1: 2009/11/10(火) 22:19:24.84 ID:/Wzmvfoo

38: 2009/11/14(土) 05:57:56.17 ID:8.tMANk0
こなた「ちょ、ちょっとみゆきさん。質問しちゃ駄目って言ってた
     のに」

みゆき「あ……そうでしたね。すっかり忘れてました」

かがみ「というわけで、みゆきに対する回答は以上よ」

こなた「ほら……。もう質問者のMPなくなっちゃった」

みゆき「すみません」

かがみ「そんなことより、つかさ。このトランプを持ってきたのは
      あんただけど、それについて何か反論はある?」

つかさ「そうだね。確かに、トランプを持ってきたのは私だね。
     でも、私がその方法でイカサマをしたという証拠は
     どこにもないんじゃないの?」

かがみ「まだ言い逃れできると思ってるの? 実を言うと、
     このイカサマ方法には問題点があるの」

こなた「問題?」

かがみ「ええ、そうよ。こなたとみゆきが引くカードはダイヤと
     スペードのどちらでも構わないと言ったけど、少なくとも
     最初に選んだこなたには4枚のカードを見せて、その
     中から引かせる必要があるわね。つまり、ダイヤと
     スペードがそれぞれ2枚ずつ必要になってしまうの。
     さらに、最後に私に引かせるときにもジョーカーが
     2枚必要になるわ」

39: 2009/11/14(土) 06:01:08.77 ID:8.tMANk0
こなた「そう言えばそうだね。かがみんはどうやってその問題を
     解決したの?」

かがみ「簡単よ。カードの山の中を探ったら、ダイヤのエースと
     スペードのエースとジョーカーが、それぞれ一枚ずつ
     見つかったのよ」

こなた「えっ。そんなことってあるの?」

かがみ「もちろん、市販のカードにそんな余分なカードが混じって
     いるはずがないわ。全員がカードを引き終わった後で、
     つかさが隙を見て余ったダイヤとスペードとジョーカーを
     忍び込ませたに決まってる」

こなた「つかさは何のためにそんなことをしたの?」

かがみ「私が身体検査をしようと言い出しときのためよ。実際、
     私はカードの山を確認するまでは、身体検査をする
     つもりだった。もう無意味になったからしないけどね」

こなた「ああ、そうか。余分なカードを持っていることがバレちゃっ
     たら、さすがに言い訳できないもんね。でも、カードの山の
     中にあっても同じことなんじゃないの?」

かがみ「いいえ。部屋のどこかに隠すよりも、むしろカードの山に
     忍び込ませた方が言い逃れしやすいわ。例えば――」

40: 2009/11/14(土) 06:04:59.68 ID:8.tMANk0
つかさ「確かにそのカードを持ってきたのは私だよ。でも、その
     トランプは昔からうちで使っているトランプだった。うちは
     姉妹の人数が多いから、カードをなくすことも多かった。
     だから、まったく同じ種類のトランプを買って、予備として
     補充して使っていたんだよ。だから、別に私自身がそう
     なるように用意したものじゃないよ。ダイヤとスペードと
     ジョーカーが紛れ込んでいたのは、ただの偶然なんだよ」

かがみ「――こんなふうに言い訳できる、ってわけよ」

こなた「柊姉妹って……」

みゆき「でも、そのイカサマ方法には、まだ問題点がありますよね」

こなた「何なの、みゆきさん」

みゆき「確かに、最初にカードを引いた泉さんは四枚のうちのどれを
     引いても構いませんが、私はそういうわけにはいきません。
     つかささんは、私には泉さんが引いた以外のカードを引かせる
     必要があったはずです」

こなた「ああ、言われてみればそうだね。私が引いたカード以外を
     みゆきさんが引く確率は3分の2だから、成功する確率が
     高いとも言えるけど、やっぱり危ない橋であることに変わりは
     ないよね」

かがみ「でも、私もつかさも、みゆきに思ったとおりのカードを引かせた」

こなた「どうやったの?」

41: 2009/11/14(土) 06:08:15.94 ID:8.tMANk0
かがみ「実はね、みゆきにはカードを引くときに癖があるの。それは、
     『真ん中のカードを引かない』という癖よ。だから、みゆきは
     3枚のうちの両端のカードを引く。こなたが引いたのと同じ
     カードを真ん中に配置しておけば、思い通りのカードを引かせる
     ことができるという寸法よ」

みゆき「ちょ、ちょっと待ってください。必ず両端のどちらかのカードを
     引くなんて癖、私自身ですら気付いていませんでしたが」

かがみ「気付かないのも無理はないわね。でも、そういう癖があるのは
     事実よ。真ん中のカードを引かないという癖ができてしまった
     原因は、おそらく視力ね」

みゆき「視力」

かがみ「ええ。みゆきはメガネをかけていることからも分かるように、
     目が悪い。おそらく、私達に対して自己申告している以上に、
     視力が悪いはずよ。だから、カードを選ぶときは、無意識の
     うちに両端のどちらかを取るようになってしまったの。中央の
     カードは、左右のカードと重なっている部分が多くて取りにくい
     からね」

こなた「なるほど……。みゆきさんにそういう癖があったのは分かった
     けど、かがみやつかさはいつ気付いたの?」

かがみ「私はついさっきよ。こういう方法を使えばイカサマできるな、
     って思いついて、今までのみゆきのカードの引き方を思い出し、
     気付いたの。でも、つかさはもっと前から気付いていたんじゃ
     ないかしら? そして、利用できると思ったんじゃない?」

42: 2009/11/14(土) 06:12:50.25 ID:8.tMANk0
つかさ「お姉ちゃん、疑いすぎだよ。私は、お姉ちゃんに指摘されるまで、
     そんな方法があるなんて思いもしなかったもの」

かがみ「……そういうことにしておいてあげるわ。証拠は何もないからね」

こなた「でもさあ、トランプのエースとジョーカーを使ってくじ引きをしよう
     って言い出したのは、つかさじゃなくてみゆきさんだよ?」

みゆき「そのことに関して、思い出したのですが――」

こなた「何?」

みゆき「何日か前に、つかささんに簡単な占いの方法を教わったのです」

こなた「占い」

みゆき「ええ。トランプのエースとジョーカーだけを使った、凄く簡単な
     占いのやり方です。それが頭の片隅に残っていたから、私は
     無意識のうちに、近くにあったトランプをくじにすればいいと思い
     ついたのかもしれません」

こなた「じゃあ、つかさは何日も前から周到に下準備をしていたってこと?
     確かに、このゲームをやろうと言い出したのはつかさだから、
     やろうと思えばいくらでも下準備ができるけど……」

かがみ「こなた」

こなた「怖い顔してどうしたのかがみん」

43: 2009/11/14(土) 06:17:47.91 ID:8.tMANk0
かがみ「……もしかして、あんたも、ダイヤやスペードが2枚ずつあること
     には気付いていたんじゃないの?」

こなた「どうしてそう思ったのかな、かがみん」

かがみ「第2回と3回のゲームのとき、私は自分が告白者に選ばれたら
     ゲームを抜けると宣言していた。だけど、あんたがカードを
     シャッフルしているときには私がジョーカーを引くことはでき
     なかった。あんた、本当は最初にカードの山からエースとジョー
     カーを抜き出したときに、カードがダブっていることに気付いてい
     たんじゃないの?」

こなた「知らないなあ。偶然だよ、かがみん」

かがみ「ええ。偶然よね。ダイヤやスペードやジョーカーが2枚あれば、
     あんただってつかさと似たような方法を使ってカードを『いじる』
     ことができたけど、それは偶然だったのよねえ」

つかさ「お姉ちゃん。証拠が何もないことを言い続けるのはやめて、
     ゲームの続きをしようよ」

かがみ「……ええ、そうね。その代わり、これ以上イカサマできないように
     何らかの対策は講じらせてもらうけどね」

つかさ「じゃあ、そういうことで続きをしよう。お姉ちゃん、嘘をついた部分を
     早く紙に書いてよ」

かがみ「書く必要はないわ」

こなた「ってことは」

44: 2009/11/14(土) 06:27:37.04 ID:8.tMANk0
かがみ「そうよ。つかさが指摘した部分が当たっていた。つかさ、
      おめでとう。今回はあんたの勝ちよ」

つかさ「えへへへ。これで、私とお姉ちゃんとゆきちゃんが2勝5敗。
     こなちゃんが1勝6敗だね」

こなた「私が6連敗か……」

みゆき「まだまだ挽回のチャンスはありますよ」

こなた「だけど、残り6ゲームしか残ってないでしょ? 勝ち抜けする
     には後3回勝つ必要があるから、6回中3回……。あーあ、
     これが普通のゲームならもうリセットしてるところだよ」

かがみ「いや、テレビゲームやネトゲを普通のゲームと言うのは
     ちょっとおかしくないか?」

こなた「もういいから、さっさと第8回のゲームやろうよ」

かがみ「投げやりだな。――まあいいわ。とにかく、カードにイカサマ
     できたことがはっきりしたから、次からはできないようにする
     わよ。そのことに関する文句はないでしょ?」

つかさ「ないけど、どうするの?」

かがみ「今までみたいに、シャッフルしたカードを一枚ずつ引くんじゃ
      なくて、シャッフルしたカードをテーブルの上に、裏にして
      並べておくの。シャッフルした人以外が、順番に『その場で』
      カードを表にしていく。シャッフルした人も、最後に残った
      カードをその場で表にする。こうすればイカサマできないわ」

45: 2009/11/14(土) 06:34:36.77 ID:8.tMANk0
みゆき「その方法なら、私の癖も関係ないですね」

つかさ「まあ、お姉ちゃんがそれで満足できるなら、それで
     いいよ」

かがみ「いちいち引っかかる言い方するわね」

こなた「カードだけに引っかかる、ってね」

かがみ「全然上手くない。じゃあ、私がカードをシャッフル
     するわね。それを並べて……もう裏返していいわよ。
     ただし、一度手元に戻したりせずに、ただ裏返す
     だけにするのよ」

こなた「分かってるよ。――ダイヤだった」

つかさ「私はジョーカー」

みゆき「ハートでした」

かがみ「私はスペードだったわ。ということは、つかさが
     質問者で、みゆき、こなた、私の順に質問していく
     ことになるわね」

つかさ「じゃあ、質問していいよ」

みゆき「では、お聞きします。・……これはつかささんにとって
     答えにくい質問かもしれませんが、あえて確認します。
     つかささんは、お父様に虐待されているのではあり
     ませんか?」

46: 2009/11/14(土) 06:47:19.57 ID:8.tMANk0
かがみ「虐……待?」

こなた「お父様って、私とかがみとつかさの実の父親のこと
     だよね? みゆきさん。どうしてお父さんがつかさを
     虐待してるなんて思ったの?」

みゆき「成績のことです。つかささんは成績に関して異常な
     ほどの劣等感を抱いています。これは、誰かに成績
     が悪いことを叱責された結果なのではないかと思う
     のです。しかも、『かがみさんと比較する』という、
     酷いやり方で。そういうことをするのは、大抵、両親の
     どちらかですから」

つかさ「私……」

かがみ「私?」

つかさ「お父さんに、ひどいことをされてきた。子供の頃から、
     ずっと」

かがみ「つかさ――?」

つかさ「かがみはこんなに頭がいいのに、どうして双子の妹の
     お前はこんなに頭が悪いんだ、って言われ続けてきた。
     本当に双子なのか、本当にお前は俺の子供なのか、
     って言われてきた。ほら、私とおねえちゃんは、二卵性
     双生児だからね。二卵性双生児の場合、それぞれの
     父親が違う赤ちゃんが生まれることがあるんだよ」

こなた「えっ。そうなんだ。知らなかった」

47: 2009/11/14(土) 06:56:34.85 ID:8.tMANk0
みゆき「確かにそういう例は世界中にありますね。日本では父親の
     人種は同じだから気付かれにくいですけど、海外では、
     双子の片方の父親は白人で、もう一方の父親は黒人という
     場合もありますから、生まれたときに一目で分かることも
     多いのです」

こなた「みwikiさんが言うんなら、そうなんだろうね。でもその場合、
     母親は同時期に二人以上の男としたということに
     なるよね」

みゆき「そういうことになりますね」

つかさ「私とお姉ちゃんが生まれた頃、お父さんがこなちゃんの
     お母さんとも不倫をしていたっていうのは、もう知ってるよね。
     同じように、お母さんも、お父さん以外の人と浮気をして
     いたんだよ」

かがみ「――嘘」

こなた「かがみん、大丈夫?」

かがみ「嘘よ。嘘だわ。だって……だってお父さんとお母さんは、
     あんなに仲がいいのに。そりゃあ世間には色んな家がある
     っていうのは知っていたけど、うちは普通の家庭だと思って
     いたのに」

