1: 2025/01/02(木) 22:12:50 ID:???00
※本SSは実際の出来事をもとにしたフィクションです
3: 2025/01/02(木) 22:21:08 ID:???00
2024年1月2日15時01分 新千歳空港 保安検査場前
桜小路きな子は、東京の結ヶ丘女子校高等学校に通う高校一年生だ。高校では、スクールアイドル部に所属している。
きな子は、年末から年明けまでを北海道にある実家で過ごした。そして年が明けた2日、東京に帰る航空機に搭乗するために新千歳空港に来ている。
普段であれば、実家から近い旭川空港を利用するところだが、今回は家族で札幌に出かける予定になっていたので、そのまま新千歳空港を利用することにしている。
きな子「さて、そろそろ行くっす。お見送りありがとうっす」
桜小路母「うん。でも、もっとこっちにいたらよかったのに」
きな子「もうすぐラブライブ!決勝っすからね。のんびりしてる暇はないっす。しっかり練習して優勝を狙うっす!」
桜小路父「内地とはいえ冬だから体には気をつけるんだよ」
きな子「そうっすね。人が多いから感染症対策は大事っす。練習に穴は開けられないっす」
桜小路母「全く、練習練習って、もう少し通知表のことも気にかけて欲しいんだけど?」
桜小路父「まあ、夢中になれることがあるのはいいことさ。それに、大会が終わったら勉強も頑張ってくれるんだろう?」
きな子「……ええと、も、もう行かなきゃっすね。じゃあまた、連絡するっす!」
桜小路母「もう、あの子ったら」
桜小路父「一度しかない高校生活、元気なのが一番さ」
桜小路母「あなたがそうやって甘やかすのも一因だからね?」
桜小路父「……さ、さあ、俺たちも帰ろうかー!」
桜小路きな子は、東京の結ヶ丘女子校高等学校に通う高校一年生だ。高校では、スクールアイドル部に所属している。
きな子は、年末から年明けまでを北海道にある実家で過ごした。そして年が明けた2日、東京に帰る航空機に搭乗するために新千歳空港に来ている。
普段であれば、実家から近い旭川空港を利用するところだが、今回は家族で札幌に出かける予定になっていたので、そのまま新千歳空港を利用することにしている。
きな子「さて、そろそろ行くっす。お見送りありがとうっす」
桜小路母「うん。でも、もっとこっちにいたらよかったのに」
きな子「もうすぐラブライブ!決勝っすからね。のんびりしてる暇はないっす。しっかり練習して優勝を狙うっす!」
桜小路父「内地とはいえ冬だから体には気をつけるんだよ」
きな子「そうっすね。人が多いから感染症対策は大事っす。練習に穴は開けられないっす」
桜小路母「全く、練習練習って、もう少し通知表のことも気にかけて欲しいんだけど?」
桜小路父「まあ、夢中になれることがあるのはいいことさ。それに、大会が終わったら勉強も頑張ってくれるんだろう?」
きな子「……ええと、も、もう行かなきゃっすね。じゃあまた、連絡するっす!」
桜小路母「もう、あの子ったら」
桜小路父「一度しかない高校生活、元気なのが一番さ」
桜小路母「あなたがそうやって甘やかすのも一因だからね?」
桜小路父「……さ、さあ、俺たちも帰ろうかー!」
4: 2025/01/02(木) 22:23:32 ID:???00
15時18分
保安検査場を抜け、普段利用する空港とは違う景色に、きな子はあたりを見回す。
きな子(ええと、出発ゲートはどっちすかね。やっぱり旭川と比べると大きな空港っす)
きな子(お土産コーナーは羽田より広かったっす)
きな子(それだけ、多くの人が利用しているってことっすね)
出発ゲートに向けて歩きながら、きな子は考えを巡らせる。
きな子(毎日多くの人を乗せて、あんなに大きい乗り物が空を飛ぶなんて、改めて考えると凄いことっす)
きな子「あ、ここっすね。羽田行516便、間違いないっす」
きな子(搭乗はまだっすね。でも、あたりにいる人の数からすると結構混んでいそうっす)
きな子(搭乗順は、GROUP3。普通に乗る人の中では一番最初っすね。それにしても、GROUP1とか2とかの人達は何者なんすかねー)
そのとき、グラウンドスタッフによる放送が聞こえてきた。
スタッフ「東京羽田行516便をご利用の皆様にお知らせいたします。当便は、使用する機材の到着遅れにより、出発が遅れる見込みとなっております」
スタッフ「新しい出発時刻は、16時ちょうど。皆様の機内へのご案内は15時40分を予定しております。ご案内まで今しばらくお待ちください」
きな子(遅れっすか。でも、飛行機で10分の遅れは誤差みたいなもんっすね)
きな子(椅子が空いていないのは痛いっすが、まあ気長に待つっす)
保安検査場を抜け、普段利用する空港とは違う景色に、きな子はあたりを見回す。
きな子(ええと、出発ゲートはどっちすかね。やっぱり旭川と比べると大きな空港っす)
きな子(お土産コーナーは羽田より広かったっす)
きな子(それだけ、多くの人が利用しているってことっすね)
出発ゲートに向けて歩きながら、きな子は考えを巡らせる。
きな子(毎日多くの人を乗せて、あんなに大きい乗り物が空を飛ぶなんて、改めて考えると凄いことっす)
きな子「あ、ここっすね。羽田行516便、間違いないっす」
きな子(搭乗はまだっすね。でも、あたりにいる人の数からすると結構混んでいそうっす)
きな子(搭乗順は、GROUP3。普通に乗る人の中では一番最初っすね。それにしても、GROUP1とか2とかの人達は何者なんすかねー)
そのとき、グラウンドスタッフによる放送が聞こえてきた。
スタッフ「東京羽田行516便をご利用の皆様にお知らせいたします。当便は、使用する機材の到着遅れにより、出発が遅れる見込みとなっております」
スタッフ「新しい出発時刻は、16時ちょうど。皆様の機内へのご案内は15時40分を予定しております。ご案内まで今しばらくお待ちください」
きな子(遅れっすか。でも、飛行機で10分の遅れは誤差みたいなもんっすね)
きな子(椅子が空いていないのは痛いっすが、まあ気長に待つっす)
6: 2025/01/02(木) 22:26:31 ID:???00
15時47分
516便に用いられるのは、エアバス式A350-941型航空機、2021年11月18日に運用を開始した、最新鋭機と言っていい航空機である。
きな子は機内で、自分の席を探す。きな子は、先に搭乗して手荷物を収納できること、窓の外を見るのが楽しみなことから、窓側の席がお気に入りだ。
きな子「ええと、56K……、56K……、あったっす」
きな子(やっぱり窓側がいいっすね。降りるのが遅くなるのが嫌な人もいるらしいっすが、こっちのほうがお得だと思うっす)
続いて乗客の搭乗は進み、座席はほぼ満席となる。きな子の隣にも壮年の夫婦が着席する。
CA「皆様、ただいまドアが閉まりました。電子機器の電源をお切りください」
きな子(16時ぴったりっすね。さあ、空の旅に出発っす!)
