145: 2009/04/16(木) 05:32:02 ID:2F5D9QcU
ウィッチ四人を乗せたキューベルワーゲンは、ロンドン目指して進んでいた。
舗装されていない道を走るワーゲンは時々弾み、後方を見ると土煙がもうもうと上がっている。
後部座席で恐縮する芳佳。
「なんか、すいません。お二人にくっついて来たみたいで」
「良いんだ、元はと言えば私から無理矢理誘った事だからな」
助手席でのんびりくつろぐトゥルーデ。
「そうそう。いつも二人で、ってのもいいけど、たまには四人ってのもいいんじゃない?」
ハンドルを握るエーリカが言う。

146: 2009/04/16(木) 05:33:13 ID:2F5D9QcU

「リーネちゃん、もうすぐロンドンだよ……ってどうしたの? 顔色悪いよ?」
微妙に青ざめた表情のリーネを見て、芳佳が問う。
「大丈夫。私は大丈夫だから……」
「ありゃ、車酔い? 車停める?」
「エーリカ、道が悪いのに飛ばし過ぎなんだ」
「早く着けばなーとか思って。どうせ対向車居ないし」
「そう言う問題じゃないだろう」
「だ、大丈夫ですから」
「まあ、あと数分でロンドンの市街に入るからさ~」
「だからってスピードを上げるな!」
「大丈夫、このワーゲン時速八十キロちょいしか出ないから」
「おい!」
「……」

トゥルーデとエーリカはこれまた慣れた様子で路肩に車を停めた。
げっそりしてふらつくリーネに肩を貸して、降り立つ芳佳。
「バルクホルンさん、ここは?」
「クリスの居る病院だ。宮藤には頼みが有ってな」
「何でしょう? 妹さんに治癒魔法ですか?」
「いや、違う。クリスはどこかお前に少し似ていてな……まあ、勿論クリスの方がずっとずっと美人なんだが」
「はあ」
ぽかんとする芳佳を見て、トゥルーデはふと我に返った。
「ともかく。クリスの友達になってくれないか? まだリハビリも途中だし、病室で寂しい思いをしているだろうから」
「私で良ければ、お友達でも何でも」
「そうか、良かった。じゃあ行くぞ宮藤! クリスとの面会だ!」
トゥルーデは芳佳の肩を掴んだ。
「ちょっ、リーネちゃんが……」
「あー、リーネなら私が面倒見ておくから大丈夫だよ。先行きなよ」
「すまんなエーリカ。よし、改めて行くぞ宮藤!」
まるでネウロイに突撃するかの如く、芳佳を掴んでダッシュするトゥルーデ。そんな“お姉ちゃん”を見たリーネが呟いた。
「バルクホルンさん……妹思いなんですね」
「いや、あれは単に姉バカと言うか……病気だね、一種の」
エーリカは少し呆れの入った返事をした。

クリスの病室で、芳佳はぺこりとお辞儀をした。
「改めて、はじめまして、クリスさん。私、宮藤芳佳です」
「はじめまして、宮藤さん。私、クリスティアーネ・バルクホルンです。お会いするのは……お姉ちゃんの結婚式以来ですね」
「そう言えば、あの時ちらっと会った様な」
「でも、ろくに話、出来なかったし。私すぐに帰ったから」
「仕方ない。クリスは病床の身だからな」
「でもお姉ちゃん、私随分元気になったよ。リハビリも頑張ってるんだから。もうすぐ歩ける様になるってお医者さんが」
「それは本当かクリス!?」
どんと芳佳を押しのけてクリスの手を握るトゥルーデ。芳佳は思わずタックルされたかたちになり、よろけて壁に手を付く。
「あわわ……」
「お姉ちゃん。宮藤さん困ってるよ?」
「ああ、すまん。つい」
「いえ、良いんです、バルクホルンさん」
苦笑いする芳佳。
「ところでどうだクリス? これが宮藤だが、お前に感じが似てないか?」
「……そうかなあ」
実の妹にやんわり否定され、慌てる“お姉ちゃん”。
「そ、そうか? 私はちょっと似てると思ったんだ……まあ確かに変わり者だが」
「なんか酷いです、バルクホルンさん」
「ああ、そう言う意味じゃない、宮藤」
トゥルーデのフォローもそこそこに、芳佳はクリスと向き合った。
「でも、クリスさんも大変でしたね」
「私は、まだ。お姉ちゃん達の方がもっと大変だと思います。いつも危険と隣り合わせで……」
「姉思いなんですね、クリスさん」
「お姉ちゃんも私の事ずっと心配してくれてて……」
「そうなんですか。素敵な姉妹ですね」
「ま、まあな」
トゥルーデが少し顔を赤くする。

