69: 2014/06/08(日) 13:07:08 ID:q4Mu034M

纏流子「…美木杉、聞きたいことがある」



流子「…これは何だ」

美木杉「何って…僕の部屋着だけど?」

流子「いや、そりゃぁ見ればわかるんだが…。基本半裸のお前が、なんでこんな物持ってんだって聞いてんだよ」

美木杉「半裸って…今日はまだ脱いでないだろう?」

流子「けっ。どうせすぐ脱ぎだすんだろ」

美木杉「……脱いでほしいの?」

流子「っんな訳あるか!」

美木杉「その前に、僕も君に一つ聞きたいことがあるんだが…」
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70: 2014/06/08(日) 13:07:52 ID:q4Mu034M

流子「あんだよ」

美木杉「…どうして僕の部屋の段ボールを漁っているのかな?」

流子「決まってんだろ。父さんの情報探してんだ」

美木杉「君の目標は、すでに達成されていたと思うんだがねぇ」

流子「仇は討った。…でも、まだわからないことがある。どうしてNBなんてふざけた名前なのか、どうして手足じゃなく胸とヘソと尻を丸出しにしなきゃならなかったのか…」

美木杉「…そればっかりは、僕にもわからないねぇ。僕は繊維の開発には関わっていたけど、神衣に関しては知らないことが多い…」

流子「その言い訳は聞き飽きた」

美木杉「残念だがそれが事実だ」

流子「知らないから話せねぇっつーんなら、知ってることを全部教えてもらおうじゃねぇか」

美木杉「教えられる範囲ならいいだろう。…何が知りたい?」

71: 2014/06/08(日) 13:08:37 ID:q4Mu034M

流子「じゃぁまず一つ。…父さんは、お前から見てどんな人だった?」

美木杉「……流子くん、それって」

流子「悪口でも何でもいいんだよ。さっさと答えろ」

美木杉「…前にも言ったが、たいした研究者だった。発想、技術、そして地道な実験を正確に精密に行える几帳面さ。どれをとっても右に出る者は居なかった」

流子「……」

美木杉「口数も少なかったし、常に研究に没頭していたからね。…僕にも、そういうことしかわからない」

流子「…そうか」

美木杉「…ああ、そういや、仕事以外のことも話していた。君のことを少し、ね」

流子「父さんが?」

美木杉「なんの前置きも脈絡も無く、『…そういや、娘がな。…かけっこで、一等になったんだ』って呟いてね」

美木杉「にやっと笑って、その話はそれっきりさ。今でもはっきり思い出せるよ…驚きすぎて誰も何も言えなかったけど…」

美木杉「このくらいしか話せないんだけど…いいかな?」

流子「…うん」

流子「……」

72: 2014/06/08(日) 13:09:39 ID:q4Mu034M

流子「…次の質問に移らせてもらう」

美木杉「…え、まだあるの?引っ越し準備で忙しいんだけど」

流子「…お前、一体何のために戦ってたんだ?」

美木杉「決まってるだろう。人類の未来のため、さ」

流子「そんな御大層な理由で戦うような奴だったのかい?」

美木杉「そうだよ。僕たちヌーディスト・ビーチはそのために戦っていた…」

流子「てっきり、他にもなんか理由があると思ってたよ。重役なのに単身スパイしてるし」

美木杉「まぁね…いくらスプレンディッド・ネイキッド・オフィサーでも、本部からの指令があっちゃぁしょうがないからね…」

流子「だったら、NBってのも目茶苦茶な組織だなぁ…」

美木杉「…あー、どういう意味かな?」

流子「単刀直入に言わせてもらおう。…戦いっぷりを見る限り、美木杉、お前は相当弱い!二つ星の連中とどっこいどっこいってとこだ。変Oモヒカンの方がよっっぽど強かった!」

