315: 2006/07/27(木) 11:26:40.03 ID:gbQxBHms0
じゃあ俺、昼からは用事があるから今のうちに20レス分ぐらい投下することにする。

今日のハルヒは少し変だ。
どいつよりも一番長くハルヒと付き合ってきた俺が言うのだから間違いない。
いつもは蝉のようにうるさいハルヒが、今日は何故か静かだし、
顔もなんだか考え事をしているような顔だ。

「どうしたハルヒ。」
俺は休み時間になってからずっと窓の外を眺めているハルヒに話しかけた。
「なにがよ。」
「元気ないじゃないか。」
俺がそう言うと、ハルヒは眉と眉のあいだにしわをつくって、
「私はいつでも元気よ。」
「そうかね。そうは見えないんだがな。」
ハルヒは俺の言葉を無視し、窓の外に目をやり、
「今日も来るんでしょうね」
「どこにだ。」
「SOS団部室によ。」
いちいち聞くこともないだろうよ。
「ああ、行くよ。」
ハルヒは窓のそとにやっていた視線を俺の目に向け言った。
「絶対よ。」
涼宮ハルヒの憂鬱/2009年度放送版

285: 2006/07/27(木) 10:02:26.80 ID:ravKFY9i0
「明日の9時に駅前に集合よ!!15分前にはちゃんと来ておきなさい。
来ないと氏刑だから!」
お前のせいで俺の1週間の内の貴重な2日間の休みがなくなるんだよ!!
とは言えるわけもなく俺は青菜に1kgぐらいの塩をかけた状態で家に戻った
どうせなら俺と朝比奈さんその他の憂鬱として小説を出してほしいものだ
翌朝、煩くも目覚まし時計のベルが鳴った と同時に妹がニードロップ
毎度騒がしい妹だ 時計を見ると8時40分 やべぇ寝過ぎた!!
俺は闇討ちに遭った坂本竜馬のように焦りながら自転車を漕いだ
と同時に不可解な違和感を覚えた とそんなことより急がねば!
駅前に着くと驚愕した 他人が俺の顔を見ればツチノコを見つけた1農民の顔に見えただろう
「遅いじゃない!罰金!」聞き慣れただろう声のトーンが異常に高い
ちっさいハルヒがそこにいた

318: 2006/07/27(木) 11:27:42.39 ID:gbQxBHms0
>>315

今日の授業も全て終わり、俺はいつものようにSOS団部室―実際は文芸部室なのだが―に向かった。
ドアをコンコンとノックする。これもまたいつも通りだ。
「どうぞ。」
朝比奈さんの声でドアを開けると、ハルヒはもう既に団長席に座っていた。
「遅いじゃない。」
何を言ってる、いつも通りだ。
「来ようと思えばもっと早く来れるでしょう?まったく、意識が薄いのよ。
 部室への集合にも罰金制度を取り入れようかしら・・・。」
なにやら不穏なことをぶつぶつ言っている。おいおい勘弁してくれ。
休日のオゴリだけでもきついのにそれに上乗せされちゃあ、たまったもんじゃねぇぜ。
「なら、明日からはもっと早く来るって約束しなさいよ。」
へいへい。だが、どうせ早く来ても俺のやることといったら古泉とのオセロぐらいしかないのだが。
「今日は負けませんよ。」
古泉は長テーブルにオセロのボードを広げて既にスタンバイOKのようだ。
お前はそう言って毎回負けるんだよなぁ。

320: 2006/07/27(木) 11:28:32.53 ID:gbQxBHms0
>>318  いきなり中断したらバーボン喰らってるかも

俺と古泉がオセロをしている間、ハルヒは珍しくいつものようにパソコンをつけずに、
俺と古泉の勝負風景をじっと眺めていた。
「なぁハルヒ。」
俺は視線はオセロのボードに落としたまま言った。
「なによ。」
「見られてると非常にやりにくいのだが。」
「プロの将棋師とかはたくさんの人に注目されてる中でやるのよ?
 これぐらい耐えられなくてどうするのよ。」
どうもせん。大体、俺はプロじゃないし、今やってるのは将棋でもない。オセロだ。
そんなツッコミを入れつつ、俺は古泉の白を黒に変える。
「いやぁ、参りました。完敗です。」
古泉は両手をあげて言う。
「古泉くん弱いわねー。」
ハルヒはパイプ椅子から立ち上がった。何だ?

321: 2006/07/27(木) 11:29:00.01 ID:gbQxBHms0
>>320

「私がやるわ。古泉くん代わって。」
マジで?
「どうぞどうぞ。でも、彼は強いですよ。」
お前が弱いだけだろうが。
ハルヒは古泉から譲りうけた席にでんと座り、
古泉はさっきまでハルヒが座っていた席に腰掛けた。
「さぁ、キョン。始めるわよ。私が黒ね!」
そう言ってハルヒはボードに一手目を置いた。
やれやれ。

322: 2006/07/27(木) 11:29:24.53 ID:gbQxBHms0
>>321

結果。
俺が勝った。
「何よコレぇ!キョン!もう一回よ!」
またかよ。お前は勝てるまで続けるような気がする。
今度は俺が先手で始まった。

そして結果。
俺が勝った。
「なーにーコーレー!!なんで私が馬鹿キョンに負けるのよ!!」
毎日糞弱い古泉と鍛えているんだ。馬鹿にしないでほしい。
「もう一回よ!!」
・・・やれやれ。

323: 2006/07/27(木) 11:29:47.66 ID:gbQxBHms0
>>322

「やった、勝った!キョン、あんた大した事ないわねー。」
俺に5回も負けといてよく言えるな。
「あんたはいつも古泉君と鍛えてるでしょー?私はオセロなんて滅多にやらないもん。」
なんじゃそりゃ。小学生か。
ふと、横を見ると古泉がニヤニヤしながらこちらを見ていた。何が面白いんだ。
「古泉くん!」
「なんでしょうか?」
「他にゲーム持ってないの?なんかこう、SOS団みんなで遊べるようなもの!」
そんなにたくさんゲームを学校に持ってきてるわけないだろう。
「ありますよ。」
あるんかい。
古泉はバッグのファスナーをあけると、中からずるずるとなにか取り出した。
「何だそれは?」
古泉はニコリと笑って見せた。
「人生ゲームです。」

