416: 2011/06/12(日) 01:30:49.91 ID:yfUcrR8Y0

417: 2011/06/12(日) 01:31:39.14 ID:yfUcrR8Y0
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   16:58  第7学区  路上

垣根「……あー楽しかった」

固法「ホントに?」

垣根「ああ。あの店もウマかったし」

固法「よかった。喜んでもらえて」ニコッ


ネムリニツーカナイコイノムクロニー ハヤークトドーメヲサシテーヨー♪


固法「あ、ごめんなさい」パカ

垣根「ん」

固法「……碧美からだわ。帰りに買い物してきて、ですって」

垣根「…………なぁ」

固法「なに?」

垣根「アンタTM好きなの?」

固法「え!?」

とある魔術の禁書目録 外典書庫(4) (電撃文庫)
418: 2011/06/12(日) 01:32:13.12 ID:yfUcrR8Y0

垣根「その着うた、『魔弾』だろ?結構前の曲だし珍しいから、好きなのかなーって」

固法「え、ええ割と」

垣根「ふーん……まあ他意はねえけど。オレも結構聴くし」

固法「本当!?」

垣根「ウソついてどうすんだよ。TMも聴くけどどっちかっつーとabsの方がよく聴くかな」

固法「じゃあ、absの中だったらどの曲がいい?」

垣根「そうだな。やっぱり………」

固法「ひょっとして………」



垣根固法「「『HOWLING』だな(かしら)」」


垣根「お、マジか!」

固法「垣根さんも?」

垣根「ああ、『STERNGTH.』とか『アテナ』とかも好きなんだけどよ、やっぱり『HOWLING』が一番だな」

固法「私も!『HOWLING』が一番だけど『STRENGTH,』のピアノも好きなの!」

垣根「おお、アンタ話が分かるな!そうだよ、あの曲はピアノがいいんだよな!」


………! ……!? …………!! ……… ‥ ‥ ‥  ‥  ‥



419: 2011/06/12(日) 01:32:56.85 ID:yfUcrR8Y0

固法「ふふふっ、こんなに盛り上がるとは思わなかったわ」

垣根「だな。あんまり話題に上んなかったし………そうだ」

固法「え?」

垣根「今度はカラオケでも行こうぜ」

固法「カラオケ?私あんまり行ったことないんけど……」

垣根「マジで?アンタ遊ばなさすぎだろ。オレなんか2週間に一回は行ってるぞ」

固法「それはさすがに通いすぎじゃないかしら……」

垣根「男子高校生の娯楽はカラオケかゲーセンって相場が決まってんだ。男三人で買い物なんか行かねえし」

固法「男三人って、上条くんともう一人のお友達と?」

垣根「ああ、アイツらと行くのも楽しいんだがいっつも同じメンツってのもな。
   アンタだったら知ってる曲多くて楽しそうだし」

固法「私が行ってお邪魔にならないかしら?」

垣根「ならねえならねえ。アイツらも野郎ばっかより彩りがいた方がいいだろ。
   あ、野郎ばっかりがイヤならアンタもダチ連れてこいよ。例の同居人でもいいし」

固法「そうね…………」


固法(本当は垣根さんと二人がいいんだけど…………)


固法「……わかったわ。碧美にも声かけておくわね」

垣根「そうこねえとな」


固法(み、密室に二人だけなんて………む、無理!!)


420: 2011/06/12(日) 01:33:54.38 ID:yfUcrR8Y0


固法「じゃあ頼まれた買い物もあるし、ここまででいいわ」

垣根「ん?いや、買い物くらい付き合うぜ?」

固法「日用品の買い物がほとんどだし、その…………」

垣根「あん?」

固法「あ、あんまり見られたくないものもあるから………」

垣根「……あー……悪い、気が利かなくて」

固法「い、いえ、こちらこそごめんなさい」

垣根「謝るなって。じゃ、また今度な。カラオケ行くときは声かけるからよ」

固法「………か、垣根さん!」

垣根「何?」

固法「その………今日は、ありがとう」

垣根「………ああ。じゃあな」



垣根「さってと。晩飯どうすっかな」スタスタ

垣根(昼にスパゲッティ食っちまったし、正直最近マカロニ飽きたしな)

垣根(しかしあの店のたらこスパはやたらウマかったな)

垣根(………また行こう)




??「機嫌がいいわね。何かいいことでもあったの?」




垣根「!!……………テメエは………っ!!!」


421: 2011/06/12(日) 01:34:33.64 ID:yfUcrR8Y0






心理「久しぶり。元気だったかしら?」

垣根「…………………心理定規」







422: 2011/06/12(日) 01:35:39.87 ID:yfUcrR8Y0

心理「あら、そんな怖い顔されるなんて心外だわ。元仕事仲間に再会した感想とかないの?」

垣根「テメエを仲間だと認識したことは一度たりともねえよ。そんなことより何の用だ?」

心理「つれないのね」

垣根「何 の 用 だ ?」

心理「…………あなたの顔を見にきた、って言ったら?」

垣根「用がねえなら失せろ。もうオレはテメエらとは関係…」



心理「……ないって言いきれる?」

垣根「………何だと?」

心理「別に。深い意味はないわ。ただ………」

心理「過去を切り捨てた気になってるなら、それはステキな勘違いよ」

垣根「あ?」

心理「私が懇意にしてる情報屋さんがね、いつも言ってるの。
  『過去ってヤツはさびしがり屋でさ、オレたちがそれを忘れようと、あるいはのたれ氏のうと
   お構いなしにひたすらひたすらひたすらひたすら追いまわすんだ。
   だから過去からはどう足掻いても逃げられないんだよ』ってね」

垣根「…………」

心理「そうでなくても、あなたが背負っている、
   いいえ、あなたにまとわりついている過去はただでさえ大きくて重すぎるわ」

垣根「………」

心理「その過去はいつか必ずあなたに牙を剥く」


424: 2011/06/12(日) 01:36:42.14 ID:yfUcrR8Y0

垣根「………くだらねえ。そんな下らねえことをわざわざ言いに来たのか。ご苦労なこったな」

心理「くだらないかしら?」

垣根「ああ、くだらねえな。オレが過去の亡霊ごときにやられるって?ハッ、笑えねえ冗談だ」

心理「そうね。確かにあなたは強いわ。それは私もよく知ってる。









   ……………だけど、彼女はどうかしら?」

垣根「!!!!」

心理「ああいう娘が好みなの?意外に地味なタイプが好きなのね」クスクス

垣根「アイツに手ぇ出してみろ。必ずテメエを探し出してぶっ頃す」

心理「あらあら、ずいぶんとあの子にご執心みたいね」

垣根「そんなんじゃねえ。オレの『今』に土足で踏み込むヤツは許さねえっつってんだ」

心理「許さない、ねぇ………できるの?今のあなたに」

垣根「!」


425: 2011/06/12(日) 01:38:10.17 ID:yfUcrR8Y0

心理「それに、そこまでムキになることもないんじゃない?『友達』、なんでしょう?」

垣根「………相変わらず趣味の悪ぃ能力だ」

心理「最高の褒め言葉ね。でもこれはあくまで親切で言ってるのよ?」

垣根「まだそんなくだらねえ戯れ言ぬかす気ならまずは下あごから吹き飛ばしてやろうか?」

心理「ひとの言うことは最後まで聞くものよ」

垣根「…………チッ」

心理「あなたの過去が傷つけるのはあなただけじゃない。あなたは自分で火の粉を払えるだろうけど、
   あの子にも同じことができるかしら……?」

垣根「…………」

心理「そうでなくても、あなたの力は単純に大きすぎるわ。力加減を間違えればあの子、あっという間にひき肉になっちゃうかもね」

垣根「………オレがアイツを頃すってのか」

心理「あなたが、とは言ってないわ。あなたの力が、よ。あなたの意思に関係なくね」

垣根「人を頃すのは銃か人か、ってか?ばかばかしい。人を頃すのはいつだって人だ」

心理「あら、氏因はいつだって心臓の鉛弾なんじゃなくて?」

垣根「引き金を引くのは人だ」

心理「暴発ってことがあるわ。あるいは流れ弾とか、ね」

垣根「………」




心理「あなたが守らなきゃいけないものは自分だけじゃないってこと、
   覚えておいて損はないと思うけど?」





426: 2011/06/12(日) 01:39:00.56 ID:yfUcrR8Y0

垣根「…………話は終わりか?」

心理「ええ」

垣根「だったらオレは帰るぜ」





心理「最後にもう一つだけ」

垣根「あ?」




心理「あの子とあなたの距離単位、知りたい?」



垣根「………………興味ねえな」


心理「そう」ニコッ



心理「………これは、予想以上に面白いことになってきたわね」

心理「あの分だとあの人、本当に自分の気持ちに気づいてないのかしら?」

心理「………早くしないと、おばあさんになっちゃうわよ」クスクス




427: 2011/06/12(日) 01:40:20.46 ID:yfUcrR8Y0

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  17:20  固法・柳迫の部屋

固法「ただいま」

柳迫「おかえりー♪どうだった?初めての二人っきりので・え・と(はぁと」

固法「楽しかったわ。とっても」

柳迫「おや?この間とずいぶん反応が違うじゃない?何かあったの~?」ニヤニヤ

固法「な、何もないわよ!」

柳迫「本当にー?怪しいなぁ」

固法「本当よ!」

柳迫「ふーん。ま、そういうことにしておいてやりますか」

固法(ほっ……)

柳迫「あ、あのお店のカップル限定スイーツおいしかった?」

固法「やっぱり知ってたのね!」

柳迫「あったり前じゃない。学校で知らなかったのアンタくらいよ?」

固法「知ってたなら教えてくれてもいいじゃない!おかげでこっちは顔から火が出るくらい恥ずかしかったのよ!?」

柳迫「だって、教えたらアンタ行かなかったでしょ?」

固法「それは………」

柳迫「いいじゃない、どうせ周りの雰囲気に呑まれてイチャイチャしてきたんでしょ?」

固法「い、イチャイチャなんてしてないわよ!変なこと言わないで!」

428: 2011/06/12(日) 01:42:06.85 ID:yfUcrR8Y0

柳迫「どうだかねー♪」クスクス

固法「しては、いないけど…………」

柳迫「……………けど?」

固法「わ、私の好きなものが分かって、うれしいって、言われた………」カァァァ

柳迫「おお!!!」

固法「それで……………」

柳迫「お、まだ続きが?」

固法「その時に照れて赤くなった垣根さんの顔が……その……か、かわいかった」

柳迫「oh...」

固法「何その反応!?」

柳迫「美偉、私はね、進 展 が あったかを訊いてるの。
   赤くなったイケメンがかわいかったかどうかはこの際どうでもいいの!ホントはちょっと興味あるけど!」

固法「し、進展って………!べ、別に何も……」

柳迫「なかったの?」ズイッ

固法「うう………な、成り行きで……」

柳迫「成り行きで!?」

固法「だ、抱きついちゃった……」

柳迫「おおおおおおおおお!それでそれで?」ワクワク

固法「それで、私が落ち着くまでそばにいてくれて、その、あ、頭なでてもらった」

柳迫「そうそれ!そういう話を待ってたのよ!」

固法「……碧美、さっきからテンションおかしくない?」

柳迫「気のせい気のせい。で?他には何かなかったの?」


429: 2011/06/12(日) 01:42:52.64 ID:yfUcrR8Y0

固法「………他には……バッティングセンターに連れて行ってもらったり、公園でお話したくらいで、何も……」

柳迫「ふーん……?」ジー

固法「な、何?」

柳迫「べっつにー?」


柳迫(……これはまだ絶対何かあるわね!でもバッティングセンターとか公園とは、なんて色気のない……)


固法(い、言えない……!かか、間接キス(未遂かもしれないけど)されたり、寝顔を見られたりしたなんて!)


柳迫「でもまぁ、楽しかったなら何よりよ。……がんばったね、美偉」

固法「うん………あ、そうそう、これ頼まれた買い物」ゴソゴソ

柳迫「ありがと!あ、もしかしてジャマしちゃった?」

固法「ううん、メールが来たときはもう帰る途中だったし……思い出した、ねえ碧美」

柳迫「ん?」

固法「その……今度カラオケ行かない?」

柳迫「カラオケ!?行く行く!!カラオケはちょっとうるさいわよ、私」

固法「そう、よかった」


430: 2011/06/12(日) 01:43:35.36 ID:yfUcrR8Y0

柳迫「でもどうしたの急に?珍しいじゃない、美偉がそんなところ行きたがるなんて。
   普段は誘っても来ないのに」

固法「それは……帰り道に、垣根さんと音楽の話で盛り上がって、
それで今度垣根さんたちとカラオケに行こうって話になって…」

柳迫「ふむふむ………うん?」

固法「それで垣根さんが、男の人ばっかりだと私が嫌だろうから同居人でも連れて来いって……」

柳迫「はぁ……押しが強いんだか弱いんだか………」

固法「え?」

柳迫「何でもない!でも男の人とカラオケかぁ。普段歌えない曲も歌っちゃおうかなぁ。友達と一緒の時だと反応悪いんだよね」

固法「普段歌えないって、いつも聴いてる曲?」

柳迫「そうっ!すっごくいいユニットなのに友達は誰も知らないんだよ?おまけにもう解散しちゃったし………」

固法「それは知らないでしょうね……」

柳迫「それに美偉に約束を守ってもらういい機会だし?」

固法「約束?」

柳迫「言ったじゃない!上手くいったら彼の友達紹介してねって!」

固法「本気で言ってたのアレ!?」




431: 2011/06/12(日) 01:44:43.75 ID:yfUcrR8Y0

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   17:38   垣根のマンション

垣根「だれもいないけどただいまー、っと」

垣根「ふぅ……………」ボスッ


垣根(心理定規…………あの女、今更ノコノコ出てきてどういうつもりだ)

垣根(オレの力がアイツを、固法を傷つける、だと………?)

