265: 2014/06/23(月) 23:17:38 ID:Y1W2koa.

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勇者「魔王を倒す旅に行ってくるね!」魔王「気をつけるんじゃぞ」【前編】

魔法使い「先ほどの地震もおさまったみたいなので再開します!それでは見事一回戦を勝ち進んだ選ばれし8人で準々決勝を行っていきまーす!」


魔法使い「まずは宣伝しに来たミノタウロス選手を鮮やかに打ち破った勇兄選手と、公の場で濃厚な濡れ場を披露してくださったヴァンパイア選手の試合です!」


ヴァンパイア「君、いい加減にしないと私に惚れさせるぞ?」キラン


魔法使い「なんか気持ち悪いこと言っていますがスルーします」


ヴァンパイア「」


勇兄「だ、大丈夫?」


スラりん(さっきからかわいそ過ぎる…)
葬送のフリーレン(12) (少年サンデーコミックス)

266: 2014/06/23(月) 23:19:16 ID:Y1W2koa.

魔法使い「それでは始めてくださーい!」


ヴァンパイア「どうしていつも私はこんな扱いをされるんだ?」イジイジ


勇兄(隅っこでイジケてる…もの凄くやり辛いんだけど)


魔法使い「ちょっと、さっさと始めなさいよ」


魔王「これ、イジメるのはそのくらいにせんか。あやつはお前が思ってるよりずっといい奴じゃぞ」


魔法使い「魔王ちゃんはヴァンパイア選手のことを知ってるの?あの人、資料が少なすぎてよくわからないのよ」


魔王「あやつはワシが側近の次に信頼してる奴じゃ。魔王軍にも所属していたが、親父が氏ぬと同時に魔王軍から去ったんじゃ…」

267: 2014/06/23(月) 23:20:22 ID:Y1W2koa.

スラりん「てことは…実はかなりのジジイってこと?」


ヴァンパイア「ジジイではない!私は永遠の20歳だ!」


魔王「…×10ぐらいじゃ」


ヴァンパイア「魔王様まで酷いっ!?」


魔王「ちなみにあやつが魔王軍を辞めた理由は親父が氏んだから…も、もちろんあるが本当は長年付き合っていた彼女にフラれたショックで辞めたんじゃ」


ヴァンパイア「苦い記憶を思い出させないでください!!つい最近やっと立ち直れたのに…」シクシク


勇兄「あの~…そろそろいい?」


ヴァンパイア「あっ…す、すまない。もう大丈夫だ。始めてくれて構わない…」グスン


勇兄「う、うん…まだちょっとやり辛いけど…いくよ!」チャキ

268: 2014/06/23(月) 23:21:29 ID:Y1W2koa.

ヴァンパイア「ふぅ…では行くぞ……私の美技に酔いしれるがいい」ファサッ


魔法使い「マントを広げてカッコつけていますが全くカッコよくありません!」


ヴァンパイア「君は私に恨みでもあるのかい!?」クワッ


ザッ


勇兄「隙アリ!」ブンッ


ヴァンパイア「速いっ!」サッ


ヴァンパイア「だが…その程度の攻撃が私に当たると思うのかい?」フッフッフ…


勇兄「まだまだ!」シュバババ


ヴァンパイア「ちょっ!?速いって!」

269: 2014/06/23(月) 23:22:59 ID:Y1W2koa.

ヴァンパイア「うおおおぉぉぉ!」ササササッ


魔法使い「な、なんと!勇兄選手の目にも留まらぬ速さの攻撃を、いとも簡単に避けましたぁー!」


ヴァンパイア「ど…どうだい?華麗に避けてただろ?」ゼェ ゼェ


魔法使い「訂正します。簡単ではなくギリギリでした」


ヴァンパイア「さ、さすがに剣術では敵わないか。そもそも私は素手だし…何よりこのままでは醜態を晒してしまう…」


ファサッ


ヴァンパイア「ということで、そろそろ私も反撃といかせてもらうよ…」


勇兄(さっきまでと空気が変わった…何かしてくるな)チャキ

270: 2014/06/23(月) 23:24:32 ID:Y1W2koa.

魔法使い「緊迫した空気…両者お互いに相手の出方を伺っています」


ヴァンパイア「…フッ、最初に言っておくよ。私は色んな魔法を扱えるが、最も得意とする魔法は水魔法さ」


ヴァンパイア「好んで使う人は少ないけど私はとても気に入っているんだ。ただ…私の水魔法は普通の者達が使う水魔法とはちょっとだけ違うけどね」


勇兄(水魔法は変幻自在で対応し辛いけど、射程距離が長くなればなるほど威力が弱くなるという欠点がある。ここは距離をとって雷魔法で攻撃した方がいいな)タンッ


ヴァンパイア「ほら…そうやって水魔法と聞いただけですぐに距離をとる。まったく…隙だらけというのに」スッ…


勇兄(指をこっちに向けてきた?)


ピシュンッ!


勇兄「…へ?」ツー


ヴァンパイア「見えなかったかい?今のは水魔法と重力魔法を組み合わせて作り出した高圧水流というモノだよ。私はこれを…アクアストリームβと名づけた」

271: 2014/06/23(月) 23:26:08 ID:Y1W2koa.

魔法使い「うわぁ…200歳なのに厨二病全開じゃん。ていうかダサいし、何でβなのよ…」


魔王「そうか?ワシは良い名だと思うぞ。甘くて美味しそうなアイスクリーム…β味ってどんな味じゃ?」


ヴァンパイア「アイスクリームじゃなくてアクアストリーム!!」


勇兄(頬が切れた!?切れ味もそうだが何より速すぎて見えない!…極限まで速く動いて的を絞らせないようにしないと!)ダンッ



魔法使い「勇兄選手、いきなり闘技場内を高速で移動し始めました!最早人間のスピードではありません!」


ヴァンパイア「…素晴らしい洞察力だ。それが正解だよ。さっきの攻撃の弱点はズバリ攻撃範囲。水を超高圧下で噴出しないといけないから、指先からしか出せないんだ」


ザッ


ヴァンパイア「そして接近戦に持ち込み、私にさっきの攻撃をさせる隙を与えない…見事!」パキパキ…

272: 2014/06/23(月) 23:27:04 ID:Y1W2koa.

勇兄「ハアァ!」ブンッ!


ガキンッ!


ヴァンパイア「君の攻撃は美しく避けることは出来そうにないから、止めさせてもらったよ」


魔法使い「氷で剣を作り出し、勇兄選手の攻撃を防いだぁー!」


勇兄「まだまだ!」シュバババ


ガキンッ ガキンッ


ヴァンパイア(くっ…防ぐのがやっとだ!)


勇兄「くらえ!」バキッ


魔法使い「勇兄選手、隙を見てヴァンパイア選手を蹴り飛ばしました!」


ヴァンパイア「ぐっ…!」ズザァァ

273: 2014/06/23(月) 23:28:10 ID:Y1W2koa.

勇兄「チャンス!!」ダッ


ヴァンパイア「やはり接近戦は私より君の方が全然上だ。だが…迂闊に懐に入るのは関心しないなぁ」ポワン


勇兄「しまった!?」


バシャン!


勇兄(ぐっ…!)ゴポゴポ


ヴァンパイア「ウォータープリズン・ザ・セカンド…」


魔法使い「勇兄選手、水の檻に捕まってしまったぁ!!」


ヴァンパイア「いや、だからウォータープリz―「果たしてこの水の檻から抜け出すことが出来るのでしょうか!?」


ヴァンパイア「……もう水の檻でいいよ」シュン


勇兄(は、早く出ないと息が…!)ゴポゴポ…

274: 2014/06/23(月) 23:28:46 ID:Y1W2koa.

勇妹「お、お兄ちゃん!!……ッ!」ズキッ


側近「勇妹、まだ完治はしてないんですからあまり大きな声を出さない方がいいですよ」


勇妹「で、でもお兄ちゃんが…」


側近「たしかにヴァンパイア様は強いです。ですが…勇兄も負けてませんよ」


勇妹「えっ?」






ヴァンパイア「どうだい?そろそろ降参した方がいいんじゃないか?」


勇兄(……降参なんかしないよ)ニヤリ

275: 2014/06/23(月) 23:30:11 ID:Y1W2koa.

バチッ…


ヴァンパイア「ん?」クルッ


ヴァンパイア「なっ!?」



魔法使い「なんとヴァンパイア選手の背後にはたくさんの球体上の雷が!!こ、これはいつの間に…」


魔王「ヴァンパイアの懐に飛び込む前に、既に仕掛けておいたんじゃ。あやつ…成長してるのぅ」



勇妹「雷を球体状にコントロールしてる…凄い。あんなこと出来なかったのに…」


側近「おそらくさっきのヴァンパイア様の試合を見て思いついたのでしょう…ふふふ、あの子はまだまだ強くなりますね」

276: 2014/06/23(月) 23:31:03 ID:Y1W2koa.

勇兄(くらえ!!)ヒュン! ヒュン!


ヴァンパイア「くっ!」バサッ


バリバリバリ!


魔法使い「雷の玉が一斉にヴァンパイア選手に襲い掛かる!一気に形勢逆転か!?」


ヴァンパイア「ふぅ…今のは危なかった」


魔法使い「な、なんと!ヴァンパイア選手、さっきの攻撃を食らって平然としています!」


スラりん「無傷だなんて…二人にはそこまで実力差があるの!?」


ヴァンパイア「いや、そんなことはないさ。雷魔法の直撃を食らったらさすがに平然と立ってることなんて出来やしない」


魔王「そうか?ワシは雷魔法を食らってもわりとピンピンしてるが…」


ヴァンパイア「魔王様と一緒にしないでください…」

277: 2014/06/23(月) 23:32:24 ID:Y1W2koa.

スラりん「でも、どうして直撃したのにヴァンパイアには効いてないの?」


ヴァンパイア「簡単なことさ。このマントで防ぐ事で直撃をさけたんだ」ヒラヒラ


魔法使い「そんなマント一つで防げるとは思えないけど…」


ヴァンパイア「このマントは雷を通さない特殊な防具なんだ。彼が側近の息子とわかってたから事前に用意していたのさ。ちなみに他にも10着ぐらい持ってきてるんだが…衣装チェンジでもしようかい?」


魔法使い「いえ結構よ」


ヴァンパイア「それは残念だなぁ……で、話を本題に戻すが、私はこのマントのおかげで雷魔法を防ぐ事が出来た。しかし…防御に回った為集中力が途切れ、彼を閉じ込めておくことは出来なかったというわけさ」


勇兄「はぁ…はぁ…」


ヴァンパイア「少しは体力を回復できたかい?」


勇兄「…ほんの少しだけね」

278: 2014/06/23(月) 23:33:03 ID:Y1W2koa.

ヴァンパイア「よろしい…では続きを始めようか!」ファサッ


勇兄「うん!」チャキッ


魔法使い「盛り上がってまいりましたぁー!大会屈指の好カードとなったこの勝負、一体どちらが勝つんでしょうか!?」


側近「……ヴァンパイア様とあたったのはラッキーでしたね。勇兄にとっては最高の相手です。例え負けたとしてもこの経験が糧となって大きく成長するでしょう…」


女騎士「そうだな…」


勇妹「パパもママも何を言ってるの?まだ試合は終わってない」


側近「その通りです。ですが……おそらく勇兄は負けますよ。ヴァンパイア様と勇兄の間にはかなりの実力差がありますし」


勇妹「そ、そんなことない!パパとママはお兄ちゃんの勝利を願ってないの!?」

279: 2014/06/23(月) 23:33:38 ID:Y1W2koa.

側近「もちろん応援はしています。ですが私達が願っているのは勝利ではなく、貴方達の無事だけですよ」ニコ


女騎士「そうだぞ。お前達はまだ走り始めたばかりなんだ。勝つ時もあれば負ける時もある。そうやってこれから成長していくんだ」


勇妹「そ…それでも、きっとお兄ちゃんなら勝つはず!(私と結婚する為にも!)」


側近「…そろそろ決まりそうですね」


____________________


魔法使い「勇兄選手、ついにヴァンパイア選手に捕まってしまいました!」



勇兄「はぁ…はぁ……く、くそぉ…」


ヴァンパイア「君は私との戦いの中でどんどん強くなっていた。君が成長していく様は見ていてとても楽しかったよ。だが…そろそろ終幕(フィナーレ)だ。降参したまえ」

280: 2014/06/23(月) 23:34:48 ID:Y1W2koa.

勇兄「ま…まだだ!」


ヴァンパイア「手足を氷で拘束してるのにどうやって戦うと言うんだい?華麗な私でさえ過去には無様な格好で逃げたこともある…相手との実力差を知り、素直に負けを認めるのも時には必要なのさ」


勇兄「……嫌だ!俺は絶対に負けない!!」


ヴァンパイア(はぁ、困ったものだ…私はこういう尋問みたいなことは好きじゃないんだが……しょうがない、溺れさせて戦闘不能にするか)


勇兄「俺は……負けられないんだ…」


ヴァンパイア「……何故君はそんなにしてまで勝利にこだわるんだい?」


勇兄「…この大会で優勝して……俺もお父さんみたいに皆から認められる立派な勇者になるんだ!」

281: 2014/06/23(月) 23:35:48 ID:Y1W2koa.

ヴァンパイア「なるほど…父親に憧れる息子、か……とても微笑ましいことだ。だが別にこの大会で優勝しなくとも、君なら数年後に立派な勇者になっているさ」


勇兄「……そんなに待てない」


ヴァンパイア「待てない?」


勇兄「…俺が立派な勇者になればお父さんの負担が減る。そうすれば……」


勇兄「昨日みたいに…お父さんと一緒に居られる時間が増えるから…」



側近「勇兄…」



勇兄「だから俺は…負けられない!!」

282: 2014/06/23(月) 23:36:47 ID:Y1W2koa.

ヴァンパイア「………君の気持ちはわかった。だが今の状況をどうやって打開するんだい?」


勇兄「くっ…」


ヴァンパイア「どうやっても君が私に勝つことは出来ない…私が負けを宣言しない限り、だけどな」ニコ


勇兄「…えっ?」


ヴァンパイア「まいった、私の負けだ」


魔法使い「ヴァンパイア選手、ここでまさかのまいった宣言です!よってこの試合は勇兄選手の勝利です!」


パキンッ


ヴァンパイア「クリスタルアイスロック(氷の錠)は解いた。すぐに傷を治してもらった方がいい」

283: 2014/06/23(月) 23:37:39 ID:Y1W2koa.

勇兄「ど、どうして降参なんかしたの!?」


ヴァンパイア「私より君の方が美しかった…それだけのことさ」


魔法使い「くっっっ…さぁーーーーーい!!最高にクサくてキザな発言をしております!」


ヴァンパイア「ちょっと君、さすがに空気を読もうか」


魔法使い「だけど…ちょっとだけカッコ良かったわよ」


ヴァンパイア「フッ…また一人美しい女性を虜にしてしまったか。私は罪な魔物だな」キラン


魔法使い「…ナルシスト野郎は放っておいて、次の試合に行っちゃいましょー!」


ヴァンパイア「」


魔王「最後までずさんな扱いじゃな…あとで慰めてやるか」

284: 2014/06/23(月) 23:40:35 ID:Y1W2koa.
今日はここまで


ではまた

290: 2014/06/28(土) 00:20:04 ID:ucmiLuVc
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竜騎士「さて、次は私達の番か」



青年「まさか竜騎士さんと戦うことになるとは…少しは手加減してくれるかなぁ」


娘「手加減しても勝てないと思うけど…ただでさえ大好きなお母さんとはやり辛いのにね」


青年「うっ」グサッ


娘「ま、頑張ってね。私は子供達と一緒に応援してるよ」


子供A「お兄ちゃんファイトだよ!」


青年「うん…ありがとう。出来るとこまでやってみるよ」



竜騎士「おい、早く行くぞ」スタスタ


青年「は、はい!」タタタタタッ

291: 2014/06/28(土) 00:22:38 ID:ucmiLuVc

魔法使い「次の対戦はなんと親子対決!!未だ健在の元魔王軍軍団長竜騎士選手vs気になるあの人の為に頑張る恋する乙メン青年選手の試合です!」


スラりん「ふっふっふ…」ニヤニヤ


青年(またあんなこと言って…スラりんさんには言うんじゃなかったなぁ)


竜騎士「やはり気になるな…よし、その好きな奴の名前を教えるまでは『まいった』って言っても続けるからな」


青年「そんなぁ!?」


魔法使い「それでは始めてくださーい!」


竜騎士「さて…どう調理してやろうか」ニヤリ


青年「ぐっ…こうなったら……意地でも勝ってみせます!」

292: 2014/06/28(土) 00:23:15 ID:ucmiLuVc

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竜騎士「どうした?意地でも勝つんじゃなかったのか?逃げてばかりじゃ勝てないぞ」バサッ バサッ


青年「逃げないと氏ぬんですよ!!そもそも空を飛ばれてたらどうしようもありません!」タタタタタタッ


竜騎士(最近は青年と娘のせいでペロペロ不足だからな…ちょっとだけイジメてやるか)


竜騎士「ガアァァ!!」ボウッ!


青年「くっ…!」ビュオオオ! ボウゥゥゥ!


ドオォォン!


竜騎士「ほら、私の吐き出した火球だって防げてるじゃないか」

293: 2014/06/28(土) 00:23:47 ID:ucmiLuVc

青年「風魔法で火炎魔法の威力をあげてやっと相殺できているんです!二つの魔法を同時に扱うからかなり魔力と体力を消費しますし、なにより…」


竜騎士「どんどんいくぞ!」ボウッ! ボウッ!


青年「私の実力では防げるのは一個までなんですよ!!」タタタタタッ


ドオオォォン!  ドオオォォン!


魔法使い「青年選手、必氏に逃げ回っております!」


魔王「一応青年も実力はあるみたいじゃが…さすがに相手が悪すぎるのぅ。これは竜騎士の勝ちじゃな」


スラりん「いや、まだわからないよ。たしかに竜騎士は強いけど、意外と弱点も多いからね」


魔王「弱点?」

294: 2014/06/28(土) 00:24:54 ID:ucmiLuVc

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竜騎士「さて…イジメるのもこれくらいにするか」スタッ


青年「イ、イジメてたんですか!?」ゼェ ゼェ


竜騎士「お前がはやく意中の相手を言わないのがいけないんだろ。言えば楽にイかせてやるからはやく吐け」


青年「イ、イかせるって…こういう場でそういうことは言わないでくださいよ///」


竜騎士「そういう意味じゃないぞ。このムッツリスOベが」


青年(どうしよう…このままだと本当にこの場で告白することになってしまう……二人に悪いから使いたくなかったけどあの手段でいくしかなさそうだなぁ…)

295: 2014/06/28(土) 00:25:49 ID:ucmiLuVc

青年「……あっ、竜騎士さん!勇兄くんと勇妹さんがあんなところで濃厚に絡みあってますよ!」


竜騎士「な、何だと!?そんな私の妄想のような情事が現実に!?わ、私も混ぜてくれ勇兄たぁ~~~ん!勇妹ちゅあ~~~ん!!」クルッ




勇兄「??」

勇妹「………竜姉の馬鹿」ハァ…




竜騎士「…へ?」


青年「ハアアァァ!!」ビュオオオ! ボウゥゥゥ!


竜騎士「お前謀ったな!?」


スラりん「掛かる方もどうかと思うよ」

296: 2014/06/28(土) 00:27:02 ID:ucmiLuVc

魔法使い「青年選手の隙をついた攻撃!これは避けられそうにありません!」



竜騎士「くっ!」


青年(あの近さで火球をぶつけて相殺させると逆にダメージを受けてしまうはず。だからきっと竜騎士さんは…両手の竜の鱗で防ぐ)


竜騎士「チッ!」バッ


ドオォォン!



魔法使い「青年選手の攻撃がクリーンヒット!!」



竜騎士「よくも卑劣な手をつかったな……お仕置きしてやる!!公開ペロペロの刑だ!!」クワッ



魔法使い「しかし竜の鱗で防いだ為ほとんどダメージは無さそうです」

297: 2014/06/28(土) 00:27:33 ID:ucmiLuVc

竜騎士「…ん?青年はどこいった?」


ザッ


青年「ここです」チャキッ


竜騎士「し、しまった!?」


青年(脇下の隙間、そこなら鱗も無くダメージが通る!…だけど)ピタッ


青年「……くっ」


竜騎士「…ん?」



魔法使い「ど、どうしたことでしょうか!?青年選手、絶好のチャンスで攻撃の手を止めてしまいました!」



青年(やっぱり竜騎士さんの体を傷つけるなんて出来ない…)

298: 2014/06/28(土) 00:29:19 ID:ucmiLuVc

竜騎士「フンッ!」バキンッ!


