1: 2009/12/30(水) 18:06:40.20 ID:hLpmMUo+O
金糸雀「早くこの排水口の汚れを綺麗にするかしら」

3: 2009/12/30(水) 18:09:54.02 ID:hLpmMUo+O
みつ「まってまって、カナ。ほら、排水口の汚れにはこれを使うのよ」

金糸雀「お酢?と……この粉は何かしら?」

みつ「これは重曹よ。これを排水口に振りかけて更にお酢をかけると……」

金糸雀「あ!しゅわしゅわ泡が立ったかしら!」

みつ「この泡が汚れを落としやすくしてくれるのよ」

金糸雀「流石みっちゃんは物知りかしら!」

5: 2009/12/30(水) 18:17:39.34 ID:hLpmMUo+O
クリスマスも過ぎ、大晦日が間近に迫る12月末日。
金糸雀と草笛みつは来るべき新年に備え、大掃除に勤しんでいた。

みつ「よし、台所も綺麗になったわ。これで、今年の大掃除は無事終了ね」

金糸雀「すごいかしら~。家中がピカピカかしら♪」

みつ「カナが一生懸命手伝ってくれたおかげよ。今年はいつもの年より大分早く終わらせる事が出来たし。
ありがとね、カナ」

金糸雀「いつもお世話になってるみっちゃんの為なら、これくらい当然かしら」

みつ「ああぁん、なんて良い子なのー!カナー!」ガバァ

金糸雀「み、みっちゃん!ほっぺが熱いかしらー!」

6: 2009/12/30(水) 18:19:42.52 ID:hLpmMUo+O
クリスマスも過ぎ、大晦日が間近に迫る12月某日。
金糸雀と草笛みつは来るべき新年に備え、大掃除に勤しんでいた。

みつ「よし、台所も綺麗になったわ。これで、今年の大掃除は無事終了ね」

金糸雀「すごいかしら~。家中がピカピカかしら♪」

みつ「カナが一生懸命手伝ってくれたおかげよ。今年はいつもの年より大分早く終わらせる事が出来たし。
ありがとね、カナ」

金糸雀「いつもお世話になってるみっちゃんの為なら、これくらい当然かしら」

みつ「ああぁん、なんて良い子なのー!カナー!」ガバァ

金糸雀「み、みっちゃん!ほっぺが熱いかしらー!」

8: 2009/12/30(水) 18:48:15.56 ID:hLpmMUo+O
スキンシップも一段落つき、金糸雀とみつは居間でコタツを挟んでくつろいでいた。

みつ「飾りにお餅も用意したし。おせちも注文済みだし。これでお正月の準備は万端ネ」

金糸雀「おせちってあの綺麗なお弁当の事ね!カナ、あれ食べるのすっごく楽しみかしらー」

みつ「お弁当とはちょっと違うけど……でも、今年はカナの為に奮発してかなり良いおせち注文したから、
きっとすごく美味しいわよ」

金糸雀「カナ、日本のお正月って初めてだからワクワクするかしら♪」

9: 2009/12/30(水) 19:11:37.68 ID:hLpmMUo+O
みつ「あっいけない、年賀状を投函するの忘れる所だったわ。仕事関係の人の分は元旦に届く様に早めに出

したけど、友達とかの分はまだ出してないのよね。カナは年賀状もう書けた?」

金糸雀「書けてるわ。ちょっと待ってて」

そう言うと、金糸雀は部屋へ駆けて行き、二枚の葉書をもって戻ってきた。
葉書には、一枚は桜田家の真紅達に。もう一枚には、結菱家の蒼星石に当てた新年の挨拶と干支の絵が、
拙いながらも丁寧に書かれている。

12: 2009/12/30(水) 19:40:17.58 ID:hLpmMUo+O
みつ「うん、良く書けてるわね」

金糸雀「いっつも会ってる人にお正月に手紙で挨拶するなんて、日本人って面白いかしら」

みつ「ふふ、そうね。年賀状は普段お世話になってる人に感謝の気持ちを込めて出すんだけど、それ以外
に、遠くに離れて暮らしていてしばらく疎遠になってる家族や友達に自分の元気を伝える物でもあるのよ
ね」