美木杉「あー…だから何かな?」

73: 2014/06/08(日) 13:10:29 ID:q4Mu034M

流子「…そんな奴が、敵の本拠地である本能字学園に単身で潜り込むなんざぁ、ほとんど自殺行為じゃねーか。工作もバレバレだったらしいしなぁ」

美木杉「あまり強すぎても、それはそれで警戒されてしまうからねぇ…僕は変装すれば目立たないし、ご覧のとおり何を考えているのかわからないからうってつけだったって訳だ」

流子「…皐月が泳がせてくれてたからよかったものの、そうじゃなかったらどうする気だったんだよ」

美木杉「そしたら、本部から別の人員が補充されるだけさ」

流子「…そしたら、私の担任がお前じゃなかったっつー可能性もあった訳だ」

美木杉「そりゃもう、大いにあったよ。でもまぁ、僕が最初で最後の潜入員だったからねぇ。『前任の教員が生徒会に処刑されてた』とかいう事はないから安心したまえ」

流子「…想像はしていたが、やっぱりお前の立ち位置、危なかったんだな」

美木杉「いやぁ内心ひやひやしてたよ…」スルッ

流子「…なぜネクタイを外す」

美木杉「人類の未来のためなら、多少の犠牲は仕方がない…それが、例え自分自身だったとしてもね…」スルスルスル

流子「…服脱いでごまかしてんじゃねぇよ」

美木杉「真面目な話をしようとすると…なぜか脱ぎたくなるんだなぁこれが…」

流子「本心を隠してる分、身体の露出を増やしたくなる。…そういうことか?」

美木杉「……流子くん…」

74: 2014/06/08(日) 13:11:13 ID:q4Mu034M

美木杉「それは考え過ぎじゃないかな。僕は脱ぎたくて脱いでいる」

流子「そうか。やっぱりただの変Oだったか」


流子「…もう一つ聞きたいことがある」

美木杉「どうぞ」

流子「この服は一体何なんだ!」

美木杉「そんなに気になることかい流子くん?」

流子「服が無いのならまだしも、あるんなら着てやれよ。服が可哀想だろうが」

美木杉「……そうだな、着ようか」

流子「えっ」

75: 2014/06/08(日) 13:11:53 ID:q4Mu034M

美木杉「どうした流子くん。着て欲しくないのかい?裸の僕を見ていたいとか?」チャキッ

流子「…寝言は寝て言え」

美木杉「……僕のブリリアントな乳Oにハサミを突き付けるのは止めたまえ…!」

流子「てっきり詭弁を並べ立てて裸を正当化するものかと思っていたが…どういう風の吹き回しだ!」

美木杉「おいおいなんて言い草だぁ。僕だって、脱ぎたい時もあれば着たい時だってある。それに、戦いが終わればヌーディストも卒業だ。着ようとは思っていたんだよ。…今なら、袖を通せる気がするんだ…」フルフル