竜騎士「何で躊躇したのか知らんが…私は容赦しないぞ!」ガシッ


青年「がッ…!!」ミシッ



魔法使い「その隙に青年選手の剣を折り、ヘッドロックの体勢に!」


スラりん「やっぱり彼には出来なかったみたいだね…」


魔王「どういうことじゃ?せっかくのチャンスじゃったのに…」


スラりん「そういえば魔王には言ってなかったね。実は…――」

299: 2014/06/28(土) 00:30:18 ID:ucmiLuVc

竜騎士「さあ…答えてもらうぞ。何でさっき攻撃を止めたんだ?」グググググ…


青年「そ、それは…っ!」


竜騎士「早く答えないともっと苦しくなってくるぞ」グッ!


青年「ぐッ!!」ミシミシミシ


竜騎士「早く吐け!私だって愛する息子を痛めつけたくないんだ!」


青年「…わ、わかりました……言いますから解いてください」


竜騎士「よし…あっ、もちろん好きな奴も吐いてもらうからな」パッ


青年「…その必要はありませんよ。同じ理由ですから…」


竜騎士「は?」

300: 2014/06/28(土) 00:31:21 ID:ucmiLuVc

青年「さっき攻撃を止めたのは竜騎士さんの体を傷つけたくなかったからです。だって私は……竜騎士さんのことが…」


竜騎士「私のことが…?」



娘(頑張って、青年!)


魔法使い(めっちゃ茶々入れたいけど…さすがに黙ってないと駄目よね)



青年「……す……」






魔王「何じゃと!?青年は竜騎士のことを好いとるのか!?」


スラりん「あっ…」


青年(…い、言われたぁーーー!!せっかく勇気を振り絞って告白しようとしたのに、第三者に先に言われたぁーーー!!)

301: 2014/06/28(土) 00:33:00 ID:ucmiLuVc

魔法使い「ほんっっっ…と魔王ちゃんって空気読めないわね!まったく…」


魔王「す、すまん…」シュン


魔法使い「……ななななんと!?青年選手の好きな女性は母親である竜騎士選手だったのです!魔物と人間、母親と息子…まさに禁断の愛!!果たしてこの恋の行方はどうなるのでしょうかぁ!!」


スラりん「魔法使いも大概だよ」



青年(告白するにしてももう少しちゃんとしたかったなぁ…)


竜騎士(まさか愛する息子に惚れられるとは……だから青年は私のことをお母さんとは言ってくれなかったのか。意外と気にしてたんだがな…)


青年(よ、よぉーし!こうなったら自分の想いを全部ぶつけてやる!)

302: 2014/06/28(土) 00:33:45 ID:ucmiLuVc

青年「竜騎士さん…私は小さい頃からあなたのことが好きでした。もちろんその時はまだ母親としてしか見ていませんでした…ですが成長していくにつれ竜騎士さんのことを一人の女性として好きになりました」


青年「そして竜騎士さんの過去を聞き…ずっと傍に居たいと、支えてあげたいと思いました…」


竜騎士「青年…」


青年「だから……私と結婚してください!私があなたを幸せにしてみせますから!!」


竜騎士「無理」


青年「」


魔法使い「軽っ!?ま、まさかの即答で拒否!!青年選手、大きなダメージを受けてしまいましたー!これは戦闘不能でしょうか!?」

303: 2014/06/28(土) 00:35:02 ID:ucmiLuVc

スラりん「さ、さすがにそれはひどくないかな?」


竜騎士「むっ、そうか…………すまんな、青年。無理だわ」ポンッ


青年「」ゴフッ


魔法使い「さらに追い討ちを掛けたー!血も涙もありません!」


青年「」マイリマシター


魔法使い「完璧に上の空ですが青年選手、このタイミングでまいった宣言です!よって竜騎士選手の勝利です!試合の決め手となったのは無慈悲な言葉の暴力でした!」


スラりん「うん、かなり深くまで突き刺さってたよ」

304: 2014/06/28(土) 00:35:51 ID:ucmiLuVc

____________________


竜騎士(一応青年を僧侶ちゃんのとこに連れてったが…このあとどうすればいいのだ?)スタスタ


娘「ちょっとお母さん!!さすがにあれはひどすぎるよ!」


子供達「そうだそうだー!お兄ちゃんがかわいそー!」


竜騎士「じゃ、じゃあどういう対応をすればよかったんだ?こんなこと初めてで私も動揺してるんだ…」


娘「…お母さんは青年のことをどう思ってるの?」


竜騎士「もちろん愛してるさ。だがそれは…子供としてであって男としてではない。さすがの私も息子と結婚は考えられない…あいつの幸せを思うと尚更な」


娘「夫婦がするようなことシてるくせに…」


竜騎士「う、うるさい!」

305: 2014/06/28(土) 00:37:33 ID:ucmiLuVc

娘「きっと青年もこうなることはわかってたと思うの。だから…もっとちゃんと向き合って断ってあげて」


竜騎士「…そうだな。ありがとな、娘。じゃあちょっと青年のところに行ってくるよ」タタタタタッ


娘「いってらっしゃ~い」フリフリ


子供G「さすがお姉ちゃん。まるでお母さんのお母さんみたいだね!」


娘「ふふふ、そうかも」


子供A「ねー、お姉ちゃんは僕と結婚してくれるー?」


娘「青年やどっかの妹さんみたいなこと言わないでよ…普通は家族で結婚は出来ないのよ。よ~く覚えておいてね」

306: 2014/06/28(土) 00:38:09 ID:ucmiLuVc

勇妹「…私とお兄ちゃんは普通ではない。よって結婚しても問題ない」


勇兄「いきなりどうした?」


勇妹「いえ、今私の愛デンティティーを否定されたような気がしたから…」



魔法使い「続いての試合は…超重量級を制した怪力の持ち主ゴーレム選手と、まだその実力の半分も出していない側近選手の試合です!」



側近「では行ってきますね」


勇兄「お父さん頑張って!」


女騎士「相手に怪我させないようにな」


勇妹「そう。やり過ぎちゃ駄目」


側近「ははは、わかってますよ」スタスタ

311: 2014/07/01(火) 23:52:35 ID:fpCmZGq.

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医務室



青年「…ん……こ、ここは…医務室?」ムク


僧侶「や、やっと起きてくれた!」


青年「あっ、僧侶さん…………何をしているんですか?竜騎士さん」


竜騎士「何って…僧侶ちゃん成分を補給してるんだ」ギュウゥゥゥ


僧侶「く、苦しい……」

312: 2014/07/01(火) 23:53:41 ID:fpCmZGq.

青年「竜騎士さん…僧侶さんが嫌がってるじゃないですか」ジー


竜騎士「何だ嫉妬か?」


青年「はい、嫉妬です」


竜騎士「…随分と開き直ってるな」パッ


僧侶(や、やっと解放してくれた…)ハァ ハァ


青年「開き直るしかないんです。もうフラれましたから…」


僧侶「……じゃあ僕は勇者様の試合を見てくるから、竜騎士さんは青年くんを見ててあげてね」スタスタ


バタンッ


竜騎士「…気を使わせてしまったか」


青年「…そうですね」

313: 2014/07/01(火) 23:55:22 ID:fpCmZGq.

竜騎士「率直に言わせてもらうと…さっきの告白は嬉しかった。息子とはいえ異性から告白されるのは久々だからな」


青年「ヴァンパイアさんから告白されてたんじゃないんですか?」


竜騎士「あれは例外だ。異性とすら思ってない」


青年「酷すぎる…」


竜騎士「あいつも根は悪い奴じゃないんだがな…残念ながらあの性格は本当に受け付けないんだ。だから階級は上なのにあいつのことを呼び捨てにしてるし…」


青年「えっ?階級が上って…魔王軍軍団長より上の階級があるんですか?」


竜騎士「階級って言うよりも身分が上なんだ。ていうかあいつのことはもういいだろ。それよりもう一度ちゃんとフラせてくれ」


青年「まだ私の心をエグるつもりなんですか!?」


竜騎士「違う。もうあんな酷い言い方はしない…ちゃんとフッてお前を前に進ませたいんだ」


青年「………」

314: 2014/07/01(火) 23:56:38 ID:fpCmZGq.

竜騎士「私はお前のことを愛している。これは事実だ」


青年「…はい、わかってます。子供として私を愛してくれているんですよね」


竜騎士「ああ、お前だけじゃなく娘も他の子達も皆愛してる。その愛に差異はなく、皆平等に愛しているつもりだ。だから…お前だけを特別愛することは出来ない」


青年「………」


竜騎士「それにお前はまだ若い。これから私よりもっと素敵な女性と巡り会うはずだ。そしてその女性と結婚し、愛し合い…子供が出来る。それは私には、私の体では…もう出来ないことだ」


青年「竜騎士さん……」


竜騎士「私の願いはお前達の幸せ…私の夢はお前達全員の孫をペロペロすることだ。だから早く私より良い女を見つけて孫を作ってくれな」ニコ

315: 2014/07/01(火) 23:57:24 ID:fpCmZGq.

青年「…わかりました、努力してみます。ですが…中々居ませんよ。竜騎士さんより素敵な女性は」


竜騎士「お前は筋金入りのマザコンだな」


青年「竜騎士さんのシOタコンのせいでもあるんですよ」


竜騎士「む、考えてみればそうか」


青年「だからこれからはそういう行動は控えてくださいね」


竜騎士「今以上に控えろって言うのか!?それは私に氏ねと言ってるようなものだぞ!」


青年「安心してください。私が氏なせませんよ。これからも私が竜騎士さんの子供としてあなたの傍に居ますから…」


竜騎士「だからお前はそろそろ親離れをだな…」


青年「しません。私は筋金入りのマザコンですので」ニコ

316: 2014/07/01(火) 23:58:41 ID:fpCmZGq.

竜騎士「……はぁ、しょうがないなまったく。良い女が現れるまでは私の傍に居ることを許してやるか」


青年「ふふふ、ありがとうございます」


ワァー  ワァー


青年「随分と盛り上がってますね」


竜騎士「おそらく側近様が入場したんだろう」


青年「じゃあ私達も見に行きましょう」


竜騎士「まあ待て。どうせ側近様が勝つんだ。見なくてもわかる」


青年「そうでしょうけど…」


ズシィィィン


竜騎士「ほら、対戦相手のゴーレムが倒れた音だ」

317: 2014/07/01(火) 23:59:43 ID:fpCmZGq.

青年「はやっ!?さっき入場したばかりじゃないですか!」


竜騎士「さて…ゴーレムがここに来る前に終わらすか」


青年「…何を終わらすんですか?」


竜騎士「何って…さっきの試合で私を騙した罰に決まってるだろ?」


青年「えっ!?」


竜騎士「よくもあんな卑劣なことをしたな…公開では無いがその分たっぷりとペロペロしてやる。覚悟しろよ」ジュルリ


青年「こ、こんなところでマズイですって!それに絶対にペロペロ以上のことしますよね!?」


竜騎士「もちろんだ。だから早く終わらすぞ。幸いお前は早い方だし」


青年「気にしてるのに…」シクシク

318: 2014/07/02(水) 00:01:10 ID:PYPW0Zyg

青年「……ってそこじゃないですよ!ヤりません!」


竜騎士「だがお前はさっき私を氏なせないって言っただろ?私は今すぐに誰かをペロペロしないと氏んでしまうんだ」キリッ


青年「絶対嘘ですよね」


竜騎士「それにこれは罰だからお前の意見は全て却下だぞ」


青年「そんな横暴なぁ!?」


竜騎士「それでは大好きなママによるお待ちかねの…ペロペロタァ~~~イムッ!」ジュルリ


青年「だ、誰か助けて~~~!」

319: 2014/07/02(水) 00:01:52 ID:PYPW0Zyg

____________________


娘「あの二人遅いなぁ…勇者様の試合終わっちゃったのに…」




勇兄「お父さん凄かったよ!バラバラになって攻撃してきたゴーレムさんの体(岩)を全て同時に拘束するなんて!」


勇妹「私じゃせいぜい10個が限界…やっぱりパパには敵わない」


側近「勇妹も鍛錬をすればきっと出来るようになりますよ」

320: 2014/07/02(水) 00:03:17 ID:PYPW0Zyg

魔法使い「続いての試合は女騎士選手vsディアブロ選手!……なのですが、先ほど女騎士選手がこの試合を棄権したのでディアブロ選手の不戦勝になりまーす!」


スラりん「女騎士は辞退したんだね…正直安心したよ」


魔王「うむ…もし試合をしてたら殺されてたかもしれん」


スラりん「えっ?頃したら失格だよ。さすがにそれは無いんじゃない?」


魔王「失格になろうが関係ない。あやつはそういう奴じゃ」


スラりん「つ、次に当たるのは勇者だけど…大丈夫だよね?」


魔王「ああ……多分のぅ」

324: 2014/07/03(木) 00:18:28 ID:HRYB/Utw

魔法使い「続いての試合ですが…一試合空いてしまったので少し休憩を取るのか、次の試合をするお二人に伺ってから決めます」


勇兄「俺はすぐでも大丈夫だよ。竜騎士さんと青年さんの試合で休めたし」


魔法使い「では竜騎士選手は……どこですか?」


娘「…さあ?」


子供A「あっ、帰ってきたよー!」


娘「ちょっとお母さん、何をして……ナ、ナニをしてたの?」


青年「」ゼェ ゼェ


竜騎士「やはり私も女だからな。告白されて上機嫌になり…す、少しだけハリキリ過ぎてしまったんだ」アハハハ…


娘「告白を断りに行ったのに何で盛ってるのよ!?」


竜騎士「す、すまん…」シュン

325: 2014/07/03(木) 00:19:23 ID:HRYB/Utw

魔法使い「あの~竜騎士選手、次の試合に行く前に少し休憩を取りますか?」


竜騎士「さっきの今で疲れてるし、そうしてくれると助かr―「いえ、いけます」


竜騎士「な、何を言っているんだ!?さすがの私でもヤった直後はキツイぞ!」


娘「お母さんが勝手にヤったんでしょ。自業自得よ。観客の皆さんを待たせちゃ悪いから早く行って」


竜騎士「だ、だが…」


娘「い・き・な・さ・い」


竜騎士「……はい」トボトボ


魔法使い(完全に自分の娘に尻敷かれてるわね…)

326: 2014/07/03(木) 00:19:57 ID:HRYB/Utw

魔法使い「で、では気を取り直して……いよいよ準々決勝を勝ち抜いた強者(つわもの)4人による決勝を掛けた戦いが始まりまーす!」


魔法使い「まずは準々決勝で大番狂わせの勝利をもぎ取った勇兄選手vs息子から告白されて少しだけ上機嫌の変O竜騎士選手の試合です!」


竜騎士(せっかく勇兄ちゃんとの試合なのにかなり体力を使ってしまったな…主に試合以外のところで)



子供達「竜騎士お姉ちゃん(お母さん)、頑張って~~!」フリフリ

娘「負けて少しは反省しなさ~い」フリフリ



竜騎士「せめて応援してくれよ」


勇兄「竜騎士さん、俺は竜騎士さんのアドバイスのおかげで強くなれた…感謝の気持ちも込めて全力でいくよ!」チャキッ


竜騎士(さっき全力でイッたばかりなんだが……さすがにこの状態で今の勇兄たんに勝つのはキツイ…なら、ヤることは一つ!)


竜騎士「…私の舌技をもってすれば一ペロぐらい出来るはず!勇兄たん…私も全力でイかせてもらうぞ!」ジュルリ

327: 2014/07/03(木) 00:20:55 ID:HRYB/Utw

____________________


竜騎士「せ…せめて頬を一ペロさせて…」


勇兄「ハアアア!」バチバチバチ!


バリバリバリバリ!


竜騎士「ぐっ……!」バタンッ


魔法使い「おーっと!竜騎士選手、ここで戦闘不能!よって決勝のチケットを見事勝ち取ったのは勇兄選手です!」


魔王「マジメにやればもう少しいい試合になったろうに…」


スラりん「完全に空回りしてたよね」

328: 2014/07/03(木) 00:22:01 ID:HRYB/Utw

勇兄「よし!これであと一回勝てば魔王と戦える!」


竜騎士(いくら疲れてたとはいえ、まさか本当に負けるとは……子供の成長は早いものだな)


勇兄「竜騎士さん大丈夫?」


竜騎士「ああ…おめでとう勇兄ちゃん。決勝も頑張るんだぞ」


勇兄「うん!」


竜騎士「じゃあ私は僧侶ちゃんにペロpr…傷を治してもらってくるかな」スタスタ

329: 2014/07/03(木) 00:22:33 ID:HRYB/Utw

____________________


竜騎士(元々魔王様に勝てると思ってなかったから別に悔いは無いが……優勝して子供達に腹いっぱい美味い飯を食べさせてやりたかったなぁ)スタスタ


ディアブロ「フン…魔王軍軍団長であったお前が、少し魔物の血が入ってるとはいえ汚らわしい人間に負けるとは…情けない」


竜騎士「ディアブロ…」


ディアブロ「人間の子供なんぞ育ててるから弱くなるのだ」


竜騎士「…お前に言われる筋合いは無い」


ディアブロ「…貴様は何故人間の子供なんぞを育てているんだ?俺にはさっぱり理解できん」


竜騎士「そんなのあの子達が可愛いからに決まってるだろ」


ディアブロ「人間が可愛い?…フッ、そこまで落ちぶれたか。貴様はもう……魔物ではない」スッ


竜騎士「なっ!?」

330: 2014/07/03(木) 00:23:35 ID:HRYB/Utw

竜騎士(今の状態でこいつの爆発魔法を食らったら、氏…)


ザッ


ヴァンパイア「女性に手を出すなんて…そんなこと私が許すわけないだろ」バッ


竜騎士「ヴァンパイア!?」


ドオオォォン!


ディアブロ「……フン」


竜騎士「が…ッ!」ドサッ


ヴァンパイア「ぐっ!」ドサッ


ヴァンパイア「…た、対爆発魔法用のマントで防いだんだが…」プスプス…


ディアブロ「自惚れるな。そんな布切れ一枚で俺の魔法が防げるわけないだろ」

331: 2014/07/03(木) 00:24:36 ID:HRYB/Utw

ディアブロ「…これでも俺は貴様らの考え方は理解出来んが実力は買っているんだぞ。貴様らは俺や魔王を除けば魔物の中でも一、二を争う実力者だからな……どうだ?今からでも遅くない。俺の部下にならんか?」


ヴァンパイア「フッ…なるはず無いだろ。私の主君は前魔王様だけだ。もちろん魔王様も尊敬…はちょっとし辛いが、私を弟のように可愛がってくれた魔王様を好かないわけはない」


ヴァンパイア「前魔王様の側近であった身としては魔王様のお力になることが正しいのだろう……しかし私は、前魔王様以外の下につくつもりは無い」


竜騎士「そうだ。私もあの方だからこそ力を貸したいと思い魔王軍に入ったんだ。魔王様ならまだしもお前の部下になんて氏んでも御免だ」


ディアブロ「貴様らほどの魔物がここまで毒されているとは……やはり全ての元凶はあの偽善者である前魔王か」


ヴァンパイア「それ以上前魔王様の悪口を言うな…頃すぞ」ギロッ


ディアブロ「…フッ、床に這いつくばりながら凄まれても全く怖くないぞ」スッ


ヴァンパイア「くっ…!」

332: 2014/07/03(木) 00:25:36 ID:HRYB/Utw

ディアブロ「!?」ピタッ


ディアブロ「これは…拘束魔法か」ググググ…


側近「大きな爆発音を聞こえたので来てみれば……一体何をしているんですか?」


ディアブロ「…腐れきった魔物達に制裁を加えていたところだ」


側近「制裁…ですか」


ディアブロ「まぁいい、お遊びはここまでにするか。次は貴様を本気で頃してやるから今のうちに家族に別れを言っておくんだな」スタスタ

333: 2014/07/03(木) 00:26:29 ID:HRYB/Utw

側近「…ヴァンパイア様も竜騎士さんも大丈夫ですか?」


竜騎士「はい…何とかですが…」


ヴァンパイア「側近、あいつは恐らく君より強い……気をつけるんだぞ」


側近「はい…わかってます」


ヴァンパイア「……では私は彼女を医務室へ運ぶとするかな。ほら、肩を貸してあげるから私の手を取りたまえ。遠慮はいらないよ」スッ


竜騎士「助けてもらっといて言い辛いんだが……すまん、お前に触りたくない。お前って昔からすぐに勘違いするし」


ヴァンパイア「」

336: 2014/07/04(金) 00:33:01 ID:19/92Hwc

____________________


魔法使い「続いての試合は事実上の決勝戦!ゴーレム選手も軽々倒して決勝へ、未だ本気を出していない側近選手vsその実力は魔王ちゃんを凌ぐと言われているディアブロ選手の試合です!」


ディアブロ「さて…頃してやるぞ」


側近「………」


魔法使い「それでは……始めてくださーい!」


ディアブロ「フンッ!」バッ


ドオオォォン!


