ。まだまだ煮詰めていかなきゃいけない所がある」

ほむら「完成すれば、大手のサイトに定期的にを張らせて貰おうかと思っているわ」

マミ「それに、本格的な立ち上げには大きな問題があるのよね」

263: 2013/03/18(月) 20:36:17.17 ID:Kp1zcsNko

さやか「……大きな問題?」

ほむら「私達の戦力よ」

まどか「……えっと、なんで戦力が問題になるの……?」

杏子「まず一つに、グリーフシード目当ての奴が、襲ってくる場合が考えられるな」

さやか「……そんな奴がいるんだ」

マミ「逆に、戦力の問題からは外れると思うけど、罠かと思って、接触を躊躇う子もいると思うわ
   きゅうべぇに色々吹き込まれるかも知れないし」

ほむら「それに、初心者支援も、救援要請システムも戦力に余裕がないと 人足を裂けないし、
     グリーフシード売買制度も在庫に余裕が欲しいし……」

杏子「魔法少女全体を満足させるだけ確保するのが難しいかもしれねーからな」

ほむら「金銭面・設備面では仁美も協力してくれてるから、そっちの心配は少ないけどね」

264: 2013/03/18(月) 20:36:57.39 ID:Kp1zcsNko

さやか「仁美???」

まどか「なんで仁美ちゃんが出てくるの?」

ほむら「あの子、最近やけに外出先で会うのよね……」

ほむら「色々知られてしまったの」

さやか「仁美も、最近よく休むと思ってたけど……まさか」

まどか「……ま、まぁ、仲のいいのはとってもいい事かなって」

ほむら「話、戻すわよ。私達はまず、信頼できる仲間を増やすのが第一、ね」

杏子「ま、そんな簡単にはいかないだろうな」

ほむら「今は試作版のページを見て、興味を持って接触してきてくれた子を
     面接しながら、仲間を増やそうとしてるのよ」

ほむら「私、マミさん、杏子は現場での戦いがメインになってくるの」

ほむら「だから……事務的にバックアップしてくれる人が、欲しいわけ」

265: 2013/03/18(月) 20:37:30.29 ID:Kp1zcsNko

まどか「それが、ほむらちゃんが 言った……」

ほむら「そう。魔法少女候補者向きの戦いって事よ」

ほむら「一般人には、完全には任せられない部分も出てくると思うから」

さやか「なるほど……」

ほむら「組織として成立すれば、お給料も出せるようにしたいわ」

まどか「えっ!? い、いいよう! お金の為じゃないし……」

ほむら「そう言ってくれるのは嬉しいけど、そういう問題じゃないわ」

ほむら「貴方達という人間を抱え込みたいの。
     その場合、組織に属していても、日常生活は無視できない」

ほむら「お金が無ければ生活できないから、当然 給金をださないと」

266: 2013/03/18(月) 20:38:43.64 ID:Kp1zcsNko

マミ「え……っと、そこまで私も話を聞いていなかったけど、どうやって そんな組織を……」

杏子「グリーフシードの売買制度で大して利益出せるとは思えねーし……
    研修や救援要請で金を取るにしても、私ら魔法少女は基本的に餓鬼だぞ……?
    金とれるのか?」

ほむら「もちろん、救援要請や研修でお金はとるつもりはないし、
     売買制度で利益を出すつもりは 元々ないわ。
     トントンなら御の字なんだけど、難しいでしょうね」

ほむら「金策は探偵事務所を設立するつもり」

ほむら「魔法少女の団体自体も、それを表向きの名前とするわ」

ほむら「希望者は、雇う事も考えてる」

さやか「……魔法少女なら、確かにそういう調査向いてるかもしれないけど」

ほむら「魔力をそこで無駄に使う心算はないわよ。
     私には幅広いコネクションがあるのだから
     情報なんか幾らでも得られるわね」

さやか「……? コネクション……?」

杏子「おいおい、魔法少女以外はただの中学生の癖に、何を言って……」

267: 2013/03/18(月) 20:40:20.19 ID:Kp1zcsNko

ほむら「代表的なので言えば……とある大物政治家とのコネクションが、私にはあるわ」

マミ「……えっ?」

まどか「大物……」

さやか「政治家……?」

ほむら「汚職の嫌疑を掛けられそうになっていてね、
     その証拠を私が隠滅してやって、恩を売ってあるのよ」

ほむら(とある時間軸よりも、その議員……嫌疑を掛けられ自殺を図るまでのタイミングが、
     今回はループの時間まで遅れてたから助かったわね)

杏子「お前、まじで何でもありだな」

268: 2013/03/18(月) 20:41:35.97 ID:Kp1zcsNko

ほむら「ま、その議員だけじゃなく、
     ここら周辺の権力者や大きな企業の社長の弱みは大体、握っているしね。

     最近掴んだネタは、市長の浮気とかかしら」

まどか「市長の……浮気?」

ほむら「コスプレ好きだったり、中、高校生相手に踏んで欲しいとか言ってて、引いたわー」

マミ「……不潔」

杏子「いや、それより、さぁ……」

さやか「ほむほむだけは敵に回してはいけない……」

杏子「そう、気にする所、そこだよなぁ」

ほむら「悪用はしてないのよ?」

さやか「それは信じてるけどさ」

マミ「ほむらさんがそんな事するわけがないわ」

まどか「そうだよねぇ」

杏子「私は信じてるというか、信じたいだな。
    それ掴んでどうするつもりだよ。
    一つ間違えれば とんでもない悪になるぞ、こいつ……」

ほむら「……ちなみに、杏子。あなた、実は最近……」

杏子「……っ、ま、待て待て!!! 何を言い出すつもりだ!」

ほむら「冗談よ」

杏子「泣くぞ まじで……」

269: 2013/03/18(月) 20:42:30.28 ID:Kp1zcsNko

マミ「……まぁ、地道な調査とかもあるのよね。
   そういうのって、ついでに魔女のパトロールにもなりそうね」

杏子「どうせ負のエネルギー放出してそうなやつ等が頼んでくるんだろうしねぇ」

ほむら「まぁ、表向きの方は、貴方達がそんな本気でやらなくても、どうとでもなるわ。
     そっちはそっちで 人を雇うから。

     私を姐さんと慕ってくれる、逞しいお兄さんたちが
     低賃金で馬車馬の様に働いてくれるわ」

さやか「……ちょっと待って、ほむほむ」

杏子「……姐さん? 逞しいお兄さん?」

マミ「……」

まどか「……」

270: 2013/03/18(月) 20:43:23.55 ID:Kp1zcsNko

さやか「……あの、そのお兄さん達って、背中にお絵かきしてたり……なんて……?

ほむら「さあ、どうかしら…… 見たくもないから見たことないわ」

杏子「リーゼントだったり、パンチパーマだったり……」

ほむら「あのねぇ、意外と普通の格好してるのよ? あの人たち」

ほむら「ちょっと、荒事に長けているだけで……」

さやか・杏子「……やっぱり、暴力団じゃんか! ヤクザだよ!」

ほむら「任侠団体よ」

さやか「そーいうのを!」

杏子「暴力団っていうんだって!」

ほむら「貴方達、あって間もないのに息ぴったりね」

271: 2013/03/18(月) 20:44:23.38 ID:Kp1zcsNko


まどか「……あの、えっと……ほむらちゃん……冗談だよね?」

マミ「ま、あっ、えっと……ほむらさん、マミも信じてるから……」

まどか・さやか(マミっ!?)

