398: 2025/02/09(日) 21:19:26 ID:???00


【ラブライブ】小鈴「聖杯戦争?」【前編】
【ラブライブ】小鈴「聖杯戦争?」【中編】



【2月9日】

また、夢を見た。

さやか「もう新年ですね」

徒町「そうだねー」

徒町先輩と出会ってから11ヶ月が経ち、わたしたちは新年を迎えていた。

相変わらず瓦礫は全然片付かない。

それでも多くの人を助けたし、多くの人を家族の元に返すことかできた。

さやか「そろそろ教えてくれてもいいんじゃないですか?」

徒町「何を?」

さやか「なんで瓦礫の撤去を手伝ってるかです」

さやか「いくら何でも1日も休まず瓦礫の撤去をするなんて、余程の理由があるんじゃないですか?」

徒町「ああ、うん。流石にさやかちゃんには話さないとかな...実は──」

399: 2025/02/09(日) 21:20:03 ID:???00
ガタガタガタガタ!

さやか「地震!?しかも大きい!」

プオーーーーン!

サイレンの音が鳴り響く。

『地震が発生しました。海岸付近にいる方は津波に注意してください。』

徒町「!あっちには仮設住宅が沢山あるのに!行こうさやかちゃん!」

さやか「はい!」

仮設住宅の方は、ほとんどの人が避難を済ませていた。

しかし、

母親「みのりが!みのりが海の方に行ったきり帰ってこないんです!」

さやか「海の方って…津波が来るまでもう時間が無いですよ!」

徒町「っ!」ダッ!

さやか「あっ、徒町先輩!?」

400: 2025/02/09(日) 21:20:49 ID:???00
港に行くと女の子が足を挫いたのか、泣きながら座り込んでいた。

みのり「うわぁーん!ママー!」

しかし、そのすぐ後ろには2メートル程の津波が──

さやか(ダメ!今からじゃ間に合わない!)

徒町『全強化』ギュイーン!バチバチ⚡️

さやか「へ?」

徒町「ふんっ!」ダンッ!

徒町先輩は稲妻のような速さで、女の子に向かって飛んでゆく。

徒町「大丈夫!?」ザザー

みのり「あ、力持ちのお姉さん…」

徒町「今助けるからね!」

もう遅い。

数秒の後、2人は波に飲まれる。

401: 2025/02/09(日) 21:21:43 ID:???00
徒町先輩はいつもそうだ。

自分の命の重さなど、羽毛ほども無いと言うように、他人のために行動する。

助けられた人達は、徒町先輩をヒーローと称えるけど――

わたしから見たら、ただの蛮勇にしか見えなかった。

さやか(このままじゃ二人とも氏ぬ!)

さやか「あー!もう!何とかなれーーー!!!!」キーン!❄️❄️❄️

カチン🧊🧊🧊🧊🧊🧊

徒町「え」

みのり「わ~!」

半径50メートルの全ての熱を一瞬で、限界まで吸収する。

さやか(身体が...熱い...)

真冬とはいえ、広範囲の熱を吸収した身体は40度を優に超える高熱になっている。

402: 2025/02/09(日) 21:22:36 ID:???00
徒町「す、すごいよさやかちゃん!海が...津波が凍ってるよ!!」

みのり「お姉ちゃんがやったの!?すごーい!エルサみたい!」

さやか「今のうちに...避難を...」

凍った津波が堤防となり、避難の時間を幾分か稼いでくれた。

女の子は無事に母親の元へ送ることができた。

徒町「さやかちゃんカッコよかったね!あんなのもう大魔術だよ!」

さやか「この──」

徒町「?」

さやか「バカなんですか!バカなんですか!?」

徒町「わっ」

さやか「どう考えても徒町先輩じゃ間に合わないことくらいわかりましたよね!?」

さやか「どうしていつも1人で何とかしようとするんですか!」

403: 2025/02/09(日) 21:23:23 ID:???00
さやか「少しくらい頼ってください!」

さやか「ずっと、一緒にやってきたじゃないですか...」

徒町「そうだよね。ごめん、さやかちゃん」

徒町「あの時も、さやかちゃんがいてくれたら、こんな事にならずに済んだのかな...」

さやか「あの時?」

徒町先輩は瓦礫の山を遠い目で見つめている。

徒町「さっき話しそびれちゃったよね。徒町が瓦礫の撤去をする理由」

徒町「1年前の彗星の落下、あれをやったのは徒町なんだ」

さやか「──────は?」

金沢の街を全壊させ、1万人以上の氏者が出た隕石事故。

あれをやったのが徒町先輩?

404: 2025/02/09(日) 21:24:23 ID:???00
さやか「いやいや...ありえません」

さやか「徒町先輩は強化魔術しか使えないですよね」

さやか「どうやったら彗星を落とせるんですか!?」

徒町「徒町の力じゃないんだけどね」

徒町「でも、それをやろうと思ったのは徒町の意思だよ」

さやか「悪い冗談はやめてください!!」

徒町「ごめんね。後ろめたくてずっと言えなかったんだ」

さやか「やめてください!本気で怒りますよ!!」

だが、今の徒町先輩の顔が、嘘をついてる顔じゃないことはわかっていた。

それでも、理性がその事実を受け入れることを拒んでいた。

さやか「どうして──そんなこと...」

徒町「それしか無かったんだ。あの時、聖杯を壊すためには」

さやか「...」

405: 2025/02/09(日) 21:25:01 ID:???00
徒町「幻滅したよね。さやかちゃんの家族を氏なせた原因は、徒町なんだから」

さやか「はい」

徒町「じゃあ──」

さやか「でも、わたしが見てきた徒町先輩は、たくさんの人を助けてきました」

さやか「わたしは、わたしの知ってる徒町先輩を信じますから...」

約1年、毎日一緒に過ごしてきた。

徒町先輩が隕石を落としたとして、それが悪意からじゃないことはさすがにわかる。

きっとなにか事情があったに違いない。

何より、あの日、暗闇の絶望の中から救い出してくれた徒町先輩を、わたしは信じていたかった。

徒町「......ありがとう」

それからわたしたちはもう1年、共に過ごすことになる。

わたしに、魔術協会への招待状が届くまでは──

――――――

406: 2025/02/09(日) 21:25:52 ID:???00
[ Interlude in ]

綴理「...」

夢で見た情報によると、どうやらアーチャーは未来の人間らしい。

それはいい。だが、問題は徒町小鈴だ。

あいつは明日の明け方に彗星を落とし、金沢の町ごと聖杯を破壊する。

徒町小鈴にそんな力は無いはずだが、現にアーチャーの記憶の中で徒町小鈴は生きていた。

あれは私か?

いや、それならあんな無駄なことに時間を費やしたりはしない。

それならやはり、徒町小鈴本人なのだろう。

信じ難い事だが、私は負けるらしい。

綴理「どうしよっかな」

日野下花帆の強奪か、徒町小鈴の抹殺か…

407: 2025/02/09(日) 21:26:54 ID:???00
綴理「ん?これは…」

ドアの下から紙が差し込まれている。

──────
夕霧先輩へ

今夜9時に体育館裏に来てください。
バーサーカーと待ってます。

徒町小鈴
──────

綴理「宣戦布告?」

さやか「...一昨日のお返しのつもりですか」

綴理「参ったな」

さやか「安心してください。わたしの魔力は完全に回復しました。もう戦えます」

綴理「いや、そうじゃなくて。同じ時間に日野下花帆を呼び出してるんだ...」

さやか「は?キャスターを倒すためですか?」

408: 2025/02/09(日) 21:28:06 ID:???00
綴理「キャスターはもう倒した。花帆本人に用があるんだ」

さやか「!」

さやか(ひとりでサーヴァントを倒した?)

綴理「徒町小鈴の誘いは無視してもいいんだけど...」

綴理(夢のこともある。できればあまり放置したくない)

綴理「仕方がない。また分身をつくろう」

さやか「日野下花帆は分身に任せるのですね」

綴理「ううん。そっちは本体じゃないとダメだ」

綴理「バーサーカーの方に、君と分身に行ってもらう」

さやか(サーヴァントを失ったマスターの方を優先...マスターは何が目的なのです?)

綴理「これが最後の戦いになるだろう。アーチャー、気を引き締めていこう」

さやか「はい」

[ Interlude out ]

409: 2025/02/09(日) 21:29:03 ID:???00
夜9時

コンコンコン

ガチャ

花帆「失礼します...」

理事長室のドアを開ける。そこに居たのは大賀美理事長ではなく――

花帆「夕霧...先輩」

綴理「やあ、待ってたよ。花帆」

花帆「どうして、あなたが」

綴理「理事長のフリをして君を呼び出したのは、ぼくだからね」

花帆「吟子ちゃんは、キャスターはどうしたの!」

綴理「?もうわかってるはずだよね?キャスターは倒したよ」

410: 2025/02/09(日) 21:29:45 ID:???00
花帆「アーチャーがやったの...?」

綴理「あ、うーん。そうだよ」

花帆「っ...それで、何の用ですか。あたしはもうマスターじゃ無いですよ」

綴理「ぼくが呼んだのは君だ。当然、用があるのも君自身だよ」

花帆「あたし?」

綴理「うん。悪いけど、しばらく眠ってもらっ──」スッ

梢「はっ!!」ゴン

綴理「がはっ!?」バタン

綴理「なん、で──」

411: 2025/02/09(日) 21:30:46 ID:???00
──────

綴理「なんで、バーサーカーがあっちにいるんだ?」

小鈴「バーサーカーには、花帆先輩を守ってもらうことにしたんです」

綴理「馬鹿なのかな?サーヴァントをわざわざ自分から引き離すなんて」

小鈴「徒町を頃してもなんの意味もありませんよ」

綴理「なに?」

小鈴「だって徒町はもう、バーサーカーのマスターじゃありませんから」スッ

綴理「令呪が無い!?ならバーサーカーは...」

小鈴「今は花帆先輩と契約してます」

小鈴「昨夜、キャスターが花帆先輩とバーサーカーを繋げたんです」

綴理「キャスター...あの時の宝具か」

412: 2025/02/09(日) 21:31:47 ID:???00
綴理(不味いな...あっちのぼくは本体だ。はやくアーチャーを向かわせないと)

小鈴「焦ってますね、夕霧先輩。いや──」

小鈴「百生とわ!」

綴理「!!!」

小鈴「あなたが御霊移しを使って、花帆先輩を乗っ取ろうとしてることはわかってます!」

綴理「な、なんのことかな?ぼくは夕霧綴理だよ」パタパタ

小鈴「アーチャー!こいつは本物の夕霧先輩じゃありません!」

小鈴「こいつを止めるために、徒町達に協力してください!」

さやか「...」

綴理「...」

さやか「マスターの正体が何であろうと、わたしには関係ありません」

さやか「わたしは、自分の使命を全うするだけです」

小鈴「な!?」

綴理「...ふぅ、アーチャーを引き込むつもりだったみたいだけど、残念だったね」

413: 2025/02/09(日) 21:33:19 ID:???00
綴理「アーチャー、こいつはぼくが始末しておくから。君は直ぐに本体の方に──」

スパン❄️⚔️

綴理「────は?」ゴト

コロコロコロ...サー

小鈴「え」

アーチャーは突然、夕霧先輩の首を撥ねた。

小鈴「アーチャー、やっぱり味方になってくれるの!」

さやか「何を言っているんですか?さっき言いましたよね」

さやか「わたしは自分の使命を全うするだけです」

さやか「マスターが何者かも、聖杯にも興味はありません」

小鈴「?じゃあなんで夕霧先輩を...」

さやか「マスターがあなたを殺そうとしたからです。仕事を取られては困ります」

小鈴「仕事?」

さやか「わたしがこの時代に召喚された理由は、『人類史上最悪の隕石事故を引き起こした原因の排除』」

さやか「つまり、あなたを頃すことです。徒町小鈴」

小鈴「へ?」

414: 2025/02/09(日) 21:34:25 ID:???00
[ Interlude in ]

綴理(アーチャーは何をやってるんだ!仕方がない令呪を――)

綴理(いや、ダメだ。令呪はまだ使えない)

梢「あら、どうしたの?サーヴァントが助けに来ないようだけれど」

綴理「これも君たちの策略なのかい?」

梢「さあ、どうでしょうね」

梢(アーチャーが来ないってことは、小鈴さんの説得が成功したのね!)

綴理「はぁ...アーチャーを引いた時は当たりだと思ったんだけどな」

綴理「とんだじゃじゃ馬だったとはね」

梢「もう諦めなさい。この状況、あなたに勝ち目は無いわ」

綴理「そうだね。降参だ、君たちの勝ちだよ」

415: 2025/02/09(日) 21:35:19 ID:???00
花帆「ねぇ、聞きたいことがあるんだけど」

綴理「何?」

花帆「あなたは本当に『百生とわ』なの?」

綴理「...」

綴理(こいつらがどこまで知っているのかわからない。情報は小出しにした方が良さそうだ)

綴理「そうだよ。ぼくは百生とわから魂を引き継いでいる」

梢「その言い方だと、本人では無いとも取れるけれど」

綴理「どうだろうね。花帆はキャスターから、御霊移しについて聞いているの?」

花帆「魂を交換する魔術だって...ただ、魂には人格の情報は無いとも聞いてるよ」

綴理(...なるほど?)

綴理「その通りだよ。ぼくには『とわ』の記憶は無い」

綴理「ただ、前回の聖杯戦争の時に彼女の魂が入ってきたんだ」

416: 2025/02/09(日) 21:36:28 ID:???00
梢「入ってきた?」

綴理「うん。聖杯にそういう術式が組み込まれてたんだろうね」

綴理「願いを叶える代償に魂を入れ替えられる」

花帆「そんな...!」

梢「まって、願いを叶える代償にって...あなたは前回の聖杯戦争に勝っているの!?」

綴理「あ、それは知らなかったんだ」

綴理「うん。ぼくは前回も優勝して、聖杯を手に入れたよ」

梢(前回“も”?)

