150:涼宮ハルヒの情熱 2006/08/02(水) 18:23:17.07 ID:W6AP9OvZO
1つのパラレルワールドにすぎないから時間軸は気にしないでくれ
じゃあ投下する
じゃあ投下する
151: 2006/08/02(水) 18:24:15.56 ID:W6AP9OvZO
雪山で遭難した冬休みも終わり3学期に突入し、気付けばもうすぐ学年末テストの時期になった
なのに相変わらず、この部屋で古泉とボードゲームに興じている俺ははたから見ればもともと余裕のある秀才か、ただのバカか2つにひとつだろう
どちらなのかは言わなくてもわかるだろ?
先程、俺と古泉に世界一うまいお茶を煎れてくれた朝比奈さんもテスト勉強をしている
未来人なんだから問題を知ることぐらい容易であるように思えるがその健気さも彼女の魅力の一つだ
この部屋の備品と化している長門も今日はまだ見ていない
最近はコンピューター研にいることが多いようで遅れて来ることもしばしばだ
観察はどうした?ヒューマノイド・インターフェイス
なのに相変わらず、この部屋で古泉とボードゲームに興じている俺ははたから見ればもともと余裕のある秀才か、ただのバカか2つにひとつだろう
どちらなのかは言わなくてもわかるだろ?
先程、俺と古泉に世界一うまいお茶を煎れてくれた朝比奈さんもテスト勉強をしている
未来人なんだから問題を知ることぐらい容易であるように思えるがその健気さも彼女の魅力の一つだ
この部屋の備品と化している長門も今日はまだ見ていない
最近はコンピューター研にいることが多いようで遅れて来ることもしばしばだ
観察はどうした?ヒューマノイド・インターフェイス
152: 2006/08/02(水) 18:25:43.72 ID:W6AP9OvZO
>>151
「最近涼宮さんに変化が訪れていると思いませんか?」
わざわざ軍人将棋なんてマイナーなものを持ってきやがった、いつものにやけ面がもう勝てないと踏んだのか口を開いた
「その台詞、前にも聞いたぞ、今度はなんだ?」
半ば勝ちが決まったゲームの駒をすすめながらこたえる
「いや、失礼。表現があまりよくなかったようですね。あなたが最近…というかクリスマスイブ以降、長門さんに無意識に目がいくようになったのを目ざとく最初に見つけたのは涼宮さんです。」
「質問の答えになってない」
俺の言葉は自分で思ったよりぶっきらぼうだったらしく古泉は微笑のなかで眉をひそめた
「最後まで聞いてください。あなたには話していませんでしたが、それ以来閉鎖空間の頻度が少しだけあがっているのです」
「ほお、それで?」
聞き役に撤するのは得意ではないが、ここは言葉を続けさせるべきだろう
「あなたが長門さんを気にするのを涼宮さんは気に入らないのですよ」
にやけ面が含み笑いを取り入れ、いつもの数倍は苛立つ顔になる
あまり続きを聞きたくなくなったので手元のボードゲームの勝ちを決めることにした
「あなたも、もし僕が朝比奈さんと仲睦まじげに話していたらイライラするでしょう?…それとも、この例えは涼宮さんの方が的確でしたか?」
やめろ、古泉
忘れたかった記憶が戻ってきそうだ
「最近涼宮さんに変化が訪れていると思いませんか?」
わざわざ軍人将棋なんてマイナーなものを持ってきやがった、いつものにやけ面がもう勝てないと踏んだのか口を開いた
「その台詞、前にも聞いたぞ、今度はなんだ?」
半ば勝ちが決まったゲームの駒をすすめながらこたえる
「いや、失礼。表現があまりよくなかったようですね。あなたが最近…というかクリスマスイブ以降、長門さんに無意識に目がいくようになったのを目ざとく最初に見つけたのは涼宮さんです。」
「質問の答えになってない」
俺の言葉は自分で思ったよりぶっきらぼうだったらしく古泉は微笑のなかで眉をひそめた
「最後まで聞いてください。あなたには話していませんでしたが、それ以来閉鎖空間の頻度が少しだけあがっているのです」
「ほお、それで?」
聞き役に撤するのは得意ではないが、ここは言葉を続けさせるべきだろう
「あなたが長門さんを気にするのを涼宮さんは気に入らないのですよ」
にやけ面が含み笑いを取り入れ、いつもの数倍は苛立つ顔になる
あまり続きを聞きたくなくなったので手元のボードゲームの勝ちを決めることにした
