320: 2013/12/01(日) 17:09:59 ID:6qtbOmVE

321: 2013/12/01(日) 17:10:34 ID:6qtbOmVE
~エルフの里・城門~

ヒュルヒュルヒュルヒュル、ヒュルヒュルヒュルヒュル……

ヒュルヒュルヒュルヒュル、ヒュルヒュルヒュルヒュル……

スッ、スタタタッ……

エルフ女侯爵「……」

巨大猫「……」

勇者「……」

ザッザッザッ、ザッザッザッ……

ザッザッザッ、ザッザッザッ……

ピタッ……
葬送のフリーレン(1) (少年サンデーコミックス)
322: 2013/12/01(日) 17:10:47 ID:6qtbOmVE
警備士官「お疲れ様です。女公爵」

警備士官「こちらの方達は、どちら様でしょうか?」

エルフ女侯爵「ええ、ちょっとね」

巨大猫「妾達は、そこにおるエルフに保護されたのじゃ」

巨大猫「偶々、道を歩いている時に魔王軍の残党に襲われてな」

巨大猫「それで、ここまで避難してきたと言う訳じゃ」

勇者「……」

警備士官「女公爵。今のは事実ですか?」

警備士官「まだ、魔王軍の残党がうろついていたとは」

エルフ女侯爵「ええ、その通りよ」

323: 2013/12/01(日) 17:11:06 ID:6qtbOmVE
巨大猫「エルフ。すまぬが、一晩ここに厄介になるぞ」

巨大猫「ここで今倒れているのは、勇者XXXじゃ」

巨大猫「勇者は、とある国からの依頼で平原のモンスター退治を行っていた」

巨大猫「その途中で、勇者は魔王軍の残党に襲われたと言う訳じゃ」

警備士官「ふむふむ」

エルフ女侯爵「警備士官。勇者を至急病院へ」

エルフ女侯爵「それと、あの年増女にもすぐさま連絡」

エルフ女侯爵「勇者の周りに、最低でも一分隊は配置しときなさい」

エルフ女侯爵「今の勇者は、かなり精神を病んでしまってるから」

警備士官「はっ!」

324: 2013/12/01(日) 17:11:18 ID:6qtbOmVE
巨大猫「エルフ。妾はどうする?」

巨大猫「妾も、出来れば勇者の元に付いていてやりたいのじゃが」

巨大猫「勇者は、エルフの言葉が解らん」

巨大猫「普段から、通訳無しには会話すら出来ないのじゃ」

警備士官「何?」

勇者「……」ムクッ

エルフ女侯爵「ええ、構わないわよ」

エルフ女侯爵「あんたは、勇者と一緒に付いていてあげて」

巨大猫「ああ、了解した」

警備士官「しかし」

325: 2013/12/01(日) 17:11:31 ID:6qtbOmVE
エルフ女侯爵「警備士官。大丈夫よ!」

エルフ女侯爵「勇者は、永世中立のエルフの里には敵対はしない!」

エルフ女侯爵「たとえ、勇者が我々エルフに敵対したとしても、全てが無駄となる!」

エルフ女侯爵「もうこれ以上、勇者は悪評を広げられるのは嫌みたいだし!」

エルフ女侯爵「私達、エルフを一人でも殺害した時点で、人間達全てがエルフによって殺害されてしまうから!」ニッコリ

勇者「!?」

警備士官「成る程」

巨大猫「……」ギロッ

エルフ女侯爵「だから、勇者に関しては大丈夫よ!」

エルフ女侯爵「勇者を、すぐに病院で手当てしてあげなさい!」

326: 2013/12/01(日) 17:11:47 ID:6qtbOmVE
警備士官「はっ、了解しました!」

警備士官「至急、手配致します!」

クルッ、スタッ……

警備士官「第一分隊、勇者を収容せよ!」

警備士官「第二分隊は、宮廷にまで連絡!」

警備士官「第三分隊は、引き続き警備!」

警備士官「各員、早急に持ち場に戻れ!」

警備兵達「はっ!」

勇者「……」

巨大猫「……」

327: 2013/12/01(日) 17:12:03 ID:6qtbOmVE
ザッザッザッ、ザッザッザッ……

ザッザッザッ、ザッザッザッ……

ピタッ、ピタッ、ピタッ……

警備下士官「勇者殿、立てますか?」

警備下士官「見た所、かなり血塗られていますが」

勇者「ああ、大丈夫だ」

巨大猫「少し、魔王軍の残党達との戦闘で負傷しただけじゃ」

巨大猫「勇者は、背中のあたりを痛めておる」

巨大猫「ついさっきまで、勇者はなかなか立てずにいた」

巨大猫「特に、鎖帷子は打撃には弱いからな」

328: 2013/12/01(日) 17:12:18 ID:6qtbOmVE
エルフ女侯爵「警備下士官。早く連れてってあげて」

エルフ女侯爵「今の勇者は、かなり体力を消耗しているみたいだから」

警備下士官「はっ!」

勇者「……」

クルッ、スッ……

スッ、ギュッ、ムクッ……

警備下士官「よいしょっと!」

警備兵達「……」

巨大猫「では、行くぞ」

巨大猫「ちゃんと、勇者を背負えているみたいじゃからな」

329: 2013/12/01(日) 17:12:35 ID:6qtbOmVE
ザッザッザッ、ザッザッザッ……

ザッザッザッ、ザッザッザッ……

警備士官「女公爵。宜しいのですか?」

警備士官「あの勇者、かなり怪しいのですが」

エルフ女侯爵「ええ、構わないわ」

警備士官「念の為、勇者の周りには警備を厳重にしときます!」

警備士官「勇者が送られるのは、主に外来用の為の病院!」

警備士官「そこは、普段から警備が厳重!」

警備士官「もう既に、結構な数の人間達を収容していますよ」

エルフ女侯爵「ええ、分かってるわ」

330: 2013/12/01(日) 17:12:49 ID:6qtbOmVE
警備士官「なら、何故人間達を収容するのです?」

警備士官「あの人間達を使って、一体何をなされるつもりなのですか?」

エルフ女侯爵「……」

警備士官「そんなに、人には言えない事なのですか?」

警備士官「一体、何を隠されているんです?」

エルフ女侯爵「その件については、後で明らかになるわ!」

エルフ女侯爵「明日、人間達は地獄を見る!」

エルフ女侯爵「それ以上は、私の口からは言えないわ!」

警備士官「……」

シュピン……

331: 2013/12/01(日) 17:14:08 ID:6qtbOmVE
エルフ女侯爵「ん? あの子からの通信?」

エルフ女侯爵「あの子、相変わらず情報が早いわね……」

警備士官「……」

エルフ女侯爵「あの子、一体何考えているのよ?……」

エルフ女侯爵「また、あの年増女に媚売っちゃって……」ムカッ

警備兵達「……」

エルフ女侯爵「警備士官。上から連絡があったわ!」

エルフ女侯爵「勇者は、エルフの里の内部にて拘束をする!」

エルフ女侯爵「あの勇者、XXX王国より刺客として送り込まれていたみたいね!」

エルフ女侯爵「まぁ、それも明日になれば、全てが無駄になるんだけどね!」

332: 2013/12/01(日) 17:14:38 ID:6qtbOmVE
エルフ女侯爵「とりあえず、あんたも持ち場に戻って!」

エルフ女侯爵「勇者に関しては、こっちで何とかする!」

エルフ女侯爵「明日、XXX王国ももう終わりになるんだし!」

エルフ女侯爵「また、あの子が何か企んでいるみたいだからね!」

警備士官「はっ!」

ザッザッザッ、ザッザッザッ……

ザッザッザッ、ザッザッザッ……

ガチャ、ギギィーーーーッ……

ギギィーーーーッ、ギギィーーーーッ……

ダン、カシャン……

333: 2013/12/01(日) 17:14:51 ID:6qtbOmVE
エルフ女侯爵「勇者。まずは、怪我を直しなさい」

エルフ女侯爵「そうしないと、何回やっても私には勝てないわ」

勇者「……」

エルフ女侯爵「あんた、ここ最近ずっと連戦続きで休む暇がなかったんでしょ?」

エルフ女侯爵「そうじゃなきゃ、魔王を見事に討ち取ったはずのあんたがあんなに弱いはずがない」

勇者「……」

巨大猫「勇者。まずは、怪我を直せ」

巨大猫「そうせねば、そなたはXXXXXXには勝てぬ」

巨大猫「せっかく、そなたはエルフの里に入る事が出来たのじゃし」

巨大猫「そんな体のままでは、エルフ全てを殺害する事等出来ぬのじゃからな」

334: 2013/12/01(日) 17:15:04 ID:6qtbOmVE
巨大猫「XXXXXX。そなたの心遣い感謝する」

巨大猫「じゃが、妾はそなたのやる事には納得が出来ぬ」

巨大猫「それだけは、しかと覚えておけ」

エルフ女侯爵「ええ、了解したわ」

勇者「……」

ザッザッザッ、ザッザッザッ……

ザッザッザッ、ザッザッザッ……

カチャ、ギギィーーーーッ……

ギギィーーーーッ、ギギィーーーーッ……

ダン、カシャン……

340: 2013/12/02(月) 17:14:14 ID:MvhHufFw
~エルフの里・大通り~

しばらくして――

ガヤガヤガヤッ、ガヤガヤガヤッ……

ガヤガヤガヤッ、ガヤガヤガヤッ……

パカパカパカッ、ガラガラガラッ……

パカパカパカッ、ガラガラガラッ……

勇者「ここが、エルフの里か……」

勇者「俺の住む国より、遥かに発展しているんだな……」

巨大猫「ああ、そうみたいじゃな」

エルフ女侯爵「……」

341: 2013/12/02(月) 17:14:45 ID:MvhHufFw
勇者「なぁ、巨大猫……」

勇者「ここ、結構広くないか?……」

勇者「通路だけでも、結構広い……」

勇者「至る所に、人が溢れ返ってる……」

巨大猫「ああ、そうじゃな」

勇者「それに、何だよあの店の数……」

勇者「店だけでなく、あらゆる物資すら全て揃ってるぞ……」

勇者「一体、何をやったらここまで発展出来るんだ?……」

勇者「今の俺、本当にエルフ達に勝てるのか?……」

巨大猫「さぁ、分からんな」

342: 2013/12/02(月) 17:14:56 ID:MvhHufFw
エルフ女侯爵「うふふっ、そんなにこの町が羨ましい?」

エルフ女侯爵「あんたの住む町って、かなり田舎みたいね」

勇者「……」ギロッ

エルフ女侯爵「こんなの、まだまだ発展途上なのよ」

エルフ女侯爵「ここまでの規模になるまで、かなり時間が掛かっちゃったけど」

勇者「……」

巨大猫「XXXXXX。病院はまだか?」

巨大猫「まだ、病院に着かないのか?」

エルフ女侯爵「ええ、まだよ」

勇者「まだ、着かないのかよ……」

343: 2013/12/02(月) 17:15:08 ID:MvhHufFw
エルフ女侯爵「まずは、どこへ行くにもここを通らなきゃいけないから」

エルフ女侯爵「ここは、エルフの里の全ての通路に繋がる大通り」

エルフ女侯爵「それも、わざわざ私があんた達の案内もしてあげているのよ」

エルフ女侯爵「少しは、有り難いと思いなさい」

勇者「……」

巨大猫「XXXXXX。早くしてくれ」

巨大猫「このままでは、勇者が氏んでしまう」

巨大猫「元々、そなたが余計な事をしたからこうなったのではないか」

巨大猫「そなたさえ余計な事をしていなければ、勇者とて平穏無事な余生を過ごせていたと言うのに」

勇者「……」

344: 2013/12/02(月) 17:15:20 ID:MvhHufFw
エルフ女侯爵「警備下士官。まだ掛かる?」

エルフ女侯爵「この人混み、まだ抜けられないの?」

警備下士官「はっ、申し訳ございません」

警備下士官「まだ、抜け出せそうにはありません」

エルフ女侯爵「そう」

巨大猫「なら、転移魔法を使ってはどうか?」

巨大猫「早く、勇者を病院にまで連れてっておくれ」

エルフ女侯爵「はいはい」

勇者(全く、まだ着かないのか……)

勇者(出来れば、早くしてくれよ……)

345: 2013/12/02(月) 17:15:33 ID:MvhHufFw
エルフ女侯爵「警備下士官。転移魔法は?」

エルフ女侯爵「それを使って、病院にまで飛べる?」

警備下士官「いいえ、無理です」

エルフ女侯爵「なら、このまま歩いていくしかないわね」

エルフ女侯爵「一体、何でここまで混雑しているの?」

警備下士官「……そっ、それが」

「あっ、お母様。お帰りなさい」

「ごめんなさいね。ちょっと、皆が前祝いを始めちゃってたから」

エルフ女侯爵「え?」クルッ

スッ、スタッ……

346: 2013/12/02(月) 17:17:06 ID:MvhHufFw
エルフ女侯爵「あんた、何してるの?」

エルフ女侯爵「何で、こんな所にいるの?」

エルフ魔女「うん。ちょっとね」

エルフ女侯爵「やっぱり、またあんた何かしてるでしょ」

エルフ女侯爵「この人混み、まさかあんたが原因なんかじゃないわよね?」

エルフ魔女「うん。そうだけど」ニッコリ

エルフ女侯爵「……」

勇者「……?」

巨大猫「!?」ハッ

警備下士官「……」

347: 2013/12/02(月) 17:17:46 ID:MvhHufFw
巨大猫「そなた、一体何者じゃ!?」

巨大猫「まさか、XXXXXXの娘なのか!?」

エルフ魔女「ええ、そうよ」ニコニコ

巨大猫「XXXXXX。どう言う事じゃ!?」

巨大猫「そなた、いつこの幼子を産んだのじゃ!?」

エルフ女侯爵「うん。内緒!」ニッコリ

巨大猫「妾、そなたが再び娘を産んだとは聞いてないぞ!?」

巨大猫「そなたの娘は、今から23年前に戦氏したはずじゃ!?」

巨大猫「一体、何がどうなってる!?」

巨大猫「まさか、そなたら妾達の事を謀りおったな!?」

348: 2013/12/02(月) 17:17:59 ID:MvhHufFw
エルフ女侯爵「うふふっ、バレた?」

エルフ女侯爵「私達、最初からそのつもりだったのよ」

エルフ女侯爵「この子は、あの戦いから一年後に生まれた私の大事な大事な実の娘」

エルフ女侯爵「多分、あんたの事だから、もう気づいたんじゃないの?」

エルフ女侯爵「この子が、過去にどんな事をしてきたか……」

エルフ女侯爵「今のあんたなら、この子を見た瞬間から気づいちゃったのよね?」ニヤリ

エルフ魔女「……」ニコニコ

巨大猫「くっ……」

勇者「……?」

警備下士官「……」

349: 2013/12/02(月) 17:18:11 ID:MvhHufFw
エルフ女侯爵「とりあえず、早く病院にまで行きましょ」

エルフ女侯爵「それ終わったら、私はもう戻るから」

エルフ女侯爵「巨大猫。この事、誰かに漏らさないでね!」

エルフ女侯爵「この事、誰かに漏らしたらあんたの命すら危ないからね!」ニッコリ

巨大猫「……ああ、了解した」ビクッ

勇者「……?」

エルフ魔女「それで、こちらの方はどなた?」

エルフ魔女「もしかして、この方が例の勇者様なの?」

エルフ女侯爵「ええ、そうよ」

巨大猫「……」ジーーッ

350: 2013/12/02(月) 17:18:23 ID:MvhHufFw
エルフ魔女「あれ? 何か顔が違わなくない?」

エルフ魔女「私が聞いた勇者様は、もっと貧相な顔をしているはずだけど」

エルフ魔女「まさか、魔王との戦闘で顔が変わっちゃったとか?」

エルフ魔女「それで、元々の顔にどこかの病院で戻して貰ったとか?」

巨大猫「ああ、そうみたいじゃ」

エルフ魔女「なら、早く病院に行かないとね」

エルフ魔女「私が、今から病院にまで道案内をしてあげる」

エルフ魔女「警備下士官。私についてきて」

エルフ魔女「すぐそこの裏道を使えば、病院にまで早く行けるから」

警備下士官「はっ、了解しました!」

351: 2013/12/02(月) 17:18:34 ID:MvhHufFw
クルッ、ザッザッザッ……

ザッザッザッ、ザッザッザッ、……

巨大猫「勇者。これより、抜け道を使う」

巨大猫「もう暫く、辛抱してくれ」

勇者「ああ、了解した」

警備下士官「……」

ザッザッザッ、ザッザッザッ……

ザッザッザッ、ザッザッザッ……

ガヤガヤガヤッ、ガヤガヤガヤッ……

ガヤガヤガヤッ、ガヤガヤガヤッ……

355: 2013/12/03(火) 13:04:35 ID:p.vQ4QAc
~エルフの里・外来用病院前~

ザッザッザッ、ザッザッザッ……

ザッザッザッ、ザッザッザッ……

ピタピタピタピタッ……

エルフ魔女「皆、着いたわよ」クルッ

巨大猫「おおっ、やっとか」

巨大猫「かなり、大きな建物じゃなぁ」

エルフ魔女「うん。まあね」

勇者「……」

スッ、ガチャ……

356: 2013/12/03(火) 13:04:50 ID:p.vQ4QAc
「あっ、お疲れ様です。女侯爵」

「今、そっちにむかいますので」

エルフ女侯爵「ええ、了解したわ」

勇者「……」

「先生。女侯爵XXXXXX様が、今お着きになられました!」

「今から、患者を中に搬送します!」

「ああ、良いよ!」

スタスタスタッ、スタスタスタッ……

スタスタスタッ、スタスタスタッ……

ピタッ……

357: 2013/12/03(火) 13:05:23 ID:p.vQ4QAc
エルフ看護師「勇者様。大丈夫ですか?」

エルフ看護師「意識の方は、ございますか?」

勇者「……」

巨大猫「勇者。看護師が意識はあるかと問いかけておる」

巨大猫「そなた、まだ氏んどらんのだな?」

勇者「ああ、当たり前だ……」ムクッ

エルフ看護師「では、これから勇者様を中で診察を致します」

エルフ看護師「こちらのケット・シーは、勇者様の通訳と言う事で宜しいのですよね?」

エルフ看護師「今回は特例として、ケット・シーを病院内に付き添わせます」

エルフ看護師「衛生上の事を踏まえ、今後この様な事がない様にして頂きたいです」

358: 2013/12/03(火) 13:05:35 ID:p.vQ4QAc
エルフ女侯爵「ええ、了解したわ」

エルフ女侯爵「今後は、この様な事態が起きないように努力する」

エルフ女侯爵「今の勇者、かなり疲弊していてね」

エルフ女侯爵「私が発見する前まで、魔王軍の残党と戦闘をしていたみたいだから」

勇者「……」

エルフ看護師「でしたら、武器や武具等はこちらでお預かり致します」

エルフ看護師「見た所、つい最近になって新調された様ですね」

エルフ看護師「今まで、鎖帷子は装着した事はなかったのでしょう」

エルフ看護師「上に羽織っていたサーコートまで破かれていますよ」

エルフ女侯爵「ええ、そうみたいね」

359: 2013/12/03(火) 13:05:47 ID:p.vQ4QAc
巨大猫「勇者。病院内では、武器等を外すぞ」

巨大猫「そうしなければ、そなたの怪我等を治療出来ぬからじゃ」

巨大猫「今の所、エルフ達には敵対する医師はない」

巨大猫「今は大人しく、自身の体を治す事に専念するのじゃ」

勇者「ああ、了解した……」

巨大猫「では、勇者を早く中へ」

巨大猫「勇者には、妾の方で武器等を外すと伝えといた」

巨大猫「ちなみに、診察代はいくらなのじゃ」

巨大猫「勇者の持つ財布まで血塗られていようぞ」

勇者「……」

360: 2013/12/03(火) 13:05:59 ID:p.vQ4QAc
エルフ看護師「診察代につきましては、里の予算内です」

エルフ看護師「勇者様ご自身からは、1Gも頂きません」

巨大猫「うむ。そうか」

エルフ女侯爵「うふふっ、心配しなくても大丈夫よ」

エルフ女侯爵「皆、魔王を見事に討ち取った勇者様には、感謝くらいはしてるから」

エルフ女侯爵「だから、巨大猫も心配はしないで」

エルフ女侯爵「ここの病院内には、勇者様と同様に数多くの人間達が怪我や病気等の治療を受けている」

エルフ女侯爵「つい最近、勇者様が魔王を見事に討ち取った事実についても、私達の方で知らせてるから」

巨大猫「ああ、了解した」

エルフ魔女「……」

361: 2013/12/03(火) 13:06:11 ID:p.vQ4QAc
「看護師。もう大丈夫だよ」

「準備出来たから、早く勇者様を中に」

エルフ看護師「はい。了解しました」

エルフ女侯爵「警備下士官。中にまでお願い」

エルフ女侯爵「それ終わったら、もう持ち場に戻って良いから」

警備下士官「はっ!」

勇者「……」

ザッザッザッ、ザッザッザッ……

ザッザッザッ、ザッザッザッ……

エルフ魔女「……」

362: 2013/12/03(火) 13:06:22 ID:p.vQ4QAc
エルフ看護師「では、勇者様はこちらでお預かり致します」

エルフ看護師「またのご来院をお待ちしております」ペコッ

エルフ女侯爵「ええ、御苦労様」

巨大猫「では、失礼する」

エルフ魔女「またね」

巨大猫「ああ」

クルッ、スタスタスタッ……

スタスタスタッ、スタスタスタッ……

スッ、バタン……

エルフ女侯爵「ふぅ……」

363: 2013/12/03(火) 13:09:00 ID:p.vQ4QAc
エルフ魔女「お母様。お疲れ様!」

エルフ魔女「本当に有り難うね。また、私の我が儘を聞いてくれて!」ニッコリ

エルフ女侯爵「……」ギリッ

エルフ魔女「多分、またお母様には活躍をして貰うかも」

エルフ魔女「私、今の体じゃ何も出来ないし」

エルフ魔女「また以前みたいな事は、とても出来ない」

エルフ魔女「後何年かしたら、私は学校とかにも行かなくちゃいけないから」

エルフ女侯爵「……」

スッ、ガシッ、ヒョイ……

エルフ魔女「!?」

364: 2013/12/03(火) 13:09:12 ID:p.vQ4QAc
エルフ女侯爵「それで、次は一体何をすれば良いの?」

エルフ女侯爵「今のあんたは、また何を企んでいるの?」ニッコリ

エルフ魔女「……」ビクッ

エルフ女侯爵「あんた、そう言えばまだ未就学だったわよね?」

エルフ女侯爵「私、その事すら完全に忘れてたわ」

エルフ魔女「……」

エルフ女侯爵「おまけに、あんたあの年増女に媚売っちゃって……」

エルフ女侯爵「何故か、あんたがあの年増女による推薦で私と同じ学校に入学するんじゃないかって言う話すら聞いてしまったいた……」

エルフ女侯爵「その上、族長自ら推薦する特待生って一体何?」

エルフ女侯爵「今のあんた、あの年増女に何を吹き込んでいるのかしら?」ニッコリ

365: 2013/12/03(火) 13:09:25 ID:p.vQ4QAc
エルフ魔女「ただ単に、私は純粋なエルフとして生まれたから……」

エルフ魔女「お母様が、以前私にエルフならエルフらしくしろって言ってたから、エルフらしく学校に通おうかなぁって……」

エルフ女侯爵「うん。それで?」ニコニコ

エルフ魔女「そしたら、あの年増女が推薦状を書いてくれるって……」

エルフ魔女「私、色々とあの年増女に媚とか売ってるし……」

エルフ魔女「後は、今やってるオペレーションの功績に報いるもの……」

エルフ魔女「だから、私は何も悪い事はしてないわ……」

エルフ魔女「私が成人するまでの間は、子供なら子供らしく学業に専念しようかなぁって……」

エルフ魔女「あの、駄目だった?」

エルフ女侯爵「……」ニコニコ

366: 2013/12/03(火) 13:09:57 ID:p.vQ4QAc
エルフ女侯爵「だったら、何でそれを私に言わなかったのよ!?」

エルフ女侯爵「私、つい最近になってそれを知ったんだけど!?」ギリッ

エルフ魔女「!?」ビクッ

エルフ女侯爵「あんた、私の事を何だと思ってるの!?」

エルフ女侯爵「私、あんたの実の母親なのよね!?」ギロッ

エルフ魔女「うん。そうだけど……」

エルフ女侯爵「はぁ……」

エルフ女侯爵「とりあえず、後の話は家で聞くわ……」

エルフ女侯爵「あんたも、覚悟くらいはしときなさいよね……」

エルフ魔女「うん。分かった……」ビクビクッ

367: 2013/12/03(火) 13:10:10 ID:p.vQ4QAc
スッ、スタッ……

スッ、スッ……

エルフ女侯爵「あっ、そう言えばあんたあの人達の事を覚えてる?」

エルフ女侯爵「あんたが、以前マンボウを捕まえた砂浜で出会った漁師さん達」

エルフ女侯爵「あの人達から、また手紙が届いたわ」

エルフ女侯爵「また、マンボウを高値で買い取って貰いたい」

エルフ女侯爵「ここ最近、魚がなかなか取れないみたいでね」

エルフ女侯爵「あそこの漁師さん達が、かなり困ってるみたいよ」

エルフ魔女「へぇ~~っ、そうなんだ」

スッ、クルッ……

368: 2013/12/03(火) 13:10:22 ID:p.vQ4QAc
エルフ魔女「でも、私もうマンボウはいらないんだけどなぁ」

エルフ魔女「あの時のマンボウ、結局逃げられちゃったし」

エルフ魔女「思えば、何であんな不気味な魚が高値になっているんだろう?」

エルフ魔女「あれ、そんなに美味しいのかな?」

エルフ女侯爵「さぁ、分からないわ」

エルフ魔女「とりあえず、もう戻りましょ」

エルフ魔女「私の今日のお昼の予定は、お母様によるお説教等のフルコースみたいだし」

エルフ魔女「相変わらず、お母様はヒステリックでバイオレンス」

エルフ魔女「私、もっと優しい人が母親だったら良かったなぁ」ガクッ

エルフ女侯爵「ええ、そうね」

369: 2013/12/03(火) 13:10:33 ID:p.vQ4QAc
ザッザッザッ、ザッザッザッ……

ザッザッザッ、ザッザッザッ……

エルフ女侯爵(全く、どうしてこんな所まで私に似ちゃったんだか……)