花帆「じゃあなんでまた聖杯戦争に参加してるの!願いは叶えたんでしょ?」

綴理「さっき言ったよね。『とわ』の魂が入ってきたって」

綴理「その魂がね、ぼくを突き動かすんだ」

綴理「次の勝者に魂を引き継げって」

417: 2025/02/09(日) 21:37:25 ID:???00
梢「つまり、あなたの目的は聖杯ではないってこと?」

梢「それにしては積極的に戦ってたと思うのだけれど」

綴理「より良い器を選定するためだよ」

綴理「とわの魂は、優れた魔術師の体に入ることを望んでいる」

花帆「それが、今回はあたしだったってこと?」

綴理「そうだよ。君の魔術は特別だからね」

花帆「あたしの治癒魔術が特別?」

綴理「治癒魔術?何を言ってるの?」

綴理「君のそれは治癒魔術じゃない。いや、魔術ですらない」

花帆「え、それはどういう...」

綴理「“魔法”だよ。君は正真正銘の、魔法使いだ」

梢「!?」

418: 2025/02/09(日) 21:38:23 ID:???00
花帆「そ、そんな訳ないよ!あたしはただの治癒魔術しか使えない!」

綴理「なるほど、そう思い込んでたんだね...もったいない」

夕霧綴理は静かに目を閉じ、眉間に人差し指を添える。

カシャ

綴理「ぼくならもっと...上手く使えるのにな!」👁👁ギロ!

梢「!」ビクッ

花帆「!」ビクッ

梢(体が動かない!?)

綴理「ド!ド!ド!...」カチカチ❄Ψ

綴理「三段突き!」ドッドッドッ!

梢「ごばっ!!」グサッ

梢(ランサーの技!?)

419: 2025/02/09(日) 21:40:05 ID:???00
綴理「はっ!」❄Ψ

梢「ちっ!」ブン!

ガキン!ポキ

綴理「あ、もう動けるんだ」

綴理「やっぱりサーヴァント相手じゃ、一瞬怯ませるのが限界か」

梢(油断したわ!霊核が傷ついた...!)

梢「なぜあなたがランサーの技を!それにその氷は、アーチャーの...」

綴理「すごいでしょ。この身体、一度見た魔術なら完璧に再現できるんだ」

綴理「五大元素使い(アベレージ・ワン)に、魅了の魔眼」

綴理「正直、ずっとこの身体で、全力で戦ってみたいと思ってたんだ」ニヤ

梢「その言い方...やっぱりあなた、夕霧綴理じゃないわね!」

420: 2025/02/09(日) 21:40:43 ID:???00
綴理「来なよバーサーカー。せっかくだから、遊んであげる」カチカチ❄↣

梢「不意打ちを決めたくらいで、調子に乗らないことね!」

綴理『強化』バッ

パリン!

夕霧綴理は窓を割り、外に飛び出る。

梢「待ちなさい!」バッ

綴理「逃げたりはしないよ。もっと広いところで戦おう!」ヒュン❄↣

梢「必要ないわ!ここで氏になさい!」ブン!

バーサーカーは矢を難なく避けると、夕霧綴理の頭を殴りつぶした。

グシャ! サー…

梢「分身!?本体は小鈴さんの方なの?」

421: 2025/02/09(日) 21:41:29 ID:???00
綴理「違うよ。『Crimson lotus』」🔥

ボーン!🔥🔥🔥

梢「ぐっ!」🔥

綴理「アーチャーが分身を頃してくれたおかげだよ」

綴理『パラレルダンサー』スー

再び分身が現れる。

梢(炎の攻撃の威力が高すぎる!あれだけは食らわないように立ち回らないと)

綴理(影)『月夜見海月』🪼

梢「ごぼぼっ!?」

梢(何?水の中?体の自由が――)

綴理『Crimson lotus』🔥

梢「!」

ボーン!🔥🔥🔥

梢「あ"あああ!!!」ドサ

422: 2025/02/09(日) 21:42:09 ID:???00
花帆「バーサーカー!!!」

梢「危ないわ!こっちに来ないで!」

綴理(影)「...」ヒュン❄↣

花帆「う"っ!」グサッ

梢「花帆!!」

綴理「バーサーカーは血を見ると理性を失うんでしょ?」

綴理「さあ、見せてよ。君の本当の姿を!」

花帆『フラワー』🌸

花帆「自分の傷くらい治せる!」

綴理(やっぱりだ...あれは平行世界に接続してる!)ニヤ

梢「はっ!」バッ

綴理「!」

423: 2025/02/09(日) 21:43:01 ID:???00
綴理(影)「...」ガキン❄Ψ

梢「ちっ...!邪魔よ!」ガシッ

梢「ふん!」ポイ!

綴理(影)「うわっ」バタン!ゴロゴロ…

分身がやられてる隙に、夕霧綴理はバーサーカーから距離を取る。

綴理『Crimson lotus』🔥

梢「そんな遅い攻撃、拘束されてなければ当たらないわ!」ヒョイ

綴理(影)『Reflection in the mirror』ピカッ!🔥

梢「な!?ごほっ...」🔥

綴理「これで終わりだ。ド!ド!ド!三段突き!」ドッドッドッ!❄Ψ

梢「が――」ブシャー

バタン

花帆「バーサーカー!」

424: 2025/02/09(日) 21:44:18 ID:???00
綴理「ふぅ。やっぱり、体を動かすのは楽しいね」

梢(そんな...サーヴァントが人間に負けるなんて...)

梢(小鈴さん、花帆、ごめんなさい...)



吟子『まだ終わってないよ。例え命に代えても、花帆を護って』



ドクン

梢「!キャスター...?」

梢「そう、いるのね...私の中に」

そうだ、まだ切り札を使っていない。

小鈴さんのおかげで思い出せた。

私の願いは、もう叶っていたんだ。

なら、出し惜しむ必要はない。

ここですべてを使い切る!!!

425: 2025/02/09(日) 21:45:07 ID:???00
梢「春風に舞う桜色――」グラ

~~~~~フワッ🌸

綴理(ん?花びら...?)

――――――

梢(憧れの女学校。鬼の力のことはばれないようにしないと)

『え!乙宗さん握力計壊しちゃったの!?』

梢『ち、違うわ!これは、その、最初から壊れてたの!』

梢(さっそくやってしまったわ!変な子だと思われる...!)

『すごーい!乙宗さんて力強いんだ!かっこいいね!』

梢『え?』

――――――

426: 2025/02/09(日) 21:45:38 ID:???00
梢「夏空、叫んだ日の青――」

ミーンミーン…

――――――

梢『それ!』バシャ

『きゃーー!あははは!えい!』バシャ

『後ろががら空きだぞ梢!」バシャ

梢『冷たっ!やったわね!』バシャ

『あははは!楽しいね!』

梢『ええ!とっても!』

――――――

427: 2025/02/09(日) 21:46:21 ID:???00
梢「秋の暮、燃える赤――」

――――――

『こ、梢様...どうか、私と付き合ってください!」ペコリ

梢『え、えええ!つ、付き合うって...そういうのは男女が行うものじゃないの!?』アワアワ

『わかってます!でも私、梢様を見てると...胸がどきどきして切なくなるんです!」

梢『...』

~~~~~~~

梢『断ってしまったわ。勇気を出して告白しただろうに...』

『ちゃんと返事してあげただけ偉いと思うよ?』

梢『学校生活って、こんなこともあるのね...』

『でも、それも含めて楽しいって、わたしは思うな!』

――――――

428: 2025/02/09(日) 21:46:59 ID:???00
梢「白銀の――冬」

――――――

『梢...さん?その姿...』

梢『いや、ダメ!お願い見ないで!』メキメキ…

『...』テトテト

梢『なんで近づいてくるの!私から離れて!放っておいて!』

『そんなことしないよ。わたしは梢さんの傍にいる』ギュッ

梢『なん...で...』

『だって、わたしは梢さんの友達ですから!』ニコッ

――――――

429: 2025/02/09(日) 21:50:23 ID:???00
景色を、気温を、匂いを、次々と切り替えながら、季節は高速で廻っていく。

梢(そう、私の願いは、この学校に入学した時点で叶っていたの)

梢(鬼の血を消さなくたって、私は人として生きられた)

そして世界は、絵の具を落としたように、色鮮やかな水彩に塗り替えられる。

梢「宝具――『水彩世界』!!!」

同じ場所、同じ校舎、同じ景色。

でもほんの少し違う。

これは、乙宗梢の心象風景。

彼女が、人生で最も楽しかった時間の具現化。

430: 2025/02/09(日) 21:51:29 ID:???00
花帆「綺麗...」

綴理「固有結界――まさかそんな宝具を隠し持ってたとはね」

綴理『Crimson lotus』

シーン...

綴理「!!!」

梢「無駄よ。ここは過去の世界そのもの」

梢「私の学生時代に存在した魔術以外は発動できないわ」

綴理「...なるほど。バーサーカー相手にステゴロを強制されるわけか」

梢「さあ――」

梢「いくわよ!!!」バッ!

[ Interlude out ]

431: 2025/02/09(日) 21:52:44 ID:???00
また、夢を見た。


さやか「封印指定執行官?」

教授「そうだ。ちょうど欠員が出たとかで、一人募集しているらしいのだが」

教授「どうだね、さやか君。君さえよければ私が推薦しよう」

魔術協会に入ってから5年が経った。

あの日、いつものように徒町先輩と瓦礫の撤去をしている時に、この教授に声を掛けられたのだ。

さやか『わたしが魔術協会なんて...』

徒町『さやかちゃん魔術の才能あるんだし、行ったほうが良いと思うけどなー』

さやか『徒町先輩を置いてはいけません!』

徒町『え!?徒町のこと気にしてくれてたの?』

さやか『当たり前です!わたしが傍にいないとどんな無茶をするか...』

徒町『さやかちゃん、徒町は大丈夫だよ!』

432: 2025/02/09(日) 21:53:34 ID:???00
徒町『さやかちゃんにはたくさん手伝ってもらったし』

徒町『そろそろ自分の人生を歩いてほしいな』

さやか『そんな言い方...』

徒町『それにね、徒町も次は海外に行こうと思ってたんだ!』

さやか『へ?』

徒町『日本以外にも、災害や紛争で困ってる人たちがたくさんいる』

徒町『その人たちのことも助けたいんだ!』

さやか『そんな...』

徒町『ね。お互い次の一歩を踏み出そうよ!さやかちゃん!』

さやか『...っ!わかりました』

さやか『ならわたしは!もっと魔術を勉強して、また徒町先輩のところに帰ってきます!』

徒町『!うん...じゃあ、楽しみに待ってる!』

433: 2025/02/09(日) 21:54:34 ID:???00
それが5年前、協会に入ったわたしは、みるみると魔術が上達した。

もともとフィギュアをやっていた上に、2年間も瓦礫の撤去をしていたわたしは、体力的にも他の学生に勝っていた。

教授「ほら、君の魔術は拘束むきだろ?」

教授「それに、うちの学科から執行官が出れば、私も鼻が高いしな!」hahaha!

教授はわたしにとって第二の親のような存在だった。

そんな人に期待されては、断れるはずもない。

さやか「わかりました。その話、謹んでお受けします」

434: 2025/02/09(日) 21:56:04 ID:???00
封印指定執行官の仕事は、希少な魔術を持つ魔術師を拘束し、保護することだ。

保護と言っても、監禁されるだの、ホルマリン漬けにされるだの、いい噂は聞かない。

だから封印指定をされた魔術師は全力で逃げ、場合によっては激しい戦闘になる。

執行官はそうなった時、対象を頃すことなく拘束する高い戦闘スキルが必要とされるのだ。

執行官の訓練はとても厳しかったが、自分が強くなっていると実感できた。

そして、初めての任務は、封印指定になるかもしれない人物の調査だった。

さやか「これがターゲットですか。え――」

さやか「徒町先輩?」

――――――

435: 2025/02/09(日) 21:57:25 ID:???00
小鈴「隕石事故?それがなんで徒町と関係あるんですか!」

さやか「明日の明け方、あなたはこの蓮ノ空に彗星を落とし、金沢の街を壊滅させます」

小鈴「何を言ってるんですか!?」

小鈴「そんなことするはずないし、できません!」

さやか「別に理解しろとは言いません。未来の話ですので、わからなくて当然です」

小鈴「未来って...なんでアーチャーが未来のことを知ってるんですか!」

小鈴「サーヴァントは過去に亡くなったマスターなんですよね?」

小鈴「だったら、未来のことを知ってるはずありません」

さやか「それは蓮ノ空のサーヴァントの話ですよね」

さやか「わたしはこの土地に縛られた魂とは違います」

小鈴「え?」

さやか「わたしは、未来から召喚されたサーヴァントです」

436: 2025/02/09(日) 21:58:30 ID:???00
小鈴「未来から...」

さやか「どうせ説明してもわからないでしょう」カチカチ❄⚔

小鈴「っ!」

ザクッ

アーチャーは氷で2本の剣を作り出し、1本を地面に突き立てた。

小鈴「?」

さやか「あなたはそれを使ってください」

さやか「素手ではサーヴァントは倒せませんから」

小鈴「???」

小鈴「徒町を頃すんじゃないの?」

さやか「頃します。ですが一方的にやるのはフェアではありません」

さやか「あなたがわたしを倒せたら、見逃してあげます」

437: 2025/02/09(日) 21:59:56 ID:???00
小鈴「...」

アーチャーの意図が読めない。

徒町が隕石を落とすだの、未来から召喚されただの。

挙句には徒町に、アーチャーを倒すための武器を与えてきた。

小鈴(なにもかもわからない...けど、戦うしかないことだけはわかった!)

小鈴「...」グッ❄⚔

小鈴「冷たっ!」

さやか「あ、ごめんなさい。素手では掴めませんよね」ヌギヌギ…

さやか「これを使ってください」

アーチャーは自分がはめていた手袋を脱いで渡してきた。

小鈴「アーチャーは冷たくないの?」

さやか「お気になさらず。わたしはサーヴァントなので、凍傷にはなりません」

438: 2025/02/09(日) 22:00:56 ID:???00
不意打ちを警戒して恐る恐る手袋を受け取る。

アーチャーは本当に手袋をくれただけだった。

小鈴「訳がわからないよ...」ボソ

さやか「準備ができたなら始めましょう。あなたが攻撃してきたら、試合開始です」

小鈴「っ...!」グッ❄⚔

小鈴『強化』バチバチ⚡

脚を強化し、一気にアーチャーに踏み込む!

小鈴「たあぁぁ!」ブン

さやか「...」スッ❄⚔

カキン!

氷の剣同士がぶつかりあう。

上段の構えからの振り下ろしは、アーチャーに片手で止められる。

439: 2025/02/09(日) 22:02:36 ID:???00
小鈴「くっ!」バッ

速攻でアーチャーの間合いから離脱する。

さやか「それが全力ですか?もっと強かったと思うのですか...」

小鈴「さっきから...徒町の知らないことを話さないでください!」

小鈴「あたまが混乱して集中できません!」

さやか「それは、すみませんでした。ではもう言葉は不要ですね」

さやか「わたしも行きます」バッ

小鈴(来た!)

