1: 2025/01/31(金) 18:29:44 ID:???00
〇〇新聞 号外

【金沢市に隕石落下 3万棟が被害】

2月10日 午前5時13分頃、石川県金沢市の卯辰山付近に隕石が落下した。

落下した隕石は、当初地球に接近後、通過予定だった彗星、「ロータス彗星」と推定される。

観測基地の情報によると、この彗星は日本上空を飛行中、突如として進路を変更し、地上に落下したと見られる。

専門家は地球の引力によって天体が崩壊したことで、破片の一部が落下したのではないかと考えているが、詳しい原因は判明していない。

この隕石衝突により、金沢市内の約3万棟が倒壊するなど、5万人以上が何らかの被害を受けたと考えられている。
現在、自衛隊が救助に当たっているが、瓦礫が多く救助は難航している。

また、隕石の落下地点の付近には市内の名門私立高校『蓮ノ空女学院』が位置しているが、上空からの映像では校舎の姿は確認できていない。

蓮ノ空女学院は全寮制であり、事故当時、寮には341人の生徒がいたと見られるが、現状安否は不明である。

9: 2025/01/31(金) 20:16:28 ID:???00
[ Prologue ]

深夜2時。
蓮ノ湖のほとりで、赤い女は魔法陣の前に立っていた。
風はなく、湖は鏡のように月を水面に写している。

綴理「素に銀と鉄。礎に石と契約の大公。降り立つ風には壁を。四方の門は閉じ、王冠より出で、王国に至る三叉路は循環せよ」

魔法陣が光を放つ。周囲からは生き物の気配が消え、氏者たちだけがその者をじっと見つめている。

わたしを呼べ――

いいや、私だ――

機会を与えろ――

もう一度、願いを叶える機会を――

10: 2025/01/31(金) 20:23:08 ID:???00
綴理「閉じよ(みたせ)。閉じよ(みたせ)。閉じよ(みたせ)。閉じよ(みたせ)。閉じよ(みたせ)。
繰り返すつどに五度。
ただ、満たされる刻を破却する」

水面が微かに波打つ。風はいまだ吹いていない。魔法陣を中心とした強い魔力のうねりが周囲の空間を満たしていた。

綴理「――――告げる。
汝の身は我が下に、我が命運は汝の剣に。
聖杯の寄るべに従い、この意、この理に従うならば応えよ
誓いを此処に。
我は常世総ての善と成る者、
我は常世総ての悪を敷く者。
汝三大の言霊を纏う七天、
■■より来たれ、天秤の守り手よ――」

11: 2025/01/31(金) 20:37:00 ID:???00
バチバチバチ⚡

増幅し、蓮ノ湖周辺を満たしていた魔力が急劇に魔法陣に収束する。

その瞬間、常世と現世は繋がった。
次元の穴はすべての熱を奪い去り、水面は薄氷に覆われる。

そして赤い光の中、常識外の存在が姿を現す。

「サーヴァント、アーチャー、村野さやか。召喚に応じ参上しました。あなたが――わたしのマスターですか?」

黒衣の少女は、青い瞳で主を冷たく見つめる。

綴理「そうだよ。えっと...村野、さやか?よろしくね、アーチャー」

さやか「はい、我が弓はマスターの勝利の為に――」

14: 2025/02/01(土) 21:01:54 ID:???00
【2月1日】

姫芽「小鈴ちゃん~次移動教室だよ?急ごう~」

小鈴「うん!行こう姫芽ちゃん!」

姫芽ちゃんは同じクラスの友達だ。
入学初日に緊張してた徒町は、隣の席に座ったのが派手なピンクのロングヘア―をした美人なもんだから、余計に緊張して変な態度をしてしまったと思う。

でも実際に話してみると、初見の印象と違ってとても気さくで話しやすい子だった。

姫芽「今日も寒いね~」

小鈴「もう2月だもん。それより姫芽ちゃん、放課後に姫芽ちゃんの部屋に遊びに行ってもいい?」

姫芽「いいよ~小鈴ちゃんが来るの久しぶりだねどうしたの?」

小鈴「また姫芽ちゃんとゆっくりお話ししたくなっちゃった!それに夜は寒くて寂しいから姫芽ちゃんと一緒にいたくて!」

姫芽「うぐっ!そういうことさらっと言っちゃから小鈴ちゃんは人たらしなんだぞ....」

15: 2025/02/01(土) 21:05:58 ID:???00
小鈴「あれ、姫芽ちゃん顔赤いよ?もしかして熱あるの?」ピト

姫芽「うひゃ!?こ、こひゅじゅちゃん!?」///

小鈴「わ!すごい熱!もしかして風邪ひいてるんじゃない?」

姫芽「いや、これは絶対風邪じゃないから気にしないで!」

姫芽「――ていうか、小鈴ちゃんのせいだよ...」ボソ

小鈴「何か言った?」

姫芽「い、いや!何にも!」

小鈴「ふーん。じゃあ放課後に遊びに行くね!」

姫芽「うん!アタシもどうせ宿題くらいしかやることなかったし...あ、やっぱりダメ!」

小鈴「姫芽ちゃん?」

姫芽「ゴメンね小鈴ちゃん!あたしの部屋今ちょ~っと大きい荷物があって小鈴ちゃんが座るスペースないかも...」

小鈴「そうなの?荷ほどきなら徒町も手伝うよ?」

姫芽「う、ううん!大丈夫、小鈴ちゃんにそんなことさせられないよ~だから今日は...いやしばらくはアタシの部屋には入れられないや」

16: 2025/02/01(土) 21:05:58 ID:???00
小鈴「あれ、姫芽ちゃん顔赤いよ?もしかして熱あるの?」ピト

姫芽「うひゃ!?こ、こひゅじゅちゃん!?」///

小鈴「わ!すごい熱!もしかして風邪ひいてるんじゃない?」

姫芽「いや、これは絶対風邪じゃないから気にしないで!」

姫芽「――ていうか、小鈴ちゃんのせいだよ...」ボソ

小鈴「何か言った?」

姫芽「い、いや!何にも!」

小鈴「ふーん。じゃあ放課後に遊びに行くね!」

姫芽「うん!アタシもどうせ宿題くらいしかやることなかったし...あ、やっぱりダメ!」

小鈴「姫芽ちゃん?」

姫芽「ゴメンね小鈴ちゃん!あたしの部屋今ちょ~っと大きい荷物があって小鈴ちゃんが座るスペースないかも...」

小鈴「そうなの?荷ほどきなら徒町も手伝うよ?」

姫芽「う、ううん!大丈夫、小鈴ちゃんにそんなことさせられないよ~だから今日は...いやしばらくはアタシの部屋には入れられないや」

17: 2025/02/01(土) 21:08:21 ID:???00
小鈴「そうなんだ。なら代わりに徒町の部屋に――」

慈「コースーズーちゃん!」ギュッ!ムニッ

小鈴「わ!めぐちゃん!?どうしたの?」

慈「んー別にー?ただ廊下にコスズちゃんたちが歩いてるのが見えたからギュ!ってしに来ただけ♡」

姫芽「はわわ!3年の藤島慈せんぱい....!近くで見るとホント可愛い~」

小鈴「もうめぐちゃん!こんなところで恥ずかしいよ!」

慈「えーいいじゃん!めぐちゃんのマシュマロボディを堪能できるのは幼馴染であるコスズちゃんの特権なんだぞ☆」ムニッムニッ

姫芽「年の差幼馴染尊い~」

慈「それよりコスズちゃん今日の放課後私の部屋に来ない?とっておきのお菓子が届いたんだ!」

小鈴「え?あーうん!わかった!」

慈「それじゃあ待ってるからね!バイバイ!」

18: 2025/02/01(土) 21:10:48 ID:???00
姫芽「いいな~藤島せんぱいと幼馴染なんて....っとそろそろ理科室行かないと遅れちゃうよ」

小鈴「そうだね...って理科室?」

姫芽「だって次の授業化学だよ?」

小鈴「は!徒町すっかり音楽だと思ってた!教科書取ってくるから姫芽ちゃん先に行ってて!」ビューン!

姫芽「あ、小鈴ちゃん!」

19: 2025/02/01(土) 21:14:44 ID:???00
――――――

小鈴(授業開始まであと3分。全力で走れば間に合う!)

ゴツン!!!

小鈴「ぐわ!」

沙知「あいたたた....」

廊下の曲がり角で誰かとぶつかってしまった。
見ると小さな女の子が徒町と同じようにおでこを押さえて尻もちをついている。

小鈴「は!大丈夫?怪我はない?」

沙知「いや大丈夫だ...君こそ大事ないかい?」

女の子は立ち上がる。やっぱり徒町よりも小さい、学校見学に来た中学生かな?

小鈴「今日はひとりで来たの?それともお母さんとはぐれちゃった?」

沙知「え?あ、なるほどねぃ。あたしは学生じゃなくて先月この学校に就任した理事長の大賀美沙知だ。一応朝礼であいさつもしたはずなんだが....」

小鈴「理事長!?これは大変失礼なことを言ってしまって申し訳ありません!」ペコペコ

沙知「いやいや気にしないでくれたまえ。私が学生の頃もいちいち理事長のことまで覚えなかったさ」

小鈴「あわわわ恐縮です!」

20: 2025/02/01(土) 21:14:46 ID:???00
――――――

小鈴(授業開始まであと3分。全力で走れば間に合う!)

ゴツン!!!

小鈴「ぐわ!」

沙知「あいたたた....」

廊下の曲がり角で誰かとぶつかってしまった。
見ると小さな女の子が徒町と同じようにおでこを押さえて尻もちをついている。

小鈴「は!大丈夫?怪我はない?」

沙知「いや大丈夫だ...君こそ大事ないかい?」

女の子は立ち上がる。やっぱり徒町よりも小さい、学校見学に来た中学生かな?

小鈴「今日はひとりで来たの?それともお母さんとはぐれちゃった?」

沙知「え?あ、なるほどねぃ。あたしは学生じゃなくて先月この学校に就任した理事長の大賀美沙知だ。一応朝礼であいさつもしたはずなんだが....」

小鈴「理事長!?これは大変失礼なことを言ってしまって申し訳ありません!」ペコペコ

沙知「いやいや気にしないでくれたまえ。私が学生の頃もいちいち理事長のことまで覚えなかったさ」

小鈴「あわわわ恐縮です!」

21: 2025/02/01(土) 21:31:15 ID:???00
沙知「それより急いでいたんじゃないかな?」

小鈴「そうでした!徒町は授業があるのでこれで失礼します!」

沙知「ああそうだ、徒町さん下の名前は何ていうんだい?」

小鈴「小鈴です!」

沙知「小鈴か、いい名だね」

大賀美理事長は徒町をまじまじと見つめている。

沙知「徒町小鈴、君に叶えたい“願い”はあるかい?」

小鈴「はい?願いって、急に言われましても...」

沙知「それもそうだ!引き留めてすまなかったね。授業頑張りたまえ」

小鈴「はい!ありがとうございます!」


沙知「....徒町小鈴、なるぼどねぃ」

22: 2025/02/01(土) 21:46:49 ID:???00
キーンコーンカーンコーン

教師「それじゃあホームルームはここまで。風邪が流行っているから各自体調管理に気を付けること。以上」

ガヤガヤ

小鈴(さてこの後は着替えてからめぐちゃんの部屋に行って――」

陸上部「小鈴ちゃんこの後部室の掃除手伝ってもらえないかな?体調不良が多くて人でが足りなくて....」

小鈴「いいよ!徒町にできることならなんでも手伝うよ!」

陸上部「ありがとう!やっぱり小鈴ちゃんやさしいね!」

小鈴「そんなことないよ。徒町にはそれくらいしかできないから!」

小鈴(少しくらい遅れてもめぐちゃんは大目に見てくれるよね)

23: 2025/02/01(土) 21:47:53 ID:???00
――――――

小鈴(すっかり暗くなっちゃったな....めぐちゃん待ってるだろうし早く行かないと)

カキン!カキン!

小鈴(?何の音だろう....体育館裏のほうから?)スタスタ

ガキン!ブワッ!

小鈴「!!!」サッ

建物の陰から音のするほうを覗くと、金属同士がぶつかる音と共に強烈な衝撃波が全身を打った。

小鈴(なに!?暗くてよく見えないけど、人影が2....いや3人?)

ひとりはこちらに背を向けて立っていて顔までは見えない。
だが問題はあとのふたりだ。
その人影は気を抜けば見失ってしまうほどのスピードで急接近と離反を繰り返し、接近するたびに火花を散らしながら金属音を打ち鳴らしている。

24: 2025/02/01(土) 21:49:32 ID:???00
小鈴(喧嘩...?とてもそんなレベルの話には思えないけど、誰か先生を呼ばなきゃ!)

ここにいてはいけない。生物としての本能が身体に離脱を命令する。しかし恐怖に震える体は思うように動かず――

小鈴「うわっ!」ドテン!

???「何者だ!」

小鈴「っ!」ダッ!

先ほどまでの震えが嘘のように全力で走る!
“アレ”が何かはわからないが、関われば命が危険にさらされるということは理解できた。

小鈴(とにかくどこか隠れられそうな所に逃げなきゃ!)

寮までは距離が離れている。一刻も早く身を隠さなければ、先ほど高速の打ち合いをしていた人物ならば一瞬で追いついてしまうだろう。

自身のすぐ後ろに巨大な津波が迫っているような感覚。少しでもスピードを落とせば瞬く間に黒い氏に飲みこまれる。
そんな強迫観念に突き動かされ、気が付いたら大倉庫の前まで来ていた。

小鈴「お願い....開いて!」

ガチャ

小鈴「やった!」

25: 2025/02/01(土) 21:51:38 ID:???00
大倉庫は一人で入れば遭難すると言われるほど広く、高い棚に囲まれ見通しが悪い。
ここならいかに脚が速かろうと、闇夜の中で隠れた人を見つけ出すのは不可能といえるだろう。

小鈴「...」

小鈴(倉庫の中に入ってきた気配はない...逃げ切れたのかな?)