324: 2006/07/27(木) 11:30:14.80 ID:gbQxBHms0
>>323

「人生ゲームね!面白そうじゃない!有希!みくるちゃん!あなた達も参加しなさい!」
ハルヒの顔は輝いている。朝の鬱モードはもう既にどこかに吹っ飛んでしまったらしい。
「ふぇ?」
編み物をしていた朝比奈さんは、何の話か聞いていなかったらしく、きょとんをした表情で顔を上げる。
「だから、人生ゲームよ。有希ちゃんも、ほら。」
ハルヒが言うと、長門は読んでいた本をぱたんと閉じ、すたすたと俺の横の席まで歩いてきてすとんと座った。
「始めるわよ。みくるちゃんと古泉くんも席に着きなさい。」
朝比奈さんと古泉も着席し、ゲームが始まった。

325: 2006/07/27(木) 11:30:50.16 ID:gbQxBHms0
>>324


「やった、結婚よ!いいでしょ、キョン。羨ましい?」
羨ましくない。ボード上の世界で結婚してもしょうがないだろう。
「でもあんた、現実でも、結婚はおろか彼女すらできないんじゃない?」
痛いところを突くな。と、次は俺の番か。
俺は出た数だけ駒を進める。
ん?「株で1000万儲けた」、ねぇ。本当にあればいいのにな。
現実はそんなに甘くないのだよ。

327: 2006/07/27(木) 11:31:14.92 ID:gbQxBHms0
>>325

最終的に勝者になったのは長門だった。
その次からハルヒ、俺、朝日奈さん、古泉の順だ。
古泉お前、全員でやってもやっぱり弱いのな。
「面白かったわ!古泉くん、明日はあのスゴロク持ってきてちょうだい!」
"あの"スゴロク・・・?っていうとあれか。
大晦日のときにやったSOS団オリジナルの、やたらと俺いじめのマスが多いスゴロク。
あれはもうやりたくないな・・・。

328: 2006/07/27(木) 11:31:46.53 ID:gbQxBHms0
>>327
10
それから数十分して。
ぱたん。と、長門の本が閉じられた。
「今日は皆で帰るわよ!」
ハルヒは両手を腰に当てて、偉そうに言った。
「すまん、ハルヒ。俺は今日早めに帰って見たいドラマがあるんだ。」
「何言ってるのよ。そんなの録画しとけばよかったんじゃない。
 いい、キョン?団長の命令は絶対なのよ。例外は認められないわ。」
ハルヒは眉を吊り上げながら、俺に顔をぐいっと近づけて言った。やれやれ。

329: 2006/07/27(木) 11:32:07.38 ID:gbQxBHms0
>>328
11
帰り道、ハルヒはいつも以上にやたら活発だった。
急に競争をしようだとか、荷物持ちのじゃんけんをしようだとか小学生レベルの事を言い出したり、
どこから持ってきたのか、眼鏡を長門にかけさせて遊んだり、
朝比奈さんの胸を・・・っておい!!何をしているハルヒ!!
お前がもし男だったら俺の鉄槌の拳が飛んでいたところだ。
しばらくすると、はしゃぎ疲れたらしい、歩くのがゆっくりになってきた。
「ハルヒ、お前今日はやけに元気がいいな。」
「そう?いつももこれぐらいだと思うけど。」
ハルヒは軽く息を切らしながらハイビスカススマイルで答えた。
「そうかねぇ。」
しばらくそのまま歩いていると、ハルヒは急に足を止めた。どうした?

330: 2006/07/27(木) 11:32:46.75 ID:gbQxBHms0
>>329
12
見ると、ハルヒの顔は先程のようなスマイリーな表情ではなく、
真面目な顔になっていた。
「ねぇ皆。ちょっと聞いて欲しいんだけど・・・。」
他の奴等も足を止め、ハルヒに注目する。
「・・・・・・・・・。」
ハルヒはそのまま黙り込む。何だ、言いたい事があるなら早く言えよ。
「・・・・・・。」
ハルヒは小さく口を開いて声を発しようとしたが、すぐにやめて口を閉じた。
焦らすな。早く言え。
それからまた黙り込んだあと、急にまたさっきのようなスマイルに戻って口を開いた。
「いや、ごめん。なんでもないわ。つまらないことだから気にしないで。」
そう言うと、ハルヒはまた歩き出した。合わせて俺達も歩き出す。
ハルヒが前で歩いていた朝比奈さんのところに駆けていったのを見計らって、
古泉は俺に近づいてきて小声で言った。
「何かありますね。」
「・・・ああ。」

331: 2006/07/27(木) 11:33:11.56 ID:gbQxBHms0
>>330
13
次の日、朝になるとハルヒはまた鬱モードに突入していた。
「よぉ。」
俺がバッグを机の上に置きながらハルヒに話しかけると、
ハルヒは挨拶を返すことなく言った。
「今日何日だっけ?」
そんなの前の黒板の日付みればいいだろ。
「3月・・・9日よね?」
ああ。
「金曜日よね?」
ああ。それがどうした。
「いや・・・、なんでもない。」
やっぱり何かあるな。昨日のハルヒも今日のハルヒも何かおかしい。
テンションも不規則に上がり下がりするし。
「ねぇキョン。」
ハルヒは顔をずいっと近づけてきた。
「今日も部室来なさいよね。」

332: 2006/07/27(木) 11:34:08.36 ID:gbQxBHms0
>>331
14
昨日ハルヒに部室の集合に関してあーだこーだ言われたため、
今日はホームルームが終わってすぐに部室に向かった。
部室につくと、古泉がいつものニヤケ顔でパイプ椅子に座っていた。
「やぁ。」
古泉はさわやかな表情で慣れ慣れしく左手を挙げた。
「朝比奈さんはまだか。」
「えぇ。長門さんならいますけどね。」
古泉が片手で示した先には、いつも通り窓辺で本を読む長門がいた。
よくそんなに本ばかり読んで飽きないものだ。
「ところで、涼宮さんはまだでしょうか?」
「岡部に話があるんだとさ。まだ来ないと思うぞ。」
「それは都合がいいですね。話があるのですが、良いですか?」
なんだ。また何か面倒ごとに巻き込むつもりか?

