1: 2009/08/01(土) 18:37:07.50 ID:FzBQO/ke0
~ひよこの季節~

ジュン「なあ…金糸雀こそがひよこってのがお前らの通念なんだよな?」

真紅「そうよ。あの子はひよこ」

雛苺「ヒナと水銀燈はたまご鳥と呼んだりもするわ!」

翠星石「それがどうかしたんですか?」

ジュン「僕はさ、ある日ふと思ったんだよ…」

ジュン「…雛苺こそがひよこなんじゃないかってね」

雛苺「え?ヒナが?」

真紅「…その心は?」

ジュン「『ヒナ』だから」

一同「…!!」
ローゼンメイデン 愛蔵版 1 (ヤングジャンプコミックスDIGITAL)
3: 2009/08/01(土) 18:39:18.77 ID:FzBQO/ke0
しばし沈黙する3人。

翠星石「そ、そんな発想アリですか…?」

ジュン「アリ、じゃないかな」

真紅「いえ、アリよ。簡単なことだけど、考えたこともなかったわ…」

翠星石「これが…発想の転換というヤツですか…」

よく見てみると、雛苺のドロワーズはどことなくひよこっぽい。

雛苺「ぴよ」ピヨ

一同「!」

雛苺「ど、どう?」

翠星石「雛苺…すっげーかわいいですぅ!」ダキッ

真紅「わ、私も!」ダキッ

雛苺「なあああ」

4: 2009/08/01(土) 18:40:05.07 ID:FzBQO/ke0
姉さまたちの琴線に触れたらしい。
雛苺のもとに続々と姉が集まってくる。

水銀燈「雛苺…もう一回言って…」

雛苺「ぴよ」ピヨ

水銀燈「あーんもう可愛い!ほっぺたスリスリしちゃう!」スリスリ

雛苺「なあああ」

真紅「早く代わりなさい!次は私の番よ!」

蒼星石「違うよ!次は僕の番だ!さらっとウソをつかないでくれ!」

翠星石「おめーらどけです!とにかく邪魔です!」

ジュン「ふふ…雛苺も出世したもんだ」

金糸雀「…ねぇ、ジュン」ピヨ

ジュン「おっと、いたのか」

金糸雀「あれは一体なに?」

ジュン「…説明してやるよ」

5: 2009/08/01(土) 18:41:21.13 ID:FzBQO/ke0
金糸雀「そんな…雛苺がぴよ、ですって…?」ピヨピヨ

金糸雀「あの子は私からひよこキャラまで取ろうって言うの…?」ピヨ

ジュン「いや、そこまでは…」チラ

見ると、雛苺の口が微妙にいやらしい曲線を描いている。

ジュン「…そうかもな」

金糸雀「…許せないわ。ちょっと叱ってくる」

ジュン「お、おい…やられる予感しかしないぞ…」

金糸雀「雛苺!」

皆が手を止めて金糸雀に視線を向ける。

金糸雀「あなたもひよこになったんだって?」ピヨ

雛苺「そうだぴよ」ピヨ

蒼星石「ああ!可愛いよ雛苺!」ダキ

雛苺「なあああ」

7: 2009/08/01(土) 18:43:40.08 ID:FzBQO/ke0
金糸雀「くっ…それは私の専売特許なの!今すぐやめなさい!」

雛苺「やだぴよ」ピヨ

金糸雀「このニセひよこ…大体、本物のひよこはそんな風に口でぴよ、なんて言わないの!」ピヨピヨピヨ

金糸雀「本物は私みたいに自然とぴよった雰囲気を醸し出すものなの!」ピヨピヨ

金糸雀「みんな、騙されないで!雛苺はニセひよこなのよ!」ピヨ

水銀燈「いえ、そもそもそんなの関係ないし」

金糸雀「なっ…」

翠星石「私たちは雛苺がかわいいから可愛がってるだけですぅ」

真紅「ひよこ云々言ってるのはあなただけよ、ひよこ」

蒼星石「この鳥!鳥!」

そういって、皆は雛苺をかわいがるのに戻ってしまった。

金糸雀「な、何たる屈辱なの…」



8: 2009/08/01(土) 18:45:55.16 ID:FzBQO/ke0
目の前でひよこを否定された。
それは金糸雀にとっては自己の存在を否定されることに等しい。
というかそれ以前に、姉妹として認識されているかどうかも怪しい。

