375: 2014/06/09(月) 21:20:44 ID:Li1jmZyQ


男「見られてない?」イケメン「…」じぃー【前編】

男「見られてない?」イケメン「…」じぃー【中編】


「よし。みんな看板完成したぞー」

「おー! やっとか、開始十分前とか絶望モンだったのにさぁ」

「あーだこーだ言わないで、さっさと飾れ飾れ!」

「皆着替えたかー? ならそろそろお客さん入れちゃうぞー」

男「い、良いよー……? 大体の人はもう着替え済ませてるからっ」

「おっし。んじゃー行くぜぇ!」

イケメン「うむ。ではでは──我がクラス『漢のディアマンテ』を開始する!!」



「「「へいっ!! ラッシャイ!! ご注文どうぞーっ!!」」」



ワイワイ ガヤガヤ



男(漢のディアマンテってなんだ……)
ふらいんぐうぃっち
376: 2014/06/09(月) 21:31:45 ID:Li1jmZyQ
~~~~~~

男「ちゅ、注文入りしましたー! 漢のたこ焼き2つに、淑女が嗜むクレープセットっ!」

イケ友「へいへーい! アリガトウゴザイマース!」


「おおっ…来るぞイケ友の神業たる秘技が…!」

「瞬時にソフトボールほどのデカさがあるたこ焼きを十個、カリカリふわふわに回転させる……!!」


イケ友「FOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOO!!!!」ガガガガガガガガガ


「ッ……!! そ、そして返す手で鉄板の上の二メートルほどもあるクレープの生地を空へ放る……!!」

「お客様ご注目! 我がクラス、マスターの神業をご覧あれ!」


イケ友「ypaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaa!!!!」カカカッ


「おおおおおっ」


男(盛り上がってる…イケ友頑張るなぁ…一時はどうなるかと思ったけど、みんなのお陰で事無く進んでるみたいで良かった)

378: 2014/06/09(月) 21:40:54 ID:Li1jmZyQ
「男くん手が止まってるよ、注文取りに行ってー」

男「あ。ごめん!」だだっ

男(最初は普通の喫茶店の予定だった。本当にただ珈琲を出して、セットに甘いものを出すみたいな)

男(──けれど予定だった珈琲を作る道具を用意できなかった。それは……どう言い訳をしようとも、俺の責任)

男(…けれどみんなが機転を利かせてくれて、ああじゃないこうじゃないと、話し合いを続けた結果)

男「…何故かラーメン屋みたいなノリの喫茶店が出来上がってしまった、と」

男(神がかってたなあの話し合い。皆悩みすぎてて脳みそとろけていたのかもしれない…けれど)


ポンポン


男「っ?」びくっ

イケメン「どうしたんだい? 浮かない顔をしてるけれど」

男「あ、そのっ……すまん、考え事してた」

イケメン「そっか。それにしても大反響だ、これだけ盛り上がってると他のクラスも視察にくるぞ」

男「………」

379: 2014/06/09(月) 21:47:19 ID:Li1jmZyQ
イケメン「……まだ引け目に感じてるの? 皆はもう気にしてないさ」

男「……っ」

イケメン「勿論。喫茶店の要である道具を用意できなかった君にも問題があった、けれどそれを補おうと…」

イケメン「君が人一倍頑張ってたことは、クラスの皆が気づかなくてもオレは知っているよ」

男「……」

イケメン「さぁ頑張ろう。文化祭はまだまだ続くんだ、楽しんでやりきろう!」

男「……お、おう」スタスタ

イケメン「…………」


~~~~~


イケ友「男ちゃーん! 休憩いってこーい!」ガガガガガガガガガ

男「あ。うん、もうそんな時間か」カチャカチャ

イケ友「こっからは一日目の自由時間だぜー? 二時間めっさ楽しんで! オレも後で合流すっから!」

男「おっけい。適当にぶらぶらしてくるよ」

380: 2014/06/09(月) 21:52:49 ID:Li1jmZyQ
男「……」キョロキョロ

イケメン「あ。男くん」

男「あ、イケメン…」

イケメン「休憩時間? じゃあ楽しんでおいで、オレは今日一日手が離せないからさ」

男「…うん」

イケメン「ごめんな。でも明日は暇が出来るはずだから、一日中遊び回ろうか」

男「…お前も楽しんで来いよ」

イケメン「当たり前さ。じゃあこれで」フリフリ

男「…………」


屋上


男(そう言われつつ、結局は屋上に来るのでした)チュルルル

男「…一人で周るのも良いけど、出来れば皆で楽しみたいしな」

男(皆で……楽しみたい、か)

あれから、そう──会長と出会ってから、数日と経って。

381: 2014/06/09(月) 22:01:31 ID:Li1jmZyQ
男「………」

何事も無く文化祭は始まった。
正直に言えば──何事もなかったわけじゃない、皆が気にしないでいいと言ってくれただけであって。

男「…あの人が言うとおり、俺は準備できなかった…」

校舎裏で言われた『貴方では不安』というものが、事実として起こってしまった。
準備できると言い切ったのに、あの人自体を心から否定したいのに、けれど、俺には出来なかった。

男「……ばか…」

心に響く。あの冷たい瞳が嫌でも離れない。


──けれどあの人は何も言わなかった。


ほぼ全部書き換わった企画書を改めて提示しても、何事も無かったかのように受け取った。
まるでそれは予定調和だったと言わんばかりに──それがなんとも、悔しくて。


男「………」

文化祭は始まった。
あの人はいまだ何もしてこいない。自分と付き合えと、言ったきりで何もしてくる様子は無かった。

そのことが頭から離れず、ずっとずっと、チラついて取れることもなく。

だんだんと、少しずつだけど──イケメンと会話するのが辛くなってきた。

382: 2014/06/09(月) 22:10:04 ID:Li1jmZyQ
男「…俺は結局、何がしたかったんだろう」

それでも頑張って文化祭を盛り上げようとした。
何時もより数倍近く人と会話をしたような気がする。

手も動かし、疲労で汗を流して、今まで関わりあいもなかった人たちと日が暮れるまで話し合った。

そうなる一方で──アイツとは着実に距離は開けていったのだろう。

男「頑張れば、あの人が言ったことも嘘になる…なんて思ってたのに」

結局は、あの人が言ったとおりなのでないだろうか、なんて。



バタン!!


男「うっ!?」

女「はぁっ…はぁっ…! ま、撒いたかしら…!?」キョロキョロ

男「…えっと」

女「ふざけるんじゃないわよ…絶対に着るもんですか、ってきゃああああああああああああああ!?」

男「ど、どうも」

女「び、びっくりした! なによアンタ!! あたしの心臓止める気!?」

383: 2014/06/09(月) 22:13:34 ID:Li1jmZyQ
男「むしろ止められかけたのはこっちだよ…」

女「えっ!? あ、そうね……急に飛び込んできたのはあたしか……っていうか、あんたもクラスの差金だったりする!?」

男「差金」

384: 2014/06/09(月) 22:19:29 ID:Li1jmZyQ
男「むしろ止められかけたのはこっちだよ…」

女「えっ!? あ、そうね……急に飛び込んできたのはあたしか……っていうか、あんたもクラスの差金だったりする!?」

男「差金?」

女「…なによ違うみたいね。あーもう疲れた、どんだけあたしにメイド服着させたいのよ…」ブツブツ

男「良くわからないけど、大変そうだ」ズズズ

女「大変よ滅茶苦茶大変。…それにくらべてあんたは暇そうね」ジィー

男「…サボってるわけじゃないぞ」

女「じゃあ休憩時間? だったらこんな所居ないで、楽しんできなさいよ」

男「………」ズズズ

女「無視するなっ」ぐいっ

男「んぐ。え、ちょ……」

女「いい度胸じゃないあたしを無視するなんて、良い? こっちは苛立ってんのよ! 放っておいたら噛み付くわよ!」

男「噛みつくってなにさ。それよりも飲んでるんだから返してくれってば…」

女「…………」ジィー

385: 2014/06/09(月) 22:26:02 ID:Li1jmZyQ
男「…何?」

女「あんた何か、元気ない?」

男「えっ!?」

女「ここ数日だけど、見かけるたんびに思ってた。準備で疲れてるだけかと思ってたけど……なんかあったの?」

男「べ、別に何も…特になにかあったわけじゃ…」

女「イケメン」

男「っ…!?」ビクゥ

女「はぁ、やっぱ関係あるのね。良いよ、良いわよ、そう続くと思ってなかったし」ズィッ

男「うっ…どういうことだよ、言ってる意味がわからないんだけど…」

女「アイツが無茶事言い出したんでしょ。それにムカついて喧嘩したとか?」

男「っ……アイツは何もしてない!」

女「そう? じゃあ、とうとう……え、えOちしたの…?」

男「だからホ〇じゃないって!」

女「じゃ、じゃあなによ!? 意味分かんない! なんで元気ないワケ!?」

386: 2014/06/09(月) 22:32:55 ID:Li1jmZyQ
男「女さんには関係ないだろ…っ!? 俺のことは別にどうだいいじゃないか、放っておいても…!」

女「ばっそんな事言う!? 言っちゃうワケ!? あ、あああんたが言い出したんでしょ友だちになろうって!!」

男「…あ」

女「なによ恥ずかしいこと言わせてばっかじゃないの! っもう…そういうこと言うんだったら、良いわよ、フン! バイバイあんぽんたん!」くるっ

男「…っ…──ま、待って! 待ってください!」

女「なによ」チラリ

男「そ、そのー……えっと、実は……」

女「………」

男「ううっ…少し相談したいことが、ありまして…」モジモジ

女「…相談? 変Oチックなモンだったら殴るけど」


~~~


女「──最近、イケメンと気まずい?」

男「…うん」コクリ

男(会長のこと抜きにして、その他のことを正直に言ってみた、んだけど…)

387: 2014/06/09(月) 22:41:30 ID:Li1jmZyQ
女「へぇー気まずいねぇ。不思議なもんね、あんだけ仲良かったのに」

男(…だって言ったらこの人、乗り込んでいきそうで、生徒会室に)

女「むしろ急に親しくなったのが不思議だったんだけども。まぁ気まずくなるもの訳ないか」

男「…ワケない? どういうこと?」

女「変Oがそれ程めんどくさい奴ってこと。顔立ちが良いばっかりに言い寄ってくる奴らが沢山いるだろうけど」

女「──こと本性を知ってるかと言えばそうじゃないでしょ?」

男「…まぁ、変Oなのは認めるけど」

女「変Oの中の変Oよアレは。周りが認めなくてもあたしが言い切ってみせるわ」

女「だからアンタも知らないような変Oぶりを見せちゃって。あんたが引いたのだったら……まぁわからないでもない」

男「い、いや。そうじゃないけど……その、本当にイケメンのこと嫌ってるんだ」

女「…そう見える?」

男「………。いや、言ってみただけ、むしろ誰よりも心配してるように……実は思ってた」

女「んぐっ! 本当にあんたっば馬鹿正直に言うわよね…! なに、人としての恥が無いわけっ?」

男「も、勿論ある。言ったら困るだろうなって、駄目だろうなって…むしろ人一倍気にしてると思う」

388: 2014/06/09(月) 22:49:32 ID:Li1jmZyQ
女「…じゃあなによ、思ってるクセして言い切るのが趣味になった?」

男「えっ? お、おお。趣味じゃないけど、いいなぁって…思えるようになった、かも」

女「とんだ変Oね。ばっかじゃないの」

男「……何も言い返せない」

女「ったく。じゃあハッキリと言っちゃいなさいよ変Oのやつにも。なんか気まずいから殴っていい? とか」

男「横暴過ぎる…」

女「それぐらいやんなきゃ響かないわよ。知ってるでしょあんたなら」

男「…まぁそうだけど、言えたら女さんに相談してないっていうか」

女「そーでしょうね。言いたいこと言える癖に、ココ一番になる時に動ける癖に。どーでもいいことでアンタ、画期的な間違い起こすし」

男「それ、以前の勘違いのこと言ってる?」

女「それ以外になにがあるってのよ。はぁーあ、ほんっと今思い返すだけで腹が立つ」

男「…ごめん」

女「けど、感謝もしてるから」

男「え…?」

女「ここ。屋上のこと、ほら告白の時……あんたが頑張ってくれたじゃない」

389: 2014/06/09(月) 22:56:57 ID:Li1jmZyQ
男「お、俺は別になにもしてないと思うけど」

女「何もしてないわけ無いじゃない。アンタが居たからどうにかなったことでしょ」

男「…そうかな。居なくてもなるようになった気がするけど」

女「変に腰が低わね。じゃあ、あたしがああいった結果を感謝してるって言えば、言いワケ?」

男「…感謝してるの?」

女「だからそう言ってるでしょ。互いに言いたいこと言って、スッキリ終わる。十分な結果よ」

男「そっか。それは良かった、実は少し……というか大分引け目に感じてた」

女「だと思った。良いわよー全然、あれから堅物くんとは気まずくなってないし。むしろ奇異な目で見られてるし」

男「うぐっ」

女「ふんだ。まぁあたし一人で上手くいったかはどうかは別にして、それでも──あんたは、言いたいことを言えるやつよ」

女「変に関係がこじれる前に、まぁこじれたほうがアンタはやりやすいかもだけど。…出来れば後悔する前にさ」

女「──ちゃっちゃと仲良くなりない。じゃなきゃ、あたしも嫌だから」

男「………」

女「…なによ、変な感じね」

男「あ、ありがとう。まさかそうまでいってくれるとは思わなくて…」

390: 2014/06/09(月) 23:04:05 ID:Li1jmZyQ
女「そ、相談してきたのはあんたじゃない! ったく、どーにも…こう…普段らしくなれないわよね…アンタと居ると…っ」ブツブツ

男「……」

純粋に嬉しかった。
人に相談するのは、人生の中で二人目──同世代となるとこの人が初めだ。

だから素直に、言わなくちゃイケナイと思った。
本当の悩みを聞けるなら今、聞いておくべきだと。

男「…じゃあひとつ最後に聞きたいことがあるんだけど、良いかな」

女「未だあるわけ? だったらもう言い切っちゃいなさいよ」

男「その、多分冗談だと思うし、冗談にしてはタチが悪すぎるけど…知ってるのは女さんかイケメンぐらいだろうから」

女「……?」

男「…イケメンが小さい時、叔母さんが居たと思うんだけど…」


急激に、この場の暖かな空気が氏に絶えた。


男「その人は…」

女「誰から聞いたの、それ」

391: 2014/06/09(月) 23:11:55 ID:Li1jmZyQ
男「えっ? 誰からって…」

女「教えなさいよ。ねぇ誰から聞いた? 変Oから?」

男「ちょ、ちょっと待って! なに、どうした急に…?」

女「良いから早く。叔母さんがどうして、ここに来て出てくるワケ?」

男「い、いや……イケメンの奴が……その、」

女「──頃したって?」

男「っ……ち、違うって! そうじゃなくて、」

女「何が違うのよハッキリ言いなさいよ! なに、変Oからじゃないわよね。じゃあ他に知ってる奴…?」

男「待ってくれ! ちょっと、落ち着いてくれって!」

女「じゃあきっちり言いなさいよ!! 誰から聞いたのかそれぐらい言えるでしょ!?」

男「うっ……だ、駄目だ。言えない、言ったら絶対に女さん…その人のところ行くだろ…っ?」

女「へぇー行かせないってワケ? じゃあどんなことをしても、あんたから聞き出すけど? どう?」

男「っ……嫌だ、殴られても言わない!」

女「頑固モノ…! 良いわ直接、変Oから聞き出すから! 知ってるやつを片っ端から…!」

男「だめだって! 本当に!」グイッ

392: 2014/06/09(月) 23:19:31 ID:Li1jmZyQ
女「っ……アンタも本当にどうしようもないやつね! なによ止めたいなら言えばいいじゃない!」

男「…駄目だ言えない。言って女さんに迷惑かかるなら、絶対に言わないっ」

女「ぐぬぬ」

男「…ごめん、だから、その」

女「だぁあもうっ! そうねっそうよね! あんたらの問題なら、あたしも変に出しゃばらないわ! ふんっ!」

男「え? あ、うん」

女「…けど、本当にこじれてきたら出るわよあたし。良い? 問答無用に聞き出すから、わかってる?」

男「…分かった。けれどその、伯母さんのことだけど…どうして…」

女「…あんたはよく分かってない感じ?」

男「女さんが言ったことしかわからない、と思ってる。いや、全然わからないが正しい」

女「なによそれ。だーもう、あんたってば変なことばっかり関わりあい持つわね……それで? 何が聞きたいの?」

男「…事実を」

女「……。叔母さんを変Oが……みたいな、ことは、ハッキリ言えば違う」

男「あ……じゃあ嘘、なんだ」

女「けど、本気でそう思ってる。変Oのやつはね」

393: 2014/06/09(月) 23:25:57 ID:Li1jmZyQ
男「え? こ、ころ……叔母さんを?」

女「そうよ。とんだ変Oよ、ばっかじゃないのって何度も言ったのに。ずっとアイツは心に抱えてる」

女「…アイツは一回だけ、伯母さんに言ったらしいのよ」



『──あんたなんか、きらいだ! しんじゃえっ!』



男「え、それって幼い時?」

女「小学生の頃かしらね。アイツにとって一番大切な人は──うん、叔母さんだった。優しかったし、強い人で、あたしも大好きだった」

女「けど病気で亡くなったのよ。心臓の病気…だったかしら、突然亡くなったから当時のあたしも相当ショックだった」

男「…じゃあイケメンは全然関係ないじゃないか」

女「そう全然関係は無い。無いけど、そうじゃなくて……上手く言えないけれど、なんて言えば良いのか、その」

男「……」

女「──【それっぽい】って、意味わかる?」

男「それっぽい?」

女「うん、まぁ、詳しく説明すると……変Oが【こうするべきだ】って言うと、あーなんか正しいなて思える。みたいな」

394: 2014/06/09(月) 23:35:46 ID:Li1jmZyQ
男「…なんとなく、わかるかもしれない」

女「例えばアイツが、『皆で鬼ごっこやろう。そっちのほうが楽しめる』なんて言えば、それまでバラバラだった意見がまとまったり」

女「『それをするなら、こっちのほうがいい』なんて助言すれば、その人が心から認めちゃったり」

男「…そういう雰囲気を持ってる人、ってこと?」

女「まぁね。絶対じゃないけど、なんかこう……この人がいうことなら正しいかも、なんて思える感じ」

男「……」

女「そのことをアイツも自分自身で分かってた。わかってたから変O行為をやりまくってたのよ」

男(女さんにも凄い過去があったっぽいなこれは…)

女「それがとうとう、叔母さんにバレたの。大好きで優しかった人に、まぁ徹底的に怒られたんでしょうね。それでアイツ…」

男「…氏んじゃえと、言ったわけか」

女「事実、本当に亡くなってしまった。全然関係なんて無いのに、確かにアイツが言ったことはそれっぽくなるけれど、でも…」

男「…まったく関係無けど、心に残ったまま」

女「うん。けどアイツ自信も折り合いをつけれてたと思ってた。いいとしだし高校生だし、正直何年まえのこと抱え込んでるのよって馬鹿にもしてきたし」

女「……けど、なんで急にその話が出てくるのよ。もう関係ないじゃない、だって…アンタが居るんだから」

男「俺が…?」

395: 2014/06/09(月) 23:44:57 ID:Li1jmZyQ
女「…少なくともアンタには救われてた気がする。だって笑ってた、あんな素直に笑ってる顔久しぶりに見たのよ?」

男「……」

女「どうやったかは知らない。けど、あんたはやり遂げた。ずっとあたしにはできなかったことを…あんたはやってる」

男「…俺が、救えてる」

女「ねぇ本当に言ってくれないの? アンタに叔母さんのことを言った人。そいつ相当性格悪いわよ、マジで殴り飛ばしたいわ」

男「うっ、ダメだって」

女「今のあたしだって自己嫌悪半端ないもの。変Oが言うべきことじゃない、こういうことって。あんたが知りたがってたから言ったものの…」

男「ありがとう。迷惑をかけてるのも、悪いことをしたって…思ってる」

女「…良いわよ別に感謝しなくても。けど、言わないでよ変Oには」

男「ああ、うん。絶対に言わない、女さんから聞いたってことは」

女「違う。そうじゃなくて、叔母さんのことを言ったやつのこと──その性悪のことを、変Oには言うなってコト」

男「え? ま、まぁ言わないっていうか……言えないっていうか」

女「そ。ならいいわ、アイツなにしでかすかわかったもんじゃないから」

男「わかった。…そっか、そんなことがあったのか」


救われていた。この言葉を聞くのは──三回目だ。

396: 2014/06/10(火) 00:13:22 ID:1zbfiyzI
一回目はイケメンから。
二回目は会長から。

そして彼女から言われ、その三回がそれぞれ違う原因を持っていた。

ツッコミ。去年の文化祭。叔母さんのこと。

もしこれら全てが──実はひとつの原因だったとしたら。
わけは違えど、理由は一緒。


男「………っ…」


ああ、心が重い。耐え切れずに膝をついてしまいそう。
見たくない知りたくない、掻き分けた先に待つ現実を直視して──自分に何が出来るのか。

それならいっそ何も知らずに、アイツの側にいられたほうがよっぽどマシじゃなかったのか。


男(俺がイケメンのやつに何が出来るんだよ…元より求められてるわけじゃない、俺はただツッコミを…)


『彼が望んだことだけを、やれることだけをやっていれば、自分は幸せでいられる』

『…そう、だから貴方は『彼が本当に望んでることを知らないふり』をすればいい』

『難しいとわかってるから、今の生活が壊れることを恐れ躊躇い、踏み出せないならいっそ』

『──彼が抱える問題を、知らないで付き合ったほうが楽だと』

397: 2014/06/10(火) 00:44:06 ID:1zbfiyzI
男「あ……」

何を考えてるんだ。違う、そうじゃないだろう俺。
これじゃあまるであの人が言ったとおりではないか。

男「…っ…」

そんなことは違う。俺はちゃんとイケメンのことを見ている。
自分勝手に物事を捉えてなんかいないんだ。だから、だから──


女「ちょっと、なによその顔」

男「…え」


額に冷たい感触。


女「馬鹿ね。思いつめなくたって良いじゃない、たかがアイツの事なんだから」

男「あ、えっと…」


そっと彼女から伸ばされた手が、優しく額に添えられていた。


女「アンタがそうまで抱え込んで、喜ぶ奴は居ないわよ? もっと気楽に考えなさいよ、じゃなきゃ文化祭が楽しめないんだから」

男「………」

398: 2014/06/10(火) 03:41:34 ID:1zbfiyzI
男「…わかってる」コクリ

女「そ。結局は案外簡単に物事は終わるもんよ。アンタが一々気にしてても、なるもんはなるモンなの」

男「…」

女「何がどーして悩んでるかは聞かないで置いてあげる。言いたくないんでしょ? だったら、ちゃんとやりなさいよね」

男「…ありがと」

女「どういたしまして。んー……」

男「ん?」

女「そうねだったら、明日一緒に文化祭周らない? アンタどうせ暇でしょ?」

男「え、ま、まあ暇だけど、なんでまた」

女「いーじゃないのよ、気まぐれよ気まぐれ。変な勘違いはしないこと、本当に気まぐれなんだから」

男「わ、わかってるよ。ただ単に気が向いただけ、だろ」

女「その通り。それじゃああたしはもうクラスに戻るから……あんたも何抱えてるか知らないけど、頑張りなさい」フリフリ

男「……」フリフリ

