1: 2014/08/14(木) 19:07:15 ID:xpSU8.ck
龍「……静かだな」

龍(最近は体が重くこの森の奥に寝たきり。儂ともあろうものが……少しばかり生き過ぎたか)

龍(土に還ることに刃向かう気はない。そうして命は巡るのだ。しかし…)

龍(最後に、あの娘に一目会いたい)ギュッ

龍「この赤い靴を残して行った、あの娘に……」ググッ
小林さんちのメイドラゴン : 16 (アクションコミックス)
2: 2014/08/14(木) 19:18:10 ID:xpSU8.ck
ズシン ズシン

龍(体がなかなか思うように動かんな……ん、あやつは…)

妖精「あらあら珍しい、龍が歩くところを見るのは何十年ぶりかしら?」ヒラヒラ

龍「……お前は」

妖精「あらあらお忘れ?私もこの森に住んで長いのに」

妖精「なぁに?その素敵な赤い靴。あなたには些か可愛すぎるんじゃあないかしら」クスクス

龍「…この靴の持ち主を知らぬか、小さな小さな人間の娘だ」

妖精「さぁ?たまに森を抜けて遊びに行くけど、心当たりは無いわね。
だいたい、そんな靴今どき珍しいんじゃないの?」

龍「……そうか」ズシン ズシン

妖精「あらあら、もう行っちゃうのね。まぁせいぜい無理しないことねぇ」

3: 2014/08/14(木) 19:31:50 ID:xpSU8.ck
龍(しばらく横たわっている間に、これほどに森は変わるのか)

龍(見慣れない木ばかりだ…)ズシン ズシン




コマドリ「龍だ、龍だ」

ハツカネズミ「珍しいね、珍しいね」

ガマガエル「久しぶりに誰か来たのかもしれないね」




龍(儂が森から出るわけには行かない。誰かに訪ねていく他あるまい)ズシン ズシン

4: 2014/08/14(木) 20:03:38 ID:xpSU8.ck
金髪「あぁ」

龍(これはめずらしいものに会った)

金髪「ドラゴンは初めて見られました。それはどこへ行くのですか」

龍「この靴の持ち主を探している。心の優しい、人間の娘だ」

金髪「私は知りません。技がその前にあなたを知らないので」

龍「……なんだお前は。この森のものではないな」

5: 2014/08/14(木) 21:33:17 ID:xpSU8.ck
金髪「あぁ」

龍(これはめずらしいものに会った)

金髪「ドラゴンは初めて見られました。それはどこへ行くのですか」

龍「この靴の持ち主を探している。心の優しい、人間の娘だ」

金髪「私は知りません。私がその前にあなたを知らないので」

龍「……なんだお前は。この森のものではないな」

6: 2014/08/14(木) 22:44:34 ID:dWgFgR7A
金髪「ちょうどそのように。 私が何も知らない行方 不明の子どもであるので」

龍「こんなに霧の深い森だ、幽霊すら迷う……何の用で来たのだ」

金髪「私は単に居眠りをしていました。 そして、それは心配させられました、卵隠しは行きました、どこに……」

龍「そんなものは見なかったぞ」

7: 2014/08/14(木) 23:19:21 ID:dWgFgR7A
金髪「本当? しかし、それはよいです。 それがそのような状況へ慣れているので。
それは今回奇妙なクリケットに招待されないのがよいものですが」ニコ

金髪「長い間止めて、私はすまなく思います。
あなたがあなたの大切な人物に会うのは素晴らしいことです。さようなら」タタッ

龍「行ってしまったな……卵隠しとやらもいないのに」

龍「……さて、儂もまた歩かねば。何に尋ねるのがよいか…」ズッ

8: 2014/08/15(金) 00:23:59 ID:E48zmf96
龍(…ん?なんだあれは。生き物達がやけに集まっている)ズシン ズシン

龍「……何があったのだ?」


ツグミ「誰が頃したんだ」シクシク

クモ「この矢はスズメだ、ズズメがやったのさ」

カブトムシ「可愛そう、可愛そうなコマドリ」シクシク

フクロウ「悲しいねぇ、痛かったろうにねぇ」


ガザッ


龍(何か歩いてくる……)

9: 2014/08/15(金) 00:32:32 ID:E48zmf96
エルフ「あぁ、ここに落ちたか」スタスタ


バサッ カサカサ


龍(生き物たちが逃げてゆく…)


龍「スズメのご登場というわけか」

エルフ「クックロビンを射頃すのはスズメだと相場が決まっているからな」ヒョイ

エルフ「…思ったより小さいな」

10: 2014/08/15(金) 00:44:46 ID:7uWFwi76
龍「……」

エルフ「なんだ?森の主として、殺生は許せませんってか?」

龍「いや。それが自然の摂理というものだ」

エルフ「そういうことだ。食べるのは仕方ないし、食べられるのもまた仕方ない」

エルフ「そうしなければ俺たちエルフだってすぐに氏ぬ。まぁいくら健康でもあんたのように長くは生きないがな」

エルフ「で、長い間岩みたいにうずくまってたあんたが今更、何しにどこへ行こうってんだ」

11: 2014/08/15(金) 14:35:18 ID:NFPOR5OQ
龍「人間の娘を探しているのだ…か弱い非力な人間の娘だ。もう儂は長くはない…最後に一目会いたいのだ」