エルフ女侯爵(お母様も、よくこんなクソ生意気な娘を一生懸命育ててたわね……)

ザッザッザッ、ザッザッザッ……

ザッザッザッ、ザッザッザッ……

エルフ女侯爵(私の時も、こんなんだったのかしら?……)

エルフ女侯爵(今覚えば、亡くなったお母様には本当に悪い事をしたわ……)ハァ……

ザッザッザッ、ザッザッザッ……

ザッザッザッ、ザッザッザッ……

370: 2013/12/03(火) 13:10:45 ID:p.vQ4QAc
「お母様。何してるの?」

「私、先に戻ってるよ!」

エルフ女侯爵「駄目。そこで待ちなさい!」

「なら、早く来て!」

「じゃないと私、このままどこかに逃げちゃうから!」

エルフ女侯爵「はいはい!」

エルフ女侯爵(とりあえず、後で従者A辺りにも話聞いてみよう)

エルフ女侯爵(あいつ、私が子供の時からいたんだし、何か良い方法を思い付くかもしれないからね)

ザッザッザッ、ザッザッザッ……

ザッザッザッ、ザッザッザッ……

373: 2013/12/04(水) 14:13:02 ID:ZgBoRtb2
~とある宿屋・宿泊部屋~

その日の夕方――

僧侶「は? 勇者様が行方不明?」

僧侶「一体、それはどう言う事なんですか?」

戦士「……」

僧侶「勇者様は、ちゃんとエルフの里に向かわれたのですよね?」

僧侶「一体、勇者様の身に何があったのですか?」

魔法使い「……」

老剣士「今さっき、俺の元にも魔導師から情報が入った」

老剣士「詳しい事は、俺にも解らん」

374: 2013/12/04(水) 14:13:14 ID:ZgBoRtb2
老剣士「だが、魔導師から聞かされた話によれば、最後に勇者と実際に会っていたのはたった二人」

