1: 2014/04/26(土) 14:36:09 ID:sTsYBIhU


ベルトルト「そんな事ないと思うけどね…」

ユミル「…ん?」


ベルトルト「ありがとう。君から借りた本、返すね。興味深い内容だったよ」

ユミル「恋を始めるには私は歳を取りすぎている…か。貸したのを忘れてた…」

ベルトルト「僕には少し難しかったけど」

ユミル「ははっ…若いからな、お前」

ベルトルト「君もね」

ユミル「…うん」

2: 2014/04/26(土) 14:38:55 ID:sTsYBIhU

ベルトルト「物語の主人公は二十代の半ばを過ぎた雑貨屋の女店主」

ベルトルト「ある日、客として店を訪れた17歳の少年に恋をする」

ユミル「彼はいつも彼女より一回りも年下の恋人を連れてくる」

ベルトルト「店で品物を選ぶ彼を見つめながら彼女は苦しい胸の内を抑え切れずに呟く」

ベルトルト「恋を始めるには私は歳を取りすぎている…と」


ユミル「そうだ」


ベルトルト「…楽しい本ではなかったね」


ユミル「あぁ…でも、題名に惹かれてな、手を伸ばしてしまったんだ」

ユミル「お前が本を読むのが好きだってコニーから聞いていたから、なんとなく…」

ユミル「暇つぶしにと思って貸したんだが、時間を無駄にさせてしまったようだ。悪い」


ベルトルト「いや、確かに楽しい内容ではなかったけど、色々と考えさせられたよ」

3: 2014/04/26(土) 14:43:28 ID:sTsYBIhU

ベルトルト「その本には、人生の教訓が詰まっていた」

ユミル「この話は実話じゃないぞ?」

ベルトルト「分かってるよ」


ベルトルト「子供向けのおとぎ話だって、実話じゃないだろ?」

ユミル「まぁな…」

ベルトルト「あれにも人生における教訓が詰まってるから。残酷な話も多いし…」

ユミル「そうだな」


ベルトルト「ユミルはさ、なんでこの本を買おうと思ったの?」

ユミル「それはさっき言ったはずだが…題名に惹かれた、と」

ベルトルト「それはもう聞いたけど…」

ベルトルト「僕らの歳じゃ、この主題にはピンと来ないじゃない。まだ十代だし」

ユミル「…」


ユミル「……はぁ…」

4: 2014/04/26(土) 14:45:55 ID:sTsYBIhU

ベルトルト「ユミル?」


ユミル「お前はどう思った?この話の結末」

ベルトルト「悲しいな…と思った」

ユミル「同感だ」

ベルトルト「あと、気の毒だなと」

ユミル「それでもこの主人公は、『恋をして良かった』と言った。それだけが救いだ」

ベルトルト「そう…」


ユミル「そろそろ就寝時間だ。寮に戻ろう」

ベルトルト「あ、あぁ…。そ、そうだ!また何か本を買ったら貸してくれる?」

ユミル「いいぞ!趣味が合うかは分からないが。今回みたいな本でも良ければ」ガタッ

ベルトルト「何でもいいよ、僕が本を読むのは大した理由じゃない。ただの暇潰しだから」

ユミル「そうか、分かった」

ユミル「じゃあな!おやすみ。ベルトルさん」

ベルトルト「おやすみ、ユミル」

5: 2014/04/26(土) 14:48:44 ID:sTsYBIhU


― 男子寮 ―



ベルトルト「ただいま」

ライナー「おう!お帰り。ユミルに本を返してきたのか?」

ベルトルト「うん、もう2週間も借りてたからね。さっき図書室で捕まえて返してきた」

ベルトルト「主人公の揺れ動く女心を理解するのに時間が掛かって…。進まなかった」

ライナー「へぇ…」

ベルトルト「ライナーもユミルに貸してもらう?娯楽として読む本じゃないと思ったけど」

ライナー「文学作品か?」

ベルトルト「そこまで堅苦しくないかな?」

ベルトルト「年下の男に恋をした女性の話」

ライナー「いや、俺はいいな。あまり興味がない」

6: 2014/04/26(土) 14:50:44 ID:sTsYBIhU

ライナー「それより、ベルトル聞いてくれ!」

ライナー「今日クリスタがな、立体機動の訓練中に…

ジャン「そろそろ消灯時間じゃねぇか?」

アルミン「そうだね。ランプ消そうか」

ライナー「もうそんな時間か…続きは明日の朝だな!おやすみ、ベルトル」

ベルトルト「おやすみ、ライナー」

アルミン「ベルトルト!おやすみ。また寝ぼけてベッドから落ちないようにね!」

ベルトルト「あ…あぁ、気を付け…る事ができるのかな?うん、努力するよ。おやすみ」


ベルトルト(年下の男に恋をする、か)

7: 2014/04/26(土) 14:53:33 ID:sTsYBIhU


― 女子寮 ―



ユミル(私は、変だ…)

ユミル(どうしてあんな本を、ベルトルさんに貸したんだろう)

ユミル(この辛い胸の内を、知ってもらいたかったからだろうか?)