金糸雀「カナ、お父様にも出したかったかしら。みっちゃんは、みっちゃんのお父さんやお母さんに書い
たのかしら?」

13: 2009/12/30(水) 19:51:23.07 ID:hLpmMUo+O
みつ「う、うん一応ね。簡単な挨拶だけの物だけど……」

金糸雀「……ふーん?」

少し言葉につまりながら答えるみつの顔を金糸雀は不思議そうに見つめる。

みつ「あっ、もうこんな時間。そろそろ晩御飯の準備をしなくちゃね。年賀状を出すのは明日の朝、仕事に
行くときにするわ。カナのこの年賀状も一緒に出しておくわね」

金糸雀「お願いするかしら」

17: 2009/12/30(水) 20:15:25.21 ID:hLpmMUo+O
みつ「それじゃあカナ、行ってきます!」

金糸雀「行ってらっしゃい、みっちゃん」

翌朝、金糸雀と挨拶を交わし、みつは家を出る。バックの中に、輪ゴムでまとめた数枚の年賀状を納めて。

金糸雀は閉まった玄関のドアを見つめる。

金糸雀「……みっちゃん、今朝も元気そうだったかしら。昨夜、年賀状の話をした時に少し様子が変な気
がしたから心配だったけど……きっとカナの気にしすぎよね」

21: 2009/12/30(水) 20:40:20.96 ID:hLpmMUo+O
みつ「たしかこの辺りに……あったあった。郵便ポスト」

通勤中、郵便ポストを見つけたみつは、そちらに駆け寄り、鞄の中の年賀葉書の束を取り出し、ポストに
入れる。

みつ「よし、無事投函完了」

ちょっとした一仕事を終えたように満足気にうなずく。しかし、一間置いて、その顔は少し曇り、何処を
見るとも無くうつ向いた。
みつ「……お父さん」

ぽつりと呟いたその声は、吹き行く寒風に飲み込まれて行った。

25: 2009/12/30(水) 21:43:04.84 ID:hLpmMUo+O
金糸雀「今日はカナの大勝利だったかしら。革命を起こすタイミングがカギだったかしら。自慢気に革命
をした真紅が革命返しを食らってパニクってた時は笑わせてもらったかしら」

夕方。今日も桜田家に遊びに行っていた金糸雀は、自宅に戻り、昼間に真紅達とやっていたゲームの事を
思いだし悦に入っていた。
金糸雀「みっちゃん、もうすぐ帰って来るわね」

