12: 2009/12/24(木) 15:57:32.48 ID:F9OFri6NO
薔薇水晶「シャン、シャン、シャン……」

薔薇水晶「今日は12月24日……クリスマス・イヴ……」

薔薇水晶「街は家族やカップルで満ちあふれ……」

薔薇水晶「道行く人は皆幸せそう……」

薔薇水晶「イルミネーション……きれい……」

薔薇水晶「…………」

薔薇水晶「ぐすっ……」

薔薇水晶「私はひとり……ロンリー・メリークリスマス……」
金糸雀
13: 2009/12/24(木) 16:06:21.32 ID:F9OFri6NO
薔薇水晶「おなかすいた……」

薔薇水晶「チキンたべたい……できればケーキも……」

薔薇水晶「おさいふの中……100円しか入ってない……」

薔薇水晶「あ……」

薔薇水晶「マックのクーポン券はっけん。でも……」

薔薇水晶「マックチキン……元々100円だった……」

薔薇水晶「…………」

薔薇水晶「ぐすっ……」

金糸雀「薔薇水晶、貴女さっきから何をしているの……?」

14: 2009/12/24(木) 16:07:55.25 ID:F9OFri6NO
…………

…………

金糸雀「えっと、要は行くところがなくて寂しいということかしら?」

薔薇水晶「そう……」

金糸雀「それなら真紅の家なんてどうかしら?ドールもたくさんいて賑やかよ」

薔薇水晶「…………」

金糸雀「どうしたの……?」

薔薇水晶「あそこへは行きづらい……酷いこといっぱいしちゃったし……」

15: 2009/12/24(木) 16:09:59.75 ID:F9OFri6NO
金糸雀「確かに以前は色々とあったけど……」

薔薇水晶「うん……」

金糸雀「真紅たちにはもう許してもらったのでしょう?」

薔薇水晶「そうだけど……」

金糸雀「結局みんな復活したし向こうも気にしてないと思うわよ?」

薔薇水晶「…………」

金糸雀「まぁ、気持ちはわからなくもないかしら」

薔薇水晶「私は……どうしたら……」

金糸雀「う~ん、そんなことカナに言われても……」

薔薇水晶「なんとかして……」

金糸雀「い、いや……カナはみっちゃんを探しに行かないと」

薔薇水晶「ぐすっ……」

金糸雀「わ、わかったわ。少し付き合ってあげるから泣かないの」

19: 2009/12/24(木) 16:14:13.27 ID:F9OFri6NO
金糸雀「実はカナも貴女のことがまだちょっと怖いかしら」

薔薇水晶「やっぱり……」

金糸雀「ここはひとつイメージチェンジとかしてみたらどうかしら?」

薔薇水晶「よく、わからない……」

金糸雀「例えばほら、親しみ易さを演出するためにもう少し明るく振舞うとか」

薔薇水晶「明るく……」

金糸雀「それから相手を褒める喋り方をすることね。人から好かれるには重要よ」

薔薇水晶「相手を褒める……」

金糸雀「あとは冗談の一つも飛ばせるようになれば言うことなしかしら」

薔薇水晶「わかった……やってみる……」

20: 2009/12/24(木) 16:19:33.00 ID:F9OFri6NO
薔薇水晶「まあ、さすが金糸雀。とてもすばらしい思いつきですわ」

金糸雀「そうそう、その調子かしら」

薔薇水晶「すばらしい、とでもすばらしいです金糸雀」

金糸雀「……?」

薔薇水晶「ばらしーだけに……」

金糸雀「…………」

薔薇水晶「…………」

金糸雀「…………」

薔薇水晶「…………」

金糸雀「薔薇水晶」

薔薇水晶「なに……?」

金糸雀「無理はしなくていいわ。ゆっくり自分を変えていけばいいかしら」

21: 2009/12/24(木) 16:23:43.53 ID:F9OFri6NO
金糸雀「もうちょっと簡単なところからはじめましょう」

薔薇水晶「私もその方がいい……」

金糸雀「まずは口調だけでも変えてみるというのはどうかしら」

薔薇水晶「口調……?」

金糸雀「ええ。例えばカナたちのように語尾に特徴を持たせるとか」

薔薇水晶「なるほど、それではさっそくやってみるザウルス」

金糸雀「いや、ザウルスはちょっと……」

薔薇水晶「ダメなの……?」

金糸雀「長いし不自然だし、何より女の子らしさを微塵も感じないかしら」

薔薇水晶「……それじゃこういうのはどうでゲソ?」

金糸雀「…………」

薔薇水晶「…………」