ユミル(いや、違う…。ただ、お前の率直な感想が聞きたかっただけだ。この本の…)


クリスタ「ユミル…?」ヒソッ…

ユミル「ん?」ゴロン

クリスタ「眠れないの?」

ユミル「いや…少し考え事をしていてな」

ユミル「心配ないよ、クリスタ」

クリスタ「そっか…明日も早いから、もう寝よう?」

クリスタ「おやすみなさい、ユミル」

ユミル「あぁ、おやすみ…」

8: 2014/04/26(土) 14:58:44 ID:sTsYBIhU


― 食堂 ―



ライナー「クリスタ、隣いいか?」ガタン

クリスタ「うん!どうぞ、ライナー」

ベルトルト「じゃ、僕もいいかな?ユミルの隣」

ユミル「…」


ベルトルト「あの……ユミル?」


ユミル「あ…な、なんだ?…えっと、構わない。座ってくれ」


ライナー「どうした、寝不足か…?」

クリスタ「ユミル…疲れてるの?」


ユミル「いや、そうじゃないんだが…少し気が滅入ってな…。は、早く食べようか!」

ユミル「ベルトルさん!この後、ちょっと付き合ってくれ。5分でいい」

9: 2014/04/26(土) 15:02:12 ID:sTsYBIhU

ベルトルト「僕?…内緒話だったら場所は、兵舎裏にでもする?」

ユミル「コソコソするような話でもないんだ。食堂を出てすぐの渡り廊下でいい…」

ベルトルト「分かった」



クリスタ「ねぇ…ライナー。この間言ってた街での買い物に付き合う話なんだけど…」


クリスタ「ユミルとベルトルトが一緒に行くなら、私行ってもいいよ!」


ベルトルト「!?」

ベルトルト「ぼ…僕も?」

クリスタ「うん!ユミルもいるし、ベルトルトも楽しいと思う」ニコッ

ベルトルト「いや…僕はその…」

ライナー「よし!決まりだな。いいよな?ベルトル。来週の休日は4人で…

ユミル「私は遠慮しておく」


ユミル「行くなら3人で行ってくれ、悪いな」

10: 2014/04/26(土) 15:05:39 ID:sTsYBIhU

クリスタ「ユミル…もしかして予定が入ってた?それだったら日にちをずらして…

ユミル「いや、そうじゃないんだ」


ユミル「最近、訓練の疲れが取れなくてな。ゆっくり休みたいんだ。歳のせいかな?」


ライナー「おいおい!歳ってな…お前俺と同い歳だろ?16の身空で何を言ってるんだ!」


クリスタ「そ…そう。…じゃ…ユミルが行かないなら、私も行かない…」

ライナー「クリスタ…」


ライナー「なぁ…頼むよ!ユミル。この通りだ!!一緒に来てくれ…俺のために!」バッ


ユミル「…」

ユミル「はぁ…」


ユミル「クリスタは、本当は行きたいんだよ、お前と。別に2人でも良いと思ってんだ」

ライナー「は…?」

11: 2014/04/26(土) 15:08:28 ID:sTsYBIhU

クリスタ「ユ、ユミル…急に何を言い出すの?」///カァッ


ユミル「素直じゃねぇな……ったく…」


ユミル「4人で出掛ければいいんだな?」

ユミル「じゃ、後でアニに声を掛けとく。それでいいな?」


クリスタ「い、嫌だよ…。私はユミルと一緒がいい…」


ユミル(もう、勘弁してくれ)


ユミル「クリスタ」ナデッ…

クリスタ「ん……」サワッ

ユミル「楽しんで来い。で、お土産は甘いものを頼む!」ニイッ


クリスタ「ユミル…」

13: 2014/04/26(土) 15:11:17 ID:sTsYBIhU


ベルトルト「ユミル、あのさ…

ユミル「行こうか!ベルトルさん。お前も食い終わっただろ?」ガタン…

ベルトルト「え…あ、待って!」ガタッ


ライナー「おい!2人とももう行くのか?」


ユミル「あぁ!これからこいつとエOチな話をするんだ。お前らはゆっくり食べてろ」

ベルトルト「え…エOチな話って!?…ちょっとユミルっ!!」///ダッ…


クリスタ「ユミル…」



クリスタ「どうしちゃったんだろ?最近、少し変なんだ…」


ライナー「変だな。…確かに」

14: 2014/04/26(土) 15:14:13 ID:sTsYBIhU


― 渡り廊下 ―



ユミル「悪ぃ…」

ベルトルト「何が?」

ユミル「色々と…」

ベルトルト「別に、僕は何とも思ってない」


ユミル「本当にアニに話を付けておくから、街へはお前ら4人で行って来てくれ」

ベルトルト「…は?」

ユミル「お前も嬉しいだろ?」

ユミル「だってあのアニとデート出来るんだぞ?2人で…って訳にはいかねぇけど」

ユミル「こんな機会、滅多にないからな!」

ベルトルト「な、な、なっ…何を言ってるんだ!僕は…そんな…」///カァッ


ユミル「…ぷっ……」

15: 2014/04/26(土) 15:19:35 ID:sTsYBIhU

ユミル「くはっ……可愛いなぁ、年下は!」アハハ!