垣根(しかも『過去はさびしがり屋』?『どう足掻いても逃げられない』?………くっだらねえ)



垣根「誰であろうと、オレの『今』を、アイツを壊そうってんなら容赦しねえ」



垣根(チッ、あの女に会ったせいでしょうもねえこと考えちまった)

垣根(昔の話はやめやめ。もっと建設的なことを…)

垣根「あ、そういや晩飯どうするか考えてねえな。めんどくせえからコンビニで…」


テーイクーノテイクーヲ ハシッテールノーガボクナラ♪


垣根「あん?メール?一方通行からか?」パチン





垣根「はぁぁぁぁぁぁぁぁ!!??なんだこの写メ……つか何でコイツがこの写真を…」

垣根「まさか俺を尾けて……!あんのクソモヤシがぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

垣根「ぶ ち 殺 す ! ! ! !」

ガタガタバタン!  バッサァ……

437: 2011/06/12(日) 17:25:15.82 ID:cqV6XW0d0
First Epilogue  GO! GO! 選挙
   19:22   垣根のマンション

垣根「………」ボーッ

固法「何見てるの?」

垣根「ん。テレビ点けたらなんかアイドルの特番やってた」

固法「特番?……ああ、総選挙ね」

垣根「総選挙?コイツら選挙出てんの?」

固法「違うわよ。いうなれば大がかりなファン投票ね。CDを買った人が自分の好きなメンバーに投票して、
   その結果で出番を増やすかどうか決めるんですって」

垣根「なんだそりゃ。選挙じゃなくて株主総会じゃねえか。金払ったやつが一番発言力があるってことだろ?」

固法「言われてみればその通りね。でもファンが満足してるならそれでいいんじゃない?」クスッ

垣根「そんなモンか」

固法「きっとそうよ。………ねえ、一つ訊いてもいい?」

垣根「あん?」


438: 2011/06/12(日) 17:26:06.82 ID:cqV6XW0d0

固法「その………帝督さんはどの子が一番好き?」

垣根「は?」

固法「だからその…………帝督さんはどんなタイプが好きなのかなぁって、少し気になって」

垣根「んなこと言われてもな。名前を聞いたことぐらいはあるがぶっちゃけ興味ねえし」

固法「でもほら、今映ってるメンバーで『あ、この子カワイイ』って思う子はいるでしょう?」

垣根「何?美偉はどうしてもオレをアイドル好きにしたいワケ?」

固法「そういうワケじゃないけど………」






垣根「………いねえよ」ボソッ

固法「え?」

垣根「っつーか、オレが好きなのは美偉だけだし」

固法「!」

垣根「隣にこんないい女がいて、何で芸能人に興味持ってる暇なんざねえっつーの」

固法「もう……すぐそういうこと言うんだから」カァァァ

439: 2011/06/12(日) 17:27:16.07 ID:cqV6XW0d0

固法「それは………」

垣根「まあ大方予想はつくけどな。どうせオレが選んだメンバーが自分と逆のタイプだったらどうしよう、
とか考えたんだろ?」

固法「!」ギクッ

垣根「図星か」ニヤニヤ

固法「うう………///」

垣根「お前、かわいすぎ」グイッ

固法「………帝督さんなんか、キライ」プイッ

垣根「………本当は?」




固法「………………ウソ。大好き」ギュッ

垣根「オレもだよ、美偉」

固法「帝督さん……………」





ピンポンピンポーン ガチャッ

一方「いるかァーメルヘン。鍋やンぞ鍋ェ」

上条「邪魔するぞー」

禁書止め「「おじゃましまーす!」」


440: 2011/06/12(日) 17:27:53.57 ID:cqV6XW0d0

垣根「」

固法「」

上条「あれ……、もしかして、ホントにお邪魔だった?」

垣根「なっ……お前ら!鍋は今度の金曜って言ってただろうが!」

一方「うるせェ、地鶏のイイ肉が手に入ったンだよ。あァン?なンだよ取り込み中だったかァ?」

固法「は………あ……………」カァァァァァ

禁書「みい、かおが真っ赤なんだよ」

打止「ねえねえ、ひょっとしてチューするところだったの?ってミサカはミサカは野次馬根性丸出しで尋ねてみたり!!」ネェネェ



垣根「で……」

垣根「出ていけぇーーーーーー!!!」

448: 2011/06/18(土) 02:20:51.08 ID:q3K1F1g60
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   5日後 金曜日 15:42 第7学区 ファミレス『ジョイナス』

垣根「」ムッスー

上条「なあ、いい加減機嫌直せよ垣根」

垣根「モヤシが土下座して謝るまで絶対に許さねえ」ムッスー

一方「はァ?調子乗ってンじゃねェぞメルヘン」

垣根「それはこっちのセリフだクソボケ!人のこと尾け回してあんな写メまで送りつけやがって!!」バンッ

上条「やめろ一方通行!今回は完全にオレ達が悪い!」

一方「チッ」

垣根「何『三下がそこまで言うンだったら仕方ねェなァ』みてえな顔してんだよ!謝れよ!!」

一方「…反省してまァーす」フンス

垣根「だから態度で示せっつってんだろうが!!」

上条「まぁまぁ垣根も落ち着けって。ここは俺に免じて、な?」ゴメンネ

垣根「………まあ上条がそこまで言うんなら、ここはモヤシのおごりってことで手打ちにしてやらあ」

一方「あァン!?」

垣根「イヤだってんならオレんちで預かってるテメエの巨OモノAVテメエんちに送りつけるぞ?」

一方「!!」


449: 2011/06/18(土) 02:22:18.52 ID:q3K1F1g60

垣根「打ち止めちゃんに見つかりそうだから預かってろって言われてそのままなんだよなぁアレ。
   何だったら宛名は打ち止めちゃんにしてやろうか?」アーン?

一方「…………チッ」

垣根「決まりだな。折角だからもっと何か頼むか。おっ、このティラミスウマそう」

一方「オイメルヘン、テメェあンまり図にのってっと…」

垣根「ナースモノとメイドモノも追加してやろうか?」ギロッ

一方「クッソ野郎がァ…………!」

垣根「すいませーん!注文いいですかぁー?」ピンポーン




450: 2011/06/18(土) 02:23:09.35 ID:q3K1F1g60

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   15:51 第7学区 路上

垣根「ごちそーさん」

一方「クソッ」

上条「これからどうする?またどこか行くか?まだ日は高いけど」

垣根「今日はシスターちゃんの世話はいいのか?」

上条「インデックスは小萌先生のところに泊りに行くって言ってた『おりょうり合宿なんだよ!』とか何とか言ってたけど」

垣根「……がんばってんな、シスターちゃん」

上条「そうだなー、アイツが少し家事を覚えてくれるだけで上条さんだいぶ楽になるんだけどなー」アハハ

垣根「…………マジでがんばれよ、シスターちゃん」ボソッ

上条「へ?」

垣根「テメエはいっぺん氏ねっつったんだよ」

上条「お前ら最近俺に対する風当たり強くない!?」



451: 2011/06/18(土) 02:23:44.59 ID:q3K1F1g60

一方「…………カラオケでも行くかァ」

上条「カラオケかぁ。そう言えば最近行ってないな」

一方「おォ、イイ感じに時間も潰せるだろォ?」

上条「そうだな、じゃあカラオケにするか」

垣根「……ちょっと待ってろ。カラオケなら人を呼ぶ」ピッポッパ

上条「人?」

垣根「ああ」prrrrr



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   同時刻 固法・柳迫の高校・校門前

柳迫「みーいー!」タタタ

固法「碧美」

柳迫「今日非番でしょ?一緒に帰ろ」ギュッ

固法「ええ」


452: 2011/06/18(土) 02:24:15.83 ID:q3K1F1g60

柳迫「そう言えばさぁ」

固法「うん?」

柳迫「あれから連絡ないね、あの人から」

固法「………垣根さんのこと?」

柳迫「そう!薄情だとか、冷たいとか思わないの?」

固法「あの人は……そういうタイプじゃないから」

柳迫「ふーん?」

固法「な、何?」

柳迫「べっつにー?」ニヤニヤ

固法「もうっ……でも…」

柳迫「でも?」



固法「ちょっとだけさびしい……かな」

柳迫(何この子かわいい。抱きしめたい)


453: 2011/06/18(土) 02:25:36.00 ID:q3K1F1g60


ケガレタユービサキデー ヨルヲソソーギコンデー♪
チギーレルーマデーキミーヲコジアーケテー♪


固法「あ、ちょっとゴメン」

 【着信】
 垣根 帝督

固法(垣根さん!)

柳迫「おんやー?ウワサをすればなんとやら、ですか?」ニヨニヨ

ピッ

固法「はい、固法です」

垣根『おお、オレだ。突然で悪ぃがアンタ今日はヒマか?』

固法「今日?ええ、今日は非番で特に予定もないけど」

垣根『そっか。実は今から上条達とカラオケに行くことになってよ。よかったら来ねえか?』

固法「カラオケ?」

垣根『ほら、この間言っただろ?カラオケ行くときは声かけるって』

固法「えーと………」チラッ

柳迫(行く!行くって言いなさい!)ヒソヒソ

垣根『ひょっとして都合悪かったか?』

固法「そういうワケじゃないんだけど、今友達と一緒で…………」チラッ

柳迫(折角連絡来たのに何言ってんのこの子は!)

垣根『そうか、んじゃ残念だがまたの機会に……』

柳迫(これ逃したらまた当分音沙汰なしよ!分かってんの!?)

固法(!!)


454: 2011/06/18(土) 02:26:15.37 ID:q3K1F1g60

固法「だ、大丈夫!行く、行くから!」

垣根『お、マジ?別に無理しなくてもこっちはいつでも…』

固法「本当に大丈夫だから!何だったらさっきまで碧美とカラオケでも行きたいなーって話してたくらいで!」

垣根『ああ、友達って例の同居人か。わかった、じゃ今から20分後に第7学区のカラオケBOXに集合な』

固法「ええ、わかったわ」

垣根「それじゃまた後でな」

ピッ

固法「はぁ」パタン

柳迫「何でアンタって子はわざわざ降ってきたチャンスを逃そうとするの?」

固法「だって、いきなりだったからビックリして……」

柳迫「彼もそうだけどアンタのヘタレも大概ね…」

固法「うう…………」

柳迫「まあいいわ、最後に勇気を出したごほうびにイイコト教えてあげる」

固法「いいこと?」

柳迫「耳貸しなさい」チョイチョイ

固法「?」ススッ

柳迫「いい?………で……」ヒソヒソ

固法「………ふええ!?」


455: 2011/06/18(土) 02:27:33.53 ID:q3K1F1g60




ピッ

垣根「でかしたぞモヤシ。今この瞬間だけ褒めてやる」

一方「何コイツ本気でウゼェンだけど。頃してイイ?」

上条「誰か呼んだのか?」

垣根「ああ。固法とそのダチ」シレッ

上条「うええ!?」

一方「どォしてそォなる」

垣根「こないだアイツと約束したんだよ、カラオケ行くときは声かけるって」

上条(コイツの行動力はたまにいみがわからないな)ヒソヒソ

一方(タダの天然だろォ?)ヒソヒソ

垣根「おい、何をコソコソ話してやがる」

上条「いや、別に何でも……でもそれなら二人で行けばよかったんじゃないのか?」

垣根「は?何言ってんだ。二人でカラオケ行ったってつまんねえだろ」

上条通行「「」」

垣根「やっぱ3人はいねえと盛り上がらねえよなぁ。オレの理想は5人くらいなんだが、
   カラオケ行く相手なんざお前らくらいしかいなかったし。
   そう考えると固法ともう一人でピッタリだな!」ヒャッホウ


上条(天然だ)ヒソヒソ

一方(天然だなァ)ヒソヒソ


垣根「だから何コソコソ話してんの?」




456: 2011/06/18(土) 02:28:41.35 ID:q3K1F1g60

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   16:08  第7学区 カラオケ『パサラ』

固法「お待たせ、垣根さん」

垣根「よう」

上条(この人が固法さんの友達か……)

垣根「……そっちが?」

柳迫「はい!美偉のルームメイトで親友の柳迫碧美でーす。よろしくね」ニコッ


柳迫(おお、写真で見るよりイケメンじゃない!美偉のヤツ、うまいことやったわね)


垣根「垣根帝督。よろしく、お嬢さん」

柳迫「やっだもぉ、お嬢さんなんて!」

上条「………誰にでも言うんですよ、それ」ハァ

柳迫「え?」


457: 2011/06/18(土) 02:29:34.72 ID:q3K1F1g60

垣根「ああ、こっちがオレのツレで…」

上条「か、上条当麻です」

一方「……………一方通行だ」

固法「アク……っ!ひょっとして、第1位!?」

柳迫「うっそ、マジで!?」

一方「あァ?」ギロッ

固柳「「!」」ビクッ

垣根「あーゴメンな。コイツあんまり同年代の女とうまくコミュニケーションとれねえんだよ。
   ただのかわいそうなコミュ障だから気にしないでやってくれ」

一方「あ゛ァ!?ブチ頃すぞクソメルヘン!!」

垣根「あぁん!?純然たる事実だろうが!!」

上条「やめろ二人とも!一方通行も固法さん達に謝って!」



一方「チッ…………悪かった」ゴメンネ

固法「い、いえ、私たちも大声出してごめんなさい」

柳迫「ごめん、なさい」ペコリ

垣根「……じゃ、全員そろったところでそろそろ入るか」




458: 2011/06/18(土) 02:31:04.34 ID:q3K1F1g60

-----------------------------------------------------------------------

垣根「離せぇぇぇぇぇぇぇぇ!!オレが最初だぁぁぁぁぁぁぁ!!!」グイグイ

一方「うるせェェェェェェェ!最初はオレだァァァァァァ!!」グイグイ

上条「リモコンは一個じゃないんだなーこれが」ピッピッピピッ

垣根「あっ上条てめっ!」


    ぶっ生き返す!! / マキシマム ザ ホルモン


垣根「おおおおしょっぱなから熱いな!」

一方「………イイねェ、最っ高だねェ!!」

固法「?」

柳迫「あ、ホルモン歌えるんだ。すごーい」

上条「いやあ、単に好きなだけで全然……あっ始まりますね」


   《♪記憶の墓場にバラ撒かれた まるで「生命のダスト」「感動の迷宮」♪》

      《♪積もり積もる骨に涙涸れて 薄っぺらなメモリアルと化した♪》



垣根「やっぱ最初はこれくらいテンション上げていかねえとな」

一方「空気を温めるには持ってこいだぜェ」

459: 2011/06/18(土) 02:31:57.63 ID:q3K1F1g60

柳迫「謙遜してた割にウマいじゃん!」

固法(………すごい曲)



   《♪猛烈球 股間にデッドボール 氏体蹴っ飛ばして♪》

垣根通行「「ゲップ出すBOMB!!!」」

固法「!」ビクッ


  《♪ブッイキス!! てめーらブッイキス!! I wanna ブッイキス!! てめーらブッイキス!!♪》

垣根通行「「ブッイキス!! 貴様らブッイキス!! 貴様らブッイキス!! 貴様らブッイキス!!」」

柳迫「て、テンション高いね」

固法「…………帰りたい」



   《♪脳味噌 常に震わせて 荒々と運命に背く♪》

   《♪もういっそ オレに生まれたなら♪》


垣根通行「君をーぶっ生きかえーーーす!!!」


           《♪君を ぶっ生き返す!!♪》



460: 2011/06/18(土) 02:32:47.98 ID:q3K1F1g60

垣根通行「「イエェーーーーーイ」」シャンシャンシャン

固法「す、すごい一体感ね」

垣根「ん?ああ、こうした方が盛り上がるだろ?」

固法「そういうものなの?あまり来たことないから……」

垣根「あーそうか。まあ無視されるよりマシだろ?」

固法「そう、ね」

柳迫「よぉし、次は私よ!」ピッピッピピッ

一方「オイ女ァ!テメェ何を勝手に…」


    さぁ / SURFACE


垣根上条通行『SURFACEだと!!?』

柳迫「分かるの!?」

垣根「あったり前だろ!」

一方「人生の応援歌だァ」

上条「むしろ女の人でSURFACE知ってる人初めて見ましたよ」

柳迫「うれしいー!友達で知ってる子いないからマイナーなのかと思ってた!」キラキラ


461: 2011/06/18(土) 02:33:45.74 ID:q3K1F1g60



    《♪何でも自分でできるって 強がるだけ強がってもね♪》

       《♪キミがいなきゃ何も出来ないし♪》


一方「……名曲だァ」

垣根「ああ、疑いようがない」

上条「何で解散しちまったんだ……」シクシク

固法(泣くほど?)


