1: 2024/12/07(土) 18:33:03 ID:???00
第1話 開廷

2: 2024/12/07(土) 18:33:42 ID:???00
侑「模擬裁判?」

栞子「はい。今度、裁判同好会の主催で模擬裁判コンテストが行われるのですが、参加する団体が皆無で困っているようでして」

かすみ「そこでスクールアイドル同好会に参加要請が来たということですね!」

栞子「はい。私たちスクールアイドルが模擬裁判を行うことで注目度が高まるからぜひ、とお願いされました」

せつ菜「楽しそうですね! やりましょう!」

しずく「良いですね。演技の参考にもなりそうです」

ランジュ「きゃぁっ! みんなで参加しましょ!!」

4: 2024/12/07(土) 18:34:42 ID:???00
愛「いいねー! それでどんな裁判にするの?」

栞子「模擬裁判のテーマや事件内容は自由に決めて良いそうです。ただし、裁判形式である以上、被告人、弁護人、検察官、裁判長などの役割はしっかりと設定する必要があります」

侑「そっかー。でも、模擬裁判ってどんな事件が面白いんだろう?」

かすみ「事件なんていくらでもあるじゃないですか! ……そういえば侑先輩、せつ菜先輩とデートしてませんでした? かすみん、見ちゃったんですけど!」

歩夢「えっ」

侑「ええっ!? ちょ、ちょっと待って、かすみちゃん! それ、違うから!」

せつ菜「デート……!?// そ、それは、違います! 私たちはただ……その……!」

6: 2024/12/07(土) 18:35:46 ID:???00
かすみ「その焦り方、あやしいですねぇー?」

侑「説明するよ! あれは……」

愛「ちょっと待った! せっかくだから”これ”を裁判のテーマにしない?」

侑「へっ!?」

せつ菜「!?!?」

璃奈「良いと思う。みんな気になる話だし」

彼方「なら裁判が始まるまでみんな知ってる情報があっても言わない方が良いね~」

ミア「Hey,洗いざらい喋ってもらうよベイビーちゃん」

7: 2024/12/07(土) 18:36:34 ID:???00
エマ「日本の裁判なんて初めてだから楽しみ~♪」

侑「皆なんでそんなに楽しそうなの!?」

しずく「裁判のテーマにピッタリな疑惑だからですかね」

歩夢「そうだ、私は検察官の役をやってみたいな」ニコッ

侑「歩夢が検察!?」ビクッ

8: 2024/12/07(土) 18:40:19 ID:???00
果林「ふふ、これは面白そうな裁判になりそうだわ」

せつ菜「し、しかしそれでは侑さんが被告人になってしまいます! それに、私たちのプライベートなことを公にするなんて!」

栞子「実際の裁判のような法的な拘束力はありませんから、無理に参加する必要はありませんよ」

かすみ「にっしっし、でも参加しないってことは後ろめたいことがあるってことになっちゃいますけどねぇ~?」

せつ菜「ぐうっ!」

ランジュ「やるしかないわね! 侑とせつ菜の真実を暴くのよ!」

9: 2024/12/07(土) 18:43:44 ID:???Sd
せつ菜「わかりました……なら私は弁護人として侑さんを全力で弁護します!」

栞子「それでは、テーマは『高咲侑と優木せつ菜のデート疑惑』に決まりですね。侑さん、せつ菜さん、お二人とも準備はよろしいですか?」

侑「全然準備できてないんだけど!?」

栞子「開廷まで時間がありませんので、被告側も検察側も証人集めや証拠集めなど急いで頑張ってください」

10: 2024/12/07(土) 18:44:08 ID:???Sd
1時間後

虹ヶ咲学園体育館 特設法廷


傍聴席の生徒「スクールアイドル同好会が何かやるって聞いてライブかと思って来てみたら……何が始まるの?」

傍聴席の生徒「なんか裁判するんだってさ」

ザワザワザワザワ

11: 2024/12/07(土) 18:44:59 ID:???Sd
栞子「……それでは、なりゆきで私が裁判長役を仰せつかりましたので進行させていただきます」

栞子「被告人は高咲侑さん」

侑「なんでこんなことに……生徒のみんなに見られてるしぃ」ブツブツ

栞子「弁護人は優木せつ菜さん」

せつ菜「はいっ!!!」

栞子「検察の歩夢さん」

歩夢「よろしくね」ニコッ

栞子「他の同好会のメンバーは証人などで参加します」

栞子「それでは、ゆうせつデート裁判、開廷です!」

12: 2024/12/07(土) 18:46:29 ID:???Sd
第1話完 (続く)

25: 2024/12/08(日) 21:43:46 ID:???00
第2話 証人A

26: 2024/12/08(日) 21:44:28 ID:???00
栞子「検察の歩夢さん、最初の証人を呼んでください」

歩夢「はい。最初の証人として、中須かすみさんを召喚します」

侑「かすみちゃん……!」

せつ菜「ど、どんなことを言われるのでしょうか……」アセアセ

かすみ「呼ばれましたかすみんです!」タッタッタッ

27: 2024/12/08(日) 21:45:01 ID:???00
栞子「証人の中須かすみさん、証言台へどうぞ。なお、偽証は絶対に許されませんので、正直にお答えください」

かすみ「もちろんです! かすみん、正直者ですから!」エッヘン

せつ菜(すでに悪い予感しかしません……)

歩夢「それではかすみちゃん、あなたが目撃した出来事を証言してください」

かすみ「はーい!」ピシッ

28: 2024/12/08(日) 21:45:58 ID:???00
かすみ「この前の土曜日の朝のことです!」

かすみ「学校の近くを通りかかったら、侑先輩とせつ菜先輩を見かけたんです!」

かすみ「かすみんの見立てだと、あれはデートの待ち合わせをしていてまさに合流した瞬間って感じでした!」ビシッ

侑「いやいや、ちょっと待って! かすみちゃん、それは誤解だって!」

歩夢「まだ証言の途中です。静粛にお願いしますね、侑ちゃん」ニコニコ

侑「うっ」ビクッ

かすみ「二人ともすごく楽しそうな顔をしてました! せつ菜先輩なんて、笑顔全開で手を振ってて!」

せつ菜「えええっ!?// そ、それは!//」アワアワ

栞子「弁護人の反論は証言が終わってからです」

せつ菜「……っ!」

29: 2024/12/08(日) 21:47:26 ID:???00
歩夢「その後、ふたりはどうしていましたか?」

かすみ「一緒にどこかに歩いていきましたが、どこに行ったかまではわかりません。かすみんも用事があったので尾行まではしませんでしたよ」

侑(用事がなかったら尾行してたの?)