小鈴「ふー....」ホッ

???「逃げ切れると思いましたか?」

小鈴「!!!」ビクッ

真後ろから聞こえた声に振り替えろうとした瞬間――

ゴスン!

強烈な力で腹を蹴り上げられ、数メートル飛ばされて棚に激突する。

ガッシャン!ガラガラ!

小鈴「かはっ!」

棚に置いてあったものが体に落ちてくる。
だがそんなこと気にならない程に、蹴り上げられた腹が痛い痛い痛い痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛――

小鈴「おえぇ!!!」ビチャ

26: 2025/02/01(土) 21:55:10 ID:???00
???「サーヴァントが助けに来ないということはまだマスターでは無いということですね...可哀そうですが、見られたからには頃すのがルールですので」

そう言って目の前の女性は倒れている徒町の首を掴み上げ――

小鈴「がっ...!あ...」

締めあげられた首が軋みを上げる。ずれた骨は脊髄を圧迫し、背骨に熱した鉄の棒を差し込まれているような熱い痛みを感じる。

小鈴(いやだ...氏にたくない...徒町はまだ何もできてない!まだ“何者にもなれてない!”こんな訳もわからず殺されるなんて――)

小鈴「誰か...助けて...!!!」

バチバチ⚡

右手の甲に燃えるような痛みを感じる。

瞬間――

???「!」

ドゴーン!

大砲のような音と共に先ほどの女性は吹き飛び、目の前には――

梢「サーヴァント、バーサーカー、乙宗梢。召喚に従い参上しました。あなたが私のマスターかしら」

月光の中、紫色の長い髪に紅い着物を着た美しい女性が、徒町の前に立っていた。

27: 2025/02/01(土) 22:14:40 ID:???00
深緑色の瞳は徒町をしばらく見つめると、先ほど吹き飛ばした女性を向き直り、

小鈴「あれ?」

そこには崩れた棚があるだけだった。

梢「敵対サーヴァントは去ったようね。マスター、怪我はないかしら」

小鈴「は、はい。大丈夫だと思います。助けていただき、ありがとうございました」

小鈴(蹴られたところは痛いけど....多分骨は折れてないと思う)

小鈴「それよりあなたは一体!突然出てきたように見えたし...さっきの人も!あんな怪力人間とは思えません!」

梢「...ごめんなさいマスター。話の途中だけれど、別のサーヴァントの気配を探知したわ。今すぐ迎撃に向かいます」バッ

小鈴「あっ待って!」

バーサーカーと名乗った女性は疾風のようなスピードで大倉庫を飛び出していく。

小鈴「はあ...はあ...」

お腹を押さえながら自分も大倉庫を出る。

28: 2025/02/01(土) 22:19:14 ID:???00
ドガーン!ドガーン!

花帆「吟子ちゃん!」

吟子「だからっ!キャスターって呼んでってば!」ピュン=🔵 ピュン=🔵

梢「ふん!はっ!」バコン!バコン!

バーサーカーの前には白い着物の女の子が相対していた。
手元からは無数の光の玉を生み出しバーサーカーに飛ばしている。

しかし、バーサーカーはその攻撃を素手で真っ向から迎撃し、じわじわと接近していく。

吟子「くっ対魔力が高い!これじゃあこっちの攻撃が通らない!花帆、ここは一旦立て直し――」

花帆「吟子ちゃん前!」

吟子「え?」

バーサーカーは隙と見るやいなや10メートルの距離を一息に詰め、相手の頭を掴むと勢いそのままで地面に叩きつけた。

吟子「ごはっ!」グギッ

バーサーカーは頭を掴んだまま着物の少女を持ち上げると、枕でも投げるように人の体を軽々と放り投げた。

梢「ふんっ!」ブン!

花帆「吟子ちゃん!!!」

29: 2025/02/01(土) 22:23:07 ID:???00
小鈴(後ろにいる人、制服...赤いスカーフってことは2年生?)

梢「サーヴァントは戦闘不能。盾を失ったマスターがどうなるか...あなた、わかっているわよね?」

花帆「っ!」ビクッ

バーサーカーは先ほどと全く同じ勢いで制服を着た少女に飛びかかり、その頭を――

小鈴「やめて!バーサーカー!!!」

キィーン!

再び右手の甲が熱くなり、バーサーカーは拳を当てる寸前でその動きを止めた。

梢「身体が動かない!?まさか令呪!どうして止めるのマスター!」

小鈴「その人は蓮ノ空の先輩です!ただの人間がバーサーカーに殴られたら氏んじゃう!」

梢「それが聖杯戦争よ!あなたもわかっていて私を呼んだんじゃないの!?」

小鈴「知りません!徒町はただ巻き込まれただけで!助けてくれたことは感謝してます!でも徒町を救ってくれた人が誰かを頃すところなんて見たくありません!」

梢(くっ令呪の拘束程度、私なら!)ググググ

30: 2025/02/01(土) 22:26:04 ID:???00
小鈴「バーサー...ごほっごほ!」ビチャ

小鈴(え?ナニコレ、血?)

小鈴「...」バタン

梢「マスター!?」

花帆「!その子、怪我してるの?」

梢「あなたには関係ないわ」

花帆「診せて!あたしなら直してあげられる!」

梢「そんな言葉を信じると思うの?近づいて殺そうという魂胆なのでしょう」

花帆「じゃあどうするの?キャスターならともかくバーサーカーに治癒魔術が使えるの?」

梢「っ...だいたいあなたが私のマスターを助ける理由がない。不自然よ」

花帆「理由ならあるよ。あたしのサーヴァントは戦闘不能で、このままだとあたしは殺される。だから、取引をしたいの」

梢「取引?」

31: 2025/02/01(土) 22:28:41 ID:???00
花帆「あたしがあなたのマスターを助けてあげる。その代わりあたしたちのことは見逃して!」

梢「なるほど...意外と冷静なのね。でもあなたにはまだキャスターがいるわ。今はあそこで伸びてるけど、隙を見てマスターを狙っていないとも限らない」

花帆「なら...」スッ

花帆『令呪をもって命じる。部屋に戻っていて!キャスター』

キィーン!

吟子「か、ほ――」スー…

キャスターの姿が消える。

梢「なっ!?あなた正気?サーヴァントを...」

花帆「どう?これでキャスターはいないよ。あたし一人ならバーサーカーで監視できるでしょ?」

梢「...いいわ、マスターのことを診てちょうだい。ただし変な真似をすればすぐに頃すわ」

花帆「わかった!それじゃあ失礼して...ふんふん、外傷はなし。お腹が腫れてる」グイグイ

小鈴「うっ!!!」

花帆「まさか内臓が傷ついてる!?大変!このままじゃこの子氏んじゃうよ!」

梢「なんですって!治せるのよね!?」

花帆「治せるけどここじゃ無理、理事長室に行こう!あそこなら安全だし道具も揃ってる!」

梢「案内してちょうだい!」

花帆「うん、ついてきて!」

32: 2025/02/01(土) 22:31:23 ID:???00
【 理事長室 】

花帆「それじゃいくよ!せーの『フラワー』!」🌸

小鈴「うぅ...はっ!ここはいったい...」

梢「マスター!」

沙知「お目覚めのようだね、徒町小鈴。記憶はあるかい?」

小鈴「えーと、徒町は朝お母さんに行ってきますをしてそれから...」

沙知「それはだいぶ前の記憶だねぃ」

小鈴「そうだ!変な人に襲われて、バーサーカーに助けられて、それで...」

沙知「あーそこまで思い出したならいいよ。大体の話は花帆とバーサーカーから聞いてるから」

33: 2025/02/01(土) 22:32:58 ID:???00
花帆「ね!ちゃんと治ったでしょ?」

梢「そうね、感謝するわ...ただ、内臓の破裂をそんな一瞬で治せるのなら、わざわざここに移動する必要はなかったと思うのだけれど」

花帆「あの場でやってたら治した瞬間に殺されてたかもでしょ?」

梢「あら、主の命の恩人にそこまでするほど非情じゃないわ。でもあなたがその気なら今ここで決着をつけてもいいわよ」

沙知「やめたまえ、ここは戦闘禁止区域だ。それに“監督役”である私に怪我を負わせれば即刻退去してもらうことになるぞ、バーサーカー?」

梢「なるほど、案外ちゃっかりしているのね、キャスターのマスター」

34: 2025/02/01(土) 22:33:55 ID:???00
小鈴「あ、あのー...」

沙知「おっとすまんすまん!一番説明が必要な人をほったらかしてしまった」

小鈴「いえ!お気になさらず!徒町のことはいないものとして扱ってください!」

沙知「そうもいかないさ、何せ君はもう当事者だからね。まず確認なんだが、徒町小鈴、君は魔術師かい?」

小鈴「まじゅつし?魔法使いのことですか?」

沙知「おーけー君が魔術を知らない一般人ということはよくわかった。魔術師と魔法使いは大きく異なるが、今の君に説明しても仕方がないようだね」

小鈴「すみません!所詮徒町ですので難しいことはよくわかりません!」

沙知「うむ、素直でよろしい!だがそこまで自分を卑下する必要はない。何せ魔術はその存在を徹底的に隠しているからね」

小鈴「恐縮です!」

35: 2025/02/01(土) 22:35:23 ID:???00
沙知「要点だけ話そう。君が巻き込まれたのはこの蓮ノ空女学院で“2年ごと”に行われている『聖杯戦争』という儀式だ」

小鈴「聖杯戦争?」

沙知「そうだ。サーヴァントを召喚しマスターとなった魔術師が、万能の願望器である聖杯をめぐりサーヴァント同士を戦わせ頃し合う。最後の一組になったマスターとサーヴァントが、聖杯を手に入れ願いを叶える権利を得る」

沙知「サーヴァントとはそこのバーサーカーやキャスターのような、人知を超えた力を持つ使い魔のことさ」

梢「使い魔とは心外ね。サーヴァントがマスターの言うことを聞くのは『令呪』という絶対命令権あってのものよ」

沙知「これは失礼。たしかにサーヴァントは使い魔というカテゴリに当てはめるのは不適切だったね。何せ主人であるマスターよりもはるかに強いんだから」

沙知「今話に出た令呪というのは、君の右手の甲にある赤い痣のようなものさ。全部で3画あって、サーバントに対して絶対の命令を与えられる」

右手の甲を見る。そこにはいつの間にか赤いシンボルが浮かび上がっていた。既に1画消えた跡がある。

36: 2025/02/01(土) 22:36:29 ID:???00
小鈴「あの、いきなりぶっ飛んだ話をされて混乱しているんですが...サーヴァントは勝手にでてくるものなんですか?」

沙知「まさか!正式な手順と召喚のための準備をしてはじめて召喚できる。そんなタケノコみたいにぽんぽん生えてくるもんじゃないよ」

小鈴「でも徒町、何もした覚えはありません!」

沙知「そのようだね、蓮ノ空の聖杯戦争で召喚されるサーヴァントは少々特殊で“この学校自体が触媒”の役割を果たしている。普通の聖杯戦争では英霊にちなんだ触媒を用意しなければならないが....それは君には関係のない話だ」

小鈴「はあ...」

沙知「簡単に言ってしまうとね、君は事故でバーサーカーを召喚してしまったんだよ」

小鈴「そんな...!」

沙知「さて、そこで君には選択肢がある。聖杯戦争に正式に参加するか、令呪を手放し戦いから降りるかだ。今回は事情が事情だからね、降りたいというのなら私が君を保護しよう」

梢「...」

37: 2025/02/01(土) 22:37:26 ID:???00
沙知「だがどうだろう。君も聖杯に選ばれたからには何か強い願望があったんだろう?ならば――」

小鈴「やります!聖杯戦争!」

沙知「随分と決断がはやいな...さっきも言ったが、聖杯戦争は頃し合いだ。戦いに負ければ氏ぬぞ?」

小鈴「う...氏にたくはないです。でもお恥ずかしい話ですが、徒町は生まれてこのかたすごいことを一回もできたことがないんです。だから、例え事故でも偶然でも、何かを成し遂げられるチャンスがあるなら、徒町は全力で挑戦したいんです!」

沙知「ほう、なるほどねぃ」

小鈴「それにバーサーカーには危ないところを助けてもらいました。ここで徒町が逃げたら、助けてくれたバーサーカーに面目がありません!」

花帆「一応あたしも小鈴ちゃんの命救ってるよ?」ズイッ

小鈴「うわ!あなたは...えっと」

花帆「花帆だよ!日野下花帆、よろしくね!」

小鈴「はい!花帆先輩もありがとうございました!」

38: 2025/02/01(土) 22:40:05 ID:???00
梢「...ちょっといいかしら、キャスターのマスター。あなた、私のマスターに馴れ馴れしくないかしら?一応まだ敵同士なのだけれど」

花帆「え~あたし小鈴ちゃんを助けるために令呪まで使ったんだよ?もう友達でいいじゃん!」

梢「そんなわけないでしょう!?そもそも令呪を使ったのだって私のマスターが先よ」

小鈴「やめてよバーサーカー!喧嘩はだめだよ!」

花帆「...ねえ小鈴ちゃん、提案があるんだけど。あたし達と同盟を組まない?」

小鈴「同盟?」

梢「何を言っているのあなた!?」

花帆「小鈴ちゃんは魔術師じゃないんだよね?だったら魔術について教えてくれる先生が必要だよね。キャスターが傷を癒してる間、あたしが小鈴ちゃんに魔術を教えてあげる!そのかわりバーサーカーはその間あたしを他のマスターから守って!」