蒼星石「あの……君達さっきから何をしているの?」

24: 2009/12/24(木) 16:29:16.06 ID:F9OFri6NO
金糸雀「蒼星石!?貴女いつからそこに……?」

蒼星石「マックチキンがどうとか言ってる辺りから……」

薔薇水晶「うっ……」

金糸雀「それって最初からいたってことじゃない」

蒼星石「済まない。何か一生懸命だったから話しかけにくくてね」

金糸雀「まぁいいわ。それじゃ事情は知ってるのね?」

蒼星石「一応ね」

金糸雀「そういうことなら蒼星石も協力するかしら」

25: 2009/12/24(木) 16:34:22.77 ID:F9OFri6NO
蒼星石「いきなり全員と仲良くなろうというのは少し難しい」

薔薇水晶「こくこく……」

蒼星石「だからまずは組し易いところから攻めるのがいいと思うんだ」

薔薇水晶「こくこく……」

蒼星石「雛苺はどこか臆病なところがあるし翠星石はああいう性格だ
    水銀燈は……少々厄介な相手だから一番後に回すのがいいだろう」

金糸雀「ということはまずは真紅あたりからお話してみるのがいいのかしら」

蒼星石「多分ね。少しは参考になったかな」

金糸雀「ええ、もちろんよ」

薔薇水晶「ありがとう……」

蒼星石「いや。それじゃ僕はこの辺で失礼するよ」

金糸雀「え?貴女もう行っちゃうの?」

蒼星石「申し訳ないけどこれから少し用事があるもので……」

薔薇水晶「そ、そう……」

金糸雀「そういうことなら仕方ないかしら」

蒼星石「悪いね。この埋め合わせは後でさせてもらうよ」

26: 2009/12/24(木) 16:38:23.49 ID:F9OFri6NO
薔薇水晶「蒼星石、何かそっけなかった……」

金糸雀「あ、あの子にも都合というものがあるかしら」

薔薇水晶「…………」

金糸雀「それより薔薇水晶、真紅とお話しするのでしょう?」

薔薇水晶「う、うん……」

金糸雀「ほら、さっそくこれから家に行ってみるかしら」



真紅「……私を呼んだかしら?」

薔薇水晶「(ビクッ……)」

金糸雀「真紅……?あなたどうしてここに?」

真紅「別に。ただそこらを散策していただけよ」

27: 2009/12/24(木) 16:42:44.80 ID:F9OFri6NO
金糸雀「でね?かくかくしかじかで……」

真紅「大体わかったわ。要は翠星石たちと仲良くできるようにすればいいのね?」

金糸雀「そうかしら。何かいい方法はないかしら」

真紅「正直なところ私もまだ少し薔薇水晶のことが怖いわね」

薔薇水晶「ぅ……」

真紅「責めているわけではないわ。イメージチェンジとかしてみたら
   どうかということよ。例えばその喋り方をもっと親しみやすく……」

金糸雀「あ、真紅。それならさっきもうやったわ」

真紅「……先に言いなさいよ。だったら見た目を変えてみるのはどう?」

28: 2009/12/24(木) 16:46:11.85 ID:F9OFri6NO
金糸雀「あ、なるほど」

薔薇水晶「それ……いいかも……」

真紅「そうでしょう?こんな事もあろうかといつも持ち歩いている
   この『くんくん変身セット』で貴女も今日から皆の人気者――」

金糸雀「…………」

薔薇水晶「…………」

真紅「何よその『またか』みたいな顔は?貴女たちちょっと失礼よ?」

30: 2009/12/24(木) 16:52:21.64 ID:F9OFri6NO
真紅「わかったわ。それじゃこうしましょう」

金糸雀「なに?」

真紅「服装はそのままでいいわ。ただその眼帯は何とかしたいわね」

薔薇水晶「え?これ……?」

真紅「ええ。眼帯って何だか怖いイメージがあるでしょう?」

金糸雀「そうね。というかそもそもどうしてそんなものをしているの?」

薔薇水晶「なんか……かっこいい……」

真紅「…………」

金糸雀「…………」

真紅「とりあえずそれ外しなさい」

薔薇水晶「や……待っ……」ジタバタ

真紅「どうしたの?何か問題でもあって?」

薔薇水晶「は、はずかしい……」

31: 2009/12/24(木) 16:58:51.33 ID:F9OFri6NO
真紅「仕方ないわね。そういうことなら……」

金糸雀「なに?」

真紅「私が何か代わりのものを貸してあげるわ」

薔薇水晶「できればかっこいいやつがいい……」