老剣士「それについては、何か心当たりがあるのだろう? 魔法使い」

老剣士「勇者は、この近くの平原でモンスター退治をしている最中に、魔王軍の残党と交戦した」

老剣士「それを見事に単騎で殲滅し、近くにある川へと向かうまでしか足取りが掴めていないのだ」

魔法使い「……」

老剣士「それで、何かお前は心当たりはないか?」

老剣士「お前と一緒にいたもう一人は、何も知らないと言っている」

老剣士「このままでは、我らに勝ち目がなくなってしまうぞ!」

老剣士「もう既に、隣国のXXXX王国にはダークエルフの軍勢が上陸を果たしているのだ!」

魔法使い「……」

375: 2013/12/04(水) 14:13:27 ID:ZgBoRtb2
戦士「師匠。落ち着いて下さい」

戦士「魔法使いも、勇者と最後に会った後から何か様子がおかしいのです」

戦士「俺達の前でも、魔法使いは何も語ろうとはしません」

戦士「一体、何が起きているんですか?」

老剣士「知るか」

戦士「……」

僧侶「それで、何があったの?」

僧侶「このままだと、本当に危ない事になるわよ」

魔法使い「……」

スッ、コトッ……

376: 2013/12/04(水) 14:13:40 ID:ZgBoRtb2
戦士「お前、この薬を渡しに行った後からおかしくなったんだよな?」

戦士「一体、お前は何を見たんだ?」

魔法使い「……」

老剣士「魔法使い。早く答えろ!」

老剣士「さもないと、お前の立場も危うくなる!」

魔法使い「……」ウルッ

僧侶「魔法使い。何があったのか説明して」

僧侶「私は、魔法使いの味方だから」

僧侶「だから、正直に全てを答えてちょうだい」ニッコリ

魔法使い「……」ウルウルッ

377: 2013/12/04(水) 14:13:52 ID:ZgBoRtb2
魔法使い「あれは、私が勇者に例の薬を届けに行った時の事よ……」

魔法使い「その時、勇者は魔王軍の残党達と交戦をしていたわ……」ポロポロッ

僧侶「うん。それで?」

魔法使い「その時、私は恐怖を感じたの……」

魔法使い「戦闘の時に見せた勇者の知られざる一面……」

魔法使い「普段と違い、魔王軍の残党達との戦いの時は、遥かに別人だった……」

魔法使い「普段から、私達には絶対に見せなかった殺人的な衝動を、この私の前で初めて見せてきたのよ……」スッ、フキフキッ

僧侶「……」

戦士「それで、話の続きは?」

戦士「お前がこうなるって事は、勇者が相当強かったって言う事か?」

378: 2013/12/04(水) 14:14:05 ID:ZgBoRtb2
魔法使い「ええ、そうよ……」

魔法使い「あいつ、本当に強かった……」

魔法使い「この私の目の前で、魔王軍の残党達が一瞬にして斬り殺されていたのよ……」

魔法使い「更には、あいつ雷撃まで使っていた……」ウルッ

戦士「は?」

老剣士「いや、それは普通だろ」

老剣士「勇者たる者、魔法くらいは使えないといけないのだが」

僧侶「ええ、そうですね」

魔法使い「でも、私が見たのは、本当に恐ろしかった……」

魔法使い「あいつ、下手したら私の事まで頃し掛けていたわ……」ウルウルッ

379: 2013/12/04(水) 14:14:17 ID:ZgBoRtb2
魔法使い「おまけに、私、あいつに犯され掛けていたの……」

魔法使い「完全に、血塗られていたあいつとか弱い乙女がたった二人……」

魔法使い「結果は、誰が見ても絶望的だったわ……」

魔法使い「あいつ、実際に“この私の事を犯してやろうか?”って、不適な笑みを浮かべながらそう至近距離でこの私に呟いてきたのよ……」ポロポロッ

僧侶「!?」

戦士「なんだと!?」

老剣士「……すまん」

魔法使い「……」ポロポロッ

僧侶「……」スッ、ギュッ

魔法使い「……」ポロポロッ

380: 2013/12/04(水) 14:14:30 ID:ZgBoRtb2
戦士「じゃあ、お前がそうなっているのは、勇者が原因なのか?」

戦士「本当に、勇者の奴はそう言ったのか?」

魔法使い「ええ、そうよ……」ポロポロッ

僧侶「……」

戦士「だが、それは信じられねぇな」

戦士「兄貴の話だと、あいつ女以外は抱かなかったって」

老剣士「うむ。確かに!」

魔法使い「……」ポロポロッ

僧侶「でも、実際に魔法使いが犯され掛けたのは事実じゃないのかな?」

僧侶「そうじゃなきゃ、魔法使いがここまでか弱く泣いてたりはしないでしょ!」

381: 2013/12/04(水) 14:15:02 ID:ZgBoRtb2
老剣士「なぁ、魔法使い。今のは事実なのか?」

老剣士「はっきりと、今のお前はそう断言出来るのだな?」

魔法使い「はい……」ポロポロッ

老剣士「お前と一緒にいた魔術師も、そう証言した」

老剣士「その時、近くにいた一匹のケット・シーが止めに入ってくれたそうだな?」

魔法使い「はい。そうです……」ポロポロッ

僧侶「え?」

戦士「ケット・シー?」

老剣士「うむ。そうだ」

魔法使い「……」スッ、フキフキッ……

382: 2013/12/04(水) 14:15:22 ID:ZgBoRtb2
戦士「師匠。ケット・シーって何ですか?」

戦士「それ、何かの動物か何かですか?」

僧侶「……」

老剣士「ケット・シーと言うのは、猫の姿をしたモンスターだ」

老剣士「奴等は知能が高く、人間達と共生をしている」

老剣士「こいつと一緒にいた魔術師も、ケット・シーの世話をしていてな」

老剣士「そのケット・シーですらもまた、勇者と一緒に本日の昼頃に消息を絶った」

戦士「そんな」

僧侶「……」

魔法使い「……」ウルッ

383: 2013/12/04(水) 14:17:13 ID:ZgBoRtb2
魔法使い「でも、ケット・シー自体には問題はないわよ……」

魔法使い「普段は、ただの猫として活動をしているから……」

僧侶「え?」

戦士「でも、そいつ大丈夫なのか?」

戦士「勇者の身に何かあったら、今後は俺達が行かなきゃならないんだぞ」

僧侶「うん。そうだね……」

老剣士「いや、特に問題とかはない」

老剣士「ケット・シー自体は、この国では普通に世話されている」

戦士「は?」

僧侶「何故です?」

384: 2013/12/04(水) 14:17:26 ID:ZgBoRtb2
魔法使い「何故って、私の様な魔法使いにはとても馴染みがあるから……」

魔法使い「昔から、よくフクロウや黒猫等を使い魔にしてるでしょ?……」

魔法使い「元々、ケット・シーは山間部に生息をしているんだけど……」

魔法使い「人懐こいとこがあるし、人間の言葉も話せるから便利な訳……」

戦士「ああ、そうか」

僧侶「成る程ね」

魔法使い「だから、ケット・シー自体は何も問題はないの……」

魔法使い「あのケット・シーは、魔術師さんが勇者の為に貸し出した通訳の代わりだからね……」

僧侶「そう」

戦士「意外だったな」

385: 2013/12/04(水) 14:17:40 ID:ZgBoRtb2
魔法使い「とにかく、私は何も知りません……」

魔法使い「勇者と再び別れた後、ずっとここにいたんです……」

魔法使い「多分、あの魔術師さんも全く同じ事を言うでしょう……」

魔法使い「私達、下手したら勇者に犯されてましたし……」

魔法使い「未だに、勇者の事を考えたらすぐさま涙が出てきますからね……」ウルウルッ

僧侶「……」

戦士「……」

老剣士「戦士。この二人の事を見張ってろ」

老剣士「俺は、再び魔導師の元に行く」

スッ、ガタッ……

386: 2013/12/04(水) 14:17:53 ID:ZgBoRtb2
戦士「師匠。俺もここにいなきゃいけませんか?」

戦士「俺とて、詳しい情報を知りたいです!」

魔法使い「……」ポロポロッ

僧侶「戦士。ここは抑えて!」

僧侶「戦士まで何かあったら、私達どうすれば良いのよ?」

戦士「だが!」

老剣士「戦士。詳しい情報が入ったら、お前にも教えてやる!」

老剣士「それまで、お前はここでこの二人の事を見張ってろ!」

戦士「くっ……」

僧侶「戦士!」

387: 2013/12/04(水) 14:18:05 ID:ZgBoRtb2
戦士「師匠。かしこまりました……」

戦士「必ず、俺達にも情報を下さいね……」ギリッ

老剣士「ああ、了解した!」

クルッ、スタスタスタッ……

スタスタスタッ、スタスタスタッ……

ピタッ、ガチャ……

キキィーーッ、バタン……

戦士「……」

僧侶「……」

魔法使い「……」スッ、フキフキッ

388: 2013/12/04(水) 14:18:18 ID:ZgBoRtb2
僧侶「戦士。ここは我慢してね」

僧侶「戦士まで、勇者様みたいになったら、私達が困るんだから」

戦士「ああ、分かってるよ……」イラッ

魔法使い「……」

僧侶「魔法使い。今日は、私が一緒に寝てあげる」

僧侶「だから、魔法使いは安心してね」ニッコリ

魔法使い「ええ、了解したわ……」

戦士「……」

僧侶「……」

魔法使い「……」

389: 2013/12/05(木) 09:25:07 ID:BntQ5ghk
~とある城・大臣執務室~

密偵「報告。勇者XXXの所在は、未だ掴めません」

密偵「見つかったのは、魔王軍の残党達と思われる氏体ばかりのみ」

密偵「ハーフエルフの軍勢は、XXX平原にまで展開」

密偵「そこに陣を敷き、後続の部隊と合流をする模様です」

大臣「……」

王子「して、ダークエルフの軍勢は?」

王子「まだ、XXXX王国からは動かないのか?」

密偵「はい」

王子「大臣。今後どうする?」

王子「この国の守りは、一体どこまで進んでいるのだ?」

390: 2013/12/05(木) 09:25:19 ID:BntQ5ghk
大臣「王子。恐れながら申し上げる」

大臣「我が国の守りは、本当に絶望的です」

大臣「何故なら、我が国には正規の兵士が100名しかおりませぬ」

大臣「傭兵隊を合わせても、良くて200行くか行かないかの状態なのです」

王子「……」

大臣「王子。他に、何かご質問はありますかな?」

大臣「もし仮にないのでしたら、もうそろそろお開きに致しますが」

王子「いや、ある」

大臣「では、ご質問の方を」

王子「すぅ……はぁ……」

391: 2013/12/05(木) 09:25:31 ID:BntQ5ghk
王子「大臣。魔導師からの連絡はどうした?」

王子「確か、魔導師が召喚兵とやらを用意していると聞いていたのだが」

大臣「はい。確かに」

王子「それを使えば、いくらかは我らを守る壁となる」

王子「国境付近に兵を集中させ、その間に民達をどこかに逃がしてはどうか?」

密偵「……」

大臣「残念ですが、それには及びません!」

大臣「魔導師には、召喚兵を出すなと指示を出しております!」

王子「は?」

大臣「王子。私は、もう腹をくくりました!」

大臣「迫り来るエルフ達の軍勢に対して、降伏をするつもりです!」

392: 2013/12/05(木) 09:25:43 ID:BntQ5ghk
王子「お主、それは本気か?」

王子「その事についてを、父上にはもう話したのか?」

大臣「いいえ」

王子「だったら、何故もっと早くに和平の道を探らなかった!?」

王子「そなたが父上にもっと早くに進言さえすれば、状況は少しは変わったはずなのに!」

大臣「申し訳ござりませぬ!」ペコッ

密偵「……」

王子「大臣。私は、つくづく失望した!」

王子「そなたは、何年この国に仕えているのだ!?」

大臣「……」

393: 2013/12/05(木) 09:25:56 ID:BntQ5ghk
「大臣。余からの質問にも答えよ!」

「たとえ、降伏をしたとしても、あの女エルフがそれを受け入れるとは思えぬが!」

王子「!?」クルッ

大臣「陛下?」スッ、ガタッ

密偵「……」クルッ、ペコッ

スッ、ガチャ……

スタスタスタッ、バタン……

王子「父上、今の話をお聞きになっておられたのですか?」

王子「さすがに、私も父上と同意見です」

国王「うむ。そうだ」

394: 2013/12/05(木) 09:26:09 ID:BntQ5ghk
国王「大臣。何故、降伏をする?」

国王「もし仮に、我らがエルフの前に降伏をしたとして、今後の我らはどうなるのだ?」

王子「……」

大臣「はっ、恐れながら申し上げます!」

大臣「現段階の時点で、今の我らに勝ち目はありません!」

大臣「何故なら、勇者XXXが消息を絶ちました!」

大臣「周辺諸国からも、我が国の民達の受け入れや救援の兵を出す事すら全て拒否されたからです!」

国王「……」

王子「なら、何故もっと早くに和平の道を探らなかった?」

王子「例の件が発覚してから、そなたは何をしておったのだ?」

395: 2013/12/05(木) 09:26:20 ID:BntQ5ghk
大臣「王子。私は、これまでの所何もしてきませんでした」

大臣「所詮、エルフの言う戯言など聞く必要はない」

大臣「あの女エルフが生きている事すら、単なる噂話でしかないと思っていたからです」

大臣「実際、あの女エルフが再び私の前に姿を現すまでは、適当にあしらっておけば良いと考えていたのです」

王子「……何?」

国王「大臣。そう早まった真似はするな!」

国王「我らが、エルフに降伏をする必要はない!」

国王「所詮、エルフなど奴隷にしておけば良いのだ!」

国王「周辺諸国も、本心は我らと全く同じであろう!」

大臣「……」

396: 2013/12/05(木) 09:26:32 ID:BntQ5ghk
王子「ですが、実際にエルフによって滅ぼされた国があるのですよ!」

王子「それについては、一体どう説明するのですか?」

国王「……」

王子「私は、もっと早くに和平の道を探っておけば良かったと考える!」

王子「父上達は、何故エルフなどに手を出したのですか?」

王子「過去の先人達がエルフなどに手を出さなければ、こんな事態にはならなかったはずです!」

王子「エルフ達は、実際に我が国に対して兵を出しているのですよ!」

国王「……」

大臣「……」

王子「……」

397: 2013/12/05(木) 09:26:45 ID:BntQ5ghk
大臣「王子。もう諦めるしかありません!」

大臣「我が国は、完全に孤立しているのです!」

大臣「あの女エルフさえ生きていなければ、こんな事態にはならなかった!」

大臣「あの女エルフさえこの世にいなければ、どれだけ幸せな事でしょう!」

王子「……」ギリッ

国王「大臣。それについては私も同意見だ!」

国王「あの女エルフは、本当に生かしてはおけぬ!」

国王「あの時、どこぞの馬鹿貴族が保護しなければ……」

国王「私の父や母も、あの女エルフに殺されたのだぞ!」

王子「!?」キョトン

398: 2013/12/05(木) 09:26:56 ID:BntQ5ghk
大臣「陛下。その話はなりませぬ!」

大臣「また、陛下のお体に障りますぞ!」

国王「ああ、そうだったな……」

王子「父上。今のどう言う事ですか?」

王子「父上達は、以前からあの女エルフとは顔見知りなのですか?」

国王「ああ、そうだ……」

王子「……」

大臣「王子。もう宜しいでしょう?」

大臣「これ以上、陛下の口からお話させる事をお止め下さいませ」

王子「ああ、すまぬ」

399: 2013/12/05(木) 09:28:26 ID:BntQ5ghk
国王「大臣。絶対に、エルフの前には降伏をするな!」

国王「明日の朝までに、何としても勇者を探し出すのだ!」

国王「もしそれが無理なら、エルフと刺し違える覚悟で戦え!」

国王「この際、召喚兵だか何だか知らんが、それを使ってでも防ぎきれ!」

大臣「はっ!」ビシッ

国王「……」

クルッ、ガチャ……

スタスタスタッ、バタン……

大臣「……」

王子「……」

400: 2013/12/05(木) 09:28:56 ID:BntQ5ghk
大臣「密偵。魔導師の元に迎え」

大臣「今さっきの陛下のお言葉を、しかと伝えるのだ」

密偵「はっ!」ペコッ

王子「……」

大臣「王子。あなたも部屋でお休み下さい」

大臣「この件につきましては、我らが対処致しますので」

王子「ああ、了解した……」

スッ、ムクッ……

スタスタスタッ、ピタッ……

スッ、ガチャ……

401: 2013/12/05(木) 09:29:08 ID:BntQ5ghk
大臣「王子。早くお部屋にお戻り下さい」

大臣「それと、この件につきましては誰にも他言せぬ様に」

王子「……」

大臣「王子。どうされましたか?」

大臣「まだ、何かあるのですか?」

王子「いや、ない……」

密偵「……」

王子「大臣。気を付けてな」

王子「それだけは、私から言っておく」

王子「では」

402: 2013/12/05(木) 09:29:18 ID:BntQ5ghk
クルッ、スタスタスタッ……

スタスタスタッ、スタスタスタッ……

スッ、バタン……

大臣「……」

大臣「……」

大臣「……」

大臣「……」

スッ、ストン……

大臣「本当に、我らには手はない……」

大臣「一体、どうしたら良いのだ?」

403: 2013/12/06(金) 14:40:48 ID:b9S1OGK.
~外来用病院・病室~

勇者「……」

勇者「……」

勇者「……」

勇者「……」

巨大猫「……」

勇者「……」

勇者「……」

勇者「……」パチッ

勇者「……」シャキン

404: 2013/12/06(金) 14:41:01 ID:b9S1OGK.
勇者「……」

勇者「……」

勇者「……」

勇者「……」

巨大猫「……」チラッ

勇者「……」

勇者「……」

勇者「……」

勇者「……」

巨大猫「うむ。起きたみたいじゃな」

405: 2013/12/06(金) 14:41:33 ID:b9S1OGK.
勇者「巨大猫。ここは?……」

勇者「まだ、俺は氏んでいないんだな?……」

巨大猫「ああ、そうじゃ」

勇者「と言う事は、ここはエルフの里なのか……」

勇者「俺の治療、何も問題はなかったんだな?……」

巨大猫「ああ、まあな」

勇者「……」

巨大猫「……」

スッ、ムクッ……

トントン、ガチャ……

406: 2013/12/06(金) 14:42:05 ID:b9S1OGK.
エルフ看護師「失礼します」

エルフ看護師「勇者様。本日の夕食をお持ち致しました」

巨大猫「ああ、すまぬ」

勇者「……」

スタスタスタッ、スタスタスタッ……

スタスタスタッ、ピタッ……

スッ、コトッ……

エルフ看護師「勇者様。お加減の方は宜しいですか?」

エルフ看護師「もうお起きになられても、大丈夫なのですか?」

勇者「……巨大猫」

407: 2013/12/06(金) 14:42:27 ID:b9S1OGK.
巨大猫「彼女は、夕食を食えるかどうかを聞いておる」

巨大猫「もし仮に、そなたが食えないのなら、このまま下げてしまうとな」

勇者「ああ、大丈夫だ」

巨大猫「看護師。勇者は、大丈夫だと申しておる」

巨大猫「それと、本日の夕食のメニューは一体何なのじゃ?」

勇者「……」

エルフ看護師「本日のメニューは、人間の方でも食べれる様にアレンジがされています」

エルフ看護師「私達は、基本的に肉食は好みません」

エルフ看護師「ですから、勇者には普段から人間の方達が食べられているメニュー」

エルフ「主に、貧しい農村部と同じメニューにしてあります」

408: 2013/12/06(金) 14:42:39 ID:b9S1OGK.
巨大猫「勇者。そなたの本日の食事はかなり質素じゃな」

巨大猫「パン、豆入りスープ、チーズ、ワイン」

巨大猫「普段から、そなたはこの様な食事を取っておるのか?」

巨大猫「はっきり言って、まだ妾の方が比較的に良い食事をしておるぞ」

勇者「……」ガクッ

エルフ看護師「……」

巨大猫「ん? どうした?」

巨大猫「やっぱり、そなたの本日のメニューを変えてほしいのか?」

勇者「ああ、そうだ……」

エルフ看護師「……」

409: 2013/12/06(金) 14:43:20 ID:b9S1OGK.
巨大猫「看護師。すまぬが、本日のメニューを変えてはくれぬか?」

巨大猫「一応、自分は魔王を討ち取ったのじゃから、少しくらいは贅沢がしたい!」

巨大猫「ここ最近、勇者はろくな物を食ってないそうでな!」

巨大猫「だから、せめて最後くらいは豪華な食事をしてみたいそうじゃ!」

エルフ看護師「はい。かしこまりました」

スッ、コトッ……

クルッ、スタスタスタッ……

スタスタスタッ、スタスタスタッ……

ピタッ、クルッ……

スッ、バタン……

410: 2013/12/06(金) 14:43:32 ID:b9S1OGK.
巨大猫「勇者。本日の食事は、作り直してくれるそうじゃ」

巨大猫「良かったのぅ、あんな質素な食事ではなくて」

勇者「ああ、まあな……」

巨大猫「一体、次は何を持ってくるのじゃろう?」

巨大猫「やはり、ついさっきのメニューに何品か追加したくらいのメニューかもしれぬ」

勇者「……」ウルッ

スッ、フキフキッ……

巨大猫「勇者。大丈夫か?」

巨大猫「まだ、そなたはやれるのか?」

勇者「ああ、大丈夫だ……」ウルウルッ

411: 2013/12/06(金) 14:43:51 ID:b9S1OGK.
巨大猫「なら、こんな所で泣くでない」

巨大猫「そなたは、仮にもこの世界を救った勇者なのじゃぞ」

勇者「……」ポロポロッ

巨大猫「そなた、まさか挫折し掛けておるのか?」

巨大猫「そなたが挫折したら、一体どれだけの人間達が無惨に氏んでいくかが分かっておるのか?」

勇者「ああ、分かってるよ……」ポロポロッ

巨大猫「なら、こんな所で泣くでない」

巨大猫「そなたは、この世界を救った勇者なのじゃ」

巨大猫「そなたの体、どこも異状はない」

巨大猫「少し休めば、すぐに良くなるそうじゃ」

412: 2013/12/06(金) 14:44:02 ID:b9S1OGK.
勇者「なら、早くここを出ないとな……」

勇者「俺の武器とかは、一体どこにある?……」スッ、フキフキッ

巨大猫「ここの警備室じゃ」

勇者「警備室? かなり厄介だな……」

勇者「つまり、今の俺はエルフ達の監視下に置かれていると言う訳なんだな?……」

巨大猫「ああ、そうじゃ」

勇者「くそっ、しくじったか……」

勇者「やはり、あそこで装備を整えた方が良かったか……」

勇者「そしたら、あの女エルフにも負ける事はなかった……」

勇者「魔王軍の残党達がいなかったら、確実に勝っていただろう……」

413: 2013/12/06(金) 14:45:40 ID:b9S1OGK.
巨大猫「勇者。今後どうするのじゃ?」

巨大猫「そなたの見張りは、最低でも10名以上はいる」

巨大猫「まず、ここの病室の前に2人」

巨大猫「出入り口と廊下には、東西に別れて1人ずつ」

巨大猫「この建物の敷地内には、小規模ながらも兵士詰め所があるぞ」

巨大猫「ここは、外部から来た病人達が収容される病院なのじゃ」

勇者「……」

スッ、クルッ……

勇者「よっと……」

スッ、スタッ……

414: 2013/12/06(金) 14:45:53 ID:b9S1OGK.
スタスタスタッ、スタスタスタッ……

スタスタスタッ、ピタッ……

ガチャ、ヌッ……

「おや? どうかしましたか?」

「もう、出歩いても宜しいのですか?」

勇者「いや、ちょっとトイレに……」

「トイレでしたら、室内にございます」

「そこに置いてある木桶をご使用下さい」

勇者「はい。すみません……」

スッ、バタン……

415: 2013/12/06(金) 14:46:05 ID:b9S1OGK.
勇者「巨大猫。今の聞いてたか?……」

勇者「俺、通訳なしで会話した様な……」

巨大猫「ああ、したな」

勇者「……」

巨大猫「……」

スッ、ガチャ……

エルフ医師「勇者様。どうかしましたか?」

エルフ医師「お加減の方は、もう良いみたいですね」ニッコリ

勇者「ええ、まぁ……」

巨大猫「おやおや」

416: 2013/12/06(金) 14:46:24 ID:b9S1OGK.
エルフ医師「勇者様。もうすぐ夕食の時間です」

エルフ医師「勇者様は、室内で待機していて下さい」ニッコリ

勇者「あっ、はい……」

スッ、バタン……

勇者「……」

巨大猫「……」

スッ、ガチャ……

エルフ医師「ちなみに、私はあなたの言葉は分かります」

エルフ医師「ですから、お気軽に私に声を掛けて下さいね」ニッコリ

スッ、バタン……

417: 2013/12/06(金) 14:46:35 ID:b9S1OGK.
勇者「……」

巨大猫「……」

勇者「……」

巨大猫「……」

勇者「……」

巨大猫「……」

勇者「今さっきの、聞かれてたのか?……」

勇者「もし仮に、そうだったらかなりヤバイな……」

巨大猫「ああ、そうかもな……」

勇者「……」ガクッ

418: 2013/12/07(土) 10:04:41 ID:W5GjQdUE
~外来用病院・廊下~

数分後――

スッ、ガチャ……

警備兵「ん?……」チラッ

スタスタスタッ、スタスタスタッ……

巨大猫「……」

スッ、バタン……

警備兵「何だ、勇者様と一緒にいた巨大猫か」

警備兵「本当に、デカイ猫だな」

警備兵2「ああ、そうだな」

419: 2013/12/07(土) 10:04:54 ID:W5GjQdUE
スタスタスタッ、スタスタスタッ……

スタスタスタッ、ピタッ……

警備兵「おっ、止まった」

警備兵「何してんだ? あいつ」

警備兵2「さぁ」

巨大猫「……」

キョロキョロ、キョロキョロ……

「おやっ、どうしたんだい?」

「今後は、君がトイレに行きたいのかな?」

巨大猫「ああ、そうじゃ」

420: 2013/12/07(土) 10:05:05 ID:W5GjQdUE
「猫用のトイレは、建物の外にある家畜収容小屋に行かないとないよ」

「君、勇者様の側に居なくても良いの?」

「勇者様、通訳がいないとキツイのに」

「君がいなきゃ、僕がしないといけなくなるじゃんか」

巨大猫「ああ、そうじゃな」チラッ

スタスタスタッ、ピタッ……

巨大猫「……」ジーーッ

エルフ医師「……」ジーーッ

巨大猫「……」ジーーッ

エルフ医師「……」ジーーッ

421: 2013/12/07(土) 10:05:18 ID:W5GjQdUE
「先生。どうかされたのですか?」

「何さっきから、猫と見つめあっているんですか?」

巨大猫「……」ジーーッ

エルフ医師「……」ジーーッ

「先生。ここ病院ですよ」

「次の患者さんが、先生の事をお待ちしておられるのですからね」

巨大猫「……」ジーーッ

エルフ医師「……」ジーーッ

警備兵「……」ジーーッ

警備兵2「……」ジーーッ

422: 2013/12/07(土) 10:05:30 ID:W5GjQdUE
エルフ医師「はぁ、分かったよ……」

エルフ医師「君が、トイレを済ますまでだからね……」

巨大猫「ああ、了解した」

スタスタスタッ、ピタッ……

エルフ看護師「先生。早くして下さい」

エルフ看護師「次の患者さん、お待ちしてますよ」

エルフ医師「はいはい……」

クルッ、スタスタスタッ……

巨大猫「ああ、待て。家畜収容小屋ってどこなのじゃ?」

巨大猫「妾、早くトイレに行きたいのじゃが」

423: 2013/12/07(土) 10:05:42 ID:W5GjQdUE
警備兵「トイレなら、俺が連れてってやる」

警備兵「こっちだ。巨大猫」

巨大猫「おおっ、すまんな」クルッ

スタスタスタッ、スタスタスタッ……

警備兵「すまん。ちょっと、こいつに付き合ってくる」

警備兵「ここ頼むぞ」

警備兵2「ああ、早めにな」

警備兵「ああ」

スタスタスタッ、スタスタスタッ……

スタスタスタッ、スタスタスタッ……

424: 2013/12/07(土) 10:05:55 ID:W5GjQdUE
警備兵2「全く、これだからケット・シーは」

警備兵2「ケット・シーって、あそこまでデカクなるものなのか?」

警備兵2「まぁ、トイレくらいならすぐに戻るだろ」

警備兵2「そうだよな。警備兵3」

「ああ、全くだ」

スタスタスタッ、ピタッ……

警備兵3「それで、勇者の状態は?」

警備兵3「勇者は、まだ室内にいるのか?」

警備兵2「ああ、そうだ」

スッ、ガチャ……

425: 2013/12/07(土) 10:06:07 ID:W5GjQdUE
警備兵2「……」

警備兵3「……」

勇者「……」

警備兵2「……」

警備兵3「……」

勇者「……」

スッ、バタン……

警備兵3「大丈夫。まだいるみたいだ」

警備兵3「あいつ、かなり若いんだな」

警備兵2「ああ、そうだな」

426: 2013/12/07(土) 10:06:27 ID:W5GjQdUE
スタスタスタッ、スタスタスタッ……

スタスタスタッ、スタスタスタッ……

ピタッ、ピタッ……

エルフ看護師2「すみません。勇者様のお夕食をお持ちしました」

エルフ看護師2「つい先程、勇者様がお口に会わないと申されたみたいですので」

警備兵2「ああ、通れ」

スッ、ガチャ……

エルフ看護師2「失礼します」

エルフ看護師2「勇者様。ご夕食をお持ち致しました」

勇者「え?」ムクッ

427: 2013/12/07(土) 10:06:36 ID:W5GjQdUE
警備兵2「あっ、すまん。今の勇者は、通訳がないと駄目なんだ!」クルッ

警備兵2「そこの机の上に、置いといてやれ!」

エルフ看護師2「え? ああ、はい……」

エルフ看護師3「……」

スタスタスタッ、スタスタスタッ……

スタスタスタッ、スタスタスタッ……

ピタッ、ピタッ……

スッ、コトッ、コトッ……

勇者「……」

警備兵2「……」ジーーッ

428: 2013/12/07(土) 10:08:21 ID:W5GjQdUE
エルフ看護師2「勇者様。こちらに、本日の夕食を置いておきますね」

エルフ看護師2「それでは、私達は失礼致します」ペコッ

エルフ看護師3「……」ペコッ

勇者「……」

クルッ、クルッ……

スタスタスタッ、スタスタスタッ……

スタスタスタッ、スタスタスタッ……

スタスタスタッ、スタスタスタッ……

スッ、バタン……

警備兵2「……」クルッ

429: 2013/12/07(土) 10:08:33 ID:W5GjQdUE
警備兵3「あいつ、さっきより良いメニューにして貰ったな」

警備兵3「さっきのメニュー、パンとチーズとスープとワインぐらいだったよな?」

警備兵2「ああ、まあな」

警備兵3「それに比べて、今後のメニューはパンとチーズとニシン3匹」

警備兵3「後は、卵6つにポタージュとクルミと沢山のビール」

警備兵3「でも、これは確か人間の修道士か何かが普段食っていた食事のはず」

警備兵3「勇者の奴、これで満足するのだろうか?」

警備兵2「さぁな」

警備兵3「……」クルッ

警備兵2「おっ……」

430: 2013/12/07(土) 10:08:48 ID:W5GjQdUE
スタスタスタッ、スタスタスタッ……

スタスタスタッ、スタスタスタッ……

警備兵「……」

スタスタスタッ、スタスタスタッ……

スタスタスタッ、スタスタスタッ……

ピタッ、ピタッ……

巨大猫「……」

警備兵「ふぅ……」

警備兵2「お前、早かったな」

警備兵2「もう、済ませたのか?」

431: 2013/12/07(土) 10:08:59 ID:W5GjQdUE
巨大猫「ああ、そうじゃよ」

巨大猫「妾の足は、結構早いからな」

警備兵2「ああ、そうか」

巨大猫「して、勇者は?」

巨大猫「勇者は、まだ中にいるのか?」

警備兵2「ああ、まあな」

警備兵3「今さっき、新たなメニューが届いたぞ」

巨大猫「うむ。そうか」

スッ、ガチャ……

スタスタスタッ、スタスタスタッ……

432: 2013/12/07(土) 10:09:10 ID:W5GjQdUE
警備兵2「巨大猫。気を付けてな」

警備兵2「勇者の奴、お前がいなくて困ってたから」

巨大猫「ああ、申し訳なかった」ピタッ

警備兵「警備兵3。お前、階段の方に戻れ」

警備兵「次の交代まで、まだ時間がある」

警備兵3「ああ、了解した」

スッ、バタン……

クルッ、スタスタスタッ……

スタスタスタッ、スタスタスタッ……

ピタッ、スタッ……

433: 2013/12/08(日) 10:59:06 ID:FB5npAt.
~とある宮殿・女王の執務室~

衛兵隊長「報告。ハーフエルフの軍勢が、XXX王国領XXX平原に到達しました」

衛兵隊長「ダークエルフの軍勢は、XXXX王国領XX平原に展開」