定刻より10分遅れた16時00分、新千歳空港発東京国際空港行516便は、乗員12名、桜小路きな子を含む乗客367名、合わせて379名を乗せて、東京国際空港へ向けて出発する。
516便に用いられるのは、エアバス式A350-941型航空機、2021年11月18日に運用を開始した、最新鋭機と言っていい航空機である。
きな子は機内で、自分の席を探す。きな子は、先に搭乗して手荷物を収納できること、窓の外を見るのが楽しみなことから、窓側の席がお気に入りだ。
きな子「ええと、56K……、56K……、あったっす」
きな子(やっぱり窓側がいいっすね。降りるのが遅くなるのが嫌な人もいるらしいっすが、こっちのほうがお得だと思うっす)
続いて乗客の搭乗は進み、座席はほぼ満席となる。きな子の隣にも壮年の夫婦が着席する。
CA「皆様、ただいまドアが閉まりました。電子機器の電源をお切りください」
きな子(16時ぴったりっすね。さあ、空の旅に出発っす!)
定刻より10分遅れた16時00分、新千歳空港発東京国際空港行516便は、乗員12名、桜小路きな子を含む乗客367名、合わせて379名を乗せて、東京国際空港へ向けて出発する。
7: 2025/01/02(木) 22:29:54 ID:???00
16時27分 516便 新千歳空港を離陸
日没時刻を過ぎているものの、上空からは沈みゆく太陽の姿をかろうじて捉えることができる。
きな子(いよいよ離陸、すごいパワーっす。機長、やる気っすね!)
きな子(地上が遠くなっていくっす。これからきな子は機上の人っす、なんちゃって)
きな子(ああ、夕日がきれいっす。燃えるような赤、すごいっす)
きな子(……お父さん、お母さん、決勝は会場まで見に来てくれるって言ってたっす)
きな子(元気で頑張ってきたらいいなんて言ってくれたけど、やっぱり優勝したところを見てほしいっすね……)
わずかに残る太陽もじきに姿を消し、516便はこれから先の見えない暗闇の中を進む。月の無い夜であった。
日没時刻を過ぎているものの、上空からは沈みゆく太陽の姿をかろうじて捉えることができる。
きな子(いよいよ離陸、すごいパワーっす。機長、やる気っすね!)
きな子(地上が遠くなっていくっす。これからきな子は機上の人っす、なんちゃって)
きな子(ああ、夕日がきれいっす。燃えるような赤、すごいっす)
きな子(……お父さん、お母さん、決勝は会場まで見に来てくれるって言ってたっす)
きな子(元気で頑張ってきたらいいなんて言ってくれたけど、やっぱり優勝したところを見てほしいっすね……)
わずかに残る太陽もじきに姿を消し、516便はこれから先の見えない暗闇の中を進む。月の無い夜であった。
8: 2025/01/02(木) 22:32:52 ID:???00
17時43分
516便はここまで何の問題もなく飛行を続け、東京国際空港のタワー担当管制官と交信を開始する。
そして、続く17時44分、東京国際空港の滑走路34Rへの着陸許可が下りる。いつもどおりの順調な飛行である。
時を同じくして、東京国際空港では、海上保安庁所属ボンバルディア式DHC-8-315型航空機、通称ダッシュエイトが滑走路34Rへ向けて走行している。
しかし、それは516便の乗客であるきな子には知る由もないことである。
516便はここまで何の問題もなく飛行を続け、東京国際空港のタワー担当管制官と交信を開始する。
そして、続く17時44分、東京国際空港の滑走路34Rへの着陸許可が下りる。いつもどおりの順調な飛行である。
時を同じくして、東京国際空港では、海上保安庁所属ボンバルディア式DHC-8-315型航空機、通称ダッシュエイトが滑走路34Rへ向けて走行している。
しかし、それは516便の乗客であるきな子には知る由もないことである。
10: 2025/01/02(木) 22:38:23 ID:???00
17時46分
着陸に向けて高度を下げる516便の中で、きな子の心拍数がわずかに上昇し始める。
きな子(大分高度が下がってきたみたいっす。暗くてよくわからないけど、東京湾上空っすかね)
きな子(飛行機は好きっすけど、着陸のときの衝撃はちょっと苦手っす)
きな子(でも、航空機事故が起こる確率は凄く低いって聞いたっす。まあ、そりゃそうっすね。その代わり、いざ事故が起きると生存率が低いっていうのはやっぱり怖いっすけど)
とはいえ、きな子の胸中でわずかに生まれた不安は、当然杞憂に終わるものという前提の上でのちょっとした悪戯心のようなものに過ぎない。
着陸に向けて高度を下げる516便の中で、きな子の心拍数がわずかに上昇し始める。