さやか「はっ!」シュ❄⚔

小鈴「ふっ!」サッ

斜め後ろに避ける。

武器を与えられたからと言って、馬鹿正直に戦う必要はない。

バーサーカーに言われたと通り、徒町はただ逃げるだけでいい。

440: 2025/02/09(日) 22:03:35 ID:???00
さやか「はっ!はっ!」シュ!シュ!❄⚔

小鈴「っ!」

とは言え、アーチャーの攻撃は早い。

逃げるだけでは捌ききれない。

小鈴「!」ブン❄⚔

カキン!

体に届きそうになった剣を弾く。

小鈴「痛っ!?」ズキズキ

小鈴(攻撃が重い!剣を持ってる手がしびれる!)

さやか「どうしたのです!逃げてばかりでは勝てませんよ!」シュ❄⚔

カキン!

小鈴「っ"~~~!!」ズキズキ

441: 2025/02/09(日) 22:04:23 ID:???00
ダメだ。まともに受け止めてたら腕が折れる!

小鈴「『強化』!!」バチバチ⚡

逃げることを諦め、強化の対象を腕に移行する。

さやか「ふっ!」シュ!❄⚔

小鈴「はあっ!!」ブン❄⚔

ガキン!!

さやか「やっとその気になってくれましたか」ググ❄⚔

小鈴「くっ」グググ❄⚔

さやか「はっ!」ゴス!

アーチャーは競り合ったまま重心をずらし、足でわき腹を蹴ってきた。

小鈴「がは!」ヨロ

442: 2025/02/09(日) 22:05:19 ID:???00
さやか「ふん!」ブン❄⚔

小鈴「っ!?」

よろけた徒町に向けて、氷の剣が振り下ろされる。

小鈴(氏ぬ!殺される!)

キィーン!バチバチ⚡⚡

小鈴「う"っ!!」ドン!!!

さやか「!!」

アーチャーの懐に飛び込み、タックルして姿勢を崩す。

さやか「ちっ!」

小鈴(今、自然と足の強化ができた!?)

さやか「はっ!」スパ❄⚔

ブシャー!

小鈴「があぁぁ!」

左腕を切りつけられた。

443: 2025/02/09(日) 22:05:52 ID:???00
さやか「集中しなさい!まだ終わってませんよ!」シュ!❄⚔

小鈴「!!」バッ

小鈴(そうだ、これはスポーツじゃない!相手は徒町を頃すまで止まらない!)

一度、大きく距離を離す。

小鈴(キャスターと戦った時のことを思い出せ!一撃入れて離脱を繰り返すんだ!)

ダッダッダッ!

アーチャーの周りを円を描くように走る。

キィーン⚡

小鈴「はあっ!!」ダン!

さやか「ふっ!」カキン!

444: 2025/02/09(日) 22:07:27 ID:???00
小鈴「やあっ!!」ブン❄⚔

さやか「...」ガキン!

小鈴(守りを崩せない!もっと、もっと速く!)

キィーン!バチバチ⚡

さやか「!?」

小鈴「はああああ!!!」ザン!❄⚔

さやか「くっ!」キン!❄⚔

すれ違いざまに渾身の一撃を放つ。それでもアーチャーには入らない。

さやか「いいですね。その調子です」

小鈴「はあ...はあ...」

さやか「ですが、あなたまだ“本気”じゃありませんね?」

小鈴「!?」

445: 2025/02/09(日) 22:08:39 ID:???00
さやか「あなたからは、私を“殺そう”という気迫を感じません」

さやか「もしかして、自分はなんだかんだ殺されないと思っていますか?」ギロ

小鈴「っ!」ゾワッ

さやか「残念です。その程度の気合しかないなら」

さやか「やはりここで頃しておくべきでしょう」シュバ!

小鈴(!消え――)

スパン❄⚔

小鈴「あ――」バタン

背中を斜めに斬られ、血が溢れ出てくるのを感じる。

小鈴「う"う"~~っ」ジンジン

小鈴(立て!動け!殺される!)

......

小鈴(“殺される”?)

446: 2025/02/09(日) 22:09:55 ID:???00
さやか「終わりにしましょう」スッ❄⚔

さやか「...さようなら。徒町先輩」ボソ

ストン❄⚔

ブシャー!!

さやか「え?」

さやか(腕が斬られた!?)

小鈴「...」❄⚔

『いいか、こすず、刀を抜くってことは、相手を必ず倒すってことだ』

小鈴(殺されないために刀を抜くんじゃない)

小鈴「頃すために、刀を抜くんだ」❄⚔

さやか「!」ゾクッ

さやか(そうです。それでいいんです。わたしは、あなたに頃して欲しかった...)

447: 2025/02/09(日) 22:11:19 ID:???00
小鈴「アーチャーがどんな事情を持っているのか、徒町にはわかりません」

小鈴「でも、戦うからには、頃す気で行きます。それが礼儀です」

氷の剣を天を突くように構える。

小鈴「うおおおぉぉぉぉ!!!」ズバン!❄⚔

ガキン!

さやか「くっ...重い!」グググ…

小鈴「ふん!」ドン!

さやか「がはっ!」ヨロ

アーチャーの腹を蹴り、その反動で離脱する。

小鈴「はあ!」ブオン!❄⚔

さやか「あまい!」ガキン!❄⚔

横薙ぎは簡単に弾かれてしまう。

448: 2025/02/09(日) 22:12:21 ID:???00
さやか「上段からの攻撃以外は、大したことありませんね!」ダッ

小鈴「!!」

さやか「はっ!」シュバ❄⚔

ガキン!

小鈴「ぐぅ!!」ザク

アーチャーの一閃を咄嗟に防ぐが、止めきれずにわき腹に食い込んでしまった。

小鈴(痛い!でも、まだ動ける!)

小鈴(倒すんだ!徒町が!)

小鈴「おおおお!!!」ザン❄⚔

さやか「」サッ

小鈴「っ!」ダン!

小鈴(逃がさない!相手が反撃するより先に、斬るんだ!)

449: 2025/02/09(日) 22:13:21 ID:???00
小鈴「!!」ズバッ❄⚔

さやか「うっ...!」ズキ

小鈴「はあ!」スッ❄⚔

剣を振り上げ頭を狙う。

さやか「ふん!」ボスッ

小鈴「がは!」

拳が腹にめり込み思わずかがみこむ。

さやか「はっ!」ドガ!

小鈴「!!!」バタン

頭に蹴りを食らい、一瞬意識が飛びかける。

小鈴(ダメだ。さっきから全然有効打が当たってない)

かすり傷なんて与えても、サーヴァントにとっては何のダメージにもならない。

対してこちらは血を流し、少しずつ体力が落ちている。

450: 2025/02/09(日) 22:15:14 ID:???00
小鈴(これ以上長引かせてもダメだ!全身全霊の一撃で勝負を決める!)

キィーン!バチバチ⚡

小鈴「すーーーっ」

再び、剣先を高く掲げる。

小鈴(示現流、蜻蛉の構え――)

さやか「勝負を決める気ですね。いいでしょう、わたしも本気で行きます!」

アーチャーは剣を脇に構え、横薙ぎの準備をする。

もしアーチャーの方が速ければ、徒町の体は横一文に真っ二つにされるだろう。

小鈴「!」ダン!

関係ない。自分が氏ぬイメージなど考えるな。

イメージするのは、常に自分が勝っている姿だけだ!

451: 2025/02/09(日) 22:16:34 ID:???00
小鈴「はあ!!!」❄⚔

さやか「はっ!!!」❄⚔

2本の剣が同時に相手に迫る。

だが、アーチャーの方がコンマ数秒速い。

剣は徒町の体をわき腹から切り裂き――

パキン!

さやか「!?」

一瞬、ピンク色のモノが視界に入った気がした。

小鈴「うおおおぉぉぉぉぉぉ!!!」ズバン!!❄⚔

ブシャー!

さやか「う"――」ガクン

徒町の剣はアーチャーの肩に食い込んだが、心臓まで届くことなく止まってしまった。

452: 2025/02/09(日) 22:18:01 ID:???00
さやか「運に助けられましたね」

さやか「――いや、運も実力の内、ですか...」

アーチャーから闘志が消えていく。

小鈴「アーチャー、あなたは徒町の何を知ってるんですか?」

さやか「何を知ってるか...難しい質問ですね」

さやか「なんでも知っているつもりで、結局、何も知らなかったんです」

さやか「あなたが抱えるモノも、執念も」

小鈴「だから...!徒町にもわかるように説明してください!!」イラッ

さやか「わたしは未来から召喚されたと言いましたね?」

さやか「明日、隕石が落ちます。どうやったのかまでは知りません」

さやか「わたしはその事故に巻き込まれて、瓦礫の下敷きになっていたところを、あなたに助けられました」

453: 2025/02/09(日) 22:19:03 ID:???00
小鈴「徒町に?」

さやか「はい、それからあなたと一緒に被災地の救助に努めました」

さやか「魔術もあなたから教わったんです」

小鈴「......」

小鈴(ダメだ。アーチャーは簡潔に話してくれてるみたいだけど...)

小鈴(まったく話についていけない)

さやか「わたしは2年間あなたと過ごした後に、スカウトを受けて魔術協会に入りました」

さやか「その後、色々あってあなたと再会し――」

さやか「頃しました」

小鈴「は!?待って待って!いきなり飛躍しすぎだよ!!」

小鈴「“色々あって”の中身が重要すぎるよ!!!」

454: 2025/02/09(日) 22:20:19 ID:???00
さやか「うふふ、そうですね」

さやか「でもごめんなさい。それは今のあなたには知って欲しくないんです」

小鈴「...じゃあなんでサーヴァントになったの?」

さやか「それは――」



綴理『令呪をもって命ずる。自害しろ、アーチャー』



グサッ ブシャーー!!!

さやか「がはっ...!」バタン

小鈴「え、なんで」

夕霧先輩がここにいるの?

455: 2025/02/09(日) 22:21:54 ID:???00
[ Interlude in ]

梢「はあ!」ブン!

バギャ!

綴理「ぐふ...!」

綴理(肋をやられた。強化だけじゃバーサーカーの攻撃は凌げない)

こちらにもまだ勝ちの目はある。

だが、それを行う隙がない。

梢「ふん!はっ!」ブン!ブン!

綴理「くっ!」

綴理(5秒...いや3秒でもいい。詠唱するだけの時間が欲しい)

456: 2025/02/09(日) 22:22:51 ID:???00
綴理「仕方がない」ダッ

梢「逃がさいないわよ!」ダッ

綴理「...」スッ🗡

梢「短剣!?でも、そんなものじゃ私は――」

綴理「...」ピュン🗡

グサッ!

花帆「え?」

梢「しまった!花帆!!」

花帆「うぐ...」バタン

綴理「その短剣には毒が塗ってある」

綴理「固有結界を解け。じゃないと花帆は魔術を使えないよ」

457: 2025/02/09(日) 22:24:36 ID:???00
梢(どうする、どうする!)

梢(結界を解けば夕霧綴理はまた魔術を使える。でも解かないと花帆が...)

梢(いえ、速攻で倒してから結界を解けばいいだけ!)

梢「花帆!少しだけ耐え――」

その時、あらゆる光が一点に集まり、辺りは闇に包まれる。

光源は夕霧綴理の指先に。

梢「え」

梢(その魔術は...!)

綴理『Sparkly Spot』

ピカッ!!!

圧縮された光線がバーサーカーの心臓を貫く。

458: 2025/02/09(日) 22:25:57 ID:???00
梢「が――」バタン

固有結界が解け、辺りは再び闇夜に包まれる。

バーサーカーは今度こそ、霊核を完全に破壊された。

梢「なんで...それは、あのとき私を“頃した”魔術...」

綴理「はあ...はあ...ぼくはこれまで100年、全ての聖杯戦争に参加している」

綴理「当然、君がマスターだった時にも、ぼくはいた」

梢「!」

綴理「人間であることにこだわるから負けるんだ」

綴理「鬼の力を解放していれば、ぼくは君に勝てなかったよ」

梢(ここまで...なの...?)

綴理「ぼくの勝ちだ。乙宗梢」

459: 2025/02/09(日) 22:27:41 ID:???00
梢「...っ!あなたは勝てないわ」

梢「私が氏んでも...小鈴さんが!あなたを必ず打ち取る!」

綴理「ふん。それは楽しみだね」

綴理「じゃあ、さよならだ」カチカチ❄Ψ

梢(小鈴さん、あとは頼んだわよ。私の...相棒)

グサッ! キラキラ…

花帆「そん...な...」

綴理「さて、やっとだ。やっと君が手に入る」

花帆「!なんであたしなの...!あたしは魔法なんて持ってないってば!」

綴理「君は一度も疑問に思わなかったのかい?」

綴理「魔術は“無から有は生み出せない”」

460: 2025/02/09(日) 22:28:57 ID:???00
綴理「治癒魔術では、欠損した体は完全には治せない」

花帆「え?」

綴理「傷口を塞ぐことはできても、生やすことなんてできないんだ」

綴理「なら、欠損した部分を“どこかから持ってきている”ことになる」

花帆「持ってきてる...?」

綴理「意識を向こう側へ向けてみろ。治した側でなく、奪った方へ」ピト

夕霧綴理は指先を花帆の額に当て、魔力を流し込む。

ザザ...

花帆「奪った方...何を言って...」

461: 2025/02/09(日) 22:29:40 ID:???00
ザザザ...

花帆「!!」

――――――

小鈴『ふう、勉強疲れたな~』

小鈴『あ!もうこんな時間!大浴場閉まる前に早く行かなきゃ』

ズボ!ズボ!ズボ!

小鈴『え――あ、あ"あ"あ"あ"あ"あ"!?!?!?』

小鈴『痛い!痛い!穴!?体中に穴が――』

ブシャー!!!

小鈴『 』バタン

――――――

花帆「あああ...」

462: 2025/02/09(日) 22:30:30 ID:???00
ザザザ...

――――――

慈『ハロめぐ~~~♡』

慈『今日の配信は~久しぶりの雑談配信だよ!』

慈『めぐ党さんのみんな待ってた~?』

慈『待ってた!ありがとう~よちよち』ズズ…

慈『ん?何か熱...あ"つ"い"!!」ズズ…

慈『ナニコレ!?体が焼け――こ」ジュー🔥

――――――

花帆「ああああああ...!」

463: 2025/02/09(日) 22:31:14 ID:???00
ザザザ...