衛兵隊長「明日の朝、双方共にXXX王国に対して攻撃を仕掛けます」

衛兵隊長「本日の昼頃、女侯爵XXXXXX様がお連れになられました勇者XXXに関しては、全く動きはありません」

エルフ王女「……」

エルフ女王「そう。了解したわ」

エルフ女王「意外に、大人しくしてるのね」

エルフ女王「あの子の話だと、勇者XXXはXXX王国が差し向けてきた刺客」

エルフ女王「それにしては、随分と静かにしてるみたいね」

434: 2013/12/08(日) 10:59:19 ID:FB5npAt.
エルフ女王「さて、今後あの子はどう動くのかしら?」

エルフ女王「あの子、もしかしたら大陸全土をエルフだけの土地にするつもりなのかしら?」

エルフ女王「もし仮に、本当にそうだったとしたら、かなり面白いわね!」

エルフ女王「今まで、私達エルフの事を好き放題してくれたんだし、あの子がそれを望むのなら私もあの子の事をとことん支援するわ!」ニヤリ

衛兵隊長「……」

エルフ王女「衛兵隊長。また何か分かりましたら、すぐにご連絡を!」

エルフ王女「今の陛下は、かなりあの子に毒されています!」

エルフ王女「陛下が、また変な気を起こされる前よりも先に、この私にまでご連絡の方を下さいね!」

エルフ王女「今後はそうして頂かないと、陛下がまたあの子から変な要求等を飲まされてしまいますから!」

衛兵隊長「はっ!」ペコッ

435: 2013/12/08(日) 11:00:21 ID:FB5npAt.
エルフの里が世界中の国や地域等に対して、宣戦布告や警告等を発してから早数年。

XXX王国の大臣は、何の対策もしていなかった。

「所詮、エルフの言う戯言など聞く必要などない!」

XXX王国以外の国や地域等も、XXX王国と同様の態度等を取っていた。

だが、そんな彼等の思いも虚しく、戦場ではある一人の女エルフが陣頭指揮を取る。

皆、その一人の女エルフの名を聞いた瞬間から驚きを隠せず、次々と宣戦布告をされた国や地域等はエルフ達によって侵略をされていく。

そして、次が自分達の番だと気づいた時には、もう完全に手遅れな状態。

XXX王国の大臣は全てを悟り諦め、過去に自身や自身の先人達が犯してきた罪を悔いながら、今宵は眠れぬ夜を過ごすのだった。

436: 2013/12/09(月) 17:44:31 ID:aePxa9Rw
~とある城下町・城門~

深夜――

カーーン、カーーン、カーーン……

カーーン、カーーン、カーーン……

老剣士「全く、勇者の奴はどこをほつき歩いているのだ?」

老剣士「このままでは、確実に取り返しのつかない事になるぞ」

魔導師「ああ、全くだ」

老剣士「魔導師。召喚兵達の用意は?」

老剣士「もう準備の方は、終えたのか?」

魔導師「ああ、まあな」

437: 2013/12/09(月) 17:44:50 ID:aePxa9Rw
老剣士「しかし、今回の件はかなり妙だな」

老剣士「ここから、エルフの里までには大分掛かるはず」

老剣士「勇者には、予め監視の目ををつけておいたはずだ」

老剣士「それなのに、何故勇者は姿を消したのだ?」

魔導師「さあな」

大臣「……」

老剣士「その上、こんな時間なのにも関わらず、何故大臣がここに?」

老剣士「そなた、まだ午前三時なのだぞ」

老剣士「こんな所で油打ってないで、早く城に戻れ」

老剣士「そなたがいなければ、城の業務が滞るではないか」

438: 2013/12/09(月) 17:45:08 ID:aePxa9Rw
大臣「老剣士XXX。私が、ここにいて何か悪いか?」

大臣「私は、この国の政を取り仕切る大臣だ」

大臣「エルフ達は、いつここへとやって来るかが全く分からない」

大臣「だからこうして、私はこの町の警備を寝る間を惜しんでやっているのだ」

老剣士「……は?」

大臣「……」

魔導師「老剣士よ。今は、そっとしといてやれ」

魔導師「今の大臣は、とても正気ではない」

魔導師「思えば、あの時の夜もこんな感じだった」

魔導師「我らの故郷が、ハーフエルフなんぞの手に陥ちた時も、こんな感じだったな」

439: 2013/12/09(月) 17:45:20 ID:aePxa9Rw
老剣士「お前、まだ覚えておるのか?」

老剣士「あの時の戦は、かなり凄まじかった」

魔導師「ああ、そうだったな」

老剣士「思えば、あれはお前の父上が居たから出来た事だろ」

老剣士「お前の父上は、あの憎きハーフエルフと戦って氏んだ」

老剣士「あ奴が率いていた私兵1万を一瞬の内にして撃破していき、すぐさまあの憎きハーフエルフの事を牽制」

老剣士「結局、どう言う訳かお前の父上もあの戦いで氏んだ」

老剣士「世間からは、お前の父上は英雄として祭り上げられているではないか」

魔導師「ああ、そうだったな……」

大臣「……?」

440: 2013/12/09(月) 17:45:37 ID:aePxa9Rw
魔導師「老剣士XXX。そう言えば、騎士XXはどうした?」

魔導師「騎士XXは、そなたにとっては兄的な存在」

魔導師「彼がいてくれれば、少しは力にはなってくれるはず」

魔導師「彼とは、まだ連絡を取ってはいるのか?」

老剣士「……」

魔導師「老剣士XXX。どうかしたか?」

魔導師「まさか、この俺同様に体でも悪くしたか?」

老剣士「いや、違う……」

魔導師「では、一体何なのだ?」

魔導師「あの賢者の時の様に、もう既にあの憎きハーフエルフによって命を絶たれた後だったのか?」

441: 2013/12/09(月) 17:45:50 ID:aePxa9Rw
老剣士「魔導師XX。それ以上は聞くな!」

老剣士「騎士XXは、もうこの世にはいないのだ!」ギリッ

老剣士「これについては、あの憎きハーフエルフは全く関係はしてはいない!」

老剣士「それとは、また別のモンスターの手によって、見るも無惨なまでに殺害されてしまった後なのだ!」

魔導師「!?」

大臣「……」

老剣士「だから、もうこの話はなしだ!」

老剣士「騎士XXの敵は、必ずこの俺が取ってみせる!」

魔導師「ああ、了解した」

老剣士「……」

442: 2013/12/09(月) 17:46:04 ID:aePxa9Rw
大臣「それで、召喚兵とやらは一体どこに?」

大臣「もう既に、そなたは召喚をし終えた後なのか?」

魔導師「ああ、まあな」

大臣「なら、早く私に見せてくれ」

大臣「この目で、ちゃんとその存在を確認せん限りは、そなたの言う事をすぐには信じれない」

魔導師「ああ、了解した」

スッ、スチャ……

魔導師「はっ!」ブワッ

スポポポン、スポポポン……

スッ、スタタタッ……

443: 2013/12/09(月) 17:46:16 ID:aePxa9Rw
召喚兵長「総員、整列!」

召喚兵長「大臣様に、敬礼!」

召喚兵達「……」

シュバババッ、シュバババッ……

魔導師「……」

老剣士「……」

大臣「……」

魔導師「大臣。気が済んだか?」

魔導師「これで、そなたも少しくらいは安心したのだろう」

老剣士「ああ、そうだろうな」

444: 2013/12/09(月) 17:46:31 ID:aePxa9Rw
大臣「魔導師。たったこれだけか?」

大臣「そなた、千人は出せるはずではなかったのか?」

魔導師「……」

老剣士「大臣。そなた、何を勘違いしておる?」

老剣士「こ奴の出した召喚兵は、ただの一部だけじゃ!」

老剣士「残りは、この城門の向こうで待機しておる!」

老剣士「この場で、千人も出したのなら我らは窮屈ではないか?」

大臣「おおっ、そう言う事なのか……」

老剣士「大臣。そなた、少し休まれよ」

老剣士「そなた、今宵は一睡もしていないのだろ?」

445: 2013/12/09(月) 17:47:03 ID:aePxa9Rw
大臣「いや、それには及ばん!」

大臣「たとえ、私が今一睡をしようが事態は早々と変わらんのだ!」

大臣「あの時、我らがまともな対応さえ取っていれば!」

大臣「この国もまた、あの憎きハーフエルフの手によって、陥落をしてしまうのだ!」ウルッ

老剣士「大臣!」

魔導師「……」

老剣士「大臣。滅多な事を言うではない!」

老剣士「そなたが、ここで気弱になったら、この国の民達は一体どうなるのだ?」

老剣士「早く、早く正気に戻られよ!」

老剣士「ここ最近のそなたは、かなり色々とおかしいぞ!」

446: 2013/12/09(月) 17:48:45 ID:aePxa9Rw
大臣「なら、何故どの国も助けんのだ?」

大臣「我らは、このまま滅ぶしかないのではないか?」

大臣「勇者も勇者で、完全に消息を経った!」

大臣「今の我らには、本当に何も打つ手はない!」ポロポロッ

老剣士「……」

魔導師「……」

老剣士「なら、何故もっと早くに手を打たんかった?」

老剣士「そなたが変われば、この様な事態にはならなかったはずじゃ!」

大臣「くっ……」ポロポロッ

魔導師「……」スッ

447: 2013/12/09(月) 17:49:02 ID:aePxa9Rw
老剣士「大臣。そなた、どうする気じゃ?」

老剣士「そなたは、今後どうするつもりなのじゃ?」

大臣「……」ポロポロッ

老剣士「このまま行くと、確実にこの国は滅ぶ!」

老剣士「あの憎きハーフエルフの手によって、完膚なきなまでに叩きのめされてしまう!」

大臣「……」ポロポロッ

魔導師「そなた、もしや泣く事しか出来ないのか?」

魔導師「そんな事、赤子だけでも出来てしまうぞ」

大臣「……」スッ

フキフキ、フキフキ……

448: 2013/12/09(月) 17:49:20 ID:aePxa9Rw
老剣士「大臣。ここで、気を落とすな」

老剣士「そなたが弱気になれば、確実にこの国は負ける」

老剣士「魔導師。敵の動きは?」

老剣士「まだ、敵は動かないのだな?」

魔導師「ああ、まあな」

大臣「……」

老剣士「なら、俺は大臣を今から城にまで送ってくる」

老剣士「ここに、大臣を置いていたとしても邪魔なだけだ」

老剣士「下手したら、今の我らの話を民達に聞かれたかもしれん」

老剣士「民達には、まだこの件については内密にしておかなければならないのだからな」

449: 2013/12/09(月) 17:49:31 ID:aePxa9Rw
魔導師「ああ、了解した」

魔導師「大臣の送迎、しっかりと頼む」

魔導師「ここは、俺に任せて大臣を送ってこい」

魔導師「何かあったら、すぐに魔法通信で連絡を取る」

老剣士「ああ、了解した」

大臣「……」

老剣士「大臣。ほら、行くぞ」

老剣士「ここにおれば、民達の邪魔となる」

大臣「……」

スッ、ギュッ……

450: 2013/12/09(月) 17:49:50 ID:aePxa9Rw
老剣士「大臣。早く城に戻るぞ」

老剣士「さぁ、早く歩け」

大臣「……」クルッ

老剣士「では、後の任せる」

老剣士「この俺もまた、すぐにここにまで戻ってくるからな」

魔導師「うむ。気を付けてな」

老剣士「ああ」

大臣「……」

クルッ、スタスタスタッ……

スタスタスタッ、スタスタスタッ……

451: 2013/12/10(火) 09:35:45 ID:Ot/2Pffg
~とある城下町・民家~

同時刻――

魔術師「……」

魔術師「……」

魔術師「……」

魔術師「……」

魔術師「……」

魔術師「……」

魔術師「……」パチッ

魔術師「……」シャキン

452: 2013/12/10(火) 09:35:57 ID:Ot/2Pffg
魔術師「……」

魔術師「……」

魔術師「……」

魔術師「……」

魔術師「……」ムクッ

魔術師「ふぁ~~っ……」

魔術師「……」ウルッ

魔術師「……」ポロポロッ

スッ、フキフキ……

スッ、ポイッ……

453: 2013/12/10(火) 09:36:08 ID:Ot/2Pffg
トントン、トントン……

スッ、ガチャ……

傭兵隊長「……」

魔術師「……」クルッ

傭兵隊長「何だ、起きてたのか」

傭兵隊長「使い物にならなかったら、そのまま皆で犯してやろうと思ってたのに」

魔術師「……変O」

傭兵隊長「悪かったな」

スッ、バタン……

スタスタスタッ、ピタッ……

454: 2013/12/10(火) 09:36:20 ID:Ot/2Pffg
魔術師「それで、こんな夜中に何のご用で?」

魔術師「まさか、そこまで女に飢えていたとか?」

傭兵隊長「……」

魔術師「隊長。そんなんだから、奥さんに逃げられちゃうんですよ」

魔術師「隊長の前の奥さん、晴れて無事に天国にまで逃げる事が出来たんじゃないですか」

傭兵隊長「……」

スッ、ストン……

傭兵隊長「……お前、今日出れるか?」

傭兵隊長「勇者の奴、下手したらしくじったかもしれん」

魔術師「え?」

455: 2013/12/10(火) 09:36:33 ID:Ot/2Pffg
魔術師「隊長。それどう言う意味ですか?」

魔術師「まさか、本当にあの勇者様がしくじったのですか?」

傭兵隊長「ああ、多分な」

魔術師「そんな……」

傭兵隊長「お前、あいつからの連絡はないのか?」

傭兵隊長「一体、何の為に巨大猫が付いていってるんだよ」

魔術師「……すみません」

傭兵隊長「……」

スッ、ゴクゴクッ……

スッ、コトッ……

456: 2013/12/10(火) 09:36:46 ID:Ot/2Pffg
傭兵隊長「とりあえず、今日は体調も良いみたいだし、このまま出ろよ!」

傭兵隊長「下手したら、マジでこの国が飛ぶかもしれん!」

傭兵隊長「どうやら、もう既にハーフエルフの軍勢はXXX平原にまで到達した!」

傭兵隊長「隣国のXXXX王国領XX平原からは、ダークエルフの軍勢が接近してきている!」

魔術師「!?」

傭兵隊長「だから、お前もすぐに準備しろ!」

傭兵隊長「ウチは、もうお前以外には魔術師は一人もいない!」

傭兵隊長「ほらっ、さっさと着替えて本部に行け!」

傭兵隊長「もう敵は、すぐそこにまで来てるんだぞ!」

魔術師「はっ、はい……」ビシッ

457: 2013/12/10(火) 09:36:57 ID:Ot/2Pffg
トントン、トントン……

スッ、ガチャ……

傭兵「隊長。大変です!」

傭兵「大臣様が、トチ狂いました!」

傭兵「今さっきから、大臣様が何か大声で泣き言を呟いております!」

傭兵「複数の民達にも、大臣様の泣き言が聞かれたかもしれません!」アセアセッ

傭兵隊長「何!?」クルッ

魔術師「……」

傭兵「隊長。如何致しますか?」

傭兵「このままでは、本当にこの国は陥落をしてしまいますよ!」アセアセッ

458: 2013/12/10(火) 09:37:08 ID:Ot/2Pffg
傭兵隊長「傭兵。すぐに、大臣様を黙らして来い!」

傭兵隊長「大臣様は、本当にどこか頭がおかしくなってきている!」

傭兵隊長「魔導師様にも、この件をすぐに報告!」

傭兵隊長「さっさと、大臣様を城にまで送ってこい!」

傭兵「はっ!」ビシッ

クルッ、スタタタタタッ……

スタタタタタッ、スタタタタタッ……

傭兵隊長「……」

魔導師「……」

スッ、ムクッ……

459: 2013/12/10(火) 09:37:23 ID:Ot/2Pffg
魔術師「隊長。着替えたいんで、先に戻っててくれませんか?」

魔術師「私、一応はまだ年頃の女の子なので」

傭兵隊長「ああ、そうか」

クルッ、スタスタスタッ……

ピタッ、スッ、バタン……

傭兵隊長「……」

魔術師「……」

傭兵隊長「……」

魔術師「……」

傭兵隊長「……」クルッ

460: 2013/12/10(火) 09:37:33 ID:Ot/2Pffg
魔術師「隊長。まさか、本当に犯す気だったんですか?」

魔術師「出来れば、初めてくらいは好きな人が良いです!」ビクッ

傭兵隊長「……」

魔術師「私、一応はまだ使えますよ!」

魔術師「昨日は、本当に危なかったですけど、まだ自分では使えると思うんですが!」アセアセッ

傭兵隊長「……」

魔術師「だから、隊長はこのまま早く本部まで戻って下さい!」

魔術師「じゃないと私、このまま隊長の目の前で自害致しますので!」ウルッ

傭兵隊長「……」

スチャ、スラァン……

461: 2013/12/10(火) 09:39:02 ID:Ot/2Pffg
傭兵隊長「お前、さっきから何勘違いしてやがる?」

傭兵隊長「別に、今の俺はお前なんて犯したりはしねぇよ」

魔術師「え?」キョトン

傭兵隊長「お前、ひょっとして何も気づいてなかったのか?」

傭兵隊長「お前のその今寝ているベットの下にいる奴は、一体何なんだ?」

魔術師「……は?」

スッ、スタッ……

クルッ、チラッ……

魔術師「……あっ」

使い魔「ZZZ……」

462: 2013/12/10(火) 09:40:18 ID:Ot/2Pffg
魔術師「隊長。この子は、ウチの子ですよ」

魔術師「この子は、例の勇者様と一緒にいるケット・シーではありません」

傭兵隊長「何?」

魔術師「この子、つい最近になって捕獲したばかりでしてね」

魔術師「まだ、実戦には向きません」

魔術師「出来れば、あの巨大猫くらいにはなってほしいんですけど」

魔術師「あの子自体は、特に飼い主を決める事なく、自由に動き回るのが好きな子ですから」

傭兵隊長「ああ、そうか」

使い魔「ZZZ……」

スッ、カシャン……

463: 2013/12/10(火) 09:40:38 ID:Ot/2Pffg
傭兵隊長「とにかく、お前はさっさと着替えて本部に来い」

傭兵隊長「じゃないと、お前の事を本当に犯さないといけなくなる」

傭兵隊長「お前、まだ俺達に犯されたくはないだろ?」

傭兵隊長「まぁ、俺達が犯さなかったとしても、迫り来る無数のエルフ達によって今のお前は犯されてしまう」

魔術師「……」ビクッ

傭兵隊長「だから、そうならない様に俺達も出るぞ」

傭兵隊長「そればっかりは、決して勘違いするんじゃねぇよ」

傭兵隊長「特に、お前は優秀な魔術師だ」

傭兵隊長「傭兵隊全てを転移させるまで、お前には捕まって貰っては困るんだからな」ニヤリ

魔術師「……」ウルッ

464: 2013/12/10(火) 09:40:49 ID:Ot/2Pffg
トントン、トントン……

スッ、ガチャ……

傭兵2「失礼します!」

傭兵2「隊長。緊急事態です!」

傭兵2「早く、本部にまでお戻り下さい!」

傭兵隊長「ああ、了解した!」

魔術師「すぐに、向かいます!」ウルウルッ

クルッ、スタスタスタッ……

スッ、バタン……

魔術師「……」スッ、フキフキ

465: 2013/12/10(火) 09:40:59 ID:Ot/2Pffg
魔術師「……」

魔術師「……」

魔術師「……」

魔術師「……」

スッ、ストン……

魔術師「良かった。あのまま犯されなくて……」

魔術師「私、まだ成人したばっかだし……」

魔術師「まさか、三日連続で誰かに犯されかけるなんて……」

魔術師「はぁ……」ガクッ

使い魔「ZZZ……」

466: 2013/12/11(水) 13:12:47 ID:BdYNAlPE
~とある宿屋・宿泊部屋~

スッ、ガチャ……

スタスタスタッ、ピタッ……

スッ、バタン……

僧侶「……」

魔法使い「……」ムクッ

クルッ、スタスタスタッ……

スタスタスタッ、ピタッ……

魔法使い「どこに、行っていたの?」

僧侶「少し、礼拝にね」

467: 2013/12/11(水) 13:13:00 ID:BdYNAlPE
魔法使い「礼拝? こんな真夜中に?」

魔法使い「まだ、外は暗いはずよ」

魔法使い「僧侶、あなた正気なの?」

魔法使い「まさか、本当にたった一人で夜道を歩いていたと言うの?」

僧侶「ええ、そうですよ」ニッコリ

魔法使い「……」

僧侶「そんなに、今の私はおかしい?」

僧侶「私は、僧侶となった時から神に仕える身なのよ」

僧侶「毎日、午前二時には起きているわ」

僧侶「だから、今日も私は礼拝に行っていた訳」

468: 2013/12/11(水) 13:13:12 ID:BdYNAlPE
魔法使い「そう。そうなの……」

魔法使い「気がついた時には僧侶がいなかったから、本当に私焦ったわ……」

僧侶「そう。ごめんなさいね」

魔法使い「僧侶。出来れば、事前に言って欲しかったわ……」

魔法使い「私、また昨日犯されかけた時の夢を見ちゃってた……」

僧侶「……」

魔法使い「私、こんなに弱かったっけ?……」

魔法使い「今までの私、本当にどこに行っちゃったの?……」

魔法使い「お願い。僧侶、今後は何も言わずに出掛けたりしないで……」

魔法使い「僧侶がそうしてくれないと、私、本当に駄目になっちゃいそうだから……」ウルッ

469: 2013/12/11(水) 13:13:24 ID:BdYNAlPE
僧侶「うん、分かった。今後は気を付けるね」

僧侶「だから、魔法使いも安心して」

僧侶「私は、魔法使いの味方だから」ニッコリ

魔法使い「……僧侶」ウルウルッ

スッ、ムギュッ……

僧侶「……」

魔法使い「……」ウルウルッ

僧侶「……」

魔法使い「……」ポロポロッ

シュピン……

470: 2013/12/11(水) 13:13:37 ID:BdYNAlPE
魔法使い「え? 魔術師 さんからの通信?……」

魔法使い「こんな真夜中なのに?……」

僧侶「……」

魔法使い「僧侶。なんか、今私達がいる城下町の中で異変が起きた……」

魔法使い「魔術師さんが所属している傭兵隊に、緊急召集が掛かったみたい……」ポロポロッ

僧侶「え?」

魔法使い「とりあえず、僧侶は戦士を起こしてきて……」

魔法使い「魔術師さん曰く、私達にも救援を要請してる……」

魔法使い「早く、私達も行かなきゃ……」

魔法使い「下手したら、私達の動きが読まれてるかもしれない……」ポロポロッ

471: 2013/12/11(水) 13:13:49 ID:BdYNAlPE
スタタタタタッ、スタタタタタッ……

スタタタタタッ、スタタタタタッ……

魔法使い「……?」ポロポロッ

スタタタタタッ、スタタタタタッ……

スタタタタタッ、スタタタタタッ……

僧侶「何かしら?」

魔法使い「さぁ……」ポロポロッ

スッ、ガチャ……

傭兵3「おおっ、起きてたか」

僧侶「え?」

472: 2013/12/11(水) 13:14:01 ID:BdYNAlPE
傭兵3「悪い、傭兵隊の者だ!」

傭兵3「大至急、手を貸してくれ!」

傭兵3「大臣様が、完全にトチ狂った!」

傭兵3「おかげで、それを真に受けた民達が騒ぎ出している!」

魔法使い「!?」ポロポロッ

僧侶「何ですって!?」

傭兵3「とりあえず、あんたらにも援軍を要請する!」

傭兵3「今の俺達だけでは、とても手に負えん!」

傭兵3「このままだと、本当にこの国はヤバイ事になるみたいだ!」

傭兵3「とにかく、早くあんたらも着替えて民達を落ち着かせてくれ!」

僧侶「はい。かしこまりました!」

473: 2013/12/11(水) 13:14:12 ID:BdYNAlPE
僧侶「魔法使い。すぐに着替えて!」

僧侶「私は、戦士を起こしてくる!」

僧侶「それと、魔導師様にもすぐに連絡!」

僧侶「すぐに、私達も駆けつけますから!」

傭兵3「ああ、頼む!」

クルッ、スタタタタタッ……

僧侶「魔法使い。もう離すね」

僧侶「私、戦士の事を起こしてこなくちゃいけないから」

スッ、スタスタッ……

魔法使い「あ……」ポロポロッ

474: 2013/12/11(水) 13:14:24 ID:BdYNAlPE
僧侶「魔法使い。大丈夫だよ」

僧侶「私、すぐに戻ってくるから」ニッコリ

魔法使い「……」ポロポロッ

僧侶「だから、そんな顔をしないで」

僧侶「私、魔法使いの前からいなくなったりしないからさ」ニコニコ

魔法使い「……」ポロポロッ

クルッ、スタスタスタッ……

スタスタスタッ、スタスタスタッ……

ピタッ、クルッ……

スッ、バタン……

475: 2013/12/11(水) 13:14:35 ID:BdYNAlPE
魔法使い「……」

魔法使い「……」

魔法使い「……」

魔法使い「……」

スッ、フキフキ……

魔法使い「……」

魔法使い「……」

魔法使い「とりあえず、早く着替えなきゃ……」

魔法使い「今の私に、泣いている暇なんかないみたいだからね……」

スッ、スタッ……

476: 2013/12/11(水) 13:17:26 ID:BdYNAlPE
~とある城下町・中央広場~

ザワザワザワッ、ザワザワザワッ……

ザワザワザワッ、ザワザワザワッ……

老剣士「大臣。落ち着け!」

老剣士「まだ、我らは負けた訳ではない!」

大臣「○×△□☆、○×△□☆!」

老剣士「だから、早くそなたも落ち着け!」

老剣士「無駄に、民達に対して不安を扇ぐでない!」

大臣「○×△□☆、○×△□☆!」

民達「……」

477: 2013/12/11(水) 13:17:37 ID:BdYNAlPE
老剣士「誰か、魔法を使える者はいるか?」

老剣士「出来れば、鎮静か睡眠の方が良い!」

大臣「○×△□☆、○×△□☆!」

ザワザワザワッ、ザワザワザワッ……

老剣士「頼む、早くなんとかしてくれ!」

老剣士「じゃないと、本当に取り返しのつかない事になる!」

大臣「○×△□☆、○×△□☆!」

ザワザワザワッ、ザワザワザワッ……

スタタタタタッ、スタタタタタッ……

ピタタタタタッ……

478: 2013/12/11(水) 13:18:08 ID:BdYNAlPE
傭兵隊長「ちょっと、そこを通してくれ!」

傭兵隊長「俺達は、傭兵隊の者だ!」

傭兵隊長「早く、通してくれ!」

大臣「○×△□☆、○×△□☆!」

ザワザワザワッ、ザワザワザワッ……

傭兵隊長「俺達は、傭兵隊だ!」

傭兵隊長「だから、早く通してくれ!」

老剣士「!?」ハッ

大臣「○×△□☆、○×△□☆!」

ザワザワザワッ、ザワザワザワッ……

479: 2013/12/11(水) 13:18:19 ID:BdYNAlPE
老剣士「傭兵隊の諸君、こっちだ!」

老剣士「早く、なんとかしてくれ!」

傭兵隊長「今行くぞ!」

大臣「○×△□☆、○×△□☆!」

ザワザワザワッ、ザワザワザワッ……

傭兵隊長「ああもう、邪魔だ。早く通せ!」

傭兵隊長「俺達は、早く通りたいんだよ!」

老剣士「……」

大臣「○×△□☆、○×△□☆!」

ザワザワザワッ、ザワザワザワッ……

480: 2013/12/11(水) 13:18:31 ID:BdYNAlPE
「ちょっと、一体何があったのよ?」

「煩くて、眠れないわよ!」

「あんた達、さっきから何してるのよ?」

「喧嘩なら、他所でやって!」

ザワザワザワッ、ザワザワザワッ……

「おいっ、誰か説明しろ!」

「つうか、あの老剣士を捕まえろ!」

「あれ、よく見たら大臣様じゃないか!」

「皆、早く大臣様を救出するんだ!」

ザワザワザワッ、ザワザワザワッ……

481: 2013/12/11(水) 13:18:43 ID:BdYNAlPE
「いや、それには及ばん!」

「我々は、傭兵隊の者だ!」

「皆、ここを通してくれ!」

「今の大臣様は、少し錯乱されているだけだから!」

ザワザワザワッ、ザワザワザワッ……

「皆、早くどけ!」

「傭兵隊が来たぞ!」

「聞け、老剣士。これでもう終わりだ!」

「今から、お前を捕縛して貰う!」

ザワザワザワッ、ザワザワザワッ……

482: 2013/12/11(水) 13:18:56 ID:BdYNAlPE
スッ、スタスタスタッ……

スタスタスタッ、スタスタスタッ……

老剣士「……」

大臣「○×△□☆、○×△□☆!」

スタスタスタッ、スタスタスタッ……

スタスタスタッ、ピタタタタタッ……

傭兵隊長「ふぅ、待たせたな……」

老剣士「ご苦労。傭兵隊の諸君!」

老剣士「早く、なんとかしてくれ!」

大臣「○×△□☆、○×△□☆!」

483: 2013/12/11(水) 13:19:07 ID:BdYNAlPE
スッ、スチャ……

傭兵隊長「大臣様。失礼する!」

傭兵隊長「少しの間、眠っててくれ!」

スッ、ガッ……

大臣「!?」

傭兵隊長「……」

大臣大臣「もがもがっ……」

大臣大臣「もがもがっ……」

大臣「うっ……」フラッ

老剣士「おっと」ガシッ

484: 2013/12/11(水) 13:19:19 ID:BdYNAlPE
傭兵隊長「ふぅ、なんとか収まったな」

傭兵隊長「後は、大臣様を城に戻せば済むだけだ」

老剣士「ああ、そうだな」

大臣「……」

傭兵隊長「老剣士XX。すまぬが、大臣様を城にまで連れてってくれ」

傭兵隊長「俺達は、ここで民達の混乱を解いておく」

傭兵隊長「ああ、了解した」

大臣「……」

ザワザワザワッ、ザワザワザワッ……

ザワザワザワッ、ザワザワザワッ……

485: 2013/12/11(水) 13:19:31 ID:BdYNAlPE
傭兵隊長「ほらっ、散った散った!」

傭兵隊長「皆、すぐに自宅に戻れ!」

傭兵隊長「大臣様は、俺達が城にまで送り届ける!」

傭兵隊長「だから、早く散りやがれ!」

民達「……」

老剣士「では、また後で」

老剣士「貴殿とは、後で嫌でも顔を合わす事となるからな」

傭兵隊長「ああ、了解した」

ザワザワザワッ、ザワザワザワッ……

ザワザワザワッ、ザワザワザワッ……

486: 2013/12/11(水) 17:13:40 ID:BdYNAlPE
~とある城下町・宿屋前~

スッ、ガチャ……

キキィーーッ、ダン……

老店主「お客さん。気を付けてな」

老店主「まだ、外は喧嘩か何か起きているみたいだから」

僧侶「はい。ありがとうございます」

魔法使い「……」

戦士「爺さん。戸締まりはしっかりとな!」

戦士「いつ、何が起きるかが全く分からないから!」

老店主「はい。かしこまりました」

487: 2013/12/11(水) 17:13:53 ID:BdYNAlPE
僧侶「では、私達は少し出掛けてきます」

僧侶「すみません。こんな夜中にも関わらず、無理を言ってしまって」ペコッ

老店主「いえいえ」

魔法使い「戦士、僧侶、行くわよ!」

魔法使い「早くしないと、間に合わなくなってしまうから!」

僧侶「うん」

戦士「おう」

スタスタスタッ、スタスタスタッ……

スタスタスタッ、ピタッ……

魔法使い「待って!」

488: 2013/12/11(水) 17:14:04 ID:BdYNAlPE
戦士「うん。どうした?」

戦士「何か、あったのか?」

魔法使い「ええ。そうよ」キョロキョロ

僧侶「魔法使い。一体、どうしたの?」

僧侶「また、何か感じ取ったの?」

魔法使い「ええ、そうよ」キョロキョロ

戦士「魔法使い。早く教えろ」

戦士「一体、何があったんだ?」

魔法使い「いた!」キリッ

僧侶「え?」

489: 2013/12/11(水) 17:14:24 ID:BdYNAlPE
スタタタタタッ、スタタタタタッ……

スタタタタタッ、スタタタタタッ……

魔術師「はぁ、はぁ、はぁ……」

スタタタタタッ、スタタタタタッ……

スタタタタタッ、ピタタタタタッ……

キキィーーッ、ピタッ……

魔術師「はぁ、はぁ、はぁ……」

戦士「……」

僧侶「……」

魔法使い「……」

490: 2013/12/11(水) 17:14:37 ID:BdYNAlPE
魔術師「おっ、おはようございます。魔法使いさん達……」

魔術師「これより、私が傭兵隊本部にまでご案内致しますので……」

魔術師「はぁ、はぁ、はぁ……」

戦士「……」

魔術師「何故か、大臣様が真夜中なのにも関わらず、突然トチ狂い始めましてね……」

魔術師「それを聞いた民達が、かなり混乱しています……」

魔術師「ですから、魔法使いさん達は私達にご協力の方をお願い致します……」

魔術師「皆、今日の大臣様には酷く驚かれているみたいですからね……」

魔術師「はぁ、はぁ、はぁ……」

僧侶「……」

491: 2013/12/11(水) 17:14:50 ID:BdYNAlPE
魔法使い「おはようございます。魔術師さん」

魔法使い「私達も、魔術師さん達にご協力の方をさせて頂きます」

魔法使い「それで、騒ぎの規模は?」

魔法使い「見た所、かなり沈静化してきている様にも見えますが」

魔術師「ああっ、ちょっと待って下さいね……」

スッ、スポッ……

スッ、ゴクゴクゴクッ……

ゴクゴクゴクッ、ゴクゴクゴクッ……

魔術師「ふぅ……」

スッ、キュルキュル……

492: 2013/12/11(水) 17:15:11 ID:BdYNAlPE
魔術師「ああ、すみません。魔法使いさんの指摘通りに、事態は段々鎮静化してきてます」

