290: 2014/10/07(火) 00:13:45.60 ID:uBJVwLMU0



絵里「つよくてにゅーげーむ」【1】
絵里「つよくてにゅーげーむ」【2】
絵里「つよくてにゅーげーむ」【3】
絵里「つよくてにゅーげーむ」【4】
絵里「つよくてにゅーげーむ」【5】
絵里「つよくてにゅーげーむ」【6】
絵里「つよくてにゅーげーむ」【7】
絵里「つよくてにゅーげーむ」【8】
絵里「つよくてにゅーげーむ」【9】
絵里「つよくてにゅーげーむ」【完】


絵里「……って、あれ?」

絵里(おそとまっくら……まさか!)

絵里「よ、夜になってる!? 何で!?」

ことり「うぅ……ん」

絵里(あ、ことりが起きちゃう。静かにしないと)

絵里(……ああ、時間の経ち方が違ったのね)

絵里(明後日には帰国するんだから、寝過ごしたりしないようにしないと)

絵里(それにしても、ことりの寝顔ってカワイイのね。フフ♡)

297: 2014/10/09(木) 00:20:28.78 ID:Hpc/7/Vc0




絵里「ことり、今日で学校に行くのは最終日よ。はい、簡単なサンドイッチだけど持って行って」

ことり「ありがとう絵里ちゃん。行ってくるね」

絵里「行ってらっしゃい」

ことり「……絵里ちゃん」

絵里「ん?」

ことり「ちょっと変わった?」

絵里「何が?」

ことり「……ううん、私の見間違いだよっ、いってきまーす!」

絵里「?」
ラブライブ!The School Idol Movie

298: 2014/10/09(木) 00:23:51.56 ID:Hpc/7/Vc0
絵里(今日でパリも最後ね)

絵里(明日は早朝からの出発だし、観光できるのは今日くらいかしら?)

絵里「……なーんて、最後の大仕事が残ってるわけだけど」

絵里(きっとことりの帰りは遅いわ。あの子、なんだかんだであっちの学校でうまくやってるみたいだもの)

絵里(友達もできた、なんて言ってたし……お別れ会みたいなのくらい、してくれるわよね?)

絵里「……はぁ」

絵里(今更だけど、緊張してきた)

絵里(真実を知るのって……こんな風に緊張するものなのね)

299: 2014/10/09(木) 00:25:57.01 ID:Hpc/7/Vc0
絵里「いや、違う」

絵里(自分が真実を知らないことが、怖い)

絵里(ここが、本当の世界じゃないってことが……すごく怖い)

絵里「……ううん、私は私よ。何があっても変わらない」

絵里「私は――――――――」



絵里(どんな私にだって、なれるんだから)

300: 2014/10/09(木) 00:30:16.74 ID:Hpc/7/Vc0
――――――――

「おはよう、私」

あら、寝なくてもこっちに来ることができるなんて。

「慣れたのよ。たぶんね」

ええ、私だもの。そのくらいできるはずよ。

「聞きたいことが山ほどあるの」

知ってるわ。私から聞いてる。

「それなら話が早いわね……じゃあまず1つ目」




「おまじないを見つけたのは、誰?」

301: 2014/10/09(木) 00:33:08.59 ID:Hpc/7/Vc0
いきなりね。

「ええ、いきなりよ」

もしかして、怒ってる?

「私ならわかるでしょ? 緊張してるのよ」

「これ以上、自分で自分のことを忘れてるかもしれないのが」

安心して。これ以上は何も、忘れてることはないから。

「……ならよかった」

「でも、どうしてそんなことわかるの? やっぱり――――――――」

ええ、そうよ。



おまじないの発案者は、私。

この世界の絢瀬絵里、ただ1人よ。

302: 2014/10/09(木) 00:35:44.91 ID:Hpc/7/Vc0
「……やっぱり」

さすが私ね。鋭いわ。

「ふぅん、そうかしら? 別の世界では鈍かったわ」

そうね。

「おしゃべりはここまでにしましょう。どこからどこまでを知ってるの?」

どこから、どこまで?

「そうよ。おまじないについて、私たちについて」

すべて。

「すべて?」

そう、すべて。

303: 2014/10/09(木) 00:41:08.19 ID:Hpc/7/Vc0
それを理解してもらうには、どうやっておまじないができたかを説明しなきゃね。

……まあ、すごく簡単なことよ。

「簡単?」

ええ。ただ単純に、願うだけ。

生半可な祈りじゃなく、ひたすら真剣に。

過去に戻ってやり直したい、って願うの。

「……それだけなの?」

それだけ、なんて言われてもね。あの時の私は確かに病んでいたから。

304: 2014/10/09(木) 00:44:28.66 ID:Hpc/7/Vc0
「病んで……? どういうこと?」

「あなたは確かに、穂乃果たちにいい表情はしていなかったみたいだけど……それなら私と変わらないじゃない?」

いいえ、違うわ。考え方の根本から。

「?」

私が初めておまじないを知ったのは、あなたが来る、たった数日前のことなのよ。

「数日前!?」

ええ。たった数日前。

それだけで私のいた環境は劇的に変わったのよ。

305: 2014/10/09(木) 00:47:20.69 ID:Hpc/7/Vc0
「……あなたの元いた環境って?」

聞きたい?

「ええ」

迷子になった私たちみたいに、ハッピーな世界ばかりじゃないってことを、嫌でも知ることになるわよ?

「私のことでしょ? どんな私だって、私は私よ」

……そう。あなた、変わったわね。

「それはどうかしら」

ふふ、余裕じゃない。なら話してあげる。

「どうぞ」

306: 2014/10/09(木) 00:51:13.22 ID:Hpc/7/Vc0
生徒会に入った当初、私は希とそれほど仲が良くなかったわ。

「私も初めはそんな感じだったけど」

その関係は、3年生になっても依然として変わらなかった。

「……なるほど、それは結構キツいわね」

その通り。ずっと私が彼女を拒んでいたから。

「どうして……なんて、聞かないでもわかるわ」

「希の差しのべた手を取らない私がいる世界があったって、おかしくはないもの」

ええ、そういうことよ。私は色々と余裕がなかったから。

307: 2014/10/09(木) 00:55:49.69 ID:Hpc/7/Vc0
入学当初から、なんとなく気付いてたわ。

入学者数が過去よりも少ない。

だんだんと減ってきているのは目に見えて明らかだったもの。

廃校のお知らせなんて、わかりきってたことじゃない。

「あらあら、ずいぶんと達観した私なのね」

あなたも、気付いていたんでしょ? 他の世界の私たちも、ほとんど気付いていたし。

「でもね、私は希の手をとったわ」

……そうね。どの世界を見ても、孤独でいることを貫いたのは私だけだった。

308: 2014/10/09(木) 01:02:37.99 ID:Hpc/7/Vc0
「それで、どこにも逃げ場がなくて疲れたってわけ?」

そうよ。もう、何もかもどうしていいかわからなくなったの。

音ノ木坂学院を終わらせることがいいことなのか、それとも必至にあがいてでも止めるべきなのか。

相談する相手も、時間も、成し遂げる方法も、意味も何もかもわからなかった。

だから――――――――

「……ほら、こっちに来て」

なんでよ。

「自分の泣き顔なんて見たくないわ」

……泣いてなんてないわ。あの時、一生分泣いたもの。

「たかが高校生が、一生なんて語れないわ」

309: 2014/10/09(木) 01:06:11.43 ID:Hpc/7/Vc0
……そう。

「μ'sのみんなはここにはいないけど、私がそばにいるわ」

「それに今のあなたは1人じゃないもの」

それは……どうかしらね。

「どういう意味?」

いえ、話を戻しましょう。

そんなこんなで私の願いは叶えられたわ。

泣き疲れて、倒れて、あの時に希の手をとっていればよかったって、願いながら眠りについたら、ね。

「それが、おまじない?」

そういうこと。

310: 2014/10/09(木) 01:12:33.81 ID:Hpc/7/Vc0
初めは戸惑ったわ。自分が何をしているのか、どこにいるのかすらわからなかった。

そしてすぐに気付いたの。周りにいる「みんな」に。

「μ'sのみんな?」

そう。まだ名前はないスクールアイドルグループで、私はその中の一員だった。

胸が震えたわ。本当に願いが叶ったんだ、って。

いきなり倒れた自分を心配してくれる人が、こんなにもいたことに。

それを素直に受け止められる自分がいたことに。

311: 2014/10/09(木) 01:17:29.11 ID:Hpc/7/Vc0
それで、私はその世界の絢瀬絵里になりきってしばらく過ごしたの。

「楽しかったでしょう」

ええ、すごく。

もう2度と元の世界に戻りたくないと思うくらいに。

「でもそれじゃ、ダメなのよね」

うん。しばらく夢のような日々を過ごして気付いたわ。

ここは私がいていい場所じゃない。

そんな風にね。

312: 2014/10/09(木) 01:22:52.99 ID:Hpc/7/Vc0
……それで、すぐ帰ってきたの。

「地獄のような現実に?」

まあ、ね。

あれが夢だとわかってショックだったわ。少し鬱っぽくなってた。

「今もそうでしょ?」

どうかしら。

「もう少し寄りかかってきてもいいのよ?」

自分に甘える趣味はないわ。

「強がりなのね」

あなたもね。

313: 2014/10/09(木) 01:25:31.18 ID:Hpc/7/Vc0
……まあそれで、いつも通り学校に行って、生徒会の仕事をして。

仕事が終わったら、いつも通り家に帰るの。

そんな風に考えながら、私は学校に行ったわ。

「偉いじゃない」

頭を撫でないで。

「私だったら、きっと折れてたもの」

……私はもう、折れるものなんてなかったから。

「それでどうなったの? 続き、あるんでしょ?」

あるから、あるから触るのを止めなさい。

314: 2014/10/09(木) 01:27:37.63 ID:Hpc/7/Vc0
それで学校について、いつも通り教室に向かおうとしたのよ。

3年経っても、友人関係の何ら変わりない学校に。

「そしたら?」

ええ。びっくりすることが起こったの。

希が倒れたのよ。私の目の間で。

「それって……」

その通りよ。



あの時の希が、私に会いに来たの。

315: 2014/10/09(木) 01:31:49.43 ID:Hpc/7/Vc0
「教えてたの? おまじないのこと」

夢だと思ってたから。

1番親しかった彼女になら、話してもいいと思ってね。

それがまさか、こんな形で再開するきっかけになるなんて思わなかったけど。

「希はあなたがわかったの?」

ええ。いつもの私じゃないって見抜いたのも希だったし、希はこっちに来てからすぐ、私をあの時の私だと認識したわ。

薄幸そうな感情のない腑抜けた表情、って言われたけど。

「それでもうれしかったんでしょ?」

……ええ。そうね。

って、私を子ども扱いしてない? さっきから対応が子どもに向けてのそれと同じよ?