きな子(大分高度が下がってきたみたいっす。暗くてよくわからないけど、東京湾上空っすかね)
きな子(飛行機は好きっすけど、着陸のときの衝撃はちょっと苦手っす)
きな子(でも、航空機事故が起こる確率は凄く低いって聞いたっす。まあ、そりゃそうっすね。その代わり、いざ事故が起きると生存率が低いっていうのはやっぱり怖いっすけど)
とはいえ、きな子の胸中でわずかに生まれた不安は、当然杞憂に終わるものという前提の上でのちょっとした悪戯心のようなものに過ぎない。
12: 2025/01/02(木) 22:43:15 ID:???00
17時46分13秒
その思いとは裏腹に、先述の海上保安庁所属機が、管制の支持に反して、516便が向かう滑走路34Rの停止位置を通過、滑走路南東端から560m付近の滑走路中心線上に停止する。
だが、進入中の516便運航乗務員からは滑走路の灯火に紛れ、その姿を確認することができなかった。
また、管制システム上には滑走路誤侵入に関する表示がされるが、担当管制官は、表示を認識していなかった。
その思いとは裏腹に、先述の海上保安庁所属機が、管制の支持に反して、516便が向かう滑走路34Rの停止位置を通過、滑走路南東端から560m付近の滑走路中心線上に停止する。
だが、進入中の516便運航乗務員からは滑走路の灯火に紛れ、その姿を確認することができなかった。
また、管制システム上には滑走路誤侵入に関する表示がされるが、担当管制官は、表示を認識していなかった。
13: 2025/01/02(木) 22:44:54 ID:???00
そして、2024年1月2日17時47分27秒
14: 2025/01/02(木) 22:49:23 ID:???00
516便機長は、目前に自機の着陸灯に照らされた海上保安庁所属機の姿を見る。
直後に何かに乗り上げたような衝撃が516便を襲い、滑走路に真っ赤な炎が立ち上る。
制御を失った516便は、約220km/hで進入していた慣性そのままに、滑走路上を滑っていく。
直後に何かに乗り上げたような衝撃が516便を襲い、滑走路に真っ赤な炎が立ち上る。
制御を失った516便は、約220km/hで進入していた慣性そのままに、滑走路上を滑っていく。
16: 2025/01/02(木) 23:24:42 ID:???00
きな子「ひっ!」
主脚が設置した直後の下から突き上げるような衝撃に、きな子の口から思わず小さな悲鳴が漏れる。
明かりが消された機内を爆発の眩い閃光が照らし、突然の非常事態にさらされた乗客の輪郭を浮かび上がらせる。
きな子(な、何が起きたっすか)
きな子の脳裏に、先ほど冗談で思い浮かべた航空機事故の生存率の低さが浮かぶ。
きな子(何かにぶつかった? 着陸失敗?どうなってるっすか!?)
客席のあちこちから悲鳴が上がる。金属が地表を削りながら滑走する轟音と大きな振動とが、きな子の恐怖を増幅させる。
きな子は、激しく揺さぶられながら、CAの頭を下げろという指示に、縋るように、ただ必氏に従う。
CA「安全姿勢! 頭を下げて! Head Down!」
きな子(誰か、助けて! お母さん!)
主脚が設置した直後の下から突き上げるような衝撃に、きな子の口から思わず小さな悲鳴が漏れる。
明かりが消された機内を爆発の眩い閃光が照らし、突然の非常事態にさらされた乗客の輪郭を浮かび上がらせる。
きな子(な、何が起きたっすか)
きな子の脳裏に、先ほど冗談で思い浮かべた航空機事故の生存率の低さが浮かぶ。
きな子(何かにぶつかった? 着陸失敗?どうなってるっすか!?)
客席のあちこちから悲鳴が上がる。金属が地表を削りながら滑走する轟音と大きな振動とが、きな子の恐怖を増幅させる。
きな子は、激しく揺さぶられながら、CAの頭を下げろという指示に、縋るように、ただ必氏に従う。
CA「安全姿勢! 頭を下げて! Head Down!」
きな子(誰か、助けて! お母さん!)
18: 2025/01/02(木) 23:50:51 ID:???00
17時48分
516便は滑走路上を1400mほど滑走した後、右に逸脱し、滑走路脇の草地に設置された進入角指示灯に衝突し停止する。
きな子にとっては永遠にも思える時間だったが、実際には衝突から停止まで1分に満たない時間であった。
きな子(……止まった?)
きな子(ベルトが食い込んで少し痛いけど、それ以外は何とか大丈夫そうっす)
516便は滑走路上を1400mほど滑走した後、右に逸脱し、滑走路脇の草地に設置された進入角指示灯に衝突し停止する。
きな子にとっては永遠にも思える時間だったが、実際には衝突から停止まで1分に満たない時間であった。
きな子(……止まった?)