39: 2025/02/01(土) 22:41:14 ID:???00
梢「そんな話受け入れるわけないでしょ!」

小鈴「いや...そうしましょう!正直徒町、現状をまだちゃんと理解できてませんし、魔術についても知りたいです!よろしくお願いします!」

梢「マスター!?」

沙知「話はまとまったみたいだね。なら速やかに寮に戻りたまえ、ここは談話室じゃないんだから」

梢「ふん、キャスターが回復するまでの間だけよ!」

花帆「うん!よろしくね!小鈴ちゃん!バーサーカー!」

沙知「あーそうそう、サーヴァント同士の戦いは夜、人目につかないようにやってくれたまえよ!それじゃ、また聖杯戦争について質問があればまたここに来たまえ」

小鈴「はい!ありがとうございました!おやすみなさい!」

40: 2025/02/01(土) 22:42:07 ID:???00
――――――

花帆「とりあえず今日は疲れただろうし、魔術の勉強は明日からにしよう!」

小鈴「わかりました!おやすみなさい花帆先輩!」

花帆「うん!おやすみ小鈴ちゃん!バーサーカー!」



花帆「ただいまー!って、吟子ちゃんなんで正座してるの?」

吟子「...」

花帆「もしもーし?」プニプニ

吟子「...」プイッ

花帆「もしかして...怒ってる?」

吟子「別に怒っとらんし」

花帆「怒ってるよね!?」

41: 2025/02/01(土) 22:43:18 ID:???00
吟子「じゃあなんで怒ってると思うの?」

花帆「小鈴ちゃんを助けたこと...?」

吟子「勝手に決めたこと!私にもちゃんと相談して!」

花帆「だって吟子ちゃん気絶してたじゃん!」

吟子「気絶はしてない。脳震盪で動けなかっただけ」

花帆「それじゃあ意味ないじゃん!あそこで小鈴ちゃんを助けなっかたら、あたし殺されてたかもしれないんだよ!?」

吟子「でも令呪を使う必要はなかったでしょ?」

花帆「だってバーサーカーが吟子ちゃんのこと警戒してたし....」

吟子「...はあ、もういいよ。これからは何かするときは相談してね。それで、話は折神を通して聞いてたけど、本当にバーサーカーのマスターと同盟を組むの?」

花帆「うん!小鈴ちゃんにはバーサーカーを止めてもらった恩があるし、それに小鈴ちゃん巻き込まれてマスターになった感じだったし。なんか放っておけないんだよね」

吟子「敵に塩を送る気?」

花帆「確かにそうだけど、小鈴ちゃんと仲良くなればバーサーカーを仲間にできるかもしれないでしょ?吟子ちゃんの攻撃はバーサーカーに効かなかったし、敵対するよりいいと思うなあ」

42: 2025/02/01(土) 22:45:05 ID:???00
吟子「うっ...まあ最後には戦うってわかってるならいい」

花帆「ありがとう吟子ちゃん!だーいすき!」ギュッ!

吟子「ちょっとやめてよ!友達じゃないんだから!」

花帆「え~あたしは吟子ちゃんのこと友達だと思ってるよ?」

吟子「私はサーヴァントなんだから、ちゃんとマスターらしく...あ、あーっ!」

花帆「吟子ちゃん?」

吟子「はじめて...」

花帆「ん?」

吟子「はじめて『キャスター』って呼んでもらったのが令呪による退却命令だなんて!私もう恥ずかしくて人前に出られないよ!ちょっと霊体化してるね...」スー…

花帆「あ!吟子ちゃん消えないで!一緒に寝ようよ~」

43: 2025/02/01(土) 22:46:32 ID:???00
――――――

小鈴「ここが徒町の部屋だよ!入って!」

梢「...」

小鈴「あ、寝る場所どうしよう...じゃあ徒町は床で寝るからバーサーカーベッド使っていいよ!」

梢「その必要はないわ。サーヴァントには睡眠も食事も必要ない。普段は霊体化しているからマスターは普段通り過ごしてもらって構わないわ」

小鈴「そうなの!?サーヴァントってすごいんだね!」

梢「それでマスター、話があるのだけれど――」

小鈴「あ、それ!その呼び方!」

梢「え?」

小鈴「マスターって呼ばれると、むずがゆいというか....徒町なんかがバーサーカーより偉いみたいで逆に肩身が狭いというか、だから別の呼び方にしてください!」

梢「...なら小鈴さん」

小鈴「はい!」

44: 2025/02/01(土) 22:49:11 ID:???00
梢「さっきの令呪はどういうことかしら?」

小鈴「?」

梢「結果的に小鈴さんの命を救うことになったとはいえ、無防備なマスターを排除する絶好の機会を妨害するなんて何を考えているの?」

小鈴「逆になんで無防備な人を攻撃できるの!?バーサーカーの力で殴ったら人間なんて簡単に氏んじゃうよ!」

梢「殺そうとしたのよ。それが聖杯戦争だもの。小鈴さんはまだ聖杯戦争の何たるかを理解できていないようね」

小鈴「わかってるよ!サーヴァント同士で戦うんでしょ?じゃあマスターを狙う必要ないよね?」

梢「いいえ、わかっていないわ。小鈴さん、サーヴァントはマスターからの魔力供給があって初めて現世に存在できるの。つまりマスターを討ってしまえばサーヴァントは放っておくだけで倒すことができるということ」

梢「考えてみてちょうだい、人知を超えた力を持ち、傷もすぐに癒えてしまうサーヴァントを倒すのと、ただの人間を頃すことのどっちのほうが簡単か」

小鈴「それは...」

45: 2025/02/01(土) 22:50:06 ID:???00
梢「理解できたかしら?」

小鈴「でも...そっちのほうが簡単だからって、人を頃すのはいけないことだよ!!」

梢「マスターを頃すことは小鈴さんの安全を守ることにもつながるのよ?」

小鈴「それでも徒町は...」

梢「...」

小鈴「...」

梢「...はあ、わかったわ。また令呪を使われたらたまらないもの。極力マスターは狙わないようにするわ」

小鈴「!」

梢「ただし、相手のマスターが小鈴さんを狙っていたら私も容赦はしない。この条件は飲んでもらうわよ」

小鈴「うん!ありがとうバーサーカー!」

46: 2025/02/01(土) 22:50:59 ID:???00
梢「まったく、お人好しなマスターだこと...さあ私から話したいことは終わったわ。明日からは魔術の訓練もあるのだし、今日は寝て体力を温存しましょう」

小鈴「わかった!おやすみなさい!」

梢「おやすみなさい」

小鈴「あ、そうだ!」

梢「?」

小鈴「これからよろしくね、バーサーカー」

梢「...ええ、こちらこそ。一緒に聖杯戦争を勝ち抜きましょう、小鈴さん」

47: 2025/02/01(土) 22:53:36 ID:???00
――――――

[ Interlude in ]

沙知「さて、もう出てきていいぞ。ライダー」

ライダー「...主様の言う通り、徒町小鈴はマスターになりましたね」スー

沙知「ああ、彼女は此度の聖杯戦争において台風の目になる。今日廊下で話した時に直感したんだ」

ライダー「直感...千里眼ですか?優れた素質のあるものは未来さえ見通すと言われる」

沙知「私のはそんな大層なものじゃないよ!言っただろ、ただの直感さ。それに未来予知ができるのなら、私の目的はここに来た時点で叶ってるよ」

沙知「さて、これで召喚されたサーヴァントは5基。ライダー、キャスター、ランサー、アーチャー、そしてバーサーカー。例年の記録によれば今回も5基が限度だろう」

沙知「しかし、まさかバーサーカーを召喚するとはねぃ...てっきりセイバーかと思ったよ」

ライダー「おかしいのですか?」

48: 2025/02/01(土) 22:56:18 ID:???00
沙知「ああ、蓮ノ空の聖杯戦争において召喚されるサーヴァントはここの元生徒たちだ。いくら魔術師とはいえ、生徒の中に頃し屋や狂人がいたら大変だろ?だから割り当てられるクラスはたいていアサシンとバーサーカー以外のクラスだ」

ライダー「ではあのバーサーカーは...」

沙知「さあね?狂化しているようには見えなかったけど、腹の中に何を隠しているかわからない。そうでなくても徒町小鈴は特別だ、彼女たちのことは特に注意して監視してくれ」

ライダー「御意に」

沙知「ライダーには迷惑をかけるな」

ライダー「いえ、主様の使命については召喚された際に説明を受け、私自身納得しておりますので。どうかお気になさらず」

沙知「ありがとうライダー、私の目的を果たすにはサーヴァントの協力が必要不可欠だ。今後ともよろしく頼む」

ライダー「はい」

沙知「さて、役者はそろった。いよいよ聖杯戦争も本格的に動き出すだろう」

沙知「――君たちの健闘を祈っているよ。マスター諸君」

[ Interlude out ]

49: 2025/02/01(土) 22:57:38 ID:???00
――――――

OPテーマ『Take It Over』

――――――

53: 2025/02/02(日) 21:32:05 ID:???00
【2月2日】

夢を見る。

私/少女はいつも一人だった。和風の屋敷は広く、毎日探検して遊んでいた。

前に家のものに外で遊びたいとお願いしたが、家の外は危ないからと許されなかった。

何年も家の中で過ごし、もう探検する場所もなくなったある夏の日。

ガサガサ

「なに!?野良猫?」

雲を眺めていたら裏庭のほうから物音が聞こえた。
恐る恐る覗いてみる。

「キャー!でたー!」

「きゃっ!」

「もしかしてお化け?きもの着てるし」

「失礼ね!ちゃんと生きてるわ!あなたこそ誰?泥棒!?」

「ちがうよ。あたしはおばけを捕まえに来たの!あなたはだあれ?」

それが、少女にとってはじめて出会った同じ大きさの人間だった。

──────

54: 2025/02/02(日) 21:36:20 ID:???00
梢「小鈴さん、起きなさい。もう朝よ」

小鈴「うーん、もうちょっと寝かせて...」

梢「小鈴さん!」

小鈴「わっ!あれ?」

梢「いろいろあって疲れていたとは思うけど、それそろ起きないなさい」

目の前には赤い綺麗な着物の女性。
それで寝ぼけた頭が覚醒する。

小鈴「そうだ、聖杯戦争に参加することになったんだ...」

梢「何ぼーっとしているの?早く顔を洗って着替えなさい」

梢「ところで小鈴さん、あなた朝食はいつもどうしているの?」

小鈴「え、食べてないよ?徒町料理できないから」

梢「朝食を食べていない!?なんて不摂生なの!いいかしら?朝というのは1日のうちで体の栄養が最も不足している時間なのよ。朝食を食べないと活動のためのエネルギーが足りなくて勉強も運動も力を出せないの」

55: 2025/02/02(日) 21:39:20 ID:???00
小鈴「あ、はい」

梢「あ、はいじゃないわ!もう、朝起きるのが苦手なら夜のうちに朝食を準備しておきなさい」

小鈴「でも聖杯戦争に参加するんだからそんな時間は」

梢「忙しいからと言って削っていいことと悪いことがあるのよ。大体、体力が落ちていたらそれこそ命取りになるわ」

小鈴「うう、じゃあやっぱり勉強時間を削るしか...」

梢「却下よ。聖杯戦争が終わっても人生は続くもの、勉強をおろそかにしてはいけないわ。それに来月には学年試験もあるでしょ?」

小鈴「でも今日からは魔術の勉強もしなきゃいけないんだよ!?普通の勉強と両立なんて、徒町には無理だよ!」

梢「気合で乗り切りなさい」

小鈴「そんな~」

56: 2025/02/02(日) 21:41:23 ID:???00
梢「それに魔術の勉強だけではないわよ。小鈴さんには体力づくりもしてもらいます。そっちは私が稽古をつけるわ」

小鈴「え?そんなの聞いてないよ!」

梢「寝ている間に小鈴さんの体をチェックさせてもらったの。あなた、あまりにも筋力がなさすぎるわ」

梢「そんな体ではサーヴァントの攻撃がかすっただけで氏んでしまう。だから小鈴さんの生存可能性を少しでも上げるために私が特訓してあげる」

小鈴「そ、そんな...いやこれもまたチャレンジ!徒町、強くなって立派なマスターになって見せます!がんばるぞ~!おー!」

梢「じゃあまずはランニングからね。私は霊体化して傍についているから」

小鈴「え、今から...?」

梢「あたりまえでしょう。さあ行くわよ!」

小鈴「う、うわ~!」

57: 2025/02/02(日) 21:43:44 ID:???00
──────

姫芽「...なんか小鈴ちゃん疲れてない?」

小鈴「うん。体力付けろって言われて、朝からランニングしてきたんだぁ」グタ

姫芽「へーがんばるね~あ、だからリストバンドつけてるの?」

小鈴「う、うん!そうなの」

小鈴(本当は令呪を隠すためだけど)

バーサーカーから誰がマスターかわからない以上は不用意に令呪を周りに見せないほうがいいと言われた。

敵にマスターであると知られると奇襲される危険が高まるからだ。

教師「このXにさっき導いた値を代入して──」

梢(今のところ教室内にマスターの気配はないわね)

小鈴「っ!」ガタッ!

教師「ん?どうした徒町」

小鈴「あ、いや...」

梢(ちょっと落ち着いて!授業中も霊体化して傍にいるって言ったでしょ?)

小鈴「そうだった!ごめんバーサーカー!」

小鈴(なんでもありません!すみませんでした!)

梢(逆よ!逆!心の声と実際の声が逆になっているわ!)

58: 2025/02/02(日) 21:47:11 ID:???00
教師「なんだ?寝ぼけてるのか?ちゃんと聞いとけよ~今度の期末も赤点とったら承知しないからな」

生徒1「徒町ちゃんてたまに面白いことする時あるよね!」ヒソヒソ

生徒2「また何か『チャレンジ』してるんじゃない?」ヒソヒソ

生徒1「今度は何してるんだろうね!」ヒソヒソ

小鈴「あ、あははは...すみません...」

姫芽「...」

59: 2025/02/02(日) 21:49:02 ID:???00
──────

小鈴「やっと昼休みだー学食行こっと」

慈「...」テクテク

小鈴「あ、めぐちゃーん!」

慈「.…..」テクテク

小鈴「あれ、聞こえなかったのかな?いつもはめぐちゃんのほうから声かけてくるくらいなのに」

小鈴「あー!そういえば昨日放課後のめぐちゃんとの約束忘れてた!もしかしてそれで怒ってる...」

小鈴「うーん、あとでメールで謝っておこう」

花帆「小鈴ちゃーん!」

小鈴「花帆先輩!」

花帆「学食?一緒に行っていい?」

小鈴「もちろんです!」

60: 2025/02/02(日) 21:50:44 ID:???00
花帆「えへへ~そうだ、小鈴ちゃんにLINE聞きたかったんだった!放課後のこととか、人前ではあんまり話したくなかったから」

小鈴「わかりました!」

梢(...小鈴さん、わかっていると思うけど)

小鈴(大丈夫だよ!花帆先輩はいい人だから!)