     《♪冷蔵庫開けりゃ 何もありゃしないや♪》

垣根上条通行『さぁ!』

       《♪吸いこんでくれ 僕の寂しさ孤独を 全部君が♪》


垣根上条通行『さぁ!』


     《♪噛み砕いてくれ くだらんこと悩みすぎる 僕の悪いクセを♪》



固法「あの、垣根さん」チョンチョン

垣根「ん?」

固法「このリモコンの使い方がよくわからないんだけど……」ススッ

垣根「!?」

462: 2011/06/18(土) 02:34:55.26 ID:q3K1F1g60


垣根(か、顔が近ぇ!)


固法(こ、これでいいのかしら……)



柳迫『いい?カラオケBOXっていうのはそりゃあもう大音量で音楽が鳴り響いてるわけ。
   普通に会話してたんじゃ互いの声なんて聞きとれるわけないじゃない?だからこうやって』グイッ

固法『きゃっ』

柳迫『自然に相手との距離を詰める。物理的な距離が縮まれば心理的な距離も縮まるって寸法よ』



固法(……って言われて近づいたのはいいけど……は、恥ずかしい!)

垣根(髪サラッサラだなコイツ。目とかすげぇキレイだし、何かいい匂いする……って何考えてんだオレ!変Oか!!)


垣根「あ、ああ、この店はほかの店と違ってよ、ちょっと特殊だがそのかわり曲数はすげえんだぜ」ピッピッ

固法「へぇ……」

垣根「折角だから何か歌うか?」

固法「え、ええ、そうね……でも私に歌える曲なんてあるかしら……」

垣根「何もそんな難しく考える必要はねえよ。ほら、西川なら覚えてるだろ?」ピッピッピピッ

固法「じゃあ………この曲で」ピピピピッ


463: 2011/06/18(土) 02:35:58.53 ID:q3K1F1g60





     《♪やっぱり君が 誰より好きだから♪》


        《♪『サヨナラ』できない♪》



垣根「うおおおおおおおすげえ!」

一方「何で解散しちまったんだァ……」

上条「それさっき俺が言った」

固法(………本当に好きなのね)

一方「じゃ、次はオレだな……」ピピピッ

垣根「あ、違う違う、コイツだから」

一方「オイィ!!何回オレのジャマすりゃァ気が済むン……」


     JAP / abingdon boys school


上条「おお、absですか。意外ですね」

固法「そ、そうかしら」

一方「…………仕方ねェ、西川に免じてここは譲ってやらァ」

柳迫「何?ツンデレってやつ?」

一方「はァ!?」

464: 2011/06/18(土) 02:36:36.75 ID:q3K1F1g60



     《♪Inside out ぶった斬れ 煩悩絶つTrigger♪》

       《♪しょうもない Pride なんて ゴミの日に捨てて♪》

垣根上条「「ハイハイ!」」


一方「う、ウメェじゃねェか……」

柳迫「でしょ?あの子仕事柄体鍛えてるから見た目の割に声量あるのよ。音感もいいし」

一方「へェ………」

柳迫「ところでさ」ヒソヒソ

一方「あァ?」



柳迫「あの二人ってどこまで行ったの?」ヒソヒソ

一方「あ、それ訊いちゃうゥ?」

柳迫「え!?何か知ってるの?」ヒソヒソ


465: 2011/06/18(土) 02:38:23.70 ID:q3K1F1g60

一方「知ってるも何も……」チラッ


      《♪神風(かぜ)よ誘え 未知なる方へ♪》


垣根上条「「アンテーーーーーイム!!!」」


      《♪沸き上がる熱と 燻ぶる魂が胸を締めつける♪》



一方「………いいか別にィ」ピッポッパ

柳迫「?」

一方「コレ、押さえた現場写メ」ホレ

柳迫「ウソ!どうしたのこの写真!」ヒソヒソ

一方「野郎を一日尾行して撮ったァ」

柳迫「………何ですって?」ピクッ

一方(あ、ヤベェ、地雷マズったかァ?)



柳迫「あなた達、そんな面白そうなことしてたの!?」

一方「」


466: 2011/06/18(土) 02:39:32.30 ID:q3K1F1g60

柳迫「うわー、そんな面白いことになってるなら私も行けばよかった~」

一方「……こンなムービーもあるンだが」ピッポッ

柳迫「何なに?………おおおおおおおお!コレは!!」

一方「……オマエとは気が合いそうな気がするなァ」



     《♪I’m  gonna  live  out  my  life  untaimed!!♪》



垣根上条「「ォォオオオ!ファイ!ファイ!」」


固法「お、お粗末でした」

垣根「いやいや、十分うめえって!」

上条「そうですよ」



柳迫「………じゃ、さっきのアドレスに送ってね」ヒソヒソ

一方「おォ、任せろォ」ヒソヒソ



固法(……あの二人、いつの間に仲良くなったのかしら)



473: 2011/06/21(火) 03:10:40.61 ID:VSQ0l8Sr0

垣根「んじゃ、次はオレだな」

一方「ふざけンな!ふざっけンなよメルヘン!!次はオレだァ!!」

垣根「は?もう入れたし」



    オリオンをなぞる / UNISON SQUARE GARDEN



上条「おお、これか」

柳迫「ユニゾンだー!」

垣根「知ってんのか?」

柳迫「大好き!」

固法(……………知らない曲だわ)



    《♪ ごきげんよう どうかしたんだろ?顔を見れば一瞬で分かるよ ♪》

    《♪ 千里眼千里眼? めっそうないです ♪》



固法「………いい曲ね」

柳迫「これね、最近勢いのあるバンドなんだよ。」

固法「へぇ………」


474: 2011/06/21(火) 03:11:49.28 ID:VSQ0l8Sr0

上条「っていうか柳迫さん、音楽詳しいですよね」

柳迫「えー?そんなことないよ、普通だよ」

一方「普通の女はSURFACEなンか知らねェ」

柳迫「そんなことないもん!美偉だって知ってるし!ねえ美偉……」



     《♪ ほら僕たちなんて 十分適度に ドラマチックさ 軽くスーパースター ♪》

     《♪ オリオンをなぞる こんな深い夜 ♪》

     《♪ つながりたい 離されたい つまり半信半疑あっちこっち ♪》


固法(かっこいい………)



柳迫「………聞いてないし」

上条「むしろ聴き入ってますね」

一方「ったく、あンなメルヘンのどこがいいンだァ?」

柳迫「………女の子には色々あるのよ」

上条「おお、何かそれっぽいですね」


475: 2011/06/21(火) 03:12:41.38 ID:VSQ0l8Sr0

一方「くっだらねェ」

柳迫「それに人の好みにケチなんてつけるもんじゃないしね」

一方「ハッ、確かになァ。こういうことはやっぱり………」



柳迫通行「「イジり倒して面白がるに限るのよ(ンだよ)」」

上条「」



柳迫「あなたもそう思う?」ニヤッ

一方「あったりめェだろォ?」ニィッ

柳迫「明らかに何か隠してるあの子から根掘り葉掘り聞き出すときのあの感じがたまらないのよねー」

一方「わかるゥ。不測の事態に慌てまくるあのメルヘンの顔ときたら爆笑モンだぜェ。まあ半分以上オレの仕掛けだがなァ」

柳迫「え?あなた尾行以外にそんなこともしてるの?趣味悪いわよ?」ニヨニヨ

一方「ウソつけ。悪趣味って考えてるヤツの表情〈かお〉じゃねェぞ」ニヤニヤ

柳迫「あ?バレた?」シレッ

一方「やっぱりオマエとは気が合いそォだなァ」

柳迫「奇遇ね!私もそう思ってたの」

一方「まったく、あの女もいい『オトモダチ』をもったモンだぜ」

柳迫「褒め言葉として受け取っておくわ」

一方「……っとにイイ根性してやがる」ククク

柳迫「あなたこそ」クスクス

上条「最悪のコンビが誕生した気がする……」


476: 2011/06/21(火) 03:13:32.66 ID:VSQ0l8Sr0



     《♪ …僕がいて あなたがいて それだけで十分かな ♪》


     《♪ 新未来を願う空前絶後の 言葉がもし もし、つむげるなら♪》


     《♪ 一緒に飛ばそうよ ♪》


     《♪ 昨日までをちゃんと愛して 見たこともない景色をみるよ ♪》


     《♪ 『ココデオワルハズガナイノニ』 ♪》



固法「……」パチパチパチ

垣根「ああ、ありがとよ。それにしてもアイツら途中から全然聴いてねえじゃねえか。
アンタだけだぜ、最後まで聴いてたの。どうだったこの曲?」

固法「ええ………素敵だったわ」

垣根「!?」

固法「え……あっ!違っ、その、曲が!素敵な曲だなぁって言ったの!」

垣根「あっ、ああ!曲がな!うん、そうだよ曲の話だよな。むしろ曲以外の話題なんて存在しねえし!」

固法「そ、そうそう!」


477: 2011/06/21(火) 03:14:32.75 ID:VSQ0l8Sr0


垣根(な、何だ今の心臓を鷲掴みにされたような感覚……!不整脈か!?)


固法(あ、危なかった。思わず本音が………何とかごまかせた、よね?)



一方「……………!」バンバン

柳迫「……ッ!…………!!」プルプル


一方(バカだ!アイツはホンモノのバカだ!!)バンバン

柳迫(あれでごまかせたと本気で思ってる……!それで垣根さんもごまかされてる…!何あの二人、中学生?)プルプル


上条(……とか考えてるんだろうなあ)

垣根「なにやってんのお前ら?」






一方「ようやっとオレの番だァァァ!」ピピピピピッ

上条「リモコン操作速っ!」



      激動 / UVERworld




478: 2011/06/21(火) 03:15:33.26 ID:VSQ0l8Sr0

上条「おお」

垣根「まあ最初はこの辺だろ」

柳迫「UVERだー」

固法「……これなら、知ってる」

     《♪ ~ ♪》

上条「毎回思うんだけどこの曲前奏長いよな?」

垣根「オレも気になって計ってみたら55秒あった」

     《♪ ~ ♪》


垣根上条「「ォォォオオオオファイッ!!」」



上条「ここまで55秒?」

垣根「そうそう」

柳迫(…ヒマなのかしら、この人?)


    《♪ 研ぎ澄ますeyes 聞き飽きたフレーズや ♪》

    《♪ 誰かのコピーじゃ満たされないんだよ ♪》


柳迫「……彼UVER好きなの?」

垣根「ホラ、アイツ中ニ病だから」

上条「………その理由もどうかと思うけどな」

固法(……………何かしら、『チュウニ病』って)


479: 2011/06/21(火) 03:17:02.22 ID:VSQ0l8Sr0



     《♪ 末期でドス黒のベストプレイ インザハウス ♪》

     《♪ 第一線のステージで これっぽっちも負ける気がしねーな ♪》



上条「さて、次は何歌おっかなー」ピッピッ

垣根「なんで、ホルモンだったら『絶望ビリー』でいいじゃねえか」

上条「2曲続けてホルモンとか上条さんのノドが氏んでしまうわ」ピッピッ

柳迫「確かにね」

上条「………これでいいや」ピピッ

垣根「お、いいんじゃねえの?じゃあオレはこれで」ピピピッ

柳迫「私はこれ!」ピッピッ

固法「私は……この曲で」ピッピッ



     《♪ 見えていたものまで 見失って僕らは ♪》

     《♪ 思い出の海の中 溺れていくのに ♪》

     《♪ どうして 誓い合ったことまで なかったことにして次のpassport ♪》

上条柳迫「「ファイ!」」


垣根「あ、そうだ。ドリンク頼んでねえ。何飲む?」

固法「じゃあ…」

垣根「言っとくが牛乳はねえぞ?」

固法「わ、わかってるわよ!……アイスミルクティー一つ」

柳迫「私はホワイトウォーター!」

上条「オレはコーラ」

垣根「オッケ、モヤシはどうせコーヒーだろ……あ、すいません、注文いいスか?アイスミルクティー一つと…」


480: 2011/06/21(火) 03:18:07.40 ID:VSQ0l8Sr0



     《♪ うまく置いていけたら 溺れないで 捨てないで また会えるから ♪》


上条柳迫「「レベルワーンッ!」」


     《♪ 永遠の声 again 心にいつ届く? ♪》

     《♪ Rebel one, turning point ♪》



上条柳迫「「イエーーーーーーイ!」」

垣根「ハイハイおつかれ」

固法「垣根さん、さっきから彼の扱いが雑じゃないかしら……?」

垣根「あん?いいんだよ別に。どうせモヤシだし」

一方「何か言ったかメルヘン。ひょっとして遺言かァ?」

垣根「打ち止めちゃんからの着信音を『君の好きなうた』にすんのはやめろっつったんだよ」

一方「テメッ、何でソレを知ってやがる!」

固法「打ち止めちゃん?ってこの間の子?」

垣根「ああ、打ち止めちゃんを預かってる家で下宿してるのがコイツだ」


481: 2011/06/21(火) 03:19:08.36 ID:VSQ0l8Sr0

一方「あン?オマエ打ち止めのこと知ってンのかァ?」

固法「ええ、この間道端で………」





打止『固法お姉ちゃんは垣根のお兄ちゃんの恋人さんなの?ってミサカはミサカはぶっちゃけたところを訊いてみたり!』





固法「………っ!」カァァァ

一方「あ?」

垣根「あー!その、アレだ。そん時の打ち止めちゃんがかわいかったなって話だよ」

一方「あァ?何当り前のことほざいてやがるクソメルヘン。
   っつーかテメェ打ち止めに変なこと吹きこンでねェだろォなァ」アーン?

垣根「そのセリフそっくりそのままバットで打ち返すぜこのクソモヤシが。
   ケーキ代はテメエ宛に請求してやるからな」ギロッ

一方「はァ?」


固法(お、思い出しちゃった……)


垣根(ああああああせっかく水に流してもらったのに何やってんだオレのバカァァァァ!)


