443: 2018/10/14(日) 23:54:59.73 ID:Gv1G/bQC.net
「くそ!なぜここに魔物が!」

「王女様!危ないっ!」

梨子「っ!」

ザシュッ!!

梨子「…………?」

曜「大丈夫?怪我はない?」

梨子「……は、はい///」

曜「間に合ってよかった」

曜「この辺は魔物が出て危ないから、安全なところまで送るよ」

「おい!その方から離れろ!」チャキ
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444: 2018/10/14(日) 23:55:39.05 ID:Gv1G/bQC.net
曜「その馬車の紋章、敵国の……」

「聞こえないのか!」

梨子「やめてください」

梨子「この方は、私の命の恩人なのですよ?」

「……分かり、ました」スッ

梨子「申し訳ありません、助けていただいたのに」

曜「別にいいよ」

梨子「あの、よければお礼をさせてください」

曜「お礼なんていらないよ。困っている人を助けるのが騎士の役目だから」

曜「それに、貴族……だよね?敵国の騎士といるのは見られないほうがいいでしょ」

梨子「それは……」

曜「それじゃあ、さようなら」

梨子「っ、待ってください!」

梨子「せめて、お名前だけでも」

曜「曜、だよ」

曜「平和になったらまた会おうね」

梨子「……はい」

445: 2018/10/14(日) 23:56:11.17 ID:Gv1G/bQC.net
~数年後~

「やっと捕らえたか」

「これで形勢は一気に我等に傾くだろうな」

曜「っ……」ジャラ

「こいつのせいで、沢山の仲間が犠牲になったんだ!」

「拷問の許可は出てるんだ、沢山酷い目に合わせてやろうぜ」

「おい、命令は忘れんなよ?」

「ああ、王都に入るための秘密の抜け道か」

「さっさと答えろ!」

曜「……言わない。絶対に」

「自分の立場が分かってねーようだな」

「やっぱり先に心を折ってやろうぜ」

曜「っ……!」

446: 2018/10/14(日) 23:57:03.10 ID:Gv1G/bQC.net
梨子「っ、だめ!」

「お、王女様!?どうしてここに!?」

梨子「彼女の身柄は、私が預かります」

梨子「だから、酷いことをしてはいけません」

「し、しかし俺たちも命令で」

梨子「わ、私に逆らうんですか!?」

「っ、す、すいません」

「おまえら!いくぞ!」

タタタ

447: 2018/10/14(日) 23:57:35.11 ID:Gv1G/bQC.net
梨子「大丈夫ですか、曜様?」

曜「ありがとう……ってなんで私の名前を」

梨子「……見覚え、ありませんか?」

曜「……あ!昔、森の中であった」

曜「え、でも王女って」

梨子「はい。私は、この国の王女です」

梨子「あの時は助けていただき、本当にありがとうございました」

曜「ううん、こちらこそありがとう」

曜「でも、私を庇わないほうがいいよ」

曜「そのせいで罰を受ける可能性もあるんだから」

梨子「構いません」

梨子「絶対に、曜様は私がお守りします」

曜「…………」

448: 2018/10/14(日) 23:58:00.92 ID:Gv1G/bQC.net
カクン

梨子「っ!」ヘタリ

曜「どうしたの!?」

梨子「ご、ごめんなさい……足が……震えてて……」

曜「無茶、するから」

曜(私を庇うのにも、勇気が必要だったんだよね)

曜(兵士たちの前に立つだけでも怖かったはずなのに)

