463: 2006/07/13(木) 02:10:18.09 ID:bYoAAWhvO


俺がいつものように部室へ行くと、そこにはハルヒや朝比奈さん、ついでに古泉もおらず、いるのは読書中の長門だけだった。

キョン「あれ?長門、お前だけか?」

長門は本から目をはなし、ゆっくりと俺のほうを向いて小さく頷いた。

俺はとくにやることもなかったので、以前ハルヒがコンピ研から強奪したパソコンを立ち上げ、適当にあちこちのサイトを覗いていた。

ふと視界に入った長門を見ると、長門は本を膝に置いたまま居眠りをしているようだった。耳をすませると、すーすーと小さな寝息を立てていた。

長門の寝顔なんて初めて見たな…。いつも置物のように無口・無表情なんで、失礼ながらこのときの長門には人間っぽさを感じた。こんなことを感じるのは、出会って間もない頃以来だったか…。

長門『入らないの…?』
ハルヒがこの文芸部の部室を拠点にSOS団なる団体を設立したあの日、解散後に部屋を出ていこうとする俺を長門が引き留めた。

俺の袖を小さく引っ張り、うつ向き加減にしている長門は、ものすご~く可愛いらしかったのを覚えている。
涼宮ハルヒの劇場 「涼宮ハルヒ」シリーズ (角川スニーカー文庫)
474: 2006/07/13(木) 02:27:24.06 ID:bYoAAWhvO


キョン『入らないのって…さっきのSOS団とかいうおかしな団体にか?』
長門『そう』

キョン『あんたはホントにそれでいいのか?あの涼宮に文芸部を好き放題されて?』

長門『いい』

キョン『何で?』

長門『だって…人がいないと…廃部になっちゃうから…文芸部。』

キョン『まぁたしかに、部員が一人だと廃部は免れないな。』

長門『そう、だから構わない。文芸部がなくなると…私は他に行くところがない…。それに………独り…しい…』

最後のほうは声が小さくて聞き取りにくかったが、『独りは寂しい』という風に聞こえた。そこまで言われると断ることもできず、俺は『わかった、入るよ』と言ってしまった。そう言うと長門はぎこちなく微笑み、前髪が少し揺れる程度に頷いた…。
長門『それと…』

キョン『ん?なんだ?』
長門『私を呼ぶときは、長門でいい』

キョン『そうか。じゃあな長門、また明日来るよ』

長門『うん。待ってる』
そういえばあのときの長門は随分多弁だったな。よっぽど文芸部になくなって欲しくなかったんだろうな。

俺は長門の寝顔を見つめて、そんなことを考えていた…今はもう寂しくないか、長門?

479: 2006/07/13(木) 02:44:45.62 ID:bYoAAWhvO


ハルヒ「やっほー!みんな揃ってる~?今日は……ってあれ?あんたたち二人だけ?しかも有紀ったら寝てるじゃない。」
キョン「だから今は少し静かにしとけよ。みんな揃ってから起こすなり何なりすればいい」

ハルヒ「それもそうね。で、キョン?あんたは何してんの?」

キョン「ただの暇潰しだ」

ハルヒ「ふ~ん、何見てんの?見せて見せて!」
俺はどっかのサイトで見つけた、いわゆるFLASHゲームで遊んでいたのだが、ハルヒは物珍しそうに画面を見つめていた。

ハルヒ「へぇ~パソコンでゲームなんてできんのね~しかもタダで。それにしてもキョン、あんた下手ね」

キョン「自覚している、ほっとけ」

ハルヒ「ちょっとあたしに代わってみなさい、SOS団団長としての格の違いってのをあんたに見せてあげるわ!」

482: 2006/07/13(木) 02:55:25.74 ID:bYoAAWhvO


俺はハルヒに横取りされるのを予測していたので、覗かれる瞬間に別のゲームに切り替えていた。このゲームにはちょっとした仕掛けあったので、それに引っ掛ったときのハルヒを反応を見てやろうと考えたのだ。

キョン「長門が寝てるからな、音で起こしたら悪いし、これ付けとけ」

そう言って俺は、ハルヒにイヤホンを渡した。

ハルヒ「そうね。あんた結構気が利くじゃない」
キョン「まぁ、少なくともお前よりはな」

ハルヒ「ちょっと!それどういう意味よ!?」

キョン「そのまんまの意味だが?」

ハルヒ「ふんっ!まあいいわ、有紀が寝てるからあんまり大きな声も出せないし。今回は大目にみてあげる」

作戦成功。あとは例の仕掛けのとこまで進むのを待つのみだ。

485: 2006/07/13(木) 03:09:33.82 ID:bYoAAWhvO


このゲーム、画面上にある小さな丸を迷路(それほど複雑ではない)の壁に触れないように動かして、ゴールを目指すというものなのだが、一番最後のステージではある程度時間が経つと、不気味な顔をした女の子が画面に映り、しかも悲鳴が流れるという仕掛けになっている。