482: 2011/06/21(火) 03:20:05.20 ID:VSQ0l8Sr0



      FLYING IN THE SKY / 鵜島仁文



上条「次は俺だな」

垣根「これもまた違う意味で熱い曲だよな」




     《♪ FLYING IN THE SKY 高くはばたけ 大空をどこまでも ♪》


垣根通行柳迫「「「SHINING FINGER!」」」


     《♪ 輝く光が 地の果て照らし奇跡をよぶ SPELL! ♪》




垣根「え、この曲知ってんの?」

柳迫「え?ネオジャパン国歌でしょ?」

一方「この女底が知れねェ……」


………! ……!? …………!! ……… ‥ ‥ ‥  ‥  ‥




483: 2011/06/21(火) 03:21:18.15 ID:VSQ0l8Sr0

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   18:12  第7学区 路上

柳迫「やっぱりさぁ、SURFACEのアルバムは『Invitation No.6』が至高だと思うのよ。
   捨て曲ないもん。」

上条「気持ちはわかりますけど、俺は『Fate』を推したいですね」

一方「あァ?『Last Attraction』一択に決まってンだろォ?」

上条柳迫「「それはズルイ!」」



垣根「盛り上がってんなー」

固法「そうね」

上条、一方通行、柳迫の三人はすっかり意気投合したようで、
アーティスト談議に花を咲かせていた。
なんとなくあぶれてしまった垣根と固法はつかず離れず、
微妙な距離を保ちながら三人の後ろを歩いてついて行く。


垣根「しかしすげーなあの子。柳迫、だっけか。モヤシと初対面であそこまで物おじせずに話せる女初めて見たぜ」

固法「もともと人見知りしない子なんだけど、それにしてもすごく気が合ったみたいね。
   何か共鳴するところがあったのかしら?」




上条(……これでいいんですか?)ヒソヒソ

柳迫(ええ、私たち三人が固まってれば必然的にあの子たち二人きりになるでしょ?)ヒソヒソ

一方(惜しむらくはオレらから様子が見えねェとこだがなァ)ヒソヒソ


よもや自分たちが話のネタにされてるとは思いもしない垣根と固法であった。


484: 2011/06/21(火) 03:22:27.03 ID:VSQ0l8Sr0

固法「それにしても思い切り大声だすのって楽しいのね。すっきりしたわ」

垣根「そうか?」

固法「ええ。誘ってくれてありがとう、垣根さん」ニコッ

垣根「!」

固法が不意にむけた笑顔に、垣根は思わず言葉を詰まらせる。


垣根(クソッ、さっきから何なんだ?コイツの顔見るたびに脈拍が……)


垣根「い、いや、こっちも楽しかったぜ。アイツらも心なしかいつもよりテンション高めだったし」

何となく固法の顔を見られなくなった垣根は、フイと視線をそらしながら答えた。

固法「そうなの?」

垣根「常時あのテンションだったらさすがにビョーキだろ」

固法「ふふふっ………そういえば垣根さん」

垣根「あん?」

固法「今日垣根さんが歌ってた曲、ほとんど同じグループだったけど……」

垣根「お、気に入った?」

485: 2011/06/21(火) 03:23:13.84 ID:VSQ0l8Sr0

固法「え、ええ。いい曲ばかりだなぁって思って。確かゆにぞん?っていうバンドなのよね」

垣根「ああ。UNISON SQUARE GARDEN。ユニゾンは通称だな。まだ一般的な知名度はイマイチだが……」





柳迫「よーし決めた!もう一軒行こう!もう一軒!!」

一方「望むところだァ!!」

と、前を歩いていた柳迫たちが突然大声を張り上げた。

固法「あ、碧美?もう一軒って、どこに?」

柳迫「決まってるじゃない!カラオケよ、カラオケ!こうなったら三人で朝までSURFACE縛りよ!」

垣根「…つってももうそろそろ完全下校時刻だぞ?今から入店できる店なんざ……」

柳迫「大丈夫大丈夫!朝までいられるサロン使うから!」

固法「でもそういうサロンって高いんじゃ…」

一方「何か言ったかァ?」スッ

上条「そ、それは!」

一方通行はポケットから静かに一枚のカードを取り出す。
それは垣根が以前上条に貸与したものと同じ会社のブラックカードであった。

垣根「テメエはホントに金の使い方間違ってるよな!!」


486: 2011/06/21(火) 03:24:07.37 ID:VSQ0l8Sr0

柳迫「キャー!あーくん太っ腹!おっとこまえー!」ギュッ

一方「ウッゼェ!離れろォ!あとあーくンって言うンじゃねェ!!」

柳迫「じゃあ私たちはここで!美偉、寮監にはうまいこと言っておいてね?」

固法「ちょっと碧美!?」

柳迫「あ、垣根さん垣根さん」チョイチョイ

垣根「は?」ナニナニ

柳迫「美偉のこと、ヨ・ロ・シ・ク・ね?(はぁと」

垣根「はぁ!!?」




柳迫通行「「じゃァ~ねェ~」」ダッシュ!

上条「お、おい!置いてくな!!」



アッカンベーシテサヨナラー カルイノリデユキマショー
サンザンナヤンデミテモー ホントナンニモナリャシナイヨー………



487: 2011/06/21(火) 03:25:02.57 ID:VSQ0l8Sr0

垣根「………行っちまった……」

こうして、垣根と固法は暮れなずむ街の真ん中に残された。

垣根「何なんだあのテンション。ほぼ酔っ払いじゃねえか」

固法「…………」

垣根「………んじゃ、オレらは大人しく帰ろうぜ。寮こっちだよな?もう道覚えちまっ……」

そう言って垣根が歩き出そうとしたその時、








固法「」キュッ

垣根「!?」




固法が小さく、本当に小さく、垣根の上着の裾をつかんだ。


488: 2011/06/21(火) 03:25:53.61 ID:VSQ0l8Sr0

垣根「あのー……固法さん?」


垣根は思わず固法の方へ向き直った。
垣根の問いかけに、固法は顔を耳まで赤くしながら答える。


固法「ご、ごめんなさい!その………










   も、もう少し一緒にいてもらってもいいですか?」



垣根「!!!???」






『何……………だと………!!?』


そんな定型文が、垣根の脳内を光の速さで駆け巡っていた。

496: 2011/06/24(金) 20:46:01.44 ID:Gg/Bl2Ta0

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     18:22  第7学区 噴水公園

垣根帝督。

17歳。

高3。

『未元物質』を操る序列第2位超能力者、つまり学園都市第二位の頭脳を持つ彼は今、


垣根(ヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイどうしてこうなったぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!)


未だかつてないほどに焦っていた。



柳迫たちと別れた二人は、たまたま近くにあった公園でベンチに腰掛けていた。
二人の間には、もう一人入れるかどうか位の空間がある。
普通ならば何の違和感もない光景だが、今、この場所に限ってはどうしようもなく浮いていた。
何故ならば―――――――――

キャッキャッ……  ウフフ……  ネェネェ……


垣根「………そりゃ夜の公園なんざこうなってるに決まってるわな」

固法「うう……………」

公園内には彼ら二人を除けば仲睦まじい男女、というかイチャイチャしてるカップルしかいなかったからである。

497: 2011/06/24(金) 20:47:11.97 ID:Gg/Bl2Ta0

寒くなってきた所為か、公園内のカップル達は誰も皆ぴったりと寄り添い合っている。
そんな状況にあって垣根たちの間にある空間は明らかに異質だった。

垣根「もっと他に場所なかったのかよ……」

固法「だって、ウチの寮に男の人は入れないし、この格好でお店に入るのはちょっと………」

完全下校時刻が間近に迫っている今、制服のまま飲食店などに入るのは
他の風紀委員や警備員に見つかるリスクが高い。
現職の風紀委員である固法にとってそれは都合が悪いためこの場所を選んだのだが―――


垣根(だからってここはねえよ……この間のサ店よりひでえぞ)

垣根(ノコノコついて来たオレもオレだけどよぉ………っつーかあんな顔されて断れるワケねえだろ。
   真っ赤な顔で上目遣いとかほとんど反則だぜ)

垣根(…………どうやらオレは、コイツのあの顔に弱いらしい)


時間が経ってだんだん落ち着いてきた垣根は、隣の固法の様子をチラリと見やった。
彼女は先ほどから顔を赤くしたまま俯いている。
どうやら夜の公園がどんな場所なのか本当に知らないまま来てしまったらしい。


垣根(ったく、こうなるくらいならもうちょっと考えて行動しやがれってんだ)

垣根(大体コイツはこの間から無防備すぎる。
   人を信用すんのは勝手だが、男に対する警戒心が薄すぎるぜ)



垣根(…………ちょっとからかってやるか?)



垣根は少々世間知らずな隣の少女に、軽く灸をすえてやることにした。


498: 2011/06/24(金) 20:47:59.71 ID:Gg/Bl2Ta0


一方、当の固法はというと、


固法(どどどどどどうしよう!思わず引き留めちゃったけどこれからどうすればいいの!?)


さっきまでの垣根同様軽い錯乱状態にあった。


固法(し、知らなかった……まさか公園がこんな場所だったなんて)

固法(垣根さん、怒ってるかな………いきなりこんなところに連れてきて)

固法(軽い女だと思われたらどうしよう…………)


二人の間にしばし沈黙が流れる。
そしてそれを破ったのは、



垣根「なぁ、寒くねえか?」

固法「え?」

切れ長の瞳をいたずらっぽく光らせた垣根だった。


499: 2011/06/24(金) 20:48:48.19 ID:Gg/Bl2Ta0

固法「そ、そうね。もうすっかり日も暮れちゃったし」

垣根「だよなあ。














   だからさ、暖めてくれよ」

固法「ふえ?キャッ!!」

そんなセリフを吐くや否や、垣根は固法との間に会った距離を詰め、その肩を抱き寄せた。



固法「かかか、垣根さん!!?一体どうしたの!?」アタフタ

垣根「いや、寒いからひっついて暖め合おうかと」ギュッ

固法「だからってこんな………ま、周りに人もいるのよ!?」

垣根「大丈夫だって、他の奴らも似たようなことしてんだろ?」

固法「そういう問題じゃ………」フイッ

突然のことに顔をそむけようとした固法だったが、



垣根「こっち見ろよ」グイッ

固法「!!」

顔に添えられた垣根の指がそれを許さなかった。




500: 2011/06/24(金) 20:49:42.07 ID:Gg/Bl2Ta0

--------------------------------------------------------------------------------------

柳迫(おおおおおおおおおおおおお!!さあさあ盛り上がって参りました!!)

一方(クカカカカカカカカ!メルヘンのクセになかなかやるじゃねェか!!)

上条(…………何で俺まで…)

  同時刻  噴水公園

公園内の茂みでは、カラオケをハシゴしているはずの柳迫たちが
二人の様子を覗い………もとい、見守っていた。
夜の街に消えたふりをして大急ぎで戻り、ずっと二人の後をつけていたのである。

上条(徹カラなんて嘘までついて……そんなにデバガメりたかったんですか?)

柳迫(こうなることは大体予想ついてたからね。それにあんな写メ見たら尾行するっしょ、普通!)

一方(オマエマジ見所あるわァ)

柳迫(それに垣根さんの方も適当に煽っておいたしね)

上条(固法さんが垣根にお持ちかえりされる可能性とか何で考えなかったんですか?)

柳迫(………それは…)

一方(それはァ?)





柳迫(……あの短い付き合いの中で『それはない』と思わせる言動があったから、かな)

上条通行((確かにwwwwww))


501: 2011/06/24(金) 20:50:25.63 ID:Gg/Bl2Ta0

柳迫(だってさぁ、垣根さんって全然遊び慣れてないでしょ?特に女の子と。
   そんな人にお持ちかえりなんてできるわけないじゃーん)ケラケラ

上条(……短い時間でそこまで見抜くとは…)

柳迫(でしょ?人を見る目には自信があるの)ドヤッ

一方(オイ、また何かブツブツ言ってンぞ)

上条柳迫((お?))ドレドレ





垣根「アンタさぁ、わざとやってる?」

固法「え?」

固法の顔を引き寄せながら垣根はそんなことを言い出した。

垣根「え、じゃねえよ。こんなところ連れてきて、誘ってんのか?」

固法「そんなつもりは……私はただ……」

垣根「アンタにその気があろうが無かろうが関係ねえんだよ。男ってヤツはバカな生き物だからな、
   簡単に狼になれるんだぜ?たとえ相手がダチでもな」

固法「あっ………」

垣根の口から今まで聞いたことのない厳しい言葉が紡がれる。

垣根「それともオレなら大丈夫だと思ったのか?残念だったな、オレだって一人の男なんだよ」

固法「か、垣根さん、ちょっと……………!」


502: 2011/06/24(金) 20:51:10.70 ID:Gg/Bl2Ta0

突き放すような言葉とは裏腹に垣根の顔はどんどん固法に近づいてくる。
この距離で彼の顔を見たことは何度かあった。
しかし垣根の目は、初めて会った時ともフードコートの時とも違う何かを湛えている。
その瞳は強烈な色気をまとい、固法をまっすぐに見つめてくる。


固法(垣根さん、何だか………こわい…)


固法は垣根の熱のこもった視線に射すくめられ、まったく抵抗できない。


そして、二人の距離がゼロになるその瞬間――――――










垣根「―――――――――なんてな」

固法「…………………へ?」


垣根はいつか見た悪戯っぽい笑みを浮かべながら固法の耳元でそう囁いた。

垣根「アンタちょっと男に対する警戒心が薄いみてえだからな、灸をすえてやろうと思ってよ」ニヤッ

固法「かっ………!からかったのね!!?」


503: 2011/06/24(金) 20:51:53.28 ID:Gg/Bl2Ta0

垣根「ハハハッ。どうよ?ドキッとしたか?」

固法「信じられない!最っ低!!」プイッ

垣根「………悪かった。でもな、さっき言ったことは本当だぜ?」

垣根は急に先ほどまでの真剣な表情に戻りこう続けた。

固法「……え?」

垣根「固法はさ、人を信用しすぎなんだよ。もうちっと自分の身を守ることを知るべきだ」

固法「………これでも風紀委員よ。護身術や逮捕術くらい心得て…」

垣根「そういうこと言ってるんじゃねえ」

固法「!」

垣根は語気を強くして固法の言葉を遮った。

垣根「言ったろ?アンタは無防備すぎる。今だって相手がオレじゃなかったらホントに襲われてたぞ」

固法「…………」



垣根「アンタだってそれなりに強いかも知れねえがな、万が一そうなったら女は力では男に絶対勝てねえ。よく覚えておけ」




504: 2011/06/24(金) 20:52:42.65 ID:Gg/Bl2Ta0



――――ああ、そうか。
この言葉で、固法は垣根の言いたかったことを理解した。
――――――心配、してくれてるんだ。
垣根は自分の身を案じて、わざとあんなことをしたのだろう。
恐らく『灸をすえる』という表現もあながち冗談ではないに違いない。
だが一つだけ、垣根は思い違いをしている。
自分はだれでも簡単に信用してるわけでは、ない。


固法(垣根さんだから……信じてるんだけどな…)


固法「……ごめん、なさい」

釈然としないものを感じるが心配させたことには変わらない。
何より純粋にうれしかった固法は、素直に謝っておくことにした。
その言葉を聞いて、垣根はようやく表情を緩めた。

垣根「わかりゃいい………アンタを見てるとさ、こっちまで不安になるんだよ」ハァ

固法「…え?」

垣根「頼むからもっと自分を大事にしてくれ。固法に何かあったらオレは………」

固法「!」


固法(い、今とんでもないこと言われた気が……)


固法「か、垣根さん?それって……」

垣根「は?別に他意はねえよ。……ほら、マジで冷えてきたしそろそろ帰るぞ。
柳迫にアンタのこと頼まれてんだからな、風邪でも引かれたらこっちが困る」ツカツカ

固法「う、うん……」

垣根は急に立ち上がって歩きだす。
固法も慌ててあとをついていくが、垣根はこちらを見ようとしない。


固法(やっぱりまだ怒ってるのかな……)






垣根(やっべえええええええええええええええ調子に乗りすぎたあああああああああああああああああああ!!!)