ザザザ...

ザザザ...

治したつもりだった。

癒したつもりだった。

命を救ったつもりだった。

違ったんだ。あたしはただ、奪ってただけだ。

癒しただけ傷つけて、救っただけ頃してきただけだったんだ。

花帆「あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"!」

464: 2025/02/09(日) 22:32:56 ID:???00
綴理「無数に枝分かれする平行世界を超えて、自由に花を摘み、一つの世界に束ねられる能力」

綴理「君の名前になぞらえるなら、そんなところかな?」

花帆「待って...なら、あたしの病気はなんで治らなかったの...?」

綴理「病気?さあね、それが治る世界線がどこにもなかったんじゃない?」

花帆「――は」ペタン

花帆(どこにもない?病気が治る可能性が?)

花帆(じゃあ、あたしは何のために――)

綴理「...」ベシッ

花帆「うっ...」バタン

綴理「安心しなよ、ぼくが君の体を上手く使ってあげる」

綴理「根源にさえたどり着ければ、時間なんて概念はないようなものだ」

綴理「さて、じゃあ最後のサーヴァントを始末しようか」

[ Interlude out ]

465: 2025/02/09(日) 22:34:26 ID:???00
小鈴「なんで、夕霧先輩がここに...バーサーカーは!」

綴理「倒したよ。こっちもかなりの痛手を負ったけどね」

小鈴「そんな...!」

さやか「マスター...どうして」ポタポタ

アーチャーは手に持っていた折れた剣で、自分の心臓を刺していた。

綴理「君はぼくの手に負えないし、そもそも最初からこうする予定だった」

綴理「聖杯戦争の勝者に、サーヴァントはいらない」

さやか「...」バタン

小鈴「アーチャー!」

綴理「これにて今回の聖杯戦争は終結だ」スタスタ

夕霧先輩は夜の闇に消えていった。

466: 2025/02/09(日) 22:35:30 ID:???00
さやか「マスターは蓮ノ湖に向かったはずです...」

さやか「この土地で最も霊脈が集中してる場所ですから...聖杯が顕現するなら、きっとそこです」

小鈴「しゃべらないで!傷が...」

さやか「ごめんなさい...結局、あなたを救えなかった...」

さやか「また、あなたを一人にしてしまう...」

小鈴「アーチャー?」

さやか「 」キラキラ…

アーチャーは光の粒子となって消えてしまった。

結局、なんで徒町の命を狙ってたのかは聞けずじまいだ。

467: 2025/02/09(日) 22:36:32 ID:???00
小鈴「っ!」

蓮ノ湖に向かって歩き出す。

バーサーカーが負けたってことは、花帆先輩が危ない。

小鈴「あれ?」クラッ

バタン

突然、眩暈がして地面に倒れこむ。

見ると体の下に血だまりができていた。

小鈴(立て...花帆先輩を、助け...ないと...)

視界がどんどんぼやけていく。

徒町はまた間違えたのだろうか。

バーサーカーの言う通り、3人で戦っていれば勝てたのだろうか。

後悔に苛まれながら、意識は完全に途絶える。


夜はまだ、終わらない。

――――――

477: 2025/02/11(火) 21:06:51 ID:???00
【2月10日】

夢を――見ていた。

暗闇の中で、ずっと退屈だった。

あまりにも暗いから、自分が本当にいるのかもわからない程の闇。

でも、ある時から夢を見るようになった。

その夢のおかげで、退屈ではなくなった。

それは2人の少女が頑張る物語。

これは、ぼくが見た最後の夢の話だ。

478: 2025/02/11(火) 21:08:11 ID:???00
さやか「徒町先輩が封印指定?」

ありえない。徒町先輩は強化魔術しか使えないはずだ。

さやか「とりあえず資料を...きっと何かの間違いです」

徒町先輩はわたしと別れた後、本当に世界中を旅しているらしい。

大きな災害があった国や、紛争地帯。

あらゆる場所に現れては、多くの人を救っているという。

徒町先輩に救われた人数は、1000人を優に超えると書いてある。

その際に魔術を使っている形跡が確認されている。

協会は、徒町先輩が特別な魔術を持っていると考えたらしい。

さやか「それで調査、ですか...」

479: 2025/02/11(火) 21:08:52 ID:???00
信じがたいことだが、もしかしたら旅の途中で何らかの力に目覚めたのかもしれない。

もしそうなら、この調査の担当がわたしに回ってきたのは幸運だった。

他の執行官だったら、問答無用で拘束されていたかもしれない。

でも、わたしなら穏便な方法で納められる。

本当に特別な魔術を生み出したのなら、わたしの推薦で協会に入学してもらうこともできる。

徒町先輩は今はとある国の紛争地域にいるらしい。

わたしは久しぶりに会える喜びに胸を躍らせていた。


しかし、再会した徒町先輩の姿を見て、わたしの心は凍り付いた。

480: 2025/02/11(火) 21:09:50 ID:???00
さやか「徒町...先輩?」

徒町「あれ?その声...もしかしてさやかちゃん!」

さやか「なんで...」

徒町「久しぶり!ロンドンでの暮らしはどう?友達はできた?」

さやか「なんで...!」

徒町「さやかちゃん、もしかして泣いてるの?」

徒町「ごめんね!徒町、ちょっと目が悪くなっちゃって!」アハハ

さやか「なんで!そんな姿になるまで続けたんですか!!」

徒町先輩は、特別な魔術など習得していなかった。

それは、そのボロボロの姿を見ただけで理解できてしまった。

さやか「右腕はどうしたんですか!左目は!!なんで体中傷だらけなんですか!!」

徒町「わっ!びっくりした!」

さやか「びっくりしたのはこっちです!」

481: 2025/02/11(火) 21:10:51 ID:???00
徒町「右腕は2年前にミサイルでね...」

徒町「あ、でも左目は怪我したわけじゃないよ!」

徒町「事故で目を失くしちゃった女の子にあげたんだ!」

さやか「 」

徒町先輩は魔術の力を使ってたんじゃない。

文字通り、身と骨を削って、人々に分け与えていただけだった。

さやか「どうしてそこまでするんですか!」

さやか「ここは金沢の町じゃない!徒町先輩には関係ない人たちでしょう!」

徒町「...確かにそうだね」

徒町「でも、徒町はあの日、たくさんの人の命を奪っちゃったんだ」

徒町「失った命は戻らない」

徒町「だから、徒町はまだ生きてる人を助けるために、この身を捧げると決めたんだ」

482: 2025/02/11(火) 21:11:38 ID:???00
さやか「そんな、だからって...」

徒町「これは徒町の償いなんだよ。だから、さやかちゃんは気にしないで!」

さやか「っ!もう充分です!徒町先輩はもう充分人を助けました!」

さやか「徒町先輩、一緒に帰りましょう」

さやか「わたしと一緒に、ロンドンで暮らしませんか?」

徒町「ごめんね。徒町はもう“契約”しちゃったから」

徒町「さやかちゃんと一緒には行けないよ」

さやか「契約って...」

徒町先輩は『アラヤ』と契約を交わしていたらしい。

隕石事故で生き残る代わりに、その身すべてを人類を救うために使うと。

483: 2025/02/11(火) 21:12:31 ID:???00
さやか「...」カチカチ❄⚔

徒町「さやかちゃん...?」

さやか「わたしに、自分の人生を歩けと言ったのは徒町先輩でしょう」

なのに、肝心の自分自身は、己の人生なんて疾うに捨てていた。

これ以上、誰かの為に尽くさなくていい。

償いの為に人生を使わなくていい。

どんなに生きても、自分の為に生きられないのなら。

いっそのこと――

さやか「やっぱり、あなたを一人にするんじゃなかった...」

さやか「人類を救うという契約は、わたしが引き継ぎます。だから――」

さやか「徒町先輩はもう...休んでください」スパン❄⚔

484: 2025/02/11(火) 21:14:03 ID:???00
これが一つの結末。

あなた達とは関係ない、どこかの世界の2人のお話。

わたしは徒町先輩に代わり『守護者』となった。

守護者は人類に危機が迫った時、あらゆる時代に派遣される。

そしてとうとう、この時代にも召喚された。

聖杯を求めるからではない。

隕石落下を防ぐため。

徒町小鈴を、罪人にしないために。

その為なら、たとえ頃してでも止めて見せる。

それが、どんなに身勝手な願いだとしても。

――――――

485: 2025/02/11(火) 21:14:56 ID:???00
チク...タク...チク...タク...

小鈴「はっ!」ガバッ

目を覚ます。

いつの間にか気絶していたらしい。

小鈴「あれ?ここは...徒町の部屋?」

徒町は自分の部屋のベッドで寝ていた。

確か、体育館裏で気絶したような――

小鈴「痛っ!」ズキズキ

体中が痛い。

布団をめくると、なぜか服を着替えており、体に包帯を巻かれていた。

小鈴「自分でやった...訳ないよね?」

486: 2025/02/11(火) 21:16:00 ID:???00
小鈴「は!そうだ時間は!」

時計の針は午前の4時を回っていた。

どうやら6時間近くも寝ていたらしい。

小鈴「蓮ノ湖に行かなきゃ!」

あれからかなり時間が経ってる。

もしかしたら、もう手遅れかもしれない...それでも!

小鈴(徒町は、もうこれ以上犠牲者を出さないと決めたんだ!)

血が足りていない。

痺れる手足に鞭を打って、無理やり走る。

小鈴「はあ...はあ...花帆先輩!」

487: 2025/02/11(火) 21:16:59 ID:???00
[ Interlude in ]

瑠璃乃「小鈴ちゃん、蓮ノ湖に向かったよ」スー

慈「そう...ほんと、無茶ばっかりするんだから」

慈「せっかく傷の手当してあげたのに、次は助けてやらないぞ」

ランサーはまだ消滅していなかった。

藤島慈と再契約したわけではない。

そもそも藤島慈に、ランサーと契約できる魔術回路はない。

ランサーがいまだ現世に残っているのは、ひとえに安養寺姫芽の最後の令呪によるものだ。

――――――

姫芽『令...呪を...もって...命ずる』

『ランサー、めぐちゃんせんぱいの傍にいて』

――――――

この令呪の魔力のおかげで、ランサーは消滅を免れている。

488: 2025/02/11(火) 21:17:42 ID:???00
瑠璃乃「めぐちゃんはいいの?小鈴ちゃんを放っておいて」

慈「...別に」

瑠璃乃「もし、小鈴ちゃんを助けたいって言うなら、ルリも力を貸すよ?」

慈「はあ!なんで私があんな奴!」

瑠璃乃「めぐちゃんも本当は、小鈴ちゃんのこと好きなんでしょ?」

慈「っ!」

――――――

小鈴『幼馴染じゃなくても!『友達』として!めぐちゃんのことが大好きだから!!』

小鈴『めぐちゃんは楽しくなかったの!?』

慈『私だって楽しかったよ!!あんたと過ごした時間は!!!』

――――――

489: 2025/02/11(火) 21:18:19 ID:???00
慈「でも...私はあいつを殺そうと...」

瑠璃乃「小鈴ちゃんなら、きっと許してくれるよ」

慈「...っ!」

慈「ルリちゃん...お願い!」

瑠璃乃「うん、いいよ」

慈「まだ何も言ってないじゃん...」

瑠璃乃「めぐちゃんのお願いなら、ルリがなんでも叶えてあげる!」

慈「っ!私は――」

[ Interlude out ]

490: 2025/02/11(火) 21:19:20 ID:???00
蓮ノ湖のほとりで、赤い女は魔法陣の前に立っていた。

トワ(おかしい...聖杯が現れない)

今まではサーヴァントがすべて消滅したら、程なくして聖杯は召喚できた。

だが今回は、いくら待っても聖杯が現れない。

トワ(まさかまだサーヴァントが生き残っているのか?)

トワ(いやそんなはずはない、全員始末したはずだ)

トワ「う"っ」ズキ

バーサーカーと戦った時の傷は、夕霧綴理の魔術回路でも完全には治せていない。

肋骨2本と、すい臓の破裂、腎臓の破損。

この体はまもなく氏ぬ。

一刻も早く、日野下花帆の体に魂を入れ替えなくてはいけない。

日野下花帆は2つの魔法陣の内の1つの上に寝かせている。

491: 2025/02/11(火) 21:20:58 ID:???00
小鈴「百生とわー!!!」

トワ「!?」

小鈴「はあ...はあ...夕霧先輩が振り返ったってことは、まだ花帆先輩は無事なんですね」

トワ「まだ生きてたのか、ゴキブリ並みにしぶといね」

小鈴「なんで花帆先輩なんですか。花帆先輩は難病にかかってます!」

小鈴「そんな人の体よりも、徒町の体を使ってください!」

トワ「はっ!ははは!面白いことを言うね?」

トワ「君みたいなできそこないの魔術師の体要らないよ」

トワ「私が欲しいのは日野下花帆の魔法だ」

小鈴(ん?なんか...雰囲気が違うような...)

492: 2025/02/11(火) 21:21:50 ID:???00
小鈴「花帆先輩の魔法?」

トワ「平行世界に接続する力。この力があれば『根源』に手が届く」

小鈴「根源って確か...世界の全ての情報があるって場所?」

トワ「そうだ、全ての魔術師の究極の目標」

トワ「その為に、私はこの聖杯戦争を生み出した」

小鈴「生み出した?あなたがこの聖杯戦争を作ったんですか!?」

トワ「ああ、この土地を見つけたのはたまたまだったけどね」

小鈴「なんで...」

トワ「聖杯が顕現するまで、暇つぶしに教えてあげるよ」

493: 2025/02/11(火) 21:23:44 ID:???00
トワ「百生家の当主として『御霊移し』を継承した私は、これが魔法に準ずる魔術だと気が付いた」

トワ「形式だけの儀式に使うのはもったいないと思って、研究の為に家を飛び出したんだ」

小鈴「それで蓮ノ空に?」

トワ「この学校は全寮制だからな。住む家の無い私には都合がよかった」

トワ「その上、幸運なことに優秀な霊脈も通っている」

トワ「そこで私は、御霊移しに必要な魔力を霊脈から持ってくる儀式を思いついたんだ」

小鈴「それが、聖杯戦争...」

トワ「ああ、聖杯の噂を流せば、若くて優秀な魔術師も勝手に入学してくる」

トワ「魂の器の交換先はいくらでも用意できるということだ」

小鈴「!聖杯戦争の噂を流したのも、あなたなんですか?」

トワ「そうだ、マスターは氏んだら記憶から消える」

トワ「定期的に噂を流さないと、聖杯戦争のことが広まらないんだ」

494: 2025/02/11(火) 21:24:40 ID:???00
小鈴「っ!サーヴァントは...なんでマスターの魂を縛ったりなんかしたんですか!」

トワ「私の知識とこの土地の霊脈では、本物の英霊は召喚できなかった」

トワ「だから、一般人の魂を無理やりサーヴァントの型に当てはめることにしたんだ」

トワ「最も、そんなものでは本物の聖杯は作れないが...」

トワ「私には御霊移しを行使できる分の魔力だけで十分だからな」

小鈴(ん?待って、今なんて言った?)