魔法使い「いきなりディアブロ選手の爆発魔法が側近選手にクリーンヒット!!爆発の煙で様子がわからないですが…側近選手は大丈夫なのでしょうか!?」

337: 2014/07/04(金) 00:33:53 ID:19/92Hwc

ディアブロ「どうした?もうお終いか?……っ!!」ピタッ


ディアブロ「フン、また拘束魔法か…俺を低俗な魔物と一緒にするな!」グググググ… バキンッ!


スラりん「勇者の拘束魔法を力尽くで解いた!?」


チリッ…


ディアブロ「っ!?」バッ


側近「ハアアァ!」バチバチバチ!


バリバリバリバリ!


ディアブロ「ぐっ…!」


魔法使い「今度は煙の中から出てきた側近選手の雷魔法が炸裂!!両者試合開始直後から全開です!」

338: 2014/07/04(金) 00:35:01 ID:19/92Hwc

ディアブロ「この雷魔法は厄介だな…」プスプス…



勇兄「お父さんの雷魔法を食らってピンピンしてるなんて…」


勇妹「…もしかしたら本当に魔王様を凌ぐ実力を持ってるかも」



ディアブロ「俺の爆発魔法は火炎魔法で相頃していたか……フッ、実に惜しいな」


側近「…何が惜しいのですか?」


ディアブロ「それだけの力を持っている魔物は片手で数えられるぐらいだ。出来るならお前も俺の部下にしたいところなんだが…貴様には人間の血が入ってる。だから惜しいと言ったのだ」


側近「…そんなに人間が嫌いなんですか?」


ディアブロ「ああ、嫌いだ…頃してやりたいほどな」

339: 2014/07/04(金) 00:36:29 ID:19/92Hwc

側近「人間への異常なまでの殺意……やはり貴方があの魔神軍のトップなのですね」


ディアブロ「…まあな」


ザワザワ


魔法使い「ななな、なんとっ!?ディアブロ選手はあの反人派で有名な、無差別に人間を頃す凶悪な殺人集団、魔神軍の首領だったのです!」



ディアブロ「魔物共よ、喜ぶがいい…俺が貴様と魔王を頃した暁には魔物達を元通りにしてやる…己の欲望のまま暴れる魔物本来の姿にな」


スラりん「なっ!?ぼ、僕達はそんなの望んでない!お前の勝手な妄想を押し付けるな!!」


魔王「スラりん…」

340: 2014/07/04(金) 00:37:30 ID:19/92Hwc

ディアブロ「フン、何を今更…貴様らだって平和という暴挙を俺達に無理矢理押し付けてるだろ。まぁ腑抜けたクズの傍に居るような欲望を失った魔物は皆頃しにしてやるがな…こうやってな」スッ


ドオオォォン!


魔法使い「きゃあっ!?」


スラりん「ぼ、防御膜が破壊された!?」


ディアブロ「これで貴様を守るモノは無くなったぞ…」スッ


魔王「させるか!」バッ


ディアブロ「フッ…そう来ると思ってたさ!氏ね魔王!!逃げれば貴様の友達が氏ぬぞ!!」グッ

341: 2014/07/04(金) 00:38:14 ID:19/92Hwc

スパッ


ディアブロ「なっ!?腕が…ッ!」


側近「………」ガシッ


ズボッ


側近「…ご自分で食らってください」


ドオオオォォン!


ディアブロ「ぐっ…!い、意外とエグいことするな…俺の腕を切り落とし、そのまま俺の体にその腕を埋め込むとは…」ポタポタ…


側近「私も一応魔物の血が入っておりますので…」


魔法使い「ディ、ディアブロ選手の上半身右半分が、ふ…吹き飛んでしまいました!」

342: 2014/07/04(金) 00:39:00 ID:19/92Hwc

側近「どうしますか?降参しますか?」


ディアブロ「…笑わせるな」グチュグチュグチュ…


スラりん「き、傷口が治っていく!?」


側近「…凄い再生能力ですね」


ディアブロ「この再生能力がある限り俺は不氏身だ。しかし…痛みはある。よくも俺の体に傷をつけたな…」ゴゴゴゴゴゴ




勇妹「す、凄い魔力…闘技場が揺れている…!」


勇兄「お、お父さん!!」

343: 2014/07/04(金) 00:39:44 ID:19/92Hwc

ディアブロ「俺の爆発魔法でこの闘技場もろとも吹き飛ばしてやる!」グッ


側近「そんなことさせませんよ…ハアアァ!!」ピッ!


ディアブロ「ハッ、また拘束魔法か!くだらん!それは効かないとさっき証明してやっただろ!」ピタッ


側近「………なら解いてみてください」


ディアブロ「…な、何だと!?と、解けん!!」グググググ…


側近「貴方は二つほど勘違いなされてます。まず一つ、私は調教のエキスパート…例え貴方の実力が私より数段上でも力を押さえ込むぐらい簡単なんですよ」


ディアブロ「馬鹿を言うな!俺の方が力が上なら解けるはずだろ!」

344: 2014/07/04(金) 00:40:47 ID:19/92Hwc

側近「魔物の頂点に立つ魔王様の躾が私の仕事なのですよ?日頃から魔王様を躾る為に鍛錬をしてきた私の拘束魔法が、貴方程度に破られるわけないじゃないですか」


側近「それに貴方の実力は魔王様に到底及びません。魔王様が本気になられたらその拘束魔法ですら一秒で解きますよ」


ディアブロ「くっ…!」


魔王「さっきから調教とか躾とか言葉が悪いぞ」


側近「これは申し訳ありませんでした。一応表立ってではお世話係となってましたね」


魔王「一応ではなくそれが本来のお前の役職じゃ」


側近「…話を戻します」


魔王「スルーか」

345: 2014/07/04(金) 00:41:37 ID:19/92Hwc

側近「二つ目、貴方は私達が欲望を失ったと言いましたが…それは違います。私達は平和を欲し、貴方が言ったように欲望のまま平和を貴方達に押し付けているのです。それに反対する者は力で抑え込む…実に魔物らしいじゃありませんか」


側近「それにそれが嫌な方の為に魔王様がこの大会を開いているんですよ。貴方が私や魔王様に勝てば貴方の夢が叶う。もちろん他の方々も全て平等にチャンスがあります」


側近「1、2年程度では魔王様を超えることは不可能。なので4年に一度の開催にして、皆さんに鍛錬をする時間も与えているんですよ。このように魔王様は何も考えてないように見えて意外と考えてらっしゃるのです」


魔王「それは褒めてるんだよな?」


側近「もちろんです」

346: 2014/07/04(金) 00:42:26 ID:19/92Hwc

ディアブロ「何故だ…何故そこまでして平和を欲するんだ!?魔王!俺は別に父の仇などどうでもいいんだ!魔物の頂点に立つ貴様が何もしないのが気に食わんのだ!」


ディアブロ「貴様なら魔物達を従え人間を抹頃し、この世界の全てを己の物にすることだって出来るだろ!何故そうしないんだ!?」


魔王「そんなの…めんどくさいからに決まってるじゃろ」


ディアブロ「め、めんどくさい…だと?」


魔王「ワシも戦うことは好きじゃ。向かってくる奴を頃すこともある。だが戦争は嫌いじゃ。つまらんからのぅ」


魔王「さらにワシは戦うこと以上にのんびりゴロゴロすることが好きなんじゃ!!」ドヤッ


側近「ドヤ顔しながら言う事ではありませんよ」

347: 2014/07/04(金) 00:43:00 ID:19/92Hwc

魔王「人間を頃して何になると言うんじゃ。そんなことするよりも仲良くなった方が楽しいし楽じゃろ」


魔王「それに人間達の作る物はどれも凄いんじゃぞ。オモチャや色々な施設、料理…特にお菓子やアイスは最高なんじゃ!!」


側近「ちなみに現在人間側と共同で魔王様発案のテーマパークなる物を作っています」


魔王「前回優勝の褒美じゃからな」


スラりん「…魔王が主催者なのに自分のお願い事もありなの?ていうかその建設費用とかはどっから出てるの?」


魔王「それは……知らん!全部側近に任せとるから心配なかろう。きっと色々やりくりしてくれとるんじゃろ」


側近「全て魔王様のお小遣いから出してますよ」


魔王「えっ!?初耳じゃぞ!?だから最近おやつが少ないのか!!」

348: 2014/07/04(金) 00:44:18 ID:19/92Hwc

側近「意外と建築費が掛かってしまい、既にお小遣い3年分ぐらいは前借りさせていただいてます。それと魔王様の現在の貯金残高は…ゼロです。先日買った雪山村のアイスクリームで全て使い切りました」


魔王「」ガーン


側近「このように魔王様はご自分が楽しむ為に絶え間ない努力をしているのです」


スラりん(それって努力って言うのかな…?)


ディアブロ「馬鹿げたことを…」


側近「…たしかに魔王様の行動や仰っていることは馬鹿らしいかもしれません。私も今までどうにかして子供のままの魔王様を成長させようとしたのですが…もう諦めました。魔王様の駄目っぷりは底無しなのです」


側近「ですが…私はこの平和が続くのなら、魔王様が描く馬鹿らしい夢をこれからも実現させていきます。それが今の私の夢なのです」

349: 2014/07/04(金) 00:45:34 ID:19/92Hwc

ディアブロ「フン…なら俺の夢はその全てを破壊することだ!誰も俺の邪魔などさせん!」


側近「邪魔はしますよ。だって貴方は……私を怒らせたんですから」ゴゴゴゴゴゴ


ディアブロ「!?」ゾクッ


魔王(あっ…調教モードに入りおった)


側近「これから行うのは貴方が私の愛する娘を痛めつけた報い…そして、私の主君である魔王様を腑抜けたクズと言った罰です」ゴゴゴゴゴゴゴ


魔王(いつももっと酷いことを側近から言われとると思うんだが…)

350: 2014/07/04(金) 00:47:06 ID:19/92Hwc

側近「…エルフさん達、一つお願いしていいですか?防御膜を外から見えないようにしてください」


エルフ「えっ?」


側近「観客席には小さな子供達も居ますので、悪影響を与えてしまいます…」


エルフ「わ、わかりました…(一体何をするんだ…?)」


ブンッ


魔法使い「防御膜の色が黒くなり、中が完全に見えなくなってしまいました!ですが…私達実況席の防御膜は壊れているので、そこから漏れて聞こえる音だけで想像してください」



側近「それでは始めましょう…貴方の実力が私より上で、さらに高い再生能力を持っていて本当に良かったです。これなら殺さずたっぷりと…痛めつけることが出来ますね」ニコ


ディアブロ「お、俺は絶対に屈しない!!」

351: 2014/07/04(金) 00:48:11 ID:19/92Hwc

「俺は屈しない!!」



ボオォォォォォ! バリバリバリ!



「くっ…この程度!!」



グサッ グリグリグリ



「……ぐはっ…!」



ブチブチッ ザクザクッ



「も…もうやめ……」



グチャ

352: 2014/07/04(金) 00:48:51 ID:19/92Hwc

観客達(今絶対に聞こえちゃ駄目な音が聞こえたー!)


魔法使い「こんなの実況出来るわけないじゃん……」


スラりん「や…やり過ぎだよ…」ガクガク


魔法使い「……グロすぎて気持ち悪くなってきちゃった。ちょ、ちょっと吐いてきていい?」ウップ


魔王「うむ、我慢しないで行ってこい」


魔法使い「じゃ、じゃあ行ってくる前に…ディアブロ選手の戦闘不能を確認したので側近選手の勝利でーす…じゃあ行ってくるわ」タタタタタッ


スラりん「…魔王は慣れてるね」


魔王「まぁいつもやられる側だからのぅ…といってもさすがにあそこまではしないがな」

353: 2014/07/04(金) 00:52:22 ID:19/92Hwc

エルフ「し、試合も終わりましたしそろそろ解いていいですか?」



「あっ、もう少しだけ待ってください!再生が追いつかずまだ内臓が飛び出してるので」



エルフ(内臓って…)ゾクッ



「もういいですよ」



エルフ「じゃ、じゃあ解きます」


ブンッ


側近「大変お見苦しいとこをお見せしてしまってすいませんでした」ペコ


ディアブロ「ぁ……」ピクピク


観客達(む、虫の息!?一体何があったんだ!?)

354: 2014/07/04(金) 00:54:09 ID:19/92Hwc

ディアブロ「お…れは…ぜ、ぜったいに…屈しないぞ…」ピクピク


側近「まだ意識があるとは…さすがです。ですがまた勘違いをなされてますよ」スッ…


側近(今のは報いと罰って言いましたよね?本格的な調教は魔王城に戻ってからたっぷりしてあげますのでご安心を…)ボソッ


ディアブロ「ぁ……ぁぁぁぁぁぁ!?」ガクガク ブルブル


魔王「…何を耳打ちしたんじゃ?」


側近「いえ、些細な事ですよ」


観客達(絶対に些細なことじゃない…)

355: 2014/07/04(金) 00:55:29 ID:19/92Hwc

側近「あっ、皆さん心配しないでください。魔王様以外にはここまで強くしませんので」


魔王「おい、ワシにもするな」


側近「ですが…もし皆さんが悪いことをしたら……少しだけ調教しますけどね」ニコ


観客達「」ガクガク





勇兄「あ…あれが僧侶さんが言っていた……本当の『強さ』なのか!」キラキラ


女騎士「おそらく…いや、絶対に間違ってるぞ。だから目をキラキラ輝かせるんじゃない」

356: 2014/07/04(金) 00:56:49 ID:19/92Hwc

勇妹「今後の為にも調教シーンも見たかったのに…」


女騎士「い、一応聞いておくが今後誰を調教するつもりなんだ?」


勇妹「もちろん魔王様。私の夢はお兄ちゃんのお嫁さん兼魔王様の側近だから」


女騎士「そ、そうか……まぁ魔王ならいっか。勇兄のことだと思って少し心配したぞ」


勇妹「私がお兄ちゃんを調教するなんて絶対にありえない。だって…私がお兄ちゃんに調教されるのだから///」


女騎士「やめなさい」

362: 2014/07/16(水) 00:09:32 ID:Ad9Y7Psc

____________________


スタスタ


娘「あっ、お母さんおかえり。随分と遅かったね。勇者様の試合もう終わっちゃったよ」


竜騎士「ああ、ちゃんと別の場所でこいつと一緒に見てたよ。側近様全開だったな…」


青年(ヴァンパイアさんと二人きりで!?)ガタッ


子供A「お兄ちゃんどうかしたのー?」


ヴァンパイア「彼は随分と変な方向に成長してしまったんだな…」


竜騎士「お前が言えないけどな。そういやお前は魔王城を出てったから、成長した側近様はあまり知らなかったっけ」


ヴァンパイア「ああ、だから彼の成長に驚いているよ。小さい頃はあんなに可愛かったのに…」


竜騎士「ホントに側近様の小さい頃は可愛かったなぁ~」ウヘヘ…

363: 2014/07/16(水) 00:11:42 ID:Ad9Y7Psc

娘「ほらお母さん、涎出てるよ。これで拭いて」


竜騎士「おお、いつもすまんな」フキフキ


ヴァンパイア「これはこれは見た目も心も美しいお姫様。よろしければ私とこれからデートに行きませんか?」サッ


竜騎士「私の娘に手を出すな」ベシッ


ヴァンパイア「き、君の方から触れてくれた!?これは愛の証と受け取っていいのかい!?」パアァ


竜騎士「うざ……燃やしていいか?」


青年「…いいかもしれません」


娘「だ、駄目に決まってるでしょ!あなたまで嫉妬して変なこと言わないの!」

364: 2014/07/16(水) 00:14:32 ID:Ad9Y7Psc

ヴァンパイア「わ、私を庇ってくれた!?これはもう婚約ということでいいのかな?」


娘「違うわよ!…まあデートぐらいだったらしてもいいけどね」


ヴァンパイア「えっ!?」


竜騎士「な、何を言っているんだ!?こんな奴とデートなんてお母さんは許さないからな!」


娘「そろそろお母さんも子離れしてよ…」


青年「わ、私も反対です!子供達に悪影響を及ぼしますし!」


娘「あなたはただお母さんを取られるかもしれないからでしょ。マザコンは少し黙ってて」


青年「うっ」グサッ

365: 2014/07/16(水) 00:16:23 ID:Ad9Y7Psc

竜騎士「だ、だが本当にどうしてこんな奴とデートなんかするんだ?」


娘「やっぱりあの学校を維持してくのに卒業生や魔王様と勇者様の支援だけじゃキツイでしょ?ならお金持ちと結婚して寄付させようかなぁ~って。自称魔族のプリンスって言ってるぐらいだからお金持ってそうだし」


青年(もの凄く計画的だ…)


竜騎士「自称っていうか一応本物のプリンスだから金はまあまあ持ってるはずだが…」


娘「もちろんそれだけじゃないよ。さっきの試合を見て良い人そうだと思ったのは本当だし、まあまあイケメンでもあるしね」


ヴァンパイア「私に一目惚れしたわけではないのか…まぁいい、これからたっぷりと私の魅力を認識させてあげようではないか」

366: 2014/07/16(水) 00:18:06 ID:Ad9Y7Psc

娘「…一つ言わせて欲しいんだけど、あなたは女性なら誰でもいいの?」


ヴァンパイア「誰でもってわけではないが…私はこの世の全ての女性を愛してるつもりさ」キラン


娘「はい駄目ー」


ヴァンパイア「はい?」


娘「仮にもあなたは私を口説こうとしてるんでしょ?」


ヴァンパイア「もちろんそうさ」


娘「なら私の前で他の女性も好きだなんて言うのは私にも他の女性にも失礼よ」


ヴァンパイア「そ…そういうものなのかい?」


娘「そういうものなの。わかったら私と居る時はお母さんに色目を使ったりしないようにしてね」

367: 2014/07/16(水) 00:19:39 ID:Ad9Y7Psc

ヴァンパイア「もしかして…嫉妬かい?」キラン


娘「そうして欲しいなら今言った事をちゃんと実行すること。わかった?」


ヴァンパイア「あ、ああ…そうしよう」


娘「よろしい。じゃあ期待してるね」ニコ


ヴァンパイア(……久々に本気になってしまったかも)


竜騎士(こいつがもし娘と結婚したら……私はこいつの義理の母になるのか!?無理!絶対に無理っ!!こんな可愛くない息子なんていらない!!)


青年「あっ、そろそろ決勝が始まるみたいですよ」

368: 2014/07/16(水) 00:25:50 ID:Ad9Y7Psc
WCの影響でほとんど書いてない…すみません

今日はとりあえず適当に繋ぎの部分を書いて誤魔化しました
そして今日中に勇兄vs側近の試合を終わらす予定です

あと続編ははっきり言って無理です
出来て過去編をおまけで書くぐらいです

ではまた

373: 2014/07/17(木) 00:21:09 ID:KYR0uD9o

____________________


魔法使い「ついに過酷なトーナメントを勝ち進んだ二人による決勝戦を行いたいと思いまーす!!チャンピオンへの挑戦権を得るのは果たしてどちらの選手なんでしょうか!?」


魔法使い「それでは選手入場でーす!!」


魔法使い「ただお父さんと一緒に居られる時間を増やしたい……その純粋な想いで次々と番狂わせを起こし勝ち進んできた、ただいま成長真っ盛り中の勇敢なる少年!!勇兄選手の登場ッ!!」


勇兄「ついに決勝……絶対に勝ってみせる!例え相手が…お父さんでも」


魔法使い「そして運命に導かれるように彼もまた決勝へ……勇兄選手最大の試練!息子は父を超えることが出来るのか!?勇兄選手の父親であり、魔王ちゃんの優秀なる右腕!皆さんご存知勇者様こと側近選手でーす!」


側近「まさか勇兄と決勝で当たるとは思いませんでした…ハッキリ言ってヴァンパイア様も竜騎士さんも貴方より強いですので」


勇兄「うん…ヴァンパイアさんには完全に負けてたし、竜騎士さんはよくわからないけど体調が悪かったらしいし…二人に勝てたのはほとんどマグレだよ」

374: 2014/07/17(木) 00:23:38 ID:KYR0uD9o

側近「そんなことありません。お二人に勝てたのは貴方が強いからです。頑張りましたね、勇兄」


勇兄「『強い』か…俺は本当に強くなったのかな?」


側近「私や魔王様に比べたら実力はまだまだ弱いですが…既に私達に負けないぐらい貴方は『強い』ですよ」


勇兄「本当に?俺には全然わからないんだけど…」


側近「いつかわかりますよ…その為にも今はこの試合を大切にしましょう」


勇兄「うん!」


側近「ふふふ、では…いつでも来ていいですよ。全て防いであげますから」


勇兄「あっ、今俺のこと子供扱いしたでしょ!よぉーし…絶対に勝ってやる!!ていっ!」ダッ



魔法使い「戦いの火蓋が今切って落とされましたぁー!!果たして勝つのは息子か、父親か、どちらなんでしょうか!?」

375: 2014/07/17(木) 00:24:39 ID:KYR0uD9o

勇妹「…二人とも笑いながら戦ってる」


女騎士「ふふふ、そうだな。まるで試合というより稽古をつけているみたいだ」


勇妹「………」


女騎士「…羨ましいか?」


勇妹「…うん、少しだけ」


女騎士「なら今度私がお前に稽古をつけてやろう」

376: 2014/07/17(木) 00:25:54 ID:KYR0uD9o

女騎士(最近二人を勇者に取られがちだからな。私もこの子達とのスキンシップを多くせねば…)


勇妹「ううん。私は剣術を扱えないからいい。ママよりもパパに魔法を教わりたい」


女騎士「そ、そうか…」シュン


勇妹「あっ…な、なら今度お料理を教えてほしい!」アセアセ


女騎士「それもお父さんに教わればいいだろ…勇者の方が料理の腕はいいんだから」イジイジ


勇妹(いじけちゃった…)

377: 2014/07/17(木) 00:26:44 ID:KYR0uD9o

____________________


勇兄「ハアアァ!」ズババババ


側近「くっ…!」


キンッ! キンッ!


