1: 2007/01/19(金) 00:03:44.40 ID:F9CTfPZi0
(´<_ ` )「時に兄者、何でも一つだけ願いが叶うとすれば、兄者は何を願う?」

(*´_ゝ`)「戦ったり働いたりしないで好き放題暮らしたいな!」

(´<_ `;)「未も蓋も無い夢だな」


(´・ω・`)「ほぅ、君はそんなにも戦いたくないと」

(;´_ゝ`)「げぇっ閣下!」

(;´_ゝ`)「いやだなぁ…冗談ですよ、私は常日頃我が国の勝利と繁栄を願っております」

(´・ω・`)「君ほど解かり易い男もそういないよ」

2: 2007/01/19(金) 00:04:45.32 ID:F9CTfPZi0
( ^ω^)「敵は人の心を持たぬ盗賊だ。情けをかける必要はない」

興奮の余り、胸が脈動する。

憧れていた台詞を台無しにしない様に気を引き締め、思いっきり叫ぶ。


( ^ω^)「勇猛たる戦士たちよ、剣を持て!」


(=゚ω゚)ノ( ゚д゚ )( ∵)「オオオオオォォォォォォ!!!」



戦士達の咆哮が全身をすっと撫で、それに反応した体が小刻みに震える。




僕の初陣が始まる。


( ^ω^)ブーンが軍師になったようです 一章【始まり】

3: 2007/01/19(金) 00:05:56.20 ID:F9CTfPZi0
父を継ぎ、軍師としての地位を得た僕はニュウソク地方に配属され、
息をつく間も無く、初任務を命じられた。

初陣の内容は単純だ。

僕等の国サンポールの領地、リアジュウ村を略奪し、占領した盗賊を討伐せよとの事。
盗賊はどうやら傭兵隊のようだが、戦の無い時は盗賊行為を行い食繋いでいる強盗騎士らしい。
一度正規軍として向かえ入れる様交渉を試みたが、軽くあしらわれたようだ。

( ^ω^)「緊張するお…」

敵の数は約40人、それに比べ我軍は120人。しかも正規軍の中でも有力なサスガーノ部隊である。、
歩兵を中心に編成された部隊は、歩兵80人と弓手40人で構成されている。
何も考えず突撃してもまず負けることは無いという。


如何に少ない被害で勝利を収めるかが、腕の見せ所である。

4: 2007/01/19(金) 00:07:05.06 ID:F9CTfPZi0
(=゚ω゚)ノ「ナイトウ殿、作戦通り奴等出てきましたょう」

僕の補佐の為に戦に同行する事になったイヨウ軍師だ。
殆ど一人で軍の指揮を担ってきた老練者で、頼りになる先輩だ。
だけど、話す度に右手を上げる癖はどうにかならないだろうか…気が散って仕方が無い。

( ^ω^)「予定通り行きそうで良かったお」

そして、先ほどの号令は演技だ。挑発する為で僕は相手を殺そうとなんて微塵とも思ってなかった。
ついつい勢いで、『情けをかける必要はない!』なんて叫んでしまったけれど。

(=゚ω゚)ノ「奴等はこちらの出方を伺っているょう」

( ^ω^)「歩兵部隊前へ! 弓兵はその場で待機するお!」

80の歩兵を前に出した途端、様子を伺いながら武器を構える敵兵達が動く。

(=゚ω゚)ノ「敵歩兵撤退しましたょう」

正面から討ちあえば結果は知れている。

ここ数日続いた荒天で地面は泥濘と化し、足を取られる為に俊敏な動きが出来ない。
それを見越し、遠距離攻撃で此方の兵力を減らした後、白兵戦に持ち込もうという算段だろう。


( ^ω^)「歩兵部隊盾を構えるお!」

5: 2007/01/19(金) 00:07:49.36 ID:F9CTfPZi0
リアジュウ村の入り口は二つ。
ナイトウ達の軍は村の正面、奇襲部隊のサスガーノ兄弟とクーは、裏口の傍に隠れていた。

(´<_ ` )「ナイトウ達上手くいってるようだな」

(*´_ゝ`)b「そうだな、じゃあ帰るか!」

川 ゚ -゚)「帰りたければ帰れば良い。お前が居なくとも何等問題は無い」

(;´_ゝ`)「もぅ…クーたんはつれないなぁ」

川 ゚ -゚)「ナイトウ達が敵の注意を引きつけている内に侵入するぞ」

( ´_ゝ`)「もう一度確認する。君の任務はリアジュウ村に潜入、傭兵部隊の頭を人質に取れ」

(´<_ `;)「君の任務って、兄者もだろ」

6: 2007/01/19(金) 00:09:56.33 ID:F9CTfPZi0
敵弓兵が放つ矢が放射線を描き、歩兵達に向けて降り注ぐ。狙いは予想外な程的確だった。
だが、歩兵達が作った盾の壁の前では、全ての矢が無力な棒切れと化す。

盾の壁というのは密集隊形を組み、各々の盾と盾を重ね隙間の無い壁を作り攻撃を防ぐ基本戦術である。
矢がどう飛んで来ようとも構えた盾が防ぎきり、兵に傷は与えない。
隊形が乱されない限り、この戦術が破綻することは無いだろう。

本で読んで覚えただけの戦術であったが、上手く機能しているみたいで安心だ。

( ^ω^)「歩兵部隊前進お!」

盾の壁は構えた状態を保ちながら前進する事ができる。
弓兵にとっては非常に厄介な隊形だ。

( ^ω^)「隊形を崩さず前進するお!」

歩兵部隊は僕の命令に忠実に、陣形を崩さぬまま前進していく。
亀甲隊形とも呼ばれるだけあって歩みは遅いが、元々素早く動けない状況である為に何の問題も無い。

7: 2007/01/19(金) 00:11:46.75 ID:F9CTfPZi0
幾ら遅いと言えど、傷つかぬ敵が迫るのは脅威である。
考える隙も与えない程の速度で攻められれば、考えが纏まらず、勢いに任せた行動に出るしかない。


だが、分に思考する時間はある。
この状況下ではいかなる命令が適当だろうか。

(;゚∀゚)「やべぇぞドクオ、このまま接近されるとどうしようもねぇ」

('A`)「こりゃあもう駄目だな。あの亀軍団に近づかれる前に撤退するか」

(;゚∀゚)「お、おい!幾らなんでも諦めるのが早過ぎだぞ。
     いいのか? 折角手に入れた寝床だぞ」

('A`)「寝床ぐらいすぐ見つかるだろ。生きていりゃあ何だってできる。」

('A`)「俺らは地位や名誉に縛られた騎士様とは違う。命以外に失うもんはねぇ」

(;゚∀゚)「しかし…」

('A`)「ジョルジュ、お前は黙ってクロスボウのハンドルでも回してろ」

('A`)「俺は退路を探る。何処に伏兵が潜んでるか分からんからな」

8: 2007/01/19(金) 00:13:30.09 ID:F9CTfPZi0
(=゚ω゚)ノ「敵兵の動きに変化は無いょう」

( ^ω^)「腹を括って突撃してくると思ったけど、相手も意外と慎重だお」

(=゚ω゚)ノ「敵の頭共々突撃されれば時間を稼いだ意味がありませんし、良い流れだょう」

そう、僕の作戦は歩兵部隊で威嚇し、相手を引き付け、
その間にサスガーノ兄弟とクーが傭兵団の頭を捕らえ人質に取るという作戦だ。

( ^ω^)「敵は統制のとれた傭兵部隊だお。それに相手にとっては拠点を守る戦い、
       部隊の頭は拠点を守る最後の砦だお」

(=゚ω゚)ノ「故に頭は攻めてこない……という事かょう」

9: 2007/01/19(金) 00:15:10.06 ID:F9CTfPZi0
( ^ω^)「まだ敵兵に動きがないお…」

攻めて来てくれれば戦力と頭を引き離せるというのに。



完全に思い通りには行かないものだ。

(=゚ω゚)ノ「このまま、村の中に引き込むつもりなのかょう?」

(;^ω^)「村に罠でも仕掛けられてたらまずいお。歩兵を止めるべきかお」

相手の策に嵌ればまずい、策は無いけど現状を打破しないと危険だ。

(=゚ω゚)ノ「これ以上の進攻は無意味だと思うょう」

兵を止めよう。


が、途端に敵兵が動き出す。


僕達の逆方向に…!

11: 2007/01/19(金) 00:16:29.95 ID:F9CTfPZi0
( ^ω^)「ほっ、歩兵部隊、突撃!」

潜入に気づかれたのか?

クーには偵察兵としての潜入任務の経験がある。
サスガーノ兄弟はクーの軍の隊長だ、ああ見えてかなりの腕のはずだ。
敵の殆どは僕達と戦う事で精一杯だった筈。

そうと決まった訳ではないが、最悪の流れが頭に浮かんで離れない。

もし潜入に気づかれていればクー達3人は一斉攻撃に遭ってしまう。
そうなれば、如何に手慣れた兵でも多勢に無勢、一騎当千なんてものは夢物語だ。
詩人が話す話に出てくる様な魔術でも使えれば話は別だが、勿論この世界にそういったものはない。

(;^ω^)「い…イヨウ軍師。僕のやり方は間違っていたのかお!?」

(=゚ω゚)ノ「落ち着けょう。兵を信じる事も軍師の務めだょう。
     きっと、良い方向に転がっていくょう」

12: 2007/01/19(金) 00:18:15.02 ID:F9CTfPZi0
('A`)「ちょーと待ってくれ騎士様達よ。俺達の負け、降参だ、抵抗はしねぇからよ」