金糸雀「…」プルプル

皆は依然として雛苺をちやほやしている。
あの、似非ひよこを。

金糸雀「……」

金糸雀「…ぴよ」ピヨピヨピヨピヨ

金糸雀「……」

ぴよと言う。ものすごいひよこのオーラがあふれ出す。
しかし、誰も振り向かない。

ジュン「か、金糸雀…」

金糸雀「ジュン…ないていいかしら…」

ジュン「…泣いていい。お前は、泣いていいんだ…」

金糸雀「ぴよ」ピヨピヨピヨピヨ

ジュン「そっちかよ…まだまだ余裕じゃないか…」

11: 2009/08/01(土) 18:49:24.87 ID:FzBQO/ke0
金糸雀「…」ウル

ジュン「…」

ジュンは、金糸雀を部屋まで運んでやった。

金糸雀「…」グス

ジュン「…もう我慢しなくていいんだぞ」

金糸雀「ひぐっ…ジュン…」

金糸雀「…うわああああん!」ピヨ

ジュン「(あぁ…こんなときにまでひよこめいて…)」

ジュン「よしよし…」ナデナデ

金糸雀「ひ、ひどい…ひどすぎるかしらー!」ピヨ

ジュン「お前は泣いてるのか鳴いてるのか…」

金糸雀「ジュンまで馬鹿にして!うわあああん!」ピヨ

>>9 それ多分僕です。二週間ぐらい前にそういう話やりました。



12: 2009/08/01(土) 18:52:06.80 ID:FzBQO/ke0
ジュン「…」

ジュン「なあ金糸雀…」

金糸雀「な、なにかしらー!」グスピヨ

ジュン「僕は常々思うんだけどさ、ローゼンメイデンというやつは…」

ジュン「泣くときがいちばん輝く。これは、僕の経験則から言って間違いない」

ジュン「翠星石のやつも真紅のやつも、泣いてる姿は普段からは考えられないほどかわいいんだ」

ジュン「雛苺なんてなぜか色気すらあるぞ。こいつ将来さぞかし美人になるんだろうな…っていう」

ジュン「他は知らないけど、水銀燈も蒼星石もさぞかしいい泣きっぷりをするんだろう」

ジュン「そして…今お前が泣いてるわけだが…たしかにかわいいことはかわいい。しかし…」

ジュン「お前…何というか…ローゼンメイデンとして大丈夫か?普段とあんまり変わらないんだけど…」

金糸雀「うぅ…」

ジュン「いや、それ以前に女としてどうなんだ…泣いてもどきりともしねぇ」

金糸雀「…うわあああん!」

ジュン「どきりともしねぇ…」ナデナデ

13: 2009/08/01(土) 18:55:09.28 ID:FzBQO/ke0
金糸雀「さらっとぶっちゃけてんじゃねーかしらー!」グスグス

ジュン「言いすぎた…でも全部本当なんだよ。すまない」

ジュン「…落ち着いたか?」

金糸雀「うん…」グス

ジュン「じゃあひとつ質問させてほしいんだけどさ…」

ジュン「お前は、今回雛苺がひよこキャラで大人気なのに嫉妬してるんだよな?」

金糸雀「そうよ」

ジュン「それって結局、雛苺がひよこで人気取ってるのが悔しいのか?それとも…」

ジュン「雛苺ばっかりみんなにかわいがられるのが悔しいのか?どっちなんだ?」

金糸雀「…後者よ」ピヨ

ジュン「じゃあさ、別にひよこ云々は話の本質に関係ないってことでいいんだな?」

金糸雀「あれ…?」

ジュン「姉妹と仲良くしたいだけだろ?要するに」

金糸雀「そうなる…の?」

ジュン「総括したらそうなるぞ」

14: 2009/08/01(土) 18:57:44.10 ID:FzBQO/ke0
金糸雀「うーん…」

金糸雀「ひよこのままでいたい。ひよこが好き」ピヨピヨ

金糸雀「ぴよった私のことを私自身が好きで好きでたまらないの」ピヨピヨ