魔法使い「勇兄選手、もの凄い剣捌きで側近選手を追いつめていきます!」


側近(ここまでとは…剣術では既に私より上かもしれませんね。それはとても嬉しいんですが……女騎士さん、ちょっと鍛えすぎですよ)


勇兄「たあー!」ブンッ


側近(ふふふ、攻撃の癖まで女騎士さんにソックリですね。そのおかげで隙がわかるのでまだ私の方が有利です)サッ


勇兄「かかったね!」バチッ…


側近「!?」バッ

378: 2014/07/17(木) 00:28:19 ID:KYR0uD9o

バリバリバリ!


側近「あ、危なかったですね…まさか癖で出来る隙をおとりにして、雷魔法で攻撃してくるとは…やりますね」


勇兄「まだまだ!」ダッ


キンッ!


側近「くっ…!」


魔法使い「両者激しく交錯!そしてまた勇兄選手は雷魔法の体勢に!!」


勇兄「これだけ密着してればお父さんでも避けられないはず!」バチッ…


側近「…本当に強くなりましたね、勇兄。ですが…私もやられっ放しではありませんよ!」ブンッ


ガキンッ!


勇兄「あっ!」

379: 2014/07/17(木) 00:29:50 ID:KYR0uD9o

魔法使い「勇兄選手の剣が宙に舞ったぁー!」


勇兄「な、なら雷魔法で!!」バッ


側近「無駄です」ガシッ  


グイッ


勇兄「なっ!?」バチバチバチ!


魔法使い「なんと勇兄選手の腕を掴んで、直接雷魔法の軌道を変えました!」


側近「女騎士さんの剣術に雷魔法を加えたのはとても素晴らしいアイデアですが…片手で両手持ちの私の剣を押さえ込むには、まだ貴方の握力では無理ですよ」


勇兄「くっ…!」


側近「剣も無くなりましたしそろそろ終わりにしますか…」


勇兄「俺が押してたように見えたけど、お父さんは何だかんだ一切魔法を使ってなかった……俺の完敗だね」

380: 2014/07/17(木) 00:31:25 ID:KYR0uD9o

側近「そう簡単に負けられませんよ。私にも父親のプライドがありますし」


勇兄「…やっぱり俺の目標はお父さんだ。今はまだ勝てないけどいつかきっとお父さんみたいに強くなってみせるからね!」


側近「…私なんかを目標にしないでください。これから勇者は必要なくなりますし」


勇兄「えっ?」


側近「勇者や魔王が必要とされない争いの無い世界…それこそが前魔王様が必氏に追い求め、魔王様が受け継いだ長年の夢なのです」


側近「さっきの試合を見てわかるように私では恐怖による支配が精一杯です。ですが魔王様は違います」


側近「なのできっと魔王様ならこの夢を実現するはずです。そして貴方にもその夢を魔王様と一緒に見て欲しいのです」


勇兄「…なら俺は魔王を目標にすればいいの?」


側近「それだけはやめてください。貴方が駄目になってしまいます」


魔王「遠まわしにワシの悪口言うのはやめんか」

381: 2014/07/17(木) 00:33:18 ID:KYR0uD9o

側近「憧れを持つのは良い事です。ですが貴方はまず『強さ』を求める理由を見つけてください」


勇兄「強さを求める理由?」


側近「はい。どうして『強く』なりたいのか、そしてその『強さ』で何をしたいのか…それがわかった時、貴方は本当の『強さ』に近づけるはずですよ」


勇兄「…うん、わかった!まだ全然わからないけど頑張ってみるよ!」


側近「ふふふ、楽しみにしてますよ……では、少しだけ気絶してもらいますね」チリッ…


勇兄「えっ?」


バチッ!


勇兄「がっ!?」バタンッ


魔王「えー」

382: 2014/07/17(木) 00:35:01 ID:KYR0uD9o

スラりん「い、今の流れからいくと勇兄の『まいった』でお終いだったんじゃないの?」


側近「自分で負けを認めるのは相当悔しいですからね。厳しいようですがあえて私の手で負けさせました」


魔法使い「側近選手、雷魔法で気絶させ戦闘不能に!親子対決はやはり父親の勝利でした!」


側近「さて、すぐに目を覚ますと思いますし、勇兄を観客席に居る女騎士さんのとこまで運びますか」ヒョイ


側近(……知らないうちに随分と重くなりましたね。…今まで知ろうとしなかった私がいけないんですね)

383: 2014/07/17(木) 00:36:58 ID:KYR0uD9o

側近「…勇兄、私は貴方達に本当に辛い目にあわせてしまいました。出来るなら時間を巻き戻したいですが…さすがにそれは出来ません」


側近「ですので…これからその失った時間を全力で補っていくつもりです。その為にも……」チラ


魔王「………」


側近(魔王様には悪いですが…勝たせてもらいます)スタスタ



魔王「やっぱり側近が勝ちあがってきおったか……はぁ、側近にどうやって勝てと言うんじゃ」


スラりん「えっ?」

384: 2014/07/17(木) 00:38:03 ID:KYR0uD9o

____________________


勇兄「…ん……」


勇妹「お兄ちゃん!」


勇兄「……だから顔が近いって。このやり取り何回させるんだよ、まったく…」ムク


勇妹「ママ、お兄ちゃんが目を覚ました」


女騎士「そうか…お疲れ様、いい剣捌きだったぞ。よく頑張ったな」


勇兄「うん、負けちゃったけどね」


側近「勇兄…」


勇兄「あっ、お父さん!……何で正座してるの?」


側近「いえ、『最後のはやり過ぎだ』と勇妹と女騎士さんに説教されまして…」

385: 2014/07/17(木) 00:39:00 ID:KYR0uD9o

女騎士「わざわざ気絶させる必要はなかったからな」


側近「ですからそれは勇兄を思って―「言い訳はもう十分聞いた」


女騎士「しかし今回は勇者が間違ってる。今は黙って反省していろ」


側近「……わかりました」シュン


勇兄(お父さんが負けた…)


勇兄「ほ、ほらお母さん、俺は全然大丈夫だしお父さんも反省してるから許してあげてよ」


女騎士「…お前まで勇者の味方なんだな」


勇兄「えっ?」

386: 2014/07/17(木) 00:39:56 ID:KYR0uD9o

女騎士「勇兄に免じて許してやる。勇者、もうやめていいぞ」ムスッ


側近「それは有難いんですが…」


側近(勇妹、どうして女騎士さんの様子がおかしいんですか?)ヒソヒソ


勇妹(たぶんイジけてお父さんに嫉妬中…)ヒソヒソ


女騎士(私がこの子達に出来ることなんか洗濯と食事ぐらいだ。それも勇者が居れば私以上に完璧にこなすだろう。つまり…私は必要ないんだ)ズーン


勇兄「えっと…よくわからないけど元気だしてよお母さん。さっきの試合のアドバイスも貰いたいし」


女騎士「勇者にアドバイス貰えばいいだろ…」イジイジ


勇兄「嫌だよ。だってお父さんは俺の超えるべき目標で、俺の剣の師匠はお母さんだもん。だから俺はお母さんからアドバイスして欲しいんだ」


女騎士「……勇兄!」ダキッ

387: 2014/07/17(木) 00:40:44 ID:KYR0uD9o

女騎士「お前だけだ!私を必要としてくれるのは!」ギュウゥゥゥ


勇兄「ちょっ!?恥ずかしいから抱きつかないでよ~///」ジタバタ


勇妹「……ママ、私も常にママを必要としてる。今もママの力が必要。だから私にお兄ちゃんを!」ウズウズ


竜騎士「部外者だが私も必要としてるぞ。さあ、早く勇兄ちゃんをこっちに渡すんだ!」ウズウズ


女騎士「……いや、勇兄は渡さないぞ。そして竜騎士、貴様はさっさと自分の席に戻れ」


勇妹・竜騎士「」ガーン


側近(相変わらずですね竜騎士さんは…)

388: 2014/07/17(木) 00:41:55 ID:KYR0uD9o

側近「…ではそろそろ行きます。女騎士さん、ほどほどにしてくださいね。でないと私が嫉妬してしますし…」


女騎士「ああ、わかったよ(嫉妬されるのも悪くないな///)」パッ


勇兄「ふぅ…苦しかった」


側近「ではすぐに終わらせてきます」スタスタ


女騎士「ん?」



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393: 2014/07/24(木) 00:27:44 ID:jIQjHBxc

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魔法使い「皆さんお待たせしましたぁー!決勝トーナメントの覇者vsチャンピオンの戦いが今始まりまーす!」




勇兄「どっちが勝つかな?」ワクワク


勇妹「魔王様の方が実力は上。でもパパは魔王様の調教師。どちらにも勝つ可能性がある」


女騎士「だがさっき勇者は試合に行く前に『ではすぐに終わらせてきます』と言っていた。まるで勝利を確信しているみたいに…」


勇兄「何か秘策でもあるのかな?」

394: 2014/07/24(木) 00:29:46 ID:jIQjHBxc

魔法使い「必然と言えば必然!チャンピオンを決める戦いは勇者vs魔王の構図となりました!」


魔法使い「決勝トーナメントの覇者である、伝説の勇者の血を継ぐ勇者こと側近選手!主君である魔王ちゃんに勝つことが出来るのか!?」


側近(普通に戦えば私が魔王様に勝つなんて無理なんですけど……まぁ、私が勝つでしょうね)


魔法使い「そして第1回、第2回の大会で手加減してるのに他を寄せ付けず…てか強すぎて見てて面白くないからトーナメント出場禁止になってしまった魔物の王!チャンピオン魔王ちゃん!第3回でついに本気の魔王ちゃんが見れるのか!?」


魔王「…残念ながら無理じゃな」


魔法使い「そして運命の試合のゴングが…今鳴り響きました!!」


スラりん「本当は鳴ってないけどね」

395: 2014/07/24(木) 00:30:19 ID:jIQjHBxc

魔王「………」


側近「こんなことになってしまってすみません魔王様」」ペコ


魔王「ほんとだ…ワシにどうしろと言うんじゃ」


側近「全力で戦いましょう」


魔王「それが出来ないから困っとるんじゃ!!お前わかってて言っとるだろ!!」


魔王「なぁ…お前が棄権すればいいんじゃないか?」


側近「それは出来ません。本当はこうなることがわかっていたので決勝まで来たら辞退しようと思ってたんですが……私も叶えたいお願いが出来ましたので」

396: 2014/07/24(木) 00:30:54 ID:jIQjHBxc

魔法使い「えっと……もう試合は始まってるわよ?」


側近「ほら、魔王様。このままグダグダ続けても意味がありません。負けず嫌いの魔王様には辛いでしょうけど…仰ってください」


魔王「ぐぬぬ…」


魔王「……ま………」


魔法使い「ま?」


魔王「まいった!ワシの負けじゃ!」ガクッ


魔法使い「……えっ?」


スラりん「ま…まさかの敗北宣言!?」


魔法使い「い、意外すぎる試合の結末…一体どうしたのでしょうか?」

397: 2014/07/24(木) 00:32:03 ID:jIQjHBxc

勇兄「…ねぇ、どういうこと?」


勇妹「わからない…私もこれは予想外」


女騎士「後のお仕置きが怖くて手が出せないとかか?…いや、魔王が後のことを考えて行動するとは思えんし…」



ザワザワ


魔法使い「えっと…どうしてなの?会場の皆も呆気にとられてるし説明してちょうだいよ」


側近「実は…魔王様は私に手を出すことが一切出来ないのです」


スラりん「えっ!?そうなの!?」


側近「はい。以前一度だけ私に手を出した時があったのですが…――」

398: 2014/07/24(木) 00:32:46 ID:jIQjHBxc

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数十年前


側近「魔王様、何度言ったらわかるんですか?勝手に魔王城を抜け出してお菓子等を買わないでください」


魔王「う、うるさい!何を買おうがワシの勝手じゃろ!」


側近「お小遣いなら何も言いません。ですがそのお金は魔王軍の資金です。勝手じゃ済まされません」


魔王「じゃ、じゃが…」


側近「ハアァ!」ピッ!


魔王「うぐっ」ピタッ

399: 2014/07/24(木) 00:33:23 ID:jIQjHBxc

側近「魔王様には魔物の頂点に立ってらっしゃる自覚が足りないのです。いつまでも子供みたいに自由気ままに生きるのではなく、もう少し君主らしく…」ガミガミ


魔王(また始まった…側近の説教はいい加減聞き飽きたわい)


側近「魔王様…ちゃんと聞いていますか?」バチッ!


魔王「痛っ!?」


側近「はぁ…しっかりしてください魔王様。お願いですからこれ以上私に手を出させないでください…私だって身を削る思いで魔王様に罰を与えているんですよ」


魔王「…だったらやめんか!いつもいつも拘束しおって!本当はこんぐらいの拘束魔法などワシには効かんのだぞ!見ておれ!」ググググググ…


側近「ま、魔王様お止めください!それ以上魔力を込めては…!」

400: 2014/07/24(木) 00:34:33 ID:jIQjHBxc

魔王「うりゃあっ!!」グッ!


ズドオオォォォン!


側近「ぐっ!」ズザァァァ


魔王「フッ…どんなもんじゃ!」ドヤッ


側近「ま……魔王…さ……」バタンッ


魔王「えっ!?そ、側近!?」

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側近「――その後、私は三日ほど生氏を彷徨いました」


スラりん「手を出したっていうか氏ぬ寸前じゃん…」

401: 2014/07/24(木) 00:35:08 ID:jIQjHBxc

側近「その頃の魔王軍には僧侶さんほどの回復魔法のエキスパートも居ませんでしたし、完治までおよそ一ヶ月ぐらいかかりました」


魔王「ワシは自分の力を本気で呪った…危うく大事な部下を失うとこじゃったからな」


側近「魔王様は私が居ないと何も出来ませんから何度も謝ってきましたね。別に殺されかけたとはいえ、私が魔王様の下から去るなんてありえませんのに…」


魔王「そんなこと考えておらんかったわ!ただただお前に悪いと思って心から反省してたんじゃ…」



勇妹(前にお父さんを傷つけたって言ってたのはこのことだったんだ…)



スラりん「その時の事がトラウマになって勇者様に手を出せないってこと?」


魔王「うむ、ワシは側近を失ったら絶対に生きていけないからな」エッヘン

402: 2014/07/24(木) 00:36:06 ID:jIQjHBxc

側近「嬉しいお言葉ですが自信を持って仰らないでください。それに…いつか必ず別れは来るんですから」


魔王「何!?お、お前!ワシの下から居なくなるつもりなのか!?」


側近「さっきも言ったようにそれはありえません。ですが人間、動物、魔物…生きゆく全ての者には寿命があります。そして前にも言いましたが、私は必ず魔王様より先に氏んでしまいます」


側近「私が氏んだ後、魔王様はちゃんとこの世界の平和を維持し続けてられるのでしょうか?悲しみに明け暮れ、毎日お菓子ばかり食べて不健康な暮らしになってしまうのでは?…私は心配でなりません」


魔王「……心配いらん。大事な者を失う辛さはクソ親父で経験済みじゃ。それに…お前の息子や娘がワシの面倒をみると言ってるしな」


勇兄「うん!俺が魔王と一緒にこの世界の平和を守り続けるよ!」


勇妹「私が魔王様をパパ以上に調教する。任せて」


魔王「調教はやめんか」

403: 2014/07/24(木) 00:37:31 ID:jIQjHBxc

側近「……二人ならきっと魔王様のお力になれますね。これで私も安心できます」


魔王「安心するには早かろう。息子達の負担を減らす為にもこれからもしっかりとワシの世話するんじゃぞ」


側近「…はい。喜んでそうさせていただきます」


魔王「うむ」


側近「では…さっそく魔王様の教育を致しましょう」バチッ…


魔王「へっ?な、何故お前は雷魔法を放とうとしとるんじゃ?この試合はもうワシの負けで決着が着いとるじゃろ?」


側近「魔法使いさんはまだどちらが勝利か言ってませんよ」


魔法使い「あっ、そういえば忘れてたかも」


側近「魔王様が敗北を味わう機会は滅多にございませんので、それが棄権では勿体無いと思いまして」

404: 2014/07/24(木) 00:38:16 ID:jIQjHBxc

側近「それにチャンピオンを決める試合が棄権で終了では、さすがに観客の皆様にも失礼かと…」


魔王「なら何故ワシに『まいった』と言わせたんじゃ!?」


側近「それも魔王様の成長の為です。上に立つ者は敗北や自ら身を引くことも知らないといけません」


魔王「ならちゃんと身を引かせんかい!」


側近「それはそれ。これはこれです」


側近「では魔王様…敗北はこういうモノだと噛み締めながら負けてください」バチバチバチバチ!


魔王「このドSがぁぁ!!絶対に身を削る思いじゃないだろ!!」

405: 2014/07/24(木) 00:39:31 ID:jIQjHBxc

バリバリバリバリ!

ギャアアア~~~~~~!!
ガンバッテクダサイ、マオウサマ



魔法使い「…結局いつもと変わらないわね」


スラりん「うん」


30分後


側近「はぁ…はぁ…もう魔力が尽きてしまいました。ディアブロさんとの戦いで少し魔力を使いすぎたようですね」


魔王「」チーン


側近「では魔王様…まいったと仰ってください」


魔王「どこまでワシを虐めるつもりなんじゃ!?」ガバッ

406: 2014/07/24(木) 00:40:12 ID:jIQjHBxc

側近「虐めでも調教でもございません。これはあくまで教育です。先ほど許可をくださったじゃありませんか」


魔王「教育じゃなくて世話を頼んだんじゃ!ワシはもう教育など必要ない!」


側近「そうですか…なら安心ですね」


魔王「な、何が安心なんじゃ?」


側近「優勝して叶えて貰う私のお願いですよ。2年ぐらい休暇を貰おうと思ってます」


魔王「」


側近「そして家族4人でのんびり旅でもしながら、勇兄と勇妹の成長を見守りたいのです」

407: 2014/07/24(木) 00:41:07 ID:jIQjHBxc

魔王「そ、そんなこと許すわけなかろう!昔と違って今のお前は勇者の仕事もあるんじゃぞ!どうするんじゃ!?」


王「それは我々王国軍に任せれば良い。私達は今日まで勇者に頼り過ぎていた…彼ら(勇兄と勇妹)を悲しませていたのは他でも無い私達だ」


王「だからこれぐらいの我侭は聞いてあげるべきだ」


僧侶「もちろん魔王軍も協力するよ。皆には僕から伝えておくね」


側近「王様、僧侶さん…本当にありがとうございます」


魔王「ワ、ワシは反対じゃ!断固認めん!!」


ブー ブー
マオウチャン、ミトメテアゲロヨー!