やる気の抜けた声で男が騒ぐ。
声の主は俺達傭兵団の頭、ドクオだ。
両手を挙げて戦う意志が無い事を示そうとしていやがる。

(;゚∀゚)「お、おいドクオ! お前」

('A`)「ちーっと裏口見に行ったら、お嬢ちゃんに捕まっちまってな。
   まぁ諦めろや、どうせ戦っても勝てねぇって」

長い付き合いだ。いい加減な性格には慣れてきてはいるが、
真剣に戦っていた俺に、哀れむ様な視線を向ける姿には苛立ちを抑えきれない。

(;゚∀゚)「お、おい! それでいいのかよ!」

川 ゚ -゚)「そこのお前、武器を捨てろ。従わぬのであれば―」

(;゚∀゚)「ちくしょぉ、ほらよ」

愛用のクロスボウを出来るだけ衝撃が加わらない様に、草が生茂る場所に放り投げた。
もし、壊れてたらドクオに弁償させるか。

('A`)「そうだ、それでいい」


全く、暢気な奴だ。

13: 2007/01/19(金) 00:21:11.40 ID:F9CTfPZi0
勝ったのだ。

行き成りの勝利に正直肩透かしだったが、勝ちは勝ちだ。
しかも僕の軍は無傷の大勝利だ。

(´・ω・`)「いやぁさすが伝説の軍師のご子息だ。無傷の勝利とは大したものだよ」

( ^ω^)「有難きお言葉ですお、閣下」

この人はアル・ド・ショボン、サンポール王国の東、
ルラーダ城を拠点とし、ニュウソク地方一帯を治める領主だ。

僕より8歳上、僅か28歳で統治を任されるほどの実力者である。

(´・ω・`)「そう畏まらなくとも良いよ。堅苦しい雰囲気は嫌いなんだ」

( ^ω^)「は…はいですお」

閣下は、領主という立場に在りながら着飾らず、飾り一つ無い部屋を好む。
部屋には寝る為のベッドと机しか無く、机の上に乱雑に積まれた書類の束が無ければ、
牢と勘違いしそうなほど人間味が無い。
そういった風采が、閣下の奥に潜む感情を隠蔽し、独特の近寄り難さを醸し出している。

(´・ω・`)「まぁいいか。初仕事で疲れただろうから、今日はゆっくり休みなよ」

閣下に一礼して、領主の間から足早に退室した。
緊張の糸が緩み、今日一日の疲れがどっと沸き起こる。

このままベッドに直行したい気分だったが、城下町の酒場で祝杯を挙げているらしい、
お酒はまだ余り美味しいと思えないが、勝利の余興をもう少し味わってから寝るのも悪くない。

14: 2007/01/19(金) 00:22:31.35 ID:F9CTfPZi0
酒場は大変な賑わいを見せていた。
疲れ果てて腰が曲がり、腕がだらりと垂れ下がった僕と対称的に、兵士達は飲めや騒げやの大騒ぎだ。
直接的な戦闘を行わなかったとはいえ、よくこれ程までも元気でいられるものだ。

(=゚ω゚)ノ「おーい皆、英雄殿がおいでなすったぃよう!」

僕の姿を初めに確認したイヨウ軍師が騒ぎ立てる。
途端に兵達が僕に群がり、囃し立てる。

( ゚д゚ )「いやぁ、見事な戦術であったぞ」

盾の壁の先導を切っていたミルナが豪快に肩を叩いたり、揺すったりしてくる。
筋肉質の腕で叩かれると手加減してても痛い。

( ∵)「もう少し私達にも出番が欲しかったですがね」

弓兵のビコーズが冗談交じりに不満を言うと、他の弓兵達がどっと笑い声を挙げた。

彼等は戦いが仕事であるのに、終止待機は苦痛だったかもしれない。
次からは気を配ろう。

15: 2007/01/19(金) 00:24:36.40 ID:F9CTfPZi0
一頻り騒ぐと皆席に戻り、僕が来る以前の姿に戻る。
戦友と語る者、ただひたすらに酒を煽る者、誰も聞いて無い武勇伝を語る者。

皆、弄る対象が欲しかっただけだったようで、もう誰も僕を気に止めない。
こうなると友人が居ない僕は孤独だ。

疲れ切った体を揉まれ、体が睡眠を欲して機能を徐々に停止しつつある。
今度こそ寝ようと酒場を後にしようとした所、一人の騎士に手招きされた。

川 ゚ -゚)「お疲れ様、見た所つるむ相手が居ない様だが。良かったら私と飲まないか」

小柄な体格に、鼻筋の通った整った美しい顔立ち。
騎士なんて、筋肉の塊の様な男ばかりだと思っていた僕の中の常識を打ち破った張本人。


クー・デレアだ。

( ^ω^)「え・・・あぁ、いいお」

これまで余り人と接したことが無かった。
そのせいか、唐突に話し掛けられると返事をする言葉の前に、【え、】と付けてしまう。

川 ゚ -゚)「まぁ一杯飲め」

クーは僕を席に座らせ、溢れんばかりのエールビールが注がれたジョッキを置く。
これは僕の分であろうか、正直これ程の量を飲める気がしない。

17: 2007/01/19(金) 00:25:54.00 ID:F9CTfPZi0
( ^ω^)「お、多いお…」

川 ゚ -゚)「そうか? これ位大した量でも無いだろう」

見ればクーの前には僕に渡したものと同じジョッキが3つ並んでいる。
その内2つは空で、3杯目も後僅かといった所である。

川 ゚ -゚)「私など大した事はないぞ、あの騎士を見てみろ。見た所12杯は飲んでいる」

( ^ω^)「次元が違うお…」

川 ゚ -゚)「取りあえず一杯飲んでみろ。戦の後の一杯は格別だぞ」

余り気は進まないが、ここまで勧められて飲まないのは失礼だ。
それ以上に男として格好が付かない。
こう見えて、やる時はやる男だと見せ付けてやろうとジョッキを掲げ、勢い良くエールを流し込む。

18: 2007/01/19(金) 00:27:41.32 ID:F9CTfPZi0
流し込んだ液体が喉を流れると、その軌跡がじんわりと優しく喉を焼き付ける。
喉が熱くなる感覚が気持ちよく、腕がジョッキの角度を下げる事を拒む。

呼吸をする為にジョッキを置いた瞬間、全身の筋肉が緊張し体が縮まった。
最大まで収縮したと思えば突如力が緩み、息が喉の奥底から溢れ出す。

疲れを全て吐き出したかのような錯覚が堪らない。

(*゚ω゚)「くはぁぁぁぁ」

川 ゚ -゚)「どうだ?美味いだろう」

(*゚ω゚)「これはたまらんおー!」

体が癒される。エールが此処まで美味い物だったとは。

川 ゚ -゚)「ははは、それ程気に入ったか」

(*^ω^)「この喉越しがたまんないお」

川 ゚ -゚)「まだまだ飲ませたい所だが、酔いが回る前に話しておこう」

(*^ω^)「なんだおー」

まだ思考回路はやられていないが、心地よい気分に気が緩んでしまう。

20: 2007/01/19(金) 00:29:20.42 ID:F9CTfPZi0
川 ゚ -゚)「本日の指揮、見事であった」

(*^ω^)「クーや皆が頑張ってくれたおかげだおー。僕はたいした事やってないおー」

川 ゚ -゚)「敵味方共に傷つけずに終えようとする戦術など、私は初めてだ」

(*^ω^)「そ…そうかお?」

川 ゚ -゚)「だが、今後の戦ではその考えは捨てることだ」

( ^ω^)「…お?」

意外な一言に頭の中に漂う霧が突如晴れる。

川 ゚ -゚)「今後の任務で戦う相手はドメスト国だ」

僕等の国サンポールと敵国ドメスト、両国は元来、エンソガスと呼ばれる2つで1つの大国であった。
自然に恵まれ農業に長けたサンポールと、外交が盛んなドメストは、
両国を統治する王によって、協力関係を築いてきた。

しかし、エンソガスの王、ジュウシマツ4世が跡継ぎを残さぬままこの世を去った事により、
エンソガスの統治権を巡って、両国の関係に亀裂が走り、互いに争うようになった。


ニュウソク地方の東には、ベルジャネーゾ卿が治めているレヴェル城がある。
閣下は本国から、”レヴェル城を我が国の物とせよ”とだけ命じられ、
領地一帯の内政と軍事の全てを任されているようだ。

21: 2007/01/19(金) 00:30:23.87 ID:F9CTfPZi0
川 ゚ -゚)「ドメストの兵は強い。犠牲を恐れていては打ち勝つ事は出来ない」

(;^ω^)「わかってるお」

川 ゚ -゚)「戦を指示する者は時に、自らの兵に氏ねと命令しなければならない」

(;^ω^)「…」

川 ゚ -゚)「お前にそれができるか?」

(;^ω^)「出来ればしたくないお…でもそれが僕の役目ならやってみせるお」


軍師の道を志した時に覚悟は決めている。
でも、もしクーを犠牲しなければ成らない状況になれば、僕はクーに言えるだろうか。



                     氏ねと。

22: 2007/01/19(金) 00:31:37.58 ID:F9CTfPZi0
川 ゚ -゚)「祝いの席というのに気分を害してすまなかった」


川 ゚ ー゚)「話はもう終わりだ、さぁ飲め。夜はまだ長いぞ」

それから僕達は一頻りエールを飲み続けた。
故郷の話から、お気に入りの詩人の物語について、
ベルジャネーゾ卿の逸話等、他愛もない話で盛り上がった。
誰もが聞いて呆れる僕の薀蓄話にも、クーは興味深く聞き入ってくれた。

(*^ω^)「だからー僕は鳥になりたいんだおーー」

そういって腕を広げ、席を立ちテーブルの周りをぐるぐる回る。

⊂二二二( ^ω^)二⊃「ブーーン」

川*゚ ー゚)「ちょっとないとぉ、やめろって…ふははははは」

⊂二二二( ^ω^)二⊃「ブーンブーーン、まだまだとぶおー、ブーーーン」

酔いと度重なる回転運動で平衡感覚が狂い、僕は崩れ落ちた。

川*゚ ー゚)「ちょ、ナイトウ! 大丈夫か?」

様々な物が、頭の中に何の法則性も無く唐突に浮かんでは消えていく…。
そうしている内に暖かい気持ちのまま、何も考えられなくなった。


川*゚ ー゚)「って寝ているのか、こやつめ、ははは」

24: 2007/01/19(金) 00:32:55.78 ID:F9CTfPZi0
(;^ω^)「うー、頭が痛いおー」
完全に二日酔いだ。

あれ程酒を飲んだのは初めてで、結局クーはジョッキ6杯、僕は4杯で限界だった。

相当酔っていたのに、昨日の事は鮮明に記憶に残っている。
あれ程楽しい時間を過ごしたのも久方ぶりだった。

僕より2杯も多く飲んだクーは、少しだるそうだったが生活に支障が出る程ではなかったようだ。
聞く所によると12杯飲んでいた騎士は、あれから5杯も飲んだのに何ともなかったようだ。