金糸雀「このまま行くわ。だってひよこじゃない私は私ではないもの」ピヨ

金糸雀「それは…かなしじゃくよ」

ジュン「いや、ふざけてないでさっきのことについて答えてくれ」

金糸雀「…みんなと仲良くしたいの、方法はなんでもいいから」ピヨ

ジュン「来たな。その一言を待ってた」

ジュン「協力してやる。お前とあいつらを必ず仲良くさせてやるよ」

金糸雀「じゅ、ジュン…」

ジュン「ぴよぴよちゃん。頑張ろう。あいつらをギャフンと言わせてやるんだ」

金糸雀「いえ、仲良くするならギャフンと言わせちゃだめなんじゃ…」

ジュン「言葉の綾だ」

金糸雀「…ありがとうかしら、ジュン」

ジュン「僕はどうでもいいことに首を突っ込むのが大好きだか…おっと失礼」

15: 2009/08/01(土) 18:58:51.01 ID:FzBQO/ke0
ジュン「それで…まずお前が姉妹にどれだけ馬鹿にされているかを知りたい」

金糸雀「…」

ジュン「…僕とお前はひよこ同盟じゃないか。意見を言うのに遠慮はナシにしようぜ」

金糸雀「…そうね。分かったわ」

ジュン「よし。それで馬鹿にされ度を測る方法だが…」

ジュン「お前のデコを使う。いいな?」

金糸雀「いいけど…どうやって?」

ジュン「あいつらに、皆で金糸雀について考えた好きな言葉をひとつ書いてくれと言うんだ」

金糸雀「…デコに」

ジュン「そう。その際、お前の本体部分には布をかけて覆い隠す」

ジュン「そうすれば、あいつらも変に気負うことなく思ったことが書けるだろう?」

金糸雀「それって私のデコじゃなくて普通に紙とかでもいいんじゃ…」

ジュン「ダメだ。こういうのは形が大切なんだよ」

ジュン「お前のデコじゃなきゃ…アカンのや!」ケー

17: 2009/08/01(土) 18:59:42.14 ID:FzBQO/ke0
金糸雀「わ、分かったかしら…」

ジュン「ならここにちょうど布があるし、行こうか」

リビングへ。

雛苺「ぴーよぴよ!」ピヨ

一同「ぴーよぴよ!」

ジュン「おお…宗教っぽくなってて香ばしい感じ」

ジュン「じゃなくて…おーいお前ら!ちょっとこっち来てくれ!」

翠星石「はーいですぅ!」

真紅「なあに?どうしたの?」

ふたりが反応すれば、他の全員も来ざるを得ない。
ジュンは、間違いなくこの集団を掌握できる状態を保っているのだ。
狡猾な男だ。天真爛漫な金糸雀とは大違いである。

ジュン「よし、皆来たな…これを見てくれ」

水銀燈「あら、おでこ…」

ジュン「そう。ここにあるのはただのデコだ」

18: 2009/08/01(土) 19:00:56.91 ID:FzBQO/ke0
蒼星石「デコ。ぷぷぷ」

真紅「デコですって」クスクス

翠星石「ヒナちゃん、デコですよ」ヒソヒソ

雛苺「デコ…あはは」

ジュン「お前ら本当デコを馬鹿にするね。気持ちは分かるけど」

翠星石「で、そのデコがどうしたんですか?」

ジュン「あぁ。このデコに金糸雀について思いつく単語をひとつ…書いてもらう」

一同「!!」

水銀燈「い、いいのぉ…?」

ジュン「もちろん。ただし、お前ら全員でひとつの単語だけだけどな」

蒼星石「十分だよ!さっきからその広いデコがまっさらなままなのが耐えられなかったんだよ!」

翠星石「あぁ…油性マジックでキュキュっと書き込まれる文字…たまらんですぅ…」

真紅「ジュン。最高の余興だわ。ナイスよ」

ジュン「えへへ…真紅に褒められるとゾクゾクする」