悲鳴が流れると周りに音が漏れてしまうので、俺はイヤホンをハルヒに渡したというわけだ。

ハルヒ「だんだん難しくなってきたわね~通路も狭くなってきたし…」

そう呟いてハルヒは画面に顔を近付け、慎重にマウスを動かしている。

ハルヒ「ファイナルステージ……これで最後ね」

よ~し、待ってました!!!

ハルヒ「もう少し…もう少し…」

そして、トラップが発動した…

ハルヒ「うわぁっ!!何なのよこれ!!」

マウスを横へ投げ飛ばすほどハルヒは驚き、振り返って俺を睨みだした。

490: 2006/07/13(木) 03:22:35.08 ID:bYoAAWhvO


ハルヒ「キョン~~…あんた、知ってたのねぇ~~」

ハルヒは怒っているようだったが、よく見ると涙目である。

キョン「まぁ軽いジョークだ、そんなに怒るなよ」

ハルヒ「うるさい!バカぁーーー!!!」

強烈な平手打ちが炸裂した……めちゃめちゃ痛い。
ハルヒ「ふんっ!あんたが悪いんだからね!………グスッ……」

ビンタは痛かったが、予想外なハルヒの反応を見れたので、結果オーライと言ったところか。忠告しておくが俺はSでもMでもない。
ちなみにハルヒが驚いて叫んだ瞬間、眠っていた長門は体全体をビクつかせ、後頭部を本棚で強打していた。

両手で頭を押さえ、小声で「…痛い……」と呟いている姿は、何とも愛らしいものであった。

498: 2006/07/13(木) 03:39:03.64 ID:bYoAAWhvO


それからしばらくして、朝比奈さんと古泉がやって来た。朝比奈さんはいつものメイド服に着替えようとしていたので、古泉は鞄を置いて俺と廊下へ出ていった。

古泉「頬に手形が残っていますよ?涼宮さんに叩かれましたか?」

キョン「まぁな、俺は軽いジョークのつもりだったんだが…」

古泉「ふふっ、あなたも困ったお人だ」

廊下で古泉と適当に話していると、朝比奈さんが「いいですよ~」と言ったので、俺たちは部室へ入った。

朝比奈さんがみんなへお茶を配り終えるとハルヒが、

ハルヒ「さぁ全員揃ったわね!じゃあ行くわよ!!」

キョン「行くってどこに?」

ハルヒ「決まってるじゃない、面白いものを探しによ!」

みくる「あのぅ~…あたし今着替えたばかりなんですけど…」

ハルヒ「じゃあそのままの格好でもいいわよ」

みくる「き、着替えます~」

それから朝比奈さんの着替えが終わり、俺たちは部室を出た。これまで幾度なくハルヒの言い「面白いもの」を探しに行ったが、結局は何も見付からずただの散歩になっているだけだった。

これはこれで楽しいから構わないけどな。

503: 2006/07/13(木) 03:46:55.33 ID:bYoAAWhvO
設定:「消失」が元になってるから、宇宙人も未来人も超能力者もいない。朝倉涼子はただの委員長。

921: 2006/07/13(木) 23:55:46.48 ID:bYoAAWhvO
>>498の続き


ハルヒ「じゃあみんな、くじ引いて!」

いつものくじ引きで組み合わせを決めるハルヒ。どうやらハルヒは無印だったようだ。
俺はというと…ハルヒとは別行動みたいだな。くじ引きの結果、俺と長門、ハルヒ・古泉・朝比奈さんという組み合わせになった。