~~~~

男「…あ。そういえばイケ友の所に行かなくちゃ」

399: 2014/06/10(火) 03:48:34 ID:1zbfiyzI
教室

男「おーい。イケ友──って、イケ友は?」

「もう休憩行ったけどー?」

男「…そうなんだ、ありがとう」

男(入れ違いになっちゃったか。仕方ない、見当はついてるし探そう)


たこ焼き屋


イケ友「もぐもぐ。味がなってねぇな…そもそもタコが小せぇ! やり直し!」

男「あ。居た、イケ友なにやってるの…?」

イケ友「おー男ちゃんチッス。いやなによ、ライバル店の偵察ってやつ? こりゃウチのクラスがてっぺん取れるぜ~」

男(そう言いつつ、なんで他のクラスの出し物に指導してるんだろう)

イケ友「学校ナンバーワン賞は貰ったも当然だな。なははははははは」

男「そりゃ頼もしい。見た感じだと結構見て回っちゃった感じ?」

イケ友「んにゃ。出し物にゃ食いもんばっかよ、それでも全部回りきれてないなぁ…男ちゃんも行く?」

400: 2014/06/10(火) 03:56:23 ID:1zbfiyzI
男「是非に。あまり量は食べれないけど」

イケ友「おれが喰う。なはは、んじゃ行こうぜ」


~~~~


イケ友「もぐもぐ──イカ焼きもなかなか、海産物系は保存がチト面倒だし」

男「わたあめは?」

イケ友「ありゃ機材が無いと無理だわ。どっかで科学部の奴が空き缶に穴開けて作ってたけど、イマイチわからんかったのよ」

男「なるほど。やっぱり元の機材でお手軽に作れるのがいいか」

イケ友「今でも十分やっていけるけどな。たこ焼きクレープ、どちらも姉ちゃん直伝で一級品ものだぜ!」

男「ははっ知ってるよ。あの味をよく引き出せてるよ、イケ友は」

イケ友「だろだろー? なはは、腹減ったら何時でも食ってたし。味の保証はおれがする!」

男「俺も保証する」

イケ友「男ちゃんに言われたら自信も持てるってモンよ! うっし、ちとここらで休憩だーい」トスン

男「…俺もちょっと歩き疲れたかな」ストン

401: 2014/06/10(火) 04:02:53 ID:1zbfiyzI
イケ友「もぐぐ。今年も盛り上がってんなー、去年も凄かったけど。今年はそれ以上だぜ」

男「なんだか一般のお客さんが多い気がする」

イケ友「お~確かに。ん、そりゃまあ会長様が直々に宣伝しまくってたしな」

男「…会長が?」

イケ友「おうよ。地域新聞にも声がけしてたらしいぜ。一面トップにでかでかと乗ってたわ。他の学校押しのけて」

男「そりゃ凄い…宣伝効果出まくってる訳だ」

イケ友「やると決めたらトコトンする姉ちゃんだったし。つか、妙に張り切ってんなーとは思ってたけど、もぐもぐ」

男「…………」

イケ友「ん。食べる男ちゃん?」ぐいっ

男「ありがと」

イケ友「いいぜ。お返しに──イケメンと何があったのか教えてくれたら」

男「ぶふぅっ! ごほっ! げほっ! …えっ? 何?」

イケ友「隠し事はナシだぜ男ちゃん。良いか、これでも親友の顔色ぐらい判別出来るってもんよ」

402: 2014/06/10(火) 04:10:29 ID:1zbfiyzI
男「っ…そんなに顔色悪い?」

イケ友「例えるなら、二日酔いならぬ四日酔いの姉ちゃんぐらい顔色が悪い」

男(上手く想像ができない。壮絶たるものなのは理解できる、気がする)

イケ友「喧嘩した感じ? だったら問答無用に仲裁に入るけど」

男「…許可を得るつもりはないんだな」

イケ友「当たり前よ。つか喧嘩は駄目だ、殴り合いは良いけど。喧嘩ってだけなら後腐れが残っちまう」

男「殴り合いもダメだ。人が怪我する」

イケ友「けど納得は出来るだろ? 相手も痛い、こっちも痛い。ちゃんとした実感が湧きやすいモンはすんなり納得しやすいんだ」

男「…殴り合いなんてしたことないし、わからないけど。そういうもんなの?」

イケ友「まあおれはそうだけど、男ちゃんはダメだな。喧嘩も殴り合いもどっちも似合わなすぎる。なはははっ」

男「自分でもそう思う」

イケ友「…その感じだと喧嘩じゃないっしょ? どうしたん?」

男「…別に何かあったわけじゃない、けど」

嘘だ。なぜ嘘をつく。

403: 2014/06/10(火) 04:23:24 ID:1zbfiyzI
イケ友「そうなんか、もぐ」

男「…けど、一つだけ聞いていいかな」

イケ友「どーぞどーぞ」

男「去年の文化祭。一年目の時、俺らは同じクラスだった…と思うんだけど」

イケ友「うんうん。確か劇やったよな、イケメンが主人公で──おれは確か、ライバルの王子様」

男「…あの時の事、覚えてる?」

イケ友「? つまり男ちゃんの配役ってコト?」

男「いやいや、俺はやった役覚えてる……草役だったし」

イケ友「ぶほぉっ!? そ、そうだおもいだした! 草役だったよな男ちゃん! くっくっくっ」

男「ううっ、草役って言っても黒子みたいなもんだったし。背景動かし役みたいな」

イケ友「そっかそっか。それで? 何を覚えてるって男ちゃん?」

男「ああ、うん。当時のイケメンが……その、なんていうかさ」

楽しんでなかったんじゃないかって。

男「…上手く言えないけど、おかしなところはあったかなって」

404: 2014/06/10(火) 04:31:40 ID:1zbfiyzI
イケ友「ふむ。言われてみれば今よりは楽しんでなかったな、言い換えればずっとそんな感じだったかもしれん」

男「ずっと? どういう意味?」

イケ友「いやなぁ…文化祭と言わずに、高校生一年目。じゃなくとも知り合った中学当時を思い返せば───」

イケ友「──今よりは楽しそうじゃないとは言い切れるな。うん、そんな笑ってなかったし」

男「…そう、なんだ」

イケ友「けど、確かに去年の文化祭の後は──少しずつ笑ってたかもしれない、なんか憑き物が落ちた感じつーの?」

男「そんなにか。だったら変わりように周りも驚いてたんじゃない?」

イケ友「なんで? そんな違いが分かる奴がいたら、とっくにイケメンの奴も笑ってるだろ?」

男「……そ、そっか」

時折、イケ友のこういった意見は身が竦んでしまう。

イケ友「まぁ笑わせてやれなかった、おれが言うのもなんだけどな。小難しい話はちと苦手なもんで、なははは」

男「うん。俺も…難しい話は苦手だよ」

イケ友「だよなぁ。あ、けど! 一つだけ思い出したことがある!」

男「え、なに?」

405: 2014/06/10(火) 04:40:02 ID:1zbfiyzI
イケ友「イケメンが言ってたんだよ。『やっと自分が駄目なやつだと思えた気がする』ってな」

男「自分が、駄目なやつ?」

イケ友「おれも ? ってなったわ。そもそも何がどうダメだったのかも分からなかったし」

男「そう、だよな。けど確かにイケメンはそう言ったんだよな…?」

イケ友「おうよ。おれはー……うん、初めてイケメンの笑顔って奴をそこで見たかもしれない」

男「…文化祭でなにかあったのは間違いないよな、それって」

イケ友「うむむ。なによ男ちゃん、今回に関係してくるってワケか?」

男「……多分」

イケ友「そりゃあ良い。一年越しにもう一度だ、今度は男ちゃんの番ってわけだな」

男「俺の番? どういうことさ?」

イケ友「イケメンの次に男ちゃんが笑わないといけないってことだぜ。んふふー、おれっちはまだ男ちゃんの満面な笑みを拝んでないんだぞー?」

男「うっ……べ、別に俺のことはどうだっていいだろ…っ」

イケ友「いーやダメダメ。おれは一度見たいって思ったら裸足で剣山駆け上がって、お日様拝みに行くタイプだ。絶対に見る、絶対だ」

406: 2014/06/10(火) 05:06:21 ID:1zbfiyzI
男「うぐぐ、知ってたけどイケ友は結構しつこいよなっ」

イケ友「そりゃおれの専売特許だからな。なはは」

男「…わかった、じゃあ一つだけイケ友にバラすから、今はそれで許してくれ」

イケ友「一つだけぇ? それじゃあ満足できないって、全部全部!」

男「だめだ! 今は…その、お願いだから一個だけだ」

イケ友「…男ちゃんがそこまで言うなら、ん。仕方ない」

男「その、俺は何か忘れてるらしい。なのにイケメンの奴は……それを凄いことだと受け取ってるんだ」

イケ友「忘れてることが? それとも、忘れてるコト自体が?」

男「わからない。もしかしたらどっちも…なのかもしれないし、結局はイケメンに聞くしか無いと思う」

イケ友「んーつまり、なんかそれが気まずくてイケメンと色々ある感じか」

男「…うん」

イケ友「おれが言うのもなんだけど、男ちゃん。ばかじゃないの? 言っちまえよそんなもん、ごめんってさ」

男「…絶対に言うと思った」

イケ友「いやね、違うよ男ちゃん。おれだから言ってるんじゃなくて、おれが知ってる男ちゃんなら言えるって話よ」

407: 2014/06/10(火) 05:14:26 ID:1zbfiyzI
男「俺、だから?」

イケ友「そうよ当たり前。忘れてることが悪いって思ってる、だったら謝れるのが男ちゃんだとおれは思うわけよ」

男「…それは」

イケ友「けど今は違う。今は出来無いってか? でも出来ないって思う自分が──嫌だって、あの時のおれに言ってくれたじゃん」

男「あ…うん」

イケ友「たこ焼き食いながら言ってくれたろ? 言いたいこと言える自分になりたいって、そんなカッコイイ自分になりたいってよ」

イケ友「そう信じてる男ちゃんをおれは知ってる。そうなりたいって目指してる、カッコイイ男ちゃんをおれは──あの時に見たぜ?」

男「……」

イケ友「怒ってるわけじゃーねーから、嫌なら聞き流していい。あの時の男ちゃんは…自信の無いおれに、」


『逆に言ってやる! イケ友が周りを凄いって言うのなら、俺はイケ友が凄いって思いたい。だから、もっと自分に自信を持って欲しい!』


イケ友「…って言ってくれた。なら今度はおれが言っちゃる」

イケ友「男ちゃんのことおれはカッケーと思ってる。だから、ちゃんとしないと本気で怒るぞ?」

男「…結局怒ってるじゃないか」

408: 2014/06/10(火) 12:54:43 ID:tQYFg1zQ
イケ友「んぉ? なははー! たっしかに怒ってるわおれ。男ちゃんいい加減にしとけよっ?」コツン

男「あいたっ」

イケ友「しょーもねーことを悩んでないでさ。また皆でワイワイ楽しもうぜ」

男「…しょうもないこと、なのかなこれって」

イケ友「だって悩んでんの男ちゃんだけだろ?」

男「まぁ、確かにそうだ…うん」

女さんも言っていた。
なるようになる、アンタが気にしてても仕方ないこと。

男「……」

なのに、どうして俺はこんないも悩んでいるんだろう。

男「…わかった、ちょっと頑張ってみる」

気づけば簡単なことなんだ。そう、何時もどおり口にすればいいだけ。
アイツ相手に何を引け目に感じているのか、なんて馬鹿らしいことだ。

イケ友「おうよ。けど、そろそろ休憩時間は終わりだもんで、放課後にいっちょ出向いてみ」

男「おう。わかった…」

409: 2014/06/10(火) 12:58:40 ID:tQYFg1zQ
放課後

男「あれ?」

男「イケメンの奴が居ない…まだ用事があるのかな…」

イケ友「男ちゃーん! 今日の片付けはおれっちやっとくから、ほれ! いっていって!」

男「え、でも俺は実行委員だし…」

イケ友「気にすんなって。お礼に明日も一緒まわってくれたら、うむ、許しちゃる」

男「明日? えーあー……うん、確か用事なかったし大丈夫だと思うけど」

イケ友「おっけー。楽しみにしてるぜ、ではでは頑張ってきなされ」ポンポン

男「お、おう」


~~~~~


男(考えるだけ探したけれど、やっぱり居ない。何処行ったんだアイツ)

