1: 2014/07/16(水) 01:09:34 ID:XfYNTDX2
私はしがない行商人。

重い行李を背中に背負って、

村から村へと売り歩く。

男「よってらっしゃい見てらっしゃい。 更紗もあれば錦もあるよ!」

男「ああいっぱいだ、いっぱいだ。 私の行李にゃなんでもあるよ!」

声を上げれば皆人来たりて次から次へと売れてゆく。
江戸前エルフ(10) (少年マガジンエッジコミックス)
2: 2014/07/16(水) 01:10:07 ID:XfYNTDX2
ふと見上ぐれば、一人の娘、黒い瞳の村娘。

売れに売れてもなお余りある、行李の荷物は辛くはないが

ああ今だけは労ってくれ、この勇ましき男の肩を。

ああ今だけは労ってくれ、黒い瞳の愛しき人よ。

娘「ねえその箱の中身はなあに?」

若い男に娘は言った。

男「ここに入るは秘蔵の品々、高く茂ったライ麦畑で夜になるまでお待ちしましょう。」

男「そしうて今宵に黒い瞳を見つけたならば、箱の中身をお見せしましょう。」

3: 2014/07/16(水) 01:12:07 ID:XfYNTDX2
さて日は落ちて、霧の立ちたる夜が来たりぬ。

血気盛んな若者は待つ、彼の愛しき娘が来るのを。

娘「さあ来ましたわ、行商人さん。 箱の中身をお見せくださる?」

カーチャと名乗る娘は言った。

値段を少し負けてと言った。

用心深く値段を決める。

男「私もこれを高く買ったんだ、そんなに負けてと言わんでおくれ。」

男は娘と口付け交わし、値段を少し上げてと頼む。

男「さあ可愛い人、こちらに御出、その紅の唇寄せて、私のそばに座っておくれ。」

そうしてこうして若い二人がどうして値段をきめ終えたのか、

それを知るのはただ一つだけ。深い夜のみそれを知りたる。

夜風に吹かれ、背高く伸びた、ライ麦畑がゆらゆら揺れる。

4: 2014/07/16(水) 01:13:53 ID:XfYNTDX2

私は彼女にたくさんあげた。

赤いリボンに更紗を一巻き、真白いシャツを留めるベルトときれいな指輪はトルコ石。

愛しい娘は指輪を除いて、総て仕舞った。総て仕舞った行李の中に。

娘「ごめんなさいね、お洒落はしないの、私には親しい人がいないから!」

ああいっぱいだ、いっぱいだ。

私の行李にゃなんでもあるよ。

更紗もあれば錦もあるよ。

ああ労ってくれ、私の肩を。

ああ今だけは労ってくれ、黒い瞳の愛しき人よ。




Конец.

5: 2014/07/16(水) 01:18:25 ID:XfYNTDX2
おしまい。






深夜のテンションで書いたから気持ち悪い文章だとおもうw
後悔はしていない。

元ネタはロシア民謡の「コロベイニキ」の歌詞。
良かったら聴いてみてね。

6: 2014/07/16(水) 17:48:58 ID:p7FTyjR.

引用: 男「行商人」