ハルヒは俺をじと~っとした目で睨んだかと思うと

ハルヒ「いい、キョン!この前みたいに爆睡してたらただじゃおかないわよ!ちゃんと調査すんのよ!!」

調査ねぇ…どこをどう調べたらいいのか教えてほしいもんだ。

ハルヒ「3時間後に集合ね、時間厳守よ!特に誰かさんわね!」

キョン「へいへい、気を付けますよ」

ハルヒ「行くわよ!古泉君、みくるちゃん!」

まるでどこから、かのっしのっしと音が聞こえてきそうだ…やれやれ…。

947: 2006/07/14(金) 00:14:31.94 ID:bYZoVGN3O
>>921

キョン「さてと、どっか行きたいとこあるか?長門」

長門「図書館に行きたい」

ホント本が好きだなこいつは…

キョン「よし、じゃあ行くか」

長門「(コクッ)」

図書館に着いたかと思うと、長門は読みたい本があったのだろうか…足音も立てずにどこかへ消えてしまった。
特にやることもないので、俺も何か読んでみることにした。

一昔前に流行ったホラー小説を手に取り、気付けば時間を忘れて読み耽っていた。
しかし、今回は以前と違う。ちゃんと時間をチェックし、集合時間の30分前には図書館を跡にしていた。

そういえば長門の手には分厚い本があったな…いつのまに借りたんだ…?

987: 2006/07/14(金) 00:39:55.87 ID:bYZoVGN3O
10
キョン「図書カード、持って来てたのか?」

長門「(コクッ)」

キョン「じゃあ、そろそろ行くか。遅刻したらハルヒがうるさいしな」

しばらく歩いていると、珍しく長門が話し掛けてきた。

長門「あの…」

キョン「なんだ?」

長門「私も……でいい?」

キョン「すまん、最後が少し聞き取りにくかった。もう一回言ってくれるか?」

長門は立ち止まり、精一杯声を張ったようだった。まぁ小さいことに変わりはなかったが。

長門「私も…あなたのこと…キョン君って…呼んでいい…?」

普段は透き通るくらい色白な長門だったが、このときばかりは興奮状態のハルヒを上回るほど、顔が赤くなっていた。

キョン「別に構わないぞ。気軽にそう呼んでくれ」

長門「……うん」

20: 2006/07/14(金) 00:57:50.04 ID:bYZoVGN3O
11
集合場所にはハルヒ組はおらず、俺たちが先に着いたようだった。すると本日2回目、長門が自分から口を開いた。

長門「キョン…君…」

キョン「ん?」

長門「ありがとう…」

キョン「ああ、どういたしまして」

俺が呼び方を許可したことに対してだろう…何というか、ずいぶん律儀だな、長門。

程なくしてハルヒ組がやってきた。どうやら何の収穫もなかったらしい。まっ、当然だな。

そして二回目のくじ引きが始まった。
その結果……俺とハルヒ、長門・古泉・朝比奈さんという組み合わせになった。くそ~、朝比奈さんとデートが出来ると思っていたのに。

そんな憂鬱な俺とは対照的に、ハルヒは何ともいえない笑みを俺に向けていた。

また一体何を考えているんだ?おい。

ハルヒ「じゃあさっきと同じように3時間後に集合ね。はりきって行こーー!!」

はりきる?はは、俺はそんな気分にはなれねぇな。

ハルヒ「さぁ行くわよキョン!あたしに連いて来なさい!」

言われなくても連いて行くよ、本当なら逃げ出したいがな。

25: 2006/07/14(金) 01:12:20.62 ID:bYZoVGN3O
12
それから俺は、ハルヒにいろんなところを連れ回された。詳しく述べたいところだが、思い出すだけで気が重~くなるので、割愛させて頂く。何でこいつはこんなに元気なんだ…

ハルヒ「さてと、じゃあちょっとどっかで休憩しましょ。あっ、あのベンチがいいわね。」

俺たちがいたのはとある公園の敷地内で、そのベンチの近くにはソフトクリーム屋があった。俺はさりげなくサイフから小銭を取り出した、おそらく奢る羽目になるだろうと予見したからだ。

しかし、それは大きく外れた。

ハルヒ「ソフトクリーム買ってくるけど、あんた何が食べたい?」

俺は一瞬、思考が停止した。だってそうだろ?あのハルヒが奢るってんだからな。

キョン「あぁ~…え~っと……バニラでいいや」
ハルヒ「バニラ?ふ~ん、あんたも子供ねぇ~」
キョン「ほっとけ」

ハルヒ「まぁいいわ。じゃ、買ってくるわね」

今日は一体どういう風の吹き回しだ…俺に借りを作らせといて、後で無理難題を押し付けて返させようって魂胆か?

