1: 2014/03/21(金) 19:59:01 ID:68Kz5Gfw
エルー「この手錠、何ですか!? どこ触ってるんです!?」ガチャガチャ

キリ「暴れるなよ、暴れるな」グイグイ

エルー「ちょっ…と!」バキッ

キリ「いだっ!」ドタンッ

キリ「な、何も頭殴らなくてもいいじゃないか…」ズキズキ

エルー「自業自得でしょ! 人が寝てる間に、何してくれてるんですか!」

2: 2014/03/21(金) 20:00:49 ID:68Kz5Gfw
エルー(ん? 寝てる間?)

エルー「キリさん。私夕方に貴方のお手伝いしてた途中から、記憶がないんですが」

キリ「あんたの飲み物に入ってた睡眠薬がよく効いたみたいだ。いやー、俺も手先が器用とはいえ作るのには苦労を…」

エルー「……」

キリ「すみませんでした」

エルー「はぁー…とにかく、この手錠外してくださいよ」

キリ「うん」カチャカチャ

エルー(…なんで、こんな事したんですか)


トロイの特効薬が完成し、根絶が始まっている今の世界
私たち二人は小さな家で、新しい生活を始めていたのだが……

3: 2014/03/21(金) 20:04:01 ID:68Kz5Gfw
翌日

エルー「――ということがありまして」

スイ「なんであたしに相談すんだよ」

エルー「身近ですぐに相談できる人っていったら、スイさんしかいなくて」

スイ「あーあー分かった分かった、皆まで言わんでいい」

スイ「お前のダチ、今じゃ国中を駆け回ってるんだろ? トロイをひとつ残らず根絶やしにするためによ」

エルー「はい」

『もう十分、貴方たちは働いてくれた。後は私たちに任せて休んでくれればいい』
『ありがとう』

エルー(そう、シスター・マーサも皆も言ってたけど。こんな日々じゃ…)

スイ「キリの野郎が変な行動取ったのは、昨日が初めてだったのか?」

エルー「いえ、今までにも何度かあって。ほとんど要領を得ないことばっかりで」

スイ「やっぱりな」

エルー「何か、知ってるんですか?」

4: 2014/03/21(金) 20:06:04 ID:68Kz5Gfw
スイ「お前ら二人が一緒に住むようになってから、一週間経ったときの頃だっけな」


キリ「スイ、少し喧嘩してほしい」

スイ「は?」

キリ「いいから、ほら構えろ」アチョー

スイ「…いきなり何のつもりか知らねーけど、あたしはもう昔のあたしじゃないんだ。むやみやたらと喧嘩染みた真似は」

キリ「来ないならこっちから行くぞ!」ブォン!

スイ「!」バシッ

キリ「さすがだな、腕は鈍ってないみたいだ」ニヤ

スイ「お前なあ…!」

5: 2014/03/21(金) 20:08:36 ID:68Kz5Gfw
スイ「拳を振り上げたのはそっちだ、こっちも全力でいかせてもらおうじゃねえか!」ガキン、バチン

キリ「その輪っか見るのも、なんだか久しぶりだな」ズイッ

スイ(間合いを、詰めてきた!?)

キリ「こうやってこっちも輪の中に入れば!」ガシッ

スイ「こ、の!」

キリ「自由に動かせないな!」

スイ「馬鹿にすんじゃねえ!」
スイ(一旦アヴィーを分解して…)

キリ「あっ」

スイ「こういう使い方もできるんだよ!」ヒュパッ

キリ「パーツで殴りかかるなんて棒術か何か!?」

スイ「オラァ!」ズギャン!

6: 2014/03/21(金) 20:15:38 ID:68Kz5Gfw
キリ「うおっ!」

ガシャーン!

スイ(やべっ、勢い余って廃材の中に突っ込ませちまった)
スイ「おい、キリ。無事か?」

スイ「無事なら返事を」 ガシャン、ドンドン、ガシィン
スイ(何の音だ?)