「あなたも、もし僕が朝比奈さんと仲睦まじげに話していたらイライラするでしょう?…それとも、この例えは涼宮さんの方が的確でしたか?」
やめろ、古泉
忘れたかった記憶が戻ってきそうだ
155: 2006/08/02(水) 18:27:31.31 ID:W6AP9OvZO
>>152
「ありません」
勝ちが決まったゲームを投了するのはいささか不快だが話を終わらせる手段はこれしか見つからなかった
「投了ですか?確実に負けたと思っていましたが、あなたには何手先が見えたんです?」
今しか見えていないさ
話を中断する理由がほしかっただけだ
とも言えないので俺は黙ってお茶を飲むことに集中した
うん、うますぎる
「そんなことはどうでもいいですね、今回は僕の勝ちです」
そう言いながら古泉は対戦成績表に丸をつける
ながら丸付けか、小学校の教師ならやりそうだ
「では話を戻しましょうか」
思わずお茶を吹き出しそうになるがもったいないことこのうえない
しかし、ごまかしたと一瞬でも油断した俺がバカだった
俺がバカなのは冒頭で述べたばかりなのでいまさらだが
「涼宮さん風に言うと、一種の精神病ですね、彼女はまさに今その状態です」
やめろ、そこまで記憶がさかのぼると閉鎖空間での悪夢を思い出す
そんな俺の危惧を知ってか知らずか古泉は続ける
「閉鎖空間から涼宮さんと二人で戻って来れたのですからあなたもまんざらでもないのでしょう?」
…近くに44オートマグがあったなら自分の頭を打ち抜いていただろう
銃刀法に感謝しろ、古泉
「おやおや、そんな顔をするなんて予想外でした。続きを話すのが少し億劫になってきましたね」
そんなことを言いながらもちっとも表情を崩さない古泉に殺意すらおぼえた
どういう言葉で殺意を表してやろうか考えていると、いつものようにどでかい音をたてて我らが団長が飛び込んできた
「ありません」
勝ちが決まったゲームを投了するのはいささか不快だが話を終わらせる手段はこれしか見つからなかった
「投了ですか?確実に負けたと思っていましたが、あなたには何手先が見えたんです?」
今しか見えていないさ
話を中断する理由がほしかっただけだ
とも言えないので俺は黙ってお茶を飲むことに集中した
うん、うますぎる
「そんなことはどうでもいいですね、今回は僕の勝ちです」
そう言いながら古泉は対戦成績表に丸をつける
ながら丸付けか、小学校の教師ならやりそうだ
「では話を戻しましょうか」
思わずお茶を吹き出しそうになるがもったいないことこのうえない
しかし、ごまかしたと一瞬でも油断した俺がバカだった
俺がバカなのは冒頭で述べたばかりなのでいまさらだが
「涼宮さん風に言うと、一種の精神病ですね、彼女はまさに今その状態です」
やめろ、そこまで記憶がさかのぼると閉鎖空間での悪夢を思い出す
そんな俺の危惧を知ってか知らずか古泉は続ける
「閉鎖空間から涼宮さんと二人で戻って来れたのですからあなたもまんざらでもないのでしょう?」
…近くに44オートマグがあったなら自分の頭を打ち抜いていただろう
銃刀法に感謝しろ、古泉
「おやおや、そんな顔をするなんて予想外でした。続きを話すのが少し億劫になってきましたね」
そんなことを言いながらもちっとも表情を崩さない古泉に殺意すらおぼえた
どういう言葉で殺意を表してやろうか考えていると、いつものようにどでかい音をたてて我らが団長が飛び込んできた
156: 2006/08/02(水) 18:30:17.91 ID:W6AP9OvZO
>>155
「やっほー!みんないる?」
銀河系の星達がすべてちりばめられたような笑顔を振りまきながら入ってきたハルヒ
やばいな、これは何かろくでもないことを思いついた時の顔だ
「…あれ?有希はまだ来てないの?」
寡黙な宇宙人の指定席であるパイプイスに目をおき、疑問をなげかける
「長門なら、多分コンピ研じゃないか?」
疑問にこたえたのは俺だった
朝比奈さんはハルヒのお茶を煎れに行ってしまったし、古泉は微笑を浮かべるだけなので自動的にこたえるのが俺の役割になっていた
「ふぅん、じゃああたし連れ戻してくるから、それまでに会議の準備しといて」
それだけ言うとハルヒはスピードスケートの清水のようなスタートダッシュで駆け出した
やれやれ、おっとこれは禁句だったか
だが、口に出してはいないので大目にみることにしよう
やれやれ、また会議か
時期的に今度は春休みか?