流子「なんだって『服を着る』ことに対してそんなに抵抗があるんだよお前は…」

76: 2014/06/08(日) 13:12:32 ID:q4Mu034M

美木杉「…いやぁ…くたびれたシャツ以外の服を着たのは久しぶりだよ…」

流子「…つまり、今まで教師のカッコと裸だけで過ごしてきたってことか」

美木杉「さすがに、冬場はきつかったよ…。ヌーディストも楽じゃない…」

美木杉「っていうか、よく考えたらこの服秋服なんだよね。この時期には暑すぎるくらいさ。すごい脱ぎたいんだけど」

流子「脱ぐなよ!?…それに、まぁまぁ似合ってるじゃねーか。もっといろいろ着りゃあいいのに」

美木杉「元々服を『着る』という行為があまり好きじゃないからね…」

流子「お前そのうち逮捕されるぞ…。…しっかし、だったら尚更、なんで服なんか買ってんだよ」

美木杉「いいや、買ったのは僕じゃないよ」

流子「……ま、まさか母親とか…?」

美木杉「フィアンセだよ。僕のフィッアーンセが選んでくれたんだぁこれはプレゼントなんだよ流子くん」

流子「…美木杉お前、見栄張るにしたって彼女くらいにしとけよ…婚約者って…」

美木杉「おや、信じていないようだねぇ…」

流子「お前が誰かと結婚したら信じてやるよ」

77: 2014/06/08(日) 13:13:52 ID:q4Mu034M

美木杉「…残念だがそれは無理だ……彼女は行ってしまったんだよ。僕の手の届かない遠くへ…」

流子「逃げられてんじゃねーか!…まぁそれ以前に、どうせ嘘だろうけどな」

美木杉「決めつけるのはよくないよ流子くん!」

流子「…最後に、もう一つ質問がある」

美木杉「…なんだい?」

流子「……ヌーディスト・ビーチって名前を考えたのはどいつだ」

美木杉「…僕だ!!」

流子「やっぱりな!そうだと思った!」

美木杉「というか、それを聞いて一体どうするんだい流子くん」

流子「よかった…これで父さんだったら、両親とも変Oになるとこだった…よかった…!」

美木杉「そんなに喜ぶことなのかい流子くん」

流子「ありがとう美木杉…これですっきりした!変Oはお前とモヒカンだけだった!」

美木杉「なぜだろうお礼を言われているのにちっとも嬉しくない」

流子「って、もうこんな時間じゃねーか!遅れると皐月にどやされるんだよ…。じゃーな美木杉!」扉ぱたんっ

美木杉「あー、気を付けて帰りなよー…」

78: 2014/06/08(日) 13:20:50 ID:q4Mu034M

美木杉「…本当なんだけどな……」


―鬼龍院邸-

皐月「――遅いぞ流子!どこに行っていた!」

流子「んなもん私の勝手だろ!」

皐月「…まぁいい。今日は苺のショートケーキだ…心して頂けっ!」

流子「おお・・・なんか高級っぽい感じがする…!」

皐月「普通のケーキだがな」

流子「マコにも持ってってやりてーなぁ…。なぁ姉さん、半分タッパーで持って帰っていいかな?」

皐月「案ずるな。ちゃんと満艦飾一家の分も箱で用意してある」

流子「さすが鬼龍院皐月…抜かりはないということか…」

皐月「…ではご褒美のケーキのために、今日も頑張って覚えろ」プリント どさっ

流子「…へーい」

79: 2014/06/08(日) 13:21:31 ID:q4Mu034M

皐月「その前に前回の復習だな」プリント どさっ!

流子「…姉さん、なんで勉強会なんてする必要があるんだ…?」

皐月「ふん。仮に就職するにしても、英語や一般の教養は生活するうえで必要だからな」

流子「へいへい…」

皐月「はいは一回」

流子「はーい」

皐月「伸ばすな!」

流子「――るっせぇな!偉そうなんだよいちいち!」

皐月「ふっ…お姉ちゃんだからな!」

流子「姉貴面してんじゃねぇー!!」

80: 2014/06/08(日) 13:22:11 ID:q4Mu034M

―スラム街―

流子「…遅くなっちまった。…皐月のやろー、できるまで帰さないとか言い出しやがって、ったく…」

流子「…ん?あそこの飲み屋……」

黄長瀬「……」

美木杉「……珍しいじゃないか、紬。君から飲みに誘うなんて」

流子(…なんだ?なんか、緊迫した雰囲気みたいに思えるが…)

黄長瀬「…二つ、良いことを教えてやろう。一つ、誘っといてあれだが俺はあまり金を持ってない。二つ、ということで割り勘で頼む」

美木杉「年下からは、たからないよ…」

流子(……盗み聞きなんて、趣味じゃねーけど…でも、あいつら、まだ何か隠してる気がするんだよなぁ…)こそこそっ

黄長瀬「……お前、他の服は着ないのか」

美木杉「同じのを何枚も持ってるんだ。ちゃんと洗ってるよ…」

黄長瀬「…そうか、ならいい」

流子(…なんだこのやりとり)

