332: 2012/07/13(金) 08:04:22.29 ID:hdWwU/PAO
たくさんの感想ありがとうございます
魔王「おれと手を組め」魔法使い「断る」【前編】
魔王「おれと手を組め」魔法使い「断る」【後編】
このままここで投下していきます

335: 2012/07/13(金) 22:30:20.24 ID:hdWwU/PAO



魔王「俺と旅をしろ」魔法使い「断る」




336: 2012/07/13(金) 22:37:29.20 ID:hdWwU/PAO
――国外れの家

師匠「これでよし」ポン

師匠「魔法使いよ、翼の封印は前回より軽くしておいた」

魔法使い「何故ですか?」

師匠「こういう類いのものは解けるとき激痛を伴うからの」

魔法使い「…確かに」

師匠「敵の目の前で行動不可になったら困るだろう?」

魔法使い「そうですね」

師匠「……こんなことせずとも、普段から出し入れ可能にしてもよいのに」

魔法使い「私の翼はタンスの服ですか」

師匠「ちょっとうまいなその例え」
葬送のフリーレン(1) (少年サンデーコミックス)
337: 2012/07/13(金) 22:43:25.29 ID:hdWwU/PAO
魔法使い「どうやら私の感情の高ぶりで翼が出るみたいですから」

師匠「封印無しではどんな弾みで翼が広がるか分からないと」

魔法使い「はい。あと翼の自制の仕方がいまいち良く分からないので…」

魔法使い(前回は魔王がやってくれて助かったけど)

師匠「ふむ…。まあそれは自ら学んでいくしかあるまい」

魔法使い「あと…私は、人間として生きたいのです」

師匠「魔物としては駄目なのか?」


338: 2012/07/13(金) 22:50:50.47 ID:hdWwU/PAO
魔法使い「私は、魔物化すると人間を頃したくなってしまうんです」

師匠「血が騒ぐ、というやつか」

魔法使い「それに、今まで人間として生きてきましたから」

師匠「難しい問題だの。しかしそれはおまえの問題だ、おまえが解くしかない」

魔法使い「はい」

師匠「そうだ、旅に出るなら南の街に寄ってくれ。――知り合いへ、手紙を届けてほしい」スッ

魔法使い「師匠のお知り合いに?分かりました」

師匠「さぁ――行ってこい、弟子」

魔法使い「行ってきます、師匠」

師匠「氏ぬなよ」

魔法使い「もちろんです」

339: 2012/07/13(金) 23:01:53.33 ID:hdWwU/PAO
――森の入り口

魔法使い「さて」

魔法使い(南の街に行くには、まずこの森を抜けなければいけない)

魔法使い(魔物がわんさかいるという噂だ)

魔法使い(かなり遠回りとはいえ北の街から行った方が安全だが――)

魔法使い(手紙を無くすのはいやだから早めに届けに行こう)

魔法使い「……」スタスタ

魔王「ほう、杖を新調したのか」

魔法使い「!?」ビク

側近「……」

魔法使い「!?」ビビク

340: 2012/07/13(金) 23:10:34.22 ID:hdWwU/PAO
魔王「何を驚く」

魔法使い「そりゃあ驚くだろう!いつからいた!?」

魔王「今だ」

側近「今ですね」

魔法使い「……そうか」

魔王「そうだ」

魔法使い「短い別れだったな…」

魔王「ふん。まあそうだな」

魔法使い「それで、なんでふたりはここに?」

魔王「この森の主に挨拶をしていたらたまたまお前が来たからな」

魔法使い「挨拶?」

側近「森の管理は大変だから、たまに魔王さまが労いの言葉をかけに行くのだ」

魔法使い「へぇ…」

魔王「魔法使いこそなんだ。旅でもするのか?」

342: 2012/07/14(土) 23:13:58.73 ID:yT1vDIUAO
魔法使い「まあな。修行の旅というか、自分探しの旅というか」

魔王「自分探しの旅ってたいてい自分が見つからないまま終わらないか」

魔法使い「…細かいことはいいんだよ」

魔王「ふん、そうか」

魔王「ここを通るということは――南へ行くんだな?」

魔法使い「ああ、そうだな。用事もあるし」

魔王「そうか。じゃあ――」

343: 2012/07/14(土) 23:14:26.55 ID:yT1vDIUAO
魔王「おれと旅をしろ」

魔法使い「断る」

344: 2012/07/14(土) 23:18:30.37 ID:yT1vDIUAO
魔王「解せん」

魔法使い「なんだよ旅って!魔王が旅って!」

魔王「駄目か」

魔法使い「駄目というか、普通“魔王”は王座に座ってるもんじゃないのか?」

魔王「思い込みもはなはだしいな。普段は会議室の椅子に座っている」

魔法使い「……」

魔王「勇者が来たときぐらいだな。あの部屋使うの」

魔法使い「使い分けているのか…」

魔王「お前、山となった書類の中で戦いたいか?」

魔法使い「それはなんか嫌だな」

345: 2012/07/14(土) 23:22:21.41 ID:yT1vDIUAO
魔王「ああ、ちゃんと外出許可ももらっているぞ」

魔法使い「子供か…」

側近「小娘のほうが子供だろう!」ザクッ

魔法使い「うぅぎゃああああぁぁぁあ!!」

魔王「それと、今回は観光でも暇つぶしでもないんだよ」

魔法使い「は?」

魔王「――ちょっと人間を痛い目に遭わせないといけない用事が、な」

347: 2012/07/14(土) 23:38:06.98 ID:yT1vDIUAO
魔法使い「……」

魔王「微妙な顔をしているな」

魔法使い「南の方で、人間がなにかをしたのか?」

魔王「ああ。魔物と人間の間にある境界を越えるようなことをだ」

魔法使い「……」

魔王「なぜ暗い顔をする?」

魔法使い「私は、人間の――味方だ」

魔王「ふむ。理由は?」

魔法使い「今まで人間として生きてきたから」

魔法使い「だから私は、人間があなたに傷つけられるなら…一応の手は打たなくてはいけない」

348: 2012/07/14(土) 23:43:32.54 ID:yT1vDIUAO
魔王「面白い。おれと戦うか」

魔法使い「いいや、それは勘弁だ。どう考えても魔王のほうが圧倒的すぎる」

魔王「ならばどうする?」

魔法使い「ペンは剣より強し、というだろう?話し合いだよ」

魔王「ほう」

魔法使い「それで、人間達が何をしているんだ?」

魔王「聞いてどうする」

魔法使い「――それを止めさせる。それなら文句はないだろ」

魔王「おれとではなく、人間とか。なるほど、原因を無くそうと」

魔法使い「そうだ。…もちろんお前とも話さなくてはいけなさそうだがな」

350: 2012/07/14(土) 23:51:41.96 ID:yT1vDIUAO
魔王「はは、まさか城の外でおれと話し合いをしようとするやつがいるなんてな」