化け物か。


僕はというと、頭の痛さと気持ち悪さでベッドから一歩も動けないでいた。

木製の扉から乾いた音が2回響く、クーだろうか。

( ^ω^)「どうぞお」

布団を退け、クロスヘルムを被っているかと思うほど重く感じる頭を上げ、
右腕で体を支えながらなんとか上半身を起こす。

(´・ω・`)「やぁ、ナイトウ君」

(;^ω^)「げぇ、閣下」

(´・ω・`)「何処かで見たような反応をするね…」

25: 2007/01/19(金) 00:33:44.96 ID:F9CTfPZi0
(´・ω・`)「どうしたのかな、こんな昼過ぎまで寝て」

(;^ω^)「ははは、昨日ちょっと飲みすぎましたお」

苦笑いするぐらいしか出来ない。

(´・ω・`)「偶には羽目をはずすのもいいけど、何時ドメスト軍に攻められるか解からないからね」

(;^ω^)「しょ…承知しておりますお」

(´・ω・`)「明日話があるんで、早朝7時ぐらいに私の部屋に来なさい」

閣下が部屋を出、3歩ほど歩いた音を確認すると再び布団に潜り込んだ。
今日はもう、何もしたくない気分である。

26: 2007/01/19(金) 00:35:40.53 ID:F9CTfPZi0
翌日、酔いもなんとか覚め、僕は閣下の部屋に入る。
昨日の事を怒ってはいないだろうかと、不安な気持ちを抱えたまま。

(´・ω・`)「やぁ、おはよう」

( ^ω^)「おはようございますお、閣下」

(´・ω・`)「酔いは、もう覚めたようだね」

(;^ω^)「先日は御見苦しい姿失礼しましたお。軍師という立場にありながら…」

(´・ω・`)「もう動けるのであれば問題は無いよ。昨日は何も起こらなかったしね」

( ^ω^)「今後、この様な失態を犯さぬよう心がけますお」

(´・ω・`)「本題に入るよ。早速だけど、今からググレ城の偵察をしてきて欲しい」

レヴェル城に攻め入るには、ルラーダ城とレヴェル城の間に佇む軍事要塞ググレ城が拠点として必須となる。

だが、ググレ城は防衛設備の整った堅城。
何度か攻城を行ったものの奪うことが出来ず、ルラーダ城は防戦一方であった。

(;^ω^)「僕だけで、ですかお?」

27: 2007/01/19(金) 00:36:37.28 ID:F9CTfPZi0
(´・ω・`)「安心しなさい。戦闘任務で無いとはいえ、戦う術の無い君だけで行かせはしないよ」

( ^ω^)「つまり、護衛を付けて頂けるのですかお?」

(´・ω・`)「その通りだよ。護衛を任せる部隊の隊長には、
      君より早く来て貰う様に言ってあるんだけどね」

(;^ω^)「は…はぁ」

領主に忠実な騎士達が、命令に背き、遅れるものなのだろうか。
普段平均5時には起きている騎士にとって、7時前に来る事など苦ではない筈だ。

なんだが、嫌な予感がする。

28: 2007/01/19(金) 00:37:33.58 ID:F9CTfPZi0
「ういーっす」

勢いよく扉が開け放たれ、とても領主を前にした騎士とは思えない品の無い声が響く。

背後に視線を向けると、左膝を軽く曲げ、右足と壁についた手で体を支えた男が視界に入る。
何が面白いのか、男は閣下を見てにやりと笑っている。

ぼさぼさの髪は無造作に伸ばされ、髭は剃られてはいるものの手入れが荒い。
長身だが、騎士にしては少々頼りない図体である。年は30前半位だろうか。
身に纏う鎧は薄手で、所々生地が破れた薄汚い褐色のマントを羽織っている。

('A`)「すまねぇなショボンの旦那、こんなに早く起きるのは久々でな」

この男、一昨日捕らえた傭兵の頭ではないか。

まさか…

この男が僕の護衛なのか?


第一章 【始まり】完

32: 2007/01/19(金) 00:43:07.39 ID:F9CTfPZi0
('A`)「なんだぁ、俺等を追い詰めた軍師様の護衛と聞いたんだが」

(´・ω・`)「あぁそうだよ、君にはナイトウ君の護衛をしてもらう」

('A`)「ナイトウって、この貴族の餓鬼の事か?とんだ期待外れだな」

(#^ω^)「なっ…」

それは僕の台詞だ。
仲間には戦わせて、自分の命が少しでも危険に晒されるとすぐに降伏した男。
こんな男が護衛等できるはずがない、危なくなると直ぐに僕を捨て、逃げ出すだろう。

(#^ω^)「かっ、閣下、どうして盗賊なんかを僕の護衛にっ」

(´・ω・`)「彼等は直ぐに交渉に答えてくれてね、正規軍として迎え入れる事になったんだよ」

('A`)「そうゆうこった、気は乗らねぇがよろしく頼むぜ、ナイトウ殿」


最悪だ…。

( ^ω^)ブーンが軍師になったようです 二章【ゲーム】

33: 2007/01/19(金) 00:44:36.90 ID:F9CTfPZi0
('A`)「にしても無茶な野郎だ」

( ^ω^)「なんの事だお?」

僕達はググレ城の軍勢を知る為に偵察に向かっている。
ドメスト軍に偵察に気づかれる事には左程問題は無いが、無駄な小競り合いは避けたい。
故に、閣下は偵察任務を僕とドクオ、ドクオの管轄下の騎兵7人という極力少人数の編成にした。

しかし、ドクオが行くと知るや否や、元傭兵団の兵士達が自分達も行くと言い出し聞かなかった。
終止反対し続けた僕であったが、恐持ての兵士達に押し切られ、弓兵6人の同行を許した。


実を言うと恥ずかしい話だが、騎兵だけで行くとなると必然的に全員が馬に乗って移動する事になる。
馬に乗ることができない僕は、内心徒歩で移動する兵を増やす事を望んでいた。

('A`)「ショボンの事だよ、ああゆう男が一番苦手だ」

34: 2007/01/19(金) 00:45:29.26 ID:F9CTfPZi0
( ^ω^)「どうゆう意味だお?」

('A`)「直ぐに交渉に答えてくれた。とか言ってただろあいつ」

閣下をあいつ呼ばりする事には敢えて何も言わない事にする、一々文句を言っていたらきりが無い。

('A`)「此処で氏ぬか、正規軍として我が国の為に氏ぬか。それだけだ、俺に与えられた選択肢はよ」

(;^ω^)「やっぱり、閣下の裏の顔は怖いお」

('A`)「たぶんこんな偵察必要ねぇんだろうな、あいつ、俺達を試してるんだろ」

( ^ω^)「どういう意味だお?」

('A`)「俺達が咄嗟の場面で逃げ出さないか」

また不利な状況になれば、すぐさま逃げ出すのであろうか、この男は。

('A`)「そして、お前が逃がさぬ様俺達を掌握しきれるかを」

35: 2007/01/19(金) 00:46:14.22 ID:F9CTfPZi0
(#^ω^)「敵前逃亡は絶対に許さないお!」

('A`)「おっと、静かにしてくれ、そろそろ出口だ」

( ^ω^)「あ…す、すまんお」

ドメスト軍に見付からぬ様、リアジュウ村の東に広がる森を偵察ルートにしていた。
森を出ると障害物の少ない草原が続く、慎重に行かねば直ぐに気づかれてしまう。

('A`)「見た所敵兵は居ない様だ、ググレ城は見えるがこの場所じゃよく見えねぇな」

37: 2007/01/19(金) 00:47:41.92 ID:F9CTfPZi0
( ^ω^)「さて、此処からどう行こうかお」

身を隠せるものが少ない草原では、15人の姿を隠しながら移動するのは極めて困難である。

('A`)「地形に擬態するのがベストだが、こう何も無いと、どうしようもねぇな」

と言った後、ドクオは何か思いついた様子で部隊全体を見渡し、再び口を開いた。

('A`)「これは、いけるかもしれねぇな」

( ^ω^)「どういう事だお?」

('A`)「試す為、ってだけでも無いようだな、ショボンの奴考えたな」

( ^ω^)「話が読めないお、勿体振らずに話すお」

('A`)「いやな、俺等正規軍に入ったばかりでまだ防具とか支給されてないだろ」

( ^ω^)「それがどうかしたかお?」

('A`)「つまりだな、俺等を知らない奴から見たら、俺らは単なる傭兵団にしか見えないって訳だ」

成る程、しかしそれでは。

38: 2007/01/19(金) 00:48:28.67 ID:F9CTfPZi0
( ^ω^)「僕はどうなるお?」

('A`)「お前は兵士じゃねぇから、防具をしてないだろ」

( ^ω^)「そうじゃないお、流石にこの集団の中だと僕は浮くお」

('A`)「無駄に身形が良いからな、俺等が誘拐した貴族様って事にしときゃいいだろう」

(;^ω^)「そんなんで上手くのかお…」

('A`)「で、このやり方で行くか?」

気になる部分は多いが、他に思いつく術もないので賛同する事にした。

( ^ω^)「わかったお、それで、僕はどう振舞えば良いお?」

('A`)「それぐらい自分で考えろ、と言いたい所だが、この作戦一番の心配要素だしな」

反論はできない。一番目立つ役柄の僕だが、こういった演技には自信が無い。

('A`)「お前は何もするな、誰に何を言われても俯いて黙っていろ」

それ位なら出来る気がする。

39: 2007/01/19(金) 00:49:13.97 ID:F9CTfPZi0
僕達は、堂々と草原を歩く事にした。
下手にこそこそ隠れて行けば、見つかれば直ぐに疑われ、戦闘は免れないだろう。
いい加減に思えたが、良い作戦なのかもしれない。

と言えど、ググレ城から1k先ぐらいまで来たが、まだドメスト兵とは遭遇していない。

('A`)「おっと、ありゃ部隊演習かねぇ、かなりの数だ」

ググレ城の城門300m先ぐらいにドメストの兵士達が集まっている、此処からが本番だ。

('A`)「投石器があるな、攻城の演習かねぇ」

(;^ω^)「必要なのは篭城演習なはずだお、それほど余裕があるって事なのかお」

('A`)「篭城の演習は飽きたんだろうよ、演習なんてしなくても落ちねぇからな」

そうこう言っているうちに、意識せずとも目視される距離まで迫った。

('A`)「此処からは何も話すな、いいか、何があってもだ」

40: 2007/01/19(金) 00:50:10.82 ID:F9CTfPZi0
何があっても、とは何か此方から行動を起こす気であろうか。
真意を探りたいが、発言を静止されているので知る事が出来ない。

それにしても、モノウル兵は僕達の事を特別気に止める様子は無い。
上手く誤魔化せているのだろうか。

もうすぐ、モノウル兵を指揮している男の真横を通る…。

(^Д^)「投石器、発射!」

投石器から、勢い良く布を束ねたような物体が飛翔する。
演習とはいえ石を飛ばせば、城を傷つけるからだろうか。

いや、今はそんな事はどうでもいい、なんとか通り過ぎれそうである。

('A`)「お勤めご苦労さん」

(;^ω^)(なっ…)