男「あと探してないのは…えーと」

「誰を探しているのかしら」

410: 2014/06/10(火) 13:04:25 ID:tQYFg1zQ
男「っ」くるっ

会長「こんばんわ」

男「…会長さん…っ」

会長「あら。えらく警戒されてるわね、何か私に思う所があって?」

男「…今は用事があるので、すみません」

会長「……」

男「……」スタスタ

会長「…彼ならもう学校に居ないわよ」

男「っ! な、なんですか…?」

会長「資材確保と材料管理。二日目以降の確認に行った所だから」

男「そう、なんですか。ありがとうございます…」

会長「いえどういたしまして。そういえば貴方のクラス──中々反響が良いらしいわね、ふふっ」

会長「失敗は成功のもと、なのかしら。貴方が道具を用意できなかったからこそ、最良の結果が待っていたわけね」

男「……っ」

411: 2014/06/10(火) 13:12:51 ID:tQYFg1zQ
会長「あら? …傷ついちゃった? ふふっ」

男「…なんですか、まだ何か俺に言いたいことでも」

会長「ええ勿論。沢山あって時間が足りないほどに」

男「…俺はもう貴女に用なんてありません、何も聞きたくないし、何も知りたくない」

会長「そうやって見て見ぬふり、知って知らないふりが一番の失態だということ──今回の実行委員で気付かなかった?」

男「それは…っ」

会長「やれて当然。なんてどうして思えるのかしら、貴方は当然だと楽観視していた所を突かれたんじゃなくて?」

男「……はい」

会長「ふふふ。正直な性格は人に好かれる要因よ。勿論、私も中々の好印象を感じるわ」

男「…あれは冗談だったんでしょう」

会長「付き合えって言ったコト? まさか、本気で告白させてもらったわよ。貴方と愛を誓い合いたい──それは嘘じゃなく真」スッ

男「うっ…だってそれは、イケメンのことを…!」

会長「何も関係ない。ああは言ってしまったけれど、今になって思えば……蛇足でしかなかった」

会長「貴方のことが好きすぎて、愛しすぎて、想い過ぎて、少し不器用な言い方になってしまったのよ。ごめんなさい、反省してるわ」

412: 2014/06/10(火) 13:20:17 ID:tQYFg1zQ
男「ち、違う…あれは本当に貴方が言いたかったことで、俺はっ」

会長「何をそんなに悩むことがあるのかしら?」サワリ

男「っ」びくっ

会長「私のこと嫌い?」

男「…き、嫌いです」

会長「ふふふ。じゃあ年上の人と付き合うのには抵抗ある?」

男「…貴方は嫌だ」

会長「つれない子。でもそんな所も───んふふ、私は愛してあげる」

男「…っ…」

会長「怖がらなくてもいいの。きっと貴方の思い描く全てを得られる、そうしてみせると誓ってあげる」

会長「…怖くなんてない、貴方はひとりぼっちじゃないのよ。ちゃんと貴方を認めてくれる人たちの中で──笑って過ごせられる」

会長「隣のクラスの委員長の娘とも、仲の良いクラスの友達とも。それに──文化祭で親しくなった人たちの仲で」

男「……あ…」

会長「私はその空間に、ちょっとだけお邪魔させてもらえればいいだけ。貴方に迷惑はかけない、むしろプラスとして働かせてもらうわ」

413: 2014/06/10(火) 13:26:04 ID:tQYFg1zQ
男「だ、駄目だ!」ぐいっ

会長「んっ!」ピクッ

男「あっ…ご、ごめんなさ…!」

会長「…案外強引なのね。感触、気持ちよかった?」

男「うぐッ」

会長「ふふふ。でも良いの、付き合うならもっと凄いことも…するんだから」

男「だ、だから俺は…!」

会長「……彼のことがそんなにも引っかかる?」

男「そ、そうです…! なんか、その、ダメな気がして…!」

会長「今、あなた達は少し疎遠になってるようね」

男「なっ! なんで、それを……」

会長「観察すれば分かることよ。けれど、そうね……だったら私が掛け持ってあげましょうか?」

男「え?」

会長「あなた達をすれ違いを、私が訂正させてあげると言ったの。そうすれば貴方はすっきりする?」

414: 2014/06/10(火) 13:35:58 ID:tQYFg1zQ
男「なん、で…てっきり俺はイケメンと仲違いをするのが…」

会長「んもう、失礼よそれって。そんなワケないでしょう、私は元からそんなつもりなんてないわ」

男「じゃあ…俺にどうして…」

会長「だから言ったじゃない。後悔してるって、不器用な言い方になってしまったのは事実なのよ」

会長「私はただ──貴方に気づいて欲しかった」


会長「…貴方の存在の意義を知らしめるのは、彼には無理だと」


男「存在の意義…? ま、待ってください、言ってる意味が全然わからなくて」

会長「彼は君にとても感謝してる。そのお返しに、彼は貴方を周りに見せつけようとしている」

会長「──そうなるように、彼の『問題』をあえて使ってまで、やっている」

男「問題───それって、もしかして、」

会長「ふふふ。誰からか聞いたようね、そう彼は『言えば周りは従う』という問題を、自ら使用してる」

男「……っ…」

会長「彼はね。そういった暴虐非道になりえる──自分といったのが嫌いだった。嫌悪してると言ってもいいわ」

415: 2014/06/10(火) 13:44:29 ID:tQYFg1zQ
会長「軽い気持ちで言った言葉が、心から信用されるってどんな気持ちだと思う?」

男「…わかりませんよ、そんなこと」

会長「じゃあ亀のフンを食べたらいい、それを信じられたら?」

男「…!」

会長「好きでもないのに好意をもって接したら、告白され、断り疎遠となる気持ちは?」

会長「怒ってもないのに冗談で怒ったら、心底怖がられ怯えられてしまった気持ちは?」

会長「たのしくもないことを、楽しいと言ったら周りも賛同された時の気持ちは?」


会長「氏んでしまえと──言った相手が原因でなくても、氏んでしまったら?」


会長「どうして、と思うでしょう。なんで自分はこうも周りから『正しい者』だと思われなくちゃいけないのかしら」

会長「顔が良いから? 性格が素晴らしいから? 物腰が柔らかいから? 纏う雰囲気が優しいから?」

会長「──そうやって悩んで、考えて、けれど答えなんてものは見つからない。辛くて、周りは『勝手な解釈で自分を見てる』ことに苦痛を憶える」

会長「見方によっては贅沢な悩み。だけど彼には抱え込んで二重の性格を持ちえてしまい掛けた程に、悔やんでいた」

会長「………なのに、ふふふ。貴方にはそれを使っている」

416: 2014/06/10(火) 13:51:57 ID:tQYFg1zQ
男「俺には…使っている…」

会長「そうよ、だって救われたのだから。貴方は一度そんな彼を救ってる、何があったのかは知らないけれど──」

会長「──だからこそ、その御礼に更に問題を使用している」

男「…お礼の為だけに、自分の悩みの部分を使ってるなんて、」

会長「ええとっても変よね。大変よね、それを貴方は見過ごせられるのかしら?」

男「…それは…俺は…」

会長「貴方は少しだけ気づいてたはず。彼が本当に望んでること──そんな自分が居るということを」

男「………」

会長「けれど貴方は出来ないから、きっとどうにか出来ないから、知らないふりをしていた」

会長「そんな問題知ってどうしたらいいのかわからない。時間は流れていくばかりで、そのうちに彼は…自滅を迎えるわ」

会長「そんな自分に後悔する。やってしまった現実を直視できなくなる。…それは貴方と居る限り、ずっと続く後悔」

男「…だから、あの時はイケメンから俺を離そうと…」

会長「言い方は悪かったと思ってるわ。これでも昔の恋人のことを──とても心配しているの」

417: 2014/06/10(火) 13:59:39 ID:tQYFg1zQ
男「…じゃあ言えばいいじゃないですか、直接イケメンに。俺から離れろと」

会長「言って聞く彼だと思う? 彼の頑固さは身にしみてわかってるつもりよ、私程度じゃ聞きやしないわ」

男「……そうかもしれない、けれど」

会長「むしろ自分で気づいてない可能性もある。己の過ちを分からず、自滅の一歩を踏み出していることを」

男「……」

会長「だから私は貴方に頼みたい」

男「…っ…だから俺に告白したんですね」

会長「ええ、その通り。けれど本気で貴方を愛してあげることも出来る」

男「…なんですかそれ、意味がわからない」

会長「言ってくれれば、もう金輪際今のような関係をやめたいと言えるのなら──その心意気に、私は惚れてしまう自信があるわ」

男「っ…え?」

会長「辛いわよね。嫌だって思うはず。けど相手の事を思って言える貴方の強さに、私は好きになれる」

男「言える…強さに…」

418: 2014/06/10(火) 14:06:50 ID:tQYFg1zQ
会長「そんな貴方が居るのなら、私はきっと惚れてしまう」

男「…………」

会長「…貴方には出来ると信じてるわ。貴方にしか出来ないことだと、私は直感で理解してる」

男「…その後のことはどうするんですか、イケメンと仲が悪くなるなんて、俺は嫌だ」

会長「させないわ。私が全力を尽くして仲を持ってあげる、つまりは私の恋人──の関係であれば、の話だけれど」

男「……そうなれば、誰も傷つかない?」

会長「その通り。貴方も平穏な学校生活を送れて、彼もまた自分の過ちに気づけるはず」


頭がぐるぐる、と周る。
何が正してくて何が間違いなのか。

この人が言ってることは信用出来ない。けれど、心がわかってしまう。
アイツは何かを抱えてた、そんなの、屋上で契約を結んだ時から──きっと気づいてた。

自分は求められることだけをすればいいって思ってた。
どんどん人間関係の輪が広がって、大変だけど、とても楽しかった。


それは──自分の力じゃなくて、もしかして、イケメンのお陰だったのかもしれない。

419: 2014/06/10(火) 14:11:05 ID:tQYFg1zQ
男「…ぅあ…」

俺はイケメンの負担になってたんだろうか。
いやなっていたんだ。ならざるを得ない程に、アイツは感謝してるんだ。

なのに、俺はそのことを、忘れてしまっている────


男「…俺は」


なんて、馬鹿だ。
真剣なアイツに対して俺は何もしてやれてない。なにも、なにも、なにも、なにも、なにもしてない。


男「………」


だったらいっそ、無かったことにすればいい。
何も出来ないのなら、なのもしないのなら、今だけを思ってアイツに知らせておくべきだと思った。


会長「…あら」

男「っ……!?」


「何をしてるんだ、男君?」

420: 2014/06/10(火) 14:16:16 ID:tQYFg1zQ
何も出来ないのなら、今ここで最後のチャンスを。


イケメン「もう君は帰ってたとばかりに…」

男「あっ……うっ…」

会長「……」

イケメン「こんばんわ会長。既に日は落ちかけてますが、良いんですか?」

会長「ええ大丈夫よ。生徒会の仕事が残っているから、今日は夜通しね」

イケメン「そうですか。…よっし男君、今日は一緒に帰るかい? んふふ、実は明日の出し物で新メニューを──」

男「………」

イケメン「男君? どうしたんだい?」

男「あ…えっと…」

会長「…男君が君に、言いたいことがあるそうよ」

イケメン「え? オレに?」

男「っ……!」

会長「そうでしょう? なら、ここで言うしか無いわ」

421: 2014/06/10(火) 14:20:49 ID:tQYFg1zQ
男「俺は…っ」

会長「大丈夫平気よ。悩んで居たって、ものごとはそれなりになっていくもの。けれど…今は貴方が動かないと駄目な時」

イケメン「…ちょっと黙っててもらえますか」

会長「ん、冷たいわね。けどその通りかしら」

イケメン「……。何かあったのかい? 怖いことでもされた?」

男「………」

会長「男君」

男「……!」

イケメン「男君?」

男「っ…!?」


わからない。わからない、正しいことなんてわからない。

何が良いんだ。やめてくれ、俺はそんなことを任されるほど強いやつじゃないんだ。

出来る事なんてこれっぽっちもない。やれることなんて人並み以下だ。

友達なんて出来やしない。彼女も親しい人間関係も築けない。

422: 2014/06/10(火) 14:26:35 ID:tQYFg1zQ
一人で生きたいの願ったんだ。
誰に手助けもいらないと誓ったんだ。

だからこのまま、学校生活が終わって、道端に生える草のように一生を終えると思ってたんだ。

誰も要らない。面倒臭い。嫌だ。悲しくない。辛くない。平気だ、大丈夫。一人で行きてられる。

こんなこと俺に押し付けるな。俺に何が出来る。なにも出来やしない。俺は俺だ。誰のことも知ってやれることは出来無い。


俺は───何も強くない、ただの弱虫なんだよ。

そんなこと──周りの奴らは知ってるクセにどうして俺に頼るんだ!



『周りから惨めに思われて何なんだ。周りから馬鹿にされてなんなんだ』

『君は周りから見られないと生きられない人間なの?』


『俺は君だけが欲しいんだよ』


『周りなんて関係ない。俺は君だけが必要としている。君のその素質を、君の突っ込みを、ただ君だけを…なのに、君は』


『どうして───オレ以外のことで悩んでるんだッ!』

423: 2014/06/10(火) 14:32:31 ID:tQYFg1zQ
男「───俺はぁ!!」


会長「っ…」ピクリ

イケメン「っ…!」ビクゥ


ふざけるな、違う、そうだ俺は。
こんなこと悩む必要なんて、無い。これっぽっちもない。ふざけるな、馬鹿にするんじゃない。


男「俺はお前のことで、なんでこぉおおおおおおおも悩まなくちゃいけないんだよ!?」

イケメン「うぇっ?」

男「ふざけるなっ! 周りは関係ない? オレ以外のことで悩んでる? ばっかやろう! 俺は全然関係ないだろ!?」

会長「ちょっと男君…?」

男「アンタは黙ってろ! 今は俺が話してるんだ! …良いかイケメン? 俺に対してどれだけ感謝してるかは知らないよ、けどさ!」 

男「俺もお前に感謝してるよ!! 今までのこと!! たっくさんたっくさん感謝してる!!」

イケメン「男君…?」

男「イケ友と出会えたことも! 女さんと出会えたことも! こうやって文化祭を盛り上げられたことも! 全部だ!」

424: 2014/06/10(火) 14:41:30 ID:tQYFg1zQ
過去のことなんて、俺は知らない。
覚えてないものを後悔していたって、何も始まらない。


男「それがお前の問題で出来上がったことだったとしても! 俺はそれでもお前に感謝する! そんなお前のことを…俺は凄いって思いたい!」


コイツがどれだけの悩みを抱えていても、
俺が知っているイケメンは、今のイケメンだ。

だったら『今の俺がコイツに好き勝手言って何が悪い!!』


男「俺はっ……俺はイケメンのお陰で変われたんだ! こうまで言えるように、楽しいことを楽しいって言えるように!!」

男「なのにそれは駄目なことなんて、違う間違ったことなんて、ふざかるなっ……馬鹿野郎、わかったようなこと言うんじゃねぇ!」

会長「っ…」ビクッ

男「俺は正しいと思ってる! アンタが間違ってるなんて言うのなら、コイツがやってることは正しいって俺が証明してやる! 絶対に間違ったことなんて起こさせやしない!!」


そう、俺にはアレがあるんだ。
冗談であってもいい、馬鹿なことをなんて蔑んでもいい。けど、俺とコイツは──それが【契約】なんだ!


男「──イケメン馬鹿じゃねぇの? 叔母さんのことも、前の文化祭も! 全部全部お前はばぁあああああああああああああああああああああかだよっ!」

425: 2014/06/10(火) 14:47:49 ID:tQYFg1zQ
それでいい、それがいい。
俺が求められてるのは──そんな俺だ。

男「はぁっ…はぁっ…お、俺は……絶対にツッコミを続ける、お前が間違ったことをするなら、絶対に忘れない」

イケメン「………」

男「お前が今を間違いだと思い続けるなら! 俺はそれに突っ込み続ける!」


男「──それがお前との契約だ…っ!!」


男「わかったかこのっ………冷徹鷹の目おんなっ!!」

会長「ッ…冷徹鷹の目女…っ?」ヒクッ

男「あとお前も! 返事!」

イケメン「えっ、あっ、うんっ!」

男「…………」

イケメン「……わん?」

男「よろしい」フンスー

426: 2014/06/10(火) 14:54:26 ID:tQYFg1zQ
会長「っ待ちなさい、貴方が言ってること無茶苦茶よ…!?」

男「うるさい」

会長「うるっ──!? 貴方よくもまぁ言えたものね、それがどれだけ希望的観測か…それを後悔した貴方が…!!」

男「後悔したよ。けど結局は一人で抱え込んだのが悪い」

男「なら、これからは俺はコイツに頼る。突っ込んで、なんで助けなかったって怒る」

イケメン「くぅーん」

会長「んっ、なっ!? そんなコトが救いになるとでも…!」

男「救いとか救われるとか、正直まどろっこしい。俺はやりたいからやるだけ、それだけなんだ」

男「──アンタは余分だよ、俺達の学校生活に。邪魔でしかないから、出て行ってくれ」

会長「なに、を───イケメン!」

イケメン「わん?」

会長「くっ…なによその緩みきった顔はぁ…!? 良いから聞きなさい、貴方はそれで良いの!?」

イケメン「…何を言ってるかわからないけれど、別に良いんじゃないか?」

会長「なっ…!」

427: 2014/06/10(火) 15:00:14 ID:tQYFg1zQ
イケメン「何があったのかは知らない。特に意味もないことなんだろうなって、正直な感想だな」

会長「意味が無いこと…っ? 私は貴方のことを思って、」

イケメン「いいや違うな。自分の為だろ、会長」

会長「っ……」

イケメン「またオレを懐柔させたかったんだろう。言えば周りが従う、そんなオレの雰囲気を欲しがっていただけと見た」

男(コイツ凄いこと言ってるぞ…)

会長「…違う、それは」

イケメン「けど、ごめんオレはもうアンタと付き合うつもりなんて無い。もう誰かに頼らなければ生きられない、弱い自分なんて居ないんだ」

イケメン「───オレはとっくに変わったんだ。アンタが知っている【救われたがってるオレ】は存在しない」

男「……」

イケメン「だろう? 男くん?」

男「…お前もしかして、今までのことどっかで──」


会長「──認めないわよ!! 絶対に認めない!!」

428: 2014/06/10(火) 15:05:20 ID:tQYFg1zQ
会長「私は何も得ていない! あなた達が変わったと言っても…! 私はなにも納得出来ない!」

男「うっ…」ビクッ

会長「私はそんな希望的な言葉に惑わされない! なにが突っ込みですか、なにが意味ないことよ!!」

イケメン「……」

会長「貴方はっ……イケメンは、だって、だって、違うじゃない……貴方はこんなやつで解決できるほど………」ギリッ

イケメン「…そっか」

会長「っ……」ギュッ

イケメン「なら、納得してもらうしか無いな」くるっ

男「っ?」

イケメン「ねぇ男君。もう一度、オレに突っ込んでくれないか」

男「え、なにを…?」

イケメン「君が思ってる気持ちで良いよ。例えば、そうだな。君が知ったオレに関することで、ムカつくこととか」

男「………良いの?」

イケメン「勿論。よろしくたのむ」

429: 2014/06/10(火) 15:09:25 ID:tQYFg1zQ
男「…わかった、じゃあ言うけど」

イケメン「…」

男「伯母さんのこと。抱え込みすぎ、お前の責任じゃない」

イケメン「うん」

男「なに偉くなったつもりでいるの? お前は一般人で、誰もお前のこと偉いとか思ってないから」

イケメン「…うん」

男「去年の文化祭。何があったかのしらないけど、覚えてないから感謝するなんてアホだろ」

イケメン「ははっ、うんうん!」

男「お前はお前だよ。だったら正直に生きて、黙って……その、俺と友達、してればいいじゃん」

イケメン「…ああ、勿論だよ。オレは素直な気持ちでここに居る、だから」

くるっ


イケメン「オレはもう大丈夫なんだよ。会長、だから」


──もう良いんだ。平気だよ、って。

430: 2014/06/10(火) 15:13:21 ID:tQYFg1zQ
会長「………っ…」

イケメン「そういうことだから、もう良いよ。オレはオレで好き勝手生きるから」

イケメン「…そろそろ貴女も、好き勝手生きたら良い」

会長「……ばか…っ」

イケメン「そうとも、オレは馬鹿だ。馬鹿だから突っ込みが無いと生きていけない!」ぐいっ

男「うわっ!?」

イケメン「──オレはこれからも、全ての日々を沢山楽しんでいく、青春を過ごしていく」

イケメン「それが君との契約だろ? なっ?」

男「……う、うん」テレテレ

会長「………」

男「だからその、会長さん。そのーえっとー……すみません、滅茶苦茶言ってしまって」

会長「…うるさい」キッ

男「ひっ」

会長「うるさいうるさいうるさい! ばーかっ! 馬鹿ばっかばーーーーかっ!!」ブンブン

431: 2014/06/10(火) 15:19:22 ID:tQYFg1zQ
男「うぉぉぉっ!?」

イケメン(久しぶりに見るな、この光景)

会長「何よ変O共ばっか! 良いわ、だったら変O同士仲良くしてないさい! 知らないんだから! もうもう知らないんだからぁーーーーー!!」

イケメン「言われなくてもそうするつもりさ。なぁ?」

男「え、ええ……あっハイ……」

イケメン「おーい、引いてるぞ会長ー」

会長「私のことはもう放っておいて結構! そっちで勝手に…ぐすっ…勝手に明日の計画でも練ってなさい!」

イケメン「お。そうだそうだ! 明日は一緒に周るんだろう? 午前? 午後? どっちにするかい」ワクワク

男「えっ………?」


待って、何か忘れてる気がする。


男「…あ。ごめん、明日はイケ友に…女さんと、埋まってる…」

432: 2014/06/10(火) 15:24:29 ID:tQYFg1zQ
イケメン「……………え?」

男「ご、ごめん。忘れてたっ! 今日は色々とあって……その、気もそぞろだったていうか…っ」

イケメン「……なにそれ、だってオレ今までずっっと明日のこと楽しみしてて…」

男「…イケメン…?」

イケメン「準備期間も男君オレに冷たいし、話しかけてくれないし、何があったのか聞きたくても仕事忙しくて聞けなくて…」

イケメン「だからいっぱいいっぱい本番は楽しもうって、なのに、それなのに、君は違うやつと約束してるなんて…」

男「それは、その……色々と考え事があって…」

イケメン「だったらなんでオレに相談してくれなかったんだ!!」

男「……ええ、実にそのとおりですね…はい…」

イケメン「今回のことが原因だったら! オレに言ってしまえば済む話だったろ!? なのに、なのにっ…君はまたそうやって……!!」

会長「……あの、二人共?」ダラダラダラ

イケメン「アンタは黙ってて! 男くん、じゃあ悪いと思ってるならオレと明日は過ごしてくれるよね?」

男「………。ごめん、それは無理かも」

だって、相談乗ってもらったし。それはちょっと…

433: 2014/06/10(火) 15:30:40 ID:tQYFg1zQ
イケメン「……………………そっか」

男「その、イケメン?」

イケメン「もう知らないよ君なんか友達でもなんでもない!! ばーーーーーーーかっ!!!」だだだッ

男「えっ、ちょっとイケメぇええええええええええええええ!!」

会長「…………」

男「ひっぐ…ぐすっ…ごめんよぉ…イケメン…」ドサッ

会長「……………」ダラダラダラ


【「あれ? 作戦成功した?」 と一番動揺する会長なのでした】


第十一話『俺の突っ込みは好きでやってます』

434: 2014/06/10(火) 15:34:56 ID:tQYFg1zQ
中編終


これにて無事にしりあすは終わり下編を迎えます
残り数話、もって四話でしょうか。ご付き合いできたら

また月曜日…月曜日? にお会いしましょう

ではではノシ

439: 2014/06/16(月) 00:08:55 ID:rUDS37fU
屋上

ガチャ キィ──

男「……」ソロリ

男「…やっぱり居た」


イケメン「…………」ぼー


男(今日一日は文化祭の仕事はお休み。まるまる全部自由時間、なのにアイツは…)

男(屋上でひとりぼっちに空を見上げてる。ああ、それは何があっても俺の責任なのだった…)



【前回までのあらすじ。イケメンが拗ねる】



男「どうしよう…本当にどうしたらいいんだ…うおおっ…何も思いつかない…!」

440: 2014/06/16(月) 00:19:27 ID:rUDS37fU
男(このまま放っておいて良いわけがない! そうだ、俺が作ってしまった問題…なら俺がどうにかしないとっ)

男「でもどうしたらいい…謝っただけで解決できるほど、アイツは単純に怒ってないだろうし」

男「いやそれでも、謝ろう。謝って駄目だった時に、色々と考えるんだ…!」

男「よし──行くぞ!」


会長「待ちなさい愚生徒」スッ


男「ぴゃあああーーーー!?」ビクゥッ

会長「貴方程度の思考限度でも、言葉だけの謝罪がまかり通らないことぐらい理解してるでしょうに」

男「かっ、会長さん!? どうしてここに!?」

会長「…今更過ぎる質問ね。数分前から貴方の後ろに居たのよ、まるっきり無視してくれたけれど」

男(ぜ、全然気づかなかった…)ドキドキ

会長「それで、彼は今までずっとあのような風居るのかしら?」

男「えっ、あっはい……そうですけど、いや、その……会長さんは何故ここに……?」

441: 2014/06/16(月) 11:44:55 ID:0gqR8CP.
会長「なるほど。それは重症だわ」

男(無視された…)

会長「邪険に扱いはしてしまったけれど、貴方には実は秘策となるものがあって?」

男「…いえ、だからその謝ることしか思いつかないですけど」

会長「チッ」

男「………」

会長「では退きなさい。今から私が彼を慰めに入ります、ええ、私が何とかしてみせますとも」スッ

男「ま、待ってください! なんとなく会長さんがここに居る理由がわかりましたけど……!」

男「……もう俺達には関わらないでください。これは本気で言ってます、だから…」

会長「…まだ私が貴方達の不仲を望んでいるとでも?」

男「ち、違うんですか?」

会長「ええその通りです」

男「…帰ってください」

442: 2014/06/16(月) 11:55:54 ID:0gqR8CP.
会長「話は最後まで聞きなさい。確かに私は彼から貴方を引き離すことを望んでいます、それはもう心からの願いよ」

男「…なにか他に意図があるとでも?」

会長「その通り。この件に関して、この落ち度は──実に私好みじゃない。私の計画に反する結果となっているわ」

男「好みじゃない…? 待ってください、一体何を言ってるんですか…っ?」

会長「──良いでしょう既に計画は終わっている、全てを語っても支障は無いのでバラしてあげましょう」

男「は、はぁ…なんですか、計画って」

会長「数日前。貴方が私の告白によって、彼とすれ違いが起こることは予定通りでしたわ」

会長「そして文化祭当日まで、貴方は珈琲道具を準備できずに後悔を引きずり、そして彼に悩みを打ち明けられないことも」

会長「後に……貴方が隣のクラスの委員長、そして私の愚弟によって彼の【問題】の情報を手に入れることも計画の内」

会長「最後に彼へと別れを告げ、後は私が貴方と付き合いこっぴどく振り、一人ぼっちになった彼を──私が手に入れる」

会長「後は適当に委員長当たりをあなたと突き合わせれば、全ての問題は解決する。はずだったのだけれど……フフフ、上手くはいかないものね」

男(お、恐ろしい…その計画を本気で考えてるこの人が恐ろしいし、それをやってのけかけたがもっと恐ろしい…)

443: 2014/06/16(月) 12:04:32 ID:0gqR8CP.
会長「けれど作戦は失敗に終わってしまった。これは私の理に反する」

男「…その、簡単に言えば自分の責任だから…自分でどうにかしたいと…?」

会長「……。貴方よく人から馬鹿正直と言われたりするでしょう」

男「…今は俺のことは放っておいてください。じゃあイケメンを元気つけられること、出来るんですね?」

会長「ええ、貴方には出来ないでしょうけど私には出来るわ。見てないさい、これが三年連続で生徒会長に就任した──私の本来の実力…」



会長「───よく見ておきなさい、一般生徒」バッサァアア



数分後


会長「……ぐす」プルプル

男「あの、えっと…」

会長「…今は話しかけないで頂戴っ……良い、絶対よ…っ」ぐしぐし

444: 2014/06/16(月) 12:11:34 ID:0gqR8CP.
男(頑なに顔を見せてくれない。この人イケメンの事になると大分弱い人だ…)