きな子(ベルトが食い込んで少し痛いけど、それ以外は何とか大丈夫そうっす)
19: 2025/01/02(木) 23:56:32 ID:???00
17時50分
機内で聞こえる声は、悲鳴からざわめきへと変化している。隣の席の夫婦は不安そうに手を取り合っている。
きな子は自身の強く握りしめられた手が、制御できないほど震えていることに気づいた。
そして、先ほどから頭に響く不快な音が、奥歯が打ち鳴らされる音だということにも。
きな子(……手が、震えが止まらないっす)
そのとき、窓側の席に座っているきな子の目に、炎に包まれる右エンジンが否応なしに映る。さらに、窓のすぐ外ではバチバチと火花が散っていることにも気がつく。
きな子(火事。そうだ、止まったからといって助かったわけじゃないんだ)
きな子(あの火が、客席まで広がったら……、いや、今にも燃料が爆発するかもしれないっす)
きな子(早く、脱出、しないと)
しかし、聞こえてきたCAの声は、きな子の期待を裏切るものだった。
CA「落ち着いて! 状況を確認します! 座席から動かないで!」
きな子(そんな、こうしてる間にも……)
きな子の脳裏に、以前テレビで見た、航空機事故被害者が必氏の思いで残した遺書が浮かぶ。
きな子(きな子も、何か、書くもの……、ああ、何も持ってないっす)
きな子(……そうだ、スマホ、スマホはどこっすか)
衝撃で離してしまったのか、手に持っていたはずのスマートフォンは周囲には見当たらなかった。
きな子(そんな、どうしよう……)
機内で聞こえる声は、悲鳴からざわめきへと変化している。隣の席の夫婦は不安そうに手を取り合っている。
きな子は自身の強く握りしめられた手が、制御できないほど震えていることに気づいた。
そして、先ほどから頭に響く不快な音が、奥歯が打ち鳴らされる音だということにも。
きな子(……手が、震えが止まらないっす)
そのとき、窓側の席に座っているきな子の目に、炎に包まれる右エンジンが否応なしに映る。さらに、窓のすぐ外ではバチバチと火花が散っていることにも気がつく。
きな子(火事。そうだ、止まったからといって助かったわけじゃないんだ)
きな子(あの火が、客席まで広がったら……、いや、今にも燃料が爆発するかもしれないっす)
きな子(早く、脱出、しないと)
しかし、聞こえてきたCAの声は、きな子の期待を裏切るものだった。
CA「落ち着いて! 状況を確認します! 座席から動かないで!」
きな子(そんな、こうしてる間にも……)
きな子の脳裏に、以前テレビで見た、航空機事故被害者が必氏の思いで残した遺書が浮かぶ。
きな子(きな子も、何か、書くもの……、ああ、何も持ってないっす)
きな子(……そうだ、スマホ、スマホはどこっすか)
衝撃で離してしまったのか、手に持っていたはずのスマートフォンは周囲には見当たらなかった。
きな子(そんな、どうしよう……)
20: 2025/01/03(金) 00:45:02 ID:???00
17時53分
どこからかプラスチックが焼けるような、つんとする匂いが漂ってくる。
機内は非常灯がつき明るさが保たれていたが、停止直後に比べて、前方の視界が悪くなっている。
きな子(煙が入ってきた? 駄目っす。煙を吸ったら命に関わるっす。それに、そこまでじゃなくても喉に、決勝に影響が!)
きな子は機内に入ってきた煙をできるだけ吸わないように頭を低くする。それは衝撃時にとった耐衝撃姿勢と似ていた。
前方からはCAと思わしき女性の声が聞こえる。しかし、拡声器を使っているのか、音が割れて不明瞭で内容までは聞き取れない。
きな子(まだ脱出できないんっすか!? 早く脱出の指示を、……あ)
きな子(窓の外は火事っす。これじゃあ、脱出できない……)
きな子(このまま、火が回るのを待つしかないんっすか!?)
民間の航空会社には、非常時に全乗客を90秒以内に脱出させられなければならないという基準が存在する。
それは脱出口の半分が使えないという前提の基準ではあるが、実際に緊急時どの脱出口が使用できるか判断し、共有することは容易ではない。
当然、この事故のように脱出口の外に火災が認められる場合、その脱出口は使用できない。
また、この段階では左エンジンは停止することなく作動したままであった。そのため、火災とは関係なく、右側の脱出口は前方R1を除き、スライドを展開した場合、いずれも、右エンジ
ンの危険区域内に入る状態であった。
このとき前方の2か所と左最後尾の合わせて3か所の脱出口は使用できる状態と判断されているが、それはきな子の知るところではなかった。
確かなことは、この時点で停止から5分以上がたっているが、機内には多数の乗客が残されているということである。
どこからかプラスチックが焼けるような、つんとする匂いが漂ってくる。
機内は非常灯がつき明るさが保たれていたが、停止直後に比べて、前方の視界が悪くなっている。
きな子(煙が入ってきた? 駄目っす。煙を吸ったら命に関わるっす。それに、そこまでじゃなくても喉に、決勝に影響が!)
きな子は機内に入ってきた煙をできるだけ吸わないように頭を低くする。それは衝撃時にとった耐衝撃姿勢と似ていた。
前方からはCAと思わしき女性の声が聞こえる。しかし、拡声器を使っているのか、音が割れて不明瞭で内容までは聞き取れない。
きな子(まだ脱出できないんっすか!? 早く脱出の指示を、……あ)
きな子(窓の外は火事っす。これじゃあ、脱出できない……)
きな子(このまま、火が回るのを待つしかないんっすか!?)