ベルトルト「ユミルっ!!」///


ユミル「大声出すな。ほら、またあいつらが振り返った…」

ユミル「私らは今、エOチな話をしてるんだ。ヒソヒソ声で頼む」

ベルトルト「これのどこがエOチな話なんだよ…」


ベルトルト「僕を、からかうな…」ムッ


ユミル「…お前、感情がすぐ顔に出るのな」

ベルトルト「…」



ユミル「昨日の本の話、してもいいか?」

ベルトルト「いいよ。…君がしたいなら」


ユミル「あの話は悲恋だ。彼女は優しくて、芯の強い女性だった。自立した大人の女だ」

ユミル「題名とは裏腹に、彼女の恋は年齢と関係なく始まってしまっていたんだ」

16: 2014/04/26(土) 15:23:29 ID:sTsYBIhU

ユミル「心が突き動かされるまま、彼女には選択の余地が無かった。男を愛する以外には」

ベルトルト「そうだったね」


ユミル「何であんな事を言った?」

ベルトルト「えっ?」


ユミル「昨日…」

ユミル「彼女を気の毒だと…」


ベルトルト「ユミルは」

ベルトルト「主人公の女性に、少し肩入れし過ぎている」

ユミル「どういう意味だ?」


ベルトルト「君は彼女に同情し、何とか恋を実らせてあげたいと思ってるんじゃない?」

ユミル「…もしそう思っていたとしても、この物語は完結している。結末は覆らない」

ベルトルト「相手の男には最初から愛する女がいた。女と言うにはまだ早い幼い少女だ」

ベルトルト「男の世界に、彼女はいない」

17: 2014/04/26(土) 15:26:38 ID:sTsYBIhU

ユミル「それは作中でも言及されていた…」

ベルトルト「男の目に映るのは美しい少女のみ。その彼には彼女の恋慕の念も迷惑だろう」

ユミル「うん…」

ベルトルト「男にしてみたら彼女は自分の生活を彩る脇役。名前すら知らない登場人物だ」

ベルトルト「主人公は聡明な大人の女性。片や恋した男はまだ世間を知らない少年」

ベルトルト「元よりこの恋は実るはずもなかった…。彼らの目に映る世界は違い過ぎた」

ユミル「そうか…」


ユミル「それで、彼女が気の毒なのか?」

ベルトルト「あぁ!気の毒だね」

ベルトルト「僕に言わせれば、こんな素敵な女性をその男にはやりたくない」

18: 2014/04/26(土) 15:29:06 ID:sTsYBIhU

ユミル「ん?」


ベルトルト「だって勿体ないじゃない。その男しか愛せないなんてさ、お気の毒」

ベルトルト「世界に男は彼だけじゃない」

ベルトルト「どうして彼女は、他の男に目を向けなかったんだろう。残念でならないよ」


ユミル「ふふっ……そうだな。横恋慕とか自分が惨めになるだけなのにな。でも私は…」

ユミル「彼女の生き方を咎める気にはならねぇんだ…」

ベルトルト「…」


ベルトルト「例えばそれから10年の月日が経って、その間に少年の恋も終わったとする」

ベルトルト「その時、彼らはいくつになってる?」


ユミル「えっと、10年後は彼女は37歳、彼は27歳。彼の恋人は25歳かな…」

ベルトルト「27歳になった彼はどれほど成熟しているだろうか?…心がね」

19: 2014/04/26(土) 15:32:24 ID:sTsYBIhU

ベルトルト「10年後なら、この恋は実りそうじゃない?だって双方大人だし。ね、ユミル」

ユミル「いや、全然ダメだね。余計に実りそうもない」

ベルトルト「そう?」


ユミル「彼が成熟すると同時に、彼女もまた成熟する。歳の差をより明確に感じるだろう」


ベルトルト「問題は歳の差なの?」

ユミル「彼女にとってはな。そこでの葛藤が本の主題になってるし…」


ベルトルト「難しいんだね、10歳差って」

ユミル「実際は10歳差どころの話じゃない…」

ベルトルト「は?」


ユミル「お前はいいな」

ベルトルト「何が?」

ユミル「若い」

ベルトルト「はぁぁ?ユミルだって若いだろ?僕と1歳しか違わないのに!」

20: 2014/04/26(土) 15:36:06 ID:sTsYBIhU

ベルトルト「急に10歳年上になったつもり?」


ユミル「あの本の作者さ…」

ユミル「今からでも結末を変えてくれねぇかなぁ…」

ベルトルト「後書きにウォールマリアに住んでいるって書いてあったような…」

ユミル「じゃ、もう氏んでるな。無理だわ」ハァーーー

ベルトルト「…」



ベルトルト「何で君がその本の話に拘るのか知らないけど、」

ベルトルト「そんなに結末が不満なら、自分で書き足してみればいいじゃない!続きを」

ユミル「書き足せって…。最後は氏んじまうんだぜ?その男を守るために…」

ユミル「石を打つ群衆の前に自ら身を投じて、血に塗れたまま彼女は息絶える」

ユミル「この話はこれで終わりだ。彼女の恋は実らなかった」

21: 2014/04/26(土) 15:38:55 ID:sTsYBIhU

ユミル「男は相変わらず年下の少女を愛し続けているし、これじゃ氏に損じゃねぇか…」

ベルトルト「だからそうならないようにユミルが続きを考えればいいだけだって!!」

ベルトルト「だって、納得いかないんだろ?」

ユミル「…」

ベルトルト「…僕も一緒に続きを考えてあげる。ユミルが納得するような幸せな終わり方」

ユミル「いや、いいよ…。どうせ紙の上の話だ。そんなもん真剣に考えるだけ無駄だ」

ベルトルト「でも、君は気にしてる」


ユミル「…」

ベルトルト「君は僕に何を求めてるの?」

ベルトルト「その本の感想を聞きたかっただけ?それとも何か思うところが…

ユミル「お前、アニに告白しろ…」


ベルトルト「なっ!?」

ベルトルト「は、はぁ?……きゅ、急に何を言い出すんだよ!意味わかんないよ!」

22: 2014/04/26(土) 15:40:48 ID:sTsYBIhU

ユミル「ちゃんと、アニを送り出してやるから、次の休みは4人でデートしろ。命令な!」

ベルトルト「僕はっ…違うよ!勘違いしないでくれ。くだらないっ!!」


ユミル「恋を始めるにはお前らの歳はちょうどいい」ニコッ

ベルトルト「ユミルっ!」


ユミル「上手くやれよ?ちゃんと避妊しろよ」

ユミル「エOチな話はこれで終わりだ」ヒラヒラ


ベルトルト「ユミル…」

23: 2014/04/26(土) 15:47:04 ID:sTsYBIhU


― 男子寮 ―



ベルトルト(なんだったんだ…昼間のアレは)