ほむら「だから……、昔はそうかもしれないけど、今はそういうのは無しよ。
     平和に警備会社の設立を進めてもらっているわ」

ほむら「それに、探偵業やるのに、そっちの道に強い人はどうしてもいるの」

さやか「……でも、そんな人たちと一緒に仕事したくないよ」

ほむら「大丈夫、そもそもが別会社よ。接点は私だけ。
     基本的に貴方達と一緒に仕事する事はないわ。

     依頼という形で、調査の仕事を回すだけ」

杏子「そもそも、何でそんな奴等と関係があるんだよ」

ほむら「ああ、他所の団体の人たちと抗争が始まってて……、
     殺されかけてたから、通りがかった私が解決してあげたわけ」

272: 2013/03/18(月) 20:45:19.53 ID:Kp1zcsNko

さやか「……」

まどか「……」

マミ「……」

杏子「……」

ほむら「……そんなに引かなくても」

さやか「……ねぇ、杏子」

杏子「なんだ?」

さやか「魔法少女って、なんだっけ……」

杏子「こいつと私を一緒にするな。
    ほむらは魔法少女ってトコが一緒なだけで、別の何かだ」

273: 2013/03/18(月) 20:46:13.59 ID:Kp1zcsNko

……実は、その抗争の始まりや、負けそうになっていた要因は、
私が武器等 色々失敬した所為だ。

氏にそうになっていて、見てみぬフリは 流石に寝覚めが悪い。

それに、その道の人たちは本当に役に立つ。

探偵業以外にも、
武器の流通ルートの把握もしやすくなるかもしれない。

時間停止が使えなくなっても、様々な情報を得易くなる。

また、戦力として期待できそうなら、魔法少女の内情を話し、
鍛え上げ、魔女との戦いの間、
銃による援護射撃を期待できるかもしれない。

彼らには見えないだろうから、指示出しが重要となるだろうが。

それから、彼らを抱え込む最も重要な点が他にある。

274: 2013/03/18(月) 20:47:20.80 ID:Kp1zcsNko

この子達に明かす心算はないが、

魔法少女ネットを維持するのに、大きくなればなるほど、
そのシステム自体や探偵事務所だけでは、支えきれなくなると踏んでいる。

探偵事務所は、実は彼女達を納得させるための存在だ。

表向き警備会社の子達は、
ゆくゆくは日本全国にいる裏社会の人間達を
支配する取っ掛りとするつもりだ。

とある大物政治家や、志筑家にも大きくなって貰い、
人脈もさらに広げる。

表から、裏から、この国を支配してやる。

私は魔法少女として、人として強大な力を持ち、
この時間軸の魔法少女達を、私の仲間達を守る事ができるだろう。

しかし、これで私は留まれない。

魔法少女ネットも、探偵事務所も、国の支配も
私の最終目標のための手段。

275: 2013/03/18(月) 20:48:39.05 ID:Kp1zcsNko

国を越え、様々な人間達から、
親愛を、憧れを、時には畏怖や憎悪を、私は集める。

そうして、最終的には私こそが
まどかや どんな歴代の魔法少女をも越える因果の終着点となる。

以前のループで、魔法少女となったまどかは、
ソウルジェムの穢れすら浄化して見せた。

ワルプルギスの夜ですら、一撃で倒した。

魔法少女の力は向上する事で、
とてつもない可能性を持っているのは間違いない。

魔法少女の枠を壊すほどの力を得られれば、
私は……今までの魔法少女のシステムさえも壊し……

277: 2013/03/18(月) 20:50:46.47 ID:Kp1zcsNko

そうすれば、
今まで見捨ててきた別の時間軸のあの子達すら、
救えるかもしれない。

全ての時間軸の魔女を消し、
魔女化しようとする魔法少女を救う事が出来るなら、
それは私のループの終着点に相応しい。

この道のりはループを抜け出しても
はるか険しい道のりだろう。

だが、目指す価値はある。

それ位 成し遂げてこそ、
私が繰り返してきた意味がある……

278: 2013/03/18(月) 20:53:28.24 ID:Kp1zcsNko

――ふと、まどかがポンと手を叩く。

何かを思い出したようだ。

私は現実に引き戻された。

まどか「そういえば。ママから伝言があるの」

ほむら「私に? なにかしら」

まどか「「ありがとう。おかげで経理の禿を毟る事ができたよ!」って」

まどか「一体……何の事?」

ほむら「さて、この話は終わりにしましょう! そろそろ夕ご飯の時間じゃない?
     マミさん、一緒につくりましょう」

まどか「ほむらちゃん……」

さやか「何依頼したか知らないけど、探偵としての仕事はもう始めているのね……」

292: 2013/03/19(火) 20:18:01.56 ID:hl5ZHJgOo

――話せる事は話した。

それでも、皆はついてきてくれるらしい。

何かをまだ隠している事、折込済みで。

嬉しい事だ。

満たされた心でモアブのダミーを隠していると、
さやかから緊急の電話が掛かってきた。

何事かと電話に出ると、なんと魔女の結界にまどかが
独りで囚われたらしい。


ほむら「……場所はどこ?」

さやか「工業団地! 場所のデータをメールで送るから確認して!」

ほむら「分かったわ。私に送った後、マミと杏子にもお願い」

ほむら「それじゃ、急ぐ。電話切るわね」

さやか「うん!」

293: 2013/03/19(火) 20:18:50.10 ID:hl5ZHJgOo

送られてき位置データを確認すると、
盾からAH-64D アパッチ・ロングボウを取り出す。

少々目立ってしまうが、仕方がない。

まどかの危機だ。

魔力を通し、操作を試みる。

問題ない、いける。

元々、高機動力が売りの攻撃型ヘリだ。

時間停止を併用することにより、
本来の時間の流れの中では10秒弱で魔女の結界付近に到達。

私を見て 飛び上がるさやかを目視する。

空中で、再び盾の中にアパッチをしまい
さやかの隣へと着地した。

294: 2013/03/19(火) 20:19:47.16 ID:hl5ZHJgOo

さやか「なんじゃありゃああああ!」

ほむら「瑣末な事よ。それより、突入するわ。さやかは待ってて」

さやか「えっ、あ! うん!」



結界内にはいると、遠くに使い魔に追いかけられ
逃げるまどかを確認できた。

可愛そうに、恐怖に怯えているのが分かる。
攻撃を受け、怪我もしているらしい。

時間を再び止め、
使い魔を通り抜けざま、さやかの剣で切り伏せる。

それから、まどかを抱き寄せ、怪我を診る。
魔法を使い、傷を治した。

295: 2013/03/19(火) 20:21:09.62 ID:hl5ZHJgOo

まどか「ふぁっ!? あっ、あー……、ほ、ほむらちゃん」

ほむら「よかった、無事で……」

まどか「ごめんね、助けに来てくれてありがとう」

ほむら「いいのよ。それより、結界を張るわ。
     私が魔女を倒してくる。それまで待っていて」

まどか「うん。待ってる! 気をつけてね!」


奥を探索。

魔女を確認したと同時に
TOWとM220発射機を盾から取り出す。

少々勿体無いが、まどかが結界内にいるため時間をかけるわけにはいけない。

流石、TOW

第3世代主力戦車の装甲を貫通できる
対戦車ミサイルだ。

魔女も周囲の使い魔も一撃だ。

結界は解け、まどか、さやかと合流できた。

296: 2013/03/19(火) 20:22:16.31 ID:hl5ZHJgOo

ほむら「さ、ずらかるわよ!」

まどか「えっ? えっ?」

さやか「いいから、いそげー! ヘリ見て人が寄ってきたぁ!!!」

まどか「ヘリっ!?」

ほむら「話はあと! まどか、だっこするわ! さやか、走って!」

まどか「わきゃっ!」

297: 2013/03/19(火) 20:22:54.43 ID:hl5ZHJgOo

まどかを片手で抱え上げ、もう一方の手でさやかの手を掴み、
時間停止。

三百メートルほど走り、人気の無い所で
ようやく、一息ついた。

抱き上げていた所為で、
まどかは私の首に手を回してしがみ付いている。

控え目な柔らかさを感じ取る事ができ……いや、役得?


