1: ◆I8BsNHzBuc 2014/07/28(月) 23:00:45 ID:FSEl1IvQ
~オークの家~

『女騎士お断り』



ゴブリン「なんだ、この貼り紙? セールスお断り、みたいだな」

オーク「あまりにもしつこいから、きちんと意思表示することにしたんだよ」

ゴブリン「しつこいって? 女騎士が?」

オーク「ああ」



2: 2014/07/28(月) 23:04:50 ID:FSEl1IvQ
オーク「あの女、毎日のように家に押しかけてきて」

オーク「『くっ、殺せ!』とか『私の体が目当てなのか!』とかいってくるんだ」

オーク「いい加減、相手するのイヤになっちまってよ」

ゴブリン「そりゃ大変だな……」

オーク「だが、あれでも一応騎士だし、礼儀みたいなもんは身につけてるだろうから」

オーク「こうしておけば現れないと思ってよ」

ゴブリン「なるほどな」

3: 2014/07/28(月) 23:07:13 ID:FSEl1IvQ
ゴブリン「──おっと、もうこんな時間か。そろそろ帰るわ」

ゴブリン「んじゃな」

オーク「おう」

ゴブリン「今度はオイラの家にも遊びに来いよ」

オーク「そうさせてもらうぜ」

バタンッ……

オーク「……」

オーク「さぁて、ゆっくり読書でもするか」

4: 2014/07/28(月) 23:10:15 ID:FSEl1IvQ
オーク(今日は女騎士は現れない……)ペラ…

オーク(あの貼り紙、ちゃんと効果はあったみたいだな)

オーク(そりゃそうだ、『お断り』とまで書かれてのこのこ来れるわけが──)ペラ…



ピンポーン……



オーク(ん、なんだろ? ゴブリンの奴が忘れ物でもしたのか?)

5: 2014/07/28(月) 23:13:27 ID:FSEl1IvQ
オーク「はい」ガチャッ…

オーク「!」

女棋士「将棋を打つぞ、オーク!」

オーク「……」

オーク「……どちらさまで?」

女棋士「私は女棋士だ。女騎士ではないから、この家に入れるはずだな?」

オーク「……ま、どうぞ」ギィィ…

6: 2014/07/28(月) 23:16:21 ID:FSEl1IvQ
女棋士「私を巧みに棲み家に誘い込んで……いったいどうする気だ!?」

オーク「なにいってんだ」

オーク「アンタ、将棋やりにきたんだろ?」

オーク「ウチにも将棋盤くらいあるし、さっそくやろうぜ」

女棋士「な、なんだと!?」

女棋士「くっ……。まぁいい、やろうではないか」

オーク「押し入れの奥にしまっちゃったから、ちょっと待っててくれ」

7: 2014/07/28(月) 23:19:16 ID:FSEl1IvQ
オーク「んじゃ、先手後手を決めよう」

オーク「せっかくだし駒振ってくれよ、女棋士」

女棋士「駒を……振る?」

オーク「ん、振り駒を知らねえのか?」

女棋士「!」ギクッ

女棋士「も、もちろん知ってるとも!」

女棋士「だが、特別に今回はキサマにやらせてやろう!」

オーク「……どうも」

8: 2014/07/28(月) 23:24:13 ID:FSEl1IvQ
オーク「……」ジャラッ

オーク「五枚のうち表が二枚……ってことは、アンタが先手だ」

オーク「お願いします」ペコッ

女棋士「お願いする」ペコッ

女棋士「……」

オーク「どうした? いきなり長考か?」

女棋士「くっ!」パチッ

オーク「……」パチッ

9: 2014/07/28(月) 23:26:13 ID:FSEl1IvQ
オーク「……」パチッ

女棋士「……」パチッ

オーク「……」パチッ

女棋士「……」パチッ

オーク「……」パチッ

女棋士「……」パチッ

オーク「おい」

女棋士「え?」

10: 2014/07/28(月) 23:28:26 ID:FSEl1IvQ
オーク「銀は横に動かせねえぞ」

女棋士「くっ!」

女棋士「シルバーが横に動かせないことぐらいお見通しだ! ほんのジョークだ!」パチッ

オーク「ふうん……」

オーク「……」パチッ

女棋士「……」パチッ

オーク「……」パチッ

女棋士「……」パチッ

11: 2014/07/28(月) 23:31:35 ID:FSEl1IvQ
女棋士「お、おのれ……私の兵たちが次々に捕虜にされていく……!」

女棋士「なんという屈辱だ!」

女棋士「くっ!」パチッ

オーク「!」

オーク「お、飛車ゲット」スッ

女棋士「あっ!」

女棋士「くっ、待て!」

オーク「待たねえよ」

12: 2014/07/28(月) 23:34:51 ID:FSEl1IvQ
オーク「だいぶ持ち駒がたまってきたな」ジャラジャラ…

オーク「ドミノ倒しならぬ、将棋倒しができちゃうくらいだ」チョンッ パタタタタッ

女棋士「くっ……!」

女棋士「オークの容赦ない凌辱で、もはや私の陣は壊滅寸前……!」

女棋士「だが、私は起氏回生の策をひらめいたぞ!」

オーク「なに?」

女棋士「フッ……ここだっ!」パチッ

13: 2014/07/28(月) 23:38:25 ID:FSEl1IvQ
女棋士「……」ドヤァ…

オーク「……」

オーク「これ、二歩じゃん」

女棋士「え?」

オーク「歩を同じ縦列に二枚置くと、負けになるんだよ」

女棋士「!」ガーン

女棋士「くっ、詰め!」

オーク「いや、詰むっつうか、アンタが勝手に自滅したっつうか……」

14: 2014/07/28(月) 23:41:25 ID:FSEl1IvQ
オーク「まぁ……もうそろそろいいか」

オーク「あのさ、あえて黙ってたんだけどさ」

オーク「一応棋士っぽい格好してるけど……アンタ、棋士でもなんでもないだろ?」

女棋士「!?」ドキッ

オーク「汗が滝のように出てるけど、大丈夫か? ポカリスエット飲むか?」

女棋士「い、いつからだ……!」

女棋士「いつ気づいた!?」

15: 2014/07/28(月) 23:44:29 ID:FSEl1IvQ
オーク「最初からだよ」

女棋士「!」

オーク「あのな。普通、将棋は“打つ”じゃなくて“指す”っていうんだよ」

オーク「ちなみに“打つ”っていうのは碁だからな」

オーク「勉強になったか? ……女騎士」

女騎士「くっ、殺せ!」

16: 2014/07/28(月) 23:48:10 ID:FSEl1IvQ
オーク「ったく、なんでこんなバカなマネしたんだよ」

女騎士「だって……オークが『女騎士お断り』なんて貼り紙するから……」

オーク「ハァ……」

オーク「分かったよ。また変装されても面倒だし、あの貼り紙は外すよ」

女騎士「本当か!」パァァ…

オーク「ただし今後は、俺を工口ブタみたいに扱うのはやめてくれ。いいな?」

女騎士「くっ、分かった!」

オーク「よし、だったら今日は俺が将棋を教えてやるよ」

女騎士「おお、ありがたい!」





~ HAPPY END ~

17: 2014/07/28(月) 23:48:42 ID:FSEl1IvQ
おしまい

引用: 女棋士「将棋を打つぞ、オーク!」オーク「……」