キリ「武器使えるのはそっちだけじゃないぜ」ヌゥ

スイ(こいつ、廃材で即席の武器を…薙刀かなんかのつもりか?)
スイ「手先のよさは相変わらずみてーだな」

キリ「お前みたいに強くないからよ、小細工させてもらう」

スイ「そうか、なら」

スイ「真正面からぶっ潰す!」ズンッ!!

7: 2014/03/21(金) 20:18:44 ID:68Kz5Gfw
――数分後

スイ「なあ、キリ。なんでこんなことしたんだよ」

キリ「……」ボロボロ

スイ「思いっきりぶっ飛ばしちまったけどよ…なんか、恨み買うようなことしたか? あたし」

スイ「確かに昔っから勝手なことばっかしたもんな。恨まれてたって」

キリ「そうじゃねえよ。俺の『勝手な』八つ当たりだ」

スイ「八つ当たり?」

キリ「俺もあの旅で強くなった。そこら辺の男相手じゃ酷い怪我させてしまう。お前ぐらいの強さじゃないと」

スイ「いや、八つ当たりってどういう意味」
キリ「すまん。またな」スッ

スイ「あっ、おい! …いっちまった」

8: 2014/03/21(金) 20:23:36 ID:68Kz5Gfw
スイ「――とまあ、だいたいこーいう感じだったな」フゥ

エルー(それであの時ボロボロだったんだ…転んだとか言ってたのに)

スイ「あたしには分からねえ。なんか細かい事情があるにせよ、そういうのは苦手だ」

スイ「すまねえ、力になれそうもなくて」

エルー「…こう言ってはなんですけど、スイさん、ほんと変わりましたよね」

スイ「…あの旅をして、少し落ち着いただけよ」

9: 2014/03/21(金) 20:26:31 ID:68Kz5Gfw
スイ「ファランにも、感謝しないとな」ボソッ

エルー「…ですね」

スイ「伝えれたら、キリに伝えといてくれ。女に変なことするぐらいなら、あたしが受け止めてやるって」

エルー「はいっ。話聞いてくれて、ありがとうございました!」ペコリ

スイ「ああ、あばよ!」

10: 2014/03/21(金) 20:52:08 ID:68Kz5Gfw
スイ「…出てきたらどうだ?」

「気づいていたか」スッ

スイ「ずっと陰からこそこそと聞いてるなんて人がわりーな」

「お前こそ、まるで人が氏んでしまったかのような話し方をするな」

スイ「げっ、そこも聞いてたのかよ」

スイ「全部聞いてたなら、師匠らしく助言でもしてやったらどうよ。ファラン?」

ファラン「俺がしなくても、あいつらなら自分たちで解決するだろうさ」

スイ「感じわりー」

11: 2014/03/21(金) 20:55:58 ID:68Kz5Gfw
スイ「そんだけ教え子のことが信じられるってことか?」ニィッ

ファラン「そういう言い方は嫌いだ」

スイ「変わらねーな、お前も」

スイ「そういや、なんでこの街に?」

ファラン「…虫の知らせだ」

スイ「なんだかんだで、心配性なんだな…」

ファラン「余計なお世話だ」プイ

スイ「ああ、そうかよ」

12: 2014/03/21(金) 21:02:25 ID:68Kz5Gfw
スイ「まあ、理由はどうあれこうやってまた会えたんだ」

ファラン「そうだな」

スイ「久しぶりに稽古つけてくれても」ガキン、バチン

スイ「いいんじゃねえか?」ズイッ

ファラン「…そういうところは変わらないな」

スイ「余計なお世話だぜ」

ファラン「…いいだろう」ハァ

ファラン「場所を変えるぞ。ここでは少々狭い上に、周りに人もいる」

スイ「そうこなくっちゃ」ニヤリ

13: 2014/03/21(金) 21:02:34 ID:ZgxImTrw
すげえダブルアーツだよな?