エルフ「はっ、女の子に会いたいだと?人喰いの化け物が随分と丸くなったな」フン

龍「何を……儂は今まで、人間など喰ったことは…」

エルフ「……生き過ぎてボケたか?お前は…まぁいい」

エルフ「お前が持ってる赤い靴は、その娘のものって訳か」

龍「……あぁ、そうだ」

12: 2014/08/15(金) 14:48:47 ID:NFPOR5OQ
エルフ「……その娘は、どこへ行った」

龍「わからぬ…娘が森に来たのも、もう数十年も前だ……」

エルフ「……そうか」

龍「儂はずっと待っていた…もしかしたら、その娘がもう一度森へ来るのではないのかと。
結局、娘は来なかった。だが儂は……」

龍「儂はもう一度、あの娘に会いたいのだ。あの優しい娘の美しい歌を最後に…聞きたいのだ」

エルフ「…………そうかよ。悪いが他当たれ、俺はそんな奴知らないな」

13: 2014/08/15(金) 14:57:03 ID:NFPOR5OQ
龍「……本当か?」

エルフ「は?」

龍「本当に、お前はあの娘を知らないのか?」

エルフ「……腐っても龍ってわけか。そんなところは変わらないか、皮肉めいてるな」フン

エルフ「……知らないほうが良いことだってある。満足いくまで、氏ぬまで探せばいいさ、そしてそのまま、土に還れ」

龍「……お前は何を知っているというのだ」

エルフ「お前が何も知らないだけだ」

14: 2014/08/15(金) 15:38:43 ID:NFPOR5OQ
エルフ「そんなに気になるなら、妖精にでも聞けばいい。あいつらなら知ってることは教えてくれるだろうよ」

龍「……妖精か。それも良いだろう。だが、お前に…」

エルフ「おっと、これでおしまいだ。俺はもう行く。お前には付き合いきれねェよ。
俺のことも……覚えてないんだろう」ハッ

龍「……?」

エルフ「じゃあな、もう会うこともないだろう……せいぜい、満足のいく最期を目指すんだな」ザッ

龍(どこへ行った……完全に気配が消えた)

龍「また、別の奴を探す他あるまい……」ズシン ズシン

16: 2014/08/22(金) 17:06:19 ID:Pdx2nCvA
龍(体が重い…)ズシン ズシン

龍(ああ、体が痛い…儂はこんな思いをして、何処へ行こうと言うのだ。何をしようというのだ…) ズシン

龍「……」

龍(……ここは)

龍(この湖は、なんだったか?とても大切な場所だった気がする。とても……)

龍「最後に此処へ来たのは、いつだったか…」

17: 2014/08/22(金) 17:20:37 ID:Pdx2nCvA
龍(……?湖のほうから声が聞こえる。霧が深くて良く見えんな…)ズシン

???「♪One misty, moisty morning, When cloudy was the weather, I chanced to ...」

龍「……!」

龍「此処か、此処にいたと言うのか…!!」

???「♪...meet an old man Clothed all in leather.
He began to compliment, And I ...」

龍「おお、愛しい子!もっと近くで聞かせておくれ…!」ズシン

18: 2014/08/22(金) 17:29:18 ID:Pdx2nCvA
???「♪...began to grin How do you do...」

龍「ああ、可愛い子…姿をよく見せておくれ」ズシン

???「……」

龍(眼を開けていられん…どうしてだ、とても瞼が重い)ズ...

龍(それに、とても暖かくて…懐かしい)

龍(儂は…儂は何をしていたんだったか?)

龍(……もう、いいか。そんな事…)

龍(いくら探しても見つからないわけだ。ずっと此処にあった、ずっと此処にしかなかった…)

龍「……もうお前は、儂のなかにしかいなかったのだ」

19: 2014/08/22(金) 17:35:42 ID:Pdx2nCvA
霧の森には行っちゃ駄目よ。

あそこは遊ぶところじゃないの。

霧の森はお願いをするところ。

ずっとずっと昔から、あの森には神様がいるのよ。

神様に贈り物を渡して、お願いをするの。

お砂糖にスパイス、そして素敵なものをいっぱい持っていくのよ。ぼろきれやかたつむり、子犬のしっぽなんかじゃ駄目なんだから。

神様がぺろりと贈り物を平らげたら、きっと願いを叶えてくれるわ。

だから、霧の森には行っちゃいけないの。








おしまい

20: 2014/08/22(金) 17:37:32 ID:Pdx2nCvA
忘れられることは辛いけど、忘れることはもっと辛いのでしょうね。
そのくせ昔のことは鮮明に覚えていたり。へんな声が聞こえたりしてね。

長く生きてるとしかたないのでしょうか、そんな話。

引用: 霧の森には神様が住んでいる