魔術師「ですが、まだ問題は解決してません」

魔術師「ハーフエルフの軍勢が、我が国のXXX平原にまで展開」

魔術師「更には、ダークエルフの軍勢が隣国領XX平原を抜けて、こちらに向かってきているのです」

魔法使い「!?」

魔術師「それに、勇者様の消息は昨日から完全に途絶えました」

魔術師「おまけに、私が昨日貸し出した通訳代わりのケット・シーですら消息不明」

魔術師「勇者様は、私達と別れた後に行方不明となっております」

魔術師「ですので、魔法使いさん達も急いで下さい」

魔法使い「はい。かしこまりました」

493: 2013/12/11(水) 17:15:23 ID:BdYNAlPE
戦士「でも、何で大臣様はトチ狂ったんだ?」

戦士「これもまた、敵による策略かもしれん」

僧侶「うん。そうだね」

魔法使い「とりあえず、早く私達も行くわよ!」

魔法使い「魔術師さん。早く私達を本部にまで案内して下さい!」

魔術師「はい。かしこまりました」

「おいっ、お客さん。忘れ物だよ!」

「これっ、お客さんの者じゃないのかね?」

魔法使い「え?」クルッ

スタスタスタッ、ピタッ……

494: 2013/12/11(水) 17:15:34 ID:BdYNAlPE
魔法使い「お爺さん。それ、どこで?」

魔法使い「今、お爺さんが持っているのは、私が勇者に渡していたアイテムなんだけど」

老店主「ほう、そうなのかい」スッ

魔法使い「……」スッ

僧侶「すみません。わざわざ」

僧侶「ほらっ、魔法使いも早くお礼を言って」

魔法使い「ええ、ありがとう。お爺さん」

老店主「いえいえ、どう致しまして」

クルッ、スタスタスタッ……

魔法使い「……」

495: 2013/12/11(水) 17:15:45 ID:BdYNAlPE
スッ、シュルシュル……

スッ、ピラッ……

魔法使い「……」

魔法使い「……」

魔法使い「……」

魔法使い「……」

僧侶「魔法使い。それ何?」

僧侶「その羊皮紙に、一体何が書いてあるの?」

魔法使い「……」ウルッ

スッ、ガクッ……

496: 2013/12/11(水) 17:17:12 ID:BdYNAlPE
魔法使い「たった今、勇者から連絡があったわ……」

魔法使い「勇者は今、エルフの里の中にいる……」

魔法使い「でも、勇者は例の女侯爵の部隊に囲まれててね……」

魔法使い「魔術師さんが貸し出したケット・シーも、今は例の女侯爵の手によって捕らわれているみたい……」

魔術師「!?」

僧侶「そんな!?」

戦士「くっ……」ガクッ

魔法使い「……」ウルウルッ

スッ、ヒラヒラッ……

ヒラヒラッ、ポトッ……

497: 2013/12/11(水) 17:17:24 ID:BdYNAlPE
魔術師「とりあえず、この件をすぐに本部にまで報告を……」

魔術師「皆、勇者様からの連絡をお待ちしています……」

魔術師「ですが、一体どうやって勇者様は?……」

魔術師「勇者様は、どうやってあの距離を移動したんですか?……」

魔法使い「さぁ……」ウルウルッ

魔術師「……」

クルッ、スタスタスタッ……

スッ、ピラッ……

パンパン、パンパン……

僧侶「……」ピラッ

498: 2013/12/11(水) 17:17:35 ID:BdYNAlPE
戦士「けど、よくそれを送ってこれたな?」

戦士「勇者の奴、一体向こうで何をやっているんだよ!」

僧侶「戦士!」クルッ

魔法使い「……」ウルウルッ

戦士「大体、あいつにそんな力あるのか?」

戦士「俺はまだ、あいつの持つ力はあまり認めてない!」

魔法使い「……」ウルウルッ

魔術師「は?」

僧侶「戦士!」

戦士「あん? 何だよ?」

499: 2013/12/11(水) 17:17:47 ID:BdYNAlPE
魔術師「とりあえず、早く行きましょうよ!」

魔術師「皆、勇者様からの連絡を待っています!」

魔術師「大体、あなたは勇者様の戦っている姿を見た事があるんですか?」

魔術師「あれだけ、勇者様が活躍していたのに、その態度はないでしょうが!」ギロッ

戦士「何を!?」ギロッ

僧侶「戦士!」ギロッ

魔法使い「……」ウルウルッ

魔術師「ともかく、早く私達も行きますよ!」

魔術師「事態は、本当に急を要するので!」ギリギリッ

戦士「ああ、了解した!」ギリギリッ

500: 2013/12/11(水) 17:17:58 ID:BdYNAlPE
クルッ、スタスタスタッ……

スタスタスタッ、スタスタスタッ……

魔法使い「……」

魔法使い「……」

スッ、フキフキ……

「魔法使いさん。もう、行きますよ!」

「早く、私達について来て下さい!」

魔法使い「……」

クルッ、スタスタスタッ……

スタスタスタッ、スタスタスタッ……

501: 2013/12/12(木) 16:31:29 ID:8ReFw2Io
~とある城下町・傭兵隊本部前~

スタタタタタッ、スタタタタタッ……

スタタタタタッ、スタタタタタッ……

スタタタタタッ、スタタタタタッ……

スタタタタタッ、スタタタタタッ……

キキィーーッ、ピタタタタタッ……

魔術師「はぁ、はぁ、はぁ……」

魔法使い「はぁ、はぁ、はぁ……」

戦士「はぁ、はぁ、はぁ……」

僧侶「はぁ、はぁ、はぁ……」

502: 2013/12/12(木) 16:31:41 ID:8ReFw2Io
魔術師「皆さん。着きましたよ……」

魔術師「ここが、傭兵隊の本部です……」

魔術師「今から、ここに入りますからね……」

魔術師「はぁ、はぁ、はぁ……」

僧侶「はぁ、はぁ、はぁ……」

戦士「僧侶。大丈夫か?……」

戦士「お前、やけに息が上がってるが……」

僧侶「うん。大丈夫……」

魔法使い「おえっ……」

魔術師「ふぅ……」

503: 2013/12/12(木) 16:31:54 ID:8ReFw2Io
「お前、遅かったな」

「一体、どこで油を売ってたんだよ?」

魔術師「……え?」

スタスタスタッ、スタスタスタッ……

スタスタスタッ、スタスタスタッ……

ピタッ、ピタッ、ピタッ……

魔術師「あっ、隊長……」

魔術師「もう、終わったんですか?……」

魔導師「私達、今着いたばかりなのに……」

傭兵隊長「ああ、そうだ……」

504: 2013/12/12(木) 16:32:05 ID:8ReFw2Io
魔術師「隊長。例の勇者様の同行者をお連れしました」

魔術師「それと、例の勇者様からの手紙を預かっております」

傭兵隊長「何!?」

魔術師「僧侶さん。例の手紙を」

魔術師「それを、早く隊長にも見せてあげて下さい」

僧侶「はい。かしこまりました」スッ

傭兵隊長「……」スッ

魔術師「それが、ついさっきこの方達が宿泊されている宿屋に届きました」

魔術師「内容は、かなり衝撃的だった様です」

傭兵隊長「うむ。そうか」

505: 2013/12/12(木) 16:32:36 ID:8ReFw2Io
スッ、シュルシュル……

スッ、ピラッ……

傭兵隊長「……」

傭兵隊長「……」

傭兵隊長「……」

傭兵隊長「……」

魔術師「隊長。如何ですか?」

魔術師「これを早く、魔導師様達にもお伝えすべきです!」

傭兵隊長「うむ。そうだな」

スッ、クルクルッ……

506: 2013/12/12(木) 16:32:48 ID:8ReFw2Io
傭兵隊長「よしっ、そこの勇者の同行者三人」

傭兵隊長「これから、君達には我々に協力をして貰う」

傭兵隊長「今、我が国は危機的な状況にある」

傭兵隊長「ここに集まったからには、是非とも協力をして貰いたい」

戦士「おう!」ビシッ

僧侶「……」コクン

傭兵隊長「では、早速ながらも君達には活躍をして貰うぞ」

傭兵隊長「魔法使い。君は魔法通信は使えるな?」

傭兵隊長「もし仮に、使えるのなら魔術師との連絡役を担当して貰う」

傭兵隊長「君達三人は、この件をすぐに魔術師様にも伝えて貰いたい」

507: 2013/12/12(木) 16:32:59 ID:8ReFw2Io
僧侶「はい。かしこまりました」

僧侶「今すぐ、魔術師様の元にまで向かわせて貰います」

僧侶「ですが、その後の事についてはどう致しますか?」

僧侶「この暗さなら、敵による闇討ちとか等も警戒する必要があると思いますが」

傭兵隊長「ああ、そうだな」

戦士「本当なら、まだ俺は寝てる時間だぞ」

魔術師「それについては、もう大丈夫です」

魔術師「つい数日前から、魔導師様がとても強力な結界を張られましたから」

魔術師「ですから、城下町に対する闇討ちとかはありません」

魔術師「魔法使いさん達も、その辺についてはご安心下さい」

508: 2013/12/12(木) 16:33:10 ID:8ReFw2Io
戦士「ふぅん。そうなのか」

戦士「それなら、俺達も安心だな」

戦士「とりあえず、早く行こうぜ」

戦士「じゃないと、魔導師様達もかなり本気でヤバイ事になる」

僧侶「ええ、そうね」

魔法使い「じゃあ、私達はこのまま魔導師様の元に向かいます」

魔法使い「今、魔導師様はどちらにいらっしゃいますか?」

傭兵隊長「城門だ」

戦士「なら、二人共早く行くぞ」

戦士「早くしないと、敵がいつ来るから分からんからな」

509: 2013/12/12(木) 16:33:21 ID:8ReFw2Io
僧侶「でも、ここからだと城門はどっちの方角なの?」

僧侶「この暗さだと、今持ってるランプだけじゃあ心苦しくない?」

戦士「ああ、そうだな」

魔法使い「とにかく、私達はそれでも行かなくちゃいけないのよ」

魔法使い「方角なら、私が解るから早く行きましょう」

戦士「ああ、了解した」

魔法使い「では、私達は行ってきます」

魔法使い「魔術師さん達も、お気を付けて」

魔術師「はい。かしこまりました」

傭兵隊長「……」

510: 2013/12/12(木) 16:33:33 ID:8ReFw2Io
クルッ、スタスタスタッ……

スタスタスタッ、スタスタスタッ……

傭兵隊長「魔術師。お前、ここで待機な」

傭兵隊長「遅刻した挙げ句、あんな重要な手紙をすぐ届けなかった」

傭兵隊長「だから、今の間に始末書書いとけ」

傭兵隊長「特に、ここ三日間のな」

魔術師「え~~っ?」

傭兵隊長「お前、そんなに書くの嫌か?」

傭兵隊長「もし嫌なら、お前のその体で払って貰う事になるぞ」

傭兵達「!?」

511: 2013/12/12(木) 16:35:57 ID:8ReFw2Io
魔術師「隊長。それだけは止めて下さい!」

魔術師「そんな事をされたら、亡くなった隊長の奥様に対して顔向けが出来ません!」

魔術師「第一、今は有事でしょ?」

魔術師「今の隊長の頭、一体どうなってるんですか?」

傭兵達「……」

傭兵隊長「なら、さっさと始末書書け!」

傭兵隊長「ここ最近のお前は、隊規を乱し過ぎている!」

傭兵隊長「俺が問題にしてるのは、お前のそう言った所だ!」

傭兵隊長「部下なら部下らしく、ちゃんと俺の言う事を聞け!」

512: 2013/12/12(木) 16:36:30 ID:8ReFw2Io
魔術師「はいはい。分かりましたよ!」

魔術師「聞けば良いんでしょ? 聞けば!」

魔術師「それで、始末書はどこに?」

魔術師「書き終わった後にでも、隊長の机の上にでも置いときましょうか?」

傭兵隊長「ああ、頼む」

魔術師「では、失礼」

スッ、チャラッ……

スタスタスタッ、ピタッ……

傭兵隊長「お前、ちゃんと書けよ!」

傭兵隊長「書かなかったら、マジで皆の相手をして貰うからな!」

513: 2013/12/12(木) 16:36:42 ID:8ReFw2Io
スッ、カチャカチャ……

スッ、キキィーーッ……

スタスタスタッ、スタスタスタッ……

スタスタスタッ、スタスタスタッ……

傭兵4「隊長。宜しかったんですか?」

傭兵4「隊長の姪っ子さん、かなり拗ねてましたが」

傭兵隊長「ああ、まあな」

傭兵4「それで、例の手紙にはなんて書いてあったんです?」

傭兵4「俺達、まだ詳しい内容とか聞かされていませんよ」

傭兵隊長「ああ、後でな」

514: 2013/12/12(木) 16:36:55 ID:8ReFw2Io
傭兵4「でも、よく隊長の姪っ子さんをウチに入れれましたね?」

傭兵4「普通なら、俺達の様な前科者が多い所には入ってこないはず」

傭兵4「まぁ、今は金のない貴族や騎士とかも傭兵をやっています」

傭兵4「出来れば、あまり女っ気はない方が良いんですがね」

傭兵隊長「ああ、そうだな」

傭兵5「隊長。俺達、今後どうするんです?」

傭兵5「もし仮に、逃げるのならもう手遅れですよ」

傭兵5「あのエルフ達、かなり執念深いです」

傭兵5「そうじゃなきゃ、あの副長がエルフ達に殺られる訳がありません」

傭兵隊長「……」

515: 2013/12/12(木) 16:37:28 ID:8ReFw2Io
傭兵隊長「ともかく、今の俺達はここで待機だ!」

傭兵隊長「まずは、例の勇者の手紙を魔導師様達が読んだ後に、俺達への指示が下る!」

傭兵隊長「皆、くれぐれも気を付けてな!」

傭兵隊長「何名かはまだ戻ってはいないが、後で必ず勇者から送られてきた手紙の内容を教えてやるからな!」

傭兵達「はっ!」

傭兵隊長「……」

スッ、スポッ……

スッ、ゴクゴクゴクッ……

傭兵隊長「ふぅ……」

スッ、キュキュッ……

516: 2013/12/12(木) 16:38:04 ID:8ReFw2Io
「たっ、たいちょ~~~~~~~~う!」

「肥溜めの中にいた糞くらい達が、何故か暴れてます!」

「早く、早く来てくださ~~~~~~~~い!」

傭兵隊長「!?」クルッ

「隊長。早くして下さい!」

「糞くらいが、糞くらい~~~~~~~~っ!?」

傭兵隊長「……」

傭兵4「隊長。一応、中に入りますか?」

傭兵4「姪っ子さん。かなりピンチみたいですし」

傭兵隊長「ああ、頼む……」ガクッ

517: 2013/12/13(金) 15:49:12 ID:KHysanmc
~とある城下町・城門~

召喚兵長「報告。ハーフエルフの軍勢に動きなし」

召喚兵長「ダークエルフの軍勢も、野営地からは動いておりません」

魔導師「うむ。そうか」

老剣士「して、女侯爵XXXXXXの動きは?」

老剣士「あの女は、今どの辺りにいる?」

老剣士「あの女は、本当に神出鬼没だ!」

老剣士「あの女だけは、絶対にこの手で叩き斬ってくれる!」

魔導師「うむ。そうだ!」

召喚兵達「……」

518: 2013/12/13(金) 15:49:24 ID:KHysanmc
召喚兵長「はっ、恐れながら申し上げます」

召喚兵長「女侯爵XXXXXXの動きは、未だ掴めてはおりません」

召喚兵長「何故なら、我々がそれを確認しようとする度に敵側の邪魔が入ります」

召喚兵長「もう既に、何名もの味方が惨殺されているからです」

老剣士「……」

魔導師「なら、それをどう突き崩すか」

魔導師「ここは、老剣士に任せるとしよう」

魔導師「老剣士。そなたやれるか?」

魔導師「敵側の守りは、かなり固いぞ」

老剣士「ああ、了解した」

519: 2013/12/13(金) 15:49:37 ID:KHysanmc
召喚兵長「ですが、まだ動く時ではありません」

召喚兵長「今の我々には、あまり兵はいないのです」

召喚兵長「ここは、敵側が動くのを待つべきなのでは?」

召喚兵長「まだ敵側の動きはありませんし、老剣士様に何かあったらどうされるのですか?」

老剣士「何?」ギロッ

召喚兵長「……」

魔導師「老剣士。控えよ」

魔導師「この者の言う事にも一理ある」

魔導師「召喚兵とて、我らと全く同じ様に心と体があるのだ」

魔導師「そなたが、ここで怒りを抑えなければ、あの者と全く同じ様になる」

520: 2013/12/13(金) 15:49:49 ID:KHysanmc
老剣士「ふん。たかが、召喚兵如きが生意気な……」

老剣士「確かに、今は無駄に犠牲を出す必要はない……」

老剣士「だが、どうも納得がいかんな……」

老剣士「俺から見たら、召喚兵とてただの操り人形にしか見えんのだぞ……」

召喚兵長「……」

魔導師「しかし、実際にはこの者達にも心と体があるのだ」

魔導師「そなたとて、それについては分かっていよう」

魔導師「元々、召喚兵自体は突然変異」

魔導師「あの女が、俺の親父に魔術等を学んでいる時に、自ら編み出した魔術でもあるのだからな」

召喚兵達「……」

521: 2013/12/13(金) 15:50:12 ID:KHysanmc
老剣士「なら、この者達もいつか敵になるな」

老剣士「あの女も、そなたと全く同じ様に召喚兵を繰り出してくるのだぞ」

老剣士「本当に、そなたの父上はバカな男だ」

老剣士「あの女に関わったばかりに、人生を棒に振ったんだからな」

魔導師「ああ、まあな……」

老剣士「とりあえず、俺はここで待機しとけと?」

老剣士「なら、一体俺はいつ動けば良いのだ?」

魔導師「さぁ、まだ分からんな」

老剣士「全く、俺も丸くなったものだ……」

老剣士「昔の俺なら、問答無用で叩き斬っていたと言うのに……」

522: 2013/12/13(金) 15:50:24 ID:KHysanmc
魔導師「老剣士。そなた、まだ動くな」

魔導師「いつ、あの女が動き出すかが分からんのだ」

魔導師「それに加えて、何やらこの町にも動きがあるみたいだぞ」

魔導師「つい先程から、傭兵隊が慌ただしく動き始めた」

魔導師「それに加えて、魔法使い達まで何故か動き出しておる」

魔導師「しかも、良からぬ知らせを携えてな」

老剣士「!?」

召喚兵長「……」

魔導師「まずは、魔法使い達がここに着いてからだな」

魔導師「それを確認してから、我らも今後どうするかについてを決めるとしよう」

523: 2013/12/13(金) 15:50:36 ID:KHysanmc
魔導師「召喚兵長。そなたもここにおれ」

魔導師「ここにおって、老剣士を見張っておくのだ」

召喚兵長「はっ!」

スッ、ムクッ……

魔導師「老剣士。そなたも、ここで待機な」

魔導師「まだ、そなたは動くではないぞ」

老剣士「くどい!」

魔導師「……」

召喚兵長「……」

召喚兵達「……」

524: 2013/12/13(金) 15:50:54 ID:KHysanmc
スタタタタタッ、スタタタタタッ……

スタタタタタッ、スタタタタタッ……

魔導師「おっ、来たな」

老剣士「……」

スタタタタタッ、スタタタタタッ……

スタタタタタッ、スタタタタタッ……

キキィーーッ、ピタタタタタッ……

魔法使い「はぁ、はぁ、はぁ……」

戦士「はぁ、はぁ、はぁ……」

僧侶「はぁ、はぁ、はぁ……」

525: 2013/12/13(金) 15:51:05 ID:KHysanmc
魔導師「魔法使い。どうしたのじゃ?」

魔導師「まだ、真夜中の三時なのじゃが」

魔法使い「はぁ、はぁ、はぁ……」

魔導師「そなた、あまり激しい運動は控えた方が良いぞ」

魔導師「普段から、部屋に込もって研究やら読書やらをしておるのじゃから」

魔法使い「はぁ、はぁ、はぁ……」

老剣士「それで、お前ら何しに来た?」

老剣士「たとえ、お前らが成人しているとは言え、俺達から見たらまだまだガキだ」

老剣士「ガキならガキらしく、まだまだ寝ておれ」

老剣士「ここは、我らだけでも十分だ」

526: 2013/12/13(金) 15:51:15 ID:KHysanmc
魔法使い「魔導師様。こんな真夜中なのにも関わらす、申し訳ございません……」

魔法使い「つい先程、勇者XXXからの連絡が入りました……」

魔法使い「ここに、勇者XXXからの手紙がございます……」

魔法使い「どうやら、今の勇者は危機的な状態にある様です……」スッ

魔導師「何?」スッ

スッ、ピラッ……

魔導師「……」

魔導師「……」

魔導師「……」

魔導師「……」ガクッ

527: 2013/12/13(金) 15:54:57 ID:KHysanmc
老剣士「魔導師。一体、何があった?」

老剣士「その手紙には、何て書いてある?」

魔導師「……」スッ

老剣士「……」スッ

ピラッ、ピラッ……

老剣士「……」

老剣士「……」

老剣士「……」

老剣士「……」

スッ、ギュッ……

528: 2013/12/13(金) 15:55:10 ID:KHysanmc
魔導師「魔法使い。これは誠か?」

魔導師「今の勇者は、エルフの里におるのか?」

魔導師「一体、あ奴はどうやって?」

魔導師「エルフの里に入るには、あの難攻不落の数々の砦や迷いの森等を抜けねばならぬのに」

老剣士「……」

魔法使い「私達にも、詳しい事は分かりません」

魔法使い「ただ唯一、確かなのは今の勇者が危機的な状態にある事」

魔法使い「私の元に、この手紙を送ってきたと言う事は、かなり切迫をしている様子」

魔法使い「場合によっては、もう既にエルフの里で捕らえられているのかもしれません」

魔導師「ふむ。そうか」

529: 2013/12/13(金) 15:55:27 ID:KHysanmc
老剣士「だが、これは罠かもしれんな」

老剣士「敵側が、敢えて俺達を混乱させる為に送ってきた罠かもしれん」

魔導師「……」

老剣士「第一、これをどうやってそなたの元に届けたのだ?」

老剣士「もし仮に、転移魔法を使ったとしてもエルフの里からだと、かなり遠過ぎるだろ」

魔法使い「……」

老剣士「それで、これを見つけた時、何か変わった事はないか?」

老剣士「そなた、これを勇者に手渡していたのだろう?」

老剣士「実際、この中で最後に勇者と会ったのはそなただけだ」

老剣士「この羊皮紙に、一体どう言った細工をしておったのだ?」

530: 2013/12/13(金) 15:55:39 ID:KHysanmc
魔法使い「残念ながら、私は何の細工もしておりません」

魔法使い「つい先程、傭兵隊の皆さんからの連絡を受けて宿屋を出る時に、そこの宿屋のお爺さんがこの私に手渡してきたんです」

老剣士「何?」

魔導師「それは、誠か?」

魔法使い「はい」

魔導師「……」

老剣士「なら、この手紙を誰が届けた?」

老剣士「やはり、これは敵側による罠の可能性もある」

老剣士「魔法使い。この件を誰に話した?」

老剣士「この件、他には他言しておらんだろうな?」

531: 2013/12/13(金) 15:55:58 ID:KHysanmc
魔法使い「老剣士XXX。申し訳ありません」

魔法使い「もう既に、ここの傭兵隊長にはお話しました」

魔法使い「何分、こんな真夜中ですし」

魔法使い「この手紙を忘れたまま、ここに一度は来かけてしまいましたから」

老剣士「あっ? この大うつけが!」

魔法使い「!?」ビクッ

僧侶「きゃあっ!?」ビクッ

戦士「……」ビクッ

老剣士「……」ギロッ

スッ、グシャ……

532: 2013/12/13(金) 15:56:12 ID:KHysanmc
老剣士「お前、何やっとる?」

老剣士「本当に、お前は何をやっとるのだ?」

老剣士「これが、ここの民達に知られたら大パニックになるぞ!」

老剣士「どうして、我らよりも先に傭兵隊長なんぞにこの手紙を見せたのだ!?」ギリッ

魔法使い「も、申し訳ございません!」ペコッ

老剣士「……」ギリギリッ

魔導師「魔法使い。そなた、本当に馬鹿な奴だな!」

魔導師「これを、我らよりも先に見せてどうする!?」

魔導師「傭兵隊とて、この国の民達だ!」

魔導師「そなたのした事は、まんまと敵側の術中に嵌まってしまっていると言う事だ!」

533: 2013/12/13(金) 15:56:24 ID:KHysanmc
老剣士「とりあえず、お前どうする?」

老剣士「この責任、一体どうするつもりなのだ?」

老剣士「下手したら、もう既に他の民達にも知られた可能性がある!」

老剣士「貴様、本当に余計な事をしてくれたな!」

魔法使い「申し訳ありません!」ウルッ

魔導師「……」

老剣士「それで、貴様どうするのだ?」

老剣士「このまま、俺の剣の錆となりたいか?」

老剣士「今の俺は、一向に構わん!」

老剣士「何故なら、今の貴様は本当に万氏に値する罪を犯したのだからな!」

534: 2013/12/13(金) 15:57:03 ID:KHysanmc
戦士「師匠。ここは、どうか穏便に!」

戦士「今のこいつは、勇者の所為でおかしくされているだけなんです!」

老剣士「……」ギロッ

戦士「師匠。どうか、お願い致します!」

戦士「こいつが氏んだら、一体誰がこいつの兄の面倒を見るのですか?」

老剣士「知るか!」

戦士「師匠!」

魔法使い「……」ウルウルッ

僧侶「……」

スッ、ムギュッ……

535: 2013/12/13(金) 15:57:16 ID:KHysanmc
魔導師「老剣士XXX。怒りを抑えよ!」

魔導師「ここは、もう我ら年寄りだけで行く事にする!」

魔導師「そなた達三人は、これ以上この件に関わるな!」

魔導師「本当に、今回ばかりは余計な事をしてくれたよ!」

魔法使い「……」ウルウルッ

老剣士「戦士、僧侶。こいつをちゃんと見張っとけ!」

老剣士「貴様ら三人、宿屋で今後もずっと待機しておれ!」

老剣士「たかが、15~6のガキがでしゃばってくんじゃねぇよ!」

老剣士「貴様ら、この戦いが終わったら絶対に覚悟しとけ!」

魔法使い「はい……」ポロポロッ

536: 2013/12/13(金) 15:57:27 ID:KHysanmc
戦士「師匠。ですが、俺達は傭兵隊の方に協力をしています」

戦士「せめて、俺だけでも戦には出させて下さい」

老剣士「あっ!?」ギロッ

戦士「!?」ビクッ

老剣士「戦士。貴様、俺の剣の錆びになりたいのか?」

老剣士「俺の話、貴様はちゃんと聞いていなかったのか?」