81: 2014/06/08(日) 13:23:00 ID:q4Mu034M

黄長瀬「」煙草 フゥー・・・

黄長瀬「…これから、どうする気なんだ?」

美木杉「研究者として働くのは難しそうだからねぇ…。どこかで教鞭でも取るか、それともストリップバーでバイトでもするか…」

黄長瀬「…美木杉」

美木杉「……わかってるよ。言いたいのは、絹江さんのことだろう?」

流子(きぬえさんって…確か、モヒカンの姉貴で、生命繊維に殺されたっていう…)

黄長瀬「…美木杉。まさかお前、まだ姉貴のこと」

美木杉「おいおい、君ほどじゃぁないよ、紬。ただ…」

美木杉「…今でも、ふと、隣にいるように感じる時があるんだよ」

黄長瀬「……そうか」

流子(…?…こ、このやりとり…。ま、まさかな…)

82: 2014/06/08(日) 13:23:41 ID:q4Mu034M

美木杉「ふっ…。僕が絹江さんと婚約したころは、あんなに」

――どんがらがっしゃぁーんっ!

黄長瀬「何者だ!」ジャキッ

しーん…

美木杉「……誰も居ないみたいだけど」

黄長瀬「一瞬だが、気配はあった。逃げられたか…?」

83: 2014/06/08(日) 13:24:27 ID:q4Mu034M

流子(……。お、驚いた…。まさかあの露出狂と婚約する人間がこの地球上に居たなんて…)

――『驚きすぎだ流子』

流子「うっせ――」服ぐいっ

流子「……」

流子「…気のせい、か…」

流子「…そういやお前は、もうここには居なかったな。鮮血…」


マコ「あっ、流子ちゃーん!」

流子「お、マコ!それに、又郎にガッツも」

又郎「ガッツの散歩してたんだよ、流子の姉御!」

ガッツ「ガッツガッツゥ!」

マコ「…あれ?流子ちゃん、その潰れた箱なぁに?」

流子「えっ、――あー!…ケーキ潰しちまったぁ…」

84: 2014/06/08(日) 13:25:18 ID:q4Mu034M

翌日:美木杉の部屋

流子「……」

美木杉「……ええっと…何の用かな流子くん」

流子「…聞きたいことがある」

美木杉「昨日もそれ言ってたよねぇ」

流子「お前は服を脱ぎたいのか、着たくないのか、どっちだ?」

美木杉「…質問の意味が、よくわからないなぁ」

流子「嘘つけ!わかってるだろ」

美木杉「……ふっ」ファサッ!