これめっちゃ好きだったわ

14: 2014/03/21(金) 21:04:21 ID:68Kz5Gfw
>>13
原作終了後の捏造設定です、申し訳ない

連載再開希望活動に熱入れてたなあ…

15: 2014/03/21(金) 21:14:30 ID:68Kz5Gfw


書き置き『少しの間家を空けます、すみません。 エルーより』

キリ「…………」

キリ「あああああぁぁぁ…!!」ゴロゴロゴロゴロ


「この家? あってるよね? …うん、あってるあってる」

「こんにちはー! 二人とも、お久しぶ…」
キリ「嫌われたああああああぁぁぁぁぁぁ…!!」ゴロゴロゴロゴロ
「うえっ!? ちょ、ちょっと! どないしたんキリさん!?」
キリ「あああああぁぁ…あ? あんたは?」

「え、えっと、覚えてるよね?」

キリ「シスター・ハイネ…!」
ハイネ「よかった! 覚えててくれ」
キリ「ハイネー! 俺はどうしたら…」シクシク
ハイネ「と、とりあえず落ち着いて、な?」オロオロ

16: 2014/03/21(金) 21:20:44 ID:68Kz5Gfw
とりあえず今日はここまで

18: 2014/03/22(土) 12:20:32 ID:gezDN8XA
一方、その頃

「――へぇ、だから今はいろんな人に話聞いて回ってるわけね」

エルー「そうですね…もしかして、嫌われたんですかね、私」

エルー「キリさんに……もし、もしそうだったら……」

「それ本気で言ってる?」

エルー「えっ、だって…」

「あっはっはっはっはっはっ!」

エルー「わ、笑わなくてもいいじゃないですか!」

「ひー、ひー、…いや、ごめんごめん」

エルー「もう…えっと、今の偽名は」

「ああ、今はチトゲ」
「師匠! それ一個前の偽名です!」

「あれ? そうだっけ?」アハハ

19: 2014/03/22(土) 12:23:27 ID:gezDN8XA
アイラ「アイラ。アイラ・マルーよ」

アイラ「まあ『予言おばさん』の方が呼びやすいかもね」

エルー「アイラさん、私は本気なんです」

エルー「あの旅をしていた頃から、そして、これからも」

アイラ「…ごめんね、笑ったりして」

アイラ「大丈夫だって思うの。占うまでもない」

エルー「ですが…」

20: 2014/03/22(土) 12:33:36 ID:gezDN8XA
アイラ「だって、ずっとずっと手を繋ぎながら、旅を続けて」

アイラ「厳しくて、苦しい戦いが何度もあって、挫けそうになって」

アイラ「それでも、貴方のことも、キリは守り抜いたでしょう?」

エルー「…はい」

アイラ「だから、きっと大丈夫よ」

アイラ「繋いできた手みたいに、これからも信じていれば!」

「…師匠」

アイラ「ん?」

「師匠って、抜けてる割にはたまにいいこと言いますよね」

アイラ「なによ、ムージー! 誰が抜けてるって!?」プンプン

ムージー「だから、信じてね。エルーちゃん」

エルー「ムージーさん」

ムージー「師匠は、占いでもなんでも、嘘は絶対つかないから!」

エルー「…はい!」

アイラ(……いいとこ持っていってくれちゃって)フフフ

22: 2014/03/22(土) 12:38:17 ID:gezDN8XA
アイラ(…キリ。エルーちゃんのこと、絶対に幸せにしてあげなさいよ)

アイラ(でないと許さないんだからね)


同時刻

キリ「――という、感じでして」ドヨーン

ハイネ「…正直に言わせてもらうとやな」

キリ「ああ」

ハイネ「これがトロイを世界から無くした英雄の一人の現状だと思うと」
キリ「皆まで言うなよ、ははは」ドンヨリ

23: 2014/03/22(土) 12:48:35 ID:gezDN8XA
ハイネ「うーん…ウチは、今の今まで誰かに恋愛感情っていうの抱いたことないから、詳しい心情は正直分かりませんけど」

キリ「ハイネ…」
キリ(そうだったな…この人も、小さな頃からずっとシスターの道を…)