会長「……」ブルブル

男「…じゃあ、えっと次は俺が行ってきます。なんやかんやあっても、俺が謝らないと駄目だろうし」

会長「…行ってきたら良いじゃないの。それで結局は終わりでしょう!? どーせ私なんて要らないんでしょう!?」

男「ちょ、そんなこと無いですって! だって会長さんはイケメンの元彼女じゃないですか…だから、うーん…」

会長「自信がないなら根拠を言わないでくださる!? うわぁあああっ…あああっ…ううっ…!」

男(しゃがみ込んでしまった…ううっ、行きにくいけど行くしか無い…っ)ギィッ


男「──もうイケメンに隠し事は無しって、決めたんだ」



数分後


男「……ぐすっ」

会長「へっ! それ見なさいやっぱり駄目だったようね! フフフ、フーハハハハハ!」

445: 2014/06/16(月) 12:21:36 ID:0gqR8CP.
男「取り付く暇もなかった…何も聞いてくれなかったです、イケメンの奴…」

会長「ククク。でしょうでしょう、その程度が貴方と彼の絆なのでしょう──やっと現実を直視できたようね」

男「………」

会長「な、何? 何よその顔は…?」

男「………」

会長「そ、そんな目で私を見ないで下さらない? 私は、その……ええ悪かったわね! 結果は違えど私が原因でしょうから!」

会長「なら、ここは──不承不承ながらも共同関係を築きましょうか。お互い意見を出し合い、最良の解決策を導き出すのよ」

男「…何か案でもあるんですか?」

会長「あったら言い出さないでしょう。少しは考えてから口に出しなさい」

男「……はぁ、そうですね」

会長「例えば彼の好きな食べ物をもって行く。それを私と貴方が美味しそうに食べて、彼が興味をもった瞬間……連れ出すのは?」

男「犬ですかイケメンは」

会長「犬っぽく無くて?」

446: 2014/06/16(月) 12:28:14 ID:0gqR8CP.
男「た、確かに! それじゃあ本当に行ける可能性も…?」

会長「やって見る価値はあるようね。では、さっそく出店に向かい調達しに行きましょう」

男「は、はい!」

男(…やることやってみるんだ。諦めたりはしない、そういうのはもう…終わりにしたんだ)

男(よし。頑張ろう───あれ? でも何か忘れてるような……)


~~~~


女「……………」タンタンタンタンタンタン

ダン!

女「おっそい! とっくに待ち合わせ時間過ぎてるっていうのに、何やってんのよアイツはぁーーーーー!!」スタスタスタスタ


~~~~


男(一番忘れちゃいけないことを忘れてる気がする…)

447: 2014/06/16(月) 12:35:11 ID:0gqR8CP.
会長「3つほど。良いかしら」

「会長さん!? え、ええどうぞ貰ってください! お金なんていいですからどーぞどーぞ!」

会長「いえ、会長であれど生徒は生徒。文化祭を盛り上げる一員に変わりない、立場を利用するつもりは無いわ」

「でもでも! その、ここで出店をやれるのは会長さんの一言があったお陰で……!」

会長「なら結果で見せて頂戴。貴方の収入がどの学級よりも優秀であれば、私も嬉しい限り」

「うっ……ありがとうございます! 頑張らせて頂きます! うぉおおおおおおおおおおおお!!」

会長「期待しているわ」

「かいちょー! こっちのかき氷も美味しいですよー!」

会長「後で頂くわ」

「イカ焼きも丁度いい感じに焼けてますー! 試食いかがっすかー!?」

会長「勿論」

男「……」

会長「ん。何かしら」

男「…いや、その…人望あるんだなって、思いまして」

448: 2014/06/16(月) 12:42:41 ID:0gqR8CP.
会長「あって損がないものは、どれだけ多くても際限なく得る──それが私のモットーなのよ」ボソリ

男「それは何とも…凄いですね」

会長「生徒一人一人の願望は、イベント事により色めき立つ。生徒会長とはその願いをリアリティに近づけた結果として残すべき」

会長「…それは怠っていては、三年連続就任は無理だったでしょう」

男「………」

会長「貴方もボーとしないで、彼のことを思うなら調達しに行きなさい。事は早急に片付けなければならないものよ」

男「あ、はい! 頑張ります!」


『キーンコーンカーンコーン──放送部からの呼び出しの連絡です、二年B組の男、二年B組の男、至急放送部までお越しください、繰り返します』

『二年──早く着なさいよあんぽんたん! なにやってんのよアイツ…!──え、声拾ってる?──ちょ女友アンタなにやっ──プツン』


会長「……」ピキィ

男「…あ」

449: 2014/06/16(月) 12:52:12 ID:0gqR8CP.
会長「神聖な放送部で、一体彼女は何を…」ピキピキ

男「わ、忘れてた!? だぁー! どうしよう!?」


数十分後 屋上ドア前 階段の踊り場


女「……」じぃー

男「ごめん! 本当にごめんなさい! すっかり忘れてて、いや、本当に俺ってなにやってんだろう…!」

女「別にいいわよ。大体の状況は聞かせてもらって把握出来てるし──で、隣の奴はなんなの?」

会長「生徒会長よ」

女「知ってるわよッ! それにあんた等が持ってる文化祭エンジョイしちゃってる物々は一体どういうワケ!? 言ってみなさいよこの仮面優等生!」

会長「年上に向かってなんて言い方なのかしら。わが校にこんな野蛮な生徒が居るなんて、悲しい限りだわ」

女「よく言ったものねこの腐れ外道…ッ! 昔に変Oを誑かせただけじゃ飽きたらず、今度は眼つき悪男までちょっかい出し始めたってワケ!?」

会長「言いがかりはよして頂戴。一体、貴女が、私と彼の関係について、何を知っているのかしら?」

女「うぐっ……ちょっと男!? これはどういうことよ!? アンタはこいつのこと許したっていうの!?」

450: 2014/06/16(月) 13:04:07 ID:0gqR8CP.
男「許したっていうか、その、今は共同関係を組んでるっていうか……」

女「共同関係!? 今すぐやめなさいそれ! コイツと組んでても何も得られることはないわよ!」

会長「それを決めるのは貴女じゃないわ。女さん、昔から変わってないようね──そういった自己中心的思考は身を滅ぼすわよ」

女「ッ……アンタの知れ顔が張り付いた人生よりも断然! マシよ仮面怪人…!」

会長「仮面怪人…ッ?」ピキッ

男「今は喧嘩は駄目だって! 二人が過去にどんなことがあったのかは知らないけど、今はイケメンの為に動かないと…!!」

女「…だったらアンタが謝れば終わる話でしょーが。さっさと謝って着なさいよ、そして文化祭周るわよ一緒に!」

男「もう謝ったよ…けど、話を聞いてもらえなかった」

女「はぁ? じゃあもういいわよ、アタシが諦めるから二人で行こうって言えば?」

男「うっ…で、でも……」

女「馬鹿ねあんぽんたん。あたしのことなんて気にしなくていいのよ、仲が悪いのは嫌だってあたし言わなかった?」

男「…言った」

女「わかってるなら、ちゃんと言う! すれ違いは駄目だってことはあんたとあたしがよく知ってることでしょうが! ほら行く行く!」グイグイ

男「…うん」ガチャ

451: 2014/06/16(月) 13:15:15 ID:0gqR8CP.
会長「…随分と男君を面倒見るわね、貴女」

女「色々あるのよ。てーいうか勝手に観察しないでくれる?」

会長「そう──彼が貴女を差し向けるワケだわ」

女「何?」

会長「いえ。何も」

女「……アンタがどんなつもりかは知らない。けど、これから先は男を巻き込んでしかも変Oにちょっかい出すのは、絶対に許さないから」

会長「あら。今回のことは許してくださるのかしら?」

女「ゆるさないわよ。男に変Oの──叔母さんこと言ったことも、全て全部、ドロップキック決めたいぐらい怒ってる」

会長「ならどうして?」

女「………。アイツが怒ってないからよ、あの眼つきの悪い男がアンタを怒ってないし、それよりも今はアンタを怒るより変Oをどうにかしないとって思ったワケ」

会長「…出会った当時よりも幾分、落ち着きを持ったようね貴女」

女「うるさい仮面怪人。アンタも変O以外に関心を持つなんて変わったわね」


ガチャ キィ…


女「! どうだったイケメンのやつなんだって…?」

452: 2014/06/16(月) 13:25:28 ID:0gqR8CP.
男「……」フルフル

会長「でしょうね。今更虫がよすぎる、のではなく──後に引けないが正しいかしら」

女「なんなのよアイツッ!? いっちょぶん殴ってわからせてやったるわ……ッ!!」

男「ま、待った! ここは最初の作戦通り行こう!」

女「…なによ作戦って」

男「会長さんと俺が考えた、作戦。イケメンに興味を引かせてって奴、それが今は…一番の方法だと思う」

会長「あら。貴方も事の次第を掴めてきたようね──ふふふ、嬉しい限りだわ」

女「アンタは黙って。じゃーいいわよ、アタシも手伝うわ」

男「え、良いの…? せっかくの自由時間なのに…」

女「ばっかじゃないの? 放って置けるわけないじゃない!」

男「あ、ありがとう…その、感謝してる」

女「えっ? あ、うん……いっいいわよ別に、これぐらいっ」

会長「あら。あらまーそういう…」

女「アンタは黙ってなさいよ…ッッ?」

453: 2014/06/16(月) 13:34:19 ID:0gqR8CP.
屋上

イケメン「………」


男「あーたこ焼き美味しいなぁ」

会長「こっちの綿飴も最高よ」

女「ちょ、ちょこちっぷの降りかかった……ちょこばなな! もサイコー!!」

男「…へ、へーどんな感じ? 俺も食べてみたいんだけど…」

会長「綿飴よりも美味しい?」

女「へっ!? あ、うんうんうん! マジで美味しいからた、たべたべてみなさいッ!!」スボァッ

男「おごぉっ!?」ドスッ

会長「あら。まるごと口に入ったわ」

女「ぎゃあーーーー!? ご、ごめっ! 手元狂って大丈夫アンタ!?」

男「」

会長「しんでる…」

女「氏んでない! 息してるじゃないのよ! 本当にごめんなさい! あ、ああ…っ!」

454: 2014/06/16(月) 13:39:46 ID:0gqR8CP.
イケメン「………」


男「…やっぱり女さん、俺の命狙ってるだろ……前の時も屋上で…」ムクリ

女「ちっ違うわよ!? 違う違う!」

会長「実は過去に私も狙われたことがあるわ」

男「え……」ソロリ

女「狙ってないわよばっかじゃない!? それは軽く…後ろから延髄蹴りをきめようとしただけであって…っ」

会長「こっちの綿飴も美味しいわよ?」

男「あ、頂きます」

女「ちょっと聞きなさいよ! あ、あー!? それって間接キスってやつじゃない? ふったりともラブラブー!」

会長(お子様みたいなことを)

男「うえっ? あ、そのその…ごめんなさい、会長さん…っ」

会長「良いわよ別に。そもそもチョコバナナの時点で間接キスは始まってるんじゃなくて?」

女「へっ? っ~~~~!! ばか! あんぽんたん!」スパン

男「むごぉっ!?」

455: 2014/06/16(月) 13:44:45 ID:0gqR8CP.
~~~~~

会長「駄目ね」

男「……」ヒリヒリ

女「ううっ…アイツまったくの無表情でことの成り行き見てたじゃない…」

会長「もっと彼が興味を引くことをしなければ…」

男「あ。そうだ、女さんのクラスって確か──」

女「や、やだ!」

男「──まだ何も言ってないけど」

女「どーせ着ろって言うんでしょう!? メイド服を!」

会長「やりましょう」

女「アンタは黙ってて! じゃなくて、だめよっ! あれはもう着ないって決めたんだから…っ」

男「痛いなぁ頬…後、口の中で血の味がするし」

女「おっ!? おっうっ……ううぅぅぅうっ……ッ!」

会長(やるわね男君。素敵よ)

~~~~

456: 2014/06/16(月) 13:51:28 ID:0gqR8CP.
屋上

イケメン「………」


女「っ……っ……」モジモジ

女「いらっしゃいませー……こちら男女共同メイド喫茶、ワンダフルオフェンダーですぅ……」

女「男も女も関係ないっ! 秀麗と可憐に満ちたーっ……ワンダフルなひと時を、ご主人様に……」


イケメン「……」


女「…お届けしまっす☆」キラリン

イケメン「……」

女「……」

イケメン「……ふっ」

女「いい度胸じゃないアンタッ…! その顔が今の原型を留めないほどのに殴り倒すことになるわよ…!!」ダダッ

男「だ、駄目です止めます!」がしっ

会長「こらえ性のない子ね」

457: 2014/06/16(月) 13:57:09 ID:0gqR8CP.
~~~~~

女「もうやだ」プルプル

男「ど、どうします? なんかもう、色々と滅茶苦茶になって来てるような…」

会長「……」

男「…会長さん?」

会長「何か、聞こえる──貴方の携帯鳴ってないかしら?」

男「え。本当だ着信が入ってる」ピッ

『おっとこちゃーん。そろそろ待ち合わせ時間だっけど、大丈夫かー?』

会長「それよ!」びしっ

男「あ。うん、今は…えっ?」

『んあ? この声……姉ちゃんか?』


~~~~


イケ友「ほっほっほー! 女っちいい格好してんなー! なははははは!」

女「ぐっ…! 黙ってなさいアホ!」

458: 2014/06/16(月) 14:04:36 ID:0gqR8CP.
男「大体のことはそんな感じ。けど、イケ友を呼んでどうするんですか…?」

会長「事は急を要するわ」

男(あ。考えてないなこの人)

イケ友「まぁわかったけど、姉ちゃんちょい色々やり過ぎだわ。怒るぞオレ」

会長「黙ってなさい愚弟。文句があるのなら後で聞いてあげますから」

イケ友「そっか。じゃあ男ちゃんに謝ったらやってやんよ、話はそれからだ」

会長「……」

イケ友「おいおい意外そうな顔して、当たり前だろ舐めてんのか? オレの親友困らせておいて、あーはいそうですかって認められるわけねーだろ」

男「イケ友…」

イケ友「男ちゃん。こーいうのは流れに任せて終わらせていいもんじゃねーよ? なっ?」

男「…うん」

女(ていうか謝ってないのねこの仮面怪人…)

会長「…貴方も変わったわね、なにがあったのかしら」

イケ友「そりゃ変わるさ姉ちゃん。アンタと姉弟だったの何年前だと思ってんの? じゃーほら謝る謝る!」

459: 2014/06/16(月) 14:10:24 ID:0gqR8CP.
会長「…男君」

男「あ、はいっ」

会長「ごめんなさい。私の身勝手に使ってしまって、本当に申し訳なく思ってるわ」

男「…大丈夫です、だって本当のことだったから」

会長「本当のこと?」

男「はい。貴女が言ってくれたことは全部…俺にとって考えるべきことだったのは、本当だったんです」

男「結局はああいった感じで──否定する形になりましたけど、それでも、俺は大丈夫です」

会長「………」

男「なので、今はイケメンのことを考えましょう。えっと、これで良い? イケ友?」

イケ友「おっけー!」

女「…そのモノマネ気持ち悪いわよ」

会長「お人好しね貴方」

男「そうでしょうか。俺よりも貴方が…そう見えたり、しますけど」

会長「何をわかったようなことを。…まぁ許してくださるのなら、結構」

463: 2014/06/16(月) 22:08:35 ID:kpum5J1E
女「それでアホには案でもあるワケ?」

イケ友「ようするに! イケメンのやつを笑わせればいいんだろ?」

会長「結論から言えばそうなるわ…笑わせるとなれば、この子の出番でしょうけども」

男「……。え? 俺ですか?」

女「今は駄目でしょ」

会長「そうね。確かに無理だわ」

男「ううっ…そうですよね…」


イケ友「ならおれっちがやるぜ!」ピカリン


女「はぁ? アンタに出来るんだったら、とっくにあたし達が出来てるわよ」

会長「待ちなさい。愚弟とあっても、こと馬鹿らしい案を導き出す天賦を持った弟だったわ」

イケ友「くっくっくっ──見てろ男ちゃん! 分かりやすい笑いはおれに任せろ!」

男「が、頑張ってくれ!」

イケ友「おうとも! んじゃいっちょ女っち。ちょいお願いがあるんだが…」

女「…まさかアンタ」

464: 2014/06/16(月) 22:18:15 ID:fanTRZas
~~~~~


イケ友「やりますわよ」バッサァアア


女「やりやがったわコイツ…」

会長(眼が腐る)

男「に…似合ってるよ、イケ友…」

イケ友「ウフフ。皆様褒めてくださるなんて、嬉しい限りだわ」

女「アンタ…ごめん笑えないわちょっと。メイド服がぱっつんぱっつんじゃないの…」

イケ友「体作りは乙女の嗜みですわ」

男「ブフッ! ごめ、ちょっとその口調やめてくれイケ友、ブホォ」ピクピク

イケ友「えー? 似合ってない男ちゃん? 姉ちゃんのモノマネしてるんだけどなぁー」

会長「……!?」

女「さっさと行って来なさいよ。こっちは見てるだけで疲れるから…」

イケ友「よっしゃー! 行ってきますわよ!」ダダダッ

男「くっぷ…! ふふふっ」プルプル

465: 2014/06/16(月) 22:26:23 ID:fanTRZas
屋上


イケメン「……!?」

イケ友「リーリー、逃げられると思うなよイケメン」ザッザッザッ


女「ぎゃあああ!? がに股してるからパンツ見えてるじゃない! きもぉおおおお!」

会長「あの動く汚物は誰が生み出したのかしら…ううっ、見てるだけで妊娠しそう…」

男(本当にこの人達は歯に衣着せないよな…)


イケメン「っ……」プイッ

イケ友「お? イケメン今笑っただろ? おーん? 笑ったですわよね?」

イケメン「………」

イケ友「ほお…無視するのですわ? すわすわ~ふんふ~んくるくる~り~ん♪」クルクル

イケメン「……?」

イケ友「イェイ☆ 今の誰かのモノマネだったんだけど、わかるか?」

イケメン「………」

466: 2014/06/16(月) 22:41:40 ID:fanTRZas
イケ友「なんとだな──中学生の頃の、姉ちゃんだ」

イケ友「イケメンと付き合ってる時どういったふうが可愛いか、鏡の前で研究してた。その後『違うわねこれは…』と自己嫌悪してたぜ」

イケメン「……っ…」プルプル


会長「命が惜しくないようね愚弟ッ!!」ダダッ

女「ブホォッ! あははははははははは!! ひぃー!!」

男「ちょ、待ってください会長さん! ヤバイですって流石に鉄パイプは!」がしっ

女「なによそれっ…アンタも女の子らしい悩みがあったわけね、ブフッ! うひひひひひ!」バンバンバン

会長「あの馬鹿も殴って私も氏にます!! 止めないでくださる!? いやぁあああああああ!!」ガチャ ダダダダダ

男「あ……かいちょおおおお!! イケ友! ヤバイヤバイ後ろ! 後ろ見て!」


イケメン「……!」ビクゥ

イケ友「んぁ? なんだよ男ちゃん、いい感じに空気温まって来たってのに───」

会長「……ッ!」ブンッ

イケ友「──洒落になってないぜ姉ちゃん!?」ヒョイ

467: 2014/06/16(月) 22:50:00 ID:fanTRZas
~~~~~~

イケ友「氏ぬかと思った…マジ勘弁、姉ちゃん剣道段持ちだろ…よく避けれたわおれっち…」グテー

会長「……………」

男(これ以上追求しない形で、話題を流す方向性だろうな、うん)

女「あー笑わせてもらった。それで、案外効果あったみたいね。女装ってやつも」

男「効果っていうのか…確かにイケメンの奴も笑いかけてたけど」

会長「──名案が思いついたわ」

男「えっ? 本当ですか!?」

女「あら奇遇ね。実はあたしもよ」

男「え…? 女さんも…?」

会長「失敗は成功のもと。この件で私達は学ぶべき教訓は、更なる高み」

女「鍛えるべき要因は新たな人柱。って所かしらね?」

男「……………ま、待って! なんだって言うんだその笑みは! 会長さん!? 女……さん…?」

468: 2014/06/16(月) 22:57:11 ID:fanTRZas
会長「うふふ」ずいっ

女「あはは」ずいっ


男「いっ…嫌だ! やめてくださっ、ちょやだぁーーーーーーーー!!」



数十分後


女「おお…なによこれ…」

会長「あら」

男「ううっ…何するんですか、二人共…っ」ギュッ

女「なんで似合ってるワケ、なんで可愛いのよ!」

会長「背も男性に比べ小さめ。小顔で童顔、眼つきの悪さも一味買って──ふむふむ」ジッ

男「か、観察しないでください! ジロジロとみないで!」

女「ある意味とんでもないもの生み出しちゃったわコレ…アホ、これどう思う?」

イケ友「抱けるな」

男「ひぃっ!?」

469: 2014/06/16(月) 23:08:51 ID:fanTRZas
会長「不純正校友は停学、または退学よ」

イケ友「なら男ちゃん。この格好で客引きしようぜっ? アホどもバンバン釣れるぜ!」

男「やだ!」

女「くっ、一々仕草が可愛いわね」

男「なんでさっ!? ううっ…こんな格好嫌だってば…っ」

女「っ…今のもっかい言ってくれないっ? その格好で、いやだって…」ゾクゾク

男「なんか顔が怖いけど!?」

会長「さて、早速行きますわよ。これほどのクオリティであれば彼も動くでしょう」

イケ友「襲ってきたら任せろ! 助けてやっから!」

男「襲われる前提なの!? 嫌だ嫌だ…! 行きたくない…!」ブンブン

女「ほらさっさと行って来なさい!」ぐいっ


屋上

イケメン「……!?」ポカーン

男「ううっ……あの、その……えっと……」もじもじ

470: 2014/06/16(月) 23:14:15 ID:fanTRZas
イケメン「………」

男「色々と理由があって、こんなメイド服着たくなかったんだけど、ううっ」


女「あんぽんたん! さっさと練習したセリフ言いなさい!」

会長「貴方がやらなければ誰がやれると言うのですか!」

イケ友「やっちまえ男ちゃん!」


男(滅茶苦茶なことを言って……ぐぅうっ! もう良いなるようになれ、だっ!)がばぁ

イケメン「……」

男「あの! その……ご主人様…っ」ギュッ

男「自分のようなドジでおっちょこちょいなメイドですが、末永くご主人様に…っ」

男「──仕えたいと思ってます、よ?」


イケメン「……!」がばぁ ぎゅううううう


男「うひぃいいいいいいいい!?」

471: 2014/06/16(月) 23:22:06 ID:fanTRZas
女「あっ! あの変O、変Oになった!」

会長(彼はメイド服が好み、っと)

イケ友「ぉぉおおおおおおおっ! 待ってろ男ちゃん助けるぜぇぇえええええええ!!!!」ダダダダダ


男「ちょ、やめっ! 頭を撫でるな! あっ…いやっ…!」ピクン

イケメン「……」なでなで

男「なんで俺っ男なのに、そんなこと、うわああああっ…ああああ…ああっ…!!」ボロボロボロ

イケ友「男ちゃんをなかすんじゃねえええええええええええ!!」ピョン ズバァ!!