梢(そういうことでは...まあいいわ、いずれはわかるもの)

花帆「え?大丈夫だよ!小鈴ちゃんいい子だから!」

小鈴「花帆先輩?」

花帆「ううん!こっちの話!」

梢(案外似た者同士かもしれないわね、あなたたち)

小鈴「?」

61: 2025/02/02(日) 21:53:08 ID:???00
[ Interlude in ]

2月1日 夜

慈「もー!コスズちゃんいくら待っても来ないじゃん!電話してもでないし!こうなったら...」

慈「私のほうから突撃しちゃうんだよ☆」

慈「コスズちゃんーいる?」コンコンコン!

シーン...

慈「あれ~?いないのかな。さてはまたどっかで変なチャレンジしてるな。もう!暗くなるまでやってたら危ないって何回も言ってるのに!」

慈「しょうがない、迎えに行ってやるか!」

慈(とは言えどこにいるんだろう。校舎のほうはもう明り消えてたし、まさかこの暗い中で外にいるの?コスズちゃんならありえなくはないけど)

62: 2025/02/02(日) 21:54:35 ID:???00
カキンカキン...!

慈「ん?今何か聞こえたような」

音は体育館裏から聞こえていた。

慈「コスズちゃ──」

ガキン!ガキン!ブオーーン!

慈「!」サッ

慈(なに今の!暗くてよく見えなかったけど、人だった...よね?でもそれにしては動きが人間離れしていたような)

『何者だ!』

慈(見つかった!?)ビクッ

シーン...

慈(あれ?誰も来ない?)

恐る恐るのぞき込む。先ほどまでは3人だった人影は2人になっており、もう争っている様子はない。
今度は注意して顔を確認してみる。

慈「────ルリちゃん?」

[ Interlude out ]

63: 2025/02/02(日) 21:57:02 ID:???00
──────

花帆「それでは、日野下花帆による魔術講座のはじまり~」パチパチパチ

小鈴「よろしくお願いします!」

放課後、花帆先輩を徒町の部屋に招き、魔術について教えてもらうことになった。

花帆「小鈴ちゃんは魔術について何にも知らないんだよね?だったら最初は基本的な説明になるけどいいかな?」

小鈴「大丈夫です!理解できるはわかりませんが!」

花帆「じゃあできるだけわかりやすく説明するね!まずは『魔術』について、魔術っていうのは簡単に言うと奇跡を起こすことかな」

小鈴「奇跡!」

花帆「と言ってもなんでもできる訳じゃないんだけどね」

花帆「有から有は作れるけど、無から有は作れない」

花帆「魔術を使うことで得られる結果は、魔術を使わなくてもできることだけなんだ」

64: 2025/02/02(日) 21:58:53 ID:???00
小鈴「ん?じゃあ魔術を使う意味って何なんですか?」

花帆「大切なのは結果じゃなくて、そこまでの過程の方なの」

花帆「小鈴ちゃんは花を育てたことはある?」

小鈴「はい。小学生の時にアサガオを育てました」

花帆「花が咲くまでどのくらい掛かったか覚えてる?」

小鈴「えっと…確か3ヶ月くらい?」

花帆「そうだね。時期によって少し変わるけど、大体そのくらいかな!」

花帆「でもね、魔術を使うと種から開花までたったの数十秒でできるのです!」

小鈴「おー!」

花帆「ね?花が咲くって結果は同じだけど、それまでの過程を全部省略できる。これが魔術で起こす奇跡なのです!」

花帆「そんな感じで、時間や労力をかければできることを、魔力を使うことで一瞬で実現するのが魔術ってこと!」

小鈴「なるほど!」

65: 2025/02/02(日) 22:01:02 ID:???00
花帆「アルコールを使わずに火を起こしたり、砥石を使わずに包丁の切れ味を良くしたり!」

小鈴「はっ!では勉強をせずに頭を良くすることも!?」

花帆「それは...できるならもうあたしがやってるかな!」

小鈴「そんな...魔術も万能ではないんですね...」

梢「さっき花帆さんも言っていたでしょ?元々ないものは魔術でもどうしようもないのよ」

小鈴「辛辣!?」

花帆「あはは!それでね、魔術を研究して『根源』を目指そうとしてる人達を魔術師って言うんだ」

66: 2025/02/02(日) 22:02:14 ID:???00
小鈴「根源?」

花帆「なんでも世界の全ての情報がある場所なんだって!そこでは過去も未来も全部わかるとか」

小鈴「世界の全てがわかる…ん~でも徒町、あんまり未来は知りたくありません」

花帆「どうして?」

小鈴「もし自分の未来が『徒町は結局何者にもなれませんでした』だったら…徒町はもう頑張れなくなるかもしれません」

花帆「そっか。実はあたしも根源には興味無いんだ!」

花帆「──あたしも、自分の未来を見るのは怖いから」

67: 2025/02/02(日) 22:07:49 ID:???00
それから花帆先輩に代表的な魔術をいくつか教えてもらった。

小鈴「なるほど、『強化』に『変化』『投影』『転換』『支配』『魅了』...」

小鈴「花帆先輩の魔術は何なんですか?」

花帆「あたしのは分類的には『治癒』魔術かな!」

梢(破裂した内臓を一瞬で治すのは異常だと思うのだけれど…)

花帆「そしてそれらの魔術を可能にするのが魔術師にとっての命とも言える『魔術回路』なのです!」

小鈴「まじゅつかいろ?」

花帆「そう!生命力を魔力に変換するための擬似神経だよ!これが無いと魔術は使えないんだ」

小鈴「うう~次から次へと知らない単語が…」グルグル

花帆「頑張って小鈴ちゃん!」

68: 2025/02/02(日) 22:09:46 ID:???00
花帆「あれ?そういえば小鈴ちゃんは魔術師じゃないのになんで令呪が出てきたんだろう?」

小鈴「何かおかしいんですか?」

花帆「令呪は魔術回路と繋がってるから、一度回路を『開いて』いないと出てこないはずなんだけど」

梢「一応言っておくと、小鈴さんからは令呪のパスを通して魔力の提供を受けているわ。だから少なくとも一回は魔術回路を開いたことはあるはずよ」

小鈴「え、徒町そんなことした記憶ありません!もしかして勝手に開いちゃうものなんですか?」

花帆「そんなこと絶対ないよ!はじめて魔術回路を開く時はすっごく苦しくて大変なんだよ!?」

小鈴「ならどうして...」

梢「誰が無理やりこじ開けたのかもしれないわね」

69: 2025/02/02(日) 22:11:22 ID:???00
花帆「まあいつ開いたかはどうでもいいや!大切なのは、小鈴ちゃんは魔術師になる資格があったってことだよ!」

花帆「あ、根源を目指さないなら魔術使いかな?」

小鈴「!!!」

小鈴(もしかして...これで何にもない徒町から脱却できる?)

花帆「じゃあさっそく魔術回路を開いてみよう!といっても多分小鈴ちゃん自分じゃ開けないだろうから...じゃーん!」

小鈴「花?」

花帆「ただの花じゃないよ。花帆が魔力を与えながら育てた特別な花なのです!じゃあ、食べて」

小鈴「食べる!?花をですか?」

花帆「強い魔力を含んだものを体内に取り込むのが一番確実だからね。体がびっくりして魔術回路が開くの!」

70: 2025/02/02(日) 22:13:32 ID:???00
梢「一応聞くけど、毒とかあったりしないわよね?その花」

花帆「蓮の花だから毒はないよ。近くにある湖から採ってきて育てたの!心配なら花びら1枚食べてみたら?」

梢「そうするわ......強い魔力は感じるけれど体に害はなさそうね」

小鈴「ほんとにこれを丸ごと食べるんですか?せめて料理にするとか...」

花帆「うーん小分けにして食べるより一気にいったほうがいいかな。ショック療法みたいなもんだから!」

小鈴「そうですか...い、一気食いチャレンジです!パクッ!」モグモグ

小鈴「......っん」ゴクン

71: 2025/02/02(日) 22:15:03 ID:???00
小鈴「食べれました...のどにつっかえて飲み込みづらかったです」

梢「それで、体調はどう小鈴さん。体におかしいところとかある?」

小鈴「いえ特にはなにも...」

花帆「そんなにすぐには効果は出ないよ。でもしばらくしたら急に来るから気を付けてね」

花帆「強制的に開いた回路は、自分で意識して閉じないと延々と生命力を魔力に変換し続けて、最終的には氏んじゃうから」

小鈴「そういうことは食べる前に言ってほしかったです!」

ドクン!

小鈴「!」

72: 2025/02/02(日) 22:16:47 ID:???00
小鈴(体が熱い…頭が重い…)

小鈴「う──」ガクン

梢「小鈴さん!」

花帆「頑張って小鈴ちゃん!体の中でスイッチを押すイメージだよ!」

小鈴(スイッチ...スイッチ...)

体内に意識を集中する。
しかし熱に浮かされた頭では上手く集中できない。

小鈴(気持わるい...頭がぼーっとする...はやく魔術回路を閉じないと)

梢「──こ──さん!」

花帆「──ず──ちゃ──」

小鈴「」

誰かが名前を呼んでる気がする。
ごめんなさい。徒町はやっぱりダメダメでした。
こんなに良くしてもらったのに、期待に応えられな──

73: 2025/02/02(日) 22:19:48 ID:???00
花帆「『フラワー』!!」🌸

小鈴「あれ?」

さっきまでの体の熱が嘘みたいに冷めている。

花帆「ふーあぶなかった~さすがにあれ以上は見ていられなかったからね。こっちで閉じさせてもらったよ!」

小鈴「徒町...失敗しましたか...?」

花帆「はじめてだったからね。まあ自分で切り替えられないとなると魔術を使うのは難しいだろうけど...」

小鈴「...」シュン

花帆「ま、まだ絶対無理って決まったわけじゃないから!魔術回路が開く感覚はわかっただろうし、何かきっかけがあれば自分でも開けるようになるかもだし!?」

花帆「大切なのはイメージだよ、イメージ!魔術回路のオンオフのスイッチは魔術師ごとに違うから。あたしの場合は胸の奥で花が咲くイメージ!」

小鈴「は、はい!頑張ります!徒町、頑張ることだけが取り柄なので!」

花帆「その意気だよ小鈴ちゃん!」

74: 2025/02/02(日) 22:21:58 ID:???00
梢「ところで小鈴さんの魔術回路は何本だったの?さっき調べていたのでしょ」

花帆「あ...」

小鈴「花帆先輩?」

花帆「えっと...1本でした...」

梢「......」

小鈴「よくわからないけどバーサーカーが露骨にがっかりしています!」

花帆「まあ気にしないで!そもそも小鈴ちゃん、まだ魔術を使う段階にも行けてないから!」

小鈴「さらっとディスられました!?」ガーン

花帆「さっ今日はここまでにしておこう!あんまり詰め込んでも混乱するだろうし!」

小鈴「わかりました...花帆先輩ありがとうございました」

花帆「また明日ね!バイバーイ!」

ガチャン

75: 2025/02/02(日) 22:25:12 ID:???00
梢「お疲れ様、小鈴さん。本当はこれからマスターを探しに行きたいところだけれど。今日は外も静かだし、行ったところで無駄でしょう」

小鈴「うん。バーサーカーもありがとうね!」

梢「私は何もしていないわ」

小鈴「でもさっき徒町が苦しんでた時に心配してくれてたでしょ?バーサーカーの呼んでくれてる声聞こえてたよ」

梢「あ、あれは!サーヴァントとしてマスターに氏なれたら困るから!それだけよ!」
      
小鈴「そうなの?でもやっぱりありがとう。あの声のおかげで意識保てたから!」

梢「そ、そう。それはよかったわ。さあ、はやく休みましょう!明日の朝もランニングしますからね!」

小鈴「はーい!」

76: 2025/02/02(日) 22:26:49 ID:???00
──────
吟子「おかえりなさい、花帆」

花帆「ただいま吟子ちゃん!お留守番ありがとうね」

吟子「それで小鈴の様子はどうだった?」

花帆「う~ん、難しいかな…魔術回路が1本だけとなると、基礎の基礎くらいしかまともにできないだろうし。吟子ちゃんはどう思ったの?」

吟子「折神ごしじゃ声くらいしか聞こえないから、詳しいことはわからない」

吟子「あとありがとう、約束通り『兎』を置いてきてくれて」

花帆「バーサーカーの目を盗んでやるの大変だったよ!全然警戒解いてくれないんだもん。小鈴ちゃんが倒れた時になんとかベットの下に滑り込ませたけど」

77: 2025/02/02(日) 22:28:28 ID:???00
『折神』、魔力を織り込んだ折り紙で、折った形によってさまざまな用途を発揮する。

花帆には盗聴の力を持った『兎』の折神と、持っている者の座標を周りに誤認させる『狐』の折神を持たせている。

サーヴァントを自室に待機させている花帆にとっては、この折神はいざという時の保険だ。

吟子「これで小鈴とバーサーカーの会話を盗み聞きできる。あの二人、部屋では普通に話してるみたいだし」

花帆「でも小鈴ちゃんが急に裏切るとは思えないけどなー」

吟子「小鈴はそうでもバーサーカーはわからないでしょ」

花帆「そうかなー?あたしは結構いい人だと思うよ?少なくとも小鈴ちゃんのことは大切にしてるみたいだし」

78: 2025/02/02(日) 22:30:40 ID:???00
吟子「敵同士なんだからあんまり肩入れしないようにね。どんなに仲良くなっても最後には戦うことになるんだから」