金糸雀「それよりアレよ。この場合好感度高そうなものであることの方が重要よ」

真紅「任せて頂戴。うってつけのものを持ってるわ」

薔薇水晶「本当……?」

真紅「ええ。その眼帯の上からでいいから着けてみなさい」

薔薇水晶「…………」

http://drillzip.hp.infoseek.co.jp/cgi-bin/src/gue7697.jpg

金糸雀「おかしいかしら。何かが根本的に間違っているかしら」

34: 2009/12/24(木) 17:05:53.11 ID:F9OFri6NO
真紅「まったく、せっかく人が用意してあげたのに」

金糸雀「あんなのダメに決まってるかしら」

薔薇水晶「異常聴覚……」

真紅「それじゃもう私にできることはないわ」

金糸雀「真紅、引き出し少なすぎかしら」

薔薇水晶「基本的戦術……」

真紅「なによ、それじゃ貴女なら何とかできるって言うの?」

金糸雀「う、それは……」

薔薇水晶「何が可笑しい……」

金糸雀「…………」

真紅「…………」

雪華綺晶「貴女がた……さっきから一体何をしているのですか……?」

35: 2009/12/24(木) 17:12:50.41 ID:F9OFri6NO
金糸雀「あ、あら。雪華綺晶……」

雪華綺晶「じ~っ……」

薔薇水晶「な、なに……?」

雪華綺晶「おいしそう」

薔薇水晶「!?」

雪華綺晶「もう我慢できません。いただきま~……」

薔薇水晶「ひぃっ……!?」

ガシッ

金糸雀「こ、こら!貴女いきなり何てことするかしら!」

雪華綺晶「すみません……つい無意識に……」

真紅「雪華綺晶、すぐに何でも口に入れようとするのはやめなさい」

薔薇水晶「ガタガタガタ……」

雪華綺晶「反省……」

36: 2009/12/24(木) 17:17:03.41 ID:F9OFri6NO
薔薇水晶「ガタガタガタ……」

真紅「そんなに怖がらなくても大丈夫よ」

薔薇水晶「私は今食べられるところだった……」

真紅「本気じゃないわ。この子の場合は何と言うか癖みたいなものよ」

薔薇水晶「癖……?」

真紅「赤ちゃんが何でも口に入れるのと同じようなものね」

金糸雀「!?」

真紅「こうして飴でも舐めさせておけば大人しいものよ。ほら、雪華綺晶」

雪華綺晶「コロ、コロ……」

真紅「雛苺を食べようとしたときもこの方法で止めたのよ」

金糸雀「え?そんなに簡単でよかったの……?」

37: 2009/12/24(木) 17:19:10.49 ID:F9OFri6NO
金糸雀「それじゃカナがあのときマジギレした意味は……?」

真紅「あれは単に貴女が勘違いしただけでしょう?」

金糸雀「…………」

雪華綺晶「えっと、元気を出してくださいお姉さま……」

金糸雀「……いいわ。慰められると余計に悲しくなるかしら」

38: 2009/12/24(木) 17:23:30.32 ID:F9OFri6NO
…………

…………

雪華綺晶「なるほど、そういうことですか……」

金糸雀「雪華綺晶、あなたにも協力してもらえないかしら?」

雪華綺晶「わかりました。ここはこの私にお任せを……」

真紅「何かいい考えでもあるの?」

雪華綺晶「誰かと仲良くなるには笑わせてあげるのが一番です……」

真紅「確かに一理あるわね」

薔薇水晶「なんかそれっぽい……」

金糸雀「それで、具体的にはどうすればいいかしら?」

雪華綺晶「私がとっておきの一発ギャグを伝授してあげましょう……」

39: 2009/12/24(木) 17:27:08.05 ID:F9OFri6NO
雪華綺晶「薔薇水晶、少しこちらに来てください……」

薔薇水晶「は、はい……」

真紅「薔薇水晶を仰向けに寝かせたわ」

金糸雀「その上に雪華綺晶が重なって……」

真紅「……?」

金糸雀「……?」

雪華綺晶「幽体離脱」

薔薇水晶「…………」

金糸雀「そんなネタもう誰も覚えてないんじゃないかしら……?」

42: 2009/12/24(木) 17:38:10.88 ID:F9OFri6NO
雪華綺晶「がり、ぼり、ぼり……」

薔薇水晶「…………」

雪華綺晶「お姉さま、もうひとつ飴をいただけますか……?」

金糸雀「はいはい……」

雪華綺晶「コロ、コロ……」

真紅「結局貴女もたいして役に立たなかったわね」