かすみ「でも状況から考えたらあれは絶対デートの待ち合わせですね!」フフン


栞子「証人の証言は以上ですね。弁護人、反対尋問をどうぞ」

せつ菜「……はい、失礼します」スタッ

30: 2024/12/08(日) 21:48:48 ID:???00
せつ菜「……かすみさん、確認します。その日、この前の土曜日は同好会もなく休日でしたね?」

かすみ「はい! だからふたりともプライベートな時間を過ごしていたわけですよね?」

せつ菜「待ち合わせしていたということですが、私たちがどんな会話をしていたか、聞こえていましたか?」

かすみ「いやー、それがかすみん、急いでて全部は聞こえなかったんですよねー。でも雰囲気的に怪しい会話してたんです!」キッパリ

せつ菜「具体的に何を話していたかが分からない以上、それをデートの待ち合わせと断定するのは早計ではありませんか?」

かすみ「そ、そうですかね……? でも、あれは絶対デートです!」グッ

31: 2024/12/08(日) 21:49:49 ID:???00
せつ菜「かすみさんはそう認識していますが、私たちがデートをしていたという客観的な確証はないということになりますね?」

かすみ「でもでも! 朝早くから学校の近くで待ち合わせして、ふたりとも楽しそうにしてたら、誰だってデートだと思いますよ!」

せつ菜「その根拠の薄さでは、裁判で主張として受け入れられることは難しいかと思います!」

かすみ「なっ……! そ、そんなこと言うなら、侑先輩とせつ菜先輩が何を話してたか教えてくださいよ!」

侑「っ……!」

せつ菜「!!」

32: 2024/12/08(日) 21:51:06 ID:???00
かすみ「ほら! かすみんを責める前に、自分たちの会話の内容を言えばいいだけじゃないですか!」

侑(や、やばい!)

せつ菜(ど、どうしましょう!)アワアワ

栞子「証人、静粛に。証人から弁護人や被告人に質問を投げかけることは認められていません」

かすみ「えっ、そうなの? じゃあ……」

栞子「そこまでです」

かすみ「ううっ……」

せつ菜(裁判長がしっかりしていて助かりました……!)

侑(ふぅ、かすみちゃんの勢いに押されるところだった……!)

33: 2024/12/08(日) 21:52:04 ID:???00
歩夢「……」

栞子「弁護人、反対尋問は終了です。証人のかすみさん、証言台から下がってください」

かすみ「むぅ……まあ、かすみんの証言で少しは進展したと思いますけど!」タッタッタ


侑「せつ菜ちゃん、ありがとね。さっきの流れ、どうなるかと思ったけど……」

せつ菜「いえ、かなり危険でしたが……侑さんの無実を証明するため、全力を尽くすのみです!」

侑「でも、無理はしないでね。一緒に頑張ろう」ニコッ

せつ菜「侑さん……//」

ザワザワ

傍聴席の生徒「なんか、ふたりのやり取りがますます意味深じゃない?」

傍聴席の生徒「やっぱりデートだったのかな……!」

侑・せつ菜「!!!」

34: 2024/12/08(日) 21:54:14 ID:???00
せつ菜「ぼ、傍聴席に何を言われても気にしてませんから!//」

侑「うん!」


歩夢「……裁判長」ハイ

栞子「……わかりました。続いて検察側から2人目の証人を呼んでください」

歩夢「はい。次の証人として朝香果林さんを召喚します」

果林「ふふ。よろしくね」ニヤリ

35: 2024/12/08(日) 21:54:57 ID:???00
第2話完(続く)

52: 2024/12/10(火) 22:15:57 ID:???00
第3話 証人B

53: 2024/12/10(火) 22:16:52 ID:???00
栞子「証人の果林さん、証言台へどうぞ」

侑「果林さんか……」ヒソヒソ

せつ菜「や、やりづらい相手が来ましたね……果林さんは鋭い洞察力を持ってますから」ヒソヒソ

果林「まあまあ、そんなに身構えなくても大丈夫よ。私は見たままのことを喋るだけだから」フフッ

侑(それが怖いんだけど……)

栞子「それでは、検察官の歩夢さん、証人に質問をお願いします」

歩夢「果林さんは、侑ちゃんとせつ菜ちゃんが一緒にいたところを目撃したそうですね。どのような状況だったのか、詳細に教えていただけますか?」

54: 2024/12/10(火) 22:19:21 ID:???00
果林「ええ、確か土曜日のお昼頃だったかしら」

果林「私、たまたまショッピングモールに立ち寄っていたのだけれど……その時、侑とせつ菜が一緒にいるところを見かけたの」

侑「うっ……」ビクッ

果林「ふたりとも大きな袋を持って、仲良さそうに歩いていたわ。それで、ショッピングモールにあるカフェに入っていったのを覚えているわね」

歩夢「大きな袋……。その中身について何か見ていませんか?」

果林「残念ながら、中身までは見えなかったけれど……ふたりとも袋を大事そうに持っていたから、きっと特別な買い物だったんじゃないかしら」

せつ菜「……!」アセアセ

55: 2024/12/10(火) 22:23:17 ID:???00
果林「それに、ちょっとした好奇心でカフェでの様子も少し覗いちゃったのよね」

侑「っ!」ギク

歩夢「か、カフェでは、どんな様子だったんですか!?」

果林「窓際の席で楽しそうにおしゃべりしていたわよ。せつ菜なんて、ちょっと赤くなって笑ってたんじゃない?」

せつ菜「っ!?//」

果林「ふふっ、まるで楽しいショッピングデートの休憩タイムって感じだったわ」

歩夢「そう……ですか。他には何か……手を繋いで見つめ合ったりはしてませんでしたか!?」

栞子「歩夢さん、質問で声を荒げないようにお願いします」

56: 2024/12/10(火) 22:30:14 ID:???00
果林「そうね……見つめ合ってると言うよりは何かを手元を見ながら喋ってる感じだったわね」

歩夢「や、やっぱり手を握り合って……」

果林「軽く覗いただけだから、手元までは見えなかったわ」

歩夢「じゃ、じゃあっ……」ガタッ

栞子「はい。弁護人の質問はそこまでです」

歩夢「あ、はい……」

57: 2024/12/10(火) 22:41:43 ID:???00
侑「や、やばいよせつ菜ちゃん……! カフェでのことがあそこまで詳細に話されるなんて……」ヒソヒソ

せつ菜「大丈夫です、侑さん! 落ち着いてください!」ヒソヒソ

侑「でも、あの時の様子がこれ以上掘り下げられたら……完全に怪しまれちゃうよ!」ヒソヒソ

せつ菜「ひとつ、作戦があります。ただし……リスキーです。最悪、私たちが追い詰められる可能性もあります」

侑「……でも、せつ菜ちゃんが考えた作戦なら、きっと大丈夫だよね?」ニコッ

せつ菜「侑さん……! そ、そうですね! 必ず成功させます!」グッ

侑「うん、せつ菜ちゃんを信じるよ!」ニコッ

せつ菜「っ……!//」カァァ

せつ菜(な、なんて破壊力のある笑顔なんですか、侑さん……! 絶対に守らなければ!)フンス

栞子「弁護人、準備ができましたら反対尋問をお願いします」

せつ菜「……はい! 失礼します!」スタスタ

58: 2024/12/10(火) 22:55:41 ID:???00
せつ菜「果林さん、いくつか確認させてください。そのショッピングモール、具体的にどのエリアにありましたか?」