つかさ「お姉ちゃんは、子供だね。どうしようもないくらい、お子様だね」

かがみ「……つかさ?」

48: 2009/11/14(土) 07:09:20.75 ID:8.tMANk0
つかさ「私には、お姉ちゃんが凄く子供っぽく見えるよ。私は子供の
     頃から、大人の汚いところを散々見せつけられてきた。
     お父さんは神主の仕事以外にも、色んな汚い仕事をやって
     いたでしょ? その仕事が上手くいかないと、私に八つ当たり
     を――殴ったり蹴ったりしたんだよ」

かがみ「嘘……。信じられない」

つかさ「成績のことは、都合のいい言い訳になったんだろうね。
     私の成績が悪いことを口実にして、何十分も定規でお尻を
     叩かれたこともあったね。私がどんなに泣き叫んで謝っても、
     お父さんは自分が満足するか疲れ果てるまでやめてくれ
     なかった」

かがみ「やめて。もうやめて」

つかさ「お姉ちゃんさえいなければ。――お姉ちゃんさえいなければ、
     私の成績が悪いことがあんなに目立つことはなかったのに。
     私よりもお姉ちゃんの方が成績が悪ければ、虐待されていた
     のは私じゃなくてお姉ちゃんの方だったのに。お姉ちゃんの
     せいだお姉ちゃんのせいだお姉ちゃんのせいだ。お姉ちゃん
     さえいなければ私は普通の子供として普通に成長することが
     できたのに。お姉ちゃんがいたから私はこんなふうに育って
     しまった。こんなふうにこんなふうにこんなふうに。汚れている。
     私は汚れている汚れている。お姉ちゃんさえいなければ!」

かがみ「ごめん……なさい」

つかさ「謝るな謝るな謝るな! 今さら謝ったって遅いんだよ!」

49: 2009/11/14(土) 07:16:49.97 ID:8.tMANk0
かがみ「ごめんなさい!」

こなた「つかさ。いい加減にしなよ」

つかさ「……こなちゃん」

こなた「つかさだって、本当は――」

つかさ「その前に、言わせて。ゆきちゃんの質問への答えは『以上』
     ってね」

こなた「いいよ。これは質問にカウントすればいいけど、言わせて
     もらう。つかさだって、本当は分かってるんでしょ?
     かがみが悪いわけじゃない、って。悪いのはかがみじゃ
     なくてお父さんなんだ、って」

つかさ「……それは違うよ」

こなた「つかさ」

つかさ「だってお姉ちゃんは、嘘つきなんだもん」

かがみ「私が、嘘つき」

つかさ「そう。何度も言ったでしょ? お姉ちゃんは嘘つきだ、って。
     お姉ちゃんは今初めて知ったような顔をして驚いてみせてる
     けど、本当は知っていたはずだよ。私が虐待されていたことを。
     だって、私だけ床の上で食事させられたり、何時間も雨の中で
     木に縛られたり、髪の毛を今みたいに短く切られたりしたこと、
     お姉ちゃんは知っていたんだから」

50: 2009/11/14(土) 07:25:14.58 ID:8.tMANk0
こなた「髪の毛?」

つかさ「うん。この髪の毛……。これは昔、お父さんに切られた
     ものなんだよ。『かがみと紛らわしいから』という理由で。
     だからお姉ちゃんは髪の毛を伸ばしているけど、私は
     今でも短いまま。――お姉ちゃんは、知っていた。
     だって、小さい頃からずっと同じ家に暮らしてきたん
     だから。でも、助けてくれなかった。一度だって、私の
     ことを助けてくれなかった」

かがみ「私は――」

つかさ「私は、何?」

かがみ「ええと……」

つかさ「ほらね。何も言い訳できないでしょ? お姉ちゃんは
     ずっと、見て見ぬふりをしてきた。ううん。それどころか、
     虐待に加担していた」

かがみ「そんなこと」

つかさ「そんなこと、あるよ。もしもお姉ちゃんよりも私の方が
     成績が良かったら、虐待は少しは軽くなっていたはず
     だから。だけど、お姉ちゃんはいつだって必氏になって
     勉強していたよね。虐待されないように。お父さんに、
     自分じゃなくて私が虐待されるように仕向けていた。
     ――こなちゃんの質問への回答は、以上だよ。次は、
     お姉ちゃんが質問する番だよね? お姉ちゃんは
     いったい私に何を訊くのかな? 楽しみだよ」

72: 2009/11/15(日) 00:11:39.36 ID:JxOwhWQ0
かがみ「許してもらうには、どうすればいいの?」

つかさ「えっ――」

かがみ「許してもらえる方法を教えて」

つかさ「お姉ちゃんは……何を言っているの?」

かがみ「私、本当のことを言うと、薄々感づいていた。つかさが
     お父さんにひどいことをされているんじゃないか、って。
     でも、気のせいだと思っていた。ううん。気のせいだと
     思い込もうとしていた。うちは――柊家は、日本中どこ
     にでもある普通の家なんだから、お父さんが隠し子を
     作ったりお母さんが浮気したり、そして、つかさが虐待
     されたりしているなんて、思いたくなかった。信じたく
     なかった。見たくなかった。だから、私は真実から目を
     逸らし続けてきた。柊家の本当の姿から……。それが、
     私の罪よ。この罪を償うには、どうすればいいの?」

つかさ「嘘だ……」

かがみ「つかさ、お願い。教えて」

つかさ「お姉ちゃんが、罪を認めるなんて。私に謝るなんて。
     許しを請うなんて。そんなことって――」

かがみ「つかさ、どうしたの。何でそんなに苦しそうな表情を
     しているの」

74: 2009/11/15(日) 00:17:18.17 ID:JxOwhWQ0
こなた「つかさは、かがみが素直に謝るとは思っていなかった
     んだよ。つかさはかがみを恨み、憎むことで、自我を
     保ってきたから。……だけど、もっと早くかがみに相談
     していればよかったんだよ。もっと早く打ち明けて
     いれば、こんなことにはならなかったのに」

かがみ「こんなこと?」

こなた「いや、こっちの話だから、忘れて」

かがみ「気になるじゃないの。こんなこと、っていうのは、どう
     いう意味なの? つかさがこんなゲームをやろうと
     言い出したり、私のストーカーを始めたりしたこと?」

こなた「かがみん。今はゲームに集中しなよ。まだつかさの
     告白は終わってないんだから」

かがみ「ああ、そうだったわね。つかさ、どうすれば許してもら
     えるのか教えて」

つかさ「――さない」

かがみ「え?」

つかさ「絶対、許さない。何が起ころうと、私はお姉ちゃんを
     許さない。『以上』だよ」

かがみ「そう……。そうよね。今さら許してもらおうなんて、
     虫がよすぎたわよね……」

75: 2009/11/15(日) 00:25:33.52 ID:JxOwhWQ0
みゆき「とにかく、これで全ての告白は終わりましたね。では、
     紙に書いてください」

つかさ「書いたよ」

みゆき「じゃあ、私から嘘を当てていきますね」

つかさ「うん。いいよ」

みゆき「『お母さんが、お父さん以外の人と浮気をしていた』
     というのが嘘なのではないですか? それはつかさ
     さん達のお父さんの思い込みに過ぎず、事実では
     なかったのではないですか?」

つかさ「あはははは。ゆきちゃんって、意外と甘いよね。残念
     でした。お母さんが不倫をしていたのは、本当のこと
     だよ」

みゆき「そうですか。残念です」

つかさ「次は、こなちゃんの番だね」

こなた「ずばり言わせてもらうよ。三番目の告白の、『絶対、
     許さない』というのが嘘だよ。その次の『何が起ころう
     と、私はお姉ちゃんを許さない』というのも同じ意味の
     嘘になるんだろうけど」

つかさ「……どうして、そう思ったの?」

こなた「だってつかさは、もうかがみんを許しているから」

76: 2009/11/15(日) 00:32:12.64 ID:JxOwhWQ0
かがみ「え?」

こなた「ツンデレなのはかがみんだけじゃない、ってことだよ」

かがみ「私はツンデレじゃない! いや、そんなことよりも、
     つかさ。こなたの言ったことは、本当なの?」

つかさ「えーと」

みゆき「つかささん」

つかさ「当たりだよ。これで、全員が2勝6敗になって、同列の
     順位になったね」

かがみ「……つかさ!」

つかさ「ちょ、ちょっとお姉ちゃん。いきなり抱きつかないでよ」

かがみ「今まで、本当にごめんなさい。そして、ありがとう」

つかさ「いいから離れてよ」

こなた「このツンデレ姉妹め!」

つかさ「……あは」

かがみ「あははは」

つかさ「と、とにかく、ゲームを続けようよ。次が9回目だよね?」

79: 2009/11/15(日) 00:36:22.07 ID:JxOwhWQ0
かがみ「えっ。続けるの?」

つかさ「もちろんだよ」

かがみ「今なら全員が同じ順位になってるから、今やめれば
     誰も罰ゲームを受けずに済むのに」

つかさ「私は、やりたい。正々堂々と、お姉ちゃんに勝ちたい」

かがみ「まだそんなこと言ってるの? 私を許してくれたんじゃ
     なかったの?」

つかさ「それとこれとは話が別だよ」

こなた「私も続けたいな。かがみん、10のカードを引いたのは
     かがみなんだから、約束は守らないと」

かがみ「今となっては、そのカードもイカサマされてたんじゃ
     ないか、って気がするけどね。みゆきは?」

みゆき「そうですね。どちらかと言えば、私も続けたいです」

かがみ「わ、分かったわよ。やればいいんでしょ? まったく。
     じゃあ、カードをシャッフルして裏返すわよ」

こなた「ど、れ、に、し、よ、う、か、な。……ハートだったよ」

みゆき「ジョーカーでした」

つかさ「私はダイヤモンド」

81: 2009/11/15(日) 00:42:46.11 ID:JxOwhWQ0
かがみ「私がスペードね。ということは、告白者がみゆきで、こなた、
     つかさ、私の順に質問することになるわね」

こなた「じゃあ質問するよ」

みゆき「どうぞ」

こなた「私のお母さんを頃したのは、みゆきさんなんじゃないの?」

みゆき「――え?」

かがみ「ちょ、ちょっと待ちなさい!」

こなた「何?」

かがみ「あんたのお母さんって、感電氏した泉かなたさんのことよね?」

こなた「そーだよ」

かがみ「かなたさんの氏に、みゆきが関わっているっていうの?」

こなた「そうは言ってないよ。私は、みゆきさんがお母さんを頃したんじゃ
     ないかと思ってるんだ」

つかさ「第1回のゲームのとき、私はこなちゃんがお母さんを頃したんじゃ
     ないかって尋ねたけど、まさかゆきちゃんが容疑者に浮かび
     上がってくるなんて思わなかったよ」

こなた「みゆきさん。黙ってないで本当のことを言ってよ。私はもう、みゆき
     さんのお父さんと、私のお母さんの関係を、知ってるんだから」

142: 2009/12/01(火) 23:13:15.45 ID:FiTHhNM0
みゆき「記憶にございません。以上です」

かがみ「ロッキード事件かよ!」

つかさ「まさか本当に憶えてない……ってことはないよね」

こなた「どう考えても嘘だよ。だけど、嘘だという証拠は何もない。まだ紙にも
     何も書いてないしね」

かがみ「うーん。みゆきが告白者のときって、本当に一筋縄ではいかないわね。
     普通なら『はい』か『いいえ』で答える質問だったのに、それ以外の
     答えをするんだから」

こなた「こういうときはどうすればいいのかな。憶えていない、っていう部分で
     嘘をついてはいけないって新ルールを追加してみる? そしてかがみか
     つかさが私と同じ意味の質問をするってのはどう?」

かがみ「駄目よ、こなた。忘れたの? 新ルールを追加した場合、それが適用
     されるのは告白者が交替した後からってことになってたでしょ?」

こなた「ああ、そうだったっけ」

かがみ「それに、『同じ意味の嘘を繰り返すのは構わない』というルールがあるから、
     既に『記憶にございません』という部分で嘘をついたのなら、こなたと同じ
     質問をしても無意味よ」

こなた「うう……。もう八方ふさがりだね」

かがみ「それより、こなたはいつからみゆきを疑い始めたの? 今までのあんたの
     『告白』には、みゆきが犯人だと仄めかせるようなものは何もなかったと
     思うんだけど」

145: 2009/12/01(火) 23:31:11.52 ID:FiTHhNM0
こなた「私が最初に何か変だな、と思い始めたのは、第一回のゲームのときだった」