ハイネ「でも」

キリ「でも?」

ハイネ「何かを、誰かを大切にする気持ちっていうのは分かります!」

ハイネ「二人に助けてもらったから、なおのこと!」

キリ「覚えてたのか、あの日のこと」ハハハ

ハイネ「忘れるわけありませんて!」アハハ

26: 2014/03/22(土) 20:03:09 ID:gezDN8XA
ハイネ「…ちゃんと、真正面から向き合って、話して、謝って」

ハイネ「そうすりゃ大丈夫ですよ、きっと!」

キリ「…ありがとう」

ハイネ「あー! なんか慣れない真似してもうた! こういうことするためにここまで来たわけじゃないのにー」

キリ「そういや、今日はなんでここへ?」

ハイネ「この街の近くに寄る予定だったから、ついでに来てみたんです」

27: 2014/03/22(土) 20:11:06 ID:gezDN8XA
ハイネ「それにしても、いい家ですねここ!」

キリ「ああ。丘の上だから、ここから街が見下ろせたりしてな」

キリ「外装のデザインとかはエルーがやって…俺にはやらせてくれなくてな」シュン

ハイネ「あらら、それはそれは」

バタンッ!

「キリくん! すぐにここから離れろ!」

キリ「ヘイム?」

ハイネ「どちら様?」

キリ「ああ、今俺たちの護衛をやってくれてる」
ヘイム「話は後だ、襲撃だ!」

キリ「…なんだって?」

ヘイム「何人かは倒したが、野党の連中まで大量に雇ってるみたいだ!」

ヘイム「ガゼルの残党と見て、間違いないだろう」

ハイネ「えぇっ!?」

キリ「…できれば、来てほしくなかったな」ハァ

28: 2014/03/22(土) 20:18:03 ID:gezDN8XA
同刻。タームとデオドラドの間、馬車の中にて


エルー「こんな時に再会できるなんて、思ってもなかったよ!」

「私も、できることならもっと落ち着いて話せるときがよかった」

エルー「でも、こっちに来るなら連絡ぐらい入れてくれればいいのに」

エルー「ああ、でも…アンディも忙しそうだしね」

アンディ「私が自分から引き受けてることだ。だが、今回は…」

エルー「…穏やかな話じゃ、なさそうだね」

29: 2014/03/22(土) 20:26:13 ID:gezDN8XA
アンディ「単刀直入に言う。ガゼルの残党が、タームの付近で確認されたという情報が入った」

エルー「えっ…!?」

アンディ「知っての通り、幹部たちがいなくなった後は、金で雇われていた暗殺者たちも散り散りに」

アンディ「そのほとんどが捕えられ、一部は野党化。鎮圧は順調に進んでいるが」

エルー「タームの近くに…」

アンディ「急な話ですまない。できるだけこの情報を早く、エルーやキリ君には伝えるべきだった」

アンディ「わざわざ『元』ガゼルの連中があの街付近をうろつく理由は」

エルー「…やっぱり、私たちが標的ってことだよね?」

アンディ「そういうことになる」

アンディ「活動の遅さから考えて、襲撃など早々できるものではないと推測されているが」

アンディ「万が一、ということもある。だから私は一人だけでも、こちらに出向くことにした」

エルー(…キリさん、ヘイムさん……!)

30: 2014/03/22(土) 21:04:38 ID:gezDN8XA
ヘイム(残党どもがキリくんたちを逆恨みして襲撃してくるというのは、十分考えられたことだ)

ヘイム(だから私は、彼らの盾としてここにいる)

「たった一人に何手こずってる!」
「数はこっちが上なんだ、畳み掛けろ!」

ヘイム(……何もできなかったあの頃とは)

ヘイム(何もできずに終わったあの頃とは)

「奴の武器は剣だけだ! 撃て、撃て!」ヒュン!ヒュン!

ヘイム(違うッ!!)

ズ ワ オ !!

31: 2014/03/22(土) 21:07:44 ID:gezDN8XA
「…は?」ポカーン
「矢が、弾かれた?」

ヘイム「ハアアアアアァァァッ!!」ズバンッ!