「なんとなく思春期の娘を持った気分で」

はぁ……私に甘やかされる日が来るなんて、思ってもみなかったわ。

316: 2014/10/09(木) 01:35:43.47 ID:Hpc/7/Vc0
「それでそれで?」

少しの間だけ、希と話したわ。

これからのこととか、どうするかとかについて。

「相談相手ができたのね」

そうなるわ。

まあ、長くいたらどうなるかわからないってことで、すぐに返したんだけど。

「自分に酷なことばかりするのね」

私の身よりも優先するのは当然だわ。

「ああ、私もそう言うと思う」

だから、言ってるじゃない。

317: 2014/10/09(木) 01:38:30.15 ID:Hpc/7/Vc0
「じゃあ、そこからおまじないが広まったってこと?」

希からどうにかして伝わっていったのよ。

「それが巡り廻って私のところに来た、ってわけ?」

そうなるわね。

「へぇ……不思議ね」

おまじない自体も信じられないような出来事だわ。

「……って、それだけで終わりなの?」

いえ、まだ続きがあるわ。

私がおまじないを使って、叶えたい夢ができたの。

それは――――――――

332: 2014/10/10(金) 18:49:17.14 ID:xOelNmwc0
――――――――この世界を、あの世界と同じように作り替えること。

「世界を?」

そう、世界よ。

希たちと一緒に、この学院を救うの。

「熱くなっちゃったのね」

ええ、ガラにもなくよ。

でもそれには、情報が足りなかった。

まず希のことすら何も知らなかったのよ。

333: 2014/10/10(金) 18:52:09.70 ID:xOelNmwc0
「だから、いろんな世界に行ったの?」

ご名答。

「どうだった? 他の世界は」

どこも幸せそうだったわ。

「あら、それはよかった」

みんながμ'sに入って、みんなで仲良くして……みんなの好きなものや好きなこと、いろんなものを知ることができたわ。

「……待って」

何かしら。

「私の行った世界のほとんどは、希がμ'sに入ってなかったわ」

334: 2014/10/10(金) 18:53:31.59 ID:xOelNmwc0
ええ、知ってるわ。

「それなのに、どうして?」

「μ'sは存在しないはずなのに」

ただ、ごく普通に考えればわかることよ。

「?」

未来が変わってる、だけ。

「未来が……?」

ええ。

335: 2014/10/10(金) 18:56:05.87 ID:xOelNmwc0
あなたも気付いてるでしょ? 希が何をしようとしていたか。

「私をμ'sに加入させる……ってことよね?」

そうよ。希はそれだけを叶えるために、少なくとも100回以上はおまじないを使ってる。

「ええっ!?」

ちょっと、耳元で大きな声出さないで。

「あ、ごめんなさい」

「でも……100回よ? 私だって10回もしてないのに……」

336: 2014/10/10(金) 18:58:14.94 ID:xOelNmwc0
それだけあなたに、μ'sに入ってほしかったのよ。

「……そっか」

「って、希のこともわかるの?」

おまじないの応用よ。意識だけを飛ばすことなんて容易にできるわ。

ちょうどこっちに来てるみたいだし。

「……」

驚かないのね。

「怒られちゃうから黙ったのよ。内心、すごくびっくりしてる」

337: 2014/10/10(金) 19:02:39.10 ID:xOelNmwc0
ふふ、律儀なのね。

「自分がよく知ってるでしょ?」

そうね。

んんっ……はぁ、なんだか眠くなってきたわ。

「え、ちょ、ちょっと待って! まだ聞きたいことがいっぱいある!」

知ってるわ。だけど、この状態で話すのってすごく疲れるのよ。

「なんで?」

普段は意識しない部分を無理やり引き出してるわけだから。

「……よくわかんない」

それはそうよ。私も、こんなことされたの初めてだもの。


338: 2014/10/10(金) 19:06:03.07 ID:xOelNmwc0
「じゃ、じゃあ聞きたいこと、早めに聞くわ」

どうぞ。

「まず、迷子の私たちを集めたのはどうして?」

「それと、最初に穂乃果たちにツンツンした態度をとってた理由は?」

ふむ、それね。

簡単な話よ。希の書き換えてしまった世界を戻しに行ったのよ。

「戻す……って?」

言ったでしょ、未来が変わったって。

339: 2014/10/10(金) 19:09:12.03 ID:xOelNmwc0
「うん」

希がいろいろと画策してる間に、自然とμ'sができるはずだった世界が、できなくなってしまった。

私だけに重点を置きすぎたせいね。仕方ないわ。

「ちょ、ちょっと待って。自然とμ'sができる? どういう意味?」

それは簡単な話よ。

「簡単なの?」

実際にどの世界でも、あなた……つまり私を含めた9人は、必ず親しい間柄にあったはずよ。

340: 2014/10/10(金) 19:12:28.12 ID:xOelNmwc0
「そういえば……」

不思議よね。私たちの関係って、切っても切れないの。

誰かが何もしてなくても、自然と出会っちゃうの。

あなたの世界でもそうだったでしょ?

真姫が凛や花陽と接点を持ったり、偶然にこと邂逅したり。

「……なるほど。確かにそれは偶然ね」

希の言葉を借りるなら……そう、スピリチュアルってやつ?

341: 2014/10/10(金) 19:17:37.30 ID:xOelNmwc0
「あ、でも迷子の私たちを集めた理由がわからないわ」

「あなたなら、彼女たちの未来も書き換えられたはずじゃないの?」

使いすぎたのよ、おまじないを。

「え?」

希の変えた世界を追ってるうちに、どうしてかおまじないの方法が広まっちゃったのよね。

もしかすると、希が気付いたり、誰かに話しちゃったりしたのかもしれない。

だから、あなたの世界の希以外が変えてしまった未来を書き換えるには、どうしても膨大な回数のおまじないの仕様が必要なの。

それに加えて、私はこっちの世界にμ'sを作るためだけにもおまじないを使い続けた。

その反動が来ちゃったってわけ。

342: 2014/10/10(金) 19:28:04.44 ID:xOelNmwc0
「反動って……そんなものあるの?」

「大丈夫なの!?」

落ち着いて。これ以上おまじないを使わなければ心配ないから。

「よかったぁ……ん? よかったのかしら」

よかったのよ、これで。

ただ単に、おまじないを使いすぎたせいで元の身体に戻りづらくなったみたいなのよ。

「……」

「!?」

反応遅いわね。

「だ、だっていろんなことが起こりすぎてて……」

343: 2014/10/10(金) 19:30:47.28 ID:xOelNmwc0
それで、書き換えているうちに出会った私たちを連れてきたのはよかったんだけど、返すことだけができなかったのよ。

それがあの私たちよ。

「出会ったの?」

ええ。

世界によって起きたときに進んでる時間が違うのは、どうしてか知ってる?

「ううん」

わかりやすく言うと、意識を飛ばす先の世界には距離があるの。

344: 2014/10/10(金) 19:34:20.29 ID:xOelNmwc0
「距離って、つまり……どこからどこまで行く、みたいなやつ?」

あたり。

「へぇ、知らなかった」

実際にパラレルワールドに行っている時間は、別の世界の時間に応じた分だけなの。

その世界が遠ければ遠いほど、往復に時間がかかって現実での時間もかかるの。

あの私たちは、その移動の最中にくっついてきてたみたいなの。移動中は意識がないから、くっついてきてる自覚もなかったんだけど。

「どうやって気付いたの? 自分以外の自分がいるって」

おまじないをやろうとして意識を集中させたとき、偶然声が聞こえてね。

345: 2014/10/10(金) 19:40:11.71 ID:xOelNmwc0
「……なら、穂乃果たちにいい顔をしてなかったのは?」

別の世界の私を呼ぶためよ。

「私を?」

あなたをね。

もう私に、世界を行き来できるだけの余力は残ってなかったの。さっき言った通りね。

だから私の代わりに、私たちを元の世界に還してあげられる私を捜してたの。

「ああ! おまじないは望んだ夢を見られるって……」

そう、過去をやり直したいはずの私が、どこかに残っているはずだと思って。

「……絢瀬絵里ホイホイみたい」

案外簡単に捕まったわよね。

346: 2014/10/10(金) 19:45:11.11 ID:xOelNmwc0
「そっか、状況を再現してたわけね……内心はデレデレだった、と」

身を裂くような思いで頑張った甲斐があったわ。

「つらかったのね。よしよし」

あなたも同じこと、してたじゃない。よしよし。

「そうよねぇ……穂乃果や凛とか、普段笑ってる子に悲しい顔されると、心臓が締め付けられそうになるわよね」

あと希が心配そうな顔で見て来るのにも耐え難いものがあったわ。

「お互い、苦労したのね」

本当にね。もう、終わったわけだけど。

347: 2014/10/10(金) 19:53:05.04 ID:xOelNmwc0
「終わった?」

終わったわ。もう、おまじないを知っている私や希のいる世界はあなたの世界だけ。

「え? でも、膨大な量の世界に行き来したんでしょ? それならその分だけ……」

満たされた世界で、他の世界に逃避しようなんて考える私はいないでしょ?

ま、あなたは例外だったみたいだけど。

「う」

仕方ないわ。あなたは特に粘ったもの。そう思うのは当然よ。

「そうなの? 私、粘った方?」

粘った方よ。スクールアイドルって聞いて、面白そうだから混ぜてって言った私もどこかにいたわ。

「ちょっと心当たりあるわね」

348: 2014/10/10(金) 20:02:46.25 ID:xOelNmwc0
それで、聞きたいことはまだある?

「いや、ちょっと待って。今整理してる」

「パラレルワールド同士には距離があって、それの移動時間によって、現実で経つ時間が違う……その移動中に引き寄せられてきたのが迷子の私たち」

「その私たちを還す前に、あなたは反動でおまじないを使えなくなった」

「だから別の私に代行してもらうため、穂乃果たちにツンツンしてた……」

「あってる?」

あってるわ。

349: 2014/10/10(金) 20:11:33.47 ID:xOelNmwc0
「それで今、おまじないの使用を危惧する必要はない」

「あと心配があるのは私の世界の希と、私だけ」

そう。

「……希はどうして、私をμ'sに入れたかったのかしら?」

意識は飛ばせても、そこまではわからないわ。

あなたも、別の世界での私の記憶はわからなかったでしょう?

「ああ、そうね」

……明日は帰国でしょ? なら、遅れないように気を付けてね。

「え? どうしたの急に」

350: 2014/10/10(金) 20:13:33.18 ID:xOelNmwc0
そろそろ終わらせないと、きっと夜になるわ。

「……えっ」

「で、でも、世界の移動はしてないから……」

言ったでしょ? この状態で私に会うのって疲れるのよ。

「ってことは……」

そうよ。ただ単純に、疲労で寝る時間が増えるだけよ。

前もそうだったでしょ?

「忘れてたっ!」

なら早く寝なさい。

「はっ、はい!」

351: 2014/10/10(金) 20:15:44.15 ID:xOelNmwc0
「えっと、帰国の準備して、希にいろいろ聞いて……ああ! やることいっぱいある!」

そうね。

「あ、それと……」

なに?




「おやすみなさい! また会いに来るわ!」

あなたはおはよう、よ。いい結果を待ってるわ。




――――――――

364: 2014/10/12(日) 01:02:42.76 ID:ypJXyyZy0




絵里「……ぃよっし」

絵里(私がやることは、たったひとつ)

絵里「希と一緒に……元の世界に戻る!」

絵里(……って言っても、まだ何の作戦も立ってないんだけど)

絵里「さて。何から始めようかしら……まずは……」

絵里(まずは今が何時か確認しないと……よし、まだ12時ね)

365: 2014/10/12(日) 01:04:51.70 ID:ypJXyyZy0
絵里「……そういえばこの前見た、希たちが私の部屋で寝てる夢は、現実だったのかしら」

絵里(だとすると、海未や花陽もこっちに来てるはずよね?)

絵里(……なんで来てるのかしら)

絵里「あ、私が起きないから、助けに来たとか?」

絵里(……あり得るわね)

絵里(最初は謝罪からかなぁ)

366: 2014/10/12(日) 01:09:45.45 ID:ypJXyyZy0
絵里「とりあえず、おまじないについては話してもらった通りよね」

絵里「多すぎてあんまり覚えてないけど……」

絵里「……はぁ、考えすぎてお腹すいた。ご飯食べよう」

絵里「あっ、そういえば昨日買ったパスタがあるんだった」

絵里(フフ、お昼は何にしようかしら。無難にミートソース? それとも気取ってカルボナーラとか♡)

絵里「……」

絵里(とりあえず私は、影響を受け過ぎだと思う)

367: 2014/10/12(日) 01:11:40.17 ID:ypJXyyZy0
絵里「まあ晩ご飯は出るし、簡単なのでいいわね」

絵里「ことりは何時ごろ帰って来るのかしら……あんまり遅くなると、明日の出発の準備もあるし……」

絵里「ん? そういえば携帯、どこ置いたっけ」

絵里(ベッドの近く……は、ない)

絵里(クローゼットの近く……にもない)

絵里「あれ? ない?」

368: 2014/10/12(日) 01:13:55.55 ID:ypJXyyZy0
絵里(な、なくした!?)

絵里「い、いや! そんなはずはないわ! だって――――――――」

絵里(だって、お買い物以外にホテルから出てない)

絵里(……)

絵里「本当に付き添いじゃない……もっとお土産とか買えばよかった」

絵里(絶対みんな楽しみにしてるわ。そんな風なこと言ってたし)

絵里「……パンでいいかな」

絵里「うん、ダメよね」

369: 2014/10/12(日) 01:16:20.30 ID:ypJXyyZy0
絵里「ああ、お土産はことりが帰ってきてから買いに行っても……って、遅いわね」

絵里「うーん。どんなお土産がいいのかしら? 食べ物?」

絵里(食べ物……だと量がいるわね)

絵里「まあ一番わかりやすい落としどころよね。食べ物にしましょう」

絵里「ついでに観光しちゃったりして~♪」

絵里(って、いけないいけない。携帯のこと忘れるところだった)

370: 2014/10/12(日) 01:20:19.81 ID:ypJXyyZy0
絵里「あ、もしかしたら寝てるとき、ベッドの下に落としたのかも」

絵里「……あった!」

絵里(キズとかついてないわよね? よかったぁ……)

絵里「んん? 奥に見えるあれ、何かしら」

絵里(メモ……?)