曜「……ありがとう」

449: 2018/10/14(日) 23:58:34.60 ID:Gv1G/bQC.net
曜「でも、こんなことして王女様は本当に大丈夫なの?」

梨子「…………」

曜「あれ?どうしたの?」

梨子「王女様って呼び方は、いやです」

梨子「梨子って呼んでください」

曜「でも、私は捕虜だし」

梨子「呼んでください」

曜「……ふふ、変なところで頑固なんだから」

曜「梨子ちゃん」

梨子「っ///」

曜「それじゃあ、私のことも様付けはやめてほしいな」

梨子「……よ、曜、ちゃん///」

450: 2018/10/14(日) 23:59:36.23 ID:Gv1G/bQC.net
曜「梨子ちゃん、また来たの?」

梨子「はい。毎日来ると、言いましたよね?」

梨子「曜ちゃんが酷いことされないように、ちゃんと守りますから」

曜「……危なくなったら、すぐに私を切り捨てて」

梨子「いやです」

曜「梨子ちゃん、これは真剣に言ってるんだよ」

梨子「私も真剣です」

曜「……お付きの人も困ってるよ」

「い、いえ私は……」

451: 2018/10/15(月) 00:00:08.47 ID:E6zgZC2b.net
梨子「これが、曜ちゃんのご飯?」

梨子「これじゃあ栄養が足りなくて氏んでしまいます」

梨子「作り直してください」

「し、しかし、捕虜の食事は決まっておりますから」

梨子「分かりました」

梨子「それでは、私も曜ちゃんと同じ料理をお願いします」

梨子「それ以外は口にしません」

「す、すぐに作り直させます!」

452: 2018/10/15(月) 00:00:36.88 ID:E6zgZC2b.net
曜「梨子ちゃんって、思ったより意思が強いんだね」

梨子「……そういう子は、嫌いですか?」

曜「ううん。そんなことないよ」

曜「ただ、意外だなって」

曜「梨子ちゃん、大人しそうだもん」

梨子「……だって、曜ちゃんが可哀想じゃないですか」

曜「うーん、でも私は捕虜だからさ」

梨子「そんなの、関係ありません」

梨子「曜ちゃんにこんな酷いことするなんて……」

453: 2018/10/15(月) 00:01:10.33 ID:E6zgZC2b.net
梨子「あ!いいことを思いつきました」

曜「いいこと?」

梨子「はい。曜ちゃんが、私の騎士になればいいんです」

梨子「そうすれば、曜ちゃんもちゃんとした暮らしがおくれますよね」

「……姫様、それは曜様に失礼ですよ」

梨子「え?」

曜「ありがたいけど……だめだよ」

曜「私は自分の国を裏切れないから」

梨子「ぁ……わ、私は……そんな意味で言ったわけでは……」

曜「うん。分かってるよ。だから、ありがとう」

曜「そういう気持ちだけでも、嬉しいから」

454: 2018/10/15(月) 00:01:38.28 ID:E6zgZC2b.net
タタタタ

梨子「曜ちゃん、大丈夫!?」

梨子「怪我してない!?痛いところは!?」

曜「り、梨子ちゃん!?いきなりどうしたの!?」

「王女様、お待ちください!」

「申し訳ありません、曜様。授業内容のせいでご迷惑を」

梨子「曜ちゃんの国は、王様が悪い人でみんなを虐めてたんでしょ?」

梨子「それじゃあ曜ちゃんも酷いことされてるかもしれないもん!」

「王女様!失礼ですよ!」

455: 2018/10/15(月) 00:02:39.26 ID:E6zgZC2b.net
曜「そんなことないよ。私は酷いことされてないもん」

梨子「本当に?村の人たちも、酷いことされてない?」

曜「うん。もちろ……」

曜(……されて、ない?)

曜(本当に?)

曜(国を回った時、村の人の様子はどうだったっけ?)

曜(貧しそうにしてる人も……いた)

曜(私たちを見ると、酷く怯えた表情をしてる人も)

曜(……それに、王様の悪い噂も聞いたことがある)

456: 2018/10/15(月) 00:03:10.78 ID:E6zgZC2b.net
梨子「どうしたの、曜ちゃん?」

曜「ううん、なんだか最近、梨子ちゃんの言葉遣いが崩れてきたなって」

梨子「あっ……ご、ごめんなさい///」

曜「いいんだよ。むしろ、そっちの方が私は嬉しいから」

梨子「本当……?」

曜「うん。梨子ちゃんとの距離が近くなった気がするからね」

梨子「……っ///」

梨子「か、帰る///」

曜「あれ、梨子ちゃん!?おーい!」

457: 2018/10/15(月) 00:03:43.72 ID:E6zgZC2b.net
梨子「私、曜ちゃんにいろいろ酷いこと言ってたんだよね」

梨子「私の騎士になってとか、曜ちゃんの国は悪いところだ、とか」

梨子「何も知らなくて……ごめんね」

曜「謝らなくてもいいって」

曜「私のことを心配して言ってくれてるんだもん」

曜「私は嬉しいよ」

梨子「曜ちゃん……」

曜「それより、今日のご飯は何かな?」

梨子「さっき聞いたら、サンドイッチって言ってた」

梨子「曜ちゃんの大好きな、ハンバーー」

「楽しそうだな、梨子」

458: 2018/10/15(月) 00:04:33.67 ID:E6zgZC2b.net
梨子「お父様……!」

「秘密の抜け道をなかなか聞き出せないと思ったら、こんなことをしていたとはな」

「こうなれば、私が直接聞いてやろう」

梨子「曜ちゃんに、酷いことしないで!」

曜「梨子ちゃん!逃げて!」

「どけ!氏にたいのか!」

梨子「曜ちゃんを助けられないなら、私は氏にます!」

曜「だめ!私のことはいいから!」

「その女にたぶらかされたか」

「ならばその女を頃して目を覚ましてやる!」ヒュッ

曜「っ!」

ザシュッッッッッ

ビチャビチャ

曜「……え?」

梨子「……」バタッ

459: 2018/10/15(月) 00:05:08.21 ID:E6zgZC2b.net
曜「梨子ちゃん!?」

曜「なんで、なんで、私をかばって……!」

「ふん、馬鹿な娘だ」

曜「まだ、生きてる!」

曜「お願い!梨子ちゃんを、早く助けて!」

「そいつは後だ、お前から秘密を聞き出す方が先だ」

「それとも……抜け道の場所を教えてくれるのか?」

曜「っ!」

曜「……ます」

「なんだ?」

曜「言う!言うから!早く、梨子ちゃんを助けて!」

「……ふん。治癒室に運んでやれ」

460: 2018/10/15(月) 00:05:39.59 ID:E6zgZC2b.net
~数日後~

曜「……」

曜(私は国を裏切った)