333: 2006/07/27(木) 11:34:30.99 ID:gbQxBHms0
>>332
15
「実は、昨日の夕方から夜中にかけて、大量の閉鎖空間が発生したんですよ。
 はっきり申し上げますと、昨日の量は異常でした。
 最近落ち着いてきたと思ってたんですがね。」
古泉はやれやれ、と肩をすくめた。
「・・・どういうことだ?」
俺は目を細めてみせる。
「わかりません。僕達の機関の調査では。」
古泉はニコニコ顔を崩さず言う。
「悩み事とかあるんじゃないでしょうか。
 恋の悩みとか。ベッドの中であなたのことを考えるあまりに、
 異常な量の閉鎖空間を生み出してしまった、とか。」
冗談にしては笑えないぞ古泉。
「完全に否定はできませんよ?フフフ。」
・・・何が面白いんだ古泉。というか、何故俺なんだ。
古泉は心外そうな顔をして、
「おや?あなたもしかしてまだ・・・」
そこで言いとどまると、ニヤケ面を5割増しして言った。
「いえ、言わないでおきましょう。」
何故か古泉のニヤケが無性に憎く見えた。

335: 2006/07/27(木) 11:35:08.93 ID:gbQxBHms0
>>333
16
「何にせよ、涼宮さんが何かに苛立っているというのは明らかです。
 ただし、僕達と一緒にいるときは閉鎖空間の発生はみられないそうです。」
何に苛立っているというんだ。
「ですから、それがわからなくて困っているのです。」
昨日今日のハルヒの様子が変なのもそのせいか。
「そのようですね。ところで、昨日の話ですが。
 昨日涼宮さんが言いとどまった言葉、なんだと思いますか?」
さぁな。
「僕達になにか伝えようとしていましたね。
 あの表情からして、とても重要な話だと思うのですが、どうでしょう?」
知らん。
「全員に呼びかけたってことは、告白ってわけではないでしょうね。」
古泉はニヤケ顔を更に5割増する。なんだその目は。
「いえ、何でもありませんよ。フフフ。」
そう言って微笑む古泉の顔が不気味に見えて仕方が無い。

337: 2006/07/27(木) 11:36:37.22 ID:gbQxBHms0
>>336
18
「どうぞ」
朝比奈さんの声を確認し、ドアを開けると、意外な光景を目にした。
朝比奈さんがメイド服を着ているのはいつも通りだが、
なんとハルヒが朝比奈さんが前に着ていたナース服を着ているではないか。
「これはこれは。」
古泉も少なからず驚いているようだった。
「たまには私も着てみたわ。どう?」
ハルヒは得意気に髪を掻きあげた。
「いいんじゃないか。」
「何よ、その薄いリアクションは!
 もっとこう、『わー!ハルヒ可愛い!!』とかないの?」
わー。ハルヒかわいー。
「あーもう、イライラするわねー。もういいわ。」
とりあえず薄くリアクションしておいたが、内心、可愛いと思っていた。
朝比奈さんのナース姿も良かったが、ハルヒのそれもなかなかのものだ。
「僕は似合ってると思いますがね。可愛いですよ。」
「でしょ?ありがとう古泉くん。
 やっぱりわかる人にはわかるのよねー。」
喜べハルヒ。その格好で秋葉原に行けば注目の的だぞ。
お前が言う"わかる人"ってのもいっぱいいる。

338: 2006/07/27(木) 11:37:12.29 ID:gbQxBHms0
>>337
19
・・・ところで、いきなりナース服を着だしたりだとか、
やはり最近のハルヒは変だ。
まぁいいか、楽しそうだし。教室のときのように鬱にしてるのより何倍もましだな。
「さぁ、スゴロクやるわよ、スゴロク!!古泉くん、持ってきてるでしょうね?」
げ。
「はい、もちろん。」
げげ。
古泉はバッグのファスナーを開けると、ずるずると大きな紙を取り出した。
やれやれ。

339: 2006/07/27(木) 11:37:48.55 ID:gbQxBHms0
>>338
20
今日は日曜日、不思議探索パトロールをすることになってる日だ。
少しばかり寝坊した俺は、大急ぎで歯を磨き、髪を直し、服を着て待ち合わせ場所に走った。
他のメンバーは既に揃っている。
「遅い! 遅刻!! 罰金!!!」
このフレーズを聞くのも何回目だろう。これを聞くたびに俺の財布は打撃を受ける。
「と、言いたいところだけど、今日は私がおごるわ。」
は?
今ハルヒ何と言った?パードゥンミー?ワンモア、プリーズ?
「だから、今日は私がおごってあげるって言ってるじゃない。」
俺の耳は故障してしまったのだろうか。すまん、もう一度だけ頼む。
「今日は私のおごりよ!」
なんと。なんとなんと。思わず目眩がした。
今日は雪でも降るんじゃないか。いや、もう隕石が雨のように降ってきそうな勢いだ。
「何馬鹿なこと言ってんのよ。行くわよ、キョン。」

340: 2006/07/27(木) 11:38:33.09 ID:gbQxBHms0
>>339
21
やはりおかしい。絶対におかしい。ハルヒがおごるなんて普通考えられない。
「キョンは何にするの?今日は高いもの頼んでもらっていいわよ!」
こんなことを言う事も、だ。どういう気の変わりようだ?
「何もないわよ。ほら、さっさと選んじゃいなさいよ。」
俺は何かハルヒの陰謀があるのではないか、と
あえて高い物を選ばず、中くらいの物を注文した。
「何よ、遠慮することにないのに。」
何か怖くてな。すまん。

そして俺達は食事を済ませ、毎回恒例のくじ引きタイムに入った。
まず古泉が引く。無印。
次に朝日奈さん。無印。
次に俺。赤印
次に長門。無印。
「て、ことは私は赤ね。」
ハルヒは爪楊枝を掴んでいた手を開く。
爪楊枝の先には赤い印がはっきりと刻まれていた。