いや、それはないな。あいつはそんなの関係なしに無理難題を押し付けてくるからな。

36: 2006/07/14(金) 01:28:25.41 ID:bYZoVGN3O
13
ハルヒは両手にソフトクリームを持って戻ってきた。どうやらこいつはストロベリーを買ったらしい。
人のことを子供と罵っておいて、お前はストロベリーかよ。

ハルヒ「このあたしの奢りなんだからね、ありがたく思いなさいよ」

キョン「ならいつも奢ってる俺にも感謝してもらいたいもんだな」

そう言うとハルヒはしかめっ面をして、今にも逆切れしそうな勢いだった。俺は間違ったことは言っていない、断じて言っていない。
反論してくるかと思っていたが、ハルヒはそのままソフトクリームにかぶりついた。今日のこいつはどこかおかしい…。

ハルヒ「………してるわよ……アホキョン……」
キョン「何か言ったか?」

ハルヒ「言ってないわよ!バカ!!」


もうわけがわからん…長門はともかく、何故お前まで小声でしゃべるんだ?流行ってんのか?

48: 2006/07/14(金) 01:42:38.05 ID:bYZoVGN3O
14
ハルヒ「それにしても、な~~んにもないわね~。ホンッッットつまんない!!どっかに宇宙人とか未来人とか超能力者がいないかしら……」

キョン「いるわけねーだろそんなもん」

ハルヒ「あたしだってわかってるわよそんなこと。願望よ、が・ん・ぼ・う!あ~あぁ~、せめてあんたが宇宙人だったらよかったのに」

キョン「よかねーよ。俺は生まれ変わっても人間がいいね。下手に宇宙人なんかになって、お前みたいな奴に拉致されたかねぇ」

ハルヒ「拉致なんかしないわよ、ちょっと捕まえて遊ぶだけよ。飽きたら解放してあげるわ」

キョン「遊ぶって…何して遊ぶ気だ?」

ハルヒ「そうね~…………わかんない!」

キョン「何だそりゃ」

ハルヒ「いいのよそんなのは適当で。その場で思い付いたことをすればいいんだから」

それが一番怖いがな。正直何されるかわからん。お前に捕まるくらいならNASAの連中に捕まるほうがずっとマシだ。

58: 2006/07/14(金) 02:01:23.76 ID:bYZoVGN3O
15
端から見れば俺とハルヒは、ソフトクリームを食べながら談笑してる仲の良いカップルに見えたのかもしれない。実際は宇宙人や未来人、超能力者についてハルヒが一方的にスピーチをしているだけだったのだが。
俺も最初は適当に聞いて適当に相槌は打っていたものの、ハルヒの熱弁が昼休み後の授業となるのにそう時間はかからなかった。
つまり、ものすご~く眠たかったのだ。

ハルヒ「だからあたしは………ってキョン!話聞いてんの!?」

69: 2006/07/14(金) 02:14:28.94 ID:bYZoVGN3O
16
ハルヒ「何よ……寝てるなら寝てるって言いなさいよ…もう…。」

それにしてもいつから寝てたのよ…寝てる人間にベラベラ喋って、何か恥ずかしいじゃない…。

こうやって真近でキョンの寝顔見るのって初めてね。キョンってこんな顔していつも寝てんのね。ちゃんと口閉じて寝なさいよ…全く、マヌケな顔しちゃって…

あたしは思わずキョンの頬を軽くつついた。そしたらこいつったら、あろうことかあたしにもたれかかってきちゃって…重いわよ、キョン。

76: 2006/07/14(金) 02:29:29.60 ID:bYZoVGN3O
17
肩にもたれかかってるキョンの頭を、あたしは起こさないようにゆっくり自分の足にのせた。わかりやすく言うと膝枕(?)よね。

スースー寝息立てて呑気に寝ちゃって…一応あたしたちは調査に来てんのよ、もう!

今のあたし達は、周りから見たらどう思われてるのかな…?仲良さげな友達?それとも恋人同士?……どちらかといえば後者がいいかな……ううん、恋人同士って思われていたい。少なくとも今この瞬間だけは…。

あたしだってこう見えても普通の女子高生で健康な若い女なんだから、たまにはそんな気持ちになるわよ。あんたは信じないでしょうけどね…。

87: 2006/07/14(金) 02:50:42.89 ID:bYZoVGN3O
18
キョン…あんたいつまで寝てんの?もうすぐしたら集合時間よ。団長のあたしが遅刻したら、他のみんなに示しがつかないじゃない。