「あなたの席はここ一年ずっと涼宮さんの前でしたよね?」
急に何の脈絡もないような話を振ってきた古泉
「ああ、そうだ」
「それは恐らく、彼女が望んだからそうなったのです。涼宮さんはあなたのそばにいたいのです」
指で前髪を遊ばせながら古泉が語る
誉め言葉ではないがこういう仕草がこいつにはむかつくほど似合う
「やっほー!みんないる?」
銀河系の星達がすべてちりばめられたような笑顔を振りまきながら入ってきたハルヒ
やばいな、これは何かろくでもないことを思いついた時の顔だ
「…あれ?有希はまだ来てないの?」
寡黙な宇宙人の指定席であるパイプイスに目をおき、疑問をなげかける
「長門なら、多分コンピ研じゃないか?」
疑問にこたえたのは俺だった
朝比奈さんはハルヒのお茶を煎れに行ってしまったし、古泉は微笑を浮かべるだけなので自動的にこたえるのが俺の役割になっていた
「ふぅん、じゃああたし連れ戻してくるから、それまでに会議の準備しといて」
それだけ言うとハルヒはスピードスケートの清水のようなスタートダッシュで駆け出した
やれやれ、おっとこれは禁句だったか
だが、口に出してはいないので大目にみることにしよう
やれやれ、また会議か
時期的に今度は春休みか?
「あなたの席はここ一年ずっと涼宮さんの前でしたよね?」
急に何の脈絡もないような話を振ってきた古泉
「ああ、そうだ」
「それは恐らく、彼女が望んだからそうなったのです。涼宮さんはあなたのそばにいたいのです」
指で前髪を遊ばせながら古泉が語る
誉め言葉ではないがこういう仕草がこいつにはむかつくほど似合う
157: 2006/08/02(水) 18:32:25.98 ID:W6AP9OvZO
>>156
「単刀直入に言います。涼宮さんと付き合ってみてはいかがですか?」
いつもの糸のようなが見開かれ、その視線は真っすぐ俺の目を見ている
どうしてお前の真面目な顔はこうも不気味なんだ
「お断わりだ、付き合う付き合わないは人に言われてどうこうの問題じゃないだろ」
俺がそう言うと古泉は口をへの字には曲げてはいたが、顔に笑みを戻した
「そうですね、失礼しました。それではあなたにお任せしますよ」
だから付き合わないと言っているだろう
任せるもへちまもあったもんじゃない
「たっだいま~!」
話が終わるのを見計らったようなタイミングでハルヒが長門をともない戻ってくる
ハルヒは朝比奈さんの煎れたお茶を飲み干すとこう叫んだ
「我がSOS団は春休み、花見をするわよ!」
「単刀直入に言います。涼宮さんと付き合ってみてはいかがですか?」
いつもの糸のようなが見開かれ、その視線は真っすぐ俺の目を見ている
どうしてお前の真面目な顔はこうも不気味なんだ
「お断わりだ、付き合う付き合わないは人に言われてどうこうの問題じゃないだろ」
俺がそう言うと古泉は口をへの字には曲げてはいたが、顔に笑みを戻した
「そうですね、失礼しました。それではあなたにお任せしますよ」
だから付き合わないと言っているだろう
任せるもへちまもあったもんじゃない
「たっだいま~!」
話が終わるのを見計らったようなタイミングでハルヒが長門をともない戻ってくる
ハルヒは朝比奈さんの煎れたお茶を飲み干すとこう叫んだ
「我がSOS団は春休み、花見をするわよ!」
158: 2006/08/02(水) 18:34:33.56 ID:W6AP9OvZO
第1章
―春休み、終盤
結局俺たちは例の変り者のメッカ、長門のマンションの前の公園で花見をしている
…はずだったのだが、俺の部屋にSOS団の面々が集まっているのはなぜだ?
よし、こういうときはいつものように回想モード、ON
「我がSOS団は春休み、花見をするわよ!」
ハルヒの高らかな宣言を聞き、俺は少し安心した
春といえばハルヒの中では花見らしい
もっと別のものが出てきたらどうしようかと思った
ま、原因はさっきの古泉が付き合う付き合わないとか言っていたせいだろう
春は恋の季節と歌った歌があったからな
「お花見…ですか?」
ハルヒの言葉に北高のアイドルにして俺のエンジェル、そしてSOS団専属メイドの朝比奈さんが反応した
「そ、お花見。言っとくけどアルコールは厳禁だからね!!」
アルコール厳禁を宣言するだけなのに何がそんなに楽しいのか、ハルヒの笑顔は夜空に栄える隅田川の打ち上げ花火のようにまばゆい光を放っていた
「わぁ…あたしお花見って初めてで…すごく楽しみ」
対抗意識を燃やしたわけではないだろうが、それに負けじと朝比奈さんの笑顔も春の花畑を優雅に舞う蝶が羽休めのためにチューリップに静かにとまったかのような清楚な微笑みだった
「このメンバーでお花見とは、楽しくなりそうで僕も楽しみです。」
ハルヒに従順なイエスマン、古泉も相変わらず微笑をうかべたまま反対しようとはしない
もちろん長門はというと寡黙なその視線を分厚い文庫本に注いでるだけだ
と、いうわけでSOS団お花見計画は満場一致で開催が決定された
しかし、春休みに楽しい予定が入ったからといって時間の流れというのはその時間を頭出ししてくれたりはしない