絵里「私がおまじないについてまとめたメモ? これも落としてたのね……」

371: 2014/10/12(日) 01:23:07.73 ID:ypJXyyZy0
絵里「……って、これ。私のじゃないわね」

絵里(こんなにかわいらしいメモは持ってないし……)

絵里(うん、使えればなんでもいいのよ)

絵里(じゃなくて、これは一体誰の……)

絵里「……ことりの、よね」

絵里(2人しかいないわけだし)

372: 2014/10/12(日) 01:26:52.85 ID:ypJXyyZy0
絵里「ん、何か書いてある」

絵里「えっと……絵里ちゃんに、無理させないようにする……?」

絵里(つまり……どういうこと?)

絵里「私、そんなに無理してた覚えはないけど……」

絵里(いや、してたわね。熱出したり)

絵里「……心配かけすぎ、かぁ」

373: 2014/10/12(日) 01:34:23.82 ID:ypJXyyZy0
絵里「そうね。頼らせてばかりじゃダメね」

絵里(いつまでも私が、みんなを引っ張っていけるわけじゃないんだから……)

絵里「……」

絵里(ちょ、ちょっと悲しくなってきたわね……やめやめ)

絵里「気分転換に、お土産でも買いに行きましょう」

絵里(……別れの話は保留、ね)

374: 2014/10/12(日) 01:39:19.39 ID:ypJXyyZy0





ことり「絵里ちゃん、ただいま!」

絵里「おかえりなさい。学校、どうだった?」

ことり「クラスのみんながね、お土産に、って! こんなにたくさんだよっ!」

絵里「わぁ、本当にたくさんね。よかったじゃない」

ことり「えへへー」

絵里「ふーん。こんなに色々……」

絵里(……あぁ、今日買ってきたお土産と被ってるのばっかり)

375: 2014/10/12(日) 01:42:32.98 ID:ypJXyyZy0
ことり「絵里ちゃん?」

絵里「え?」

ことり「どうしたの? なんだか変な顔してたけど……」

絵里「ああ、気にしないで。大したことじゃないから」

絵里(お土産がたくさんあったって、困ることはないものね)

ことり「でもこれ以上お土産買っちゃうと、飛行機に乗れなかったりしちゃうかも♪」

絵里「」

ことり「……え?」

376: 2014/10/12(日) 01:46:00.04 ID:ypJXyyZy0
絵里「食べましょう」

ことり「え? ええ?」

絵里「仕方ないわ。国へ帰るためよ」

ことり「ど、どういうこと?」

絵里「部屋の片隅に積まれたあの荷物……見える?」

ことり「……!」

絵里「……」

ことり「……食べよう」

絵里「ことり……!」

ことり「旅行カバンより体重が重くなっちゃいそうだけど……」

絵里(もう私は何も考えないわ)

382: 2014/10/13(月) 23:07:12.53 ID:rRk6ejj40





絵里「……げふ」

ことり「ううー……絵里ちゃん、ちょっと寝るね」

絵里「肩貸すわ」

ことり「ありがとう……」

絵里(結局朝まで食べ続けるはめになった……飛行機の座席のベルトが心なしかキツイ……)

絵里(でもおいしかったわね)

383: 2014/10/13(月) 23:09:52.20 ID:rRk6ejj40
ことり「すー……」

絵里(ことり、相変わらず寝るの早い)

絵里(昨日もこうやって私の肩に頭を乗せて寝てたけど、痛くないのかしら)

ことり「……えりちゃん」

絵里「ん? どうしたの?」

ことり「……えり、ちゃん」

絵里(ああ、寝言ね)

384: 2014/10/13(月) 23:12:41.47 ID:rRk6ejj40
絵里「まだ到着まで時間あるわよ。ゆっくり寝ておきましょう」

ことり「……うね」

絵里「?」

ことり「がんば、ろうね」

絵里「……ええ」

絵里(私は、向こうに帰ったら――――――――)



絵里(……いや、もう決心はついてるわ。決めたんだから、私)

385: 2014/10/13(月) 23:15:02.08 ID:rRk6ejj40






凛「絵里ちゃんとことりちゃん、まだかなー」

花陽「凛ちゃん、ちょっと気が早いよぉ」

希「そうやね。まだ時間あるし、今から行ってもすることないよ」

にこ「……で、わざわざ穂乃果の家に集まる必要あったの?」

穂乃果「あるよ!」

にこ「何?」

穂乃果「絵里ちゃん対策会議を行うためです」

真姫「対策会議?」

386: 2014/10/13(月) 23:22:44.74 ID:rRk6ejj40
穂乃果「だって、絵里ちゃんにどうやって思い出してもらえるか考えないと」

希「うん。やっぱり1番手っ取り早いのは、直接教えたりするのが……」

にこ「実はあんたは未来から来た、って?」

希「そうそう」

凛「絵里ちゃん、今までに信じてくれたの?」

希「えりちは素直やから、すぐに信じてくれたんよ。前も話したやろ?」

海未「ああ、希がおまじないを使っていた話ですね」

花陽「希ちゃんは絵里ちゃんのために頑張ってたんだよねっ」

387: 2014/10/13(月) 23:25:36.25 ID:rRk6ejj40
希「そんな、ウチは頑張ってなんか……」

希(えりちが本当に必要としてたものに、気付けてなかったもん)

真姫「でも、今の希がいなかったら、今のμ'sはなかったんでしょ? 自信持っていいと思うわ」

海未「ええ。絵里にもそのことを知ってもらいたいですし」

希「えりちに? ……それはやめときたいなぁ」

穂乃果「どうして? 希ちゃん、すっごく大変だったんでしょ?」

希「えりちには、変に気を遣ってほしくないんよ」

希(ウチもえりちに助けられたところあるし……)

388: 2014/10/13(月) 23:28:25.24 ID:rRk6ejj40
海未「そうですか。なら仕方ありませんね」

希「あれ、いいん?」

海未「希が言いたくないというのなら、私たちはそれに従うまでです」

花陽「うんっ、希ちゃんのことだし、希ちゃんが決めないとね」

にこ「ま、そうなるわね」

凛「……ねぇ、みんな」

希「ん?」

海未「凛、どうしました?」

389: 2014/10/13(月) 23:31:52.60 ID:rRk6ejj40
凛「もしだよ? もしもの話……」

凛「もしも、絵里ちゃんが気付いてたら……どうするの?」

真姫「気付くって……こっちが自分のいるべき場所じゃないって気付いてたら、ってこと?」

凛「うん」

海未「……希、それって確率的にどうなんですか?」

希「ううーん……かなり、というかほとんどありえないとは思うんよ」

凛「そうなの? だったら気にしなくてもいいかにゃ?」

穂乃果「でも、もしもに備えるのは大事だよ! 穂乃果がそっちの世界で倒れたみたいに、もしもの時の備えがないと!」

390: 2014/10/13(月) 23:37:39.09 ID:rRk6ejj40
希(穂乃果ちゃん……成長してる)

希(普通に考えたら、えりちが気付いてるとすれば、ことりちゃんから何らかの連絡があると思うんやけど……)

希(ちゃんと、えりちには無理させないようにってメール送っといたし)

真姫「じゃあ……気付いてると仮定して、どうして絵里は私たちに何の連絡も寄越さないの?」

海未「それは……絵里がこちらの心配を知らないから、ではないですか?」

凛「でも絵里ちゃん、こっちが自分の世界だって思ってた時期があるんだよね? 凛だったらびっくりしちゃうよぉ」

穂乃果「穂乃果も、誰かに話しちゃうと思う。心配になるし……」

花陽「もし思い出してたなら、海未ちゃんと私がこっちに来てたことも知ってるはずだよね?」

391: 2014/10/13(月) 23:40:01.49 ID:rRk6ejj40
希(もしかして、えりちはもう元の世界に戻ってたり……)

希(いやいや、それならおまじないのことまで思い出してないと……)

希(んん? そしたら、そもそもえりちが思い出した理由は一体――――――――)




希「……あ!」



にこ「え、何?」

花陽「何かわかったんですか?」

392: 2014/10/13(月) 23:42:42.68 ID:rRk6ejj40
希「ありえる! 凛ちゃんの仮定、ありえる方法が1つだけ……」

凛「本当!?」

穂乃果「ど、どんな方法!?」

希「それは……こっちの世界のえりちとの、接触」

にこ「……同じ人間が2人いるってこと?」

希「いや、そうやなくて……心の隅に追いやってるはずのもう1つの自意識は、ひょんなことで出てきたりするんよ」

希「それで、心の中で対話する……みたいな」

希(実際にウチも、オカルト研究部に入ってた時、そんな感じのことがあったし……)

393: 2014/10/13(月) 23:50:08.42 ID:rRk6ejj40
海未「……もしや、私たちもそれができるのでは?」

花陽「えっ」

凛「そっか、絵里ちゃんができるなら、かよちんも海未ちゃんもできるはずだよね?」

希「それはないかも」

穂乃果「え? どうして?」

希「自分の体にもう1つの魂がやってきたとして、何も知らなかった場合にそんなこと信じられると思う?」

にこ「思わないわね」

希「うん、そういうこと。その体の持ち主が対話を試みようとしない限りは、対話なんかできない」

希「つまり、おまじないを知ってるか、自分の中にもう1人の自分がいるって気付いてないと、新しく来た自分の存在は認識できないんよ」

希(ウチも最初の頃は……そうやったし。ただ単に勝手に月日が過ぎてるだけとしか思えなかった)

394: 2014/10/13(月) 23:55:09.14 ID:rRk6ejj40
海未「では、この世界の私たちは、おまじないを知らない……と」

希「そもそもウチが、えりち以外におまじないを教えたのは初めてやったからね」

にこ「そうなの?」

希「うん」

真姫「なんで今回だけ教えたの?」

希「うーん……ちょっと自分に余裕ができたから、気が緩んでたんかも」

希「でも実際、海未ちゃんは花陽ちゃんの協力があってこその、この状況やからね。これも運命やったんかも」

穂乃果「デスティニー……」

海未「英語で言い直されても……」

395: 2014/10/13(月) 23:59:39.38 ID:rRk6ejj40
凛「……あ、そろそろ時間じゃないかにゃ?」

花陽「そうだね、もう行かないと。亜里沙ちゃんとは空港で合流だったよね?」

凛「うん!」

にこ「ま、絵里が思い出してても思い出してなくても、やることは1つよ」

海未「やること、とは?」

穂乃果「まずはお礼を言うんだよねっ!」

真姫「それと、私たちにもっと頼れ、って言うんでしょ」

にこ「あっ、ちょっと、にこのセリフとらないでよ」

希「ふふ、相変わらずやね」

希(……もし、えりちが思い出してたら、か)

406: 2014/10/17(金) 20:22:11.08 ID:8/rsb+jg0





絵里「……やっと着いた、わね」

絵里(みんなは来てるのかしら)

ことり「やっとみんなに会えるね!」

絵里「そうね」

ことり「絵里ちゃん、早く行こう!」

絵里「ああ、それなんだけど――――――――」

407: 2014/10/17(金) 20:23:54.22 ID:8/rsb+jg0





希「たぶんこの便やんな?」

にこ「ええ、そう言ってたわ」

穂乃果「絵里ちゃんとことりちゃん、まだかなー?」

海未「もうすぐですよ」

花陽「待ち遠しいね」

凛「……あ! あそこにいるの、ことりちゃんじゃない?」

真姫「え、どこよ」

凛「ほら、あそこだよ、あそこ!」

408: 2014/10/17(金) 20:26:02.25 ID:8/rsb+jg0
真姫「……?」

凛「絶対そうだよ!」

真姫「海未、見える?」

海未「いえ……うーん」

穂乃果「……わかんない」

にこ「どの人のこと言ってるわけ?」

凛「あの大きい鞄持ってる人のうしろのうしろ」

花陽「ええっ!? あんな距離見えるの!?」

真姫「何族の生まれなのよ……」

希(ん? でもことりちゃんだけ? えりちは?)