ふと、窓の外を覗きみつの事を想う。外は既に暗闇に包まれている。

金糸雀「そう言えばみっちゃんのご両親ってどんな人なのかしら。みっちゃんからは一度も聞いた事無い
けど、みっちゃんのご両親なんだからきっと優しくて素敵な人よね」

そんな事を呟いていると、玄関からのドアが開く音が聞こえた。

27: 2009/12/30(水) 22:06:52.90 ID:hLpmMUo+O
みつ「カナー、たっだいまー!」

金糸雀「あっ、お帰りなさいみっちゃん!」

みつ「見てみてカナ~、これ買ってきちゃった~」

みつは玄関に入ると、手に持った買い物袋からあるものを取り出す。

金糸雀「あー、鏡餅かしら」

みつ「そう、良く知ってるわねカナ。私としたことがこんな大事な物を忘れるなんて。やっぱりこれが無
くっちゃお正月は始まらないわよね~。早速飾らなくちゃ」

金糸雀「カナも手伝うかしら」

31: 2009/12/30(水) 22:41:51.81 ID:hLpmMUo+O
みつ「あとはみかんを乗せて……完成よ。これで本当にお正月の準備は万端ね」

部屋の片隅の小さなタンスの上に、綺麗に飾りつけれた鏡餅は置かれた。
隣には来年の干支である寅の置物が飾られている。

金糸雀「ねぇみっちゃん知ってる?」

みつ「なに?」

金糸雀「虎って中国じゃ子供を護る神様なんですって」

みつ「へぇ、そうなの?」
金糸雀「虎のお母さんは子供をとても大切に育てるそうかしら。だから、中国じゃ虎は子供に優しい神様
って言われてるかしら」


33: 2009/12/30(水) 23:14:18.66 ID:hLpmMUo+O
みつ「そうなんだ。カナ、ずいぶん詳しいのね」

金糸雀「エヘヘ、じ、実はこの前テレビで言ってたかしら。……ねぇ、みっちゃん。みっちゃんのご両親
てどんな人かしら?」

みつ「え?」

金糸雀「みっちゃんのお父さんやお母さんも優しい人かしら?」

みつ「う~ん、エーッと~」

金糸雀「?」

34: 2009/12/30(水) 23:29:41.21 ID:hLpmMUo+O
みつ「そ、そうね。お母さんは割りと優しい人かな」

金糸雀「やっぱり!みっちゃんと同じかしら」

みつ「でも、お父さんはとても厳格で恐い人よ。怒るとすぐに手が飛んでくるし。小さい頃からちょっと
した事で良く怒られてたなぁ」

金糸雀「へぇ~、なんだか意外かしら」

みつ「そろそろご飯にしよっか!お腹空いたでしょ、カナ」

金糸雀「うん」

みつ「明日は仕事納めだし、最後の一仕事を乗り切る為にしっかり栄養取らないとね!年末年始はい~っ
ぱい遊ぼうね、カナ」

36: 2009/12/30(水) 23:56:08.68 ID:hLpmMUo+O
大晦日

みつ「さあ、お蕎麦ができたわよカナ」

金糸雀「わーい、年越しそばかしら~♪」

みつ「やっぱり日本人の大晦日は紅白見ながら年越しそばよねー」

金糸雀「明日は真紅達から年賀状が来るかもかしら。楽しみかしら」

38: 2009/12/30(水) 23:58:02.47 ID:hLpmMUo+O
みつ「ふふっカナにとっては年賀状を贈るのも貰うのも初めてだもんね」

金糸雀「うん!みっちゃんも年賀状来るの楽しみかしら?」

みつ「そうねー。やっぱり友達とかから年賀状貰うと嬉しいし楽しみよね」

金糸雀「お父さんとお母さんからも来るかしら?」

42: 2009/12/31(木) 00:19:52.23 ID:x4wi15aNO
みつ「まあ、一応ね」

金糸雀「みっちゃんのご両親からの年賀状も楽しみかしら。カナにも見せてね」

みつ「別に良いけど、対して面白くも無いわよ?いつも簡単な挨拶と近況報告だけしか書いて無いし。
あと、たまには帰って来なさいとか」

金糸雀「そう言えば、お正月は実家に帰るものだってテレビで言ってたけど、みっちゃんは帰らなくても
良いの?」

みつ「わ、私!?う~ん、そうねー。帰らなくても良いと言うか、帰れないと言うか、帰りたくないと言う
か……」

44: 2009/12/31(木) 01:02:26.52 ID:x4wi15aNO
金糸雀「帰りたくない?どうして?」

みつ「……実は私、お父さんと喧嘩してるのよね。もうずっと前から」

金糸雀「えっ!?」

みつ「私が今の仕事をする前は別のお仕事をしてたのはカナも知ってるでしょう?」

金糸雀「うん」

46: 2009/12/31(木) 01:28:10.12 ID:x4wi15aNO
みつ「でも、どうしても夢を諦め無かった私は前の仕事を辞めて夢を追いかける決意をしたの」

金糸雀「……」

みつ「でも、頭の固い父さんにはそれが許せなかったみたいでね、凄く反対されたわ。せっかく入った良
い会社を辞めて、成功する宛もない夢をるなんて何事かっ、てね。結局私は、父の反対を押しきって今の
仕事を始めたんだけど、それ以来父さんとは口も聞いていないの。お母さんは庇ってくれたんだけど、そ
れから母ともなんとなく話しづらくなって」

金糸雀「みっちゃん……ごめんなさい」

みつ「や、やだ、何で謝るの!?別にカナが謝る事なんて何も無いのよ!?」

金糸雀「でも……カナ、なんだかみっちゃんに聞いちゃいけない事聞いたみたいで……話してる時のみっ
ちゃん、なんだか凄く悲しそうで……うっ、ふぐっ」ポロポロ

47: 2009/12/31(木) 02:11:44.00 ID:x4wi15aNO
みつ「そんな……カナが気にする事無いのよ!?ほ、ほら、今は十分幸せなんだし!カナが来てくれたお陰
で毎日とっても楽しいし!」