かがみ「そんなに早くから……。いや、早くって言っても、ついさっきだけど」

こなた「うん。あのときみゆきさんは、お母さんがどんな状況で亡くなったのかを
     質問したよね」

かがみ「そうだったけど……」

こなた「それって、よく考えると不自然じゃない? 私が、実の父親のことが好きだ、
     って告白した直後の質問だったんだよ? お母さんが氏んだことなんて、
     ただのおまけに過ぎなかった。それなのにどうしてみゆきさんはお母さんの
     氏因を気にしたんだろう……って不思議に思い始めたんだよ」

つかさ「言われてみると、確かにそうかもしれないね」

かがみ「でも、今の話にも、みゆきは何も関係なかったじゃない」

こなた「疑惑が確信に変わったのは、第6回――みゆきさんが告白者のときだった。
     私はあのとき、初めてみゆきさんのお父さんが**教の信者であることと、
     みゆきさんの家がお金に困っていたことを知った。そして、思い出したんだよ。
     お母さんが氏ぬ何日か前に、私の家にみゆきさんが来ていたことを」

つかさ「えっ? こなちゃんとゆきちゃんは、高校で初めて知り合ったんじゃ……」

こなた「私もすっかり忘れてたんだけどね。いや、あのとき私の家に来ていた親子が、
     みゆきさん達だったことに気付いていなかった、と言った方が正確なのかも
     しれないけど。だって、その親子は、私のお母さんにお金を借りに来たんだ
     からね。父親の方は土下座までしていた。私はそれをドアの隙間から見て
     いたけど、お嬢様のみゆきさんのイメージとは違いすぎたから、高校で再会
     しても全く気付かなかった」

146: 2009/12/01(火) 23:42:41.98 ID:FiTHhNM0
かがみ「お金を借りるのに、普通、子供連れで来るかな?」

こなた「そっちの方がお金を借りやすいと思ったんじゃないかな。幼い子供が
     いたら、それだけで同情を引けるでしょ」

かがみ「結局、あんたのお母さんはお金を貸したの?」

こなた「ううん、貸さなかった」

つかさ「なるほど。そのことで逆恨みをしたゆきちゃんが、こなちゃんのお母さんを
     頃したんじゃないか、って思ったわけなんだね」

かがみ「でも……あんたのお母さんは事故氏だったんでしょ。人為的に殺害する
     余地なんてないような気がするんだけど」

つかさ「お姉ちゃん、しっかりしてよ。これは嘘の告白ゲームだよ」

かがみ「あ、そうか。まだ第1回のゲームでこなたが嘘をついた部分は判明して
     いなかったわね」

こなた「っていうか私は、お母さんが事故氏した、なんて言ったことはないけどね」

かがみ「ああ、そうだっけ。こなたはただ、こなたがお母さんを頃したのかという
     質問に対して否定しただけだった。……ねえ、もしかして、あんたの
     お母さんは誰かに殺されたということが警察の調べで分かっていたのに、
     あんたは黙っていたんじゃないの?」

こなた「やれやれ。今はみゆきさんが『告白』する番なのに、私ばっかり質問攻めに
     あってるね」

147: 2009/12/01(火) 23:52:43.15 ID:FiTHhNM0
かがみ「あんたが爆弾発言をするからでしょ。教えなさいよ」

こなた「それは次に私が質問者になったときに訊いてもらえないかな」

つかさ「こなちゃん、取り引きをしようよ」

こなた「取り引き?」

つかさ「うん。お姉ちゃんの質問にちゃんと答えてくれたら、私とお姉ちゃんも、
     こなちゃんのお母さんの事件について、ゆきちゃんに質問するって
     約束するよ」

かがみ「いい考えね。こなた、それでどう?」

こなた「分かった、それなら答えるよ。実を言うと、かがみの言ったとおり、
     殺人であることは誰の目にも明らかだった。トースターの本体に
     近い部分のコードが傷つけられ、導体が露出していた」

かがみ「コードが……?」

つかさ「お姉ちゃん、何だかホッとしたような顔してるね」

かがみ「べ、別にそんなことないわよ!」

こなた「それだけじゃなかった。トースターには、見えにくい糸が結びつけ
     られていた。その糸は、窓の外に伸ばされ、垂れていた。つまり、
     犯人はトースターを傷つけて感電しやすい状態にしておき、
     お母さんがお茶碗洗いをしているときにタイミングを見計らって
     糸を引き、感電させた――。そういうことになるね」

156: 2009/12/02(水) 23:05:07.61 ID:0t0hW9A0
つかさ「本当に殺人事件だったんだね」

かがみ「知らなかったわ……」

こなた「だって、言ってなかったから」

かがみ「当然、犯人はまだ逮捕されてないのよね?」

こなた「うん。捕まってない」

かがみ「そっか……。とりあえず、あんたがこのゲームを続けることに拘って
     いた理由は分かったわ。お母さんを頃した犯人が誰なのか、私達に
     推理して欲しかったのね?」

こなた「ええと……まあ、そんなところ」

つかさ「じゃあ、次の質問者の私に任せて」

かがみ「何かいい考えがあるの?」

つかさ「うん。――ゆきちゃんは、こなちゃんのお母さんが殺される前に、
     こなちゃんの家に行ったことがある?」

かがみ「あまりいい質問じゃないような気がするんだけど……。どうせまた
     記憶にございません、って答えるだけでしょ」

こなた「まあ、とりあえず黙って見てようよ、かがみん」

みゆき「――はい、泉さんのお母さんが氏ぬより前に、泉さんの家に
     行ったことがあります」

157: 2009/12/02(水) 23:14:34.68 ID:0t0hW9A0
かがみ「普通に答えたわね」

つかさ「だって、別にこなちゃんが子供の頃に、ゆきちゃんがこなちゃんの
     家に行ったことがあっても、イコール犯人ってわけじゃないから。
     この質問なら素直に答えてくれると思って。――まあ、この部分が
     嘘だという可能性もあるわけだけど」

こなた「なかなかいい質問だったね」

かがみ「そうかしら。まだ、みゆきが子供の頃にあんたの家に行った、っていう
     ことが分かっただけじゃないの」

つかさ「お姉ちゃん、気付いてないの?」

かがみ「何を? ――って、しまった。普通に質問しちゃった」

つかさ「ゆきちゃんはまだ『以上』って言ってないから、私のターンが続いて
     いるはずだよ。だから、今ならいくら質問しても大丈夫」

かがみ「そうね。じゃあ改めて訊くけど、つかさやこなたは、何に気付いたの?」

つかさ「ゆきちゃんは、こなちゃんのお母さんが氏んだ時間を知っていたんだよ」

かがみ「……え?」

つかさ「こなちゃんは一度も、お母さんが氏んだ日時を口にしていないよね。
     ただ七歳くらいのときと言っただけで、季節すら教えてない」

かがみ「ええと、それは、みゆきがこなたのお母さんと生前に会ったことがある
     からでしょ? 別に不思議なことは何もないような気がするんだけど」

159: 2009/12/02(水) 23:25:08.94 ID:0t0hW9A0
こなた「そう。それこそがつかさの狙いだったんだよ。今の質問に答えた
     ことによって、みゆきさんが私のお母さんと会ったことがある、
     というところまで判明したわけだ。もちろんこれが嘘の可能性も
     あるけど、それはダウトのときに確かめればいいし」

かがみ「いや、みゆきが子供の頃にあんたのお母さんと会ってるところを
     見たことあるんだから当たり前でしょ」

つかさ「だーかーらー、その子が本当にゆきちゃんなのか、まだ確定して
     なかったでしょ。私はそれを確かめたかったの」

かがみ「ああ……、そういうことか」

つかさ「お姉ちゃん、さっきから妙に頭の回転が遅いよね。何かお姉ちゃん
     らしくないよ」

かがみ「そ、そんなことないわよ」

つかさ「お姉ちゃん、私達に何か隠し事してない?」

かがみ「してないわよ。そんなことより、ほら、私達がいつまでも喋ってたら、
     みゆきが答えにくいでしょ」

みゆき「お気遣いありがとうございます。つかささんは随分と考えてから
     この質問をなさったみたいですが、そんなに遠回しな訊き方を
     しなくても、ちゃんと『告白』しますよ。私は確かに、泉さんが
     おっしゃったように、父に連れられて泉さんのお宅にお邪魔し、
     お金を貸してくれるように頼んだことがあります。でも、泉さんの
     お母様を頃した覚えはありません。以上です」

161: 2009/12/02(水) 23:41:11.54 ID:0t0hW9A0
こなた「……頃した覚えはない、か。これは『記憶にございません』と同じ
     意味の言葉だと考えてよさそうだね」

かがみ「そう思うけど、あんた、何か深刻な顔してるわね」

こなた「うん。もしかしたら、みゆきさんは本当に憶えてないのかもしれないと
     思ってさ」

つかさ「どういうこと?」

こなた「みゆきさんの『記憶にございません』って告白を、私達は誰も信じて
     なかったけど、本当に、頃したという記憶がないのかも」

かがみ「分かるように説明しなさいよ」

こなた「その頃の記憶がないんだよ、きっと。だから、みゆきさんは、自分が
     殺人者なのかどうか、断言できないのかも」

つかさ「イエスでもノーでもない答えをしたのは、否定しても肯定しても嘘に
     なっちゃうから、ってこと……?」

かがみ「待ちなさい。それはないわ。だって、第6回のゲームのときに、
     みゆきは色んな犯罪の告白をしたけど、そのときにこう言ったわ。
     『まあ、今思い出せるのはこんなところですね。本当はもっと
     いっぱいあるような気もするんですけど、たくさん犯罪をやりすぎた
     せいで、全部は思い出せません』って。そして、この『全部は思い
     出せません』という部分でみゆきは嘘をついていたんだから、
     逆に言うと、全ての犯罪を憶えているはずよ」

つかさ「お姉ちゃん、それは違うよ」

162: 2009/12/02(水) 23:51:51.45 ID:0t0hW9A0
かがみ「何が――って、私は今、迂闊に質問できないんだったわね。こなた、
     私の代わりに訊いて」

こなた「しょうがないなあ。つかさ、何が違うの?」

つかさ「お姉ちゃんもこなちゃんも、勘違いしてるんじゃないかな。このゲーム
     では、同じ意味の嘘は繰り返してもいいことになってるよね」

こなた「そうだけど。……え? まさか、そんなことが?」

かがみ「勝手に分かってないで、私にも説明しなさいよ」

こなた「同じ意味の嘘は繰り返してもいい。例えそれが、一度嘘だと指摘された
     箇所であっても」

かがみ「あ」

つかさ「これって、まさに、ゲームルールの盲点だよね。ゆきちゃんは既に一度、
     全部の犯罪は憶えていないという嘘をついてしまった。それが嘘だった
     ことはもうお姉ちゃんが指摘したけど、ゆきちゃんはそれを繰り返しても
     問題ないことになる」

かがみ「そんなのおかしいわ」

つかさ「何がおかしいの?」

かがみ「それは上手く言えないけど……」

こなた「あれ? ちょっと待って。回答者は一つの告白につき一つだけ嘘を
     混ぜないといけないんだから、みゆきさんはもう負けたんじゃないの?」

163: 2009/12/03(木) 00:01:29.27 ID:pOGV9Cg0
つかさ「確かにゆきちゃんは矛盾したことを言ってるけど、まだ負けたと
     決まったわけじゃないと思うよ。だって、思い出せないという嘘は、
     第6回のゲームのときの嘘だから」

こなた「つまり?」

つかさ「一つの告白につき、嘘は一つ。ということは、この第9回のゲーム
     では、ゆきちゃんは新しい嘘をもう一つつかないといけない、って
     ことになるんじゃないのかな」

かがみ「あんたは誰の味方なのよ」

つかさ「私は誰の味方でもないよ。ただ、このゲームのルールを解説して
     いるだけ。以前に嘘だと指摘された嘘を繰り返してはいけない
     というルールはなかったし、新しい告白のときには古い嘘を混ぜた
     場合、それ以上嘘をついてはいけないというルールもなかった。
     だから、私の説明のように解釈することも問題ないよね」