147: 2009/04/16(木) 05:33:55 ID:2F5D9QcU
「ところで、宮藤さんはいつからブリタニアへ?」
クリスが芳佳に聞く。
「まだこっちに来てからそんなに長くないですよ。私、戦いはてんでダメだけど、治癒魔法が使えるから、みんなのサポートを」
「治癒魔法出来るの? すごい!」
「クリスさんにも少しやってみましょうか?」
「おお。少しデモンストレーションついでにやってみてくれ」
「分かりました」
トゥルーデに言われ、ほわわと耳と尻尾を出し、クリスの脚に手を向ける。薄くほのかな光がクリスの脚を包み込む。
「わあ、すごい! それでお姉ちゃんや他の人を助けてるんですね?」
「ええ、まあ」
「宮藤さん、凄いです。これならお姉ちゃんも心配要らないね。ねえ、お姉ちゃん?」
いきなり話を振られて答えに困るトゥルーデ。
「ま、まあな。居ないよりは居た方が有り難い」
「あ、その言い方酷いですよバルクホルンさん」
「でも、この光、ほんわかして気持ち良いな……」
「治癒魔法だからな。でもこれは魔力を消耗するからあんまり使えないんだ。……宮藤、もう良いぞ」
「あ、はい。クリスさん、少しでも楽になったなら」
「見てて面白かったし、とっても気持ち良かった。有り難う、宮藤さん」
「いえいえ」
耳と尻尾を引っ込め、魔力解放を止める芳佳。
「さて宮藤。クリスと、その……」
トゥルーデが今日の本題を切り出した。
「あ、そうでしたね。クリスさん、いきなりこう言うのもちょっとヘンだけど、私とお友達になりませんか?」
「え、本当? 良いの?」
「勿論。バルクホルンさん……お姉さんに負けない位、お手紙書きますよ?」
「嬉しい! お友達になって!」
「喜んで」
芳佳の手を掴み、満面の笑みを浮かべるクリス。
「良かったな、クリス。これでまたひとつ、お前との約束が果たせたな。私も嬉しいよ」
「トゥルーデにとってクリスちゃんは戦う理由そのものだからね~」
いつ現れたのか、エーリカが横で言った。
「うわ、エーリカいつの間に?」
「リーネも落ち着いたし、二人で来たよ。どう? こっちは順調?」
「まあな。エーリカにリーネ、二人も遠慮せずもっとこっちに」
トゥルーデが二人を病室に招く。
「じゃあ、お邪魔しま~す。クリスちゃん、元気だった?」
「はい。エーリカさんもお元気そうで」
「私はいつだって元気だよ~」
「そちらの方は、確か……」
「リネット・ビショップです。宜しく。リーネで良いですから」
「そそ。ミヤフジといい仲なんだよ? そのうち婚約……」
「そうですか……って、婚約? お嫁さん?」
驚くクリス。
「エーリカ、余計な事を言うな」
「あわわ。私達、そんな……」
慌てる芳佳と、おろおろするリーネ。
「そんな? どんなカンケー?」
ニヤニヤ顔のエーリカ。
「お友達、です」
「そう、お友達。大事な仲間なの」
「夜も大事なお友達ってね~」
「クリスの前でやめんかエーリカ!」
ふふっと笑うクリス。
「どうした、クリス?」
「相変わらずだね、お姉ちゃん。お姉ちゃんのお友達や仲間の人って、楽しい人ばかりだね」
「そうか?」
「うん。だって、四人を見れば分かるよ。この前の結婚式だって、みんなすごいいい人ばっかりだったし」
返事に困るトゥルーデを見て、笑うクリス。クリスにつられて、エーリカ、芳佳、リーネも笑った。
「と、ともかく! ここに居る皆は、クリスと友達だからな。良いな?」
「え、私も良いんですか?」
びっくりして自分を指さすリーネ。
「勿論。仲良く楽しく出来るなら、誰でも歓迎だ。なあクリス」
「もう、お姉ちゃんったら」
苦笑するクリス。
「そうだ、今度もう一度501の皆を呼ぼう。きっと皆……」
「トゥルーデ。無茶言わないの」
エーリカがたしなめた。