民間の航空会社には、非常時に全乗客を90秒以内に脱出させられなければならないという基準が存在する。
それは脱出口の半分が使えないという前提の基準ではあるが、実際に緊急時どの脱出口が使用できるか判断し、共有することは容易ではない。
当然、この事故のように脱出口の外に火災が認められる場合、その脱出口は使用できない。
また、この段階では左エンジンは停止することなく作動したままであった。そのため、火災とは関係なく、右側の脱出口は前方R1を除き、スライドを展開した場合、いずれも、右エンジ
ンの危険区域内に入る状態であった。
このとき前方の2か所と左最後尾の合わせて3か所の脱出口は使用できる状態と判断されているが、それはきな子の知るところではなかった。
確かなことは、この時点で停止から5分以上がたっているが、機内には多数の乗客が残されているということである。
21: 2025/01/03(金) 01:35:42 ID:???00
17時56分
次第に濃くなる煙の中、きな子はハンカチを口に当て、必氏に身を低くしている。
そのとき、きな子の肩が叩かれる。顔を上げると、パイロットの制服を着た人物がきな子ことをのぞき込んでいる。
きな子は気づかなかったが、既に前方のL1、R1及び後方のL4ドアから緊急脱出が始まっており、逃げ遅れた人がいないか確認中の516便機長が、座席で姿勢を低くしているきな子を見つけたのだ。
機長「大丈夫ですか? 脱出できますか」
きな子「は、はい」
機長「左の一番後ろから脱出します。先に行ってください」
きな子「ありがとうございます」
次第に濃くなる煙の中、きな子はハンカチを口に当て、必氏に身を低くしている。
そのとき、きな子の肩が叩かれる。顔を上げると、パイロットの制服を着た人物がきな子ことをのぞき込んでいる。
きな子は気づかなかったが、既に前方のL1、R1及び後方のL4ドアから緊急脱出が始まっており、逃げ遅れた人がいないか確認中の516便機長が、座席で姿勢を低くしているきな子を見つけたのだ。
機長「大丈夫ですか? 脱出できますか」
きな子「は、はい」
機長「左の一番後ろから脱出します。先に行ってください」
きな子「ありがとうございます」
22: 2025/01/03(金) 01:38:28 ID:???00
17時58分
きな子が脱出を指示されたl4のスライドは、機体が前傾して出口の床面高が正常時よりも高くなっている。
そのため通常より傾斜が急で、きな子にはまるで垂直な壁のように見える。
きな子(こ、ここを降りるんっすか)
CA「座って滑って!」
きな子「はい!」
きな子(でも、ここにいるよりましっす!)
きな子「よし、行くっす!」
きな子「……くぅ、やっぱり転んだっす。痛いっす」
きな子(でも、脱出できた! 今度こそ助かったっす!)
きな子と同様にL4から脱出した乗客は20~30名程度だが、スライドの傾斜が大きいことから、その多くが着地時に転倒した。
L4から脱出した乗客は、脱出後は乗り合わせた航空会社社員により誘導された。
社員「飛行機から離れて! こちらへ!」
きな子「はい。……あ、客室に、火が」
機体が停止してから約10分後、エンジン付近で発生した火災は客室内に延焼した。516便の全乗客乗員が脱出したまさに直後であった。
きな子「あと少し脱出が遅れていたら……、あの火の中に……」
きな子が脱出を指示されたl4のスライドは、機体が前傾して出口の床面高が正常時よりも高くなっている。
そのため通常より傾斜が急で、きな子にはまるで垂直な壁のように見える。
きな子(こ、ここを降りるんっすか)
CA「座って滑って!」
きな子「はい!」
きな子(でも、ここにいるよりましっす!)
きな子「よし、行くっす!」
きな子「……くぅ、やっぱり転んだっす。痛いっす」
きな子(でも、脱出できた! 今度こそ助かったっす!)
きな子と同様にL4から脱出した乗客は20~30名程度だが、スライドの傾斜が大きいことから、その多くが着地時に転倒した。
L4から脱出した乗客は、脱出後は乗り合わせた航空会社社員により誘導された。
社員「飛行機から離れて! こちらへ!」
きな子「はい。……あ、客室に、火が」
機体が停止してから約10分後、エンジン付近で発生した火災は客室内に延焼した。516便の全乗客乗員が脱出したまさに直後であった。
きな子「あと少し脱出が遅れていたら……、あの火の中に……」
23: 2025/01/03(金) 12:18:47 ID:???00
18時13分
きな子たちL4から脱出した乗客は516便から少し離れた草地に集まっていた。
航空会社社員は、緊迫した様子で電話している。
他の乗客の多くもスマートフォンで家族などと連絡を取っているようだ。
機内でスマートフォンを紛失したきな子は、どこか現実ではないものを見るような感覚で、燃え上がる516便と消火活動を続ける消防車、そして滑走路の反対側で同様に上がる火の手を眺めていた。
きな子(みんな心配してるっすよね。なんとか連絡できたらいいっすけど)
きな子(どうしてこんなことになったんすか。向こうで燃えてるのも飛行機……?。あれにぶつかった?)
きな子(まだ震えてるっす。それに、コートもなしだとさすがに寒いっす。)
社員「みなさん、これからターミナルに向けて移動します」
きな子(ありがたいっす。早くどこかで落ち着きたいっす)
社員「少し距離がありますが、はぐれないようにひとかたまりになって付いてきてください」
きな子たちL4から脱出した乗客は516便から少し離れた草地に集まっていた。
航空会社社員は、緊迫した様子で電話している。
他の乗客の多くもスマートフォンで家族などと連絡を取っているようだ。
機内でスマートフォンを紛失したきな子は、どこか現実ではないものを見るような感覚で、燃え上がる516便と消火活動を続ける消防車、そして滑走路の反対側で同様に上がる火の手を眺めていた。
きな子(みんな心配してるっすよね。なんとか連絡できたらいいっすけど)
きな子(どうしてこんなことになったんすか。向こうで燃えてるのも飛行機……?。あれにぶつかった?)