イケメン「…」ヒョイ

イケ友「うごっ!?」ドサァァアア

男「うっ…ひっぐ、イケ友ぉ!?」

イケ友「ああっ…待ってろ男ちゃん! おれは絶対に救ってみせる!!」

男「イケ友ぉ…!!」

イケメン「フン」

イケ友「うぉおおおおおおおおおお!!」ダダダダダ

472: 2014/06/16(月) 23:26:58 ID:fanTRZas
女「ナニアレ」

会長「楽しそうね、ん」prrrrr

女「電話?」

会長「生徒会の子からだわ。もしもし、なにかしら?」

女「………」

会長「──なん、ですって! もう来てるって言うの!? 今何時──既に約束の時間…っ!?」

女「ど、どうしたの?」

会長「くっ…下手に時間を使用しすぎたわ」ピッ

女「誰かと会う約束してた感じ?」

会長「ええ、そうよ。貴女がよく知っている人物」

女「あたしが?」

会長「前会長よ」

女「………。お姉ちゃん来てるの!?」

473: 2014/06/16(月) 23:40:25 ID:fanTRZas
校門前

店員「全くあの子は肝心な時にヘマするもんなー」

「そういう所が可愛いの。普段しっかりしてるのに、ここぞというときにドジをする。素敵よ~うふふ」

店員「あんたの懐は深いわ。私には無理無理。わざわざ駅前クレープ屋休業してまで来たってのに」

「へぇ~そうなの~それは困ったわねぇ」

店員「いや待って。女姉が無理矢理連れてきたから休業したんだけど…わかってんの?」

「え? そうだったっけ? んー……あ、来たよ店員ちゃん! きゃー会長ちゃーん!」フリフリ


会長「す、すみません前会長! 私としたことが、このような失態を…!」ペコペコ

女姉「良いのよ良いのよ、うんうん! 何時もどおりドジっ子で安心したわ~」

店員「相変わらずだなドジっ子。周りを困らせてねーだろね?」

会長「うっ…店員さんも居らしたのですか、お久しぶりですわ」

店員「私に至ってはコイツが付いて来いって言うからさ。仕方なくだっつーの」

会長「それはそれは…私も近々、買いに行かせて貰います」

店員「しっかりと買え。たんと買え。私に裕福な生活をもたらせろ」

474: 2014/06/16(月) 23:50:09 ID:fanTRZas
女姉「うふふ! 何だか四年前に戻った気分ね~貴女が入ってきた時のこと、覚えてるわ~」

店員「そういった風に思い返せるほどいい思い出だったかな…」

会長「…当時の私は井の中の蛙でした」

女姉「過ぎたことは全部、いい思い出よ? それでそれで会長ちゃん。一つ気になることがあるんだけど~?」チラリ

会長「なんでしょうか?」

女姉「後ろの人達、なんなのかな?」

会長「えっ?」くるっ


女「……うう、なんでこの格好で来なくちゃいけないのよっ」

イケ友「イカ焼きは何度食ってもうめぇな。男ちゃんも喰う?」

男「待って…どうして平然としてられるの…? この格好凄く目立ってるよ!」


会長「………」ピシィッ

店員「……。あの馬鹿は何をやって──男くん!? きゃあああああああああなにそのかっこぉおおおおおおおおお!!」ダダッ

女姉「あらあらうふふ」

475: 2014/06/17(火) 00:03:02 ID:hcHe.81E
会長「貴方達、一体何故そのメイド服のまま…」

女「アンタが制服入った紙袋持って行っちゃうからでしょうが!!」

イケ友「何時帰ってくるかわかったもんじゃねーってことで、追いかけてきたんだぜ。って姉ちゃん居るじゃん!」

店員「男くぅううん! なになになにっ? どうしちゃったの? なにがあったていうのっ? はぁはぁ…そっち方面に路線変更!?」

男「ひぃっ!? て、店員さんがどうしてここに…っ?」

店員「いや~来てよかった、マジで。眼福眼福、ほらほら女姉! この子が噂の男くんだって!」

女姉「あらまあまあ。この子がそうなの~? それはそれは~同人誌でお世話になってます、作家の女姉です」ペコリ

女「お姉ちゃんどういうこと!? この前描いてた漫画ってもしかして……男がモチーフってワケ!? ぎゃあああ! なんていうもの手伝わせるのよ!!」

男「手伝うって何…?」

女「いや!? なんでもないって、言うか……そのあんたが知ったら傷つくっていうか……」そわそわ

女姉「どうして言い淀むの? 内容は男君がイケメン君のイチモ【バキューン】をして星空のもと互いの直腸を【ドーン】で攻め合いと言った感じの~」

男「え」

店員「あれ新作出来たの? 今度見せてよ」

女「ち、ちちっちちちちがうのよ男ぉ!? お姉ちゃんのジョークジョーク! 忘れなさい全てを!」

476: 2014/06/17(火) 00:13:17 ID:hcHe.81E
会長「…あの前会長、そろそろ校内を案内したいと」

女姉「ん~けど、会長ちゃん忙しいじゃない? 当時のわたしも忙しくて忙しくて、秘密に販売してた同人誌店も見回れなかったしねぇ」

会長「なん、ですか…初耳なのですが、それは」

店員「あれ知らないのドジ子? この学校じゃ伝統になってるやつだけど、把握できてないとなると──優秀な生徒会委員が居るなこりゃ」

会長「……!?」


男「もう何も信じない…友達なんて要らない…一人でいいんだ…」

女「ちょ、待って本当に待って! だぁーもうお姉ちゃんほんっとあんぽんたん!」

イケ友「それおれっちも出てるの? 出てるなら読ませて!」

女「出てないわよ馬鹿ね! 純愛ラブストーリーだから出るわけないじゃない!」

男「純愛…? 俺とイケメンが出て…純愛…?」

女「あっ」


女姉「そうねぇ~あの子達に案内してもらおうかしら。うんうん、そうだわそれがいいと思っちゃった!」ぽんっ

店員「でたぞー女姉のきまぐれがー」

477: 2014/06/17(火) 00:21:48 ID:hcHe.81E
会長「し、しかしそれでは約束が…」

女姉「うふふ。良いのよ約束なんて、素敵なことがあったら破ってもいいの。忘れちゃった? わたしが言ってたことだけど」

会長「…ですが」

店員「私はドジ子より男君に案内してもらったほうが楽しそうだわ」

会長「……」

女姉「こら、そんなコト言わないの店員ちゃん。だからね? 会長ちゃんも、頑張ってお仕事やってくれたほうが嬉しいと思うから」

会長「…はい」ペコリ

女姉「うん! じゃあひと通り済んだら、ここで待ち合わせね」ぽんっ

会長「えっ? なんですか、ひと通りとは…」

女姉「う~ん? 会長ちゃんはやらなくちゃいけないこと、あるんでしょう? ほら、誰かに謝らなくちゃいけない~とか」

会長「そ、それは…! 何故…?」

女姉「顔をみればわかるわよ~うふふ、スッキリして来なさいな。ちゃーんと悔いなく終わらせること、いいわね?」

会長「………」コクリ

店員「話は終わったわね。んじゃー男ちゃーん! 着替えちゃ駄目! そのカッコで案内して!」

478: 2014/06/17(火) 00:28:20 ID:hcHe.81E
会長「…前会長」

女姉「うん?」

会長「私は会長として務まる、身丈を持っているでしょうか」

女姉「もちろん! どんなことがあっても、会長ちゃんが何を思ってても」


女姉「──素敵な生徒会長さんなのは、見ててわかっちゃうんだから!」


会長「………」

女姉「あと数ヶ月。頑張ってね」フリフリ

会長「はい。ありがたいお言葉、感謝しますわ」ペコリ

会長「……」

会長「……見てるんでしょうから、すぐに行くわ」スッ チラリ


イケメン「……」フリフリ


会長「……」スタスタ

479: 2014/06/17(火) 00:36:10 ID:hcHe.81E
屋上

イケメン「貴方が今年の文化祭に気合を入れてたのは、女姉さんが来るからだったんだ」

会長「…見窄らしいものを見せたら、今後一笑顔見せ出来ないもの」

イケメン「実に会長さんらしい考え方だね。出会った時から変わってないようだ」

会長「………」

イケメン「ありがとう。さっきまでの屋上での流れ、心底笑わせてもらったよ」

会長「…単に貴方が怒ってないことぐらい分かってたわ。あの委員長の子も、愚弟ですらも気づいてたはずよ」

イケメン「だろうね。くっく、気づいてないのは男くんだけと見た」

会長「満足いただけたようで嬉しい限りだわ。それで、その……今回のことは、許してもらえたのかしら」

イケメン「勿論だとも。そもそも貴女に対して怒ってもないし、男君の件も、青春のひと味の為に使わせてもらっただけ」

会長「……」

イケメン「貴女が舞台と段取りを上手く回してくれたから、あんな風に──男君が楽しめた、感謝でいっぱいだよ」

会長「貴方は?」

イケメン「オレ? オレのことはどうだっていいんだ、今は男君だからね」

480: 2014/06/17(火) 00:45:21 ID:hcHe.81E
会長「私は──彼の為にやったわけじゃないわ。貴方が喜んでくれると思ったから…」

イケメン「ふぅん。そのことを初めに全否定したら、泣きそうになったのに諦めて無かったんだ」

会長「…言わないで頂戴」プイッ

イケメン「素直が一番だよ会長さん。悔しいなら頑張る、負けたくないなら頑固になる。案外楽しいよ、そういった生き方も」

会長「…貴方にはそう見えないのかしら。私の生き方は」

イケメン「ああ、見えないね。そればっかりは当時から何も変わってないよ、貴女は」

会長「……」

イケメン「本音を隠し、仮面をつけて優等生を気取る。見え見えならまだしも、完璧になりきってたら手がつけられない」

イケメン「そんな貴女に──当時のオレは好ましいと思えていたけど、今じゃ違うよ。少し可愛そうだ」

会長「可哀想…ですって?」

イケメン「そうとも。可愛そうだ、貴女はもっと本音をさらけ出してもいいはずだと思う」

会長「そんなの、誰が望むというのよ。私は私であるからこそ、周りから求められている…」

イケメン「その私は本当に貴女なのかな? …オレにはそうは思えない」

会長「何をわかったようなことを…付き合っていたとは言え、そこまで言い放たれるほど許したワケじゃないわ」

481: 2014/06/17(火) 00:51:58 ID:hcHe.81E
イケメン「そっか。じゃあ今回のこと楽しくなかった?」

会長「…え?」

イケメン「屋上でのことだよ。男くんと女、イケ友にやったこと──貴女は楽しくなかった?」

イケメン「久しぶりに見たよ。貴女が叫んでいた所、泣いていた所も、怒っていた所もだ」

イケメン「オレには随分と楽しそうに見えた。勘違いじゃなかったら、いいんだけどな」

会長「…楽しく、なんて」

イケメン「楽しいって思えることは、素直になれた時なんだと思うんだ」

会長「……」

イケメン「臆面もなく叫んで、泣いて、喚いて、やりたいことを言ってのけて──周りが認めてくれる空間ってのは」

イケメン「実に青春だと思わないか? 楽しくて笑みが溢れるよ」

会長「……」スッ


喜怒哀楽。それら全て不要なもの。
私という存在を作り上げる素材には要らない。

482: 2014/06/17(火) 00:56:57 ID:hcHe.81E
会長「…私は冷徹な女で良いのよ」


望まれていない。だから不必要。
笑うことも怒ることも泣くことも楽しむことも、一時の道具でしか無い。


会長「それを知っているから、私は切り捨てた」


誰にも分かってもらわなくてもいい。
知って慰めにでもあったら、警察沙汰になり得るほどの暴力をふるう自信がある。

誰にも生き方を否定させはしない。
望まれないから、私はそんな【私】を心から望んだ。


会長「…それは」


大切な大切な本心。
屈強で頑固な私は、一切の余裕を許さない。



イケメン「だけど、オレは信じるよ」

483: 2014/06/17(火) 01:03:37 ID:hcHe.81E
イケメン「新しい自分を信じる。誰かが救ってくれるでもいい、そういった環境で変わるでもいいさ」

イケメン「そういった自分を探そうという──頑張ることは、絶対に悪いことじゃないんだ」

イケメン「…オレは歩き出す。過去の自分は置いていかないさ、ちゃんと連れて行ってやるつもりだよ」

イケメン「駄目な自分はダメだって怒ってやればいい。出来なければ、他人に頼んだって良いんだ」


イケメン「そう男君は──言ってくれたからね」


会長(…ああ、そっか)


私は嫉妬していたんだ。
彼も私と同じだと思っていたのに。何故、彼は笑えるんだと。

先の見えない現実に囚われていた彼を、何故救えたんだと。

私には出来なかったことを。共に頑張ろうと思っていた人を。

あの彼が──救えたことに、悔しかったんだ。


会長「…これが本音かしら」

イケメン「うん?」

484: 2014/06/17(火) 01:10:27 ID:hcHe.81E
なら、どうしたらいい。
なにが一歩になり得るのか。本音を知って、私はなにを望めばいい。

会長「教えて頂戴。私はなにをすればいいのか…どう一歩を踏み出せばいいのか」

イケメン「そんなの簡単じゃないか」

会長「簡単じゃないわ。難しくて、何も分からない…慣れてないもの、自分のことを考えるなんて」

イケメン「そうかな? オレにはわかっているように思えるけど」チョンチョン

会長「え…?」ポロポロ

イケメン「さっきからずっと、出てた」

会長「うっ…なんで、どうして涙が…ひっぐ…」


悔しい。ああ、悔しい。
好きだった人を、心から愛した人を取られるなんて。

別れたくなかった。もっと彼と好きあっていたかった。
けど彼は私から離れていった。それは新しい自分を望んだから。

私では彼を救えないと、お互いに知ってしまったから。

私は絶対に彼を、イケメンを笑わせて見せると思ってたのに。

485: 2014/06/17(火) 01:18:17 ID:hcHe.81E
会長「うっあぁっ……どうして、なんで…っ」


でも駄目だった。私には彼を救うことは出来なくて、ぽっと出の彼が笑わせた。
辛くて窮屈で、胸が今にも破裂しそう。

ああ、私は彼が本当に大好きで、今のいままでもずっとずっと──


会長「ごめ、んなさい…私は本当に不器用で、貴方に何もしてあげられなかった…っ」

会長「やりたいこともできないで、イケメンを困らせてばっかりだった…でも、本当に……イケメンのこと好きだった」

イケメン「うん」

会長「信じて、お願い。これだけは貴方に誓わせて───……私は貴方を救いたかった」

イケメン「ああ、わかってるよ」

会長「だから、だから……ぐすっ! じゅるるるる! っはぁ~、私は……」


私は、心から望もう。
きっとこの言葉は私の一歩となるだろう。


会長「──貴方が今でも好き。だから、男君には負けないっ」

486: 2014/06/17(火) 01:24:31 ID:hcHe.81E
イケメン「……」

会長「それが、私の本音よ」

イケメン「そっか。それが会長さんの本音か」

会長「ええ。私が望む生き方として、やらせてもらうわ」


イケメン「なるほどね。──らしいんだけど、どうする男君?」ヒョイ


会長「へっ?」

『えーあー…熱い告白でしたね、はい』

イケメン「数年越しの本気の告白に、思わず頬が熱いよ」

会長「ちょっとー!? なんですかその携帯は!?」

イケメン「スピーカーモードで、あちらに生中継。それぐらい許してもらってもいいだろ? 男君だけだから安心して良いよ」

会長「何も安心できないわよ!? 何時の間に貴方達は話を…!?」

『会長さんと別れた後直ぐです。俺もあの人達と分かれて、今はトイレに入ってます』

会長「なっ……!?」

487: 2014/06/17(火) 01:30:28 ID:hcHe.81E
イケメン「はてさて。会長さんは置いといて、男君」

『なんだよイケメン…このまま電話切ろうかと思ってたのに…』

イケメン「良いじゃないか。それよか、どうしよっか? 男君のオレが取られる要因を放って置けるのかい?」

『俺のじゃないから、イケメンはイケメンだから。…というかそういったネタ今はやめて、女姉さんのこと思い出すから…』

イケメン「なんで?」

『いいから!』

会長「…とんだ恥をかかせてもらいましたわ。憶えておきなさい、男君」

『どうして俺だけなんですか!? 主犯はイケメンですよ!?』

会長「言ったでしょう。ライバルは貴方だと…イケメンが貴方を望む限り、私は立ち向かわせて頂くわ」

イケメン「おお…我が事がながら、面白い展開だ」

会長「面白くない!」
『面白くない!』

イケメン「ふふっ、青春だよこれも!」

488: 2014/06/17(火) 01:35:14 ID:hcHe.81E
会長「くっ…では先手必勝。この紙袋に入ってる制服をどこかに隠しましょう。恥をかきなさい貴方も」

『ええぇっー!? なんですかそれは!?』

イケメン「埋めるってのは?」

会長「ふむ。けれどグラウンドに限定されてしまう──それは些か面白く無い」

『面白くない!? ちょっと止めろイケメンー!? いや、俺が直接向かったほうがまだ──んっ!?』

イケメン「どうした男君?」


『いや…静かに、誰か入ってきた』

『男ちゃーん? 見つけだぜー?』『あらあらうふふ。男子トイレって何度入っても緊張するわ~』
『お姉ちゃん!? ちょっと何躊躇いなく入ってるわけ!?』『初めてじゃないのか…流石だな女姉』

『うわぁあああああプツン ツーツー』


イケメン「おお…」

会長「流石です前会長」

489: 2014/06/17(火) 01:38:37 ID:hcHe.81E
イケメン「この流れに乗らなきゃ損だ。大損だ、そろそろ拗ねたふりやめて楽しもうか」

会長「そうね。それが一番だわ」

イケメン「ああ、じゃあ行こうか会長さん」

会長「…ええ、行きましょうか」


ガチャ キィ …



パタン


【文化祭は無事に終わりました】


第十二話『俺の突っ込みライバル』

490: 2014/06/17(火) 01:41:14 ID:hcHe.81E
後編 終

これにて文化祭三編終わりです。
残り3話となり、頑張っていかせて頂きます故にお付き合えい願えたら


月&火曜日だなもうごめんさない! お会いしましょう!