目の前に立ちはだかるでっかい問題をどうにかするのが先だった
そう、すべての学生の不倶戴天の敵
―もうわかるだろう、奴の名は学年末テストだ
どうにかしようとは思っていても結局至極当然のように放課後になると俺はここ、文芸部の部室にいるわけで、それは鳥が空を飛ぶように、魚が水の中を泳ぐように足が部室をめざすのだから仕方ない
このままだと俺がリアルにハルヒの力によってではなく、俺の力不足によって1年生をループすることになるのですべてのプライドを捨て、部室でネットサーフィンしてばかりの我らが団長様に教えを請うことになった
ハルヒはこんなのもわからないのといった表情で、それでいて勉強しているというのにどこか楽しそうで、それでも親切丁寧に俺に勉強を教えてくれた
しかも、教えるのがやたらうまい
俺のバカ頭で、見ただけで頭が痛くなりそうな数式を頭を痛めつつだが、なんとか解けるまでにしてくれた
なるほど、だからあの眼鏡の少年は将来タイムマシンに準ずるものを開発してしまえるのか
だから画家にはならないでくれ
もう二度と俺のモンタージュを書かないように、と思ったのは余談だ
なんやかんやで学年末テストでは学年でとまではいかないがクラスで5本の指に入るくらいの点数を叩きだすことができた
担任の岡部もびっくり仰天だっただろう
ハルヒ様様だ
テストが終わればあとは春休みを待つばかりで俺はwktk…じゃなかった、期待して到来を待った
春休みまでの数日で俺が古泉にボードゲームでかなり勝ち越したことも付け加えておこう
―そして
春休み初日
天気予報で今年の桜開花予想を聞いたハルヒは終業式の日のうちに本日の集合を決めていた
その場で話し合えばいいのにハルヒはいちいちみんなで集まりたいらしい
その点に関しては俺も異論はないが
なので俺がめずらしく一念発起し、たまには俺以外の―そうだな、古泉辺りが理想だが、
他の団員に喫茶店代を出させてやろうと思っても俺含むすべての団員がハルヒの願いによって操られるためいつでも最後に到着するのは俺だ
なぜハルヒが俺におごらせたいのかは謎だが
というわけで結局いつもの喫茶店に俺たちはいるわけだが1ついつもと違うことといえば長門が2つの合宿以外で見せなかった制服ではない私服姿でいることだ
淡い水色のワンピース
その寒涼系のコーディネートはひどく似合っていて何かあるのかと勘ぐった俺の思考を一瞬止めた
しかし、勘ぐったのは束の間、長門から特に特別な表情は読み取れなかったため特異な理由があるわけではなく、
ただたんに長門が‘そうしたかったから’このワンピースを着ていると悟った俺は「よく似合っている」の一言で片付けることにした
ハルヒはというと春というより夏に近い格好で、ノースリーブシャツにキュロットといった服装
愛しのマイエンジェル、朝比奈さんはタートルネックにスリットの入ったロングスカートとこれまた何ともそそる格好をなされていた
蛇足だが古泉はワイシャツにジーパン、そのうえにスプリングコートを羽織っていた
それが道行く女性の視線を集めたのはいうまでもない
「今年の開花予想は4月3日だって。例年より早いらしいけど、地球温暖化の影響によって東京の桜はかなり早く咲くらしいの。
それを考えると騒ぐ程のことではないってテレビでいってたわ」
温暖化云々と地球環境問題のことを聞くと危惧するべきだろうが、俺は正直、ホッとしていた
学校が始まってからの開花だったらどうしようかと考えていたからだ
これもハルヒの力によるものかもしれないのだが
「と、いうわけでキョン、場所取りお願いね、ちゃんと前の晩から徹夜するのよ」
さらりととんでもないことをぬかしたハルヒは穏やかな笑顔で俺を見つめた
仕方なく反論を用意した
「確かに場所取りは重要だがいくらなんでも一人で徹夜はひどいだろう、せめて…」
せめて古泉も道連れにと言い掛けたところでハルヒが口を開いた
「誰も一人で行けなんていってないでしょ?大丈夫」
そのあと、ハルヒは南極に白くまが、北極にペンギンが住み、地球の自転、公転が逆になっても耳を疑うようなことを言った
「あたしもいくわよ」
と、いうわけで何度かの市内探索パトロールを経て、4月2日夜、ハルヒに呼び出された俺は変り者のメッカの例の公園でハルヒとともにブルーシートを広げ、場所を確保している
さすが変り者のメッカというべきか他にも数ヶ所で場所取りの人材が場所を確保している
ちなみにハルヒが場所取りを立候補したのは「あんただけに今年の1番桜を見せるわけにはいかない、むしろあたしが見るべきよ」というものだった
次の日の昼頃に他の連中が来てドンチャン騒ぎをしたのだがハルヒが「やっぱり花見は満開のときがいいわね」と言ったため本日4月5日にもう一度花見が割り当てられたのだったが
―雨
一言で片付く事象で花見は中止
なぜかSOS団は俺の家に集まっているといった状況になっている
回想モード、終わり
―春休み、終盤
結局俺たちは例の変り者のメッカ、長門のマンションの前の公園で花見をしている
…はずだったのだが、俺の部屋にSOS団の面々が集まっているのはなぜだ?