魔王「うるさい!外野は黙っとれ!」

408: 2014/07/24(木) 00:41:47 ID:jIQjHBxc

魔王「だいたいお前はさっきワシの世話をすると言ったじゃないか!」


側近「ですので二日に一回は世話をしに魔王城に戻ります。私も魔王様が心配ですし」


魔王「それなら良い……はず無いじゃろ!ただでさえ勇者の仕事をするようになってから会う機会少なくなったというのに…」


側近「魔王様……例え離れていたとしても私は常に魔王様のことを思って…」


魔王「騙されんぞ!毎回そうやって言い包めおって!」


側近「この手は駄目ですか…成長しましたね魔王様。とても立派です」


魔王「じゃろ?」ドヤッ

409: 2014/07/24(木) 00:42:56 ID:jIQjHBxc

側近「私も部下として誇らしいです」


魔王「そうじゃろそうじゃろ」ドヤァァァ


側近「ここでお認めになられたら魔王様に一生ついていきます(元々一生ついていくつもりなんですけどね)」


魔王「うむ、よかろう!認めてやる!」


側近「…ありがとうございます魔王様」ペコ


魔王「……あっ」


スラりん「相変わらずチョロいなぁ…」


魔王「貴様計ったな!?」


側近「何のことでしょう?」

410: 2014/07/24(木) 00:43:54 ID:jIQjHBxc

魔王「ぐっ…こうなったら意地でもお前を勝たせん!攻撃は出来んが負けることも無かろう!」


魔法使い「さっきの『まいった』が有効だから試合は勇者様の勝利で決まりよ」


魔王「そうじゃった!」ガーン


魔法使い「一応ちゃんと言わないとね……魔王ちゃんの『まいった』宣言により側近選手の勝利でーす!」


魔法使い「そして優勝賞金の代わりに側近選手のお願いを何でも叶えちゃいます!さあ側近選手、あなたのお願いは何ですか?」


側近「私のお願いは…2年ぐらいでいいので家族と暮らす時間が欲しいです」


魔法使い「わっかりましたー!では後日休暇を承認する書類をお渡しします。もちろん王様と魔王ちゃんの判子付きのね」


魔王「ワシは絶対に認めん…認めんぞ!!」

411: 2014/07/24(木) 00:45:45 ID:jIQjHBxc

____________________


後日


魔王「―と言うことでワシもついていくぞ」


側近「駄目に決まってるじゃないですか」


魔王「ほれ、ちゃんと書類に王のサインもあるじゃろ?スラりんを魔王(仮)に任命し、魔王を自由にするって」


側近「…完全に魔王様の字です。偽装しないでください」


魔王「い…イヤじゃイヤじゃ!側近や勇兄達が居なくなるなんてイヤじゃ!!」

412: 2014/07/24(木) 00:46:58 ID:jIQjHBxc

魔王「勇兄!勇妹!お前達もワシとしばらく会えなくてさみしいじゃろ?」


勇兄「意外と平気だよ」


勇妹「私も」


魔王「この薄情もんがぁ!!」


勇兄「でも一緒でも良いとも思ってるよ」


魔王「ゆ、勇兄!」パアァ


女騎士「まぁ魔王も家族みたいなものだからな」


勇妹「うん。魔王様は私の弟」


魔王「そうじゃ!ワシは勇妹の弟じゃ!」


側近「いつから私達の息子になられたんですか…」ハァ

413: 2014/07/24(木) 00:47:58 ID:jIQjHBxc

女騎士「勇者、どうせ魔王は何を言っても言うこと聞かずに飛んでくるぞ。だったらある程度妥協して許しておいた方がいいんじゃないか?」


側近「…それもそうですね。わかりました、二日に一回私が魔王様に会いに行くので、魔王様も二日に一回私達に会いに来てください」


魔王「…どういうことじゃ?」


勇妹「つまりパパに毎日会えるってこと」


魔王「うむ、大賛成じゃ!それなら許してやろう!」

414: 2014/07/24(木) 00:49:30 ID:jIQjHBxc

女騎士「それじゃそろそろ出発するぞ。じゃあな魔王。元気でな…って言っても明日会うんだけどな」


勇妹「魔王様、行ってきます」フリフリ


勇兄「また明日ね~!」フリフリ


側近「それでは魔王様、行ってまいります」


魔王「うむ、気をつけるんじゃぞ」



Fin

420: 2014/07/25(金) 01:04:52 ID:OqZUq6Rw
おまけ1




勇者「ぐああああ!!」ズザァァァ


勇者「くっ…俺もここまでか」


側近「………去れ。命を無駄にするな」


勇者「…魔物に情けをかけられるとはな」


側近「情けなどではない……たんに私がお前を頃したくないだけだ」


勇者「お前みたいな魔物も居るんだな……何故お前みたいな魔物が魔王の下についているんだ?」


側近「それは……」

421: 2014/07/25(金) 01:05:35 ID:OqZUq6Rw

勇者「…ん?」


グチャ


サタン「……フン、汚らわしい人間め」


側近「なっ!?サ、サタン!何故頃したんだ!?」


サタン「こいつが人間で俺達が魔物だからだ。それ以上でも以下でもない。むしろ魔王様の命を狙いに来た人間を逃がそうとした貴様の方がどうかしてるだろ」


側近「くっ…!」


サタン「…そんなに人間を頃したくなかったら向こう側につけ。そうすれば俺が貴様を頃してやる」


側近「………」

422: 2014/07/25(金) 01:06:44 ID:OqZUq6Rw

「…サタン、そこまでにしておけ」


サタン「魔王様!」バッ


側近「………」バッ


初代魔王「今更そんな畏まんでいい」


サタン「…魔王様、人間共を皆頃しにする準備は既に整っています。そろそろ頃合いかと…」


初代魔王「そうか……おぬしはそれでいいと思っているか?」


サタン「はい、もちろんです。私はすぐにでもあいつらを皆頃しにした方がいいと思ってます」

423: 2014/07/25(金) 01:07:35 ID:OqZUq6Rw

初代魔王「うむ……おぬしの意見はわかった。だが…今はまだ待機させておけ」


サタン「っ!?し、しかし…!」


初代魔王「たしかにおぬしの言うとおり今人間側の拠点となっている王国を攻めればすぐに陥落させられるだろう…」


初代魔王「しかしこちら側も無傷では済まない。これ以上兵を…仲間を失うわけにいかないのだ」


サタン「…わかりました。部下達にも伝えておきます」


サタン(チッ、腑抜けが…)スタスタ

424: 2014/07/25(金) 01:08:11 ID:OqZUq6Rw

初代魔王「…側近よ。おぬしはどう思う?」


側近「…私は間違ってると思ってます。そしてそれは…魔王様も同じなのでは?」


初代魔王「……心を見透かすでない」


側近「今現在行われている人間との抗争も魔王様の意思では無いと私は思ってます」


初代魔王「……その通りだ。私はどうしても人間を憎むことが出来んのだ…」


側近「では何故こんな無駄な争いをなさってるのですか?」


初代魔王「…おぬし達には言ってなかったが、はるか昔…私がまだ若かりし頃、我々魔物と人間は仲良く共同生活をしていたのだ」


側近「!!そ、そんなことが…」


初代魔王「お互いに足りない部分を補いながら本当に仲良く平和に暮らしていた……私にも親友と呼べる人間の友もいた。よくそいつと月を見ながら酒を飲んだものだ…」

425: 2014/07/25(金) 01:08:54 ID:OqZUq6Rw

初代魔王「しかし…ほんの些細な事をきっかけに我々魔物と人間の間には大きな溝が出来てしまったのだ」


初代魔王「それから人間は共に過ごしてきた我々を忌み嫌い、刃を向けてきた。そして黙ってやられるほど我々は大人しい種族ではない……すぐに人間と魔物の抗争が始まった」


初代魔王「当時からまとめ役であった私は皆にやめるよう説得したが…友を、恋人を、家族を失った仲間達のことを考えるとどうしても止めることは出来なかった」


側近「魔王様……」


初代魔王「そして今日に至るまで私は心を鬼にして、仲間の為にも『魔王』となって人間達を頃してきた……親友もこの手で頃した」


初代魔王「今更引き返すことなど出来ないのだ。引き返すにはあまりにも多くの血が流れすぎたのだ」


側近「……ではサタンの言うとおり、いずれ人間を絶滅させるおつもりなのですか?」


初代魔王「ああ、そうするつもりだ…これ以上仲間を失わない為にも私が最前線に出て、この手で…人間達を抹頃する。これは必要悪なのだ」

426: 2014/07/25(金) 01:09:49 ID:OqZUq6Rw

側近「そうですか……」


初代魔王「……側近よ。私は間違っていると思うか?」


側近「…私にはわかりかねます」


初代魔王「そうか……ではその答えは保留にしておこう」


初代魔王「それともし私が選択を間違いそうになった時は…おぬしが正してくれ」


側近「……魔王様のご命令とあらば」バッ


初代魔王「うむ…頼んだぞ」

427: 2014/07/25(金) 01:11:31 ID:OqZUq6Rw

____________________


側近(魔王様はああ仰っていたが、私はやっぱり……)スタスタ


側近(……いや、今は魔王様を信じてついていくことにしよう)


ガチャ


側近「帰ったぞー」


息子「おう、おかえりー」モグモグ


側近「…お前、何を食っているんだ?」


息子「何って…親父が隠してたつまみだ。これ、おいしいな。また買ってきてくれ」モグモグ

428: 2014/07/25(金) 01:12:43 ID:OqZUq6Rw

側近「私の唯一の楽しみを取るでない!この馬鹿息子が!!」ボカッ!


息子「痛っ!な、何すんだ!このクソ親父!!」バキッ!


側近「ほぅ…少し痛い目に合わないとわからないらしいな…」ゴゴゴゴゴ


息子「いつまでも自分の方が強いと思うなよ…俺の強さはもう親父を超えている!」ゴゴゴゴゴ


バキッ! ドカッ! 
ズドォォォン!






近所に住む魔物(またか…あの親子が喧嘩すると大地が震えるんだよ…マジ迷惑)

429: 2014/07/25(金) 01:13:27 ID:OqZUq6Rw

____________________


息子「くっ……!」


側近「ど…どうした?私より強いんじゃないのか?」ゼェ ゼェ


息子「じ…自分だって肩で息をしてるクセに…!」ギリッ


側近「…なぁ息子よ。そこまでの実力があるんだ。そろそろお前も魔王様の下で兵士として働かないか?もう100歳超えたんだし…」


息子「えーめんどいー」


側近「はぁ…我ながらとんだ駄目息子に育ててしまったな」

430: 2014/07/25(金) 01:15:18 ID:OqZUq6Rw

息子「それより腹減ったー」


側近「人のつまみを食っておいてよく言えるな。自分で勝手に買って食え」


息子「お小遣いが尽きた」


側近「もうか!?あれだけ渡したのにもう使い切ったのかお前は!?」


息子「俺は我慢が嫌いだから欲しい物は全て買うんだ。お小遣いがすぐに無くなるのは当然だろ?」キリッ


側近「息子に殺意が湧いてきた」


息子「…なんてな。冗談だよ。プレゼント買ったら無くなったんだ。今日は親父とお袋の結婚記念日だろ?ほい、プレゼント」ポイッ


側近「お前……」


息子「ま、一応俺をここまで一人で育ててくれたし、少しは感謝してるんだぞ」

431: 2014/07/25(金) 01:15:50 ID:OqZUq6Rw

側近「ほんとに少しなんだな…プレゼントがチョコ板一枚って」


息子「もう少しあったんだが……今は俺の胃袋の中にある」


側近「…フッ、お前は全くブレないな」クスッ


息子「だろ?」ドヤッ


側近「いや、褒めてないから少しはブレてまともになってくれ」


息子「それより今日は全然張り合いが無かったんだが……何かあったのか?」


側近「負けといてよく張り合いが無いって言えるな…まぁ当たっているけど」

432: 2014/07/25(金) 01:16:32 ID:OqZUq6Rw

側近「…実は今日、魔王様がはっきりと明確に人間達を滅ぼすと仰ったんだ。あの御方は本当はそんなことしたくないと思ってらっしゃるのに…魔物の未来の為に自ら手を下すおつもりなんだ」


息子「ふ~ん…」


側近「…お前はどう思う?やっぱり人間達が憎いか?お前の母を頃した人間が…」


息子「んーん、全然」


側近「に、憎くないのか?」


息子「だってお袋を頃した奴は親父が頃したんだろ?ならもうそこで復讐は終わってるじゃんか。別に今生きてる人間達がお袋を頃したわけじゃないんだし、憎む必要性が全くないだろ?」


息子「逆に聞くけどお袋を頃したのが魔物だったら、親父は魔物を憎んで絶滅させるのか?」


側近「…しないな。頃した奴は許さないが…」

433: 2014/07/25(金) 01:18:00 ID:OqZUq6Rw

息子「そっ、憎む意味が無いってわけ。だから俺は人間ってだけで憎んだり頃したりしない。その労力が無駄、というより疲れるだけじゃん」


息子「親父だって本当はわかってるんだろ。だからお袋を頃した人間以外は一人も頃してないんだろ?」


息子「そもそも親父は優しすぎるんだ。俺との喧嘩だって手を抜いてるし、今まで本気で怒ったことあるのか?」


側近「…妻を殺された時ぐらいだな」


息子「俺が生まれてすぐじゃん。じゃあもう100年は怒ってないってことか」


側近「お前のダメダメっぷりに何度も本気でキレそうになったけどな」

434: 2014/07/25(金) 01:19:15 ID:OqZUq6Rw

側近「……でもまさか何も考えてないお前に気づかされるとは…」


息子「おい、俺は常に何か考えてるぞ」


側近「ほとんどが食うことだろ?」


息子「ぐぬっ」


側近「…息子よ、礼を言う。ありがとな、私は道を間違えるとこだった」


息子「へぇ~親父でも間違える時があるんだな」


側近「当たり前だ。私だってただの一匹の魔物だ。道(選択)を間違える時もある」


側近「そして……私もこれからある一匹の魔物が選んだ間違った道を正すつもりだ。それが…私の主君である魔王様の意志だから……」

435: 2014/07/25(金) 01:19:52 ID:OqZUq6Rw

____________________


翌日


側近「魔王様、昨日の答えが出ました」


初代魔王「……そうか」


側近「魔王様…やはり私は人間を滅ぼすことに反対です」


サタン「…血迷ったか側近よ」


側近「血迷ってなどいない…私は至って冷静だ。早くこの馬鹿らしい抗争を止め、少しずつでいいから人間達に歩み寄る…それが我々魔物が取るべき道だ」


サタン「……そうか。貴様はそこまで落ちぶれてしまったんだな。なら同士として…友として俺が貴様を頃してやる」ゴゴゴゴゴゴ


側近「サタン……」

436: 2014/07/25(金) 01:20:25 ID:OqZUq6Rw

初代魔王「やめろサタン。これは命令だ」


サタン「…いくら魔王様の命令でもこいつをこのままにしておくことは無理です」


初代魔王「誰もこのままにしておくとは言ってなかろう」


サタン「…ではどうするおつもりですか?」


初代魔王「…私が直々に罰を下す。お前は下がってろ」


サタン「…わかりました」スタスタ

437: 2014/07/25(金) 01:21:04 ID:OqZUq6Rw

初代魔王「さて……やるか」


側近「やはり私が止めなくてはならないんですね…」


初代魔王「ああ…自分で足を止めるには血が流れすぎているんだ。多くの部下達の想いを裏切ってまで止まるわけにはいかない…私はもう誰かに止めてもらうしか止まる方法が無いのだ」


初代魔王「……側近よ。私が無能なばかりお前に辛い使命を与えてしまってすまない」


側近「いえ…これが魔王様の意志ならば、私はその意志に従うまでです」


初代魔王「…私はお前のような部下が持てて幸せ者だな」


側近「魔王様…それは私の台詞です。今まで本当に……ありがとうございました」

438: 2014/07/25(金) 01:21:47 ID:OqZUq6Rw

____________________


ドオオォォォン!……



サタン「…終わったか」


ガチャ


サタン「……やはりこうなったか」





側近「はぁ…はぁ…」


初代魔王「ぐっ!……さ、最後の仕上げだ。さあ……私を殺せ」


側近「そ…それは出来ません。いくら魔王様の命令といえどもそれだけは絶対に出来ません」


初代魔王「ふっ、優しいお前では殺せないことぐらいわかっておる…少しだけからかっただけだ」

439: 2014/07/25(金) 01:22:54 ID:OqZUq6Rw

サタン「……魔王様」


初代魔王「おお、サタン。見てのとおりだ…私は側近に敗れた。私は魔王の座を降り、今からこいつが新しい魔お―グサッ!


初代魔王「がッ!?」


側近「魔王様!!」


サタン「笑わせるな…貴様以上の平和主義者であるこいつが魔王になったら、我々魔物は廃れてしまう。だから……魔王の座は俺が貰うぞ」ズボッ


初代魔王「ぐっ…!」バタンッ


側近「サ、サタン!!貴様ァ!!」ゴゴゴゴゴゴ


サタン「フン、魔王と戦って疲労しきった今の貴様では俺には敵わんぞ」ゴゴゴゴゴゴ


側近「頃す…頃してやる……コロシテヤルッ!」ギロッ


サタン「ッ!?」ゾクッ

440: 2014/07/25(金) 01:24:08 ID:OqZUq6Rw

サタン「…長年貴様と切磋琢磨してきたつもりだったんだが、その貴様は初めてみるな。久々に恐怖というものを感じたぞ…今の貴様はまるで全てを破壊する破壊神のようだ」


サタン「俺は貴様を少し見くびっていたようだ。悔しいが今の俺ではその状態の貴様には勝てそうにない……次に会う時まで魔王の座は貴様にくれてやる」


サタン「……またな、友よ。俺が頃しに来るまで元気でな」バサッ


側近「ニガスカァ!!」ボオォォォォ!


サタン「フンッ!!」バッ


ドオオォォン!!


サタン「俺の全力の爆発魔法が火炎魔法で掻き消されるとは……やはり今の貴様と戦うのは得策ではない。貴様の得意な拘束魔法に捕まる前に消えさせてもらうぞ…」スッ…

441: 2014/07/25(金) 01:25:00 ID:OqZUq6Rw

側近「ドコダァ!?ドコニイル!?」


初代魔王「む…無駄だ側近よ。既に爆煙に紛れて逃げおった」


側近「マ…魔王様!!」フッ


側近「だ、大丈夫ですか!?」


初代魔王「いや…心の臓を握りつぶされた。持ってあと十数秒だろう…ぐっ!」ガハッ


側近「サタンのヤツ…!」ギリッ


初代魔王「ふ、復讐に呑まれるでない…おぬしなら私よりも立派な魔王になれると信じてる。部下達を…頼んだぞ」


側近「魔王様…」


初代魔王「あぁ……我が親友よ。今そっちに行く。また月でも見ながら酒でも飲もう…ぞ…」


側近「…魔王様、向こうでもお元気で……」

442: 2014/07/25(金) 01:25:49 ID:OqZUq6Rw

ザッ


部下「そ、側近様!今しがたサタン様が魔王様を頃したと言って魔王城を去ったのですが…ま、魔王様は大丈夫なんですか!?」


側近「いや、魔王様はもう…」


部下「そ、そんな…」ガクッ


側近「……そんなんでは魔王様に笑われてしまうぞ。しっかりしろ」


部下「し、しかし…人間との抗争も膠着状態の今、魔王様が亡くなられたと皆に知れ渡ったら兵の士気は一気に落ち込んでしまいます」

443: 2014/07/25(金) 01:27:18 ID:OqZUq6Rw

部下「…側近様、これから私達はどうすればいいんですか?」


側近「…これからは兵などいらない。ゆっくりでいいからそういう時代を我々で築き上げていけばいい。それが…初代魔王様の意志だ」


部下「初代魔王様…?」


側近「ああ…これからは…」





二代目魔王「私が魔王だ」


______________________________

444: 2014/07/25(金) 01:31:02 ID:OqZUq6Rw

とりあえずおまけ1はこれでお終いです

二時間ぐらいで書いたんですが意外とレス数がありましたね
本編の最後の方なんて1週間でこのぐらいだったのに……


一応次から
側近→二代目魔王  息子→魔王子
でやっていきます

ではまた

447: 2014/07/27(日) 23:38:41 ID:EIy5PY56

おまけ2



初代魔王が氏んでから数十年

多くの血を流し続けてきた人間と魔物の抗争は魔物側の撤退により一時休戦状態となっていた

当初、ほとんどの魔物達が反発していたが…蓋を開けてみればまだお互いに手を取り合ってるわけでは無いが、人間にとっても魔物にとっても平和な時代が訪れていた

しかし…全ての者がそれを望んでいるわけではない



男「ぐっ…ぁ…」


??「………」チュウゥゥゥゥゥ

448: 2014/07/27(日) 23:39:54 ID:EIy5PY56

村人A「い、居たぞー!」


??「!…貴様らに安泰が訪れると思うなよ。毎日怯えながら生きるがいい…」バッ


コウモリ「キキッ!」バサバサッ


村人A「なっ!?マントの下からコウモリが…!」


バサバサバサ……


村人A「くっ…逃げられたか」


男「ぁ…」ピクピク


村人A「大丈夫か!?」


村人B「また血を吸われてたか…これで13人目だぞ」


村人A「くそっ!せっかく平和になってきたっていうのに、まだ俺達は魔物に怯えながら暮らさないといけないのか!?」

449: 2014/07/27(日) 23:40:44 ID:EIy5PY56

______________________________


スタッ


??「…運んでくれてありがとな、コウモリ達よ」


コウモリ「キキッ!」


??「さて…そろそろ次の村を襲うとするか」


コウモリ「っ!?キキーッ!!」バサバサバサバサ!