「「ぐああああおお……」」ドサッ

「ふ、二人いっぺんに…」
「お、おい! こんな奴がいるだなんて聞いてねえぞ!」
「畜生! 付き合ってられるか!」
「逃げるな! 戦え!」
「金のためだろうが!」

ヘイム「ここは通さん…!」キッ

32: 2014/03/22(土) 21:11:15 ID:gezDN8XA
スイ「人がいない場所選んだよな? なあ?」

ファラン「そのはずだが?」

スイ「なーんで周りに殺気づいた連中が集まってるんだ?」

ファラン「さあな」

「見つけたぜ、髪がやたらと長い女!」
「もう一人の男はなんだよ?」
「知るか! まとめてやっちまえ!」

スイ「もしかして、ガゼルの残りカスか?」

ファラン「それと、恐らくは野党の連中だな。金で雇われているのだろう」

ファラン「目的は『足止め』か何かか」

33: 2014/03/22(土) 21:17:31 ID:gezDN8XA
スイ「ふーん、まあいいや」ガチン、バキン、ガキン、バチン

スイ「向こうから仕掛けてくるなら、遠慮なくぶっ潰せる。だろ?」ニヤァ

ファラン(虫の知らせは、これのことだったのか?)

スイ「いくよ、アヴィー、アヴィーJr.(ジュニア)」クルクルクルクルクルクルクルクル…

スイ「あはっ! やっぱたまらねえな、この感覚」ヒュンヒュンヒュンヒュンヒュンヒュンヒュンヒュンヒュン…

「…なに回してんだ? こいつ」
「二つの、輪っか?」

ファラン(こいつがやりすぎないよう)

スイ「二人の(ダブル)…」ヒュパッ

ファラン(監視のための)

スイ「巨人の指環(オーガーズリング)!!」

ガ オ ン ッ !

35: 2014/03/23(日) 07:27:35 ID:4.5a1N6I
キリ「ハァ、ハァ…」ダダダッ
ハイネ「ハァ、ハァッ!」ダダダッ

キリ「よし、ここまで来れば大丈夫だ」ピタッ

ハイネ「えっ?」

キリ「この先の坂道を下ったら、すぐに街への近道が見つかる。ちょっと急で危ないけどな」

キリ「憲兵呼ぶのと…あと、できたらスイも連れてきてくれ。そっちはどこにいるか分かりづらいかもだけどよ」

ハイネ「き、キリさんはどないしはるんです!? 逃げないんですか!?」

36: 2014/03/23(日) 07:29:44 ID:4.5a1N6I
キリ「俺は戦うよ」

キリ「自分の都合で、また誰かが傷つくって思うと、逃げてなんかいられない」グッ

ハイネ「で、でもぉ! 気持ちは分かりますけど!」

「いたぞー!」
「あのガキだな!」

ハイネ(別働隊!?)

キリ「心配すんな、こう見えて俺も」

「金のためだ!」ビュオッ!
「氏んでもらうぜ!」シュバッ!

37: 2014/03/23(日) 07:33:54 ID:4.5a1N6I


クルンッ クルンッ

(あれ? オレたち飛び掛かったはずじゃ)
(なんでオレ、オレたち『回ってるんだ』?)

キリ「強くなれたから」

ズドムッ!

ハイネ(……あっという間に、二人とも受け流して)

ハイネ(倒して、拳一発ずつ……!)

キリ「この通り」ニッ

ハイネ(強い、っていうか何今の動き!? 綺麗! ダンスみたい!)

キリ「…あー、見とれてないで早く逃げてくれないか」

ハイネ「ハッ!? す、すんません!」

38: 2014/03/23(日) 07:35:55 ID:4.5a1N6I
ハイネ「…怪我だけは、しないでくださいよ! 約束ですからね!」ダッ

キリ「任せとけ!」

キリ(……って格好つけたけど)


「なんだ、あいつらやられてるじゃねーか」
「外してんじゃねえよ馬鹿!」
「あーあ、もう滅茶苦茶だよ」


キリ(『やるかやられるか』ってのは、やっぱりこええな)

キリ「ホラホラどうした! いい大人が揃いも揃って恥ずかしくないのか!」

キリ(最も、絶対に氏ぬつもりはないけどな…あの人にまだ、謝れてねえんだよ!)