戦士「……いいえ」

老剣士「なら、何故その様な事を言う?」

老剣士「貴様も、大人しく宿屋で待機しておけ!」

戦士「ですが……」

537: 2013/12/13(金) 15:59:50 ID:KHysanmc
魔導師「ですが、何なのだ?」

魔導師「そなた、どうしてそんなに戦に出たい?」

戦士「そ、それは……」

魔導師「老剣士XXX。そなたの言う通りに、この者達を宿屋で待機させる」

魔導師「しかし、ここの傭兵隊からの協力要請は無視出来ん」

魔導師「どうだ? ここは、この者達三人に汚名返上の機械を与えようではないか?」

魔導師「この者達三人も、それを望んでおるぞ」

老剣士「ちっ……」クルッ

戦士「……」

魔法使い「……」ポロポロッ

538: 2013/12/13(金) 16:00:02 ID:KHysanmc
老剣士「魔導師XX。好きにしろ!」

老剣士「たとえ、問題が起きたとしても俺は責任は取らん!」

魔導師「ああ、了解した!」

魔法使い「……」ポロポロッ

魔導師「そこの三人、今の聞いておったな?」

魔導師「そなた達は、もう下がっても良い」

魔導師「だが、くれぐれも我らの邪魔だけはせんようにな!」

魔導師「特に、自分の犯したミスを取り戻そうと独断先行的な事をするだけは、絶対にあってはならんぞ!」

魔法使い「はい!」ポロポロッ

戦士「……」ビシッ

539: 2013/12/13(金) 16:00:15 ID:KHysanmc
僧侶「はい。かしこまりました」

僧侶「私達は、これで失礼致します」

僧侶「この度の件、本当に申し訳ございません」

僧侶「以後、この様な事がない様に精進させて頂きます」ペコッ

魔導師「うむ。了解した」

魔法使い「……」ペコッ

クルッ、スタスタスタッ……

スタスタスタッ、スタスタスタッ……

老剣士「……」

魔導師「……」

540: 2013/12/13(金) 16:00:31 ID:KHysanmc
老剣士「全く、ここ最近のガキ共は……」

老剣士「本当に、色々と余計な事をしてくれる……」

老剣士「とりあえず、今回の件は全てあの魔法使いの所為だ……」

老剣士「それについてを、しかと覚えておけ……」ギロッ

魔導師「……」

老剣士「後、俺は少し寝て来る……」

老剣士「午前六時になったら、お前が起こしてくれ……」

魔導師「ああ、了解した……」

召喚兵長「……」

召喚兵達「……」

541: 2013/12/13(金) 16:00:45 ID:KHysanmc
錯乱する大臣に、戸惑いを隠せない民達。

ただでさえ、エルフの軍勢が迫ってきていると言うのに、ろくな対策すら打たない自国の国王。

更には、勇者がエルフの里で捕らわれている事が露見してしまった。

その事すら瞬く間に民達の間で伝わってしまい、それについてで責任を感じている魔法使い。

その日の朝、魔導師はハーフエルフの軍勢を向かい打った。

ハーフエルフの軍勢に続いて、別方向からはダークエルフの軍勢がXXX王国を攻撃をする。

それに対して、勇者はそんな事すら全く知らずにエルフの里の病院内にて完全に熟睡。

民達は、各エルフ達による逆襲に怯え、事態が沈静化するのを待つしかなかったのだった。

542: 2013/12/14(土) 15:36:57 ID:vWpatYGM
~傭兵隊本部・控え室~

その日の朝――

魔術師「魔法使いさん。元気出して下さい」

魔術師「いずれ、勇者様の件は誰かが暴露していたんですから」

魔法使い「……」

魔術師「私なんて、しょっちゅう隊長に罵倒されていますよ」

魔術師「ついさっきも、不要だと感じたら皆で犯してやるって言われた程ですから」

魔術師「だから、元気出して下さい」ニッコリ

魔法使い「……」

スッ、コトッ……

543: 2013/12/14(土) 15:37:27 ID:vWpatYGM
魔術師「ほらっ、ここにハーブティが有りますよ」

魔術師「これ飲んで、早く元気になって下さい」ニコニコ

魔法使い「……」

魔術師「魔法使いさん。私の話、聞いてますか?」

魔術師「ついさっきから、ずっとそんな感じですよ」

魔法使い「……」

スッ、ガチャ……

キキィーーッ、ダン……

傭兵隊長「……」

魔術師「あっ……」クルッ

544: 2013/12/14(土) 15:37:45 ID:vWpatYGM
傭兵隊長「魔術師。ここにいたか」

傭兵隊長「お前が遭遇した糞食らいは、ちゃんと処理したんだよな?」

魔術師「ええ、大丈夫です」

傭兵隊長「それと、どう言う訳か例の手紙の内容が民達に知られた」

傭兵隊長「その対応の為に、俺達にも出動命令が出てる」

傭兵隊長「魔術師。お前は、俺と一緒に来い」

傭兵隊長「つうか、何で今そこにいるお前のお仲間は、そんな暗い顔をしているんだ?」

魔術師「ええ、ちょっとした訳有りで……」

傭兵隊長「……」

スタスタスタッ、ピタッ……

545: 2013/12/14(土) 15:37:58 ID:vWpatYGM
傭兵隊長「おいっ、お前起きてるか?」

傭兵隊長「もし仮に、お前が使い物にならないんなら、魔術師と一緒に犯してやるよ」

魔法使い「!?」ビクッ

傭兵隊長「おっ、起きたな」

傭兵隊長「お前も、魔術師と同じで顔だけは良いな」ニヤリ

魔術師「最低」ムスッ

魔法使い「……」ウルッ

傭兵隊長「おいっ、たかがミス一つ犯したくらいで、そんなに泣くな!」

傭兵隊長「こいつが今までしてきた事に比べたら、お前のはまだまだ軽いくらいだ!」

魔法使い「……え?」ウルウルッ

546: 2013/12/14(土) 15:38:11 ID:vWpatYGM
魔術師「隊長。変な事を言わないで下さいね」

魔術師「私、まだ隊長には犯されたくはないんで」

魔法使い「……」ウルウルッ

魔術師「大体、魔法使いさんは他国の方ですよ」

魔術師「もし仮に、魔法使いさんが隊長に犯されたら、外交問題にまで発展しますよ」

傭兵隊長「ああ、そんな事は分かっとる」

魔術師「なら、そう言う事を私以外には言わないで下さい!」

魔術師「魔法使いさん。本当に、今回の事では責任を感じているんです!」

魔術師「隊長。ここ最近の言動等は、かなり問題があります!」

魔術師「私、隊長が誰かを犯す姿なんて見たくありません!」ギリッ

547: 2013/12/14(土) 15:38:43 ID:vWpatYGM
傭兵隊長「なら、お前も俺に対する態度等を改めろ!」

傭兵隊長「ここ最近のお前、全く人の事を言えねえぞ!」クルッ

魔術師「どう言う意味ですか?」

傭兵隊長「とりあえず、この話は置いといて早速任務だ!」

傭兵隊長「魔術師。お前からの反論等は後で聞く!」

傭兵隊長「まずは、ここの民達の不安を消し去るぞ!」

傭兵隊長「大臣様が、完全にトチ狂ってから色々と民達が不安がっているからな!」

魔術師「はい。かしこまりました」

魔法使い「……」ウルウルッ

スッ、ゴクゴクッ……

548: 2013/12/14(土) 15:39:00 ID:vWpatYGM
魔術師「魔法使いさん。魔法使いさんは、ここで休んでて下さい」

魔術師「私達、すぐ用事済ませてここに戻ってきますので」ニッコリ

魔法使い「……」コクン

傭兵隊長「……」

魔術師「隊長。早く行きましょ」

魔術師「後で、隊長には覚悟して貰いますから」

傭兵隊長「ああ、了解した」

スッ、コトッ……

クルッ、スタスタスタッ……

スタスタスタッ、スタスタスタッ……

549: 2013/12/14(土) 15:39:11 ID:vWpatYGM
魔法使い「……」

魔法使い「……」

魔法使い「……」

魔法使い「……」

スッ、ゴクゴクッ……

魔法使い「ふぅ……」

ヒュルヒュルヒュルヒュル、ヒュルヒュルヒュルヒュル……

魔法使い「え?」

ヒュルヒュルヒュルヒュル、ヒュルヒュルヒュルヒュル……

スッ、スタッ……

550: 2013/12/14(土) 15:39:24 ID:vWpatYGM
僧侶「あれ? 魔法使いだけ?」

僧侶「ここの魔術師さん達、一体どこに行っちゃったの?」キョロキョロ

魔法使い「うん。なんか、用事が入ってね……」スッ、フキフキ

僧侶「そう。なら私もここに居とくよ」

僧侶「なんか、今日の魔法使いは昨日以上に弱々しいし」

僧侶「このまま放っておいたら、魔法使いの心が余計に泣いてしまうからね」ニッコリ

魔法使い「うん。ありがとう……」ポロポロッ

スタスタスタッ、スタスタスタッ……

ピタッ、キィーッ……

クルッ、ストン……

551: 2013/12/14(土) 15:39:35 ID:vWpatYGM
僧侶「所で、今魔法使いは何飲んでるの?」

僧侶「なんか、良い香りがするね」

魔法使い「ええ、そうね……」ポロポロッ

僧侶「それ、もしかしてハーブティ?」

僧侶「多分、私の勘だと魔術師さん辺りが煎れてくれたのかな?」

魔法使い「ええ、そうよ……」ポロポロッ

シュピン……

魔法使い「……え?」

魔法使い「……」

魔法使い「……」

552: 2013/12/14(土) 15:41:31 ID:vWpatYGM
魔法使い「僧侶。魔導師様から、連絡があったわ……」

魔法使い「ハーフエルフの軍勢が、とうとう動き出したわ……」ポロポロッ

僧侶「!?」

魔法使い「魔導師様曰く、ハーフエルフの軍勢はおよそ一万……」

魔法使い「魔導師様が用意した召喚兵だけでは、とても防ぎ切れない……」ポロポロッ

僧侶「……」

魔法使い「とりあえず、私達はまだここで待機……」

魔法使い「ダークエルフの軍勢は、まだ確認がされていないの……」

魔法使い「これ、完全に危ないわよね?……」

魔法使い「私達、本当にこれからどうなっちゃうの?……」ポロポロッ

553: 2013/12/14(土) 15:41:46 ID:vWpatYGM
僧侶「魔法使い。今は、そう言う事を考えるのを止めましょ」

僧侶「今回の件は、魔法使いの責任なんかじゃないから」ニッコリ

魔法使い「……」ポロポロッ

僧侶「ほらっ、魔法使い笑って」

僧侶「魔法使い、笑って」ニコニコ

魔法使い「……」ポロポロッ

僧侶「いずれ、勇者様の件については、敵がバラしていたよ」

僧侶「魔導師様達はああ言ってたけど、いずれバレちゃう事だったんだよ」

魔法使い「……でも」ポロポロッ

スッ、フキフキ……

554: 2013/12/14(土) 15:42:00 ID:vWpatYGM
僧侶「魔法使い。大丈夫だから」

僧侶「私達、このまま氏んだりはしないから」ニッコリ

魔法使い「……」ポロポロッ

僧侶「魔導師様達は、昔からずっと誰かの所為にしてばかり」

僧侶「そんなんだから、人の恨みを買う事になるのよ」ニコニコ

魔法使い「……」ポロポロッ

僧侶「とりあえず、それ飲んだら少し出歩かない?」

僧侶「今の魔法使いには、少し気分転換が必要だから」

魔法使い「……ええ、そうね」

スッ、コトッ……

555: 2013/12/14(土) 15:42:18 ID:vWpatYGM
スタスタスタッ、ピタッ……

スッ、ムギュッ……

僧侶「……」ニコニコ

魔法使い「……」ポロポロッ

僧侶「……」ニコニコ

魔法使い「……」ポロポロッ

僧侶「魔法使い。早く、元の魔法使いに戻って」

僧侶「いくら、魔法使いが泣いてたとしても、何も変わらないんだから」ニコニコ

魔法使い「……」コクン

僧侶「……」ニコニコ

556: 2013/12/14(土) 15:42:32 ID:vWpatYGM
僧侶「後、戦士は市場で買い物をしてるわ」

僧侶「戦士。なんか、今日は一人で買い物をしたいみたいだし」

僧侶「多分、例の薬を使ってお肉買いに行ったんだと思う」

僧侶「戦士、ここの市場のドライソーセージを気に入っちゃってね」

僧侶「それで、朝から戦士は買い物に行ったのかもしれないわね」ニコニコ

魔法使い「……そう。相変わらずね」クスッ

僧侶「……」ニコニコ

魔法使い「……」

僧侶「……」ニコニコ

魔法使い「……」ニッコリ

557: 2013/12/14(土) 15:42:49 ID:vWpatYGM
僧侶「さてっ、魔法使いも元気が出てきた事だし、少し出るわよ」

僧侶「ちょっと、今から私に付き合ってくれる?」

僧侶「大丈夫。魔導師様達にはバレない様にするから」

僧侶「少し、私達も市場の方に行かない?」

魔法使い「うん。良いけど」

僧侶「とりあえず、魔導師様への言い訳については戦士を探す事」

僧侶「戦士。あの後ずっと一人で行動をしちゃってるし」

僧侶「そろそろ、魔導師様辺りが文句を言って来そうだからね」ニッコリ

魔法使い「ええ、了解したわ」ニコニコ

スッ、ササッ……

558: 2013/12/14(土) 15:43:01 ID:vWpatYGM
クルッ、キィーッ……

コトッ、コトッ……

僧侶「とりあえず、先に戦士と合流をしましょ」

僧侶「戦士の向かった先は、すぐ分かるからね」

魔法使い「……」コクン

僧侶「魔法使い。早く元気になってね」

僧侶「今のままの魔法使いも可愛いけど、私はいつもの魔法使いの方が好きだから」ニコニコ

魔法使い「……ええ、了解したわ」ゾクッ

クルッ、スタスタスタッ……

スタスタスタッ、スタスタスタッ……

559: 2013/12/15(日) 16:03:01 ID:s8dZDU0M
~とある城下町・中央広場~

ザワザワザワッ、ザワザワザワッ……

魔術師「皆さん。どうか落ち着いて下さい!」

魔術師「我々は、傭兵隊の者です!」

魔術師「速やかに、持ち場に戻って下さい!」

ザワザワザワッ、ザワザワザワッ……

魔術師「皆さん。どうか落ち着いて下さい!」

魔術師「我々は、傭兵隊の者です!」

魔術師「どうか、落ち着いて下さい!」

ザワザワザワッ、ザワザワザワッ……

560: 2013/12/15(日) 16:03:13 ID:s8dZDU0M
魔法使い「ねぇ、僧侶。この騒ぎは一体何?」

魔法使い「何故、皆はこんなにも騒いでるの?」

僧侶「さぁ」

魔法使い「魔術師さん。かなり大変そう」

魔法使い「このまま、私達も応援に駆けつけた方が良いのかしら?」

僧侶「……」

魔術師「皆さん。どうか落ち着いて下さい!」

魔術師「我々が、この国を必ず守ります!」

魔術師「ですから、皆さんはどうか安心して下さい!」

ザワザワザワッ、ザワザワザワッ……

561: 2013/12/15(日) 16:03:25 ID:s8dZDU0M
「なぁ、聞いたか?」

「あの勇者が、しくじったみたいだ!」

「ついさっき、あの糞国王の元に連絡があったみたいでな!」

「それで、大臣様の頭が完全におかしくなったらしい!」

「え? 嘘!?」

「そんな!?」

「くっ……」

魔法使い「……」ハッ

僧侶「魔法使い」

スッ、ギュッ……

562: 2013/12/15(日) 16:03:57 ID:s8dZDU0M
「それだけならまだしも、ウチの糞国王は何の対策すら取っちゃいねえ!」

「このままだと、俺達は犬氏にだ!」

「全ては、あの勇者と糞国王の所為なんだ!」

「だから、早く俺達もここから脱出するんだ!」

「おうっ!」

「ええっ、そうね!」

魔法使い「……」

僧侶「……」

「でも、一体どうやって?」

「今、城門には魔術師とか言う爺さんがいるんだぞ!」

563: 2013/12/15(日) 16:04:27 ID:s8dZDU0M
「ああ、それなら心配はいらない!」

「魔導師だかなんだか知らんが、向こうはたった一人だ!」

「俺達は、一体何人いると思ってる?」

「ここを出て、どこか遠くの町に行くだけなら何も心配はいらない!」

魔術師「……」ハッ

「けど、あの爺さんはかなり強いらしいぞ!」

「つい昨日から、あの爺さんが多数の兵をどこからか集めてる!」

「それに、あの爺さんと一緒にいる老剣士すら危ねぇ!」

「あの二人、例の勇者の師匠か何からしい!」

「何!?」

564: 2013/12/15(日) 16:04:44 ID:s8dZDU0M
「それなら、俺も見たぞ!」

「あの爺さん達、ずっと城門の警備してやがる!」

「多分、これからここで戦か何か始まるんじゃないか?」

「やっぱり、例のエルフ達が俺達は対して兵を挙げたんだ!」

魔術師「……」ジーーッ

「なら、俺達は今後どうすりゃあ良いんだよ!?」

「やっぱり、このまま犬氏にするしかねぇんじゃないか!?」

「あの勇者、本当に役に立たねぇ!」

「つい最近、見事に魔王を討ち取った癖に、エルフ如きにヘマしてんじゃねぇ!」

魔術師「……」ジーーッ

565: 2013/12/15(日) 16:04:57 ID:s8dZDU0M
「おいっ、お前ら落ち着け!」

「傭兵隊の連中が、何かししゃり出て来やがった!」

「あいつら、俺達の事を鎮圧しに来たぞ!」

「ついさっきから、俺達の事をマークしてやがる!」

「何!?」

魔術師「……」ジーーッ

「とりあえず、ここは散るぞ!」

「皆、早く荷物纏めてここを出るんだ!」

「おうっ!」

「了解した!」

566: 2013/12/15(日) 16:05:12 ID:s8dZDU0M
魔術師「隊長。いくつか、不穏な噂を流す輩が若干あり」

魔術師「如何致しますか?」ジーーッ

傭兵隊長「……」

魔術師「隊長。早くご決断を!」

魔術師「あの者達、もしかしたら間者の可能性があります!」ジーーッ

傭兵隊長「ああ、了解した!」スッ

傭兵達「……」ダッ

「皆、早く逃げろ!」

「エルフ達が、ここに攻めてくるぞ!」

ザワザワザワッ、ザワザワザワッ……

567: 2013/12/15(日) 16:05:25 ID:s8dZDU0M
「皆、早く荷物纏めて逃げるんだ!」

「エルフ達に殺されたくなかったら、さっさと早く逃げやがれ!」

ワーーーーッ、ワーーー-ッ、ワーーーーッ……

ダダダダダダッ、ダダダダダダッ……

「皆、早く逃げろ!」

「エルフ達に、殺される前にな!」

ワーーーーッ、ワーーー-ッ、ワーーーーッ……

ダダダダダダッ、ダダダダダダッ……

「イヤイヤイヤ!」

「そんなのイヤ――――――――ッ!?」

568: 2013/12/15(日) 16:05:39 ID:s8dZDU0M
ザワザワザワッ、ザワザワザワッ……

ワーーーーッ、ワーーー-ッ、ワーーーーッ……

ザワザワザワッ、ザワザワザワッ……

ワーーーーッ、ワーーー-ッ、ワーーーーッ……

魔術師「隊長。逃げられました!」

魔術師「あの輩、やはり間者だったのでは?」

傭兵隊長「ああ、そうみたいだな」

魔術師「隊長。向こうに、魔法使いさん達がいます!」

魔術師「彼女達にも、間者の捜索には協力をして貰っても宜しいですか!」

傭兵隊長「ああ、構わん!」

569: 2013/12/15(日) 16:07:57 ID:s8dZDU0M
ダダダダダダッ、ダダダダダダッ……

ワーーーーッ、ワーーー-ッ、ワーーーーッ……

ダダダダダダッ、ダダダダダダッ……

ワーーーーッ、ワーーー-ッ、ワーーーーッ……

魔法使い「……」ウルウルッ

僧侶「……」スッ、フキフキ

魔法使い「……」

僧侶「……」

スタスタスタッ、スタスタスタッ……

スタスタスタッ、ピタッ……

570: 2013/12/15(日) 16:08:11 ID:s8dZDU0M
魔術師「魔法使いさん。もう大丈夫なのですか?」

魔術師「見た所、また魔法使いさんは悲しそうな顔をしていらっしゃいますよ」

魔法使い「……」ウルウルッ

魔術師「もしかして、この騒ぎの事が原因ですか?」

魔術師「この騒ぎに関しては、魔法使いさんは全く関係はありませんよ!」

魔法使い「……」ウルウルッ

僧侶「こんにちは、魔術師さん。今回は、少し気分転換に」

僧侶「それと、魔導師様からの連絡は入っていますか?」

僧侶「ついさっき、魔法使いの方には魔導師様からの連絡が入りました」

僧侶「その件で、私達は魔術師さんの方にも確認を入れに来たと言う訳です」

571: 2013/12/15(日) 16:08:25 ID:s8dZDU0M
魔術師「ああ、そうなんですか」

魔術師「僧侶さん達、本当に仲が宜しいんですね」

魔術師「でも、私達の方には何も入ってはいませんよ」

魔術師「あのお爺さん達、何故か私達には情報を入れたがろうとはしないみたいですから」

僧侶「え?」

魔法使い「why?」ウルウルッ

魔術師「……もしかして、何か動きがあったのですか?」

魔術師「私達の方でも、何故か魔法通信が上手く使えていないんです!」

魔術師「おかげで、ここの民達が余計に混乱をしてしまってます!」

魔術師「未だに、大臣様はトチ狂ったままの状態みたいですからね!」

572: 2013/12/15(日) 16:08:40 ID:s8dZDU0M
僧侶「実は、ついさっき魔導師様からはこう連絡が入りました」

僧侶「ハーフエルフの軍勢一万が、こちらに向けて出撃」

僧侶「ダークエルフの軍勢は、まだ確認は取れていない」

僧侶「そう、魔法使いに対して連絡をしてきたんです!」

魔術師「!?」

僧侶「ですから、私達はそれを伝えに来ました」

僧侶「そのついでに、今ここでずっと泣いてばかりの魔法使いの気分転換も合わせて」

僧侶「ですから、魔術師さんもどうかご用心の程を!」

僧侶「魔導師様達、何か良からぬ事を企んでいるのかもしれません!」

魔法使い「……」ウルウルッ

573: 2013/12/15(日) 16:08:53 ID:s8dZDU0M
魔術師「ええ、ありがとうございます。僧侶さん」

魔術師「この知らせについては、すぐに隊長の方にもお伝えします」

魔術師「それと、つい先程になって我々はこの城下町に潜んでいた間者達を発見致しました!」

魔術師「その間者達は、我が国の民達を言葉巧みに煽動!」

魔術師「今まさに、その噂を真に受けた民達がここから脱出しようと、慌ただしく動き始めてます!」

魔術師「ですから、魔法使いさん達もその間者摘発にご協力下さい!」

僧侶「はい。かしこまりました」

魔法使い「……本当に、申し訳ありません」ペコッ

魔術師「……」

僧侶「……魔法使い」

574: 2013/12/15(日) 16:09:06 ID:s8dZDU0M
魔術師「とりあえず、僧侶さんは魔法使いさんと一緒に行動を」

魔術師「魔法通信は使えませんが、他の魔法や魔術等は今でも使えるみたいです」

魔術師「後、魔法使いさんは今回の件を気にし過ぎです!」

魔術師「魔法使いさんの事を責めているのは、あのお爺さん達二人だけ!」

魔術師「それ以外の人達は、全く魔法使いさんの事を責めてはいませんからね!」ニッコリ

魔法使い「……魔術師さん」ムクッ

魔術師「……」ニコニコ

僧侶「……」ナデナデ

魔術師「とりあえず、私は隊長にこの件を伝えてきます」

魔術師「お二人は、そこで待っていて下さい」ニコニコ

575: 2013/12/15(日) 16:09:18 ID:s8dZDU0M
クルッ、スタスタスタッ……

スタスタスタッ、スタスタスタッ……

魔法使い「……」

僧侶「……」

魔法使い「僧侶。少し気持ちがが楽になったから、もうしなくて良いわ……」

魔法使い「後で、あの糞爺達を地獄へと送る……」

魔法使い「その後で、しっかりと確実にあの勇者もね……」

魔法使い「うふふっ……」ニッコリ

僧侶「そう。了解したわ」ニッコリ

スッ、ササッ……

576: 2013/12/15(日) 16:09:30 ID:s8dZDU0M
魔法使い「後、僧侶はハーブ使い過ぎよ」

魔法使い「一体、どんだけハーブ使ってるのよ?」

魔法使い「また、後でハーブ補充しないといけないじゃない」

魔法使い「ここまで持ち直すまで、一体どんだけハーブを使ったのよ?」

僧侶「さぁ、どれぐらいだったかしらね」ニコニコ

魔法使い「……」

僧侶「とりあえず、戦士の事はどうする?」

僧侶「この分だと、市場の方はちゃんと開いてるのかしら?」

僧侶「もし開いてないのなら、先に宿屋か傭兵隊本部に戻ってるはずなんだけど」ニコニコ

魔法使い「さぁ、私分からないわ」

577: 2013/12/15(日) 16:09:41 ID:s8dZDU0M
僧侶「やっぱり、ついさっきまでの魔法使いも捨てがたいかな」

僧侶「本当に、ついさっきまでの魔法使いが可愛かったもん」

僧侶「ねぇ、魔法使い。今度ゆっくりと時間とか取れない?」

僧侶「魔法使いが良ければ、私が色々と教えてあげる」

僧侶「私、以前から魔法使いの事を狙ってたし……」

僧侶「魔法使いが良ければ、普段と違う私を見せてあげても良いからね!」ニヤリ

魔法使い「!?」ビクッ

僧侶「……」ニヤニヤ

スタスタスタッ、スタスタスタッ……

スタスタスタッ、ピタッ……

578: 2013/12/15(日) 16:09:54 ID:s8dZDU0M
魔術師「お二人さん。許可取れましたよ」

魔術師「では、早速この城下町内の捜索に入って下さい」

僧侶「はい。かしこまりました」クルッ

魔法使い「……」

魔術師「では、お二人共頑張って下さいね!」

魔術師「私、女同士でもいける口なんで!」ニッコリ

魔法使い「――――――――っ!?」

僧侶「はい。かしこまりました!」ニコニコ

魔術師「……」ニコニコ

579: 2013/12/15(日) 16:11:22 ID:s8dZDU0M
僧侶「魔法使い。早く行きましょう」

僧侶「魔術師さん。何か解り次第、すぐ連絡をします」

僧侶「後、戦士を見掛けたら今さっきの件をお伝え下さい」

僧侶「私達、暫く二人っきりで行動を致しますので」ニヤリ

魔術師「はい。かしこまりました」ニヤリ

魔法使い「……」ビクビクッ

魔法使い(もしかして、私の精神が不安定なのはこの二人が原因?……)

