1: 2011/09/11(日) 11:57:13.23 ID:cbO5RGpj0
結衣「そういえばもうすぐ文化祭だね」

京子「我が娯楽部も今回は出し物をしたいと思います!」

結衣「本気か!?」

京子「モチロンだよ結衣君!」

結衣「どんなことする予定なの?」

京子「歌劇を見せるのはどうかな!」

結衣「歌劇?シナリオとかは決まってるの?」

京子「オペラ座の怪人!どうかな?」

結衣「オペラ座の怪人?」

京子「そう!」

結衣「名前は知ってるけど…どんな話なのか、劇も見たこと無いし、小説も読んだこと無いな」

京子「じゃあ、オペラ座の怪人のあらすじを教えてあげよう!」
ゆるゆり: 23【イラスト特典付】 (百合姫コミックス)
2: 2011/09/11(日) 12:03:54.13 ID:cbO5RGpj0
京子「ジャンルとしては恋愛モノになるかな。二人の男が一人の女の子を取り合うの」

結衣「れ、恋愛…なんか恥ずかしいかな、演じるの…」

京子「もしかして結衣、照れてる?」

結衣「べ、別に!」

京子「舞台は十九世紀のパリのオペラ座歌劇場!当時のオペラ座に”オペラ座の怪人”の噂が広がり始めたの」

京子「劇場で仕事をしてる人が急に氏んだり、劇場のシャンデリアが落ちたり、不振な人物が目撃されたり」

結衣「恋愛モノの割りに物騒だな」

京子「まーね。で、その色々な事件は全部オペラ座の怪人の仕業だって劇場の人たちが騒ぎ出したんだ」

結衣「結局のところ、オペラ座の怪人は本当にいるの?」

京子「いるよ。でも本人は人に見つからないように生活してたんだ。ねえ、怪人はどこに住んでたんだと思う?」

結衣「うーん……わからないな」

京子「オペラ座の地下に住んでたんだよ!」

4: 2011/09/11(日) 12:10:05.35 ID:cbO5RGpj0
結衣「地下!?」

京子「そう。しかも湖付きの豪華な家!羨ましいよね~」

結衣「湖の湖畔の家かあ…なんかロマンチックだな」

京子「で、怪人はある日、偶然オペラ座の新人歌手の女の子を見かけるの」

京子「彼女は歌いながら歩いてたみたいで、怪人はその子の声と姿の美しさに一目惚れ!いや、一聞き惚れかな?」

京子「でも、その新人歌手の子のことが好きな人がもう一人いたんだ。しかもその歌手の幼馴染!」

結衣「で、その歌手の女の子の取り合いが起こるわけか」

京子「そんなカンジかな」


結衣「登場人物結構多そうだけど、娯楽部だけで足りる?」

京子「断言しましょう、足りない!」

結衣「どうすんの?」

京子「大丈夫、私にアテがあるから!」

5: 2011/09/11(日) 12:17:48.61 ID:cbO5RGpj0
京子「――というワケなんだけど、手伝ってくれないかな?」

綾乃「嫌よ!歳納京子と一緒に劇なんて…そんな…!」///

千歳「綾乃ちゃんも素直やあらへんなーホントは歳納さんと一緒に劇、やりたいんやろ?」

綾乃「ち、千歳!!」

千歳「もう、綾乃ちゃんはホンマに照れやさんなんやから」

綾乃「茶化さないでよ!」

京子「綾乃顔真っ赤ー!」

綾乃「やるわよ!やってやればいいんでしょ!」

京子「やったー!」


綾乃「もう…」

7: 2011/09/11(日) 12:24:05.25 ID:cbO5RGpj0
京子「あと、生徒会の一年生の子も借りたいんだけどいいかな?」

千歳「あとでウチらから頼んでおくわあ。な、綾乃ちゃん」

綾乃「しょうがないから頼んであげる!けど、劇、ちゃんと成功させないと罰金バッキンガムなんだから!」

京子「勿論!一緒に頑張ろう!」

・・・・・

あかり「わあ!楽しそう!」

ちなつ「私がオペラ座の新人歌手…そして結衣先輩が怪人で…キャー!」

結衣「ち、ちなつちゃん…?」

9: 2011/09/11(日) 12:33:53.95 ID:cbO5RGpj0
登場人物

オペラ座の新人歌手(クリスティーヌ)  京子

 新人歌手の幼馴染(ラウル)     結衣
 
 旧オペラ座支配人  あかり

 新オペラ座支配人  櫻子

 新オペラ座支配人  向日葵

 スター歌手(カルロッタ) ちなつ

 鳥打帽の女     千歳

 オペラ座の怪人   綾乃



 ナレーション    西垣先生 

 音響照明      生徒会長(りせ)・西垣先生

10: 2011/09/11(日) 12:39:02.95 ID:cbO5RGpj0
結衣「オルゴール…懐かしいな……」(幼馴染)

結衣「このオペラ座では、随分色々な事があったけど…」

結衣「忘れはしない。京子がここで歌った日々の事も…オペラ座の怪人の事も…」

西垣「生徒諸君、保護者の方々、ご来場ありがとうございます」

西垣「さて…心の準備はよろしいですか?」

西垣「この舞台が……1980年代のパリへと、繋がっていきます」

11: 2011/09/11(日) 12:43:47.75 ID:cbO5RGpj0
あかり「じゃあ京子ちゃん、今日からよろしくね!」(旧劇場支配人)

京子「はい!」(新人歌手)

あかり「そういえば京子ちゃん、オペラ座の地下の話は知ってたっけ?」

京子「オペラ座の地下?」

あかり「その様子だと知らないみたいだね。じゃあ、今教えておこう」

あかり「オペラ座の地下へ通じる道や、階段、切り穴の噂が沢山あるけど、それっぽいのを見かけても地下へ降りちゃダメだよ」

京子「どうして?」

あかり「地下には、恐ろしいオペラ座の怪人がいるから!」

京子「オペラ座の、怪人…?」

12: 2011/09/11(日) 12:48:23.91 ID:cbO5RGpj0
あかり「うん。近頃、オペラ座じゃその話題で持ちきりだよ」

京子「そうだったんですか…」

あかり「最近物騒なことが多くてね。何かあるたび怪人の仕業だ!って皆言ってるよ」

京子「私も気をつけます」

あかり「うん、それに越したことは無いよ。単なる噂だけどね」

あかり「もうすぐオペラ座の支配人も代わっちゃうし…心配だなあ」

京子「えええええ!支配人さん、代わっちゃうんですか!?」

あかり「うん。櫻子ちゃんと向日葵ちゃんって人が、次の支配人になるんだけど」

あかり「二人ともいい子だから、心配は要らないかなあ…」

京子「それじゃ私、この劇場で独りぼっちになっちゃうんですね…」

あかり「心配しないで。京子ちゃんならきっとすぐに馴染めるよ!」

13: 2011/09/11(日) 12:54:26.81 ID:cbO5RGpj0
その夜……オペラ座では新劇場支配人との顔合わせ会が行われた。

櫻子「私がこのオペラ座の新しい支配人、大室櫻子でーす!」(新支配人)

向日葵「同じく、古谷向日葵です」(新支配人)