こなた「頭痛くなってきた。ややこしすぎ」

かがみ「本っ当に複雑なゲームルールね。このゲームを始めるとき、
     つかさは誰にでもできる簡単なゲームとか言ってたけど、あれ、
     絶対に嘘でしょ」

つかさ「だって、私が考えたゲームじゃないから。ルールを聞いたときは、
     簡単そうに思ったんだもん」

かがみ「そう言えば――あ、これはつかさ限定の質問だからみゆきは
     答えちゃ駄目よ。つかさは、誰からこのゲームを教えてもらったの?」

171: 2009/12/04(金) 01:02:02.86 ID:EbPwig20
つかさ「私は誰の味方でもないよ。ただ、このゲームのルールを解説して

つかさ「その質問は、次に私が告白者に選ばれたときにとってのために
     おいてよ」

かがみ「でも、今は第9回だから、残り4ゲームしかないわ。だから、今後
     つかさが一度も告白者に選ばれない確率は、4の4乗分の3の
     4乗、つまり256分の81ね。約3分の1の確率で、つかさが
     告白者に選ばれないことになってしまうから、今のうちに答えて
     おいても損はないと思うけど」

つかさ「お姉ちゃんが何を言ってるのかさっぱり分からないよ」

みゆき「あのー」

つかさ「何?」

みゆき「そろそろ私に次の質問をしてもらえないでしょうか。先ほどから
     ずっと待ってるんですけど」

こなた「そう言えばみゆきさん、さっきから妙に無口になってたよね」

みゆき「だって、今は私が告白者なんですから。不用意に発言すると
     どの部分で嘘をついたのかバレてしまう恐れがありました」

こなた「でも、いい加減待ちくたびれたと?」

みゆき「そういうことです」

かがみ「分かったわよ。今、質問を考えるからちょっと待って」

173: 2009/12/04(金) 01:12:59.20 ID:EbPwig20
こなた「かがみん、さっきの取り引き、忘れてないよね? ちゃんと、
     私のお母さんの氏の真相を探るんだよ」

かがみ「分かってるわよ。とりあえず、みゆきが幼い頃、こなたの
     お母さんと会ってたところまでは確定したのよね。いや、
     これが嘘なのかもしれないけど、それを前提にしないと
     話が進まないから、そう考えさせてもらうわ」

つかさ「お姉ちゃん、時間稼ぎしてるでしょ」

かがみ「バレたか」

つかさ「何もいい質問が思いつかないなら、ストレートに動機を
     探ればいいんじゃないかな」

かがみ「ああ、その手があったわね。じゃあ質問するわよ」

みゆき「どうぞ」

かがみ「みゆきは、こなたのお母さんのことを恨んでいた?」

みゆき「……恨んでいました」

こなた「やっぱり」

みゆき「あの頃、私の家は借金地獄で、苦しんでいました。そこで、
     藁にも縋るような思いでお父さんの旧友である泉かなた
     さんにお金を融通してもらえないかと頼みに行って、土下座
     までしたのに、あっさりと断られたんですから。……いいえ、
     『断られた』というのは、ちょっと違うかもしれませんけど」

175: 2009/12/04(金) 01:24:42.64 ID:EbPwig20
こなた「ちょっと違うって、どういうことなの」

みゆき「条件を出されたんです」

こなた「条件」

みゆき「お金を貸すんじゃなくて、あげてもいいと言われました。
     返さなくてもいいと」

こなた「えっ。その代わり……?」

みゆき「頃してくれ、と言われました」

かがみ「誰を――」

つかさ「そうじろうさん? それとも、こなちゃん?」

みゆき「……泉かなたさんです」

こなた「お母さんが――お母さんを、頃して欲しいと依頼した?
     何それ。みゆきさん何言ってるの。わけが分かんないよ」

かがみ「待って。もしかして、こなたのお母さんの病気のことが
     関係してるの?」

こなた「病気」

みゆき「お察しの通りです。泉かなたさんは、不治の病にかかって
     いました。とても苦しい病気です。泉かなたさんは、あまりの
     苦しさに耐えかね、氏にたがっていたのです」

176: 2009/12/04(金) 01:34:56.77 ID:EbPwig20
こなた「嘘だよ。お母さんが、私とお父さんを見捨てて氏にたがっていた
     なんて、そんなの嘘だよ。お母さんは、あんなに優しかったのに。
     私を捨てるはずがない。私を置いて一人で氏のうとするはずがない」

みゆき「お気持ちはお察ししますが、本当です。そんな提案を受け入れる
     わけにはいかなかったので、私とお父さんは諦めて帰りました。
     結局お金はもらえなかったので、私は泉かなたさんを恨んで
     います。以上です」

つかさ「こなちゃんは、ドアの隙間からお母さんやゆきちゃんのお父さんの
     やり取りを覗いていたんでしょ? だったら、その話が本当なのか
     嘘なのか分かるんじゃないの?」

こなた「途中で覗いてるのがバレて、ドアを閉められちゃったから」

つかさ「ああ、そういうことか」

かがみ「確かに『断られた』というのとは、ちょっと違うわね。でも、まさか
     お金のために人を[ピーーー]わけにはいかないし、断られたも同然と
     考えてよさそうね」

つかさ「お姉ちゃん、それは甘いんじゃないかな」

かがみ「え……?」

つかさ「むしろ、ゆきちゃんがこなちゃんのお母さんを[ピーーー]動機が明らかに
     なったというべきなんじゃないかな」

かがみ「あんたは――みゆきが、お金欲しさにこなたのお母さんを頃した
     って言うの?」

179: 2009/12/04(金) 01:46:51.26 ID:EbPwig20
つかさ「もしくは、ゆきちゃんのお父さんの動機が明らかになった、と
     言った方がいいのかもしれないけど」

こなた「ひどい展開になってきたね。容疑者が増えちゃったのか。でも、
     確かに言われてみると、みゆきさんがお母さんを頃した可能性
     よりも、むしろみゆきさんのお父さんがお母さんを頃した可能性の
     方がずっと高そうだよね。当時、みゆきさんは私と同い年か、
     一つ下だったんだから」

かがみ「もう嫌……。どうしてこんな話になっちゃうの?」

みゆき「私のお父さんは、私の知る限り、誰も頃してませんよ」

こなた「もう『告白』は終わったから、何とでも言えるけどね。でも、あえて
     その言葉を信じておくよ」

みゆき「ありがとうございます。それでは、泉さんから、私がどの部分で
     嘘をついたのか当ててください」

こなた「お母さんが、自分を頃して欲しいと依頼したのが嘘だ。私は、
     お母さんを信じてる」

みゆき「残念ながら、不正解です」

こなた「そんな――」

みゆき「次は、つかささんですね」

つかさ「『そんな提案を受け入れるわけにはいかなかったので、私と
     お父さんは諦めて帰りました』という部分が嘘でしょ?」

180: 2009/12/04(金) 01:57:19.65 ID:EbPwig20
かがみ「あんた……自分が何を言ってるのか、分かってるの?」

つかさ「分かってるよ。ゆきちゃんか、そのお父さんなのかは分からない
     けど、きっと二人のうちのどちらかが、その提案を受け入れた
     んだと思う。だから、こなちゃんのお母さんは殺されたんだよ」

かがみ「つかさ、やめなさい。第1回のゲームでこなたがお母さんを
     頃したんじゃないかって尋ねたときもそうだったけど、友達を
     疑うのはやめなさい」

つかさ「どうして? こなちゃんのお母さんは確実に誰かに殺された。
     動機があるのは、今のところ『お母さんが生きているうちは
     決して私と愛し合わない』とお父さん――柊ただおに条件を
     つけられたこなちゃんと、自分を頃してくれたらお金をあげる
     とかなたさんに言われていたゆきちゃんとそのお父さん、
     そして、こなちゃんの育ての父親であるそうじろうさんの四人
     しかいないんだよ。ゆきちゃんがその部分で嘘をついている
     可能性は、決して低くないと思うよ」

かがみ「……ちょっと待って。あんた、今、何て言った?」

つかさ「え? 私、何か変なこと言った?」

かがみ「そうじろう? そうじろうに、かなたさんを[ピーーー]動機があった
     って言うの?」

つかさ「あるに決まってるよ。だって、そうじろうさんは私達の父である
     柊ただおに妻を寝取られて、妻の不倫相手の子供であるこな
     ちゃんを育てさせられることになったんだから。きっと、かなた
     さんを憎んでいたんじゃないかな。頃してやりたいほどに」

198: 2009/12/12(土) 09:06:46.07 ID:27C4JYU0
こなた「ああ、それはあるかもしれないね」

かがみ「こなたまで……」

みゆき「不正解です。私とお父さんは、お金を借りたりもらったりする
     のは諦めて帰りました」

つかさ「ああ、残念だなあ」

かがみ「少しホッとしたわ」

みゆき「最後は、かがみさんの番ですよ」

かがみ「そうね。ちょっと待って。どの部分が嘘なのか考えるから。
     ……あれ?」

こなた「どうしたの?」

かがみ「何か、変な気がして」

つかさ「何が変なの?」

かがみ「ええと、どの部分で嘘をついたのか当てる前に、話を少し
     整理させてもらってもいい?」

みゆき「どうぞ」

かがみ「みゆきは幼い頃、泉かなたさんにお金を貸してもらうために、
     父親に連れられてこなたの家を訪れた。幼い子供がいると、
     同情を引けるから……。やっぱり変だわ」

199: 2009/12/12(土) 09:19:02.84 ID:27C4JYU0
つかさ「お姉ちゃん、思わせぶりなことばっかり言うのはやめてよ」

かがみ「分かったわ。はっきり言う。お母さんは何をしてたの?」

みゆき「――え?」

かがみ「父親が新興宗教にのめり込んだせいで、みゆきの家は
     経済的に破綻しようとしていたんでしょ? 切羽詰って
     旧友にお金を借りに来た。それなのに、みゆきのお父さん
     の妻である高翌良ゆかりさんは、いったい何をしてたの?」

こなた「言われてみると、確かに何かおかしいよね。少しでも多く
     同情を引きたいなら、家族全員で来るのが普通なのに」

つかさ「そう言えば、ゆきちゃんの二回目の告白のときも、お父さん
     に関することばかりで、お母さんに関することは全然話に
     出なかったよね」

かがみ「そう。私はあの『告白』を聞いたときからずっと、何か変だ
     と思ってたのよ。やっと分かったわ。みゆきはお父さんを
     助けるために、必氏になってお金を稼いでいた。非合法な
     やり方ではあったけど、みゆきは真剣だった。それなのに、
     みゆきが自分を汚している間、母親は何をやってたの?」

みゆき「それは……」

こなた「私、分かったよ。きっと、助けたくなかったんだ」

かがみ「どういう意味?」

202: 2009/12/12(土) 09:34:07.76 ID:27C4JYU0
こなた「きっと、みゆきさんのお母さんは、みゆきさんのお父さんを
     助けたくなかったんだよ。もうどうでもいいと思ってたんだよ」

かがみ「そのときにはもう夫を見捨ててた、ってこと?」

こなた「夫って言っていいのかどうか……」

かがみ「わけの分からないこと言わないでよ」

こなた「みゆきさんのお父さんって、本当にゆかりさんと結婚していた
     のかな?」

かがみ「あ――」

つかさ「言われてみると、確かに……。お父さんという言葉を使っていた
     けど、戸籍上の父親であるとは、一度も言ってないよね」

みゆき「いい加減にしてもらえませんか」

こなた「みゆきさんが怒った表情してるよ。レア顔だよレア顔!」

みゆき「私の三回目の告白は、もう終わりました。今はどの部分で
     嘘をついたのか当てる番のはずですよね? それなのに、
     どうして今さらそんな話をするんですか」

かがみ「ごめん。何か気になったから」

みゆき「分かりました。はっきり言いましょう。私の両親はちゃんと結婚
     していました。しかし、私が物心ついたときにはもう、二人の
     関係は冷え切っていました。……隠し子のせいで」

206: 2009/12/12(土) 09:42:58.19 ID:27C4JYU0
かがみ「隠し子?」

みゆき「ええ。父には隠し子がいました。他の女に産ませた子供が
     いました。そのせいで、母は父を見限っていたのです。例の
     新興宗教もその一因ではありましたけど」

こなた「じゃあやっぱり、みゆきさんのお母さんは、お父さんを助け
     たいとは思ってなかったんだね」

みゆき「はい。母にしてみれば、それがせめてもの復讐だったの
     でしょう」

つかさ「それは違うよ」

みゆき「どうして違うと言えるのですか?」

つかさ「私、知ってるから」

みゆき「何を」

つかさ「物事には、言うべきタイミングというものが存在するんだよ。
     そのタイミングが来たら教えるよ。それより、ゆきちゃんの
     お父さんの浮気相手――つまり、ゆきちゃんの異母きょうだい
     の母親って誰なの?」