魔法使い(もしそうだったとしたら、かなり最悪だわ……)ビクビクッ

クルッ、スタスタスタッ……

スタスタスタッ、スタスタスタッ……

580: 2013/12/16(月) 07:29:47 ID:g6pK0ZzA
~とある城下町・城壁の上~

ドドドドドドッ、ドドドドドドッ……

ドドドドドドッ、ドドドドドドッ……

魔導師「老剣士。どう見る?」

魔導師「敵の動き、結構早くないか?」

老剣士「ああ、そうだな」

魔導師「敵の数が、予想以上に多い」

魔導師「それに、どうやって今後は敵を防ぐかが問題だな」

老剣士「ああ、そうだな」

伝令兵達「……」

581: 2013/12/16(月) 07:30:00 ID:g6pK0ZzA
ドドドドドドッ、ドドドドドドッ……

ドドドドドドッ、ドドドドドドッ……

魔導師「伝令兵長。全隊に迎撃態勢を発令!」

魔導師「弓隊、攻撃用意!」

魔導師「歩兵隊は、敵が落とし穴に嵌まるまで待機だ!」

魔導師「急げ!」

伝令兵長「はっ!」

スッ、ササッ……

伝令兵長「……」フリフリ

伝令兵達「……」フリフリ

582: 2013/12/16(月) 07:30:11 ID:g6pK0ZzA
ドドドドドドッ、ドドドドドドッ……

ドドドドドドッ、ドドドドドドッ……

老剣士「魔導師。落とし穴とは何の事だ?」

老剣士「そなた、いつそんな物を用意していた?」

魔導師「ああ、昨夜の内にな」

老剣士「果たして、落とし穴だけで大丈夫なのか?」

老剣士「敵は、ハーフエルフだけではないのだぞ!」

魔導師「ああ、大丈夫だ」

伝令兵長「……」フリフリ

伝令兵達「……」フリフリ

583: 2013/12/16(月) 07:30:23 ID:g6pK0ZzA
ドドドドドドッ、ドドドドドドッ……

ドドドドドドッ、ドドドドドドッ……

老剣士「敵は、まずは騎兵からか」

老剣士「普通、攻城戦なら歩兵から出すであろう」

老剣士「一体、敵は何を考えておる?」

老剣士「そのまま、我らとやり合うつもりなのか?」

魔導師「さぁ、分からんな」

老剣士「……」

伝令兵長「……」フリフリ

伝令兵達「……」フリフリ

584: 2013/12/16(月) 07:30:35 ID:g6pK0ZzA
~とある城下町・城門前~

ドドドドドドッ、ドドドドドドッ……

ドドドドドドッ、ドドドドドドッ……

召喚兵副長「隊長。魔導師様より合図が出ました!」

召喚兵副長「迎撃態勢の発令です!」

召喚兵隊長「うむ。了解した!」

召喚兵副長「全隊、迎撃態勢を取れ!」

召喚兵副長「弓隊、攻撃用意!」

召喚兵副長「歩兵隊は、敵が落とし穴に嵌まるまで待て!」

召喚兵達「お――――――――っ!」

585: 2013/12/16(月) 07:30:46 ID:g6pK0ZzA
ドドドドドドッ、ドドドドドドッ……

ドドドドドドッ、ドドドドドドッ……

召喚弓兵長「……」

召喚弓兵達「……」

スッ、ササササササッ……

ササササササッ、ササササササッ……

召喚弓隊長「……」スッ

召喚兵副長「隊長。弓隊の射撃態勢完了!」

召喚兵副長「いつでも、撃てます!」

召喚兵隊長「うむ。了解した!」

586: 2013/12/16(月) 07:30:58 ID:g6pK0ZzA
ドドドドドドッ、ドドドドドドッ……

ドドドドドドッ、ドドドドドドッ……

召喚兵隊長「弓隊、そのまま引き付けろ!」

召喚兵隊長「俺が合図するまで、絶対に仕掛けるな!」

弓兵達「……」ギリギリ

召喚兵隊長「副長。魔導師様にすぐさま報告!」

召喚兵隊長「迎撃態勢完了とな!」

召喚兵副長「はっ!」

クルッ、スッ……

フリフリ、フリフリ……

587: 2013/12/16(月) 07:31:08 ID:g6pK0ZzA
~とある城下町・城壁の上~

ドドドドドドッ、ドドドドドドッ……

ドドドドドドッ、ドドドドドドッ……

魔導師「む? もう迎撃態勢完了とな」

魔導師「さすが、親父が編み出した召喚兵達。かなり優秀だな」

老剣士「……」

魔導師「とりあえず、後は敵が落とし穴に嵌まるのを待つだけ」

魔導師「老剣士は、まだこの場で待機しておいてくれ」

老剣士「ああ、了解した」

588: 2013/12/16(月) 07:31:18 ID:g6pK0ZzA
ドドドドドドッ、ドドドドドドッ……

ドドドドドドッ、ドドドドドドッ……

密偵「報告。各地区にて、敵の間者らしき不審者あり」

密偵「今現在、傭兵隊が捜索にあたっています」

密偵「例の勇者の同行者三名は、騒ぎを聞き付けてすぐ傭兵隊に合流」

密偵「民達の不安は、極限にまで達しています」

魔導師「……」

老剣士「して、大臣の方は?」

老剣士「大臣の方は、まだ牢に入れられているのか?」

密偵「はい」

589: 2013/12/16(月) 07:31:48 ID:g6pK0ZzA
ドドドドドドッ、ドドドドドドッ……

ドドドドドドッ、ドドドドドドッ……

老剣士「全く、またあのガキ共がしゃしゃり出てきた!」

老剣士「一体、何度我らの邪魔をすれば気がするんだ!」ムカッ

魔導師「……」

老剣士「大体、あいつら俺達の邪魔をし過ぎだろ!」

老剣士「城下町に潜入した敵の間者共々、奴等を一人残らず捕らえて来い!」ムカムカッ

密偵「はっ!」ビシッ

590: 2013/12/16(月) 07:34:29 ID:g6pK0ZzA
~とある城下町・城門前~

ドドドドドドッ、ドドドドドドッ……

ドドドドドドッ、ドドドドドドッ……

ポツポツポツ、ポツポツポツ……

召喚兵隊長「……」

召喚兵副長「……」

召喚兵達「……」

ポツポツポツ、ポツポツポツ……

召喚兵隊長「む? 雨か……」

召喚兵副長「ええ、そうみたいですね」

召喚兵達「……」

591: 2013/12/16(月) 07:34:41 ID:g6pK0ZzA
ドドドドドドッ、ドドドドドドッ……

ドドドドドドッ、ドドドドドドッ……

ポツポツポツ、ポツポツポツ……

召喚兵隊長「……」

召喚兵副長「……」

召喚兵達「……」

ポツポツポツ、ポツポツポツ……

シュン、ズドドドドドドドーーーーーーーーン……

ズドドドドドドドーーーーーーーーン……

召喚兵隊長「おっ、落ちたみたいだな」

592: 2013/12/16(月) 07:34:52 ID:g6pK0ZzA
ダダダダダダッ、ダダダダダダッ……

ズドドドドドドドーーーーーーーーン……

ダダダダダダッ、ダダダダダダッ……

ズドドドドドドドーーーーーーーーン……

召喚兵隊長「副長。魔導師様にすぐさま報告!」

召喚兵隊長「敵は、魔導師様が仕掛けられた落とし穴に嵌まった!」

召喚兵隊長「我、敵の追討の指示を求む!」

召喚兵隊長「急げ!」

召喚兵副長「はっ!」

クルッ、フリフリ……

593: 2013/12/16(月) 07:35:12 ID:g6pK0ZzA
~とある城下町・城壁の上~

魔導師「おおっ、老剣士。敵が落ちたぞ!」

魔導師「敵が俺の仕掛けた落とし穴に、まんまと嵌まりおった!」ニパァ

老剣士「!?」

魔導師「おまけに、敵の動きがすぐに止まった!」

魔導師「この分だと、先発隊は大打撃!」

魔導師「これより、敵の追討に入る!」

魔導師「ようやく、そなたの出番じゃぞ!」クルッ

老剣士「ああ、了解した!」ニパァ

クルッ、スタタタタタッ……

594: 2013/12/16(月) 07:35:43 ID:g6pK0ZzA
魔導師「伝令兵長。歩兵隊に、すぐさま追討の合図を!」

魔導師「敵は、我らの仕掛けた落とし穴にまんまと嵌まった!」

魔導師「弓隊に、落とし穴に向けて攻撃を仕掛けよ!」

魔導師「歩兵隊は、落とし穴から這い出てきた敵兵の追討をせい!」

伝令兵長「はっ!」ビシッ

伝令兵達「……」スッ

伝令兵長「……」フリフリ

伝令兵達「……」フリフリ

伝令兵長「……」フリフリ

伝令兵達「……」フリフリ

595: 2013/12/16(月) 07:35:55 ID:g6pK0ZzA
~とある城下町・城門前~

召喚兵副長「隊長。魔導師様からの合図です!」

召喚兵副長「弓隊に対し、落とし穴に向けて攻撃を開始せよ!」

召喚兵副長「歩兵隊は、老剣士様と共に落とし穴にまで迎え!」

召喚兵副長「落とし穴から這い出てきた敵兵を、すぐさま追討せよ! 以上です!」

傭兵隊長「うむ。了解した」

スチャ、スラァン……

召喚兵隊長「全隊、攻撃開始!」

召喚兵隊長「弓隊、落とし穴に向けて矢を放て!」

召喚兵隊長「歩兵隊は、老剣士様と共に落とし穴から這い出てきた敵兵を追討するのだ!」

596: 2013/12/16(月) 07:36:14 ID:g6pK0ZzA
召喚弓隊長「弓隊、構え――――っ!」

召喚弓隊長「目標、味方が仕掛けた落とし穴周辺!」

周辺弓隊長「放て――――っ!」ブン

召喚兵弓兵達「……」サッ

スパパパパパッ、スパパパパパッ……

スパパパパパッ、スパパパパパッ……

スッ、ササササササッ……

ササササササッ、ササササササッ……

スパパパパパッ、スパパパパパッ……

スパパパパパッ、スパパパパパッ……

597: 2013/12/16(月) 07:36:25 ID:g6pK0ZzA
スタタタタタッ、スタタタタタッ……

スタタタタタッ、スタタタタタッ……

ピタッ、クルッ……

老剣士「召喚兵隊長。待たせたな!」

老剣士「これより、俺は敵陣に切り込む!」

老剣士「歩兵隊を暫し借りてくぞ!」

召喚兵隊長「ええ、構いませんが」

召喚兵副長「歩兵隊、老剣士様に続け!」

召喚兵副長「ただし、第一から第六中隊までだ!」

召喚兵達「お――――――――っ!」

598: 2013/12/16(月) 07:36:35 ID:g6pK0ZzA
老剣士「では、これで失礼する!」

老剣士「諸君、また会おうぞ!」

召喚兵隊長「ええ、お気を付けて!」

召喚兵副長「老剣士様、吉報をお待ちしております!」

老剣士「ああ、了解した」

クルッ、スタタタタタッ……

スタタタタタッ、スタタタタタッ……

召喚歩兵隊長「第一中隊、進め!」

召喚歩兵隊長「老剣士様に遅れを取るな!」

スッ、スラララララァン……

599: 2013/12/16(月) 07:36:58 ID:g6pK0ZzA
ダダダダダダッ、ダダダダダダッ……

ダダダダダダッ、ダダダダダダッ……

スパパパパパッ、スパパパパパッ……

ダダダダダダッ、ダダダダダダッ……

ダダダダダダッ、ダダダダダダッ……

スパパパパパッ、スパパパパパッ……

召喚兵隊長「弓隊、攻撃中止!」

召喚兵隊長「味方が、落とし穴に向かった!」

召喚兵隊長「その場で、待機せよ!」

召喚弓隊長「はっ!」

600: 2013/12/16(月) 07:38:36 ID:g6pK0ZzA
ダダダダダダッ、ダダダダダダッ……

ダダダダダダッ、ダダダダダダッ……

スパパパパパッ、スパパパパパッ……

ダダダダダダッ、ダダダダダダッ……

ダダダダダダッ、ダダダダダダッ……

スパパパパパッ、スパパパパパッ……

召喚弓隊長「弓隊、攻撃中止!」

召喚弓隊長「別名あるまで、そのまま待機!」

ピタタタタタッ、ピタタタタタッ……

ピタタタタタッ、ピタタタタタッ……

601: 2013/12/16(月) 07:38:48 ID:g6pK0ZzA
~とある城下町・城壁の上~

魔導師「うむ。なかなかの腕だ!」

魔導師「親父の奴、何でこれを俺に譲らなかったのか?」

魔導師「これで、奴を倒せる!」

魔導師「あの憎き女侯爵XXXXXXを、ようやくながらも倒す事が出来てしまう!」ニヤリ

伝令兵達「……」

魔導師「伝令兵長。すぐに、ここの国王に急報を知らせよ!」

魔導師「引き続き、城下町内では魔法通信を禁止する!」

魔導師「我が隊は、迫り来るハーフエルフの軍勢を迎え撃った!」

魔導師「このまま、後続の部隊も叩くとな!」

伝令兵長「はっ!」

602: 2013/12/16(月) 07:38:58 ID:g6pK0ZzA
魔導師「後、例の傭兵隊にはまだ何も伝えるな!」

魔導師「あ奴等は、金によって態度を変える奴等だ!」

魔導師「引き続き、城下町内の警備を担当して貰う!」

魔導師「特に、例の勇者の同行者三人には何も伝えるな!」

伝令兵長「はっ!」

クルッ、スタタタタタッ……

スタタタタタッ、スタタタタタッ……

伝令兵達「……」

魔導師(これで、あの憎きハーフエルフに勝つ事が出来る……)