ライナー「ベルトル!来週の休みは俺とお前とアニとクリスタで買い物だ!楽しみだな」ニヤニヤ

ベルトルト「楽しみ…か。僕はそうでもない」ハァ…

ライナー「お前なぁ、折角ユミルがアニに話を付けてくれたんだぞ!素直になれよ」

ベルトルト(素直ね…)


ベルトルト「ユミルも変だけどさ、ライナー…君も最近は相当変だよ」

ライナー「ん?」


ベルトルト「僕らの任務忘れてないよね?」

ライナー「任務…?あぁ、今度の雪山訓練の話か?覚えてるぞ。一緒の班だといいな!」


ベルトルト(ダメだ…。また忘れてる)

24: 2014/04/26(土) 15:48:58 ID:sTsYBIhU


ベルトルト(ユミル、知ってたんだ)

ベルトルト(僕がアニを好きだって事…。だから何だって話だけど)


ベルトルト(ここ最近のユミルは、何か深刻な悩み事を抱えてるみたいだ…)

ベルトルト(クリスタとも線を引き始めて、今は誰とも付き合いたがらない…)

ベルトルト(ユミルの事なんて放って置けばいいのに…。僕はいつも君を気にしている)


ベルトルト(ねぇ、ユミル…。君が心配でたまらないんだ)

25: 2014/04/26(土) 15:53:15 ID:sTsYBIhU


― 女子寮 ―



アニ「ライナーに伝えたよ」

アニ「来週の休日、ユミルの代わりに出掛けてもいいよって」


ユミル「悪いな。代役頼んじまって」

アニ「別にいいけど…」

アニ「楽しめるかは分からない。私はライナーもベルトルトもよく知らないから…」


ユミル「楽しめるさ」

ユミル「ベルトルさんはお前が好きなんだ。きっと楽しい事がある。返事、考えておけよ!」

アニ「返事って何の?」

アニ(ん…?ベルトルトが私を好き?)

ユミル「さぁてね、告白でもされるんじゃないか?あいつ、お前の事よく見てんだ」

アニ「…その冗談、笑えないんだけど」

26: 2014/04/26(土) 15:57:27 ID:sTsYBIhU

クリスタ「ユミル…やっぱりユミルも一緒に行こうよ。ユミルがいないと私…」

ユミル「心配は無用だ!怖い事は何もない」


ユミル「お前を応援してやりたいんだ!ライナーの気持ち、知ってるんだろ?」

クリスタ「ユ、ユミル!」///カァァァァ…

アニ「ライナーの気持ち?」

ユミル「クリスタ。お前の気持ちも知ってる」

ユミル「アニがいるから大丈夫だ!4人で訓練を忘れてさ、楽しんで来い!!」ニコッ


ユミル「私も忙しくてな…」


ユミル「なんせ納得いかない物語の続きを考えないといけないらしい」

アニ「なにそれ…」

ユミル「こっちの話。もう寝るか…」

クリスタ「ユミル、ありがと。…おやすみ」



27: 2014/04/26(土) 16:04:19 ID:sTsYBIhU


― 巨大樹の森 ―



ユミル「……んっ…」スゥッ…… 


ユミル(ここは…どこだ?)パチッ

ユミル(さっきのは…あぁ、夢だったのか)ムクッ…


ユミル(ずいぶん前の記憶だ…16歳って夢の中で言ってたから1年ぐらい前か?)