きな子(まだ震えてるっす。それに、コートもなしだとさすがに寒いっす。)
社員「みなさん、これからターミナルに向けて移動します」
きな子(ありがたいっす。早くどこかで落ち着きたいっす)
社員「少し距離がありますが、はぐれないようにひとかたまりになって付いてきてください」
24: 2025/01/03(金) 12:25:56 ID:???00
18時40分
きな子たちは、ターミナルへの移動中、近くの駐機場地上で作業中の他の航空会社社員に発見され、
前方出口から脱出した乗客が集まっている505番スポットへ誘導された。
きな子(徒歩で移動すると、空港は遠いっすね)
きな子(でも、やっとみんながいるところに合流できそうっす)
きな子たちは、ターミナルへの移動中、近くの駐機場地上で作業中の他の航空会社社員に発見され、
前方出口から脱出した乗客が集まっている505番スポットへ誘導された。
きな子(徒歩で移動すると、空港は遠いっすね)
きな子(でも、やっとみんながいるところに合流できそうっす)
25: 2025/01/03(金) 12:26:52 ID:???00
19時25分
その後、寒さなどもあり、505番スポットでの人数確認を断念、516便乗客はターミナル内の待機室に案内される。
きな子(ようやく、一息付けそうっす)
きな子(……前のほうは見えなかったけど、怪我をした人、……亡くなった人はいるんすかね)
きな子(荷物も全部燃えてしまったっす。どうやって家に帰ったら……)
その後、寒さなどもあり、505番スポットでの人数確認を断念、516便乗客はターミナル内の待機室に案内される。
きな子(ようやく、一息付けそうっす)
きな子(……前のほうは見えなかったけど、怪我をした人、……亡くなった人はいるんすかね)
きな子(荷物も全部燃えてしまったっす。どうやって家に帰ったら……)
26: 2025/01/03(金) 12:29:51 ID:???00
20時45分
航空会社による氏名及び人数の最終確認が行われ、一部負傷者はいるものの、516便の乗員乗客は全員の無事が確認される。
しかし、「516便の」という言葉がきな子の心に棘のように刺さる。
人数確認後、乗客たちは追って知らせがあるまで更に待機を指示される。
皆、表情は暗く、うつむきがちで、時折小声で話し声が聞こえる他は、数百人いるとは思えないほど静まり返っている。
きな子は、乗客たちのぶつけようのないいら立ちと疲労が高まっていくのを感じる。
きな子(みんな、疲れた表情っす。あんなことがあったから、当然っすけど)
きな子(体は無事でも、きっと心に負った傷は深いっす。多分、きな子も含めて)
きな子の近くで、母親に抱かれていた幼稚園児くらいの少女が泣き出す。
きな子(あんな小さな子まで……。何か、きな子にできることはないっすか)
きな子(あ……、そうか!)
きな子(前に進むことができなくて、立ち止まっていたきな子の背中を押してくれたのは、かのん先輩たちスクールアイドルだった)
きな子(そうして始めたスクールアイドル、まだまだ技術は未熟かもしれないけど、でも、今同じ体験をしたきな子にしかできないことがあるはずっす)
航空会社による氏名及び人数の最終確認が行われ、一部負傷者はいるものの、516便の乗員乗客は全員の無事が確認される。
しかし、「516便の」という言葉がきな子の心に棘のように刺さる。
人数確認後、乗客たちは追って知らせがあるまで更に待機を指示される。
皆、表情は暗く、うつむきがちで、時折小声で話し声が聞こえる他は、数百人いるとは思えないほど静まり返っている。
きな子は、乗客たちのぶつけようのないいら立ちと疲労が高まっていくのを感じる。
きな子(みんな、疲れた表情っす。あんなことがあったから、当然っすけど)
きな子(体は無事でも、きっと心に負った傷は深いっす。多分、きな子も含めて)
きな子の近くで、母親に抱かれていた幼稚園児くらいの少女が泣き出す。
きな子(あんな小さな子まで……。何か、きな子にできることはないっすか)
きな子(あ……、そうか!)