39: 2014/03/23(日) 07:40:17 ID:4.5a1N6I
ドコンッ!

「ぐふっ!」ドサッ

アンディ「後ろががら空きだったぞ」

キリ「アンディ!? あんたアンディか! なんでここに」
アンディ「前から来た!」

キリ「いや、それは分かってるけど」ヒュンヒュンヒュン

「なんだこれ…糸!? 糸が、取れない!」
「縫い付けられてやがる! くそ、離せコラ!」
「暴れたら余計くっつくだろ…じっとしろお前ら!」

アンディ「坂を下ってきたハイネと会ってな。襲われてると聞いて、先に来た」バキィ!

「がはっ!」

キリ「なるほど、とにかくそりゃ心強い!」ドコォ!

「うあああぁぁ…」

アンディ「エルーも一緒だ」

キリ「……そうか」

40: 2014/03/24(月) 14:12:26 ID:iB9j8ayY
アンディ「すまなかった」

キリ「?」

アンディ「今回の襲撃のことを、もっと早くに警戒するべきべきだった」

アンディ「我々は油断していた。またこんな危険に巻き込んでしまって」
キリ「ストップ!」

キリ「詳しい事情は分からないけどさ、アンディはこうやって助けに来てくれたじゃん」

キリ「久々に会えたんだから、辛気臭い面はやめとこうぜ!」

アンディ「キリ君…」

41: 2014/03/24(月) 14:16:27 ID:iB9j8ayY
エルー「あらら、お邪魔でしたか?」

キリ「あっ…」

アンディ「…エルー、馬車の中で話は聞けた」

アンディ「君の今の気持ちも分かるがっ後ろぉ!」

エルー「はっ!」グルンッ

バキィ!

「うわあああああぁぁぁっ!」

アンディ(なんて見事な回し蹴り…あの様子じゃ、気づけていたのか?)

エルー「ふぅ」

42: 2014/03/24(月) 14:22:14 ID:iB9j8ayY
キリ「エルー、あの」
エルー「話は全部後にしましょう、キリさん」

キリ「…エルー」

エルー「今は、降りかかる危機を振り払いましょう」

キリ「また、手を貸してくれるのか?」

エルー「『絶対その手は離さない』…そう言ってくれたのはキリさんの方ですよ」ニコッ

キリ「…そうだったな」

キリ「ヘイムはまだ戦ってるはずだ、行こう!」

エルー「はい!」

アンディ(心配するだけ、無駄だったようだな)


アンディ(この二人の絆は、裂かれない)

43: 2014/03/24(月) 18:53:03 ID:iB9j8ayY


ドコォ!

ヘイム「ぐああっ!」

「けっ…消耗させただけで、傷一つつけてねえのか」

「これじゃ、前金払った意味がねえぜ」

ヘイム(つ、強い! この男…薬で自分の肉体を強くしてるのか?)

「あのガキどもはどこへ逃げた? えぇ? 探しても、別働隊も帰ってこねえしよ」

ヘイム(だが)

ヘイム「…貴様、ガゼルの残党だな」

「それがどうした?」

ヘイム「貴様のような人間に、教えてやることは何一つない!」

「…そうか」

「じゃあ氏ね!」ビュオッ!

ヘイム(来るっ!)

44: 2014/03/24(月) 18:57:47 ID:iB9j8ayY
――ヒュパッ シュパッ

「ああ? なんだこりゃ…糸に針?」ググッ

ヘイム(…やっぱり、戻ってきたか。君は、君たちはそういう子だったな)


キリ「好き勝手やるのはそこまでだぜ、ガゼル野郎」グイッ

エルー「ヘイムさん、大丈夫ですか!」

ヘイム「無事だ! すまない!」

「……また、手ェ繋いで登場か」

「この糸と針は金髪のガキ、テメーのか」ブチッ

キリ「あら、簡単に引きちぎられた。自信作だったんだけどな」

エルー「…キリさん、あの男」

キリ「ああ。体は大分変ってるけど、顔つきはよーく覚えてる」

45: 2014/03/24(月) 19:03:12 ID:iB9j8ayY
キリ「ヴィグって奴だったな。忘れたくても忘れられねーよ、初めて命を狙ってきた奴のことなんてな」