流子「だから、脱いでごまかすなっちゅーに!」

美木杉「その質問に対する答えは…。強いて言えば、両方、かな…」スルスル

美木杉「脱いで自分の裸を人に見せたいし、着ることによって裸よりもオシャレになる服はそうそうないからねェ僕の場合は!」

流子「うっわ何て野郎だ!――って、だぁからそうじゃなくてだなぁ、」

85: 2014/06/08(日) 13:25:52 ID:q4Mu034M

美木杉「そうじゃなくて…どうなの?」

流子「うっ…!え、えっと…その」

美木杉「…?」すすすっ

流子「…その恰好のまま近づいてくんじゃねぇ刻むぞ」チャキッ

美木杉「おお怖…」

86: 2014/06/08(日) 13:27:03 ID:q4Mu034M

流子「…ええーっと…その、だからだなぁ」

美木杉「…告白?」

流子「違ぇよ!!」

美木杉「じゃぁ何?」

流子「…………」

美木杉「………」

流子「…ああーもう!まどろっこしいのは止めだ!――おら美木杉ぃ!」

美木杉「なんだね?」

流子「お前はいつから露出狂なんだ!」

美木杉「随分と思い切った質問だねぇ流子くん」

流子「そして、露出狂になった理由は何だ!?」

美木杉「…それは、話せば長くなる」

流子「…構わねぇさ。全部聞いてやる」

美木杉「……わかった。すべてを話そう…」

87: 2014/06/08(日) 13:27:43 ID:q4Mu034M

美木杉「―――えー、今から約一万二千年前、地球に到達した原初生命繊維は人類の進化を促し」

流子「どこまでさかのぼる気だてめぇは!!?」

美木杉「あー、どうせなら人類誕生からベルリンの壁崩壊までをおさらいしてあげようかと思ってねぇ」

流子「わざわざ先公モードになってたからおかしいと思ったんだよ!お前自分のこと話す気ねぇだろ!」

美木杉「…僕のことが知りたかったのかい?流子くん…じゃぁ教えてあげよう、君の身体にn」ビリッ

流子「よしわかった。そんなに逝きたいんなら逝かせてやるよ」ハサミ ヒュンヒュン

美木杉「…字が間違ってるよ、流子くん。それだと行きつく先は三途の川だ」

流子「間違ってるのはあんたの常識の方だぞ聖職者」

美木杉「もう教師は辞めてるよ」

流子「そういやそうだった」

88: 2014/06/08(日) 13:28:18 ID:q4Mu034M

流子「……」

美木杉「……」

美木杉「…えーと、結局何がしたいんだね君は」

流子「…気になるんだよ」

美木杉「僕のことが?」

流子「その服。ちゃんと着てやらねーと可哀想だろ」

美木杉「?昨日、着てたじゃないか」

流子「お前はその服をまだ着てやってない。着られてるだけだ」

美木杉「…ええーっと…?」

流子「服を着てる時、みょーに心を閉ざしてるんだよお前は…。取って食われるわけじゃないんだ、もっと安心して素肌を任せりゃいいんだよ」

美木杉「…それはきっと、僕が美しすぎるからさ…!裸がベストの僕にとってはね、服は異物でしかないんだよ…」

流子「いーや違うね。私にゃわかるんだよ。お前が服を拒んでる理由はそうじゃない。お前は服を警戒しすぎてる」

美木杉「…君には関係ないだろう流子くん」

89: 2014/06/08(日) 13:29:08 ID:q4Mu034M

流子「ある」

美木杉「…ほう」

流子「私は服でもあり、人でもあり、どっちつかずの存在だぁ。――同じ『服』が着られもせずにほつれていくのを見るのは忍びないんでねぇ」

美木杉「いつから服に感情移入するようになったんだい?」

流子「あんたが鮮血と引きあわせてくれた時からさ」