みゆき「物事には、言うべきタイミングというものが存在しますから。
     そのタイミングが来たら教えます」

つかさ「あはははは。その返し方は予想してなかったな」

211: 2009/12/12(土) 10:12:46.31 ID:27C4JYU0

みゆき「さあ、もういいでしょう? かがみさん」

かがみ「ええ、いいわよ。足りなかったパズルのピースが明らかになって、
     ついに真相が分かったから。『結局お金はもらえなかったので、
     私は泉かなたさんを恨んでいます』というのが嘘よ」

みゆき「それがあなたの答えですか」

かがみ「ええ」

みゆき「私の負けですね」

つかさ「紙が落ちたけど、見てもいい?」

みゆき「どうぞ」

つかさ「――確かに当たってる。これで、お姉ちゃんが3勝6敗で1位。
     私とこなちゃんとゆきちゃんが2勝7敗だね」

こなた「『結局お金はもらえなかったので、私は泉かなたさんを恨んで
     います』が嘘ってことは……みゆきさんは、お金をもらったんだ」

かがみ「こなた、大丈夫?」

こなた「お金をもらったってことは、頃したんだ。お母さんを頃したんだ。
     ……返してよ。お母さんを返して! 返してよ!」

みゆき「きゃああっ!」

かがみ「こなた、やめなさい! やめなさいったら!」

つかさ「こなちゃん落ち着いてよ」

こなた「だって! だってみゆきさんはお母さんを――」

かがみ「それは違うわ。みゆきは泉かなたさんを頃していない。だって、
     泉かなたさんは、みゆきのお母さんなんだから」

212: 2009/12/12(土) 10:15:23.50 ID:27C4JYU0
こなた「……は?」

つかさ「ふんがー」

かがみ「こなた、落ち着いた?」

こなた「意味分かんない」

かがみ「言ったとおりの意味よ」

こなた「みゆきさんのお母さんは、私のお母さんと同じ人ってこと?
     泉かなた?」

かがみ「みゆき、そうなんでしょ?」

みゆき「はい……」

こなた「え? ええええ? おかしいよ。そんなのおかしいよ」

かがみ「混乱するのも無理はないわね。でも、それが真実だったのよ」

こなた「じゃあ何? 私とみゆきさんは異母姉妹なの?」

みゆき「はい。あなたが私のお姉さんということになります」

つかさ「あ、そういうことか……。ゆきちゃんはさっき、『父には隠し子が
     いました。他の女に産ませた子供がいました』って言ったよね。
     その隠し子っていうのは、ゆきちゃん本人のことだったんだね」

こなた「はあ? もう駄目。わけ分かんない」

214: 2009/12/12(土) 10:26:51.36 ID:27C4JYU0
かがみ「みゆきのお父さん――高良さんには、隠し子がいた。それが
     みゆきだった。みゆきの存在を理由に、高良さん夫婦の関係は
     冷え切ったものになっていた。もちろん、泉かなたさんには既に
     こなたという娘がいたから、しばらくはその妹として育てていたん
     でしょう。でも、高良さんは自分の娘として育てたくて、みゆきを
     引き取った。こなたが物心つく前に。そう考えれば、高良さんと
     みゆきが、かなたさんにお金を借りにきたときにゆかりさんが
     一緒に来なかった理由が分かるでしょ? そして、高良さんが
     かなたさんならお金を貸してくれるだろうと思った理由も」

こなた「でも、それだと『結局お金はもらえなかったので、私は泉かなた
     さんを恨んでいます』が嘘なのは、どういうことなの」

かがみ「つまりね、お金をもらえるかもらえないかに関係なく、みゆきは
     かなたさんのことを恨んでいたんじゃないかしら」

こなた「どうしてみゆきさんがお母さんを恨むの」

かがみ「だって、自分の姉であるあんたは、泉家の長女としてぬくぬくと
     育てられているのに、みゆきの家は借金地獄に陥り、血の
     繋がらない母親であるゆかりさんは自分を憎んでいる……。
     こんな状況に置かれたら、誰だって、自分は母親に捨てられた
     んだと思わない?」

こなた「そうか……。みゆきさんは、凄く苦労したんだもんね。でも、一つ
     だけ救いがある。お母さんを頃したのが、みゆきさんじゃない
     という救いが」

みゆき「……ごめんなさい。違うんです。本当にごめんなさい。私、本当は
     憶えているんです。私が、泉かなたさんを頃したんです」

215: 2009/12/12(土) 10:34:57.93 ID:27C4JYU0
かがみ「……え?」

つかさ「嘘だよね? これ、嘘だよね?」

みゆき「嘘じゃないんです……。私なんです。私が犯人なんです。私は、
     実の母親を頃してしまったんです……。ごめんなさい。ごめん
     なさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい」

こなた「みゆきさん、泣かないで。頃したって言っても、色んな意味が
     あるでしょ? 例えば、自殺に追い込んだとか、事故の原因を
     作ったとか、そういうときだって『頃してしまった』って表現を
     することがあるでしょ? 今のままだと、どういう意味なのか
     分からないよ」

みゆき「はい……。本当にごめんなさい。うわああああああああああ!」

こなた「謝るのはいいから。とにかく泣き止んで」

かがみ「このハンカチ使いなさい」

つかさ「いい子いい子」

みゆき「――も、う、大丈夫、で、す」

かがみ「大丈夫そうには見えないけど……」

みゆき「いえ、本当に、大丈夫です。ちゃんと話しますから」

こなた「じゃあ、まずはっきりさせておきたいんだけど、殺意はあったの?
     お母さんを頃したくて頃したの?」

216: 2009/12/12(土) 10:45:04.66 ID:27C4JYU0
みゆき「いえ、頃す、つもり、では、ありません、でした」

こなた「そう。よかった」

みゆき「もう怒らないんですか?」

こなた「うん。でも、どういうことだったのか、ちゃんと教えてね」

みゆき「あの後――こなたさんがドアの隙間から私達のやり取りを
     覗いていることがバレて追い出された後、お母さんが私達に
     向かって、自分を頃して欲しいと依頼したことまではお話
     しましたよね?」

こなた「そこまではさっき聞いたよ」

みゆき「私、悔しかったんです」

こなた「何が悔しかったの?」

みゆき「お母さんが私を愛してくれていないことが、悔しかったんです」

こなた「愛していないって――どうしてそんなことが言えるの」

みゆき「お母さんは、私を二回も捨てようとしていたからです。一度目は、
     私を手放したとき。そして二度目は、自ら命を絶とうとしたとき。
     愛していなかった。お母さんは私を愛していなかった。無関心
     だった。私のことなんかどうでもいいと思っていた。私に対して
     興味を持っていなかった。私を自分の娘だと思っていなかった。
     私のことを他人だと思っていた。だから私は、振り向いて欲し
     かったんです。お母さんに私のことを見て欲しかったんです」

221: 2009/12/12(土) 11:07:33.12 ID:27C4JYU0
こなた「見て欲しかった……?」

みゆき「私の存在を認めて欲しかったんです。今ここにいる私を、
     私のことを、認識して欲しかったんです。――そういうとき、
     幼い子供がやることは一つです」

つかさ「悪戯、だね」

かがみ「悪戯?」

つかさ「お姉ちゃんには分からないかな? ――うん。きっと分から
     ないだろうね。小さな子供が悪戯をして大人を困らせるのは、
     自分のことを見て欲しいからなんだよ。例えは悪いけど、
     好きな子に意地悪をする男子小学生みたいなものかな」

かがみ「ああ、それなら何となく分かるけど」

こなた「自分に注目して欲しくて、みゆきさんは悪戯をしたの?」

みゆき「はい……。でも、まさかあんなことになるなんて思っていな
     かったんです。本当です」

こなた「何をしたの」

みゆき「あの日、お母さんに追い出されるようにして泉家を出る直前、
     私はお水が欲しいと頼みました。それくらいならいいと、お母
     さんは私を台所に通しました。そのとき、一台のトースターが
     目にとまりました」

こなた「……それで?」

236: 2009/12/13(日) 11:25:00.67 ID:8PRZChE0
みゆき「お母さんはこう言いました。これは大切な人にプレゼントされた、
     大切なトースターなのよ、と。その言葉を聞いた瞬間、私の中に
     かつてない衝動が生まれました。壊してやりたい。そう思いました。
     お母さんにとって大切なものを――私よりも大切にしているものを
     この手で壊してやりたいと思いました。そんなとき、こなたさんが
     ――私の種違いの姉が、お母さんを呼びました。お母さんは私に
     お水の入ったコップを渡すと、立ち去りました」

こなた「そんなことあったっけ?」

みゆき「ありました。そして私はこう思いました。ああ、そうか。やっぱり
     お母さんは、こんなときでもお姉さんのことを優先するんだ、と。
     滅多に会えない私のことよりも同じ屋根の下で暮らしている
     お姉さんの方が好きなんだ、と」

かがみ「つかさとは微妙に違うけど、こなたにコンプレックスを持ち、親に
     愛されていないと感じているところは同じね」

みゆき「そのせいで、ますますトースターを壊したいという衝動が強くなり
     ました。いえ、本当はトースターなんかではなくお姉さんを壊して
     やりたかったのですが、さすがにそれは諦めたというところでしたが。
     しかし、ただ壊しただけでは私はひどく怒られるでしょう。どうせなら、
     お母さんの目の前で壊したいと思い、私は近くにあった白い糸を
     トースターの足に巻きつけ、開いていた窓から垂らしました。その後
     私は体よく泉家から追い出されました。そのときは父が一緒だった
     ので、糸を引っ張ることができませんでした。できたのはそれから
     数日後、再び泉家の近くまでやってきて、お父さんとは別行動を
     取ったときでした。窓から覗いてお母さんがいることを確認してから
     私は糸を引っ張りました。当時の私の身長では、お母さんが洗い
     物をしていることまでは分かりませんでした。まさかあんなことに
     なるなんて思わなかったんです」

237: 2009/12/13(日) 11:30:59.97 ID:8PRZChE0
こなた「ちょ、ちょっと待ってよ」

みゆき「どうかしましたか?」

こなた「お茶碗洗いをしているのが分からなかったって、本当なの?」

みゆき「ええ」

こなた「でも、トースターの電源コードに傷をつけたのは漏電しやすくする
     ためだったんじゃないの? 矛盾してるよ」

みゆき「それが――電源コードに傷をつけたのは、私ではないのです。
     私はただ、糸を引っ張っただけです」

つかさ「バルサミコ酢!」

こなた「ということは……みゆきさんとは別に、犯人がもう一人いるってことに
     なっちゃうのか」

かがみ「まさか――」

つかさ「お姉ちゃん、何か思いついたの?」

かがみ「……ううん、何でもない。トースターの電源が傷ついていたのは何か
     偶然だったってことはないのかしら? 例えば、包丁を落としちゃった
     のが原因とか」

こなた「それはないよ。人為的な傷つけ方だって、警察の人が言ってたもん。
     ほら、大きくなってからゆい姉さんに頼んで、姉さんの知り合いの
     刑事さんに聞いてもらったんだよ」

238: 2009/12/13(日) 11:35:47.37 ID:8PRZChE0
かがみ「そう……」

つかさ「じゃあ、こなちゃんのお母さんの事件はほぼ解決したわけだし、
     次のゲームを始めようか。ええと、次が10回目になるんだっけ?」

かがみ「そのはずよ」

つかさ「あれ?」

かがみ「どうかした?」

つかさ「お姉ちゃん、反対しないの? 毎回毎回、私がゲームを続けようと
     すると何かと理由をつけて反対するのがお約束になってたのに」

かがみ「どうせ反対しても無駄だって悟ったから」

こなた「それに、かがみは他のみんなよりリードしてるから、後一回勝つだけで
     安全圏に入れるしね」

かがみ「まあ、それもあるけど……」

つかさ「じゃあ、カードをテーブルに並べたから裏返してね」

こなた「うん。――おっと、いきなりジョーカーだった」

かがみ「私はスペードね」

つかさ「ダイヤだよ~」

みゆき「ハートでした……」

239: 2009/12/13(日) 11:42:19.69 ID:8PRZChE0
つかさ「告白者はこなちゃんで、ゆきちゃん、私、お姉ちゃんの順に質問して
     いくことになるね」

かがみ「今までのこなたの告白は泉かなたさんに関係することばっかりだった
     から、何だか新鮮ね」

こなた「じゃあ……みゆきさんからだね」

かがみ「さっきの話の直後だし、やっぱりちょっと気まずそうね」

みゆき「それは仕方がありません。では、泉さんに質問ですが」

こなた「うん」

かがみ「呼び方が泉さんに戻ったわね」

つかさ「お姉ちゃん、邪魔しないの」

みゆき「泉さんは、私を許してくれますか?」

こなた「……難しい質問だね。さっきは取り乱しちゃったけど、みゆきさんが私の
     妹で、しかもあんな事情があったって分かっちゃったから、何だかどう
     でもよくなっちゃった」