あたしはポケットから携帯を取り出し、みくるちゃんにメールを送った。電話だとキョンが起きちゃうかもしれないし。

『今日はもう解散していいわ。だから集合場所に来なくてもいいわよ。古泉君と有紀にもそう伝えといて』

いいわよね、このくらい。あたしは団長なんだし。それに何だかあたしまで眠くなってきたわ。あんたのせいよ、バカキョン。

ハルヒ「あたしも少し寝るわ。おやすみ、キョン………いつもあたしのワガママに付き合ってくれて、ありがとう…」

あたしは寝てるキョンの耳にそう囁き、軽く頭を撫でて眠りについた。当分の間、調査はしなくてもいいかな…。

100: 2006/07/14(金) 03:19:43.77 ID:bYZoVGN3O
19
なんだ…この状況は…?どうして俺はハルヒの膝枕で横になっている?待て待て、落ち着くんだ…え~っとたしかハルヒとソフトクリーム食ってて、そしたらハルヒが演説し始めて……寝た……そうだよな?

そして目が覚めたら(目は瞑ったままだが)ハルヒが膝枕をしている、ホワイ?なぜ?こいつがそんなことをする柄か?

それに集合時間はどうした?もうとっくに過ぎてるんじゃないのか?まぁ仮にもこいつは団長だから、勝手に集合中止なんてこともできるだろうし、誰も反対しないだろう。

しかしずっとこうしているわけにもいかないので、そろそろ起きようとすると…

ハルヒが小声で耳に囁いた。「おやすみ」って…お前も寝るつもりかよ。こうして俺は起きるタイミングを逃し、二度寝するしかなくなった。こりゃあ今日の晩は寝れないな…。
それにしても、こいつも一応自分のことを「ワガママ」と自覚してたんだな。それにありがた~い感謝の言葉も頂いたわけだし、もうしばらくこのおかしな団体に席を置いておくのも悪くない。


ただな、ハルヒ…今度は俺が起きてるときに礼を言ってくれ。

110: 2006/07/14(金) 03:34:22.62 ID:bYZoVGN3O
おまいらノシ

666: 2006/07/14(金) 20:52:21.57 ID:bYZoVGN3O
>>100
20
次の日、教室に着くとハルヒが待ってました言わんばかりに

ハルヒ「あっ!遅いわよ、キョン!明日からはもっと早く来なさい!」

キョン「俺が何時に来ようが俺の勝手だろ?」

ハルヒ「いいから早く来なさい!団長命令よ!!」

俺はふと昨日のことを思い出した。そう、ハルヒが寝ている(実は起きていたが)俺に言った言葉を。

そこで俺は、軽い冗談のつもりで言ってみた。

キョン「何だ?そんなに俺に会いたいのか?」

おそらく冷めた顔をして、罵声を浴びせてくるだろうと思っていたのだが…ハルヒの反応は俺の予想の斜め上を行くものだった。

ハルヒ「な、何言ってんのよ!もうっ!バカじゃないの!?」

罵声は浴びせられたが、いつもとは違う感じがした…照れ隠しという表現が一番近いかもな。

耳まで真っ赤にしているハルヒなんてのは、めったに見れるものではなく、結構可愛かった。もちろん、昨日の長門もな。
ハルヒ「とにかく!明日からは早く来なさい!いいわね!」

どこまでワガママなんだかな…やれやれ…

678: 2006/07/14(金) 21:39:57.07 ID:bYZoVGN3O
21
国木田「涼宮さんて、最初の頃とずいぶん変わったよね」

昼休み、いつものメンバーで昼飯を食っていると、国木田が口を開いた。
谷口「ああ確かに変わったよな。性格も随分丸くなったっていうか、まともな女子高生って感じがするぜ」

キョン「そうか?特にどこも変わっていないと思うが…」

谷口「いや、大分変わったぜ。実はお前が来る前にな、涼宮に数学教えてもらってたんだよ。」

国木田「そうそう!あれは意外だったよね。おかげで僕は百円儲かったけど」

キョン「賭けてたのかよ…」

谷口「絶対断られると思ってたからな。悪いけど教えてくれって言ったら、『いいわよ』って即答。ホントあれは意外だったぜ。しかも説明が先生より上手いってきたもんだ。」

あのハルヒが…マジかよ……俺も今度頼んでみるか?