??「ん?コウモリ達がまるで逃げるように飛び去っていく……何かがここに来るのか?」


ヒュー…ン  
スタッ


??「高度な移動系魔法……貴様、何者だ?」


二代目魔王「私か?私は…魔王だ」

450: 2014/07/27(日) 23:41:23 ID:EIy5PY56

??「なっ!?何故魔王がこんなとこに!?」


二代目魔王「お前を止めに来たんだ…お前だな?次から次へと人間を襲っているのは…」


??「……ああ、そうだ」


二代目魔王「ふむ…見たところお前はまだ若い。なのに一人で行動している」


二代目魔王「……親を人間に殺された恨みってとこか」


??「…そうだ。貴様らが勝手に人間達と争っていたおかげで、俺達は何もしてないのに人間に襲われ……父さんも母さんも殺されたんだ!!」


??「それなのに貴様が抗争を止めてから父さん達を頃したアイツらは平和にぬくぬく生きているんだ!そんなこと許せると思うか!?」

451: 2014/07/27(日) 23:42:02 ID:EIy5PY56

二代目魔王「…お前の意見はもっともだ。勝手に争っていた私達が悪いし、争いをやめたからと言ってそれで生じた悲しみや憎しみを完全に消すことは出来ない…」


??「なら貴様が俺を止める道理はないはずだ」


二代目魔王「いや、私はお前を止める」


??「魔物の俺よりも人間の肩を持つのか!?」


二代目魔王「そんなんではない。私はただ…お前を救ってやりたいだけだ」


??「俺を救う?…俺は別に救いを求めなどない!」


二代目魔王「ああ…これは私のただの自己満だ。だからお前に拒否権もない」


??「力尽くってわけか…上等だ!!」バッ

452: 2014/07/27(日) 23:42:50 ID:EIy5PY56

______________________________


??「ぐっ…チ、チクショウ……」ゼェ ゼェ


二代目魔王「ふむ…筋はいい。しかし使う魔法の選択が間違っているな」


??「な…何?」


二代目魔王「お前は火炎魔法よりも水魔法や氷魔法の方が相性がいいはずだ…何故使わない?」


??「…使わないんじゃない。そんな魔法は教わってないから使えないんだ」


二代目魔王「そうか勿体無いな……ならどうだ?私が教えてやろうか?」


??「馬鹿なこと言うな!人間と仲良くしようとしてる貴様なんかに教わりたくないッ!」


二代目魔王「…いい加減その憎しみを脱ぎ捨てろ。そうすればきっとお前も変われるはずだ」

453: 2014/07/27(日) 23:43:22 ID:EIy5PY56

二代目魔王「憎しみを持つことが全て悪いとは言わない。それが生きる糧になる場合もあるからな」


二代目魔王「だがお前の場合は憎しみが悪い方向に作用している…まぁ正確に言うと憎しみではないがな」


??「うるさい!貴様に何がわかると言うんだ!?」


二代目魔王「……わかるさ。私も人間に妻を殺されたからな」


??「ッ!?」


二代目魔王「当時の私も憎しみに駆られ、妻を頃した人間をこの手で頃した。そして全ての人間を抹頃しようと心に誓ったんだ」


??「………」


二代目魔王「しかし私にはそれは出来なかった…妻を頃した者しか頃すことが出来なかった」

454: 2014/07/27(日) 23:44:18 ID:EIy5PY56

??「…何故だ?」


二代目魔王「私も自分の気持ちがよくわからなかった…だが、私の息子がその答えをいとも簡単にはじき出した」


二代目魔王「私は人間が憎かったわけじゃない…妻を頃した犯人が憎かっただけだ。人間という種族を憎むのはお門違いだと息子に気づかされたのだ」


??「…そんなの綺麗事だ」


二代目魔王「ならお前が頃した人間の家族はお前のことをどう思う?」


??「俺と同じように悲しみ、苦しみ、そして憎むだろう…それが俺が望むことだ」


二代目魔王「…ならその家族がお前と同じように魔物を憎み、お前とは別の魔物を頃したとしたらその魔物の家族はどうなるんだ?」


??「そ、それは……」


二代目魔王「…お前はこの世に憎しみをばら撒いてるだけだ」

455: 2014/07/27(日) 23:45:32 ID:EIy5PY56

二代目魔王「そしてもう一つ……お前は知らず知らずの内に親の愛情を探しているんだ」


二代目魔王「私は妻を失った…しかし私には息子が居た。だからそこまで憎しみに駆られることもなかった」


二代目魔王「だがお前は両親を失い一人になった……その悲しみは計り知れないものだ」


二代目魔王「今までお前が間違った道を進んでいても誰も正してくれなかった、正す者が傍に居なかった」


??「………」


二代目魔王「…だがそれも今日でお終いだ。これからは私がお前を正してやる。共に来い」


??「俺は……俺は!今までも、これからも一人で生きていくと決めたんだ!貴様の施しなどいらない!」


二代目魔王「ふむ…そうか。なら…無理矢理連れて行くかな」


??「なっ!?」

456: 2014/07/27(日) 23:46:17 ID:EIy5PY56

二代目魔王「さっきも言っただろ?これは私の自己満だと。お前に拒否権は無いとな」ヒョイ


??「や、やめろ!!離しやがれ!」ジタバタ


二代目魔王「少し静かにしてろ。飛んでる最中に落としてしまうだろ」ピッ!


??「ぐっ!?」ピタッ


二代目魔王「私の拘束魔法は強烈だろ?」ニカッ


??「く、くそぉ…」


二代目魔王「…お前は私以上に優しい奴だ。本当は人間を憎んでないんだろ?」


二代目魔王「だってお前は…今まで誰一人として頃してないんだからな」


??「………」

457: 2014/07/27(日) 23:47:50 ID:EIy5PY56

二代目魔王「お前は親を失った悲しみをどこにぶつければいいのかわからなかった…だから人間にぶつけていただけだ。別に憎くて人間を襲っていたわけではない」


??「そんなことは……」


二代目魔王「無いと言えぬだろ?これからはお前ももっと自分の気持ちに素直になって生きろ」


二代目魔王「それがお前が出来る最高の親孝行だ。きっと親御さんもそれを望んでいるはずだ」


??「…余計な……お世話だ」ポロポロ


二代目魔王「じゃあ出発するぞ…飛べば目を擦る必要も無いし、下に落ちても雨と思われるだけだ。だから…遠慮せず泣いていいぞ」


??「な、泣いてなどいない!!」


二代目魔王「そうかそうか。わかったから背中に鼻水を垂らすのだけはやめてくれよ」クスッ


??「くっ…!こうなったらいっぱい垂らしてやる!!」


二代目魔王「やめろって言ってるだろ!まったく…馬鹿息子みたいなこと言うんじゃない」

458: 2014/07/27(日) 23:48:55 ID:EIy5PY56

二代目魔王「……そういえばお前の名をまだ聞いてなかったな。何て言う名だ?」


??「……ヴァンパイア」


二代目魔王「そうか…良い名を両親に貰ったな」


ヴァンパイア「……ああ」


二代目魔王「これからは私がお前の親代わりになってやるからな。遠慮せず父さんと呼んでいいぞ」ニカッ


ヴァンパイア「…俺にとって父は父さんだけだ。だから父さんとは呼べない」


二代目魔王「そうか…」


ヴァンパイア「でも……ありがとな、魔王」ニコ


______________________________

459: 2014/07/27(日) 23:50:12 ID:EIy5PY56

おまけ3 




二代目魔王「竜の騎士?」


ヴァンパイア「はい。我々と同じような志を持った気高き戦士が、人間を襲う魔物達を次々と打ち負かしてるそうです」


二代目魔王「ふむ……面白い。よし!ヴァンパイアよ、さっそく会いに行くぞ」


ヴァンパイア「駄目です。いい加減大人しくしてて下さい」


ヴァンパイア「私を含め部下はたくさん居るというのに全てご自分で問題を解決してしまわれたら私達の立場がありません」


二代目魔王「しかし私は部下を危険な目に合わすことがどうしても出来ない…なら私が自ら出向くしか無かろう」

460: 2014/07/27(日) 23:51:14 ID:EIy5PY56

ヴァンパイア(はぁ…魔王様は優し過ぎる。その優しさがご自身を傷つけているというのに…)


二代目魔王「それに今回は危険では無いだろ?竜族の血を引く者は珍しいし、我らと同じ考えを持つなら一度会っておいた方がよいはずだ」


ヴァンパイア「…わかりました。ではすぐにその『竜の騎士』の居場所を特定いたします」


二代目魔王「うむ……ちなみに最後にその『竜の騎士』が現れたのはどこだ?」


ヴァンパイア「魔王様……お願いですからそれまで絶対に待機しててくださいね」


二代目魔王「わ、わかっておる!ちなみに聞いてみただけだ!」


ヴァンパイア「…十日ほど前は砂漠で見かけたらしいのですが、先日近くの雪山で暴れる魔物達を鎮圧してますので、一定の場所に滞在しない方のようです」


二代目魔王「雪山か…私の移動魔法なら一瞬だな」


ヴァンパイア「ま、魔王様!!」

461: 2014/07/27(日) 23:52:30 ID:EIy5PY56

二代目魔王「冗談だ。それより…あの馬鹿息子はどこ行った?あいつも呼んでいたはずだが…」


ヴァンパイア「それが…また逃げ出してしまいました」


二代目魔王「はぁ…ほんと駄目息子だな、あいつは」


ヴァンパイア「私の監督不届きです…すみません」


二代目魔王「お前のせいではない。そもそもお前は一応あいつの弟ということになっているんだし」


ヴァンパイア「ですから私なんかが魔王様の息子なんて恐れ多いです。私と魔王様の関係はあくまで主従関係ですので…」


二代目魔王「お前も頑固だな…まぁよい。お前がどう思おうと私やあの馬鹿息子はお前のことを家族だと思ってるからな」


ヴァンパイア「……ありがとうございます」

462: 2014/07/27(日) 23:53:46 ID:EIy5PY56

二代目魔王「本当は側近の仕事もさせたくないんだが…お前がどうしてもと言うからやらしてるんだぞ」


ヴァンパイア「……息子なら父親の仕事に憧れるものですよ」ボソッ


二代目魔王「ん?何か言ったか?」


ヴァンパイア「いえ、何でもございません」


息子(以下魔王子)「おーい帰ったぞー」スタスタ


ヴァンパイア「魔王子様!どこに行かれてたんですか!?」


魔王子「ちょっとだけ外を散歩してただけだ。それより親父に客だぞ」


二代目魔王「客?」


竜騎士「…お前が魔王様か」

463: 2014/07/27(日) 23:54:37 ID:EIy5PY56

ヴァンパイア「なんとお美しい!どこかの王女様でしょうか!?」


竜騎士「……なんだこいつは?」


魔王子「あーシカトしていいぞ。そいつは女性なら誰にでも同じことを言うんだ」


ヴァンパイア「失礼な!微妙にニュアンスは変えてますよ!」


二代目魔王(……また私は息子の育て方を間違えてしまったみたいだな)


ヴァンパイア「さあ見知らぬ王女様、あなたの為にバラを摘んでまいりましたので受け取って下さい」サッ


二代目魔王(摘んできたって…今氷魔法で作っただけじゃないか)

464: 2014/07/27(日) 23:55:22 ID:EIy5PY56

竜騎士「………」つバラ


ヴァンパイア「バラを受け取った…つまり私の愛を受け取ったってことですね!では私の…いえ、私達の愛の巣へご案内します!」


竜騎士「ガアァァ!」ボウゥッ!


ヴァンパイア「わ、私の愛がぁああ!?」


魔王子「溶けて水になったな」


二代目魔王「口から火球を吐けるとは…竜族の者か?」


竜騎士「ああ…私は『竜の騎士』。名は竜騎士だ」


二代目魔王「竜の騎士!?そうか…まさか噂の竜の騎士が女性だったとは思わなかったな」

465: 2014/07/27(日) 23:56:26 ID:EIy5PY56

竜騎士「…女が騎士をやっていて何か問題でもあるのか?」


二代目魔王「いや、何も問題無いぞ。女性だって戦う理由ぐらいある」


二代目魔王「まして人間を襲ってる魔物を打ち負かすということは…あの抗争で何か大切なモノを失ったのだろう」


竜騎士「……その通りだ」


二代目魔王「…これ以上深くは聞かない。女性の方が男よりも愛情が深い…その分失った時の悲しみもより深くなるからな」


竜騎士「…部下と違って女との接し方がわかってるんだな」


二代目魔王「まあな。亡くなった妻に嫌ってほど『あんたは無神経だ』って怒られたからな」


二代目魔王「それより私に何か用か?」


竜騎士「抗争を止めた後も反発する者達を無理矢理力で押さえつけている魔王様に一度会っておきたかったんだ……思ってた以上にお人好しそうだ」


二代目魔王「そうか?」

466: 2014/07/27(日) 23:57:14 ID:EIy5PY56

竜騎士「……では魔王様、私はこれからも人間と魔物の抗争が起こらないよう努力するつもりです。今日は遅くなりましたがその許可を貰いに来ました」


二代目魔王「そんな畏まらんでよい。それと許可を取る必要も無い。今まで通り頑張るがよい」


二代目魔王「しかし…一つだけ提案してもよいか?」


竜騎士「何でしょうか?」


二代目魔王「目指すモノが同じなら一人でやるより皆でやった方がよいだろ?」ニカッ


竜騎士「…フッ、そうですね」


ヴァンパイア「大賛成です!その方もぜひとも我が魔王軍に入団してもらいましょう!」


竜騎士「魔王軍?」


ヴァンパイア「人間との抗争を再び起こさせない為に、心優しき魔王様の下に集った軍隊のことです」

467: 2014/07/27(日) 23:58:01 ID:EIy5PY56

魔王子「表向きは、だろ?」


ヴァンパイア「そ、そうですけど…」


竜騎士「…じゃあ裏向きは何なんだ?」


ヴァンパイア「実は…」


ザッ


部下「ま、魔王様!魔国でまたサタンの手下が暴れています!」


二代目魔王「なに!?」


ヴァンパイア「被害状況は!?」


部下「民家が燃やされ、一般の民の氏傷者は数十名かと…」


ヴァンパイア「くっ…!酷いことを!」

468: 2014/07/28(月) 00:00:18 ID:ElMJnqgs

竜騎士「サタンとは一体誰だ?」


魔王子「親父の昔の同僚で、初代魔王を頃した張本人だ。今は人間や平和ボケしてる魔物を無差別に頃し回ってるみたいだぞ」


二代目魔王「あの馬鹿……今度という今度は許さん!部下もあいつも全員……コロシテヤル!」ゴゴゴゴゴゴ


ヴァンパイア「ま、魔王様!!落ち着いてください!!」アセアセ


竜騎士「な、何なんだこれは!?」


魔王子「あーまたキレてしまったか。昔は全くキレなかったんだけどなぁ~」

469: 2014/07/28(月) 00:02:08 ID:ElMJnqgs

魔王子「…やっぱり同族を力で抑えることすら親父にとっては苦痛なんだろう。要するにストレスだな」


ヴァンパイア「冷静に解説してないで止めてください!!」


魔王子「それは魔王軍の仕事だろ?俺、魔王軍に入ってないしめんどいからパス。頑張れよ弟よ」


ヴァンパイア「この馬鹿兄貴ィィイ!!」


魔王子「そういうことで…ほれ、お前の初仕事だぞ。魔王軍の仕事はあのクソ親父を止めることだ」スタスタ


竜騎士「ええっ!?」


ヴァンパイア「くっ…魔王様!少しだけ我慢してください!ハアァァ!!」


二代目魔王「ウ?」パキパキパキ…


二代目魔王「」カチーン!


竜騎士「おおっ!氷魔法で凍らせて止めたのか!」

470: 2014/07/28(月) 00:03:30 ID:ElMJnqgs

ヴァンパイア「……これぐらいで止まってくださると本当に嬉しいんですが…」ウルウル


竜騎士「えっ?」


二代目魔王「……ウガアア!!」バリーン!


竜騎士「余祐で出てきたぁー!?」


ヴァンパイア「くっ…二人で全力で止めるしかなさそうですね」


竜騎士「…そうするしかなさそうだな」チャキッ


ヴァンパイア「…もしやこれが初めての共同作業!?」


竜騎士「黙って集中しろ!!」

471: 2014/07/28(月) 00:04:40 ID:ElMJnqgs

______________________________


魔王子「おーい終わったかー?」


ヴァンパイア「な、何とか…」ゼェ ゼェ


竜騎士「私はとんでもない方の部下になってしまったみたいだな…」ゼェ ゼェ


二代目魔王「す、すまない…また迷惑を掛けたみたいだな」ズーン


ヴァンパイア「い、いえ…気にしないでください魔王様。稽古をつけてもらってただけです…」


竜騎士「よくそんなこと言えるな……お前って凄いな」


ヴァンパイア「惚れ直したかい?」キラン


竜騎士「直すも何も最初から惚れてないぞ」

472: 2014/07/28(月) 00:05:26 ID:ElMJnqgs

魔王子「親父、いい加減少しは部下を頼ったらどうだ?何でもかんでも自分だけでやってるとキレやすくなるだけじゃなく早氏にするぞ」モグモグ


二代目魔王「何だ珍しく私の心配をしてくれてるのか?てかお菓子を食いながら喋るな。行儀悪いだろ」


ヴァンパイア「あっ、私達が氏に物狂いで魔王様を止めてる間にまた勝手にお菓子を買って………ま、まさか魔王子様、魔国に行ったんですか?」


魔王子「うむ、お菓子を買うついでに魔国で暴れてた馬鹿共も半頃しにしてきてやったぞ」


ヴァンパイア「魔王子様…ありがとうございます」ペコ


二代目魔王「すまんな、お前にまで迷惑を掛けてしまって…」シュン


魔王子「だからお菓子を買うついでだって言っただろ。一々落ち込むな」

473: 2014/07/28(月) 00:06:55 ID:ElMJnqgs

魔王子「ホント最近の親父は俺よりダメダメだな」


二代目魔王「……そんなにか?」


ヴァンパイア「…はい。魔王子様とはベクトルが違いますが」


二代目魔王「そうか…」


ヴァンパイア「…魔王様のお考えはとても素晴らしいことだと思います。ですが魔王子様の言うとおり、このまま心を鬼にして自ら反発する者達を鎮圧し続けるのは無理があります」


ヴァンパイア「お優しい魔王様では心が先に根をあげてしまいます。お願いです魔王様…私達をもっと頼ってください」


二代目魔王「しかし…」


ヴァンパイア「部下達に怪我などさせません。その為に我々は日頃から鍛錬をしているんですから…」


魔王子(本当は親父を止める為だろうに…)

474: 2014/07/28(月) 00:08:59 ID:ElMJnqgs

竜騎士「…せっかく皆魔王様を慕って集まったんだ。ならそいつらを信じてやるのも魔王様の責任だ」


二代目魔王「だが…」


魔王子「」イラッ


魔王子「『しかし』とか『だが』とかうるさい!これは今多数決で決まったんだ!もう親父に決定権は無い!」


魔王子「ヴァンパイアが魔王軍の軍団長で、竜騎士がその補佐をすれば親父の負担も被害も大分抑えられるはずだろ?」


ヴァンパイア「私は魔王様の側近ですので軍団長までやるのはちょっと…」

475: 2014/07/28(月) 00:09:58 ID:ElMJnqgs

魔王子「じゃあ竜騎士が軍団長で、ヴァンパイアはその補佐ぐらい出来るか?」


ヴァンパイア「はい。竜騎士さんもそれでいいですね?」


竜騎士「今日入団したばかりの新参者なんだが…本当に私でいいのか?」


ヴァンパイア「もちろんさ!夫婦二人で頑張ろう!」


竜騎士「やはり私一人だけでいい」


ヴァンパイア「そんなこと言わず二人ならどこまでも、何でも出来るはずさ!さあ、二人手を取り合って明るい未来へ駆け出そうではないか!!」スッ


竜騎士「………ガアァ!!」ボウゥッ!