148: 2009/04/16(木) 05:34:30 ID:2F5D9QcU
和やかな面会を終え、時間的な余裕が残った四人は、ロンドンの骨董品市をぶらついてみた。
「あ、これこれ! シャーリーさんとエイラさんが言ってたの」
芳佳とリーネが足を止め、指さした。
骨董品市の一角に小さく設けられた仕切りの中に飾られているのは、色とりどりの宝石、指輪、ネックレスなどアクセサリー。
「トゥルーデ、これ……」
「ああ。例の『ハンバーガー四個分』とか言うあれか」
二人の後ろで言葉を交わすトゥルーデとエーリカ。
「これ、可愛いね」
「うん」
芳佳とリーネは二人で盛り上がっている。トゥルーデはそんな二人に声を掛けた。
「なあ、宮藤にリーネ。何だったら本格的なのを買った方が良いんじゃないか?」
「私、良い店知ってるけど?」
エーリカも横から二人を覗き込む。
「何だったら代わりに買ってやるぞ? 家族としてだな……」
「いいええ、とんでもない! 私達には高過ぎて」
「そうか。まあ、本人達が納得するなら良いんだが」
「ハルトマン中尉、もしかして、良い店って……」
リーネが恐る恐るエーリカに尋ねる。
「そう。ロンドンのメイフェアにある……何て言ったかな。『ブリタニア王室御用達』って看板は覚えてるんだけど」
「メイフェアって、高級街じゃないですか」
「ひええ! そんなとこで買えません!」
驚くリーネ、拒否反応を起こす芳佳。
「宮藤、大声を出すな。目立つだろう」
「あ、すいません」
「芳佳ちゃん……これなんかどうかな」
リーネが手にしたのはシルバーの小粋なペンダント。ちょうどお揃いのが二つ有る。
「お、いいね。結構良いじゃん」
エーリカがひょいと二人の間から覗いて評価する。
「でも、ちょっと高いね」
「どれどれ……ざっと『ハンバーガー八個分』と言うところか」
トゥルーデが冷静に試算する。
「倍だね」
「でも、欲しいな」
決意した芳佳は、店員に声を掛けた。
「これ、ふたつ下さい」

骨董品市を出た四人は、市街の一角に有るカフェでくつろいだ。
「リーネの煎れるお茶も美味しいけど、こう言うとこで飲むお茶とお菓子も良いね」
「そうですね」
「ここに居ると、ネウロイと戦っている事など忘れそうになるな」
「ホント、ここに居る人達って平和そうですよね」
「大陸からの避難民も多いけど、何処か平和なんだよね」
「まあ、これも私達が日々頑張っているから、こそか?」
「ブリタニア空軍も頑張ってると思います」
「勿論、その通りだな。……そう言えばリーネには同じウィッチのお姉さんが居ると聞いたが」
「はい。もうすぐ二十歳なので引退するそうですが」
「そうか。ケガとかは無いか?」
「はい。大した戦果は上げていませんけど、元気です」
「元気なのが一番だ。焦って戦果を上げようとすると余り良い事は無いからな」
「そうだね。ケガしないのが一番」
「なんか、お二人が言うとあんまり説得力無いですけど」
「そう?」「そうか?」
同時に反応するウルトラエース二人。
「だって、既にお二人合わせて五百近いネウロイを……」
芳佳の言葉を聞いて、トゥルーデとエーリカは同時に笑った。
「たまたまだって。偶然偶然」
「努力の結果そうなっただけだ」
「言い切れるのが凄いです」
感心してしまう芳佳。