魔法使い「……」

魔王「だがな、魔法使い。お前が守ろうとした人間に手のひらを返されることだってあるぞ」

魔王「“魔女”という存在にはかなりの金額がかかっていると聞いたが」

魔法使い「…そうだな。半年は遊べる位の」

魔王「それがバレてしまったらどうするんだ?感謝もなにもせずお前を火に焼くぞ?」

魔法使い「……」

魔王「分かっているならいいが」

356: 2012/07/15(日) 21:02:02.25 ID:IX9kxiuAO
魔法使い「……正直さ、分からないんだ」

魔王「ふむ」

魔法使い「人間は私のような混血を忌み嫌っている」

魔法使い「混血や“魔女”を捕まえたならすぐさまあなたの言った通り、火炙りにする」

魔王「それはなんでだ?」

魔法使い「汚れたものがこの世界に長くいないように」

側近「……」

魔法使い「だから…そういうことが――私の存在を否定するような人間がいる限り」

魔法使い「完璧には人間の味方にはなれないんだろう」

魔法使い「それに私には魔物の血も流れている。だから、完全に魔物を敵にできない」


357: 2012/07/15(日) 21:14:15.33 ID:IX9kxiuAO
魔王「宙ぶらりんって感じなのか」

魔法使い「だろうな。結局、私は人間側に必氏にしがみついてるだけ」

魔法使い「……どちらにもなれないんだ」

側近「それじゃ駄目なのか。小娘は小娘では駄目なのか」

魔法使い「え」

側近「…なんでもない。魔王さま、わたくしは空から付いてゆきます」バサッ

魔王「分かった」

魔法使い「なんなんだ…?」

魔王「あいつもあいつなりに考えてやったんだよ」

魔法使い「ふぅん…」

魔王「で、我に返ったときに恥ずかしくなったんだろ」

魔法使い「それ言っちゃうか」

魔王(あの表は素っ気ない態度で裏ではかなり相手を大事にしていることを何と言うのだろうな)

359: 2012/07/15(日) 23:10:39.95 ID:IX9kxiuAO
魔法使い「…ところで何の話をしていたんだっけ」

魔王「おれが人間を絞め上げる云々から発展していったな」

魔法使い「なんかさっきより言葉が過激になってないか」

魔王「気のせいだろう」

魔法使い「……絶対気のせいじゃない」

魔王「じゃ、お前がおれといかないなら先に行ってるぞ」スタスタ

魔法使い「あっ」

魔王「」スタスタ

魔法使い「…!あの野郎…」

360: 2012/07/15(日) 23:16:03.73 ID:IX9kxiuAO
魔法使い「待て」タタッ

魔王「おやおや、何か用かな」

魔法使い「棒読みもはなはだしいな。――行けばいいんだろ、行けば」

魔王「おやおや、なんでそうなったのかな」

魔法使い「…あなたから目を離して何かされたら堪ったもんじゃないから」

魔法使い「なら、あなたが変なことしないように私が見張ってればいい」

魔王「ふん」

魔法使い「……というか、元から私に追わせるつもりだっただろ」

魔王「おやおや、根拠は?」

361: 2012/07/15(日) 23:22:22.94 ID:IX9kxiuAO
魔法使い「あなたは転移魔法使えるくせに歩くか、普通」

魔王「それにあえて引っかかったお前もお前だけどな」

魔法使い「それは…まあ…なんというか…」

魔王「ま、いいだろう。人間をおれの餌食にしたくないなら、このままおれに付いてくることだな」

魔法使い「やっぱり表現が過激になってきているぞ」

魔王「気にするな」

魔法使い「はぁ……いったい私が何をしたんだろうな」


362: 2012/07/15(日) 23:33:07.31 ID:IX9kxiuAO
――南の街

ガヤガヤ

青年「南の街は他より賑わっているな」

魔法使い「だな。海に近いから貿易が盛んなんだ」

青年「あー、海の向こうのものを取り扱ってるから客も多くなるのか」

魔法使い「その通り」

青年「果物に、工芸品……たしかに物珍しいものが多い」

魔法使い「お前のところはどうなんだ?」

青年「文化も技術も、あまり発展していないしする必要もない」

青年「そもそもこういうものを飾る家本体がないからな」

魔法使い「へぇ」

363: 2012/07/15(日) 23:53:11.52 ID:IX9kxiuAO
町人A「今日は来てるってさ!」

町人B「マジかよ!ついてるなおい!」

ワイワイ

魔法使い「?」

青年「なにやら始まるみたいだな」

魔法使い「そうっぽいな」

青年「行ってみるか」

魔法使い「いや、私はまず手紙を……」ゾク

魔法使い(後ろの木から殺気が……!また頭をつつかれる!)

魔法使い「…行くか」

青年「ああ」

魔法使い(わぁい殺気がやんだ…)

364: 2012/07/16(月) 00:03:33.38 ID:cP0PnHIAO
ガヤガヤ

青年「ここか」

魔法使い「掘っ立て小屋…なんだか怪しげだ」

商人「さあさあみなさんお集まりかな?」

町人C「オヤジ!今日はなんだよ!」

町人D「もったいぶるなよ!」

魔法使い「へぇ。今までもなにか支持を得るものを売っていたようだな」

青年「ほう。だからここまで期待をしているのか」

魔法使い「多分」

商人「今回は男性向けじゃあないんだな」

エーナンダヨー ヒッコメ ジャアダレヨウダヨ

ブーブー

商人「女なら誰もが好きな光り物!今日はそれを格安で売りに来た!」

365: 2012/07/16(月) 00:08:24.39 ID:cP0PnHIAO
青年「女はそういうものなのか、魔法使い」ボソ

魔法使い「あなたは私の立場を考えろ」ボソ

青年「ふん。――女はそういうものが好きだというが、どうなんだろうな」

魔法使い「さぁな、人によりけりだろ。興味があまりないのもいる」

青年「なるほど」

町人C「宝石?なぁ、宝石?」

町人A「宝石なんか格安で買えるもんじゃねーよ」

商人「慌てるな慌てるな。――これだ」ドン

ドヨッ

青年「!」

魔法使い「……大量の真珠…あんなにたくさんどうやって」

366: 2012/07/16(月) 00:14:31.48 ID:cP0PnHIAO
魔法使い(二枚貝ひとつから一個しかできない貴重なものと聞いていたが…)

魔法使い(それに養殖も未だ上手くいかなくて人工ですら非常に高いとか)

商人「そして値段は――」

ドヨヨッ

魔法使い(……安い。かなり、とは言えないが…あんなに大量に、そしてこの値段)

魔法使い「…なぁ、何かおかし――」ビクッ

青年「……」

魔法使い「おい?」

青年「……」

魔法使い(無表情で――ずっと真珠を睨んでる)

