72: 2009/08/01(土) 20:59:56.21 ID:FzBQO/ke0


ジュン「苺のぼり~」

雛苺「あぁうっとうしい…おや、インターホンが」ピソポーソ

雛苺「どきなさい!」ゲシ

ジュン「むわ」ドタ

雛苺は応対に向かった。

雛苺「はい…オディール?そんな人は知りませんねぇ…」

雛苺「雛苺に用がある…?ヒナが雛苺ですが」

雛苺「いえ、知りません。…あんまりしつこいようなら警察呼びますよ」

のり「ひ、ヒナちゃん。私がかわるから、ね?」

雛苺「のり。気をつけて、これはきっとストーカーよ」

雛苺「ヒナはかわいいから。こんなのによく付きまとわれるのよ」

のり「はい、かわりました…はい、はい…今、行きますね」ガチャ

雛苺「…!?」
ローゼンメイデン 愛蔵版 1 (ヤングジャンプコミックスDIGITAL)
73: 2009/08/01(土) 21:00:41.03 ID:FzBQO/ke0
のり「何か本当に用事があるみたいよ、ヒナちゃんに」

雛苺「…出会いがしらに一発かましてやるわ。のり、つれてって」

のり「はいはい」ダキ

のりは雛苺を抱いて、玄関に向かった。

のり「すみません、お待たせしました…?」

とても可愛らしい少女が、門の前で待っていた。

のり「あらぁ…可愛い…」

オディール「突然すみません。オディール・フォッセーと申します」

オデ「今日はその、雛苺に用事があって…」

のり「ひ、ヒナちゃん…?」

雛苺「来た…本当に来た…孫娘…」ガクガク

のり「孫娘?」

雛苺「そう…あれはたしか1944年のベルリン…撤退戦のときよ…」

74: 2009/08/01(土) 21:03:32.14 ID:FzBQO/ke0
~1940年3月、パリ~

雛苺「ちょっと…私を置いていく気!?」

コリンヌ「…そうよ」

雛苺「なんでよ!つれてってくれてもいいじゃない!」

コリ「あなたは、ヒトとして見れば小さい。でも、人形として見ると…」

コリ「…妙に大きいし重い。しかもごはんを食べる」

雛苺「つまり…厄介払いってこと!?」

コリ「そうなるかしら」

雛苺「ひ、ひどいわコリンヌ!このポンポコリンヌ!トサカに来た!」

コリ「大丈夫。私はいずれこの街に戻ってくる」

コリ「それが5年後か10年後かは分からないけれどね」

雛苺「いえ、それは何の説明にもなってないわ!」

76: 2009/08/01(土) 21:07:34.76 ID:FzBQO/ke0
コリ「まあまあヒナちゃん、とりあえず鞄に入って」ギュギュ

雛苺「ちょ、ちょっとポンポコリンヌ…!」パタン

コリンヌは、雛苺を鞄に詰め込み鍵を閉めてしまった。

コリ「60年後、あなたは私の孫娘とめぐり合う」

コリ「私はおそらくもうこの世にいないわね」

コリ「でも、あなたは違う。なんてったって、不氏の桃色人形だもの」

コリ「見てきなさい、未来ってヤツを。私の孫娘と一緒に!」

雛苺「外で色々言ってるけど全然意味がわかんない!」

コリ「じゃあね、元気でね雛苺…」

コリ「さて、こうなったらさっさと逃げるまでよ」スタコラピー

78: 2009/08/01(土) 21:08:58.69 ID:FzBQO/ke0
雛苺「…」ガチャ

しかしなんと、コリンヌは鍵をちゃんとかけていなかったのである。
雛苺はいとも簡単に脱出できた。

雛苺「…この計らいも意味が分からないし…」

コリンヌは、昔から意味の分からない行動ばかりとっていた。

雛苺「ポンポコリンヌ…」

しかし、これが今生の別れなのは確かだろう。
もしかしたら、コリンヌなりの照れ隠しだったのかもしれない。

雛苺「さようなら、パリのMs.天真爛漫…」

雛苺はそういって歩き出した。
振り向きはしない。とにかく今は誰かに取り入って、生き延びねばならないからだ。