花帆「う~もう既にあんまり戦いたくないかも」

吟子「ちょっと!」

花帆「まあでも、他にどんなマスターがいるかわからない今は下手に敵対しないほうが良いと思うな!もしかしたら協力して倒さないといけない黒幕がいるかもしれないし!」

吟子「小説の読みすぎだよ...花帆が協力するのは私だけでいいの」

花帆「あ、もしかして吟子ちゃん、あたしが小鈴ちゃんに優しいから嫉妬してたの?ごめんね!あたしが一番信頼してるのは吟子ちゃんだから!」ギュッ♡

吟子「別に嫉妬とかじゃないから!」

──────

79: 2025/02/02(日) 22:33:08 ID:???00
[ Interlude in ]

沙知「ほう?意外な来客だ。どうしたんだい、そろって学校の運営について直談判でもしに来たのかな?」

沙知「おいおいそんなに怒らないでくれたまえよ!一応最初は理事長として対応しないといけないだろう?特に君のほうはマスターではないようだし」

沙知「聖杯戦争について教えてほしいと...それはルールについてかな?それとも仕組みについて?」

沙知「サーヴァントについて?確かに蓮ノ空で召喚されるサーヴァントは特別だけど」

沙知「──なるほどねぃ。どうやら君には知る権利があるようだ」

沙知「いいだろう、話そう。蓮ノ空で召喚されるサーヴァントがどうやって生まれるのかを」

[ Interlude out ]

81: 2025/02/03(月) 17:56:02 ID:???00
【2月3日】

夢を見る。

その人間はエリという名前だった。
最初はお互い驚いたけれど、同い年ということもあってすぐに意気投合した。

特に私/少女にとっては初めての同じ大きさの人間で、いつも一人だった少女にとっては誰かと一緒に遊ぶのは斯くも楽しいのかというほど胸が弾んだ。

エリはそれから毎日少女の家に遊びに、もとい忍び込んできた。

エリ「こずえちゃんってどこの学校に行ってるの?」

梢「がっこう?よくわからないわ。私は家から出たことがないもの」

エリ「えー!学校行ってないの!?こずえちゃんいけないんだー!」

梢「むっ、がっこうって何するところなのよ」

エリ「う~ん勉強するところかな?」

梢「勉強なら家でもできるわ!私も家のものに毎日教えてもらっているもの!」

82: 2025/02/03(月) 17:56:44 ID:???00
エリ「でも友達にあったりはできないでしょ?」

梢「ともだち?なにかしら、動物?」

エリ「友達は友達だよ!あたしにとってのこずえちゃんだよ!」

梢「エリのようなもの?エリはたくさんいるの?」

エリ「あたしはひとりしかいないよ。みんな違っていろんな人がいるんだよ?」

梢「どれくらいいるの?」

エリ「え、わかんない...えっと、ひとクラスに10人くらいだから...うーん、50人くらい!」

梢「50人!?そんなにいるの?」

エリ「うん!」

少女はその日はじめて家の外にもたくさんの人間がいることを知った。

――――――

83: 2025/02/03(月) 17:58:50 ID:???00
今朝は昨日のうちに買っておいたおにぎりを食べた。
バーサーカーはまだ何か言いたそうだったけど、諦めたようだ。
昨日と同じようにランニングをしてから学校に行く。

小鈴「姫芽ちゃん休みか...放課後様子見に行ってみようかな。でも、万が一聖杯戦争に巻き込んじゃったら悪いしな~」

姫芽ちゃんの席は空席だった。朝のホームルームで担任の先生が風邪で欠席と伝えていた。

小鈴(風邪はやってるし、徒町も気を付けないと)

キーンコーンカーンコーン

昼休みにめぐちゃんのいる3年生の教室をのぞいてみたが、見当たらなかった。

小鈴(結局昨日はメールするの忘れちゃったし、直接謝りたかったんだけど...まあ、めぐちゃんはそんなに根に持たないから大丈夫かな!)

84: 2025/02/03(月) 18:00:27 ID:???00
キーンコーンカーンコーン

授業は滞りなく進み、あっという間に放課後になった。

今日はなんだかいつもより静かだった気がする。

実家にいたときにたまに見た嵐の前の海を思い出す。
波が全然立たなくて音も静かな海。
穏やかというよりも、これからやってくる何かから身を守るために海が息を潜めているようなそんな感じ。

おじいちゃんが『こういう日はだめだ。魚もみんな隠れて何も取れやしない。こんな日にあがるのはゴミか氏体くらいだ』と言っていて、子供心に怖かったのを覚えてる。

ピロン!

小鈴「花帆先輩からメールだ」

花帆『小鈴ちゃん、今日は私の部屋に来てもらえるかな?回路を開く練習ついでに小鈴ちゃんの魔術属性を調べたいんだけど、あんまり道具を持ち出したくないんだよね。どうかな?』

小鈴「わかりました、っと」ピロン

85: 2025/02/03(月) 18:01:10 ID:???00
梢「花帆さんの部屋に行くのならいつもより警戒したほうがいいわ。あの子はともかく、サーヴァントは小鈴さんのことをどう思っているかわからないもの」

梢「特にキャスターなら確実に部屋を工房化しているはずよ」

小鈴「工房ってなに?」

梢「魔術師が研究をするための場所で、自身の研究を守るために魔術的な罠が張り巡らせてある、いわば要塞よ。キャスターのサーヴァントは元々魔術に特化した人間があてがわれるクラスだから、部屋のセキュリティも万全でしょうね」

小鈴「そうなんだ。バーサーカーは工房つくれないの?」

梢「私は魔術についてそこまで詳しくなかったから...今の小鈴さんほどではないけれどね」

小鈴「う、今度工房のつくり方も教わります...」

そんな話をしながら着替えて花帆先輩の部屋に行く準備を進めていると、

Prrrrr...

86: 2025/02/03(月) 18:09:23 ID:???00
小鈴「電話だ、めぐちゃんから?もしもし――」

慈「助けて小鈴ちゃん!!!」

小鈴「めぐちゃん!?どうしたの!」

慈「変な奴に襲われてるの!いま体育館裏に隠れてるから迎えに来て!」

小鈴「わ、わかった!体育館裏だね!すぐ行くからじっとしてて!」

小鈴「バーサーカー、これって!」

梢「...サーヴァントに襲われている可能性はあるわね」

小鈴「どうしてめぐちゃんが襲われるの!?」

梢「マスターからの魔力供給が十分でないサーヴァントの中には、不足分の魔力を補うために人を襲い魂を食らう外道もいるわ」

小鈴「!」

自分が大倉庫で襲われた時のことを思い出す。もしもめぐちゃんがあんな目にあってしまったら!

小鈴「行こうバーサーカー!」

梢「ええ!」

――――――

87: 2025/02/03(月) 18:12:11 ID:???00
全速力で走って体育館裏に着いた。

小鈴「はあ、はあ...めぐちゃん!どこ!」

慈「小鈴ちゃんこっち!」

小鈴「めぐちゃ――」

梢「っ!危ない!」グイッ!

小鈴「え?」

ヒュン!
鼻先を何かが掠める。

小鈴「うわっ!」

88: 2025/02/03(月) 18:14:08 ID:???00
梢「サーヴァント...あなた謀ったわね!」

慈「ちっ、せっかく苦しめずに終わらせてあげようと思ったのに...悪運の強いやつ」

小鈴「め、めぐちゃん...?」

めぐちゃんは襲われてる風ではなかった。
そしてその前には金髪の小柄な女の子がピンク色の棒を構えて立っていた。

梢「その長物、ランサーのサーヴァントね」

瑠璃乃「ごめいさつ!サーヴァント、ランサー、大沢瑠璃乃!よろよろ~」

89: 2025/02/03(月) 18:15:54 ID:???00
梢「わざわざ自分から名乗るなんて、不意打ちしたくせに随分と律儀ね。バーサーカー...乙宗梢よ!!!」バッ!

瑠璃乃「っ!!」

バーサーカーの体が弾けた。
初速からトップスピードでランサーの頭めがけて殴りかかる。

ガキーン!

それをランサーは間一髪槍で防ぐが、あまりの衝撃に後ろに吹き飛ばされる。

瑠璃乃「っとっと!ちょいちょい!そっちも不意打ちしてんじゃん!いま自己紹介タイムじゃなかったの!?」

梢「さっきのお返しよ。それに、これから頃す相手の名前を知ったってしょうがないでしょう?」

瑠璃乃「うわー...ちゃんとバーサーカーだこれ」

90: 2025/02/03(月) 18:20:09 ID:???00
小鈴「待ってバーサーカー!めぐちゃん、どういうことなの?めぐちゃんもマスターになったの?」

慈「めぐちゃん、めぐちゃんって...うるさいんだよ!あんたにそう呼ばれると吐き気がするの!いいからさっさと氏んで」

小鈴「そ、そんな...」

慈「ルリちゃん!」

瑠璃乃「アイアイ!」

今度はランサーのほうから突進してくる。

梢「来るわ!小鈴さんは下がって!」

瑠璃乃「おーりゃりゃー!」トリャリャー

気の抜けたかけ声とは裏腹にランサーの槍の速度はすさまじく、バーサーカーは防戦を強いられる。

91: 2025/02/03(月) 18:21:54 ID:???00
軌道が『線』である刀と違い、槍の軌道は『点』だ。
攻撃が当たる面積が狭い代わりに、直前までどこを狙われているかわかりづらく避けにくい。

ランサーの繰り出す突きの鋭さは、はまるで空を舞い氏角から襲いかかるハヤブサの如しだった。

が――――

梢「ふん!はっ!」ガキン!ガキン!

ランサーの槍がハヤブサなら、バーサーカーの拳は暴風だった。

バーサーカーが腕をふるうたびに、大気は揺れ、ランサーの槍を弾き返す。
攻めていたはずのランサーはいつの間にかじりじりと追い詰められていた。

瑠璃乃(まじかこいつ!攻撃を素手で受け止めてるぞ!?しかもこのパワー普通じゃない!)

92: 2025/02/03(月) 18:23:31 ID:???00
梢「その程度かしらランサー!そんな攻撃では私の体にはかすり傷ひとつ付かないわよ!」

速度の落ちた槍をバーサーカーは左手で掴むと、そのまま引っ張りランサーの体を引き寄せる。

瑠璃乃「しまっ」

梢「はーっ!!!」

ドスン!
鈍い音と共にバーサーカーの右拳がランサーの腹に食い込み、そのままランサーを突き飛ばした。

瑠璃乃「がはっ!」ゴロゴロゴロ

梢「たいして槍の扱いがうまくないわね、すぐに終わりに――」

93: 2025/02/03(月) 18:25:06 ID:???00
慈『エンジェルスマイル!』

梢「は?」

小鈴「は?」

グリン!

首を無理やり右に90度曲げられた。
いや、正確には注意を強制的に一点に向けさせられた。
視線の先にはいつの間にか真横に移動していためぐちゃんがいる。

慈「はっはっはー!どうだ私の魔術は!めぐちゃんのキュートな笑顔から目が離せないでしょ!ルリちゃん今のうちに――」

梢「問題ないわ。私の狙いは最初からあなた(マスター)よ」バッ

慈「え」

94: 2025/02/03(月) 18:28:04 ID:???00
瑠璃乃「めぐちゃん!!!」

バーサーカーは腕を振り上げながらめぐちゃんに突進し、――

小鈴「あぶない!」バン!

慈「きゃ!」ドシン

めぐちゃんを間一髪で突き飛ばして一緒に倒れこむ。

梢「何をしているの小鈴さん!この女はあなたを殺そうとしたのよ!」

小鈴「めぐちゃんは幼馴染なんだよ!小さいころからずっと一緒だった!大切な友達!徒町を殺そうとしたのもきっと何かの間違いだよ!」

慈「......ほんとムカつく。それが気持ち悪いって言ってんの」

慈「ルリちゃん!こいつらまとめてぶっ飛ばして!」

瑠璃乃「りょ!」

95: 2025/02/03(月) 18:31:45 ID:???00
ランサーは腰を低く落とすと槍の先を徒町たちに向けて水平に構える。
ランサーの槍は急激に周りの魔力を吸い上げ怪しく光りだした。

梢「この気配...宝具⁉まずいわ!小鈴さん!」

バーサーカーは咄嗟に前に出て盾になる。

瑠璃乃「『ド!ド!ド!』三段突き!!!」ドッ!ドッ!ドッ!

ランサーは弾丸のようなスピードで飛び込むとバーサーカーに光速の三段突きをお見舞いした。

梢「がはっ!」

梢(ギリギリ霊核は外したけど...食らった箇所が消滅した!)

バーサーカーは左わき腹がごっそりなくなっており、傷口からは大量の血が噴き出していた。

96: 2025/02/03(月) 18:32:58 ID:???00
梢「ぐっ...」ガクン

小鈴「バーサーカー!」

慈「よし!今のうちにトドメだよルリちゃん!」

瑠璃乃「あ...自分もう魔力切れでだめです...」ゲッソリ

慈「ルリちゃん!?」

瑠璃乃「ミジンコのルリはいったん部屋帰ります、オツカレシタ...」スー…

慈「ちょっとルリちゃん勝手に消えないで!ぐぬぬ...命びろいしたね徒町小鈴、でも次こそは頃す」

慈「頃して必ず、あんたを世界から消すから」

めぐちゃんはそう言い残すと駆け足で去っていってしまった。

97: 2025/02/03(月) 20:46:39 ID:???00
小鈴「バーサーカー大丈夫!?すごい傷...はやく花帆先輩に治してもらわないと!」

梢「大丈夫よ小鈴さん...サーヴァントの体は人間の体とは違う、魔力の供給さえあれば...こんな傷すぐに治るわ...」

小鈴「無茶しちゃだめだよ!徒町の肩につかまって!」

梢「いえ...それよりも、少しの間霊体化させてちょうだい...そのほうが魔力の消費を抑えられるから」

ランサーと戦っている間に日はすっかり落ちてしまった。先程までの喧騒が嘘のようにあたりは静まり返っている。

寒い。

2月の夜は冷える。はやくバーサーカーを温かい場所に連れて行かないと。
めぐちゃんのことは気になるけど、今は一刻も早く安全なところに――

98: 2025/02/03(月) 20:48:43 ID:???00
ヒュン!❄↣

梢「う″っ!」グサッ

小鈴「!」

バーサーカーの傷口に突然透明な矢が刺さった。いやこれは氷でできた矢?