まどか「ほ、ほむらちゃん、すごい。片手で私を……」

さやか「いや、それより今 世界がおかしかったような……。
     あたし達以外の全てが止まっていなかった?」

ほむら「魔法よ」

さやか「魔法すげぇ……」

まどか「すごぃ……」

298: 2013/03/19(火) 20:23:58.20 ID:hl5ZHJgOo

まどか「それより、魔女を倒したのに、何で逃げたの。ヘリって?」

さやか「ほむらがヘリ使って、飛んできたんだよ。吃驚した」

さやか「ほむほむって言うの忘れるくらい吃驚した!」

さやか「どーすんの、あれ!? 思いっきり人目についてたよ?」

ほむら「何、問題ないわ。あのヘリは軽々しくこの辺りを飛んでいるはずがない」

ほむら「しかも、魔法で 普通の人には途切れ途切れにしか認識できてないから」

ほむら「幻覚か何かだと結論付けられるでしょ」

さやか「あれだけ、多くの人に見られてても?」

ほむら「集団ヒステリーよ。高度な政治的判断でそうなるわ」

さやか「あ、そう……」

299: 2013/03/19(火) 20:25:26.32 ID:hl5ZHJgOo

ほむら「そう、呆れないの。魔女との接触は命の危機よ。
     貴方達を守る為なら、私にとっては冒すべきリスクなの」

まどか「ほむらちゃん……!」

さやか「そっか……、うん、ありがとう」

ほむら「でも、まどか。どうして結界に? 自分から近寄った訳じゃないのよね?」

まどか「あ、うん! 勿論だよ」

さやか「まどかと二人で、マミさん家に向ってる途中で、行動が怪しい人がいてさ
     躁状態というか、危うげな足取りなのに、楽しげで……」

まどか「魔女の口付けかなって思って、ちょっと観察してたの」

さやか「やっぱり、案の定、首筋にそれらしいのがあたし達も見えて、
     あたしがほむほむとマミさんに電話しようとして」

まどか「その間、見失わないようにね、
     私が一人でその人をつけていたら、
     さっきの場所でいきなり結界に引きずり込まれたの」

300: 2013/03/19(火) 20:26:31.24 ID:hl5ZHJgOo

ほむら「……魔女の口付けを受けた者を、魔女が餌にでも使ったのかしら……」

まどか「そっかぁ……、やっぱ、私達だけだと、様子を伺うのもよした方がいいのかなぁ。
     ごめんね、ほむらちゃん」

ほむら「いいわ。次からは、ちょっとでも怪しいと思ったら、
     すぐに私かマミ、杏子に連絡をいれて頂戴」

まどか「うん!」

さやか「うん……」

ほむら「……どうかした? さやか。なにか、腑に落ちなそうだけど」

さやか「……いや。あたしは電話しながら、まどかを目で追っていたのだけど」

さやか「その時、一瞬、インキュベーターを見たような気がするの」

さやか「街灯の上から、まどかを見下ろすように」

ほむら「インキュベーター……を?」

301: 2013/03/19(火) 20:27:55.51 ID:hl5ZHJgOo

どういう事だろうか。

さやかの見間違いでなければ、
インキュベーターがまどかを観察していて、
その後 すぐに まどかは魔女の結界に巻き込まれた。

偶然とは思えない。

私達、魔法少女は使用済みのグリーフシードを
インキュベーターに与えているのであるし、

あいつ自身が魔女をある程度 自由に呼べるのではないか、
そう疑わせられる場面は今までの時間軸でもあった。

そうだとして、だ。目的はなんだろうか?

まどかに、魔法少女の契約をさせるため?

その割に、インキュベーターはまどかの前に姿を現さなかった。

下手をしたら、まどかを 使い魔に殺されるという、
私にも インキュベーターにも最悪な展開が……。

ん?

302: 2013/03/19(火) 20:28:44.57 ID:hl5ZHJgOo

今回のループでは、まどか程ではないかもしれないが、
かなり多くの因果をまとい、
膨大な感情エネルギーを得られそうな人物がいるではないか。

それは、私。

まどかは私が居る限り、魔法少女の契約を結ぶ可能性はかなり低い。

ワルプルギスの夜を越える可能性を私が持てたとしたなら……
私を標的にしたほうが 奴にとって都合がよかろう。

今回の私が仲間を大事にしているのは、奴も知っている。

まどか達を次々と頃し、私を絶望させるのが目的か。

だとすれば……、酷く厄介だ。

四六時中、まどかとさやかを 守らねばならなくなる。

マミや杏子にも負担だろう。

魔女との連戦を氏ぬまで強いてくる危険性だってある。

303: 2013/03/19(火) 20:29:35.11 ID:hl5ZHJgOo

まどか「ほ、ほむらちゃん? どうしたの?」

さやか「なんだか、怖い顔をしているけど」

ほむら「……なんでもないわ、まどか。さやか」

ほむら「それより、魔女は倒したのだし。
     マミさんと杏子と、合流しましょう」

さやか「うん、こっちに向ってるだろうし、
     安心させてあげないとね」

ほむら「さっきの結界のあった場所に来るのよね。
     戻りましょうか」

さやか「大丈夫かな」

ほむら「大丈夫、誰も私達の姿は見てないでしょ。
     ミーハーなふりをしましょう。
     それより、合流したら お茶したいわね」

ほむら「マミさん、新しいお菓子作りにまた挑戦しているから、
     楽しみにしてなさい」

さやか「おお!」

まどか「楽しみだなぁ……。じゃあ、むかおっか!」

304: 2013/03/19(火) 20:30:03.25 ID:hl5ZHJgOo

……インキュベーター。

奴は何体倒そうが、無駄な存在だ。

幾らでも湧いて出てくる。

しかも、ワルプルギスの夜を越えたからといって、
奴の攻撃は休まるわけではない。


この危機を乗り越えられるとしたら……


奴を完全に消滅させる方法を探すか、

奴自身を、変えるしかないだろう。


305: 2013/03/19(火) 20:30:39.61 ID:hl5ZHJgOo

――まどかとさやか、マミ、杏子とお茶会中、
呼び出しが入った事にして、マミの部屋から一人外に。

近くの川原まで歩き、橋の上から川のせせらぎを眺めながら、
独り言の様に呟いた。


ほむら「インキュベーター、いるんでしょう?」

QB「……」

ほむら「やっぱり、いた」

QB「今更、僕に何か用かい? 使用済みのグリーフシードでもくれるのかい?」

ほむら「いいえ、ちょっと話がしたかっただけよ」

QB「話? 君が今更、知りたい事があるとは思えないけど」


306: 2013/03/19(火) 20:31:31.73 ID:hl5ZHJgOo

ほむら「……そうねぇ、今のわたし、どうかしら? インキュベーター」

QB「この短期間で、よくもまぁ、これだけ因果を集めたものだね」

QB「鹿目まどかに行き着くはずの因果を我が物としてるのか?」

QB「いや、それだけじゃないよね」

QB「君の成長速度を甘く見すぎていた。人の心はよく分からない」

QB「ワルプルギスの夜に対抗しうる力を得つつあるのは、認めるよ。
   暁美ほむら、君は強敵だ」

ほむら「そう……、ふふっ」

QB「何がおかしいんだ」

ほむら「あなたって、感情あるわよね? 敵意とイラつき、感じるわ」

QB「ないよ。何度もいってるし、僕が嘘をつかない事、知ってるだろう?」

ほむら「嘘をついてるんじゃ無い事は知ってるわ。
     ただ、感情がある事に気がついていないだけじゃないかって、思うのよ」

ほむら「あるいは、昔はあったのか……?」

307: 2013/03/19(火) 20:31:59.54 ID:hl5ZHJgOo

QB「……」

ほむら「……」

QB「訳がわからないよ。話がそれだけなら僕はもう帰るよ?」

ほむら「……使えるエネルギーというのは、絶望のみなの?」

QB「……」

ほむら「希望から絶望への相転移のみがエネルギーとして摂取できるなんて、
     ロスが多いと思わない?」

QB「一番、抽出しやすいからね。エネルギーとして」

QB「絶望ほど、君達の感情の中で強い行動原理となるものはないだろう?」

QB「エネルギー抽出の際も、それと同じなのかもしれない。
   一番効率良く、強いエネルギーが得られるんだ」

ほむら「そう…… 絶望から希望への相転移は、エネルギーとならないわけ?」

QB「ならない訳ではないよ。それも強いエネルギーとなるはずさ」

308: 2013/03/19(火) 20:33:07.00 ID:hl5ZHJgOo

ほむら「じゃあ、なぜ? 魔女にして終わりよりも、
     繰り返しエネルギーが得られるほうが、長い目で見れば効率的でしょう?」

QB「研究が進まないのさ」

ほむら「どうして?」

QB「希望というのは複雑だ。
   本人の資質から、人間関係から、時期から、絡む要素が多すぎる。
   そこからエネルギーを得るのも難しいんだ」

QB「逆に、絶望だって、そうだけど……。
   一つのある事象が発生する事により、
   他の物との繋がりが途絶え易い、あるいは途絶えている状況に陥っている。
   比較的、単純なんだよ。構造が」