20: 2009/08/01(土) 19:02:55.92 ID:FzBQO/ke0
ジュン「ということで、考えなさい。一回きりだ」

翠星石「…できたです!」

ジュン「早いな。尺短縮か」

水銀燈「ヒナちゃん…あなたが書いていいわよ」

雛苺「分かったの!ぴよぴよっと行っちゃうね!」ピヨ

一同「かーわいい!」

ジュン「(たしかにこいつがぴよぴよ言うとかわいいな…)」

雛苺がその筆致を尽くして文字を書き込む。デコに。

ジュン「うめー…字うめー」

翠星石「…ププッ…」

真紅「くっ…」

蒼星石「ひ、ひどい…」ピクピク

水銀燈「…」プルプル

ジュン「なんだよこの単語…」

21: 2009/08/01(土) 19:07:33.87 ID:FzBQO/ke0
ジュン「ありがとうね。はいはい、ありがとうね」

翠星石「なんかうぜーですね」

部屋へ。

ジュン「ということで、お前のデコにはしっかりと文字が書き込まれています」

金糸雀「な、なにかしら…ドキドキしちゃう」

ジュン「いや、この単語全然意味が分からないんだけど…ほれ、手鏡だ」

金糸雀「…」ドキドキ

金糸雀「…!」

薔薇鳥。

ジュン「…な?」

金糸雀「…」プルプル

ジュン「えっ?怒ってるのか?」

金糸雀「薔薇乙女…最大の屈辱…最悪のスラング…」

金糸雀「ばらどり…くぅぅ…」

ジュン「そ、そういうことだったのか…」

24: 2009/08/01(土) 19:12:35.15 ID:FzBQO/ke0
金糸雀「トサカに来ちゃった…ねえ、ジュン…」

ジュン「抑えろ。お前はあいつらにかわいがられるんだろ?」

金糸雀「で、でも…」

ジュン「そいつらをボコってどうする。ますます孤立するだけだぞ」

金糸雀「くぅぅ…」

ジュン「(愛されたい。でも今は憎い。ゆらめく愛憎)」

ジュン「(人間だ。今、金糸雀はもっとも人間的だ)」

ジュン「(あぁ…なぜか無性に詩を書きてえ!)」

この後にジュンが書いた詩は、なんかの賞(やった賞)に引っ掛かった。

ジュン「…大丈夫だよな?我慢できるよな?なんてったってお前はお姉ちゃんだもんな?」

金糸雀「はっ…そうよ。私はお姉ちゃん」

金糸雀「耐え難きを耐え、忍び難きを忍び、歯を食い縛ってただ征くのみ」

金糸雀「なぜなら私はお姉ちゃんだから」

ジュン「単純でよかった…」

金糸雀「もう大丈夫かしら!鏡、ありがとうかしら!」

26: 2009/08/01(土) 19:18:40.94 ID:FzBQO/ke0
ジュン「ほい」

ジュン「(デコはこのままで行こう…面白いから)」

ジュン「(デコに薔薇鳥って…絶対アホやこの子…)」プルプル

ちなみに薔薇鳥の意味とは…ここには書けない。
ほぐして言うと、売女とか醜女とか売国奴とかをかけて3倍して二乗したような感じである。

ジュン「それにしてもお前、馬鹿にされてるなあ…」

金糸雀「でも、いいデータがとれたじゃない。生の」

ジュン「いやあ…元々…」

金糸雀「…元々?」

ジュン「…分かってたらこんなことやらなかったよね~」

金糸雀「そうよね~」

ジュン「あはははは」

27: 2009/08/01(土) 19:24:15.22 ID:FzBQO/ke0
金糸雀「でも、このあと具体的に何をやればいいのかしら…」

ジュン「お前の武器はあれしかないだろ、あれしか」

金糸雀「?」

ジュン「ひよこだよ」

金糸雀「結局それなの…」