かがみ「どうでもよくなった?」

こなた「うん。それが一番近い言葉かな。結局、頃したいとまでは思ってなかった
     わけだし、あれは不幸な事故だったんだから、許すも許さないもないよ」

かがみ「あんたは……本当にそれで納得してるの?」

241: 2009/12/13(日) 11:50:24.05 ID:8PRZChE0
こなた「だって、しょうがないじゃない。どうせ、当時子供だったみゆきさんを
     法的な罪に問うことなんかできないし、それに――お母さんの方
     だって悪かったんだし。だから、みゆきさんのせいじゃないよ」

みゆき「お姉さん……」

こなた「はいはい。この質問はこれでもう終わり。私はみゆきさんを許す。
     みゆきさんは悪くない。以上」

みゆき「うっ、うっ、ごめんなさい……。本当にごめんなさい」

かがみ「ほらほら、泣かない泣かない。せっかくこなたが許してくれたのに
     台無しじゃないの」

つかさ「でも、この『私はみゆきさんを許す』というのが嘘だっていう可能性
     もあるけどね」

かがみ「せっかくいい雰囲気なのに水を差すな!」

こなた「まあまあ。次はつかさの番だよ」

つかさ「じゃあ、こなちゃんのお母さんの事件は一段落ついたわけだし、
     ずっと気になってたことを訊くよ」

こなた「うん」

つかさ「こなちゃんはお父さん……柊ただおと仲が良かったわけだけど、
     私が本当にお父さんの子供じゃないのかどうか、知ってるのかな?」

かがみ「それは――」

242: 2009/12/13(日) 11:59:43.50 ID:8PRZChE0
こなた「どうしても、知りたい?」

つかさ「うん」

かがみ「あんた、本気にしてたの? お前なんか俺の子供じゃないっていうのは、
     虐待するときの決まり文句でしょ?」

つかさ「お姉ちゃん。少し黙ってて。私はこなちゃんに聞いてるんだから」

かがみ「ごめん……」

こなた「分かった。つかさは本気で気にしてるみたいだから、言うね。お父さん
     ――もちろん言うまでもなくこの場合の『お父さん』は柊ただおの方だけど、
     お父さんに聞いたことがある。お父さんは、DNA鑑定をしたんだって」

つかさ「やっぱり本気で疑ってたんだ……」

みゆき「つかささんの髪を短く切ったのは、もちろん虐待する手段の一つだったの
     でしょうが、髪の毛を手に入れて鑑定するため、というのも理由だったの
     でしょうね」

こなた「その鑑定の結果、つかさは」

かがみ「つかさは?」

こなた「98・9パーセントの確率で、柊ただおの娘であると鑑定されたらしいよ。
     以上でつかさのターンは終わり」

つかさ「……そう。そうなんだ。私、お父さんと血の繋がった娘だったんだ」

243: 2009/12/13(日) 12:04:56.50 ID:8PRZChE0
みゆき「何だか、あまり嬉しそうな顔ではありませんね」

つかさ「うん。何か拍子抜けしちゃったっていうか、意外だっていうか……。
     それならあんなことする必要はなかったのかなっていうか」

みゆき「あんなこと?」

つかさ「ううん。何でもないの。ただ、ずっとお父さんに、お前は俺の娘じゃ
     ない、みきが浮気して作った子供なんだ、って言われ続けてた
     から、信じられないっていうか……。それより、98・9パーセント
     っていうのは何なの? どうして100パーセントじゃないの?」

みゆき「DNA鑑定というのは、100パーセント親子であると鑑定される
     ことは極めて稀なのです」

つかさ「そうなんだ。じゃあ、1・1パーセントはお父さんと血が繋がって
     いない可能性もあるんだね」

みゆき「いえ、それはないと思いますよ。それは言葉の綾に過ぎません。
     つかささんは間違いなく、柊ただおさんの娘なのですよ」

かがみ「……つかさは」

つかさ「お姉ちゃん、どうかした?」

かがみ「つかさ『は』98・9パーセントの確率で、柊ただおの娘であると
     鑑定された……」

つかさ「お姉ちゃん、何だか顔色が悪いよ?」

245: 2009/12/13(日) 12:11:51.49 ID:8PRZChE0
かがみ「つかささん『は』間違いなく、柊ただおさんの娘なのですよ」

こなた「失敗したな。かがみん、気付いちゃったんだね」

つかさ「え? 何? 何なの?」

かがみ「次は私が質問する番ね。じゃあ、質問させてもらうわ」

こなた「いいよ」

かがみ「お父さんと血が繋がっていなかったのは、つかさじゃなくて私だったん
     じゃないの?」

つかさ「――お姉ちゃん?」

こなた「柊みきさんが柊ただお以外の男とも寝ていたのは、かがみとつかさを
     妊娠した時期だった。だから、つかさだけじゃなくて、かがみも、ただおの
     血縁上の娘ではない可能性があった」

つかさ「あっ」

こなた「ただおは疑っていた。つかさだけじゃなくてかがみも。だから、かがみの
     分も一緒に鑑定してもらった。その結果」

つかさ「こなちゃん、やめて。やめてよ」

こなた「1・4パーセントの確率で、かがみは柊ただおの娘であると鑑定された」

かがみ「そう。そうなのね……。逆に言うと98・6パーセントの確率で、私は
     お父さんとは血が繋がっていないのね」

246: 2009/12/13(日) 12:19:48.74 ID:8PRZChE0
こなた「そういうことになるね。残念ながら、私が聞いたのはここまでだから、
     かがみの血縁上の父親が誰なのかまでは知らないけど。以上だよ」

かがみ「そう。ありがとう、こなた」

つかさ「待って! 待ってよ! これは嘘の告白ゲームなんでしょ? だったら、
     お姉ちゃんがお父さんの娘じゃないっていうのが嘘なのかもしれないよ!」

かがみ「いいのよ。つかさ、もういいから」

つかさ「お姉ちゃん……。ごめんね。私が無理にゲームを続けようとしたから」

かがみ「いいって言ってるでしょ。あんたは、自分がお父さんの実の娘なのか
     知りたかったからゲームを続けたがってたんでしょ? あんたは何も
     悪くないの」

こなた「じゃあ、次は、私がどの箇所で嘘をついたのか当ててね」

つかさ「決まってるよ。『1・4パーセントの確率で、かがみは柊ただおの娘であると
     鑑定された』っていうのが嘘なんだよ」

こなた「つかさ。今はみゆきさんが嘘を当てる番だよ」

つかさ「あ、そうだった。ごめんね、ゆきちゃん」

みゆき「いえ、いいんです。それでは当てますが、『残念ながら、私が聞いたのは
     ここまでだから、かがみの血縁上の父親が誰なのかまでは知らないけど』
     というのが嘘ですね。泉さんは、かがみさんの実の父親が誰なのか知って
     いるはずです」

248: 2009/12/13(日) 12:35:47.62 ID:8PRZChE0
こなた「その口ぶりだと、みゆきさんはかがみの父親が誰なのか知っている
     みたいだね」

みゆき「ええ」

かがみ「誰……? 誰なの?」

こなた「その前に言わせてね。第10回のゲームは、みゆきさんの勝ちだと」

かがみ「そんなこといいから、早く教えなさいよ!」

みゆき「分かりませんか?」

かがみ「あ――。そっか。そうだったのね」

つかさ「全然分からないんだけど」

かがみ「ヒントは既に出されていたわ。『父には隠し子がいました』って、
     みゆきは言っていた。そして、みゆきが私の実の父親を知っている
     という事実と併せて考えると――」

つかさ「そうか……。私にも分かったよ。私は勝手に、その隠し子っていうのは
     ゆきちゃん本人だと決め付けたけど、よく思い出してみると、ゆきちゃん
     は一度もそれが正しいとは言ってなかったね」

かがみ「みゆき。私の実の父親は、あんたと同じ人なんでしょ?」

みゆき「はい。そうです」

かがみ「つまり、私とあんたは異母姉妹ということになるのね」

251: 2009/12/13(日) 12:49:34.02 ID:8PRZChE0
みゆき「その通りです」

かがみ「なるほどね。こうやって事実が白日のもとに曝されてみると、みゆきが
     こなたの異父妹だと判明したときのこなたの驚きようが理解できるわね」

こなた「私とつかさは異母姉妹。私とみゆきさんは異父姉妹」

つかさ「私とこなちゃんは異母姉妹。私とお姉ちゃんは異父姉妹」

かがみ「私とつかさは異父姉妹。私とみゆきは異母姉妹」

みゆき「私とかがみさんが異母姉妹。私と泉さんが異父姉妹」

かがみ「……何か、本当に冗談みたいな関係ね、私達って」

こなた「私達四人だけで世界が完結してる、って感じだよね。永遠にループし
     続けるような」

かがみ「どうしてこんな関係になったのかしら、私達」

みゆき「父は、本当はかがみさんのことも引き取りたかったみたいです。でも、
     かがみさんとつかささんは双子でしたから、双子のどちらか一方だけを
     引き取るというわけにはいかなかったみたいですね。私のときは、母が
     私を愛していなかったこともあり、私の戸籍上の誕生日を変更してまで
     一緒に暮らしたがったのですが……」

かがみ「それに、お父さん――柊ただおは、私が他の男の娘であり、つかさが
      自分の実の娘だと知った後も虐待を続けていたわけだし……。ああ、
      狂っているわ。みんな、狂ってる」

252: 2009/12/13(日) 13:07:30.48 ID:8PRZChE0
つかさ「きっと、そのときにはもう原因と結果が逆転してたんじゃないかな。
     最初は本当に、私が自分の娘じゃないと思い込んでいたから虐待
     していた。でも、DNA鑑定をした頃にはもう、そんなことはどうでも
     よくなっていたんだよ、きっと。自分の娘であるかどうかに関係なく、
     虐待を楽しんでいたからやめられなかったんだよ」

かがみ「何でこんなことになっちゃったんだろ……」

つかさ「それはね、呪いのせいなんだよ」

かがみ「呪い?」

つかさ「そう。私達四人は、呪われているんだよ」

こなた「どういう意味?」

つかさ「それが知りたかったら、カードを捲ってね」

かがみ「ああ、うん。やっぱりゲーム続けるのね」

つかさ「途中でやめたら、私達にも呪いが降りかかるよ?」

かがみ「意味が分からないけど、どうせ後3回だし、こうなったら早く終わらせ
     たいから反対しないでおくわね」

こなた「そうだね。残り3回なんだし、ここまで来たら最後まで続けたいよね。
     みゆきさん、今までの成績はどうなってるんだっけ?」

みゆき「私とかがみさんが3勝。泉さんとつかささんが2勝です」

253: 2009/12/13(日) 13:15:28.20 ID:8PRZChE0
こなた「よし、ここで逆転するぞ。――ダイヤだった」

みゆき「私はまたしてもハートでした」

かがみ「ジョーカーよ」

つかさ「私はスペード。ということは、お姉ちゃんが告白者で、ゆきちゃん、
     こなちゃん、私の順に質問することになるね」

かがみ「ええ。みゆき、いつでも質問していいわよ」

みゆき「では、早速……。かがみさんは、私のことを妹として認めてください
     ますか?」

かがみ「ええと」

つかさ「ええと?」

かがみ「正直、今まで私にとっての妹ってつかさしかいなかったし、それに
     つかさと違ってみゆきって妹タイプじゃないわよね」

みゆき「そうですか……」

かがみ「こらこら、話は最後まで聞きなさいよ。でも、私のうちって元々四人
     姉妹だったし、今さら一人くらい増えても困らないわ。これからも
     よろしくね、みゆき。姉としてあんたの手本になれるかどうかは
     分からないけど、困ったことがあったらいつでも相談してね。例えば、
     お父さんの宗教のこととか。以上」

みゆき「は、はい! ありがとうございます」

255: 2009/12/13(日) 13:23:25.82 ID:8PRZChE0
こなた「次は私の番だね」

かがみ「ええ」

こなた「お父さん――あ、この場合のお父さんっていうのは泉そうじろうのこと
    だけど、お父さんって、子供を作ることができないのかな?」

かがみ「どうして、私にそんなことを訊くの?」

こなた「だって、お父さんはお母さんと結婚してたのに、他の二人の男にお母さん
     を寝取られてるし、かがみとお父さんはSMプレイを楽しむような仲なのに、
     かがみは処Oだって言い張るし……。これらのことは、お父さんが子供を
     作ることができないという伏線なんじゃないかと思って」

