633: 2015/10/11(日) 16:05:34.73 ID:6/P/03Ob0


(んんぅ、朝日が眩しい…、しまった!総員おこっ…ってそうか、今はもう必要ないのよね)


ギシッ…ギ、ギィ…


(…っ、い、た……。はあ、軋みが酷い。思ったより船体(からだ)の劣化が進んでるのね)

(あと、どれくらい持つのかしら)

(とにかくさっさと支度して、アイツの所に行かなきゃ)
艦隊これくしょん -艦これ-
634: 2015/10/11(日) 16:07:17.16 ID:6/P/03Ob0

「おはよう司令官。今日もそれなりに仕事あるわよ。ま、頑張りなさい。付き合ってあげるわ」

「叢雲」

「なに?」

「お前はいったい何時まで鎮守府(ここ)にいる気だ?」

「え?」

「深海棲艦との戦いもほぼない今、わざわざこんな壮年者に付き合う必要はないだろう」

「…アンタ、またその話?言っとくけど、私は軍を抜ける気はないから」

「確かに出撃自体は各段に減ったわ。でもまだ後処理は必要でしょう?」

「警備・偵察はまだいるし、解体された子たちの支援だって…」

「だが少なくとも、事務作業なら私一人でできる。警備偵察も、もっと適した者がいる」

「…っ、要は、私は役に立たないからお払い箱ってわけ?」

「違う、そうじゃない。叢雲が手伝ってくれているおかげで、事務も大分楽になっている」

「ただ、多くの艦娘はその任を解かれ、各々、人としての人生を歩みつつある」

「こんな狭い世界に閉じこもるのは、もったいないだろう?」

635: 2015/10/11(日) 16:10:12.42 ID:6/P/03Ob0

「それに、叢雲」

「まだ何かあるの?」

「最近、調子が悪いんじゃないのか?」

「っ!?は、はぁ?いったい、なんのこと?」

「お前は誤魔化しているつもりだろうがな、いったい何十年付き合ってると思っている?」

「そろそろ、船体(からだ)が限界じゃないのか?」

「あ…、そう。司令官はなんでもお見通しってわけね」

「一般的に、船の寿命は長くて50年程度。戦闘を続け、消耗すればもっと早い」

「人の形をしているとはいえ、艦娘である以上、その本質は船だ」

「…解体され人になった者とは、必然的に寿命が異なるんじゃないか?」

「そこまで知ってるなら、もう隠す必要もないか。ええ、そうよ。最近ガタが来だしてる」

「ああ、でも安心して?無茶しなきゃ多分、アンタが氏ぬまで持つから。迷惑はかけないわ」

「そういう問題じゃない。なあ、今からでも遅くはない、早く艤装を解体して…」

「だから、全部受け入れてのことだっていってるじゃない」

「確かに解体されれば、もっと長く生きられるでしょうね」

「でも、そんなの私は望まない」

「望み?」

636: 2015/10/11(日) 16:11:20.54 ID:6/P/03Ob0

「…仮に、仮によ?私の艤装を解体したとして、私は人としてならどれだけ生きられると思う?」

「いきなりなんだ?」

「答えて」

「そうだな、見た目年齢からして、おおよそ70年くらい、か?」

「70年…」

「ああ、おそらくはな」

「なら、なおさら嫌」

「どうしてだ?」

637: 2015/10/11(日) 16:14:29.25 ID:6/P/03Ob0

「ねえ、司令官?アンタがここに来た初めての日のこと、覚えてる?」

「おい、さっきからいったい…」

「いいから」

「…、覚えてるよ。新米で頼りなかっただろうとはいえ、いきなりのもぐりあつかいは驚いた」

「毎日喧嘩ばっかりしてたわね」

「ああ。遠征、作戦立案、雑務、私生活さえ、当初は全てにおいてお前と意見が一致しなかったな」

「ホント、今だから言うけど、あの時期はアンタのこと、大っ嫌いだったわ」

「上からの命令とはいえ、何でこんな奴の秘書艦に任命されたんだろうってね」

「お前…、それを言うなら、私も叢雲のことが嫌いだったよ。ただの生意気なガキだと思っていた」

「無礼な男。でも、何だかよくわからないけど、いつの間にかいい感じになってきたのよね」

「ほぼ毎日本音をぶつけ合っていたんだ。嫌でも互いの考えがわかってしまうだろう」

「まあ私も、アンタが何の考えもなしに行動してるってわけじゃなかったって知ることができたしね」

「その割に、相変わらず喧嘩は多かった気がするが?」

「でもそのころにはもう、私、アンタとの喧嘩がある意味楽しみになっていたわ」

「光栄だよ」

「いつの間にか艦隊は大きくなって、皆の希望でイベントごともやれるくらい安定してきて…」

「ああ、そういえば始めてクリスマスケーキを食べたお前の写真、まだ残ってるな」

「ちょっ!?あれは消せっていったでしょ!!なんで残ってるの!場所を教えなさい!!」

「さて、どこにしまったか。この年になると記憶が少しな」

「このっ!!ま、まあ、そうね。感動はしたわよ、ええ。とっても…美味しかったわよ、ふん」

「新年もだいたい一緒だったな」

「あいにくいつも執務室で、ね」

「その後は…そうだな、バレンタインには驚いたよ」

「だ、だからあれは私のじゃなくて拾ったものだって!」

「なんのことだ?私は意外と乗り気の艦娘が多かった事に驚いたんだぞ?」

「そ、そうね。そうよね!まったく、皆気が緩みすぎて困っちゃったわ」

「それにしても、時季ごとの大型作戦はきつかった」

「鎮守府全体が阿鼻叫喚だったわね」

「精神が擦り減ったな」

「…これについてはあまり思い出したくはないわね」

「そうだな…」

638: 2015/10/11(日) 16:19:33.77 ID:6/P/03Ob0

「なあ叢雲、そろそろ教えてくれないか?なぜそうまでして艦娘であり続けたい?」

「ここまで話してきてまだ気づかないのね。ほんと、教育をまちがえたわ」

「それとも、気づかないふり?」

「まあいいけど。…簡単に言えば、私は、まだこの場所に居たいの。思い出もあるしね」

「アンタのことだって、その、嫌いじゃないし」

「だが解体された後でも、申請さえすればいつでも来れるだろう?」

「そういうことじゃなくて…」

「なんだ?」

「人になったら、アンタと、違っちゃうじゃない」

「違う?」

「…そうね、これは宿題よ。制限時間はなし。無期限よ。わかるまで考え続けなさい」

「なぜ私が艦娘であることにこだわり続けるのかを、ね」

「ちなみに、アンタが正解するまで私は艦娘をやめないから」

「もっとも正解してたところで、やめるかはわからないけどね」

「おいおい」

「さ、大分時間たっちゃったし。執務始めるわよ!」

「叢雲」

「返事は?」

「…まったく」

639: 2015/10/11(日) 16:23:40.18 ID:6/P/03Ob0
船って意外と寿命が短いから、艦娘も割と早氏にする説

引用: 艦これSS投稿スレ4隻目