何を言い出すのだこの男は、折角上手く通れそうだったのに余計なことを。

42: 2007/01/19(金) 00:50:43.61 ID:F9CTfPZi0
('A`)「攻城演習ですかい?」

(^Д^)「あぁ、サンポールの連中が何時まで経っても攻めてこないんでね」

ドクオの予想は当たっていたようだ。

('A`)「まぁこれ程立派な城だと、普通攻めようなんて思わねぇだろうな」

(^Д^)「退屈で仕方がありませんよ、ところで君達はどうして此処に?」

('A`)「いや、北のワロスまで移動中だったんだが、余りに立派な城だったんでね」


(^Д^)「気になって見に来たと…」

此方から話し掛ける事で疑いを晴らせ、堂々と見学するつもりだろうか。
成る程、考えたものだ。
しかし、そう上手く行くものだろうか。

43: 2007/01/19(金) 00:52:22.11 ID:F9CTfPZi0
(^Д^)「ワロスとはあれですか、そこの貴族の坊ちゃんを売りに行くのですかな?」

('A`)「そんなとこです、サンポールと直接交渉出来りゃ最高なんですがね」

(^Д^)「この兵力だと嵌められて奪い返されるでしょうね」

('A`)「ワロスの奴隷商人でしたら安全に取引できるんでね」

(^Д^)「それでしたら、我が国が高額で買い取り致しましょうか。捕虜は色々と使えますし」

('∀`)「そりゃあいい、是非お願いしたい」

(;^ω^)(うっ…)
大丈夫、これは作戦だ。
取り乱しては成らない。

だが、僕を裏切るつもりだったらどうする。
初めからこれが目的だったとしたら。
この男なら僕を売り捨て、逃亡など十分にあり得る。

44: 2007/01/19(金) 00:53:47.70 ID:F9CTfPZi0
>>40

モノウル兵→ドメスト兵
以前の設定のまま訂正されてなかった。

45: 2007/01/19(金) 00:55:44.02 ID:F9CTfPZi0
(^Д^)「1万3000クオリでどうでしょう。悪くない額だと思いますが」

('A`)「駄目だ駄目だ、そんな額じゃあワロスに売るぜ」

1万3000クオリでも貴族1人の値段としてはかなり高額な額だ。
もし、これがドクオの作戦であっても、額に拘る意味などあるだろうか。

(^Д^)「失礼、甘く見すぎましたか、2万クオリではどうです」

('∀`)「話せば分かるじゃねぇか、OK交渉成立だ」

いや、意味なんてない。この男、目先の利益に囚われた。

(^Д^)「今手持ちはありませんので、これを持って城内にいる私の側近から頂いてください。私は、此処から離れるわけにはいかないので」

そういって男は、羊皮紙に何か文書を書いた物と、クローバーを模ったバッチのような物をドクオに渡した。
バッチは証明の為だろうか。


('∀`)「おう、ありがとな」

受け取ったドクオは僕に見向きもせず、己の兵士達と城内へと向かった。

ドクオを信じた訳ではない、翌々考えれば裏切った、などと騒ぎ立てたところで無駄なのだ。
そのままドクオに演技を続けられれば、僕に成す術が無い。

46: 2007/01/19(金) 00:57:35.33 ID:F9CTfPZi0
それから暫く、沈黙が続いた。
男は僕を気に止めず、僕に背を向けただ考え事をしていた。
どれ位時が経っただろうか、予測外の状況に打ちひしがれていた僕に時間の感覚など無かった。

ふと、男が僕を見て、ぶよぶよとした二重顎を揺らしながら話し出した。

(^Д^)「運が良かったですね」

何の事だ。

(^Д^)「さぁ、悪い盗賊達は去りました、帰りなさい」

何を言っている。

(^Д^)「安心なさい、あの様な者に2万クオリも渡す訳ありませんので」

この男は何がしたい。

(^Д^)「あの紙には”この者達は不審者だ、殺せと、
    我々にしかわからない言葉で書いておきましたのでご安心を。今頃はもう…」

にたぁと、口を吊り上げ男の顔が歪む。

(;^ω^)「えっ…」

思わず声が出てしまう、裏切られたというのにドクオの身を案ずるとは、僕は相当なお人よしだろうか。

(^Д^)「私は卑怯な手段で戦を終わらせるのが大嫌いでね、君の国とは正々堂々と戦いたい」

僕は、助かったのだろうか。

47: 2007/01/19(金) 00:58:27.36 ID:F9CTfPZi0
この男が、騎士道精神を重んずる人で本当に良かった。
任務は達成できなかったが、命あってこそだ。
もう帰ろう、裏切り者のドクオなんてどうなっても知ったことではない。
領地の村を襲った男だ。即刻処刑されていてもおかしくはなかった。
少しばかり生き長らえただけだろう。



だけど…。



本当にそれで良いのだろうか。


ドクオが裏切ったと言い切れるのか?

もし、僕を売るという意味でなく、ここまでが全て作戦だったとしたら…
ここで逃げれば僕がドクオ達を裏切った事になる。


ドクオを信じる事はできない、でも、僕が信用しないでどうする。
指揮下の兵に信用されなければならない僕が。
僕の兵を信用しないでどうする。

48: 2007/01/19(金) 00:59:50.72 ID:F9CTfPZi0
ドクオの考えがどうであれ、あの男が言っていた事が事実であればまずい。
ドクオを、止めなければ…。

今頃行った所で意味があるか分からないが、行くしかない。


(^Д^)「ほぅ、そう来ますか…。これは久々に楽しめそうですね。
    弓兵、あれを準備しなさい」

あの男には理解出来ない行動だったはずだが、男は何事も無かったかのように兵を動かし始めた。
元々城に用事があって来たサンポールの使者、とでも思われたのだろうか。


しかし、これからどうすれば良いだろう?

あの男の軍以外の兵が見あたらなかった為に、跳ね橋を渡り城門の前まで来たのはよいが、
サンポール人の僕が、城に入れる筈もない。

術が見当たらず、ただ呆然と立ち竦んでいると、突如、城門の奥から戛然と馬蹄の音が鳴り響く。

まずい、隠れないと。

「おい、お前、そこで何をしている?」

(;^ω^)「うっ…」


('A`)「なんでお前がここにいるんだよ」

ドクオか…よかった、生きていてくれて。

51: 2007/01/19(金) 01:00:50.43 ID:F9CTfPZi0
単身で此処まで来た経由を、簡潔にまとめドクオに話した。

('A`)「あの野郎、ただの豚だと思ってたがとんだ策士だな」

ドクオは僕を裏切ってなどいなかった。
僕を売る素振りは、城の内部まで入り、事細かな城の内装を知る為であったらしい。
あの男が買い取ると言い出した時、思いついたようだ。

( ^ω^)「一度僕はドクオを疑ってしまったお。ごめんお」

僕自身のけじめとして、正直に話しておきたかった。

('A`)「気にすんな、俺の作戦も急で荒いものだったしな」

少しだけ、いい人かなと思えた。



('A`;)「しかし…」

(;^ω^)「まじかお…」


大体2000名のドメスト兵が、僕等の帰路にいる。
先程の男の軍だが、先程とは違う雰囲気が漂っている。

歩兵は各々の武器を硬く握り締め、弓兵は矢をつがえ、騎兵は突撃槍-ランス-を腕に掻い込む。
冗談みたいな数の兵士が、たった14人の兵と僕に視線を向け、臨戦態勢を取っていた。

52: 2007/01/19(金) 01:01:39.13 ID:F9CTfPZi0
どうしろって言うんだ…。
2000対14。
無理とか、そういう問題を逸している。

('A`;)「戦ってレベルじゃねぇぞ…」

城門までの道、跳ね橋を越えたあたりまで行けば、終わる。
間違いなく、終わる。

人生が、終わる。

('A`;)「軍師様ぁ、何かこう14人で2000の兵をやっつけちゃう凄い戦略とかないでしょうか?」

(;^ω^)「ドクオさんこそありませんかお?先程の作戦中々のものでしたお」

('A`;)「もう何も考えずに飛びこんじゃおうかな…」

(;^ω^)「僕も、連れてってくれるかお?」

こうなれば…一思いに散ってしまおうか。



(゚A゚)( ゚ω゚)「のるぉぉおおおおおおおおおお」

僕達は走り出した。明日に向かって、僕らは風になる。
もう何も考えていない、騎兵のドクオも徒歩だ、特攻だ、武器すら持っていない。


僕等の戦いはこれからだ。

53: 2007/01/19(金) 01:03:11.69 ID:F9CTfPZi0
(゚A゚)( ゚ω゚)「どるわっしゃあああああああああああ」

僕等は弾かれる様に吹っ飛ばされた。


騎兵の槍だろうか、槍に当たった割には局所的に痛む場所がない。

何に衝突したのだろうか。


(^Д^;)「なんですか貴方達は」


どうやら僕等はこの男の贅肉に吹き飛ばされたようだ。
恐るべし、巨漢。

(^Д^;)「此処までの自暴自棄、完全に想定の範囲外ですよ」

(゚A゚)「俺達はは…ふぅ、俺達は、はぁ…」

( ゚ω゚)「誰に…もふぅ…とめら、ふはぁ、ないお…」

(^Д^;)「落ち着いてくださいよ」

55: 2007/01/19(金) 01:04:12.13 ID:F9CTfPZi0
('A`)「で、なんだよ。あんだけ威嚇しといて、帰らせてくれるのか?」

(^Д^)「いえ、それでは面白くありません」

( ゚ω゚)「ならば、再び特攻!」

ドクオが僕に呼応するように、前傾姿勢を取る。
なんという連携、僕の前世がクマノミならドクオは間違いなくイソギンチャク。


               素晴らしき共生関係が此処にある!