かがみ「伏線とか言うな」

こなた「それより、ちゃんと答えてよ。かがみが質問に答える番なのに、私ばっかり
     喋ってるじゃん」

かがみ「はいはい。あんたの想像通りよ。そうじろうは子供を作ることができません。
     精0が作られないとかいうタイプじゃなくて、そもそもあれが勃たないのよ」

こなた「ふうん。そうだったんだ……。それなのに、どうしてお父さんとお母さんは
     結婚したんだろ」

かがみ「そんなの知らないわよ。もういいでしょ? 『以上』よ。最後はつかさね」

つかさ「じゃあ、訊くよ。泉かなたさんのトースターの電源コードを傷つけたのは、
     お姉ちゃんなんでしょ?」

257: 2009/12/13(日) 14:08:58.28 ID:8PRZChE0
かがみ「そんなわけ、ないでしょ」

つかさ「それがお姉ちゃんの答え?」

かがみ「ええ。そんなことより、どうしてあんたはそんな突拍子もないことを
     考えたの?」

つかさ「うーん……。強いて言えば、何となく、かな」

かがみ「何となくで私を疑ってるの?」

つかさ「ほら、いつもは勘のいいお姉ちゃんが、かなたさんの事件のことに
     関してだけ、妙に頭の回転が鈍くなったり、顔色が悪くなったりしてたし」

かがみ「それだけで」

つかさ「それだけじゃないよ。決定的だったのは、お姉ちゃんがゆきちゃんの
     異父姉だと判明したことだった」

かがみ「それが何か関係あるの?」

つかさ「あははははは。本当にあの事件のときだけ頭の回転が遅くなるんだね。
     分かりやすいなあ」

かがみ「いいから答えなさいよ!」

つかさ「つまり、お姉ちゃんには動機があった、ってことだよ。泉かなたさんは
     『お姉ちゃんの』お父さんに、自分を頃したらお金をあげると言っていた
     らしいから」

258: 2009/12/13(日) 14:15:48.20 ID:8PRZChE0
こなた「本当だ――。気付かなかった。かがみにも、お母さんを[ピーーー]動機が
     あったんだ」

かがみ「こなたまで、何を言ってるのよ」

みゆき「かがみさん」

かがみ「何よ。みゆきまで私を疑ってるの?」

みゆき「そうではなくて、まだ『以上』と言ってませんよ」

かがみ「あ、そうか。あまりにとんでもないこと言われたから、忘れてたわ。
     つかさに対する告白は、以上よ」

つかさ「じゃあ、紙に書いて」

かがみ「――書いたわよ」

こなた「これで、三人の質問が終わったね。次は、みゆきさんからかがみが
     嘘をついた箇所を当てることになるけど――もう、どこが嘘なのか
     バレバレだよね」

みゆき「そ、そうですか?」

こなた「うん。遠慮せずに言っちゃえばいいよ」

みゆき「ええと……泉そうじろうさんが子供を作ることができないというのが
     嘘ですか?」

こなた「みゆきさん。かがみが姉だから、わざと外したでしょ……」

259: 2009/12/13(日) 14:22:49.92 ID:8PRZChE0
みゆき「そ、そんなことないですよ」

こなた「もういいよ。実は姉妹だったって分かったばっかりだから、かがみを敵に
     回したくないというみゆきさんの気持ちも分かるし」

かがみ「何で私が答える前に不正解だって決め付けるのよ」

つかさ「じゃあ、ゆきちゃんが指摘したところが嘘だったの?」

かがみ「違うけど……」

こなた「ほらね。やっぱり」

かがみ「言いたいことがあるなら、はっきり言いなさい」

こなた「つかさの質問に対して『そんなわけ、ないでしょ』、つまり、自分は私の
     お母さんのトースターの電源コードを傷つけた犯人ではないと言った
     のが嘘なんだ!」

かがみ「……そうよ」

みゆき「かがみさん」

かがみ「私がやったのよ。でも、私はそんなつもりじゃなかった。まさか、あの
     ときの行為がそんな残酷な結果に結びつくなんて、想像すらできな
     かったのよ……。実際、第1回のゲームのときに、こなたが泉かなた
     さんの事件のことを話したときだって、あのときのあのトースターが、
     問題のトースターだったなんて全然気付かなかった!」

つかさ「お姉ちゃん。最初から話してみて」

262: 2009/12/13(日) 19:09:20.36 ID:5P0v1o60
かがみ「信じてもらえないかもしれないけど」

つかさ「いいから、話してよ」

かがみ「うん。私には、小さい頃からよく私に会いに来る『知らないおじさん』が
     いたの」

こなた「名前とかは訊かなかったの?」

かがみ「うん。本当に、物心つく前からこっそり密会し続けていたし、今さら
     名前を訊くのも変だよね、って雰囲気だったから」

つかさ「お姉ちゃんは、その『知らないおじさん』とこっそり会っていることを誰にも
     相談しなかったの?」

かがみ「ええ。彼は、いつも私に美味しいものをご馳走してくれたり、遊園地とか
     水族館とか、楽しいところに連れて行ってくれたから」

こなた「一歩間違えば変質者だよ、それ」

かがみ「今にして思えばそうなんだけどね。当時は分からなかった。ただし、
     小学校に上がってからは私もだんだんそういうことが分かりかけていて、
     もう会うのはやめましょう、って言った。そしたらおじさんは凄く悲しそうな
     顔をしていたけど、本当にしばらく会いに来なかった。しかし、再び私の
     前に現れたとき、おじさんは古びたトースターを抱えていた」

みゆき「トースターを」

かがみ「おじさんは、このトースターのコードをカッターナイフで傷つけて、導体を
     剥き出しにして欲しいと私に頼んできた」

264: 2009/12/13(日) 19:18:05.95 ID:5P0v1o60
つかさ「そんなことを頼むなんて、変だと思わなかったの?」

かがみ「思ったわよ、もちろん。だから私も、どうしてそんなことをしないと
     いけないの、って尋ねたわ。そうしたら、おじさんはこう答えた。
     私は家電製品のリサイクルをして生計を立てている。しかし、この
     通り手を怪我してしまったからお嬢さんに手伝って欲しいんだ、って」

みゆき「手を怪我、ですか?」

こなた「みゆきさん、何か思い当たることがあるの?」

みゆき「はい。私の父は、当時既に例の宗教の人達に殴る蹴るの暴行を
     受けていました。顔を庇おうとすると、手を怪我しますよね?」

こなた「ああ、なるほど。関係ないことを上手く結びつけたわけだ」

つかさ「それで、お姉ちゃんはその頼みをきいたの?」

かがみ「ええ。だって、おじさんはいつも私に優しかったし、これまでたくさん
     楽しませてもらったという恩があるから、それくらいなら手伝って
     あげよう、と思ったの。だけどまさか、殺人の片棒を担がされていた
     なんて――」

こなた「自分が柊ただおと血が繋がっていないと知っても平然としていたのは、
     その『知らないおじさん』が実の父親なんじゃないか、って薄々感
     づいていたからだったんだね」

かがみ「そうよ。……こなた、本当にごめんなさい! もっと早く言うべきだ、
     って分かってたのに。気付いたときにすぐ言うべきだったのに。
     お母さんを頃してしまってごめんなさい……」

265: 2009/12/13(日) 19:26:40.36 ID:5P0v1o60
こなた「顔を上げてよ、かがみん。私、怒ってるわけじゃないから」

かがみ「でも、私が」

こなた「悪くないよ。かがみが悪いんじゃないよ」

かがみ「みゆきは、こなたの妹だから許すのは分かるけど、どうして血が
     繋がっていない私のことまで許してくれるの? ――ああ、そう言えば
     みゆきにも謝らないとね。ごめんなさい!」

みゆき「いいんです。かがみさんは、ただ父に利用されただけです。悪いのは
     父ですから」

こなた「そうだよ。かがみんとみゆきさんの話を聞いて、ようやく真相が見えて
     きたから、むしろ感謝してるんだよ? 私の推理によると、きっとこういう
     ことだったんだろうと思う。みゆきさんがトースターに糸を結びつけた
     ところを、みゆきさんとかがみのお父さんは目撃していたんだよ。そして
     これは使えると思った」

かがみ「使えるって、どういうこと?」

こなた「罪の意識が軽い状態でお母さんを殺せると思ったんだよ。みゆきさんは
     こう言っていたよね? 『私は近くにあった白い糸をトースターの足に
     巻きつけ、開いていた窓から垂らしました』って」

つかさ「それがどうかしたの?」

こなた「窓は開いていた。その傍に、トースターが置かれていた。子供は背が
     低いから、外からトースターを取ることはできないけど、大人の身長なら
     余裕だよね」

266: 2009/12/13(日) 19:37:18.24 ID:5P0v1o60
つかさ「なるほど」

こなた「みゆき達のお父さんは、そうやって外からトースターを手に取った。
     もちろん、そのときに一旦白い糸は外したんだろうね。そして、彼は
     トースターを持ってかがみの前に現れ、電源コードをかがみの手に
     よって傷つけさせた」

かがみ「あの人はどうしてそんな回りくどいことをしたの?」

こなた「きっと、不公平だと思ったんじゃないかな」

かがみ「不公平……」

こなた「みゆきさんだけに手を汚させるのは不公平だと思った。みゆきさんは
     苦渋の決断を下したのに、その姉であるかがみが何もしないのは、
     みゆきさんが可哀想過ぎると思ったんだよ。だから、彼はわざと
     かがみを巻き込んだ」

つかさ「だけど、まだ不自然なところがあるよね。トースターが消えたことに
     こなちゃんのお母さんが気付いたらおかしいと思うはずなのに、実際
     にはそうなっていない」

こなた「ああ、それは簡単なことだよ。お母さんも一枚噛んでいただけの話。
     そもそも、トースターっていうのは毎日使うものなのに、何日も糸が
     結び付けられているのに気付かないなんてことがあるわけないでしょ?
     お母さんは、氏にたがっていた。誰かに頃してもらいたがっていた。
     だから、わざと見て見ぬふりをしていたんだよ。そして、運命の日、
     みゆきさん達のお父さんは、わざと私の家の近くに来てから、みゆき
     さんと別行動を取った。あの糸を引かせるためにね。つまり――結局、
     あれはお母さんの自殺だったんだよ」

267: 2009/12/13(日) 19:46:48.46 ID:5P0v1o60
かがみ「自殺」

こなた「そう。あれは自殺だった。だから、かがみんもみゆきさんも、自分が悪い
     なんて思う必要はない!」

つかさ「きれいに纏めたね」

かがみ「こなた……!」

こなた「いきなり抱きつかないでよ、かがみん」

かがみ「だって……」

こなた「いつもは私が抱きつく方だから、逆になると調子が狂うんだよ」

つかさ「さて、こなちゃんのお母さんの事件がようやく解決したところで、第12回
     のゲームを始めようか」

みゆき「もう12回目なんですね。最初のときはもう終わらないかと思いましたが、
     後2回しかないんですね」

かがみ「そうね。今の成績はどうなってたっけ?」

みゆき「私とこなたさんとかがみさんが3勝。そして、つかささんが2勝です」

つかさ「私が最下位かあ。今から2連勝しないと罰ゲームを受けることになっ
     ちゃうね」

かがみ「あんたが言い出したことだから仕方ないわよ。じゃあ、カードを捲って
     ちょうだい」

268: 2009/12/13(日) 19:53:21.56 ID:5P0v1o60
こなた「私はダイヤだよ」

みゆき「スペードです」

つかさ「ジョーカーだった」

かがみ「私はハート。つまり、つかさが告白者で、私、こなた、みゆきの順に
     質問していくことになるわね」

つかさ「うん」

かがみ「じゃあ質問するわよ。さっきも同じことを訊いたけど、つかさが告白
     する番になるまで待てって言われてた質問。――つかさは、誰に
     このゲームのことを教えてもらったの?」

つかさ「――お父さん」

みゆき「お父さんって、柊ただおさんのことですか?」

つかさ「うん。こなちゃんやお姉ちゃんと違って、私にはお父さんと呼ぶ相手は
     一人しかいないからね。この嘘の告白ゲームは、お父さんから教えて
     もらったんだよ」