青年「…魔法使い」

魔法使い「ど、どうした?」

367: 2012/07/16(月) 00:18:47.59 ID:cP0PnHIAO
青年「害虫を見つけたら――どうする?」

魔法使い「いきなりなんだ。面白い答えはないぞ」

魔王「いいから。答えろ」

魔法使い「その場で潰す、かな」

青年「じゃあ害虫に巣があると知っている場合は?」

魔法使い「泳がせといて、巣を見つけて、壊す…と思う」

青年「だよな」スタスタ

魔法使い「おい、何があったんだよ」

商人「そこのお兄ちゃんはいいのかー?」

魔法使い「あ、はい。ごめんなさい、大丈夫です」



少女「……」


368: 2012/07/16(月) 00:25:51.86 ID:cP0PnHIAO
――裏路地

魔法使い「おい、魔王ったら!」

青年「青年だ」

魔法使い「…青年。どうしたんだよいきなり」

青年「別に」

魔法使い「……」

青年「魔法使い、部屋はどうする。別々か、一緒か」

魔法使い「…別々だったら怪しまれるだろう」

青年「じゃあ部屋をとってくれないか。残念ながらあまり得意ではなくてな」

魔法使い「それはいいけど…」

青年「金は出す。しばらく滞在すると思うが、お前は?」

魔法使い「…私も留まる。あなたが何もやらかさないように」

青年「ふん。そうだったな」

369: 2012/07/16(月) 00:31:10.68 ID:cP0PnHIAO
魔法使い「なんか見たのか。――真珠が苦手とか」

青年「当たらずとも遠からず。ほれ」ピン

魔法使い「わっ……真珠?買ったのか?」

青年「元から持っていたやつだ。売るなりなんなり好きにしろ」

魔法使い「なんで突然…」

青年「あれ見て思い出した。――これはあれとは違って自分の意思で作られたやつだ」

魔法使い「は?」

青年「部屋が埋まらないうちにとっておけ。おれは行くところがある」

魔法使い「ちょっ」

青年「安心しろ。今日はなにもやらない」スタスタ

370: 2012/07/16(月) 00:36:59.70 ID:cP0PnHIAO
魔法使い「…どうしたんだいったい」

バサッバサッ

魔法使い(あの人…あの鷹?も魔王を追いかけていったみたいだ)

魔法使い「不思議なやつ」

魔法使い「……」

魔法使い(この真珠、ちょっと水色かかっててきれい)

少女「…お兄さん」スッ

魔法使い「わぁっ!?」ササッ

少女「あ、ごめんなさい…」

魔法使い「い、いや、いいんだ。私も驚いただけだし」

376: 2012/07/16(月) 23:14:38.07 ID:cP0PnHIAO
少女「あれ、もう一人のお兄さんは…?」キョロ

魔法使い「急な用事ができたみたいでどっか行ってしまったよ」

少女「帰ってくる?」

魔法使い「多分ね。それで、君は私たちに何か用事があるのかな」

少女「お兄さんたち、あそこで何も買わなかったね」

魔法使い「ああ、あの掘っ立て小屋のこと?うん、買わなかったけど」

少女「なんで?」

魔法使い「なんでって…いらないから」

少女「欲しくなかったの?」ズイ

魔法使い「あ、ああ…」

377: 2012/07/16(月) 23:22:58.64 ID:cP0PnHIAO
少女「どうして?」

魔法使い「どうしてって言われても。君こそどうしてそんな質問を…」

少女「あそこで売るものはね、魔法がかかっているの」

魔法使い「…魔法?」

少女「売ってるものが、すごーく、すごぉーく欲しくなる魔法」

魔法使い「続けて」

少女「買うのが女の人だけー、とか、男の人だけーとかの日もあるけど」

少女「なんでだか知らないけど、欲しくなっちゃうんだって」

378: 2012/07/16(月) 23:27:03.65 ID:cP0PnHIAO
魔法使い「君は?」

少女「ぜんぜん。友達も欲しくならないみたい」

魔法使い「それって大人だけに効いてるってこと?」

少女「かも。だからね、あの売ってる人は悪い“魔法使い”なんだよ」

魔法使い「……悪い、ね」

少女「みんなを騙して大儲けしてるの!だから倒さないといけないんだよ」

魔法使い「それで、何故私たちのところに?」

少女「やっつけて」

魔法使い「………………ん?」

少女「お兄さんは買わなかった。魔法が効かなかった」

少女「それに知ってるよ。お兄さんの杖、“魔法使い”が使うやつでしょ?」

379: 2012/07/16(月) 23:39:07.71 ID:cP0PnHIAO
魔法使い「うん」

魔法使い(フェイクだけどね)

少女「だから、戦えるよ。魔法を使えるお兄さんたちなら!」

魔法使い「私の意見も聞いてくれお嬢ちゃん」

少女「……ダメなの?」

魔法使い「『オッケー叩きのめす』って即答するやつは余程お人好しか脳筋だけだと思う」

少女「…のうきん?」

魔法使い「いや、こっちの話だ。…深刻な状態なのかい?」

少女「……」

魔法使い「君自身に直接ではないとはいえ――なにか、あの店がらみであったんだろう?」

少女「…うん」

380: 2012/07/16(月) 23:43:18.81 ID:cP0PnHIAO
魔法使い「だろうね。話し方が切羽詰まってる」

少女「…あのね」

魔法使い「ああ」

少女「あそこで何かかわないと、落ち着かなくなるんだって」

魔法使い「……」

少女「パパもママも、いらないのに買ってきてはケンカしてる」

魔法使い「捨てたりとかはできるのかな?」

少女「できるよ。でも…お金かかったから、かんたんに捨てられないって」

魔法使い(物品そのものに魔法はかかってない、ということか)

魔法使い(ならあの売人か誰かが洗脳に近い魔法をかけていると…)

383: 2012/07/17(火) 10:56:46.02 ID:mEO/dMPAO
魔法使い「……ふむ」

少女「……」

魔法使い「分かった。調べて――できる限りのことはやってみる」

少女「ほんと!?」パァ

魔法使い「ああ」

魔法使い「もう日も暮れる。私はここら辺に止まるから、また明日会わないか?」

少女「うん!」

魔法使い「あそこの街灯の下にでも。じゃあ明日」

少女「また明日、お兄さん!絶対だよ!」フリフリ

魔法使い「ん」フリフリ

魔法使い(私も私で、お人好し…だなぁ)

魔法使い(あ、手紙…これも明日でいいか)

384: 2012/07/17(火) 11:12:03.08 ID:mEO/dMPAO
――掘っ立て小屋付近

青年「……」

鷹「…思うところが、ありますか」

青年「ある。――あの真珠は“人魚”の涙だ」

鷹「と、すると」

青年「人間が“人魚”たちに何かをしているのは確定ということだ」

鷹「そのようですね」

青年「昔、人魚がおれに教えてくれたんだけどな」

青年「桜色の真珠は歓喜。黒色は恨み。水色は同情」

青年「あの真珠の色は、無色…白だったな」

鷹「はい」

青年「悲しみの時の色だ」

鷹「……悲しんでいる“人魚”がいると」

青年「それも大勢な」

385: 2012/07/17(火) 11:25:12.63 ID:mEO/dMPAO
青年「真珠をあれほど人間が持っている時点でおかしいんだけどな」

鷹「ええ」

青年「しかもあの金額。おれはあまり値段に詳しくはないが…安い」

鷹「……」

青年「一度あの商人の巣を調べてみる。疑問が多すぎる」

鷹「そうですね」

青年(…あとは、魔法使いにも聞かないと分からないことがある)

388: 2012/07/17(火) 22:08:32.15 ID:mEO/dMPAO
――宿

ザパーン

魔法使い(個室に風呂とは珍しいな…時代が変わっている)

魔法使い(警戒しながら入らなくていいのは良いけど)ザパッ

魔法使い「ふぅ」

ガラッ

青年「ほう、湯の間か」

魔法使い「」

青年「どうした?」

魔法使い「わ、わ、私!」

青年「?」

魔法使い「私は今、裸だ!!」

青年「困るものでもあるまい」

魔法使い「私が困る!ちょっと出てろ!!」ブンッ

389: 2012/07/17(火) 22:09:30.31 ID:mEO/dMPAO
青年「その投げた桶で隠せばいいものを。馬鹿か」スッ

魔法使い「とりあえず一回閉めろ!閉めてくれ!」

青年「分かったよ。それにしてもお前」

魔法使い「え?」

青年「脱いでも小さ――ぐぉ」スパコーン


鷹(あのまんまじゃダメだな……)