(^Д^;)「人の話を最後まで聞きなさい、貴方達にとってこれ以上ない程の条件を提示するのですよ」

( ゚ω゚)「なんだお?早く言うお」


(^Д^)「ゲームをしましょう、多勢で即行戦を終わらせるのは余りにも忍びない」

('A`)「なんだ、言ってみろ」

(^Д^)「簡単です、私達の兵力を貴方達に合わせ、戦うのです」

56: 2007/01/19(金) 01:05:37.30 ID:F9CTfPZi0
ゲームといった事で伺えるように、この男、戦を楽しんでいるのだろう。
勿論受ける事にした。
僕等にはそれ以外の選択肢は、2000の兵に潰されるしかないのだから。

(^Д^)「騎兵8人に弓兵6人ですね。装備は問わない事にしましょう、
    全く同じ武器を持っていませんしね」

事にしましょう、と僕等に反論を許さず、淡々とゲームのルールを決めていく。

(^Д^)「私の兵を全て倒せれば、それ以上手出しはしないと約束しましょう。」

('A`)「いいのか?俺等はあんた等の城の情報を持って帰っちまうんだぜ」

(^Д^)「そんな事私にとってはどうでもいい事です。
    私はただ、震える様な戦がしたいだけ」

完全に狂っている、とんだ戦廃人だ。

57: 2007/01/19(金) 01:06:17.02 ID:F9CTfPZi0
('A`)「ゲームとやらを始める前に一つ聞いておく、何故先程のあれを演技だったと分かった?」

(^Д^)「希望額を上げた所ですね。
    法外な額に吊り上げた事で、私の側近を疑わせ、交渉を決裂させる様促したのでしょう?」

('A`)「ちっ、ナイトウ気をつけろ、この男ただ者じゃねぇ」

完全に読まれていた。という事か…。

(^Д^)「そちらの軍師さんはナイトウと言うのですか。
    私はプギャー・モルセルと申します、以後お見知りおきを」

そう言って、手を差し伸べるプギャー。
戦はゲームじゃない、握手等できるものか。

(^Д^)「軍師様はこれを使ってください。流れ矢を受け、指揮不能になりますと興が冷めますので」

プギャーから弓兵に運ばせた盾を受け取った。
パビス、地面に杭を埋め立てかけ、身を隠し矢を防ぐ大型の盾だ。

(^Д^)「準備が終われば、適当に何か合図をしてください。それを、ゲーム開始の合図とします」

58: 2007/01/19(金) 01:08:04.45 ID:F9CTfPZi0
プギャーは既にパビスを設置し、戦に使う兵を選別している。

('A`)「何処を拠点にするか」

先に拠点を決めたプギャーに対し、僕等は自由な間合いを取ることが出来る。
僅かな兵も無駄には出来ない戦いだ。慎重に戦える場所にしたいところである。

長弓-ロングボウ-の最大射程は300メートル、弩-クロスボウ-の最大射程は450m。
といえど、殺傷能力が期待できる距離は半分にも満たない。

長弓の有効射程外30メートル辺りの場所に、ずっしりと佇む岩が見えたので、
僕は岩の後方、50メートル程の地点を拠点にする事にした。

パビスの設置に長けたジョルジュが、手に収まる大きさの石を使い、器用に杭を埋め込んでくれた。
設置が終わると、僕は弓兵達を岩の真後ろに固め、その両脇にそれぞれ4人ずつ騎兵を配置した。

騎兵突撃を迎撃できる歩兵がいない条件下であれば、
如何にして相手の弓兵に突撃を喰らわせるかが鍵だ。

( ^ω^)「準備ができたお、ジョルジュ、プギャー陣の手前に矢を放ってお」

これが開始の合図だ。
ランスを高らかに掲げたほうが様になるが、ランスは重く、片手で上げるには重過ぎるのだ。

59: 2007/01/19(金) 01:09:28.38 ID:F9CTfPZi0
(^Д^)「正面からの突撃を防ぐ為に、弓兵をそこに置きましたか」

ジョルジュが放った矢が、大地に突き刺ささる。

(^Д^)「我が兵達よ、ゲーム開始です」

プギャーの兵達が野獣の如き咆哮を上げる。
防御の為に陣形を組んだ僕に対し、プギャーは陣形を組んではいない、
自分から攻撃を仕掛ける気であろう。

(^Д^)「騎兵部隊、突撃!」

プギャーの突撃命令に従い、騎兵が馬を走らせる。

たった2騎…?

僕から見て弓兵部隊の左翼、ドクオが居る方の騎兵達に突撃する気だ。


騎兵で騎兵に挑むには、止まっていては勝てない。
最低限、相手と同等の速度で立ち向わなければ、勢いで押し負ける。

( ^ω^)「ドクオ、ニダー、突撃するお!」

相手の突撃に合わせる様、僕も2騎に突撃命令を下す。

60: 2007/01/19(金) 01:10:26.92 ID:F9CTfPZi0
残りの兵の動向を探ろうと、プギャー陣に目を配る。
騎兵の数が合わない、4騎しか見当たらない。

残りの2騎は何処だ…?

そうか。

先程の騎兵特攻、あれは2騎だけじゃない…! 先導の2騎に続くように、別の2騎が背後を走っている。
正方形を作るように、それぞれ間合いを空けて。


気づくのが遅すぎた…。
今から残りの騎兵を出した所で、十分な速度を得る事が出来ない。

事実上、残りの騎兵は相殺には使えない。


敵前方の騎兵相殺の為にドクオ達を使えば、打勝っても衝撃で速度が落ち、後方の騎兵に貫かれる。

( ^ω^)「左だお! ニダーは左前方、ドクオは左後方の騎兵を狙えお!
      弓兵は期を待て、まだ弓を射るなお!」

61: 2007/01/19(金) 01:11:42.99 ID:F9CTfPZi0
僕の騎兵ニダーと、前方の騎兵との間合いが縮まる。

騎兵同士の衝突の勝敗は、速度と兵の力、そして矛先の向き、相手の何処を突くかの駆け引きで決まる。
相手の槍よりも、僅か数秒でも速く当てることが出来れば、その時間に比例する力が加わる。

槍を水平に構えれば、最も長いリーチを誇るが、狙いは分厚い鎧で守られた胸。
斜めに構えれば、兜はあるが、直撃を喰らえば気絶しかねない頭。
鎧と兜の隙間、防御を受けないその場所は、
相手の一撃を受け揺るがない力と精度が必要な、至難の一撃必殺となる。


<ヽ`∀´> 「ウェーハハー! 突き落としてやるニダ」――――――――――――――

                  両者の槍は水平。

                 互いに速攻の胸狙い…!

――――――――――――――――――――――――――「負けないんです!」(>< )


2本の槍が互いの胸を同時に突き、重なり合う戛然が1つの轟音を生み出す。

ニダーの足が、敵の矛先を支点に宙を舞う。
空中で逆立ちする形となり、仰向けの姿勢で落馬、背を強打した。

プギャーの騎兵も均衡を保ち切れなくなり、頭から落馬する。
しかし、落ち方に余裕があった兵は、受身を取り、直ぐに立ち上がることが出来た。

62: 2007/01/19(金) 01:13:51.20 ID:F9CTfPZi0
「恨まないでくださいです!」(>< )

そのまま、腰の鞘から短剣を抜きニダーの喉元を掻き切る…!
ニダーの氏を惜しむ間も無く、次の衝突が始まる。

ドクオと後方のプギャー騎兵。

――――――――――――――――――――――――――「胸狙いです」|  ^o^ |
             後方の騎兵の槍は水平。
             ドクオの槍は僅かに上を向く。

             ドクオは必殺の首狙い…!

('A`)「うおおおぉぉぉぉ」――――――――――――――――――――――――――


鳴り響く戛然! 敵兵の槍がドクオの胸を捕らえる。


胸を突かれた衝撃でドクオの体大きくぶれるが、力に身を任せ持ち応える。


再び戛然!

狙いとは異なる場所ではあるが、敵の兜にドクオの槍が直撃っ…!

('A`)「よっしゃぁぁぁぁぁ」

落馬した騎兵は微動だにしない。
氏傷は与えていないが、戦闘を続けることは不可能だろう。

63: 2007/01/19(金) 01:15:29.61 ID:F9CTfPZi0
( ^ω^)「長弓兵弓を引くお! ジョルジュ、ジョーンズ、は弩を構えるお!
       残りの弩兵はまだ待機だお」

同じ弓兵といえど使用する武器で扱い方を変えなければならない。
長弓、通称ロングボウは射出速度に長け、最高1分に10発もの矢を放てる。
弩、通称クロスボウは命中精度は長弓を大きく上回るが、弦を引く為に時間がかかり、
1分間に2発放てれば良い方である。

僕等の軍は長弓兵2人、弩兵4人で構成されている。


衝突を行わなかった右方の騎兵が、最高速度で弓兵達に迫る。
正面からの突撃は受けないものの、側面に障害物は無い。

側面に突撃する為に旋回。

その速度が僅かに低下する、その僅かな隙を見逃さない!

( ^ω^)「長弓兵、矢を放て!」

66: 2007/01/19(金) 01:16:37.55 ID:F9CTfPZi0
1本の矢が、装甲の薄い腕に突き刺さり、僅かに体勢が揺らぐ。

( ^ω^)「ジョルジュ、ジョーンズ!」

呼び声に呼応し、2人が引き金を引く。


鉄の塊が落ち、鈍い音をあげる。
喉元に寄り添うよう様に刺さった矢は、鉄の塊と地に挟まれ折れていた。

( ^ω^)「長弓兵再び弓を引くお! 残りの弩兵も構えるお!」

長弓兵は最後の騎兵がたどり着くまでに再び引く余裕がある。


そう、この戦の勝敗を決める鍵は、弓兵を如何に守るかではない、弓兵を如何に攻撃に使えるかだ。

初期配置地点では攻撃には使えない、騎兵が駆け回る戦場では無闇に動かせない。
ともなれば、防御に徹し、射程距離まで騎兵を誘いこむしかない。

67: 2007/01/19(金) 01:17:48.10 ID:F9CTfPZi0
(^Д^)「まずは、合格です。騎兵達よ、戻りなさい!」

最後に突撃しようとしていた騎兵が突如旋回し、ニダーを頃した騎兵と共にプギャーの元へと戻る。


ねらい目の地点直前で戻られてしまった。
矢を放っておけば追い討ちを決める事が出来たかもしれないが、指示が遅れてしまった。


僕等の被害は騎兵1人、騎兵2人の被害を負ったプギャーに僅かに勝っている。
何としても、このまま押し切りたい。


(^Д^)「弓兵を如何に守り、弓兵を如何に攻撃に使えるか、私の答えを見せてあげましょう」


再び突撃。


その数、6騎!
全騎兵総攻撃か…!

68: 2007/01/19(金) 01:19:15.13 ID:F9CTfPZi0
(^Д^)「さぁ、どうしますか」

プギャー陣に残る兵はいない。

弓兵は…騎兵の後ろ?

騎兵の馬に跨っているのか!