櫻子「わー!おいしそうな料理!いただきま――」

向日葵「ちょっと櫻子、行儀が悪いですわよ!」

櫻子「いいじゃん!私たちの歓迎パーティーなんだしー!」

あかり「もう一人、新しくオペラ座で歌手をすることになった人を紹介しておきたいと思います。京子ちゃーん!」

京子「と、歳納京子です!まだ右も左もわかりませんが…これから、よろしくお願いします!」

 ? 「あら、あなたが新しい歌手の方?」

15: 2011/09/11(日) 13:02:44.56 ID:cbO5RGpj0
あかり「ちなつちゃん!」

ちなつ「私、ここのスター歌手の吉川ちなつっていうの。これから仲良くしましょ」(スター歌手 カルロッタ)

京子「よろしくお願いします!」

ちなつ「この劇場で頑張りたいなら、私の下に着いて損は無いと思うんだけど、どう?」

京子「えっ?」

ちなつ「私の下に着いて雑用を手伝わないかって言ってるの!もう…」

京子「ご、ごめんなさい…」

ちなつ「まあ、せいぜい頑張ることね。…わたしに代わって主役を取れるぐらいにね。勿論、そんなことは無理だと思うけど…」

京子「ありがとうございます!頑張ります!」

あかり「じゃあ私、他にも挨拶しに行かなきゃ行けないから、京子ちゃんはここでご飯を食べたり、他の話を聞いたりしてみてね。あ、それとみんなと仲良くね!」

京子「はーい!」

17: 2011/09/11(日) 13:09:46.25 ID:cbO5RGpj0
オペラ座の地下

あかり「怪人さーん!いますかー!」


綾乃「…何か用事かしら?赤座支配人さん」(オペラ座の怪人)

あかり「挨拶をしに来たんです!」

綾乃「挨拶?」

あかり「私は今日限りで、このオペラ座の支配人を辞めるんです」

綾乃「なんですって!?そんな…どうしてもっと早く教えてくれなかったのよ!」

あかり「ごめんなさい…」

綾乃「支配人が代わってしまったら…私はこの劇場で一人ぼっちじゃない…」

あかり「本当にごめんなさい。でも、私もたまにここに来ますから」

19: 2011/09/11(日) 13:17:29.81 ID:cbO5RGpj0
綾乃「今まで、あなたは私の為に劇場の五番席を空けておいてくれたけど…」

綾乃「新しい支配人も同じように、私の為に席を確保してくれるとは限らない…」

綾乃「気味悪がって、私のことを劇場から、このオペラ座から追い出すかも知れない!」

あかり「私からも、新しい支配人さんにあなたのことを伝えておきます」

あかり「後のことは、新支配人さんが”怪人”の存在を信じてくれるかどうか…」

綾乃「……ありがとう」

21: 2011/09/11(日) 13:24:21.74 ID:cbO5RGpj0
あかり「そういえば、新人の歌手も入ったんですよ」

綾乃「彼女に、私のことは何か言った?」

あかり「オペラ座の怪人の噂があるから、気をつけるようにって話だけ…」

綾乃「そう」

あかり「あなたも、あまり他人に騒がれたくは無いでしょうし、その姿も見られたくないでしょうから…」

綾乃「ええ、その通りだわ」

あかり「それでは、私は劇場へ戻ります。お元気で」

綾乃「お元気で」

22: 2011/09/11(日) 13:27:34.78 ID:cbO5RGpj0
西垣「顔合わせ会は歌えよ踊れよ、ドンチャン騒ぎ。怪人もまた明日より、支配人が代わることによる孤独を案じて…」

西垣「各人の夜は更けてゆくのでした…」


翌日

あかり「みなさん、今まで本当にありがとうございました!」

あかり「そして、新支配人の櫻子ちゃん、向日葵ちゃん、これからオペラ座をよろしくね」

櫻子「任せておいてよ!」

向日葵「がんばりますわ!」

ちなつ「いままでありがとう、支配人さん」

あかり「ちなつちゃん、これからも頑張ってね」

ちなつ「言われなくても」

あかり「京子ちゃん、頑張ってスター、エトワールになってね!」

京子「はい!」

あかり「それと、新支配人の二人は、あとで話があるので…」

櫻子「話?」

向日葵「なんでしょうか?」

24: 2011/09/11(日) 13:35:52.89 ID:cbO5RGpj0
・・・・・・・・
あかり「実は、この劇場の地下には”オペラ座の怪人”が住んでいるんです」