390: 2012/07/17(火) 22:14:32.05 ID:mEO/dMPAO
……

魔法使い「あのな、怒鳴ったのは悪かったよ。まさか裸でいるとは予想がつかないだろうから」

魔王「ああ」

魔法使い「だが、小さいと言ったのは許さん。撤回しろ」

青年「事実は曲げられん」

魔法使い「その誇らしげな顔やめろ。腹立つ」

青年「しかしそれ、成長が遅いだけなのか止まったのか分からないな」

魔法使い「いや、遅いんだ。発展途上だ」

青年「でもその容姿だからもう止まった可能性もあるな。まあ落ち込むな」

魔法使い「よし、よく分かった。戦争だ」

鷹(好きな子にちょっかい出したい年頃…か…)

391: 2012/07/17(火) 22:19:54.00 ID:mEO/dMPAO
魔法使い「それで。何か見つけたのか」

青年「いまいち。それで聞きたいことがあるんだが」

魔法使い「ん」

青年「あの商人から、魔力を感じはしなかったか?」

魔法使い「……同じようなことを考えていたみたいだな」

青年「そうか」

魔法使い「私はわからなかった。女だからかもしれんが」

青年「どういう意味だ?」

魔法使い「どうも売りたい相手――性別にしか効かない魔法を使っている説が」

青年「面白い。今日売りたい相手だったのは男だけだったわけか」

魔法使い「そう考えると、あなたはどうだった?」

392: 2012/07/17(火) 22:23:49.10 ID:mEO/dMPAO
青年「そういうちゃっちい魔法は無意識に跳ねるからな」

魔法使い「ズルいだろそれ…」

青年「おれの特権だ。ま、ある程度強いやつならダメージは食らうが」

魔法使い「催眠術系にはかからないと…」

青年「相手が一般人ならなおさらかかりやすいだろう」

鷹「それに、魔法なんか使わなくても、雰囲気で買いたくなることもあるそうだ」バサッ

魔法使い「雰囲気?」

鷹「周りが欲しい欲しいと言っていると、自分も欲しくなる。そういう現象があるらしい」

393: 2012/07/18(水) 00:03:46.81 ID:7JyL7mcAO
青年「そんなのがあるのか」

鷹「又聞きですので詳しくは存じませんが」

青年「ほう…魔法だけではなく、心理にも商売を持ちかけているのか」

魔法使い「じゃあ売れるわけだな…はふ」

青年「眠いのか」

魔法使い「ああ…もう私は寝るよ…」ゴソゴソ

青年「……」

魔法使い「……」

青年「……」

魔法使い「…あなたは寝ないのか?」

青年「魔物はあまり睡眠とらなくてもいい種族だからな」

魔法使い「夜どう過ごすんだよ…」

青年「お前でも眺めていようか」

魔法使い「やめろ」

青年「おやすみからおはようまで見つめ続けてやる」

魔法使い「嫌がらせかよ!」

394: 2012/07/18(水) 00:06:11.07 ID:7JyL7mcAO
ではまた

401: 2012/07/18(水) 21:32:27.29 ID:7JyL7mcAO
――人間の城、地下牢

大臣「私だ」

兵士「大臣さま?ここはいくらあなたさまであろうと通れな――」

大臣「<従え>」ギュインッ

兵士「――どうぞ。夜遅くにご苦労様です」ガチャッ キィ…

大臣「戦士のところまで案内してくれ」

兵士「はい」

コツコツ

大臣「――どうだ、やつの様子は」

兵士「はい。一日中、ずっとあんな感じです」

戦士「……」ガリガリ

大臣「堕ちたものだな――下がれ」

兵士「分かりました。用事がすみましたらお呼びください」ススッ

402: 2012/07/18(水) 21:36:31.14 ID:7JyL7mcAO
戦士「……」ガリガリ

大臣「何を壁に彫っている?」

戦士「……」ガリガリ

大臣「…人の言葉が通じないか」

戦士「……の……」ガリガリ

大臣「なんと?」

戦士「ばけもの……」ガリガリ

大臣「……」

戦士「ひとじゃない……まものじゃない……」ガリガリ

大臣「…やはり魔法使いか…」

大臣(あの力は身近な邪魔者の中でも強すぎる――消しとくべきだろう)

戦士「……」ガリガリ

大臣「その翼の生えた人間は、お前のいう化物か」

戦士「……」コク

403: 2012/07/18(水) 21:41:37.54 ID:7JyL7mcAO
大臣(人間の姿のまま魔物化する、ということか)

大臣(なら都合がいい)

大臣「なあ、戦士」

戦士「……」ガリガリ

大臣「力が欲しくないか」

戦士「…ちから…?」ガリ…

大臣「魔法使いに負けない力だ。お前の望みを叶える強さだ」

戦士「……」

大臣「欲しいのなら、その薄暗い地下牢から手を伸ばせ、戦士」

大臣「――これを飲みさえすれば、お前は強くなれる」チャプ

戦士「……ぁ」

大臣「お前は完全には狂っていないぞ――まだ戦えるのだ」

404: 2012/07/18(水) 21:48:36.10 ID:7JyL7mcAO
戦士「……」

大臣「ほら――」スッ

戦士「……」

大臣「何をためらう?」

大臣「お前は――魔物を倒す“勇者”となりたくないか?」

戦士「……」




ゴクッ




405: 2012/07/18(水) 21:58:57.14 ID:7JyL7mcAO
――宿

青年「!」

魔法使い「……」スースー

青年(どこかで微弱で歪ながら、魔力が生まれたな――)

青年(ふむ。新たな子の誕生にしてはおかしすぎる)

魔法使い「む……」ゴソ

青年(しかも人間の国、城の近くからなんとなく感じる)

青年(知らないところで何か動き出しているのか…?)

魔法使い「………うぅ…」モゾモゾ

青年「魔法使い?起きたのか」

魔法使い「……ひとりに…しない…で……」

406: 2012/07/18(水) 22:05:18.70 ID:7JyL7mcAO
青年(夢をみているのか)

魔法使い「……やだ……みんな…」

青年(鷲一族は……一気に皆頃しされたんだったな)

魔法使い「……やめ…」

青年「」ナデナデ

魔法使い「…さみし…い……」

青年「今はおれがいるだろ」ナデナデ

魔法使い「……」パチリ

青年(起きた?)