409: 2014/10/17(金) 20:28:36.60 ID:8/rsb+jg0
海未「……む、確かにあのシルエットは……」

穂乃果「あ、本当だ」

真姫「ええっ、私まだわからないんだけど」

花陽「私も……」

凛「ほら、あれは絶対ことりちゃんだって!」

にこ「……ああ!」

希「あ、見えてきた!」

410: 2014/10/17(金) 20:32:28.09 ID:8/rsb+jg0
穂乃果「ことりちゃーん! こっちこっちー!」

海未「ことり!」

真姫「ああ、ぶんぶん手を振ってるのがことりね」

花陽「あ!」

凛「やっとわかった?」

真姫「ここからだと見えないのよ。ほら、真正面だし。ね、花陽」

花陽「う、うん」

にこ「そんなに言い訳しちゃって。ふふ、自分も早く見つけたかったわけね」

希「真姫ちゃん必氏に捜してたもんなぁ」

真姫「う」

411: 2014/10/17(金) 20:35:09.22 ID:8/rsb+jg0
穂乃果「こーとりちゃーん!」

ことり「みんなぁー!」

希「ほら、今なら真姫ちゃん抱きつきに行っても違和感ないで」

凛「真姫ちゃん行くにゃ!」

真姫「行かないってば!」

にこ「ちょ、ちょっと! 何でにこを押すのよ!」

海未「わ、急に暴れないでください」

花陽「おかえりことりちゃん!」

ことり「ただいま花陽ちゃんっ!」

ことり「……あれ? 何で喧嘩してるの?」

412: 2014/10/17(金) 20:39:17.84 ID:8/rsb+jg0
凛「あー! かよちんぬけがけー!」

花陽「えっ!? みんな来てなかったの……?」

穂乃果「さっきにこちゃんが穂乃果のこと押してきたんだよぉ」

にこ「にこも誰かに押されたんだってば!」

海未「ひとまず落ち着いてください、誰に押されたとかで言い争ってる場合ではありません」

凛「……そうだね。せっかくことりちゃんが帰ってきたのに、こんな風じゃダメだよね」

にこ「凛……」

凛「にこちゃん、真姫ちゃんと間違えて押しちゃってごめんね」

真姫「凛……」

にこ「あんただったのね……まあいいけど」

413: 2014/10/17(金) 20:42:38.02 ID:8/rsb+jg0
穂乃果「でも穂乃果たちが抜け出すのに大変だったのに、花陽ちゃんはよく最初に走っていけたね」

花陽「あ、私は端の方にいたから」

にこ「率先してことりに抱きつくため?」

花陽「い、いや、そういうわけじゃ……」

真姫「花陽、やるときはやるのね……」

花陽「ええっ」

海未「……では改めて、おかえりなさい、ことり」

穂乃果「おかえりっ!」

にこ「おかえり」

凛「おかえりー!」

真姫「おかえりなさい」

希「おかえり!」

ことり「ただいまっ!」

414: 2014/10/17(金) 20:45:25.65 ID:8/rsb+jg0
ことり「……そういえば、亜里沙ちゃんは来てないの?」

穂乃果「ああ、亜里沙ちゃんね、さっきお手洗いに行っちゃって」

海未「何でも今日が待ち遠しくて夜も眠れなかったらしくて……」

ことり「大丈夫なの……?」

凛「きっと大丈夫にゃ。おかえりの旗とか作ってくれたんだよ」

にこ「完成度高いわよね、これ」

真姫「振り忘れたけどね」

凛「あっ」

415: 2014/10/17(金) 20:47:32.31 ID:8/rsb+jg0
希「それで、ことりちゃん」

ことり「なに?」

希「……えりちはどうしたん?」

海未「そうですね、ことりはどうして1人で?」

花陽「うん、絵里ちゃんはどこに行っちゃったの?」

ことり「……絵里ちゃんは――――――――」

穂乃果「ま、まさか迷子!?」

凛「パンにつられて空港で……!?」

にこ「やりかねないわね」

真姫「ええ」

ことり「ち、ちがうよぉ!」

416: 2014/10/17(金) 20:52:48.53 ID:8/rsb+jg0
穂乃果「え? じゃあ……」

ことり「あのね、絵里ちゃんは――――――――」





ことり「元の世界に、帰っちゃったの」

424: 2014/10/19(日) 00:33:27.73 ID:KAMNv4Fr0
希「……えええええっ!?」

花陽「ど、どういうこと!?」

海未「帰った……って、思い出したんですか!?」

ことり「い、いや、詳しいことは私もよくわからなくて……」

希(で、でもそれは、ちゃんとえりちに会えるってこと……!)

希「2人とも! 戻ろう!」

海未「はい!」

花陽「うんっ!」

425: 2014/10/19(日) 00:35:27.77 ID:KAMNv4Fr0
にこ「えっ、ちょ」

凛「つまり絵里ちゃんは……?」

穂乃果「絵里ちゃん、帰ってきたんだよね?」

真姫「違うわよ。元の世界にって言ってたから……」

希「お礼はまた後でするから!」

凛「いってらっしゃーい」

真姫「えっ、このまま送り出していいの?」

426: 2014/10/19(日) 00:39:22.81 ID:KAMNv4Fr0
希「んん……あれ? えりち帰ってきてないん?」

花陽「ことりちゃんだけ?」

海未「ことり、絵里は一体――――――――」

ことり「……よし、絵里ちゃーん!」

穂乃果「え、いるの?」

真姫「どこに?」

にこ「あ、ちょっと待って。今気づいたけど……」

凛「?」

にこ「あそこに、明らかに怪しい……夏場なのにコート着てサングラスかけた不審者がいるんだけど」

絵里「ぎくっ」

427: 2014/10/19(日) 00:41:28.06 ID:KAMNv4Fr0
凛「ほんとだ」

穂乃果「暑くないのかなぁ?」

海未「帽子まで被って……さぞ寒がりなんでしょうね」

花陽「あ、あんまりじろじろ見たら悪いよぉ」

海未「そうですね、詮索するのはやめておきましょう」

絵里「ほっ……」

にこ「あれどう考えても絵里よ」

絵里「」

にこ「帽子から金髪見えてるし」

絵里「」

希「あ、隠した」

428: 2014/10/19(日) 00:50:21.08 ID:KAMNv4Fr0
絵里(ま、マズイわ……完全にバレてる)

絵里(ここでことりの声に合わせて華麗に登場する予定だったのに……しまった、にこの鋭さを忘れてたわ)

絵里(……いや、絶対これ私のミスよね)

――――――――登場は派手な方がいいわ! ほの……とかう……書記の子にインパクトを!――――――――

――――――――ま、お遊びの心は必要よね♡――――――――

絵里(……この2人のせいか)

絵里(って、結局戻ってきてるじゃないの! あんまり賢くない私と、ダイアリーの私!)

429: 2014/10/19(日) 00:54:17.67 ID:KAMNv4Fr0
――――――――ここにはずーっといたからすぐ遊びに来られたわ――――――――

絵里(遊びじゃないのよ?)

――――――――えー、でも早速スクールアイドルやるってなっちゃって、何すればいいかわからなくて聞きに来たのよ――――――――

絵里(にこになんとかしてもらいなさいよ! 頼れるんでしょ!)

――――――――私も、ダイアリーに書くことがなくて……何にしようかしら?――――――――

絵里(あのね、私は今重大な決断を……)

絵里(って、この世界の私はどこよ!)

――――――――ごめんなさい……まさか普通に戻って来るとは――――――――

絵里(謝らないでよ……私もどうしていいかわからないわ)

430: 2014/10/19(日) 00:57:30.57 ID:KAMNv4Fr0
絵里(あのね、今から大事なことをするからよく聞いて)

――――――――何? サンバ?――――――――

絵里(……)

――――――――私たちは静かにしておきましょ。きっと愛の告白よ♪――――――――

絵里(もうそれでいいわ)

絵里(……)

絵里「よし、静かになった……」




絵里「私はここよ!」



にこ「知ってる」

希「にこっち、合わせてあげな」

穂乃果「わ、絵里ちゃん汗すごい」

絵里(……とりあえずやることをやりましょう)

431: 2014/10/19(日) 01:02:14.27 ID:KAMNv4Fr0
凛「絵里ちゃん、おかえり」

絵里「ただいま。あのね、ちょっと大事な話が……」

穂乃果「絵里ちゃんおかえり!」

絵里「うん、ただいま。それで、少し……」

海未「おかえりなさい、絵里」

絵里「ただいま。だからね、最初に聞いて……」

花陽「絵里ちゃん、おかえり」

絵里「ただいま。それで話っていうのは……」

希「えりち、おかえりー」

絵里「……ただいま」

絵里(全然話せない)

432: 2014/10/19(日) 01:05:25.25 ID:KAMNv4Fr0
真姫「それで、話っていうのは?」

絵里「そうそう! それよ!」

ことり「絵里ちゃん、なんであの作戦だったの?」

絵里「まずあの3人を帰らせたのは、この世界の海未と花陽、それに希にお礼を言いたかったからなのよ」

海未「私たちに……」

花陽「お礼?」

絵里(……あれ? 2人はおまじないのこと、知らなかったっけ?)

433: 2014/10/19(日) 01:09:20.27 ID:KAMNv4Fr0
希「……あ、そっか。さっきまで記憶がぼやーっとしてたってことは、ウチはおまじないされてたってこと?」

絵里「ん? 希はそこまで知ってるの?」

希「……あれ?」

にこ「もー、ややこしいわね。後でいいでしょ、後で」

絵里「あ、うん」

絵里(……何で希が詳しいおまじないのことを? まだ私が知らなかったから、話してないはずよね?)

――――――――パラレルワールドの影響力よ――――――――

絵里(え? この世界の私……よね?)

――――――――ええ、私よ。まあ詳しいことは希に聞いたらいいんじゃないかしら――――――――

――――――――私は少し休むわ。2人がうるさくてね……――――――――

絵里(ふふ、お疲れ様)

434: 2014/10/19(日) 01:12:56.76 ID:KAMNv4Fr0
絵里「とりあえず」

凛「とりあえず?」

絵里「みんな、今日までありがとう」

穂乃果「……お別れしちゃうの?」

絵里「あ、そうじゃないわ。ここまで私を……助けてくれて」

希「助けられたのはウチらの方やで」

花陽「そうだよぉ。絵里ちゃんがいなかったら、私たちはラブライブ出場なんて……」

絵里「いいえ、これはあなたたち自身の実力よ」

絵里(もちろん、こっちの私も……ね)

435: 2014/10/19(日) 01:17:10.85 ID:KAMNv4Fr0
絵里「μ'sは9人いてμ'sだから……特に希!」

希「は、はいっ!」

絵里「……ま、言わなくても大丈夫ね」

希「ええっ、そこまで言われたら気になるんやけど」

絵里「大丈夫なのよ、みんなとは妙なつながりがあるから」

ことり「……絵里ちゃん」

絵里「え?」

ことり「絵里ちゃんって、寝るたびになんだか……大人っぽくなってるよね」

花陽「」

海未「」

436: 2014/10/19(日) 01:26:13.40 ID:KAMNv4Fr0
穂乃果「?」

凛「どうしたの?」

海未「えええっ、えっ、絵里!? ぱ、パリでことりと何を!?」

花陽「ね、寝るって……そ、そういう? 大人っぽくって……え、え……」

絵里「ちょっと待って、2人は何か色々勘違いをしてるわ」

ことり「?」

真姫「一緒に寝たの?」

絵里「まあそうだけど……」

絵里(ベッドは別だったけど、距離は近かったし)

海未「」

ことり「シャワーを覗かれちゃったりしたねっ」

絵里「あれは事故よ」

花陽「」

437: 2014/10/19(日) 01:32:18.97 ID:KAMNv4Fr0
海未「2人はパリに行って何をしてきたんですか!?」

花陽「絵里ちゃん!」

絵里(きっとおまじないのせいで混乱してるのね)

絵里「待って、順に追って話すから」

ことり「激しかったよね」

希「!?」

絵里「ああ、練習ね。空いた時間少なかったから無理やり詰め込んで……って、どうしたのみんな」

にこ「いや、ことりがふざけてるってやっと気づいただけよ」

ことり「えへへ、こういうのちょっとやってみたくて……」

438: 2014/10/19(日) 01:47:43.56 ID:KAMNv4Fr0
海未「そ、そうだったんですか?」

花陽「ことりちゃん……」

ことり「楽しくてつい……」

絵里「もう、遊んでる場合じゃないのよ?」

ことり「うん、ごめんね」

穂乃果「絵里ちゃん、大人っぽくなったの?」

絵里「まあ、いろんなことが体験できたのよ。いろいろあってね」

希「いろいろばっかり」

絵里「詳しく話してると時間が無くなっちゃうのよ。そろそろ戻ってくるだろうし」

凛「順を追って話すって言ってたのに?」

絵里「そ、それはそれ。これはこれよ」

絵里(タイムリミットを忘れてたとかじゃないわよ。うん)