677: 2006/07/27(木) 21:44:40.58 ID:gbQxBHms0
おっと じゃあ投下しちゃおうかな
>>340
22
横に彼女を連れて、手を繋いで歩く。これはモテない男誰もが夢見ることだろう。
しかし、俺が手を繋ぐのではなく、手首を掴まれているのは何故だろう。
答えは簡単。連れている女が涼宮ハルヒだからだ。
「ちょっとキョン!もっとシャキシャキ歩きなさいよ!
 まず何処行く?デパートの食料品店で試食品でも食べ歩く?
 それとも、服でも買いに行こうか?今日はたくさんお金持ってきてるしね。」
どうやらこいつは"不思議"を探す気などさらさら無いらしい。
「どこでもいいぞ。お前のすきなところで。」
なんだか今日のハルヒの足取りは軽い。全身からウキウキオーラが放射されまくっている。
「あっそうだキョン!あたし観たい映画があるんだったわ!
 一緒に観に行きましょう!」
映画・・・か。まぁ、このままハルヒに色々連れまわされるよりはいいだろう。
「決定ね!じゃあ行きましょう!」
俺は手首を掴まれたまま、映画館まで連れて行かされた。

679: 2006/07/27(木) 21:45:28.85 ID:gbQxBHms0

23
なにやら甘ったるい匂いがするのは、受付の横の、なにやら色々飲食物を売ってる店のせいだろう。
「チケット2枚。」
俺がハルヒの分のチケットも買ってやっていると、ハルヒがポップコーンとコーラを持ってきて、
「はい、これ。あんたの分よ。私のおごりね。」
今日のハルヒは気前がいいな。
「それじゃあ行きましょう。早く行かないと始まっちゃうわ!」
そう言ってハルヒはまた俺の手首を掴んだ。やれやれ。

680: 2006/07/27(木) 21:46:17.34 ID:gbQxBHms0
>>679
24
映写機がじりじりとスクリーンに映画を映し出す。
観ている内にわかったが、これは流行りの"感動モノ"の映画らしい。
そして、今が一番泣き所のクライマックスのシーンだと思われるが、
どうした事か、俺の目からは涙の一滴すら落ちてこない。
もう少しピュアな心を持っていれば泣けるのだろうが、
俺の心はとっくにがさがさに荒んでいるのでな。
俺がふと横を見ると、意外な光景がそこにあった。
映画にかぶりついているハルヒの目に、若干涙が浮かんでいるではないか。
ハルヒはしきりに、服の袖で目を拭っている。
そのままハルヒはしばらくスクリーンを凝視していたが、俺の視線に気付くと、呆れ顔をつくって言った。
「何であんたこれで泣けないの?馬鹿じゃない?」
馬鹿ではないと思う。

682: 2006/07/27(木) 21:47:01.90 ID:gbQxBHms0
>>680
25
外に出てみると、さっきは暗くてよくわからなかったが、ハルヒの目元が少し赤くなっていた。
「よかったわー、あの映画・・・。
 あんなクオリティの高い映画はこの先そうそう作れないと思うわ。」
俺は全然泣けなかったけどな。
「あれで泣けないってのがおかしいのよ!
 あれで泣けないなんて信じられないわ。人間じゃないわ!」
おいおい、ついには人間以下かよ。
「まぁいいわ。楽しかったし。
 おっと、そろそろ集合時間ね。待ち合わせ場所に急ぎましょう!」
ハルヒはそう言うと俺の手首を掴む。もうちょっと穏やかにできないのか。
せめて手を繋ぐとか。
「手、手ってあんたと?私が?」
冗談だ。本気にするなよ。
「あ、冗談ね。冗談か。
 そうよね、あんたと手繋いで恋人同士だと思われたらとんでもないわよ!」
ハルヒは何故か少し動揺しながら言った。なにを焦ってんだか。

683: 2006/07/27(木) 21:47:46.01 ID:gbQxBHms0
>>682
26
ハルヒが俺の手首を掴んでずんずんと商店街を行く。
と、ここで見慣れた二人組が目に入った。
「あ、谷口と国木田じゃねぇか。」
俺は足を止める。と、同時にハルヒも足を止めた。
「ようキョン。」
「奇遇だね、何やってたんだい、キョン。」
谷口と国木田は私服姿だ。お前等こそ男二人で何やってんだ?
「別に。ゲーセンとか行ってぶらぶらと遊んでただけさ。」
そう言うと、谷口は俺とハルヒを舐めまわすように見てきた。何だ?
「お前等は二人してデートか?いいねぇ、お熱くて。」
馬鹿言うな。これはSOS団の不思議探索パトロールだ。
「不思議探索パトロール?それって何するんだい?」
国木田の言葉に少し返答に困った。まさか"映画をみたりすること"とは言えまい。
「街中で不思議な事が無いか探すんだよ。」
適当にごまかしておく。

684: 2006/07/27(木) 21:48:47.60 ID:gbQxBHms0
>>683 全部で65レス分あるよ・・・(´・ω・`)
27
「ふーん。変なことしてるねぇ。まぁいいや。じゃあ、僕達は行くよ。じゃあねキョン。」
「またな。」
「おう、じゃあな。あ、そうだ、待て谷口。チャック、開いてるぞ。」
「うわっマジかよ!!っていうか何で国木田教えてくれなかったんだよ!」
「え?それって新しいファッションかなんかじゃないの?」
「違ぇよ! やべーさっきこのままナンパしちまったよ。変Oだと思われたかも・・・。」
「大丈夫だよ、谷口。君はもう顔が変O的だから。」
「えっ!?何それ?どういう意味!?」
「それじゃあね、キョン。」
「無視するなよ国木田!なんか今日お前悪い子だぞ!」
「じゃあな。国木田、谷口」
そう言って俺達は谷口達と別れた。
何やら後ろから「谷口ウザイ」という国木田の声が聞こえた気がするが空耳だろう。

686: 2006/07/27(木) 21:49:56.37 ID:gbQxBHms0
>>684
28
集合場所につくと、既に他三人は揃っていた。
「ゴッメーン。遅れちゃった!」
ハルヒは右手を挙げる。
「それでは、また喫茶店に入りましょうか。」

本日2度目の喫茶店。今度もハルヒのおごりだった。
「それじゃあ、くじ引きしましょう。」
ハルヒは慣れた手つきで爪楊枝に印をつける。
まず長門が引いた。赤印。
次に俺。無印。
次に朝比奈さん。無印。やった朝日奈さんと一緒だ。
次に古泉。赤印。
「じゃ、私が無印ね。」
班分けは俺とハルヒと朝日奈さん、古泉と長門になった。
俺はいいのだが、古泉と長門は二人で話すことなどあるのだろうか、と少し心配になる。