ほむら「とはいえ、人間がウホウホ言ってる頃から見てたのでしょう?
     ちょっと位は研究が進んでも……」

QB「そうは言うが……僕達には感情が無い。それを進めるには協力者が居る」

ほむら「魔法少女で研究すればいいでしょう」

QB「感情が無いから、全てを理解した上での協力者が必要なのさ」

309: 2013/03/19(火) 20:33:48.67 ID:hl5ZHJgOo

ほむら「ふむ……魔法少女の真実を知った上で、協力してくれる人がいるって事ね」

QB「そうだよ」

ほむら「私が、協力するといったら?」

QB「君が?」

ほむら「そうよ。私が、貴方達の研究に協力するといっているのよ」

QB「……本気かい?」

ほむら「ええ。魔法少女のあり方を、変える研究につながるなら、ね」

QB「僕達がやってきた事を知って、そんな事を言うのは君が初めてだよ」

310: 2013/03/19(火) 20:34:22.26 ID:hl5ZHJgOo

ほむら「そう……。私も言うのは初めてだわ」

QB「それが本当なら僕は母星と連絡し、新しいプロジェクトを立ち上げるか検討しなければ」

ほむら「……クスッ」

QB「……? 何を笑っているんだい。まさか、僕を騙そうと……」

ほむら「いえ、違うわ。ただ、貴方、やっぱり感情あるでしょ。今、がっかりした」

QB「違うよ。僕に感情はない」

ほむら「……そう、それなら、そういう事にしておいてあげる」

QB「訳がわからないよ」

ほむら「貴方が感情がないとしても、一つ分かった事があるわ」

QB「なんだい?」

ほむら「貴方、知っているのね。絶望を」

ほむら「でなければ、感情の薄い貴方達が、
     そんなに絶望に詳しいはずがない」

QB「……」

311: 2013/03/19(火) 20:35:20.51 ID:hl5ZHJgOo

ほむら「貴方達の絶望は……、貴方の行動原理である、宇宙の枯渇あたりかしら?」

QB「……僕達は君達人間と比べかなり長寿の生命体だ。
   人間にしてみれば、寿命が無く見えるかもしれないね。
   だから、人間よりも宇宙の氏が身近なんだ」

QB「かつて、僕達は……宇宙が枯れ果てる未来を予測し、絶望を覚えたらしい」

QB「その絶望は、今でも僕達QBは知識として知っているよ」

QB「宇宙の維持を図るのに感情は邪魔だから、捨てたけどね」

ほむら「自分達の感情でエネルギーを生めば良かったのに……」

QB「宇宙の維持を図るのには膨大なエネルギーが必要だ。
   それこそ、当初の試算では
   全宇宙の 感情を持つ知的生命体をエネルギー源としない限り……ね」

QB「その当時の僕らは、自分達の感情を消し、使命に生きる道を選んだという訳だ」

312: 2013/03/19(火) 20:36:38.33 ID:hl5ZHJgOo

ほむら「成程……ねぇ。ねぇ、インキュベーター」

QB「なんだい」

ほむら「協力するから、感情エネルギーの有効活用の件、しっかり研究しなさい」

ほむら「そうすれば将来的には、私が宇宙を維持できるようになれるかもしれない」

QB「……君は、何を言っているんだい? 何を馬鹿な」

QB「君は、神になるつもりかい?」

ほむら「まどかが神になるに値する願いを貴方に願った場合、どうなる?」

QB「……」

ほむら「貴方がここにいる地は、日本。八百万の神が住まう神の国よ」

ほむら「山の神様、田んぼの神様、トイレの神様、台所の神様など、米粒の中にまで神様がいる」

ほむら「貴方が認識しているより、神と人との垣根は低いわ」

313: 2013/03/19(火) 20:37:37.48 ID:hl5ZHJgOo

ほむら「だけれど、魔法少女には未だ神がいない」

ほむら「ならば、私は因果を束ね、いつの日か魔法少女の神となる」

ほむら「魔法少女を守るなら、世界を……そして、貴方を変えないと意味がないからね」

QB「……何からなにまで規格外だな、君は」

ほむら「ある意味、貴方が生んだのよ、私を。
     さあ、私に協力するか、しないか、はっきりなさい」

QB「……」

QB「君がワルプルギスの夜を乗り越えられるか……
   それで、君という可能性を見極めさせてもらう」

QB「返答は、それからだね」

QB「とりあえず、それまで休戦とすることにしようか」

QB「どうせ、君の望みはそれだろう?」

ほむら「お見通しなのね」

QB「それ位はね」

314: 2013/03/19(火) 20:38:42.20 ID:hl5ZHJgOo

――ワルプルギスの夜が襲来する2日前。

下準備は全て整い、連携の練習も万全。
グリーフシードのストックも充分。

ワルプルギスの夜対策は、これ以上ないのではないか。

嘘をつけないインキュベーターの言質をとったのだから、
まどか達もゲリラ的に狙われる事はない。

英気を養う意味でも、一休みすることにしよう。

朝、まどか達との待ち合わせの場所へと、
マミと一緒に向った。

315: 2013/03/19(火) 20:39:24.76 ID:hl5ZHJgOo

まどか「あっ! ほむらちゃん!」

さやか「おー、ほむほむ。マミさん家でよく会ってるけど、制服姿を見るのは久しぶりじゃん」

ほむら「私、中学生だったのよね」

マミ「ほむらさん、忘れちゃ駄目だよ」

仁美「私はもっとほむらさんと一緒に、学生生活を楽しみたいですわ」

ほむら「そうね……」

マミ「ね、ほむらさん。
   もし良かったら、今日はパトロールも早めに切り上げて、
   お泊り会とかしてみない?」

ほむら「お泊り会?」

さやか「お、いいですね。楽しそう!」

まどか「パパとママに連絡入れなきゃ。たのし……

317: 2013/03/19(火) 20:41:38.89 ID:hl5ZHJgOo

まどか「」

ほむら「」

さやか「」

マミ「」

仁美「やりましょう、是非やりましょう! 私の家、今晩あけさせます!
    もう、学校行ってる場合じゃないですわ!
    私、帰ります! 今すぐ準備を……っ!」