果林「エリア? ええと……確か、駅から直結しているところだったと思うけれど……」

せつ菜「直結ですか? そのショッピングモールは駅直結ではなく、少し歩いた先にあるモールでは?」

果林「あら、そうだったかしら?」

せつ菜「では、そのモール内のカフェへの道順を覚えていますか?」

果林「ええと、確か……モールに入って右手に行って……いや、左手だったかしら? 階段を降りた気がするけど……あれ、もしかして上がったのかも……?」ハテ

61: 2024/12/10(火) 23:10:39 ID:???00
せつ菜「果林さん、失礼ですが、普段から道順を覚えるのが苦手だったりしますか?」

果林「苦手というほどではないけれど、確かに途中で迷っちゃうことはよくあるわね。何度か行ったことのある場所でもつい違う方向に進んでたり……」

せつ菜「ありがとうございます! その情報は重要です。つまり、果林さんがそのショッピングモールで私たちを目撃したという証言は、正確さを欠いている可能性があるということです」

果林「そ、そんなことは……!」

歩夢「い、異議あり! 話をそらしてるよね? 結局、カフェでの出来事はなんだったの?」バンッ

栞子「歩夢さん、落ち着いてください。被告人への直接的な質問の時間はまだ後です」チラッ

歩夢「っ……分かりました」ムスッ

62: 2024/12/10(火) 23:13:07 ID:???00
侑(ひえぇ……)

せつ菜「改めて果林さん、もうひとつ質問です。あなたがカフェでの出来事について覗いたのは、ほんの数秒程度だったという理解でよろしいでしょうか?」

果林「そうね。さすがにずっと覗いてるわけにもいかないから、軽く見ただけよ」

せつ菜「つまり、短時間での目撃による印象が強く残っただけで、実際に私たちが何をしていたのか正確に把握していない、ということになりますね?」

果林「そう……ね。そう言われると、その可能性もあるわね」フフッ

せつ菜「ありがとうございます。以上で反対尋問を終了します」

栞子「弁護人の反対尋問が終了しました。証人の果林さん、証言台から下がってください」

66: 2024/12/10(火) 23:26:59 ID:???00
果林「ふふ、なかなか楽しかったわ。判決を楽しみにしてるわね」スタスタ

歩夢「侑ちゃん……まだ追求は終わらないからね……!」


侑(せつ菜ちゃん、よくやったよ……!)ホッ

せつ菜(果林さんにも申し訳ありませんが、なんとか有耶無耶にしてしのげましたかね……)フゥ

栞子「それでは、検察の歩夢さん、次の証人を召喚してください」

歩夢「はい。それでは……次の証人として、鐘嵐珠さんを召喚します」

ランジュ「きゃあっ! ランジュの出番ね!」ザッ!

タッタッタッ

ランジュ「さあ、ランジュの証言でこの裁判を盛り上げてあげるわ!」ビシッ

せつ菜(まさか……ランジュさんから何かとんでもない証言が出るのでは!?)

侑(お願いだから、変なことを言わないで……!)

ランジュ「ふふっ、みんな、楽しみにしてて!」ヒラリ

67: 2024/12/10(火) 23:28:12 ID:???00
第3話完(続く)

76: 2024/12/12(木) 22:46:49 ID:???00
栞子「証人の鐘さん、証言台へどうぞ。誇張表現は控え、正確に証言してください」

ランジュ「あら、栞子ったら心配性ね。ランジュはいつだって正確よ! さあ、ランジュの証言でこの裁判を盛り上げてあげるわ!」

侑(お願いだから余計なことは言わないで……!)ダラダラ

栞子「それでは、検察の歩夢さん、証人への質問をお願いします」

歩夢「では、ランジュさん。侑ちゃんとせつ菜ちゃんを目撃したときの状況を教えてください」

77: 2024/12/12(木) 22:56:53 ID:???00
ランジュ「確か土曜日の夕方、公園のベンチでふたりを見かけたわ。すごく楽しそうに何かをしていたのよね!」

せつ菜(やはりその話を……!)

歩夢「……ふたりは何をしていたんですか?」

ランジュ「それがね、すごく一生懸命だったのよ」

歩夢「い、一生懸命に何をしてたの!? そこを詳しく教えてください!」

ランジュ「ふふ、それは黙秘するわ。その方が面白いでしょう?」

歩夢「黙秘!? 裁判長、そんなのありですか!?」

栞子「証人には黙秘権は認められていません」

78: 2024/12/12(木) 23:06:58 ID:???00
ランジュ「そうなの? なら記憶が曖昧だから答えないことにするわ」

歩夢「ランジュちゃん……ちゃんと答えてもらえるかな?」ゴゴゴゴ

栞子「落ち着いてください。記憶が曖昧と言っている場合は無理に答えさせることは出来ません」

侑(助かったけど……なんでそんな挑発的な言い方を……!?)

歩夢「……なら、ランジュさんから見てふたりはデートしているように見えましたか?」

ランジュ「そうね、仲良さそうだったしデートって言われても違和感はないと思うわ!

歩夢「っ! やっぱり!」

79: 2024/12/12(木) 23:11:08 ID:???00
せつ菜「異議あり! 主観的な印象だけを聞くのはどうかと思います!」

栞子「異議を認めます。具体的な事象を尋問するようにしてください」

歩夢「だって答えてくれないし……じゃあ、ランジュさんはふたりを目撃した後どうしましたか?」

ランジュ「侑とせつ菜がとても楽しそうだったから、ランジュからふたりに話しかけたのよ!」

歩夢「!?」

ザワッ……

せつ菜(くっ……そこまで言われますか)

侑(ランジュちゃん何考えてるの!?)

80: 2024/12/12(木) 23:13:19 ID:???00
歩夢「デート中のふたりと会話したということですか!?」

ランジュ「ふふ、想像にお任せするわ」

歩夢「それじゃ――」

栞子「検察官、質問はここまでです」

歩夢「でも!」

せつ菜(このままだとまずい……こうなったら動くしかありません!)