垣根(無理!もう無理!もうコイツの顔見らんねえ!!恥ずか氏ぬ!!!)





505: 2011/06/24(金) 20:53:37.67 ID:Gg/Bl2Ta0


--------------------------------------------------------------------------------------

上条(お、歩き出したな。もう時間も時間だし、これで解散かな?)

柳迫(そうみたいね。美偉って時間にうるさいし。あーあ、せめてキスシーンぐらいは見れると思ったのになー)

一方(ハッ、メルヘンにそンな度胸あるワケねェ)フン

上条(確かに………)

柳迫(じゃあ私たちも帰りますか)



上条通行((……どこに?))

柳迫(へ?……………あっ!)

上条(柳迫さん、今日は俺たちと徹カラに行ってることになってるんですよ)

一方(そこにノコノコ帰ったらウソついてたのがバレるなァ)ハァ

柳迫(そうだった……ということは私ってば、今夜一晩宿なし………?)

上条(そういうことに………)

一方(なるねェ)



柳迫「不幸だわーーーーーーーーー!!」





506: 2011/06/24(金) 20:54:14.41 ID:Gg/Bl2Ta0

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  18:44  第7学区  路上

固法「………?」

垣根「どうした?」

固法「いえ、今碧美の声が聞こえたような気がしたんだけど………」

垣根「気のせいだろ。アイツらなら今頃SURFACE縛りカラオケで盛り上がってる頃だろうぜ」

固法「………そうね」

垣根たちは固法の寮に向かって街灯のともり始めた道を歩いている。
垣根は固法の半歩先の位置をキープしているため、固法から垣根の表情をうかがうことはできない。
気づけば二人の間にはまた沈黙が流れていた。


固法(うう、気まずい………垣根さんはこっち見てくれないし……まだ怒ってるのかな)


垣根(おいぃぃぃぃぃぃぃぃ黙り込んじまったぞ!ちょっとキツく言いすぎたか?
   せめて表情が分かればいいんだが………今アイツの顔見たら恥ずかしさで氏ねる自信がある)



垣根固法((一体どうすればいいの(んだ)………?))



二人してそんなことを考えていたそのとき――――――、



ッキャーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!


垣根固法「「!!!」」

絹を裂くような悲鳴が夜の学園都市に響いた。


507: 2011/06/24(金) 20:55:44.94 ID:Gg/Bl2Ta0

固法「この悲鳴……!」

固法(どこから!?)

垣根「……こっちだ」ダッ!

固法「えっ?」

言うがはやく垣根は悲鳴のした方へと驚くべき速度で駆け出した。

固法「ま、待って!!」タタタッ!

一拍遅れて固法も走り出す。
垣根の足の速さは知っている。垣根が走っている間は追いつくことはできないだろう。
せめて見失わないようについていくのが精いっぱいだ。

しかし固法にも意地がある。


固法(そう何回も垣根さんを……一般人を巻き込むわけにはいかない………!)


風紀委員としての責任、自負、信念――――――
垣根に助けられたことで揺らぎそうになったそれらを今一度確固たるものにするべく固法は走る。
―――その先に、想像を絶する光景が待っているとも知らずに。



--------------------------------------------------------------------------------------

   同時刻  第7学区 路地裏

女生徒「イヤァァァァァァ!離して!!離してよぉ!!」

不良「おーおー泣け泣け。どーせ助けなんざ来ねえんだからよぉ!」

そこでは一人の女生徒が大柄な不良に組み敷かれ、今まさに暴行される寸前だった。


508: 2011/06/24(金) 20:56:37.85 ID:Gg/Bl2Ta0

女生徒「何で……どうして私がこんな目に……」ポロポロ

不良「何でなんだろうねぇ……ま、運が悪かったと思って諦めるんだ、なっ!」


ビリィッ!!


馬乗りになっていた不良が女生徒の制服を力ずくで引き裂いた。


女生徒「ヒッ!」ビクッ

不良「いーねぇ、その表情。たまんねえよなあ、恐怖に歪む女の顔はよぉ…」ジュルリ

女生徒「いや………助けて……だれかぁ……」ボロボロ

不良「言っただろ?もう完全下校時刻だ。こんな路地裏わざわざ通りかかるやつなんて入るワケねえ」

女生徒「ううう…………」ボロボロ

不良「仮に巡回中の風紀委員が来たとして、その時てめえはすでにボロ雑巾だな。クックックック………」



―――もうだめだ。

――――自分はこの男に犯される。

少女の心が恐怖と絶望に支配されたそのとき、

509: 2011/06/24(金) 20:57:14.42 ID:Gg/Bl2Ta0











            「何してんだコラ」

声がした。







510: 2011/06/24(金) 20:58:03.55 ID:Gg/Bl2Ta0

不良「あぁ?」

ビュン バキィッ!

不良「グボッ!」

どこからともなく現れた長身の青年が、不良の側頭部に体重の乗った飛び後ろ回し蹴りを見舞った。
吹き飛ばされた不良と入れ替わる形で青年が少女の正面に降り立つ。
錯覚だろうか、青年の周りに白い羽が舞っているように見えた。

垣根「大丈夫……ではなさそうだな。ケガもしてる」

女性徒「あっ………」

ズタボロにされた制服はもう役には立たないだろう。
無理やり押し倒されたために体中も擦り傷だらけだ。

垣根「……」バサッ

女生徒「あ…」

青年は自分の制服の上着を脱ぐと無言で少女に差し出した。
どこかぼんやりしたままそれを受け取る少女。

不良「てめぇ………っ!!」

垣根「ほぉ…コメカミにいいのが入ったと思ったがまだ意識があるのか。頑丈だな」


511: 2011/06/24(金) 20:59:05.19 ID:Gg/Bl2Ta0

青年に蹴り飛ばされた不良が起き上がり青年を思い切り睨みつけた。

不良「何モンだ!風紀委員か!!?」

垣根「風紀委員?違えよ。テメエの同類だ」

不良「あぁ!!!?」

垣根「テメエと同じ、泥の中這いずり回るクズだっつってんだよ」

不良「ンだとゴラァ!!」ブンッ!

垣根「遅え」スカッ

ボグッ!

激高し殴りかかる不良を青年はたやすくいなし、カウンターでみぞおちにひざ蹴りをたたきこんだ。
不良は自分の勢いが上乗せされた一撃をくらい、両膝を折る。

不良「ウグ…ッ!」

垣根「……今の蹴りを耐えた褒美だ。テメエにも教えてやるよ」

不良「あん………だとぉ………!!!」

青年は不良を挑発するかの様に青年は冷たい視線で不良を見下ろす。
そして、





垣根「本物の“恐怖”ってヤツをな」ニィ

獰猛な笑みを浮かべてそう言い放った。




512: 2011/06/24(金) 20:59:53.54 ID:Gg/Bl2Ta0

--------------------------------------------------------------------------------------

固法(垣根さんが入ったのは……この路地!)ダッ!

固法は垣根を追って現場の路地にたどり着いた。
風紀委員の腕章はすでに装着済みである。
固法の経験上、この時間に発生する事件の大半は暴行か不良同士の喧嘩だ。
だがさっきの悲鳴では後者の線は限りなく薄い。
それに現場は狭い路地。大人数による犯行とも考えにくい。
つまり、


固法(相手は多くてもニ、三人……大丈夫!)


固法の逮捕術は一七七支部の風紀委員の中でも一、ニを争うレベルである。
拳銃でも持ちだされない限りものの数ではない。

固法「風紀委員です!!その子から離れなさ……」

だが現場に到着した固法の目に飛び込んできたのは、
固法の想像をはるかに超えるものだった。




垣根「オラ、何とか言ったらどうなんだよ。コラ!」ガスッ!

不良「ガフッ!」バキッ

そこには血まみれで横たわる不良と、
それを馬乗りになって殴り続ける垣根の姿があった。




513: 2011/06/24(金) 21:00:42.46 ID:Gg/Bl2Ta0

--------------------------------------------------------------------------------------

――――殺ス


垣根「ホラ、何とか言ってみろ、よ!」ガスッ!


――――戮ス


垣根「楽しかったか?あ?」

不良「ガ……あ……?」


――――――コイツハ、殺ス


垣根「…弱えヤツを力でねじ伏せるのは楽しかったかって…訊いてんだよ!!」ボグッ!

不良「ガァ……ッ!」バキッ


―――――殺サナキャナラネエ


垣根「オイまだ寝るんじゃねえぞ。こんなもんで済むなんて思ってねえよなぁ?あ!!?」パシパシ

不良「も゛ぅ……許じで……」

垣根「許されるワケねえだろうが!!!!」ゴスッ!


514: 2011/06/24(金) 21:01:30.60 ID:Gg/Bl2Ta0


―――――コイツハ………ダ


垣根「分かった。質問を変える……気分はどうだ?圧倒的な“力”にねじ伏せられる気分はよお!!!」バキッ!

グシャッ

何か固いものがひしゃげるようなくぐもった音がした。
同時に不良の下あごがダランとたれ下がる。
どうやら顎の骨が砕けた音らしかった。

不良「ア………アァ……」

こうなってしまってはもうまともな受け答えはできない。
しかし垣根は意に介することなく不良を蹂躙し続ける。


垣根「さて、テメエは今何を考えてる?『殺される』?『氏にたくない』?…ああ、答えなくていい。テメエの遺言なんざ聞きたくもねえ」


―――――――氏ネ


垣根「わかるか?それが『恐怖』だ。存在の危機に直面した生物に氏神の如く忍びよる感覚、
それが『恐怖』だ」



515: 2011/06/24(金) 21:02:33.17 ID:Gg/Bl2Ta0


―――――――――氏ンデシマエ


垣根「恐怖はオレたち人間に残された最後の『野生』だ。それはつまり自己保存の本能だからな」

そう言いながら垣根は立ち上がり、同時に不良の胸倉をつかみ上げる。


―――――――テメエノヨウナヤツハ


垣根「わかるか?頭蓋を割り、脳髄を切り開き、神経を掻き分けたその奥の奥に刻み込まれた根元的感情こそが恐怖なんだよ!!」


――――――――――テメエノヨウナ………


垣根「……最後にこれだけ覚えておけ」


―――――――――――――………ノヨウナ…



垣根「他人を恐怖で踏みにじるヤツは、必ず別の恐怖によって踏みつぶされる」

垣根「―――――――わかったらよお……」

バッサァ!!
銀白色の羽が展開する。
それは一つの終焉を意味していた。

――――――――――――――――オレミテエナクズハヒトリノコラズ、


そして垣根は、目の前の男に最後の呪詛を吐いた。


516: 2011/06/24(金) 21:03:31.09 ID:Gg/Bl2Ta0












          「氏ね」




ビュゴッ!!
垣根の翼が標的を貫こうとしたそのとき、




ガシッ

固法「やめて垣根さん!!それ以上やったら本当に氏んでしまうわ!!!」




517: 2011/06/24(金) 21:04:53.85 ID:Gg/Bl2Ta0

--------------------------------------------------------------------------------------

固法は自分の目に映る光景が信じられなかった。
垣根がこの路地に入ってから自分が到着するまでのタイムラグは5分もなかったはずだ。
それだというのにここまで一方的な展開になるだろうか。
それ以前に、


固法「垣根、さん…………?」


目の前の人物は、本当にさっきまで自分の隣を歩いていた青年だろうか。

垣根「…弱えヤツを力でねじ伏せるのは楽しかったかって…訊いてんだよ!!」ボグッ!

不良「ガァ……ッ!」バキッ

女生徒「は……………あ…………」

垣根から少し離れた路地の隅で中学生くらいの少女が震えている。
固法はその姿を確認するとすぐさま彼女のそばに駆け寄った。

固法「風紀委員です。もう大丈夫だから、怖がらないで」

見ると少女の肩には男物のブレザーが掛けられている。
確かめるまでもなく先ほどまで垣根が着ていたものだ。
その下の制服は見るも無残な状態だった。

固法「なんてひどいことを………」ギリッ

女生徒「あ、いえ……制服は破かれちゃったけど、乱暴される前にあの人が助けてくれたので……」

固法「そ、そう……」


518: 2011/06/24(金) 21:05:34.84 ID:Gg/Bl2Ta0

どうやら垣根は間に合ったらしい。
とにかく、この少女に見た目以上の被害はないようだ。
つまり今、固法がやるべきことは――――


固法(垣根さんを止めないと……)


と、固法が背後の垣根に向き直った瞬間、



垣根「―――――――わかったらよお……」

バッサァ!!


白銀の翼が垣根の背中で展開した。


固法(あれは!)


《未元物質》
あの時の路地裏で、3人の暴漢を一瞬で制圧した垣根の『力』。
だが垣根がつかみ上げている不良はすでに完膚なきまでに叩きのめされ虫の息だ。
その局面であれを出したということは。


固法(いけない!)



垣根は、彼を頃すつもりだ。


519: 2011/06/24(金) 21:06:28.93 ID:Gg/Bl2Ta0

固法「垣根さん!お願いやめて!!」

固法の叫びに垣根は答えない。
今の垣根に、固法の言葉は届かない。
ユラリ、と、垣根の翼がうごめいた。
固法は反射的に垣根に駆け寄り、



固法「やめて垣根さん!!それ以上やったら本当に氏んでしまうわ!!!」ガシッ

垣根を背中から抱きとめた。



--------------------------------------------------------------------------------------

時間が止まったかのような沈黙がその場を支配した。
路地裏に流れる音は不良のヒューヒューというか細い呼吸音のみ。
垣根はそこで初めて我に返った。

まず目に飛び込んできたのは、自分が叩きのめした不良と、返り血で真っ赤に染まった自分の服と拳。
それから、誰かが背中に抱きついていることに気がついた。
恐る恐る振り返ると、そこには―――――――――

垣根「……………………………固法?」

固法「…………………か、きね、さん?」

先ほどまで自分の隣にいた風紀委員の少女が、小さな肩を震わせていた。




520: 2011/06/24(金) 21:07:28.78 ID:Gg/Bl2Ta0



―――――――ほらな


固法「……………どうして?」

垣根「………悪い」


――――――――結局、このザマだ


垣根「あの子は、無事か?」

固法「ええ、でも今は……」


―――――――――――何も変わっちゃいねえじゃねえかよ


垣根「ああ、このゴミクズか」ドサッ

不良「がっ…………!」


―――――――――――――――やっぱり、クズはどこまで行ってもクズってか


垣根「じゃあ後は適当に誤魔化しといてくれ。オレはバックレる」

固法「待って。いくら何でもこれはやり過ぎよ。
   風紀委員として見逃すわけには……」

垣根「……じゃあオレからも超能力者第2位、『未元物質』として一つ言わせてもらうぜ」

バサッ

そう言いながら垣根は再び翼を広げる。


521: 2011/06/24(金) 21:08:47.75 ID:Gg/Bl2Ta0



垣根「―――――捕まえてみな」

バサバサッ!!