ジュン「そもそも人は、ひよこの愛らしさに抗しきれない生き物なんだ」

ジュン「まぁあいつらは人形だが、同じようなものと考えていいだろう」

ジュン「つまり、お前のひよこめいている部分は可愛らしさにはむしろプラスなんだよ」

ジュン「それなのに、最もひよこめいてるお前が疎んじられるのはなぜか。分かるか?」

金糸雀「…分かるけど言いたくない」

ジュン「そう。うざさがひよこのプラス部分をかき消してしまってるんだ」

金糸雀「結局言うの…」

ジュン「ひよこ特性はうざさ特性に消され、うざさだけが残ってる」

ジュン「今のお前はひよこっぽいけどただのうざいドール、ってことだ」

金糸雀「ひよこっぽいけど…ただのうざいドール…ひどい…」ピヨ

31: 2009/08/01(土) 19:29:07.51 ID:FzBQO/ke0
ジュン「ならば話は簡単だよ。とる手段はひとつ」

ジュン「ひよこっぽさを更に増幅してうざさを押し切る。これしかない」

金糸雀「ごり押しひよこ作戦ね…」ピヨ

ジュン「そうだ。ごり押しひよこ作戦。この言葉がこれまで用いられたことがあるのか」

ジュン「それはともかくとして、お前は一旦家に帰ってもらう」

ジュン「そして、ひよこっぽい服を取ってくるんだ」

金糸雀「…というかひよこの着ぐるみがあるわ」ピヨ

ジュン「…さすがみっちゃんさん。分かってるな。本当にさすがだ」

金糸雀「えっへんほん!」エッヘンホン

ジュン「えっへんほん…ちなみにその間、僕は雛苺をちやほやしてるから」

ジュン「あの宗教的熱狂には参加しなきゃな。めったにない機会だから」

ジュン「というわけでいってらっしゃい」

金糸雀「行ってくるかすぃーら!」バッ

ジュン「…そうだ。ちょっと薔薇鳥で検索してみようかな」カタカタ

ジュン「お、おぅ…」

33: 2009/08/01(土) 19:39:14.01 ID:FzBQO/ke0
雛苺「ぴよれ!」ピヨレ

一同「ぴよれ!」

ジュン「ぴよれ!」

金糸雀「…ジュン」グイ

雛苺「ぴよれった!」ピヨレッタ

一同「ぴよれった!」

ジュン「ぴよれった!」

金糸雀「…ジュンったら」グイグイ

雛苺「ぴよーんとね!」ピヨーントネ

一同「ぴよーんとね!」

ジュン「ぴよーんとね!」

金糸雀「これもうひよこでもないわよね…」

金糸雀「しゃーねーかしら…」

そう言うと、金糸雀はその場で着替えだした。

34: 2009/08/01(土) 19:42:26.74 ID:FzBQO/ke0
金糸雀「…」ゴソゴソ

乙女が背後で着替えているのに、ジュンは振り向きもしない。
というか、気づいてない。

金糸雀「本当…私は女としてどうなのかしらね…ふふ…」ゴソゴソ

自嘲的な笑み。しかも着替えてるのはひよこの着ぐるみ。

金糸雀「ま、ジュンは口Oコンではないということね…できたわ」

昔これを着たとき、鏡で自分の姿を見たことがある。
あまりにもひよこ的だった。

金糸雀「言うわ。言うわよ」

金糸雀「…ぴよ」ピヨピヨピヨピヨピヨピヨ

一同「…!?」

金糸雀「ぴよぴよ!」ピヨピヨピヨピヨピヨピヨピヨピヨピヨピヨピヨピヨ

一同「ウワー!」

一同が垣間見たのは、ひよこの大群の幻。

翠星石「な、なんですか…?」

35: 2009/08/01(土) 19:47:16.08 ID:FzBQO/ke0
金糸雀は、もうひよこに徹することにしたのだ。
そこにいるのは一頭の黒いけもの…ではなくて一羽のでかいひよこだった。