マミ「あ、あの、志筑さん? 別に私の家でも……」

仁美「え、でも……5人泊まるなら」

ほむら「……あ、やるなら、杏子も誘いましょう。6人ね」

マミ「ちょっとその人数なら狭いかもしれないけど、
   皆で雑魚寝も、お泊り会らしくてよくない……?」

仁美「雑魚寝……ほむらさんと、雑魚寝……となりで……」

仁美「ああん! それもいいですわね! そうしましょう、そうしましょう!!!」


318: 2013/03/19(火) 20:42:09.45 ID:hl5ZHJgOo

さやか「やっぱりかー、まじかー……」

仁美「どうしました、さやかさん! テンション低いですわよ!」

さやか「いや、ねぇ……。逆に、なんでそんなにテンション高いのさ? 仁美は」

まどか「ちょっと、高すぎない?」

仁美「え、そ、そうですか?」

マミ「頬っぺた、真っ赤にして……しかも」

ほむら「仁美……縋り付いてくるみたいにするのは、ちょっと止めて欲しかったり……」

仁美「ほ、ほむらさん! だって、あの時、私の事を全て受け入れてくれるって……!」

ほむら「……夜はパスでいいかしら?」

仁美「夜って……、な、なんでですのっ!?」

320: 2013/03/19(火) 20:43:37.67 ID:hl5ZHJgOo

私はさやかと顔を見合わせ、苦笑いをする。

まどかとマミはというと、曖昧な笑みを浮かべながら、黙っていた。


さやか「なぁ……仁美。仁美って、ぶっちゃけ、そっち系……?」

仁美「そ、そそそ、そそそそ、そんな事ないですわっ!!!」

ほむら「そんなに豪快にきょどらないでよ……」

さやか「余計 怖いよ!」

仁美「そんな、そんな誤解をしてらっしゃるのなら、いいですわ!
    誤解を解いて差し上げますわ!!!」

さやか「どうすんのよ」

仁美「上条恭介くんに、告白してきますっ!」

さやか「やめてっ!!! なんで恭介なの!」

ほむら「よし、行ってきなさい」

さやか「おい!!!」

321: 2013/03/19(火) 20:44:46.81 ID:hl5ZHJgOo

どっかに走っていく仁美。

慌て過ぎたのか、途中でずっこけたと思わしき音がする。

……まあ、今の彼女なら大丈夫だろう。

地味に彼女の身体能力は高いようだし。



マミ「……ほむらさん」

さやか「ねえ、ほむほむ。前から怪しいと思ってたけど」

ほむら「……何かしら? 二人とも」

さやか「いつ、仁美まで落としたの?」

ほむら「えっ? 落とす?」

マミ「全て受け入れるって……心の広い事よね」

ほむら「……そもそも、私は全てとは言ってないのだけれど。
     あれ、なんで二人共、機嫌悪そうなの?」

さやか「別に、あたしは恭介がいるしねー」

マミ「……」

ほむら「ちょっ……?」

322: 2013/03/19(火) 20:45:47.56 ID:hl5ZHJgOo

何だこの二人。訳がわからないよ。

何故ここで さやかが恭介の名を出したのかも わからない。

助けを求めるように、私はまどかを見る。

まどかは、私の視線に気がついて、
……目を逸らされたっ!?



ほむら「ま、マドカァアーーーッ!?」

さやか「おうおう、まどかまで ほっぺた膨らませて……」

まどか「膨らませてません」

さやか「ねえ、ほむほむ」

ほむら「なによぉ……、さやかぁ……」

さやか「自覚ないのかもしれないけど、ほどほどにしとかないと その内……」

さやか「刺されるよ?」

ほむら「えっ?」

さやか「ノンケでも目覚めさせちゃう女なんだから、あんた」

ほむら「……よく分からないけど、そっとしといて頂戴」

333: 2013/03/20(水) 20:05:37.17 ID:E9bBZjNvo

朝から馬鹿騒ぎだった その日の夜、
マミの家に集まったのは6人。

平凡な中学生の様に、
皆は楽しい時間を過ごした。

……その翌日、正体不明のテ口リストから
警察や各報道機関に 見滝原に爆発物を仕掛けたと連絡が入る。

爆発物の規模が規模なだけに、
見滝原からは速やかに避難措置が執られることになった。

風見野を始めとした周囲の市町村に移動を開始。

まどか、さやか、仁美は名残惜しげに、
私とマミ、杏子に別れを告げ、避難。

私達3人は、警察や派遣されてきた自衛隊から隠れながら、
見滝原に潜み、ワルプルギスの夜に備えた。

334: 2013/03/20(水) 20:06:03.70 ID:E9bBZjNvo

――5、4……2、1……

ほむら「来たわね」

マミ「ええ……。なんて大きさ……」

杏子「けっ、大層な数の使い魔を従えやがって……」


漸く姿を現した ワルプルギスの夜。

お祭り騒ぎの使い魔は攻撃を仕掛けてくるわけでもなく通り過ぎる。

ここまでは いつもどおりだが……

ワルプルギスの夜は、笑い声をあげていない。

魔法少女の影の様な使い魔も、
最初から現れ、戦闘態勢をとっている。

335: 2013/03/20(水) 20:06:59.97 ID:E9bBZjNvo

私の仕掛けた爆弾情報により、
周囲にはマミと杏子以外はいない。

遠くで自衛隊や警察の方々が活動しているようだが、
それもうまく陽動に引っかかってくれている。

人の気配が少ない事が原因なのか?

……少し違和感があったが、この際どうでもいい。

倒すだけだ。


336: 2013/03/20(水) 20:09:28.73 ID:E9bBZjNvo

私は時間を止め、現代兵器をありったけぶち込む。

ピンボールの様に飛ばされるワルプルギスの夜だったが、
どうもダメージは受けてなさそうだ。

だが、周囲に比較的建物の少ない場所に移動させる事ができた。


杏子「すっげぇ……、なんというか、魔法少女の戦い方じゃないな。やっぱり」

マミ「杏子、目を奪われるのは分かるけど、油断しちゃ駄目だよ」

杏子「分かってるって!」

337: 2013/03/20(水) 20:10:02.93 ID:E9bBZjNvo

爆炎が薄れ、ワルプルギスの夜が
やはり無傷で存在し続けるのが見える。

同時に、彼女の周囲の建物に不気味な魔力の流れを感知。

お得意のビル投げだろう。


杏子「おい、おい! ビルが持ち上がって……、やばいって!」

マミ「逃げなきゃ……!」


ほむら「……それには、及ばないわ」

私はワルプルギスの夜が、投擲しようとしたビルを爆破した。

ビルは崩壊し、破片は落下。
こちらに攻撃は届かない。

338: 2013/03/20(水) 20:10:42.72 ID:E9bBZjNvo

杏子「……oh.そういや、あの建物って ほむらが悪さしてたとこだよな」

ほむら「ワルプルギスの夜が破壊するか、私が破壊したかの些細な違いよ」

ほむら「強力な魔女だっていうから、ビルに閉じ込めて爆破、
     瓦礫で押しつぶしコンボを考えていたけど
     まさか、こんな風に役立つとはね」

ほむら(やっぱり嘘だけど。知らないふりって大変ね)

マミ「……大丈夫なの? あとでママが逮捕とかいやだよ?」

ほむら「私に結びつくような証拠は残してないわ」

マミ「ならいいけど……」

杏子「マミが染まってる……」

339: 2013/03/20(水) 20:11:32.09 ID:E9bBZjNvo

無駄口を叩きながらも、
今度は魔法少女の影のような使い魔と対峙する。

こいつらが地味に厄介なのだ。

遠距離攻撃のスペシャリストであるマミの魔力を温存する為、
杏子と私、二人は槍と剣を駆使しながら使い魔を減らす。

使い魔は幾らでも沸いて出てくるため、
焦れた様に杏子が叫んだ。

340: 2013/03/20(水) 20:12:20.95 ID:E9bBZjNvo

杏子「さて、どうする! あの空飛ぶ怪獣!」

ほむら「あいつは、通常の物理攻撃が効きづらいみたいね。
     あの火力で、大したダメージを受けていない。
     魔力の通じた魔法の力しかないわよ」

杏子「出し惜しみしてちゃ、ダメージも与えられ無そうだな」

杏子「かといって、そら飛ばれてちゃ、なぁ。近接の私にはきついな」

マミ「遠距離で火力ある攻撃……。やっぱり、ティロ・フィナーレね!」

ほむら「マミ、二人で撃つティロ・フィナーレ……、そうね! ラッフィカ・フィナーレといきましょう」

マミ「うん! ラッフィカ……集中砲火だね!」

杏子(二発で集中砲火かよ)