せつ菜「うおおおお裁判長! 反対尋問開始します!!」ハイ

81: 2024/12/12(木) 23:20:27 ID:???00
せつ菜「ランジュさん、先ほどあなたは『ふたりが公園で何かをしていた』と証言されましたが、それが『デート』だと断定する根拠はありますか?」

ランジュ「仲良さそうにしてたんだからデートじゃないの?」

せつ菜「かすみさんの時も言いましたが、仲良さそうというだけでデートという根拠にはなりません!」

せつ菜「ではその時……私、もしくは侑さんはランジュさんに『デートをしている』と発言したことはありましたか?」

ランジュ「言われてないわ!」

せつ菜「つまりデートというのはやはりランジュさんの印象ということですね。ありがとうございます。質問は以上です」

ランジュ「あら、それだけで良いの? ランジュはもっと証言したいわ!」

せつ菜(もうランジュさんを喋らせたくありません……怖すぎます)

82: 2024/12/12(木) 23:28:52 ID:???00
栞子「弁護人からこれ以上ないようでしたら終了です。証人は下がってください」

ランジュ「無問題ラ! ランジュはもっと話せるわ!」

栞子「無問題どころか大問題です。下がってください」

ランジュ「せつ菜と侑ったら、あんなことをしてるなんてね!」

歩夢「あんなこと!?」

せつ菜「っ! やめてくださいランジュさん! 約束したのに……!」

侑「せつ菜ちゃん、まずいよ!?」ヒソヒソ

せつ菜「っ……失礼しました。何でもありません」アセアセ

歩夢「約束……? 約束って何の話なの!?」

栞子「弁護人も検察官も落ち着いてください」

83: 2024/12/12(木) 23:36:05 ID:???00
歩夢「ランジュちゃん、隠してることを話して! お願い!」ガタッ

栞子「検察官、尋問は終わりました。身を乗り出さないでください」

ランジュ「ごめんなさい歩夢! ランジュのせいで栞子に怒られちゃったわね!」

栞子「証人はこれ以上指示に従わないなら退廷させます」

ランジュ「栞子の裁判長姿、似合ってるわね。でも栞子は怒った顔より笑った顔の方がずっと可愛いわよ!」ニッコリ

栞子「っ!?///」カァッ

栞子「法廷侮辱罪ですっ!// 今すぐ退廷してください! それと後で反省文を提出してください!」

85: 2024/12/12(木) 23:52:58 ID:???00
せつ菜(失言をしてしまいましたが……今回もギリギリ助かりました)ホッ

栞子「警備員! お願いします!」

愛(法廷警備員)「はーい、大人しくしてね」ガシッ

ランジュ「逃げも隠れもしないわ!」

愛(法廷警備員)「随分暴れたねえ、大抵のことでは退廷にならないのに、なんちゃって」

侑「ぶっふぉ!」

ランジュ「傍聴席のみんな! 楽しんでくれたかしら!」

ズルズルズル……

侑(自由すぎるよランジュちゃん……)

87: 2024/12/12(木) 23:58:40 ID:???00
歩夢「むぅー! もう少しで暴けそうなのに!」プンスコ

侑「信じてよ歩夢ぅ……」


愛「しおってぃー裁判長。無事に連れ出しといたよー!」グッ

栞子「ありがとうございます。では検察官、最後の証人を召喚してください」

歩夢「はい。最後の証人として近江彼方さんを召喚します」

彼方「は~い。彼方ちゃん、頑張って証言するぜ~」フワァ

88: 2024/12/12(木) 23:58:59 ID:???00
第4話完(続く)

92: 2024/12/14(土) 03:50:02 ID:???00
第5話 証人D

93: 2024/12/14(土) 03:51:22 ID:???00
栞子「証人の近江彼方さん、証言台へどうぞ」

彼方「は~い」ノビーッ

侑「彼方さんならランジュちゃんみたいに暴れないと思うけど……」ヒソヒソ

せつ菜「でも、ここまで予想外の展開続きですから……油断は禁物です!」ヒソヒソ

栞子「検察の歩夢さん、証人への質問をお願いします」

歩夢「それでは、彼方さん。先日の土曜日に目撃したことを詳しく教えてください」

94: 2024/12/14(土) 03:52:36 ID:???00
彼方「えっとね~、その日は夜にスーパーで侑ちゃんを見たよ~」

彼方「あ、ちなみに彼方ちゃんのバイト先のスーパーじゃなくて、買い物に寄った別のスーパーだよぉ」

侑「まさか……」ギクッ

せつ菜(スーパー……? その日はスーパーには行っていないので見間違いか何かですね)ホッ

歩夢「侑ちゃんとせつ菜ちゃんはスーパーで何をしていましたか?」

彼方「いや、確かに侑ちゃんを見たんだけど、せつ菜ちゃんじゃなくてミアちゃんと一緒だったんだよね~」

ザワッ……

せつ菜「!?!?!? ミアさんと……!?」ポカン

歩夢「えっ!? 侑ちゃんがミアちゃんと!? なんで!? どうして!?」

ザワザワザワ……

95: 2024/12/14(土) 03:53:58 ID:???00
傍聴席の一般生徒「えっ、ミアちゃんと一緒? ゆうせつデート裁判じゃなかったの?」

傍聴席の一般生徒「これってもしかして、新たな三角関係発覚ってやつ?」

侑「ちょ、ちょっと待って! そういうんじゃないってば!」ブンブン

栞子「静粛に。傍聴席と被告人が会話をすることは禁止されています」


しずく「ふふふ、私は法廷画家。これは名シーンの予感……!」カキカキ

しずく「侑先輩、せつ菜さん、歩夢さん。さらにミアさんも絡む……これはまさに『愛と疑惑の四角関係』!」カキカキスラスラ

しずく「せつ菜さんの困惑顔……歩夢さんの嫉妬する瞳……」カキカキ

しずく「この法廷画は傑作になりそうですね……!」カキカキ

96: 2024/12/14(土) 03:55:09 ID:???00
歩夢「侑ちゃん! ミアちゃんと一緒に買い物なんて、一体どういうことなの!?」

侑「ええと、それは……」アセアセ

栞子「今は証人への尋問の時間です」

歩夢「ご、ごめんなさい。えっと彼方さん、詳しい状況を聞かせてください」

彼方「スーパーのレジで侑ちゃんとミアちゃんが並んでたよ~。カゴいっぱいに買い物してたみたいだねぇ」

歩夢「何を買ってたか覚えていますか?」

彼方「うーん、パンとかお菓子とか、それからお肉も買ってたよ~。ミアちゃんが『これだけじゃ足りない! もっといい肉を選べ!』って言ってたっけ」

97: 2024/12/14(土) 03:55:50 ID:???00
せつ菜(なぜ侑さんがミアさんと……それに、そんな大量の買い物を……)ジトー

侑(なんかせつ菜ちゃんの目が怖い……!)