雪華綺晶「申し訳ありません……」

43: 2009/12/24(木) 17:45:37.22 ID:F9OFri6NO
雪華綺晶「ぺろぺろ……」

金糸雀「ちょ、ちょっと。人の顔を舐めるのは止すかしら」

真紅「また飴でもあげればいいでしょう」

金糸雀「もうないのよ、貴女たち持ってない?」

真紅「…………」

薔薇水晶「…………」

金糸雀「ああ、どこかに大阪のおばちゃんでも歩いてないかしら……」



雛苺「うょ?アメならヒナが持ってるのよ?」

45: 2009/12/24(木) 17:49:29.21 ID:F9OFri6NO
金糸雀「助かったわヒナ。でも貴女こんなところで何をしていたの?」

雛苺「えっと、ヒナはおさんぽの途中なの」

雪華綺晶「コロ、コロ……ありがとうございますお姉さま……」

雛苺「うにゅう……ヒナにのぼったらだめなのよ」

真紅「それにしても雛苺」

雛苺「なに?」

真紅「知らなかったわ。貴女雪華綺晶とこんなに仲が良かったのね」

雛苺「んー……」

金糸雀「そうね、ちょっと意外だったかしら」

雛苺「確かに色んなことがあったわ。特にきらきーとは……」

雪華綺晶「…………」

雛苺「でもね……」

46: 2009/12/24(木) 17:52:48.31 ID:F9OFri6NO
雛苺「ヒナはね、今すごく幸せなの」

雛苺「トモエがいて、JUMがいてみんながいて……」

雛苺「ずっと敵どうしだったきらきーとも今はこうして一緒に遊べるの」

雪華綺晶「…………」

雛苺「毎日が楽しくて、楽しくて楽しくて……」

薔薇水晶「…………」

雛苺「ねぇ、ばらしー」

薔薇水晶「!」

雛苺「ひとりじゃないってと~ってもすてきなことなのよ?」

薔薇水晶「は、はい……」

雛苺「だからね?ヒナあなたとももっ~となかよくしたいのよ?」

47: 2009/12/24(木) 17:56:11.89 ID:F9OFri6NO
ドールハウス槐~

槐「白崎」

白崎「はい」

槐「僕の薔薇水晶はまだ帰ってこないのかい?」

白崎「そうですね。もうそろそろだとは思うのですが……」

槐「まったく、今日はクリスマスだからご馳走を用意して待ってるのに……」

白崎「彼女にも色々事情があるのでしょう。あまり縛りつけるのは良くないですよ」

48: 2009/12/24(木) 18:02:54.06 ID:F9OFri6NO
槐「見てくれ白崎、せっかくのクリームシチューが冷めてしまったよ」

白崎「温めればいいでしょう?クリームシチュー」

槐「肉じゃがが、もう肉じゃがが!」

白崎「温めればいいでしょう?肉じゃがが」

49: 2009/12/24(木) 18:08:24.13 ID:F9OFri6NO
金糸雀「何だか随分あっさりね。心配するほどでもなかったかしら」

真紅「案外そういうものなのかもしれないわね」

薔薇水晶「雛苺……」

雪華綺晶「お姉さま……」

雛苺「うにゅう……二人で乗っかられると重いのよ」

金糸雀「あとは翠星石だけど……」

真紅「あの子の場合はどうでしょうね。あれでなかなか人見知りが激しいから」

金糸雀「やっぱり蒼星石に口を聞いてもらうべきだったかしら」



翠星石「――おめーら、こんなところにいたですか!」

金糸雀「え?翠星石……?」

51: 2009/12/24(木) 18:10:50.79 ID:F9OFri6NO
翠星石「あ、よく見たら薔薇水晶まで一緒にいるじゃねーですか」

薔薇水晶「あの……ええ……」

翠星石「まったく、人に支度をさせておいて全員でサボりとはいい度胸です」

金糸雀「なに?話が全然見えないんだけど……」

翠星石「何ですぅ?今日は皆でパーティーをするんじゃねーですか?」

金糸雀「えっ?」

雛苺「えっ?」

翠星石「――えっ?」

52: 2009/12/24(木) 18:13:54.77 ID:F9OFri6NO
真紅「どういうこと翠星石?私たちは何も聞いていないわよ」

翠星石「えぇ?どうと言われても翠星石はただ……」

ドールズ「…………」

翠星石「やい蒼星石!これは一体どうなっているですか!?」

53: 2009/12/24(木) 18:18:10.98 ID:F9OFri6NO
金糸雀「え?蒼星石……?」

蒼星石「やあドールズ」

