315: 2010/12/25(クリスマス) 20:18:10.06 ID:xjgkHPIo
上条は考える。
(これは一体どういうことでせう)
ここは何の変哲もない路上。目の前にいるのは御坂妹。そこまではいい。特に問題はない。
お互い学園都市に住んでいるのだから、こうやって偶然出会うこともあるだろう。
御坂妹が、こちらに気付いてなにやらそそくさと駆け寄ってきたというのも別に構わない。
何か自分に用事があるとすれば、当然のことだろう。
でも。
どうして御坂妹は目の前で靴下を脱いでいるのだろうか。
いつもの無表情が、心なしか嬉しそうにも見える。
「今、両方の靴下を脱ぎ終わりました。とミサカは不安定な体勢にも関わらず見事にやってのけたバランス感覚を自画自賛します」
生暖かい靴下が、呆然としている上条に手渡される。
「えっと、こ、これは?」
「風習についての学習もバッチリだと、ミサカは再び自画自賛します」
「風……習……?」
「靴下を交換するという、クリスマスの風習です。とミサカは貴方が少々世間知らずであることを危惧しながら、優越感と共に教えます」
「あの、御坂妹さん?」
そんな風習はありません、と、上条は答えようとするが、
「靴下が趣味ではないと仰るのなら、そんなこともあろうかと。とミサカは用意周到であることを明かします」
御坂妹は一歩も引かず、そのポケットから取り出されたのは薄手のストッキング。
「少々お待ちください。これを穿いて、人肌になったところで再び脱ぎます。とミサカは再びバランス感覚を見せつけます」
「ブヒュゥ、とミサカは10032号の醜態を嘲る意味で噴いてみせます」
「あれ、お前は」
二人の前には、また別のミサカが。
(これは一体どういうことでせう)
ここは何の変哲もない路上。目の前にいるのは御坂妹。そこまではいい。特に問題はない。
お互い学園都市に住んでいるのだから、こうやって偶然出会うこともあるだろう。
御坂妹が、こちらに気付いてなにやらそそくさと駆け寄ってきたというのも別に構わない。
何か自分に用事があるとすれば、当然のことだろう。
でも。
どうして御坂妹は目の前で靴下を脱いでいるのだろうか。
いつもの無表情が、心なしか嬉しそうにも見える。
「今、両方の靴下を脱ぎ終わりました。とミサカは不安定な体勢にも関わらず見事にやってのけたバランス感覚を自画自賛します」
生暖かい靴下が、呆然としている上条に手渡される。
「えっと、こ、これは?」
「風習についての学習もバッチリだと、ミサカは再び自画自賛します」
「風……習……?」
「靴下を交換するという、クリスマスの風習です。とミサカは貴方が少々世間知らずであることを危惧しながら、優越感と共に教えます」
「あの、御坂妹さん?」
そんな風習はありません、と、上条は答えようとするが、
「靴下が趣味ではないと仰るのなら、そんなこともあろうかと。とミサカは用意周到であることを明かします」
御坂妹は一歩も引かず、そのポケットから取り出されたのは薄手のストッキング。
「少々お待ちください。これを穿いて、人肌になったところで再び脱ぎます。とミサカは再びバランス感覚を見せつけます」
「ブヒュゥ、とミサカは10032号の醜態を嘲る意味で噴いてみせます」
「あれ、お前は」
二人の前には、また別のミサカが。
316: 2010/12/25(クリスマス) 20:18:39.50 ID:xjgkHPIo
「19090号です。とミサカは10032号とは違うことをアピールします」
すっ、と足を伸ばす19090号。
「ミサカはこのように、既にストッキングを装着済みです。10032号に対して有利であるとミサカはアピールします」
「邪魔です、とミサカは19090号は邪魔だと言外に臭わせながら宣言します」
「全然言外じゃないです、すごくダイレクトですよ、御坂妹」
上条のツッコミも無視してそそくさと、こちらはストッキングを脱ぎ出す19090号。
はっきり言って可愛らしい女子中学生、しかも名門常盤台の制服、さらにはその顔は「レベル5超電磁砲」な二人である。
その二人がそれぞれ靴下、ストッキングをその場で脱いで生足になり、脱いだものを一介の男子高校生に差し出しているのだ。
周囲の人の目もただごとではない。
「一体何やってるって訳よ」
「変Oです。超浜……じゃなくて超変Oです」
「大丈夫そんなはまづらを私は応援してる」
「え、俺のこと!?」
「なんか見覚えのある面ねぇ」
などと聞こえてくる。
なにやらエキサイトして周囲の見えないミサカ二人は置いて、上条にとってはまさに針の筵である。
