511:通り魔とSOS団 2006/08/01(火) 19:39:22.00 ID:Ft82cw3E0
#通り魔とSOS団というSSです。
#アクションシーンがあんぱんまんレベル以下ですがご了承ください。
#甘さ控えめです。

「キョン、聞いた?なんでも通り魔がこの付近に出没してるのよ」
それは二人で部室に向かう途中での会話だった。ちょっとは怖がれよ、おまえ。
「ああ、朝TVでやってたな。まだ北高生に被害はでてないみたいだが。」
「時間の問題よ」だから瞳をきらきらさせながら不謹慎なこというのはやめろ。
「俺達にはなんにもできないだろう?」
「キョン、そういう考えじゃSOS団団員としては不適格だわ。SOS団の名前を世間に
知らしめるいいチャンスって考えないといけないのよ。」
部室に到着するとさっそくハルヒはパソコンに齧り付いて、何やらネットを始めた。
「お茶です。どうぞ」朝比奈さんのエンジェルボイスはいつでも耳に優しい。
古泉がハルヒをちらりとみやったあと、小声でささやいた。
「また涼宮さんがよからぬことを考えてるようですね。」
「通り魔を捕まえたいらしい。」
「なるほど、結構なことですね」その優雅なスマイルは0円の価値しかないぞ。
「まあ、ハルヒにはトンデモパワーがあるからなんとかなるかもしれんが、
万が一ということもあるからな。あまりその手の危険なことに首をつっこませたくない。」
古泉は肩をすくめて「ごもっとも。しかし涼宮さんが黙ってしたがうとは思えませんけど。」
ま、そうなんだけどな。あいつが傷つくところは見たくないというか、うまくいかなくて
閉鎖空間作られても困るだろう?おまえも。
古泉はもう一度肩をすくめて、チェスでもしますかと言うだけだった。
涼宮ハルヒの憂鬱 「涼宮ハルヒ」シリーズ (角川スニーカー文庫)
513: 2006/08/01(火) 19:43:37.09 ID:Ft82cw3E0
#改行規制にひっかかったので、シーン毎に小分けにして投下します。

夜。日付変更線をこえようかどうしようかという時間に携帯が鳴った。
こんな時間にかけてくるのは一人しかいない。ハルヒだ。
「ぼんじゅーる。あ、た、し」
「今日はどーした?」
「通り魔よ。あれからずーっと行動パターンを追ってたんだけど、そろそろ
きそうよ、北高にも」
「へー」ご熱心なことで。
「犯人の特徴も分かったし、多分次の犯行時間は朝ね。朝練に出てくる子を狙うつもりよ。」
「なんでわかる?」
「下校途中の子を狙おうとして一回未遂に終わってるのよ。それから犯行時間が朝に
なってる。生徒が多い時間帯を避けるとなれば、早朝になるって推理よ。」
「なるほどねえ。」あくびをかみ頃す「犯人の特徴わかってんのか?」
「身長160cm前後、ちょっと小太り。カッターナイフが凶器ね」
あんまり特徴とはいえないんじゃないのかなぁ。まあカッターナイフで武装してる
となれば、あんまり近づきたくはないね。
「なにいってんのよ、あんた男でしょ?」とはいうものの別に怒ってる風でもない。
「んで、どーするんだ?」
「決まってるじゃない、張り込みするのよ。張り込み」うれしそうに言うなと。
「で、いつから始めるんだ?」
「あしたからよ。もちろん。7:30には学校にきなさい。みんなにはあたしから
伝えとくから。寝坊したら氏刑よ」

514: 2006/08/01(火) 19:47:14.80 ID:Ft82cw3E0
翌朝。7:25に学校についたものの、眠くて氏にそうだ。
おい、ハルヒ。他のみんなはどうした?
「別の場所で待機してるわ。」ハルヒもいささか眠そうだ。「あたしたちは校門の
近くで見張りましょう。」
長門がとことこやってきた。すると朝比奈さんと古泉が別の場所にいるってことか。
うーん、朝比奈さんにはなんの力もないからなぁ。ちょっと心配だな。
「大丈夫よ。ちょっとしたアイテムをみくるちゃんに渡しといたし、古泉くんもいるし。」
最近長門の表情というか感情をすこしは理解できるようになってきたのだが、
それによれば彼女もいささか眠いと感じているようだ。
「大丈夫か、長門」
「大丈夫。・・・20.51m先に敵性と思われる思考情報を発見。」
え?思考情報ってなに?
「敵性思考をもつ人物が放射する情報。威圧感、嫌悪感を呼ぶもの」
女子生徒の悲鳴が聞こえたと同時にハルヒが俺の手首をつかんだ。
「有希、みくるちゃんに連絡して。それからきて。」大声で長門に指示を出しながら、
ハルヒが走りだすので、しょうがなく走るしかない。