翠星石「やあじゃねーですよ、どうしてちゃんと話をしとかねーですか」

一葉「……待ってくれ、翠星石」

翠星石「おじじ?どうしてこんなところに……」

一葉「蒼星石にも考えあってのこと、どうか責めないでやってくれ」

みつ「なるほど。サプライズパーティーというわけね」

金糸雀「え?みっちゃんも……?」

オディール「私日本のクリスマスははじめてなので楽しみです」

雪華綺晶「オディール……!」

のり「お料理の用意もできてるわ。巴ちゃんたちが手伝ってくれて助かっちゃった」

巴「いえ、そんな……」

雛苺「のり、トゥモエ!それに――」

JUM「ったく、引き篭もりをこんなことに付き合わせんなよな」

真紅「――JUM!!」

54: 2009/12/24(木) 18:24:03.91 ID:F9OFri6NO
真紅「道理でおかしいと思ったわ。最初からそのつもりだったのね」

蒼星石「あはは、黙ってて悪かったね」

金糸雀「最初から……?」

雛苺「蒼星石に電話で呼び出されたのよ。ここに来れば面白いことがあるって」

金糸雀「何だかしてやられた気分かしら……」

みつ「いいじゃない。おかげでこうして皆でイブの夜を過ごせるんだし」

金糸雀「え、ええ……」

JUM「でもさ、こんな大人数ウチじゃ狭すぎるだろ」

のり「そうねぇ。ちょっと辛いかもね」

翠星石「んじゃあおじじのトコはどうですか?」

一葉「私は構わないが蒼星石から何か提案があるようだよ」

55: 2009/12/24(木) 18:25:21.35 ID:F9OFri6NO
翠星石「蒼星石、提案って何ですか?」

蒼星石「せっかくのイブだからね。雰囲気のあるところでやりたいと思わない?」

金糸雀「……どこか心当たりでもあるかしら?」

蒼星石「ほら、クリスマスといえばキリスト教の行事だろう?だから……」

金糸雀「あ……」

56: 2009/12/24(木) 18:28:47.39 ID:F9OFri6NO
prrrrrrrrr……

白崎「はい。ドールハウス槐でございます……あぁ、薔薇水晶」

槐「何っ、薔薇水晶だって!?」

白崎「……そうですか。それはよかったですね」

槐「白崎っ、僕に代わってくれ!」

白崎「大丈夫ですよ、槐先生には僕から伝えておきます。えぇ、それでは」

ガチャ

槐「おい白崎、薔薇水晶は一体何て……」

白崎「真紅たちのところに泊まるから今日は帰らないそうですよ」

57: 2009/12/24(木) 18:31:45.02 ID:F9OFri6NO
有栖川大学病院前の礼拝堂~

水銀燈「……お断りよ」

雛苺「うゆ……」

真紅「いいじゃない。こんな日くらいアリス・ゲームのことは忘れましょうよ」

水銀燈「このおばか。私が『ハイそうですね』なんて言うとでも思ったの?」

金糸雀「むぅ、せっかく誘ってあげたのに。水銀燈ってば相変わらずかしら」

水銀燈「何で私がそんなことしなくちゃいけないの?バカじゃないの?おばかさん」

金糸雀「ばっ、バカバカ言いすぎなのかしら!」

翠星石「(まぁすんなり行くとは思ってなかったですが……)」

蒼星石「(これはちょっと苦戦しそうだね)」

水銀燈「帰って頂戴。私は今それどころじゃないの」

58: 2009/12/24(木) 18:36:48.85 ID:F9OFri6NO
金糸雀「ふんっ、そんなこと言うならカナだって考えがあるわ」

水銀燈「……なによ?」

金糸雀「協力してくれないならあのコト……バラしちゃおうかしら」

水銀燈「またそれ?本当に面倒くさい子ね」

金糸雀「いいのかしら?ここで喋ったら姉妹たち皆に知られてしまうわよ?」

水銀燈「…………」

金糸雀「さーどうするのかしら~♪」

水銀燈「…………」

水銀燈「喋りたいなら勝手にそうすればいいわ」

真紅「(折れない……)」

蒼星石「(今回は折れないな……)」

62: 2009/12/24(木) 18:42:09.75 ID:F9OFri6NO
金糸雀「水銀燈、もう少し協調性というものを持つかしら!」

水銀燈「…………」

金糸雀「貴女いつもそうよ。一番の年長者なんだからもう少し大人に――」

水銀燈「うるさい!帰れって言っているでしょう!?」

金糸雀「ぴっ……!?」

翠星石「す、水銀燈。何もそんな言い方しなくても……」