6枚の翼を羽ばたかせ、垣根は空中に舞い上がった。

固法「待って!垣根さん!!」

垣根「……………あばよ」

ヒュバッ!!!

白い爆風が吹き荒れる。



風がやんで固法が目を開くと、もう垣根の姿はどこにもなかった。




528: 2011/06/26(日) 03:26:49.61 ID:QCFCHYWO0
番外    とある一夜の柳迫通行(アオミラレータ)

柳迫「うわーどうしよう……カラオケでお金使っちゃったからホテルにも泊まれない……」

一方「オイ三下ァ、オマエ例のミュータント教師紹介してやればァ?」

上条「人の担任の先生を人外扱いすんな!!」

柳迫「担任の先生?」

上条「ああ、俺の担任の先生っていうのが生徒の世話を焼くのが趣味、みたいな人で、
   行くところのない学生を保護したりしてるんです。一晩くらいなら泊めてくれるかも………あ」

一方「どしたァ?」

上条「………今日は駄目だ」

柳迫「え!?どうして?」

一方「………あのシスターか」

上条「ああ、インデックスがいる。それに結標もいるのに
   『宿なしの女のひとを保護したので泊めてあげてください』なんて言ったら……」ブルブル

一方「ならオマエの部屋でイイじゃねェか」

上条「インデックスがいきなり帰ってこない保証がどこにある」

一方「なるほどねェ………」

柳迫「……ねえ、いんでっくすって、誰?」

一方「……コイツン家の居候だァ」

柳迫「何それ!?同棲ってコト?」

一方「まァあンまり突っ込ンでやるなァ」

柳迫「そ、そう………」


529: 2011/06/26(日) 03:27:37.70 ID:QCFCHYWO0

上条「いやだ………もうすけすけみるみるはコリゴリだ………」ガタガタ

柳迫「何かスイッチ入っちゃったけど」

一方「とりあえずコイツはアテにならねェよォだ」

柳迫「うう、ダメか……しょうがないからネカフェかなぁ。ちょっと持ち合わせ厳しいんだけど」トホホ



一方「…………しょォがねェ。ちょっと待ってろォ」ピッポッパッprrrr

柳迫「へ?」

一方「………おォ、オレだ。……あァ………でよォ……」

柳迫(誰と話してるんだろう………)

一方「………じゃ、そンな感じでェ」ピッ

柳迫「どこに掛けてたの?」

一方「おォ、オマエ今晩ウチに来い」

柳迫「ふえええ!?」

上条「はぁ!?」

一方「ウチの家主も教師でよォ。生徒が一人路頭に迷ってるっつったらアッサリOKだったぜェ」

上条「黄泉川先生ェ………」

柳迫「上条くんも知ってるの?」

上条「……ウチの学校の教師です」

530: 2011/06/26(日) 03:28:33.33 ID:QCFCHYWO0

一方「マンションのクセにやったらデケェ家だから一晩ぐれェどォってこたァねェよ」

柳迫「いや、でも今日会ったばっかりの男の人の家に泊まるっていうのは、ちょっと……」

一方「ンなこと言ってる場合かァ?行くアテねェンだろォ?」

柳迫「うっ!」ギクッ

一方「ワケあって一晩締め出しくらったとしか言ってねェから言い訳はテメェで考えろよ」

柳迫「………」

一方「返事ィ!」

柳迫「は、はいぃ!お世話になります!!」ペコリ

一方「チッ、最初からそう言やァイインだよ。オラ、行くぞ」ツカツカ

柳迫「う、うん……あ、上条くん!またね!」タタタタ…



上条「相変わらず強引だな、一方通行………」

上条「………俺も帰ろう」




531: 2011/06/26(日) 03:29:50.42 ID:QCFCHYWO0

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    18:55  第7学区 黄泉川のマンション

一方「帰ったぞォ」

柳迫「おじゃましまーす………」


トテテテテテテ


打止「おっそーい!どこ行ってたの!?ってミサカはミサカは空中ミサカチョップを……」ッピョーン

一方「ウゼェ」ヒョイ

打止「あ、ちょ、避けちゃダメ…きゃあ!」

柳迫「きゃっ」ボスッ

打止「ご、ゴメンナサイ!ってミサカはミサカは謝意を表明したり……?アレ?」

一方「黄泉川から話は聞いてンだろォ。ソイツを今晩泊めることになった」

打止「あ、ウン!聞いてるよ!初めましてお姉さん!打ち止めです、ってミサカはミサカは子どもらしさをアピールして
さっきの粗相をなかったことにしてみたり!」

柳迫「これはこれはご丁寧に。初めまして、柳迫碧美です。今夜一晩お世話になります。よろしくね、打ち止めちゃん」ニコッ

打止「よろしく、碧美お姉ちゃん!ってミサカはミサカは親愛の情をハグで表現してみたり!」ギュッ

柳迫「うわー何この子超かわいい!頭なでていい?」ナデコナデコ

打止「うにゃー、もうなでてるよお姉ちゃん、ってミサカはミサカはモジモジしてみる」

532: 2011/06/26(日) 03:31:04.86 ID:QCFCHYWO0

柳迫「なっはっは、ごめんごめん。でもホントにお邪魔しちゃっていいのかなあ?」

打止「全然大丈夫だよ!どうせあの人が半分無理やり連れて来たんでしょ?
   ってミサカはミサカは見透かしたようなことを言ってみたり!」

柳迫「ははは…………」

打止「強引な人でごめんね。でも悪い人じゃないから、ってミサカはミサカはわざとらしいフォローを入れてみる!」

一方「くだらねェこと言ってねェで黄泉川呼ンで来い」

打止「はぁーい」トテテテテ…

柳迫「…兄妹ってワケじゃないよね。全然似てないし」

一方「……オレと同じ居候だァ。それ以上突っ込むな」

柳迫「わかった……」



黄泉川「おかえり、一方通行。夜遊びついでに女連れて帰るなんていい度胸じゃん」

一方「うるせェ、そンなンじゃねェよ。行くトコねェって言うから連れてきただけだ。
   大体夜遊びって何だよ。まだ7時前だろォが」

黄泉川「冗談じゃんよ。んで、その子がそうじゃん?」

柳迫「は、ハイ!柳迫碧美です!」

柳迫(え、何あの胸!?美偉より大きい!!)


533: 2011/06/26(日) 03:31:52.84 ID:QCFCHYWO0

黄泉川「……いち教師としては、女子生徒の外泊はあんまり褒められたことではないじゃん」

柳迫「う、すみません………」

黄泉川「…って建前上お説教してないとマズいじゃんか?」

柳迫「へ?」

黄泉川「あんまり堅っ苦しいことは言ってもしょうがないじゃんよ?
    学生生活なんてあっという間なんだから満喫しないと損じゃんか」

柳迫「はぁ……」

黄泉川「という訳で今夜はここをウチだと思ってゆっくりするじゃん」パタパタ

柳迫「……言い訳どころか理由すら訊かれなかったんだけど」

一方「見た目通り適当な教師だからなァ。とりあえず上がれェ」

柳迫「う、うん。じゃあ、改めてお邪魔します」ヨイショ

一方「ン」



芳川「おかえりなさい。遅かったわね」

一方「おォ」

番外「どこで何してたのぉ?ベッドの上で運動会?」ギャハハ

一方「氏ね」

柳迫(何だか影と幸の薄そうな女の人と、大きい打ち止めちゃん?)

534: 2011/06/26(日) 03:32:39.07 ID:QCFCHYWO0

黄泉川「碧美ぃー。よかったら夕飯の支度手伝ってほしいじゃん」

柳迫「あ、はい!」トタタタ



芳川「ふふ、あなたも隅に置けないわね、一方通行」

打止「ね!ヒーローさんの影響かな?ってミサカはミサカは勘ぐってみたり!」

一方「ケッ、そンなンじゃねぇよ。メルヘンの尻拭いみてェなモンだ」

番外「えっ!?あなた第2位とそんな関係だったの!!?☆」

一方「尻の一文字だけに反応するンじゃねェよクソビXチが」



芳川「………でも、本当に珍しいわね」

一方「あァン?」

芳川「あなたが『あの顔』以外の女の子に優しくするなんて。どういう心境の変化?」

一方「………別に。困ってたから助けたンだよ。文句あるか」

芳川「……もうその言い訳が既にあなたらしくないってわかってる?」クスクス

一方「そう思うンならそれはテメェの認識不足だ。今までもこれからもオレはオレだ」

番外「出たー!厨ニ発言!!カッコイーッ!!惚れちゃいそーだぜ一方通行ァ!!」ニヤニヤ

一方「オイ打ち止め、裁縫道具持ってこい。この女の目と口と鼻と耳を縫合してやる」

打止「何だか絃の花月みたいだね!ってミサカはミサカは今時十中八九伝わらない喩えを持ちだしてみたり!」

芳川「………研究所にゲッ○バッ○ーズなんて置いてたかしら?」

打止「病院で読んだの!」


535: 2011/06/26(日) 03:33:57.99 ID:QCFCHYWO0




一方「っていうかオマエらも手伝えよ。ナニ客こき使ってテメエらだけ寛いでンだよ」

打止「はぁーい!」トテテテテ

一方「………イヤ、オマエらも行けよ。っつーかオマエらに向かって言ったつもりなンだけどォ」

芳川「昼間買出しに行って疲れちゃった」

一方「仕事探せよ」

番外「なぁーんか体がダルくてぇー。一歩も動けなーい」

一方「黄泉川ァー!コイツら晩飯塩水だけでイイってよォー!」


リョーカイジャーン


番外桔梗「「ちょっ!!」」




536: 2011/06/26(日) 03:34:43.99 ID:QCFCHYWO0

--------------------------------------------------------------------------------------

    19:21  ダイニングキッチン

黄泉川「今日のおかずはブリ大根じゃん」

一方「肉ゥ」

芳川「魚だって立派な動物性タンパク質よ。日本酒がほしくなるわね」

黄泉川「働かずに飲む酒は大層美味そうじゃんか、桔梗?」

芳川「」

打止「この大根ね、ミサカが皮むいたんだよ!!」ミテミテ

柳迫「…………」

一方「どしたァ」

柳迫「……どうやったら炊飯器でブリ大根が作れるの?」

一方「オマエ手伝ってたンじゃねェのか?」

柳迫「自分の目で見ても信じられないものくらいあるわ」

一方「確かに………いくらなんでもジェラートはないよなァ…」

柳迫「ジェラート?」

一方「いや、コッチの話だァ」

黄泉川「さぁ、早速食べるじゃんよ。手を合わせるじゃん」



『いただきます』




537: 2011/06/26(日) 03:35:41.40 ID:QCFCHYWO0

柳迫「じゃあ打ち止めちゃんとワーストさんは御坂さんのはとこなんだね」

打止「そうだよ!碧美お姉ちゃんは固法お姉ちゃんのお友達なんだよね?」モグモグ

柳迫「そうよ。美偉と一緒に住んでるの」

打止「知ってる!『るーむしぇあ』って言うんだよね!ってミサカはミサカは最近仕入れた知識を披露してみたり!」モグモグ

柳迫「うーん、ウチは寮だからちょっと違うかなー。どっちかっていうと相部屋かな?」

一方「クチにモノ入れたまましゃべンじゃねェ」モグモグ

打止「はぁーい」モグモグ


柳迫(……お父さんみたい)


番外「何ソレ?父親気どり?気色悪っ」ガツガツ

一方「あァ?」ギロッ

黄泉川「はいはい、食卓でケンカはナシじゃん」

番外「はーい☆」

一方「チッ」


538: 2011/06/26(日) 03:37:02.92 ID:QCFCHYWO0

柳迫「仲がいいんだね」

番外「はぁ?冗談はやめてよね、ミサカはこんなモヤシと馴れ合うつもりなんてないし」

一方「それはこっちのセリフだァ」モグモグ

柳迫「ふぅ~ん?」ニヤニヤ

一方「なァにニヤニヤしてやがりますかァ?」

柳迫「べっつにー?」


打止(仲がいいのはどっちだろうね、ってミサカはミサカはヨミカワに耳打ちしてみる)ヒソヒソ

黄泉川(確かにじゃん)ヒソヒソ



--------------------------------------------------------------------------------------

    19:45  



『ごちそうさまでした』



黄泉川「さってと、片づけるじゃん」ヨイショ

柳迫「あっ、手伝います」ガタッ

黄泉川「ありがと。じゃあ食器をまとめてほしいじゃん」

打止「ミサカも手伝うー!」



芳川「気が利く子ね」ズズー

一方「イヤだから手伝えよ。ナニ当り前のように食後のコーヒーすすってンだよ」

芳川「……立ち上がったら負けかなって」

一方「それすらかよ。オマエホントに自立する気あンのかァ?」

539: 2011/06/26(日) 03:37:53.06 ID:QCFCHYWO0



黄泉川「手際いいじゃんか、碧美」ガチャコガチャコ

柳迫「本当ですか?ありがとうございます」ガチャガチャ

打止「うん!ヨシカワや番外個体より頼りになるかも、ってミサカはミサカはあえて辛らつな言葉を選んでみたり!」フキフキ

柳迫「そうかなー?じゃあ私もここに住もうかな?なーんちゃっ…」エヘヘ



打止「そうだ!碧美お姉ちゃんがあの人のお嫁さんになってウチに来ればいいんだよ!」

柳迫「!」ポロッ


ガシャーン!


