105: 2006/07/10(月) 11:27:09.02 ID:0CVhHHbG0
突然だが最近体の調子がおかしい。
昼間から突然眠くなったり、体の一部分に痛みが走ったり、
酷い時には自分が今どこに居て何をしているのか分からなくなった事もあった。

そんな様子の俺を見て朝比奈さんが心配してくれる。

「キョン君、最近調子悪そうだけど大丈夫?」

そういってお茶を出してくれた。
朝比奈さんが淹れてくれるお茶はこの部室に来る最大にして唯一の目的となりつつある。

「そうですねぇ…今更成長期という訳でも無いでしょうし、ありきたりではありますが一度病院に行かれては如何ですか?」

古泉が穏やかな笑顔でそう言う。コイツは特別に心配してくれているという訳でも無かろう。
コイツは誰に対しても、老若男女かまわずこの調子なのだという事がその様子から伺えた。

「………」

長門は…別段変わらない。
いつもと同じ席に座り、いつもと同じ表情で、いつもと同じ速度で本のページを繰る。
もし明日俺が坊主になっていても長門は何も言わなそうだ。

106: 2006/07/10(月) 11:30:45.73 ID:0CVhHHbG0

バンッ!

俺が長門を眺めていたら大きな音を立ててドアが開かれた。というより蹴られた。

「出来たわよッ!」

ハルヒが何やら黒い物体を抱えて部室に入ってきた。
どうでもいいがコイツには大人しくしているという選択肢は無いのだろうか。

「一体何が出来たというんだ」

俺が呆れ気味にそう聞くとハツラツと答える。

「衣装よ、衣装! 満を持して我がSOS団が来年に公開する映画、魔法メガネっ娘マジカルユキの衣装よ!」

…色々とツッコミ所が多すぎてどこから突っ込んでいいのか分からん。

108: 2006/07/10(月) 11:32:21.32 ID:0CVhHHbG0

「あー…ハルヒよ」

「何!? ねぇ、ユキ、ちょっとこれ着てみてくれない?」

「なんだその、魔法メガネっ娘マジカルユキとやらは」

「だから言ったでしょ、来年の文化祭で上映するの! ほら、ユキ、立ってったら」

長門が本を閉じ、立ち上がる。

「それはさっきも聞いたが、正気か?」

「もちろんよ! 普段はただの女子高生、けれどもひとたび事件が起こると眼鏡を沿道に投げて魔法少女へと変身するの!」

今年の映画もそうだったが、ハルヒの超センスは俺のような凡人には理解出来ないようだった。
その後も長門に衣装を合わせたりしながら、魔法メガネっ娘マジカルユキのあらすじを嬉々として語るハルヒではあったが、
俺はその半分も聞いちゃいなかった。


「平和ですねぇ…」

古泉がぼんやりと呟いたセリフが印象的だった。


天下泰平、世はなべてこともなし。

109: 2006/07/10(月) 11:36:09.56 ID:0CVhHHbG0



次の日。
俺が気付いた時にはハルヒの顔が目の前にあった。

「な・ななななんだお前!」

「やっと起きた? もう夕方よ?」

ハルヒが呆れ顔で俺を見る。教室の窓からは夕日が見えた。

「あー…もしかして俺は寝てたのか」

「そう。午後の授業からずっと。そんなに寝てばっかり居ると頭が腐ってヨーグルトになるわよ」

教室を見渡すと既にまばらにしか人はおらず、何人かで集まって雑談していた。
俺が寝こけていた間に他の人間は部活に行ったか帰ったのだろう。
変な体勢で寝ていたからか、体の節々が痛む。
俺の机には少しヨダレの跡があった。…ハルヒに見られただろうか。

113: 2006/07/10(月) 11:46:45.78 ID:0CVhHHbG0

「ったく…部活行こうと思ってたのに…キョン、あんたが起きないからもうすぐ下校時間じゃない」

俺の心配をよそに彼女は渋い顔をする。
しかし俺にはもう一つ気になる事があった。

「ハルヒ、つかぬ事を聞くが」

「何よ?」

「…もしかして授業が終わってからずっと俺が起きるのを待っていたのか?」

「…そうよ」

少し間をおいてハルヒが答える。

「何故だ?」

「…ッ…あんたが居ないとホームページが更新出来ないじゃないッ! ほら、つまんない事言ってないで、今からでも部活に行くわよ!」

114: 2006/07/10(月) 11:50:44.40 ID:0CVhHHbG0


―嘘だと思った。
ホームページの更新など、もう一ヶ月もしていない。それを今更急がせる理由が無い。
要するにハルヒは俺が起きるのを待ってくれていたのだ。それが少し嬉しくもあり、少し不気味でもあった。
今度は何に巻き込まれるのだろう。
いや、いかんいかん。
ハルヒが俺に優しくした後には大体不幸が待ち受けているとしても、ハルヒの極々珍しい親切心を疑ってはいけない。
そう、信じる者は救われるハズだ。
…救われるといいな。
っていうか救ってくれ。