魔法使い「置いて…いかない、で……」

青年「ああ」

魔法使い「……」スー

青年「……」ナデナデ


407: 2012/07/18(水) 22:14:34.10 ID:7JyL7mcAO
バサッ

鷹「まお……」

青年「……」ナデナデ

魔法使い「……」スースー

鷹「」

青年「側近か。どうだった」

鷹「海に異常はなし――あの掘っ立て小屋にも人影はありませんでした」

青年「“人魚”には会えたか?」

鷹「いえ。“人魚”は警戒して海上付近にはいませんでした」

青年「おれが行くべきかもな」ナデナデ

鷹「…それより、今、なにをなさっているんです?」

青年「こいつがうなされていたのでな」ナデナデ

青年「ミノタウロスが言っていた『泣いてる子は抱き締めて撫でろ』を実践中だ」

鷹「」

青年「まあ今は寝ているから抱き締められないけどな」

408: 2012/07/18(水) 22:18:34.85 ID:7JyL7mcAO
鷹「」

青年「もういいか」スッ…

魔法使い「……」スースー

鷹「」

青年「側近?」

鷹「あ、ちょっとお花畑に行っていました」

鷹(今度ミノタウロスに会ったら『変な知識植え付けんな』と言わなくては…)

409: 2012/07/18(水) 22:28:33.63 ID:7JyL7mcAO
……

チュンチュン

魔法使い「……ん、朝か…」

青年「よう」

魔法使い「」

青年「なんだ?おれとお前で部屋をとったことを忘れたのか」

魔法使い「い、いや……あれ?なんで私があなたの手を握っているんだ?」

青年「覚えていないのか。まぁ寝ぼけていたしな」

魔法使い「ちょっ、一体私はあなたになにをしたんだ!?」

青年「なにって」

鷹「」バサッ

魔法使い「あっ、ちょうど良いときに!あの!私は昨晩なにを!」

鷹「……」

鷹「きのうは、おたのしみでしたね(主に魔王さまが)」

410: 2012/07/18(水) 22:32:27.43 ID:7JyL7mcAO
魔法使い「」

青年「楽しかったな(撫でるのが)」

魔法使い「」

青年「お前案外ああいう(撫でられる)こと好きなのな」

魔法使い「」

青年「あれなら別に普段からでも(撫でて)やっていいぞ」

魔法使い「」

鷹(すごい放心状態…いじりすぎたか)

青年「」ナデ

魔法使い「!?」

青年「ああでも表情は固いな。寝ているときは無防備なのか」ナデナデ

魔法使い「え?え?」

423: 2012/07/20(金) 00:05:59.15 ID:/dcsgKcAO
――街

少女「あ!おにいさーん」フリフリ

魔法使い「やぁ……」

少女「…どうしたの、お兄さん。顔が赤いよ」

魔法使い「なんかな…あんなことされると妙に意識するというか…」

少女「へ?」

魔法使い「いや、こちらの話だ。朝ごはんは食べた?」

少女「もちろん。お兄さんは?」

魔法使い「バッチリ」

少女「あそこの宿のご飯不味いでしょ。部屋はいいらしいけど」

魔法使い「……だから自分で朝食を買う客が多かったのか…」

424: 2012/07/20(金) 00:10:26.11 ID:/dcsgKcAO
少女「お兄さんなんとも思わなかったの?」

魔法使い「別のことで頭がいっぱいで。それに、自分で作るものの方が不味いし」

少女「…お料理下手なんだ?」

魔法使い「みたいだな。食べた人は一回はひっくり返る」

少女「毒物!?」

魔法使い「それ言われたな。アオビカリキノコ入れたときとか」

少女「それあたしみたいな子供でも知ってるほどの毒キノコだよ!」

魔法使い「青いスープって美味しいのかなって思うじゃないか」

少女「お兄さん冒険しすぎだよ!」

430: 2012/07/21(土) 23:58:03.08 ID:atPWQPUAO
魔法使い「まあ料理談義はここまでにして」

少女「料理なの…?」

魔法使い「どうしようか、ここから。何も考えてないんだ」

少女「……」

少女「じゃあ、うちに来て」

魔法使い「え?」

少女「きっと、どれだけ大変なことが起きてるか分かるから」

431: 2012/07/22(日) 00:01:02.92 ID:EJf+syyAO
――街

住人「なんかよくわかんねーけど買っちゃって――」

住人A「俺もかかあに怒られて――」

住人B「なんかこう、買っちまうんだよな。その場のノリで」

住人「分かる分かる」

ヤンヤヤンヤ

少女「……」

魔法使い「…そうですか。お話、ありがとうございます」

432: 2012/07/22(日) 00:06:27.61 ID:EJf+syyAO
住人B「しかしあんちゃんは何者だ?

住人A「や、杖もってるから“魔法使い”なのは分かるけど」

魔法使い「修行の旅、ですかね。いわゆる」

住人「わけぇのに大変だなぁ」

魔法使い「いえ」

住人A「なんだい、話聞いたってこたぁ兄ちゃんはここの謎を突き止めてくれんのか」

魔法使い「出来る限り」

住人「頼もしいなぁ」

住人B「でもひよっこだから期待はできんぞ」

アッハッハ

少女「」オロオロ

魔法使い「……」コツン

住人「あれ、急に小便行きたくなった」

433: 2012/07/22(日) 00:11:22.09 ID:EJf+syyAO
住人B「俺も」

住人A「便所どこだった!?」バタバタ

少女「お兄さん、なんかしたの?」

魔法使い「…一応プライドはあるから。期待できない、とかはちょっとね…」

少女「意外だね。もうちょっとクールな人だと思ってた」

魔法使い「クールじゃないよ。すぐにキレる」

少女「意外……」

魔法使い「で、羽も生えてくる」

少女「お兄さん、あんまり冗談とかだじゃれとかうまくないほうでしょ」

魔法使い「あはは」

魔法使い(本当なんだよ…)

434: 2012/07/22(日) 00:23:19.22 ID:EJf+syyAO
少女「じゃああのおっさん集団に止められたけど……あれがうち」

魔法使い(一般的な大きさだな)

魔法使い「入っていいのか?」

少女「うん」ガチャッ

魔法使い(……う、わぁ)

少女「すごいでしょ?」

魔法使い「これは、思ったよりも」

少女「色んなものがごっちゃごちゃ――足の踏み場もないよ」

魔法使い(全く家そのものの雰囲気と噛み合っていない)

魔法使い(なにもかもちぐはぐで――落ち着きがないというべきか)

437: 2012/07/22(日) 08:39:01.98 ID:EJf+syyAO
少女「本当は、お母さんもお父さんもこんな趣味じゃないの」

魔法使い「なるほど…」

少女「なのに、わけの分からないものをどんどん買ってきて…」

魔法使い(なんだこれ…)ビヨヨーン

少女「やっぱりなんか起こってるんじゃないかなって」

魔法使い「そうか…」ビヨン

魔法使い「……行ってみるか、あの小屋に」

438: 2012/07/22(日) 08:41:59.08 ID:EJf+syyAO
少女「でもあそこ、不定期だよ」

魔法使い「誰もいないほうがやりやすい」

少女「そうなの?」

魔法使い「何かしら残っている場合もあるだろうし」

少女「そうなのかな」

魔法使い「多分」

少女「……そういえば、もう一人のお兄さんいないね」

魔法使い「ああ、海に行くらしい」

少女「海?」

439: 2012/07/22(日) 08:51:37.42 ID:EJf+syyAO
――海

ザザ… ザザーン

青年「静かだな」

鷹「人間の街の近くですからね」

青年「ふん。普段の“人魚”を知らぬからなんともいえんが」

鷹「そうでしたっけ?」

青年「ああ。おれは今まであの城にいる人魚ぐらいしかみたことがない」

鷹「あれは稀なタイプです」

青年「稀か」

鷹「あれは変化(へんげ)が出来ませんが、魔力と知力と化粧のケバさにおいては断トツです」

青年「今ちらりと悪意をこめてなかったか?」

鷹「気のせいです」

440: 2012/07/22(日) 08:59:49.40 ID:EJf+syyAO
青年「となると、普通の“人魚”は変化できるのか」

鷹「はい」

青年「……無知だな。王のくせして他を知らないとは」

鷹「これから学べばよろしいのですよ。それに、そのための我らです」

青年「頼もしいな」

鷹「勿体なきお言葉」

青年「――さて」チャプ

青年「“人魚”は今海底にいるのか」チャプチャプ

鷹「恐らくは」

青年「では、あちらがこれないのならこちらが行くべきだな」

鷹「あの」

青年「なんだ」

鷹「…鳥人族は水が駄目で…」

青年「じゃあ留守番だな」

441: 2012/07/22(日) 09:15:19.15 ID:EJf+syyAO
鷹「お気をつけて」バサッ

青年「分かっている」チャプ

バシャン

青年(かなり深くのようだな)