149: 2009/04/16(木) 05:35:10 ID:2F5D9QcU
めいめいがお茶とお菓子を楽しむ。そんな時、芳佳はふと思い出した様にトゥルーデとエーリカに向かった。
「そう言えば」
「どうした?」
「お二人には、悩みって無いんですか?」
「悩み? 何の?」「どんな?」
同時にトゥルーデとエーリカから問われ、答えに詰まる芳佳。
「い、いえ。お二人の間には多分何も無いと思うんですけど。……色々、他に」
「他ねえ」
「他か。クリスが早く元気になって欲しいとか」
「早くネウロイを一掃したいとか、トゥルーデの理性が飛ぶと朝まで寝かせてくれなくてヘトヘトで困っちゃうとか」
「あわわ……」
「や、やめろエーリカ! そう言う事はここで……」
「あー、これは悩みじゃないね。私も楽しいし」
「お前なあ」
呆れ顔のトゥルーデ。
「リーネちゃんとは、この前話したんです。悩み、お互い色々有るんだなって。二人だけで解決できるかどうかは別として。
で、バルクホルンさんとハルトマンさんはどうなのかなって、ちょっと聞いてみたくて」
「宮藤は、何か悩みは有るのか?」
「何も無いと言えば嘘になります。国に残してきた家族や友達の事も気になりますし、501で本当に私、
皆さんのお役に立ってるのかとか」
「芳佳ちゃん……」
リーネが芳佳の左手を取って、そっと握った。
「ミヤフジ、考え過ぎはよくないよ。ミヤフジ来てから隊の雰囲気も随分変わったよ? 良い方向に」
エーリカがテーブルに肘をついて指摘する。
「そうだな」
頷くトゥルーデ。
「その証拠がこのトゥルーデ。ミヤフジ来てから調子崩したり治ったり色々あってさ」
トゥルーデの肩を叩いて笑うエーリカ。
「言わなくて良いんだ、それは」
「ま、そう言うとこもトゥルーデらしいって言うか」
エーリカに笑顔でそう言われたトゥルーデは、言葉を一瞬失った。
「ともかく」
こほんとひとつ咳をしたあと、トゥルーデは言った。
「誰にでも悩みは有る。人間たるもの、必ず悩みと言うものは有るものだ。悩みが全く無い奴は世の中に居ないか、
もしくは頭がどうかしてる証拠だ」
「それは言い過ぎじゃない、トゥルーデ?」
「ともかく、悩む事は人間たる事の証拠だと言う事だ。悩んで迷う、それが実は向上するチャンスでもある」
「凄いですね、バルクホルンさん。偉い先生か哲学者みたい」
「……と、とある本に書いてあった」
明後日の方を見ながら呟くトゥルーデ。顔が少し赤い。
「なんだ、受け売り? 私もちょっと『おお』って思ったのに~」
少し呆れ顔のエーリカ。
「でも、悪い事は言ってないだろう? 例えば何だ、そのエーリカだって、私に色々な事をして来るんだ。それが……」
「なあにトゥルーデ、例えばどんな?」
ニヤニヤ顔のエーリカ。
「ここで言えるかっ!」
「首輪付けたあのプレイの事?」
「こ、こら!」
「否定しない……バルクホルンさん……」
「首輪……プレイ……」
「お前らも引くな! わ、私は何も、していないぞ」
「されたんだよね~」
「ううっ」
「なんか、お二人には悩みが無い様に見えます」
「宮藤、それは誤解だぞ」
エーリカの襟首をひっつかんだままトゥルーデが顔を赤くして答える。
「ま~、確かに私達は見た目も中身もバカップルだけどさ~」
「おい!」
「私は私で、家族の事、双子の妹の事とか、気になってる。それが悩みかって言われればどうかとは思うけど」
「エーリカ。それは立派な悩みだ」
「いや、決められてもね」
「何だか、よく分からないけど、参考になりました。有り難うございます」
「え?」「いいの? こんなので」
呆気に取られるカールスラントのバカップル二人。
「何か、お二人を見てたら、悩みが解決しそうって言うか。ね、リーネちゃん」
「そうだね、芳佳ちゃん」
「うう……」