440: 2014/10/19(日) 01:55:56.75 ID:KAMNv4Fr0
絵里「とりあえずこれは、私の最初の世界から来た3人を一旦返すためにやったことだから」

凛「うそついたの?」

穂乃果「絵里ちゃん」

絵里「……あのね、2人が真顔でそういうこと聞いてくるとダメよ。罪悪感がすごいわ」

真姫「仕方ないわよ。だって希たち、絵里をどうにかするまではテコでも帰りそうになかったし」

にこ「真姫ちゃん、それ追い討ちだから」

真姫「あっ」

絵里「ご、ごめんなさい……」

441: 2014/10/19(日) 02:02:43.41 ID:KAMNv4Fr0
絵里「お礼が言いたかったのよ、先に」

絵里「ちゃんと帰ってきたら3人にも謝るわ」

穂乃果「それなら大丈夫だねっ」

凛「うん!」

絵里(よかった)

海未「ふむ……よくわかりませんが、ありがたくお礼の言葉は受け取っておきますね」

花陽「うん、こっちこそありがとう、絵里ちゃん」

希「まあウチは頼ってくれただけでもうれしいんやけどね」

絵里「ええ、ありがとう……」

442: 2014/10/19(日) 02:05:54.97 ID:KAMNv4Fr0
絵里(よし、ちゃんとお礼は言えたわね)

絵里(こっちの3人の協力も必要不可欠だったし、何より大切な仲間だから……)

絵里「……あれ、そういえば亜里沙は?」

にこ「ああ、あの子はさっきお手洗いに……」

亜里沙「……お姉ちゃん! ことりさん!」

絵里「亜里沙! ただいま!」

ことり「ただいま」

亜里沙「ヨロレイヒー!」

絵里(たぶんアローハみたいなことを言いたかったのよね)

447: 2014/10/19(日) 23:58:32.88 ID:KAMNv4Fr0
絵里「ああ、もっと話したいことは色々あるんだけど……」

希「まあまあ、また後で話してくれたらいいやん?」

海未「はい、状況がよく呑み込めませんが、私たちのことは後でいいんですよ」

花陽「いつでも会えるんだから、ねっ」

絵里(そっか、海未と花陽はまだ私に会えると――――――――)

絵里「あの、私は……!」

希「……えりち? えりちやんな?」

絵里(あれ、雰囲気が変わった)

海未「絵里!」

花陽「え、絵里ちゃん!? 戻ってるんじゃなかったの? あれ? どっちの絵里ちゃん?」

絵里(……タイムリミットね)

448: 2014/10/20(月) 00:00:41.47 ID:mC12G2sJ0
絵里「ごめんね、騙したりして」

希「えりち、なんでこんなこと……」

海未「希。きっと絵里には何か理由があったのでしょう」

絵里「後でできないことをやっておこうと思っただけよ」

穂乃果「後でできない……?」

絵里「ううん、気にしないで」

花陽「で、でもよかったぁ……絵里ちゃん、元の世界のことは覚えてるんだよね?」

絵里「ええ、ちゃんと覚えてるわ」

希「……よかった」

449: 2014/10/20(月) 00:04:07.00 ID:mC12G2sJ0
絵里「さて、帰ってきたことだし……みんなでぱーっと遊びに行きましょう!」

ことり「え?」

亜里沙「どこに行くの?」

絵里「理事長のところよ。お土産、頼まれてたでしょ?」

海未「そうなんですか?」

絵里(あれ。海未たちには言ってなかったかしら)

絵里(記憶があやふやね……まあ、それだけたくさんのことがあったってことよね)

絵里「かえってそうそうで悪いけど、一緒に付き合ってくれない?」

凛「もちろんにゃ!」

にこ「しょーがないわね」

真姫「別にいいけど」

450: 2014/10/20(月) 00:06:46.48 ID:mC12G2sJ0
希「ぷぷ、2人とも素直じゃないなぁ」

真姫「ちょっ、だ、誰が素直じゃないって言うのよ!」

にこ「正直どうでもいいわ」

絵里「」

にこ「久しぶりにあんたのバカっぽい顔が見られてもうお腹いっぱいよ」

絵里「にこ……」

ことり「え、絵里ちゃん、そこは喜んでいいところなの……?」

絵里(ああ、この空気よね。やっぱりμ'sはこうでなくちゃ)

穂乃果「それじゃあ学院へ、レッツゴー!」

451: 2014/10/20(月) 00:11:14.02 ID:mC12G2sJ0




絵里「理事長、お久しぶりです」

理事長「はっ」

穂乃果「……なにこれ? 帰国おめでとう……って書いてある?」

海未「垂れ幕ですね」

希「なんで理事長室にこんな……」

亜里沙「ああっ、あんなところに雲が!」

絵里(あ、亜里沙……我が妹ながら話をそらすの下手ね……)

花陽「ええっ!? く、クモ!?」

にこ「うぇえ!? ど、どこよ!?」

絵里(そらせてるし)

452: 2014/10/20(月) 00:14:32.91 ID:mC12G2sJ0
理事長「コホン、おかえりなさいみなさん」

凛「凛たちは日本にいたよー?」

理事長「間違えましたね。おかえりなさい、絢瀬さん。そして……」

理事長「……えっと」

真姫「実の娘の名前を忘れてるの……!?」

理事長「ああ、そうそうことり」

ことり「お、お母さん!?」

理事長「ごめんなさい……2人が帰って来るの、楽しみで寝られなくて」

穂乃果「あはは、亜里沙ちゃんみたいなこと言ってる」

理事長「つい眠れないついでに、亜里沙さんとこんな垂れ幕まで作ってしまって……」

絵里(むしろ共犯だったね)

亜里沙「ペペロンチーノ……」

絵里(こればっかりは亜里沙が何を言いたいかわからない)

453: 2014/10/20(月) 00:18:29.64 ID:mC12G2sJ0
にこ「確かに、理事長の目元にクマが……」

花陽「クマ!?」

海未「えっ」

絵里(なにこの流れ)

絵里「とりあえず理事長、お土産です」

理事長「あら、うれしい。何かしら?」

ことり「開けてみてっ」

理事長「そうさせてもらうわ」

理事長「……? お菓子の包み紙?」

絵里「あっ、食べた方だった」

454: 2014/10/20(月) 00:22:01.62 ID:mC12G2sJ0
ことり「ごめんねお母さん、こっちだったみたい」

理事長「ふふ、いいのよ。また開けてみてもいいの?」

絵里「どうぞ」

理事長「……わぁ、素敵ね。砂糖菓子?」

ことり「留学先での友達が、お土産にってくれたの」

理事長「ありがとう。大切にするわ」

絵里「食べてくださいね」

理事長「……亜里沙さん、冷凍保存って砂糖菓子にも応用できるのかしら」

亜里沙「冷凍はマグロしか聞いたことがありません……」

絵里(なんだか仲良くなってる)

455: 2014/10/20(月) 00:24:45.98 ID:mC12G2sJ0
穂乃果「ねぇねぇ」

凛「凛たちにもお土産は?」

絵里「ちゃんと用意してあるわ。まだ食べちゃダメよ?」

穂乃果「やったー!」

凛「ありがとう!」

絵里「お礼ならことりにも言ってあげて。そのうちの2割はことりが選んだの」

希「なんで2割?」

絵里「……国へ帰るための苦しい戦いがあったのよ」

ことり「苦しかったね……」

海未「!?」


456: 2014/10/20(月) 00:28:43.71 ID:mC12G2sJ0
絵里「ああ、そうだ希」

希「んー? どしたんえりち」

絵里「生徒会室に忘れ物してたの、回収しに行くの、付き合ってくれない?」

希「うん、いいよ」

にこ「私たちもついてってあげるわよ?」

絵里「大丈夫よ、そのくらい。ね、希」

希「ん? うん、たぶん」

絵里「えっ、たぶんなの?」

希「えりち、この学校の道とか忘れてそうやし」

真姫「有り得る」

絵里「ありえないわよ、さすがにそれは」

絵里(別の世界で何度生徒会室に足を運んだと思ってるのよ、って言っても伝わらないわよね)

457: 2014/10/20(月) 00:32:00.44 ID:mC12G2sJ0
絵里「それじゃ、すぐ戻って来るから待っててくれる?」

花陽「はーい」

穂乃果「絵里ちゃん何忘れたの? お弁当箱?」

海未「そ、それは持ち帰りたくありませんね……」

絵里「違うわよ。別のものよ」

亜里沙「……ラブレ――――――――」

絵里「亜里沙、お姉ちゃんそんなにモテません」

亜里沙「どう思います?」

理事長「ああ、絢瀬さんの下足箱っていつもラブレターはみ出てるのよね」

凛「えー! そうなの!?」

絵里(理事長が堂々とプライバシーの侵害を)

458: 2014/10/20(月) 00:37:05.25 ID:mC12G2sJ0
希「ほら、えりち。早く行かないと生徒会室に置いて行かれるで」

絵里「この学院の生徒会室はどうなってるのよ」

亜里沙「ハラショー! メタモルフォーゼ?」

絵里(なんでこういう単語は言えるのかしら)

真姫「行くなら早く行ってきなさい。待ってるから」

ことり「鍵は開いてるの?」

理事長「ああ、生徒会室は東條さんたちが活動していたので、ちゃんと開けてありますよ」

絵里(希たち……まさか、私の代わりに?)

希「えりちに頼ってばっかりなんはよくないやろ? ささ、行こうえりち」

絵里「……ふふ、そうね」

459: 2014/10/20(月) 00:40:15.31 ID:mC12G2sJ0






絵里「……ああ、やっぱりここよね」

絵里(落ち着くわ。この生徒会室の空気は)

絵里「希ならわかってるでしょ。なんでここに来たか」

希「うん、長い付き合いやもん。えりち、ウチから聞きたいこと……あるんやろ?」

絵里「ええ、そうよ。私が取りに来た忘れ物は――――――――」







絵里「あなたが経験した、私以外の絢瀬絵里との日々について、よ」

466: 2014/10/20(月) 23:55:21.73 ID:mC12G2sJ0
希「やっぱり、そう来ると思ってたで」

絵里「いつから?」

希「えりちを見た、その時から」

絵里「ふふ、流石ね。いろんなところで私を見てきただけあるわ」

希「……えりち、このおまじないについては誰から聞いたん?」

絵里「無論、私よ」

希「……やっぱりかぁ」

絵里「そこまでわかってたの?」

希「なんとなく、やね。ウチに意識をぶつけてくるなんて器用な真似ができるのって、そのくらいしか心当たりなかったから」

467: 2014/10/20(月) 23:56:42.63 ID:mC12G2sJ0
絵里「ふーむ……」

希「?」

絵里「ちょっと聞いていいかしら?」

希「いいよ」

絵里「希は……いったい誰にこのおまじないを教えてもらったの?」

希「それは――――――――」




希「無論、ウチやで」

468: 2014/10/20(月) 23:59:09.49 ID:mC12G2sJ0
絵里「……希」

希「なに?」

絵里「嘘はよくないわ」

希「えっ、バレた?」

絵里「バレバレよ。何でそんな嘘つくの」

希「正直、なんて言ったらいいかわからなくて」

希「確かに思いついたんはウチなんやけど、半分はえりちに教えてもらったというか」

絵里「私に? どこの?」

希「ううん、それは知らないんよ。だって、ちゃんと話してすらいないから」

絵里「?」

469: 2014/10/21(火) 00:02:27.02 ID:TY0+Okx90
希「まあ、いつやったか……ずっと前に、えりちがすごくいい笑顔で生徒会室にいるのが見えたんよ」

絵里「私が?」

絵里(いつだったかしら……私がそんな風に笑ってた時期なんてあった?)