ベルトルト「ユミル、目が覚めた?」


ユミル「……つい、今しがたな…」


ユミル「ふわぁ~っ…ぁっふ…」ノビーッ

ユミル「ライナーに…ベルトルさんか……」チラッ

28: 2014/04/26(土) 16:09:21 ID:sTsYBIhU

ユミル「何で私はこんな所にいる?」

ユミル「そこのエレンはどうしたんだ?」


ベルトルト「僕が説明する」

ライナー「エレンは寝ているだけだ。心配はいらん!こっちの方が静かでいい…」

ベルトルト「ユミル、今そっちへ行くよ」

バシュッ…  カッ…

ギュィィィィン………




ベルトルト「と、言う訳でね……ごめん…」

ベルトルト「身体の具合はどう?」


ユミル「氏にはしねぇよ。気分は最悪だが」

シュゥゥゥゥゥゥ……


ベルトルト「そう…良かった」ホッ

29: 2014/04/26(土) 16:11:35 ID:sTsYBIhU

ベルトルト「なかなか目を覚ましてくれないから、気が揉めて仕方なかった」

ユミル「治癒は始まっていた。心配ない事ぐらいすぐに分かっただろ?大げさだな」


ユミル「私の…この巨人の力が欲しくて攫ったんだろ…?ベルトルさん達は」


ベルトルト「ユミル…あのさ……」

ベルトルト「君はマルセルを食った時の事、覚えてる?」


ユミル「マルセル…?」

ユミル「お前らの仲間だな」

ベルトルト「あぁ」


ベルトルト「5年前、僕らが壁外からやって来た時に、運悪く君と遭遇して…彼は…」


ユミル「…」

30: 2014/04/26(土) 16:13:47 ID:sTsYBIhU

ユミル「これもまた運命ってヤツなのかな?そんなもん信じちゃいなかったが」

ユミル「どうやらお前らとは、訓練兵として知り合う前から因縁があったらしい」


ユミル「すまないな…」

ユミル「食ったかどうか覚えてすらいなくて」


ベルトルト「覚えてないのは仕方がない」

ベルトルト「僕らの時もそうだった…」

ユミル「そうか…」


ユミル「私を恨んでいるか?」


ベルトルト「どうだろう」

ベルトルト「よく…わからない」


ベルトルト「君も人なんか食べたくなかっただろうし」

31: 2014/04/26(土) 16:15:59 ID:sTsYBIhU

ユミル「でもおかげで命を貰った。私の第2の人生は、あの時から始まったんだ」

ユミル「お仲間には申し訳なく思うが、感謝もしている。なんせクリスタに出会えた」

ベルトルト「それは違うだろ、ユミル…」


ユミル「…違う?」キョトン…

ベルトルト「…」


ベルトルト「君は一体どれだけの間、壁の外を彷徨っていたんだ?」


ユミル「………言いたくない」

ベルトルト「言えよ」


ベルトルト「マルセルを食ったんだ」

ベルトルト「君は僕の質問に対して、拒否権はないんだよ!」

ユミル「…はぁ、弱みを握って手負いの女を脅すとはね…。チッ…面倒くせぇな」

32: 2014/04/26(土) 16:19:14 ID:sTsYBIhU


ユミル「ふぅ…」

ユミル「ざっと60年ぐらいだ」


ユミル「当時はこの巨人の肉体に永遠に囚われ続けるのだと思った。もうずっと…」

ユミル「終わらない悪夢を見ているようだったよ…」

ベルトルト「ユミル…」


ユミル「本当の年齢は80近い」

ユミル「とてもそんな歳には見えないだろ?事情を知らなきゃ、若い女だ」

ユミル「60年間の記憶はほぼ無い…。だから自分の年齢に関して、実感はそうないんだが」



ユミル「肌が覚えているんだ」


ベルトルト「肌?」

ユミル「季節の移り変わりを、60年分」

ベルトルト「60年分か…」

33: 2014/04/26(土) 16:22:31 ID:sTsYBIhU

ユミル「見た目はお前と変わらない。だが、それが何だ?私の心はもう成熟しきっている」

ユミル「お前達と同じ目線には立てないんだ。そう、以前にお前が言った…」

ユミル「目に映る世界が違う、と」


ベルトルト「大人の振りをしているだけだ、君は」

ユミル「…」


ライナー「ベルトル、信煙弾だ!!」

ベルトルト「!?」


ベルトルト「調査兵団がもうこんな所まで…」バッ

ベルトルト「ユミル、行こう!」ギュッ

ユミル「行くってどこへ?」グンッ!

ベルトルト「僕らの故郷!君とエレンを連れて行くっ!!」

ユミル「おいっ…」



34: 2014/04/26(土) 16:26:03 ID:sTsYBIhU

ライナー「なぁ、ベルトル。クリスタも連れて帰れないか?」バシュッ…

ベルトルト「無理だ…。彼女が追って来てるかどうかも分からないのに」キリキリ…

ベルトルト「それに今は僕らが逃げ切る事を優先にしよう」パシュン…

ベルトルト「アニとクリスタの事は4人で逃げ延びる事が出来たら考えよう」

ライナー「そ、そうだな…」 …パシュッ



ユミル「クリスタは今、私らを追ってこっちに来てる…!」

ユミル「私には分かる…」



ライナー「!?」

ベルトルト「!?」


ユミル「お前が連れて行きたいのなら、手を貸してやってもいい。どうする?ライナー」

ベルトルト「ユミルっ!!!」

35: 2014/04/26(土) 16:28:10 ID:sTsYBIhU

ライナー「しっ!…エレンが起きると面倒だ。ベルトル、静かにしてくれ…」



ライナー「…」ゴクッ

ライナー「ユミル…俺はどうしてもクリスタを連れて行きたい。手を、貸してくれ!!」


ライナー「理由は、その…クリスタが可愛いって事だけじゃない!あいつは壁教の…

ユミル「そんなん私だって知ってる!説明は不要だ。あいつの本名だって知ってんだ!!」


ユミル「いいよ!!お前がそれを望むなら、一肌脱いでやろうじゃねぇか…」ニイッ


ベルトルト「ユミル…どうして君は…」



36: 2014/04/26(土) 16:31:04 ID:sTsYBIhU


― シガンシナ区壁上・開閉門 ―



ユミル「くそっ…ダメだった…!!」ダンッ!