よし、こういうときはいつものように回想モード、ON
「我がSOS団は春休み、花見をするわよ!」
ハルヒの高らかな宣言を聞き、俺は少し安心した
春といえばハルヒの中では花見らしい
もっと別のものが出てきたらどうしようかと思った
ま、原因はさっきの古泉が付き合う付き合わないとか言っていたせいだろう
春は恋の季節と歌った歌があったからな
「お花見…ですか?」
ハルヒの言葉に北高のアイドルにして俺のエンジェル、そしてSOS団専属メイドの朝比奈さんが反応した
「そ、お花見。言っとくけどアルコールは厳禁だからね!!」
アルコール厳禁を宣言するだけなのに何がそんなに楽しいのか、ハルヒの笑顔は夜空に栄える隅田川の打ち上げ花火のようにまばゆい光を放っていた
「わぁ…あたしお花見って初めてで…すごく楽しみ」
対抗意識を燃やしたわけではないだろうが、それに負けじと朝比奈さんの笑顔も春の花畑を優雅に舞う蝶が羽休めのためにチューリップに静かにとまったかのような清楚な微笑みだった
「このメンバーでお花見とは、楽しくなりそうで僕も楽しみです。」
ハルヒに従順なイエスマン、古泉も相変わらず微笑をうかべたまま反対しようとはしない
もちろん長門はというと寡黙なその視線を分厚い文庫本に注いでるだけだ
と、いうわけでSOS団お花見計画は満場一致で開催が決定された
しかし、春休みに楽しい予定が入ったからといって時間の流れというのはその時間を頭出ししてくれたりはしない
目の前に立ちはだかるでっかい問題をどうにかするのが先だった
そう、すべての学生の不倶戴天の敵
―もうわかるだろう、奴の名は学年末テストだ
どうにかしようとは思っていても結局至極当然のように放課後になると俺はここ、文芸部の部室にいるわけで、それは鳥が空を飛ぶように、魚が水の中を泳ぐように足が部室をめざすのだから仕方ない
このままだと俺がリアルにハルヒの力によってではなく、俺の力不足によって1年生をループすることになるのですべてのプライドを捨て、部室でネットサーフィンしてばかりの我らが団長様に教えを請うことになった
ハルヒはこんなのもわからないのといった表情で、それでいて勉強しているというのにどこか楽しそうで、それでも親切丁寧に俺に勉強を教えてくれた
しかも、教えるのがやたらうまい
俺のバカ頭で、見ただけで頭が痛くなりそうな数式を頭を痛めつつだが、なんとか解けるまでにしてくれた
なるほど、だからあの眼鏡の少年は将来タイムマシンに準ずるものを開発してしまえるのか
だから画家にはならないでくれ
もう二度と俺のモンタージュを書かないように、と思ったのは余談だ
なんやかんやで学年末テストでは学年でとまではいかないがクラスで5本の指に入るくらいの点数を叩きだすことができた
担任の岡部もびっくり仰天だっただろう
ハルヒ様様だ
テストが終わればあとは春休みを待つばかりで俺はwktk…じゃなかった、期待して到来を待った
春休みまでの数日で俺が古泉にボードゲームでかなり勝ち越したことも付け加えておこう
―そして
春休み初日
天気予報で今年の桜開花予想を聞いたハルヒは終業式の日のうちに本日の集合を決めていた
その場で話し合えばいいのにハルヒはいちいちみんなで集まりたいらしい
その点に関しては俺も異論はないが
なので俺がめずらしく一念発起し、たまには俺以外の―そうだな、古泉辺りが理想だが、
他の団員に喫茶店代を出させてやろうと思っても俺含むすべての団員がハルヒの願いによって操られるためいつでも最後に到着するのは俺だ
なぜハルヒが俺におごらせたいのかは謎だが
というわけで結局いつもの喫茶店に俺たちはいるわけだが1ついつもと違うことといえば長門が2つの合宿以外で見せなかった制服ではない私服姿でいることだ
淡い水色のワンピース
その寒涼系のコーディネートはひどく似合っていて何かあるのかと勘ぐった俺の思考を一瞬止めた
しかし、勘ぐったのは束の間、長門から特に特別な表情は読み取れなかったため特異な理由があるわけではなく、
ただたんに長門が‘そうしたかったから’このワンピースを着ていると悟った俺は「よく似合っている」の一言で片付けることにした
ハルヒはというと春というより夏に近い格好で、ノースリーブシャツにキュロットといった服装
愛しのマイエンジェル、朝比奈さんはタートルネックにスリットの入ったロングスカートとこれまた何ともそそる格好をなされていた