櫻子「オペラ座の怪人?」

向日葵「なんですの、それ?」

あかり「人です。彼女もれっきとした人間で、彼女にはいつも劇場の五番の席を用意しているんです」

向日葵「用意している、と言うと?」

あかり「座席ごとにチケットを売っていますが、五番の席は彼女が座る為に、いつも売り出していないんです」

櫻子「えー!そんなのもったいないよ!五番の席も売れば利益が入るのに!」

あかり「彼女は、不思議な人なんです。おかしな、まるで魔法のような力を使います」

あかり「彼女の言うことを聞かなければ、一般のお客様に彼女は危害を加えるかもしれません」

あかり「だからどうか、五番の席のチケットは売り出さないで欲しいんです」

向日葵「話と言うのはこれだけですの?」

あかり「はい。これで話はおしまいです」

あかり「それでは、私はこれで。オペラ座の後を頼みます」

25: 2011/09/11(日) 13:43:24.39 ID:cbO5RGpj0
櫻子「支配人さんってさ、すごくユーモアのある人なんだね」

向日葵「はぁ?」

櫻子「だって…ププッ…オペラ座の怪人がいるなんて…真剣な顔で…プッ……あーっはっはっはっは!」

向日葵「ちょっと櫻子、笑い過ぎですわよ!」

櫻子「だって…あっはっはっは!向日葵は信じられる?」

向日葵「たしかに…にわかには信じられませんけれど…」

櫻子「でしょー?」

向日葵「だからって笑うのは、支配人さんに失礼でしょう!」

26: 2011/09/11(日) 13:49:45.58 ID:cbO5RGpj0
結衣「ここがオペラ座か……」

結衣「私の古い友人…幼馴染がここで歌手をしているというらしい」

結衣「京子…もう何年も会っていない」

結衣「また君の、美しい歌声が聞けたならば…」

ちなつ「キャーー!結衣子爵じゃない!金持ち一家の玉の輿がどうしてオペラ座に!?」

結衣「あ!ちょっと君、いいかな」

ちなつ「はっ、はい!なんでしょうか!?」

結衣「ここがオペラ座かな?」

ちなつ「そうですが…チケットをお求めなら劇場の窓口へ…」

結衣「いや、違うんだ。ここで私の幼馴染が、歌手をやっていると聞いて」

ちなつ「歌手ですか…歌手をやってる娘は沢山いますから、誰が結衣子爵の幼馴染の方なのか…」

結衣「ごめんね、ありがとう」

ちなつ「あっ、待ってください結衣子爵!」

28: 2011/09/11(日) 13:54:59.98 ID:cbO5RGpj0
ちなつ「行っちゃった…でも素敵な人だった…」

ちなつ「カッコ良くて玉の輿、最高じゃない」

ちなつ「きっとまた、あの人は幼馴染を探しにこのオペラ座に来るはず」

ちなつ「運がよければ、私の歌を聞いてもらえるかも!」

ちなつ「えへへ…」

京子「あの、ちなつさん」

ちなつ「あら、京子じゃない。どうかしたの?」

京子「私、今日ちなつさんのバックコーラスをするはずなんですが…」

京子「まだちなつさんと合わせて練習して無いので、練習していただけ無いかと…」

ちなつ「練習はいいわ。私は練習なんてしなくても歌が巧いんだもの。あなたが頑張ってくれればそれで問題ないのよ」

京子「わ、わかりました。ごめんなさい…」

30: 2011/09/11(日) 13:59:08.97 ID:cbO5RGpj0

京子「入って早速、ちなつさんのバックコーラスをできることになったのはいいけれど…」

京子「ちなつさん、昨日も練習してくれなかったし…大丈夫かな」

京子「心配しても仕方が無いよね、うん!」

京子「そういえば、今日は私が衣装倉庫の掃除番だったけ」

京子「今のうちにやっておこーっと!」

31: 2011/09/11(日) 14:03:14.57 ID:cbO5RGpj0
衣装倉庫

京子「あんまり広くなさそうだからそんなに大変じゃないかな」

京子「あ…でも、ここオペラ座の怪人を見かけたって噂がある部屋だ…」

京子「怖いから、歌でも歌いながら掃除しよう」


 きれいな おーとだ なんだーろう これはー

 ラララ ララ ラーラララ ラ ラララ

 たーえて きーいた こと もない
 
 ラララ ララ ラーラララ ラ ラララ


綾乃「誰かしら…この歌声は…」

34: 2011/09/11(日) 14:11:31.60 ID:cbO5RGpj0
京子「ふー!掃除は終り!最初に見たときよりずっと綺麗になってる」

京子「歌いながら掃除をするのも楽しいなあ」




綾乃「こんな美しい歌声は聴いたことが無いわ…」

綾乃「勇気を出して、彼女に話しかけてみようかしら…」

  「京子ー、もうすぐ衣装合わせの時間だから、部屋空けておいてねー」

京子「はーい!…初めての公演の前に、劇場を見に行っておこうかな…」


綾乃「あっ、行っちゃう…!」

35: 2011/09/11(日) 14:18:40.34 ID:cbO5RGpj0
バタンッ

綾乃「行っちゃった…」

綾乃「いつか必ず、近いうちに声をかけてみよう」

綾乃「彼女のように素質を持った人なら…私がすこし声楽を教えればたちまち能力も上がるはず」

綾乃「彼女には、この劇場で頑張ってもらいたい…」

綾乃「そういえば、五番席は空いているかしら?」

綾乃「座席表を確認しに行きましょう…」

・・・・・・・・・・・・・・

綾乃「既に…五番席が買われているなんて…!!」

綾乃「旧支配人さんはこの席だけはチケットを売り出さなかったのに…」

綾乃「新支配人さんには、五番席についての用件を伝えておかなければいけないわね」

37: 2011/09/11(日) 14:28:32.73 ID:cbO5RGpj0
西垣「京子の初公演、と言っても出演は声だけのバックコーラスだけでしたが…この公演は、大成功に終わりました」

西垣「だれもが、新しい歌姫の声を聞きに劇場へ来たのです」

西垣「しかし、これからは自身の声の美しさや、芸術性でしか観客を呼び込むことはできません」

西垣「もっとも、京子はとても美しい声の持ち主でしたから、苦労さえすれば必ずスターへと上り詰めることができるでしょう…」


京子「おつかれ様でした!」

ちなつ「お疲れ様。とっても良かったわよ、京子。これからも、私のバックコーラスをお願いね」

京子「はい!ありがとうございます!」

ちなつ「そういえば、早速貴方にファンレターが着てたみたいよ」

京子「ファンレター!本当ですか!?」

ちなつ「ええ、私に比べたら随分少ない…というか一通だけだけれど。はい、これ」

京子「やったあー!」

39: 2011/09/11(日) 14:35:16.26 ID:cbO5RGpj0
劇場の新しい歌姫へ

オペラ座への入団おめでとう。

あたらしくこの劇団の一員としての義務を果たすこと、あなたもも毎日大変だと思います。

私はあなたの歌声を聞いて、すこし思うところがある。

よろしければ、今夜私とお話しませんか?

あなたのために劇場の地下へ繋がるきり穴をご用意します。

今夜八時に馬の蹄鉄のある楽屋の玄関口へ来てください。

そこに、地下へ通じるきり穴が用意されているはずです。


  オペラ座のFより

41: 2011/09/11(日) 14:46:38.05 ID:cbO5RGpj0

京子「オペラ座のFって誰だろう?」

京子「でも、嬉しいな…」

京子「今夜、楽屋の玄関に行ってみようかな」

京子「そういえば、あの馬の蹄鉄って、オペラ座の怪人除けに先輩バレリーナの人たちが置いた物なんだっけ」

京子「怖いな…オペラ座の怪人」

京子「もし、劇を公演しているときに怪人が劇場に恐ろしい魔法をかけてしまったらどうしよう…」


その日の夜八時

京子「すごい…本当に切り穴がある…」

京子「しかも、すごく丁寧にはしごがかけてあるし…」

京子「これを降りていけば地下にいけるのかな?」

京子「とりあえず降りてみよう…」

44: 2011/09/11(日) 14:53:39.18 ID:cbO5RGpj0
オペラ座の地下

京子「すごい…!オペラ座の地下にこんな場所があったなんて!!」

京子「向こう岸がかすんで見えるほどの大きな湖に…」

京子「不思議な形の館…」

京子「この館に、オペラ座のFは住んでるのかな…?」


綾乃「来てくれたのね」

京子「っ!」ビクッ

京子「あなた…もしかして、貴方がオペラ座のFなの?」

綾乃「そうよ。私がオペラ座のF。あなたは、新しく入った新人さんでしょ?」

京子「はい。わたしが、新しく入った団員です」

綾乃「旧支配人からお話しは聞いていたの。けれど、こんなに素晴らしい声を持った子だとは思わなかったわ」

47: 2011/09/11(日) 15:00:24.51 ID:cbO5RGpj0
京子「ありがとうございます!素晴らしい声だなんて…そんな事を言ってもらったのは初めてです…」