(;^ω^)「弓兵の機動力を馬で補う気かお」

弓兵が騎兵と同時に動き回るのは厄介だ。
止まらねば矢は撃てないであろうが、動きに翻弄されればこちらの陣形が乱される。


( ^ω^)「騎兵、馬を下りるお! 弓兵馬に跨れお!」

敵騎兵は自陣を守る制約が無く、戦場を自由自在に動き回れる。
ともなれば、自軍も弓兵を自在に動かせなければ不利であろう。

70: 2007/01/19(金) 01:20:21.33 ID:F9CTfPZi0
(^Д^)「猿真似されるのではないかと思いましたが、面白い。即席に歩兵を作りどう使う?」


騎兵がランスとジャベリンを持ち降馬する。
ジャベリンは投擲用の槍で、ドクオの騎兵部隊が使う補助武器である。

( ^ω^)「騎兵部隊、ジャベリンを敵騎兵方面に突き立てるお!」

今は歩兵であるが、混乱を避ける為にここは騎兵と呼ぶことにした。

( ^ω^)「騎兵部隊、ランスを掴み、敵騎兵に向けるお!」

重量の為に、両手で構える形となる。


(^Д^)「ほぉ、荒いとはいえ、スキルトロームですか」

スキルトローム。
通称槍の壁、集団で槍を構え、隙間の無い槍襖を展開し、突撃を狙撃する攻撃的防御陣形。
槍襖に盾の壁を合わせた陣形もそう総称される。

(^Д^)「パイク等の射程の長い槍でなければ難しい技ですが、ジャベリンを障害物にして補いましたか」

71: 2007/01/19(金) 01:21:45.99 ID:F9CTfPZi0
(^Д^)「念の為壁への突撃は控えたい所、乗馬した弓兵に突撃は難しい。」


槍の壁に衝突する寸前、プギャーは馬を止める。

(^Д^)「面白い作戦でしたが、致命的な隙があります。
    即席歩兵は遠距離攻撃に対する術がありません!」

(;^ω^)「弓兵、戻るお!」



(^Д^)「今頃気づいても遅いっ! さぁ、弓兵達よ、矢を引け!」

プギャーは勝ち誇った様に右腕を掲げ、ドクオ達を指刺す。

(^Д^)「今だ! 矢を……」


放たれた筈の矢が、弓手自らを襲う。

いや、プギャー軍の矢は今だ放たれてはいない。

(;^Д^)「なにがぁ! 何が起こったぁ!?」

72: 2007/01/19(金) 01:22:37.13 ID:F9CTfPZi0
( ^ω^)「掛かったお!」

想定外の攻撃にプギャーの弓兵達は動揺し、無作為に矢を放つ。
当然、狙いの定まらぬ矢が当たる事は無い。


('A`)「やっぱ俺に弓は向かねぇな」
ドクオ達、即席歩兵部隊はランスを放り、手に弓や弩を構えていた。

(;゚∀゚)「丸腰で馬に乗れ、と言われた時は焦ったぞ」

ジョルジュ達が歩兵の下へと駆け戻る。


(;^Д^)「なんと、なんと無茶な戦術だ…」

降馬する事で騎兵を歩兵に変え、弓兵の弓を受け渡す事で、瞬時に歩兵から弓兵へと兵種を切り換えた。

プギャーの騎兵には見えていたかも知れない。
しかし、遠方で命令を出すプギャーには、歩兵の背後に隠れた弓を目視する事が出来なかった。

(;^Д^)「撤退だ! 撤退せよ!」

弓に不慣れな者の迎撃であった為、氏傷者は出なかったものの、
プギャーの騎兵2人がそれぞれ肩と右足を負傷したようだ。

73: 2007/01/19(金) 01:24:10.54 ID:F9CTfPZi0
(;^Д^)「弓兵降りよ! 騎兵はそのまま撤退せよ」

プギャーの元へ着いた所で、弓兵は降馬し、騎兵達はそのままググレ城の方面へと撤退する。

(^Д^)「中々楽しい戦いでしたよ」


逃げる気かっ…!

('A`)「逃がすかよぉ!」

ドクオが咄嗟にジョルジュを降馬させ、馬に飛び乗り駆け出す。
ドクオに続くように他の騎兵達も馬を走らせる。


『私の兵を全て倒せれば…』
プギャーはそう言っていた。

つまり、このゲームの勝利条件は相手の兵を全滅させること。
結果より過程を悦びとするプギャーが、ゲームを放棄するのか…?


いけない。

これは罠だ…!

(;^ω^)「ドクオ、待つお! これはプギャーの罠だお!」

75: 2007/01/19(金) 01:25:31.21 ID:F9CTfPZi0
プギャーの罠だ?

そんな事直ぐに分かったさ。
だが、すまんな軍師様。俺は突撃を止める気は無い。

('A`)「この期を逃す訳にはいかねぇんだよ!」

あれ程の自信を持ちながら、この程度の損傷で引くはずは無い。
まだ戦を続けるには十分な兵力が残っている。

ナイトウに裏を突かれ、悔しがっていたようだが、奴は最高の愉悦を感じているはずだ。

逆境と言う名の愉悦を。

(;^ω^)「戻れ! 戻るお!」
ナイトウの命令はもう聞こえない。

慣れない弓で奴の騎兵を狙う時はっきり分かった。
何故奴が数少ない戦力を遊ぶように消耗させる事ができたか。


戦力差を覆す程の圧倒的破壊力を持つ罠があったからだ。

76: 2007/01/19(金) 01:26:01.33 ID:F9CTfPZi0
思えば同条件下の戦いと謳ってはいるものの、条件が噛み合わない部分があった。

一つ目は互いの装備品、俺達の弓兵の割合は弩が多い、対して奴等は長弓だ。
そして、俺達の騎兵は突撃用のランス以外に投擲用の槍ジャベリンがある。

そしてあの時見たあれ。
弓兵の腰に掛けられた小型の携帯火鉢。
矢に火を点ける道具であるあれを持つ意味はなんだ。野戦において火矢は大した意味を持たないはずだ。


二つ目の条件外の要素は争いの開始条件だ、俺達には突然の戦いであるが、奴等にとっては違う。
俺たちを目視した後に、退路で待伏せていた奴等には時間があった。
戦場に自分達に有利な仕掛けを施す時間が。

落とし穴等の手間のかかる仕掛けを作るには時間が足りないだろう。
となれば。

圧倒的破壊力を持ち、簡単に仕掛けられる罠と火矢。
突撃を誘うように撤退しない弓兵。

この条件下での奴の狙いは明白…!

77: 2007/01/19(金) 01:27:38.31 ID:F9CTfPZi0
冷静になって見ると案の定、弓兵の前方一帯の地面、妙に光ってるじゃねぇか。

('A`)「何が同条件だ。卑劣な奴め」

プギャーの顔が醜く歪み、弓兵の一人が矢に火を灯す。

('A`)「読みが甘えぇんだよ!」
俺は矢が放たれる寸前、左手を真横に伸ばし、部下の突撃を制す。

さあ、油に火を灯せ。
俺達は火の届かぬ場所まで迂回し、丸腰の弓兵をぶっ潰してやる。

弓兵が弓を放つ…。







('A`;)「あ、あれ…?」

何故だ…胸が焼ける…

熱い…胸に、矢、が…。

堪らず馬から転げ落ちる。

('A`;)「何故だ…何故火を、火を灯さねぇんだ!」

78: 2007/01/19(金) 01:28:23.11 ID:F9CTfPZi0
m9(^Д^)「プギャーーーーー!!」

嗤笑。
感情を包み隠さず、プギャーが俺を指し、嗤笑する。

(^Д^)「理解のできない事があればそれが戸惑いを生み、大胆な行動に出ることは出来ない」

俺達を制止したナイトウの事を言っているのか?

(^Д^)「そこで納得のいく答えを与えてやれば良いのです」

火鉢と、油か?

(^Д^)「答えを見つけた者は、相手の策を逆手に取ろうとする」

答え…?
俺が見つけ出したお前の罠の事か?

(^Д^)「策の裏を突けば勝てる、その過信が致命的な隙となる」

愚かだった。
火矢の罠、その存在に気づくこと。
それこそが、奴の罠だった…。

(^Д^)「さて、そろそろゲームも終わりです」

80: 2007/01/19(金) 01:29:38.12 ID:F9CTfPZi0
薄れ行く意識の中、過酷な現実を見せ付けられた。


敗北の瞬間。


撤退と見せ掛けたプギャー騎兵の一斉突撃。

俺は。


一瞬で…。


たった一つの過信で…。


6人の大切な友を…。





全て、――――――失った。



(';A;`)「うわあああああああああああああ」

81: 2007/01/19(金) 01:30:46.20 ID:F9CTfPZi0
(^Д^)「これ以上続けると虐殺になりかねませんね」

(;´ω`)「くっ…」

悔しいが、僕の軍は弓兵しか残っていないのだ。
もう、戦えない。

(^Д^)「久々に面白いゲームが出来ましたよ。
    楽しませていただいた礼と言ってはなんですが、ググレ城をお譲り致しましょう」

(;^ω^)「なっ…何を言い出すお」

(^Д^)「貴方達の事は黙っておきます。
    私はググレ防衛から降りますので、ご自由に攻め落としてください」

(;^ω^)「ど、どう言う意味だお!」

(^Д^)「ショボンはググレ城を攻め落す気だ。その為に君達を送り込んだのだろう?」

( ^ω^)「現状では、ググレ城は落とせないと言ってたはずだお!」

82: 2007/01/19(金) 01:31:48.47 ID:F9CTfPZi0
(^Д^)「何も知らされていないのですか。ショボンは此処数ヶ月の間、攻城を行わなかった」

( ^ω^)「ググレ城が落とせないから、無闇な攻撃は控えていたのだお」

手の内を明かすようだが、言わずともこの男は知っている。

(^Д^)「その通り。ですが、攻撃をしなければ何も始まらないでしょう?
    攻め入るには多大な時間が必要だった。
    ショボンはググレ城内まで続く隧道を掘っていたのですよ」