「うんうん、確かに涼宮さんすごく変わったよね」

と、話に割り込んで来たのはAAランクプラス(谷口談)の委員長、朝倉涼子だった。

688: 2006/07/14(金) 22:08:07.86 ID:bYZoVGN3O
22
朝倉「涼宮さん、前みたいにギスギスした感じがしないのよね。あたしが話し掛けたときもちゃんと返事してくれたし。涼宮さんが変わったって言ってる人、このクラスに結構いるのよ。これも全部誰かさんのおかげかな?」

と言いつつ、朝倉はチラッと俺を見た。俺はこれといって何かした覚えはないのだが…。

朝倉「あたしとしては、涼宮さんにはこのままクラスに溶けこんで来てほしいのよね。やっと少しずつお話しできるようになったんですもの。だから、これからも涼宮さんのことよろしくね」

そして昼休み終了のチャイムが鳴った。朝倉は『じゃあね』と一言言うと、笑顔で去っていった。
よろしくって言われてもねぇ~…俺は具体的にどうすりゃいいんだ?

国木田「頑張りなよ、キョン」

谷口「もし万が一涼宮の性格がまともになったら、朝倉と匹敵する逸材になるかもしれねぇぞ。頑張れよ、キョン!!」

だから何を頑張れってんだ、おい。
まぁハルヒは性格以外はパーフェクトだから、そこだけ直せばどうにか見れるようにはなるかもしれないがな。

703: 2006/07/14(金) 23:02:52.75 ID:bYZoVGN3O
23
俺はちょっとした気まぐれで、いつもより早く部室へ行ってみた。すると長門が慣れない手付きでパソコンをいじくっており、俺がいることにも気付いていないようだった。

俺はそっと画面を覗きこみ

キョン「何見てんだ?」
長門「あっ!!」

長門はとっさに画面をその小さな手で覆い隠した。全く隠し切れてなかったがな。驚いたことに、画面に映っていたのは……俗にいう工口画像だった。

長門「こ、これは…違うの…。ゆーあーるえるをくりっくしたら突然………信じて……」

長門はオロオロしっ放しで目の焦点が合っておらず、どこを見ているのかわからなかった。

長門「キョン君……信じて……」

上目遣いなその瞳には微かに涙が浮かんでおり、画面を隠せていない白くて脆そうな手は小刻みに震えていた。
相手がハルヒなら、ここで少しからかってみるもんだが、長門となるとそうはいかない。下手にからかうと本当に泣いてしまいそうな勢いだからである。

俺は鼻でゆっくり息を吐いて

キョン「わかった、信じるよ。だからそんな泣きそうな顔するなって」

長門「うん…ごめんなさい」

718: 2006/07/14(金) 23:29:59.61 ID:bYZoVGN3O
24
キョン「おいおい、謝らなきゃいけないことなんてしてないだろ?」

長門「うん、ごめんなさい…あっ………。ふふっ、また言っちゃった」

長門ははっとしたような顔で俺を見つめたかと思うと、にこりと微笑んだ。その笑顔に、以前見たぎこちなさはもはや残っていなかった。

長門「あの…キョン君?」

キョン「なんだ?」

長門「その…男の子は…こういう…え、えOちぃのが好きなの?」

これまた返答に困る質問をして下さる。さて、どうしたものか?

キョン「世にいる一般的な男子高校生の大半は、好き…なんじゃないか?」

長門「……そう」

そして長門は画面を消そうとしたのだが、まともに見ることができないようで、左手で目を覆い、右手でマウスを動かして当たり障りのないところをカチカチとしていた。

何度かしては画面を確認し、再び目を覆い隠すといった行動を長門はしばらく繰り返していた。俺がさっと消してあげてもよかったのだが、その一連の行動を見ていたかったので、あえて放置した。

結局長門が画面を消すことに成功したのは、それから10分程経ってからのことであった。

751: 2006/07/15(土) 00:24:39.15 ID:Q1scHck/O
25
やっとこさ画面を消した長門と目が合い、お互い微笑んだりしていると

ハルヒ「キョ~~ン~~、あんた何してんの~~?」

扉の方に目をやるとそこには、ハルヒだけでなく古泉と朝比奈さんまでいた。

みくる「ごめんなさい、邪魔しちゃ悪いと思ったんですけど涼宮さんが…」

心のそこから申し訳なさそうにする朝比奈さんを見ていると、何故だかわからんがこっちまで罪悪感を持ってしまう。

なるべく俺は平静を装いながら

キョン「ところで、いったいどこから見ていたんだ?」

古泉「さぁ?どこからだと思いますか?」

殴るぞこの野郎

朝比奈さんと古泉はいい、問題はハルヒだ。さっきからこいつは俺をひたすら睨みつけている。

隣でちょこんと座っている長門は、俺とハルヒをチラチラ見ながらガタガタ震えているようだ。長門が掴んでいるのだろう、俺の右袖が揺れているのがその証拠である。

765: 2006/07/15(土) 00:53:56.30 ID:Q1scHck/O
26
ハルヒ「で、あんたたち何してたの?」

キョン「なんも」

ハルヒ「嘘、あ~~んなに仲良さげにしてたじゃない」

キョン「団員同士仲良くするのが、そんなに悪いことか?」

ハルヒ「そんなことを言ってんじゃないの!!」
怒鳴るなよ。俺は構わないが、長門が不安そうな目でずっとこっちを見つめてるんだぞ。袖を掴む力もさっきより強くなってるしな。
キョン「じゃあ何が言いたいんだ?」