綾乃「こんなに素晴らしい声なのに、素晴らしい声だといってもらったことが無いなんて…」

綾乃「あなたは素晴らしい才能と声を持っているわ!よかったら、私のレッスンを受けてみない?」

京子「レッスン?」

綾乃「私は、声楽と建築・彫刻美術に関してはそれなりに精通しているつもりよ」

綾乃「私のレッスンを受ければ、主役の座だって射止められるわ!」

京子「む、無理です!私に主役だなんて…それに、主役ならエトワールのちなつさんが…」

綾乃「ちなつ!?あなたは、あんな練習もしない、声も大して美しくない娘に劣りはしないわ!」

綾乃「どうやら…あなたは自分自信にもっと自信を持った方がいいみたいね」

49: 2011/09/11(日) 15:05:08.39 ID:cbO5RGpj0

京子「はい…!頑張ってみます。ぜひ、レッスンを受けさせてください!」

京子「でも…私、お金が無くて…」

綾乃「お金なんて必要ないわ。あなたがスターに、エトワールになってくれれば私はそれで嬉しいもの」

京子「ありがとうございます!私、がんばります!ところで…」

京子「えっと、オペラ座のFさん…」

綾乃「私の名前は綾乃でいいわ。もっとも、この名前は私が勝手に名乗っているだけだけれど…」

京子「あやのさん、一つ聞いていいですか?」

綾乃「なんでも聞いてかまわないわよ」

京子「どうして、仮面をつけているんですか…?」

51: 2011/09/11(日) 15:12:14.46 ID:cbO5RGpj0
綾乃「この仮面は…そう、今は貴方の為に着けているのよ」

京子「今は私のため…?」

綾乃「この仮面については、いつか話す日が来るから…」

綾乃「質問への答えは、その日まで待っていて。ごめんなさい、なんでも聞いてかまわないって言ったのに」

京子「いえ、こちらこそ…答えづらい質問をしてしまってごめんなさい」

綾乃「そんな、謝らないで。じゃあ、レッスンの日は貴方の夢の中に出て、時間と来て欲しい場所を指定するわ」

京子「私の夢の中で?そんなこと、できるんですか…?」

綾乃「心配する必要は無いわ。さ、今日はここで眠って行きなさい」

京子「はい、じゃあベットをお借りします…」

53: 2011/09/11(日) 15:18:48.02 ID:cbO5RGpj0
翌朝

京子「あれ…ここは…」

京子「私の部屋だ…。昨日はオペラ座の地下でベッドを借りて眠ったはずだったのに…」

京子「夢、だったのかな?」

コンコン

京子「あれ、誰だろう?」

ガチャ

向日葵「京子さん、あなたにお客様がいらっしゃってますわよ」

京子「お客様?だれだろう…?」

京子「着替えたらすぐに行きます」

向日葵「お客様は劇場の入り口でお待ちです。それでは」

56: 2011/09/11(日) 15:31:19.36 ID:cbO5RGpj0
結衣「京子、いるかな…」

結衣「友人の話だと、確かにバックコーラスに京子の声が混じってたって話だけど…」

向日葵「今、京子さんをお呼びしましたわ。着替えてから来ると思いますので、ここに来るには少々お時間がかかると思いますが」

結衣「ありがとう、劇場支配人さん」

向日葵「いえいえ。では、私はこれで」

・・・
・・

京子「お待たせしました…って結衣!」

結衣「京子!久しぶりだな!」

結衣「用事がなければ、今から食事に行かないか?」

京子「行く!今日の午前中は練習が無いんだ!」

結衣「それは丁度良かった!」

58: 2011/09/11(日) 15:38:29.55 ID:cbO5RGpj0
支配人室

ちなつ「どうして!?」

櫻子「まぁまぁ、落ち着いてくださいよ」

ちなつ「次のロミオとジュリエットのジュリエット役にあの新米を使うなんて!」

櫻子「彼女の素晴らしい歌声がもっと聞きたいという声を沢山もらったんだ」

ちなつ「だからってあんなどこの馬の骨かもわからないような小娘を主演になんて!!」

櫻子「お客様の声は利益に大きく関わってきますので…」

ちなつ「…そう。わかったわ。利益が出ればいいのね。で、いくら出せばいいの?」

櫻子「!!…そんな」

ちなつ「私がジュリエットを演じるためには、いくら出せばいいのかって聞いてるのよ!!」

61: 2011/09/11(日) 15:53:57.38 ID:cbO5RGpj0
パリ シャンゼリゼ通りのレストラン

結衣「まずは、入団おめでとう…。お前のお父様も素晴らしい音楽家だったけれど、京子もそれに劣らない素晴らしい音楽家だ」

京子「ありがとう、結衣」

結衣「今は何をしているんだ?」

京子「今はちなつさんのバックコーラスをしているの」

結衣「バックコーラス?何か役をやっているわけじゃないのか?」

京子「バックコーラスをさせてもらえるのも凄くありがたいことなんだよ!私みたいな新米は、最初なら雑用しかさせてもらえないはずなのに…」

結衣「でも、京子ならきっと主演だってゆめじゃない!」

京子「同じ事を、昨日他の人にも言ってもらったんだ」

結衣「他の人?」

京子「うん。私の、音楽の天使に」

63: 2011/09/11(日) 16:03:35.12 ID:cbO5RGpj0
結衣「音楽の天使?」

京子「綾乃っていうんだよ。でも…」

京子「音楽の天使に会ったのは夢かもしれない…」

結衣「どうしてそう思うんだ?」

京子「昨日、オペラ座の地下で眠ったはずだったんだけど、起きたら自分の部屋にいたの」

結衣「不思議な話だな」

京子「うん…。でも、夢じゃないといいな」

京子「音楽の天使は、私に声楽を教えてくれるって約束してくれたから…」

64: 2011/09/11(日) 16:07:07.83 ID:cbO5RGpj0
西垣「オペラ座の怪人が京子の夢に初めて現れたのは、京子の初公演から一週間後のことだった」

西垣「夢の中で怪人に指定された時間に、指定された場所へ行くと、いつも決まって鉄のきり穴が用意されていた」

西垣「怪人に声楽のレッスンを受けながら、京子は確かに成長していた」

西垣「これには、随分と自信満々なちなつでさえ焦りを感じるほどだった。それほどに、オペラ座の怪人の”レッスン”は凄いものだったのだ」

西垣「して、それから一ヶ月ほどのときが経った時」

西垣「オペラ座の新支配人宛ての、奇妙な一通の手紙が届いたのだった」

65: 2011/09/11(日) 16:10:00.62 ID:cbO5RGpj0
支配人殿

急に不躾に手紙をよこしてしまって申し訳ない。

伝えたい用件と言うのは簡単だ。

今日以降、五番ボックス席のチケットを売るのはやめていただきたい。

ここ数日、オペラ座の予約窓口で、私のボックス席が売りに出され、予約を取られているようだが、

それを聞いたとき、私がどれほど驚き、また不愉快な思いをしたか。

あの席は、旧支配人が私の為にと用意してくれた席だ。

旧支配人も、君たちに席の話をしているはずだ。

それなのに、五番のボックス席が売り出されているというのは、あなたたちが私を無視しているにから他ならない。

どうか、五番のボックス席のチケットは売らないようにお願いさせていただきたい。

   オペラ座のFより

68: 2011/09/11(日) 16:26:34.12 ID:cbO5RGpj0
櫻子「だって。旧支配人の言ってた事は本当だったのかな」

向日葵「本当なはず無いじゃありませんの。どうせ誰かのイタズラですわ」

櫻子「そうだよね」

向日葵「で、京子さんを主演に、ロミオとジュリエットの公演を行う話ですが…」

櫻子「あ、それなんだけどさ、」

向日葵「なんですの?」

櫻子「ジュリエット役は、ちなつさんのままで行くことになったから」

向日葵「なんですって!?そんな重要なことを、櫻子一人で決め――」

櫻子「ちなつさんから、凄い額のお金をもらっちゃってさ…」

69: 2011/09/11(日) 16:32:52.35 ID:cbO5RGpj0
オペラ座の地下

綾乃「今日のレッスンはこの辺にしておきましょうか」

京子「ありがとうございました!」

綾乃「そういえば、支配人の方々があなたを次回公演作品の主演に抜擢してるみたいよ」

京子「私を主演に!?」

綾乃「ええ。あなたの初公演に来た方々や、それ以降の公演を見た方々が、あなたの歌声を、表でもっと聞きたいと言ってるみたいよ」

京子「そんな…すごい……!これもレッスンのお陰です!ありがとうございます!」

綾乃「いいえ。これも、あなたの才能があってこそよ。主演、楽しみにしているわ」

綾乃「そういえば……あなた、最近よく外部の方とお食事に行ったり、遊びに行ったりしてるって聞いたけど…?」

京子「はい。彼は、私の幼馴染なんですよ。いままでずっと会ってなかったんですが、私がオペラ座に入団したって聞いて、通ってくれるようになったんです」

綾乃「言いづらいけれど…あまり、その人には会わないようにして欲しいの」

京子「え…どうしてですか?」

綾乃「どうしても…」

71: 2011/09/11(日) 16:38:23.90 ID:cbO5RGpj0
西垣「手紙が届いた日の夜、次回公演『ロミオとジュリエット』のキャスト発表が行われた」