ではではノシ

495: 2014/06/23(月) 16:56:49 ID:aip8ePFc
プルルルルル

ガチャ


『あらあらうふふ。こんばわ、こんな時間にごめんなさいね~大丈夫だったかしら?』

『うんうん。改めてお電話を掛けたのは、今回の『裏文化祭』の委員長役お疲れ様でしたってことを言いたかったの~』

「………」

『今年の反響は私の耳にも届いてるわ。うん、いい出来で仕上がったみたいで──立案者共々、大変満足しちゃってますよ』

『やっぱり! 貴方を見込んで頼んだ私の眼に狂いはなかったみたい! うふふ、それでそれで、当の貴方も楽しんでいただけたかな?』

「………」コクリ

『そうなの~良かったわ~うふふ。それじゃあ私の作品も浮かばれるわ~! ああ、うん、それと最後にだけど…』

「……?」

『貴方はまだ自作の同人誌、手元に無いんですって? 駄目よ~自分の作ったものなら大事に保管しておかないと』

「……」ペコリ

『うんうん。なのでして、私が独自のルートで手に入れた貴方の本を──とても可愛いドジっ子ちゃんに渡しておきました! 明日には受け取れると思うから~』

496: 2014/06/23(月) 17:03:48 ID:aip8ePFc
「?」

『大丈夫よ~その子とってもいい子だから、貴方にいち早く届けてくれちゃったりするわ』

「……」ペコリ

『うんうん。言いたいことはこれだけかな? よーし! 私も張り切って新作を作っちゃうぞ~! なのでして、貴方も楽しみにしててね? うふふ』

「……!」コクコク

『ありがとぉ~あと最後に一つだけ言いたいのだけど、あのね』

眼鏡「……」フンスー

『電話越しだと流石にジェスチャーわからないから、わたしてきにちゃんと伝わってるか大変困惑気味だわ~』


~~学校・放課後~~


眼鏡「……」スタスタ

「あ。先生!」

眼鏡「……」ピクッ

男「えへへ。どうも、今からおかえりですか? それとも図書室へ?」

497: 2014/06/23(月) 17:09:07 ID:aip8ePFc
眼鏡「……」クイクイッ

男「図書室なんですね。俺も用があるんです、一緒に行きましょうか」

眼鏡「……」コクコク

男「はい!」

眼鏡「……」スタスタ

男「…、あの先生。ちょっと良いですか?」

眼鏡「……」コクリ

男「ありがとうございます……少し前のことなんですけど、文化祭の準備期間の時…」

眼鏡「……」

男「…先生に助けてもらった時のこと憶えてますか…?」

眼鏡「……」コク

男「そ、そうですよね。当たり前か……えっと、あのことなんですが──もうすっきりさせましたので、ご心配なくと伝えたくて」

眼鏡「……」ジッ

男「ほんとうですよっ? なんだか自分でも信じられないぐらいに、あの人とは、ああ生徒会長さんとは仲良くさせてもらってます」

498: 2014/06/23(月) 17:13:36 ID:aip8ePFc
眼鏡「……」カチャ

男「その節は大変ありがとうございます」ペコリ

眼鏡「……」フルフル

スッ

男「ふわぁっ…!」

眼鏡「……」ナデナデ

男「…あ、はいっ…その、なんだか先生には何度も迷惑かけてしまって、申し訳ないです」

眼鏡「……」ぽんぽん

男「…ありがとうございます」カァァ

男「えっと、先生! 実は今度出る新作のことで聞きたいことがあって────」

眼鏡「……」ピタ!

男「ど、どうかなされたんですか? いきなり立ち止まって、え? あっちの廊下の角に誰か居る…?」チラリ



会長「…………」じぃー

499: 2014/06/23(月) 22:08:22 ID:aip8ePFc
男(え、何、めっちゃ見られてる。何やってるんだあの人…)

眼鏡「……」スッ

男「え? 先生…?」

眼鏡「……」コクコク

男「…ここは俺に任せて逃げろって、だから先生、別に会長とはもう何も!」


会長「……」じぃー


男(ああすっごくややこしい! お互いにいい印象持ってないもんな…)ギュッ

男(よし。二人の知り合いとして、あの時の印象を払拭させるんだ。まずは会長に話しかけよう)スタスタ


眼鏡「……!」

会長「……!」


男「…あの会長さん? そこでなにしてるんですか?」

会長「や、やるわね男君。どうして私が居ることがわかったのかしら?」

男「いや、見えてましたよ。まるっきり」

500: 2014/06/23(月) 22:15:05 ID:.lCuvD8Q
会長「──そう、それは私の不手際ね。バレてしまっては仕方ないでしょう」スッ

男(あ、あれ? なんだか今日の会長さん少し大人しい…?)

会長「……」モジモジ

男「会長さん?」

会長「ぇ、あ、はい? なにかしら?」

男「それはこちらのセリフというか…その、どうして見てたのかなって」

会長「っ……いえ、特になにも」ゴクリ

男「?」

眼鏡「……」ズンズンズン

男「わわっ! あ、先生──その…」

眼鏡「……」じぃー

会長「なっなにかしら?」

眼鏡「……」じぃーーーーーー

会長「……なによ」

501: 2014/06/23(月) 22:27:09 ID:.lCuvD8Q
眼鏡「……」ゴゴゴゴゴゴ

会長「……」ゴゴゴゴゴゴ

男(あれ!? 知らず知らず絵面が睨み合ってる感じに!)

男「待ってください…! その、先生も会長も! なんでそう喧嘩腰何ですか…!」

眼鏡「……」

会長「いえ、男君。貴方が居ては話が円滑に進まないわ。出来れば席を外してもらってもいいかしら」

男「先生に用事があるんですかっ? 邪魔ならそりゃ居なくなりますけど…」

眼鏡「……」フルフル

男「え、先生? ここに居ろって、でも俺がいたら話が進まないって…」

眼鏡「……」ガシッ

男「わわっ」

会長「!」

眼鏡「……」フルフル


【大切な後輩を守ろうとする一人】

502: 2014/06/23(月) 22:33:24 ID:.lCuvD8Q
男「先生…いや、あのですね?」

眼鏡「……」

会長「…貴方はもしや──成る程、では私も立ち向かわせていただくわ」キッ

男「会長さん!?」

会長「黙ってなさい。こうも面前でアピールされて大人しくしているほど、私は優しくなくてよ」

男「いやいやいや! 違うでしょう! なんでそういう感じになるんですか…!」

会長「貴方は知らなくていいこと。私としても見過ごせない要因がそこにはある」ガサリ

男「? なんですかその紙袋は…もしかしてそれを先生に渡そうと?」

会長「えっっ!? ち、違いますわ! これは別に彼に渡すものではなくて、えっと、そのー…」

男「…なんで誤魔化すんですか」

会長「違うったら違うと言ってるでしょう! もう! 貴方は黙ってなさい!」


【尊敬する人からの頼み事(同人誌)を渡そうとする一人】

503: 2014/06/23(月) 22:43:48 ID:.lCuvD8Q
会長「──こんな危険物を貴方に見られたまま渡すなんて、出来るわけ無いでしょう…っ」ブツブツ

男「え? なんですか?」

会長「なんでもないわっ」

眼鏡「……」

会長「貴方も少しいい加減にしないさい。どういう権利があって、貴方が彼に近づくことを許されるとでも?」

眼鏡「……」ジッ

会長「…貴方が非情に非生産的な趣味を持っていることは、知っている。しかし、そんな趣味をもった貴方が──」

会長「──彼の側にいることが実に不愉快ですわ」

会長(前会長から、あの薄い本を彼に渡すよう頼まれた。しかし前会長がお読みになられている本は、ほとんどが…その、男同士の絡み合いだった…っ)


女姉『あらうふふ。みてみて会長ちゃん~これ何処に入ってると思う?』

女姉『実は【ドーン】ルで亀【ババババ】で前立【ドドドン】刺激して快感を得てるの~キャー! わくわくするわ~!』


会長「…不愉快ッ! あの人は許されど、貴方のような輩が男君の側にいるだけで実に不愉快ッ!」

504: 2014/06/23(月) 22:51:42 ID:.lCuvD8Q
眼鏡「……?」

男「な、何を言ってるんですか!?」

会長「正直に行ったまでです」

男(なんでこうもこの人は億面もなく堂々と…! 嫌いなのはわかってるけど、なにもそこまで…!)

会長「っ……」ブルブル

男(あれ、でも震えてる…緊張してるのか? でもなんで緊張なんか…渡すもの…俺が邪魔…緊張…)

男(──もしかして、会長さん……先生に告白、しようとしてるのか……?)


【類まれぬ勘違い度もつ一人】


男(言いづらいから会長さん口が悪くなってるんだ…! お、女さんも時々、言いづらい時口が悪くなるし…!)

男「…な、なるほど。じゃあ俺が居たら言いづらいですよね…」

会長「!?」

眼鏡「!?」

男「わかりました。じゃあ俺はここで…」スッ

505: 2014/06/23(月) 23:04:14 ID:.lCuvD8Q
会長「ま、待ちなさい! なに、この中身は察したとでもいうのかしら…っ? それは違うわ!」

男「え?」

眼鏡「……」ブンブンブン

男「行っちゃダメだって、いや先生も会長も俺が居たら──あはは」

会長「どうしてそこで乾いた笑いを浮かべるのですか!」

男「いやいやいや…先生、俺は大丈夫ですから。むしろ先生の邪魔になると思いますし」

眼鏡「……」シュン

男「先生?」

眼鏡「……!」キッ

会長「っ! なんですか? なにか私に文句でも? 私は貴方に問題があると言ったまでで、」

男「まあまあ。会長さんも素直になってください」

会長「ええ、だから素直に言ってると──」

男「きっと渡したら分かってくれると思いますよ、要らぬお世話かもしれませんけどね」

会長「本当に要らないお世話ね! ええもういいですからとっとどっかに行きなさいな!」

506: 2014/06/23(月) 23:09:37 ID:.lCuvD8Q
眼鏡「……」フリフリ

男「…え、でも」

会長「それも貴方も望むことでしょう? それとも、貴方の趣味が彼にバレてもいいと?」

眼鏡「……?」

男「趣味? 趣味ってなんですか?」

眼鏡「? ……?」カキカキ

男「あー! 物を書くってことですか、いや知ってますよ俺?」

会長「なん、ですって……!? 貴方知ってて彼と付き合ってたの……!?」

男「え、ええ。趣味というか仕事というか…」

眼鏡「……」シィー

男「あ。ごめんなさい、内緒でしたねそういえば」ニコニコ

眼鏡「……」ニコリ

会長「なにイチャイチャし始めてるのです!? ああっ…汚らわしい!! 不潔!!」

男「不潔!? …会長さん、貴方は先生のことしっててそんなこと言ってるんですか…?」

507: 2014/06/24(火) 00:39:08 ID:87ppayog
会長「勿論当たり前よ! 私はこれを持ってるのだから…!」ガサリ

男「そうですか…別に人それぞれですけど、俺は──先生の仕事を馬鹿にする人、嫌です」

眼鏡「……!!」パァァアア

会長「なっ…ぐっ…なんということかしら、貴方も侵されていたなんて…っ」

男「会長さん。今は例え正直に言いづらくても、だったら尚更貴方はキチンと言ったほうがいいんじゃ無いですか」

男「…変な誤解を生む前に、思いの丈を言ったほうが」

会長「ぐっ……貴方はイケメンがいるでしょう! このような輩にうつつを抜かしている暇があるの!?」

男「? どうしてイケメンが出てくるんですか、アイツは関係ないでしょうに」

会長「関係が、ない?」

男「アイツは何も関係なんて──待ってください、関係あるんですか?」

会長「……あるにッ…あるに決まってるでしょう!!」

男「ええっ!? なんでイケメンの奴が…!?」

眼鏡「?」

会長「貴方が不潔極まりない事実を、彼が黙ってるはずがない…っ……それとも騙し通せているのかしらっ? だったら、」

509: 2014/06/24(火) 09:24:22 ID:H2FxpeEM
男「不潔極まりない事実…ッ? イケメンは先生の仕事を馬鹿にしたりしないですよ!」

会長「……いや確かに貴方が言ったら認めそうだけれど……そもそも…そんな気質を感じもするけど……だめだめだめ! イケメンはそっちじゃありません!」

男「なっ──そっちとかあっちとか、人の趣味を差別的に捉えるなんて……会長さん、俺は本当に貴方のことを見損ないました…っ」

会長「なん、ですって…?」

眼鏡「……」オロオロ

男「貴方は別に俺に好かれようとも思ってないと思います…けど! それでも、俺は貴方のことを尊敬はしてました…!」

会長「……っ」

男「生徒会長としての貴方は…俺にとって素晴らしい人格者のよう見えたのに、違うんですね、やっぱり」

会長「ぐ……え、ええ、違うわ男君。いくら私が会長としての身分を誇りにしていたとしても、」

会長「──私は彼と貴方の趣向を、認める訳にはいかないわ」


男「…………」バチバチバチ

会長「………」バチバチバチ


眼鏡「…っ…?」わたわた

511: 2014/06/24(火) 13:45:23 ID:UkNIzLRA
男「この趣味を貴方が不潔だというのなら、それは良い。けれど先生の仕事を真っ向から否定することは──俺は聞き逃せません」

会長「ええ、貴方にどう思われようと結構。けれどイケメンに関するのであれば、私は見過ごせないわ」

男「またイケメンイケメンって…! 貴方はイケメンの何なんですか!? またこの話をぶり返させるつもりなんですかっ!?」

会長「えっ…いやその……わ、私はその件についてはちゃんと彼と話をつけて…」

男「…俺はそうは見えませんけどね。何かとアイツをダシにして、今度は先生のことまで馬鹿にしてるようにしか見えませんけど」

男(告白なんてとんでも無い! この人はまた、この手立てでイケメンと俺をどうこうしようと考えてたんだ…!!)キッ

会長「……。そうですわ、貴方の考えてる通り私は今回も作戦を企てています」キッ

男「やっぱり…!!」

会長(嘘だけど、ここまで疑われるなら乗ってあげましょう…っ…これは私がやってしまった問題でしょうから)

会長「──今回は良い材料を得られたわ。ですから、フン! とっととイケメンと別れてそこの眼鏡と付き合えばいいじゃない!」

男「なんでそんな話になるんですか!?」

眼鏡「!?」

会長「え、だから──」


イケメン「何やってるんだい二人共?」

512: 2014/06/24(火) 14:09:44 ID:UkNIzLRA
会長「え…っ?」

男「い、イケメン…!」

眼鏡「?」

イケメン「なにやら騒がしいと見に来れば──ふむ。ふむふむ」キョロキョロ


イケメン「……おもしろいことになってそう?」


男「なってない!」

会長「うっ…ち、ちがうわ!」

イケメン「いーや、なってるね。やっとか…やっとオレもこういった場面に出くわすことができたんだね、ははっ」

男「とにかく聞いてくれイケメン! この人がまた色々とちょっかい出してきて…!」

会長「あ、ううっ…ち、ちがうわ……その……」ギュッ

イケメン「ふむ。そうなの会長?」

会長「っ───……ッ…」コクリ

イケメン(嘘だな。引くに引けなくなって、今の立ち位置に成り立ったに違いない)

513: 2014/06/24(火) 14:17:02 ID:UkNIzLRA
男「なにか言ってやってくれよ…」

イケメン「うん。それで男くんは怒ってる感じ?」

男「…まぁ、けど、俺はこの人のことを馬鹿にされたのが一番の原因かもしれない」

眼鏡「……」ソワソワ

イケメン「ほう──なるほどね…」

イケメン「すみませんが、少しお話いいですか?」

眼鏡「?」

イケメン「あちらで、いえ手間は取らせませんので」

眼鏡「……」コクリ

イケメン「あのですね貴方は──なるほど、作家をされていると──では文化祭の時は?──ほうほう…」

眼鏡「……」コクコク

イケメン「ありがとうございました。大変貴重なお話、とても勉強になりました」

イケメン(男君は趣味をバカにされたと勘違い。かつ仕事をする彼のことを貶したと怒り、)

イケメン(会長が持ってる紙袋──あれは女の実家のパン屋の袋、もしや誰かから頼まれて彼に渡そうとしている? …女の姉さんぐらいか? 頼めるのは?)

514: 2014/06/24(火) 14:25:16 ID:UkNIzLRA
イケメン(ならたいそう凄いものだろう。また男同士の本と見た、あの人も相分からずだな。それに会長は男君が見てる手前渡せずに居る)

イケメン(しかし中身はまだ断定できないな。けれど会長は趣味=男好きと勘違いと見て、否定したら男君が怒ってしまったから泥沼化──つまり、こんなところか)

男「イケメン…?」

会長「………」ずーん

イケメン(よくもまぁ綺麗に勘違いするもんだよ。仕方ない、ここはひとつ──)


イケメン(──もっと面白いことにしよう!)ニコリ


男(なんで笑ってんだコイツ)

会長「…?」

イケメン「わかったよ。じゃあすみません先輩、少し報告──といったモノなんですけど、いいですか?」

眼鏡「……」コクリ

イケメン「あのですね、実はオレ──男君と付き合ってるんです!」

男「え」

イケメン「なのでして、出来ればちょっかいのようなことはしないで頂きたく──ぶはぁっ!?」バシーン

515: 2014/06/24(火) 14:31:26 ID:UkNIzLRA
男「おま、おまままままっ」

会長「なん、ってことを…!?」

眼鏡「!? ……!?」

イケメン「良いッ…突っ込みだよ、男君……いいスナップだった、くくっ…腕を上げたねぇ…」

男「何を言ってるんだよお前はっ!? ううっ…まだそんな変なこと言うつもりなのか…!?」

イケメン「──そんなに照れるなって、何時もはもっと素直だろ?」スッ

男「なんだそれ!? え、そんな眼で見ないでください会長さん…!!」

会長「やっぱり…」

男「やっぱり!?」

イケメン(はは、良い展開だ──うむ?)

眼鏡「……」ジッ

イケメン(…おやおや)

会長「…そういったことなのなら、使える材料も無さそうね。フン、とんだ時間の無駄だったわ───そこの貴方」

眼鏡「?」

会長「頼まれたものを渡すわ。ええ、好き勝手に使いなさい」

516: 2014/06/24(火) 15:29:47 ID:UkNIzLRA
眼鏡「……?」

会長「良いから受け取りなさい。中身を確認すれば分かるはずよ、それでは私はこれで──」

イケメン「あ。手が滑った」ぱしん

パサリ! シュサー!

会長「え」

眼鏡「…」

男「え、これって本…」


『彷徨える男根~俺らには言葉は要らない~』


会長&男&イケメン&眼鏡「!!!??!!?」

会長「きゃああ───!!!!??」

イケメン「…俺の予想だと先輩の作品だったんだが、これは…」

男「さまだん…こん? 言葉は要らないって、待って会長なんで、持ってるんですかこんなの、えっ?」

517: 2014/06/24(火) 17:01:13 ID:u2E3BxpY
会長「待ちなさい! これには理由がって、わ、私自身の持ち物ではなく…!」

眼鏡「…」

会長「──コイツのよ! 私のじゃない! コイツの持ち物なのよ!」

眼鏡「っ!?」ブンブン

男「先生の持ち物なわけ無いじゃないですか!!」

イケメン「そうだそうだー」

会長「くっ…!! 私はただ彼に渡すよう頼まれただけよ! そんな目で見ないで頂戴!!」

眼鏡「!!」プンスカ

会長「なに貴方まで知らんぷりしてるのよ! これは貴女のでしょう…? だから、私は持ってきたのであって」

眼鏡「……」フリフリ

会長「え、嘘、じゃあなんで」

男「……」じぃー

眼鏡「……」じぃー

会長「私のじゃありませんってば!!」

518: 2014/06/24(火) 17:05:25 ID:u2E3BxpY
イケメン「──しかし、会長が言ってることも一理あるかも……?」

男「えっ?」

イケメン「先輩。本当にこれは貴方のじゃあないんですよね?」

眼鏡「…」コクコク!

イケメン「ふむ。ではこの出処を調べてみましょう、会長も気になりませんか?」

会長「……。私はその持ち主は」

イケメン「あれ? 知ってるんですか?」

会長「!! し、知らないわ」

イケメン「なるほど。じゃあ調べてみましょう、なにすぐわかると思いますよ」

眼鏡「………」

眼鏡「……!?」ブンブン

イケメン「おや、どうしました先輩? 顔色が優れないようですが…」

眼鏡「っ……」ゴクリ

会長「そういえば私も少し気になるわね──この同人誌、どこで販売されたのかしら…文化祭…?」

519: 2014/06/24(火) 17:09:51 ID:u2E3BxpY
男「文化祭でこんなトンデモナイもの売られてるんですか…?」

眼鏡「……」ダラダラダラ【トンデモナイ物を売ってた祭りを仕切ってた人】

イケメン(やっぱりな、この人が今年の裏文化祭の委員長か、くっく)

会長「…まさか前会長が言ってたことは、これなのでは…?」

眼鏡「……」ソロリ

男「せ、先生? 本当に顔色悪いですけど……大丈夫ですか?」

眼鏡「……!」

男「──先生?」キラキラ

眼鏡「っ…!」ゴクッ

くるっ ダダダダダダダ!