ヴァンパイア「熱っ!?て、手が燃えてるぅぅう!?」


魔王子「ガハハハ!早く水魔法で消さんと手が焼け落ちるぞー」

476: 2014/07/28(月) 00:10:57 ID:ElMJnqgs

二代目魔王「………」


竜騎士「…まだ心配なのか?安心しろ。私は魔王様達と違ってまともだから部下達を一人も氏なせたりしない」


魔王子「まるで俺がまともじゃないみたいな言い方だな」


ヴァンパイア「ハッキリ言ってまともじゃありませんよ」


魔王子「お前もな」


二代目魔王「……わかった。私の負けだ。ヴァンパイア、竜騎士……部下達を頼んだぞ」


竜騎士「はっ!」バッ


ヴァンパイア「お任せください魔王様!」バッ

477: 2014/07/28(月) 00:12:11 ID:ElMJnqgs

魔王子「さて、一件落着だな」


ヴァンパイア「魔王子様は魔王軍に入ってくださらないんですか?」


魔王子「これからは親父を止める機会も少なくなるだろうし俺は必要ないだろ。何よりめんどい」


魔王子「それに俺には魔王城の警備という重要な役目があるからな!」ドヤッ


二代目魔王「お前は本当にブレないな」


竜騎士「やっぱり皆まともじゃないな」クスッ


ザッ


部下「ま、魔王様…」


二代目魔王「…今度は何だ?またサタンの奴がしでかしたのか?」ピキッ


ヴァンパイア「ま、魔王様またですか!?」アセアセ

478: 2014/07/28(月) 00:13:26 ID:ElMJnqgs

部下「い、いえ…恥ずかしながら魔王城を見学させていた私の子供達が迷子になってしまって…」


竜騎士(子供達!?)ピクッ


魔王子「何だそんなことか」


ヴァンパイア「…はぁ、脅かさないでくれ」ホッ


二代目魔王「それは一大事だな。私もすぐに探すとしよう」


竜騎士「いえ、魔王様がするほどのことではありません」


ヴァンパイア「そうですよ。ここは私達にお任せを」


竜騎士「いや、ここは私一人でいい。そうじゃなきゃ駄目だ。子供といったら私だろ?」


ヴァンパイア「ん?」

479: 2014/07/28(月) 00:14:35 ID:ElMJnqgs

竜騎士「おい、その子供達ってのは可愛いのか?」


部下「えっ?」


竜騎士「どうなんだ?」


部下「あっ、容姿ですか。まだ幼いですので身長はだいたい私の膝丈ぐらいで、少し獣人の血が入ってて狼耳があります。息子も娘も私に似ずとても可愛いんですよ。親バカですかね」ハハハ


竜騎士「なるほど…兄妹か。ま、シOタも口リもいける私に氏角はないがな」


魔王子「ん?」


竜騎士「ではすぐに二人をペロpr…見つけてまいります!」ジュルリ


二代目魔王「(ペロ?)う、うむ…よくわからないが涎を拭いてから行った方がいいぞ」

484: 2014/07/29(火) 21:53:59 ID:oT5qHxK6

______________________________


おまけ4  





ヴァンパイア「魔王様、エルフ達が人間達と一緒に海辺沿いに新しい町を作ったそうで、その町にぜひ魔王様を招待したいと言っておりますが…」


二代目魔王「そうか……だが私が人間の前に出ると色々と問題が生じるだろう」


ヴァンパイア「ですからエルフ達も人間達に魔王様のお考えを知ってもらう為に魔王様を招待しようとしているんです」


ヴァンパイア「エルフ達の言葉だけでは魔王様が人間に敵意を持っていないことを信じてもらえませんし、もしかしたらこれをキッカケに人間と魔物の交流がもっと盛んになるかもしれませんよ?」

485: 2014/07/29(火) 21:55:22 ID:oT5qHxK6

二代目魔王「……いや、まだ距離をつめるには早すぎる。反乱が完全に治まってからまだ100年しか経っておらんとこに私が行っても、人間達に恐怖を植え付けエルフ達との関係を悪化させるだけだ」


ヴァンパイア「それは少し考えすぎではないでしょうか?」


二代目魔王「これでよいのだ……ヴァンパイアよ、支援はするが招待は辞退させてくれと向こうに伝えてくれ」


二代目魔王「…あと私は少し休む。お前も今日はもう私の部屋に入ってこなくてよい」


ヴァンパイア「……わかりました」

486: 2014/07/29(火) 21:57:02 ID:oT5qHxK6

______________________________


ヴァンパイア「はぁ……」


竜騎士「…まだ魔王様は引きずってるのか?」


ヴァンパイア「ええ…もうすぐあれから100年になるというのに…」


竜騎士「サタンを頃したことで反発していた魔物達も皆、魔王様の力に畏怖し反乱行動を控えるようになったというのに……」


ヴァンパイア「敵対していたとはいえサタンは魔王様にとって旧知の友。その友を自らの手で頃した…」


ヴァンパイア「それによって得た物も大きいが、魔王様の心にも決して消えない大きな傷が残ってしまったのだろう…」

487: 2014/07/29(火) 21:57:59 ID:oT5qHxK6

竜騎士「……魔王子様は帰ってきたか?」


ヴァンパイア「…いえ」


竜騎士「そうか…魔王子様が家出してから今日で三日目。そろそろ腹を空かして帰ってくる頃だと思ったんだが…」


ヴァンパイア「あの大喧嘩からもう三日か……魔王子様はよほど今の魔王様の状態が気に食わないのだな…」


竜騎士「こんな時こそ傍に居てやるのが家族なのにな…」


ヴァンパイア「きっと本当の家族だからこそ今は一人にした方がいいと判断したのさ。『何かキッカケが無い限りあのクソ親父は元に戻らん』と仰ってましたし…」


竜騎士「キッカケか…」

488: 2014/07/29(火) 22:00:15 ID:oT5qHxK6

ヴァンパイア「……私と君とで子供を作るのはどうだろうか?」


竜騎士「…殺されたいのか?」ギロッ


ヴァンパイア「ほ、本気で怒らないでくれ!じょ、冗談だから!」アセアセ


竜騎士「…お前には言ったはずだよな?私はもう…子供を産むことが出来ないって」


ヴァンパイア「あっ……す、すまない!私としたことが…君を深く傷つけてしまった」ズーン


竜騎士「お前もかなり無理してるみたいだな…魔王様があんな状態じゃ無理もないか」


ヴァンパイア「何とか魔王様のお力になりたいのだが……所詮は拾われた身である私ではあのお方のお力になることは出来ないんだ…」

489: 2014/07/29(火) 22:01:07 ID:oT5qHxK6

竜騎士「……そんなことないさ。魔王様が今も完全に壊れてないのは傍でお前が支えてやってるおかげだ。お前は十分過ぎるほど魔王様の力になってるはずだ」


ヴァンパイア「……ありがとう。その言葉で私は救われたよ……どうやら私はまた君に惚れてしまったみたいだ」


竜騎士「マジ勘弁。頼むから早く別の奴とくっ付いてくれ。魔国なら良い女が結構居るぞ」


ヴァンパイア「フッ…この辺りに住む美しい女性達は全員既に告白済みなのさ」


竜騎士「……結果は?」


ヴァンパイア「…おっと、目にゴミが……」ウルウル


竜騎士(惨敗か…)

490: 2014/07/29(火) 22:02:20 ID:oT5qHxK6

ヒュー…ン
      スタッ


ヴァンパイア「あっ、魔王子様!やっとお戻りになられたんですね!」


魔王子「う、うむ…」


ヴァンパイア「…どうかなされたんですか?」


魔王子「じ、実はな……ワシだけではどうしようもない問題が起きてしまってのぅ…」


オギャー!


竜騎士「むっ、子供の声!?しかもこれは…生後一週間ぐらいの赤ちゃんの泣き声だ!」


ヴァンパイア「ま、まさか魔王子様……」


魔王子「ははは……」

491: 2014/07/29(火) 22:03:36 ID:oT5qHxK6


==
=====
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スタッ


サタン「久しぶりだな側近よ…いや、今は魔王か」


二代目魔王「サ、サタン!?」


サタン「遅れて悪かったな。約束通り魔王の座を貰いに来たぞ」


二代目魔王「…相変わらずだな。長らく私の前に現れなかったからもう改心したと思ったぞ」


サタン「思った以上に魔物達が腐っていてな。兵を集めるのに苦労したのさ」

492: 2014/07/29(火) 22:04:40 ID:oT5qHxK6

ザッ


ヴァンパイア「ま、魔王様!魔王城に反乱軍が攻めてきました!」


二代目魔王「知っておる…既にそのトップが攻め込んできてるからな」


ヴァンパイア「なっ!?ま、魔王様!私も加勢します!」


二代目魔王「やめろ!邪魔になるだけだ!」


サタン「その通りだ。貴様のような小童では俺達の戦いに割り込むことすら出来ん」


サタン「それより早く下に行った方がいいぞ。俺の息子ディアブロは限度という物をしらんからな」


ヴァンパイア「くっ…!」

493: 2014/07/29(火) 22:05:30 ID:oT5qHxK6

二代目魔王「ヴァンパイアよ…おそらく下で馬鹿息子も戦ってるはずだ。あいつが暴れだす前にお前が止めろ。じゃないと部下達もろとも城が壊れてしまう」


ヴァンパイア「……わかりました。魔王様……どうか氏なないでください」


二代目魔王「…わかっておる」


タタタタタタッ


サタン「…貴様にしては優秀そうな部下を持ったな」


二代目魔王「部下ではない。私の息子だ…馬鹿じゃない方のな」


サタン「孤児か。ま、そんなことどうでもいい…早くヤルゾ」ゴゴゴゴゴゴゴ


二代目魔王「私はお前も救ってやりたいのだが……」

494: 2014/07/29(火) 22:06:32 ID:oT5qHxK6

サタン「無駄だ。俺に何を言おうと貴様みたいには絶対にならん。魔物は魔物らしく暴れてるぐらいが丁度いいんだ」


二代目魔王「なら人間を頃す必要はないだろ!喧嘩相手なら私がしてやるというのに何故お前は人間を殺そうとするんだ!?」


サタン「特に理由など無い。目障りだから頃す。それだけだ」


サタン「本来俺達魔物はそういう種族だろ?欲しい物は力で勝ち取り、気に食わない者は力でねじ伏せる。まぁ、貴様らのような腑抜けた魔物には理解できんだろうな…」


二代目魔王「……ああ、さっぱり理解できん」


サタン「なら争うしかなかろう…さあ、楽しい頃し合いの始まりだァ!」


二代目魔王「………このワカラズヤガァ!!」

495: 2014/07/29(火) 22:09:00 ID:oT5qHxK6

______________________________


グサッ


サタン「ぐっ!」


二代目魔王「はぁ…はぁ……お、お終いだサタン」ズボッ


ドサッ


サタン「…フッ、およそ50年…全てを貴様を頃す為に費やしてきたんだが…やはり本気になった貴様には敵わんか」


サタン「さすがだ…貴様は昔からいつも俺の一歩先を行く…」


二代目魔王「私だってこの平和を維持する為にずっと力をつけてきた。お前だけが成長してると思うな」

496: 2014/07/29(火) 22:10:03 ID:oT5qHxK6

サタン「平和を維持、か。無駄なことを……」


サタン「我々は争いを好む種族。いくら力で押さえつけても完全に押さえつけることなど出来ん。いつか必ず爆発するぞ……ぐっ!」ゴフッ


二代目魔王「………」


サタン「はぁ…はぁ……そ、その爆発を止めることが貴様に出来るのか……あの世で見ていてやるよ」


二代目魔王「……サタン、すまない」


サタン「フン……最後まで…気に食わん奴…だ……」


二代目魔王「私は……サタンを…友をこの手で…」

497: 2014/07/29(火) 22:11:25 ID:oT5qHxK6

====================
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=====
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二代目魔王「ぐ……っ!」ガバッ


二代目魔王「はぁ…はぁ……ま、またあの夢か」


二代目魔王(…手加減すれば私が殺されていた。だから本気になるしかなかった……その結果がこれだ。私はこの手で友を……頃した)


二代目魔王(いつかはこうなるとわかっていた。魔王になった時から決心していた。しかし……友の氏がこれほどとは…)

498: 2014/07/29(火) 22:13:20 ID:oT5qHxK6

二代目魔王(…初代魔王様が抗争を止めなかったのもこれが理由だったのか。既に人間の友を頃した初代魔王様にとって、残された仲間達を頃してまで抗争を止めるという選択肢は最初から無かったんだ…)


二代目魔王(魔王様…友を頃してまで手に入れたこの平和もいつか壊れてしまうかもしれないのに……私はこの先この手で何を掴んでいけばいいのですか?)


二代目魔王(うっ!)ズキッ


二代目魔王(……いや、もう私には何かを掴む時間すら残されていない)


赤ちゃん「zzZ」スヤスヤ


二代目魔王「ん?…な、何故こんなところに人間の赤ん坊が!?」


魔王子「やっと気がついたか。随分とうなされておったな」


二代目魔王「む、息子よ!この子供はどうしたんだ!?」


魔王子「拾った」


二代目魔王「」

499: 2014/07/29(火) 22:14:05 ID:oT5qHxK6

魔王子「いやー家出したはいいがワシ一人じゃ何も出来んことに気がついてな。二日間ふて寝した後、帰ろうと思った時にその子供が川で流されておって拾ったんじゃ」


二代目魔王「犬や猫を拾ってくる感覚で人間の子供を拾ってくるでない!」


魔王子「しょ、しょうがなかろう!最初桃が流れてきたと思って間違ってかぶりついてしまったんじゃから!」


二代目魔王「かぶりついたのか!?だ、大丈夫か?お前怪我はないか?」アセアセ


魔王子「回復魔法で治したから心配ないぞー」


二代目魔王「…お前って奴はどうしてそんなに馬鹿なんだ!!」


魔王子「なっ!?馬鹿とはなんじゃ!捨て子を拾って何が悪い!!」


二代目魔王「悪すぎるわ!まず捨て子じゃないかもしれんだろ!近くの村で誤って川に落ちてしまったとか…」

500: 2014/07/29(火) 22:15:33 ID:oT5qHxK6

魔王子「もちろん近くにあった村に寄ってこの子供のことを聞こうとしたが……誰もワシに近づこうとせんかった」


二代目魔王「当たり前だ。お前みたいな老け顔の魔物がいきなり現れたら誰だってビビって逃げるわ」


魔王子「今タブーを言いおったな!!この10年で一気に老けたんじゃからしょうがないだろ!!」


二代目魔王「まぁ私も通った道だから辛さもわかるが…その喋り方は何だ?」


魔王子「せっかくだし見た目に合うように練習したんじゃ。威厳のある喋り方じゃろ?」キリッ


二代目魔王「なら威厳のある行動をしろ」

501: 2014/07/29(火) 22:17:21 ID:oT5qHxK6

魔王子「親父に言われたくないわ!友を頃したぐらいでいつまでもイジイジしやがって!」


二代目魔王「なっ!?お、お前に何がわかる!?」


魔王子「何もわからん!」


二代目魔王「だろうな!!」


魔王子「いいからシャキッとしろ!ワシのお小遣いが減るだろ!」


二代目魔王「ワシよりもお小遣いが心配なのか!?」


魔王子「当たり前じゃ!親父の心配なんてするだけ無駄じゃ!親父はワシよりしっかりしてるってわかっとるからな!」


二代目魔王「お前…」


魔王子「いつまでもウジウジしてないで働け!このクソ親父!」バキッ


二代目魔王「痛っ!?な、何故このタイミング!?」ドザァァ

502: 2014/07/29(火) 22:18:13 ID:oT5qHxK6

魔王子「ムカついたからじゃ!さあ立て!もっと殴ってやる!」


二代目魔王「ニートのクセに言いたいこと言いやがって……いい加減しないと私もキレるぞ?」ゴゴゴゴゴゴ


魔王子「上等だ…三日前みたいにまた負かしてやるわい!」ゴゴゴゴゴゴ


赤ちゃん「おぎゃー!おぎゃー!」


魔王子「あっ、忘れておった!と、とりあえず親父、こいつを泣き止ませてくれ!」アセアセ


二代目魔王「そ、そうだな!」アセアセ

503: 2014/07/29(火) 22:19:21 ID:oT5qHxK6

赤ちゃん「zzZ」スヤスヤ


二代目魔王「ふぅ…何とか泣き止んだか」


魔王子「さすがに子供の扱いは慣れとるのぅ」


二代目魔王「ホントどうしようもない子供を男手一つで育てた経験があるからな」


二代目魔王「それより早くこの子を村に返さないと大問題になるかもしれん。魔物が子供を攫ったのだからな」


魔王子「それなら多分大丈夫じゃ。村に寄った時にワシから逃げる村人達が『魔王が悪魔の子を連れているぞ!?』って言っとったからな。ワシ、魔王じゃないのに」


二代目魔王「悪魔の子?」


魔王子「うむ。どうやらそいつは魔物と人間のハーフらしいんじゃ。まだ魔力に目覚めてないからわからないがのぅ」


二代目魔王「な、何だと!?この子が…」

504: 2014/07/29(火) 22:20:08 ID:oT5qHxK6

魔王子「もしそうだとしたら珍しいよな…」


二代目魔王「人間との抗争のせいで、中立の立場であった人間と魔物のハーフは全て抹殺されたからな…」


魔王子「どうする?そいつは人間達によって捨てられた…ワシらもそいつを捨てるのか?」


二代目魔王「……そんなこと出来るわけないだろ」


魔王子「じゃあそいつの面倒頼んだぞ」


二代目魔王「待て!お前が拾ってきたんだろ?お前が育てろ」


魔王子「えーダルいー」


二代目魔王「この魔物のクズが!!」

505: 2014/07/29(火) 22:21:39 ID:oT5qHxK6

魔王子「もちろんワシだってさすがにそうするべきだと思ったが…ワシに子育てが出来ると思うか?」


二代目魔王「……無理だな」


魔王子「だろ?」


二代目魔王「はぁ…しょうがない。私がメインで育てる」


魔王子「メイン?」


二代目魔王「お前も手伝うに決まってるだろ。もちろんヴァンパイア達にも手伝ってもらう」


二代目魔王「この子は私達みんなで育てる…立派な大人になるようにな」


ヴァンパイア「…でしたらその子の為にも立ち直ってください、魔王様」

506: 2014/07/29(火) 22:22:54 ID:oT5qHxK6

二代目魔王「ヴァンパイア…」


ヴァンパイア「勝手に部屋に入ってしまって申し訳ありません。ですが私の言ってることは正しいと思います」


ヴァンパイア「人間と魔物のハーフであるその子が平穏に暮らせる世界…それは私達が目指している夢そのものではありませんか?」


二代目魔王「………お前の言うとおりだな」


二代目魔王(あと十数年といったところだな、私の体が持つのは……その間にやれることはやっておかないと…)


二代目魔王「…ヴァンパイアよ、さっきの件。承諾しよう」


ヴァンパイア「魔王様…」


二代目魔王「この子の為にも早く人間と本当の意味で共存を出来る関係にならなくてはならないからな」

507: 2014/07/29(火) 22:24:14 ID:oT5qHxK6

ヴァンパイア「元に戻られてとても嬉しいのですが…少し状況が変わってしまったようです」


二代目魔王「何かあったのか?」


ヴァンパイア「はい…先ほどサキュバス達から町近辺の海にクラーケンが棲みついたと情報が入りまして…」


二代目魔王「……そのクラーケンが暴れていると?」


ヴァンパイア「はい…」


二代目魔王「…イカ風情ガ調子に乗リヤガッテッ!」ピキッ


ヴァンパイア「ま、魔王様!!」アセアセ


魔王子「おい!赤ん坊が起きてしまうじゃろ!」


二代目魔王「そ、それはいかん!」フッ

508: 2014/07/29(火) 22:25:45 ID:oT5qHxK6

赤ちゃん「zzZ」スヤスヤ


二代目魔王(……また道を間違えるとこだった。力で押さえつけてはこの子の未来を守ることが出来ん)


二代目魔王「…やはりエルフ達の招待は辞退するしかなさそうだ。だがせめてクラーケンを他の海へ移動してもらうよう説得してくるとしよう」


ヴァンパイア「では、私もお供します」


二代目魔王「いや、一人で大丈夫だ。お前はこの子の面倒を頼む。馬鹿息子一人だけではこの子がかわいそうだからな」


ヴァンパイア「わかりました。では魔王様、あまり無茶をなさらないように…」

509: 2014/07/29(火) 22:26:21 ID:oT5qHxK6

二代目魔王「わかっておる……あっ!最後にもう一つ、この子は私達全員で育てるつもりだが、竜騎士が面倒を見る時は必ずもう一人付けるようにしてくれ」


二代目魔王「でないとこの子の貞操が危ぶまれる」


魔王子・ヴァンパイア「そうじゃな(そうですね)」


バンッ!


竜騎士「それは横暴過ぎませんか魔王様!?お願いします!私にもその可愛い赤ちゃんをペロペロさせてください!本番はちゃんと大きくなるまで我慢しますから!!」


二代目魔王「それが駄目だと言っているんだ。大きくなっても我慢しろ」

515: 2014/08/01(金) 21:46:58 ID:ZviSq3wY

十数年後



二代目魔王「――というわけだ。魔物と魔族の違いはこの辺りにするか」


少年「はい」


二代目魔王「では次はスライム語を教えて……ん?」チラッ


魔王子「zzZ」ガー ガー


二代目魔王「……この馬鹿息子はいつから寝てた?」


少年「…始まって5分ほどです」


二代目魔王「」プツンッ


二代目魔王「お前はもっと真剣に授業を聞かんか!!」バッ


魔王子「うおっ!?」ヒューーーーン!