魔導師(親父。俺が必ず、あんたの敵を討ってやるからな!)ニヤニヤ

603: 2013/12/17(火) 12:32:30 ID:7rV49M.6
~外来用病院・廊下~

その頃――

スタスタスタッ、スタスタスタッ……

スタスタスタッ、スタスタスタッ……

警備兵達「……」

スタスタスタッ、スタスタスタッ……

スタスタスタッ、スタスタスタッ……

クルッ、ピタッ……

巨大猫「すまぬ。開けてくれ」

警備兵「ああ、了解した」

604: 2013/12/17(火) 12:32:43 ID:7rV49M.6
スッ、ガチャ……

スタスタスタッ、スタスタスタッ……

スタスタスタッ、ピタッ……

巨大猫「何じゃ、勇者はまだ寝ておるのか」

巨大猫「もう既に、午前九時を過ぎたと言うのに」

勇者「ZZZ……」

勇者「ZZZ……」

勇者「ZZZ……」

勇者「ZZZ……」

スッ、バタン……

605: 2013/12/17(火) 12:32:54 ID:7rV49M.6
警備兵2「あいつ、まだ寝てるのか?」

警備兵2「一体、どんだけ眠るつもりなんだよ?」

警備兵「さぁな」

警備兵2「しかし、俺達は暇だな」

警備兵2「ハーフエルフの連中は、今頃XXX王国を攻めていると言うのに」

警備兵「ああ、そうだな」

警備兵2「けど、ここ最近は出撃が多くね?」

警備兵2「つい先日から、エルフ近衛連隊が迷いの森まで出撃をしてる」

警備兵2「それだけでなく、エルフ騎士団まで外征にし出した」

警備兵2「一体、これからどうなるんだろうか?」

606: 2013/12/17(火) 12:33:07 ID:7rV49M.6
警備兵「警備兵2。下っ端の俺達には何も分からねぇよ」

警備兵「俺達は、本当にただの下っ端だ」

警備兵「上のやる事は、詳しくは教えては貰えねぇ」

警備兵「第一、外征している連中とは所属先が違うだろ」

警備兵2「ああ、そうなんだが」

警備兵3「でも、それを言ったら俺も気になるな」

警備兵3「最近出来たエルフ衛兵隊の連中は、エルフ近衛連隊の代わりに宮廷内を警備してる」

警備兵3「今まで、宮廷内の警備はエルフ近衛連隊の任務だ」

警備兵3「それを突き崩すなんて、絶対に裏で何かあるとしか思えねぇがな」

警備兵2「ああ、そうだな」

607: 2013/12/17(火) 12:33:19 ID:7rV49M.6
「おいっ、お前ら。私語を慎め!」

「今はまだ、任務中だぞ!」

警備兵「!?」ハッ

警備兵「げっ!?」ハッ

警備兵3「失礼しました。警備兵長!」クルッ

警備兵達「……」ビシッ

スタスタスタッ、ピタッ……

警備兵長「お前ら、今は任務中だ!」

警備兵長「警備兵なら警備兵らしく、しっかりと任務に励め!」

警備兵達「はっ! 申し訳ございません!」

608: 2013/12/17(火) 12:33:36 ID:7rV49M.6
警備兵長「お前ら、ここ最近は弛み過ぎだ!」

警備兵長「そろそろいい加減にせんと、営倉に送るぞ!」

警備兵長「俺達の任務は、この病院内の警備だ!」

警備兵長「その事を、絶対に忘れるな!」

警備兵達「はっ!」

クルッ、スタスタスタッ……

スタスタスタッ、スタスタスタッ……

警備兵「ふぅ……」

警備兵2「……」

警備兵3「……」

609: 2013/12/17(火) 12:33:47 ID:7rV49M.6
警備兵「なぁ、ここ最近は警備兵長が煩くねぇか?」

警備兵「一体、何があったんだよ?」

警備兵2「さぁ、知らんな」

警備兵「今まで、警備兵長も暢気に昼寝とか飲酒とかしてたのに」

警備兵「新しく来た警備下士官に、それを咎められたんだろうか?」

警備兵2「ああ、多分な」

警備兵3「……」

スタスタスタッ、スタスタスタッ……

スタスタスタッ、スタスタスタッ……

ピタッ、ピタッ……

610: 2013/12/17(火) 12:34:08 ID:7rV49M.6
エルフ看護師4「すみません。勇者様にお出しした朝食の食器の回収に参りました」

エルフ看護師4「ここを通して貰っても、よろしいでしょうか?」

警備兵「ああ、構わんが」

エルフ看護師4「失礼致します」ペコッ

スッ、ガチャ……

クルッ、スタスタスタッ……

スタスタスタッ、スタスタスタッ……

スタスタスタッ、ピタッ……

エルフ看護師4「あら?」

巨大猫「む? どうした?」

611: 2013/12/17(火) 12:34:19 ID:7rV49M.6
エルフ看護師4「あの、勇者様はまだご就寝中なのですか?」

エルフ看護師4「もう、午前9時を過ぎていますが」

巨大猫「ああ、そうじゃ」

勇者「ZZZ……」

エルフ看護師4「おまけに、ご朝食すら召し上がった形跡すらない」

エルフ看護師4「人間って、ここまで眠るものなのでしょうか?」

巨大猫「さぁ、分からんな」

勇者「ZZZ……」

エルフ看護師4「……」ジーーッ

勇者「ZZZ……」

612: 2013/12/17(火) 12:34:30 ID:7rV49M.6
巨大猫「とりあえず、こ奴の分の朝食は下げてくれ」

巨大猫「ここに置いていても、冷める一方じゃ」

巨大猫「後、エルフ医師をここに」

巨大猫「今の勇者の症状、どこかおかしいと思うのからのぅ」

エルフ看護師4「はい。かしこまりました」

勇者「ZZZ……」

巨大猫「……」

スッ、コトッ……

クルッ、スタスタスタッ……

スタスタスタッ、スタスタスタッ……

スタスタスタッ、スタスタスタッ……

613: 2013/12/17(火) 12:35:33 ID:7rV49M.6
警備兵「巨大猫。他に必要な事は?」

警備兵「もしあるんなら、今の内に言っとけ?」

巨大猫「いや、ないが」

警備兵「なら、ここを閉めるな」

警備兵「勇者のお守り、しっかりとな」

巨大猫「ああ、了解した」

スッ、バタン……

警備兵「……」

警備兵2「……」

警備兵3「……」

614: 2013/12/17(火) 13:45:23 ID:7rV49M.6
~とある宮殿・女王の執務室~

その一方――

衛兵隊長「報告。ハーフエルフの軍勢が、XXX王国と交戦状態に入りました!」

衛兵隊長「今現在、XXX王国は魔導師XX率いる召喚兵隊を主力とし、城内にて籠城!」

衛兵隊長「ハーフエルフの軍勢に、多大な氏傷者が出ています!」

衛兵隊長「城下町に潜入している一部の偵察兵とは、未だに連絡が取れません!」

エルフ女王「……」

衛兵隊長「陛下。如何致しますか?」

衛兵隊長「今入っている情報は、以上となりますが!」

エルフ女王「……そう、たったそれだけなの」

615: 2013/12/17(火) 13:45:35 ID:7rV49M.6
エルフ王女「衛兵隊長。女侯爵XXXXXXからの情報は?」

エルフ王女「彼女は、あの子の保護者です」

エルフ王女「こんな僅かな情報で、陛下にどうしろと?」

エルフ王女「女侯爵XXXXXXからは、何の情報も入って来ないのですか?」

衛兵隊長「はい!」

エルフ女王「でも、あの子なら大丈夫よ」

エルフ女王「あの子、私の事を裏切ったりはしないもの」

エルフ女王「本当に、あの子は何を考えているのかしらね?」

エルフ女王「このまま、どんどん海外に属領でも増やしていくつもりなのかしら?」ニッコリ

衛兵隊長「さぁ、何も解りませぬ」

616: 2013/12/17(火) 13:45:46 ID:7rV49M.6
エルフ王女「陛下。あまり、あの子の事を信用なされるのはどうかと思います!」

エルフ王女「あの子は、過去に陛下に弓を引いた反逆者なのですよ!」

エルフ王女「元々、あの子は本当に汚らわしい存在でした!」

エルフ王女「たとえ、あの後エルフに転生しようが、絶対にあの子の犯した罪は消えません!」

衛兵隊長「……」

エルフ女王「けど、今の貴女に比べたら遥かに優秀だわ!」

エルフ女王「あの子のおかげで、あの戦の後もエルフの里が糾弾されずに済んでいるんでしょうが!」

エルフ女王「私、あの子が成人した暁には、すぐにも側近として登用をしたい!」

エルフ女王「あの子に一軍を任せて、大陸全土を平定して貰いたい!」

エルフ王女「!?」

617: 2013/12/17(火) 13:45:58 ID:7rV49M.6
エルフ女王「だから、あんたは早く仕事等を覚えなさい!」

エルフ女王「本日の各省庁から送られてくる書類等は、一体どこにあるのよ?」

エルフ女王「今のあんたに、あの子の事をとやかく言う資格はないわ!」

エルフ女王「あんたは、早く各省庁から届いた書類等をここに持ってきなさいよね!」ギロッ

エルフ王女「……ですが!」ギロッ

衛兵隊長「……」

エルフ女王「エルフ王女。さっさと書類を持ってきなさい!」

エルフ女王「一体、私の秘書を何年やってると思ってるの?」

エルフ女王「今の貴女、本当に役立たずだわ!」

エルフ女王「いくら、自分自身が役立たずだからと言って、他人を貶める様な真似だけは絶対にしないの!」イライラッ

618: 2013/12/17(火) 13:46:09 ID:7rV49M.6
エルフ王女「陛下。私は、陛下の為を思って言っているのですよ!」

エルフ女王「どうして、この私の思いを分かっては頂けないのですか?」

エルフ王女「あの子は、かつて陛下に弓を引いた極悪人!」

エルフ王女「なのに、陛下は実の娘でもある私よりも、あの子の方が大事なのですか?」

エルフ王女「後で、陛下が後悔した所で私は何も知りませんよ!」

エルフ王女「あの子だけは、私は絶対に信用すら出来ません!」ギリッ

エルフ女王「なんですって!?」ギリッ

エルフ王女「……」ギリギリッ

エルフ女王「……」ギリギリッ

衛兵隊長「……」

619: 2013/12/17(火) 13:46:41 ID:7rV49M.6
エルフ女王「とにかく、あんたは早く書類を持ってきなさい!」

エルフ女王「一体、いつになったらあんたは仕事を覚えるのよ?」

エルフ女王「ああ、早くあの子が成人しないかしら?」

エルフ女王「あの子が成人したら、すぐにでもあんたの代わりとして使ってあげれるのに!」ギリギリッ

エルフ王女「陛下!」ギリギリッ

エルフ女王「あん!?……」ギリギリッ

衛兵隊長「……」

エルフ王女「陛下。これより、書類をお持ち致します……」

エルフ王女「少々、お待ち下さいませ……」ギリギリッ

エルフ女王「ええ、了解したわ……」ギリギリッ

620: 2013/12/17(火) 13:46:52 ID:7rV49M.6
トントン、トントン……

エルフ王女「はい!」クルッ

スッ、ガチャ……

エルフ魔女「失礼致します」

エルフ魔女「女王陛下。少し宜しいでしょうか?」ニッコリ

エルフ王女「!?」ピキッ

衛兵隊長「なっ!?」クルッ

エルフ女王「あら、良い所に!」ニッコリ

スタスタスタッ、クルッ……

スッ、バタン……

621: 2013/12/17(火) 13:47:03 ID:7rV49M.6
エルフ魔女「陛下。執務中の所、大変申し訳ありません」

エルフ魔女「大至急、ご報告したい事がございます」

エルフ魔女「つい先程、ハーフエルフの軍勢がXXX王国に対して、攻撃を仕掛けました」

エルフ魔女「本日は、それに関するご報告をする為に、参上した次第であります」ペコッ

エルフ王女「……」ギロッ

エルフ女王「ええ、構わないわ!」

エルフ女王「早く、こっちにいらっしゃい!」ニコニコ

エルフ魔女「はっ!」

スタスタスタッ、スタスタスタッ……

スタスタスタッ、ピタッ……

622: 2013/12/17(火) 13:47:14 ID:7rV49M.6
エルフ女王「それで、ハーフエルフの軍勢がどうしたの?」

エルフ女王「もう既に、XXX王国には攻撃をしているみたいね」ニコニコ

エルフ魔女「はい」

エルフ女王「XXXXXX二世、そこにいる役立たずの王女なんか無視して早く報告をして」

エルフ女王「私、早く貴女からの報告を聞きたいから」ニコニコ

エルフ魔女「はい。かしこまりました」

スッ、シュルシュル……

スッ、ピラッ……

エルフ王女「……」

エルフ女王「何その紙?」

623: 2013/12/17(火) 13:47:25 ID:7rV49M.6
エルフ魔女「陛下。今現在、判明している事をご報告致します!」

エルフ魔女「ハーフエルフの軍勢1万は、本日の午前九時よりXXX王国に対して攻撃を開始しました!」

エルフ魔女「敵の主力は、魔導師XX率いる召喚兵千名のみ!」

エルフ魔女「同国の傭兵隊100名及び騎士隊100名に関しては、城下町の警備にあたっております!」

エルフ女王「……」

エルフ魔女「それと、今現在の戦況につきましては、我が軍の方が圧倒的に有利です!」

エルフ魔女「敵は、我が軍の騎兵大隊千名を魔導師XXが仕掛けた落とし穴を用いて撃破!」

エルフ魔女「その隙に、城下町の真下からはダークエルフの軍勢が次々と地下のトンネルを利用して潜入!」

エルフ魔女「それに魔導師XXは未だ気づかず、魔法通信を自ら使用禁止にしている為、地中からの潜入は楽に行っている様です!」

エルフ女王「そう。それで?」

624: 2013/12/17(火) 13:50:14 ID:7rV49M.6
エルフ魔女「後は、私の独断で城下町の中に糞食らいを放っておきました!」

エルフ魔女「その糞食らいが、我が軍の進撃の手助けをしてくれております!」

エルフ魔女「その結果、同国の民達はかなり動揺していますね!」

エルフ魔女「いずれ、数日前から潜入していたハーフエルフ達による煽動も上手く行く事でしょう!」

エルフ魔女「本日中には、XXX王国を陥落させる事が出来ます!」

エルフ魔女「勇者XXXに関しては、この戦が終わるまでの間は我々の手で軟禁しておく事が得策かと」

エルフ魔女「以上で、報告は終わりです!」

エルフ女王「そう。ご苦労様」

エルフ王女「……」

衛兵隊長「……」

エルフ魔女「……」スッ、クルクルッ

625: 2013/12/17(火) 13:50:26 ID:7rV49M.6
エルフ女王「XXXXXX二世。その紙、私にくれる?」

エルフ女王「なんか、私の今さっき聞いた報告よりは、詳しく書かれてるみたいだから」ニッコリ

エルフ魔女「え? これをですか?」キョトン

エルフ女王「ええ、そうよ」

エルフ女王「今の貴女が持っているそれは、私に出す報告書じゃないの?」

エルフ女王「もしくは、まだ途中経過でしかないから、後で清書でもするのかしら?」

エルフ女王「私、少しばかり実の娘の育て方を間違えたみたいでね」

エルフ女王「貴女が、以前私に出してくれた貴女の率いる私兵部隊の編成表とかも、全部読み終えた後だから」ニコニコ

エルフ魔女「はい。かしこまりました」

エルフ王女「……」ムカッ

626: 2013/12/17(火) 13:51:11 ID:7rV49M.6
エルフ王女「XXXXXX二世。その紙は、こちらでお預かり致します!」

エルフ王女「貴女、少しは自身の立場を弁えなさい!」

エルフ王女「本当なら、貴女はここにいてはいけない存在のはず!」

エルフ王女「私、未だに貴女の事だけは絶対に信用しないから!」ギロッ

エルフ女王「王女!」ギロッ

エルフ王女「とりあえず、早くその紙を私に渡しなさい!」

エルフ王女「何で、貴女みたいな汚れた血がお母様にまで可愛がられるのよ!」

エルフ王女「あのまま、貴女は一生ハーフエルフとして、誰からも愛されずに憎まれながらも生きていくはずだったのに!」

エルフ王女「一体、どれだけ他人の事を不幸にすれば気が済むのよ?」ギリギリッ

エルフ王女「王女!」ダン

627: 2013/12/17(火) 13:51:22 ID:7rV49M.6
エルフ魔女「衛兵隊長。貴方が代わりにこれを受け取って」

エルフ魔女「今の王女様、少し虫の居所が悪いみたい」スッ

衛兵隊長「え? ああ、はい」スッ

エルフ魔女「私、これでも誰かから嫌われている自覚とかあるわよ」

エルフ魔女「王女様に言われなくたって、自分が過去にしでかした事は一生消えないわ」ギロッ

エルフ王女「……」ギロッ

エルフ女王「はぁ……」ガクッ

衛兵隊長「……」

エルフ王女「だったら、早く退室をして!」

エルフ王女「もう二度と、私の前に顔を見せないで!」ギリギリッ

628: 2013/12/17(火) 13:51:34 ID:7rV49M.6
エルフ魔女「お生憎様、私だって貴女の顔を見たくないわよ!」

エルフ魔女「他人の事をどうこう言うより、今の自分自身の至らない所を直しに行ったら?」

エルフ魔女「私、これでもハーフエルフの族長なのよ!」

エルフ魔女「今の貴女は確かに王女様だけど、これまでの私の積み上げてきた実績に比べたら全く大した事はないわ!」クルッ、ギロッ

エルフ王女「なんですって!?」ギリギリッ

衛兵隊長「……」

エルフ女王「二人とも、喧嘩するのなら他所でやりなさい」

エルフ女王「ここ一応は、エルフの里の中枢なんだけど」

エルフ女王「まぁ、確かにXXXXXX二世に比べたら、ウチの娘は本当に出来が悪いわ」

エルフ女王「若い頃の私の性格や言動の悪さだけを、そのまま引き継いじゃってるから」ガクッ

629: 2013/12/17(火) 13:51:46 ID:7rV49M.6
エルフ王女「お母様。それは余計よ!」

エルフ王女「お母様は、私達親子がバカにされてて悔しくはないの?」

エルフ王女「私、やっぱりこの子をこの里に置いておくのは反対だわ!」

エルフ王女「この子の母親共々、再びエルフの里から追放をして!」ギリギリッ

エルフ女王「え~~~~っ?」

エルフ魔女「陛下。誠に申し訳ございません!」クルッ

エルフ魔女「陛下の御前で、とんだご無礼を!」

エルフ魔女「本日は、これで失礼致します!」

エルフ魔女「どうか、本日の私めの失態、ご容赦下さいませ!」ペコッ

エルフ女王「ええ、了解したわ」ニッコリ

630: 2013/12/17(火) 13:51:57 ID:7rV49M.6
エルフ王女「貴女、また私達親子の事を馬鹿にしたでしょ?」

エルフ王女「一体、何度私の事を不快にしたら気が済むのよ?」

エルフ王女「お母様、早くこの子を追放をして!」

エルフ王女「じゃないと、あの腰抜けの前族長の時みたいに、また影でエルフの里をこの子に牛耳られる!」ギリギリッ

エルフ魔女「……」

エルフ女王「XXXXXX二世、もう下がって良いわ」

エルフ女王「本当にごめんなさいね。また、ウチの娘が煩くて」

エルフ女王「次、またここに来る時は面白いものを持ってきてね」

エルフ女王「勿論、先に本日の戦に関する報告書の方が優先だけど」ニッコリ

エルフ魔女「はい。かしこまりました」ニッコリ

631: 2013/12/17(火) 13:52:28 ID:7rV49M.6
クルッ、スタスタスタッ……

スタスタスタッ、スタスタスタッ……

エルフ王女「……」ギロッ

スタスタスタッ、スタスタスタッ……

スタスタスタッ、ピタタッ……

エルフ魔女「……」ギロッ

スッ、ガチャ……

エルフ王女「さぁ、どうぞ……」ギリギリッ

エルフ魔女「あら、ありがとう……」ギリギリッ

スタスタスタッ、スタスタスタッ……

632: 2013/12/17(火) 13:53:04 ID:7rV49M.6
エルフ女王(全く、何でこんな所まで似ちゃうのかしら?……)

エルフ女王(あの二人、以前よりも仲が悪くなっているわね……)

エルフ女王(相変わらず、あの子達二人は仲が悪い……)

エルフ女王(まるで、遥か昔の私とあの子の母親みたいだわ……)ハァ

スッ、バタン……

エルフ女王「衛兵隊長。貴方も、もう下がっても良いわ」

エルフ女王「今の貴方に聞いても、大した情報はない」

エルフ女王「貴方も、早く自分の持ち場に戻りなさい」

エルフ女王「あの子から受け取ったメモを、私にくれたらもう下がっても良いから」

衛兵隊長「はっ、かしこまりました!」ビシッ

633: 2013/12/17(火) 13:53:16 ID:7rV49M.6
ハーフエルフ。

それは、人間とエルフの間に生まれたタブー的な存在。

今回の戦でも、多数のハーフエルフ達の血が流れ、人間達は狂喜乱舞する。

人間達はハーフエルフの事を心底嫌い、ハーフエルフの事を見つけるやいなや、その場で何度も何度も虐殺を繰り返していった。

だが、それも長くは続かなかった。

地中からは多数のダークエルフが現れ、逆に人間達の事をすぐさま虐頃しだしたからだ。

これを受け、人間達はただただ逃げ惑うしかなく、次第にその数を減らしていく。

やがて、人間達の住み処はハーフエルフ達の手によって瞬く間に占領をされ……

その人間達の住み処だった場所の中には、夥しい程の人間達の氏体が転がっていたのだった。

634: 2013/12/18(水) 11:49:01 ID:OJ73DWLw
~とある城下町・城壁の上~

その日の昼――

密偵「報告。城下町に潜んでいたハーフエルフを数十体発見を発見しました!」

密偵「今現在、傭兵隊がハーフエルフ達の討伐を行っております!」

密偵「ですが、そのハーフエルフ達は武装していて、とても傭兵隊だけでは数が足りません!」

密偵「傭兵隊長より魔導師様に対して、『援軍を求む!』との要請が出ております!」

魔導師「うむ。そうか」

密偵「魔導師様。どうか、援軍を!」

密偵「傭兵隊は、地中より現れた糞食らいの対応にも追われているのです!」

魔導師「……」

635: 2013/12/18(水) 11:49:13 ID:OJ73DWLw
密偵「魔導師様。どうか、お願い申し上げます!」

密偵「もう既に、多数の民達にも犠牲が出ております!」

密偵「このままでは、民達の犠牲がますます増える一方!」

密偵「城下町にいる民達も、皆が武器を手になんとか戦っている状態なのです!」

魔導師「……」

密偵「魔導師。どうか、ご決断を!」

密偵「まだ、城門の前には多数の兵隊がいます!」

密偵「それを援軍として、民達の事をお救い下さい!」

密偵「今の我々には、もうそれしか手はないのです!」

魔導師「……」

636: 2013/12/18(水) 11:49:25 ID:OJ73DWLw
伝令兵長「魔導師。このままでは、民達がますます犠牲になります」

伝令兵長「一旦、城門前にいる隊を治安維持にあて、後顧の憂いを絶つのです」

伝令兵長「でなければ、我々は再びハーフエルフ達の前に敗北を喫します」

伝令兵長「そう、それも23年前の時と同じ様に」

伝令兵長「魔導師様は、また一つ罪無き国をお潰しになられるおつもりですか?」

魔導師「……」

密偵「魔導師様。どうかご決断を!」

密偵「敵は外だけでなく、内にもいるのですよ!」

密偵「今の貴方に、この国の命運が握られているのです!」

密偵「どうか、魔導師様もご決断の程を!」

637: 2013/12/18(水) 11:49:58 ID:OJ73DWLw
魔導師「伝令兵長。今現在の兵の数は?」

魔導師「老剣士達は、まだ戻らないのか?」

伝令兵長「はい」

魔導師「老剣士達が戻ってこなければ、我らとて兵に余裕はない」

魔導師「たかが数十体のハーフエルフなら、傭兵隊だけでも対処出来よう」

魔導師「密偵、城下町に現れた糞食らいの数は?」

魔導師「一体、何体の糞食らいが現れたのだ?」

密偵「6体です」

伝令兵長「城門に残っている兵達は、私を含め400名になりますが」

魔導師「うむ。そうか」

638: 2013/12/18(水) 11:50:13 ID:OJ73DWLw
魔導師「伝令兵長。召喚兵隊長に連絡!」

魔導師「城門前にいる召喚兵隊全てを、これより治安維持に充てよ」

魔導師「ただし、伝令兵長はここに残れ」

魔導師「そなたがいなければ、老剣士達とは連絡が取れなくなる」

伝令兵長「はっ!」ビシッ

密偵「……」ビシッ

魔導師「後、城の方は問題はないのか?」

魔導師「城の守りは、今現在も騎士隊が務めているはず」

魔導師「城の方にも、糞食らい達が現れた可能性がある」

魔導師「城の方にも、何名かは派遣しておくように」

伝令兵長「はっ!」

639: 2013/12/18(水) 11:50:29 ID:OJ73DWLw
スッ、ムクッ……

クルッ、スタスタスタッ……

密偵「魔導師。城の警備に関しましては、何も問題はありません」

密偵「城の内部を、100名からなる騎士隊が警戒にあたっております」

密偵「ですが、傭兵隊に関しては些か不安が残ります」

密偵「この機に乗じて、他の民達と同様に略奪等を行っていなければ宜しいのですが」

伝令兵長「……」ピタッ

魔導師「密偵。それに関しては、俺も気にはなった」

魔導師「俺は昔から、傭兵と言うものは信用をしてはおらんからな」

伝令兵長「……」スッ、フリフリ

640: 2013/12/18(水) 11:50:40 ID:OJ73DWLw
魔導師「とにかく、そなたは城に戻ってこの件を伝えよ」

魔導師「これより、俺の率いる召喚兵隊も傭兵隊と共に城下町の治安維持にあたる」

魔導師「まだ、地中から糞食らいが出てきてから時間が立ってない」

魔導師「俺は、このままここで城門の警備をしておかなければならないからな」

密偵「はっ!」ビシッ

クルッ、スタスタスタッ……

スタスタスタッ、スタスタスタッ……

魔導師「……」

伝令兵長「……」フリフリ

伝令兵長「……」フリフリ

641: 2013/12/18(水) 11:53:13 ID:OJ73DWLw
~とある平原・落とし穴付近~

ドドドドドドッ、ドドドドドドッ……

ドドドドドドッ、ドドドドドドッ……

ワーーーーッ、ワーーーーッ、ワーーーーッ……

召喚歩兵隊長「くそっ、敵が多すぎる!」

召喚歩兵隊長「ここは、一旦退くべきだ!」

老剣士「何!?」

召喚歩兵隊長「老剣士殿、ここはすぐに退くべきだ!」

召喚歩兵隊長「でなければ、我々は全滅する!」

老剣士「くっ……」

642: 2013/12/18(水) 11:53:27 ID:OJ73DWLw
ドドドドドドッ、ドドドドドドッ……

ドドドドドドッ、ドドドドドドッ……

ワーーーーッ、ワーーーーッ、ワーーーーッ……

「隊長。敵が多すぎます!」

「我々だけでは、とても防ぎきれません!」

老剣士「おのれ!」プルプル

召喚歩兵隊長「老剣士殿、ここは退く!」

召喚歩兵隊長「城に戻って、再起するぞ!」

召喚歩兵隊長「聞いておるのか!?」

老剣士「……」プルプル

643: 2013/12/18(水) 11:53:43 ID:OJ73DWLw
ドドドドドドッ、ドドドドドドッ……

ドドドドドドッ、ドドドドドドッ……

ワーーーーッ、ワーーーーッ、ワーーーーッ……

「中隊長。敵の騎兵が、こちらに向けて接近!」

「第二中隊長が戦氏しました!」

召喚歩兵隊長「何!?」クルッ

「中隊長、ここはもう持ちません!」

「一旦、城に戻って態勢を整えましょう!」

召喚歩兵隊長「ああ、了解した!」

老剣士「……」プルプル

644: 2013/12/18(水) 11:53:58 ID:OJ73DWLw
ドドドドドドッ、ドドドドドドッ……

ドドドドドドッ、ドドドドドドッ……

ワーーーーッ、ワーーーーッ、ワーーーーッ……

召喚歩兵隊長「全隊、城にまで撤退!」

召喚歩兵隊長「速やかに、兵を集めて撤退せよ!」

「はっ!」

老剣士「……」プルプル

召喚歩兵隊長「老剣士殿、これより我が隊は撤退する!」

召喚歩兵隊長「貴殿も、早くついて参れ!」

老剣士「……」プルプル

645: 2013/12/18(水) 11:54:10 ID:OJ73DWLw
ドドドドドドッ、ドドドドドドッ……

ドドドドドドッ、ドドドドドドッ……

ワーーーーッ、ワーーーーッ、ワーーーーッ……

召喚歩兵隊長「……」クルッ、ダッ

老剣士「……」プルプル

「全隊、速やかに撤退!」

「早く、城にまで撤退せよ!」

「氏にたいのか!?」

「うわ――――――――っ!?」

老剣士「……」プルプル

646: 2013/12/18(水) 11:54:21 ID:OJ73DWLw
ドドドドドドッ、ドドドドドドッ……

ドドドドドドッ、ドドドドドドッ……

ワーーーーッ、ワーーーーッ、ワーーーーッ……

シュン、ヒュルヒュルヒュルヒュル……

チュドドドドーーーーン……

「ぐわああああああああ――――――――っ!?」

シュン、ヒュルヒュルヒュルヒュル……

チュドドドドーーーーン……

「ぐわああああああああ――――――――っ!?」

老剣士「……なっ!? 馬上から炸裂矢だと!?」プルプル

647: 2013/12/18(水) 11:54:34 ID:OJ73DWLw
ドドドドドドッ、ドドドドドドッ……

ドドドドドドッ、ドドドドドドッ……

ワーーーーッ、ワーーーーッ、ワーーーーッ……

老剣士「おのれ! 女侯爵XXXXXX!」

老剣士「やはり、貴様は以前よりも遥かに力を増しておったか!」

老剣士「一体、何故貴様如きにその様な力がある!?」

老剣士「何故、貴様は俺と会う度に以前よりも遥かに力が増しておるのだ!?」

スッ、ヒュルヒュルヒュルヒュル……

チュドドドドーーーーン……

「ぐわああああああああ――――――――っ!?」

648: 2013/12/18(水) 11:54:45 ID:OJ73DWLw
ドドドドドドッ、ドドドドドドッ……

ドドドドドドッ、ドドドドドドッ……

ワーーーーッ、ワーーーーッ、ワーーーーッ……

老剣士「答えよ! 女侯爵XXXXXX!」

老剣士「これが、お前の答えなのか!?」

老剣士「俺は、絶対に貴様の事だけは許さん!」

老剣士「たとえ、この場で俺が氏んだとしても、貴様だけは氏語も永遠に呪い続けてくれる!」

スッ、ヒュルヒュルヒュルヒュル……

チュドドドドーーーーン……

老剣士「!?」グラッ

649: 2013/12/18(水) 11:55:02 ID:OJ73DWLw
ドドドドドドッ、ドドドドドドッ……

ドドドドドドッ、ドドドドドドッ……

ワーーーーッ、ワーーーーッ、ワーーーーッ……

スッ、ヒュルヒュルヒュルヒュル……

チュドドドドーーーーン……

老剣士「ぐわっ!?」グサグサッ

スッ、ヒュルヒュルヒュルヒュル……

チュドドドドーーーーン……

老剣士「ぐわ――――――――っ!?」グサグサッ

スッ、ドサッ……

650: 2013/12/18(水) 11:55:13 ID:OJ73DWLw
ドドドドドドッ、ドドドドドドッ……

ドドドドドドッ、ドドドドドドッ……

ワーーーーッ、ワーーーーッ、ワーーーーッ……

スッ、ヒュルヒュルヒュルヒュル……

チュドドドドーーーーン……

老剣士「ぶっ、ごほっ……」

老剣士「ぐえっ、ぶほっ……」

老剣士(どうやら、俺もここまでか……)

老剣士(魔導師XX、後は頼んだぞ……)

老剣士「……」ガクッ

勇者「ここが、エルフの里か……」【後編】


引用: 勇者「ここが、エルフの里か……」