水銀燈「うっ、く……ひっく……」ポロポロ

雛苺「!?」

金糸雀「え?な、なんで……?」

水銀燈「帰って……貴女たちもう帰ってよ……」

ドールズ「…………」

真紅「何かあったのね水銀燈」

水銀燈「…………」

真紅「話して頂戴。私たちにも力になれるかもしれないわ」

63: 2009/12/24(木) 18:46:43.07 ID:F9OFri6NO
nのフィールド経由、有栖川大学病院集中治療室~

真紅「この子が貴女のマスターなのね?」

水銀燈「……ええ」

めぐ「はぁ、はぁ、はぁ……」

雛苺「何だかとっても苦しそう……」

蒼星石「水銀燈、状況を聞かせてくれないか?」

水銀燈「……この子、元々心臓が弱かったのだけど、昨日から急に苦しみだして」

翠星石「…………」

水銀燈「傍にいたのに、私何もできなかった……」

雪華綺晶「…………」

水銀燈「手術は失敗して……今夜が峠だって……」

64: 2009/12/24(木) 18:49:33.82 ID:F9OFri6NO
真紅「(確かによくないわね。魂が迷子になりかけてるわ)」

雪華綺晶「(それに、アストラルの輝きも……)」

めぐ「はぁ、はぁ……うぅ……」

水銀燈「嫌よめぐ、お願いだから氏なないで……」

翠星石「(水銀燈の奴がこんなに取り乱すなんて……)」

蒼星石「(それ程この子のことが大切ということか)」

水銀燈「めぐ……めぐ……私はどうしたらいいの……?」

金糸雀「…………」

65: 2009/12/24(木) 18:51:59.65 ID:F9OFri6NO
キラキラキラ……

蒼星石「ローザミスティカ!?金糸雀、君は何をしてるんだ……!」

金糸雀「……これを使えばその子の命は助かるわ」

水銀燈「!」

雪華綺晶「しかしそれではお姉さまが……」

金糸雀「ごめんなさい水銀燈。カナ、貴女の気も知らないで……」

水銀燈「ローザ……ミスティカ?」

雛苺「やめてカナ、早まったことしちゃダメよ!」

水銀燈「これでめぐが助かる……でも、金糸雀は……」

翠星石「こ、これ!やめるです水銀燈!」

薔薇水晶「(おろおろ……)」

薔薇水晶「(わたわた……)」

真紅「…………」

66: 2009/12/24(木) 18:54:11.63 ID:F9OFri6NO
真紅「落ち着きなさい。そんなことをする必要はないわ」

ドールズ「!」

雛苺「そ、そうは言っても真紅……」

翠星石「何かいい方法でもあるですか……?」

真紅「何も全部あげることはないわ。端を砕いてほんの少し分けてあげればいいのよ」

雪華綺晶「ですがお姉さま……」

金糸雀「この子の魂は今にも体を離れそうなのよ。小さな欠片なんかじゃとても……」

真紅「確かに一つや二つではそうでしょうね。でも――」

金糸雀「あっ……」

蒼星石「そうか、ここには今7つものローザミスティカが揃ってる……!」

68: 2009/12/24(木) 18:56:34.57 ID:F9OFri6NO
ドールハウス槐~

白崎「…………」

槐「はぁ……」

白崎「槐先生」

槐「なに?」

白崎「よければDVDでも見ませんか?こんな時のためにいくつか借りてありますが」

槐「白崎」

白崎「はい」

槐「君は本当に気が利くね」

白崎「お褒めに預かりまして光栄です」

69: 2009/12/24(木) 18:59:18.50 ID:F9OFri6NO
白崎「色々ありますが何にします?」

槐「明るいやつがいいな。この重苦しい雰囲気を忘れさせてくれるような」

白崎「わかりました。それではこれで……」

ピッ、ウィィィン……

TV『こち亀でいーじゃんwwwww短くていーじゃんwwwwwwww』

ブツッ

槐「…………」

白崎「…………」

槐「白崎」

白崎「はい」

槐「空気読めよ」

白崎「申し訳ありませんでした」

71: 2009/12/24(木) 19:04:48.29 ID:F9OFri6NO
真紅「水銀燈、準備はいいかしら?」

水銀燈「めぐ……」

翠星石「ほれ、もっとシャンとするですよ」

金糸雀「皆から集めた『命のかけら』。最後は貴女の手でこの子に分けてあげて」

蒼星石「完全に治すことはできないかもしれない。それでも――」

雛苺「きっと助かるわ。みんなの思いが詰まっているのだもの」