ハルヒ「え~っと…だから~………んもぅ!知らない!勝手にすれば!?」

ああ、言われなくても勝手にするさ。俺は別に悪いことはしてないからな。

ふと長門を見ると、手を震わせて唇をギュッと噛み締め、今にも涙が溢れ落ちそうになるのを必氏に堪えていたのだった。

キョン「お、おい長門!」

ハルヒ「え?あっ!有紀!!」

興奮状態のハルヒもさすがに動揺しまくっており、俺を押し退けて長門に駆け寄った。ハルヒに続いて朝比奈さんも駆け寄ったものの、どうしたらいいかわかっておらず、オロオロするばかりだった。
古泉はというと、俺を見ていつもの肩すかしアクションをしただけ。冷静なのか冷たいのかどったなんだ…?

778: 2006/07/15(土) 01:16:00.39 ID:Q1scHck/O
27
あれからハルヒは長門に謝り続け、朝比奈さんの慰めのおかげもあって、事態は沈静化した。それにしても、長門泣くのは予想外だったな。

古泉「あなたも困った人ですね。あぁ、ケンカのことではありませんよ」
キョン「そりゃ一体どういう意味だ?」

古泉「おや?気付いていらっしゃらないんですか?まぁそれはそれでよろしいでしょう。僕は傍観者として楽しませて頂きます」

いつもながら意味不明なやつだ。


今日はこのまま解散となった。ハルヒは紙袋を持っていたので、何かするつもりだったらしいが。中を確認する余裕などなかった。

帰宅後、晩飯を食いわって風呂も入り終えた俺は、部屋で適当にくつろいでいた。0時を回ろうとしていた頃だっただろうか、急に携帯がなった。

表示された名前を見ると、ハルヒだった。こんな時間に何のようだ?内容によっては切らせてもらうぞ。

782: 2006/07/15(土) 01:37:52.54 ID:Q1scHck/O
28
ハルヒ「もしもし?あたし。キョン、今…ちょっとだけいい?」

キョン「これからお前が話す内容によるな」

ハルヒ「えと…今日の…部室でのことについてなんだけど…」

キョン「……ああ」

ハルヒ「あれはあたしが悪かったわ…だから……ごめんなさい………」

キョン「お前が謝るなんて…珍しいこともあるんだな」

ハルヒ「ちょっと!あたしは真剣に…」

キョン「長門は何て言ってたんだ?」

ハルヒ「えっ?有紀は『別にいい、気にしないで』って」

非常に長門らしい返事の仕方だな。俺に対しては最近まともに答えてくれて、少しなら会話もできるようになったが、ハルヒに対しては(たぶん古泉と朝比奈さんもだろう)まだそこまで至っていないらしい。

786: 2006/07/15(土) 01:47:06.83 ID:Q1scHck/O
29
キョン「長門が気にしないでって言ってくれたんなら、それでいいんじゃないか?俺はお前が言った言葉なんて気にしちゃいないぞ」

ハルヒ「………」

なぜそこで黙る?

キョン「おい、ハルヒ」
ハルヒ「えっ!?あ、ああ、何?」

何?じゃねぇよ…まぁいいか。

キョン「今日のお前、何に怒ってたんだ?」

ハルヒ「それは…その…いろいろよ、いろいろ!!もういいじゃない、終わったことなんだし!じゃあ、そろそろ切るわね!」

キョン「って、おい!?おれはまだ話が…!」

ハルヒ「それじゃ、また明日。おやすみ!」

ツーツーツー……

一方的に切りやがった。俺の話くらい最後まで聞けよな、全く。さて、俺も寝るか。

電話のせいで目が冴えちまったが

793: 2006/07/15(土) 01:59:55.99 ID:Q1scHck/O
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翌朝俺は寝坊してしまった。おかげで朝飯は食ってないし、おまけに弁当まで忘れる始末だ…ついてない。ついでに言うと財布の中身もほぼ空の状態で、今日の俺は晩飯まで何も口にできないことが確定した。