( ^ω^)「何故お前が知っているお!? 僕ですら知らない事をっ」


(^Д^)「只の憶測ですよ。まぁ、自信はありますがね」

そう述べた後、プギャー達は城へと帰った。


戦場には敗北者が残された。


ドクオは伏したまま、延々と嗚咽し続けていた。
随分と小さくなってしまった背を、ジョルジュが支え起こし、僕達は退却した。

83: 2007/01/19(金) 01:33:48.60 ID:F9CTfPZi0
完全な敗北。

与えられた任務は完遂したが、蟠りが消えることは無い。

(´・ω・`)「驚いたね。まさか、隧道に気づかれていたとは」

( ^ω^)「プギャーの言っていた事は真実だったのですかお?」

(´・ω・`)「あぁ、悔しいが当たっているよ。
      この件については、掘削を行っている者以外、知る術が無い筈なんだけど」

内心焦っているだろう。
しかし、閣下の表情は仮面の様に微動だにしない。

( ^ω^)「いったい、どうするのですかお?」

(´・ω・`)「あの男の城を譲るという言葉を信じるしかないね」
机に肘を当て、頬に当てた右手で口を隠し、閣下は話を続ける。
(´・ω・`)「本来なら諦める所だけど、もう私達に他の手段はないのだから…」

( ^ω^)「攻城の指揮は、僕にやらせて下さいお! 仲間の仇を討たせて下さいお!」

このままでは下がれない、何としてでも僕の手でドメストに一撃を与えたい。

84: 2007/01/19(金) 01:36:40.63 ID:F9CTfPZi0
(´・ω・`)「感情に支配された軍師等使えないよ」

身を乗り出して主張した僕には、反論する事が出来ない。


(´・ω・`)「それに、攻城においての指揮は侵入する為のもの。潜入後は殆ど力押しだよ」

( ^ω^)「指揮無しで攻めるのですかお?」

(´・ω・`)「あぁ、ナイトウ君が出る時ではないよ。それに…」

書類の束をただ眺めていた閣下が、目線を僕に合わせる。



(´・ω・`)「君が仇を討つのはドメストではない。プギャーであろう」


ただ勝つ事だけを考えていると思っていた閣下が、僕を気遣ってくれていた。

( ^ω^)「はい、必ず仇をとりますお。閣下」

閣下に一礼し、領主の間から退室した。


そして僕は会うべきではなかったかもしれないが、ドクオが泊まる兵舎へと向かった。
何を言えば良いか分からなかったが、一言、話しておきたかった。

85: 2007/01/19(金) 01:37:25.82 ID:F9CTfPZi0
( ´ω`)「ドクオ…すまなかったお。僕のせいだお」

僕は突撃止めようとした。
でも、止める事が出来なった。
罠だと気づいても、その罠が何か理解していなかったから…。

( ´ω`)「こんな僕の為に戦ってくれて、ありがとうお…」

ドクオは僕の命令に忠実に動いてくれた。
氏の危険を伴う突撃すら、何も言わずに行ってくれた。
最後の突撃も、僕を勝たせる為にやってくれた。




('A`)「なんだ、ナイトウか。どうだ、人間チェスは楽しかったか?」

86: 2007/01/19(金) 01:39:35.57 ID:F9CTfPZi0
(#`ω´)「なっ…」

('A`)「戦は貴族にとって最高の遊びだからな」

僕は、あいつとは、プギャーとは違う。

('A`)「さぞ、楽しかっただろう?」

(#`ω´)「そ、そんな訳ないおっ!」

('A`)「なぁ、なんでチェスのクイーンが縦横無尽に動けるか知ってるか?」
何を言い出すのだ、ドクオは。
('A`)「チェスは戦の縮図だ。ポーンは歩兵部隊、歩兵一人じゃねえ」

(#`ω´)「それが…」

('A`)「クイーンはよ、最愛の王を護るために歴戦の近衛兵と命を掛けて敵に挑む。
   故に、あれ程の力を持つって訳だ」

何が言いたい。言いたい事があれば、はっきりと言ってくれ。

(#`ω´)「それが、それがなんだっていうんだお!」

87: 2007/01/19(金) 01:40:28.25 ID:F9CTfPZi0
('A`)「それに比べキングはなんだ。安全な場所に身を隠し、手下を盾に逃げ回るだけじゃねぇか」

ドクオは僕を無視し、話を続ける。


('A`)「安全な場所での人間チェス…楽しかっただろ? キング・ナイトウさんよ」

(#`ω´)「ふざけるなおっ! 言いがかりだお!」

('A`)「確かに、隠れるのは間違いじゃない。
   だが、お前はプギャーを策に嵌めたあの時……豪く楽しそうな顔をしていたな?」

(#`ω´)「違う…それは違うお!」

いや、その通りだ。
あの時、自分の策略が成功した時。
確かに僕は、戦を楽しんでいた。

('A`)「結局お前はよ、プギャーと同じなんだよ」

(#`ω´)「僕は、あの時止めようとしたお! ドクオと違って勝つ為なんかじゃなかったお!」


言ってはならない事を言ってしまった…。

89: 2007/01/19(金) 01:41:51.87 ID:F9CTfPZi0
('A`)「じゃあよ…なんの為だったんだよ?」

無感情に淡々と話していたドクオの声音に感情が宿る。

(#`ω´)「ドクオ達を守るためだったお! ドクオが命令に背いたから、だから皆は…!」

状況が悪化するだけと分かっていても、もう、歯止めが利かない。

('A`#)「俺達を駒に遊んでおいて、守るためだ? ふざけるのもいい加減にしやがれ!」

ドクオに胸倉を掴まれる。そうだ、お前に咽び泣く姿なんて似合わない。
卑劣な元盗賊なんて馬鹿みたいに怒り狂う姿のほうがよっぽど似合っている。

('A`#)「お前みたいな野郎が一番うぜぇんだよ! 
    勝手な時だけ偽善者ぶりやがって。プギャーの方がまだましだ!」

何がプギャーの方がましだ。
戦をゲームと考える奴なんかより、僕は余程優秀だ。

('A`#)「駒として扱うなら最後まで駒として扱いやがれ!
    それができねぇんなら軍師なんて止めちまえ!
    お前みたいなガキには軍師なんて大役務まらねぇんだよ!」

いい加減にしろ…。


「いい加減にしろよお前!」
ドクオの頬に拳が炸裂し、長身な体が派手に吹き飛ばされる。

僕じゃない、僕はやってない。

90: 2007/01/19(金) 01:42:36.03 ID:F9CTfPZi0
(#゚∀゚)「ナイトウに当たった所であいつ等はもう。戻ってはこねぇんだよ!」

ジョル、ジュ…? 居たのか…

(#゚∀゚)「ナイトウの指揮は間違っていなかった。分かってるはずだろ!」


('A`#)「あぁそうだよ…俺があいつ等を頃したんだ! なんとでも言いやがれ!」

ドクオが部屋を出た所で目が覚めた。
僕は、何て事を言ってしまったのだ…。


(;゚∀゚)「すまなかったナイトウ、分かってやってくれ。あいつには辛すぎたんだ。
    自分の独断行動で部下を失った現実が」

( ´ω`)「ドクオの言い分は間違っていないお。僕は戦を楽しんでいたお…」

( ゚∀゚)「ナイトウ、お前は立派な軍師だ。何も恥じることは無い」

( ´ω`)「ドクオが戻ってきたら謝っておいてほしいお。」


もう…疲れてしまった。

91: 2007/01/19(金) 01:43:55.24 ID:F9CTfPZi0
( ゚ω゚)「くふぁああああ」

疲れた体を癒す為、嫌な事全部を有耶無耶に忘れてしまう為に、エールを一気に流し込む。
以前祝杯で訪れた時とは違い、店内は仕事帰りの農民や鍛冶屋等の客が中心で
落ち着いた雰囲気であった。

川 ゚ -゚)「どうした、そんなに荒れて?」

(;゚ω゚)「く、クー? 居たんだぉ…」

川;゚ -゚)「偵察任務中に何かあったのか? 余程周りが見えなくなってるようだが」

扉の真正面にあるカウンター席。
何も考えずにそこに座ったが、僕が来る以前からクーは隣の席に居た様だ。

( ´ω`)「任務は成功したお。でも、沢山の仲間を失ったお」

川 ゚ -゚)「そうか、辛かったな…」

クーは全てを受け入れてくれる。だから、包み隠さず正直に話すことが出来る。

( ´ω`)「それに、僕は戦を楽しんでしまっていたお。人として最低だお」

川 ゚ -゚)「それは、一概に過ちとは言い難い事だ」

92: 2007/01/19(金) 01:44:36.68 ID:F9CTfPZi0
( ´ω`)「え…?」

川 ゚ -゚)「人を頃す戦を楽しむのは人間としてどうかしている。
     だが、それ以前に兵となった時点で狂ってしまっている。無論、私もだ」

( ´ω`)「それは違うお。皆戦を終わらせる為に兵になったんだお。
       人を頃したいからじゃないんだお」

川 ゚ -゚)「戦を終わらせる為に戦をし、人を護る為に人を頃す。それが現実だ」

( ´ω`)「でも、でも…そうするしかできないんだお」

川 ゚ -゚)「そうだ、だからこそ我々は、戦を楽しむのだ。
     通常の精神で出来ることではない。殺戮を楽しむ狂人にならねば、戦などできはしない」

( ´ω`)「僕には受け入れられないお。どうすればいいんだお」

川 ゚ -゚)「戦前は相手を憎め、相手を絶対的な悪だと思い込め。
     戦は楽しめ、絶対的な悪を成敗する英雄を演じきれ」
声のトーンを落とし、続ける。
川 ゚ -゚)「そして、戦を終えた後、後悔しろ、人を頃した事を神に懺悔しろ、
     友の氏に涙を流せ、耐え切れなければ仲間に頼れ。その為に、私達は共に戦うのだ」

93: 2007/01/19(金) 01:45:31.17 ID:F9CTfPZi0
( ´ω`)「クー、それって…」

川 ゚ -゚)「そう、ナイトウが今日やってきた事…出来たことだ」


本当にこれでいいのだろうか。
このままで良いと言われても、何かを変えなければならない、何かを変えたい。


( ´ω`)「クー、一つお願いがあるお」

川 ゚ -゚)「なんだ? 言ってみろ」

( ´ω`)「僕に、戦う術を教えて欲しいお。命令するだけじゃだめだお。
      皆の為に戦いたいお」



川 ゚ -゚)「やはり…あの男の息子だな」

( ´ω`)「父さんを、知ってるのかお?」

川 ゚ -゚)「私が騎士となった時にはもう、この世の人ではなくなっていた。
     人伝に聞いただけだ。立派な軍師だったと聞いている」

94: 2007/01/19(金) 01:47:18.51 ID:F9CTfPZi0
( ´ω`)「父さんは軍師でありながら仲間の為に戦って氏んだお。
      僕も、父さんみたいな軍師になりたかったんだお」