「それにしてもキョン。あんた最近ヘンよ。いっつも眠そうだし、たまに痛そうにしてるでしょ?」

「気付いてたのか」

「真後ろに座ってるんだから、イヤでも気付くわよ。病院には行ったの?」



「あぁ、古泉にも言われたんだが…。…ぐっ…! がっ…ぐあぁぁぁッッッッ…!」

115: 2006/07/10(月) 11:52:40.14 ID:0CVhHHbG0

俺がハルヒに体の調子を説明しようとした時、右腕に壮絶な痛みが走った。
最近たまに痛みが走る事はあったが、それはせいぜい筋肉が張っているとか、寝違えたとかその程度だった。
だが、これはそういう次元ではない。まるで右腕が破裂したかのようだ。
あまりの痛みに脳髄が火花を散らし、視界が急激に赤く染まる。

突然の痛みに驚いた俺は、気付けば椅子から転げ落ちていた。拍子に机が倒れて派手な音をたてる。
その音に教室に残っていたクラスメイトが怪訝な表情でこちらを見ていた。

「がぁッ…なん…だ…ッ…これ…ッ…!」

俺は教室の床を転げ回る。だが、腕を体の下に回そうが、引っ張ろうが弾けるような痛みは一向に消えなかった。
それどころか痛みを増すばかりだ。血管が膨張し、ドクドクと脈打っているのを感じる。

「ちょっとキョン、どうしたっていうのよ!?」

ハルヒが心配そうに叫び、俺の側にかけよる。

「ハル…ヒ…ッ…俺の腕は…付いてる…か…?」

あまりの痛みに感覚が麻痺してきていた。急激な体の変化に体が知覚するのを止めたのか。
それとも既に俺の右腕はちぎれているのか。それすらも分からなかった。

116: 2006/07/10(月) 11:55:36.58 ID:0CVhHHbG0

「何言ってんの、ここにちゃんと生えてるわよッ! 一体どうしたっていうの!?」

彼女が俺の腕を取った。麻痺しているはずの右腕にハルヒの体温だけが伝わってくる。

「誰か! 先生呼んできてッ!」

ハルヒが残っていた生徒にそう叫ぶ。
彼女の声で様子を伺っていた生徒の一人が教室から弾かれたように出て行った。

「キョン、どうしたの、腕が痛いの!?」

「い……や………痛みはもう…あまり…無い………というか……感覚が……鈍…く…」

「キョン、あんた目がおかしいわよッ!? ハッキリこっちを見て! 私を見なさい、キョンッ!!」

ハルヒが俺の体を激しく揺すり、俺に向かって何かを叫んでいる。
その必氏な表情を見て、俺は朦朧とした頭でのんきにも、あの涼宮ハルヒでもこんなにも慌てる事があるんだなと考えていた。
慌てるハルヒを見たのはこれが初めてだったが、迂闊にも少し可愛いと思った。

117: 2006/07/10(月) 11:58:23.19 ID:0CVhHHbG0


…ベリッ


唐突に嫌な音がした。


教室中の時が止まった。


あれほど俺の体を揺さぶり叫んでいたハルヒも石化したかのようにその動きを止めていた。


そして俺は見た。


俺の腕が裂けたのを。


そしてその中から無数の触手が生えてくるのを。


123: 2006/07/10(月) 12:04:44.89 ID:0CVhHHbG0

「キャァァァッッッ!!!!」

クラスに残っていた女生徒の叫び声で全員が我に返った。
それまで当事者だった俺ですら考える事を止めていた。当然だ。
自分の腕が裂けてその中から触手が生えてきたら…どうしろってんだ。

「キョ…ン…」

あのハルヒですら怯えていた。
その表情から感じ取った訳ではない。
雄の狩猟本能とでもいうものが感じさせた。
このままではハルヒが逃げる。逃がしてしまう。
そう考えた時、触手は素早く動いた。

「ちょっとッ…! なんなのよこれっ!!!!」

俺が動かそうと考えた訳でもないのに触手は素早くハルヒを絡め取った。
他の女生徒達に大してもそうだ。その動きを次々と拘束していく。
真っ白なセーラー服とグロテスクな触手のコントラストが映えた。

「うわぁぁッッッ!!」

視界の端で男子生徒が教室から逃げて行くのが見えた。
しかし触手は反応しない。現金な触手だ。

125: 2006/07/10(月) 12:06:42.34 ID:0CVhHHbG0

「キョン! これどうにかしなさいよ!」

「そう言われてもな…俺がやってる訳じゃないし」

俺はと言えば、痛みも消え、妙に頭がスッキリしていた。
腕から突然触手が生えたら頭が狂うかとも思ったが、案外あっさりと俺はそれを認識していた。
人間どうしようも無くなると認めざるを得ないらしい。