柳迫「ご、ごめんなさい!」

黄泉川「いーじゃんいーじゃん気にしなくて。番外個体にやらせたら毎回1枚や2枚じゃ済まないじゃんよ」

一方「オイ、騒がしィぞ」

柳迫「今片づけ……いつっ…」

打止「お姉ちゃん、血が出てるよ!」アワアワ

一方「………チッ、世話の焼ける」スッ

柳迫「え?」

一方「」チュパ

柳迫「!!?」


540: 2011/06/26(日) 03:38:45.73 ID:QCFCHYWO0

打止「わお!」

黄泉川「見せつけてくれるじゃんか」

柳迫「ちょ、ちょっと!」

一方「」ヂウー

柳迫「ちょっと、ヤダ………」

一方「」ヂウー

柳迫「うう………」カァァァァ

一方「……ヨシ、止まった。打ち止めァ、救急箱ォ」

打止「もう準備してあるよ、ってミサカはミサカは光の速さで差し出してみたり!」ハイ

ペタペタ

一方「………ホレ、終わりだァ」

柳迫「あ、ありがと………」

一方「フン………オイ芳川ァ、オレの分もコーヒー淹れろォ…あァ!?メンドくせェって何だこのクソニートがァ!!」




541: 2011/06/26(日) 03:40:47.15 ID:QCFCHYWO0

--------------------------------------------------------------------------------------

   20:11   リビング

~♪

黄泉川「風呂が沸いたみたいじゃんよ。ガキども、さっさと入るじゃん」

打止「はーい。碧美お姉ちゃん、一緒に入ろ?」ニパー

柳迫「うん、あっ………そういえば着替えが…」

一方「芳川ァ。テメェの貸してやれ」

柳迫「え、いや、そんな申し訳ないです!」

芳川「私は構わないわよ……それに…」チラッ

黄泉川「私の顔に何かついてるじゃん?」


バイーン


芳川「……愛穂のじゃ大きいでしょ?」ヒソヒソ

柳迫「………ハイ、スミマセン」シクシク

黄泉川「?」

一方「あと寝間着は……」

番外「ミサカは貸さないよ。ってか持ってないし」シレッ

一方「わァーってる。ハナから期待なンざしてねェ。……おい打ち止め、オレのジャージ出せ」

柳迫「え!?」

打止「はーい」

542: 2011/06/26(日) 03:41:50.10 ID:QCFCHYWO0

柳迫「いや、ホントに申し訳ないから…」

一方「まァ、このクソ寒いなか下着で寝てェってンなら止めねェけどォ?」

柳迫「あう……」

打止「お姉ちゃん、早く入ろ!」クイクイ

柳迫「あ、うん………」



芳川「ふふふっ、打ち止めもすっかり懐いちゃったわね」クスクス

一方「いいンじゃねェの?普段周りにニートと人格破綻者しかいねェンじゃ教育上よろしくねェからなァ」ズズー

番外「っていうかさぁ、アナタあの子に優しすぎるんじゃないの?ハッキリ言ってちょっとヒクよ?」ケラケラ

一方「うるせェ」

番外「………ひょっとしてホレちゃった、とか?」ククク





一方「だったら何だよ」ズズー





番外桔梗「「!?」」ガタガタッ

543: 2011/06/26(日) 03:42:30.18 ID:QCFCHYWO0

一方「あンだよ?」

芳川「え、あ、いや………あまりに予想外の答えが返ってきたから…」

番外「は?何それ意味分かんないし。え?アナタそんなキャラだったっけ?」

一方「うるせェっつってンだろ。大体『だったら何だ』っつっただけでホレたとは言ってねェし」

芳川(ほぼ言ったようなものじゃない………)

番外「いいのかにゃー?上位個体泣いちゃうよ?」

一方「打ち止めはそンなンじゃねェよ。それはアイツも分かってる」

芳川「ふーん………?」

番外「何それ?もっと焦るかと思ったのにつまーんなーい」プイッ

一方「言ってろクソガキが」




544: 2011/06/26(日) 03:43:39.49 ID:QCFCHYWO0

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   20:15  バスルーム

カポーーーーーーーーーーーーーーーン

打止「ふいーーー生き返るぅー、ってミサカはミサカはオバサン臭い感想を吐露してみたり~」ゴクラク

柳迫「ふふふっ、誰のマネなの、それ?」

打止「ヨミカワとヨシカワだよ!ってミサカはミサカはバレたらブッ飛ばされそうな事実を暴露してみたり!」

柳迫「……それは本当に秘密にしておいた方がよかったね」

打止「うーん………」ジーッ

柳迫「なあに?そんなに見られたら恥ずかしいよー」チャプ

打止「えっとね、碧美お姉ちゃんってすっごくキレイだなって思ってたの!」

柳迫「どうしたの、急に?」クスッ

打止「固法お姉ちゃんも美人さんだったけど、お姉ちゃんはこう、スラッとしててほれぼれするな、
   ってミサカはミサカは羨望のまなざしで見つめてみる」

柳迫「もぉー、そんなおだてたって何にも…」テレテレ

打止「つくづくあの人にはもったいないかな!ってミサカはミサカはようやく核心をついてみたり!」

柳迫「ぶっ!!!」バッシャア!


545: 2011/06/26(日) 03:44:56.51 ID:QCFCHYWO0

打止「ねぇねぇ、あの人のどこがいいの?顔?声?それともお姉ちゃんツンデレ萌えとか?」ネェネェ

柳迫「ちょっと、打ち止めちゃん、声が大きい……」

打止「どこで知り合ったの?もうチューした?ねぇねぇ教えてよー、ってミサカはミサカは……」



柳迫「……で、音楽の話で盛り上がって、ちょっとイイなー、なんて思ったりして…」

打止「なるほどー。で、さっきの指チュパでクラッときたってわけだね」

柳迫(結局洗いざらい吐かされた……幼女に凌辱された…主に精神面を)

打止「碧美お姉ちゃんって案外単純なんだね!ってミサカはミサカは突然毒を吐いてみたり!」

柳迫「ヒドイ!散々言わせておいて!」

打止「そのままだとお姉ちゃん絶対悪い男に引っかかるよ。気をつけておいた方がいいかも!
   ってミサカはミサカはお昼のワイドショーの受け売りを偉そうに語ってみたり!」

柳迫「子どもになんてもの見せてるの芳川さん!!」

打止「………でもね」

柳迫「?」

打止「あの人は悪い人じゃないから安心していいよ、ってミサカはミサカは太鼓判を押してみる」

柳迫「………///」ブクブクブクブク


546: 2011/06/26(日) 03:46:13.69 ID:QCFCHYWO0

打止「それにお姉ちゃんだったらあの人を任せられるかなって思うから。
   ホントは『お前なんぞに娘はやらん!』みたいなセリフが言ってみたかったんだけど、
   ってミサカはミサカは小姑プレイを所望してみる!」バシャバシャ

柳迫「………あーく…あの人は、打ち止めちゃんにとっても大切な人なんじゃないの?」

打止「そうだよ。だからあの人とお姉ちゃんが一緒にいてくれたらミサカもうれしいかな!」

柳迫「さびしくない?」

打止「何で?大事な人が増えるってすごくうれしいことじゃない?」

柳迫「そういう……ものかな」

打止「きっとそうだよ!」ニコッ

柳迫「……打ち止めちゃんは大人だなぁ」

打止「でっしょー?あの人も番外個体もお子ちゃまだからさー、ミサカが大人にならないとねー、
   ってミサカはミサカはドヤ顔で薄い胸を張ってみたり!」フンス

柳迫「ふふふっ………」



打止「っていうかお姉ちゃん」ザブ

柳迫「何?」

打止「多分あの人もお姉ちゃんのこと嫌いじゃないと思うよ、ってミサカはミサカは乙女の第六感を働かせてみたり!」

柳迫「え」


547: 2011/06/26(日) 03:47:20.97 ID:QCFCHYWO0

打止「だってあの人がいくら困ってるからって女の人連れてくるなんてありえないもん!
   ましてや何とも思ってない人なんか絶対相手にしないよ。
   そういう好き嫌いハッキリしてるから、ってミサカはミサカはあの子ピーマンダメなのよーみたいなノリで言ってみる!」

柳迫「へぇ……」


柳迫(誰にでもああなんだと思ったけど……冷静に考えたらそんなわけないよね)

柳迫(………///)ブクブク


打止「だからチャンスだよ!」グッ

柳迫「へ?チャンス?」

打止「だって気になる人と一晩とはいえ一つ屋根の下ですごすんだよ?チャンスと言わずに何というの!?」

柳迫「言われてみれば確かに………」ハッ

打止「だから今夜、決めちゃいなよ!ってミサカはミサカはヨシカワに教えてもらったハンドサインをキメてみたり!
   ところでこれってどういう意味?」ビシッ

柳迫「子どもになんてこと教えてるのあの人!?」



--------------------------------------------------------------------------------------

   20:49   リビング


打止「上がったよー」ホケホケ

柳迫「お先にお湯いただきましたー」パタパタ

一方「おォ」

548: 2011/06/26(日) 03:48:44.38 ID:QCFCHYWO0

芳川「随分長風呂だったわね。何だか話しこんでたみたいだけど」クスクス

打止「乙女の秘密だもんねー、お姉ちゃん♪ってミサカはミサカは無駄に意味深な返事をしてみたり!」ギュッ

柳迫「ね、ねー」ヒクヒク

一方「フーン……ンじゃ、オレも入りますかァ」ヨッコイショ

番外「えー次はミサカが入るー」ヤダヤダ

一方「オマエや芳川みてェに家でダラダラしてただけのヤツが2番風呂なンかもらえるとか思ってンじゃねェぞ!」

芳川「今の流れで私も罵倒されるのはおかしくないかしら?」

番外「そんなの上位個体だって一緒じゃーん!!ひいきだー、ひーいーきー!」ブーブー

一方「ウッゼェ………ン」チラッ

柳迫「?な、何……?」

一方「……別にィ。サイズは大丈夫かァ」

柳迫「え、ええ、おかげさまで。というか寧ろピッタリなのが色々悔しいんだけど」ショボーン

一方「あっそォ」テクテク

柳迫「……?」

549: 2011/06/26(日) 03:50:17.39 ID:QCFCHYWO0

芳川「ふふふっ……いいことを教えてあげるわ」チョイチョイ

柳迫「え?な、何ですか?」

芳川「湯上りの女の子にときめかない男子高校生はいないのよ」ビシッ

番外「まぁヨミカワとヨシカワはもう賞味期限切れ……」


ビュン ドスドスッ!


ビィーン……


黄泉川「あーゴメン、手が滑ったじゃんか。で、何の話じゃん?」

芳川「あらごめんなさい。護身用のメスしまうの忘れてたわ」

番外「」

打止「ヨミカワとヨシカワすごーい!ドクタージャッカルみたい!」

柳迫「そんなに好きなの?ゲ○トバ○カーズ……」




550: 2011/06/26(日) 03:51:58.42 ID:QCFCHYWO0

--------------------------------------------------------------------------------------

   22:45   リビング

番外「」スコー

芳川「……もう飲めない……」スピー

黄泉川「じゃあそろそろ寝るじゃんよ」

打止「うん………もう眠いって…ミサカはミサカはまぶたをゴシゴシ……」ネムネム

黄泉川「じゃあ碧美の布団をだすからちょっと待つじゃん」

一方「メンドくせェからオレの部屋で打ち止めと寝ろォ。
   オレは週明けまでに仕上げなきゃならねェ論文があるから適当にソファーで寝る。
   黄泉川ァ、毛布だけ出しといてくれェ」

黄泉川「わかったじゃん」

柳迫「そんな、そこまでしてもらうワケには…」

打止「お姉ちゃあん……一緒に寝ようよぉ……」クイクイ

柳迫「クッ、良心が痛む!良心と良心の板挟みにあってる、何コレどういう状況?」

黄泉川「じゃあ悪いけど碧美、打ち止めを寝かしてやってほしいじゃんか?
    一方通行もああ言ってるし」ネッ

柳迫「……はい、すみません」

一方「謝ってばっかりだなァオマエ」

柳迫「!……あ、ありがとう」

一方「ン」




551: 2011/06/26(日) 03:53:40.88 ID:QCFCHYWO0

--------------------------------------------------------------------------------------

   23:52   リビング

一方「………」カタカタカタカタ

ガラッ

一方「ン?……なんだよオマエか」カタカタカタカタカタ

柳迫「ちょっと眠れなくて……邪魔しちゃった?」

一方「別にィ……打ち止めはもう寝たかァ?」カタカタカタカタ

柳迫「ええ、あれからすぐに」

一方「あっそォ………」カタカタカタカタ

柳迫「………眼鏡」

一方「はァ?」

柳迫「眼鏡するんだ」

一方「あァ、コレか。視力が悪いワケじゃねェンだが刺激に弱くてな。
   パソコンイジる時だけ着けてンだよ」

柳迫「へぇ……」


柳迫(ちょっとときめいたかも………私、眼鏡属性ないのに)


552: 2011/06/26(日) 03:55:12.74 ID:QCFCHYWO0

一方「………」カタカタカタカタカタカタカタカタ

柳迫「………」ジー

一方「……………」カタカタカタカタカタカタカタカタカタカタ

柳迫「……………」ジー

一方「………………あァもォ!」ガタッ

柳迫「えっ!」ビクッ

一方「ちょっと待ってろォ!」ドスドス…

柳迫「……キッチン?」


ゴソゴソ ボッ コポコポ トクトクトク…


一方「……ほらよォ」コトッ

柳迫「…………ココア?」

一方「牛乳と粉だけで作ったからよく眠れンだろォ。それ飲んでさっさと寝ろォ」ズズーッ

柳迫「あ、ありがと………」

一方「べっつにィ…自分のコーヒー淹れるついでだァ」

柳迫「………おいし」コクン

一方「そりゃどォもォ………」カタカタカタカタカタカタカタカタ




553: 2011/06/26(日) 03:56:10.97 ID:QCFCHYWO0

柳迫「……それ、何書いてるの?論文って言ってたけど…」

一方「『11次元空間におけるベクトル変換に付随する影響の規模と波及する範囲』」キパッ

柳迫「」

一方「…まァわかんねェわな。オレ以外の人間にはコイツを理解することすらできないだろォぜ」

柳迫「誰も読めない論文を書いてるの?」

一方「この街にはそういうのをありがたがるバカが多いンだよ」カタカタカタカタカタ

柳迫「ふぅーん……」

一方「まァ、別にいいけどよォ。奨学金〈カネ〉にはなるし。オレのことなンざ必要なヤツが知ってればイイし」カタカタカタカタカタカタカタカタ

柳迫「………」コクン

一方「……………だが」ピタッ

柳迫「?」





一方「もしオレのことを理解できるヤツが増えるとしたらそれは………悪くねェかもな」カタカタカタカタカタ






554: 2011/06/26(日) 03:57:28.95 ID:QCFCHYWO0

柳迫「フフッ…」

一方「……何が可笑しい?」ギロッ

柳迫「ごめんごめん……打ち止めちゃんと同じこと言ってるから」

一方「へェ………?」

柳迫「『大切な人が増えるのはすごくうれしいことじゃない?』だって。
   カワイイのに大人だね、あの子」ニコッ

一方「………確かに」カタカタカタカタカタカタカタカタ

柳迫「……………ごちそうさま」コトッ

一方「おゥ」カタカタカタカタカタ

柳迫「カップ片づけるね」ガタッ

一方「流しに浸けとくだけでイイ。後で自分の分とまとめてやる」カタカタカタカタ

柳迫「でも………」

一方「寝る前に体冷やすモンじゃねェ」カタカタカタカタ

柳迫「…………わかった。じゃあ……」

一方「…………」カタカタカタカタ

柳迫「………」ジッ

一方「……」カタカタカタカタカタ チラッ

柳迫「…………」シュン



一方「………ジャマしねェなら」カタカタカタ

柳迫「……えっ?」

一方「…………オレのジャマをしねェなら、もう少し居ろォ」カタカタカタカタカタカタカタカタ

柳迫「!……うん!」パァァ


一方(あ、ヤベェ、今のコイツちょっとかわいかったかもォ)




555: 2011/06/26(日) 03:58:21.23 ID:QCFCHYWO0

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   25:48

一方「………ま、こんなモンかァ」カタカタカタッ!