絵里(今はもう、すごく笑えてるとは思うんだけど)

希「うん。いつも仏頂面してるえりちが、あんなに綺麗に笑うんやなぁ、って思って」

絵里「……もしかしてその時、私はおまじないされてたのかしら」

希「どうかな? でもあの時のえりちは、本当にうれしそうにしてたのを覚えてるよ」

470: 2014/10/21(火) 00:04:37.63 ID:TY0+Okx90
希「それで、えりちがあんな風に笑ったところ、ほとんど見たことないと思って」

希「それからずーっと、もやもやしてたん」

絵里「じゃあ、おまじないを知ったのは?」

希「今年の春ごろやね」

絵里「ええっ!? そ、そんなに最近なの!?」

希「そうやで。案外そんなんばっかりやって」

絵里(確かに、この世界の私がおまじないを知ったって言うのも最近だったわね)

471: 2014/10/21(火) 00:07:18.29 ID:TY0+Okx90
絵里「それで希は……どうして私をμ'sに入れようとしてたの?」

希「あそこもバレてるん?」

絵里「まあ、いろんな世界に行ったからね」

絵里(希の変えてしまった未来を正しに、とは言えないわよね)

希「まあ、ウチがえりちをμ'sに入れたかった理由は……わかるんと違う?」

絵里「えっと……うーん、わからないわ」

希「単純に、これだけ」




希「えりちがまた笑ってる顔を見てみたかった。ただそれだけのため」

472: 2014/10/21(火) 00:11:35.85 ID:TY0+Okx90
絵里「……μ'sに、ね」

希「事実、どの世界でもえりちは楽しそうに笑ってくれたんよ。μ'sに入ったら」

希「そのシミュレーションをただ、元の世界で実行するだけでよかったはずやったんよ」

絵里「でも、結果は違った?」

希「そう。どうしたってえりちは、最後に決まってこう言うんよ」

希「何かが足りない、って」

473: 2014/10/21(火) 00:16:17.91 ID:TY0+Okx90
希「穂乃果ちゃんたちのところにえりちが行けば、ずっと笑ってくれるはず」

希「そんなはずやったんやけど……」

希「えりちはずーっと、どうしたって足りない足りないって」

絵里「それは当たり前よ」

希「……ウチにとっては当たり前じゃなかった」

絵里「今の私なら、すぐにこう言ってあげるわ」




絵里「希、あなたが足りないのよ、って」

474: 2014/10/21(火) 00:23:53.19 ID:TY0+Okx90
希「そう……それだけ。たった、ウチ1人の存在だけやったんよ」

希「えりちを笑顔にできるのは、残りの7人じゃなくて、ウチを含めた8人やった」

希「……白状すると、ウチはうれしかったん」

希「だからあの……ダイアリーの世界で、えりちからμ'sに誘われたとき……ウチは戸惑ったんよ」

絵里「……なるほどね。希はその、ダイアリーの世界で答えを見つけたってわけ」

希「うん。それをあの、元の世界で実行しただけなんよ」

希「……がっかりした? 綿密に練られたプランの上で、えりちをμ'sに入れたって聞いて」

絵里「いいえ。どの世界でも、希は不器用なんだって知ることができたから、そんなこと全然気にならなかったわ」

希「……そっか。よかった」

475: 2014/10/21(火) 00:30:53.83 ID:TY0+Okx90
絵里「だからあんな風に言ったのね」

希「え?」

絵里「いや、希にしてはずいぶん唐突だと思って」

希「ええ? 何の話?」

絵里「9人や、ウチを入れて」

希「」

絵里「どう? 似てた?」

476: 2014/10/21(火) 00:32:20.14 ID:TY0+Okx90
希「だ、だだっ、だってあれは!」

絵里「あれは?」

希「穂乃果ちゃんたちが自然と、えりちを誘う流れになっちゃってたから……」

絵里「あら、私はすぐにでも、希を誘おうと思ってたわ」

希「ウチだってあの時は焦ったんよ……あんな展開初めて見たんやもん」

絵里「ふふ、希だって焦るのね」

希「うぅ……えりちのいじわる」


477: 2014/10/21(火) 00:38:18.00 ID:TY0+Okx90
絵里「それで希、まだ内緒にしてること、あるんじゃない?」

希「……まだちょこっとだけ」

絵里「聞いてもいいかしら」

希「うん、あと2つだけやし」

絵里「2つ? 本当にそれだけ?」

希「ウチなんかのことより、えりちの方がもっと不思議。どうやって意識を戻したん?」

絵里「まあ、時間がないからそれは後で話すわ」

希「……約束してくれる?」

絵里「もちろんよ」

478: 2014/10/21(火) 00:50:15.47 ID:TY0+Okx90




にこ「……」

にこ(心配するまでもなかったわね)

にこ(もう、戻っても大丈夫そうかしら)

にこ「はぁ……知らないふりをするってのも、案外疲れるのよね」

にこ(でもちゃんとやり切れたし……にこって演技派?)

にこ(ま、おまじないなんて変なもの、盗み聞きしてた時は冗談だと思ってたけど……)




にこ(楽しかったわよ。2人とも)

にこ「先に未来で待ってるわ――――――――」

479: 2014/10/21(火) 00:52:28.95 ID:TY0+Okx90
にこ「あんたたち、まだ忘れ物探してるわけ?」

希「え? にこっち?」

絵里「ああ、ごめんなさい。もう戻るわ」

にこ「それならいいけど……うーん、なんだか頭痛いわね」

希「どこかぶつけたん? 大丈夫?」

にこ「大丈夫よ」

絵里「本当に?」

にこ「だから、もう大丈夫だってば」

490: 2014/10/23(木) 01:02:54.75 ID:UsIC0khv0




亜里沙「あ、お姉ちゃん! 忘れもの、あった?」

絵里「あったわよ」

理事長「そう。絢瀬さん、今日はもう帰って休んだ方がいいわ」

穂乃果「うんうん、明後日はついに本戦スタートなんだし!」

絵里(ああ、そうか……明後日が)

絵里「うん、わかってるわ穂乃果」

穂乃果「えへへ、絵里ちゃんに頭なでられるの久しぶりだなぁ」

絵里「みんなも今日は休みましょう。私の為にいろいろ頑張ってくれたんでしょ? 希から聞いたわ」

491: 2014/10/23(木) 01:05:19.94 ID:UsIC0khv0
海未「いえ、私たちは何も……」

凛「うん。結局絵里ちゃん1人で解決出来ちゃったみたいだし」

絵里「それでも、その気持ちはうれしかったの。ありがとう」

真姫「……絵里、ちょっと絵里っぽくない」

絵里「え」

理事長「そうねぇ……もっとふわふわしてた気がするわ」

絵里「ふわ……」

にこ「天然のバカだったのに」

絵里「ええっ」

絵里(わ、私、そんな風に見られてたの……?)

492: 2014/10/23(木) 01:08:06.73 ID:UsIC0khv0
希「えりちもえりちで、いろいろ成長したんよ」

海未「なるほど、そういうことですか」

絵里「納得されると傷つくんだけど……」

亜里沙「お姉ちゃん、マインドマインド」

絵里「それは否定を伴う形でないといけないのよ、亜里沙」

花陽「でも、絵里ちゃんがちゃんと戻ってきてくれてよかったぁ……これで本戦も頑張れるね!」

絵里「本戦……そうね、私もしっかりやるわ」

絵里(私が……うん)

493: 2014/10/23(木) 01:14:30.10 ID:UsIC0khv0
希「えりち、今日はどうする? このまま……話さずに帰る?」

絵里「いいえ、希には聞きたいことがあるから」

にこ「さっきも何か話してたじゃない」

絵里「あら、にこ。盗み聞きはよくないわよ?」

にこ「盗み聞きなんかじゃなくて、遅かったから見に行っただけで……あれ、何で私、見に行ったのかしら」

希「?」

ことり「あ、じゃあみんなにお土産を渡しておくねっ。絵里ちゃんは、その間に希ちゃんと話してくればいいよ」

絵里「ありがとうことり。そうさせてもらうわ」

494: 2014/10/23(木) 01:19:57.62 ID:UsIC0khv0




希「えりち、せっかく秘密にしてたのに、話してしまっていいん?」

絵里「隠しても無駄じゃない? だったらいっそ、そう言ってしまった方が楽よ」

希「無駄なん?」

絵里「そうよ。私は嘘を吐くの、下手だから」

希「へぇ、えりちがそんなこと言うなんて」

絵里「自分の知らない面を見たからわかるのよ」

495: 2014/10/23(木) 01:28:08.00 ID:UsIC0khv0
希「……あー、やっぱりえりち、おまじないの中でおまじないをしたんやね」

絵里「話が早くて助かるわ」

希「知らない、って怖いなぁ」

絵里「ええ、もしかしたらずっと、おまじないを使い続けていたかもしれない」

絵里「私たちのいた世界も、実は本当の世界じゃなかったり――――――――」

希「」

絵里「ごめん、嘘だから。ごめんなさい希、震えないで」

496: 2014/10/23(木) 01:33:39.47 ID:UsIC0khv0
希「それで、えりちの聞きたいことって?」

絵里「ああ、希は、別の世界の自分に会ったことがあるのかなーって」

希「うん、あるよ」

絵里「えっ」

絵里(わ、私だけかと思ってた……)

絵里(でもそうよね。希も自分で気づいたんだから、この世界の私みたいに何か特殊なことができても……)

希「おまじないで行った先に、体の持ち主のウチが話しかけてきたんよ」

絵里(私と一緒だ)

508: 2014/10/26(日) 16:26:08.04 ID:YD+eLXVi0
絵里「へぇ、どんな風だったの?」

希「えっと……まだ慣れてなかった頃やったと思うんやけど、急に話しかけられたん」

希「はじめましてー、って」

絵里(なかなかフレンドリーね)

希「そこのウチは、結構いろいろなところに行ってたみたいで」

絵里「ふむふむ」

希「その時はウチも、てっきり夢の中の現象やと思ってたから、あんまり気にしてなかったんよ」

509: 2014/10/26(日) 16:29:09.17 ID:YD+eLXVi0
絵里「何か言ってたこと覚えてる?」

希「うん、まあ一応」

希「えりちは1人で抱え込みやすいから、しっかり支えてあげた方がいい、って」

絵里「……私のことについて言ってたの?」

希「うん。でも今思うと、あれってどこか別の世界にいる特定のえりちに向けて言った言葉みたいな気がする」

絵里(……もしかして、この世界の私が最初に会った希だったのかも)

絵里「それで、希は私の為におまじないを使い続けたの?」

希「そうやね。こんなに時間はかかってしまったけど」

510: 2014/10/26(日) 16:32:14.36 ID:YD+eLXVi0
絵里「あ、そうそう。あとね」

希「ん?」

絵里「希たちが元の世界に戻ってるとき、この世界の希はおまじないのことを知ってたのよ」

希「ああ、ウチらを騙したとき?」

絵里「ご、ごめんなさい……」

希「ふふ、冗談やって」

絵里「その……おまじないの影響ってわかる?」

希「うん」

511: 2014/10/26(日) 16:35:10.07 ID:YD+eLXVi0
絵里(やっぱり……)

希「たとえば……そうやね、μ'sって名前はえりちが考えた! なんて言ったら信じる?」

絵里「……えっ!?」

希「そもそもμ'sって名前は、ウチが思いついたものじゃないんよ」

絵里「ええっ、で、でも、希がμ'sって……」

希「μ'sなんて名前がない世界もあったんと違う?」

絵里「あったわ。最初の方に」

希「そういうことやで」

絵里「?」

512: 2014/10/26(日) 16:40:04.71 ID:YD+eLXVi0
希「もともとその世界の身体を借りてるせいか、借りてた方の記憶とか思いとかが残ることがたまーにあるんよ」

希「それで、いつのまにかどの世界でもμ'sって名前が広まってた……というわけ」

絵里「……じゃあ、そもそも希はどこでその名前を私から聞いたの?」

希「あー、どこやったかなぁ。結構最初の方の世界で、えりちと音楽の話してたんよ」

絵里「音楽?」

希「そうそう。それでミューズって女神さまがいるっていう話になって」

希「その世界ではもう、穂乃果ちゃんたちがスクールアイドルとして活躍してて……」

絵里「え? 私たちも入ってた?」

希「ううん。えりちは、あの子たちに任せましょうって言ってた」

希「えりちがずっと入りたかったん、ウチには気付かれなかったから失敗しちゃったけど」

絵里「……そっか」

513: 2014/10/26(日) 16:43:34.02 ID:YD+eLXVi0
絵里「素直な私もいるものね」

希「えりちは性格ころころ変わってたからなぁ。1回ウチがえりちのお姉ちゃんやったところもあったなぁ」

絵里「えっ、なにそれ」

希「あの時のえりちは甘えん坊さんで……思い出すだけでもかわいい!」

絵里「そ、それなら希が後輩だったところもあったわよ。希かわいかった!」

希「あ、あの世界は大変やった……」

絵里「え?」

希「だってえりち、ふわふわしてて全然捕まらなくて……」

絵里(……あの世界は仕方ないわ)