会長「逃げた! 成る程──やはり何か彼が知っていると…!!」ダダッ

男「ちょっと!? 二人共どこへ…!」

イケメン「まあまあ。ここはひとつオレが説明してあげよう」

男「え、説明…?」

~~~

520: 2014/06/24(火) 17:15:45 ID:u2E3BxpY
プルルルルルルル ガチャ

『あらあら。貴方から電話してくれるなんて、とってもびっくりよ~どうしたのかしら?』

眼鏡「…ッ…!!」

『うんうん。なるほどねぇ、うん! 全然わからないわ! メールか何かじゃ、だめ?』

眼鏡「…ッ~~…」

『でも凄く大変そうなのは伝わってくるわ。もしかして──うんっと会長ちゃんに追われてる?』

眼鏡「…!」コクコク

『そっかバレちゃったか~これは私の不手際よ、ごめんなさいね。でもでも、会長ちゃんもそこまで怒ってなかったでしょ?』

眼鏡「……」チラリ


会長「……」ドドドドドドドドッ


眼鏡「っ…!?」ブンブン

『よね~激おこよね~うふふ。会長ちゃんってば初なんだから~』

眼鏡「!」ブンブン

521: 2014/06/24(火) 17:21:26 ID:u2E3BxpY
『うんうん。会長ちゃんは裏文化祭、つまり秘匿された同人販売会を知らないの』

『だから何とか聞き出そうと、眼鏡君のことを必氏に追いかけてるのね。そこまでは良いかしら?』

眼鏡「……」コクコク

『だから出来れば君にうまーく説明してもらったら、お姉さんもすっごく嬉しいなぁって思うわけです』

眼鏡「!?」

『大丈夫よ~後で私も謝るわ……うん……ちゃんとね、めちゃくちゃ怒られそうだけど』

眼鏡「……っ」

『あ、それと会長ちゃんに貴方の本と一緒にね? 私の作品も入れておいたから是非、読んでくださいね!』

眼鏡「」

『ではでは~いいお返事、というか良い展開を待ってまーす』プツン

眼鏡「ッ!? ……!!」くるっ

会長「…ようやく観念したようね」ズシャッ

眼鏡「……」

会長「貴方には聞きたいことがたくさんあります。ええ、それはもう色々と」

522: 2014/06/24(火) 17:34:49 ID:u2E3BxpY
眼鏡「っ……」

会長「全て洗いざらい吐き出してもらうわ。覚悟することね──」

眼鏡「…ッ」ギュッ


「──待ってください!!」


眼鏡「──……!」

会長「貴方は…」

男「はぁっ…はぁっ…少し、先生とお話させてください…っ」

会長「私がまず最初です! 貴方は後からにしなさい!」

イケメン「会長」

会長「…なによ」

イケメン「しぃー」

会長「うっ…なんですか、まったく…」

男「…先生。今から少し話させて貰ってもいいですか?」

523: 2014/06/24(火) 17:40:11 ID:u2E3BxpY
眼鏡「……」こ、こくり

男「その、実は知ってしまったんです。先生が…裏文化祭と呼ばれる祭りの、委員長だって」

眼鏡「…!!」

男「この本ですけど…」ガサリ

眼鏡「ッ──……?」

男「トンデモナイ本の下にありました。これ…先生の作品ですよね?」


『人より頑張ったものが言えるコトバ』


眼鏡「…っ…」コクコク!

男「やっぱりそうなんですね」

眼鏡「………」シュン

男「そのですね、あの! どちらにしたって俺は先生が委員長でも嫌いになったりしませんよ…!」

眼鏡「──……」

男「先生は、先生です。あんなのが売ってる祭りをしきってたとしても…俺が知っている先生は、尊敬できる人ですから…」

524: 2014/06/24(火) 17:44:26 ID:u2E3BxpY
眼鏡「……」

男「先生。だから気にしないで、これからも頑張ってください! ずっとずっと…応援しますから!」

眼鏡「っ…!」パァァアア


会長「…どういうことよ」

イケメン「ややこしい問題の一部をスッキリさせたのさ。後は会長だね、あのドキツイ本は彼の持ち物じゃないよ」

会長「え、そう? 嘘、あ…でも確か本は二冊…」

イケメン「もう少し状況を捉えてから発言しようね会長。悪い癖だよ」

会長「ぐっ、大きなお世話です!」


男「えへへ。俺も先生の作品の感想を沢山言いたいですから、こういったものがあったら教えて下さいね」

眼鏡「……!」コクコク!

男「ありがとうございます。じゃあその、さっそくなんですけど…」

525: 2014/06/24(火) 17:51:38 ID:u2E3BxpY
眼鏡「…?」ニコリ

男「こっ……この、あんまり慣れてない分野ですけど…っ」スッ


『人より頑張ったものが言えるコトバ』
『彷徨える男根~俺らには言葉は要らない~』


男「どちらも先生の作品ですから! う、うん! 頑張って考えてきますね!」キラキラキラ

眼鏡「」


イケメン(ああ。素敵だよ男君、それでこそ男君だ)ウンウン

会長「…。話は終わったようね、それでは聞かせてもらうわよ」がしっ


眼鏡「」ズリズリズリ

男「センセぇーーー!! 感想を言えるその日まで、楽しみにしててください!!」


【数日後。全てを知った俺は土下座をしました、後イケメンの奴もさせました】


第十三話『彷徨える突っ込み~俺らには突っ込みは必要~』

526: 2014/06/24(火) 17:53:31 ID:u2E3BxpY


ぐぉぉ…

残り二話です! 来週は最終話と最終話前を合わせて二本立て!
つまり最後となります。最後までお付き合い願えたら!

ではではノシ

531: 2014/06/30(月) 23:25:22 ID:lHQhSkSI
昼休み・保健室

イケメン「失礼します」ガラリ

先生「おや。こんにちわ」

イケメン「こんにちわ。あれ、先生だけですか。おかしいな男君は何処行ったんだろう」

先生「あの子は職員室に呼ばれてるね。再来月の修学旅行の話し合い」

イケメン「あ、そういえばそうだった」

先生「時が立つのも早いもんだね。もうあの子も修学旅行のシーズンだ、そりゃ私も年を取るわけだよ」ギィッ

イケメン「……。待ってるのもなんですし、先に食べちゃいましょうか」ガタ

先生「お。先生と二人っきりで食べるの? おっほほー、いい度胸だね」

イケメン「なにがですか…?」

先生「根掘り葉掘り聞いちゃうってこと。君と彼の今の、関係性とか」

イケメン「聞くも何も彼とは、フツーに友達ですよ」

先生「またまた。ホ〇のくせにねー」

イケメン「違いますってば」

532: 2014/06/30(月) 23:30:50 ID:lHQhSkSI
~~

先生「いただきます」

イケメン「いただきます」

先生「もぐもぐ。ひょーら、いいふぁいらふぁらひぃふぇふぉこっこ」

イケメン「な、なんですか? 食べきってから喋ってください…」

先生「むぐぐ。えっとね、いい機会だから聞いておこうかなって」

イケメン「いい機会?」

先生「うん。そろそろ聞いても喋ってくれるかなと。キミってば、何かとあの子に感謝感激してるみたいだけど───」

先生「──その『発端』を聞いてみようかなってね」

イケメン「………」

先生「良いじゃない。だめ?」

イケメン「…いえ、ダメじゃないですけど」

先生「それとも私みたいな人間には言いたくないとか」

イケメン「…そんなことありません。先生には、色々と個人的に感謝してますから」

533: 2014/06/30(月) 23:39:16 ID:lHQhSkSI
先生「へぇーそうだったんだ。へぇー」

イケメン「…そういった飄々とした性格だから、男君に好かれるんでしょうね」

先生「ただの役得だよ。実生活は結構面倒臭い性格さんだ。まぁーつまり、先生は常に生徒の見本であれってコト、もぐもぐ」

イケメン「そうですか、んー……まぁ良いですよ、先生には全部げろっちゃいましょう」

先生「お。じゃー去年の文化祭の話お願いします」

イケメン「…………」

先生「舐めないでね。これでも数十年教師やってる身だから、ふふっ」

イケメン「…話が早く済みそうで良かったです」

先生「うむ。じゃあ聞かせてくれるかな、キミとあの子が出会った出来事のことを」

イケメン「はい。あれは去年の文化祭で、オレのクラスが何をするかを話し合ってた時でした───」


去年 一年教室


イケメン「じゃあ劇をしようか」

そう口にした時──ああ、やってしまったと心から後悔してしまった。

534: 2014/06/30(月) 23:55:44 ID:lHQhSkSI
何気なく言った一つの提案。
一時間と過ぎた話し合いに辟易し始めた教室の空気は、皆の思考回路を鈍くさせていた。


「喫茶店がいい。みんなでコスプレをしよう!」
「面倒臭いから休憩所でいんでね」
「映画とろう映画! タイムスリップした織田信長が学校を周るっての!」


どれもコレも現実味のない、希望的観測だけであげる提案。
準備や期間など考慮に入れてない。ただやりたいだけのことを皆言い立てて、具体案などを聞けば閉口。



「じゃあ劇をしようか」



その時、言ってしまったのだ。
一番それを言ってはいけないオレが──言ってしまえば会議など全く意味をなくしてしまうのに。

ただただ後悔。
放課後に待っていた会長との約束の時間が迫っているという、たったそれだけの理由で。


「…ああ、なんかそれいいな!」
「劇ね劇! なんか盛り上がるんじゃね!」
「劇も良いな…映画も良いけど、劇なら良いのなりそうな気がする…」

535: 2014/07/01(火) 00:05:17 ID:HVBhWeHA
イケメン「……っ、待ってくれ。まだちょっと色々と話しあう必要があると…」

時既に遅い。
凝り固まっていた場の雰囲気は、オレの一言で融解をし始めていた。

灰色が橙色に広まっていく。クラスの皆はもう劇を始めようといった形で収まりつつあった。


~~~


イケメン「……」

あの会議から二週間が経った時。

あの時の発言は決して間違いじゃなかった、なんて自分で納得はしていたつもりだった。


悪いことではない。自分が主役で選ばれて、己の時間が割かれることも。
悪いことではない。突然の体育館私用に、伝統の軽音部の演奏時間が削れようとも。
悪いことではない。クラスの中で不遇の役どころにつく人が居たとしても。


みなは納得の上でオレの提案を飲んだのだ。
決してオレだけの責任じゃない。問題じゃない、それは──皆が抱えるべきことなのだ。

536: 2014/07/01(火) 00:13:28 ID:HVBhWeHA
イケメン「……はぁー」


「ああ、うん。今は皆で──そうそう、劇の練習中。帰る時間は遅くなるけれど、晩御飯は先に食べてて」


そう、納得していたんだ。
そこに新たな問題が生まれても、オレには関係ない。全く関係なんて、無い。


「…劇の役? えーっと、あはは。良いよ大した役じゃないんだ、うん。見に来るって? いやいや、仕事じゃんその日は」


イケメン(練習の休憩時間に販売機に来てみれば──彼は確か同じクラスの…)

劇で役についた生徒は音楽室で個別に練習していた。
他の生徒は教室で衣装の準備、また舞台道具の制作。

彼もまた裏役の一人なのだろう。時間は既に──七時を過ぎていた。


「…はぁ、わかった。じゃあ俺も頑張って文化祭のために頑張る、母さんも無理しないように」


彼は困った顔をしながら、携帯電話を切った。
その様子を少し離れた廊下の角で盗み見る。わざとじゃないが聞き耳立てる形になったのが申し訳なくて、オレは彼の面前に姿を表した。

537: 2014/07/01(火) 00:30:28 ID:HVBhWeHA
イケメン「やあ。休憩中?」

「…あ、うん」


彼は戸惑いながらも、自販機に用があると察したのかズレてくれた。


イケメン「ありがとう。今日もみんな遅くなりそうだね」

「……そ、そうだな」

イケメン「……」

「……じゃ、じゃあこれで」

イケメン「あ。ちょっと待ってくれないか」


気まずそうに去ろうとした彼に、何も考えず思わず後ろから声をかけてしまった。
──いや本当は気になっていたんだ。何もオレには関係ない、そんなこと分かっていても。


イケメン「えっと、君は今回の劇で何の役どころについてるの?」

「っ…く、黒子だけど…?」

538: 2014/07/01(火) 00:39:25 ID:HVBhWeHA
イケメン「そっか。じゃあ色々と、大変だね」

事実そのとおりだろう。
彼の役どころ程難しい物はない。

本番の舞台で影の薄いにも関わらず、進行中で把握するべき順序と舞台道具の設置。

無論、劇を把握している生徒が指示をだすのだろうが、彼自身も多くを理解しなければいけない。

経過と結果が見合わない役どころ。
それが彼が今回の文化祭で背負わされたものだ。

「……、」

イケメン「実はさ、さっきの電話聞いてしまったんだ。決してわざとじゃないことだけは信じて欲しい」

「あ。うん……それは何となく、わかってる」


俺も大声で電話してたのが悪いし、と言ってくれた言葉にオレは苦笑を零して、


イケメン「──ごめんな。オレが劇しようなんて、言わなければ」


君を困らせることなんて、無かったのに。

539: 2014/07/01(火) 00:49:29 ID:HVBhWeHA
もしオレが言わなければ、君は早く家へと帰り晩御飯の準備ができたいただろう。
母親に目立たない姿を晒すこともなかっただろうに。


イケメン(──ああ、関係ない。オレには全く関係ない)


そう、彼の人生なんてオレにとって全く関係ない。
何が起ころうとも、オレがなんて言ったとしても、彼には全く関係ない。

関係ないから、関わりあいなど全くない──きっとだから、こう思ってしまうのだろう。


イケメン(ごめんなさい。オレに関わりあいを持たせてしまって)


オレと同じクラスになったせいで、オレがあんなことを言ってしまってせいで。
オレがこんな体質のせいで、オレがあの時迷わなかったせいで。


イケメン(いくら関係などなくっても──彼が困ってることにオレは関わっている)


経過と結果は見合わない。
オレが言ったことは事実として因果関係など無くても、オレ自身がそう思ってしまったのなら、それはもはや責任が発生するんだ。

540: 2014/07/01(火) 00:56:50 ID:HVBhWeHA
イケメン(…オレは一体何を言ってるんだろうか)

自分で自分のことがわからない。
関係なんて無い、そう思ってたはずなのに。

彼のこともまた、責任持つことなんて無いはずなのに。


イケメン(──面倒臭い。あやふやで現実味のない感覚がずっと続いてる、オレは一体なにをしたいんだ…)

「……あの、」

イケメン「あ、ごめんごめん。だからさ、そのオレが言うのもなんだけど適当にやってもいいんじゃないか?」

「……」

イケメン「キリがいいところで終わらせて、自分がやりたいことをやるべきだよ。学生の文化祭なんて、その程度じゃないか」


ああ、言ってしまった。あやふやのままでの発言──こんなオレに彼は怒るだろうか。
自分を困らせている決定的な当人が、その仕事を適当にやってしまえと言ってる事実に。


「…そうかもな」

イケメン「………」

──そう、人は絶対に【怒らない】。

543: 2014/07/01(火) 10:12:13 ID:Xd5HMawU
イケメン「だろ? 別に完全に成功させなくても良いんだ、モチロン皆に迷惑をかけるのもアレだけどさ」

イケメン「自分がやりたくないことを、やるべきだとは言い切れないじゃないか」


──昔からそうだった。

オレは【人が考えたくないコト。自信が無いコト。本心が嫌がってるコトを、何故か納得させる事ができた】。


まるで長年付き添った尊敬する人のように。

まるで目標にしてきたライバルの一言のように。

まるで親からの躾のように。


──只の赤の他人であるオレが、何故かたった一言で人の意見を歪曲させる。


イケメン(これで、また『納得』させた)


スッと心のなかのモヤが溶け落ちていく。
彼に対する後悔と遺恨が、無意味だと散っていく。

544: 2014/07/01(火) 10:21:40 ID:Xd5HMawU
イケメン(…オレの一言で変わってしまうのなら、またオレの一言で変わらせてしまえばいい)


オレは知っている。
彼が望まない黒子になっていることを、劇が決定された時、困っていたことも。


だが言葉に出来ない。周りは劇をやるべき雰囲気だったし、
彼の発言で変更できるほどの彼自身に立場があるわけでもない。


イケメン(だから、納得させる。それで良い、それで彼も心のなかもスッキリするだろうし、オレもまた──)


オレがテキトーにやればいい。と言えば、彼もまたテキトーに文化祭を続けるだろう。

そういうことなら、それでいい。それでいいんだと、オレも納得できる。


「じゃあ、教室に戻って練習続ける……から。あ、アンタも……が、頑張ってくれよな」

イケメン「あ、うん──え…?」


納得、出来るはずなのに、

545: 2014/07/01(火) 10:33:34 ID:Xd5HMawU
イケメン「ま、待ってくれ。あの、聞いてなかったのかい? どうして練習なんか続けて──」

「え? お、おう……いや、だって、応援してくれたんじゃないの?」

イケメン「お、応援?」

「違う? だって適当にやれって、ははっ──アンタ、ゴホン、君の冗談だろ?」

イケメン「──冗談?」


なんだろう、冗談って。


「あれだけ盛り上がってるのに、俺だけ適当ってのもありえないし……つかやりたくなくても、やらなきゃ駄目だろうし」

イケメン「いや! けど君はそれだと困るんじゃないかっ? 家の用事もあるだろうし…っ」

「そりゃ大変だけど、すぐにでも家に帰りたいけれど……ああ、違うな。こう言いたいじゃなくって、」


「──俺は俺で楽しむけど。誰になんて言われても、俺は俺で文化祭を盛り上げようと、頑張るから」


きっとそれは本当に彼の本心なんだろう、とオレは思った。

546: 2014/07/01(火) 15:41:07 ID:Xd5HMawU
イケメン「そ、そっか。そうだよな、一人だけ……楽しようとしても、周りから良い風に思われないし、な」

「ああ、うん。そうそう」

イケメン「…そう、だよな」

正直、怖いなコイツ──と思ってしまった。

オレの言葉が、体質が、通じないということでもなく、
ただただ、その『素直さ』が珍しくて、まるで小学生のように無垢に感じた。

楽しみたいから、俺なりに文化祭を盛り上げる。

誰もがそう思って文化祭に取り組むのだろう。
けれど望める形で、自分の思いをそのままに動ける人間なんて──高校生で居るはずもない。

人は何処かで諦めをつける。
自分がやりたくないことを、自分がしたくないことで、素直さを犠牲に周りへと同調させる。


けれど彼は違う。
周りに合わせて素直さを犠牲するのではく、素直さで周りに同調させていた。


イケメン(…この子は傷つかずに、何を強さに生きてきたんだろうか)

547: 2014/07/01(火) 16:16:21 ID:Xd5HMawU
イケメン「えっと、じゃあ……これで、練習が頑張って」

ああ、この彼の前にオレは居ちゃいけないな。と本能的に悟った。
彼の素直さにとってオレは毒でしか無い。またオレにとって彼の素直さも毒だ。

一年限りの出会いであってくれと、オレは心から願って、彼に背を向ける。


「なぁ! えっと、その!」

イケメン「…なんだい?」


いち早く音楽室へと戻ろうとしたオレに、彼は引きつった笑みを浮かべていた。

場の空気を思って一言オレに言うべきだと思ったのだろう。だから、これで最後だとオレも素直に応じた。


イケメン「うん? どうした?」

「えっと、あの、だな……うん、こんなこと言うのも何だけど」


彼は戸惑いながら口を開く。
一体彼のような性格の人間が、オレに対して何を言うつもりなのだろうか。少しだけ、気になった。


「──もっと楽しもう、文化祭。高校で三回しか……ないんだしさ」

548: 2014/07/01(火) 16:30:44 ID:Xd5HMawU
イケメン「…そうだね」

「だから、その、……ああ、言っちまうか」


ひとつ覚悟を決めたように苦笑いを浮かべて、彼は言った。

その一言を、たった一言だけなのに。

これから先、一生オレは忘れることなど出来ないであろう──その言葉を。


男「──申し訳ないと思いすぎだから、誰も、お前なんて気に留めてないぞ」


それは何気ない一言だったんだろう。
彼にとって他愛もない印象、オレに対するたった一つの言葉。

むしろオレに対するあてつけでもあるんだろう。
文句の一つでも零してやろう。そんな気軽な気持ちで言ったに違いない。


イケメン「──…………」


だからこそ、すんなりと心に響いた。

549: 2014/07/01(火) 16:36:25 ID:Xd5HMawU
彼の言葉だから、だろうか。
素直に生きることを基本とする彼が言った言葉だから、オレは無垢に受け止められたのだろうか。

今でもはっきりした答えは見つからない。

けれど、それでもオレは、


男「じゃ、じゃあ俺練習あるから……」

イケメン「…あ…」


遠ざかる背中。高校生にしては小さめの、眼つきの悪い同級生。


イケメン「誰も、オレのことなんて気に留めてない……?」


そんなはずはない。じゃあ何故、皆はオレの言ったことを信じきる。


『──申し訳ないと思いすぎ』


イケメン「あ──そっか」

550: 2014/07/01(火) 16:42:23 ID:Xd5HMawU
オレが気にしすぎてた、のか。
自分が何もかも悪いと思っていた、自分がやってしまったことは抱えるべきことだと。