金糸雀「ぴよ!」ピヨピヨピヨピヨピヨピヨ

水銀燈「何これ…めちゃくちゃかわいいじゃないの!」

蒼星石「ひよこだ!ひよこがいる!」

真紅「ふわっとして…やわらかそうな!」

雛苺「もうがまんできないの!」ポフ

翠星石「あっ!雛苺!ずるいですぅ!」

真紅「私も!」モフ

金糸雀「ぴよ!」ピヨピヨピヨピヨピヨピヨ

ジュン「…やったんだな、金糸雀」

正気にかえってみたら金糸雀ひよこが大人気である。

ジュン「あいつ…あんなに嬉しそうな顔して…」

ジュン「だがそれは…」

ジュン「みんなひよこを愛でているだけなんだよ…金糸雀ではなくて…」

ジュン「お前は…本当にそれでいいのか?」

37: 2009/08/01(土) 19:52:25.66 ID:FzBQO/ke0
金糸雀「…ぴーよ!」ピヨピヨピヨピヨピヨピヨ

一同「きゃあああ!かわいいい!」

ジュン「ふっ…そうか」

ジュン「だが、それでも僕は素のお前もいいと思うんだよ」

金糸雀「…」

ジュン「…ひよこがつらくなったら僕のところにおいで。いつでもいい。いつでもだ」

ジュン「…頭を撫でてやるからさ」

金糸雀「…ぴよ」ピヨピヨピヨピヨピヨピヨ

一同「あっ!ひよこちゃんが泣いてる!かわいい!」

ジュン「ふふ、また会おう…栄光のハッピーバード」

ジュン「今はしばしのお別れだ」

38: 2009/08/01(土) 19:55:07.34 ID:FzBQO/ke0
ジュンは部屋に戻った。

ジュン「ひよこ…か」

ジュン「…」

ジュン「ぴよ!」

ジュン「…うふふ」

ひよこの旋風が吹き荒れる。
ひよこを愛でるもの、ひよこに酔うもの、そしてひよこそのもの。

のり「ただいまー…ってやかましいわね」

のり「どうしたのかしら…?」

のり「…!」

金糸雀「ぴよ!」ピヨピヨピヨピヨピヨ

ひよこの狂い咲き。リビングは温かなひよこ空間と化している。

のり「…ああ!」

のりはすぐに靴下を脱ぎ捨ててひよこへと突っ込んだ。
そう。誰もひよこからは逃れられないのだ。誰も…。

世界はひよこ。この瞬間、桜田家内のひよこメーターは振り切れていた。

39: 2009/08/01(土) 19:57:09.93 ID:FzBQO/ke0
エピローグ~ひよこはもうおなか一杯ですかね~

翠星石「うーん…ひよこはもうおなか一杯ですかね~」

この翠星石の一言で、ひよこブームは収束した。まさに三日天下だった。
今は皆、蒼星石のたくましさを愛でている。

ジュン「あんなわけわかんない引きしといてこのザマかよ…」

金糸雀「いえ、これでよかったのよ」

ジュン「でもお前…また相手にされなくなっちゃって…」

金糸雀「ううん、いいの。だって…」

金糸雀「…みんなは意外とくさかったんだもん!」

ジュン「えっ?におうってこと?あいつら結構いいにおいだと思うけど…」

金糸雀「違うわ!ブームをただ追っかけるだけの低脳女のにおいがしたのよ!」

金糸雀「あんなのにまみれていたらこっちまで腐るわ!だからこれで良かったのよ!」

ジュン「なるほど…お前もついに到達したんだな。悟りの境地に…」

金糸雀「そうよ」ニコ

ジュン「そういう毒舌が吐けるようになれば一人前だよ」

40: 2009/08/01(土) 19:58:24.19 ID:FzBQO/ke0
ジュン「いい目だ。もうお前は迷わないな」

金糸雀「えぇ。私はローゼンメイデン唯一のまともな自我の持ち主」

金糸雀「その誇りだけあればいいわ。それだけで私は生きていける」

金糸雀「そして私はひとり、自己を高めていくの。姉妹は、あれはあれで放っておけばいいの」

ジュン「…案外、お前がアリスになるのかもしれないな」

金糸雀「分からないわ。でも、自信はある」

ジュン「僕も協力するよ。共に行こう、ひよこちゃん」ニコ

金糸雀「…ありがとう。めがね!」

ジュン「(でもどうせ今回だけだ。次の話では金糸雀はまたぴよぴよ言うんだろう)」

ジュン「(それでも一応ツバをつけとくだけさ…)」

金糸雀「いいわよ、それでも。私はそんなあなたを拒まない」

ジュン「…読まれてたのか」

金糸雀「もちろん」ニコ

ジュン「くっくっく…いい女だ、お前は」

41: 2009/08/01(土) 19:59:05.30 ID:FzBQO/ke0
金糸雀「そう?」

ジュン「あぁ」

金糸雀「あの子達よりも?」

ジュン「いや、あいつらの方がもっといい女だけどな」

金糸雀「…ん?」

ジュン「やっぱり真紅とかかわいいもんなー…翠星石とか」

金糸雀「あれ?ここはお前がいちばんかわいいよとか言うところじゃないの?」

ジュン「ウソはつけないよ…自分には特に」

金糸雀「…」

金糸雀「うわあああん!」ピヨピヨ

ジュン「おうふ…よしよし」

金糸雀「ジュンの…バカー!」ポカポカ

ジュン「あれ…でもちょっとかわいくなってるな」

42: 2009/08/01(土) 19:59:46.09 ID:FzBQO/ke0
金糸雀「…」ピタ

ジュン「う…」

金糸雀「ほんと?」ニヤニヤ

ジュン「う、うん…」

金糸雀「その言葉が聞きたかったの。私は」

ジュン「えっ、それって…」

金糸雀「ジュン!お礼!」チュッ

ジュン「…!」

金糸雀「うふふ…みんなと遊んでくるね!」タッ

ジュン「…お、おい…結局遊びに行くのかよ…」

ジュン「…」

ジュン「…ひよこ、かわいいじゃないか…」

ひよこの季節が始まった。

~完~

43: 2009/08/01(土) 20:00:19.12 ID:GGuFBCzkO
( ;∀;) イイハナシダナー

引用: 金糸雀「ぴよ」