薔薇水晶「がんばって水銀燈……」

雪華綺晶「さあ、お姉さま……」

水銀燈「…………」

水銀燈「お願いめぐ、もう一度目を開けて……!」

72: 2009/12/24(木) 19:08:37.71 ID:F9OFri6NO
…………

…………

佐藤「どういうことでしょう?手術の痕まできれいに消えているなんて……」

医師「わからん。人体の神秘としか言いようがない……」

めぐ「……先生、検査は終わりました?」

医師「あ、ああ。これなら明日からは一般病棟に戻れるよ」

めぐ「そうですか。それでは少し休ませていただいていいですか?」

医師「そ、そうだな。それがいい。行こうか佐藤君」

佐藤「は、はい。そうですね……」

医師「何かあればナースコールで呼びなさい。薬はいつものを飲んでくれればいい」

めぐ「わかりました」

ギィ、バタン

医師「……??」

佐藤「……??」

74: 2009/12/24(木) 19:11:56.12 ID:F9OFri6NO
めぐ「ありがとう、水銀燈」

水銀燈「別に。私はたいしたことはしてないわ」

めぐ「ねぇ」

水銀燈「……なによ?」

めぐ「今日は随分遅くまでいてくれるのね」

水銀燈「ふん、単に帰るところがないだけよ」

めぐ「どういうこと……?」

水銀燈「交換条件。貴女を助ける代わりに教会は真紅たちに占領されてるの」

めぐ「えぇ?あの子たちがどうして……」

水銀燈「……と言っても今夜一晩だけの話よ。明日になれば戻れるわ」

めぐ「……?」

めぐ「あ」

めぐ「そういえば、今日は……」

75: 2009/12/24(木) 19:13:51.31 ID:F9OFri6NO
めぐ「……あなたは行かなくてよかったの?」

水銀燈「冗談じゃないわ。私はああいうお祭り騒ぎは嫌いなの」

めぐ「そっか……」

水銀燈「…………」

めぐ「それじゃ今夜はふたりきりね」

水銀燈「!」

めぐ「水銀燈、もっと私の傍に来て」

水銀燈「あ、あまり無理しないでよ?さっきまで貴女氏にかけてたんだから……」

めぐ「うん。わかってる」

ぎゅっ

水銀燈「…………」

めぐ「…………」

76: 2009/12/24(木) 19:16:40.97 ID:F9OFri6NO
礼拝堂~

みつ「はいコレ」

真紅「え、なに?」

みつ「みっちゃんからのプレゼントよ。ちゃんと人数分あるからね」

翠星石「うへぇ、お揃いのサンタコスチューム……」

蒼星石「まあまあ、たまにはこういうのもいいじゃないか」

雛苺「……どう、トゥモエ?ヒナこのお洋服似合ってる?」

巴「ええ、とても素敵よ。まるでお姫様みたい」

真紅「(この子はまたばかみたいにトナカイが似合うわね……)」

77: 2009/12/24(木) 19:20:24.89 ID:F9OFri6NO
金糸雀「ごめんね、みっちゃん……」

みつ「どうしたの?カナ」

金糸雀「みっちゃんはこんなにステキなプレゼントを用意してくれてたのに私……」

みつ「なに言ってるの、カナは最高のプレゼントをくれたじゃない」

金糸雀「えっ?」

みつ「あぁもう!こんな可愛い子たちに囲まれてイブを過ごせるなんて!
   私の人生、今が間違いなくピークだわ!」

ブバッ

金糸雀「鼻血!?」

みつ「心配しなくてももちろんカナが一番可愛いからーッ!!」

金糸雀「み、みっちゃん!服が血まみれになるかしら!」

80: 2009/12/24(木) 19:23:58.76 ID:F9OFri6NO
ドールハウス槐~

白崎「……もそもそ」

槐「……もそもそ」

白崎「槐先生」

槐「なに?」

白崎「このホワイトシチュー美味いっすね」

槐「ああ、今日のは特に自信作なんだ」

白崎「こっちの肉じゃがなんてもう職人芸の域ですよ」

槐「そうだろう?伊達に長年一人暮らしはしてないよ」

81: 2009/12/24(木) 19:26:37.01 ID:F9OFri6NO
のり「飲み物は行き渡ったようですね」

みつ「それじゃ早速はじめましょう……カンパーイ!」

金糸雀「乾杯かしらー!」

翠星石「乾杯ですぅ!」

雛苺「ちんちーん!」

巴「なッ……下品よ雛苺!?」

雛苺「うょ?」

梅岡「はは。柏葉、チンチンはイタリア語で乾杯という意味だ」

オディール「おばあ様に聞いたことがあるわ。雛苺はその昔イタリアにいたそうよ」