歩夢「夜にふたりで買い物……」ブツブツ

栞子「えー……検察官から質問はないようですので弁護人、反対尋問をお願いします」

せつ菜「はい! 彼方さん、質問させていただきます!」

彼方「うん、どうぞ~」

98: 2024/12/14(土) 03:56:39 ID:???00
せつ菜「そのスーパーで、私の姿は見ませんでしたよね?」

彼方「うん、せつ菜ちゃんは見なかったよ~」

せつ菜「では、侑さんがスーパーでミアさんといた理由について、具体的に何か話を聞きましたか?」

彼方「うーん、見かけただけで彼方ちゃんからは話しかけなかったけど、侑ちゃんが『おごるよ!』って言ってたのは聞こえたね~」

せつ菜「おごる、ですか……?」

彼方「そうそう。ミアちゃんが買い物カゴにどんどん追加してて、侑ちゃんが『これくらいでいいんじゃない?』って言ってたけど、結局おごらされてたっぽいね~。侑ちゃん、なんだかんだで面倒見いいよね。ミアちゃんも嬉しそうだったし」

せつ菜(なぜ……私ではなくミアさんと一緒に……)モヤッ

99: 2024/12/14(土) 03:57:13 ID:???00
せつ菜「……分かりました。以上で反対尋問を終了します」

歩夢「むぅ~、気になることがどんどん増えていくよ……!」

栞子「尋問は終了しました。証人は証言台から下がってください」

彼方「は~い、彼方ちゃんの証言これにて終了~帰ってすやぴしよっと」フワァ

100: 2024/12/14(土) 03:58:19 ID:???00
栞子「すべての証人が出揃いましたので、次はいよいよ被告人、侑さんへの尋問に移ります」

歩夢「侑ちゃん、やっと直接聞かせてもえるね」ニコッ

せつ菜「……侑さん、あなたがミアさんと一緒だった理由……絶対に聞き出します!」グッ

侑(えっ、ふたりともそんな迫力で来るの!?)

しずく「ふふっ、検察官だけじゃなくて弁護人にまで追及されそうな大ピンチ侑さん……絵になりますね」カキカキカキ


せつ菜(……あれ? 侑さんとミアさんが一緒だったと聞いただけで、なぜ私の胸がこんなにモヤモヤするのでしょうか……)

101: 2024/12/14(土) 03:58:32 ID:???00
第5話完(続く)

108: 2024/12/16(月) 14:04:17 ID:???00
第6話 被告人質問

109: 2024/12/16(月) 14:04:40 ID:???00
栞子「被告人である高咲侑さんへの質問を行います」

侑「い、いよいよ私の番かぁ……」ダラダラ

栞子「被告人、高咲侑さん。証言台へお進みください」

侑「は、はいっ!」スタスタ

110: 2024/12/16(月) 14:05:39 ID:???00
ザワ…ザワ…

傍聴席の一般生徒「いよいよだね……高咲さん、何て言うんだろう」

傍聴席の一般生徒「ゆうせつデート裁判だったのに、ゆうミアまで絡んできたしね!」

傍聴席の一般生徒「これは目が離せないわ!」

侑(もうほんとにやめてぇ!)ダラダラ

栞子「侑さん、あなたは被告人として、黙秘する権利を有します」

栞子「ただし、これはあくまで模擬裁判です。被告人が何も話さない場合、生徒の皆さんに誤解を与えることもありますのでご了承ください」

侑「そ、そんなぁ……!」ガクッ

111: 2024/12/16(月) 14:06:34 ID:???00
栞子「それでは、被告人への質問を開始します。まずは検察官の上原歩夢さん、お願いします」

歩夢「……侑ちゃん」ジッ

侑「は、はいっ!」ビクッ

歩夢「ミアちゃんと一緒にスーパーにいた理由、聞かせてもらえる?」

侑「あ、あの、それは……」アセアセ

歩夢(まずはミアちゃんの件から質問すれば、せつ菜ちゃんも協力してくれるよね)チラッ

せつ菜(歩夢さんの考え、伝わってきました! ここは一時休戦して真相を明らかにしましょう)グッ

112: 2024/12/16(月) 14:09:04 ID:???00
せつ菜「侑さん、ここはしっかりと弁護人に説明してください! 曖昧なままではダメですよ!」

侑「うう……え、えっとね……実は」

侑「土曜日の夜、ミアちゃんが私の作曲の課題を手伝ってくれることになってて……それで、そのお礼として夕飯をご馳走するためにスーパーで一緒に買い出しをしてたんだよ」

歩夢「……作曲の課題?」

侑「うん、そうだよ。本当に助けられたんだ。提出は月曜日だったんだけど、自分じゃとても間に合いそうになくて……」

歩夢「じゃあ、ミアちゃんとスーパーでデートしてたわけじゃなかったの?」

侑「うん!」

113: 2024/12/16(月) 14:10:25 ID:???00
歩夢「……ふぅ、そうだったんだ」ホッ

歩夢(でもミアちゃんとのことはすぐ説明してくれたのに、せつ菜ちゃんとのことは濁し続けるのは……)モンモン

せつ菜(デートじゃなかったのは安心しましたが……)モヤモヤ


栞子「検察官の質問は以上ですね。それでは弁護人の優木せつ菜さん、質問をお願いします」

せつ菜「……はい!」スタッ

せつ菜「侑さん、課題が残っているならどうして私に相談してくれなかったんですか?」

侑「えっ?」

114: 2024/12/16(月) 14:11:21 ID:???00
せつ菜「確かに私にはミアさんのような能力はありません……ですが少しは助けになれたかもしれません。それなのに、どうして……」ウルッ

侑「そ、それはね……」アセッ

侑「せつ菜ちゃんに話したら、自分を責めそうじゃない?」

せつ菜「……え?」

侑「だってせつ菜ちゃん、きっと『自分があの件で誘ったせいで課題をやる時間がなくなった』って思っちゃうでしょ? そんな風に自分を責めるせつ菜ちゃんを見たくなかったんだ。心配かけたくなくて……」

せつ菜「……!」

侑「だから、言わなかったんだ。ごめんね、せつ菜ちゃん」

せつ菜「侑さん……//」ドキッ

115: 2024/12/16(月) 14:13:19 ID:???00
歩夢(せつ菜ちゃんから誘った……!?)

歩夢(それに『あの件』って……?)


栞子「弁護人、他に質問は?」

せつ菜「……あ、わ、分かりました。これ以上の質問はありません」

栞子「弁護人の質問が終了しました。それでは……」ゴホン

栞子「判決の前に、検察官からの求刑、弁護人の弁論、そして被告人に最終意見陳述をして頂きます」

116: 2024/12/16(月) 14:32:08 ID:???Sd
侑「……うう、判決こわい」ブルブル

せつ菜「大丈夫です侑さん。栞子さんなら感情抜きで公正に判決してくれます。きっと原則に従って証拠不十分で無罪ですよ」ヒソヒソ


栞子「ここで、裁判員をお呼びします」

侑「え!? 裁判員いるの!?」

栞子「はい。実際の裁判員制度とは少々異なりますが……今回は模擬裁判ですので、シンプルに裁判員3名の多数決で有罪か無罪を決定します」

侑「多数決!? それって……!」ビクッ

せつ菜「2名以上の裁判員が有罪だと考えれば有罪……!」 

せつ菜「まずいですね。場合によっては証拠が無くても印象だけで決められてしまう可能性があります」ギリッ


栞子「裁判員として選ばれたのは、ミア・テイラーさん、エマ・ヴェルデさん、天王寺璃奈さんです」

ギギィ… ザッザッザッ…

117: 2024/12/16(月) 14:32:49 ID:???Sd
第6話完(続く)