ヴィグ「ああ、俺だってテメーらのことを忘れられりゃどんなに嬉しかったことか」

ヴィグ「ガゼルの消滅と同時に、自分の食い扶持すら俺はまともに稼げなくなっちまったんだ!」

ヴィグ「テメーらさえいなけりゃ、俺だってまだまだ楽しく生きてられたのによ! 全部台無しにしやがって!」

エルー「何を言うかと思えば」ハァ
キリ「逆恨みとは情けなーい」プププ

ヴィグ「笑っていられるのも今のうちだぜ」

ヴィグ「俺の相棒が、お友達の首をこっちに持ってきてる頃だからな!」

46: 2014/03/24(月) 19:07:16 ID:iB9j8ayY
スイ「その相棒ってのはこいつのことか?」ポイッ

ドサッ

キリ「思いのほか遅かったな」

スイ「久々に暴れちまったんだよ、許せって」ハハハ

ファラン「オレに止められてよかったな。周りの被害も最小限に収めることができた」

スイ「言うなよ…」
スイ(久々に会ったハイネにもドン引きされたし…)

「う、うぅ…」

ヴィグ「れ、レンケ!?」

レンケ「すまない、ヴィグ。思ったよりずっと強かったよ…」

レンケ「雇った連中も、あっという間に殲滅されて…」

ヴィグ「んなっ…!?」

アンディ「残ったのはお前だけのようだな」ザッ

エルー「アンディ」

47: 2014/03/24(月) 19:10:32 ID:iB9j8ayY
アンディ「憲兵が続々と到着して、野党もお縄につき始めている」

アンディ「こっちに来るのも時間の問題だぞ、残党め」

キリ「だ、そうだ」

ヴィグ「…く、くそがき、クソガキ、クソガキどもが、どこまでも俺の邪魔をして……!!」ピクピク

ヴィグ「ぶち頃してやるぜ、お前ら二人だけでもなァ…手を繋いだまま逝け!!」ギラギラ


エルー「いきましょう、キリさん」ザッ

キリ「ああ」スッ

48: 2014/03/24(月) 19:16:40 ID:iB9j8ayY
スイ「助太刀はいらなさそうだな」

アンディ「そのようだ。離れていようか」

ヘイム(離れていても力を感じる…こんなに強かったのか、あの二人は)

ファラン(再び見れる日が来るとはな、『双戦舞』を)


キリ(言葉がなくとも分かる)
エルー(感覚が、フレアを通して伝わってくる)

キリ(これくらい、いつも伝えれりゃなあ)
エルー(このくらい伝えてくださいよ、日頃の気持ち)