ユミル「エレンも持ってかれちまったし…」


ベルトルト「でも、僕らはここまで逃げ延びる事が出来た。上出来だよ、ユミル」

ベルトルト「ライナーと君が無茶をしなければ、もっと早くに逃げられたんだろうけど」

ユミル「今更そんな事言っても遅いだろ?」

ユミル「女々しい奴だな」チッ



ユミル「あぁっ……水…水が飲みたい…」ハァ…

ユミル「ライナー、まだか…」


ベルトルト「彼はすぐ戻るよ」

ベルトルト「シガンシナ区には川が流れている。井戸が見付からなければそれでもいい」

37: 2014/04/26(土) 16:33:38 ID:sTsYBIhU

ユミル「井戸水より川の水の方が安全かもな。なんせ5年も井戸を使ってないんだから」

ユミル「使わなきゃ水質は悪化する。河川の水が腐らないのは絶えず流れているからだ」

ユミル「井戸にも同じことが言える」


ユミル「ここの井戸水はもう飲めたもんじゃねぇだろうなぁ……あぁ、そうだ…!」

ユミル「突然の襲撃に慌てた住民達は何人井戸に落ちたかな?中の水はどろっどろだな…」


ベルトルト「………はぁ」

ベルトルト「そうやって地味に僕の精神を削りにくるの止めてくれない…?」


ユミル「お前、私を脅したじゃねえか!」

ユミル「言えよ…って」

ユミル「それを思い出してムカついてさ!仕返しだ。年上には敬意を払えよ?」

38: 2014/04/26(土) 16:36:05 ID:sTsYBIhU

ベルトルト「年上…」

ユミル「あぁ…てめぇの目の前にいるのは、80近いババアだ。思い出したか?」


ベルトルト「思い出したよ…」



ベルトルト「恋を始めるには私は歳を取りすぎている」


ユミル「……っ!!」


ベルトルト「前に君から借りた本の題名」


ユミル「…」

ベルトルト「やっと、その意味が分かった」


ユミル「はぁ……だから言いたくなかったんだよ…」


ユミル「どんな話だったか覚えているか?」

ベルトルト「よく覚えている。だって2週間も借りてたんだ」

39: 2014/04/26(土) 16:38:50 ID:sTsYBIhU


ベルトルト「少年はその街の権力者の息子。彼の愛した少女は隣町の領主の娘だった」

ベルトルト「二人の秘めやかで細やかな逢瀬は、街の外れにある彼女の店で行われてた」

ベルトルト「彼女は定期的に訪れる少年にいつしか心を奪われて、叶わぬ恋に苦しむ」

ベルトルト「昔から隣町とは仲が悪く、些細な出来事が発端となり、2つの街は戦争へ…」

ベルトルト「少年の住む街は隣町との争いに敗れ、荒廃する。少年の両親も殺された」

ベルトルト「少年は少女と密会していた事を公にされ、敵に情報を売った裏切り者だと…」

ベルトルト「街の広場で晒し者にされた上、戦争で多くを失った民衆に石で打たれるんだ」



ユミル「そう…そんな話だった」

ユミル「続きはこうだ」

40: 2014/04/26(土) 16:42:11 ID:sTsYBIhU


ユミル「その時、一人の女が男の前に飛び出した。彼女は自分を魔女だと言った」

ユミル「ただの雑貨屋の女店主が、愛する男のために…禁忌と言われた『魔女』の名を」

ユミル「魔女は続けてこう言った『この戦争を引き起こしたのは私だ』…と」

ユミル「この腐敗した世界を呪い、この閉ざされた街を呪い、全てを災禍の中に沈める」

ユミル「それだけが、私の望みだ!」

ユミル「この少年に罪は無いのだ。…何故ならその証拠に、この子供には私の記憶がない」



ベルトルト「台詞、覚えてるんだ…」

ユミル「何度も、読んだんだ。あれから」


ベルトルト「うん…」

41: 2014/04/26(土) 16:44:51 ID:sTsYBIhU


ベルトルト「本当に、彼には記憶が無かった。あの雑貨屋は恋人との逢瀬に使う場所で」

ベルトルト「自分に恋焦がれている女主人は彼には見えてなかったから…」

ユミル「彼女は男の代わりに民衆に石で打たれる。魔女の汚名を着てまで男を逃がしたかった」

ユミル「そしてこう呟くんだ…」



ユミル「恋をして良かった」

ユミル「あなたの役に立つことが出来て、私は幸せだった…と」



ベルトルト「一体何が幸せだったんだろう。彼女にとって」

ユミル「最後に好きな男の命を、自分の命で守れた事が彼女にとっての幸せだったんだろ」

ベルトルト「男は彼女を生贄にして、愛しい少女の元へ逃げてったっていうのに?」

42: 2014/04/26(土) 16:48:18 ID:sTsYBIhU

ユミル「相手を想う気持ちってのは、必ずしも報われるわけじゃないからな…」

ベルトルト「自分の命を懸けてまで、する価値があるのかな?恋愛って」

ユミル「さぁ?私は人を好きになったことが無いから、その辺は分からない…」



ベルトルト「はぁ…また、君は嘘をついた」

ユミル「嘘…?」

ベルトルト「無自覚なんだ?」

ユミル「言っている意味が…

ベルトルト「君は、恋をしている」


ベルトルト「作中の彼女と同じで、自分の意思じゃどうにもならない感情に支配されて…」

ユミル「…」

ベルトルト「そんな時、君はこの本を見付けたんだ」

43: 2014/04/26(土) 16:50:48 ID:sTsYBIhU

ベルトルト「恋を始めるには私は歳を取りすぎている…なんて、面白くもない題名の本を」


ユミル「違う…お前の勘違いだ…」


ベルトルト「君は、自分の恋を諦める口実に自分の年齢を利用した。そう思い込もうとした」

ベルトルト「…弱い人間だね、振られて傷付くのが怖いんだ?」

ユミル「誰だってそうだろ?お前だって弱い人間だ」

ベルトルト「僕らの身体は特殊だから、普通の人間の常識には当て嵌められない」


ベルトルト「僕に言わせれば、別に君は歳を取りすぎてはいない。普通の女の子だ」


ユミル「勝手に言ってろ…思い込みの激しい奴だ」フンッ

44: 2014/04/26(土) 16:53:04 ID:sTsYBIhU

ベルトルト「今日、ユミルがついた最初の嘘は…」

ベルトルト「マルセルのおかげでクリスタに出会えた」

ベルトルト「この言葉だね」


ユミル「…」


ベルトルト「君が出会えたことに感謝していたのは、クリスタじゃない…」

ベルトルト「それも完全に間違ってるって訳じゃないと思うけど…」


ベルトルト「君が本当に出会いたかったのは、ラ…

ユミル「やめろっ!!」グッ


ユミル「馬鹿か?てめぇは!?」ハァッ…ハァッ…

ユミル「知った風な口をききやがって…!!」


ユミル「てめぇに私の何が分かんだよっ!」


ユミル「ふざけんなよ……!もう…口を閉じてじっとしてろ……」ドンッ!