小鈴「誰!?」

綴理「こんばんは、バーサーカーのマスター。ぼくは3年生の夕霧綴理だよ。こっちはぼくのサーヴァントのアーチャー」

暗闇から2人の女が現れた。ひとりは『夕霧綴理』と名乗った長身で白髪の女性。
人形みたいに整った顔は、たった今襲われたということを忘れさせるほどに綺麗で見惚れてしまう。

もう一人は黒い服を身にまとった冷たい印象の少女。
長い髪を左右に結んで青い瞳でこちらをじっと見つめている。
アーチャーと呼ばれていたが、その手に弓矢らしきものは握られていない。

寒い。

99: 2025/02/03(月) 20:54:07 ID:???00
梢「漁夫の利を狙いに来たということね...」グラッ

バーサーカーがゆらりと立ち上がる。わき腹に刺さった矢はいつの間にか抜いていたらしい。

梢(まずいわね...今の私はまともに戦える状態じゃない。せめて少しでも回復の時間を稼がないと...)

梢「アーチャー...あなたにお似合いのクラスね。その貧相な身体なら弓を射るときに邪魔になるものがないもの」

さやか「...驚きました。随分と日本語の上手なゴリラですね。狂化の代わりに言語化のスキルでも持っているんですか?」

梢「くっ!このアマ!!!」バッ

バーサーカーの身体が弾ける。大けがをしているとは思えないスピードでアーチャーの頭部に殴りかかる。

対してアーチャーは左手を前に出し右手を引くと、空手で弓を構えるポーズをとる。
すると本来矢があるはずの位置にみるみると氷柱ができあがっていった。

だか遅い。矢が完成するよりもバーサーカーが殴るほうがわずかに早い。

100: 2025/02/03(月) 20:58:32 ID:???00
梢「もらった――がはっ!」バシン

しかし、バーサーカーが殴る直前、アーチャーは前に出していた左手を翻すとバーサーカーの顔面に強烈な裏拳をお見舞いした。

さやか「はっ!!」ドガ!

さらに、怯んだバーサーカーの頭部に回し蹴りをし、バーサーカーをなぎ倒す。

さやか「本当にお猿さん並みの知能しかないんですね。時間を稼ごうとしたのに煽り返されたらすぐに飛び込んでくるなんて」カチカチ…❄↣

梢「アーチャーのくせに近接戦もできるの...」ユラッ

さやか「優れた弓兵なら格闘の心得くらいあります」ヒュン❄↣

梢「っ!」サッ

ヒュン!❄↣ ヒュン!❄↣ ヒュン!❄↣

アーチャーは次々と矢を放つ。その速度は先ほどのランサーの槍にも匹敵する速さだ。
しかしバーサーカーはというと、一体どんな動体視力をしているのか、迫りくる矢を紙一重ですべて避けていく。

それにしても、寒い。

101: 2025/02/03(月) 21:05:52 ID:???00
梢「大した腕前じゃないわね。アーチャーは辞めてアサシンにでもなったらどうかしら?」

さやか「わざと避けれるようにしてあげてるんです」

梢「見え透いた強がりね」

さやか「人間、ギリギリ達成できる課題を与えられるとそれに夢中になりますから」

さやか「あ、ごめんなさい。お猿さんでしたね」

梢「二度とその口を開けなくしてあげるわ」ググッ

おかしい、冬の夜とはいえ寒すぎる。これではまるで冷凍庫の中だ!

ハラリ...❄

小鈴(雪...?)

小鈴「!!!バーサーカー上!」

梢「え――なっ!?!?」

102: 2025/02/03(月) 21:07:57 ID:???00
驚愕は2人のものだ。徒町たちの上には空を覆い隠すほどの無数の氷柱が宙に浮いていた。

一体いつの間に...いや、まさか“最初”から?

さやか「わざわざマスターから離れてくれて助かりました」

さやか『Tragic Drops』

氷柱は糸を切ったかのように一斉に落下してくる。
バーサーカーもこちらに走ってきているが間に合わない。

グサッ!グサッ!グサッ!

梢「小鈴さん!!!」

咄嗟に頭は守ったが、両腕や肩に氷柱が突き刺さる。

小鈴「う″ぐ″っ~~~~~!!」

氷柱は腕を貫通し肩にも刺さり体を固定する。
あまりの痛みに転げまわりたいのに体を動かせない。

103: 2025/02/03(月) 21:10:08 ID:???00
小鈴(痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い!)

氷柱が刺さった個所からは血がとめどなく流れて体を濡らしている。

血の温かさとは裏腹に、身体はどんどん熱を失い意識は遠のいていく。

小鈴(助けて...バー...サー......)バタン

梢「こ...すず、さん...」

バーサーカーは背中から無数の氷柱で刺され地面に張り付けにされていた。

綴理「あれでもまだ生きてるんだ。サーヴァントの耐久力はやっぱりすごいね。アーチャー、とどめを刺してあげたら?」

さやか「はい、マスター」

アーチャーがバーサーカーに狙いを定める。

104: 2025/02/03(月) 21:13:52 ID:???00
花帆「そこまでだよ!2人から離れて!」

綴理「だれ?」

吟子「キャスター、百生吟子」

綴理「...百生」

さやか「なぜ止めるんです。あなた方も聖杯戦争の参加者なら、この人たちを助ける理由はないと思いますが」

花帆「あたしたちは――」

吟子「助ける?そんなわけないでしょ。私たちはあなたを倒すために来たの」

さやか「キャスターごときがわたしに勝てるとでも?」

吟子「私たちは勝算ができたからこうして出てきたんだよ」

105: 2025/02/03(月) 21:15:52 ID:???00
綴理「アーチャー、ここは一旦引こう」

さやか「ですが」

綴理「戦闘技能で劣るキャスターが、何の準備もなしに現れるとは思えない」

綴理「それに、あそこで倒れてるマスターとサーヴァントは放っておいてもすぐに氏ぬよ」

さやか「...マスターがそういうのでしたら」

直後、2人の身体は霧のように消えていった。

吟子(サーヴァントはともかくマスターまで消えた...空間移動の魔術でも持ってるの?それとも幻術の類?)

106: 2025/02/03(月) 21:20:43 ID:???00
花帆「小鈴ちゃん!酷い出血...今治してあげるから!『フラ――」

吟子「待って花帆」

花帆「っ!なんで止めるの!早く治さないと小鈴ちゃん氏んじゃうよ!」

吟子「その前に確認することがあるでしょ」

吟子「ねえバーサーカー、確か花帆と小鈴の同盟契約は私の傷が治るまでの間だったよね?」

梢「キャス...ター...」

吟子「私はこの通り完全回復したわけだけど、もう契約は破棄ってことでいい?」

花帆「吟子ちゃん!!」ギロッ

梢「...お願いします。どうか...どうか小鈴さんだけでも助けてください...私のことは頃しても構わないから...」

107: 2025/02/03(月) 21:22:21 ID:???00
吟子「だって花帆、どうす――」

花帆「『フラワー』!」🌸

吟子「判断がはやい!」

花帆「小鈴ちゃん!小鈴ちゃん!大丈夫!?しっかりして!」

小鈴「う、うう...」グッタリ

吟子「失神してるだけだよ。花帆の魔術なら傷は完全に治せる。それよりバーサーカーはどうするの?」

花帆「......助けてあげて」

吟子「それはどうして?」

108: 2025/02/03(月) 21:24:07 ID:???00
花帆「さっきのアーチャー、すごく強かった...多分バーサーカーが万全でも負けてたと思う」

花帆「あのサーヴァントがいる限り、あたしたちは聖杯戦争に勝てない」

吟子「つまりアーチャーを倒すまでは協力関係を継続するべきってことね。はあ、悔しいけどそれが最適かも」

キャスターはバーサーカーに刺さった氷柱を抜く。

梢「う"っ」

吟子「悪いけど、私や花帆の魔術はあなたに弾かれるから傷は自分で直して」

梢「大丈夫よ...ありがとう、花帆さん、キャスター...」スー…

氷柱が全て抜けるとバーサーカーは霊体化して姿を消した。

109: 2025/02/03(月) 21:26:37 ID:???00
花帆「とりあえず小鈴ちゃんをあたしの部屋に運ぼう!」

吟子「なら私が担ぐよ」

花帆「そういえば、吟子ちゃんいつの間に準備してたの?」

吟子「何のこと?」

花帆「さっき言ってたじゃん。『勝算ができたからこうして出てきた』って」

吟子「あんなのはったりに決まってるでしょ!花帆が2人がやられてるの見て急に飛び出したんだから!」

花帆「そうだったの!?もしかしてあたしたち、結構危なかった?」

吟子「もうあんなことしないで」

花帆「ごめんなさい...」

――――――

110: 2025/02/03(月) 21:30:29 ID:???00
[ Interlude in ]

慈「あーもう!あとちょっとだったのにー!ルリちゃんサーヴァントになっても充電切れる癖直ってないの?」

瑠璃乃「メンボクねーです...いや~必殺技使うと魔力の消費えぐくってさぁ!」

慈「にしても、あのバーサーカーとかいうサーヴァントかなりの強さだったね」

瑠璃乃「霊核を狙ったんだけど、まさか当たる直前に横から殴って軌道をずらすとはね。敵ながらあっぱれですわ!」

慈「完全に氏角から当てないとか...そうだ!今度は私がバーサーカーの真後ろで『エンジェルスマイル!』するのはどう?そうすれば横目でルリちゃんを見ることもできないでしょ!」

瑠璃乃「ぜっったい止めてね!?どうしてわざわざ相手の方に寄るの!小鈴ちゃんが助けてくれなかったらめぐちゃん氏んでたかんね!?」

瑠璃乃「めぐちゃんはルリの近くにいて!」

慈「うっ...あいつの名前は出さないで...」

111: 2025/02/03(月) 21:36:23 ID:???00
姫芽「――――あの~」

慈「ん?どうしたの姫芽ちゃん」

姫芽「いや、作戦会議するなら藤島せんぱいの部屋でやってくれませんかね...どうしてアタシの部屋で...」

瑠璃乃「ひめっちはルリたちのブレインだからね!」

慈「そう!ブレイン!...ブレインってなに?」

瑠璃乃「脳」

姫芽「アタシもう部外者ですよね!?」

慈「何言ってんの!嘘の電話でおびき寄せる作戦考えてくれたの姫芽ちゃんじゃん!」

112: 2025/02/03(月) 21:39:47 ID:???00
慈「私たちはもう、同じ穴のムジナなんだよ☆」ウィンク!

瑠璃乃「へいめぐちゃん、それ多分意味違うと思う」

姫芽「ていうか!小鈴ちゃんは傷つけない約束でしたよね!?」

慈「...」

姫芽「なんで黙るんですか!」

慈「ごめんね姫芽ちゃん。私も人を傷つけたくなんかないよ。でも、こうなったら仕方がないの」

慈「徒町小鈴を頃して、私の記憶から追い出すしかないんだよ」

瑠璃乃「...」

[ Interlude out ]

115: 2025/02/04(火) 20:38:38 ID:???00
【2月4日】

夢を見る。

梢「お絹さん、私がっこうにいきたいわ」グイグイ…

お絹「学校?どうしたのです梢お嬢様、お勉強なら絹が毎日見ているではありませんか」

梢「違うわ!勉強じゃなくてわたくしは“ともだち”に会いたいの」

お絹「友達...梢お嬢様ご友人ができたのですか?」

梢「あ、えっと、本!本で読んだの!がっこうにはともだちが50人くらいいるって!」

お絹「...申し訳ございません。貴女のお父様から、梢お嬢様を外に出すなと申し付けられておりますので」

梢「っ!どうして!私はもう赤子じゃないわ!家の外に出ても大丈夫よ!」

お絹「本当に申し訳ございません。お父様も、梢お嬢様のことを大切に思っておいでなのです」

116: 2025/02/04(火) 20:41:41 ID:???00
エリ「どうだった?」

梢「ダメだったわ...やっぱりお父様に直接言わないと」

エリ「こずえちゃんのお父さんってどんな人なの?」

梢「...よくわからないわ。いつも夜遅くに帰ってくるし、朝食以外で一緒になることはあんまりないの」

梢「でもきっと優しいわ!私が家で寂しくないように、よく本やおもちゃを買ってくれるもの!」

エリ「そうなんだ~あ!」

梢「エリ?」

お絹「やっぱり、最近よく庭で遊んでいると思ったら、こういうことでしたのね」

梢「お絹さん!?ち、ちがうの!この子は...」

お絹「なにが違うんですか!まったく、あなたいつから家に忍び込んでいたの?」

エリ「え、えっと、2...1週間くらい前から...」

お絹「はあ...気が付かなかった私の責任でもありますね」

梢「お絹さん...」

お絹「お父様から言われていましたよね。家の外のものと関わるなと」

梢「ごめんなさい...」

117: 2025/02/04(火) 20:43:46 ID:???00
お絹「あなた名前は?」

エリ「あ、エ、エリです」

お絹「そう......エリさん、こっちへいらっしゃい」

エリ「...」トコトコ

お絹「...暗くなる前には必ず帰ること。それと、休日と祝日は絶対に来ないこと。万が一私以外に見つかったらただではすみませんよ」

エリ「え?」

梢「お絹さん!」

お絹「最近の梢お嬢様は家にいる時もとっても楽しそうでした。何か新しい遊びでも見つけたのかと思っていましたが、まさかご友人ができていたとは...」

お絹「どうかこれからも、梢お嬢様と仲良くしてあげてください」

エリ「は、はい!」

118: 2025/02/04(火) 20:45:15 ID:???00
お絹「ところであなたどこから入ってきたの?」

エリ「そこの塀の穴から!」

お絹「まあ!それでは服が破けてしまいますよ」

お絹「門の鍵を開けておくから、今度からはそこから入りなさい。その代わり鍵が開いてない日はおとなしく帰るように」

エリ「はーい!」

梢「ありがとうお絹さん!」

お絹「...あとエリさん、ちょっと」コソコソ

エリ「?」

お絹「絶対に梢お嬢様の前で怪我をしないように」ボソッ

エリ「あたしが?こずえちゃんじゃなくて?うーん、わかった!」

――――――

119: 2025/02/04(火) 20:47:51 ID:???00
小鈴「う、うーん」

朝日が額に当たり、だんだんと意識が覚醒してくる。
最近よく変な夢を見る気がする。自分じゃない、誰かの記憶のような...