西垣「次々と割り振りが読み上げられ、最後に、主演の発表となった…」


向日葵「ロミオ役、○○○、そしてジュリエット役、―――」

京子(私、まだ呼ばれて無い…)

京子(もしかしたら…もしかすると……)


ちなつ(お金はきちんと積んだわ…あの支配人、どうするのかしら…)

72: 2011/09/11(日) 16:43:40.35 ID:cbO5RGpj0














向日葵「ジュリエット役、吉川ちなつ」














74: 2011/09/11(日) 16:46:09.53 ID:cbO5RGpj0
向日葵「今呼ばれなかった方は、次回公演に向けての呼吸法や発声法のレッスンを―――」


京子(ダメだった……しかも、今回はバックコーラスさえやらせてもらえない…)

ちなつ「あら、京子、あなたは今回役をもらえなかったみたいね?」

京子「はい……やっぱり、まだ勉強も練習も足りないんだと思います」

ちなつ「向上心を持つのはいいことね。頑張ってね」

京子「はい…」

77: 2011/09/11(日) 16:54:26.80 ID:cbO5RGpj0
オペラ座の地下

綾乃「歳納京子は主演を取れなかったみたいね…」

綾乃「あれだけの声があっても、新人を主演にするのは何かマズイのかしら」

綾乃「でも、彼女には未来がある」

綾乃「次回公演ならきっと…」

綾乃「そのためにも、彼女にはとっておきの稽古をつけよう。

綾乃「彼女は本当に、才能があるのだから」

79: 2011/09/11(日) 17:09:18.65 ID:cbO5RGpj0
結衣「京子、お願いします」

向日葵「あなたもよくいらっしゃいますね」

結衣「ええ、幼馴染の仲ですし、なんだかんだで、京子のことが好きなんです」

向日葵「まあ……団員との恋愛は――」

結衣「え、いやっ!そういうことじゃないですよ!好意があるってことです!」

向日葵「冗談ですよ。ごめんなさい。では、京子さんを呼んできますわ」

結衣「お願いします」

・・・・・

向日葵「結衣さんがお見えですわよ」

京子「結衣ですか…ごめんなさい、結衣には帰るように伝えてください」

向日葵「?わかりましたわ」

81: 2011/09/11(日) 17:15:29.41 ID:cbO5RGpj0
向日葵「結衣さん、ごめんなさい。今日、京子さんは体調がよろしくないようで」

向日葵「結衣さんには帰っていただきたいと」

結衣「そうでしたか…。こちらこそ、わざわざありがとうございました」

向日葵「はい…」


結衣「どうしたんだろう、京子…」

結衣「体調、戻るといいな」

82: 2011/09/11(日) 17:19:13.43 ID:cbO5RGpj0
西垣「それから、二ヶ月近く時間がたった。しかし、そのなかで京子は主演はおろか、バックコーラスも脇役も与えてもらえなかったのである!!」

西垣「さらに、五番席のチケットの販売もやめられることは無かった」

西垣「オペラ座の怪人もこれはなにかおかしいと感づき、もう一度支配人たちに手紙を書いてみることにした」

西垣「京子を何故劇に出さず、五番のボックス席を売るのを何故やめないのか」

西垣「結衣もまた、とある違和感に気付き始めていた。どうも、京子が会ってくれなくなってしまったのだ」

西垣「ある日は調子が悪く、ある日は着てゆく服が決まらないと言い、ある日は声楽のレッスンがあると言い、ある日は落ち込んでいるからそっとしておいて欲しい…と」

西垣「この二ヵ月半、結衣は一度も京子と顔を合わせることができなかった」

西垣「オペラ座の中で、確かに何かが狂い始めていた…」

84: 2011/09/11(日) 17:28:24.51 ID:cbO5RGpj0
   支配人殿

この忙しい時期、あなた方がこのオペラ座の芸術家たちの決め、

劇の配役を決めたり、新しい歌手の卵たちとの契約をしたりするような時期に

その邪魔をしてしまうことを、申し訳ないと思う。

あなた達は、広い見聞や支配人の権威を持ち以上のような仕事に励んでいらっしゃるようだが、

劇の配役についてだけは、どうしても疑問が残る点がある。

それは、歳納京子についての扱いだ。

彼女は三ヶ月ほど前に吉川ちなつのバックコーラスを勤め、大好評をはくしたと聞く。

それなのに、脇役どころか、バックコーラスも、彼女に任せないとは、どういう方針なのだろうか。

彼女の能力も、評判も確かなのに、おかしいとは思わないだろうか。

私は、あなた方がいままで、スターやエトワールと呼ばれるような歌手を

どのように育て、扱ってきたかを拝見させていただいてきたが、このように、新米だからといって役や出番を

取り上げるようなことはしていなかったはずである。

91: 2011/09/11(日) 17:38:54.36 ID:cbO5RGpj0
スターやエトワールと呼ばれるような歌手、というのがどのような人達であったか、あなた方もご存知だろう。

もちろん、吉川ちなつのような歌手のことではない。

あんな下手くそは、パブやナイトクラブででも、歌っていればよかったのだ。

あなた方は、徹して歳納京子が重要な役に配置されないようにしているのではないだろうか?