そして訪れる昼休み、朝から何も食っていない俺にとって、周りから食い物の臭いがするこの時間は拷問だった。
谷口と国木田に弁当を分けてもらうなり、金を借りるなりする方法もあったんだが、それは俺のプライドが許さなかった。
キョン「腹減ったな……」

そんな俺の独り言が聞こえていたのかどうかはわからないが、ハルヒが後ろからつついてきてこう言った。

ハルヒ「よかったらあたしの弁当…少し分けてあげてもいいわよ……」

796: 2006/07/15(土) 02:16:19.81 ID:Q1scHck/O
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一瞬ハルヒが天使に見えたが、何か裏があるような気がして

キョン「何を企んでるんだ?」

と、つい言ってしまった。

ハルヒ「何も企んでなんかいないわよ!失礼ね!団員の健康を管理するのも団長の仕事なの!空腹で参加して、倒れでもしたら大変じゃない!」

こいつはこういう変な部分で常識的なんだよな。まぁこの際それは置いとこう。ハルヒの弁当がどんなのか見てみたい気もするしな。

キョン「じゃあお言葉に甘えて、頂くとしましょうか」

ハルヒ「初めから素直にそう言えばいいのよ、まったくもう!」

というわけで、ハルヒの弁当を分けてもらうことになったのだが、こいつのことだ…中は奇抜なものに違いない。

しかし、予想に反して中は家庭的というか何というか、女の子らしいものであった。ああそうか、親が作ってるんだよな。そうだよな。

キョン「この弁当ってお前の…」

ハルヒ「あたしが作ったわよ」

俺は驚きのあまり声を失った。これを?お前が!?どうやって!!?

804: 2006/07/15(土) 02:32:18.11 ID:Q1scHck/O
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ハルヒ「何よその顔は?あのね~、あたしだって年頃の女よ?必要最低限の家事くらいちゃんとできるわよ。もう!見てばっかいないでさっさと食べなさい!」

こうして俺はハルヒの弁当を食べさせてもらった。全体的に結構上手かったな…ホント、つくづくもったいない奴だよお前は。

しかしまあ、今回ばかりはハルヒに感謝しないとな。あいつの弁当の8割方は俺が食ってしまって、当の本人はあまり食ってなかったしな。

一応言っておくが、俺がおかまいなしに食ったんじゃないぞ。
あいつが次はこれ、次はこれと無理矢理食べさせたのだ。しかも妙に嬉しそうにな…。


さて、我が団長のおかげで腹は膨れたし、放課後に備えてゆっくり寝るとするか。

815: 2006/07/15(土) 03:02:12.25 ID:Q1scHck/O
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よかった…何とかキョンに弁当食べさせることができたわ。あいつが弁当持ってきてないのは好都合だったわね。無理矢理口元に運んでも、拒否せずにたくさん食べてくれたし。

それでこそ早起きして作った甲斐があるってもんだわ。キョンも上手かったって言ってくれたし、初めてにしては上出来よね。

何企んでるって言われたときはちょっとショックだったけど…あたしってそんなに打算的な女に見える?出会った頃に比べると少しはマシになったと思ってたんだけどな…。

最初はみ~んなつまんない人間ばっかで、中学のときみたいにイライラしっ放しだったけど、最近はそうでもないのよ?今はこの「つまんない」日常が結構楽しいわ。

そういえばあんたがいないとき、あたしってば谷口に数学教えてたりしてたのよ?そのときに谷口から礼を言われたけど、「ありがとう」って…言われると結構嬉しいわね。

ねぇ、キョン?また今度お弁当作ってきたら、食べてくれる?あんたの好きな料理や味付け、教えてほしいな。頑張って作ってみるから…。

これですっきりしたわ。あんたがいくら「気にすんな」って言っても、気にしちゃうもの。有希のことも…あんたのことも……。


それにしてもお腹すいた~。あたしも食べるつもりだったけど、あんたがおいしそうに食べるから、あたしの分まであげちゃったじゃない。

慣れない早起きもしちゃったせいで、今日はいつも以上に眠たいし。って……あんたはもう寝てるのね…。もう、たまには授業ちゃんと聞きなさいよね。テスト前に焦っても知らないわよ?

まぁ……どうしてもっていうなら、あたしが直々に教えてあげてもいいけどね。


それじゃ、ちゃんと部活来んのよ。遅刻厳禁だからね、バカキョン♪



引用: ハルヒ「ちょっとキョン!あたしのプリン食べたでしょ!?」