150: 2009/04/16(木) 05:36:07 ID:2F5D9QcU
帰り道は既に夕暮れとなり、西の空には宵の明星が輝いている。
「せめて夕食前には帰りたいな」
「じゃあもうちょい飛ばす?」
エーリカがトゥルーデににやけ顔で言った。
「リーネを何度も酔わせるな。ゆっくりで良い」
「了解~。そう言えば、今夜の夕食当番、誰だっけ?」
「シャーリーさんです」
芳佳の答えに、一同は少々暗い顔をする。
「と言うと……またあの缶詰か」
「不味くはないけど、飽きるよね。ちょっと塩辛いし」
「仕方ないですよ。何だったら、ローストして野菜と一緒にサンドイッチにしましょうか?」
フォローになっているのかちと微妙だが、リーネが言った。
「それ良いかもね。でも、支度の時間が間に合わないよ」
「あ……そうですね」
ワーゲンはなおも道を往く。
「ともかく、二人共、今日は有り難う。クリスが喜んでくれて何よりだ。これからもちょくちょく会ってやってくれ。きっと喜ぶ」
トゥルーデは芳佳達を見て、声を掛けた。
「クリスさんが喜んでくれるなら」
「ですね。……あ、芳佳ちゃん、基地見えてきたよ。まだ遠くだけど」
「ホントだ、もうすぐだね」

「トゥルーデ、見て。一番星」
エーリカが西の空を指した。
「おお。本当だ……って横を見ながら運転するなエーリカ! 事故るわ!」
「大丈夫だって。ウィッチなんだし氏なないよ」
「そう言う問題じゃない」
言いながらも、トゥルーデは宵の明星をちらりと見た。明るく見やすいので、哨戒や訓練飛行の時、目印にする事がある。
しかし、地上から、こう言うかたちで見る事は珍しかった。
「道標、か」
「どうしたの、トゥルーデ」
「いや。何でもない」
バックミラー越しに見る、芳佳とリーネ。骨董品市で買ったペンダントをお互い付けて、見せ合い、微笑んでいる。
「皆が、幸せであれば……」
「ホント、姉バカだねえ、トゥルーデは」
「何?」
「トゥルーデには、みんな妹に見える?」
「そんな事は無いぞ」
「ま、私は何でも良いんだけどね。それもトゥルーデだし」
「私が愛してるのはエーリカだけだ」
「それ、聞きたかったよ。トゥルーデ」
ふふっと笑うエーリカ。

やがて基地がはっきりと見えて来た。ついさっきまで訓練をしていたと思しきウィッチが上空から近付いて来る。
魔導エンジンの音から、ストライカーの主がペリーヌと気付くトゥルーデとエーリカ。
「あら、大尉にハルトマン中尉。今日は何の御用で?」
ワーゲンの速度に合わせて、ゆっくりと上空を追走するペリーヌ。
「妹の面会だ。宮藤達も連れて行った。基地では何か異常は無かったか?」
「ええ、いつもの通りですわ。問題が全くないと言えば嘘になりますけど」
「いつも通りならそれで良い。ペリーヌもこれから帰還だろう? 気を付けろよ」
「了解しました。お気遣い感謝致します。では、お先に失礼しますわ」
じわじわと上昇し、速度を上げて基地に帰還するペリーヌ。
「さて、帰ったらまたいつも通りか」
「そうだと良いけどね」
「どう言う意味だ?」
バックミラーを見て、と目で合図するエーリカ。ミラー越しに見えた光景は……
後部座席で、お互い肩を寄せて眠る芳佳とリーネの姿が有った。
緩く絡んだ二人の指先はどう見ても恋人同士のそれで……トゥルーデは、ふっと溜め息をついた。
「本当、仲が良いな。しかしストライカーの音にも気付かぬ程寝ているとはな。そんなに疲れたか?」
「久し振りに人混みの中、色々回ったからね。ま、それはともかく……」
エーリカは少しワーゲンの速度を落とし震動を少なくした上で、言葉を続けた。
「私達まで、とは行かなくても、もう少し進むと良いかな~なんて。トゥルーデはどう思う?」
「私も同じだ」
少しなりとも進んでくれれば……。トゥルーデはそう付け加えた。
エーリカはハンドルを握りながら、横に座るいとしのひとに微笑んでみせた。

end

151: 2009/04/16(木) 05:38:52 ID:2F5D9QcU
以上です。
タイトルは、某歌手の某曲名を意訳して付けてみました。
曲名ヒント(元タイトルほぼそのもの)は文中に有りますので……。

それはともかく、クリスと芳佳の「お友達」の約束
(正確にはお姉ちゃんのですが)、いつか書いてみたかったんですよね。
今回は駆け足になってしまいましたが、
もうちょい深めの芳佳とクリスの話しもいつか書けたら……と思います。

ではまた~。

引用: ストライクウィッチーズでレズ百合萌え 避難所2