きな子(前に進むことができなくて、立ち止まっていたきな子の背中を押してくれたのは、かのん先輩たちスクールアイドルだった)
きな子(そうして始めたスクールアイドル、まだまだ技術は未熟かもしれないけど、でも、今同じ体験をしたきな子にしかできないことがあるはずっす)
27: 2025/01/03(金) 12:36:05 ID:???00
きな子「あー、あ~」
きな子(よし、喉も問題ない。いけるっす)
きな子「すぅ……」
きな子「楽しい だけじゃ ないことばかりでも♪」
きな子「~♪」
待機室にきな子の静かな、しかし力強い声が響く。
本来のこの曲よりもいくぶんゆったりとしたテンポで歌われるそのメロディに、うつむいていた乗客たちは顔を上げる。
いつの間にか泣き止み、目を大きくしてきな子を見つめる少女に、きな子はすこしぎこちないウインクを返す。
きな子(こんな気持ちになるのは初めてっす。いつものライブよりもっと強い想い。みんなに少しでも力をあげたい。沈んだ心を軽くしてあげたい)
きな子(歌がうまくなくても、ダンスがぎこちなくても、それでも気持ちは伝わるって、そう信じられるっす)
きな子(何より、私がスクールアイドルの力を信じているから……)
これまできな子は、偉大な先輩である一期生を目標としてスクールアイドル活動を行っていた。
しかし、このとき初めて、どのようなスクールアイドルになりたいのか、なぜステージに立つのかという問いに対する答えを自分自身の中に見つける。
本当の意味で、桜小路きな子というスクールアイドルが誕生した瞬間だった。
きな子(よし、喉も問題ない。いけるっす)
きな子「すぅ……」
きな子「楽しい だけじゃ ないことばかりでも♪」
きな子「~♪」
待機室にきな子の静かな、しかし力強い声が響く。
本来のこの曲よりもいくぶんゆったりとしたテンポで歌われるそのメロディに、うつむいていた乗客たちは顔を上げる。
いつの間にか泣き止み、目を大きくしてきな子を見つめる少女に、きな子はすこしぎこちないウインクを返す。
きな子(こんな気持ちになるのは初めてっす。いつものライブよりもっと強い想い。みんなに少しでも力をあげたい。沈んだ心を軽くしてあげたい)
きな子(歌がうまくなくても、ダンスがぎこちなくても、それでも気持ちは伝わるって、そう信じられるっす)
きな子(何より、私がスクールアイドルの力を信じているから……)
これまできな子は、偉大な先輩である一期生を目標としてスクールアイドル活動を行っていた。
しかし、このとき初めて、どのようなスクールアイドルになりたいのか、なぜステージに立つのかという問いに対する答えを自分自身の中に見つける。
本当の意味で、桜小路きな子というスクールアイドルが誕生した瞬間だった。
28: 2025/01/03(金) 12:38:17 ID:???00
歌い終えたきな子に乗客たちから静かに拍手が送られる。
先ほどまでより少し穏やかな顔になった人々にきな子は語り掛ける。
きな子「突然失礼しました。聞いてくれてありがとうございます。私は、Liella!っていうグループでスクールアイドルをやってる桜小路きな子っす」
きな子「今日、こんなことになって、……何ていうか、すぐに立ち直るのは難しいかもしれないっす」
きな子「きな子もまだ炎の赤さが目に焼き付いて離れないっす。手だって、まだ震えたままっす」
きな子「それでも、きな子はステージに立つっす。歌い続けるっす。……だから、見てほしいっす。今日同じ飛行機に乗ってた、きな子のことを」
きな子「……いつか、またみんなが笑い合える日が来るときまで」
先ほどまでより少し穏やかな顔になった人々にきな子は語り掛ける。
きな子「突然失礼しました。聞いてくれてありがとうございます。私は、Liella!っていうグループでスクールアイドルをやってる桜小路きな子っす」
きな子「今日、こんなことになって、……何ていうか、すぐに立ち直るのは難しいかもしれないっす」
きな子「きな子もまだ炎の赤さが目に焼き付いて離れないっす。手だって、まだ震えたままっす」
きな子「それでも、きな子はステージに立つっす。歌い続けるっす。……だから、見てほしいっす。今日同じ飛行機に乗ってた、きな子のことを」
きな子「……いつか、またみんなが笑い合える日が来るときまで」
29: 2025/01/03(金) 12:45:00 ID:???00
22時26分
516便の乗客たちは、医師による診察を受け、治療が必要なもの以外は帰宅できることとなった。
今後の保証などのための連絡先とマスコミ対応に関する注意点を説明され、乗客たちは解放された。
航空会社により宿泊施設も用意されていただ、東京に家があるものたちは、各々岐路に着いた。
そして、その中にはきな子の姿もあった。
きな子(やっと解放されたっす。さて、とりあえず家まで帰れるだけの交通費はもらったけど、どうするっすかね)
きな子(ああ、そうだ、スマホも荷物も全部燃えてしまったっす!)
きな子(まずは、銀行に連絡、それにスマホも買わないと……、あ!)
きな子(違うっす! まずみんなに連絡しないとっす! ……ええと、あれ? スマホがないとお母さんの携帯の番号がわからないっす)
きな子(実家の番号ならわかるっすけど、家に帰ってるっすかね。電話、電話……、一回待機室に戻って借りるっすかね)
メイ「きな子!!」
きな子「へ? メイちゃん!?」
夏美「きな子! よかったですの~!」
四季「きな子ちゃんが乗っている飛行機が事故にあったってニュースを見て、本当に、心配した」
きな子「みんな、来てくれたっすか!?」
思いがけない級友との再会に、きな子の緊張の糸が切れる。
これまで一滴も流れなかった涙が、とめどなくあふれ出る。
きな子「うう~、みんな、よかったっす! 怖かったっす! また会えた、みんなに会えた~!」
夏美「はい。会えましたの。本当に、本当によかったですの」
四季「怪我はない?」
きな子「ぐす、きな子は大丈夫っす。元気いっぱいっす~」
メイ「まあ、無理するなよ。練習もさ、決勝は近いけど、少し休んだ方がいいよ」
きな子「……ううん、やるっす。きな子は、きな子がスクールアイドルとしてできることを見つけたっす」
きな子「だから、みんなに歌を届けるっす。みんなのために、自分のために!」
夏美「きな子……」
四季「何か、たくましくなった?」
メイ「そっか、本当にやりたいなら止めないけどよ、まあ、今日はとりあえずご飯食べに行って、ゆっくり休もうぜ」
きな子「それは、大賛成っす。安心したらお腹が空いたっす!」
516便の乗客たちは、医師による診察を受け、治療が必要なもの以外は帰宅できることとなった。
今後の保証などのための連絡先とマスコミ対応に関する注意点を説明され、乗客たちは解放された。
航空会社により宿泊施設も用意されていただ、東京に家があるものたちは、各々岐路に着いた。
そして、その中にはきな子の姿もあった。
きな子(やっと解放されたっす。さて、とりあえず家まで帰れるだけの交通費はもらったけど、どうするっすかね)
きな子(ああ、そうだ、スマホも荷物も全部燃えてしまったっす!)