青年(魔力…こっちか)

~♪

青年(歌声…意外だな、水中でも聞こえるものだったのか)

青年(元の姿に戻るか)

人魚A「……!しっ!誰か来る!」

人魚B「また人間!?」

人魚C「違うみたいね。人間なら泳ぐはずよ」

人魚D「歩いてきてるね。陸上みたいに」

人魚B「泳ぐ方が早い気がするんだけ……あれ?あの姿は……」

魔王「」スタスタ

人魚A~D「」

447: 2012/07/22(日) 23:34:40.76 ID:EJf+syyAO
魔王「初めてだな」ピタ

人魚A「え、ま、魔王さま?」

人魚B「強い魔力といい角といい、どう考えても魔王さまよ!」

人魚C「お化粧ちゃんとするんだった!どうしよう!」

キャアキャア

魔王(魔力は中ぐらいか。防護魔法が強いんだったな)

人魚D(やば!?無表情だ、怒らせたかも!)

人魚D「あーっと、申し訳ありません魔王さま」アセアセ

人魚D「今、わたくしどもは精神状態が不安定です。ご無礼をお許しください」フカブカ

448: 2012/07/22(日) 23:38:57.72 ID:EJf+syyAO
魔王「構わん。こちらも突然来て悪いな」

人魚A「そんな!いいんですよ!」

人魚B「魔王さまが謝ることじゃありません!」

魔王「では本題に移ろうか」

人魚D(マイペースだなぁ)

魔王「――他の“人魚”はどうした」

人魚A「……」

人魚C「人間にさらわれました」

魔王「お前ら防護魔法が協力だと聞いたが」

人魚A「なぜかは分からないんですけど、人間側の武器で防護壁が一ヶ所破れたんです」

魔王「ふむ」

人魚A「それで、あの…パニックになってしまって。網でわーと」

449: 2012/07/22(日) 23:45:09.57 ID:EJf+syyAO
人魚D「今は、ギリギリ逃げ延びたわたしたちだけです…」

人魚B「」グスン

魔王「今までにも人間はお前たちをさらおうとしていたか?」

人魚A「はい。でも最近は様子がおかしかったですね。ね?」

人魚C「なんかわたしたちが居るところを見に来てる感じだったよね」

人魚D「今思えばみんなで固まっているところを捕まえようとしてたんだね…」

魔王「ふむ――武器、か。どのような?」

人魚B「えっと、矢です」

魔王「矢?矢を水中に穿ったのか」

450: 2012/07/22(日) 23:55:15.84 ID:EJf+syyAO
人魚A「魔法をかけられていました」

人魚C「それらがヒビをいれて、パリンと割れたんです。…わたしたちの防護壁が」

魔王「…人間め、厄介なものを作ったものだ」

人魚A「矢は一つ一つじゃどうってことありませんが、大量にだと話は違います」

人魚D「お願いします!わたしたちの仲間を助けてください!」

魔王「ああ。そのためにきたのだからな」

人魚B「」キュン

人魚D「なにか、お手伝いすることは?」

魔王「そうだな。お前らは仲間がそばにいるか確認するために何かしているか?」

451: 2012/07/23(月) 00:01:34.36 ID:h+3vHk4AO
人魚A「あ、はい。真珠…この場合、わたしたちの涙のことですが」

人魚C「仲間がそばにいると、反応してほのかに光るんです」

人魚B「すごくきれいですよ」

人魚D「今は見つかるといけないから外していますが」

魔王「なるほどな。…では真珠を貸してくれないか」

人魚A「貸すだなんて。魔王さまのためならいくらだってあげますわ」ポロッ

人魚A「どうか…頼みます」スッ

魔王(曇りのない白色か)

魔王「ありがとう。必ずやりとげる」

人魚A(お礼言われた…)キュン

452: 2012/07/23(月) 00:08:27.75 ID:h+3vHk4AO
――掘っ立て小屋

魔法使い「……」

魔法使い(わずかながら、魔力の跡)

魔法使い(あの商人は“魔法使い”までとは言わずとも、魔法はつかえるようだ)

少女「どう…?」

魔法使い「欲しい情報は得られたかな」

少女「本当?」

魔法使い「うん……っ!」バッ

魔法使い(今、明らかに視線を感じた!)

魔法使い(……誰だ?商人か、商人の仲間か)

少女「どうしたの?」

魔法使い「…なんでもない。早く行こう」

少女「ん?うん…」

453: 2012/07/23(月) 00:13:24.51 ID:h+3vHk4AO
――少女の家近く

魔法使い「いいか、良く聞いて」

魔法使い「私と君はここで離れる」

少女「なんで?まだお昼前なのに?」

魔法使い「……昼は関係あるのか?ともかく、私と行動は危険になった」

少女「?」

魔法使い「変なやつに見られたようだ」

少女「えっ!」

魔法使い「君にも被害がかかる。だから、ここでお別れだ」

少女「あ、あたしだって戦えるよ!」

魔法使い「甘いよ。私たちの世界の戦うは頃すか殺されるかだ」

少女「……」

454: 2012/07/23(月) 00:15:08.91 ID:h+3vHk4AO
魔法使い「わかってくれ」

少女「……うん」

魔法使い「いい子だ。また、すべて終わったら会おうよ」ナデナデ

少女「絶対だよ?」

魔法使い「ああ」

少女「じゃあね、またねお兄さん!」タタッ

魔法使い「」コク

魔法使い「……さぁてと」

455: 2012/07/23(月) 00:19:03.88 ID:h+3vHk4AO



??1「おい、子供が消えたぞ!」

??2「まさかあの男、魔法を使いやがったか!」

??1「ちっ…。あの男を直接襲撃するしかないな」

??3「宿は?」

??2「つけていこう。本来ならあの子供の予定だったのに…」

??1「あの“魔法使い”を始末したらでいいだろう」

??3「だな。俺らの商売の危険因子は取り除かないと――」

456: 2012/07/23(月) 00:27:00.09 ID:h+3vHk4AO
――宿前

青年「よう」

魔法使い「やあ。海から帰ってきたか」

青年「たった今な。で、お前、知ってるか?」

魔法使い「もちろん知ってる」

青年「ならいい」

魔法使い「夜になるまで街を歩こうかと思うんだが」

青年「手紙は?」

魔法使い「今のこの状態じゃ、迷惑がかかるだけだろ」

青年「そうだな」

魔法使い「じゃ」

青年「おいおい。おれを置いていくかよ」

魔法使い「…あなたもついてくるのか?」

青年「もちろんだ」

魔法使い「……」ハァ

457: 2012/07/23(月) 00:30:31.43 ID:h+3vHk4AO
――市場

魔法使い「この麻の糸をください」

「はいよー」

青年「何に使うんだ?」

魔法使い「別に……秘密だよ」

青年「ふん。隠すことが好きだなお前は」

魔法使い「一つはバラしたら明らかに命に関わるけどな」

青年「注意しないとな」

魔法使い「うん、あなたが口を滑らさなければ多分大丈夫」

青年「信用ないな」


鷹(あれ…距離縮んだ?)