蛇足だが古泉はワイシャツにジーパン、そのうえにスプリングコートを羽織っていた
それが道行く女性の視線を集めたのはいうまでもない
「今年の開花予想は4月3日だって。例年より早いらしいけど、地球温暖化の影響によって東京の桜はかなり早く咲くらしいの。
それを考えると騒ぐ程のことではないってテレビでいってたわ」
温暖化云々と地球環境問題のことを聞くと危惧するべきだろうが、俺は正直、ホッとしていた
学校が始まってからの開花だったらどうしようかと考えていたからだ
これもハルヒの力によるものかもしれないのだが
「と、いうわけでキョン、場所取りお願いね、ちゃんと前の晩から徹夜するのよ」
さらりととんでもないことをぬかしたハルヒは穏やかな笑顔で俺を見つめた
仕方なく反論を用意した
「確かに場所取りは重要だがいくらなんでも一人で徹夜はひどいだろう、せめて…」
せめて古泉も道連れにと言い掛けたところでハルヒが口を開いた
「誰も一人で行けなんていってないでしょ?大丈夫」
そのあと、ハルヒは南極に白くまが、北極にペンギンが住み、地球の自転、公転が逆になっても耳を疑うようなことを言った
「あたしもいくわよ」
と、いうわけで何度かの市内探索パトロールを経て、4月2日夜、ハルヒに呼び出された俺は変り者のメッカの例の公園でハルヒとともにブルーシートを広げ、場所を確保している
さすが変り者のメッカというべきか他にも数ヶ所で場所取りの人材が場所を確保している
ちなみにハルヒが場所取りを立候補したのは「あんただけに今年の1番桜を見せるわけにはいかない、むしろあたしが見るべきよ」というものだった
次の日の昼頃に他の連中が来てドンチャン騒ぎをしたのだがハルヒが「やっぱり花見は満開のときがいいわね」と言ったため本日4月5日にもう一度花見が割り当てられたのだったが
―雨
一言で片付く事象で花見は中止
なぜかSOS団は俺の家に集まっているといった状況になっている
回想モード、終わり
159: 2006/08/02(水) 18:36:42.13 ID:5Gv0R901O
第2章
雨で中止になった第2回SOS団花見大会だが、ハルヒはそれほど不機嫌ではなかった
それは今、俺の部屋で格闘ゲーム大会を催し、長門と決勝戦を繰り広げる様子や古泉の話からも明らかだ
「そこぉ!」
ハルヒの超必が決まり、決勝戦の幕が閉じる
ハルヒが勝ったという結果を残して
長門はゲームをするのは初めてと言っていたが、慣れるにしたがってどんどんうまくなった
それでもハルヒにはかなわない
どうでもいいが古泉は最下位だった
ボードゲームも弱いがコンピューターゲームも弱いらしい
「簡単すぎるわね、もっと難しいゲームはないの?」
ひとしきり優勝にはしゃいだあと勝ち誇ったようにハルヒが言った
「ソフトならそこの棚に入ってる。好きに選べ」
ハルヒがソフト探しに夢中になっている隙をみて俺は長門に耳打ちした
「この雨はいつやむかわかるか?」
すると長門も小声でこたえてくれた
「不明、ただしこの雨により桜の花が落ちる可能性は92.7%」
俺は頭をかいた
やばいな、このままだと第2回SOS団花見大会が中止になっちまう
別にこうやって騒いでるのも楽しいのだが、ハルヒが閉鎖空間を生み出さないとも限らない
ただやたらご機嫌なハルヒをみているとそれも無駄な心配に思えてくるから不思議だ
まぁ、その後も特筆すべきことがらもなく、急遽開催された第1回SOS団ゲーム大会もハルヒの万能っぷりを見せ付けただけで幕を閉じた
帰りぎわハルヒは
「明日は晴れたら公園で花見、雨だったら部室に集合ね」
と言ってANGIE DAVIESのSUPERMANを歌いながら帰っていった
―そして翌日
と、いきたいところだったのだが、正直そうもいかないらしい
妹が風呂を知らせに来た午後7時半、ハルヒから電話がかかってきた
「キョン、何も言わずに今すぐ例の公園に来なさい、いいわね!」
相変わらず一方的に話すだけ話して切る奴だ
仕方なく俺は家を出た
昼に降っていた雨も止んで、空を見れば朧気ながら月が顔を出していた
しかし、その公園でたとえノストラダムスでも予言できないようなことが起きようとしていたなんて、いったい誰が予想できただろうか
公園に着いた俺をハルヒの背中が迎えてくれた