花帆「あ、小鈴ちゃん起きた?おはよう!」

小鈴「花帆先輩?どうして徒町の部屋に...あれ、そもそも徒町どうやって部屋に帰ったんだっけ?」

花帆「ここはあたしの部屋だよ。小鈴ちゃん、昨日アーチャーにやられて気を失ってたからあたしが連れて帰ったんだ」

花帆「あ、怪我は完璧に治したから安心して!」

花帆先輩に言われてやっと思い出した。
そうだ、昨日めぐちゃんたちと戦った後アーチャーとそのマスターに襲われたんだ。それで――

小鈴「!バーサーカーは!?」

梢「私はここにいるわ」スー

バーサーカーが虚空から現れる。
あんなにひどかった傷は綺麗さっぱり無くなっていた。

120: 2025/02/04(火) 20:49:08 ID:???00
小鈴「怪我は大丈夫なの?」

梢「サーヴァントの身体はエーテルでできているから、一度霊体化すれば傷自体はすぐに塞げるわ」

梢「ただ...体が欠損した分魔力は減っているから、今は満足な戦闘はできないわね。せめて2日は魔力の回復に充てたいところよ」

小鈴「そっか...ごめんバーサーカー、また徒町が余計なことしたせいで」

梢「小鈴さんがあやまることではないわ。むしろ、小鈴さんを危険な目に遭わせてしまったのは私の責任よ」

梢「花帆さんが駆けつけてくれなかったら、今頃どうなっていたか...本当にごめんなさい」

バーサーカーは深く頭を下げる。

121: 2025/02/04(火) 20:50:20 ID:???00
小鈴「そんな!やめてよ!全部徒町が悪いんだよ!徒町がマスターとして不甲斐ないから...」

吟子「それはホントにそう」

小鈴「キャスター!?回復したの?」

吟子「おかげさまで、そこのバーサーカーにやられた傷はちゃんと治ったよ」

花帆「もう吟子ちゃん!嫌味言わないの!」

吟子「それで花帆、小鈴に話があるんじゃないの?」

花帆「そうだね。とりあえず小鈴ちゃんもお腹減ってるだろうし、朝食たべながら話そっか!」

――――――

122: 2025/02/04(火) 20:52:12 ID:???00
花帆先輩は食パンにジャムとマーガリンを塗って出してくれた。
どうやら部屋に常備しているらしい。
なるほど、そういう手があったか。

小鈴「それで話というのは」

花帆「うん、単刀直入に言うね。あたしたちと協力してアーチャーを倒さない?」

小鈴「アーチャーを...」

花帆「アーチャーの強さは直接戦った小鈴ちゃんたちが一番わかってると思うけど、別格だよ」

花帆「たぶん今回召喚されたサーヴァントの中では一番強いんじゃないかな?」

小鈴「花帆先輩は他のサーヴァントのことも知ってるんですか?」

花帆「吟子ちゃんを除くとバーサーカー、ランサー、ライダー、アーチャーだね。ランサーとライダーのマスターはわからないけど」

123: 2025/02/04(火) 20:53:32 ID:???00
梢「ランサーのマスターは藤島慈という女よ。小鈴さんの...幼馴染らしいわ」

花帆「そっか、幼馴染がマスターに...それは戦いづらいね...」

小鈴「めぐちゃん、どうしてマスターなんかに...」

梢「どうしてマスターになったかを考えても仕方がないわ。大切なのは、藤島慈には小鈴さんと戦う意思があるということ。それだけよ」

小鈴「うん...そうだね」

吟子「話を本題に戻すけど、アーチャーは1対1で戦って勝てる相手じゃない。だから、アーチャーを倒すまでは同盟を継続しない?」

小鈴「はい、徒町は賛成です!花帆先輩にはまだまだ教えてほしいこともありますし!バーサーカーはそれでいい?」

梢「ええ。というか、断ったら今この場で殺されかねないもの。私たちに拒否権なんかないわ」

花帆「よし!じゃあこれからもよろしくね小鈴ちゃん!」

124: 2025/02/04(火) 20:55:04 ID:???00
小鈴「はい!よろしくお願いします!そういえば今って何時ですか?学校が...」

花帆「今日は土曜日だからお休みだよ!」

小鈴「そっか。休日...」

小鈴「あ、あの!バーサーカー、花帆先輩!徒町を...徒町を特訓してください!」

梢・花帆「「特訓?」」

小鈴「はい...徒町、昨日実感したんです!徒町は体力もないし、魔術もまともに使えないしで、マスターなのにバーサーカーに迷惑ばかりかけています!」

梢「小鈴さん...」

小鈴「バーサーカーは本当はもっと強いのに、徒町を守るために全力を出せないでいます。それは悔しいんです!」

小鈴「せめて、自分の身は自分で守れるようにして、バーサーカーの負担を少しでも減らしたいんです!」

125: 2025/02/04(火) 20:57:26 ID:???00
花帆「小鈴ちゃん...!わかったよ、魔術のことならあたしに任せて!必ず小鈴ちゃんを立派な魔術師として花咲かせてあげるから!」

梢「別にマスターがサーヴァントに守られることは可笑しなことではないけれど...」

梢「小鈴さん自身が強くなりたいというのなら、私も協力は惜しまないわ!」

小鈴「2人ともありがとうございます!」

吟子「無駄だと思うけど...せいぜい頑張れば」スー…

花帆「じゃああたしは準備に時間がかかるから、夕方くらいまでバーサーカーと特訓してて!」

小鈴「わかりました!行こうバーサーカー!」

梢「ええ、まずは日課の走り込みからね。その間に私は特訓のメニューを考えておくわ」

小鈴「よーし!がんばるぞ~おー!」

――――――

126: 2025/02/04(火) 20:58:56 ID:???00
ランニングを終え、一休みしていたらバーサーカーに蓮ノ湖へ行くよう言われた。

梢「軽くあたりを見てきたけど、ここなら生徒もほとんど来ないし、周りから見えずらいから私が実体化しても大丈夫そうね」スー

小鈴「それでどんな特訓をするの?」

梢「そうね。考えたのだけれど、小鈴さんには戦うための特訓ではなく、生き残るための特訓をしてもらうわ」

小鈴「生き残るための特訓?」

梢「そうよ。そもそも、人間がサーヴァントと戦おうなんて考えてはいけないわ」

梢「どんなに卓越した格闘家も熊やサメと戦おうだなんて考えないでしょう?」

梢「そういう存在に対峙したときのために学ぶのは、戦い方ではなく、生き残る方法よ」

そういうとバーサーカーは徒町の正面に立って拳を構えた。

127: 2025/02/04(火) 21:00:52 ID:???00
梢「まずは攻撃の避け方...いえ、殺気の受け流し方からね」

梢「小鈴さん、今から私がゆっくりとあなたの頭に手を伸ばすから、触れられる前に横に避けてちょうだい」

小鈴「わかった!よし!いつでも来――」

グシャリ

瞬間、バーサーカーの拳が徒町の頭を粉砕した。
徒町は首から上を失くし脳みそを地面にまき散らしながら絶命した。


梢「...」ペチン

小鈴「っ!」ビクッ

小鈴「あ、あれ?徒町、生きてる?」

梢「生きてるわよ。でも、実践なら氏んでいたわね」

小鈴「今、頭をバーサーカーに潰されて...それで...」

全身の震えが止まらない。体は一歩も動かせず、足が棒になって地面に突き刺さってるかのようだ。
今も頭蓋を砕かれ殺されるイメージが頭から離れない。

128: 2025/02/04(火) 21:03:17 ID:???00
梢「これが殺気よ。自分より上位の存在から向けられる殺意は、それだけで自分が氏んだと錯覚させられるほどの力がある」

梢「小鈴さんにはまずこの殺気を向けられても、怯まずに動けるようになってもらうわ」

小鈴「わ、わかりました!よろしくお願いします!」

それから小一時間はバーサーカーに殺気を当てられ、そのたびに動けなくなってデコピンを食らった。
おかげで徒町のおでこはその一点だけ真っ赤に腫れてしまった。

さらにもう一時間経つ頃、やっと頭が空白にならずに済むようになった。

そして3時間殺気を浴びてようやく、なんとか体を動かせるまでにたどり着いた。

梢「一度休憩しましょう。ずっと殺気を浴びて疲れたでしょう。午後は実際に攻撃を避ける訓練をするわよ」

小鈴「ふー...ふー...はい」

129: 2025/02/04(火) 21:05:10 ID:???00
梢「本当に大丈夫?かなり顔色悪いけれど...」

小鈴「だ、大丈夫です...まだ肝心の実践にも行けてないし、こんなところで立ち止まるわけにはいきません!」

梢「そう、でも無理はしないでね。小鈴さんに倒れられたら私も困るもの」

昼食のお弁当を食べながら午前中の特訓を思い返す。

殺気に対抗するコツは、相手の殺意を受け流すことだ。

殺意を真正面から受け止めると硬直してしまうので、一瞬相手から意識を逸らす。

もちろんずっと相手から注意を外していてはただのいい的だ。

意識を逸らすのは一瞬で、その一瞬の間に相手の間合いから離脱する。

バーサーカーが言うには、殺気というのは相手の間合いに入っている時に感じるらしい。
なので相手から全力で離れれば殺気は和らぐのだとか。

130: 2025/02/04(火) 21:07:54 ID:???00
梢「さて、そろそろ午後の特訓を始めるわよ」

小鈴「はい!」

梢「最初は攻撃されそうになった時の避け方ね。今度は実戦を想定して軽く殴るから、それを避けてみて」

バーサーカーが拳を構える。
殺気が飛んでくるので、まずはそれを受け流してから大きく後ろに飛びのく。

が――

ゴツン!

小鈴「痛いっ!」

梢「後ろに避けないの!ランサーやアーチャーのように前方向に射程が長い武器だとそのまま貫かれるわよ!」

続けてバーサーカーが拳をふるう。

小鈴「っ!」

今度は横に避けるが、バーサーカーはすぐさま突き出した手を横に振り、顔を殴ってくる。

小鈴「ぐあ!」

131: 2025/02/04(火) 21:09:48 ID:???00
梢「惜しいわね!真横じゃなくて斜め後ろに飛びなさい!」

梢「それと毎回同じ方向じゃなくて、左右にランダムに動くの!相手にこちらの動きを予想させないようにね!」

小鈴「はい!!」

バーサーカーは頭だけでなく胴や足も狙ってくる。
それを必氏で避けながら後退していく。

トン

小鈴「へ?」

梢「もらった!」ベシン

小鈴「ぐっ」

夢中で後退していたら後ろの木にぶつかってしまった。

梢「そこ!止まらない!」ブン!

小鈴「!!」バッ

反射的に横に飛ぶ。

132: 2025/02/04(火) 21:11:23 ID:???00
梢「一度攻撃をくらって終わるのはスポーツだけよ!実践ではこちらが氏ぬまで攻撃が飛んでくると思いなさい!」ブン!

バーサーカーは拳だけでなく今度は蹴りも入れて攻めてくる。

小鈴「はぁ...!はぁ...!はぁ...!」

練習を再開してまだ1分も経っていないのに息は荒く、体は悲鳴を上げている。

梢「動きが鈍くなってきたわよ!はーっ!」ド!ド!ド!

小鈴「ぐはっ!」バタン

突然のラッシュを全身にくらい、思わず倒れこむ。

小鈴「ま、まって!たんま...」

梢「戦場に待ったなし!」ブン!

小鈴「っ!」ビクッ

133: 2025/02/04(火) 21:13:11 ID:???00
ピタッ

梢「ここまでね。本番なら12回氏んでたわ」

小鈴「はぁ...はぁ、ちなみにどの攻撃で氏んでたの?」グッタリ

梢「私が繰り出した全ての攻撃で、よ」

小鈴「 」

梢「本当にこのやり方でいいの?やっぱり型の稽古とかの方がいいと思うのだけれど...」

小鈴「ううん、徒町は要領が悪いから、そのやり方だといつまで経っても強くなれないよ...」

もっと強くならなければ。ランサーやアーチャーと戦っても負けないくらい、強く――

梢「小鈴さん、近道ばかり考えてはだめよ。結果だけを求めていると本当の目的を見失ってしまうわ」

小鈴「本当の...目的?」

134: 2025/02/04(火) 21:15:17 ID:???00
梢「小鈴さんの目的は生き残ること。最低限自分の身は自分で守れるようになることでしょう?」

梢「強くなることはその結果にすぎないわ」

小鈴「あ...」

そうだ、徒町は強くなりたかったんじゃない。

バーサーカーが全力で戦えるように、守ってもらわなくても大丈夫なようになりたかったんだ。

小鈴「ごめん、なんか徒町熱くなっちゃってたみたい...」

梢「謝ることはないわ。私だって武の修練をしているときは、つい本来の目的を忘れて強さを求めてしまうことがあったから」

小鈴「強くなるためにやってたんじゃなかったの?」

梢「ええ、私の場合は『自分を律すること』が目的だったわね」

135: 2025/02/04(火) 21:18:32 ID:???00
梢「武道というのは得てして自分に向き合うためのものなの」

梢「試合をする時でさえ、戦いの中で自分を見つめ、心を整える。勝敗というのは、それの結果としてついてくるものなのよ」

バーサーカーはそう言うとゆっくり目を閉じた。

きっとバーサーカーにも似たような経験があったのだろう。
願いのためにひたすらに突き進み、目的を忘れそうになるたびに自分と向き合ってきたのだ。

再び開いた瞳は、今までよりも心なしかスッキリとして穏やかだった。

梢「とはいえ、実戦形式の特訓も決して悪い案ではないわ。ただそれだけをやっているのでは駄目だということよ」

梢「さっきので小鈴さんの課題は色々と見えてきた。まずは体力、そして筋力。これらを鍛えるためのトレーニングも並行してやっていくわ!」

小鈴「はい!わかりました師匠!」

梢(師匠!なんていい響きなのかしら!)