巴「あ、そ、そうなんですか……?」

84: 2009/12/24(木) 19:33:31.26 ID:F9OFri6NO
JUM「おげぇええええ!!」

梅岡「どうした桜田、気分でも悪いのか!?」

JUM「違っ、それ以上近寄らないで……!」

ビシャビシャビシャ……

梅岡「おかしいな。お酒なんて飲ませてないはずだけど……」

JUM「オェエエエ!ブッ、グエェエエエエエ!!」

のり「だ、大丈夫JUM君?」

巴「というかどうして梅岡先生がここにいるの……?」

真紅・翠星石・雛苺『…………』

雛苺「(うゅ、ごめんなの……)」

翠星石「(いつまでも引き篭もりってワケにはいかねーです)」

真紅「(強くなってJUM。これが私たちからのクリスマス・プレゼントよ……)」

85: 2009/12/24(木) 19:37:05.95 ID:F9OFri6NO
オディール「可愛い……雪華綺晶にそっくりね」

薔薇水晶「そ、そう……?」

オディール「あら?あなたにはちゃんと手を触れることができるのね」ペタペタ

薔薇水晶「……!」

オディール「ねぇ薔薇水晶ちゃん。ちょっとだけ抱っこさせてもらっていい?」

薔薇水晶「い、いいけど……」

ふわっ

オディール「やわらかくて温かい……ドールといっても人間と変わらないのね」

薔薇水晶「……///」

雪華綺晶「……おやめなさいオディール。薔薇水晶も嫌がっているでしょう?」

薔薇水晶「え?わ、私は……」

オディール「なぁに?妬いてるの雪華綺晶?」

雪華綺晶「な、何をばかなことを……」

86: 2009/12/24(木) 19:40:35.65 ID:F9OFri6NO
蒼星石「マスター、シャンパンをどうぞ」

一葉「ああ。ありがとう蒼星石」

蒼星石「…………」トクトクトク

一葉「蒼星石」

蒼星石「……はい?」

一葉「私に気を遣うことはない。お前も皆のところへ行っておいで」

蒼星石「い、いえ。僕は……」

一葉「心配しなくていい。私も十分楽しんでいるよ」

蒼星石「…………」

一葉「何年ぶりだろう。こんなに賑やかな夜はアイツが氏んで以来初めてだ」

87: 2009/12/24(木) 19:43:52.72 ID:F9OFri6NO
ドールハウス槐~

カラン、カラン……

白崎「あ、すみません。今日はもう閉店……」

ローゼン「――私だよ」

槐「し、師匠!?」

白崎「ローゼンさん?どうして貴方がこんなところに……?」

ローゼン「……グスッ」

槐「!?」

白崎「!?」

88: 2009/12/24(木) 19:47:44.26 ID:F9OFri6NO
ローゼン「みんなで楽しそうにしちゃってさぁ
     アリスゲームの、私のことなんてどうでもいいんだよ……」

槐「師匠の言う通りです、娘なんてホント勝手なモンですよ!」

ローゼン「ひっく。ぐびぐび……」

白崎「……貴方たちの場合は自業自得という気がしますが」ボソッ

槐「何か言ったか?」

白崎「い、いえ。何も……」

槐「まぁいい。ホラ、お前ももっと飲め」

白崎「(まったく、帰ってラブプラスやろうと思ってたのに……)」

ローゼン「うおーい槐君、酒が切れとるぞー!」

槐「白崎、そこの棚にあるヤツ全部持って来い」

ラプラス「え?でもここにあるのは一本10万もする貴方の秘蔵品……」

槐「うるへー!飲まなきゃやってられねーよ!」

ローゼン「そーだそーだ!」

白崎「はぁ……」スッ

ラプラス「仕方ありませんね。今夜は付き合いますか」

89: 2009/12/24(木) 19:50:19.52 ID:F9OFri6NO
トクトクトク……

ラプラス「それでは改めまして……」

ローゼン「ウム」

槐「男三人で過ごす聖夜に乾杯!」

ローゼン・槐・ラプラス『ハッピーメリークリスマース!!』



~おわり~

93: 2009/12/24(木) 19:57:59.28 ID:F9OFri6NO
即興なんてやったことなかったからgdgdでごめん
お前らに良いクリスマスが訪れますように!

94: 2009/12/24(木) 19:59:25.79 ID:rxDkS+bQO

みんな幸せそうで嬉しい気持ちになれた

引用: 金糸雀「みっちゃんが買い物から帰ってこないのかしら……」