ほむら「杏子!」

杏子「お、おう! 任せろ、時間稼ぎだな……!
    ここが魅せどころか? はぁっ!」

341: 2013/03/20(水) 20:13:12.67 ID:E9bBZjNvo

杏子が祈るようなポーズをとり、
続けて地面から巨大な槍が現れ、周囲の使い魔を屠る。

そのまま、私達の周りを守るように、槍を配置した。


……しかし、この技、私はトラウマだ。
早く止めさせよう。


マミ「ママ!」

ほむら「ええ! ちょっと待たせたわね、私も撃てるわ」

マミ「なら……!」

ほむら・マミ「ラッフィカ・フィナーレッ!」

342: 2013/03/20(水) 20:13:40.53 ID:E9bBZjNvo

二つの大砲から発出される、ティロフィナーレが
ワルプルギスの夜に向う。

彼女を守る透明の防御壁みたいなものに、
一瞬 進攻を遮られたが、打ち破り、
ワルプルギスの夜に着弾。

決定的なダメージではないが……


ほむら・マミ「巻きつけっ!」

着弾地点からリボンが現れ、ワルプルギスの夜に巻きつき、
縛り上げる。

343: 2013/03/20(水) 20:14:28.94 ID:E9bBZjNvo

マミ「……今一、ダメージがないわね」

ほむら「行動を封じられれば、御の字よ。
     マミ、リボンで奴を抑えてて。私は……」

ほむら「これを使うわ」

マミ「これ……?」


湯水の様にグリーフシードを使って
魔力を回復。

それから、右手に優しい桃色の光を発する弓を召喚する。

それに、ありったけの力を込める。

厚い雲に空は覆われ、
あたりは夜を思わせるほどの暗さ。

その所為で、
力を込めるほど、辺りは優しい光に満ちるのがわかる。


ほむら「まどか! 力を借りるわ!」


344: 2013/03/20(水) 20:15:27.55 ID:E9bBZjNvo

私の構えた弓から、高速で放たれる光の矢。

マミが抑えてくれているお陰で、
その矢は、ワルプルギスの夜の顔を貫き 砕けた。


杏子「や、やった!」

ほむら「倒した……?」

マミ「……」



マミ「ママ、駄目! リボンに抗う力が、全然……弱まってない!」

345: 2013/03/20(水) 20:16:23.07 ID:E9bBZjNvo

ワルプルギスの夜は 砕けた顔を引きつらせ、
口を大きく開く。

何も聞こえないが、絶叫しているのかもしれない。

……それから、全身から暗く光る炎を発し、リボンを燃やし尽くした。


マミ「くっ! なら、もう一発!」

杏子「……私もいくぜ! 特攻しかねぇ!」

ほむら「待ちなさい、マミ、杏子! 伏せて! もしかして、あいつ……」


ほむら「今からが本気よっ!!!」


346: 2013/03/20(水) 20:17:08.25 ID:E9bBZjNvo

ワルプルギスの夜が正位置に。

それは本来の力を発揮する事を意味するらしい。

ワルプルギスの夜は、
自らの体の機械仕掛けの部分を 高速回転させはじめた。

暴風の化身となり、竜巻の様に周囲を吸い寄せ、

ひっくり返し、破壊する。

そして、私達のほうに徐々に近づき始めた。

私達は惨めに地面にへばり付き、
立つ事すら適わない。

一度 吸い寄せられれば、高速回転する彼女に叩きつけられ、
氏は免れなそうだ。



杏子「なんだよ、あれ。……反則だろ」

マミ「ここまでなの……いやだ……」

ほむら「……」

347: 2013/03/20(水) 20:17:59.60 ID:E9bBZjNvo

まどかの力を宿しているにも関わらず、倒しきれなかったのは何故か。

行使する魔法の威力自体は、私の魔力に依存する為か?