458: 2012/07/23(月) 00:33:25.04 ID:h+3vHk4AO
……

魔法使い「時間は潰せたみたいだな」

青年「退屈しないですんだ」

魔法使い「異国の文化って思ったよりすごいもんだな」

青年「ふぅん。おれはあまり興味ないが」

魔法使い「あっそ。――帰るか」

青年「そうするか」

459: 2012/07/23(月) 00:35:39.45 ID:h+3vHk4AO
――深夜、宿

ギシ…

??1「全員寝静まったな」ヒソ

??2「うむ」ヒソ

??3「早く終わらせちまおう」ヒソ

カチャ カチャ カチッ

??1「さすが鍵あけの天才」ヒソ

??2「ふふん。さ、入るぞ」ヒソ

ガチャッ

460: 2012/07/23(月) 00:39:15.93 ID:h+3vHk4AO
??1「!?」

??2「いない!?」

??1「バカな…」

ボフン

??2「今、音がしなかったか」

??3「うん、窓が開いている。あそこからだな」

??2「連中、まさか逃げ出したとかじゃ…」ツカツカ

??2「…でも誰もいな――」

青年「窓の外に落ちた枕がそんなに気になるか?」

??1「!?」

468: 2012/07/23(月) 13:07:42.40 ID:h+3vHk4AO
青年「部屋に入るまでは良かったのにな。予想外のことでもちゃんと対応しとけよ」

??2「貴様っ…ぐっ!?」バタ

??3「なにが……」バタ

??1「おまえら!――おい、なにをしやがった!?」

青年「おれじゃない。そっちに聞いてくれ」

魔法使い「気絶させただけだよ。借りている部屋だからな」スッ

??1(氏角に…!?わざわざ声をかけたのは、氏角に目がいかないため…)

青年「チェックアウトだな」

魔法使い「うん、チェックメイトな」

469: 2012/07/23(月) 13:13:02.17 ID:h+3vHk4AO
青年「メイトもアウトも同じようなものだろ」

魔法使い「多分違うと思うぞ」

青年「まあいいか。改めて、チェックメイトだ」

魔法使い「話し合いにその布は邪魔だな。取らせてもらうぞ」コツン

パキンッ

中年1「ま、魔法を破られた…だと?」ハラリ

魔法使い「なんだ、自分に魔法をかけていたのか」

青年「ちょっと魔法を使える程度の一般人に“魔法使い”が負けるわけないだろ」

魔法使い「…やめてくれよ。この先万が一負けたら恥ずかしいだろ」

青年「なんだ、負けるのか?」

470: 2012/07/23(月) 13:15:38.34 ID:h+3vHk4AO
魔法使い「そういうわけじゃないが…私は規格外に強い訳でもないし」

青年「ふん。弱気だな」

魔法使い「過信しすぎていてもな」

中年1「あの、帰っていい?」

魔法使い「無理」

青年「駄目に決まっている」

474: 2012/07/23(月) 22:55:03.90 ID:h+3vHk4AO
魔法使い「だいぶ脱線してしまったな――」

魔法使い「で。私たちに何のようだ?」

青年「寝込みを襲うって時点でろくな理由じゃなさそうだがな」

中年1「…誰が言うかよ」

中年1(この窓から逃げ出すことは可能だな。……よし、今――)ザッ

青年「待った。話は終わっていない」

中年1「あっ…!?身体が動かな…」ガチ ビキッ

魔法使い「…石化か。元に戻すほうが難しいようだが」

青年「戻せる。じゃなかったら使わない」

475: 2012/07/23(月) 23:02:19.68 ID:h+3vHk4AO
魔法使い「ならいい。ああ、ちなみに今から尋問から拷問になった」

青年「分かった」

中年1「は!?」

魔法使い「逃げないで素直に吐けば穏便に事を運ぼうとしたのだが」

青年「それは残念だったな。こいつ、自分の立場をよく理解していないんだろ」

魔法使い「じゃ、教えないといけないな」

中年1「ま、待て!いいのか!?声が周りに聞こえるぞ!」

魔法使い「……」

青年「……」

魔法使い「この騒ぎでどうして誰も来ないんだろうとか、思わなかったか?」

476: 2012/07/23(月) 23:06:06.48 ID:h+3vHk4AO
中年1「あ」

魔法使い「すでにこの部屋は防音だ。窓も開いてるが、見えない壁を張っているだけ」

青年「つまるところ…なにやってもバレないってこった」ペロ

中年1「」ゾクッ

魔法使い「師匠に教えられた通りにうまくできるかな。少し不安だ」

青年「なに、氏なない程度に痛め付ければいいだけだろ」

魔法使い「コツがいるんだってさ」

青年「コツねぇ。まず何からする?」

魔法使い「爪の間に針を入れようか。腕を完全に固定しないとできない」

中年1「」

477: 2012/07/23(月) 23:10:54.22 ID:h+3vHk4AO
青年「痛いのか」

魔法使い「痛い痛い。指に針刺しただけでも痛いんだから」

中年1「ひっ…や、やめろ!」

魔法使い「じゃあ吐け」

中年1「」

魔法使い「吐け」

中年1「俺も、正直分からないからなんとも……」

青年「ふん。氏体処理がめんどくさそうだな」

魔法使い「鳥葬でもするか」

青年「……いや、それはお前、ちょっと、なんというか」

魔法使い「…冗談だ」

中年1「待て待て!本当だ!本当なんだ!」

478: 2012/07/23(月) 23:23:46.01 ID:h+3vHk4AO
青年「ふむ。詳しく話せ」

魔法使い(やはり王。オーラが違うな…)

中年1「……数ヶ月前、得たいの知れない男が来たんだ」

中年1「それで、薬と矢を渡して――」

『実験をしたい。その薬は無害だ』

『それにその矢は魔物の魔法を破る』

『どちらも与えてやろう。代わりに結果を聞かせろ』

中年1「――って」

魔法使い「実験……その薬は飲んだのか?」

中年1「ま、まあ」

魔法使い「どういう効果が?」

中年1「俺はあんまり効かなかったけどよ…リーダーは人を操れるぐらいの魔力を持てたんだ」

479: 2012/07/23(月) 23:28:41.14 ID:h+3vHk4AO
青年(……ふむ。繋がった)

魔法使い「個人差があるのか。薬の効き目は?」

中年1「リーダーは二週間で切れるな…定期的に飲まないといけないらしい」

青年「矢は?」

中年1「そ、それは…」

青年「“人魚”狩りか」

中年1「うっ……」

魔法使い「……?」

青年「ふん――リーダーのところまで案内しろ」

中年1「馬鹿言うな!そんなことしたら俺が殺されちまう!」

青年「今氏ぬか否かの違いだろ」

中年1「……」

480: 2012/07/23(月) 23:45:38.90 ID:h+3vHk4AO
……

中年2「なんかよくわかんないけど連行されてた」

中年1「ちぃっ…」

魔法使い「早く歩け。朝が来るぞ」

中年2「朝が来たところで――」

青年「魔法使い!」グッ

魔法使い「っ!?」ヨロ

シュッ サク

魔法使い「矢!?」

シュッシュッシュッ

中年1「ガッ…!」ザク

中年2「ぐぅっ」ザク

中年3「…やはり…見限られ…」ザク

魔法使い(全員不自然なほどに急所を…!)