「どうぞ。とミサカは脱ぎたてほかほかを差し出します」
差し出されたストッキングを、つい反射的に受け取ってしまう上条。
「あの、いったいこれを上条さんはどうすれば」
「交換です。とミサカは再確認します」
「靴下は二足。つまり、現在が定員ですね。これ以上の介入は断固阻止します。とミサカは拳を握り決意します」
「同意します。仮にお姉様が参入してきたとしてもです。こればかりは譲れないとミサカは断言します」
「靴下、脱いだ方がいいんでせうか」
すっ、と足を伸ばす19090号。
「ミサカはこのように、既にストッキングを装着済みです。10032号に対して有利であるとミサカはアピールします」
「邪魔です、とミサカは19090号は邪魔だと言外に臭わせながら宣言します」
「全然言外じゃないです、すごくダイレクトですよ、御坂妹」
上条のツッコミも無視してそそくさと、こちらはストッキングを脱ぎ出す19090号。
はっきり言って可愛らしい女子中学生、しかも名門常盤台の制服、さらにはその顔は「レベル5超電磁砲」な二人である。
その二人がそれぞれ靴下、ストッキングをその場で脱いで生足になり、脱いだものを一介の男子高校生に差し出しているのだ。
周囲の人の目もただごとではない。
「一体何やってるって訳よ」
「変Oです。超浜……じゃなくて超変Oです」
「大丈夫そんなはまづらを私は応援してる」
「え、俺のこと!?」
「なんか見覚えのある面ねぇ」
などと聞こえてくる。
なにやらエキサイトして周囲の見えないミサカ二人は置いて、上条にとってはまさに針の筵である。
「どうぞ。とミサカは脱ぎたてほかほかを差し出します」
差し出されたストッキングを、つい反射的に受け取ってしまう上条。
「あの、いったいこれを上条さんはどうすれば」
「交換です。とミサカは再確認します」
「靴下は二足。つまり、現在が定員ですね。これ以上の介入は断固阻止します。とミサカは拳を握り決意します」
「同意します。仮にお姉様が参入してきたとしてもです。こればかりは譲れないとミサカは断言します」
「靴下、脱いだ方がいいんでせうか」
317: 2010/12/25(クリスマス) 20:19:48.33 ID:xjgkHPIo
上条はあっさり流される。
いや、違う。上条は恐れていた。
もしかして、自分が記憶を失った時に、奇妙な風習のことも忘れてしまったのではないかと。
これは、学園都市ならではの独自の風習ではないのかと。
「是非。とミサカは歓喜します」
「少々お待ちください。保存袋を準備しています。とミサカはぬかりなさによる優秀性をアピールします」
どことなく納得できない表情で、それでも上条が靴下を脱ぐために靴を脱いだとき、
「……あんた達、そんなところで何やってんの?」
「さあ、手早くお願いします。とミサカは不本意ながらも急かします」
「そうですね。天気も悪くなってきた模様です、とミサカはお姉様を無視します」
「今、無視って言ったわね。思いっきり気付いているわよね」
「あ、ごめん。体勢悪いからちょっと手貸して」
「あんたも、この期に及んで靴下脱ごうとしないっ!」
電撃がアスファルトを薙ぎ、ついでに上条の脱いだスニーカーを焦がす。
「ああああ、一張羅のスニーカーが……不幸だ……」
「それくらい弁償してあげるわよ。それより、何してるのよ、こんな往来の真ん中でストッキング握りしめて」
「え、ああ、これは」
「それは、ミサカのものです。さらに、脱ぎたてでまだ体温が残っている事実をミサカは付け加えます」
「なんで、あんたがこの子のストッキングなんて……まさか……あんた……」
「お姉様もご存じないのですか? とミサカは些かの驚きを交えて尋ねます」
「何を?」
「クリスマスの風習として、靴下を交換することだと、ミサカはお姉様の無知に心を痛めながら教えます」
いや、違う。上条は恐れていた。
もしかして、自分が記憶を失った時に、奇妙な風習のことも忘れてしまったのではないかと。
これは、学園都市ならではの独自の風習ではないのかと。
「是非。とミサカは歓喜します」
「少々お待ちください。保存袋を準備しています。とミサカはぬかりなさによる優秀性をアピールします」
どことなく納得できない表情で、それでも上条が靴下を脱ぐために靴を脱いだとき、
「……あんた達、そんなところで何やってんの?」
「さあ、手早くお願いします。とミサカは不本意ながらも急かします」
「そうですね。天気も悪くなってきた模様です、とミサカはお姉様を無視します」
「今、無視って言ったわね。思いっきり気付いているわよね」
「あ、ごめん。体勢悪いからちょっと手貸して」