かがみ「でも、あんたはお父さんに虐待されているんじゃ――」

つかさ「このゲームを教えることそのものが、虐待の一環だったんだよ」

かがみ「ゲームを教えることが虐待。意味が分からないわ」

269: 2009/12/13(日) 20:01:47.06 ID:5P0v1o60
つかさ「思い出してみて。お姉ちゃん達も不思議がっていたでしょ?」

かがみ「何を」

つかさ「どうして私達はこんな関係になったのか、って。まるでループするような
     形の異父姉妹や異母姉妹になっているのか、って」

かがみ「それが、このゲームのせいだって言うの?」

つかさ「罰ゲーム」

かがみ「まさか――」

つかさ「私達の存在は、罰ゲームが生み出したものだった」

みゆき「ということは、私達のお父さんやお母さんは」

つかさ「私達が生まれる前に、彼らはこのゲームをやった。正確には、ゲームを
     やったのは、柊ただお、柊みき、泉かなた、泉そうじろう、高翌良ゆかり、
     そしてお姉ちゃんとゆきちゃんのお父さんの、合計6人だった」

こなた「そして、その中の何人かが罰ゲームを受けることになった……?」

つかさ「そう。罰ゲームの内容は、一人一人違っていたけど、例えば、誰々と結婚
     する、とか、誰々の子供を産む、とか、とんでもない内容だったんだと思う」

かがみ「信じられない……」

つかさ「私だって、最初に聞いたときは信じられなかったよ。そして、自分自身の
     存在を呪った。――ね? これは虐待でしょ?」

271: 2009/12/13(日) 20:11:18.86 ID:5P0v1o60
こなた「『私達は呪われている』という、つかさの言葉の意味が分かったよ。
     そして、これでようやく、お父さん――泉そうじろうとお母さんが結婚
     した理由も分かった」

かがみ「こなたは、こんな荒唐無稽な話を信じるの?」

こなた「だって、信じるしかないじゃん。私達の関係は、いくらなんでも無茶
     苦茶すぎるし。いっそ、ゲームのせいなんだ、って言われた方が
     納得できるよ」

かがみ「それはそうかもしれないけど……」

つかさ「誰にこのゲームを教えてもらったのか、という質問は以上で終わり」

みゆき「次はこなたさんの番ですね」

こなた「どうしようかな……」

かがみ「何を悩んでるの?」

こなた「これを訊いてもいいのかどうか……。つかさは、柊ただおのことを
     どう思ってる?」

かがみ「え? それは何度もつかさの口から聞いたでしょ?」

つかさ「――もう何とも思ってない。以上」

かがみ「もう終わり? 何なの? こなたは何を確認したかったの?」

つかさ「次はゆきちゃんだよ」

275: 2009/12/13(日) 20:57:30.48 ID:5P0v1o60
みゆき「そうですか……。最初からおかしいとは思っていましたが、そういうこと
     だったんですね」

かがみ「え? みゆきまで、何言ってるの?」

みゆき「つかささんに質問します」

かがみ「三人揃って無視かよ」

みゆき「もしかして――柊ただおさんは、もう氏んでいるのではありませんか?」


かがみ「 は あ ? 」


つかさ「そんなわけないでしょ。もしもお父さんが氏んでるならお姉ちゃんが
     知らないはずがないし、今頃大騒ぎになっているはずだよ。以上」

かがみ「そうよね……。お父さんが氏んでるなんて、そんなわけないわよね」

こなた「かがみん、ストップ」

かがみ「何よ」

こなた「かがみん、今、携帯電話を取ろうとしたよね」

かがみ「お父さんに電話しようと思って――」

こなた「駄目だよ。携帯で不正をしないように、全員の目の届くところに置いて
     おき、手を触れちゃいけない、って約束だったでしょ」

276: 2009/12/13(日) 21:06:46.28 ID:5P0v1o60
かがみ「ああ……。あんたは、このときのために、携帯をみんなの見える位置に
     置いておこうなんて言い出したのね」

こなた「何を言ってるのか分からないなあ、かがみん」

かがみ「もういいわ。お花畑の住人である私にも、ようやく、このゲームの目的が
     見えてきたから」

つかさ「お姉ちゃん……」

かがみ「さあ、こなたが嘘を当てる番でしょ? 言えばいいわよ」

こなた「つかさ、ごめんね」

つかさ「ううん。もういいの。お姉ちゃんも、やっと分かってくれたみたいだし」

こなた「じゃあ、言うよ。さっきつかさが三番目に『告白』したことが、すべて嘘だ。
     柊ただおは氏んでいる」

かがみ「私がそのことを知らないのは、隠したからね。つかさが――。そして
     おそらく、こなたも一枚噛んでいる」

つかさ「正解だよ。あーあ、これでこなちゃんが4勝、お姉ちゃんとゆきちゃんが
     3勝、私が2勝だね。残りのゲーム数はたったの1回だから、もう私には
     勝ち目がなくなっちゃったね。あはははは……」

かがみ「そう。それこそが、つかさがこのゲームを続けたがっていた本当の理由
     だったのね? つかさは、罰ゲームを受けたがっていた。罰を与えられ
     たがっていた。最初から自分が勝つ気なんてなかった。……そういうこと
     だったのね」

280: 2009/12/13(日) 21:27:34.26 ID:5P0v1o60
つかさ「うん」

かがみ「お父さんは、いつ氏んだの? ――いいえ、あんたはいつお父さんを
     頃したの?」

つかさ「もう五時間……ううん、六時間くらい前になるかな」

かがみ「虐待されていたことが原因だったの?」

つかさ「うん……。いつものようにお父さんにひどいことを――性的な虐待を
     受けていたんだけど、私、思っちゃったんだよね。四人姉妹の中で
     どうして私だけがこんな扱いを受けないといけないんだろう、どうして
     私だけがお父さんのおちOちんを咥えないといけないんだろう、私と
     お姉ちゃん達と何が違うんだろう、どうして私だけなんだろう、って。
     そう思ったら頭の中が真っ白になって――気がついたらお父さんが
     血まみれになって倒れていた。無我夢中になっている間に、傍に
     あった刃物――お父さんがいつも私を脅すのに使っている刃物で、
     刺しちゃったみたい。私はすぐに救急車を呼ぼうとした」

こなた「それを私が止めた」

かがみ「こなたが?」

こなた「私は、お父さんがつかさをいじめていることを知っていた。そして、
     つかさに嫉妬していた。どうして私じゃないんだろう。私とつかさの
     何が違うんだろう。同じ姉妹なのに。どうしてお父さんは私を選んで
     くれないんだろう、ってそう思っていた。だから、今朝も陰からお父
     さん達の様子を陰から窺っていたんだ。そして、つかさがお父さんを
     刺したのを見て、私が部屋に乱入した」

281: 2009/12/13(日) 21:36:51.14 ID:5P0v1o60
みゆき「そうでしたか。第1回の『告白』のときに泉さんが嘘をついた箇所は、
     『お父さんと結ばれた』という部分だったんですね」

こなた「うん。お母さんが氏んだのに、お父さんは約束を守ってくれなかった。
     私を愛してくれなかった。だから私はお父さんを、そしてつかさのことを
     恨んでいた。そして、つかさがお父さんを刺すのを見たとき、これは
     チャンスだと思ったんだ」

かがみ「チャンス……?」

こなた「うん。お父さんから解放されるチャンス」

かがみ「でも、あんたはお父さんが好きだったんでしょ?」

こなた「好きだったけど、同時に憎んでいた。この気持ちは誰にも理解できない
     と思う。どうせ私のものにならないならいっそ――っていう感じかな。
     つかさはお父さんを刺したけど、それは致命傷ではなかった。すぐに
     救急車を呼んで応急措置を施していれば、助かったと思う。でも、私は
     それを止めた。私はつかさと一緒に、お父さんが出血多量で氏ぬのを
     何十分も見守っていた」

つかさ「お父さんは、最期に謝ってくれたよ。私とこなちゃんに。今まですまな
     かった、本当に悪いことをした、俺が悪かった、って……。謝るくらい
     なら、最初からあんなことしなければよかったのにね」

こなた「刺したのはつかさだけど、頃したのは私だった」

つかさ「それは違うよ。こなちゃんに説得されて、私も了承したんだから」

かがみ「その後、お父さんの氏体をどうしたの?」

285: 2009/12/13(日) 21:52:55.52 ID:5P0v1o60
こなた「とりあえず、そのままにはしておけないから、大きな旅行鞄を家から
     持ち出して、ビニール袋に詰めたお父さんを鞄に入れて持ち帰った。
     お父さんは小柄だから、余裕だったよ」

つかさ「こなちゃんが泉家にお父さんを運んでくれている間、私は血を拭き
     取って、凶器の包丁を処分した」

かがみ「じゃあ、氏体はまだ処分していないのね……?」

こなた「うん」

かがみ「そんな事件があったのに、こんなゲームをやろうって言い出したの?」

つかさ「事件があったからこそ、だよ。これが、お姉ちゃん達と――私の大切な
     人達と遊べる最後のチャンスだったから」

かがみ「そう……。じゃあ、第十三回、最後のゲームをやりましょうか」

つかさ「えっ? いいの?」

かがみ「やりたいんでしょ?」

つかさ「うん……。どうせ、私が罰ゲームを受けることは確定してるけど、ここまで
     きたんだから続けたい。――ねえ、お姉ちゃん。お父さんを頃しちゃって、
     ごめんね」

かがみ「そのことは言わないで。あんたが虐待されているのを止めていれば、
     こんなことにはならなかったんだから。さあ、カードを捲って」

つかさ「ええと、ハートだった」

286: 2009/12/13(日) 21:57:06.36 ID:5P0v1o60
みゆき「ダイヤです」

こなた「スペード」

かがみ「私がジョーカーね。じゃあ、つかさから質問して」

つかさ「お姉ちゃん」

かがみ「何?」

つかさ「私のこと、好き? 今の正直な気持ちを教えて」

かがみ「――大嫌いよ」

つかさ「えっ」

かがみ「私はつかさが大嫌い。以上よ」

つかさ「うん……」

みゆき「かがみさんは、私のことが好きですか?」

かがみ「大好き。以上」

こなた「かがみんは私のこと好き?」

かがみ「大好きよ。以上。さあ、つかさ。あんたが嘘を当てる番よ。どれが嘘
     なのか分かる?」

つかさ「……お姉ちゃん、ありがとう」

289: 2009/12/13(日) 22:08:18.61 ID:5P0v1o60
かがみ「いいの。それより、みゆきまで巻き込んじゃってごめんね」

みゆき「いえ、これでよかったんですよ。つかささん一人にだけ罰ゲームを
     受けさせるのは可哀想ですから」

つかさ「私を大嫌いっていうのが、嘘……?」

かがみ「ええ、そうよ。これで、私とつかさとみゆきの三人が罰ゲームを
     受けることになったわね」

こなた「何か私、悪役みたいだね」

かがみ「そんなことないわよ。じゃあ、罰ゲームを書いた紙を開きましょうか」

つかさ「うん。――あっ、これ、お姉ちゃんの字だ」

かがみ「何て書いてある?」

つかさ「『他のみんなを助けること』って書いてある。何これ。罰ゲームでも
     何でもないじゃない」

かがみ「そういうつかさの書いた紙には、『みんなと仲良くすること』って
      書いてあるけど?」

みゆき「泉さんの紙にも『姉妹全員助け合って生きていくこと』なんて書いて
     ありますよ」

こなた「みゆきさんの紙には、『このゲームで話した秘密は絶対に他の人
     には漏らさないこと』なんて書いてある。なーんだ。結局、四人とも
     まともな罰ゲームをやらせるつもりなんかなかったのか」

290: 2009/12/13(日) 22:15:25.93 ID:5P0v1o60
つかさ「これじゃあ、勝っても負けても同じだね」

かがみ「いいえ。同じじゃないわ。この罰ゲームのおかげで、私はつかさと
     こなたを助けることができる」

こなた「助けるって――」

かがみ「お父さんの氏体を隠しましょ。みんなで。氏体さえ見つからなければ
     警察が動くこともないし、つかさやこなたが逮捕されることもない」

つかさ「お姉ちゃん、いいの?」

かがみ「ええ。関係ないみゆきを巻き込むのは申し訳ないけど……」

みゆき「私だけ仲間外れにしないでください。ここまで聞かされておいて、
     関係ないことなんてないでしょ? それに」

こなた「それに?」

みゆき「私とかがみさんは、泉かなたさんを頃しました。そして、つかささんと
     泉さんは、柊ただおさんを頃しました。――私達は、みんな人頃しです。
     そして、複雑な関係ではあるけど、姉妹でもあります。助けるのに、
     これ以上の理由なんかいりません」

かがみ「じゃあ、さっそく、四人でこれからの対策を話し合いましょうか。
     大丈夫。四人で考えれば、きっと、どんな困難も乗り越えられるわよ。
     四人で、力を合わせて生きていきましょう」


                 ―― 完 ――

292: 2009/12/13(日) 22:17:34.93 ID:R4hkRngo

引用: つかさ「お姉ちゃん、こなちゃん、ゆきちゃん、ゲームをしようよ」