曜(もう戻ることはできない)

曜(あの日から梨子ちゃんの顔も見ていない)

曜(当然だよね、私のせいで、氏にかけたんだから)

曜(もう、私には生きてる意味がない)

曜(このまま、処刑されるのを待とう)

キィ

曜「……誰?」

「すいません、夜分に」

曜「貴女は……梨子ちゃんの……」

461: 2018/10/15(月) 00:06:08.53 ID:E6zgZC2b.net
「お願いします!梨子様を助けてください!」

曜「助ける?どういうこと?」

「……自分のせいで、曜様に秘密を話させてしまったことを悔やんでいるんです」

「あのせいで、曜様の国は陥落しました」

「曜様に合わせる顔がないと、このところはご飯も食べずにいます」

曜「そんな……」

「虫のいい話をしているのは承知しています」

「ですが、どうか、どうか……お願いします」

曜「頭をあげてください」

曜「……私も、梨子ちゃんとお話ししたいと思っていました」

462: 2018/10/15(月) 00:06:38.33 ID:E6zgZC2b.net
曜「こんばんは、梨子ちゃん」

梨子「っ!?よ、曜ちゃん!?な、なんで……」

曜(目が真っ赤になってる)

曜(多分、ずっと泣いてたんだろうな)

梨子「……ごめん、なさい。ごめんなさい、ごめんなさい」

梨子「私のせいで、曜ちゃんに、めいわく、ぐすっ、かけて、」

曜「いいんだよ」

曜「梨子ちゃんが、無事だったんだから」

梨子「よく、ない、よ、」

梨子「なんで、そんなに優しいの?なんで、いつも許してくれるの?」

梨子「私、なんにも、曜ちゃんに、してあげて、ないのに、」

463: 2018/10/15(月) 00:07:08.23 ID:E6zgZC2b.net
曜「してくれてるよ」

曜「梨子ちゃんが庇ってくれたから、私はこうやって生きてるんだもん」

曜「梨子ちゃんが勇気を出してくれたから、こうして梨子ちゃんとお話しできてるんだもん」

曜「私はね、騎士失格なんだ」

曜「梨子ちゃんが切られた時、頭が真っ白になっちゃったの」

曜「そして、天秤に掛けた。梨子ちゃんと、自分の国を」

曜「……答えは、言うまでもないよね?」

梨子「曜、ちゃん」

曜「だから、私は全然気にしてないよ」

曜「もう、国も捨てて、帰る場所もないんだし」

曜「むしろ、梨子ちゃんが悲しんでる方が、辛いんだ」

梨子「……そっか」

464: 2018/10/15(月) 00:07:38.23 ID:E6zgZC2b.net
梨子「じゃあ、私が、曜ちゃんの帰る場所になる」

曜「え?」

梨子「曜ちゃん、私の騎士になって」

曜「でも……」

梨子「でも、じゃないの。私が、曜ちゃんに側にいて欲しいの」

曜「……全く、頑固なんだから」

曜「何なりとお命じください、王女様」

曜「これからは貴女の剣となります」

465: 2018/10/15(月) 00:08:27.36 ID:E6zgZC2b.net
梨子「……じゃあ、最初の命令、してもいいかな?」

曜「何?」

梨子「……ぎゅって、して」

曜「…………」

梨子「早く!」

曜「はいはい」ギュッ

梨子「……暖かい」ギュッ

梨子「最初に会った時からね、ずっとこうしたかったの」

曜「そうだったの?」

梨子「うん。……あ、今のは忘れてね。命令よ」

曜「我儘だなぁ」クスクス

梨子「……ずっと側にいてよ、曜ちゃん」

曜「もちろんだよ、梨子ちゃん」

466: 2018/10/15(月) 00:09:14.63 ID:E6zgZC2b.net
~玉座~

「おお、梨子、どうだった?」

梨子「ありがとう、お父様。おかげで、曜ちゃんは私のものになってくれたわ」

「そうか、よかったよかった。それでなんだか……」

梨子「はい、これからの計画。この通りにやれば内政も上手くいくわ」

「ああ、いつも助かっているよ」

「それよりも、怪我は大丈夫かい?」

梨子「このくらい必要経費よ」

梨子「馬鹿な王女のフリをして、曜ちゃんの信頼を得たんだから」

梨子「国への不信感を募らせて、裏切らせる」

梨子「ふふ、上手くいったわ」

「王女様、曜様がお呼びです」

梨子「すぐ行くわ」

梨子「ふふっ、曜ちゃん、大好きだよ」

梨子「ずっと、ずーっと、側に捕まえてあげる」



花丸「旅に出てたら国が滅んでたずら……」

千歌「新しく住むところ探さないとねー」

467: 2018/10/15(月) 00:19:15.98 ID:LxFA5BK9.net
ようそろ…

468: 2018/10/15(月) 00:39:33.36 ID:DMcj25D1.net
騙されたあ

469: 2018/10/15(月) 00:56:07.84 ID:GQchuzFc.net
まんまと騙されたずら…

引用: 梨子「わ、私と曜ちゃんの」曜「短編集だよ!」