136: 2025/02/04(火) 21:21:23 ID:???00
梢「小鈴さんは反射神経は悪くないけれど、それを生かせるだけの筋力がないと意味がないわ」

梢「頭では反応できても、体がその反応速度についていけていないの」

小鈴「なるほど...確かに目では見えてたのに避けきれなかった攻撃がいくつかありました」

梢「そうでしょう。本当に反射神経だけはいいのだけれど...小鈴さん百人一首でもやっていたの?」

小鈴「?いえ、正月に家族でやったくらいです。それも徒町はいつも最下位でしたけど...」アハハ

梢「そう...スポーツとかもやってないの?他にも反射神経を鍛えられそうなものとか」

小鈴「う~ん...徒町、基本どんなことをやっても上手くいかないので。やってることと言えば日課の徒町チャレンジくらいですね」

梢「かちまちチャレンジ?」

小鈴「はい!徒町は小さいころからホントにダメダメで、何ひとつまともに成功できたことがないんです」

小鈴「だから、こんな徒町にもせめて一つくらい自分に誇れるものが欲しくて、毎日いろいろなことにチャレンジをしているんです!」

137: 2025/02/04(火) 21:27:47 ID:???00
梢「そうなのね、例えばどんなチャレンジをしていたの?」

小鈴「蓮ノ湖横断チャレンジとか、学校で一番高い木のてっぺんに登るチャレンジとか」

梢「?」

小鈴「アイスバケツチャレンジとか、お風呂に何時間入っていられるかチャレンジとか、屋上の縁を全力ダッシュチャレンジとか...」

小鈴「まあ、全部失敗したんですけどね!あはは!」

梢「ま、待ってちょうだい!後半に関してはもやは何が成功になるの!?というか毎日そんな自殺行為をしていたの!?」

小鈴「大丈夫です!本当に危ない時はいつも『あ、これ氏ぬな』ってわかるので!」

138: 2025/02/04(火) 21:28:58 ID:???00
梢「そんなに氏ぬと感じる機会が多いことが問題なのだけれど!?」

梢「もしかして小鈴さん、生存能力に関しては鍛える必要はないのでは...?」

小鈴「そんなことないです!氏なないだけでいつも氏にかけてるので、保健室の先生に『またか...』って顔されてます!」

梢「...」

梢(マスターは自分と似た性質のサーヴァントを召喚すると言われているけど、もしかして私も周りからこれくらいの狂人と思われていたのかしら...心配になってきたわ...)

梢「まあ、その...どっちにしろ体力と筋力はつけておいたほうが良さそうね...今後のためにも...」

小鈴「はい!ご指導よろしくお願いします師匠!」

――――――

139: 2025/02/04(火) 21:30:03 ID:???00
その後バーサーカー特別メニューの筋トレや、敵と対峙するときの構えや姿勢の勉強。
そして再び実戦形式の訓練をこなし、いつの間にか時間は午後5時を過ぎていた。

花帆先輩から準備はできてると連絡があったので、一度風呂に入ってから花帆先輩の部屋に向かった。

花帆「お疲れ様小鈴ちゃん!バーサーカーとの特訓はどうだった?」

小鈴「ボコボコにされてきました!」

花帆「そっか。バーサーカーが間違って小鈴ちゃんの頭潰しちゃったときはすぐに連れてきてね!生きてるうちなら直せるから!」

梢「流石にそんなことしないわ!」

花帆「さて!疲れてると思うけど、あたしの方からも魔術の特訓始めちゃうよ」

小鈴「よろしくお願いします!」

140: 2025/02/04(火) 21:31:13 ID:???00
花帆「といっても、まずは小鈴ちゃんの魔術属性を調べるところからだね」

花帆「本当は昨日やるつもりだったんだけど、いろいろあってできなかったから」

小鈴「でも徒町、まだ自分で魔術かいろ?開けませんけど、それでも調べられるんですか?」

花帆「ううん、魔術回路が開いてないとできないかな。小鈴ちゃんが自分で開けないならあたしが開くよ」

小鈴「ま、またあんな状態になるんですか...」

花帆「大丈夫!一度ちゃんと開いてるから、今度はそこまで辛くはならないと思うよ」

小鈴「わかりました、そっちに関してはお任せします。それで魔術属性って何ですか?」

花帆「魔術師がどういう魔術が得意かを決定する要素かな。性格診断みたいなものだと思って!」

小鈴「なるほど...」

141: 2025/02/04(火) 21:33:06 ID:???00
花帆「主な属性は地・水・火・風・空の『五大元素』って言われるものだね」

花帆「今日はそれを調べられる道具を準備したからさっそく始めようか!」

机の上には何やら怪しげな道具や置物みたいなものがいくつか置いてあった。
これで属性というものを調べるらしい。

魔術回路を開くのにまた花を食べるのかと覚悟したが、今度は花帆先輩が背中に触れただけで開いた感覚があった。

小鈴「なんか前より全然辛くないです」

花帆「この間は無理やりだったからね。生命力の魔力への変換を魔術回路が調整できなかったんだと思う」

花帆「さて、それじゃあ診断を始めるから言うとおりにしててね!」

――――――

142: 2025/02/04(火) 21:34:51 ID:???00
花帆「ふむふむ、小鈴ちゃんの属性は『火』の単属性だね」

小鈴「火!なんだかカッコいい感じがします!」

花帆「そうだね!魔力を炎に変換したり、炎を操る魔術に適性がある属性だよ」

花帆「一応、五大元素の中では『ノーマル』って言われる一番ポピュラーな属性かな」

小鈴「珍しくはないんですね...」シュン

花帆「そんな落ち込まないで!一般的ってことは一番使いやすい属性でもあるから!」

小鈴「ちなみに花帆先輩の属性は何ですか?」

花帆「ん?あたしは『花』だよ!フラワー!」🌸

小鈴(何となくそうだと思いました...)

143: 2025/02/04(火) 21:36:54 ID:???00
小鈴「でも徒町、てっきり水だと思ってました。うち漁師一家だったので」

花帆「そうなんだ、漁師さんってかっこいいよね!でも火の属性は水とは相性が良くないかな...小鈴ちゃん海で怪我とかしたことない?」

小鈴「あ...一度溺れて氏にかけたことがあります」

花帆「大変!助かってよかったね!」

小鈴「はい...本当に......」

花帆「それでね、小鈴ちゃんにはまず基礎的な魔術である『強化』を習得してもらおうと思うんだ!」

小鈴「強化ですか。前に少し聞いたような...確か体とか物の性能を上げる魔術でしたよね?」

花帆「そう!ちゃんと覚えてて偉いね!小鈴ちゃんにやってほしいのは体の強化の方だよ」

花帆「純粋に身体能力とか体の頑丈さが上がるから、バーサーカーとの特訓にも生かせると思うんだ!」

小鈴「わかりました!がんばります!」

144: 2025/02/04(火) 21:38:40 ID:???00
花帆「火の属性は強化と相性がいいから簡単にできるようになると思うよ!」

花帆「じゃあまずは目をつぶって、自分の魔術回路の位置を探してみて」

言われたとおりに目をつぶり、自分の体の中に意識を集中する。

魔術回路の場所ならわかっている。
前回も今回も、回路を開かれた時には背中に痛みを感じた。

まるで背骨に針金を入れられているような不快感がある。

小鈴「背骨の中に...1本の管が入っているような」

花帆「うんそれが魔術回路だね。気持ち悪いと思うけど我慢して」

花帆「魔術回路は人体にとって異物だから、どんな優れた魔術師でもその痛みから逃れられないの」

小鈴「大丈夫です。我慢は得意なので!」

145: 2025/02/04(火) 21:40:16 ID:???00
花帆「そしたらその魔術回路から、魔力が血液に乗って体を循環するイメージをしてみて」

小鈴「魔力を...循環」

再び体の中に意識を集中させる。

生物の教科書で見た人体の血管の構造図を思い出し、それを自分の体に当てはめる。

動脈、静脈、毛細血管、つなぎ合わせると地球二周分になるとも言われるそれを隅々までイメージする。

そして、脊髄から伸びた血管を通して魔力を血液に乗せて全身に送り出す。

小鈴「...」

小鈴「......」

小鈴「.........」クラ

花帆「小鈴ちゃん!」ガシッ

小鈴「はあ、はあ...」

146: 2025/02/04(火) 21:41:27 ID:???00
花帆「すごい熱。小鈴ちゃんいったん強化はやめて魔術回路を閉じて!」

小鈴「閉じる...スイッチ...」

ダメだ。いくら頑張っても回路を開閉するスイッチがイメージできない。

花帆「やっぱり自分じゃ閉じれないか...『フラワー🌸』!」

小鈴「あ。また花帆先輩にやってもらっちゃった」

花帆「ううん、いいんだよ。それより強化は上手くいった感じした?」

小鈴「いえ、血管のイメージまではできたんですけど。その後の魔力を流し込むのがうまくできなくて」

花帆「はじめてなら仕方ないよ!少し休んだらもう一回やってみよう!」

その後、徒町の体力が尽きるまで7回試してみたが、結局一度も成功はしなかった。

147: 2025/02/04(火) 21:44:20 ID:???00
花帆「今日はこの辺りで終わりにしよっか。小鈴ちゃんの課題はまず自分で魔術回路を開閉できるようになること」

花帆「そしてその後、身体の強化をできるようになることだね」

小鈴「はい!...その、花帆先輩が言っていた『スイッチ』っていうのがまだ全然わからなくて...」

花帆「そればっかりは小鈴ちゃんの中にあるイメージの話だから、あたしからアドバイスはしづらいんだよね。なんかこう、自分を切り替えるというか、別のモードになるというか...」

花帆「これからすごいことやるぞ!って感じ。そうだ、吟子ちゃんはどんなことイメージしてるの?」

吟子「へ!?私?」

キャスターは完全に油断していたのか、急に名前を呼ばれてまん丸な目をさらに大きく見開いていた。

吟子「私は体の中に針で糸を通すイメージだけど...」

吟子「というか他人のイメージに引っ張られると、かえって自分だけのスイッチが見つけづらくなるよ」

148: 2025/02/04(火) 21:48:04 ID:???00
吟子「たとえば小鈴の中で“戦い”のイメージって何?」

小鈴「戦い...」

『いいかこすず、――を――ってことは、相手を――』

一瞬、幼い頃に聞いたおじいちゃんの言葉を思い出したきがした。

小鈴「わからないです」

吟子「ま、そのうちわかるでしょ」

そんなこんなでその日はお開きになった。

お礼を言って花帆先輩の部屋を出る。

自分の部屋に戻ると今日一日の疲れがどっと押し寄せ気絶するようにベットに倒れこんだ。

明日は日曜日、今日教わったことが少しでもできるようになればいいな...

そうして徒町は一瞬で深い眠りへと落ちていった。

――――――

149: 2025/02/04(火) 21:51:26 ID:???00
[ Interlude in ]

沙知「...戻ったか、ライダー。それで、マスターたちの様子は?」

ライダー「はい。徒町小鈴は昼間はバーサーカーから戦闘の手解きを受けていました。夜は同盟相手の日野下花帆と魔術の訓練をしていたようです」

沙知「彼女らしい地道な努力だねぃ」

ライダー「日野下花帆は徒町小鈴と合流するまでは学校を回って折り紙を設置しているようでした」

ライダー「微弱な魔力を感じたので何らかの魔術効果を持ったものだと思いますが、どのような効果かまではわかりません」

沙知「ほうほう、ランサー陣営はどうだった?」

ライダー「藤島慈、安養寺姫芽、ランサーの3人で...その、遊んでいました...」

沙知「は?」

ライダー「安養寺姫芽の部屋に集まり、トランプをしたり、お菓子を食べながら藤島慈の武勇伝について語っていたり...」

150: 2025/02/04(火) 21:53:24 ID:???00
沙知「私の話をちゃんと聞いてたんだろうな...もういい、アーチャーの方はどうだった?」

ライダー「それなのですが、2人とも夕霧綴理の部屋に籠ったきり出てこず」

ライダー「部屋にも強力な結界が張られていて中の様子は確認できませんでした」

沙知「そうか、あれだけ強力なサーヴァントを召喚したんだ。もっと積極的に動くと思ったんだが、意外と慎重な性格らしいな」

ライダー「昨夜もバーサーカーが手負いの時を狙って現れましたし、安全かつ確実な勝利を狙っているのでしょう」

ライダー「それで、主様のほうは」

151: 2025/02/04(火) 21:55:26 ID:???00
沙知「ああ、いろいろ資料を引っ張り出しているよ」

沙知「だか不思議なことに、聖杯戦争の参加者についての記録だけ不自然に記述が抜けている」

ライダー「参加者を隠していると?ですが何のために」

沙知「さあね、まさかプライバシーを守るためじゃないだろう」

沙知「何者かが意図的に情報を隠しているんだろうね」

沙知「私の方も調査を継続するから、ライダーも引き続きよろしく頼む。くれぐれも感づかれないようにな」

ライダー「承知しました」

[ Interlude out ]

――――――

152: 2025/02/04(火) 22:35:14 ID:???00
いいね
本家の雰囲気出てて面白い

153: 2025/02/05(水) 00:01:18 ID:???00
乙、徒町のおじいちゃんてまさか・・・

【ラブライブ】小鈴「聖杯戦争?」【中編】

引用: 【SS】小鈴「聖杯戦争?」