美木杉「……この服は鮮血くんとは違うよ。ただの服だ」

流子「あんたにとってはただの服じゃないんだろ?」

美木杉「…なんか、流子くん。キミ急に鋭くなってない?」

流子「皐月の勉強会のおかげかもな」

美木杉「さすが皐月お嬢様だ。人を伸ばすのもお上手」

90: 2014/06/08(日) 13:29:43 ID:q4Mu034M

流子「本当なんだろ。例の、婚約者の話」

美木杉「あれ?信じてくれてたんだ」

流子「…いっっつも、自分のことでも、他人事みたいな言い方しやがって…」

美木杉「それもスパイのたしなみだよ」

流子「もう戦いは終わったろうが。…いつまで潜入してる気なんだよ…」

美木杉「…?流子くん、…もしかして昨日盗み聞きしてたのって」

流子「……帰る」フイッ

美木杉「あ、流子く」

扉 パタンッ

91: 2014/06/08(日) 13:30:35 ID:q4Mu034M

―鬼龍院邸―

皐月「――今度は早すぎるぞ流子!時間通りに来れないのか!」

流子「姉さん、ちょっと相談があるんだが…」

皐月「…ほう、相談、か…。言ってみろ」

流子「なんかさ、その、生命繊維のごたごたのせいで、『服が着れない病』になった人が居るとするだろ?」

皐月「…流子の『制服着れない病』なら覚えているが」

流子「なんで知ってんだてめぇ!?」

皐月「あれだけ目立っていたお前があれだけ休めば、普通は原因を調べるだろう。犬牟田に満艦飾マコの会話を盗聴してもらって、情報を入手したんだ」

流子「…その話は後でケリつける。…あの、あれだ。こ、婚約者?を生命繊維のごたごたで失った人が居たとしてだ」

皐月「ああ、美木杉さんか」

流子「なんで知ってんだてめぇは!?…私だけか?知らなかったのは私だけか!?」

皐月「…落ち着け。犬牟田に美木杉さんの素性を洗ってもらっているうちに、同棲していた女性が居たことがわかってな。さらに調べていった結果、その女性がかなり不自然な亡くなり方をしていたのでな、そういうことかなぁ、と」

92: 2014/06/08(日) 13:31:25 ID:q4Mu034M

流子「……まぁ、知ってるんなら話が早い」

皐月「『服が着れない病』なのか、美木杉さんは」

流子「わかんねー。ただの変Oなのかもしれないけど…」

皐月「確かに、美木杉さんはあまりお洒落をしていないな…。しかし、服が『着られない』という訳ではないのだろう?」

流子「うーん、確かにそうなんだけどさ…『着こなせてない』というより、怖がってるような感じもあるような無いような…」

皐月「…よく見ているのだな」

流子「なんか、今まで単に変Oだと思ってた分、理由があったのかと思うとつい気になっちまって…お節介だとは思うんだけどさ」

皐月「流子は、服を着れない辛さも、着てもらえない服の辛さも、親しい誰かを失う辛さも、知っているからな…余計に感情移入してしまうのかもしれないが…」

流子「…?」

皐月「これは美木杉さんの問題だ。流子は関わらないほうがいい」

流子「…そうだよな」

皐月「美木杉さんと、その婚約者との間に何があったのかは知らないし、鬼龍院の一族として、私にも責任はある。何かしてやりたいとは思うが…」

93: 2014/06/08(日) 13:32:29 ID:q4Mu034M

皐月「それでも、変Oは変Oだ。教え子の前で服を脱ぎ、意味もなく裸を見せつける教師は、常識的に考えて危険だ…!」

流子「え、ちょっと姉さん」

皐月「いや、美木杉さんならまだ、保護者の立場を守ってくれているからいいものの…!他の露出狂にまで『理由があるのかも~』とかってホイホイくっ付いて行くんじゃないぞ流子!」