小鈴「本物の聖杯は作れないって...どういうことですか」

トワ「言葉の通りだ、ここで作れる聖杯に、願いを叶えるだけの力はない」

小鈴「...は?」

小鈴(願いを叶える力はない?)

495: 2025/02/11(火) 21:25:48 ID:???00
小鈴「じゃあ、もしあなた以外が勝っていたら、どうなったんですか?」

トワ「関係ない。そもそも聖杯は私しか作れない」

トワ「誰が勝とうが、その時最も優秀な魔術師の体を、私が奪うだけだ」

小鈴「な!?」

小鈴「サーヴァントは?願いを叶えられなかったら、あなたに反発するはずです!」

トワ「サーヴァントは全員頃すよ。5基の魂を注がないと聖杯は顕現しないからね」

トワ「召喚されるサーヴァントは、全員ただの燃料に過ぎない」

小鈴「そ、そんなの...もしまた召喚された時に気付かれるでしょう!?」

トワ「次なんてない。一度消滅し、聖杯に注がれた魂は、純粋な魔力に変換されて“消費される”」

小鈴「消費される...?」

トワ「完全に消え去るということだ。英霊の座に登録されていないのだからな」

小鈴「!」

496: 2025/02/11(火) 21:26:51 ID:???00
トワ「当たり前だろう。ただの一般人の魂だぞ?」

トワ「その存在ごと炉にくべなければ、大した魔力は生み出せない」

小鈴(完全に消える?次の機会を与えられることもなく、みんなの記憶から消えたまま?)

小鈴「バーサーカーも、もう二度と会えないってこと?」

トワ「そういうことだ」

小鈴「そん、な...」ペタン

聖杯は願いを叶えられない?

サーヴァントは燃料でしかない?

じゃあ、バーサーカーは、みんなは、何のために戦ってきたの?

何のために、命を捨てたの?

最初から、この女のためだけの儀式だったってこと?

497: 2025/02/11(火) 21:28:00 ID:???00
小鈴「許せない...」

トワ「ん?」

小鈴「人の命を、何だと思っているんですか!!」

小鈴「人の願いを!なんだと思っているんですか!!!」

鬼の呪いを消したかった。

不治の病を治したかった。

亡くなった幼馴染を生き返らせたかった。

亡くなった家族に会いたかった。

友達に長生きしてほしかった。

小鈴「みんな、切実な願いだったんです」

小鈴「奇跡に頼るしかなくて、辛くても必氏に戦ったんです」

498: 2025/02/11(火) 21:28:42 ID:???00
小鈴「それなのに、全部嘘だった」

小鈴「奇跡なんて最初からなくて、ただ殺されるためだけに戦わされてた」

小鈴「願いを利用されてきた!」

こんな、こんな自分勝手なこと。

許せない

許せない

許せない!

小鈴「お前は、ここで頃す!!」

カチャ

刀を抜く。

生きるためじゃない、ただ頃すために。

499: 2025/02/11(火) 21:29:41 ID:???00
小鈴「『強化』!!」バチバチ⚡

ダンッ!

地面を蹴る。

一直線に、最速で、その悪魔に殴りかかる。

小鈴「おおおおお!!!」

トワ「調子に乗るな」

トワ『Crimson lotus』🔥

小鈴「っ!」ザザー

目の前に迫る火球をスライディングで避ける。

髪の毛が少し焦げたが気にしない。

トワ「なに!?」

小鈴「ふん!」ゴス!

トワ「がっ」

500: 2025/02/11(火) 21:30:33 ID:???00
小鈴「らぁ!」ドン!

トワ「ぐふ!」

型なんて頭から吹き飛んだ。

ただ力の限り殴る。

肉を、骨を、人の形が無くなるまで殴るだけだ。

小鈴「はあっ!」ブン!

トワ『強化』パシッ

小鈴「!!」

トワ「ふん!」ドス!

小鈴「がはっ!?」

トワに腹を殴られ、思わずかがみこむ。

501: 2025/02/11(火) 21:31:31 ID:???00
トワ「はっ!」ゴン!

小鈴「ぶっ!」バタン

膝が顔面を強打する。

一瞬意識が飛び、気が付いたら地面に倒れていた。

遅れて鼻血が出てくるのを感じる。

トワ「強化ができたくらいで調子に乗るな」ゲシ!

小鈴「っ!」

頭を踏みつけられる。

頭蓋が割れると思うほど、強く地面に押し付けられる。

トワ「強化なんて、魔術師ならだれでもできる」グリ

トワ「基礎の基礎なんだよ」グリグリ

小鈴「...っ"!」

502: 2025/02/11(火) 21:32:37 ID:???00
トワ「お前は掛け算ができたくらいで、東大に受かると思ってるのか?」ガシッ

小鈴「がっ...!」

トワは徒町の首を片手で掴むと、軽々と体を持ち上げた。

小鈴(苦しい...!)

トワ「お前みたいなゴミが私に勝つなんて、ありえないことなんだよ」

小鈴「っ...はっ...!」ジタバタ

トワ「これは私の物語だ」

トワ「お前らのような端役は、私の偉大な研究の実験動物に過ぎない」ググッ

小鈴「!」

締めあげられた首が軋みを上げる。

はじめてサーヴァントに襲われた時のことを思い出す。

もう、助けてくれるバーサーカーはいない。

503: 2025/02/11(火) 21:33:21 ID:???00
トワ「そのまま海の底にでも沈んでろ」

トワ『月夜見海月』

小鈴「こぼっ...!」バタバタバタ

小鈴(息が...でき...)

小鈴「...!」バタバタ

小鈴「...」パタ

小鈴「 」ダラン

ボトン...

トワ「氏んだか...っ!?」ズキ

トワ「う"っ...ふう...ふう...」

トワ(体が限界に近い。まだ聖杯は現れないのか...!)