因果が私にも絡まりつき、能力は全体的に底上げされているが
それでも 素のまどかには敵わない。

……いや、それとも。

私が力を使いきれていない可能性もある。

後天的に得た能力だ、まだ使い方に慣れていないのだ。

皆の力、全て引き出せたとしたら……

348: 2013/03/20(水) 20:23:38.06 ID:E9bBZjNvo

まどか、さやか、マミ、杏子、仁美……

他にも、私がこの街で関わってきた人は一杯いる。

その人たちの事を想うと……自然と私は
立ち上がる事ができた。

周りの暴風を無視して、平然と出来る。

私のソウルジェムは、今 黒く輝く。

濁った色ではなく、黒曜石のような煌き。

私を想ってくれる皆の力が混ざり合って、
私の中で一つになっているのか。

マミと杏子は立ち上がれない。

だけど、二人の力もまた、私を奮い立たせてくれる。


杏子「……何でお前は平然と立っていられるんだよ」

マミ「マ、ママ……」

349: 2013/03/20(水) 20:24:04.14 ID:E9bBZjNvo

ほむら「貴方達が、私を繋ぎとめてくれているの。

     ワルプルギスの夜に吸い寄せられる弱い心を断ち切り
     私は自由でいられる」

杏子「あいつに吸い寄せられる……?」

ほむら「彼女や色んな魔女を見続けてきて、分かった気がする。
     彼女は、魔女を吸収している。使い魔を見ればわかるわ。

     彼女は人の氏、他人の氏に、触れたいという欲求を持っているよう。
     それが、人の絶望と氏を具現化した存在である魔女を吸収させているのかもね」

ほむら「そして、氏の舞台劇を演じている」

杏子「迷惑な奴だな……」

ほむら「大規模災害として人の目につき、絶望を与える彼女」

ほむら「魔法少女に規格外な力を見せつけ、自らの無力さに絶望させる彼女」

ほむら「絶対的な氏の存在感があれば、それに屈し、
     どこか、楽になりたいと思うもの」

350: 2013/03/20(水) 20:24:32.74 ID:E9bBZjNvo

マミ「……氏か、今はとにかく、氏にたくないけど……」

ほむら「マミには、私や杏子達がいるからよ」

ほむら「私だって、貴方達がいるから」

ほむら「貴方達と共に生きたいと強く思い、力を得た私と、
     氏の象徴の集合体の様な彼女は、合わせ鏡のようなものかもね」

マミ「よく、わからないよ……ママ」

ほむら「分からなくてもいい、私のただの妄想かもしれないしね……」

ほむら「なんにせよ……」

ほむら「ちょっと、いってくるわね」



私に大した跳躍力は無かった。

しかし、今の私は、飛ぼう、それを念じるだけで……

黒い翼が生える。

ワルプルギスの夜を侵食できる、黒い翼だ。

352: 2013/03/20(水) 20:26:12.96 ID:E9bBZjNvo

ほむら「あなたも、私が受け入れてあげるわ。機械仕掛けの魔女さん……」


翼を爆発させるようにはためかせ、

吸い寄せられるのではなく、自らの意思で。

一気にワルプルギスの夜に迫る。



そのまま、私の中に宿った力を解放させた。

353: 2013/03/20(水) 20:26:40.31 ID:E9bBZjNvo

――

杏子「どうなりやがったんだ……?」

マミ「空が、急に晴れたけど……」

杏子「ワルプルギスの夜もいねぇ……、たぶん、ほむらが倒したんだ……な」

マミ「ママ…… ママは、どこ???」



ほむら「ここよ……」



マミと杏子の所に、私は舞い降りた。

マミ「ママ!! すごい、倒しちゃうなんて!」

杏子「へっ、美味しい所全部もっていきやがって……?」


二人の言葉が、途中で止まる。

私の異変に、気がついたらしい。

354: 2013/03/20(水) 20:27:28.85 ID:E9bBZjNvo

ほむら「……ちょっと、力を使いすぎちゃったみたいね。
     加減が分からなかったわ」

ほむら「それに、彼女の呪い、引き受けてしまったみたい」

マミ「……ソウルジェム、さっきとは違って、輝いてない、どす黒く」

杏子「おい、嘘だろ……? そうだ、グリーフシード!」

マミ「大技使ったときに、私は回復に使って……」

杏子「……くそ、アタシもだ」

マミ「そうだ、ワルプルギスの夜のはっ!?」

杏子「あ、そ、そっか! 探すぞ!」

355: 2013/03/20(水) 20:28:36.62 ID:E9bBZjNvo

ほむら「駄目よ、落とさなかったわ」

マミ「……そんな」

杏子「くそっ」

ほむら「魔女の集合体の様な存在だったからかしら。
     あんなに強いくせに、割に合わないわね」

ほむら「……なんにせよ、ここまでの様ね。
     最後に、貴方達の頭、撫でさせてもらえるかしら?」


二人とも、頭を垂れたまま、此方を見ようともしない。

仕方が無いので、勝手に撫で始める。


しばらくして、マミが震える声を絞り出し始めた。

356: 2013/03/20(水) 20:29:21.34 ID:E9bBZjNvo

マミ「……嘘でしょ、ママ、ママ……約束したじゃない……」

ほむら「……ごめんなさい」

マミ「ママが氏ぬなら、私だってっ……!」

ほむら「マミ、酷い事を言うようだけど、私は貴方に生きて欲しい」

ほむら「私は残念ながら間に合わなかったけれど、幸せな日々に手が届くかもしれないじゃない」

ほむら「マミ、貴方が居なくなったら、他に残された人たちが、それから更に遠のく事になるの」

マミ「そんな……関係ないよ。ママいなくなったら……。酷い……酷いよ……」

357: 2013/03/20(水) 20:30:48.72 ID:E9bBZjNvo

ほむら「……杏子、マミを支えて、まどかや、さやかとも仲良く……」

杏子「……ふざけんな!」

杏子「ゆるさねぇぞ、アタシは!
    アンタは、氏んでもアタシを娘にしてみせるっていっただろ!」

杏子「まだアタシはなってないぞ!」

杏子「アタシは絶対にならないからな! アンタの事、ゆるさねぇ」

杏子「まどかやさやかだって、アンタが氏んだら、アンタの事ゆるさねぇぞ!」

杏子「だから、氏ぬんじゃねぇよ……本当に氏んでんじゃねぇよっ!!!」

ほむら「……ごめんね」

358: 2013/03/20(水) 20:31:39.45 ID:E9bBZjNvo

ほむら「ソウルジェムの濁り、かなり進んだわ」

マミ「……」

杏子「ちっ……」

ほむら「マミ、杏子。

     私がこれからやるつもりだったこと、
     私の部屋のパソコンの中に、ToDoリストにして纏めてある。

     参考にして頂戴」

ほむら「……無理に縛られる事はないけど、貴方達が幸せになれるよう、祈ってるわ。
     さようなら」

ほむら(まどか……ごめんなさい……)

盾の中の銃を取り出し、
ソウルジェムに銃口を当てる。

そして、引き金を……

359: 2013/03/20(水) 20:32:29.97 ID:E9bBZjNvo

杏子は銃を持つ私の手を蹴り飛ばし、
マミは私のソウルジェムのある左手に抱きついて離そうとしない。

駄目だ、この子達に 魔女となった自分は無慈悲な攻撃を加えるだろう。

この子達は逆に、戦えない。

まして、最悪な事に まどかの力や 皆の力が私に宿っている。

ワルプルギスの夜から開放された呪いも 私に纏わりつく所為で……

もしかすると、地球規模……いや、宇宙規模に災厄を与える魔女に
私がなってしまう危険性がある。

まずい、このままでは。どうすれば……



360: 2013/03/20(水) 20:33:15.10 ID:E9bBZjNvo





QB「……お困りのようだね、暁美ほむら」

ほむら「きゅうべぇ?」

マミ「貴方っ!」

杏子「今更、何しにきやがった!」

QB「あのワルプルギスの夜を……、しかも観客が居なくて不機嫌な彼女を、
   最初は僅かな素質しかなかった魔法少女が倒したんだ。

   その最後くらい、見ておかなければね」

ほむら「……どう? 人間の力はすごかったでしょう?
     私達は、もう少しで幸せな未来を掴める所よ」

361: 2013/03/20(水) 20:34:18.59 ID:E9bBZjNvo

QB「幸せな未来ねぇ、そこの2人が掴めるとでも思っているのかい?」

ほむら「勿論よ。この子達を私は信じてる。まどかや さやかだってね。
     私が氏んでも、必ず立ち上がって歩き出せるわ」

QB「僕にはそうは思えないけどね」

マミ「……」

杏子「……」

ほむら「人間の可能性を舐めないで欲しいわね」

QB「……」


362: 2013/03/20(水) 20:35:13.13 ID:E9bBZjNvo

QB「本当に君は魔女化に直面しているのかい?
   とてもそうは見えないが……」

ほむら「私は絶望しているわけじゃないから。
     魔力の枯渇と、ワルプルギスが最後に放った呪いが原因。そうでしょ?」

QB「そうだね」

ほむら「私は希望に溢れているわ。なぜなら、娘2人に、大事な友達2人。
     4人に明日を残せたのだから」

QB「なるほど。希望……か。ソウルジェムを見る限り、嘘ではなさそうだ」

QB「確かに、素晴らしいエネルギーのようだね。暁美ほむら」

QB「それだけの呪いを纏っても、自らの意思で屈さないとは」

ほむら「そう。感情が無い貴方にそう思わせることが出来るとはね。
     でも、もう本当に時間が無い。
     この子達を説得しなきゃいけない。
     話しかけないで頂戴」

363: 2013/03/20(水) 20:36:02.39 ID:E9bBZjNvo

QB「残念ながら、そうはいかない。君は貴重な存在だ。
   氏ぬまでデータを取らせて貰うよ」

杏子「おい……そろそろ……」

マミ「頃すわよ……貴方」

QB「……やれやれ」

QB「ほむら、君が僕に交わした約束、覚えているかい?」

マミ・杏子「いい加減にっ……

ほむら「まちなさい、2人とも」

ほむら「……私は約束は忘れないわ。ただ、間に合わなかった。残念ね……」

QB「いいや、暁美ほむら。流石だね」

ほむら「……?」

364: 2013/03/20(水) 20:36:50.19 ID:E9bBZjNvo

QB「君は約束を違えていない。
   膨大な因果を纏う君は、高次の精神世界の存在である魔女を……
   それも、超弩級の魔女を取り込み、
   まさに次のステージに進もうとしている」