流子「行かねーよ!!何考えてんだ!」

皐月「今の言い方だとそういう事があってもおかしくないかと思ってな…」ブルッ

流子「ある訳ねーだろ…!!」

皐月「まぁ、いづれにせよ美木杉さんの出発は明日だ…。頼むから一緒に行きたいとか言い出さないでくれ」

流子「言わねーよだから何考えてんだよ皐月」

94: 2014/06/08(日) 13:33:56 ID:q4Mu034M

皐月「…いや、その、お前たち二人が実は恋仲だとかいう噂を聞いてだな」

流子「誰だよそれ言ったの!?」

皐月「…裸の付き合いだと聞いて…」

流子「…姉さん、安心してくれ。私が素肌を預けた相手は、(羅暁と針目のアレを除けば)鮮血だけだ」

皐月「そうか…」

皐月「…流子。わかっているとは思うが、人と服とは結婚できないのだz」

流子「――その話題しつけぇよっ!!!」

95: 2014/06/08(日) 13:35:50 ID:q4Mu034M
翌日

流子「…お、まだ居たか」

美木杉「ちょうど、出発するところだよ」

流子「殺風景になったな、この部屋…」

美木杉「で、あんまり時間もないのだけれど…今日は何の用?」

流子「これ、餞別だ」

美木杉「……これって…」

流子「ああ、防虫剤」

美木杉「……」

流子「無臭タイプだ。服が長持ちする」

美木杉「…え、何で?」

流子「あの服、いつかは着こなしてやれよ。それまで、ダメにならないようにそれで守っとけ」

美木杉「…あー、ありがとう流子くん。大事にするよ」

流子「…じゃぁ、元気でな。美木杉」

美木杉「…君もね、纏君」

96: 2014/06/08(日) 13:37:52 ID:q4Mu034M

美木杉「……服と人とは敵じゃない、ねぇ…。あなたが否定した仮説を、あの子は実証しようとしてくれてますよ、纏博士…」

美木杉「僕も、それに応えなきゃならないんだろうね…」

黄長瀬「…飛行機の中くらい、静かにしてくれ美木杉」

美木杉「あーでも脱ぎたいよ紬…超脱ぎたい」

黄長瀬「止めろよ!?」

美木杉「冗談だよ…。紬、静かにしないと。大きな声を出すと迷惑だろう?」

黄長瀬「お前が言うと冗談に聞こえないんだよ…!」

美木杉「せっかく新しく買った服なのに…着こなせないねぇ」

黄長瀬「…充分だろ。似合ってるよ」

美木杉「………紬…」

黄長瀬「…近い」

美木杉「…機嫌が悪いのかい?」

黄長瀬「時差があるんだ寝させろ…!」

美木杉「…ああ、ニコチンが切れてイライラしてるのか。ガム噛む?」

黄長瀬「…もらおうか」

97: 2014/06/08(日) 13:38:36 ID:q4Mu034M

美木杉「……今年中に」

黄長瀬「ん?」

美木杉「禁煙と服を着こなすのと…両方達成しようと思うんだが…」

黄長瀬「……一緒に禁煙しろと?」

美木杉「今の時代喫煙者に厳しいからね…。喫煙席に押し込められてちゃかっこいいも悪いもないじゃない」

黄長瀬「……二つ、良いことを教えてやろう」

美木杉「一つ、俺は煙草を吸わないと禁断症状が出る。二つ、俺は(睡眠の)邪魔をされるのが嫌いだ」

黄長瀬「…わかってるなら聞くなよ」

美木杉「禁煙した方がいいよ紬。老けるの早くなるんだって」

黄長瀬「知るか」

美木杉「……ねぇ一緒に禁煙しようよー」ファサッ

黄長瀬「……っ!まずお前は脱ぐのを止めろと何度言ったら」

キャビンアテンダント「…あ、あの、お客様」

美木杉・黄長瀬「「!」」

98: 2014/06/08(日) 13:39:15 ID:q4Mu034M

キャビンアテンダント「……他のお客様のご迷惑になりますので、できればもう少し小さな声でお願いします」

黄長瀬「すまん」

美木杉「すまない…気を付けるよ」スルッ

黄長瀬「おい…服も着ろ…!」

キャビンアテンダント「…あの、すみませんお客様」

黄長瀬「ほら困ってるだろ」

キャビンアテンダント「…到着後のご予定に空きはございますか?」

美木杉「…すっかすかです!」

黄長瀬「嘘つけやること一杯あるだろ!」

キャビンアテンダント「では…」

美木杉「○○ホテルに宿泊する予定です…明日の××時なんてどうです?」

キャビンアテンダント「その時間はちょっと…△△時では?」

美木杉「…いいね!」

黄長瀬「俺のセリフをこんな場面で使うな!」

99: 2014/06/08(日) 13:39:45 ID:q4Mu034M

美木杉「いやぁこんなに早く素敵な出会いがあるとは思わなかったよ。念のため手鏡を持ってきておいてよかった」

黄長瀬「…お前姉貴が隣にいる気がしてるんじゃなかったのか」

美木杉「寂しさを紛らわしてるだけだよ紬。どうせ一夜限りのあとくされの無い関係だぁ向こうだってきっとそう思ってる」

黄長瀬「最低だ…!!」   



引用: 美木杉愛九郎「どうして光るんだろうね?」