――――――

504: 2025/02/11(火) 21:34:23 ID:???00
沈む。

沈む。

どこまでも沈んでいく。

水面はどんどん遠ざかっていって、暗闇に落ちていく。

10歳の誕生日、一人で漁に出ようとして、海に落ちた。

真冬の海は冷たくて、もがくほどに体力は奪われていった。

息を吸おうと口を開けば、海水が肺に入り込んでくる。

ゆらゆら、ゆらゆら。

暗い海の底を、ただ漂うだけ。

あたしは、この時に氏ぬはずだったんだ。

なのに――

505: 2025/02/11(火) 21:35:09 ID:???00
『――ず』

『――す――ず!』

ああ、ダメだよおじいちゃん。

こんな冷たい海に入ったら、おじいちゃんも氏んじゃうよ。

あたしが悪かったんだ。

身勝手だっただけなんだ。

だから、あたしのせいでおじいちゃんが氏ぬのは、嫌だよ。

お願い、もう放って――


「すず!!!」

小鈴「はっ!」

506: 2025/02/11(火) 21:36:07 ID:???00
夢から目を覚ます。

目の前にいたのは――

小鈴「っ!とわ!」バッ

百生とわが徒町の顔を覗き込んでいた。

咄嗟に起き上がり、距離を取る。

「?ぼくはトワじゃないよ?」

小鈴「何を言って...あれ?ここ、どこ?」

そこは一面、白一色の世界だった。

徒町と目の前の女以外誰もいない。

音も、風も、匂いもない世界だった。

綴理「ぼくは夕霧綴理だよ。はじめまして、かな?」

綴理「ここがどこだかは、ぼくにもわからないや」

綴理「すずの中に入ってきたら、ここにすずが倒れてたんだ」

507: 2025/02/11(火) 21:37:00 ID:???00
小鈴「え、百生とわですよね?」

綴理「違うよ。うーん、本物のぼく?って言えばいいのかな?」

小鈴「本物...じゃあ、夕霧綴理先輩本人ってことですか!?」

綴理「さっきからそう言ってる」

小鈴「でもなんで...夕霧先輩が?」

小鈴「それにさっき、徒町の中に入ってきたって言ってたし...」

綴理「綴理でいいよ」

綴理「えっと、そうだなぁ。どこから話そう?」

綴理「ぼくはね、貝柱なんだ」

小鈴「貝柱?」

綴理「少し前にね、ぼくの中にトワが入ってきて、ぼくは引きはがされそうになった」

綴理「でも、必氏にしがみついて、少しだけ殻に残ったんだ」

508: 2025/02/11(火) 21:37:40 ID:???00
小鈴「うん?えっと...」

小鈴「つまり綴理先輩の魂が、少しだけ体に残ってたってことですか?」

綴理「おーすごい。よくわかったね、すず」ヨシヨシ

小鈴「きょ、恐縮です!」

綴理「ぼくはね、ずっと寝てたんだ」

綴理「何も見えないし、聞こえなかったから、ただ寝てることしかできなかった」

綴理「でもね、ある時から夢を見るようになったんだ」

小鈴「夢?」

綴理「すずとさやの夢だよ」

小鈴「!もしかして、アーチャーの過去ですか!?」

綴理「うん。過去というか、未来?」

綴理「あれ、でもさやにとっては過去だったのかな?」

509: 2025/02/11(火) 21:38:30 ID:???00
小鈴「そっか、徒町がバーサーカーの夢を見たみたいに...」

綴理「夢の中の2人はね、とってもきらめいてた」

綴理「それでね、ぼくも会ってみたいなーって思ったんだ」

綴理「そしたら急に、すずの気配を近くに感じたから」

綴理「トワがやってたのを真似して、すずの中に入ってみたんだ」

小鈴「真似してって...御霊移しをですか!?」

小鈴「それってそんな簡単にできることなんですか」

綴理「うーん、どうなんだろう。でも、ぼくはできたよ?」

小鈴「もしかして、綴理先輩って天才?」

綴理「ぼく天才?やったー」パチパチカチマチ

510: 2025/02/11(火) 21:39:21 ID:???00
小鈴「!待ってください」

小鈴「綴理先輩の魂とこうして話ができるってことは...」

小鈴「もしかして徒町、もう氏んじゃってるんですか!?」

綴理「ん?すずは氏んでないよ」

綴理「氏んでたらぼくが入ってこれなかったと思うし」

小鈴「じゃあ、ここはいったい...」

綴理「なんなんだろうね?」

小鈴「わからないんですか!?」

綴理「ごめん。ぼく今までずっと寝てたから」

綴理「でもたぶん、夢みたいなものなんじゃないかな?」

小鈴「夢...なら早く起きないと!」

511: 2025/02/11(火) 21:40:05 ID:???00
小鈴「このままだと花帆先輩の体が、とわに奪われちゃいます!」

綴理「それは大変だ」

小鈴「あ、でも...起きたところで、どうせ徒町じゃ何も...」

綴理「?」

小鈴「やっぱり、徒町じゃ無理だったんです」

小鈴「花帆先輩を救うことも、聖杯を壊すことも...」

綴理「どうして?」

小鈴「だって、徒町には何もない」

小鈴「バーサーカーのようなパワーも...」

小鈴「花帆先輩や、姫芽ちゃんみたいなすごい魔術も」

小鈴「何もない徒町じゃ、全部を救うなんてこと、できっこなかったんです」

512: 2025/02/11(火) 21:40:52 ID:???00
綴理「...すず、君は何もなくないよ」

小鈴「え?」

綴理「すずはね、台風の目なんだ」

小鈴「台風の目?」

綴理「台風の目にいるとね、とっても静かで、穏やかで」

綴理「自分には何の力もないように感じてしまう」

綴理「でもね、その周りには、いつも強い風が吹いている」

綴理「少しだけ手を伸ばせば、いつだってその風を掴むことができるんだ」

小鈴「?」

綴理「そのことだけ覚えいていてほしい」

小鈴「わかり、ました...?」

513: 2025/02/11(火) 21:42:27 ID:???00
綴理「うーん。でも、夢で見たすずはもう少しだけ強かったんだけどな...」

小鈴「!それ、アーチャーも言ってました!」

小鈴「徒町はもっと強かったはずだって」

小鈴「綴理先輩!夢の中の徒町はどんな感じだったんですか!」

綴理「え、なんだろう?落花生みたいだった」

小鈴「落花生...」

綴理「今のすずは枝豆」

小鈴「なるほど、枝豆...」

小鈴「全然わかりません!!!」

綴理「困った...うまく伝わらない」

小鈴「せめてその夢を直接見れれば...」

綴理「あ、それならできるかも?」

514: 2025/02/11(火) 21:43:16 ID:???00
小鈴「本当ですか!?」

綴理「うん。でも、さやの夢ではすずは...」

小鈴「アーチャーに殺されるんですよね」

綴理「...」

小鈴「構いません。見せてください」

綴理「...」

小鈴「たとえ自分の未来がどんな悲惨なものでも」

小鈴「今は、とわを倒す力が欲しいんです」

綴理「...」

小鈴「花帆先輩を、救えるだけの力が欲しいんです!」

綴理「...わかった。さやの夢を共有しよう」

小鈴「ありがとうございます!」

515: 2025/02/11(火) 21:43:55 ID:???00
綴理「ただし、力の使い方以外は、あまり見ないでほしい」

綴理「あの子は、正確にはすずとは違うから」

小鈴「わかりました」

綴理「それじゃあ行くよ」コツン

綴理先輩は自分の額を、徒町の額にくっ付けた。

小鈴「ち、近い...///」

小鈴「目きれい...」

綴理「すず、集中してほしい」

小鈴「ごめんなさい!」

目をつぶり、額に意識を集中させる。

だんだんと、ビジョンが見え始めてきた。

516: 2025/02/11(火) 21:44:42 ID:???00
ザザー…

アーチャーは元々はフィギュアスケートをしていたらしい。

徒町と同じように悩み、成長しようともがく、普通の女の子だった。

ザザー…

それは悲惨な事故だった。

彗星が落ち、町も人も何もかも吹き飛ばした。

アーチャーはそんな事故に巻き込まれ、そして徒町と出会った。

ザザー…

さやかちゃんの見た徒町は、大きな瓦礫を軽々持ち上げていた。

そのたくましさは、バーサーカーを彷彿とさせるものだった。

徒町とさやかちゃんは2年間一緒に過ごし、瓦礫の撤去に努めた。

ザザー…

さやかちゃんは魔術協会に入学した。

封印指定執行官になったさやかちゃんは、徒町と再会した。

そして――

517: 2025/02/11(火) 21:45:56 ID:???00
綴理「すず!ここまでだ」

小鈴「はっ!」

綴理「もう見なくていい」

小鈴「あ...あれ?」ポロポロ

小鈴「...っ」ペタン

小鈴「ごめんね...さやかちゃん...」ポロポロ

小鈴「徒町のせいで、あんな想いをさせちゃって...」

綴理「...さやはね、すずの為にとても頑張ってたんだ」

綴理「もしもまた会う機会があったら、褒めてあげてほしい」

小鈴「はい...」

518: 2025/02/11(火) 21:46:43 ID:???00
綴理「それで、力の使い方はわかった?」

小鈴「ぐず...っ!大丈夫です!」

綴理「ならもう戦えるね?」

小鈴「はい!」

小鈴「あ、でも綴理先輩の体なのに...」

綴理「気にしないでいい。ぼくが許可する」

小鈴「...わかりました」

綴理「じゃあ、起きようか」

小鈴「はい!!」

――――――

519: 2025/02/11(火) 21:47:41 ID:???00
小鈴「...」ムクッ

トワ「ん?なんだ、まだ生きてたのか...」

トワ「ゴキブリどころの生命力じゃないな」

小鈴「徒町は決めたんです」

小鈴「聖杯を壊し、この不幸の連鎖を断ち切ると」

小鈴「そのために、あなたを倒します」

トワ「何度やっても結果は同じだ」

トワ「お前じゃ私に勝てないよ」

小鈴「そんなこと、やってみないとわからない!」

小鈴「抜刀」

カチャ

刀を抜き、魔術回路を起動させる。

520: 2025/02/11(火) 21:48:53 ID:???00
さやかちゃんは、2年間、徒町のことをよく見てくれていた。

おかげで未来の徒町が、どうやって全身の強化をしていたのか理解できた。

小鈴(そうだ、強化したいところに魔力を送るんじゃない)

小鈴(血液に混ぜるなら、魔力を送る場所はたった一カ所でいい!)

背骨から一番近い場所、心臓に向けて魔力を送る。

回せ、廻せ、循環させろ。

爪の先まで魔力で満たせ!

全身の細胞を、魔力で強化しろ!


『刀は抜くべからざるもの』


小鈴「――納刀」

チャキ

521: 2025/02/11(火) 21:49:41 ID:???00
小鈴「『全強化(タイプ:バーサーカー)』!!!」

バチバチバチ⚡⚡⚡

トワ(なんだ?雰囲気が変わった...)

小鈴「はあっ!!」ドン!!!

ドゴーン!!

トワ「がはっ!?!?」ボキボキ

トワ(速いっ!!)

小鈴「うわっ!」ビュン

ゴロゴロゴロ ドシン!

殴りかかった勢いのまま地面を転がり、木に激突する。

小鈴「痛っったー!!」

小鈴(パワーが制御できない!スピードを抑える?)

小鈴(いや――)

522: 2025/02/11(火) 21:50:49 ID:???00
小鈴「ふん!」ドン!

トワ「!!!ごっ...!」メリ

ビュン!

小鈴「ん~~~!!」ザザー

小鈴(人間の感覚で考えるからいけないんだ!)

小鈴(バーサーカーのように、最初から強い体をもって生まれた自分をイメージしろ!)

もっと速く、もっと重く、バーサーカーの拳はこんなものじゃなかった!

小鈴「ふぅ...」グググッ

トワ「ちっ、調子にの――」

小鈴「!」ドン!!!

トワ「る...がはっ!!」

523: 2025/02/11(火) 21:51:43 ID:???00
小鈴「はあ!!!」ブン

トワ「ごっ...!」バタン!ゴロゴロ…

拳を振りぬき、トワを投げ飛ばす。

トワ「できそこないの分際で...」ヨロ

トワ「焼き頃してやる!」

小鈴「お前が魔術を使うより!」ダン!

トワ『Crim――』

小鈴「徒町が殴るほうが!」ビュン

トワ『son――』

小鈴「速い!!!」

トワ『lot――ごぶっ!?」ドゴン!

トワ「~~~!」メキ…

トワ(こいつ...!捨て身で突進してくる分、バーサーカーより速い!)

524: 2025/02/11(火) 21:52:33 ID:???00
トワ「だが...」

小鈴「はっ!」ドン!

トワ「...!」ヒョイ

小鈴「!」

トワ「そのぶん、避ければ大きな隙になる!」

トワ『パラレルダンサー』スー

小鈴「な!?分身!」

小鈴「なら2人まとめて...!」

トワ(影)『月夜見海月』

小鈴「ごぼっ...!」

小鈴(まただ!また水の中に落ちた感覚!)

綴理(頬を叩いて!)

小鈴「!」バチン!

小鈴「あ、解けた」

525: 2025/02/11(火) 21:53:30 ID:???00
トワ『Crimson lotus』🔥

小鈴「っ!」バッ

ドカーン🔥🔥🔥

小鈴「危なっ!!」

綴理(さっきの魔術は衝撃で解けるよ)

小鈴「綴理先輩!?」

綴理(トワの使う魔術は大体わかる)

綴理(すずが近づけるようにぼくが導こう)

小鈴「カーナビってことですね!」

綴理(ぼくナビなの?)

トワ(影)『DEEPNESS』

小鈴「え」ガクン

小鈴「体が...重い!」

526: 2025/02/11(火) 21:54:40 ID:???00
トワ「...」カチカチ❄↣

綴理(横に転がるんだ!)

小鈴「~~~!!」ゴロゴロ

ピュン❄↣ グサッ

小鈴「痛っ」

綴理(すず大丈夫!?)

小鈴「少し腕にかすっただけです!」

綴理(今のは効果範囲が狭い)

綴理(できるだけ動き回って当てられないようにして)

小鈴「はい!」ダン!

ピュン❄↣ ピュン❄↣

小鈴「はっ!」サッ

527: 2025/02/11(火) 21:55:35 ID:???00
トワの周りを高速で走り回る。

トワ(影)『Crimso――」

小鈴「ふんっ!」ビュン!

ゴン!

トワ(影)「がっ...!」バタン

トワ『Sparkly Spot』

小鈴「!!!」

突然辺りが暗くなり、強烈な光線が放たれる。

綴理(避――)

小鈴「」シュバ

ピカッ!!!

光線が頬をかする。

光の束は対岸の木を焼き切った。

ガサガサガサ...ドシーン!

528: 2025/02/11(火) 21:56:41 ID:???00
綴理(すごい、よく避けれたね)

小鈴「体が勝手に動きました!」

バーサーカーとの特訓が生きている。

攻撃が来るより先に、体が最適な回避行動をしてくれる!

ピュン❄↣

小鈴「っ!」サッ

トワ「ちょこまかと...!」

小鈴「はあっ!」ドガン!

トワ「!!」

小鈴「ふっ!」ベシン!

トワ「ぐっ...!」

529: 2025/02/11(火) 21:58:14 ID:???00
小鈴(バーサーカーに教わったこの技で!)

小鈴『二手蓮弾!!!』ドドン!

肝臓と脾臓を両拳で挟むように殴り、破裂させる。

トワ「ごはっ...!」メキメキ…バシャ!

小鈴「やった!」

トワ『スケイプゴート』

トワ(影)「ごぼっ」バシャ!サー…

小鈴「!?」

トワ「ふん!」

小鈴「がっ!」ヨロ

ピュン❄↣

小鈴(しまった!避けられ――)

530: 2025/02/11(火) 21:58:56 ID:???00
綴理(『レディバグ』!)

小鈴「!?」フワッ

スカッ

小鈴「なに、今の?」

綴理(すずの魔術回路でもできそうな魔術を試してみたんだ)

小鈴「体を浮かす魔術ですね!」

綴理(本当は自由に空を飛べるはずだったんだけど...)

綴理(すずの体だと一瞬浮くのが限界みたいだ)

小鈴「それは知らなくてもよかったです!」

綴理(ごめん)

トワ「さっきからぶつぶつと鬱陶しい!」

531: 2025/02/11(火) 21:59:46 ID:???00
小鈴「綴理先輩、さっきの浮くやつもう一回できますか?」

綴理(できるよ)

小鈴「なら――」

綴理(わかった。やってみよう) 

小鈴「...」グググッ

小鈴「!」ダン!

トワ(また馬鹿正直に突進か...なら正面から焼いてやる)

トワ『Crimson lotus』🔥

綴理(『レディバグ』!)

小鈴「...っ」フワッ

正面に迫る火球を浮いて避ける。

トワ「!!」

532: 2025/02/11(火) 22:00:28 ID:???00
小鈴(地面を蹴ったわけじゃないから、進行方向は変わらない!)

最初に飛び出した勢いのまま、トワの顔面に飛び蹴りを放つ。

小鈴「はっ!」ゴン

トワ「がはっ!」バタン

小鈴(次の一発で決める!)

キュイーン!バチバチ⚡

魔術回路を限界まで回す。

トワ「まず――」

小鈴「はああああ!!!」ドン!!

自分史上最速で、最大の一撃を放つ。

小鈴「これで!!」

533: 2025/02/11(火) 22:01:23 ID:???00


クラッ


小鈴「――へ?」

バタン!ズサー…

綴理(すず!?)

小鈴「綴理先輩...これはなんの魔術ですか...!」

綴理(いや...すずは今“勝手に転んだ”)

小鈴「え」

立ち上がろ言うとするが、体に力が入らない。

小鈴「なん、で...!」

強化は切れていない。

指先まで余すことなく魔力は満ちている。

なのに、体を動かすことができない。

534: 2025/02/11(火) 22:02:22 ID:???00
トワ「...ふん、あんなに速く動くからだ」

トワ「魔力で肉体を強化したところで、お前の体は人間のまま」

トワ「サーヴァントのように動けば、“酸欠”になるに決まっているだろう?」

小鈴「!?」

綴理(立つんだ!すず!)

小鈴「う~~!!!」ムクッ

トワ「ほう、根性だけはあるな。なら――」

トワ『希望的プリズム』

トワの前の空間が歪む。

まるで一度切り取った空間を、適当にハメ直したようだ。

トワ『Sparkly Spot』ピカッ

光の束はプリズムを通過し、無数の細い光線となり拡散する。

535: 2025/02/11(火) 22:03:21 ID:???00
小鈴(あ、これダメだ。避けられない)

ブス!ブス!ブス!ブス!ブス!

小鈴「かはっ...」バタン

綴理(すず!!!)

1本1本は即氏級のダメージにはなりえない。

だが、肺やそのほかの内臓、体中の筋肉に針金ほどの小さな穴が開く。

体に力を入れるたびに全身に強烈な痛みを感じ、起き上がることができない。

仰向けに倒れた視線の先には、夢で見たあの――

トワ「今度こそ、本当に終わりだ」

トワ「強化しかできない未熟な身で、お前はよく頑張ったよ、徒町小鈴」

トワ「もしもサーヴァントになれたなら、また戦おう」

トワ『Crimson――」

536: 2025/02/11(火) 22:04:39 ID:???00
慈『エンジェルスマイル!』

グリン!

トワ「――は?」

慈「コスズちゃんなんかより、めぐちゃんのカワイイ笑顔でも見てたらどう!」ニコッ

トワ「藤島慈!!」

慈「あれ?数日見ない間に随分ボロボロになってるね」

慈「もしかして小鈴ちゃんにやられたの?」

慈「ぷぷぷwあんな小さな子にボコボコにされるとかうけるですけどw」

トワ「あ"?」ギロ

慈「きゃー恐ーい!せっかくの可愛いお顔が台無しだぞ☆」

トワ「魔術回路も持たないゴミが気やすく話しかけるな」

537: 2025/02/11(火) 22:05:26 ID:???00
トワ「バーサーカーにやられた傷がなければ、こんな奴に苦戦することはなかった」

慈「え?w苦戦してたのwww」

慈「数日前まで魔術も知らなかった子にwww」

トワ「」ビキ💢

トワ『Crimson――」

瑠璃乃「たーー!!」ゴン!

トワ「ぐっ!ランサーだと!?」

トワ「なぜ消滅していないんだ!!」

瑠璃乃「ヒーローは遅れてやってくるものなのさ!」

トワ「答えになってない!!!」

538: 2025/02/11(火) 22:06:07 ID:???00
慈『エンジェルスマイル!』

グリン!

トワ「あ"ー!めんどくさい!!」

トワ「『DEEPNESS』!」

慈「ぐべっ」バタン

瑠璃乃「とう!」シュバ

トワ「っ!」パシッ

瑠璃乃「うぇ!?」

トワ『Crimson lotus』🔥

瑠璃乃「あ"あ"あ"あ"!」🔥

慈「ルリちゃん!!」

539: 2025/02/11(火) 22:07:12 ID:???00
トワ「消滅しかけのサーヴァントなど、ただの人間と変わらない!」ブン

瑠璃乃「ぐえ!」ゴロゴロ…

トワ「さっさと消滅して聖杯に注がれろ!」カチカチ❄↣

ピュン❄↣

慈「あぶない!!」

グサッ

慈「う"...!」ビチャ

瑠璃乃「めぐちゃん!!!」

トワ「どいつもこいつも...」

トワ「羽虫程度が、人間の歩みを止められるわけないだろう」

慈「自分以外は人間じゃないとでも言いたいの...」

トワ「そうだ」

540: 2025/02/11(火) 22:08:01 ID:???00
慈「ふん...でも、あんたはその羽虫ごときにやられるんだよ...!」

トワ「は?なにを言って――」

トワ「待て、ランサー。お前宝具はどうした?」

瑠璃乃「あげたよ。一番必要な人にね!」

トワ「......」

トワ「!!!」バッ

後ろからの殺気を感じ、咄嗟に振り返る。

そこには、もう立つ力も無いはずの女が、こちらを睨んで立っていた。

その手には――

541: 2025/02/11(火) 22:08:30 ID:???00
トワ「ランサーの宝具...はっ!?」

上を見上げる。

空には、アーチャーの夢で見たあの彗星が飛んでいた。

トワ(そうか!そういうことか!)