45: 2014/04/26(土) 16:56:11 ID:sTsYBIhU

ベルトルト「嫌だね、続けるよ」



ベルトルト「次の嘘は今君が言った、『私は人を好きになったことが無い』って言葉だ」

ユミル「…」


ベルトルト「好きだから、僕らの元に戻って来てくれた」


ベルトルト「好きだから、男の願いを叶えてやろうとした」



ユミル「もう、聞きたくないっ…!!」サッ

ベルトルト「耳を塞がないで!大事な話なんだ!!」グイッ


ベルトルト「君が耳を塞がないように、両手を拘束する…いいね?」…ギュッ

ユミル「やめっ……いや、だっ……」

46: 2014/04/26(土) 16:58:36 ID:sTsYBIhU

ベルトルト「ユミル…君はあの主人公と自分を重ね合わせていた」


ベルトルト「君は知っている。僕らが本来の任務に失敗して、遁走しているこの現実を」

ベルトルト「僕らはこの壁内の人類を全て消すために遠くから送り込まれた」

ベルトルト「そしてしくじった。まだ壁内の総人口の2割しか消してない」


ベルトルト「ユミル、君はその身を僕らのために捧げるつもりなんだろう?」

ユミル「…」


ベルトルト「氏ぬと分かっているのに…ライナーも逃げるなら今だ…って言ったのに…」


ベルトルト「まるであの主人公のように、恋に命を捧げようとしているじゃないか!!」

47: 2014/04/26(土) 17:01:03 ID:sTsYBIhU

ユミル「…だから違うって!この勘違い野郎……いい加減にしてくれよ!!」



ユミル「これは私の恩返しだ…。お前らがここに来なければ、私もここにいなかった」

ユミル「この場に留まってるのは、私が馬鹿だからだ。逃げる理由が、ないからだ…」


ユミル「そして、私は疲れちまった…。だから、もういいんだよ…」


ユミル「お前も己の失敗を自覚しているのなら、故郷に戻った後の身の振り方を考えろ」

ベルトルト「…」

ユミル「私がお土産になってやった程度で、お前らの失敗が帳消しになる訳じゃない!」

ユミル「大事な戦力であるアニとマルセルを失って帰るんだってのを忘れるなっ!」



ユミル「私の巨人はお前らとは違う。そしてこの世界の理も少しは知っているつもりだ」

48: 2014/04/26(土) 17:05:20 ID:sTsYBIhU

ユミル「私の持つ情報を引き出す時間が必要だ。すぐには食われないと踏んではいるが…」


ユミル「なぁ………もう、手を離してくれないか…?痛いんだ、腕が…」

ベルトルト「嫌だ…」ギュッ…



ユミル「私は、ずるいんだ…」

ユミル「嘘つきなんだよ!!根っからっ」

ベルトルト「ユミル…」


ユミル「本当はあの時、クリスタを連れて来れたんだ、ここに!」

ユミル「でも、私はあいつを置いてきた…」


ユミル「見たく、なかったんだ…。クリスタとライナーが一緒に居る所を」

ベルトルト「…」


ユミル「浅ましい女だろ?年増の妬みか?私にはクリスタが眩しくてしょうがない!」

ユミル「あいつと私は似ていると思っていた。でも、あいつは私には無い物ばかり持っていて…

49: 2014/04/26(土) 17:09:18 ID:sTsYBIhU

ベルトルト「う…ぐっ……ああぁあぁぁぁっ!!!」グイッ…

ユミル「ひっ……」ビクッ!