桜の花は昼の豪雨によってほぼ散っていたが、残った微かな花により、儚げな美しさを醸し出していた
俺はハルヒの背中に話し掛ける
「よお、待ったか?」
「わかんない」
ハルヒは後ろをむいたまま首を横に振った
「すごく待った気もするし、すぐだった気もする」
わけのわからないことを言い出した
「ねぇ、あんた選択授業なんにした?」
これは本当にいつものハルヒなんだろうか
その声はまるでつついたら壊れる脆いガラス細工のようだった
「多分、お前と同じだ。私立文系受験の…」
「違うの!!」
―悲愴
そんな感情を込めた叫びに思わず俺の気持ちが後退りをする
不意に月が雲に隠れ、まわりの家の灯り、公園の街頭、すべての明るさが陰りを見せたような錯覚に陥った
そう、それはまるで閉鎖空間に迷い込んだような…
「あたしは…理系を選んだ」
ぽつりと出た、蝶の羽音のような声は一瞬、俺の思考を停止させた
俺は考えていた
2年になっても俺はハルヒの席の前でシャーペンでつつかれたり、その笑顔を見ながら過ごすことになるだろう、と
ただ、逆に北高は2年のクラス替えを理系、文系に分けてやる
だから頭のいいハルヒが理系にいってもそれはそれで別にそれでもかまわないと思っていたが
―今だから正直に言おう
俺はそうじゃなければいやだ
そこにあって当然のものだから油断していた
ハルヒの席の前に俺以外の人間がいるなんて俺の中ではありえない
空気はそこにあって当然のものだが、空気がなくなると人間は窒息死してしまう
そんな例えがわかりやすいだろうか
とにかく、その発言を聞いた俺の目の前は真っ暗になったのだ
そうだな、この瞬間に閉鎖空間にハルヒと閉じ込められたなら、俺はこっちの世界に戻ろうなんて考えなかっただろうぐらいに
しばらくそんなことが頭の中を縦横無尽に駆け巡っているとその沈黙をどう受け取ったか、ハルヒが口を開く
「あんたが文系を選ぶことは知ってた。その時は別に部室で会えるし、全然構わないと思ってた、だけど…今の気持ちはそうじゃない!」
ハルヒがゆっくり振り返る、その目は、顔は、涙に濡れていた
「キョン、あたしはあんたと一緒にいたい!離れたくない!精神病でも何でもいい!あんたが好きなの!」
張り上げた涙声は魂の叫びとなって静寂を保つ夜の闇に響く
普遍的な行為を嫌うハルヒが、こんなに一般的な告白をしなければならないほどこいつは思い詰めていたのか
そこで俺は考えた
俺にとっての
―涼宮ハルヒ
の存在を
クラスメイト?団長?
一緒にいる理由は?
仕方なく?おもしろそうだから?朝比奈さんを守るため?
すべてのハテナマークをふりきり、一つの答えにたどり着いた
―俺は涼宮ハルヒに惹かれている
この状況に合う言葉を口に出すなら
「俺も…ハルヒが好きだ」
考えよりも先に言葉が出ていた
それに気付いてからも俺に後悔はない
これは心のままの気持ちだから
「…ありがとう」
ハルヒに言われた初めてのありがとうは俺の心を暖かくし、泣きじゃくるハルヒを抱き締めるのに十分な理由をくれた
―ただ俺は知らなかったんだ
この出来事が明日以降の、サプライズ具合では今ほどではないが、しかし非常に厄介な出来事の引き金だったことを
雨で中止になった第2回SOS団花見大会だが、ハルヒはそれほど不機嫌ではなかった
それは今、俺の部屋で格闘ゲーム大会を催し、長門と決勝戦を繰り広げる様子や古泉の話からも明らかだ
「そこぉ!」
ハルヒの超必が決まり、決勝戦の幕が閉じる
ハルヒが勝ったという結果を残して
長門はゲームをするのは初めてと言っていたが、慣れるにしたがってどんどんうまくなった
それでもハルヒにはかなわない
どうでもいいが古泉は最下位だった
ボードゲームも弱いがコンピューターゲームも弱いらしい
「簡単すぎるわね、もっと難しいゲームはないの?」
ひとしきり優勝にはしゃいだあと勝ち誇ったようにハルヒが言った
「ソフトならそこの棚に入ってる。好きに選べ」
ハルヒがソフト探しに夢中になっている隙をみて俺は長門に耳打ちした
「この雨はいつやむかわかるか?」
すると長門も小声でこたえてくれた
「不明、ただしこの雨により桜の花が落ちる可能性は92.7%」
俺は頭をかいた
やばいな、このままだと第2回SOS団花見大会が中止になっちまう
別にこうやって騒いでるのも楽しいのだが、ハルヒが閉鎖空間を生み出さないとも限らない