516: 2014/08/01(金) 21:48:34 ID:ZviSq3wY

少年「……今のは移動系魔法を応用して飛ばしたんですか?」


二代目魔王「ああそうだ。頭を冷やすように近くの雪山に飛ばしてやったわ」


少年「…魔王様、その魔法もぜひ私に教えてください」ペコ


二代目魔王「もちろんいいぞ。お前は勉強熱心だけでなく、魔法の才も素晴らしいからな」


少年「それは魔王様やヴァンパイア様の教えが良いからですよ」


二代目魔王「そんなことはない。お前の努力と才のおかげだ」


二代目魔王「しかしこの間教えた拘束魔法もそうだが、お前に教えた魔法のほとんどは危険な魔法ということをしっかりと頭に入れておくんだぞ」


少年「はい、無闇矢鱈に使って誰かを傷つけたりしませんので安心してください」


二代目魔王(どうやら今度はまともに育ったみたいだな…少し出来すぎなぐらいだ)

517: 2014/08/01(金) 21:49:24 ID:ZviSq3wY

少年「では拘束魔法の復習からしましょう。魔王子様を拘束するにはまだまだ鍛錬が必要ですし…」


二代目魔王「…ん?」


少年「魔王様、外に移動しましょう」テクテク


二代目魔王「あ、ああそうだな…(今なんか変なこと言わなかったか?)」


ズキッ!


二代目魔王「ッ!?」ヨロッ


少年「だ、大丈夫ですか!?」

518: 2014/08/01(金) 21:49:55 ID:ZviSq3wY

二代目魔王「あ、ああ!どうやら昨日の酒がまだ少し残ってるらしい!」ガハハハハ


少年「…では今日の魔法の鍛錬はやめにしましょう」


二代目魔王「こ、これぐらい大丈夫だ!ほら早く行くぞ!今日はさっきの移動系魔法の応用と石化魔法も教えてやるぞ!」ニカッ


少年「………」



______________________________



ヴァンパイア「えっ?魔王様の様子かい?」


少年「はい…最近体調を崩しているとかありませんでしたか?」

519: 2014/08/01(金) 21:50:58 ID:ZviSq3wY

ヴァンパイア「う~ん…君が拾われてからは逆に体調が良いように見えていたんだが…」


少年「そう…ですか」


ヴァンパイア「昨日はかなりお酒を飲まれてましたからきっとそれで体調が悪いように見えたんだよ」


少年(私の勘違いならそれで良いのだけれど…)


ヴァンパイア「それよりさっきの魔法の鍛錬見ていたよ。凄いじゃないか、拘束魔法まで使えるようになるなんて」


少年「まだまだ未熟ですよ」


ヴァンパイア「それでも私は君が羨ましい……拘束魔法などの魔王様の得意な魔法は私には扱えなかったからね」


少年「…覚えた魔法の種類なんて関係ありませんよ。魔王様から教わった…その事実が重要なんだと思います」


ヴァンパイア「…そうだね」

520: 2014/08/01(金) 21:51:48 ID:ZviSq3wY

少年「ではそろそろ魔王子様が帰って来る頃なのでこの辺で失礼します」ペコ


ヴァンパイア「君は本当にしっかりしてるなぁ……そうだ!今少し暇だから君におやつを作ってあげよう」


少年「おやつですか?」ピタッ


ヴァンパイア「先日調査も兼ねてエルフ達の町に寄った時に人間達が作った『シュークリーム』という珍しいおやつがあってね。魔王様と私のカ・ノ・ジョに食べさせてあげたくてレシピを聞いてきたんだ」


ヴァンパイア「えっ?彼女がどんな魔物かって?しょうがないなぁ~彼女の魅力をたっぷりと教えてあげよう!」


少年「(余程彼女が出来て嬉しいんですね)時間も無いのでそれはまた今度じっくり聞かせてください」


少年「それよりしゅーくりーむ……ど、どのようなおやつなんですか?」ワクワク


ヴァンパイア「フフフ、それは見てからのお楽しみさ。楽しみに待っててくれ」


少年「は、はい!」

521: 2014/08/01(金) 21:52:43 ID:ZviSq3wY

______________________________


少年(しゅーくりーむ…一体どんなおやつなんでしょうか?)テクテク


竜騎士「………」ソー…


竜騎士「少年ちゅあ~~ん!」ダキッ


少年「……またですか竜騎士さん」ハァ


竜騎士「今日も相も変わらずきゃわわわわ❤」スリスリ


少年(本当は嫌なんですが……これで竜騎士さんの心の傷が少しでも癒されるのなら我慢してあげますか)


竜騎士(嫌がりながらもいつもこうやって頬を擦りつけるのを許してくれている……つまり!少年たんもこういうことが大好きなんだ!)

522: 2014/08/01(金) 21:53:38 ID:ZviSq3wY

竜騎士(なら…少年たんの期待に応えなくては!)ジュルリ


少年「ん?」


竜騎士(少年たん美味しい~~❤)ペロペロペロペロペロ


少年「ちょっ!?頬を舐めないでくださいよ!」


竜騎士(やばっ…滾ってきちゃった。これはもう…最後までするしかない!!まずは少年たんの可愛いおティンティンを拝見しないと…)スッ


少年「こ、これ以上は駄目です!」ピッ!


竜騎士「ぐっ!?」ピタッ


竜騎士「こ、これは…魔王様の拘束魔法!?ここまで使えるようになってるとは…さすが少年たんだね!」


少年「…まったく反省してませんね」バチッ…


竜騎士「えっ?」

523: 2014/08/01(金) 21:54:16 ID:ZviSq3wY

少年「少しだけお仕置きです」バチバチバチ!


竜騎士「ぎゃあああああ!」バリバリバリバリ!


竜騎士(い…今のは雷魔法!?弱かったとはいえどうして少年ちゃんが雷魔法を…?)プスプス…


少年「う~ん…威力を上げるのでは無く、気絶しない程度の雷を永続的に帯電させるのは難しいですね。すぐに気絶してはお仕置きになりませんし…」


竜騎士「しょ、少年…ちゃん?」ゾクッ

524: 2014/08/01(金) 21:55:06 ID:ZviSq3wY

ヒューー…ン


少年「…あっ、魔王子様が帰ってきてしまいました。魔王様の所にケンカしに行く前に止めないと…」


少年「では竜騎士さん、失礼します。これからは少しでいいのでこういう行為は…控えてくださいね」ニコ


竜騎士「は、はい!」ビクッ


タタタタタタタッ


竜騎士(…今はまだ拘束魔法も雷魔法も弱いけど、大きくなってさっきと同じことをされたら……考えただけ恐ろしい)ゾクッ


竜騎士「………これからは少年ちゃんをペロペロするのは控えるか」シュン

525: 2014/08/01(金) 21:55:50 ID:ZviSq3wY

______________________________


少年(少し遅れてしまった…これはマズイかもしれませんね)タタタタタタタッ


ズドオォォォオオオン!


少年「…はぁ、やっぱり間に合いませんでしたか」





魔王子「このクソ親父!!気持ち良く寝とったのにいきなり雪山に飛ばしおって!!」バキッ


二代目魔王「ぐっ!そ、そもそも寝てるのが悪いんだろ!この馬鹿息子がァ!!」ピッ!


魔王子「ぐぬっ!?」ピタッ


二代目魔王「今度は火山のマグマに飛ばしてやる!!」バッ


魔王子「この程度の拘束魔法でワシが止まるわけなかろう!」バキンッ!

526: 2014/08/01(金) 21:56:33 ID:ZviSq3wY

魔王子「逆にワシがクソ親父を火炎魔法で吹き飛ばしてやるわ!」ボウゥッ!


ザッ


少年「魔王様も魔王子様も止めてください!」バッ


魔王子「ば、馬鹿もん!」ダッ


二代目魔王「なっ!?危ない!!」ダッ


ズキッ


二代目魔王(ぐっ!こ、こんな時に!)ヨロッ


ズドオオォォォン!


二代目魔王「しょ、少年!!」


魔王子「熱ちちち…少し本気で放ち過ぎたのぅ」プスプス…

527: 2014/08/01(金) 21:57:47 ID:ZviSq3wY

二代目魔王「な、何とか助かったみたいだな」ホッ


少年「魔王子様、大丈夫ですか?」


魔王子「馬鹿もん!急に出てきおって!もしワシが助けなかったらお前を頃してたとこなんだぞ!?」


少年「はい。ですが魔王子様なら必ず助けてくださると思ったからお二人の間に出たんです」


少年「もしの話などするだけ無駄です。全てわかっていたことですから」


魔王子「だがワシは現にこうして傷を負っとるじゃろ。これもわかってたのか?」


少年「はい。少しだけお灸を据えた方がよろしいかと思いまして」


魔王子「お前までそういうことするのか!?」

528: 2014/08/01(金) 21:59:12 ID:ZviSq3wY

魔王子「もう良い!皆でワシをイジメるのなら家出してやる!」


バタンッ


二代目魔王「……どのくらいで帰ってくると思う?」


少年「そうですね…もうすぐお昼なので30分ぐらいかと」


二代目魔王「家出とは言えんな」クスッ


少年「それにしても…また派手に壊しましたね。すぐにヴァンパイア様に伝えておきます」


二代目魔王「言わんで良い。これぐらいなら自分で直せる。私は日曜大工も得意だし」


少年「……ですが魔王様のお体は弱っているので負担が掛かってしまいますし…」


二代目魔王「さすがに日曜大工が負担になるほど弱ってはない」


少年「…やはり弱ってはいるんですね」

529: 2014/08/01(金) 22:00:21 ID:ZviSq3wY

二代目魔王「ッ!?……まさかお前に気づかれるとは…このことは他言無用にしてくれ」


少年「はい。それで魔王様…お体はどのぐらい悪いのですか?」


二代目魔王「…あと1年持つかどうかといったところだ」


少年「ッ!?そ、そんなにですか…」


二代目魔王「皆を力で押さえつけていた代償がこれだ…」


二代目魔王「……今現在世界は私という絶対的抑止力によって偽りの平和を維持している。だが…私はもうすぐ氏ぬ」


二代目魔王「そうすればまた抗争が起きてしまう…いや、あの時代を知らない人間達では魔物側による一方的な殺戮となってしまうだろう」


二代目魔王「そうならない為にも色々と氏力を尽くしたつもりなのだが………私は反乱軍のトップであった友を頃した」


二代目魔王「だからいくら力ではなく言葉で説得しても、反発する者は頃す…そう思われて力で黙らせているのと同じ状態になってしまっている」

530: 2014/08/01(金) 22:01:28 ID:ZviSq3wY

二代目魔王「結局私は友の言うとおり…爆発を止めることが出来なかった」


少年「………」


二代目魔王「本当にすまない…お前達の未来を守ることが出来なくて…」


少年「…心配要りません。自分達の未来は自分達で守ります」


少年「それにきっと魔王子様が魔王様の意思を受け継いでくださると思います」


二代目魔王「そう見えんから悩んでるんだがなぁ…あの馬鹿息子が魔王になったらこの世界はどうなるかまったく想像出来ん」


少年「きっと最初はグダグダになりますね。ですが……必ずや今以上に平和な世界へと導いてくださると思います」


二代目魔王「あの馬鹿息子がか?」


少年「はい。今の魔王子様では無理ですけど、これからたっぷりと教育をすればきっと」

531: 2014/08/01(金) 22:02:49 ID:ZviSq3wY

二代目魔王「教育と言っても私には時間が残されておらんし…」


少年「私が魔王子様を教育しますのでご安心を」


二代目魔王「……ワッハッハッハ!そうか!それなら安心だな!」


二代目魔王「少年よ……馬鹿息子を頼んだぞ」


少年「はっ!」


二代目魔王「それともう一人の息子のことも頼む。あいつは私が氏んだらきっと悲しみに明け暮れてしまうだろう……なんせ二回も親を失うことになるんだから」


少年「…わかりました。ではこの部屋を修理する工具を持ってまいりますので一旦失礼します」

532: 2014/08/01(金) 22:03:35 ID:ZviSq3wY

ガチャ…
      バタンッ


少年「……ヴァンパイア様、大丈夫ですか?」


ヴァンパイア「ああ……気を利かせて工具を持ってくるべきではなかった」ゴシゴシ


ヴァンパイア「でももう大丈夫さ…涙と一緒に今聞いたことも捨てたとこだからね」


ヴァンパイア「工具は持ってきてるが少し時間を置いた方がいい……少し歩こうか」


スタスタ


少年「…ヴァンパイア様は強いですね」


ヴァンパイア「強くない…ただのやせ我慢さ。魔王様が私を想ってくださって隠すのなら…私はこのやせ我慢を貫き通す」

533: 2014/08/01(金) 22:04:45 ID:ZviSq3wY

少年「やっぱり強いです…私はもう…我慢の限界です」


ヴァンパイア「…泣いていいさ。どんなに大人びていても君はまだ子供なのだから…」


魔王子「おっ、二人ともこんなところで何をしとるんじゃ?」モグモグ


ヴァンパイア「魔王子様、もうお帰りになられ………な、何を食べているんですか?」


魔王子「キッチンにあった珍しいおやつじゃ。これは美味じゃな!何ていうおやつじゃ?」


ヴァンパイア「それはシュークリームというおやつで……少年くんの為に作ったものです」


魔王子「えっ?」


少年「………」ジワ…


魔王子「えっ!?」

534: 2014/08/01(金) 22:06:08 ID:ZviSq3wY

魔王子「す、すまん!泣くほど食べたかったのか!」アセアセ


少年「そ…それも……ひっく…ありますが…」ポロポロ


魔王子「こ、今度ワシのお小遣いで同じものを買ってやるから泣くでない!」


ヴァンパイア「……我慢しないで声を出して泣いていいんだよ。今なら全部魔王子様のせいなるから…」ナデナデ


魔王子「な、何を言ってるんじゃお前は!?」


少年「ぅ…うわあああああああああん!」ポロポロ


魔王子「あーもう!泣いてしまったではないか!」


ザッ


竜騎士「少年たん!泣きたいのなら私の胸で泣くんだ!私がその涙を舐め取ってあげるから!」


魔王子「お前は出てくるな!ややこしくなるじゃろ!」

535: 2014/08/01(金) 22:07:27 ID:ZviSq3wY

______________________________


一年後


少年「魔王様は誰よりも強く、誰よりも優しいお方でした…」


ヴァンパイア「ああ、だからこそ心に大きな負担が掛かってしまったのだろう…」


少年「…本当に行ってしまわれるのですか?ヴァンパイア様」


ヴァンパイア「……ああ」


竜騎士「別に出て行く必要は無いだろ」


ヴァンパイア「魔王様が亡くなってしまわれたから、すぐに今まで不満を持っていた魔物達が暴れるはずだ。私は魔王軍とは別でその者達の鎮圧にあたるよ」


ヴァンパイア「それに……今は一人になりたいんだ。こんな見っとも無い姿の私を君達に見せたくないんだ」

536: 2014/08/01(金) 22:08:29 ID:ZviSq3wY

竜騎士「そうか…私はしばらく魔王城に留まる。サタンの息子が反乱軍の時みたいに攻め込んでくるかもしれないしな」


竜騎士「だから新しい魔王様のことは私と少年ちゃんに任せてくれ」


ヴァンパイア「すまない…一応魔王子様には心配を掛けないよう失恋のショックと嘘を言っておいたが…」


竜騎士「つい先日彼女とも別れたからそれも嘘ではないんだろ?」


ヴァンパイア「まあね…」


竜騎士「おいおい。そこは『また別の女性を愛せるからショックじゃないさ!』みたいなこと言うとこだろ」


ヴァンパイア「…当分恋はしないつもりさ」


竜騎士(相当ダメージがデカイな……なぁ少年ちゃん、やっぱりこいつを行かせるのは止めにしないか?)ヒソヒソ


少年(……いえ、きっと大丈夫です。だってヴァンパイア様は血は繋がってませんが、魔王様の本当のご子息なんですから…)ヒソヒソ

537: 2014/08/01(金) 22:09:26 ID:ZviSq3wY

ヴァンパイア「じゃあそろそろ行くよ……竜騎士さん、少年くん、魔王子様を…兄を頼みます」ペコ


竜騎士「ああ、任せろ」


少年「必ずや私が魔王子様を立派な魔王に育ててみせます」


ヴァンパイア「フッ、なら安心だ。じゃあコウモリ達よ、行こう」


バサバサバサバサ……


竜騎士「…行ったな」


少年「はい…」

538: 2014/08/01(金) 22:10:14 ID:ZviSq3wY

竜騎士「……私も魔王子様が落ち着いたら魔王軍を抜けた馬鹿な部下達を懲らしめに行くつもりだ。あの方が全快なら護衛する意味が無いし」


竜騎士「つまり少年ちゃん一人で魔王子様の世話をすることになる……出来るか?」


少年(以下側近)「はい…私は魔王子様の側近ですので」


側近「竜騎士さんもこれからは少年ではなく側近と呼んでくださいね」


竜騎士「わかりました側近様」


側近「敬語はやめてくださいよ。そこは今まで通りでいいですって」


竜騎士「じゃあそうさせてもらうかな」


竜騎士(少し不謹慎だが……確実に少年たんと二人きりになる機会が増えた!)


竜騎士(私も魔王様が亡くなられてショックだし…少年たんにいっぱい慰めてもらわなくっちゃ!)

539: 2014/08/01(金) 22:11:15 ID:ZviSq3wY

側近「では竜騎士さん。まずは魔王様が亡くなられてすぐに魔王軍を抜けた方々をリストアップしてください」


竜騎士「ああ、了解だ」


側近「あっ、もしその方達を見つけたとしても殺さないでくださいね」


竜騎士「…魔王様の意思ではないんだが、私は時には頃すことも必要だと思うぞ」


竜騎士「ましてやあいつらは魔王様の下についていたというのにこんなことをして……私は絶対に許せない!」ギリッ


側近「もちろん私もあの方達には頭にきています。頃すのも時と場合だと思ってますし…」


側近「ですが…無駄な殺生はしたくないんです。それでは魔王様が悲しまれます」


竜騎士「……そうだな。私が間違って―「なので調教するつもりです」


竜騎士「…へっ?」

540: 2014/08/01(金) 22:11:51 ID:ZviSq3wY

側近「今まで魔物と人間のハーフである私をしつこくイジメてきた方々には軽めの調教しか出来てませんでしたが、これからは遠慮なく調教出来ます」


竜騎士(えっ!?既に調教してたの!?そういえば私の部下の中に少年たんに敬語を使ってたヤツが居たっけ…)


側近「それでも改心しない方は…残念ですが石にするしかありませんね」


側近「では竜騎士さん、リストアップの方をお願いしますね」ニコ


竜騎士「は…はい!かしこまりました側近様!」ビクッ


側近「敬語はやめてくださいって言ったじゃないですか」クスッ

541: 2014/08/01(金) 22:12:58 ID:ZviSq3wY

側近「じゃあ私は落ち込んでらっしゃる魔王子様の様子を見てきます」スタスタ


竜騎士(…ペロペロはもう控えるんじゃなくて完全にやめよ)シュン


側近(魔王様……再び世界は荒れ始めました。そして皆気づくはずです。魔王様が如何に偉大なお方だったのかと…)


側近(そしてその意志を受け継いだ魔王様が必ずや再び世界を平和にしてくださいます。その時こそ魔王様が望んだ本当の平和が訪れるはずです)


側近(だから…)


側近「魔王様…いつもみたいに優しい笑顔で私達を見守っててください」

542: 2014/08/01(金) 22:14:10 ID:ZviSq3wY

______________________________


そして五十年後…


魔王(元魔王子)「おーい側近よー」


側近「何でしょうか魔王様」


魔王「おっ、ここに居たか……何故出掛ける準備をしとるんだ?ピクニックにでも行くのか?」


側近「昨日話したじゃありませんか。私の故郷の村に行ってまいりますって」


魔王「あーそうじゃったな。で、いつ頃戻るんだ?」


側近「今日の夜には戻る予定です。掃除や食事などの雑務は他の者に頼んでおきましたのでご安心ください」


側近「では魔王様、行ってまいります」



Fin

543: 2014/08/01(金) 22:15:32 ID:ZviSq3wY
これで本当に終わりです

ダラダラと長くなってすみませんでした
そしてこんな駄文を読んでくださりありがとうございました

ではまたどこかで

引用: 勇者「魔王を倒す旅に行ってくるね!」魔王「気をつけるんじゃぞ」