514: 2014/10/26(日) 16:57:52.48 ID:YD+eLXVi0
希「って、それよりえりちはどんなことしてたん?」

絵里「私?」

希「うん、そっちの方が気になる」

絵里「そうねぇ……私もいろんな世界に行ったものね」

希「聞かせて聞かせて」

絵里「ええ、わかったわ。何から聞きたい?」

希「それじゃあ――――――――」

527: 2014/11/01(土) 00:36:42.85 ID:NpiZ5CVJ0





絵里「……ただいま」

絵里(いろんなことが聞けたわね)

絵里(先に帰ってる、なんて言ったらみんなは心配するかと思ったけど、そうでもなかったし)

絵里「はー……久しぶりの我が家!」

――――――――おかえりなさい――――――――

絵里「ええ、ただいま。他の2人は?」

――――――――話疲れて寝ちゃったわ――――――――

絵里「ふふ、そっか」

――――――――どうして? どの私かわかったのは何故かしら?――――――――

絵里「ちょっとの間でも、人にはクセっていうのがあるのよ。それが自分であってもね」

528: 2014/11/01(土) 00:39:20.10 ID:NpiZ5CVJ0
――――――――ふぅん……そうなのね――――――――

絵里「ええ」

――――――――で、どうするの? 希には全部話しちゃったわけだけど――――――――

絵里「さて、どうしようかしら」

――――――――亜里沙も希たちに任せて、いったい何をする気なの?――――――――

絵里「……私もね、考えたのよ」

絵里「自分がどうすべきかっていうことを……ね」

529: 2014/11/01(土) 00:41:56.53 ID:NpiZ5CVJ0
絵里「あなたはもう、察しがいいからわかってるんじゃないの?」

――――――――いいえ、全然わからないわ――――――――

絵里「ふむふむ。私なのに?」

――――――――私たちは同じ絢瀬絵里であっても、考え方の根本を除けば、置かれた環境によってどんな発想をするかは異なるもの――――――――

――――――――特に今のあなたは……何か突拍子もないことをしそう――――――――

絵里「あたり」

530: 2014/11/01(土) 00:44:49.27 ID:NpiZ5CVJ0
――――――――あたり?――――――――

絵里「そう。当たりよ。大正解」

絵里「こうしていろんな自分に出会ったことで、気付いたことがあるの」

――――――――それは?――――――――

絵里「私はもっと、もっと自由にのびのびとしてていいってこと」

――――――――……なるほどね――――――――

絵里「あ、これから何を言うか、わかった?」

――――――――ええ、察しがついたわ。確かにこのままじゃどうしようもないわね――――――――

絵里「そういうことよ」

531: 2014/11/01(土) 00:50:41.21 ID:NpiZ5CVJ0
――――――――希たちには話したの?――――――――

絵里「あなたから伝えておいてくれない?」

――――――――そんな大役を任せる気?――――――――

絵里「あら、役不足だったかしら」

――――――――そんなわけないでしょ――――――――

絵里「フフッ、ちょっとからかってみただけよ♡」

――――――――えらくご機嫌ね――――――――

絵里「だって自由だから」

――――――――今更だけどね。誰にも縛られてなんていなかったのに――――――――

絵里「そうね。もう私、頼られてばかりじゃダメだもの」

532: 2014/11/01(土) 00:54:29.71 ID:NpiZ5CVJ0
――――――――だから、私に任せるの?――――――――

絵里「ええ。信頼できる自分自身に」

――――――――私は頼られる側ってわけね――――――――

絵里「それはどうかしら。きっとあなたは何もしなくても大丈夫だと思うわ」

――――――――それって……どういう意味?――――――――

絵里「あなたはこれまで、私や希のためにずっと頑張ってきた」

絵里「μ'sを作るために、ずっと頑張ってきたじゃない。だから――――――――」

絵里「もう、イレギュラーの私の役目はここでおしまい。これからは本物のあなたが体験していくべきなの」

533: 2014/11/01(土) 01:00:21.23 ID:NpiZ5CVJ0
――――――――結構、長かったわね。ここまで――――――――

絵里「そうねー。最初から話しかけてくれれば、こんなまどろっこしいことにならずに済んだのに」

――――――――……はっ、そ、その手が――――――――

絵里「……」

――――――――……――――――――

絵里「何はともあれ、丸く収まったし。これでよし!」

――――――――そうね。考えちゃダメよ――――――――

絵里「あ、そうだ。冷蔵庫に穂乃果の残したチョコがあるんだった」

――――――――半分は分けてあげる――――――――

絵里「やった!」

534: 2014/11/01(土) 01:04:21.60 ID:NpiZ5CVJ0




これを半分食べたらお別れね



  ええ、ちゃんと半分残しておいてよ



半分食べ終わるまでに、別れの言葉を考えてればいいのよ



  えっ、そんな突飛な……



いただきまーす



  ちょ、ちょっと待って!




535: 2014/11/01(土) 01:07:17.25 ID:NpiZ5CVJ0
絵里「……」

絵里「ああ、確かに私ならそうするかもね」

絵里(心にぽっかり穴が開いた気分)




絵里「チョコ、まだ1口しか食べてないのに行っちゃうなんて……ね」




絵里(……苦い。ミルクチョコレートなのに)

536: 2014/11/01(土) 01:08:50.97 ID:NpiZ5CVJ0
――――――――

絵里「……はっ!」

絵里「ここは……えっと……」

絵里(私の部屋……よね? うん、希たちが寝てる……)

絵里「……」

絵里(心にぽっかり穴が開いた気分)

絵里「……やっぱり、お別れするのは自分が相手でも寂しいわね」

537: 2014/11/01(土) 01:11:56.29 ID:NpiZ5CVJ0
絵里(私、どのくらい眠ってたのかしら……)

絵里「わ、すごい。1日経ってない」

絵里(意外と近い世界だったのね。ご近所さんみたいな)

絵里「はー。向こうの私は、穂乃果たちになんて言われてるかしら」

絵里「きっと向こうにいるこっちの希たちも、すぐに怒って帰って来ると思うし……」

絵里(逃げよう)

548: 2014/11/03(月) 00:30:11.26 ID:ML/+G13q0
絵里「とりあえず今は……あら? 9時?」

絵里(ああ、暗いと思ったらカーテン閉めてたっけ)

絵里「わ、眩しい」

絵里(そっか。私がこっちの世界で寝たのが昨日の晩だったから、今は土曜日の朝なのね)

絵里「……希たち、もしかして泊まり込みでここにいたり……」

絵里(……せめてチョコを置いとこう)

549: 2014/11/03(月) 00:33:22.88 ID:ML/+G13q0
絵里「3人とも、ごめんね。ちょっとやらなくちゃいけないことがあるの」

希「……」

海未「……」

花陽「……」

絵里(……って言っても、こっちのみんなの様子を見たいだけなんだけど)

絵里「すぐ戻って来るから」

絵里(たぶん)

550: 2014/11/03(月) 00:35:33.91 ID:ML/+G13q0




絵里「さーて。どこに行こうかしら」

絵里(亜里沙はもう家にいなかった……ってことは、穂乃果の妹さんと遊んでたりするのかしら? ちょっと遊ぶには早すぎる気もするけど)

絵里「ふむ……じゃあ穂むらに行けば会える?」

絵里(えっと、穂むらってこの時間帯には開いてたわよね?)

絵里「……」

絵里(そっか、もういないんだった。いけないけない)

551: 2014/11/03(月) 00:38:43.64 ID:ML/+G13q0
絵里「変わらないわね……このあたりの景色は」

絵里(少し肌寒いのは、あっちが春とか夏とかばっかりだったせいよね)

絵里「はー……」

絵里(もう秋かぁ)

絵里「……ん? あそこにいるのって……」

絵里「凛と真姫?」

凛「あー! 絵里ちゃん!」

真姫「いいところにいたわね、絵里」

絵里「え? どうしたの?」

552: 2014/11/03(月) 00:42:31.39 ID:ML/+G13q0
凛「あの木の上にいるの、わかる?」

絵里「なになに?」

真姫「ほら、あれよ」

絵里「……猫?」

凛「うん、木に登って降りられないみたいで……」

真姫「私の身長じゃ、ちょっと届かないのよ」

凛「真姫ちゃんは木登りできないだけにゃ」

真姫「ぐっ」

絵里「あはは」

553: 2014/11/03(月) 00:44:57.19 ID:ML/+G13q0
絵里「じゃあ私があの猫を助けてあげればいいのね?」

凛「うんっ」

真姫「……って、凛なら木登りできるんじゃないの?」

凛「あ、ええっと――――――――」

絵里「凛はアレルギーあるし、万が一落としたら大変だもの。お姉ちゃんに任せなさい」

凛「えっ、なんで……」

真姫「お姉ちゃん?」

絵里(あっ、しまった)

554: 2014/11/03(月) 00:50:30.95 ID:ML/+G13q0



絵里「はい、もう大丈夫よ」

凛「絵里ちゃんありがとう!」

真姫「すごいわね。絵里って意外とそういうの得意なの?」

絵里「ふふん。すごいでしょ」

凛「すごいにゃー!」

真姫「……絵里、何でそんなにうれしそうなの?」

絵里「えっ」

凛「あ、猫ちゃん逃げちゃった」

555: 2014/11/03(月) 00:52:15.38 ID:ML/+G13q0
絵里「別にうれしそうとか、そんな……」

真姫「……あやしい」

凛「?」

絵里(こ、こっちの真姫ってこんなに鋭かったっけ?)

絵里「わ、私、用事あるから! また明日ね!」

凛「あっ、絵里ちゃんも逃げた!」

真姫「明日は日曜日でしょー!」

絵里「じゃああさって―!」

556: 2014/11/03(月) 00:56:09.65 ID:ML/+G13q0




絵里「ふー、なんとか逃げ切れたわね」

絵里(あの2人、なんであんな時間に……まさか、いつぞやの世界みたいに朝から遊んでたのかしら)

絵里「なーんて……」

絵里(あ、もう穂むらに着いちゃった)

絵里(ん、よかった。開いてるわね)

絵里「ごめんくださーい」

557: 2014/11/03(月) 00:59:24.56 ID:ML/+G13q0
穂乃果「いらっしゃいませ! お客さんが今日、最初のお客さんで……」

穂乃果「って、絵里ちゃん!」

絵里(あら、この展開前も見た気がする)

絵里「最初のお客さまってやつ、流行ってるの?」

穂乃果「ううん。穂乃果が考えただけだよ」

絵里「へぇ」

穂乃果「あ、今は絵里ちゃん、お客さんだからちゃんと接客するよ。本日のおすすめは、海未ちゃんも大好きなおまんじゅうでーす」

絵里(ふふ、こっちの穂乃果はちゃんと接客してくれるんだ)

絵里「じゃあ、おまんじゅうを……3つくれる?」

穂乃果「かしこまりました!」

558: 2014/11/03(月) 01:06:59.46 ID:ML/+G13q0
絵里「そうだ穂乃果」

穂乃果「はーい」

絵里「亜里沙、遊びに来てない?」

穂乃果「ああ。亜里沙ちゃん? 雪穂と2人で遊びに行ったよー」

絵里「……やっぱり」

穂乃果「はい、おまちどおさま」

絵里「じゃあこれ、お金ね」

穂乃果「え? くれるの?」

絵里「亜里沙たちのことについての情報料よ……なんちゃって」

穂乃果「かっこいいね」

絵里「そうかしら」

穂乃果「ええっ!? 絵里ちゃんが言い出したのに!」

絵里(おもしろい)

565: 2014/11/04(火) 22:43:34.36 ID:pikfSpnq0
絵里「……」

穂乃果「……? 絵里ちゃん、どうしたの?」

絵里「ああ、ちょっとね」

穂乃果「んんー? 絵里ちゃん、何か悩み事?」

絵里「……悩んでるように見えちゃう?」

穂乃果「うん」

絵里「そっか」

566: 2014/11/04(火) 22:47:21.81 ID:pikfSpnq0
絵里「ねぇ、穂乃果」

穂乃果「なに?」

絵里「私の悩み、聞いてくれる?」

穂乃果「いいよ! 何でも話して!」

絵里「……ふふっ、ありがとう。解決したわ」

穂乃果「えっ、まだなにも聞いてないよ?」

絵里「穂乃果、海未やことりと一緒に頑張るのよ」

絵里(……私たち3年生は、もう卒業するんだから)

穂乃果「うん、頑張るけど……なんで?」

絵里「いずれわかるわ。じゃあね、穂乃果」

穂乃果「あ、絵里ちゃんおまんじゅう忘れてるよー!」

絵里(かっこよくしまらなかった……私らしい、のかもしれないけど)

568: 2014/11/04(火) 22:51:54.15 ID:pikfSpnq0
絵里(色々聞かれちゃう前に、さっさと出ちゃいましょう――――――――)

絵里(って、誰か入ってくる!)