124: 2024/12/23(月) 22:03:24 ID:???00
第7話 求刑

125: 2024/12/23(月) 22:03:56 ID:???00

せつ菜「あの3人が裁判員ですか。残りの同好会メンバーが一気に来ましたね」

侑「ミアちゃんまで!? っていうか居たんならスーパーの件でデートじゃないって証言してくれればよかったのに!」

ミア「ボクはあくまで証人じゃなくて裁判員。ベイビーちゃんの敵でも味方でもないからね」

侑「そ、それもそうだけど……」

エマ「ふふ、日本の裁判員制度をこんな形で学べるなんて楽しみ~」

璃奈「なるべく公正になるように頑張るね」

璃奈ちゃんボード『キリッ』

126: 2024/12/23(月) 22:05:39 ID:???00
栞子「それでは、検察官の上原歩夢さん。求刑をお願いします」

歩夢「はい」スッ

歩夢「ここまでの裁判で、かすみちゃん、果林さん、ランジュちゃん、そして彼方さんの証言を通じて侑ちゃんの行動を追ってきました」

歩夢「でも結局、侑ちゃんとせつ菜ちゃんが一緒にいた理由や、その真実は明らかになっていません」

歩夢「それに、ミアちゃんとのスーパーでの件はあっさり認めたのにせつ菜ちゃんとのデート疑惑について何も説明しないのは怪しいと言わざるをえません」

歩夢「だから私は、侑ちゃんが有罪だと考え、求刑を行います」キリッ

侑「歩夢……」

127: 2024/12/23(月) 22:06:44 ID:???00
歩夢「でも、幼馴染の侑ちゃんへの刑罰を決めるなんて、私にはとてもできません」シュン

侑(だったら無罪にしてよ)

歩夢「だから刑罰は裁判員の皆さんにお任せします」ニコッ

侑「えっ!?」

栞子「検察官の求刑を受理しました。それでは裁判員の皆さん、有罪となった場合の刑罰案を考えておいてください」

128: 2024/12/23(月) 22:14:35 ID:???00
ザワザワ

ミア「ボクの案は……そうだね、同好会メンバー全員にKUA`AINAの一番高いハンバーガーをトッピングマシマシで奢るとかはどうかな」

侑(お小遣い無くなりそう……)

エマ「私はね、校内の緑化活動に参加してもらうのがいいかな~。木や花を植えて、侑ちゃんが自然と触れ合って反省の心を持ってくれたら素敵でしょ?」

侑(それは少し良いかも……)ホッ

璃奈「私はシンプルに新しい発明品の実験台になってもらいたい」

侑(一番怖い)

129: 2024/12/23(月) 22:15:09 ID:???00
ザワザワ

傍聴席の一般生徒「ハンバーガー、緑化活動、実験台……どれも個性が出てるね」

傍聴席の一般生徒「個人的には発明品の実験台が一番面白そう!」

侑「面白さ求めないでよ!」


栞子「裁判員の提案は一旦ここまでにしてください。まだ判決には至っておりませんので、あくまで案に過ぎません」

栞子「それでは弁護人の弁論に移ります。優木せつ菜さん、お願いします」

130: 2024/12/23(月) 22:20:40 ID:???00
せつ菜「はい!」スタッ

せつ菜「……弁護人として申し上げます!」

せつ菜「被告人である侑さんが、真実を隠しているかのように見えるのは仕方ないかもしれません。しかし、それは彼女の誠実さゆえの行動なのです!」

ザワザワ……

せつ菜「歩夢さん……幼馴染である貴女が一番理解しているはずです!」

歩夢「!」

131: 2024/12/23(月) 22:21:33 ID:???00
せつ菜「例えば、ミアさんとの件では、作曲の課題をお手伝いしてもらったことが明らかになりました。そして、侑さんがそのお礼として夕飯をおごるという誠実な対応を取っていたことも、すでに証言で確認されています」

せつ菜「侑さんは不誠実な人ではありません! その行動のすべてには、彼女なりの理由と善意が込められているのです!」

せつ菜「ですので、皆さんにはどうか、安易な印象で判断せず、侑さんの人柄をしっかりと考慮した上で、ご判断いただきたいと思います!!」

せつ菜「……以上です!」

侑(せつ菜ちゃん……そこまで言ってくれると照れるなぁ……)ジーン

132: 2024/12/23(月) 22:48:11 ID:???00
ザワザワザワ…

傍聴席の一般生徒「せつ菜さんの弁論、すごく真剣だったね。でも……」

傍聴席の一般生徒「結局、侑ちゃんが何をしてたのかが分からないままなのはモヤモヤするなぁ」

傍聴席の一般生徒「うん。高咲さんが悪い人とは思えないけど、それだけじゃ無罪にする理由としては弱いよね」

せつ菜「……!」ギリッ

133: 2024/12/23(月) 22:48:47 ID:???00
璃奈「有罪の証拠も無罪の証拠も不十分。裁判員としては判断が難しい状況」

ミア「ボクはまだ判断保留中。でもこのままだと、どっちかというと有罪寄りになっちゃうかな」

エマ「うーん、侑ちゃんは優しい子だけど、曖昧な部分が多いのが気になるかな」

せつ菜(やはり……このままではまずいですね。侑さんが有罪になる可能性が高いです!)

愛「ゆうゆだけにゆう罪、なんつって」ボソッ

栞子「警備員、静粛に」

134: 2024/12/23(月) 22:53:06 ID:???00
せつ菜「……侑さん!」ヒソヒソ

侑「どうしたの?」ヒソヒソ

せつ菜「弁護人として情けない限りですが……これ以上は厳しいです。傍聴席や裁判員の空気的に、曖昧なままではこのまま有罪になる可能性が高いでしょう」

せつ菜「ですから……ここで真実を話してください! そうすれば有罪は免れます!」

侑「えっ!? で、でも……」

せつ菜「もう私のことは気にしなくていいです。歩夢さんにとっても、こうなったら早く真実を知った方が良いはずです!」

135: 2024/12/23(月) 22:53:41 ID:???00
侑「……でも、せつ菜ちゃんがせっかくここまで準備したのに」

せつ菜「ここまで秘密を守ってくれて、本当に感謝しています。でも……侑さんが有罪になってしまい、歩夢さんと軋轢が残ってしまうのは……絶対に嫌です!」

侑「……っ」

せつ菜「私にとって一番大事なのは、侑さんが笑顔でいることです! だから、どうかここで真実を話してください!」

侑(こんなに私のことを想ってくれるなんて……)

侑「……分かったよ。ありがとう、せつ菜ちゃん」

栞子「それでは、被告人による最終意見陳述を行います。侑さん、どうぞ」

侑「はい!」スック

136: 2024/12/23(月) 22:58:22 ID:???00
第7話完(次回、最終話)