柳迫「ン………終わったの…?」

一方「一応なァ。後は体裁とフォーマット整えりゃ終わりだァ」ホゾンシテシュウリョウ!

柳迫「……おつかれさま」ニコッ

一方「ホント、つっかれたぜェ」セノビーーーッ

柳迫「……じゃあ、私もそろそろ寝るね」

一方「………オイ」

柳迫「ん?なぁに?」

一方「ちょっと耳貸せェ」チョイチョイ

柳迫「?」ナニナニ







チュッ







柳迫「!!!!????」バッ


556: 2011/06/26(日) 03:59:26.21 ID:QCFCHYWO0

一方「じゃ、オレは寝るぜェ。おやすみィ」ノソノソ

柳迫「ちょ、ちょっと待っていただけないでしょうか!?」アタフタ

一方「ンだよ、うるせェなァ…連中起きンだろォが」

柳迫「イヤ、そうやって冷静に返されると逆に焦るんだけど…え!?何?
   今私、何されたの!?」ヒソヒソ

一方「はァ?キスに決まってんだろォ?」

柳迫「何でキスされたのかを訊いたつもりなんだけど!?」

一方「したかったから、じゃダメかァ?」

柳迫「いいわけないでしょ!?」

一方「あァもォまどろっこしィ……」ツカツカ

柳迫「え、ちょ、近…」





ギュッ





柳迫「!?!?!?」

一方「……コレで分かったかァ?」ボソッ

柳迫「///」コクコクコクコク!


557: 2011/06/26(日) 04:00:48.39 ID:QCFCHYWO0

一方「よろしィ。じゃあ今度こそおやすみィ…」

柳迫「待って待って最後に一つだけ!」

一方「なァンだよもォ。眠いンだけどォ!」プンプン

柳迫「その……何で私、なの?」

一方「何でって言われてもなァ……打ち止めが懐いてたから悪いヤツじゃなさそォだしィ?
   話合うし面白ェし、あと表情がクルクル変わってぶっちゃけカワイイし。あとはァ……」

柳迫「わかった!もういい!おなか一杯っていうかコレ以上は嬉し氏にするから!!///」

一方「そォ……あ、コレは言っといた方がイイのかァ?」

柳迫「ふえ?」





一方「…好きだから付き合ってくれねェ?」

柳迫「色々順番間違ってない!?」




558: 2011/06/26(日) 04:02:13.11 ID:QCFCHYWO0

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   翌日  10:28  玄関

柳迫「何から何までお世話になりました」ペコリ

黄泉川「今回みたいなことは立場上感心しないけど、遊びに来る分には大歓迎じゃん。またな」

打止「バイバーイ、碧美お姉ちゃん!ってミサカはミサカはちぎれんばかりに手を振ってみる!」ブンブン

柳迫「またね、打ち止めちゃん」フリフリ

一方「じゃ、コイツ送ってくっからァ」ツカツカ

打止「いってらっしゃーい」フリフリ


バタム


黄泉川「いやー、ゆうべのアレはさすがの私もビビったじゃんか」

打止「ミサカもお姉ちゃんにチャンスだよ、とは言ったけど、まさかあの人から仕掛けてくるとは思わなかったなー、
   ってミサカはミサカは驚愕しながら情報をガッツリネットワークに垂れ流してみたり!」

黄泉川「あの一方通行がねぇ……」

打止「キレたナイフっていうか抜き身の日本刀みたいだったあの人がねぇ……」

黄泉川止め「「ま、面白いからいいけど(じゃん)」」クスクス




559: 2011/06/26(日) 04:03:22.58 ID:QCFCHYWO0

一方「あァーやっぱダメだァー。ハムごときじゃ昨日の分の肉分補給出来ねェ」


柳迫(えぇーこの人何でこんな普通なの!?ゆうべは結局あのまま寝ちゃったし、
   今朝、顔合わせても何も言ってこないし…)


一方「……なァ、そォ言えばよォ」

柳迫「へ!?な、何?」ビクッ

一方「ゆうべの返事まだ聞いてねェンだけどォ?」

柳迫「何で今ここで聞くの!?道の真ん中だよ!?」

一方「ンだァ?黄泉川やクソガキどもに聞かれた方が良かったかァ?」

柳迫「そ!それは………」

一方「で?どうなンだよ?」ズイッ

柳迫「うぅ………ゎ」

一方「わ?」

560: 2011/06/26(日) 04:04:04.06 ID:QCFCHYWO0














柳迫「私で、よければ………///」







とある一夜の柳迫通行  終わり

578: 2011/06/29(水) 01:11:59.05 ID:zVHE7Na10

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   金曜日  21:05  固法・柳迫の部屋

ガチャ

固法「………やっと解放されたわ」

あの後すぐにやってきた風紀委員たちに状況を説明し、
被害者の少女と共に詰所で事情聴取を受けた固法はようやく自宅へ帰りついた。
普通ならば合わせて30分ほどで終わるはずなのだが、ここまで時間がかかったのには理由があった。

固法「垣根さん………どこに行ったの?」

現場となったあの路地には、垣根がいた痕跡がまったく残っていなかったからである。
路地の壁や被疑者の男の服、さらに少女の制服まで徹底的に調べたが、
それらから指紋は一切検出されなかった。
少女の肩にかかっていた上着も垣根が姿を消すと同時に、
得体のしれない素材でできた白くて大きい布にすり替えられていた。
断定はできないが、十中八九垣根の能力によるものだろう。
その布も少女が風紀委員の用意した車両に乗り込むと同時に消滅したため、
垣根につながりそうな手掛かりは一つも残っていない。

つまり記録の上では、あのとき路地裏にいた人間は被疑者の男と被害者の少女、
そして偶然居合わせた固法の3人だけということになっている。


579: 2011/06/29(水) 01:12:53.71 ID:zVHE7Na10

しかしそうなると困った事態が起こる。
容疑者の不良を半頃しにした人間は誰なのか、という問題だ。
もちろん被害者にそんなことができるわけもなく、
消去法的にその場にいた固法に疑いがかかったために事情聴取が長引いた、というわけである。


固法(結局自分たちは見てない、ってことで押し通したけど……)


被害者の少女は襲われたショックで記憶が混乱しており、十分な証言が得られなかった。
そういうわけで固法の証言が唯一の手掛かりだったのだが、
「現場にもう一人いた」と証言しても証拠がないのでは信じてもらえるとは到底思えず、
余計な誤解を招く恐れもあったので不本意ながらしらを切ることにした。


固法(まぁ、私の素性を明かしたら信じてくれたし、いいよね………?)


《一七七支部の固法》という名前は風紀委員達の間でそれなりにとどろいているらしく、
担当の風紀委員とは面識はなかったものの
自分の名前を明かすなり立ち上がって敬礼されてしまった。
本来、風紀委員に階級は存在しないのだが。


固法(複雑な気分だわ………)


とはいえ、そのおかげで解放されたのだから文句は言わないことにしよう。


580: 2011/06/29(水) 01:13:42.42 ID:zVHE7Na10

それよりも今現在、固法の心に重くのしかかかっていることが一つ。



固法「………垣根さん……どうして……?」



夜の闇に消えたあの青年のことだ。
あの時の垣根は明らかに正気ではなかった。
心神喪失というよりも、理性のタガが外れたような状態。
内から湧き上がる衝動にしたがって暴れているように見えた。


固法(思えば初めて会った時もその次の時もそうだった……)


最初は、男子中学生を脅迫していた不良。
二度目は、自分を羽交い絞めにしていたその仲間たち。

固法と垣根の出会いは、垣根の『怒り』、いや、『殺意』とともにあった。


固法(どうしてそこまで………)



581: 2011/06/29(水) 01:14:32.81 ID:zVHE7Na10

最初はただのフェミニストだと思っていた。
だがそれだけではあそこまで痛めつける理由にはならない。
何がそこまで垣根を掻き立てるのか。
固法は垣根の言葉を反芻する。
以前出せなかったその答えを見つけるために。



『…弱えヤツを力でねじ伏せるのは楽しかったかって訊いてんだよ!!』


『わかるか?頭蓋を割り、脳髄を切り開き、神経を掻き分けたその奥の奥に刻み込まれた根元的感情こそが恐怖なんだよ!!』


『他人を恐怖で踏みにじるヤツは、必ず別の恐怖によって踏みつぶされる』



『力』、そして『恐怖』

垣根の口から出たキーワードはその二つのようだった。
そして、もう一つ。



『許されるワケねえだろうが!!!!』



垣根はあのとき、『許される』という言葉を使った。
会話の流れから考えるにそこは『許す』と言う方が自然だろう。
些細なことだが、どうにも引っかかって仕方がなかった。
なぜならまるで―――――――――


固法(まるで、自分に向かって言ってるみたいだった)





――――――――結局、何も答えなど出るはずもない。
ただ一つだけわかったのは、垣根が自分の想像もつかないほど重い十字架を背負っているらしい、ということだ。



582: 2011/06/29(水) 01:15:13.53 ID:zVHE7Na10



不意に、ぬいぐるみと目が合った。
初めて出かけたときにゲームセンターで垣根がとってくれた猫のぬいぐるみ。


固法(垣根さん……………)


ギュッ

なぜだか急にその猫がいとおしくなった固法は、
そっとそれを抱き寄せた。



垣根とは、もう二度と会えないような気がした。




583: 2011/06/29(水) 01:15:58.82 ID:zVHE7Na10

――――

――――――――

――――――――――――――

   その夜、夢をみた。

   どこまでも真っ白な空間で、男の子がうずくまって泣いている。

   どこかでみたような、金色に近い、色素の薄い髪をした男の子だった。

   どうしたの?   何で泣いてるの?

   少年は答えない。

   近くに行こうとしても、前に進むことができない。

   突然、水の音がした。

   足元をみると、いつの間にか赤い水たまりができていた。

   再び少年に目を向けると、その水たまりは少年を中心に広がっていた。

   もう一度少年に歩み寄ろうとしたが、水たまりがバシャバシャと音を立てるだけで一向に近づくことはできない。

   結局自分にはどうする事もできず、少年はいつまでもその真っ赤な水たまり―――――――――

   血の海の真ん中で泣き続けていた。



――――――――――――朝目覚めた時、固法は夢の内容を全く覚えていなかった。




584: 2011/06/29(水) 01:16:43.32 ID:zVHE7Na10

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    同日  19:01   垣根のマンション

ガチャッ

バタンッ

垣根「…………」

バサッ

垣根は帰ってくるとすぐに血まみれのシャツを脱いでゴミ箱へ放り込んだ。
ここまで汚れてしまったら洗っても落ちないだろうし、
なにより下衆の血が付いた服など二度と身に着ける気にはならなかった。

洗面所で鏡を見ると、顔や髪にも血が飛んでいた。


垣根(ちっ、手だけ洗ってさっさと寝ちまおうと思ってたら、こうなったら風呂に入った方が………っ)


垣根「くっ、ハハハ……」

そこまで考えて、あまりの可笑しさに吹き出してしまった。



585: 2011/06/29(水) 01:18:08.10 ID:zVHE7Na10


垣根(何考えてんだろうな、オレは)





垣根(どれほど見てくれだけ小奇麗にしたって、オレの手はとっくに血みどろじゃねえか)



垣根(今更洗い落とせるわけ、ねえだろうがよ………)


垣根「クククッ、ケッサクだなぁ、オイ」クククク…

そうやって、垣根はしばらく笑っていた。




586: 2011/06/29(水) 01:18:49.90 ID:zVHE7Na10


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ジャーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

キュッ

垣根「ふぅ」ドサッ

結局、間を取ってシャワーで済ませることにした。
寝間着に着換え、ソファーに身を投げる。
夕飯は食べそこなったが、食欲はまったくなかった


垣根(……………また、やっちまったな)


あの手の連中を見ると抑制が利かなくなる。
力で他者を踏みつけにする輩――――――
それはまぎれもなくかつての垣根自身の姿だった。
垣根が憎んでいるのは街にはびこる不良たちでも、ましてや『悪』などという抽象的な概念でもない。
垣根が頃したいほど憎んでいるのは、自分の『過去』以外の何物でもなかった。
『力』、そして『恐怖』。
それが昔の自分が持っていたすべてだ。
それしか、もっていなかった。



だから垣根は拳を振るう。
そんなものを振りかざす連中を薙ぎ払うために。
―――――――――過去の幻影を振り払うように。


587: 2011/06/29(水) 01:19:34.71 ID:zVHE7Na10





垣根(…………………固法………)



そして垣根の胸に去来するのは、あの少女の顔だった。

凛々しく毅然とした顔。
顔を赤らめ恥じらう顔。
年相応に屈託なく笑う顔。

そして――――――――



肩を震わせ怯える顔。



いずれこうした形で破滅が訪れるであろうということは予想していた。
結局のところ、『垣根帝督』という人間は何一つ変わってはいないのだから。
それが彼女に出会って、つかの間の夢を見ていただけだ。



優しく暖かい胡蝶の夢を。


588: 2011/06/29(水) 01:21:05.38 ID:zVHE7Na10



それを垣根は自分で壊してしまった。
それも、『力』と『恐怖』という、垣根が最も憎む方法によって。


垣根(心理定規の言うとおりになっちまったな………)


垣根は、常に人を小馬鹿にした笑いを顔にはり付けた少女の言ったことを思い出していた。



『過去を切り捨てた気になってるなら、それはステキな勘違いよ』

『力加減を間違えればあの子、あっという間にひき肉になっちゃうかもね』


垣根(もう会えねえ、よな)


またこんなことになった場合、垣根は固法の前から消えようと心に決めていた。
そんな資格はないと思ったし、垣根自身も彼女の怯えた顔を見たくはなかった。
彼女にはずっと笑っていてほしかったから。
その笑顔を奪うのが自分なら、自分などいない方がいい。
そういう覚悟があったからだろうか、意外に冷静な自分に垣根は内心驚いていた。

そう、覚悟していたことだ。
悲しくはない。自分の前から誰かが居なくなるのには慣れている。
さびしくはない。幸いなことに、今の自分には自分なんかよりずっと強い友人がいる。

ただ少し、
ほんの、少しだけ―――――――――――

589: 2011/06/29(水) 01:21:36.90 ID:zVHE7Na10




垣根(名残惜しいけどな……………)




垣根は、その感情に名前をつけることなく、
そっと鍵をかけることを決めた。

ブルッ

垣根「寒ぃ……………」ゴソゴソ

ソファーに敷きっぱなしになっている毛布にくるまるようにして、垣根は床に就いた。
手足を折り曲げて眠る様は、まるで泣きつかれた子どものようだった。




590: 2011/06/29(水) 01:28:30.84 ID:zVHE7Na10
ここまでです。
読んでくださってありがとうございます。

前回のダダ甘っぷりがウソのようですが、
ちゃんとハッピーエンドの予定なのでご安心ください。

【禁書目録】固法「あなたが……《未元物質》……?」【5】

引用: 固法「あなたが……《未元物質》……?」