688: 2006/07/27(木) 21:50:30.01 ID:gbQxBHms0
>>686
29
ハルヒは今度は片手は俺の手首、もう片方の手は朝比奈さんの手首を掴んで歩き出した。
「出発よ!さて、キョン、みくるちゃん?何処に行きたい?」
俺はさっきも言っただろう、お前に任せると。
「みくるちゃんは?」
「えーっと・・・じゃあ、お茶の葉を買いに行きたいです。」
「じゃあまずはお茶の葉ね!行きましょう!」
やれやれ。

689: 2006/07/27(木) 21:51:19.92 ID:gbQxBHms0
>>688
30
歩く事数分、茶葉の専門店みたいなところについた。
朝比奈さんは目を輝かせていたが、俺とハルヒはお茶の葉のことについてなんて全然知識ないから
店内に置かれた椅子にすわって暇を持て余していた。
朝比奈さんは店長さんとお茶の話で盛り上がっている。
少し耳を傾けてみたがさっぱりわからん。
しばらくして、
「お待たせしました。では行きましょう。」
楽しそうに駆け寄ってきた朝日奈さんは、茶葉の入った箱を抱えていた。

691: 2006/07/27(木) 21:52:47.32 ID:gbQxBHms0

>>689
31
その後、デパートに行って試食品を食べ歩くなど地味ーなことをしたり、
ゲームセンターに行ってUFOキャッチャーを楽しんだりした。
楽しい時間は瞬く間に過ぎるもので、時刻はあっという間に集合時間前だ。
「楽しかったわー。キョンのUFOキャッチャーの腕前は意外だったわねー。」
ハルヒは俺が取ってやった熊のぬいぐるみを両手に抱えて、もこもこさせながら言った。
ゲーセンは谷口達とよく行ったからな。SOS団に入ってからは、あまり行くことも無くなったが。
「私も楽しかったです。ありがとうキョンくん」
いや、俺にお礼を言われても困るんですけど・・・。
「あ、有希!古泉くん!」
まだ集合10分前なのに、長門と古泉は既に集合場所に到着していた。
やはりやることがなかったのだろう。


そしてその日はそのまま解散することになった。

693: 2006/07/27(木) 21:53:36.75 ID:gbQxBHms0
>>691
32
魔の坂道を根性で登りきり、やっと教室に到着した。
あの朝のハイキングコースはいい加減やめて欲しい。
俺は鞄を自分の机に下ろすと、ちらりと後ろの席を見た。
ハルヒはまだ来ていないようだ。

しばらく待っていたが、ハルヒは一向に姿を見せない。
どうしたんだろうか?まさか欠席か?
「よーし、じゃあホームルーム始めるぞー。」
岡部が教室のドアを開けて入ってきた。
ハルヒは結局今日は欠席か、とか思っていると、
なんと、ハルヒが岡部の後ろから付き添うように教室に入ってきたではないか。
なんだ、ハルヒ。また何かやらかしたのか?
ハルヒは若干俯き気味だ。

695: 2006/07/27(木) 21:54:49.71 ID:gbQxBHms0
>>693
33
ごほん、と岡部がわざとらしい咳払いをする。
「えー、今日は皆に聞いてもらいたいことがある。」
岡部はハルヒに顔を向け、小声で「自分で言うか?」と聞いた。
ハルヒはフルフルと首を横に振る。
岡部はハルヒを少し見つめたあと、また前に顔を向けて、
少し間をあけてから言った。

「実は涼宮が転校することになった。」

・・・・・・・・・は?
教室から驚愕の声が上がる。
俺は声が出ず、口をぽかんと開いたままにしていた。
「お父さんの仕事の関係らしくてな。海外に行く事になったらしい。」
・・・・・・・・・。

嘘だろ?

697: 2006/07/27(木) 21:55:22.30 ID:gbQxBHms0
>>695
34
俺は席に戻ったハルヒに質問攻めをした。
どうやら岡部が言ってる事は全て本当のことらしい。
海外に行く日は・・・・・・。

今週の土曜日。

なんてこった。もう1週間も無い。
冗談だろ?

699: 2006/07/27(木) 21:55:51.04 ID:gbQxBHms0
>>697
35
最近のハルヒがおかしかった理由を一気に理解した。

鬱だったのは、俺達と別れるのが嫌だったから。
いつも以上に活発だったのは、俺達との最後の時を楽しむため。
突然のオゴリは、最後のハルヒなりの気遣い。

・・・・・・。
嘘だろう、嘘であって欲しい。という想いが俺の頭の中をめぐる。
今、ここで岡部がプレートを掲げながら「ドッキリでした」と言ってきても、許せてやれる。
嘘と言ってくれ、ハルヒ。

「私だって信じたくないわよ。でも本当のことなの。仕方ないわ・・・。」

701: 2006/07/27(木) 21:56:27.71 ID:gbQxBHms0
>>699
36

毎日のように部室に行き、
毎日のように長門は本を読んでいて、
毎日のように朝比奈さんが茶を入れてくれて、
毎日のように古泉とボードゲームをし、
毎日のようにハルヒが突然持ってきた馬鹿な計画につきあわされ、

毎日のようにSOS団の皆で笑って過ごす。

こんな毎日がずっと続くと思っていた。

703: 2006/07/27(木) 21:57:00.14 ID:gbQxBHms0
>>701
37
わかっていた。
高校卒業と共に、そんな楽しい日々が無くなるのも。
でも、卒業する日が来るまでは、せめて卒業までは、
ずっとそんな日々が続くと確信していた。
しかし、その運命の時は、俺が予想していたよりもはるかに早く訪れたようだ。

ハルヒがいなくなる。

俺の中で何かがガラガラと崩れていく気がした。
団長がいてこそのSOS団だろ?