金糸雀「でも……でもぉ……」ポロポロ

みつ「な、泣かないでぇカナ~。参ったなぁ、どうしよう~。あっ、そうだ!ちょっと早いけど……ジャ
ーン!これ見てカナ!」

金糸雀「え?」グスッ

みつ「お年玉代わりに用意した物なんだけど」

58: 2009/12/31(木) 07:33:20.44 ID:x4wi15aNO
金糸雀「着物?」

みつ「そう、振り袖よ。子供用の何だけどカナに良く似合うと思って買っちゃったの。可愛いでしょ」

金糸雀「みっちゃん」

みつ「明日はこれを着せてあげるから泣かないで。元気出して、ねっカナ」

金糸雀「うん……ありがとうみっちゃん」ニコッ

みつ「あはは、やっと笑ってくれた。それじゃあ、早くおそば食べちゃいましょ。せっかくのそばがのび
ちゃうわ」

59: 2009/12/31(木) 07:56:54.36 ID:x4wi15aNO
翌日。みつは早速、金糸雀に振り袖の着付けをしていた。

みつ「……よし、これでOKよカナ」

金糸雀「どうかしら?似合うかしら、みっちゃん」

みつ「……っ……っ」プルプル

金糸雀「みっちゃん?」

みつ「最っ高よカナ!やっぱり着物もよく似合ってるわーッ!超可愛いからーッ!!!」ガバァ

金糸雀「むぎゅう!?みっちゃん摩擦熱がぁぁぁ!」

みつ「あっやだ、襟が乱れちゃった……よし、直ったわ。そうだ、そろそろ年賀状が届いてると思うから
ちょっと見てくるわね」

60: 2009/12/31(木) 08:18:31.23 ID:x4wi15aNO
金糸雀「みっちゃん、年賀状は届いてたかしら?」

みつ「ええ、これ」

マンション一階の郵便受けから戻って来たみつの手には数枚の年賀状の束があった。

金糸雀「みっちゃん、カナのもある?カナにも年賀状届いてるかしら?」

みつ「ちょっと待ってね……これとこれね。はい」

金糸雀「うわぁ~」

みつ「良かったわねカナ」
金糸雀「うん!」

62: 2009/12/31(木) 08:35:30.16 ID:x4wi15aNO
みつから金糸雀に手渡された二枚の年賀状。一枚には、ミミズがのたくった様な文字、頑張れば、読めな
くは無い文字、お世話にも綺麗とは言えないが、それなりに頑張って書けている文字で、それぞれ個性的
な新年の挨拶が書かれていた。ハガキの片隅には、おそらく虎であろうと思われる黄色い不思議生物の絵
が描かれている。
もう一通のハガキには虎の絵がプリントされたハガキに達筆な文字で丁寧な新年の挨拶が書かれていた。

金糸雀「この絵を描いたのはきっと雛苺ね。相変わらず下手っぴな絵かしら。うふふ」ニコニコ

みつ(それにしてもちゃんと元旦に届く様に出すなんて皆しっかりしてるわねぇ。私も見習わなくちゃ)

そんな事を考えながら手元の年賀状を一枚一枚眺めていると、ある一通の年賀状で手を止めた。

64: 2009/12/31(木) 08:54:19.47 ID:x4wi15aNO
金糸雀「みっちゃん、それは?」

みつ「うん、実家からの年賀状。やっぱり、相変わらず新年の挨拶と簡単なメッセージだけだけど。まあ、
それはお互い様ね」

金糸雀「みっちゃん……」

みつ「それにしても良く似合ってるわよね~その着物。早速写真を撮らなくちゃ!明日ジュンジュンの家
にご挨拶に行く時も絶対にこれ着て行きましょうね、カナ」

金糸雀「うん……」

みつ「撮影が済んだらおせちを食べましょう。カナ、楽しみにしてたもんねー」

65: 2009/12/31(木) 09:19:27.96 ID:x4wi15aNO
正午過ぎ、撮影を終えた金糸雀とみつはこたつを挟んでおせちをつついていた。

金糸雀「おせちって綺麗でとっても美味しいかしら」

みつ「本当、美味しいわねコレ。やっぱり高いおせちは違うわね~。こんなに美味しいおせち料理、実家
意外じゃ初めて食べたわ。奮発したかいがあったわ~」

金糸雀「みっちゃんの実家のおせちって?」

みつ「実家じゃ毎年母さんがおせちを自分で作るんだけどね。ここまで華やかじゃ無くてシンプルな物何
だけど、その辺で売ってる物とは比べ物にならないくらい美味しいのよ」