「「――レッツ!」」

50: 2014/03/25(火) 22:41:23 ID:oibw6aZc
――数時間後。


ガチャッ

キリ「ただいまー」

エルー「おかえりなさい。どうでした?」

キリ「辺り一面調査したけど、隠れてた連中も順次捕まってるらしい。もう安心だってよ」

キリ「念のため、ミリティアシスターが教会から派遣されるみたいだけどな」

エルー「そうですか、よかった…」

キリ「あいつも薬で強くなってたけど見かけ倒しだったし、まあ大丈夫だろ」

エルー「ですね」

51: 2014/03/25(火) 22:42:54 ID:oibw6aZc
キリ「…ごめん、エルー」

エルー「えっ?」

キリ「おかしなこといっぱいして、いっぱい不安にさせて、本当にごめん」

キリ「ガキじゃねえのにさ、もう。情けねえ」

エルー「…質問、いいですか?」

エルー「今まで、どうして…その、変なことばっかりしてきたんです?」

キリ「……不安から、だ」

52: 2014/03/25(火) 22:44:53 ID:oibw6aZc
キリ「あの旅が終わって、やっと二人で落ち着いて暮らせるようになって」

キリ「そしたら、今まで見えてこなかったものも見えるようになって」

キリ「誰かを、こんなに好きになったのなんて初めてだったから、色んなことが不安になって、訳分かんない行動取るようになって」

エルー「キリさん…」

キリ「言い訳だ、全部。本当に、本当にごめん」

エルー「キリ」

ギュッ

キリ「…エルー?」

エルー「私も、ごめんなさい」

エルー「好きな人が不安になっていたのに、それに気づいてあげられなくて、ごめんなさい」

53: 2014/03/25(火) 22:46:41 ID:oibw6aZc
キリ「…なんか、謝ってばっかだな俺たち」ハハハ

エルー「お互い様、ってことになるんですかね」フフフ

キリ「チャラになる?」

エルー「なるんじゃないでしょうか」

キリ「そっか、よかったー」ホッ

エルー「安心して油断してると、出ていくかもしれませんよ」

キリ「えっ……」

エルー「冗談です」

キリ「ビビらせるなよぉ」

54: 2014/03/25(火) 22:49:25 ID:oibw6aZc
エルー「キリ。もう少しだけ、抱きしめてもらってていいですか?」

キリ「そうしたいのは、やまやまなんだけど」

エルー「?」

キリ「熱い、体が」

エルー「フレアって体温まで上げる効果ありましたっけ?」

キリ「いや、そうじゃなくて!」

エルー「あっ…そういうことですか」

キリ「だから、できれば離れてほしいっていうか」

エルー「私は、いつでもいいですよ」

エルー「むしろ、今までこういうことあまりなくて、それもちょっと不安だったというか」

エルー「あ、睡眠薬の件はノーカウントで」
キリ「分かった」

グイッ

エルー「あっ」

55: 2014/03/25(火) 22:52:28 ID:oibw6aZc
翌日。


キリ「――というわけで、今回はなんとかなったよ」

キリ「ずっと言えなかったけど…八つ当たりしてごめんな、スイ」

スイ「あれぐらいならいつでも受け止めてやるよ」

スイ「例の針と糸まで持ち出されるのは少し勘弁だけどな」

キリ「これか? これな、針に矢みたいな返しがついてて、一度刺さったら」
スイ「分かったからあたしには使うなよ。あたしもできるだけ手加減するからお前も手加減してくれよ」

スイ「そういや、ハイネとアンディどこ行ったか知ってるか?」

キリ「ああ、朝早くに出発していったよ。仕事関連らしいぜ。スイにもよろしくってよ」

スイ「そうだったのか…アンディとはまた手合せしたかったんだけどな」キッ

キリ(根本は変わってないんだなお前…手加減できてるの?)

56: 2014/03/25(火) 22:54:50 ID:oibw6aZc
キリ「まあ、いつの間にやらいなくなってたファランはともかく、ハイネとアンディの二人はまたこの街に来てくれるだろうさ」

スイ「なんか取決めでもしたのか?」

キリ「あの旅のことを改めてまとめたくて、当時の話を二人の視点から聞きたいってエルーが言ってな。できたら小説にもしたいらしい」

スイ「題名は決まってるのか?」

キリ「それは――」


おわり

57: 2014/03/25(火) 22:57:31 ID:oibw6aZc
おまけ。ほんぺ開始前にて


キリ「」カチャカチャガチャガチャガタガタ

エルー(ミンクさんとウラテスさんに連れられてオススメの喫茶店に行き、帰ってきたら)

エルー(家の側の工房で大好きな人が無言で何かやってました)

キリ「もう少しうまくブッ刺したいんだけどなー」

エルー「キリさん?」

キリ「ああ、エルー。おかえり」

キリ「やっぱ上手く作ろうとしたらなー。毒でも塗るかなあ」カチカチゴチャゴチャ

エルー(お母様、お父様、なんだか最近のキリさんは恐いです)

おわり

58: 2014/03/25(火) 22:58:06 ID:oibw6aZc
ありがとうございました

引用: エルー「キリさん!? 何してるんですか!?」