ほむら「次のステージ?」

QB「魔法少女として氏んで……魔女となっても、
   君は消えない希望を抱えたまま、その意思を貫くだろう」

QB「魔女となっても、他者との約束を違えない存在は過去にも確認されている。
   君なら容易いはずだ」

QB「そして、高次の精神世界の住人として魔女を超越し、
   魔法少女を守ろうとする概念……
   君が言う、神になるのではないかな」

ほむら「……そう。それなら、マミも杏子も、まどかも さやかも 私は守る事が出来るのね」

マミ「……ママ? ……どういうこと?」

杏子「どういうことだ……おい。概念とか、神とか……」

ほむら「わからなくてもいいわ。ただ、これだけは覚えておいて」

ほむら「……私が私でなくなっても、見えなくても。
     貴方達とずっと一緒にいるから」

365: 2013/03/20(水) 20:37:44.42 ID:E9bBZjNvo

マミ「見えなくなるなんて、やだ!」

ほむら「……マミ」

杏子「わ、私だって、嫌だからな!」

ほむら「……杏子」

ほむら「ごめんなさい……私は……貴女達のためにも……」



QB「やめておくれよ、勿体無いじゃないか」



366: 2013/03/20(水) 20:39:03.19 ID:E9bBZjNvo

ほむら「……? どういう事かしら?」

QB「君が纏う因果は既に膨大な量だ。
   神になるだけの力は既にあるだろう。

   だが、宇宙の維持にはまだまだ足りないんだ」

ほむら「……」

QB「暁美ほむら、もっと長い時間を魔法少女として生き、
   更に因果の量を増やすんだ」

QB「そうすれば、いつの日かインキュベーターの神にもなれる。
   宇宙を維持できる、強大な神に」

QB「さあ、契約だ。
   僕の持つグリーフシードを対価として受け取れ、暁美ほむら。
   そして、それが新たな契約のはじまりだ」


367: 2013/03/20(水) 20:39:52.38 ID:E9bBZjNvo




――――ワルプルギスの夜を乗り越え、幾らか月日が経った頃。

私は東京に向う為に、駅に向っていた。

そろそろ、発車の時間……ね。

見滝原を離れるとなると、少し寂しい気がしてしまう自分がいる。

この地を去ることになる私に、
私の大切な人たちはわざわざ集まって、
小さなパーティーの様な物を開いてくれた。

もう、力は貰った。
東京にいかなければ……。


368: 2013/03/20(水) 20:40:28.30 ID:E9bBZjNvo

駅の前に到着。

そこには、まどか、さやか、マミ、杏子。
いつもの4人がいた。

軽く挨拶し、改札を越え、駅のホームで電車を待ちながら
4人と話し始める。


ほむら「……わざわざ来てくれたの、悪いわね」

まどか「だって、ほむらちゃんと会えなくなるの、寂しいし……」

マミ「……ま……ほむらさん……」

杏子「……はやく、また戻ってきてくれよな」

ほむら「……ええ、わかってるわ」



さやか「ねぇ、2、3日、東京に行って魔法少女のセミナーを開くだけなのに
     なんで こんなお通夜モードになってるの……???」


369: 2013/03/20(水) 20:42:16.78 ID:E9bBZjNvo


マミ「だって、東京って遠いし、何が起きるか……」

杏子「初めて会う魔法少女だっているから、何してきやがるかわかんねーし……」

まどか「やっぱり、私もいくよ! ほむらちゃん!」

杏子「……としたら、ほむらがセミナー中、まどか一人ぼっちになるよな。
    一人ぼっちは寂しいもんな、私も行くよ」

マミ「私も行くわ!」

さやか「あの、あたしが一人ぼっちになるんだけど」

杏子「お前には上条のおぼっちゃんがいるだろ」

370: 2013/03/20(水) 20:42:58.52 ID:E9bBZjNvo

ほむら「……皆、気持ちはありがたいんだけど……」

ほむら「皆が私に力を与えてくれてるから、よっぽどの事がない限り、私は大丈夫よ」

ほむら「それに、マミ、杏子は新人研修に来た子達の面倒を見なきゃいけないでしょ?」

ほむら「まどかと、さやかは出来れば サポートしてあげて欲しい……」

杏子「でも、なんであのワカメだけついていくんだよ!」

さやか「杏子。仁美の事、ワカメは酷いよ……」

ほむら「仁美は、金銭面と多彩な人脈で 私達に 色々協力してくれているわ。
     東京でセミナーを開けるのも、彼女や彼女のお父様のお陰よ」

ほむら「しかも、仁美は既に先に行って 恙無くセミナーが開けるよう準備をしてくれてる」

ほむら「何より、あの子。私が止めても無駄だし……」

371: 2013/03/20(水) 20:43:47.83 ID:E9bBZjNvo

マミ「きゅうべぇも行くのよね……」

ほむら「魔女や魔獣の事を説明するのに、きゅうべぇは便利なのよ。
     それに、感情の研究があるから、私の周りからあまり離れられないし」

さやか「あたし、未だに分かってないよ。魔獣って何なの? 魔女と違うの?」

杏子「さやかは実に馬鹿だなぁ。
    ほむらがセミナーを開いて、魔法少女の効率的な生き方を知ってるやつが増えてるだろ?」

さやか「……うん」

マミ「それで、魔女化する魔法少女が減ってきてるの。魔女も激減よ」

マミ「魔女は、生きてる人間を喰って、負の感情を溜め込んでいたの」

杏子「だから、負の感情の核となる物が無くて、それのみが濃くなった場所で、
    中途半端な魔獣共が生まれ始めたって訳らしい」

さやか「……そうなんだ。そうなの? きゅうべぇ」

372: 2013/03/20(水) 20:44:44.82 ID:E9bBZjNvo

QB「否定するほど間違ってはいないと思う。魔獣が何なのかは僕にも分からないけどね」

さやか(やっぱ いたのね)

QB「だから、魔獣は魔女と比べれば 大した敵じゃない。
   その代わり、数は多い。

   それから、落ちるグリーフシードも、魔女のものと比べれば質がかなり落ちてしまうね」

まどか「……でも、同じ魔法少女だった魔女を狩らなくていいのは、
     いい事なんだよ……ね」

杏子「そうさ。魔獣は沢山わきやがるから、取り合いもしなくてすむしな」

マミ「ソウルジェムの穢れさえ、気をつけていればね」

さやか「魔力の使い方の問題か……」

373: 2013/03/20(水) 20:45:38.91 ID:E9bBZjNvo

QB「その辺、ほむらはかなり研究してるよね」

ほむら「ええ、通常の兵器が使えるのであれば、
     魔力を消費して武器を召喚するより、楽に戦えるからね」

ほむら「通常の兵器が通じにくい敵でも、魔力を通せば、
     効きはかなり変わってくる」

ほむら「素質があまりない子でも、訓練すればかなり戦えるようになるわ」

まどか「どんどん、今までとは変わっているんだね」

ほむら「そうよ。最終的には、私達のあり方自体を変えていくわ」

ほむら「皆で、きゅうべぇ達とも協力してね」

ほむら「まだまだ、問題は山積みだけど、人生は問題解決の連続よ」

ほむら「ちょっとばかり絶望しても、諦めずにまた歩き出せれば、
     未来に繋げる事は出来る」

ほむら「そして、皆が幸せな世界をつかむのよ」

まどか「……そうだね!」

374: 2013/03/20(水) 20:46:29.38 ID:E9bBZjNvo

ほむら「あ、さやか。セミナーが終わった後、
     ついでに、日本医師会のお偉いさんの一人とあってくるから」

さやか「ほえっ!?」

ほむら「扱いづらそうな連中だけど、なんとか神経再生のスペシャリストを
     紹介してもらえる事になったわ」

ほむら「期待して待ってなさい」

さやか「ほむほむーーーっ!!!」

ほむら「ふふっ……」

まどか「よかったね、さやかちゃん……」

375: 2013/03/20(水) 20:47:12.91 ID:E9bBZjNvo

喜ぶさやかを眺めていると、
QBがテレパシーを飛ばしてきた。

QB(ほむら、東京にいくついでに、あって欲しい人がいるんだけど))

ほむら((誰よ、会って欲しい人って))

QB((永田町っていうサル山のボスさ))

ほむら((……あなた、そんなコネクションまであるの?))

QB((僕は人類に文明を与え、発展させてきた存在だよ?))

QB((日本の中枢に食い込んでいて当然さ))

QB((君にはより多くの因果の終着点になってもらわなきゃならない))

QB((そのためなら 僕はなんだってやるよ))


376: 2013/03/20(水) 20:47:48.28 ID:E9bBZjNvo

ほむら((頼もしいわね……))

ほむら((急かす気持ちは分からなくもないけど、
      神となるのが概念化必須だとしたら、
      この子達が私が必要なくなるまで、私はならないわよ?))

ほむら((あの後、この子達に問い詰められて怒られたんだから……))

QB((OK.まどかやマミ達が氏ぬまでか。寿命まで待ったとしても大した時間じゃない。
   その間も、君なら因果を増やせるだろう?))

ほむら((……あっそう。そうね))

377: 2013/03/20(水) 20:48:41.64 ID:E9bBZjNvo

杏子「……あ、電車が来た」

マミ「いよいよ、ね」


ホームに放送が入る。

皆、静かになった。
少し待って、電車がホームに到着する。


マミ「ほむらさん、頑張ってきてね」

まどか「ファイトだよ、ほむらちゃん!」

杏子「ほむらなら大丈夫だと思うけどな、ヘマするなよ」

さやか「帰ってきたらまた騒いで遊ぼうね!」

378: 2013/03/20(水) 20:49:20.25 ID:E9bBZjNvo

私は力強く頷き、電車の中に入り 席に着く。

四人は車窓のすぐ外側に待機。

電車が動き出す。私は四人に手を振った。

四人は電車が発車するのと同時にと一緒に歩きだし、
ホームの端に来る頃には走ってついて来ていた。

ちょっと離れるだけなのにな、と微笑ましく思いながら、
点くらいの大きさになりつつあるのに、手を振り続ける四人を見つめる。

私も完全に見えなくなるまで、あの子達を見続け……
それから、前に向き直った。

ループを抜け出しても、
私の道は未だ半ば。

これからも勝ち取り続けなければならない あの子達との未来の為、
私は戦い続ける……。


終わり

379: 2013/03/20(水) 20:50:26.77 ID:E9bBZjNvo

長文に耐え、付き合ってくださってありがとうございました。

【まどマギ】都会から来た転校生・暁美ほむら【後編】

389: 2013/03/21(木) 01:43:29.35 ID:92zgcyVDO
おつ

引用: 都会から来た転校生・暁美ほむら