トワ(徒町小鈴に星を落とせる魔術は無い!)

トワ(だが、あの宝具なら...!)

小鈴「――――――!」

トワ「させるか!『Crimson lotus』」🔥

――――――

542: 2025/02/11(火) 22:09:23 ID:???00
瑠璃乃『小鈴ちゃん生きてる?生きてるね!』

瑠璃乃『これ、ルリとめぐちゃんからのプレゼント!』

瑠璃乃『というか、お詫びかな...」

瑠璃乃『たくさん迷惑かけちゃったからね』

瑠璃乃『めぐちゃんが小鈴ちゃんに渡してほしいってさ!』

瑠璃乃『小鈴ちゃんならこれを正しく使ってくれると、ルリ思う』

瑠璃乃『ゆえに、ルリあり!』

ランサーは徒町の手に槍を握らせると、すぐに去っていってしまった。

小鈴「...接続開始」

バチバチ⚡

魔術回路を宝具に接続する。

それだけで、この宝具の性能を理解した。

543: 2025/02/11(火) 22:10:27 ID:???00
なるほど、確かにこの宝具なら、星だって落とせる。

これは“引き寄せる”というただ一点においては、間違いなく最強の宝具だ。

目の前には綺麗な彗星が飛んでいる。

赤、青、黄色の美しい光の尾を伸ばし、今まさに徒町の上空を通過しようとしている。

綴理(すず...)

それは、いいのか?

あれを落とせば、何万人もの人が氏ぬことになる。

何十万人もの人が、住む家を失くす。

――――――

さやか『それが、かえって多くの人を不幸にするとしても、ですか?』

――――――

544: 2025/02/11(火) 22:11:36 ID:???00
徒町はその罪を背負いきれるの?

小鈴「...」ユラ

体に鞭を打って立ち上がる。

小鈴(徒町は...聖杯を壊すんだ...)

罪なんて関係ない。

自分の未来なんか関係ない。

徒町はただ、聖杯が憎い。あの女が憎い。

今この瞬間、あれを壊(殺)せる力がこの手にあるのなら、迷うことなんてない。

綴理(すず...ぼくはきみの選択になら力を貸すよ)

綴理(それが、不幸な結果を招こうとも)

宝具を掲げる。

彗星との距離を測る。

小鈴(終わらせるんだ、この聖杯戦争を)

小鈴(たとえ何を犠牲にしても!)

小鈴「――――!」

545: 2025/02/11(火) 22:12:07 ID:???00


梢『小鈴さん、近道ばかり考えてはだめよ』

梢『結果だけを求めていると、本当の目的を見失ってしまうわ』

546: 2025/02/11(火) 22:13:02 ID:???00
小鈴「...」

違う。

違う違う違う違う違う!

徒町の目的は、聖杯を破壊することじゃない!

この土地に縛られた不幸な魂を、解放することだ!

もうこれ以上、悲しい思いをする人を増やさないことだ!

聖杯の破壊は、その結果でしかなかったはずだ!

徒町は弱い。

徒町は馬鹿だ。

そんな徒町が、自分一人で何とかしようとするから、何かを犠牲にする選択しかできないんだ!

547: 2025/02/11(火) 22:14:38 ID:???00
弱い自分を受け入れろ。

ダメな自分を受け入れろ。

綴理先輩も言っていたじゃないか。

徒町は台風の目だって。

周りにはいつも、強い風が吹いているって。

徒町はただ手を伸ばして、その風を掴むだけでいいんだ。

この状況をひっくり返せる、強い強い風を!

小鈴「計測、開始――」

距離を、時間を、常世と現世の垣根さえ超えて、“縁”あるものを引き寄せる。

それがこの宝具の、本当の力。

綴理(そうか、それがすずの選択なんだね)

綴理(その選択になら、ぼくも全力で力を貸せそうだ)

548: 2025/02/11(火) 22:15:54 ID:???00
遠く、遠く、遠く。

次元を超えて、釣り糸を伸ばす。

トワを倒せる力を持つ者を。

徒町に協力してくれる人を。

――――――

『少しくらい頼ってください!』

『ずっと、一緒にやってきたじゃないですか...』

――――――

カチャ

目標に届いた。

釣り糸を通して、確かな重みを感じられる。

“わたしを呼べ”と合図が来る。

小鈴「――――計測、完了(セット)」

549: 2025/02/11(火) 22:17:25 ID:???00
小鈴「是、『BUNG YOU グラビティ』!!!」

ピカーン!

🔥🧊🧊🧊🧊🧊カチン!

眩い光と共に、辺りが冷気に包まれる。

トワの放った火球は、巨大な氷の壁に阻まれた。

目の前には――

「召喚に応じ参上しました。サーヴァント、アーチャー」

さやか「徒町先輩、貴女がわたしのマスターですね」ニコッ

小鈴「うん...うん!」

小鈴「“一緒に”戦おう!さやかちゃん!」

何より頼もしい後輩が、徒町を優しく見つめていた。

550: 2025/02/11(火) 22:18:35 ID:???00
トワ「な!?アーチャーだと!」

トワ「馬鹿が!私はそいつの元マスターだ!戦い方なら熟知してる!」

さやか「そうですか。なら頑張って避けてください」

さやか「Tragic Drops」

トワ「!!!上!?」バッ!

トワは咄嗟に頭を庇うと、頭上を見上げる。

しかし、そこには星空があるだけだった。

トワ(しまった!ブラフ――)

ヒュン❄↣ ヒュン❄↣ ヒュン❄⚔

グサッ! グサッ!

トワ「ぐっ!!」ガクン

トワ(2本もらった...!)

551: 2025/02/11(火) 22:19:50 ID:???00
トワ「姑息なまねを!」

さやか「相手に武器が割れているなんて、戦場ではよくあることです」カチカチ❄↣

さやか「それならそれで、戦い方というものがあるんですよ!」ヒュン❄↣

トワ「ちぃ!」バッ

さやか「最も、100年も鳥かごの中に閉じ籠ってた人には、わからないでしょうが」

トワ「アーチャー...!」

トワ「『Crimson lotus』!」🔥

ボン🔥 ボン🔥 ボン🔥 ボン🔥 ボン🔥

トワは複数の火球を広範囲にばらまく。

さやか「...」スッ スルッ サー

だが、アーチャーはまるで氷上を舞う花のように、飛んでくる火球を華麗に避ける。

552: 2025/02/11(火) 22:20:35 ID:???00
トワ「ちょこまかと...!『DEEPNESS』」グン

さやか「!」ガクン

さやか「」スー…

トワ「霊体化した!?」

さやか「はっ!」スー

バシン!

トワ「ぐっ!」ヨロ

さやか「ふっ」ピト

さやか『吸収』

アーチャーはトワの体に触れると、熱を奪う。

トワ「!!」ブルッ

トワ(体が...寒い!)

553: 2025/02/11(火) 22:21:16 ID:???00
さやか「はっ!」ゴス!

トワ「かはっ!」

さやか「これで終わりです」カチカチ❄⚔

トワ(まだだ...!せっかく根源に手が届くんだ)

トワ(こんなところで負けてたまるか!)

トワ「アーチャー!!!」👁👁ギロ

さやか「!」ビクッ

さやか「魔眼!?そんなものまで!」

トワ「私の勝ちだ!『Crimson――」

さやか「いいえ。“わたし達”の勝ちです」

トワ(わたし達?いや待て、あいつは...徒町小鈴はどこに)

554: 2025/02/11(火) 22:22:46 ID:???00
トワ「後ろか!!」バッ

小鈴「っ!」❄⚔

トワ(氷の剣!?いつの間に...いや、最初に飛ばした矢か!)

小鈴(示現流、蜻蛉の構え――)

――――――

祖父『いいか、こすず、刀を抜くってことは、相手を必ず倒すってことだ』


祖父『次なんて考えるな!一振りにありったけの力を込めろ!』

――――――


小鈴(ありったけを、この一振りに!!)グッ!

小鈴「ちぇぇすとおおおおぉーーーー!!!」ザンッ!!

トワ「!?!?!?」ブシャー!

全身全霊の一太刀は、咄嗟に頭を庇ったトワの両腕を輪切りにし、左肩を削り斬った。

555: 2025/02/11(火) 22:23:34 ID:???00
しかし、まだ生きている。

腕で軌道をずらされたせいで、心臓を外した。

渾身の一撃でさえ、この女の命には届かなかった。

小鈴(また失敗した!絶好のタイミングで、こんなにもお膳立てしてもらったのに!)

全力の振り下ろしをした直後では、再び刀を振りかぶることなんてできない。

その一瞬の隙があれば、この女は徒町を殺せるだろう。

小鈴(結局いつもそうだ、徒町は肝心な時に勝負を決めきれない!)

全力の一太刀を外した武士に、次なんてない。

後はもう、殺されるのを待つのみ。

――だが、それはあくまで、他人の話だ。

徒町小鈴には、徒町小鈴の戦い方がある!

556: 2025/02/11(火) 22:24:40 ID:???00
小鈴(諦めない!失敗したって、何度だって、何度だって!立ち向かう!)

小鈴(それが!あたしの戦い方だ!!)

小鈴「ふんっ!」ガッ!

氷の剣を翻し、全力で蹴り上げる。

腕の力で持ち上がらないなら、蹴った衝撃で跳ね上げればいい!

小鈴「うおおおぉぉぉぉぉ!!!!!」

ズバーン!!!

トワ「かっ――」ブシャー

氷の剣は、トワの左わき腹から右肩にかけて逆袈裟斬りにした。

トワ「 」バタン

小鈴「はあ...はあ...」バタン

もう一歩も動けない。

正真正銘、すべて出し切った。

557: 2025/02/11(火) 22:25:13 ID:???00
トワ「...」ズル…

トワ(ま...だ...日野下花帆の体さえ手に入れば...)

ストン❄⚔

トワ「あ――――」

トワ「 」

さやか「まったく、本当に生き汚い人ですね」

小鈴「さやか...ちゃん...」

さやか「トワはわたしが頃しました。あなたではありません」

さやか「手柄を横取りしてすみません」

小鈴「はは...やさしいね...」ムクッ

さやか「はて、何のことでしょう?」

558: 2025/02/11(火) 22:25:47 ID:???00
小鈴「ありがとう。助けに来てくれて」

さやか「こちらこそです」

さやか「今度はちゃんと頼ってもらえて、嬉しかったです」ニコッ

小鈴「頼るよ。ずっと徒町のこと、思ってくれてた人だもん」

さやか「そう言われると...照れますね///」

さやか「さあ、まだ終わっていませんよ」

小鈴「え?」

さやか「この土地に縛られた魂を解放するんでしょう?」

小鈴「そうだった!でも、どうすればいいのかわからない...」

さやか「あそこに聖杯召喚のための魔法陣がありますね」

さやか「あれを利用して、聖杯の構造を読み解けば、できるはずです」

さやか「わたしも力を貸します。さあ、立ってください」

小鈴「うん」

559: 2025/02/11(火) 22:26:28 ID:???00
2人で魔法陣の傍による。

さやか「なるほど、思ったより難しくなさそうです」

小鈴「いけそう?」

さやか「はい。これなら問題なく」

それから、さやかちゃんに言われるまま、魔法陣を書き換えた。

小鈴「あとはどうすればいいの?」

さやか「あとはもう、手を置いて願うだけです」

小鈴「願う...」

560: 2025/02/11(火) 22:27:27 ID:???00
バーサーカー、キャスター、姫芽ちゃん。

他にもたくさんの人の魂がいまだここに縛られている。

みんな願いを抱えて氏んでいった。

願いを叶えられないまま氏んでいった。

徒町がやろうとしていることは、その魂たちにとって本当にいいことなの?

このままにしておけば、また機会があるかもしれない。

聖杯は偽物でも、サーヴァントとして蘇ればまた別の方法があるかもしれない。

サーヴァントになれば、また会うことができるかもしれない。

それでも――

小鈴「どうか、安らかに眠ってください」

失ったものは、取り戻せない。

だから、亡くなった人たちの想いは、今を生きる私達が受け継ぎます。

561: 2025/02/11(火) 22:28:00 ID:???00
キラキラ…✨

蓮ノ湖から光の粒子があふれ出す。

光は天に向かって次々と登っていく。

その光景は、この世のどんな景色よりも、美しくて、悲しかった。

小鈴「さようなら。バーサーカー、姫芽ちゃん...」

562: 2025/02/11(火) 22:28:34 ID:???00
さやか「さて、わたしもそろそろ帰らなければなりません」

小鈴「あ、さやかちゃんはどうなるの!?」

小鈴「隕石落ちなかったから、アーチャーにはならないんだよね?」

さやか「今のわたしは守護者なので、この世界の村野さやかとは関係ありません」

小鈴「じゃあ、また会えるの?」

さやか「それは...どうでしょう」

さやか「わたしと会うということは、ろくでもないことが起きているということですから」

小鈴「なら、これでお別れ...」

さやか「悲しまないでください。わたしはいつでも、徒町先輩を見守っていますから」

小鈴「うん...」

小鈴「あっそうだ!さやかちゃんに言いたいことがあったんだ!」

さやか「?」

563: 2025/02/11(火) 22:28:54 ID:???00
小鈴「さやかちゃん」

さやか「はい」

小鈴「今まで、よく頑張ったね!」

さやか「え!?」

小鈴「ずっと、ずっっと!頑張ってきたんだよね!」

小鈴「えらいえらい!」ヨシヨシ

さやか「――っ!」

さやか「ずるいです...!こんな時だけ、先輩ぶって」ポロポロ

小鈴「どうしても、言いたかったんだ」

小鈴「さやかちゃんは、すごく頑張ったって!」

さやか「徒町先輩...」

564: 2025/02/11(火) 22:29:35 ID:???00
小鈴「徒町は、結局何者にもなれなかったけど...」

小鈴「さやかちゃんの先輩なんだってだけで、胸が張れそうだよ!」

さやか「...」

さやか「ふふふっ...」

小鈴「え、なんでそこで笑うの!」

さやか「だって、徒町先輩が何者でもないだなんて...ふふっ」

小鈴「だ、だって!徒町は何にもできないし...」

小鈴「さっきだって、結局さやかちゃんに頼ることしかできなかったから...」

さやか「何言ってるんですか?」

さやか「何度同じ失敗をしても、諦めずに続けられるような人が」

さやか「何者でもないわけないでしょう?」

小鈴「え?」

565: 2025/02/11(火) 22:30:23 ID:???00
さやか「たとえ失敗続きの軌跡でも」

さやか「その軌跡が、あなた自身の証です」

小鈴「軌跡が、証...」

さやか「何者かになろうと足掻いた時点で、あなたはこの世界でたった一人だけの」

さやか「他の誰でもない“徒町小鈴”じゃないですか」

小鈴「――!」

そうか、そうだったんだ。

例え何も為せなくても、全部失敗してても良かったんだ。

これまで徒町が歩んできた足跡が、あたしを“徒町小鈴”にしてくれてたんだ。

566: 2025/02/11(火) 22:31:23 ID:???00
小鈴「ありがとう。さやかちゃん」

さやか「はい、どういたしまして」キラキラ…

小鈴「!さやかちゃん、体が...!」

さやか「最後に一つだけ、頼んでもいいですか?」

小鈴「なに?」

さやか「4月に、この蓮ノ空にひとりの女の子が入学してきます」

さやか「その子はとても悩んでいて、もしかしたらやさぐれているかもしれません」

さやか「なので、そんな子を見かけたら、声をかけてあげてほしいんです」

小鈴「うん...わかった!」

小鈴「絶対に声をかける!」

小鈴「絶対に友達になるよ!」

さやか「ありがとうございます...」

さやか「徒町先輩が友達になってくれるなら、安心です」ニコッ

ピカッ

朝日が視界を遮る。

再び目を開けた時、もうさやかちゃんの姿はなかった。

小鈴「ありがとう、さやかちゃん」

567: 2025/02/11(火) 22:32:00 ID:???00
クラッ

小鈴「あ...れ...」

バタン

眩暈に襲われ、地面に倒れる。

寒い。

体から体温が消えていく。

小鈴(そっか、あんなに血を流したんだから、当たり前だよね...)