ベルトルト「くそっ、君は本当に嘘つきだ!!」ギュゥゥゥゥ…

ユミル「いっ…てぇ……離せっ……」ハァ…ハァ…


ベルトルト「また、僕の前で嘘をつく!平気で!顔色も変えずに!!この嘘つきっ!」

ベルトルト「嘘をつく君は嫌いだ!!」

ユミル「ベルトル…さん…」



ベルトルト「…違うだろ?クリスタを置いて来た理由はそんなくだらない理由じゃない!」


ベルトルト「自らの手で彼女を守れないのが分かっていて、僕らの命すら保障されていない場所に」

ベルトルト「君の大事なクリスタを連れて行きたくなかった…ってだけの話だろ!?」

50: 2014/04/26(土) 17:12:14 ID:sTsYBIhU

ベルトルト「エレンの持つ力、調査兵団という組織、住み慣れた環境である壁内」

ベルトルト「君は一瞬で判断したんだ!どちらがクリスタにとって最良の選択なのかを」

ユミル「…」


ベルトルト「嫉妬?」

ベルトルト「違うね!君はそんな女じゃないんだ!!」


ベルトルト「僕を、馬鹿にするなよ…」


ベルトルト「ライナーとクリスタを引き逢わせたくなかったのなら…」

ベルトルト「最初っから彼の頼みを引き受けなきゃいいだけだろ…」

ベルトルト「クリスタを連れて行きたいと願う彼の望みを、叶えてやりたかったんだ…君は」


ベルトルト「ねぇ…なんで僕にそんな嘘つくんだよ…ユミル」ギュゥゥ…

ユミル「離してくれよ!痛いんだっ……もう、離せって!!」ググッ…


ベルトルト「嫌だよ、離さない」ギュゥゥ…

51: 2014/04/26(土) 17:14:40 ID:sTsYBIhU




ユミル「あのさ……」チラッ

ユミル「ラ、ライナー…遅いな…」


ユミル「もしかして…一人で壁内に戻ったんじゃないだろうな?クリスタを探しに」

ベルトルト「それはない。そうしたくても出来ない事ぐらいライナーだって分かるはずだ」


ユミル「でも今のライナーは、お前の知ってるライナーじゃないかも知れない」


ユミル「もしライナーが消えたら、私ら2人だけで戻れるのか?お前の故郷に」


ベルトルト「戻れるよ。君の力が必須だけど…。あと僕の巨人の力は当てにしないで」

ユミル「分かってる。お前の巨人は特殊だからな…。明らかに戦闘向きではない」

52: 2014/04/26(土) 17:19:02 ID:sTsYBIhU


ベルトルト「もう少し、彼を待とうか」


ユミル「いや……」

ユミル「私は、待たない。諦める事にした」



ベルトルト「ユミル…」

ベルトルト「それもいいね…。僕もそっちを応援したい」


ユミル「だいぶ前の話になるが、私がお膳立てしてやった4人でのデートはどうだった?」

ユミル「あれから何の進展もなさそうだったし、特別興味も無かったから聞かなかったが」

ベルトルト「あーーーー…あれね。君さ、事前にアニに余計なこと吹き込んだだろ?」

ユミル「余計な事?…さぁ、覚えがないが」

ベルトルト「当日、僕の事…ものすっごく警戒しててさ、声も掛けられない状況でね」


ユミル「あぁっ!悪ぃ…そういや何か言ったかも。その冗談笑えない、って言われたわ」

ベルトルト「やっぱりね…」ハァ…

53: 2014/04/26(土) 17:20:50 ID:sTsYBIhU

ユミル「じゃ、まだ告白してないんだな。これからするのか?頑張れよ」

ユミル「今、アニがどんな状況になってるのか分からないが…あいつ生きてると思う」

ベルトルト「勿論、生きてるよ!僕はアニも故郷に連れて帰るんだ。絶対に」


ベルトルト「ちなみにその時じゃないけど、ちゃんと告白はしたよ」

ベルトルト「あっさり振られたけど」

ユミル「…」


ユミル「振られた割には明るいな」

ベルトルト「まぁね、結構前の話だし」


ベルトルト「でもよく考えるとさ…恋人より友達である方が幸せなんだよね」

ユミル「どうして?」

ベルトルト「友達なら、ずっと一緒だからさ。恋人は別れたら二度と会えないだろうし」

ユミル「そういうもんかな?」

54: 2014/04/26(土) 17:23:11 ID:sTsYBIhU

ベルトルト「ユミルの方は告白もせずに諦めちゃうんだ?」

ユミル「…あぁ、この想いは無かった事にする。あいつに伝える必要はない」


ベルトルト「あの話の主人公は、恋に身を捧げて氏んでしまったけど、ユミルは違う」

ユミル「ん…?」

ベルトルト「僕らは結末を書き換える事が出来るから…」

ユミル「でも私はお前らの故郷に行けば殺されて…

ベルトルト「氏なせない!」



ベルトルト「物語の続き、僕も一緒に考えてあげるって言った」

ベルトルト「ユミルが納得するような幸せな終わり方、一緒に考えようよ。本気で」

ユミル「…」

55: 2014/04/26(土) 17:25:57 ID:sTsYBIhU

ユミル「わかった。暇つぶしにはちょうどいい。そうする事にする…」

ユミル「ありがとう…。ベルトルさん」

ベルトルト「うん!いい子だね」ヨシヨシ




ベルトルト「まずは好きになった男より更に年下の男を好きになる所から始めようか?」

ユミル「えっ…」

ベルトルト「もう、言わせない」


ベルトルト「恋を始めるには私は歳を取りすぎている…なんて、情けない言葉は二度と」

ユミル「お前…それ……アニから私に乗り換えるって意味か?」


ベルトルト「振られてるから問題ないと思うんだけど、気になっちゃう?」

ユミル「あっ…あったりまえだろ!?」///カァァ…

56: 2014/04/26(土) 17:29:34 ID:sTsYBIhU

ベルトルト「と言うかさ、乗り換えるのは君の方じゃない?」

ベルトルト「彼から僕へ…ほらほら、早く乗り換えて!!」ワクワク


ベルトルト「僕らはまだまだ若いんだから、何度恋をしたっていいんだ!やり直せる」

ベルトルト「君があんまり年上ぶるから、今後は君を思いっきり女の子扱いしようかな」

ベルトルト「だからそんな枯れた目をしてないで、楽しく生きない?2度目の人生をさ」

ベルトルト「マルセルの分まで……」


ユミル「マルセルの分まで、か…」


ユミル「そうだな…」

ユミル「私は不器用だから、お前みたいにすぐに切り替えは出来ない。だから…」


ユミル「ゆっくり揺さぶってくれないか?私の心の奥を…お前に出来るか?この年下男!」

57: 2014/04/26(土) 17:31:41 ID:sTsYBIhU

ベルトルト「……出来るよ。君を後悔させるぐらい、火をつけまくってやる!!」ギュゥゥ…



ユミル「お前ってキザなんだな……」///

ベルトルト「そ、それを言わせたのは君だろ!?」///カァァッ…


ライナー「戻ったぞ…悪い。時間がかかった」

ライナー「水はあったが食糧がなぁ…」

ライナー「ん?…どうした?抱き合ったりなんか……あっ、くそ…邪魔したか…」アセッ


ユミル「いや、良いタイミングだったよ!」パッ…



ユミル「ライナー、ベルトルさん!」

ユミル「私さ、もうちょっと生きてぇんだわ……。何とかなりそうか?」


ベルトルト「努力します」

ライナー「…俺も、頑張ってみる」

58: 2014/04/26(土) 17:33:45 ID:sTsYBIhU

ユミル「ありがとう。物語の結末、変わるといいな…。なぁ、ベルトルさん?」

ベルトルト「変わるよ!だから、焦らないでいこう。次にクリスタに再会したらさ、」

ベルトルト「あれ、やろうよ」


ライナー「あれ…って何だ?」

ベルトルト「出来なかった4人でデート!」

ユミル「そうだな!いつか…必ずしよう」






ユミル「恋を始めるには私は歳を取りすぎている」
             ― 完 ―

59: 2014/04/26(土) 17:36:26 ID:sTsYBIhU

読んでくれてありがとう

息抜きで書いた

引用: ユミル「恋を始めるには私は歳を取りすぎている」