川 ゚ -゚)「そうか…正当な理由とあらば教えよう。
     だが、軍師は前線で戦う役ではない。ナイトウには弓を教える事にする」

( ´ω`)「ありがとうお、世話になりっぱなしでごめんお」

川 ゚ -゚)「気にすることではない、ナイトウの為であって国のためだ。
     早速明日から始めよう。明朝5時、弓兵訓練所で行う。遅れるな」


こんな思いをするぐらいなら、いっその事、軍師なんてやめてしまおうかと思っていた。
ありがとうクー…まだ、頑張れそうだ。

必ず、必ず応えるから。

96: 2007/01/19(金) 01:48:44.47 ID:F9CTfPZi0
早朝5時、太陽はまだ昇りきっておらず、少し薄暗く寒い。
冷たい風が流れる度、草木達が囁き始める。
その声で目を覚ました小鳥たちが、可愛らしい鳴き声をあげ、各々が望む場所へと飛び立って行く。
見慣れた場所の見慣れない姿は、何時と違う匂いがした。

川 ゚ -゚)「寝坊せずにちゃんと起きれたようだな」

( ^ω^)「何時もよりちょっと早いけど、余裕だお」

川 ゚ -゚)「では、早速始めようか。何か、質問はないか?」

( ^ω^)「クーは歩兵なのに弓を扱えるのかお?」

昨日の、『弓を教える事にしよう』という発言を聞いた時から少し気になっていた事だ。

川 ゚ -゚)「本職程ではないが、実践で使える程度の実力はあると思う。
     他の武器を使えて損な事は無いからな」

プギャーとの戦で、兵種変更戦術を使ったので、その重要性は身に染みて分かっている。

( ^ω^)「どうして練習する弓は弩じゃなくて、長弓なんだお?
      弩の方が即戦力になるお」

97: 2007/01/19(金) 01:50:09.81 ID:F9CTfPZi0
川 ゚ -゚)「確かに弩は少ない訓練で正確な矢を放てる優秀な武器ではある。
     だが弩は弦を引く際、戦場から目を逸らせてしまう」

弩は長弓と比べ弦を引く時間がかなりかかってしまう。
戦場を常に見据えていなければならない軍師の立場を考えて、長弓を選んでくれたのだろう。

( ^ω^)「分かったお。改めて、よろしくお願いしますお」

川 ゚ -゚)「まず私が1本撃つから、それを見て大体の形を掴んでくれ」

クーは矢をつがえ、20メートルほど離れた円形の的を狙うように弓を構えた。
言われた通り、クーの姿を目を凝らして観察した。


真っ直ぐに伸ばされた全身は、戦の為についた筋肉があるのに、
がっしりとしておらず、全体がすらっと引き締まっている。
癖一つ無い真っ直ぐの髪の毛は、騎士である為に耳を少し隠す程度の長さなのであろうか。
一心に的を見据えるその目は、レイピアの様に細く、凛々しさを感じさせる。


今迄じっくりとクーを見ることは無かった。
クーは美人ではあったが、魅了される程ではなかった。

98: 2007/01/19(金) 01:50:50.88 ID:F9CTfPZi0
弓を射る射形を見たはずだったが、僕は自然とクーに魅入っていた。


村娘が髪飾りで美しく成る様に、クーは弓を構えることで格段に綺麗になっていた。
まるで元々弓が体の一部であったと錯覚するぐらい、弓が似合っていた。

環境に合わせ進化してきた生き物達の様に、クーは戦場で最も美しく輝く姿になったのだろう。

川 ゚ -゚)「どうだ、わかったか?」

(;^ω^)「え…あぁ、もう一回やってほしいお」

完全に目的を見失って魅入っていたのが、少し恥ずかしかった。
クーはその事に気づいていなかったのが唯一の救いだ。

川 ゚ -゚)「一発ではわかりにくいか、わかった、もう一度しっかりと見てくれ」


次こそはしっかりと見よう。
射形を…。

99: 2007/01/19(金) 01:51:46.60 ID:F9CTfPZi0
川;゚ -゚)「まだわからないか?」

(;^ω^)「ご、ごめんお」

あれから5、6本クーは矢を射たが。
情けない…僕はずっとクーに魅入ってしまっていた。

川;゚ -゚)「仕方が無い、実際に撃ってみて覚える事にしよう」

(;^ω^)「それがいいと思うお」

このまま何度見せられても無駄な気がした…。

川 ゚ -゚)「では、この弓を持ってみろ」

( ^ω^)「お?、クーの弓とは別なのかお?」

川 ゚ -゚)「弓は自分の力量に合わせて使う武器だ。今のナイトウに私の弓は引けないだろう」

( ^ω^)「これでも一応男だお。クーが引ける弓ぐらい引けるに決まってるお」

川 ゚ -゚)「そうか、なら私の弓を使ってみろ」

100: 2007/01/19(金) 01:52:21.26 ID:F9CTfPZi0
(;^ω^)「おっ、おっ、おっ」

硬い…。

川 ゚ ー゚)「ふふ…どうした、引けないのか?」


(;^ω^)「なんのぉ! ほら、引けたお」

弦を一気に引いた、左手がぷるぷるする。
矢をつがえずに弦を離すと弓を傷めるので、辛いけどゆっくりと戻す。

川 ゚ ー゚)「やればできるじゃないか!」

顔がにんまりしている、本心で言ってないのが丸分かりだ。

(;^ω^)「あたりまえだお、余裕だお」

クーのペースに乗せられてる気がしないでもない。

101: 2007/01/19(金) 01:53:39.39 ID:F9CTfPZi0
川 ゚ ー゚)「よーし、ではもう一度引いてみようか!」

もう、無理だ。

(;^ω^)「参りましたお」

川 ゚ ー゚)「ふっ、はははははは」

クーが吹き出す、悔しいけどクーが楽しんでくれるのはちょっと嬉しい。
閣下程ではないが、感情の起伏が少ないクーにとって笑う姿は貴重で、
ついつい見たくなってしまう。

川 ゚ ー゚)「ふふふ、からかって悪かった。ではこの弓でやってみろ」

先程渡された僕用の弓を引いてみる。

( ^ω^)「軽っ、うわっ軽い」

川 ゚ ー゚)「これだけ違うってことだ。筋力の差もあるが弓は背筋を使って引けば、
     手で引くよりも楽に引けるぞ」

( ^ω^)「早く撃ってみたいおー」

弓を射るのは初めてなので楽しみである。

102: 2007/01/19(金) 01:55:26.22 ID:F9CTfPZi0
川 ゚ -゚)「まず足を肩幅に開いて正面を見るんだ。
     それから的の方向を見て、人差し指の上に矢をつがえよ。
     左手で弓を押しながら弦を引き、弦と矢先が一直線に重なるように調整して狙え」

早すぎて言ってる事は理解できてないけど、クーが手で誘導してくれるのでなんとか出来る。

川 ゚ -゚)「左手は握りこまず軽く持て、よしそこだ、一気に手を開いて撃て!」

右手を開いた瞬間、弦から開放された右手が自然と耳まで導かれる。


川 ゚ -゚)「おぉ、初めての割にはかなりのものだ」

僕の放った矢は、的の端になんとか当たっていた。

川 ゚ ー゚)「すごいすごい」

そう言ってクーが僕の頭を撫でる。
クーのとって僕は小動物みたいなものなのだろうか…。

川 ゚ -゚)「基本的な撃ち方は分かったと思うから、とにかく数を撃って練習するぞ。
     細かい所は少しづつ教えていくからな」


それから僕が弓を引けなくなるまで練習し続けた。
クーの指導は分かり易かったが、結構厳しいもので、厳しく振舞うのを楽しんでいるようにも見えた。

103: 2007/01/19(金) 01:56:34.17 ID:F9CTfPZi0
川 ゚ -゚)「お疲れ様、今日はもう御開きにしよう。
     明日からも休まず練習するからな」

( ^ω^)「はい師匠、よろしくお願いしますお」

練習中は師匠と呼ぶように言われたのでこう呼ぶようになったが、
そう呼ぶとクーの表情が少しだけ緩むので、僕も積極的に呼んでいた。

川 ゚ ー゚)「ふふ、上手くなったら一緒に狩りにでも行こう。
     動く標的を撃つ練習にもなるし、楽しいものだぞ」

( ^ω^)「がんばって上手くなるおー」





僕とクーは毎朝弓の練習を続けた。
1日3食ご飯を食べるように、生活の一部として当たり前の行動になっていた。

僕がある程度的に当てれるようになると、クーは隣で自分の練習をするようになった。

104: 2007/01/19(金) 01:58:47.23 ID:F9CTfPZi0


( ´_ゝ`)「さて、ついにこの日が来たわけだが」

(´<_ ` )「いよいよ、ググレ城進攻だな兄者」

(;´_ゝ`)「なにそれ? 今日は、ドキッ★甲冑だらけの水泳大会[ポ口リもあるよ]だろ?」

(´<_ `;)「何処からそんな情報が入ったのかわからんが、たぶんググレ城進攻の事だそれ」

(;´_ゝ`)「甲冑は分かるが、水泳は全然関係ないじゃないか。堀の下を行くわけだしな」

(´<_ `;)「言い出した奴の思考が分からんが、血の海で水泳って事じゃないか?」

(#´_ゝ`)「じゃあポ口リはなんだ!?」

(´<_ `;)「首が…ぽろり?」

( ´_ゝ`)「帰る…」

105: 2007/01/19(金) 01:59:22.31 ID:F9CTfPZi0
ググレ城進攻に向け、リアジュウ村は凡そ2500名の兵で賑わっていた。
隧道の入り口はリアジュウ村にあったのである。
従騎士達が世話しなく武具を運び、神父が目前を通る騎士達に祝福をかけていた。

( ´∀`) 「勇気ある我等サンポールの騎士に神のご加護をモナ」

神父が頭の上に手を翳し、祝福の言葉を唱える。
聞く所によるとこの男、戦もこなす僧兵らしい。

│ 十│「ありがとう……ぉ」


(´<_ ` )「皆の者、出撃開始だ!」

│ 十│(゚д゚)( ∵)「オオオオオォォォォォォ!!!」

第二章 【ゲーム】完

106: 2007/01/19(金) 02:06:11.34 ID:F9CTfPZi0
本日の投下はここで終了です。
実は既に書き終えており、明日の昼頃に3話、今日と同じぐらいの時間帯に4、5話を投下する予定です。

支援くださった方ありがとうございます。
お陰様で猿にひっかかる事も無くスムーズに投下できました。


( ^ω^)ブーンが軍師になったようです【後編】

引用: ( ^ω^)ブーンが軍師になったようです