青年「…魔法で力を得ているな。まだ飲んだ人間がいたのか」シュパッ

魔法使い「手づかみで…いや、そうじゃなくて!」

481: 2012/07/23(月) 23:52:04.20 ID:h+3vHk4AO
魔法使い「おい!しっかりしろ!」

中年1「あは…は…りぃ、だぁは…きびし…な」

魔法使い「……」

中年1「おま…え…いつか、必ず……痛い目…に…」ガク

魔法使い「……」

青年「他二人は氏んだ。即氏だな」

魔法使い「こっちも氏んだ」

青年「氏体はどうする」

魔法使い「…ここに放置しとこう。縛ろうと思わなくて良かったよ」

青年「ああ」

魔法使い「……あと、お仲間さんが回収するかもだし」

青年「ふん。やれやれ、相手は相当あせっていると見た」

魔法使い「だな」

482: 2012/07/23(月) 23:59:26.35 ID:h+3vHk4AO
魔法使い「……」

青年(黙祷というものか)

魔法使い「……。ここから離れよう」

青年「ああ」

魔法使い(ん?最初の矢になにか…紙が?)

青年「どうした、置いてくぞ」

魔法使い「あ、ああ。今行くから」ガサッ

ローブノ男 ノミ 読メ

魔法使い(私のことか?なんだこれ。それと黒い束も……髪の毛!?)

青年「」スタスタ

魔法使い(やつは気づいていないな…ちょっと読んでみよう)

子供ハ 預カッタ

魔法使い「!」

以下ノ 場所二来イ

誰カニ イウナ 誰カト クルナ

483: 2012/07/24(火) 00:06:45.44 ID:UV96A6rAO
破ッタラ 子供 殺ス

以上

魔法使い「……」

魔法使い(この髪は…確かに、あの子みたいな髪だが…)

魔法使い(別人の可能性もある。ただの脅しかもしれない)

魔法使い(あの子に会ってみるか)

鷹「お疲れさまです」バサッ

青年「お前の枕を落とすタイミング、ぴったりだったぞ」

鷹「有りがたきお言葉。枕は回収致しました」

魔法使い「あ、放置してなかったんだ」

鷹「失礼な!」グサッ

魔法使い「いっづぅぅ!?」

484: 2012/07/24(火) 00:12:06.12 ID:UV96A6rAO
――数時間後、少女宅

ザワザワ

魔法使い「…?」

憲兵「もう一度、聞き直しますね。あなたのお子さんは…」

少女母「だから、朝見たらいなくなっていたのよ!」

少女父「夜遊びするほど大きくも無ければ、勇気もないのに…」

憲兵「玄関は開いていたんですね?」

少女母「ええ。外に出たとしても、靴をはかずに」

憲兵「抱えられて連れ去られたかもしれない、と…」

憲兵B「あなた方は何か気づきませんでした?」

少女父「いいえ、馬鹿みたいに寝ていました…」

485: 2012/07/24(火) 00:15:25.80 ID:UV96A6rAO
魔法使い(僅かだが両親に魔法をかけられたあと)

魔法使い(見た感じ睡眠魔法か。……なんてことだ)

魔法使い(本当――だったのか)

魔法使い(別れたのが昼…あのあと出歩いた可能性もある)

魔法使い(外に出るなと言っていれば良かった…ちくしょう)

魔法使い(彼女は――私のためにさらわれたんだ)

魔法使い(なら、私は……)


486: 2012/07/24(火) 00:23:21.33 ID:UV96A6rAO
――宿部屋

青年「……」ガチャ

青年(あそこで物を売る気配はない…警戒したか)

青年「む、魔法使い?いないのか」

鷹「魔王さま。手紙が」

青年「手紙?」


出掛けてくる。

帰るなら帰ってていい。
荷物はそのままにしといてくれ。

鷹「……これだけですか?」

青年「いや…お互い勝手に出掛けているが、今まで置き手紙などしなかった」

青年「どこに――」

487: 2012/07/24(火) 00:29:56.71 ID:UV96A6rAO
鷹「魔王さま?」

青年「感じられないな…」

鷹「何がですか?」

青年「魔法使いの魔力だよ。あいつ、念入りに魔力を消してる」

鷹「何故今になってそんなことを小娘が」

青年「おれに付いてきて欲しくないんだろうな」

鷹「ならこの置き手紙に意味があるのでしょうか?」

青年「あるさ。遺書だ」

鷹「遺書!?」

青年「わざわざ『出掛けくる』。そのくせに場所は書かない」

青年「そして『帰るなら帰ってていい』。まるで長期間ここへ帰らないと言わんばかりだ」


488: 2012/07/24(火) 00:36:33.40 ID:UV96A6rAO
青年「荷物の件は分からん。ま、これはただ嫌なだけだろう」

鷹「遺書って…小娘は氏ぬんですか?」

青年「まだなんとも言えん」

青年「……誰かに呼ばれ何処かに行ったか、自発的にか…まあどちらでもいい」

青年「探すぞ。おれはあいにく人探しの魔法が出来ないから地道にな」

鷹「は、はい」

青年「あと、ほかにこれにはもう一つ意味があるとおれは推測する」ペラ

鷹「え?どういう意味が?」


青年「――『助けに来てくれ』」



489: 2012/07/24(火) 00:42:42.34 ID:UV96A6rAO
――街からかなり離れた場所の建物前

魔法使い「ここか」ザッ

魔法使い(なんだ?微かに魔物の気配がある)

魔法使い「……」

魔法使い(それにしても、なんであんな手紙残してきたんだろう)

魔法使い(明らかに『今からなんかやりますよん』って言ってるようなものじゃん…)

魔法使い(…魔王も一緒に来れば心強いが……なんせ、人質がいるかもだしな)

魔法使い「考えても仕方がない……行くか」スタスタ

490: 2012/07/24(火) 00:48:34.53 ID:UV96A6rAO
――建物内

魔法使い(だだっ広いところだな)キョロキョロ

「ようこそいらっしゃいました、お客さま」

魔法使い「!」バッ

商人「どうも、しがない一商人でございます」ニタァ

少女「お兄さぁん」グスッ

魔法使い「…その子を離せ。どうして私を呼び出した」

商人「商売に邪魔なものは消えていただかないと困るんですよ」

魔法使い「商売だと?あんなのか商売だと言えるのか」

商人「売ったもの勝ちですよ。そして――」

少女「お兄さん、後ろ!!」

魔法使い「え――」

ヒュンッ ドス

魔法使い(背中を射たれ――!)

商人「先手をうったもの勝ちでも、あります」ニヤニヤ

491: 2012/07/24(火) 00:52:51.21 ID:UV96A6rAO
魔法使い「何を…塗りやがった…」

商人「眠り薬を。いささか強すぎたみたいですね?」

魔法使い「…っ」ドサッ

商人「警戒心が甘いですねぇ。ここは敵の本拠地ですよ」

魔法使い(…師匠に見られたら…怒られそうだな…)

魔法使い(ちょっと…鈍ったかも……)

商人「――が――で――」

魔法使い「…まぉ……」


バタリ



492: 2012/07/24(火) 00:54:31.57 ID:UV96A6rAO

引用: 魔王「おれと手を組め」魔法使い「断る」