お前がいなくて
     どうするんだよ。

704: 2006/07/27(木) 21:57:36.21 ID:gbQxBHms0

>>703
38
俺はとぼとぼとした足取りで部室に向かった。
ハルヒを除いた三人は既に揃っていた。
「みんな・・・えらいことになった。」
「・・・・・・聞きました。涼宮さんのことでしょう?」
古泉はいつものようなニヤケ顔ではない。
もっとも、古泉がこの状況でまだニヤケ顔だったら
俺は古泉をぶっ飛ばしていたかもしれない。
朝比奈さんは、メイド服も着ずに、パイプ椅子に座って涙目だ。
長門はいつもの無表情だが、手元にはいつもの本がなく、床の一点をただじっと見つめていた。
「・・・・・・・・・。」
沈黙が流れる。その時だった。
「ヤッホー!!皆元気ー!?」
驚いたね、流石に。見ると、ハルヒの表情は、いつものような笑い顔だ。
「よくお前、笑っていられるな。」
俺がそう言うと、ハルヒは部室の雰囲気に気付いたらしく、
笑い顔を真顔に戻して、教室の時のような表情をつくる。
「皆、もう知ってるんだ・・・。」
ハルヒはすたすたと歩いていき、いつもの席に着いた。

708: 2006/07/27(木) 21:58:17.02 ID:gbQxBHms0
>>704
39
それから30分ほど、俺達は何も話さずにそうしていた。
これほどまでに重い空気が流れたのは、この部室初めてのことであろう。
「ねぇ。」
突然ハルヒが口を開いた。
「このまま、こういう雰囲気で過ごしてもしょうがないじゃない?
 もうあと僅かしかない時間なんだから、もう少し楽しみましょうよ。」
・・・・・・わかっている、わかっているが・・・そううまくは切り替えられんな。
「そう言ってても始まらないでしょ!!」
ハルヒは大声を出すと、いきなり机を叩いて立ち上がった。
そして、机に顔を伏せていた朝比奈さんのところまでいくと、朝比奈さんも立ち上がらせる。
「さぁ、みくるちゃん!着替えるわよ!!」
そう言うと、朝比奈さんの制服を脱がせ始めた。やばいっ!!
俺と古泉は急いで部屋から出て、ドアを閉めた。
中からは朝比奈さんの悲鳴とハルヒの変Oチックな声が聞こえてくる。

710: 2006/07/27(木) 21:59:56.92 ID:gbQxBHms0
>>708
40
しばらくして、
「ど・・・どうぞ。」
という朝比奈さんの声がしたので開けてみると、
メイド姿の朝比奈さんの横に、バニー姿のハルヒがいた。
「バニーよっ!」
何故お前も着替える。
「なんででもいいでしょー?キョンもコスプレしない?楽しいわよ。」
遠慮しておく。
「遠慮しないの!小泉君!クリスマスのときのキョンのトナカイ衣装出して!」
マジで?あれ?あのトナカイには俺の忘れたいトラウマがあるのだが。
そもそも、今日はクリスマスじゃない。
「はい、ただいま。」
古泉は、俺のトナカイ衣装がかけてあるハンガーを手にとる。
っていうか、古泉も何ハルヒの言う事素直に聞いているんだ。

712: 2006/07/27(木) 22:00:55.97 ID:gbQxBHms0
>>709 実際はgdgdに終わる罠 あまりプレッシャーをかけないでくれ(ノД`)

>>710
41
「さぁ、キョン。さっさと着替えるのよ。」
断る。断じて着ない。
「つべこべ言わずに着替えなさい!!」
そう言うと、ハルヒは俺に飛び掛ってきた。やめろ!!この痴女め!!
「やめろって!わかった!自分で着替える!!自分で着替えるから!!」
俺がそう叫ぶと、やっとハルヒは俺のシャツのボタンにかけていた手を止めた。
朝比奈さんは、両手を顔に当てながら耳を真っ赤にして蹲っている。
「最初からそう言えばいいのよ。じゃ、さっさと着替えなさい。」
その前にだな、ハルヒ。
「何よ?」
俺はドアの方を指さす。するとハルヒは納得したように、
「ああ、そうね。じゃあみくるちゃん、有希、いくわよ。」
ハルヒは蹲ってる朝比奈さんと、パイプ椅子にじっと座っていた長門を連れて、
部屋の外に出て行った。やれやれ。

715: 2006/07/27(木) 22:01:57.50 ID:gbQxBHms0
42
抵抗がある。それはそうだろう、いきなりこんなトナカイ衣装を着ろ、と言われて
素直に着る奴がいるだろうか。いるとしたら、そいつは変Oが含まれている。
「さて、涼宮さんたちを長く待たせるわけにもいかないですから、
 早く着替えてしまいましょう。」
うるさいな、古泉。人の気も知らないで。と、振り返ると、
そこにいたのは古泉ではなく、やけにでかいカエルだった。
・・・・・・誰?
「僕ですよ。面白そうなので、僕も着替えてみました。」
古泉の声を発する化けガエル。よくみると、それは俺達がバイトで得たカエルの衣装だった。
お前も着替える必要ないだろ。お前は変Oか?
「キョン、まだー?」
ハルヒがドンドンとドアを叩く。
・・・何の罰ゲームだ、これは。

718: 2006/07/27(木) 22:02:41.47 ID:gbQxBHms0
>>715
43
俺の姿を見るなり、ハルヒは大爆笑した。
まぁ、こういうリアクション取るとはわかってたがね。
朝比奈さんは、手で口をおさえながら俺の姿を凝視している。
長門はというと、眉ひとつ動かさずに無表情のままだ。

気付くと、化けガエルの視線がこちらに向いていた。
なんだカエル。やるのか?トナカイなめるなよ、この両生類が。
「いやー、やはりあなたのコスプレが一番様になってますね。」
どういう意味だ。とりあえず言っておこう、全然嬉しくない。

719: 2006/07/27(木) 22:03:07.92 ID:gbQxBHms0
>>718
44
ここで俺はあることに気付いた。
「そういや長門だけコスプレしてないな。」
一同が一斉に長門を見る。
「・・・・・・・・・。」
長門の眉が1ミクロン動く。
しばらくそのまま固まったあと、長門はすたすたとハンガーの前に歩いていき、
ひとつのハンガーを手に取って言った。
「これ。」
ナース服だ。

720: 2006/07/27(木) 22:03:44.20 ID:gbQxBHms0
>>719
45
古泉と外で待つこと、数分。
「うわっ、有希、あんたなかなか似合うわね。
 キョン、古泉くん、いいわよー!」
ドアを開けると、そこにナース服の長門がいた。
「・・・・・・・・・。」
無愛想なナースさんは、無言のまま突っ立っている。
・・・俺は今、ひょっとしてすごいものを見ているのではないだろうか。
長門がコスプレするなど、まず普通なら考えられない。
これをデジカメで撮って学校にいる長門ファンに売れば、
かなりの高額で売れること間違いなしだ。
「・・・・・・。」
長門は無言で棚から本をとると、ナース姿のまま、所定の場所について読書を始めた。
無表情、無言で読書をするナース。なんなんだろうね、これは。