それでもあなた方が歳納京子を首にしないのをいいことに、私は今夜の『ファウスト』の公演で、彼女の演じるジベールが歌うマルガレーテを聞きたいと思っている。

それから、前にも伝えたように私の五番席を勝手に使うのは辞めていただきたい。

この件に於いては、温厚な私でさえそろそろ苛立ちを覚えてきた。

いいかげんに、五番ボックス席のチケットを売ることをやめてくれるように願う。

このオペラ座の平和をあなた方が望むのなら、バカな真似は止して、私の五番席を取り上げるようなことは謹んで欲しい。

私の頼みは二つ。

一つは、私のボックス席を返すこと。

二つ目は、今夜のマルガレーテの役は歳納京子に歌わせること。

この約束を守らなければ、あなた方は今夜、呪われた劇場でファウストを上演することになる。

わたしの言うことをこれ以上無視すれば、どんなに恐ろしいことがこの劇場に起こっても仕方が無いと考えて於いていただきたい。


   オペラ座のF

93: 2011/09/11(日) 17:44:00.70 ID:cbO5RGpj0

※ファウスト とはどのような演目であるか

置いた学者のファウストが、これまで自分が学問にかけてきた時間を取り戻したいと願い、悪魔に魂を売り渡し、

悪魔からもらった若返りの秘宝(薬)を飲むところから始まり


ヒロイン ジベール(ジーベルとも対訳される)や、その他の人物の恋慕や

心身の闘争を巡る歌劇。


原作 ゲーテ

作曲 グノー

94: 2011/09/11(日) 17:49:50.28 ID:cbO5RGpj0
櫻子「まーたこの手紙だよ」

向日葵「嫌がらせも、いい加減しつこいと腹が立ちますわね」

櫻子「京子のことは、ちなつがお金を出してまで劇に出すなって行ってくるし…」

向日葵「五番ボックス席にいたっては、そもそも劇場支配人である私たちの持ち物じゃありませんの」

櫻子「ホント、だれがこんな手紙書いてるんだろう…」

向日葵「オペラ座のFって、誰なんでしょうね」

98: 2011/09/11(日) 17:54:02.70 ID:cbO5RGpj0
櫻子「あれ?もう一通手紙がきてる!」

向日葵「誰から?」

櫻子「旧支配人さんからだ!」

向日葵「なんて書いてありますの?」

櫻子「もー、今から読むんだから!」

101: 2011/09/11(日) 18:01:29.31 ID:cbO5RGpj0
拝啓

いつもオペラ座の管理をしていただき、ありがとうございます。

ファウストをもう一度聞くことができるのは、元オペラ座の支配人としてもとても嬉しいことであります。

しかし、だからと言って、私たち支配人は、劇場の五番ボックス席を扱う権利が無いということを忘れてはいけません。

私が劇場を去る最後の日にお伝えした人物の為の、専用席なのです


  敬具

   赤座あかり

103: 2011/09/11(日) 18:05:32.82 ID:cbO5RGpj0
櫻子「……」

向日葵「…でも、今晩の五番ボックス席はもう予約が入っていますし…」

櫻子「お金をもらった以上、ちなつをジベールからおろすわけにも行かないよね」

向日葵「今晩は仕方がありませんわ。このまま、いつもどおりの上演を決行しましょう」

櫻子「そうだね」


西垣「…かくして、劇場支配人たちはファウストの上演に踏み切ったのです。この、呪われた劇場での、ファウストの上演に…」

106: 2011/09/11(日) 18:10:57.67 ID:cbO5RGpj0
その日の夜の公演

綾乃「あれだけ言っても、まだ私のボックス席を売るのをやめなかったのね…」

綾乃「しかも、ジベールの役をやっているのは歳納京子じゃない…」

綾乃「いいわ。いいじゃない。そこまで私の言うことが聞けないっていうのなら…」


ファウスト   おまえの顔を眺めさせてほしい

        月を雲でそっと覆ってしまうように

        おまえの美しさを優しく撫でる…

        神秘的な光の中で

        眺めさせておくれ…

110: 2011/09/11(日) 18:17:01.90 ID:cbO5RGpj0
ちなつ(ジベール) ああ…

          この静寂…この幸せ…

          言いようの無い神秘的な…

          うっとりしてしまう様な眠気に…

          私は耳を澄ます

          私には聞こえるわ…

          孤独なその声が…!!

西垣「ちなつがその節を歌い上げたときだった…!その瞬間、手紙に書かれていた通り、恐ろしいことが起こったのだ!!」

112: 2011/09/11(日) 18:23:43.67 ID:cbO5RGpj0
西垣「観客たちも、支配人たちも、皆一様にどよめいた!」

西垣「静けさに、歌手の歌だけが響いていた劇場にどよめきが走ったのだ!!」

西垣「ジベールの、吉川ちなつのその口から、ヒキガエルが飛び出したのだ!」

西垣「醜く、イボイボな姿の、声さえ醜いヒキガエルが…!!」


    ゲコッ!

    ゲコッ!

    ゲコッ!


117: 2011/09/11(日) 18:27:57.05 ID:cbO5RGpj0
西垣「人々のどよめきを切るように、吉川ちなつは再び歌いだす!


ちなつ       私は耳を澄ます

            ゲコッ

          私には聞こえるわ…

          孤独なその声が…!!