そして同年6月、パリは陥落した。
その頃、雛苺はニューヨークシティにいた。

80: 2009/08/01(土) 21:10:37.46 ID:FzBQO/ke0
雛苺が喋っているうちに、のりはオディールを家の中に招き入れていた。

雛苺「…というわけよ」

のり「ううーん…ぽんぽこりんぬ…?」

オデ「そんな感じの話…おばあさまから聞いたことがあるわ」

雛苺「ポンポコリンヌは何でまだあの時のままなの…?怖い…」

オデ「…オディールよ。ポンポコリンヌの孫娘。というか、さっき言ってたじゃない…」

ジュ「おっと…!?何だこれ!これどういう状況!?」

一同「…」イラッ

話が煮詰まってきた頃に、必ずこういうやつがやってくる。
また1から説明するのは、本当に氏ぬほど面倒くさい。
しかも、こういうのに限って説明をちゃんと聞かないものだ。

張り手。

のり「久し振りにやっちゃった…」テヘッ

雛苺「さすがのり!」

ジュ「きゅう…」

81: 2009/08/01(土) 21:12:41.53 ID:FzBQO/ke0
雛苺「それで…ポンポコリンヌは何でまだ生きてるの…?」

オデ「…」

のり「だ、だからね…この子はオディールちゃんって言って…」

雛苺「ポンポコリンヌの孫娘なのね。ヒナ知ってるの」

オデ「…かわいくない」ボソ

雛苺「何ですって?」

オデ「なんでもありません~」

雛苺「うそ!絶対何か言ったもの!」

オデ「言ってません~、かわいくないなんて言ってません~」

雛苺「うぅ…ポンポコリンヌⅢ世のバカー!」ダッ

オデ「あっ…」

のり「言いすぎちゃったわね」

オデ「む、ムキになっちゃって…つい…」

83: 2009/08/01(土) 21:14:28.11 ID:FzBQO/ke0
のり「…オディールちゃん、そのまま動かないであっちを見て…」

オデ「?」

見ると、開けっ放しのリビングのドアの陰から、雛苺がこちらの様子をうかがっている。

雛苺「…」ジー

オデ「か、かわいい…」

のり「ヒナちゃんも照れてるだけなのよ。ね、許してあげて」ニコ

オデ「…雛苺!」タッ

雛苺「…ポンポコリンヌ!」ギュ

オデ「ごめんねひどいこと言って…私あなたと初対面だから、怖くて怖くてつい…」

雛苺「いいの。何てったってあなたはあのポンポコリンヌの忘れ形見なんだから…」

雛苺「またわけの分からないことをして私を振り回して!それが償いなのよ!」

のり「(ヒナちゃんたら、『私』なんて言っちゃって…)」

オデ「ぜ、全然意味が分からないけど…分かったわ、雛苺!」

雛苺「さすがポンポコリンヌ!頭の回転は早いの!」

85: 2009/08/01(土) 21:15:25.20 ID:FzBQO/ke0
オデ「雛苺、今度パリにいらっしゃいよ。私あそこに住んでないけど」

雛苺「あの街、虚栄の臭いがするから嫌いなの。行きたくないの」

オデ「…のりさん。私、雛苺がすっごくかわいく思えてきました」

のり「でしょう?」

オデ「はい。こうやって抱っこしててもちょっとずつ蹴りをいれてくる所とか…最高です」

雛苺「それ!それ!」ゲシゲシ

真紅「ねぇジュン…あれ誰なの?」

翠星石「し、知らない人間怖い…」ガクガク

ジュン「誰なんだろうな…本当に…」

のり「ジュン君。あの子はオディールちゃんて言って…」

ジュン「オディールさん?その人なら昏睡して入院してるんじゃなかったっけ」

のり「…え?」

真紅「雛苺…なんでここにいるの?あなたやられたんじゃないの?」

雛苺「…ふふ」

ジュン「え…なんだこれ…」

~完~

87: 2009/08/01(土) 21:16:07.86 ID:FzBQO/ke0
これで終わりです。
お目汚しをしてすみませんでした。

引用: 金糸雀「ぴよ」