「あんたも、この期に及んで靴下脱ごうとしないっ!」
電撃がアスファルトを薙ぎ、ついでに上条の脱いだスニーカーを焦がす。
「ああああ、一張羅のスニーカーが……不幸だ……」
「それくらい弁償してあげるわよ。それより、何してるのよ、こんな往来の真ん中でストッキング握りしめて」
「え、ああ、これは」
「それは、ミサカのものです。さらに、脱ぎたてでまだ体温が残っている事実をミサカは付け加えます」
「なんで、あんたがこの子のストッキングなんて……まさか……あんた……」
「お姉様もご存じないのですか? とミサカは些かの驚きを交えて尋ねます」
「何を?」
「クリスマスの風習として、靴下を交換することだと、ミサカはお姉様の無知に心を痛めながら教えます」
318: 2010/12/25(クリスマス) 20:20:20.84 ID:xjgkHPIo
「何よ、そ……」
それ、と言いかけた美琴を遮るように、それまで背後で大人しくやりとりを眺めていたツインテールの少女が前に出る。
「確かにその通りですの。一般ではそれほどメジャーではありませんが、クリスマスに靴下を交換する行為は欧米でも近年広く行われている風習ですの!」
「へ? 黒子? いきなりどうしたの?」
「ですからお姉様、常盤台のエースとして皆に模範を示すためにも、是非靴下の交換ですの! この、この、黒子めと!」
今にも押し倒して靴下を脱がしかねない形相の黒子に、思わず電撃を放つ美琴。
ぎゃうですのっ、と悲鳴を上げて倒れる黒子。
「く、靴下……お姉様のかぐわしい靴下……ソックス……クンカクンカ」
倒れながらも美琴へ這いずり寄る黒子の鼻がぴくぴく動いている。
「靴下ですの……」
「……あんたは大人しくしてなさい」
「酷いですの」
「往来の真ん中でいきなり人の靴下脱がしにかかる人間に言われたくないわよ」
とりあえず転がっている黒子にそう言い置いて、美琴は二人の妹に目をやった。
「今の黒子の行動でよくわかったわ。靴下の交換なんて大嘘じゃない」
もっとも、美琴にしても妹達がわざと嘘をついたとは思っていない。おおかた、誰かの冗談を真に受けたか、あるいは情報の一部だけを受け取って曲解したか。
こと上条当麻関係になると、妹達は暴走しかねない気があるのだ。さらに一部の妹に至っては、信じられないことに一方通行関係で暴走するのだが。
「誰から聞いたの? 靴下の話」
それ、と言いかけた美琴を遮るように、それまで背後で大人しくやりとりを眺めていたツインテールの少女が前に出る。
「確かにその通りですの。一般ではそれほどメジャーではありませんが、クリスマスに靴下を交換する行為は欧米でも近年広く行われている風習ですの!」
「へ? 黒子? いきなりどうしたの?」
「ですからお姉様、常盤台のエースとして皆に模範を示すためにも、是非靴下の交換ですの! この、この、黒子めと!」
今にも押し倒して靴下を脱がしかねない形相の黒子に、思わず電撃を放つ美琴。
ぎゃうですのっ、と悲鳴を上げて倒れる黒子。
「く、靴下……お姉様のかぐわしい靴下……ソックス……クンカクンカ」
倒れながらも美琴へ這いずり寄る黒子の鼻がぴくぴく動いている。
「靴下ですの……」
「……あんたは大人しくしてなさい」
「酷いですの」
「往来の真ん中でいきなり人の靴下脱がしにかかる人間に言われたくないわよ」
とりあえず転がっている黒子にそう言い置いて、美琴は二人の妹に目をやった。
「今の黒子の行動でよくわかったわ。靴下の交換なんて大嘘じゃない」
もっとも、美琴にしても妹達がわざと嘘をついたとは思っていない。おおかた、誰かの冗談を真に受けたか、あるいは情報の一部だけを受け取って曲解したか。
こと上条当麻関係になると、妹達は暴走しかねない気があるのだ。さらに一部の妹に至っては、信じられないことに一方通行関係で暴走するのだが。
「誰から聞いたの? 靴下の話」
319: 2010/12/25(クリスマス) 20:21:14.53 ID:xjgkHPIo
その頃……
一方通行は打ち止めに靴下を突きつけられていた。
「ミサカはミサカは靴下の交換を申し出てみる!」
「……なんか、勘違いしてねェですかァ?」
一方通行は打ち止めに靴下を突きつけられていた。
「ミサカはミサカは靴下の交換を申し出てみる!」
「……なんか、勘違いしてねェですかァ?」
320: 2010/12/25(クリスマス) 20:22:00.48 ID:xjgkHPIo
以上、お粗末様でした。
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