722: 2006/07/27(木) 22:04:10.29 ID:gbQxBHms0
>>720
46
「じゃあ、これで全員コスプレ完了ね!」
全員でコスプレしてどうするというのだ。
「楽しいからいいじゃない。」
俺は早く脱ぎたいのだが。
「そんなノリの悪い事言わないの。」
ノリってお前・・・。
「まぁまぁ、たまにはいいじゃないですか。」
うるさい、化けガエル。田んぼでゲコゲコ鳴いてろ。
「キョンくん、似合ってますよ。」
そんな、朝比奈さんまで!
俺のハートは1000ダメージを受けた。

724: 2006/07/27(木) 22:04:38.68 ID:gbQxBHms0
>>722
47
しかし、すっかり元のSOS団の雰囲気に戻ったな。
これも団長、ハルヒがいてこその――・・・

・・・・・・ああ、そうだった。ハルヒは、もう来週の日曜日にいなくなるんだ。
この楽しい日々も、ハルヒがいてこそ、成立しているんだ。
ハルヒがいなくなったらSOS団は―――・・・

726: 2006/07/27(木) 22:05:11.71 ID:gbQxBHms0
>>724
48
帰り道、前ではしゃいでいるハルヒに聞こえないように俺は古泉に話しかけた。
「なぁ、古泉。」
「何でしょうか。」
「ハルヒの転校が無しになるってことはないのか?」
「・・・・・・正直申し上げますと、難しいとだと思います。
 涼宮さんが激しく願えば可能かとも考えられますが、
 今の彼女の精神では、『仕方が無い』とされています。
 加えて、今の彼女は段々力が薄れてきている状態にあります。
 その条件で彼女が転校しないことになるのは・・・・・・。」
「・・・・・・そうか。」
俺は帰り道、はしゃぎまわるハルヒの顔をじっと見つめていた。

728: 2006/07/27(木) 22:06:09.80 ID:gbQxBHms0
>>726
49
それからは、俺はホームルームが終わると即効で部室に行くようにした。
限りある時間を大切にするためである。

こうなることがわかっていれば、もっと前々から時間を大切にしていたのだが。
人との別れは、突然訪れるものだ。

729: 2006/07/27(木) 22:06:38.13 ID:gbQxBHms0
>>728
50
金曜日。今日が、ハルヒがSOS団での最後の活動。
「ヤッホー、って、何それ。」
ドアを蹴り破って入ってきたハルヒは、
部室の中央に置かれたものを見て口をぽかんと開けた。
見てのとおり、鍋だ。
「何で鍋?」
「お別れ会ですよ。」
古泉は、ニコニコしながら言った。
「お別れ会?ってことは、一種のパーティーね!」
ハルヒは目を輝かせる。
パーティーではないとは思うけどな。
「じゃあ始めましょう!!」

730: 2006/07/27(木) 22:07:11.99 ID:gbQxBHms0
>>729
51
その日、最後の活動は、今までのSOS団の活動の話で盛り上がった。
ハルヒがSOS団を結成したときの話、野球の話、七夕の話、
映画を作ったときの話、俺が入院した時の話、ハルヒの文化祭でのライブの話・・・。
まだまだ話足りなかったが、時は残酷なもので、
それを全て話しきるまでの時間は与えてくれなかった。
ふと気付くと、外ではぽつぽつと静かに雨が降り出していた。

731: 2006/07/27(木) 22:07:49.25 ID:gbQxBHms0
>>730 いよいよクライマックス しかし、期待するような展開はないと思うぞ
52
今、俺は空港にいる。朝日奈さんも、古泉も、長門も一緒だ。
もちろんハルヒも。
そして別れの時まで、あと30分。
「いよいよね・・・。」
ハルヒは右手にはキャリーバッグがある。
見ると、朝比奈さんは、もう涙目になっていた。
「ちょ、ちょっとみくるちゃん。いくらなんでもフライングしすぎよ。」
「だ・・・だって・・・。」
しょうがないないわね、みくるちゃんは、とハルヒは朝日奈さんの頭をぐしぐしと掻いた。

733: 2006/07/27(木) 22:08:54.41 ID:gbQxBHms0

53
ハルヒの両親をみたのも、そういえば今日が初めてだ。
父親は、なんだか優しそうな人で、
母親は、リボンを頭につけた、元気のある人だった。
どちらかというとハルヒは母親似だろう。
「今まであの子の事、ありがとうございました。
 大変でしたでしょう?」
ハルヒのお母様が俺に向かって言った。
「いえいえ、そんなこと。」
実際は大変だったけどな。
「さて。ちょっとあんたらここ一列に並びなさい。」
何だ?
「いいから、早く。」
ハルヒに言われるまま、俺等団員は横一列に並んだ。

735: 2006/07/27(木) 22:09:44.45 ID:gbQxBHms0
>>733
54
ハルヒはまず、古泉の両手を掴んで、
「古泉くん。あなたは副団長としてよく働いてくれたわ。
 あなた無くして、このSOS団の活動はできなかったと言っても過言ではないわ。
 今までありがとう。」
「ありがとうございます。」
古泉はニッコリと笑う。
どうやらハルヒのやってるこれはお別れの挨拶らしい。

736: 2006/07/27(木) 22:10:21.30 ID:gbQxBHms0
>>735
55
次にハルヒは、長門の両手を掴んで、
「有希。あなたはSOS団唯一の無口キャラ、兼万能少女として頑張ってくれたわ。
 今までありがとうね。」
「そう。」
長門はおもむろに一冊のハードカバーの本を取り出し、
「読んで。」
それをハルヒに渡した。
「これ、私に?」
ハルヒは戸惑ったような表情でそれを受け取った。
「そう。」
「・・・ありがとう、有希。大事にするわ。」

738: 2006/07/27(木) 22:10:55.82 ID:gbQxBHms0
>>736
56
ハルヒはそれをバッグに入れると、今度は朝比奈さんの手をとった。
朝比奈さんの顔は涙で濡れている。
「みくるちゃん、あなたは部の萌系マスコットキャラとしてよく頑張ったわ。
 それと、あなたの入れてくれたお茶は、他の誰が入れるお茶より美味しかったわよ。
 もう、あれが飲めないとなると、ちょっと寂しいけど・・・、ありがとうね。」
ハルヒがそういい終わる頃には、朝比奈さんの顔は涙でぐしょぐしょになっていた。
「もう、ちょっとみくるちゃん?・・・しょうがないわね。」
朝比奈さんにつられたのか、ハルヒの目にも少し涙が浮かんできた。