女子生徒はぺたりと道路に座り込んだままだった。その横に男。手にカッターナイフ。
男はなにかに取り憑かれているようにも見える。
ハルヒが男に向かってすばらしい大声を出して牽制。男はこちらを真っすぐに見据えた。

獣の眼だった。

516: 2006/08/01(火) 19:48:44.36 ID:Ft82cw3E0
これはやばいって。頭の中のサイレンがけたたましく鳴り出した。体が動かない。
ハルヒに向かって男は一歩、二歩と歩きだした。カッターナイフをチキチキいわせながら。
予備動作もなにもなく、男がカッターナイフを突き出す。ハルヒはすんでのところで避けるが、
やはり男が発するオーラに圧倒されてるのか、攻撃ができないようだ。
やばい、また来る。まっすぐにカッターナイフがハルヒに襲いかかる。避けようとするハルヒだが、
間に合いそうにない・・・それはダメだ。
 頭の中に古来からある部分からの指令なのか、体が勝手に動き出し、男に体ごとぶつかっていく。
獣の匂いに愕然する。早くカッターナイフを押さえなければ。
しかし。
男の力はものすごく、逆に組み伏せられてしまった。辛うじてカッターナイフを持つ手首を
押さえているものの、じりじりと押し込まれて行く。首筋を狙っているのか。
おいおい俺の首筋はスカートじゃないぜ。などと冗談は通用しなさそうだが。
「キョン!」ハルヒが叫んでいるが、どうしろと。「頑張って!」
頑張ってるさ。もうじき氏にそうだけどな。ああ、葬式にはきてくれよな。
ついでに号泣してくれると絵になるだろうな。
あと忘れてもいいけど、覚えといてくれよな、俺のこと。

「あ、みくるちゃん! 早くきて、みくるビームでキョンを助けて!」
「え、え~」朝比奈さんの戸惑った声がきこえる。おいおい冗談だろう?
「いいから、早く! キョンが氏んじゃうよ!」
「え、えーと、みくるビーム」きっとあの映画のようなポーズを取ってるのだろう。
驚いたことに男の動きが止まった。ええ?みくるビームがまた効いたってこと?
とにかく動きさえ止まれば、態勢を変えるのは難しくないし、押さえ込むことなら
なんとかできる。格好は悪いが、男の肘を逆に決めることで男の動きを封じることができた。
パトカーのサイレンが聞こえてきた。
ああ、氏なずにすんでよかった。

518: 2006/08/01(火) 19:53:26.82 ID:Ft82cw3E0
とんだ捕り物のお陰で、また病院のベッドにいる。
もっともケガは擦り傷程度でたいしたことない。午後には出れるだろう。
「今回のみくるビームは、小規模の衝撃波。それがあの敵性人物の動きを
しばらく止めた」長門の解説である。
「涼宮さんは、朝比奈さんにまたカラーコンタクトを渡していたのですよ。本当にみくるビーム
なんてでるわけない、ただのフェイントのつもりでね。
まあ、あなたがピンチになったのでまたみくるビームが復活したということでしょうか。」
古泉はそういって微笑んだ。
「ハルヒにはなんといって説明したんだ?」
「あの男は重度の薬物依存症で薬の効果が切れたということにしておきましたよ。」
「本当は?」
「似たようなものですよ。」
ま、しばらく休んでてください。午後迎えが来ますから。
そう古泉は言い残し、長門ともに帰って行った。

午後。ハルヒが迎えにきた。・・・どうした、眼が赤いぞ?
「寝不足だからじゃない?」ぷいとそっぽを向いて答えるのが憎たらしい。
「それよりさぁ、あたしたちが捕まえたってのにニュースにならないんだって。
信じられる?せっかくSOS団の名前が世間に出るチャンスだってのに」
「いろいろあるんだろうさ」多分古泉が機関とやらに手を回した結果だろうし、
その理由もなんとなく推察できるが、ハルヒにそれを告げるにはいかない。
「・・・まああんたがいうなら、それでいいけどさ。」そして笑顔になって「お昼、
まだでしょ?どっか食べに行こうよ」
「おまえのおごりでな。」
「・・・しょうがないか。今回ばかりは。」
やれやれとハルヒが肩をすくめて、俺の手首をつかんで歩きだした。

おしまい。

引用: ハルヒ「ちょっと キョン!あたしのプリン食べたでしょ!」