オレが変えてしまったものは、またオレが変えないといけないと。
それが唯一のオレの救いになると思っていたのに。


イケメン「…なに主役を気取ってんだ、って事か。ははっ、確かにその通りだ」


いくら劇の主役に選ばれたとしても、世界の主役ではない。
人は一人でちゃんと考えて、そして答えを導き出せる。

物語と違う。現実の世界はきちんと個人個人で回っているんだ。


何もかも、オレの責任じゃない。

結局のところ──そんな単純な話。


イケメン「うん」


分かってしまえば簡単な事だったのに、何をここまで悩んでしまっていたのだろう。

551: 2014/07/01(火) 16:50:16 ID:Xd5HMawU
イケメン「……それは多分」


彼が言える人間だから。
そんな単純なことを気づかせてくれる言葉を──彼は言える人なんだ。


イケメン「君の冗談だろ──か、ふふっ……オレの言葉を冗談だって言った奴は初めてだ」


オレの言葉は冗談だというのなら、その間違いを指摘した君の言葉は──果たしてなんと呼ぶのだろう。

それは、単純明快。


イケメン「ああ、そっか──突っ込みか、くくっ」


オレが間違いを起こして、彼が指摘する。
オレが冗談を言って、彼が突っ込みを入れる。


イケメン「なんてオレにとって理想的だろうか。ああ、なんて嬉しい事なんだろう──」


そんな日常を望めるのなら、手に入れることが出来るのなら、これほど嬉しい事はない。

552: 2014/07/01(火) 16:57:17 ID:Xd5HMawU
イケメン「…なんてこった」

物凄く欲しい。喉から手が出るほどに、欲してる。
彼がオレの側にいて、オレのことを見てくれるだけで、オレは本当に救われる。

イケメン「なんてこった、だ……ははっ、くくっ」

楽しい。そんな未来を想像するだけで、身体が打ち震えてる。
素直に笑みが溢れるのは、一体何時ぶりだろう。

イケメン「──望めるのなら、臨みたい」

そんな願いを口にして、オレは自販機の蓋をあける。


イケメン「あ。珈琲が無い…」


彼が去って行く時、自分のと合わせて持って行かれてしまったのかもしれない。


イケメン「…何時か君と飲める日が来たら、嬉しいんだけどな」


~~~~~

553: 2014/07/01(火) 17:05:55 ID:Xd5HMawU
保健室

イケメン「何気ない一言で、オレは彼に救われた──と言った感じです」

先生「ふむ。なるほどねぇ…そりゃあの子も忘れてるよ、マジで」

イケメン「あはは。でしょうね、でもそれでいいんです。その程度のことだから、オレは気づいたんだ」

先生「その程度ね。キミはキミ自信の問題を大きく見過ぎてたと、そんな単純なことをキミは気づかなかった」

イケメン「…誰だってそう思うはずです。けど、」

先生「うん。キミにその指摘を言う人は誰一人と居なかっただろうね、あのガールもボーイも」

先生「──そんな簡単なこと言ったら駄目じゃないかって、キミの抱える問題はもっと大きいはずだって」

イケメン「……」コクリ

先生「けど結局は単純なことだった。キミの間違いを指摘するだけで、キミの問題は解決できる」

先生「その一歩を踏み込むのは、簡単そうで難しい。結果は淡白であれど、経過は違う」

先生「そんな簡単で、難しくて、小さくて、大きなコト。うん、あの子はキミに言えたんだね」


先生「──良かったねイケメン君。本当に、変われて良かった」

554: 2014/07/01(火) 17:11:24 ID:Xd5HMawU
イケメン「はい」

先生「うん。いい話を聞けたよ、あの子ももうちっと当時から積極性があれば──二年から友達ってのも無かったろうに」

イケメン「いやいや、彼がああだからこそ、オレが契約を結べたんです」

先生「青春ってやつ? そうだね、キミはまだお互いに利用関係でしかないものね」

イケメン「うっ……」

先生「正確にはキミの本心が──未だあの子と友達、なんて思えてない。思えることが出来ない、が正しいかな?」

イケメン「………」

先生「素直じゃない子だ。キミは本当に──あの子と一緒だよ、イケメン君」

イケメン「……何時か、言えたらいいんです」


オレが本当の気持ちで、彼と友達になったと。
その素直な気持ちで──彼に、たった一言だけ伝えられたら。


先生「きっと来るよ。キミは頑張ってるんだもの、こなきゃおかしい。だから頑張りな、青春教様」

555: 2014/07/01(火) 17:16:20 ID:Xd5HMawU
イケメン「なんですかそれ、聞き捨てならない」

先生「青春青春で色々と片付けてるキミだからこそ、送らせてもらう名前だ」

イケメン「…なるほど」

先生「あはは。納得されても困るんだけどね、ま。頑張り給え」

イケメン「モチロン頑張らせていただきます。絶対に手放したりしませんよ、オレは」


そろそろ冬服へと変わりつつある、季節の変わり目。
世界はきっと変わりつつある。

だからこそ、オレは今という瞬間を大切に生きよう。

君に救われ続けてるこの時を、この高校生活を──ひたすら謳歌するんだ。


イケメン「…ずっと見てるよ。オレはね」


特別話『オレの突っ込み待ち』

558: 2014/07/01(火) 21:53:11 ID:lL9RSS5E
図書室・夕方

女「はい。東京の観光スポットの有名どころよ」ドサリ

男「あ、ありがとうございます」

女「どーいたしまして。てか何やってんのよアンタ、この時期になってまで決めてないとか」

男「ううっ…面目ない…」

女「まあイイケド。それよりも、修学旅行の自由時間は何処に行くつもり?」

男「え? ああ、うん。普通にスカイツリーとか、その付近の浅草回ろうかなって」

女「爺クサっ!! なんでよもっといい場所回りなさいよあんぽんたん!!」

男「ええっ!? …じゃあちなみに、女さんは何処を周るつもりなのさ」

女「えっ? …っ~~~あ、あきばだけど…っ?」

男「へぇー」

女「な、なによその顔は!? 違うわよお姉ちゃんのような趣味あたしは持ってないんだから!」

男「え、何? どういうこと?」

559: 2014/07/01(火) 22:00:32 ID:lL9RSS5E
イケメン「男君。渋谷に行きたいな、オレは」

男「ん、ああ、良いけど制服で行ったら浮かない? ああいった場所って」

女(よかった…墓穴を掘らずに済んだ…)

イケメン「じゃあ私服を仕込んでいこう! 何処かで着替えて、さも東京民のように買い物をするとか!」

男「そこまでして渋谷に行く必要がわからないんだけど…」

イケメン「青春っぽいから」

男「うん。とりあえず却下で」

イケメン「ぬぁー冷たい男君!」

女「ミッキー見に行けば良いじゃない、ミッキー」

男「みっきー? ああ、ディズニー・ランドね…というか遊園地らしき所に俺行ったこと無いや」

女「あたしもだ」

イケメン「オレも」

男「じゃあディズニー・ランドでいいかな。時間も過ごせそうだし」

560: 2014/07/01(火) 22:08:23 ID:lL9RSS5E
イケメン「なんだ、結構簡単に決まったね」

男「…お前とイケ友が、彼処も行きたい此方も行きたい、言うからだって」

女「アンタらの班大丈夫なワケ? まとまりなさすぎるでしょ…」

イケメン「えっと、オレと男君とイケ友。あとクラスで有名な不良くんに、クラスで有名なお金持ち君」

女「嫌なメンバーね、ほんっと」

男「今から修学旅行のことを考えるだけで胃が痛む…」

イケメン「女の方はアキバだけなのかい?」

女「班の子が原宿で買い物したいっていうから、基本、買い物中心よ」

イケメン「成る程な」

男「…良いな買い物、俺も買い物だけで良いのに」ボソリ

女「じゃああたしの班に来る?」

男「な、なんでっ?」

女「オトコに飢えてる奴らばっかり居るのよ…面倒臭いから、あんたが相手して」

561: 2014/07/01(火) 22:13:33 ID:lL9RSS5E
男「なんで俺なんだ…イケメンのやつに頼んでくれよ…」

女「コイツは駄目でしょ」

イケメン「うん。駄目だ、オレが入ろうものなら酷いことになる」

男「え、なんで?」

女「ただえさえ面倒臭いのに、面倒臭い奴が入ってきたら手が付けられないじゃない」

イケメン「断言できる。オレは絶対に面白い展開にしてみせると」

男「…ああ、うん。わかった、じゃあイケ友でも誘って様子見るよ」

イケメン「そういった流れならオレを誘ってもいいんだよ!?」

男「やだやだ。絶対に俺が大変な目にあうから」

イケメン「ううっ…」

女「日頃の行いの性じゃない。あんぽんたん」

イケメン「…うるさいぞ」

男「──よし、報告書出来た。これを後は職員室に持っていくだけだ」

562: 2014/07/01(火) 22:20:14 ID:lL9RSS5E
イケメン「ようやくか。これで後は修学旅行を迎えるだけだ」

男「…うん。最初は班のリーダーになった時はどうなるかと思ったけど」

女「しっかりしなさいよー? 現地に行ったら計画通り進むわけ無いんだから、入念に計画建てないとなんだから」

イケメン「ちなみに女の班の計画表は?」

女「ん、コレよ。コピーのやつだけど、役に立つと思って持ってきた」ガサリ

男「うわっ……なんだこれ、文字が細かすぎてヨメない…」

イケメン「これ、女が考えただろう?」

女「モチロン」

イケメン「昔から旅行や買物の時、みっちり気持ち悪いほどに計画立ててたもんな…」

女「気持ち悪いってなによ!!」

男「…俺そこまで考えてないけど、大丈夫かな」

イケメン「大丈夫、平気だよ。イケ友の奴が小学生の頃まで都内に住んでたらしいし、詳しいって行ってたからね」

男「え、そうなのか? なら少し安心……出来無い! イケ友に案内任せるつもり!?」

563: 2014/07/01(火) 22:30:29 ID:lL9RSS5E
イケメン「大丈夫、うん、きっと大丈夫」

男「……」

女「…やっぱもう少し考えたら、アンタ」

男「そ、そうする。少しだけ女さんの班の計画表を参考にさせてもらおう──えっと、朝九時から、なになに…」

イケメン「ふむふむ、『朝ごはんを食べる。マックで』」

男「マックで…?」

女「マックで」

イケメン「男君。オレがいうのもなんだけど、参考にしちゃ駄目だと思うぞ」

男「…う、うん」ソッ

女「なによその反応!? あたしの班の娘達はみんな賛同してたのに!」

イケメン「丁寧なのかガサツなのか…」

女「全然っわかってないわねアンタ達! 都内で良い物食べようなんて、そんな甘い期待は絶対に裏切られるわよ!」


~~~~~

564: 2014/07/01(火) 22:39:16 ID:lL9RSS5E
イケメン「ふぁ~~~~っ……」

女「眠たそうね変O」

イケメン「うんっ? ああ、ちょっとね」

女「何かやってるの?」

イケメン「まぁね。修学旅行の時のことを計画立ててる」

女「…やっぱり何か企んでるワケね。あんま無茶なことしないでよ」

イケメン「わかってるさ。あくまで男君の為だ、彼の為に考えてる」

女「そ。相変わらず変Oね」

イケメン「うーんっ……男君が職員室から戻るまで、少し、寝てようと思う」コテリ

女「はいはい。帰ってきたら起こしてあげるわよ」

イケメン「サンキュ」

女「……」

ガラリ

男「お待たせー、ちょっと時間かかりすぎちゃったよ──あれ?」

565: 2014/07/01(火) 22:43:19 ID:lL9RSS5E
女「おかえり。ああ、変Oならさっき寝た所、も少しだけ寝させてあげて」

男「あ、うん。わかった」ガタリ

女「どお? 大丈夫そうだったの?」

男「一応、先生に見せたらオッケーは貰った。多分このまま通ると思う」

女「そっか。良かったじゃない、これで安心ね」

男「そうだね。ありがとう女さん、助かったよ本当に」

女「いいってば別に」

男「うん、そっか」

女「……」

男「……」

イケメン「すー…すー…」

女「えらく楽しそうじゃない、アンタ。変Oの寝顔そんなに面白い?」

男「えっ? 楽しそう? …そう見える?」

566: 2014/07/01(火) 22:49:00 ID:lL9RSS5E
女「じっと見つめて、ニヤニヤしてたわよ。気持ち悪いわね」

男「にやにや……うん、それは本当に気持ち悪いな」

女「まぁコイツの寝顔は、普段より幼く見えるし、なんかこう見てて面白いってのは分かるケド」

男「あ、うん。俺もそう思ってた、コイツの寝顔って初めて見るからさ。なんか新鮮で」

女「……」

男「なんだか、少し──楽しいかもしれない」

女「アンタもトコトン変Oよね、知ってたけど」

男「ううっ…言い返せないのが、なんとも」

女「──あ、そうだ! いい機会だしさ、聞かせないさよちょっと!」ぐいっ

男「え、なに急に…」

女「本当のところ、アンタって変Oのことどう思ってるワケ?」

男「は、はぁっ!? 本当になに急に!?」

女「なによ、変な感じね。友達友達行ってるけど、やっぱり怪しいのよね~うんうん」

567: 2014/07/01(火) 22:56:17 ID:lL9RSS5E
男「まだ疑ってるって言いたいの…?」

女「当たり前でしょ」

男「だから、違う。俺とイケメンは友達だから、それ以上もそれ以下もないよ!」

女「なーんだ」

男「…最初はそんな仲じゃないかと怒ってたくせに、どうしたのさ」

女「あはは。確かにそうだったわね、ド変O共って怒ってたっけ、クスクス」

男「どういう心境の変化なんだよ…」

女「べっつに。ただ、あんた達って他から見ると──凄く安心できるのよね、なんかこう、支えあってるみたいな?」

男「支えあってる?」

女「うん。マジで人の字みたいな感じよ、見ててそう思うの」

男「…支えあってるか、いや、どうなんだろう」

女「なによ?」

男「確かに俺はコイツのお陰で…色々と大変なことも、面白いこともあったし」

男「俺も俺で──コイツに何かしてあげられたかなって、思ったりもするけど」

568: 2014/07/01(火) 23:02:59 ID:lL9RSS5E
男「──俺はもうちょっと、イケメンのこと知れたらいいなって思う」

女「…なんかホ〇っぽいわよ、それ」

男「う、うるさいな! そう思ったんだから仕方ないだろ…!」

女「ふーん。じゃあアンタ的には、もう少しだけお互いに歩み寄れたら良いなとか思っちゃってるワケか」

男(…いや本当になに言ってるんだろう、俺)カァァ

女「じゃあ修学旅行でもっと仲良くなりなさいよ。三日間、一緒に過ごすんだから」

男「あ、うん。そうだ、その通りだと思う」

女「そしたら一つあたしに宣言しなさい。なにか目標を決めて、それを絶対にやりきるって」

男「…どういうこと?」

女「また文化祭の時みたいに、面倒臭い展開にならないように言ってるのよ」

女「──コイツに嘘はつかない、とか。正直に言っておく、とか。修学旅行中に何か目標を決めるってワケ」

男「……。目標…」

女「そしたら少しはマシに動けるんじゃない? アンタも思ってもないことで悩んだりするから」

569: 2014/07/01(火) 23:14:14 ID:lL9RSS5E
男「…うん、じゃあ一つ決めた」

女「お。なになに?」

男「──絶対にイケメンのやつに好き勝手させないよう、見張っておく」

女「おーいい目標じゃない。任せたわよ、そして最終日確認するわよ?」

男「任せとけ。全力で阻止してみせる!」

女「ふふっ」

男「…ははっ」

女「っ──びっくりした、アンタの笑い顔初めて見た」

男「えっ?」

女「いっつも無情顔っていうか、小難しそうな表情ばっかしてるじゃない。だから、ちょっと意外ね」

女「好きよ、そういった表情方があたし的に」

男「えっ──あ、うん、……ありがと」

女「……。ばっ! 違うわよ今のは!? なに照れてるのよ!? なに顔を赤くしてるのよー! あんぽんたん!!」

570: 2014/07/01(火) 23:20:28 ID:lL9RSS5E
男「だ、だってす、好きだなんて急に言うからさ…!」

女「っ~~!? だ、だって意外に笑い方可愛いなんて思って、だぁああああああ!!」

男「うわぁっ!?」


イケメン「うーんっ…むにゃむにゃ…」


女「うっ」ぱしっ

男「しぃー! 静かに…!」

女「…あたしも少し落ち着くわ。うん」

男「たった笑み一つで怒らないでくれよ…びっくりした」

女「な、なによ…じゃあアンタは普段から笑ってるとでも言いたいワケっ? 珍しくないと言えるワケ!?」

男「うっ、言われてみれば確かに……イケ友の奴にも、笑った所みたことないって言われた……」

女「でしょーが。誰だってそう思うの、だからあたしは変じゃない、全然変じゃないっ」

男「…わかりました、そう思っておきます」

571: 2014/07/01(火) 23:28:46 ID:lL9RSS5E
女「だから、変Oにも絶対に思われてるわよ、それ」

男「ああ、うん。コイツにも言われたことあるよ、君の満面な笑みは見たことがないって」

女「…でも、おかしいわね。単純な感情の一つなのに、アンタが笑うってことを皆気にしてる」

男「気にしてるのかな。まぁ気になってることは有り得るかもだけど…自分じゃ満面な笑みなんて分からないんだけど」

女「嬉しい事があったら笑うものでしょ。自然と心から笑えるものよ」

男「そっか…考えたこともなかった」

女「じゃあ今を感謝しなさい。笑えるってことは、幸せってことよ、きっとそれは大切なことに決まってるんだから」

男「大切なこと…」

男「ああ、うん、そうだな……きっと……それは、」チラリ


イケメン「すやすや…」

男「──コイツのお陰、なんだろうな…」ニコ



女「───………なんだ、出来るじゃない」

575: 2014/07/02(水) 12:25:17 ID:ft/YthCI
男「え? なに?」

女「なーんにも無いわよ、なによ、心配して損したわ」フリフリ

男「む。そんな言い方だと気になるだろ」

女「気にしない気にしない。さて、そろそろ良い時間ね──」

男「あ。気づけば空が真っ赤だ」

女「あたし達もう鞄用意してるから、あんたもさっさと教室に取りいってくれば」

男「あ、うん。わかった──あと、これ感謝の印」

コトリ コトリ

女「別に良いのに、ま、でもありがたく貰っておいて上げる」

男「うん。じゃあ行ってくる──」ガタ


スタスタ ガララ パタン


女「……」

イケメン「ぐー…」

576: 2014/07/02(水) 12:31:42 ID:ft/YthCI
女「…夕方で良かったわね」

女「眼つき悪男は気づいてなかったみたいだけど、」

女「──アンタ今、顔が真っ赤よ」



イケメン「っ…~~~~!!」カァァァ



女「どんだけ嬉しいのよ。アイツに感謝されてるって言われただけじゃない、ったく」

イケメン「…うるさい、ばか」モゾリ

女「はいはい。戻ってくる前に、さっさと調子戻して起きなさいよ。あ、ほらコレでも飲んで」コトリ

イケメン「……」チラリ

女「缶コーヒーですって。感謝の印だそうよ」

イケメン「──……ははっ」

女「? なによ、急に笑って、もうほんっと変Oよねアンタ」

577: 2014/07/02(水) 12:38:16 ID:ft/YthCI
イケメン「ああ、そうかもな。オレは変Oだよ……こんな缶コーヒー一個で、凄く嬉しいんだ」ギュッ

女「そ。良かったわね」

イケメン「──うん、本当に良かった」

 
本当に、良かった。


イケメン「………」


本当に、本当に。



~~修学旅行当日~~~


男「ううっ…胃が痛い…」

イケ友「ひっこうき! ひっこうき!」

イケメン「お、おおとととここっ! くん! 大丈夫かな!? この鉄の塊本当に浮くのかい!?」

578: 2014/07/02(水) 12:44:12 ID:ft/YthCI
男「大丈夫だってば。ちゃんと浮く、飛行機は浮くって」

イケ友「でも案外事故も多いらしいぜ?」

イケメン「あわあわわわわ」

男「…イケ友、本当にやめて」ドスッ

イケ友「あいて! なははー冗談だってのイケメン! つか、飛行機苦手とかウケルべ!」

イケメン「全然おもしろくない。笑える所まったくない」ガクガクガク

男「あ。ほらシートベルトつけろってさ、イケ友もそっち向いて──イケメンも早く、もうつけてる!」

イケメン「し、氏んじゃうぞほら早く付けないと!」

男「氏なないから、わかったから付けるって」カチャ

イケメン「ううっ…お願いがあるんだけど…手を握ってもいいかい…っ?」

男「やだ」

イケメン「うぉぉっ」

男「ったく、もーお前って本当に…」

ぎゅっ

579: 2014/07/02(水) 12:48:21 ID:ft/YthCI
イケメン「…う?」

男「手は握らない。また誤解されるの嫌だからな、だから、うん」

イケメン「…袖の端?」

男「そ、そうだ」


イケメン「………」じぃー

男(めっちゃ見られてる…)


男「…なにさ」


イケメン「ううん。なんでもないよ、ただ──」

イケメン「──君が友達で、本当に良かった」ニコ


男「……っ…ばか、そういったことを言うから誤解されるんだよ!」

イケメン「ああ、そうかもしれないな。ははっ」

580: 2014/07/02(水) 12:51:39 ID:ft/YthCI
キィイイイイイイイイン


男「あ、動き始めた」

イケメン「うん、そうだね」

男「あのさ、修学旅行……俺達、楽しめるかな」

イケメン「当たり前だよ。高校生活のビックイベント、楽しめないわけがない」

男「…うん。まぁそっか」コクリ

イケメン「ん?」

男「それがお前と俺の契約──だもんな」

イケメン「ああ、そうだね。それにもう一つだけ理由はあるよ」

男「え? なに?」

イケメン「あはは。それはね、男くん───」


イケメン「──オレが君の親友だから、だよ」

581: 2014/07/02(水) 12:52:13 ID:ft/YthCI
第十五話『オレと俺の突っ込み』

582: 2014/07/02(水) 12:55:38 ID:ft/YthCI


長らく続きましたが、これにて終わりです。
楽しく書けたのは支援と乙を下さった、皆様のお陰。


何時ぞやまた会えましたら。
質問があったら聞きますゆえに、 ではではノシ

491: 2014/06/17(火) 01:44:17 ID:hcHe.81E
それと大昔の過去作の幾つかご紹介


男「最近、変な声が聞こえるんだけど」
小鷹「いてっ...」竜児「いたっ...」
京介「正直めちゃくちゃ気まずい」


お暇な時に、お読み頂けたら。
ではこれにてノシ

211: 2014/05/12(月) 19:27:49 ID:ZrS1KLmg

男「中学の時の奴が集まってカラオケ? 行く行く!」
球磨川(女装)「ねえねえ善吉ちゃん、超大好きなんだぜ?」

一週間の合間に暇つぶしとしてお読みいただけたら。

引用: 男「見られてない?」イケメン「…」じぃー