小鈴(さやかちゃんと約束したばっかりなのに...)

小鈴(ごめんね。やっぱり約束は守れそうにないや...)

視界はどんどんぼやけていく。

日の光が眩しい。

このまま光の中に消えて――

568: 2025/02/11(火) 22:32:35 ID:???00
花帆「『フラワー』!」🌸

小鈴「あ、花帆先輩...」

花帆「...」

小鈴「えへへ...また花帆先輩に助けてもらっちゃいました」

花帆「...」

小鈴「花帆先輩?」

花帆「...」

小鈴「どうして――」

小鈴「泣いているんですか?」

花帆「っ!」ポロポロ…

花帆先輩は、とても辛そうな顔をして泣いていた。

何かを後悔するように、誰かに謝るように。

569: 2025/02/11(火) 22:33:37 ID:???00
花帆「ねえ、小鈴ちゃん。もしも...」

花帆「あたしが小鈴ちゃんのことを傷つけてたとしたら、どう思う?」

小鈴「え?」

花帆「小鈴ちゃんの知らないところで、何度も傷つけてたとしたら...」

花帆「小鈴ちゃんは怒る?」

小鈴「...」

小鈴「花帆先輩がそうしてほしいなら、怒ります」

小鈴「でも、徒町は花帆先輩に、何度も助けられました」

570: 2025/02/11(火) 22:34:20 ID:???00
小鈴「今は、感謝の気持ちしかありません」

花帆「ぅ...ぅ...」ペタン

花帆「ごめんなさい...ごめん...なさい」ポロポロ…

小鈴「花帆先輩、徒町は花帆先輩が何に苦しんでいるのかわかりません」

小鈴「...だから、話してください」

小鈴「一緒に悩ませてください」

小鈴「花帆先輩は、一人じゃありません」

花帆「っ!あたしは――」

571: 2025/02/11(火) 22:34:53 ID:???00
夜明けが来た。

新しい朝の光は、思ったよりもずっと眩しかった。

ここから先の未来は、まだ誰も知らない。

でも、きっと良いものにできる。

どんな運命が待っていようと。

私達は、一人じゃないから。

手を取り合って、歩いていくんだ。

572: 2025/02/11(火) 22:35:26 ID:???00
――――――

573: 2025/02/11(火) 22:38:00 ID:???00
これにて聖杯戦争は終結です。お疲れさまでした!

エピローグは休日にでもゆっくり書くので、もう少しお付き合いくださると嬉しいです!

585: 2025/02/13(木) 22:01:01 ID:???00
[ Epilogue ]


夢を見た。



【4月10日】

バスに揺られながら、山道を行く。

周りには緊張した顔の人、さっそく友達をつくって話している人、様々な人が座っている。

そんな中、わたしの心はさほど明るくなかった。

わたしは今日から、蓮ノ空女学院に入学する。

担任「1年生の皆さん、ご入学おめでとうございます」

担任「皆さんはこれから、この伝統ある学校の103期生として――」

教室の中は、やたらと空席が多かった。

おそらく例の騒動のせいだろう。

586: 2025/02/13(木) 22:02:19 ID:???00
2ヶ月前、突如この学校での生徒の失踪事件が発覚した。

それも創立から今日までに100件以上。

失踪した生徒の親やメディアが大いに騒ぎ立て、世間は一時期このニュースで持ち切りだった。

しかし、警察の調査が入ったものの、失踪事件に学校が絡んでいるという証拠は何ひとつ見つからなかった。

結局、校長が騒動の責任を取らされ辞任したものの、学校自体は廃校にならずに済んだ。

だが、依然として世間からの疑念は晴れず、入学を辞退する学生は後を絶たなかったようだ。

わたし自身、両親からは別の高校に行くよう強く勧めらた。

しかし、今から受験できる高校は大して興味が持てなかったため、そのまま入学することにした。

587: 2025/02/13(木) 22:03:39 ID:???00
「村野さん、私たちと部活見学に行かない?」

さやか「すみません。わたし、部活には入る気がなくて...」

「え!そうなの?もったいない」

さやか「せっかく誘っていただいたんですが、皆さんだけで行ってください」

「わかった!じゃあまた明日ね!」

さやか「はい、また明日」

蓮ノ空には色々な施設があるとはいえ、さすがにスケート場はない。

そのため放課後は、町まで下りて練習をしなければならないのだ。

これからは毎日、学校とスケート場との往復に、日々の勉強もしなければならない。

とてもではないが、部活動なんてやっている時間はなかった。

588: 2025/02/13(木) 22:04:43 ID:???00
【5月8日】

ゴールデンウイークが明け、久しぶりの学校は以前よりも少し雰囲気が変わっていた。

クラスのみんなは連休中に部活に明け暮れたり、一緒にお出かけに行ったりと、充実した時間を過ごしたらしい。

毎日一人でスケート場に籠っていたわたしは、すっかりクラスで浮いてしまった。

さやか(別に、友達を作るために入学したわけじゃないんだから)

とは言え、フィギュアスケートのほうも、良い成果は出ていない。

課題だった表現力の無さも、解決の糸口はつかめないまま。

さやか(みんな生き生きとしてるのに、わたしだけ...)

自分だけが取り残されている感覚。

何がいけないんだろう。

何が足りないんだろう。

わたしだって、頑張ってるのに――

589: 2025/02/13(木) 22:06:24 ID:???00
【6月14日】

さやか「何やってるんだろう、わたし...」

今日はとうとう練習をさぼってしまった。

スケートの調子はいまだ良くない。

心機一転を求めて入学した学校では、クラスに馴染めず一人ぼっち。

こういう時、話す相手のいない寮生活は、精神的にかなりきつい。

家族に会いたいが、練習を無断で休んでいる手前、電話をするのも気まずかった。

学校は教室や廊下から吹奏楽部の楽器の音が聞こえたり、グラウンドからは運動部の声がしたりと賑やかだった。

さやか「...」

喧騒から逃げるように、静かな場所を求めて敷地内を探索する。

590: 2025/02/13(木) 22:08:53 ID:???00
さやか「あれ?なんだろうここ」

寮を囲むフェンスが、一ヶ所だけやたらと真新しい。

いつもは暗くなってから寮に帰ってきてたから、気が付かなかった。

その向こうには、落雷でもあったのだろうか、木々が折れて一本の道ができている。

さやか(どうせ、やることもないし)

フェンスをよじ登り、折れた木を観察してみる。

よく見ると、木は落雷ではなく、何か強い力で折られていることが見て取れた。

さやか「これは一体...重機でも通ったんですか...?」

折れた木をたどってまっすぐ歩いていく。

さやか「あ、湖」

森を抜けると、目の前には巨大な湖が広がっていた。

今日は曇っているが、晴れた日なら水面が日の光を反射してさぞ綺麗だろう。

さやか「学校の近くにこんな場所があったなんて、知らなかった」

湖はとてものどかで、校舎の喧騒を忘れさせてくれた。

この日から、ここはわたしのお気に入りの場所となった。

591: 2025/02/13(木) 22:09:58 ID:???00
【7月7日】

今日もまた蓮ノ湖に来てしまった。

最近はここへ来る頻度もどんどん上がってきている。

心がすさんだ時や、やるせなくなった時は、ここへ来てぼーっと水面を見つめるのがルーティンになっていた。

さやか(ここは誰もいないし、気が楽だなあ)

別にいじめられてるとか、クラスでハブられているというわけではない。

どちらかと言うと、みんなを避けてるのは自分の方だ。

やりたいことをやって楽しそうにしてる人を見ていると、自分が情けなくなって自己嫌悪に至ってしまう。

だから人の気配がない場所を求めて、ここにやってきてしまうのだ。

しかし、いつもは静かな蓮ノ湖に、今日は先客がいた。

592: 2025/02/13(木) 22:11:04 ID:???00
「ちぇーすとーーー!!!」


その人は不格好ないかだ(?)に乗って蓮ノ湖を渡ろうとしていた。

さやか「あの子、なにやってるんだろう...」

「あっ!」バシャーン!

「おぼぼぼぼぼぼ...」ブクブク

さやか「――って」

さやか「わーーーー!!!」

――――――

さやか「ぜぇ...ぜぇ...」

溺れていた女の子を何とか岸に上げた。

着ているジャージの色からして、どうやら先輩らしい。

だが、先輩は陸に上がっても一向に目を覚ます気配がない。

593: 2025/02/13(木) 22:12:43 ID:???00
さやか「う、噓でしょ...」

息をしていない。

さやか「どうしよう...!誰か呼ぶ?保健室まで運ぶ?」

いや、今からではどちらも間に合わない。

人間は呼吸停止から3~4分で氏に至ると聞いたことがある。

呼吸だけでもこの場で復活させないと、命が危ない。

さやか「っ!」

見よう見まねで人工呼吸を試みる。

仰向けに寝かせ、顎をあげて気道を確保する。

鼻をつまみ、口を大きく開けて相手の口を覆い、息を吹き込む。

さやか「ふーー!はあっ...ふーー!」

さやか(お願い!戻ってきて!)

594: 2025/02/13(木) 22:14:22 ID:???00
「っ!げほっ!げほっ!」ビクン!

さやか「!」

さやか「よかった...!あの、大丈夫ですか!」

「あ...れ...アーチャー?」

さやか「はい?もしかして、記憶があいまいになってるんですか...?」

「えっと、徒町はたしか聖杯戦争に参加して...」

さやか「やっぱり、意識が混濁してますね」

さやか「あなたは蓮ノ湖で溺れたんですよ!」

「蓮ノ湖...はっ!」

「そうでした!徒町は蓮ノ湖横断リベンジをしてたんでした!」

さやか「...」

さやか「やっぱりまだ記憶があいまいみたいですね」

「いやいや!今は変なこと言わなかったでしょ?」

さやか「変なこと言いましたが!?」

595: 2025/02/13(木) 22:16:29 ID:???00
その人は2年生の先輩で、徒町小鈴先輩というらしい。

さやか「肩を貸しますから立ってください。保健室に行きますよ」

小鈴「え、でもまだ蓮ノ湖渡り切れてない――」

さやか「何言ってるんですか!呼吸が止まってたんですよ!」

さやか「放っておいて脳に障害でも残ったらどうするんですか!」

徒町先輩を強引に引っ張り、校舎の方へ歩く。

小鈴「ありがとうね、さやかちゃん」

さやか(いきなり下の名前で呼ぶとか、距離感どうなってるんですか)

小鈴「放課後に探してもどこにもいないから、てっきり入学してないのかと思ったよ」

さやか「何の話ですか?もしかして、まだ記憶がおかしいんですか?」

小鈴「えへへ」

さやか(絶対関わっちゃいけないタイプの人だ...)

596: 2025/02/13(木) 22:17:17 ID:???00
小鈴「ねえ、さやかちゃん」

さやか「なんですか?」

小鈴「徒町と、友達になろうよ!」

さやか「絶対に嫌です」

小鈴「え"」


この時のわたしはまだ知らない。

わたしが『徒町係』と呼ばれるようになること。

徒町先輩が、わたしがスランプを克服するきっかけになること。

わたし達が、一生ものの親友になることを。

でも、その話はまたいつか。

597: 2025/02/13(木) 22:18:36 ID:???00
小鈴「さやかちゃん、起きて!」ユサユサ

さやか「うーん...おはようございます」ポヤー

小鈴「さやかちゃんが寝坊なんて珍しいね」

さやか「わたしも、徒町先輩に起こされる日が来るとは思いませんでした」

小鈴「徒町先輩?懐かしい呼び方だね!」

さやか「ええ、高校時代の夢を見たからでしょうか」

小鈴「そんなことより速く準備しなきゃ!」

小鈴「今日は花帆先輩とめぐちゃんと、お花見に行くんだから!」

さやか「そうですね。お弁当もとびっきり豪華にしなくては」


春が来た。

何度目かの桜が、わたし達を迎えている。

別れと出会いの季節に、変わらず傍にいてくれる人達がいる。

一番大切な人が、隣にいてくれる。

その喜びを噛みしめながら、わたし達は今を生きるんだ。


夢の続きは、おやすみの後に。

fin.

598: 2025/02/13(木) 22:19:02 ID:???00
[ Special Thanks ]

『蓮ノ空女学院スクールアイドルクラブ』

『Fate/stay night』

599: 2025/02/13(木) 22:24:08 ID:???00
これにて本当におしまいです!

活動記録104期2話の徒町に衛宮の幻影を見たあの日から9か月。
構想を練り続け何とか文章にすることができました!

コメントもとても励みになりました!
最後まで読んでくださり、ありがとうございました!

引用: 【SS】小鈴「聖杯戦争?」