            ゲコッ


西垣「一度は止まったどよめきも、今度は笑い声に変わってちなつとヒキガエルのデュエットの邪魔をするのだった…」

西垣「そんな劇場内に、劇場内にいる人々のものではない声が響き渡った」

綾乃「今夜の吉川ちなつの声の調子外れなことといったら、シャンデリアも外れそうなほどね!」

121: 2011/09/11(日) 18:35:58.66 ID:cbO5RGpj0
西垣「ちょうど、その声が響き渡った瞬間だった」


西垣「二人の支配人は、同時に劇場のシャンデリアを見上げた」





西垣「観客が悲鳴をあげる中、劇場のほぼど真ん中」





西垣「なんと、シャンデリアが落下したのだ!!」

124: 2011/09/11(日) 18:41:18.97 ID:cbO5RGpj0
翌日の新聞

「2000トン、観劇を楽しんでいた男性の頭上に落下!」

不運にも、シャンデリアの直撃を受けたのは、

その日生まれて初めてオペラ座に来たと言うRさんという男性だった。

事件が起こった当日の夜、彼は五番のボックス席に座っており…

128: 2011/09/11(日) 18:52:02.32 ID:cbO5RGpj0
後日の支配人室

ちなつ「わたし、当分は舞台に上がりたくないわ」

櫻子「えええええええ!?」

向日葵「ど、どうしたんですの!?」

ちなつ「あんな恥をさらして…田舎出の小娘ならまだしも…」

ちなつ「また舞台に上がって歌えるはずが無いじゃない!」

櫻子「わ、わかりました。すぐに代役を用意させていただきますわ」

ちなつ「じゃあ、よろしくね」

129: 2011/09/11(日) 18:56:13.08 ID:cbO5RGpj0
櫻子「もう、わがままなんだから!」

向日葵「困ったものですわね」

櫻子「ね、丁度いいから、オペラ座のFが言ってた通りに、京子を代役にしよう」

向日葵「そうですわね…またシャンデリアが落ちるようなことがあれば、洒落では済まされませんもの」

132: 2011/09/11(日) 19:01:26.71 ID:cbO5RGpj0
オペラ座 エントランス

結衣「京子!大丈夫だったのか!?シャンデリアガ落ちたって…」

京子「ゆゆ、結衣!?どうしてここに!?」

結衣「オペラ座のシャンデリアが落ちたって朝刊を読んで、飛んできたんだ!!」

京子「そうだったんだ…私は無事だよ、結衣」

結衣「良かった…」

京子「ところで、結衣」

結衣「何?」

京子「私、結衣に話があるの」

134: 2011/09/11(日) 19:04:49.21 ID:cbO5RGpj0
結衣「何だよ、話って」

京子「もう、私には話しかけないで欲しいの。会いに来るのもやめて」

結衣「そんな…!!」

結衣「ど、どうして…」

京子「音楽の天使は、私が結衣と会うのを嫌がるみたい…だから……」

結衣「私と、その音楽の天使とかいう奴と、どっちが大切なんだ!!」

京子「今は……音楽の天使の方が大切」

結衣「…」

136: 2011/09/11(日) 19:07:28.20 ID:cbO5RGpj0
京子「でも、必ずまた会えるよ」

京子「美しく、芸術的な歌を歌えるようになったら、私の歌を聴いて」

結衣「…」

京子「そのためには、私は音楽の天使のレッスンを受けなくちゃいけないから」

京子「私は、結衣が嫌いだからこんなことを言ってるわけじゃなくて…」

京子「むしろ、結衣のことは大好き!!愛してるって言えるくらいに!」

結衣「そ、そんな…恥ずかしいだろ」///

京子「だから、待っていて欲しいんだ」

139: 2011/09/11(日) 19:12:27.69 ID:cbO5RGpj0
結衣「わかった。私は何時までも待つよ」

京子「ありがとう、結衣」

結衣「私も、京子のことが大好き」

京子「うん…」



京子「ありがと」

141: 2011/09/11(日) 19:14:49.87 ID:cbO5RGpj0
西垣「ある日のこと…」

西垣「京子は、恐ろしい真実を知ることになった…」



綾乃「今日のレッスンはここまでね」

京子「ありがとうございました」

綾乃「そういえば、次回の公演で主役をとったそうじゃない!!」

京子「はい。そうなんですよ!」

綾乃「やっとあなたの努力が認められたのね」

京子「今はとっても嬉しくて…幸せです」

綾乃「お祝いに、今日は一緒に食事をしましょう」

京子「はい、ぜひご一緒させていただきます」

綾乃「私の家は湖の向こう岸だから、ボートを使っていかなければいけないの」

綾乃「あなた、船は大丈夫?」

京子「はい、一応は…」

綾乃「じゃあ行きましょう」

144: 2011/09/11(日) 19:20:04.04 ID:cbO5RGpj0
西垣「気がつくと、湖には何本もろうそくが浮かんでいた」

西垣「そして、そのろうそくは道を作るように、一筋の空間を作り上げていた」

西垣「そこを通り、ボートが進んでゆく…」


綾乃「次回の公演では何の役をもらったの?」

京子「ノートルダムの鐘のエスメラルダの役をもらいました」

綾乃「それは楽しみね。私も必ず見に行くわ」

147: 2011/09/11(日) 19:24:11.85 ID:cbO5RGpj0
怪人の館

綾乃「ご飯は、実は既に用意してあるの」

綾乃「この家は不思議な家だから…まだできたてのようにスープはホカホカだし、サーモンのパスタも新鮮なままよ」

京子「すごい…!!」

綾乃「さあ、頂きましょう」


京子「そういえば…」

綾乃「どうしたの?」

148: 2011/09/11(日) 19:25:55.26 ID:cbO5RGpj0
京子「綾乃は、食事をするときも仮面を外さないの?」

綾乃「!!」



綾乃「そういえば、話していなかったわね…この仮面のこと」

京子「その仮面の下は、どうなっているの?」


西垣「ふとした好奇心から、京子は綾乃の仮面をひょいと、取り上げてしまった…」

152: 2011/09/11(日) 19:32:40.12 ID:cbO5RGpj0



綾乃「ああああああああああああぁぁぁぁ!!」











京子「……!!!」


155: 2011/09/11(日) 19:38:56.80 ID:cbO5RGpj0

綾乃「とうとう、あなたは私の真実を知ってしまったわね!!」

綾乃「よく見なさい!!」

京子「い、嫌……来ないで…」

綾乃「貴方が見たかったんでしょう!私の仮面を取り上げてしまうほどに!!」

京子「あなのような若い娘は、皆好奇心が強いものね!!」



西垣「そう叫ぶと、怪人は笑い出した。その笑い声は、まるで猛獣が唸るようだった…」

160: 2011/09/11(日) 19:47:17.23 ID:cbO5RGpj0
綾乃「これで満足かしら?どう、私はなかなか美しいでしょう…?」

綾乃「私の体は、全部が氏肉なのよ…!頭の先から、足の先まで!!あなたを愛している…あなたに首ったけな私は、氏体なの!!さしずめこの家は私のための棺桶ね!!」

綾乃「私はもう、あなたを永遠に放しはしない!」

綾乃「あなたのように私の顔を見た女は、みんな私のものになるわ!!」

綾乃「私はなかなか、女の子にモテるのよね!!」

綾乃「私の姿をよく見て!私こそが…」

綾乃「私こそが、オペラ座の怪人なのよ!!」



京子「そんな……綾乃が、オペラ座の怪人だったなんて……!!」



綾乃「こうなれば、あなたはもう、私のものよ!!」




169: 2011/09/11(日) 19:57:53.48 ID:cbO5RGpj0
翌日

西垣「オペラ座の怪人は、落ち込んでいた…」


綾乃「彼女に私の姿を見られてしまうなんて…」

綾乃「彼女にだけは真実を伝えても…見られたくは無かったのに…」

綾乃「もう、私のところに来てくれないかも…」

綾乃「うっ……ううう……」ポロポロ

綾乃「私も私よね……あんな風に怒鳴ったら、余計に怖がられるのはわかってたはずなのに」グスッ

綾乃「京子がもうわたしのところに来てくれなかったら…私、どうしよう……」

174: 2011/09/11(日) 20:05:33.36 ID:cbO5RGpj0
昨晩 


綾乃『私は、この醜い顔の為に、私は実の親にさえ嫌われたの」

綾乃『でも、母親は私に仮面をくれたわ」

綾乃『それが、私にとっての最高の愛よ』


京子『ごめんなさい、今日は私、帰ります』

綾乃『湖にあるボートに乗れば、勝手に向こう岸へ連れて行ってくれるわ』

綾乃『でも、覚えておくことね!!』

綾乃『あなたは私から逃れられはしないわ…』