142: 2024/12/25(水) 23:33:54 ID:???00
最終話 閉廷

143: 2024/12/25(水) 23:34:28 ID:???00
シーン……

傍聴席の一般生徒「この最終意見陳述ですべてが決まるんだね」

傍聴席の一般生徒「高咲さんはどんな申し開きをするんだろう……」


歩夢「侑ちゃん、本当のことを話して?」

侑「えっと……」ゴクリ

侑「皆さん。私とせつ菜ちゃんのことで、色々騒がせてしまったことについては、申し訳ありません」

侑(せつ菜ちゃんは私のためにここで真実を話してって言ってくれたけど……)

侑「でも、その理由については……」

侑「言うことができません!!」

144: 2024/12/25(水) 23:34:56 ID:???00
せつ菜「侑さん……!?」

歩夢「どうして……?」

栞子「被告人、高咲侑さん。黙秘する権利は認められていますが、黙秘が判決に不利に働く可能性があることは理解していますね?」

侑「はい……分かっています」ギュッ

侑「それでも、私は話しません」

せつ菜「侑さん……どうしてそこまで……!」

侑「せつ菜ちゃん」

侑「もし、これで私が有罪になっても、全然構わないよ」

せつ菜「!? そ、そんなこと……!」

145: 2024/12/25(水) 23:35:27 ID:???00
侑「せつ菜ちゃんの気持ちが台無しになっちゃうのは嫌なんだ。それだけは……絶対に守りたい。例え有罪になっても!」

せつ菜「……っ」

歩夢「侑ちゃん、有罪になってもいいなんて……やっぱりせつ菜ちゃんとデートしてたの!?」

侑「違うよ」

歩夢「だっ……だったら本当のことを言えば済む話でしょ!? なんでそんな意地を張るの!?」

侑「それでも、話せないんだ」

侑「歩夢やみんなにどう思われても、せつ菜ちゃんがやろうとしたことを守りたい。それが私の気持ちなんだよ……ごめん。その時が来たら、歩夢もきっとわかってくれるから」

歩夢「侑ちゃん……」

せつ菜「侑さん……」ギリッ

146: 2024/12/25(水) 23:35:53 ID:???00
せつ菜(これ以上、侑さんに罪を被せたままでいるなんて……)

せつ菜(私のためにこんなにも一生懸命になってくれる侑さんを見て、何もできないなんて……そんなの絶対に嫌です!)

栞子「それでは、被告人の意見陳述を終了します」

侑(せつ菜ちゃん、これでいいよね。これで……)

せつ菜「裁判長!」

侑「せつ菜ちゃん!?」

せつ菜「私に、もう一度発言の機会をください!」

栞子「弁護人の再弁論を行うと?」

せつ菜「……いえ。個人として……真実を話します!」

147: 2024/12/25(水) 23:36:59 ID:???00
侑「ダメだよ、せつ菜ちゃん!」

せつ菜「侑さんの覚悟は本当に嬉しいです。ですが……!」

せつ菜「侑さんを巻き込んだのは私です。私が真実を話さなければならないんです」ニコッ


せつ菜「裁判長! 私にはどうしても皆さんに見ていただきたいものがあります! 荷物の持ち込みを許可してください!」

栞子「……どうしても、ですか?」

せつ菜「はい。真実を伝えるために必要なものです!」

栞子「……わかりました。許可します。」

侑「せつ菜ちゃん……まさか」

148: 2024/12/25(水) 23:38:01 ID:???00
スタスタ

せつ菜「侑さんが守ろうとしてくれたものを……今から皆さんにお見せします」ゴソゴソ

せつ菜「侑さんと私が作ったものです。これが“真実”です!」サッ!

栞子「鞄の中から何を出したのですか?」

せつ菜「今、お見せしますね。どうぞ裁判長」スッ

栞子「これは、手作りの冊子……ですか? 『For AYUMU』と書いてありますね」

侑「それはね、せつ菜ちゃんが企画して私も手伝って作った、歩夢へのプレゼントだよ」

せつ菜「これはフォトブックです! 歩夢さんがイギリスに短期留学することが決まったので、全力で送り出すために出国の日に渡すサプライズプレゼントとして、侑さんと一緒に作ったものです!」

歩夢「サプライズプレゼント……!?」

149: 2024/12/25(水) 23:38:47 ID:???00
栞子「写真が一枚も貼られていませんが……」ペラペラ

せつ菜「はい。歩夢さんが留学先で撮った写真をどんどん貼って頂き、思い出をたくさん詰め込んで世界に一冊のフォトブックを作って欲しいと思いまして」

ミア「Hey,ボク達にも見せてくれ」

栞子「もちろんです。どうぞ」ササッ

ペラペラ……

ミア「ベイビーちゃん達、こんなに細かい装飾を……。しかもページごとに手書きのメッセージまであるじゃないか!」

エマ「わぁ……優しい色合いで、見てるだけで温かい気持ちになるね!」

璃奈「この空白の部分に写真を貼っていくことでフォトブックが完成するように全体のバランスが考えられてるデザイン。すごい」

璃奈ちゃんボード『感嘆』

150: 2024/12/25(水) 23:39:41 ID:???00
歩夢「……じゃあ、デートと疑われても説明できなかったのは」

せつ菜「歩夢さんのために、サプライズを守り抜くために話したくても話せなかったんです」

侑「裁判になる前にかすみちゃんに言われたときは、新曲の相談とか適当に嘘ついちゃおうかと思ったんだけど……裁判になると嘘はつけないしね」ハハ

せつ菜「ですから、これまでの証言の数々もこのフォトブック作りを巡る一連の行動を目撃されただけものであって、デートではありませんでした!」

栞子「では、具体的に説明をお願いします」

せつ菜「まず、かすみさんが証言した“学校近くでの待ち合わせ”ですが、あれは材料を買いに行くための待ち合わせでした。フォトブックを作るために、必要なものを買い揃えようと朝から張り切ってしまいました!」

侑「それでショッピングモールに行ったんだよね。果林さんが言っていた“大きな袋”っていうのは、そこで買った材料が入っていたものなんだ」

侑「カフェに入ったのも、せつ菜ちゃんと一緒にフォトブックのデザインを考えるためだったんだ。席についてからは、どんな配置にするかとか、どんな色を使うかとか、ふたりで色々案を出し合って盛り上がったっけ」

ザワ……

傍聴席の一般生徒「なるほど……カフェでの“楽しそうな様子”ってそういうことだったんだね」

151: 2024/12/25(水) 23:40:15 ID:???00
せつ菜「次にランジュさんが公園で目撃した、私たちが“何かをしていた”という証言ですが、それこそがこのフォトブックを実際に作っている場面でした!」

せつ菜「ランジュさんには途中で話しかけられましたが、事情を説明して、内緒にしてもらう約束をしていただきました!」

侑「その後、私が作曲の課題を思い出してフォトブック作りを途中で抜けたんだよね。だからせつ菜ちゃんには大変な負担をかけちゃったんだ。最終的にここまで完璧に仕上げたのは全部せつ菜ちゃんのおかげだよ」