ことり「……あれ、絵里ちゃん? 絵里ちゃんもおまんじゅう買いに来たの?」

絵里「え、ことり?」

穂乃果「あ、ことりちゃん、いらっしゃーい」

ことり「穂乃果ちゃん、いつものやつちょうだいっ」

穂乃果「へいただいま!」

絵里「その掛け声はアイドルとしてどうかと思うわよ?」

ことり「ふふ、そうだね」

絵里(……って、いけないいけない。希たちが起きる前に……そうだ、にこの様子も見ておきたいわね)

569: 2014/11/04(火) 22:58:12.86 ID:pikfSpnq0
穂乃果「あ、まだできてないんだった……お父さん! ことりちゃんのやつできてるー?」

絵里(穂乃果も中に行っちゃったし……行くなら今ね)

絵里「ことり、じゃあまた今度」

ことり「あれ、もう行っちゃうの?」

絵里「ええ。ちょっと急ぎの用事があるから」

ことり「そっかぁ。気を付けて行ってらっしゃい」

絵里(そういえば向こうのパリじゃ、私が送り出す側だったわね)

絵里「行ってきます」

ことり「えへへ、なんだか新婚さんみたいだね」

絵里「ここは穂乃果の家だけどね」

ことり「ふふ」

570: 2014/11/04(火) 23:02:21.65 ID:pikfSpnq0




絵里(そういえば、にこって休日は何をしてるのかしら)

絵里「前はバイトをしてたわよね……たしかこのあたりで」

にこ「……ん? 絵里?」

絵里(いた)

絵里「にこ、久しぶり」

にこ「……」

絵里(……何か考えてる?)

にこ「……昨日も会ったでしょ?」

絵里(あれ、そうだっけ。こっちの世界での昨日は、確か――――――――)

にこ「ほ、ほら。学校でよ。練習では会えなかったけど」

絵里「ああ、そうね」

571: 2014/11/04(火) 23:05:19.04 ID:pikfSpnq0
絵里「ねぇ、にこ」

にこ「何よ」

絵里「疲れてる?」

にこ「別に、そんなことないわよ。寝起きでちょっと頭が回ってないだけ」

絵里「寝起きで……何でこんなところに?」

にこ「あんたの家に……いや、なんでもないわ」

絵里「えっ、気になる」

にこ「教えてあげない」

絵里「えー、なんでよー」

572: 2014/11/04(火) 23:08:50.75 ID:pikfSpnq0
にこ「あんたが心配ばっかりかけるから、ちょっと疲れてるだけよ」

絵里「私が?」

絵里(あっちでは結構迷惑かけてるけど……こっちのにこに、何か迷惑かけてたかしら)

にこ「……絵里」

絵里「はい」

にこ「その……私たち、友達でしょ? もっと頼ってくれて構わないわ」

絵里「……」

絵里(こ、このにこのかわいさ……なんだか懐かしい気がする)

にこ「それだけよ。じゃあね」

絵里「にこ……さっきから話しかけてるそれ、電柱よ」

にこ「えっ」

573: 2014/11/04(火) 23:12:58.52 ID:pikfSpnq0
にこ「……」

絵里「……」

絵里(言わなきゃよかった)

にこ「……ん? あの後ろの3人って……」

絵里「え? 後ろ?」

希「えりち」

絵里「うわあああああ!?」

希「えりち、おはよう」

絵里「……おはようございます」

希「えりち、目を見て話し合おう?」

絵里「ごめんなさい」

希「ウチ、怒ってないよ。2回も誰にも言わずに先に行っちゃったことなんて、全然怒ってない」

絵里「……もうしません」

574: 2014/11/04(火) 23:19:00.76 ID:pikfSpnq0
海未「見つけましたよ。絵里」

花陽「絵里ちゃん……」

絵里「」

海未「私たちはもう、ラブライブに出場する気でしたよ。それなのになぜ、何も言わずに……!」

絵里「だ、だって! 向こうの私も努力してたんだから、ずっと私が居座ってたら……」

花陽「絵里ちゃん、私たちのこと嫌いになっちゃったの……?」

絵里「そ、そんなことないわ! ちゃんとあっちの私に頼んで……」

希「……」

絵里「ごめんなさい」

にこ「……お疲れ様。まあ、私にはよくわからないけど」

絵里(あれ? にこならラブライブって言葉に反応しそうなものだけど……)

希「えりち、とりあえずお家に戻ろう?」

絵里「せ、せめてにこも一緒に!」

にこ「ええっ!?」

575: 2014/11/04(火) 23:22:55.47 ID:pikfSpnq0






絵里「……はー、疲れた」

希「まだ言ってるん? 一応もう1日経ってるけど……」

絵里「だって、あの後ずーっとお説教だったじゃない」

希「あれは……うん、3人やったし、ついヒートアップして」

絵里「まあ、流石にあれは私も悪いから仕方ないけど……うー、やっぱり生徒会の仕事とか集中できないわね。やめやめ!」

希「休憩するん? 珍しい」

絵里「私は自由に、なるべく自分のやりたいように生きていくことにしたの」

希「……へぇー、えりち、やっと素直になったってこと?」

絵里「まあ、そんなところかしら」

576: 2014/11/04(火) 23:27:30.26 ID:pikfSpnq0
絵里「生徒会の仕事を放りだしてまで、今日の練習は行ったりしないけど……」

希「うん」

絵里「生徒会役員の引継ぎが終わったら、なるべく自由に過ごすのよ」

希「そう。えりちが楽しそうで何よりやで」

絵里「……今思えば、不思議よね。パラレルワールドとか、って」

希「そうやね。でも、楽しかったやろ?」

絵里「ええ、もちろんよ。迷惑はたくさんかけちゃったけど」

希「もうその話はナシって、海未ちゃんと花陽ちゃんと決めたやん?」

絵里「あ、ごめん」

577: 2014/11/04(火) 23:31:54.60 ID:pikfSpnq0
希「……そういえば、にこっちは今日どうしてるん? 練習? 昨日は無理やりえりちに連行されて……」

絵里「ああ、にこは練習よ。生徒会の仕事を手伝う、なんて言ってくれたんだけど……」

希「あ、それ花陽ちゃんも言いに来てたなぁ」

絵里「そうそう。2人とも断っちゃんったんだけどね」

希「なんで?」

絵里「……決められた期間中は、自分の力で仕事を全うしたいの」

希「ウチはその、自分の中に入ってる?」

絵里「ええ」

希「うん。それならよろしい」

580: 2014/11/04(火) 23:45:51.58 ID:pikfSpnq0
絵里「……そうだ、希」

希「ん?」

絵里「飲み物、買いに行かない?」

希「うん。いいよ」

絵里「ちょっと話でもしながら、ね」

希「これからのことについて?」

絵里「すごい、よくわかったわね」

希「だって今のえりち、前しか見てないやん」

絵里「ふふ、そうね」

581: 2014/11/04(火) 23:48:15.88 ID:pikfSpnq0





希「飲むの、何にする?」

絵里「えっと……」

希「あっ」

絵里「どうしたの?」

希「ウチが買ったやつが2個出てきた」

絵里「故障かしら」

希「どうなんやろ」

絵里「せっかくだし、2つもらったら?」

希「えっ、いいんかなぁ?」

絵里「大丈夫よ。たぶん当たりだから」

希「あはは」

582: 2014/11/04(火) 23:53:21.57 ID:pikfSpnq0
希「でもウチ1人じゃ飲みきれ……あっ、もう片方はえりちにあげる!」

絵里「いいの?」

希「うん」

絵里「これは……おごりってやつになるのかしら? どんな反応すればいいかわからないわ」

希「おごりのジュースはおいしいなー、とか?」

絵里「あ、それいいわね。今度使おうっと」

583: 2014/11/04(火) 23:57:21.00 ID:pikfSpnq0
希「それで、これからどうするん?」

絵里「まずは生徒会の引継ぎね」

希「あー。でも立候補する人いるんかな? 廃校を免れたって言っても――――――――」

絵里「ほら、いるじゃない。私たちのすぐそばに」

希「えっ?」

絵里「カリスマ性もあるし、リーダーシップもある。足りないところは補い合える、そんな3人の2年生が……」

希「……あ、その手が」

絵里「誰かに任せる、なんて考えたことなかったから、あっちの世界で見てきて助かったわ」

希「その3人の運営する生徒会は、えりちのお眼鏡にかなったん?」

絵里「申し分ない……とまでは言い切れないけどね」

584: 2014/11/05(水) 00:02:24.37 ID:4qD/UdNO0
希「それでそれで?」

絵里「次は……そうね。スクールアイドルについてよ」

絵里「もうラブライブが終わっちゃった今、私たちμ'sが活動する理由もなさそうに見える……しかーし!」

希「しかし?」

絵里「μ'sを大々的にアピールして、学院の入学者数をもっと増やします」

希「なるほど」

絵里「これが私のやりたいことよ」

希「あれ、2つだけ?」

絵里「ええ。これからまだまだ増えるけど」

585: 2014/11/05(水) 00:07:02.26 ID:4qD/UdNO0
希「えりち、楽しそうやね。おまじないを教えたときとは大違い」

絵里「だってまだやりたことはたくさんあるのよ? 生徒会の仕事とかばーっかりやってたせいで、頭が固くなっちゃってるのよね」

絵里「それに、まだ秋なのよ? まだまだ時間はあるわ」

希「えりちの言葉聞いてると、元気出て来るなぁ」

絵里「前向きなのが大切よね。それに、私たちならなんだってできるはずよ!」

希「もう1回くらいラブライブがあったらなぁ」

絵里「そうねぇ。きっと次こそは、みんなで一緒に優勝できるわ」

希「えりちはA-RISEに会ってないから強気やなぁ」

絵里「そんなに強そうだった?」

希「それはもちろん」

586: 2014/11/05(水) 00:10:35.02 ID:4qD/UdNO0
絵里「でも、ラブライブがあったらって提案したのは希よね? ……もちろん、勝てる見込みがあるのよね?」

希「さーて、それはμ'sの頑張り次第かな」

絵里「そうね。打倒A-RISEを目指して頑張らないと」

希「えりち、目的がすり替わってる」

絵里「でもA-RISEには勝ってみたいわ」

希「おお、真顔でそんな大胆な」

絵里「みんなで叶えるのよ!」

希「えりちの夢を?」

絵里「そうなるわね」

希「ふふ」

絵里「えへへ」

587: 2014/11/05(水) 00:13:34.17 ID:4qD/UdNO0
絵里「あ。あと合宿も行きたい」

希「うんうん」

絵里「みんなでキャンプとか、いいわよねぇ」

希「それもやりたいことの1つやね」

絵里「ええ。やるからには全部やるわ!」

絵里「……私がやりたいってみんなにバレないようにね」

希「そんな、恥ずかしがらなくても」

絵里「ま、今はこう言ってるけど、たぶんやる時には忘れてるでしょうね」

希「ふむふむ」

588: 2014/11/05(水) 00:19:18.47 ID:4qD/UdNO0
絵里「よーし、燃えてきたわね……」

希「でも生徒会役員の選挙、まだ先やで?」

絵里「今のうちに、穂乃果たちに仕事を仕込んでおくべきかしら」

希「細工は流々?」

絵里「ええ。やるからには徹底的に……」

希「えりち、悪役みたい」

絵里「ふふ。でも絶対叶えるわよ、私の夢!」

希「その夢は、きっとみんなの夢になると思うなぁ」

絵里「そうなの?」

希「カードがそう、告げてるんや……たぶん」

絵里「そこは確証が欲しかったわ」

希「あはは、ごめんごめん。でもウチらならきっとできるよ」

絵里「そうね……じゃあ、未来の夢の為に頑張りましょう。手始めに、生徒会の仕事から」

希「うんっ」






      おわり


605: 2014/11/05(水) 18:55:12.45 ID:ySRPasU/o
とうとう完結か
長かったけど面白かった

607: 2014/11/06(木) 00:40:44.93 ID:Cy4XM8Doo
乙!

引用: 絵里「つよくてにゅーげーむ」 part3