綾乃『この顔を見たら最後…あなたは私のものよ』

175: 2011/09/11(日) 20:07:07.64 ID:cbO5RGpj0
京子「どうしよう…悪いことをしちゃったな…」

京子「今から謝りに行こう…」

京子「あっ…きり穴が無いと…地下にはいけない…」

京子「どうしよう…」



西垣「実は、あの日の晩にオペラ座の地下へ行っていたのは京子だけではなかった」

西垣「もう一人、来客者がいたのだ」

西垣「その来客者というのが―――」

177: 2011/09/11(日) 20:11:02.43 ID:cbO5RGpj0
昨晩 オペラ座の地下

結衣『京子!』

京子『結衣っ!?』

結衣『シーッ!静かにして…」

京子『ごめん…』

結衣『京子、これはどういうことなんだ?』

京子『…』

結衣『あれが君の言う、音楽の天使なのか?』

京子『いつもは、優しいんだよ』

京子『でも、これからはそうじゃなくなっちゃうかも…』

京子『私が、無理矢理仮面を取っちゃったから』

結衣『あんな恐ろしい奴のところへ、二度としていく必要は無い!』

京子『待って結衣!……今までは、彼女は私に声楽を教えてくれてたんだよ…』

結衣『京子…』

182: 2011/09/11(日) 20:21:13.58 ID:cbO5RGpj0
西垣「対岸には、既に劇場へ戻る為のきり穴が用意されていた」


京子『これを下れば戻れると思う』

結衣『じゃあ、早く降りよう』

結衣『私があの化け物に見つかるとまずいし…』

京子『うん…』

185: 2011/09/11(日) 20:28:25.05 ID:cbO5RGpj0
西垣「そう、あのときには結衣もまた、オペラ座の地下にいたのである…!!」

西垣「結衣はオペラ座の地下にある湖や怪人の家の存在を知り」

西垣「また、怪人の恐ろしい真実の姿さえ知ってしまった」

西垣「そしてさらに、彼女は……歌姫誘拐事件の目撃者となることになるのだ…」

西垣「京子が怪人の真実を知った日から一週間ほどあと…劇場では、仮面舞踏会が行われた」

西垣「パリの人々の中でも、オペラ座に深い関係のある人たちが、特に舞踏会に呼ばれることになった」

西垣「結衣も京子もまた、その舞踏会の招待状を受け取った」

西垣「しかし、結衣にいたっては、さらにもう一枚の手紙をもらっていた」

188: 2011/09/11(日) 20:33:53.25 ID:cbO5RGpj0
   愛しいあなたへ

今夜の仮面舞踏会へは、結衣にも必ず来て欲しいの。

舞踏会は朝まで続くと思うから、真夜中に来て欲しい。

真正面ロビーの暖炉の後ろの談話室へ来て。

仮面舞踏会に来るときは、結衣を知っている人があなたを見ても

結衣だとわからないような格好で着て欲しい。

おおきな仮面をつけて顔をしっかり隠して、結衣らしくないセンスの服を着れば大丈夫だと思う。


   あなたの幼馴染より

191: 2011/09/11(日) 20:41:31.28 ID:cbO5RGpj0
結衣(私はこの手紙を受けとって、すぐに準備を始めた。勿論、舞踏会へ行く準備だ)

結衣(仮装用の白いマントと、レース付きの黒ビロードの仮面を用意して、顔をピ工口のように真っ白になるまでおしろいを塗った)

結衣(普通、社交界の紳士は舞踏会へ行くときに仮装したりしない。せいぜい、仮面舞踏会の為に仮面をつける程度だ)

結衣(こんな格好をした自分を、我ながら滑稽だと思った)

結衣(こんな格好をしていたら、誰かに笑われるに違いない。救いは、私が誰なのかわからないほどに、うまく仮装できたということ)

結衣(それに、この格好なら一々感情を顔に出さないように気をつけなくてもいい)

結衣(泣きたいとき、紳氏だから、男だから、と)

結衣(泣くのを我慢しなくてもいい…)

193: 2011/09/11(日) 20:45:43.69 ID:cbO5RGpj0
結衣(オペラ座の中の人ごみにまぎれると、なんだかホッとした)

結衣(京子のことは、結構簡単に見つけることができた)

結衣(私の前を往来する人々の中に、彼女を見つけた)

結衣(私が彼女の指をつかむと、彼女は振り向いて、私に微笑んだ)

結衣(思わず名前を呼ぼうとすると、京子は私の口に手を当て、首を横に振った)

結衣(どうやら、『名前を呼ばないで』と言いたいらしい)

結衣(ダメだ……ここまできても、彼女の考えていることがよくわからない…)

195: 2011/09/11(日) 20:51:52.41 ID:cbO5RGpj0
結衣(彼女は、私の手を振り払うと、今度は逆に私の腕を取った)

結衣(私を見て、それから正面を見つめた)

結衣(ついて来いってことなのかな…?)

結衣(彼女に逆らう理由もなく、わたしは京子の後についていった)

結衣(沢山の人とすれ違いながら歩いていると、いままですれ違ったほかの人たちとは何か違う、恐ろしいような気配をまとった人とすれ違った)

結衣(そのひとは、真っ赤な衣装をまとって、大きな帽子を、ドクロの仮面の上に乗せて歩いていた)

結衣(真っ赤な衣装のすそには、『私に触れるな!私は行きずりの氏神だ!』という刺繍がしてあった)

結衣(そして真っ赤なマントに、自身の髪の毛だろうか、赤い、紫色にも見える一結わきした髪が垂らされていた)

197: 2011/09/11(日) 20:59:43.54 ID:cbO5RGpj0

結衣(京子について行くと、劇場内の一つのボックス席にたどり着いた)

結衣(京子に続いて私が席の中に入ると、彼女はボックス席のドアを閉めた)

結衣(しかし、よくよく劇場内を見渡すと、赤いマントの君の悪いドクロの仮面の人物も、劇場に入ってきているじゃないか!!)

結衣(私が思わず声を上げそうになると、京子はまたも私の口を押さえた)

結衣(おかげで、声は上げずに済んだ)

結衣(京子は小声で、私に『だめだ、あの人が着いてきちゃったみたい。ここを出よう』と言った』

結衣(しかし、私は頑なにそれを拒否した。きっとあいつは、あの醜い顔をしたオペラ座の怪人に違いないと思ったからだ)

結衣(京子をまたあんな恐ろしい目に合わせないように、あの怪人をここでとっちめてやろうかと思ったんだ)

結衣(でも、それがいけなかった…)

結衣(あとから思えば、これが私の犯した、大失敗だった)

198: 2011/09/11(日) 21:04:54.74 ID:cbO5RGpj0
結衣(それでもやはり、京子は『早くあの人から逃げよう』と私にささやきかけた)

結衣(しかし、そこで私は叫んだ)


結衣「やつだ!」

結衣「今度こそ逃がさないぞ!!」

結衣(すると、彼女は素っ頓狂な声で…)

京子「やつって、誰なの?」

京子「逃がさないって、いったい誰のことなの…?」

結衣「誰って、あいつに決まってるだろう!あそこに居る、赤いマントの男のことだ!」

結衣「つまり、京子のお友達さ!オペラ座の地下に居た、京子の音楽の天使のことだよ!!」

201: 2011/09/11(日) 21:12:38.20 ID:cbO5RGpj0

結衣「あの赤いマントの、怪人を捕まえてやるんだ!」

結衣「あいつと私、いっしょに隣り合えば、きっとわかるはずだ!」

結衣「京子が本当に大切なのは、どちらなのか」

結衣「今、はっきりさせてやるよ!!」

結衣「前に聞いたときは、『今は音楽の天子のほうが大事』なんて言ってただろ」

結衣「なら、今はどちらが大切なのかはっきりさせよう!!」

京子「やめてよ!!」

京子「私たち二人の愛にかけて、あなたにあのマントの人を捕まえさせるわけにはいかないわ!」

結衣(私たち二人の愛にかけて……?)

結衣(私たちて……だれと、誰のことなんだろう…?)


結衣(いや、わかっている…私たち二人というのは、京子とあのオペラ座の怪……)

203: 2011/09/11(日) 21:19:03.54 ID:cbO5RGpj0

結衣(それでも、私は皮肉をこめて言った)

結衣(あくまで、私たち二人というのが、私と京子の事だと思い込んでいるようなフリを装って)

結衣「京子、お前は嘘をついているね!!私たちの愛にかけて、だなんて…」

結衣「京子は私のことなんて愛していないのに、愛にかけて、だなんて…」

京子「違う、違うんだよ結衣!私たち二人っていうのは、私と結衣のことじゃなくて…」

京子「私と、音楽の天……」

結衣(京子がそこまで言ったところで…私は涙をこぼしてしまった…)

結衣(仮装の為のおしろいが、涙でながれだした…)

あかり「オペラ座のゆるゆり、なんだかんだで完結に向かうよー!」

引用: あかり「オペラ座のゆるゆり、始まるよー!」