金糸雀「へぇ~みっちゃんのお母さんはお料理の天才なのね。みっちゃんの料理上手はお母さん
譲りかしら」

みつ「いやぁ~私なんてまだまだだけどねぇ~」

68: 2009/12/31(木) 10:08:28.97 ID:x4wi15aNO
おせちも一通り食べ終えた頃、二人はテレビをつけて見ていた。

画面には大勢の人混みが映し出されている。

金糸雀「凄い沢山の人かしら」

みつ「ええ、初詣ね」

金糸雀「はつもうで?」

69: 2009/12/31(木) 10:25:12.02 ID:x4wi15aNO
みつ「初詣って言うのはね、年の初めに一年の感謝と願いを込めて神社の神様にお参りに行くの」

金糸雀「ふーん、でもあんなに人が居たんじゃはぐれて迷子になっちゃいそうかしら」

みつ「そうねぇ。ああいう所じゃ毎年必ず迷子って出るわよねぇ。私も小さい時に両親と初詣行って迷子
になっちゃってね。次の年からは迷子にならない様にお父さんに肩車されてたのよ」

金糸雀「へぇ~」

72: 2009/12/31(木) 10:40:17.69 ID:x4wi15aNO
みつ「そうだ、良いこと思い付いた!今日の夜、初詣で行きましょう。二人で一緒に」

金糸雀「え、でもあんなに人が大勢居るところにカナは……」

みつ「ああいう大きな有名な神社はともかく、近所の小さな神社なら元旦の夜には人もほとんど居なくな
って、カナと一緒でも目立たないと思うわ」

金糸雀「じゃあ行くかしら。カナ、みっちゃんと初詣行きたいかしら!」

みつ「よし、決まりね!」

74: 2009/12/31(木) 10:48:49.06 ID:x4wi15aNO
その日の夜

みつと金糸雀は近所の神社に赴いていた。

みつ「うぅーやっぱりこの時間は一段と冷えるわねー。でも、思った通り人もほとんど居ないし、暗いか
ら遠目から見ただけじゃカナがお人形だってばれる心配は無さそうね。カナは寒かったり、眠かったりし
ない?平気?」

金糸雀「平気かしら。みっちゃんが買ってくれたこのコートとっても暖かいし、さっきお昼寝したから眠
くも無いかしら」

みつ「そう。あっそうだカナ、これ持って」

金糸雀「お金かしら?」

76: 2009/12/31(木) 11:13:46.21 ID:x4wi15aNO
みつ「お賽銭よ。これをあの箱に入れるの。それから神様にお願い事をするのよさ、カナ。お賽銭を入れ
て。こうやって」

金糸雀「わかったかしら」

静かな神社の境内に金属と木がぶつかる音が響き渡る。
それから、金糸雀はみつに自分の真似をする様にと教えられ、柏手をならし熱心に祈りを捧げた。

77: 2009/12/31(木) 11:25:17.00 ID:x4wi15aNO
金糸雀「みっちゃんは神様にどんなお願い事したかしら?」

みつ「カナとこれからもずっと一緒に居られます様にってよ。カナは?」

金糸雀「カナも同じかしら。みっちゃんとずっと一緒に居られます様にって」

みつ「ふふ、そう」

金糸雀「それからもう一個お願いしたかしら」

みつ「もう一個?カナはよくばりさんね。それで、もう一個はどんな願い事なの?」

金糸雀「みっちゃんとお父さんが早く仲直り出来ます様にって」

みつ「えっ」

79: 2009/12/31(木) 11:35:51.93 ID:x4wi15aNO
金糸雀「みっちゃんは本当はお父さんが大好きで、仲直りしたいと思っているんでしょ?だから、お父さ
んとケンカした事を話してくれた時のみっちゃんの顔は悲しそうだったのかしら。カナには分かるかしら」