せつ菜「侑さん……っ! そんなことありません。侑さんがアイデアをたくさん出してくださったからこそ、私も頑張ることができたんです!」

侑「いやいや、せつ菜ちゃんが最後まで一生懸命やってくれたおかげだよ。ありがとう」ニコッ

せつ菜「っ……//」ドキッ

152: 2024/12/25(水) 23:41:07 ID:???00
歩夢「……そのフォトブック、私にも見せてもらえる?」

せつ菜「もちろんです!」ニコッ

侑「歩夢のために作ったんだもん、こんなタイミングになったけど」

せつ菜「どうぞ、受け取ってください! 私と侑さんからのプレゼントです!」スッ

歩夢「……」ペラッ

歩夢「これ……すごい……可愛くて、手作り感に溢れてて……写真がなくても見ててすごく楽しい」ペラペラ

侑「そのカバーの装丁とか、せつ菜ちゃんが全部頑張ってくれたんだよ」

歩夢「……っ!」ポロリ

歩夢「こんなに素敵なフォトブックを……私のために……」グスッ

153: 2024/12/25(水) 23:41:39 ID:???00
せつ菜「イギリスに行く歩夢さんをどうしても応援したかったのですが、良いプレゼントが思いつかずに侑さんに相談して協力してもらったんです。歩夢さんのことを一番知っているのは侑さんですので」

侑「帰ってきたら、これに思い出の写真を貼って見せてもらって色んな話を聞きたいなって」

歩夢「……ごめん、侑ちゃん、せつ菜ちゃん。疑って……責めて……本当にひどいことしちゃったね」ポロポロ

侑「いいんだよ、歩夢。私たちがサプライズを隠そうとしてたせいだし」

せつ菜「そうです。むしろ歩夢さんを不安にさせてしまった私たちの方が謝らなければいけません」

歩夢「ありがとう……本当にありがとう……!」ギュッ

歩夢「私、こんなに素敵な幼馴染と友達がいるなんて……幸せ者だよ!」ニコ

154: 2024/12/25(水) 23:42:54 ID:???00
エマ「本当に素敵な友情だね~」

璃奈ちゃんボード『ジーン』

ミア「やれやれ、裁判員の出番はなさそうかな」

栞子「歩夢さん、どうされますか?」

歩夢「……検察は告訴を取り下げます!」

栞子「裁判長として、告訴取り下げを受理します。よって、本裁判はこれにて終了とします!」

栞子「閉廷!」カンカンカン!

155: 2024/12/25(水) 23:44:03 ID:???00
侑「歩夢、本当にごめんね。そして……ありがとう!」

歩夢「ううん、私こそ、ありがとう侑ちゃん……せつ菜ちゃん……!」

傍聴席の一般生徒「おめでとう!」

傍聴席の一般生徒「歩夢ちゃん、留学頑張って!」

ザワザワ… パチパチパチ!!

せつ菜(侑さん……歩夢さんとこうして和解できて、本当に良かったです)ホッ


栞子「それでは特設法廷の片付けをしますのでみなさん協力お願いします」

ハーイ! ドタバタ……

156: 2024/12/25(水) 23:55:08 ID:???00

侑「えっと、この机はどこに片付ければいいのかな」

せつ菜「それはあちらの用具置き場ですね。私が場所わかりますので一緒に運びましょう」

スタスタ

ランジュ「侑、せつ菜! お疲れ様!」

侑「ランジュちゃん! もぉ、ハラハラしたよー!」

ランジュ「楽しかったでしょ? それにフォトブックのサプライズは見事にバレちゃったけど、もうひとつのサプライズはバレなかったわね!」

侑「あ、そういえばフォトブックのことを内緒にする代わりに、ランジュちゃんもせつ菜ちゃんと一緒に何か作りたいって約束してたんだっけ……何作ることになったの?」

せつ菜「歩夢さんがイギリスから帰国するときに使う、特大クラッカーです!」

侑「と、特大クラッカー?」

157: 2024/12/25(水) 23:55:33 ID:???00
せつ菜「はい! 歩夢さんが空港に到着した瞬間、みんなで迎えるためのサプライズアイテムなんです!」

ランジュ「楽しみでしょ? ランジュたちが作るクラッカー、きっと最高の出来になるわ!」

せつ菜「期待しててください!」ニコッ

侑「そっか~、歩夢も喜びそう!」

せつ菜「ではランジュさん、また後ほど準備のスケジュールについて相談させてください」

ランジュ「ええ、もちろん! じゃあランジュはあっちで栞子を手伝ってくるわね!」

タッタッタッ…

侑「ランジュちゃん、本当に元気だね」

せつ菜「はい。ランジュさんの熱意にはいつも驚かされますね」

158: 2024/12/25(水) 23:57:56 ID:???00
侑「それにしても、今日はせつ菜ちゃんに助けられっぱなしだったなぁ……ありがとうね」

せつ菜「そ、そんな! 私こそ、侑さんが頑張ってくれたおかげで無事に終わりました!」

侑「せつ菜ちゃんは本当に頼りになるね」ニコッ

せつ菜「っ!?//」ドキッツ

侑「?」

せつ菜「あ、あの……侑さん!」

侑「どうしたの?」

せつ菜「実は……私の好きなライトノベルが映画化されまして……!」

侑「へぇ、そうなんだ!」

せつ菜「それで! もし良ければ、一緒に観に行きませんか!?//」

159: 2024/12/25(水) 23:58:35 ID:???00
侑「……えっ、私と?」

せつ菜「は、はい! あっ、もちろんお忙しかったら無理にとは言いませんが……!」パタパタ

侑「行くよ!行く行く!」

せつ菜「えっ……本当ですか!?//」

侑「うん! だってせつ菜ちゃんと一緒に映画なんて絶対楽しいに決まってるし!」

せつ菜「……あ、ありがとうございます!//」

せつ菜(い、勢いで本当にデートに誘ってしまいました……!//)ドキドキ

160: 2024/12/26(木) 00:08:32 ID:???00

侑「せつ菜ちゃん? ぼーっとしてどうしたの?」

せつ菜「はっ! な、なんでもありません!//」ブンブン

侑「なんか顔真っ赤だけど、大丈夫?」

せつ菜「だ、大丈夫です! では映画は私が予約しておきますので!」

侑「うん、楽しみにしてるね!」

161: 2024/12/26(木) 00:08:43 ID:???00
せつ菜(この胸の高鳴り……やっぱり私は侑さんのことが//)ドキドキ

せつ菜(もしかしたらこの気持ちは罪なことかもしれません……でも私は、いつか侑さんに……!)

せつ菜(今はとにかく、叫びたいです!!)

せつ菜「う、うおおおおおおおおぉ!!!//」

侑「!?」ビクッ

162: 2024/12/26(木) 00:09:11 ID:???00
「ゆうせつデート裁判」 完

163: 2024/12/26(木) 00:09:39 ID:???00
読んでくれてありがとうございました!

引用: 「ゆうせつデート裁判」【SS】🆓