740: 2006/07/27(木) 22:11:26.96 ID:gbQxBHms0
>>738
57
最後にハルヒは俺の前に立って、
「キョン。あんたは・・・まぁ特に働いて無いけど、」
おいおい、ちょっと待て。
「あんたがいてくれて良かったわ。
 あんたがいてSOS団だもん。
 ・・・今までありがとうね。」
・・・・・・ああ。
「それとキョン。」
ハルヒはごそごそとポケットを探り始めた。 なんだ?
ハルヒはそれを掴むと、俺の胸に押し付けた。
赤い布?手に取ってみると・・・

腕章だ。ハルヒがいつもつけていた、"団長"の腕章。

「あんたを、SOS団の団長に任命するわ!喜びなさい!」

742: 2006/07/27(木) 22:12:04.26 ID:gbQxBHms0
>>740
58
・・・俺が? ・・・・・・俺が団長?
横を見ると、他の団員も俺を見ていた。
俺がこいつらを引っ張っていくのか・・・?

俺はハルヒがいなくなると同時に、SOS団も無くなると思っていた。
しかし・・・。
SOS団は、まだ続いていくのか。
そうだ、こいつ等はまだここにいる。
今度は、俺がこいつ等を引っ張っていくのか。
ハルヒじゃなくて、今度は俺が。

俺は、腕章をぎゅっと握った。

745: 2006/07/27(木) 22:12:39.09 ID:gbQxBHms0
>>742
59
「あんたたち!」
ハルヒは涙を流しながら笑っていた。
「次回のSOS団不思議探索パトロールをする日を発表します!」
ハルヒは斜め上を人さし指で指す。
「私は五年後に、日本に帰ってくるわ!
 五年後の今日と同じ日、いつものあの場所だからね。」
ハルヒの笑っていた顔が、徐々に歪んでいく。
「駅前・・・集合よ。キョンあんた・・・ぐす・・・いつも遅れるんだから・・・ぐす。
 早く・・・ぐす・・・。来なさいよね・・・ぐしゅ・・・。
 遅れたら・・・ぐす・・・罰金なんだから。」
気付いたら、頬が熱くなっていた。
何事か、と頬を手で触ってみると、熱い液体がついていた。
その液体は俺の眼からつたっているようだった。

748: 2006/07/27(木) 22:13:23.53 ID:gbQxBHms0
>>745
60
ハルヒの父親が、優しい顔でハルヒの肩を叩く。
「じゃあ・・・・・・。」
ハルヒはそう言って踵を返した。


――コノママイカセテイイノカ?――


・・・次の瞬間に俺がとった行動は、今思えばとんでもないことだったと思う。
朝比奈さんも、古泉も、長門も、ハルヒの両親も見ていただろう。他の乗客もな。
とんでもない行動だった。しかし、後悔はしていない。
俺は、ハルヒの肩を掴むと、身体を引き寄せ、唇を重ねた。

755: 2006/07/27(木) 22:14:34.22 ID:gbQxBHms0

>>748
61
そのまましばらくして、唇を離し目を開けると、ハルヒは驚いたように目を見開いていた。
いや、ハルヒだけじゃないな。朝比奈さんも、古泉も、長門も、ハルヒの両親もだ。
ハルヒは、そのまま顔を赤くして、口を開いたままになったが、
しばらくすると、顔に笑みを浮かべ
「ぷっ」
と吹き出した。
「何だ。」
「何でもないわよ。ふふ。」
ハルヒは小さく手を振りながら、
「じゃあねっ!」
と言い、飛行機の中に消えた。


いつものような笑顔で。

757: 2006/07/27(木) 22:15:14.16 ID:gbQxBHms0

62
その後、俺はハルヒを乗せた飛行機が、青い空に消えるまで見送っていた。
「団長・・・か。」
ぽつりと呟いてみる。
「長門。」
俺はハルヒが去っていった青い空を、そのまま見上げながら言った。
「お前は北高に残るのか?ハルヒの元にいくのか?」
「情報統合思念体の判断で、
 私が都合よく再び涼宮ハルヒの元に現れるのは、不自然で、不適切な刺激を彼女に与えるとされたから、
 涼宮ハルヒの観測は海外にいるインターフェースが行うことになった。
 だが、私を消去すると、五年後の涼宮ハルヒに不適切な刺激を与えることになると考えられたため、
 私は消去されずに北高に残ることになった。」
「そうか・・・。・・・古泉は?」
「僕は元々ここいらの区間の閉鎖空間の処理の担当です。
 異動になる、というのはよっぽどの事がないかぎりありません。」
「そうか・・・。・・・朝比奈さんはどうですか?」
「えっと・・・ぐす・・・今問い合わせてみたんですけど・・・ぐす・・・。
 詳しくは禁則事項で言えないんですが・・・ぐす・・・
 私はしばらくこの時間に残らないといけないらしいです・・・ぐす・・・。」
「そうですか・・・。」
俺は青く広がる空を眺めて、もう一度呟いた。
「団長・・・か。」

761: 2006/07/27(木) 22:16:13.93 ID:gbQxBHms0
>>757
65

腕に腕章を着けた俺は、今、全力で自転車をこいでいる。
まったく、こんな日に寝坊してしまうとは・・・。

待ち合わせ場所に到着すると、懐かしい面々がそろっていた。
「遅いですよ。」
「・・・・・・。」
「キョンくん!お久しぶりです!」
相変わらずニヤケ面の古泉、無口無表情の長門、若干背が高くなったであろう朝日奈さん。
そして、奥で笑みを浮かべながら腕組みをしている黄色リボンの女は、間違いなくあいつだ。


「キョン!遅いわ!罰金よ!!」



fin

766: 2006/07/27(木) 22:16:58.16 ID:gbQxBHms0
終わりです・・・(´・ω・`)タノシンデイタダケタカナ?

786: 2006/07/27(木) 22:19:45.59 ID:gbQxBHms0
>>775
アッー!!

63と34はありません。 俺の振りミス スマソ

引用: ハルヒ「ちょっと キョン!あたしのプリン食べたでしょ!」