みつ「カナ……」

金糸雀「カナは姉妹達とローザミスティカをかけて闘ったりもしたわ。でも、今は真紅達と毎日の様に一
緒に居るわ。みっちゃんとお父さんもいつかきっと分かり合って仲直り出来るかしら」

みつ「……そうね。その通りだわ。ありがとう、カナ」ギュ

金糸雀「みっちゃん……」

みつ「さあ、寒いしそろそろ帰りましょっか。家で温かいおしるこ作ってあげるわ」

金糸雀「おしるこ?」

みつ「お餅が入った甘~い飲み物よ。家のお母さん直伝でとっても美味しいんだから」

金糸雀「へえー楽しみかしら」

80: 2009/12/31(木) 11:53:46.33 ID:x4wi15aNO
金糸雀「ぷはーごちそうさまかしら」

みつ「お粗末様でした」

金糸雀「おしるこってとっても甘くて、玉子焼きと同じくらい美味しかったかしら」

みつ「そう。じゃあまた作ってあげるわね」

金糸雀「やったーかしら~♪ねえ、みっちゃん」

みつ「なぁに?カナ」

金糸雀「今日はとっても楽しかったかしら。着物も素敵だったし、年賀状も嬉しかったし、おせちやおし
るこもとっても美味しかったかしら。それに、こんな夜遅くにお外にお出掛けするのも初めてで、すごく
ワクワクしたかしら」

みつ「それは良かったわ」

83: 2009/12/31(木) 12:08:47.10 ID:x4wi15aNO
金糸雀「全部、みっちゃんのおかげかしら。ありがとうみっちゃん……ふわぁあ」

みつ「あらあら。いつもはもう寝てる時間だから眠くなったのね。おしるこで暖まってお腹がふくれたか
ら余計に」

金糸雀「うん……みっちゃん……カナはみっちゃんと一緒で……とっても幸せかし……」

みつ「あ、カナ。眠るなら鞄で……」

金糸雀「……すー……すー」

みつ「もう、仕方ないわね。フフッ」

89: 2009/12/31(木) 12:29:10.62 ID:x4wi15aNO
みつは金糸雀の身体をそっと抱き上げると、金糸雀の鞄が置いてある寝室へと向かう。

みつ「カナ、お礼を言うのは私の方だわ。貴女のお陰で今日はとても楽しかった。毎日とても幸せでいら
れる」

鞄を開け、そっと金糸雀を中に入れる。

みつ「それに、とても大事な事を思い出させてくれた。初詣で迷子になって、不安で泣いている私を見つ
けて、なだめる為に優しく抱きしめ頭を撫でてくれた優しい父さんの手。私をはぐれさせない為に乗せて
くれた、広くて暖かい肩。とても厳しかったけれど、それと同じくらいいつも私に愛情を注いでくれてい
た。それを思い出せたのは全部あなたのお陰よ。ありがとう、カナ」

みつは金糸雀の寝顔を見ながら目を細める

90: 2009/12/31(木) 12:41:32.77 ID:x4wi15aNO
金糸雀「くー……くー……」

みつ「可愛い寝顔……おやすみなさい、カナ」

金糸雀の頬を一撫でし、静かに鞄を閉じると、電話機の前に向かった。

みつ「…………あ、もしもし?母さん?……うん私。ごめんこんな時間に。もう寝てた?……うん……う
ん……いや、別に大した用では無いんだけど……うん、大丈夫だよ」



「……ねえ。お父さんはまだ起きてるかな?」





   終わり

92: 2009/12/31(木) 12:45:17.26 ID:x4wi15aNO
お久しぶりだよね

93: 2009/12/31(木) 12:55:05.64 ID:x4wi15aNO
ありがとうございました。

このスレだけでも終わらせれて良かった

本当に良かった

95: 2009/12/31(木) 14:13:02.01 ID:cKLPdZud0
乙!良いお年を!

引用: 金糸雀「みっちゃん、ここの穴……すごくヌルヌルしてるかしら」