きな子(まずは、銀行に連絡、それにスマホも買わないと……、あ!)
きな子(違うっす! まずみんなに連絡しないとっす! ……ええと、あれ? スマホがないとお母さんの携帯の番号がわからないっす)
きな子(実家の番号ならわかるっすけど、家に帰ってるっすかね。電話、電話……、一回待機室に戻って借りるっすかね)
メイ「きな子!!」
きな子「へ? メイちゃん!?」
夏美「きな子! よかったですの~!」
四季「きな子ちゃんが乗っている飛行機が事故にあったってニュースを見て、本当に、心配した」
きな子「みんな、来てくれたっすか!?」
思いがけない級友との再会に、きな子の緊張の糸が切れる。
これまで一滴も流れなかった涙が、とめどなくあふれ出る。
きな子「うう~、みんな、よかったっす! 怖かったっす! また会えた、みんなに会えた~!」
夏美「はい。会えましたの。本当に、本当によかったですの」
四季「怪我はない?」
きな子「ぐす、きな子は大丈夫っす。元気いっぱいっす~」
メイ「まあ、無理するなよ。練習もさ、決勝は近いけど、少し休んだ方がいいよ」
きな子「……ううん、やるっす。きな子は、きな子がスクールアイドルとしてできることを見つけたっす」
きな子「だから、みんなに歌を届けるっす。みんなのために、自分のために!」
夏美「きな子……」
四季「何か、たくましくなった?」
メイ「そっか、本当にやりたいなら止めないけどよ、まあ、今日はとりあえずご飯食べに行って、ゆっくり休もうぜ」
きな子「それは、大賛成っす。安心したらお腹が空いたっす!」
30: 2025/01/03(金) 12:49:20 ID:???00
本航空機事故により、海上保安庁所属機に搭乗していた6名のうち、1名が重傷を負い、5名が氏亡した。
516便に搭乗していた379名のうち、脱出の際に乗客1名が重傷、乗客4名が軽傷を負ったほか、乗客12名が体調不良等により医師の診察を受けた。
海上保安庁所属機及び516便は共に大破した。
また、東京国際空港の100基以上の航空灯火が破損、滑走路面及び着陸帯が損傷を受けた。
4本ある滑走路が全て閉鎖され、事故が発生した滑走路以外については1月2日21時29分、事故が発生したC滑走路(34R)は1月8日00時00分に再開された。
事故の影響により1月2から8日にかけて1000便以上が欠航、数千便が遅延した。1月2日には51便が成田国際空港、中部国際空港などに目的地を変更した。
なお、本SSの内容については、今後、新たな情報の入手等により、修正されることがあり得る。
また、本SSは、本航空事故に関し、調査経過及び航空事故並びに事故に伴い発生した被害を広く伝え、以て事故等の防止及び被害の軽減に寄与することを目的としたものであり、本航空事故の責任を問うためのものではない。
516便に搭乗していた379名のうち、脱出の際に乗客1名が重傷、乗客4名が軽傷を負ったほか、乗客12名が体調不良等により医師の診察を受けた。
海上保安庁所属機及び516便は共に大破した。
また、東京国際空港の100基以上の航空灯火が破損、滑走路面及び着陸帯が損傷を受けた。
4本ある滑走路が全て閉鎖され、事故が発生した滑走路以外については1月2日21時29分、事故が発生したC滑走路(34R)は1月8日00時00分に再開された。
事故の影響により1月2から8日にかけて1000便以上が欠航、数千便が遅延した。1月2日には51便が成田国際空港、中部国際空港などに目的地を変更した。
なお、本SSの内容については、今後、新たな情報の入手等により、修正されることがあり得る。
また、本SSは、本航空事故に関し、調査経過及び航空事故並びに事故に伴い発生した被害を広く伝え、以て事故等の防止及び被害の軽減に寄与することを目的としたものであり、本航空事故の責任を問うためのものではない。
31: 2025/01/03(金) 12:54:50 ID:???00
参考
https://jtsb.mlit.go.jp/aircraft/rep-acci/keika20241225-JA722A_JA13XJ.pdf
海上保安庁所属ボンバルディア式DHC-8-315型JA722A及び日本航空株式会社所属エアバス式A350-941型JA13XJの航空事故調査について(経過報告)
令和6年12月25日
運輸安全委員会(航空部会)
https://jtsb.mlit.go.jp/aircraft/rep-acci/keika20241225-JA722A_JA13XJ.pdf
海上保安庁所属ボンバルディア式DHC-8-315型JA722A及び日本航空株式会社所属エアバス式A350-941型JA13XJの航空事故調査について(経過報告)
令和6年12月25日
運輸安全委員会(航空部会)
32: 2025/01/03(金) 13:00:00 ID:???00
以上です。なかなか重い内容でしたがお付き合いいただきありがとうございました
後半は資料がないのでかなり想像が入っています
参考にした報告書は長いけどSSより興味深いので、正月で時間があるなら是非読んでみてください
後半は資料がないのでかなり想像が入っています
参考にした報告書は長いけどSSより興味深いので、正月で時間があるなら是非読んでみてください
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