「やだッ…これ…ヌルヌルして…気持ちワルイッ…!」

クラスに残っていた女生徒は多かれ少なかれ俺から生えた触手に絡め取られていたが、目の前に居たハルヒはそれが顕著だった。
ハルヒの瑞々しい、きめ細やかな肌に俺の触手が絡みつく。

「…ん?」

そこまで考えた時、俺には触手の感覚の全てがある事を認識した。
不思議な感覚だが、手が無数に分裂しているとでも言えばいいのだろうか。
女生徒一人一人の体温が触手を通して感じられた。

126: 2006/07/10(月) 12:09:25.80 ID:0CVhHHbG0

「ちょっとキョン…あんた自分の体がとんでもない事になってるってのに…ズイブン冷静じゃない」

ハルヒが恨みがましい目を俺に向ける。

「なんだかな…今回の不幸はとんでもなかったってそれだけの話だろ。モルダーもビックリだ」

「何言ってんのか…分かんない…わ…! なんでこれ…こんなにヌルヌル…してんのよ…ッ…!」

ハルヒが触手から逃れようと身をよじると、その柔らかさがダイレクトに俺に伝わってきた。

「ちょッ、ハルヒ、やめろっ」

「はぁ!? なに言ってんのよ、こんな気持ち悪いモノにずっと絡まれてろっていうの!?」

ハルヒの言う事はもっともだ。
もっともだが…ハルヒが身をよじるたび、色々な部分の女子特有の柔らかさが感じられる。
というかこれはヤバイ。
ただでさえ、何人もの女子の体を手でまさぐっている感覚だ。
俺も健康な男子。そりゃ勃起するなという方が無理ってなもんだ。
そうこう考えている内に俺の息子に血が集まり、制服のズボンの上から密かに自己主張を始めた。

128: 2006/07/10(月) 12:12:51.38 ID:0CVhHHbG0

「いや、そうは言ってもだな…お前に暴れられるとこっちが困るというか…」

「くぅっ…なんの…はなし…? ってちょっと、キョン!? あんた、何おっきくしてんのよッ!!」

ハルヒに速攻バレた。
密かだと思っていたマイ・サンの自己主張は案外、激しいものだったらしい。

「あんた、神聖なる団長がワケの分からないモノに絡みつかれてるの見て興奮したって言うの!?」

「感覚はあるからな…お前にその…動かれるとツライものがある」

「感覚はあるって…バカ! 変Oッ!! そんな事感じてるヒマがあるならさっさと助けなさいよねッ!!!」

罵倒された。
ハルヒに罵倒された事は数知れないが、こんな状況に陥ってすら自分を見失わないハルヒに遺憾ではあるが尊敬の念を覚えた。
それと同時に、このハルヒが泣き喚き、許しを請う姿が見たいというような嗜虐心にも似た、よこしまな考えが微かに頭をよぎる。

そうして俺の思考に触手は素早く反応した。

138: 2006/07/10(月) 12:31:25.37 ID:0CVhHHbG0

「こちらですッ! 急いでッ!!」

教室の外から誰かの叫び声がする。それは古泉の声に似ていた。
そんな事を思っていた矢先、何人もの足音が波のように近づいて来て、そしてその足音は勢いをつけたまま教室になだれ込んできた。
教室に入ってきたのはおよそ10人。年も格好もバラバラ。
ただ、そいつ等に共通する事は全員、手に黒光りする銃を持っているという事だ。
そうして、その銃口は全て俺を向いて固定されている。

…触手を生やした俺が言う事じゃないが、なんというか非現実的だ。
そんな彼らを俺とハルヒが呆然と見ている中、あっさりと処断命令は下された。

「撃てっ!」

隊長らしき男がそう発すると無数の弾丸が飛んでくる。
俺は凄まじい衝撃にさらされながらも、日本の警察は対応が早いなとか、発砲早くね?とか、
人生短かったなとか、朝比奈さんのお茶がもう一度飲みたかったなとか、色々考えたが
最後に思ったのはハルヒの事だった。
こんな目に合わせておいて、恐らくこの距離では俺の返り血で血みどろになるだろう。
この触手病が伝染性でなければいいんだが。

140: 2006/07/10(月) 12:32:37.15 ID:0CVhHHbG0



「あ…れ…?」

そんな事を考えていた俺だったが、出血もしなければ、氏ぬ事も無かった。
代わりに暴力的なまでの眠気が俺を襲った。

「すみません…少し眠っていただきますよ」

朦朧とした意識の中で教室のドアの所に古泉の姿が見えた。
あぁ、そうか…コイツらは古泉の…

「…どーせ…ロクでも…無い事に…なるんじゃないかと……思った…が………スカリーも…ビックリ…だな…」

そう呟いた瞬間、俺は意識を失った。

143: 2006/07/10(月) 12:34:47.31 ID:0CVhHHbG0
ここで飽きた俺
触手が書きたかっただけらしい

145: 2006/07/10(月) 12:35:30.05 ID:3UMn4ubg0
>>143
オワーリ?

引用: ハルヒ「ちょっとキョン!あたしのプリン食べたでしょ!?」