ただやたらご機嫌なハルヒをみているとそれも無駄な心配に思えてくるから不思議だ
まぁ、その後も特筆すべきことがらもなく、急遽開催された第1回SOS団ゲーム大会もハルヒの万能っぷりを見せ付けただけで幕を閉じた
帰りぎわハルヒは
「明日は晴れたら公園で花見、雨だったら部室に集合ね」
と言ってANGIE DAVIESのSUPERMANを歌いながら帰っていった
―そして翌日
と、いきたいところだったのだが、正直そうもいかないらしい
妹が風呂を知らせに来た午後7時半、ハルヒから電話がかかってきた
「キョン、何も言わずに今すぐ例の公園に来なさい、いいわね!」
相変わらず一方的に話すだけ話して切る奴だ
仕方なく俺は家を出た
昼に降っていた雨も止んで、空を見れば朧気ながら月が顔を出していた
しかし、その公園でたとえノストラダムスでも予言できないようなことが起きようとしていたなんて、いったい誰が予想できただろうか
公園に着いた俺をハルヒの背中が迎えてくれた
桜の花は昼の豪雨によってほぼ散っていたが、残った微かな花により、儚げな美しさを醸し出していた
俺はハルヒの背中に話し掛ける
「よお、待ったか?」
「わかんない」
ハルヒは後ろをむいたまま首を横に振った
「すごく待った気もするし、すぐだった気もする」
わけのわからないことを言い出した
「ねぇ、あんた選択授業なんにした?」
これは本当にいつものハルヒなんだろうか
その声はまるでつついたら壊れる脆いガラス細工のようだった
「多分、お前と同じだ。私立文系受験の…」
「違うの!!」
―悲愴
そんな感情を込めた叫びに思わず俺の気持ちが後退りをする
不意に月が雲に隠れ、まわりの家の灯り、公園の街頭、すべての明るさが陰りを見せたような錯覚に陥った
そう、それはまるで閉鎖空間に迷い込んだような…
「あたしは…理系を選んだ」
ぽつりと出た、蝶の羽音のような声は一瞬、俺の思考を停止させた
俺は考えていた
2年になっても俺はハルヒの席の前でシャーペンでつつかれたり、その笑顔を見ながら過ごすことになるだろう、と
ただ、逆に北高は2年のクラス替えを理系、文系に分けてやる
だから頭のいいハルヒが理系にいってもそれはそれで別にそれでもかまわないと思っていたが
―今だから正直に言おう
俺はそうじゃなければいやだ
そこにあって当然のものだから油断していた
ハルヒの席の前に俺以外の人間がいるなんて俺の中ではありえない
空気はそこにあって当然のものだが、空気がなくなると人間は窒息死してしまう
そんな例えがわかりやすいだろうか
とにかく、その発言を聞いた俺の目の前は真っ暗になったのだ
そうだな、この瞬間に閉鎖空間にハルヒと閉じ込められたなら、俺はこっちの世界に戻ろうなんて考えなかっただろうぐらいに
しばらくそんなことが頭の中を縦横無尽に駆け巡っているとその沈黙をどう受け取ったか、ハルヒが口を開く
「あんたが文系を選ぶことは知ってた。その時は別に部室で会えるし、全然構わないと思ってた、だけど…今の気持ちはそうじゃない!」
ハルヒがゆっくり振り返る、その目は、顔は、涙に濡れていた
「キョン、あたしはあんたと一緒にいたい!離れたくない!精神病でも何でもいい!あんたが好きなの!」
張り上げた涙声は魂の叫びとなって静寂を保つ夜の闇に響く
普遍的な行為を嫌うハルヒが、こんなに一般的な告白をしなければならないほどこいつは思い詰めていたのか
そこで俺は考えた
俺にとっての
―涼宮ハルヒ
の存在を
クラスメイト?団長?
一緒にいる理由は?
仕方なく?おもしろそうだから?朝比奈さんを守るため?
すべてのハテナマークをふりきり、一つの答えにたどり着いた
―俺は涼宮ハルヒに惹かれている
この状況に合う言葉を口に出すなら
「俺も…ハルヒが好きだ」
考えよりも先に言葉が出ていた
それに気付いてからも俺に後悔はない
これは心のままの気持ちだから
「…ありがとう」
ハルヒに言われた初めてのありがとうは俺の心を暖かくし、泣きじゃくるハルヒを抱き締めるのに十分な理由をくれた
―ただ俺は知らなかったんだ
この出来事が明日以降の、サプライズ具合では今ほどではないが、しかし非常に厄介な出来事の引き金だったことを
160: 2006/08/02(水) 18:36:52.82 ID:ksxT7gBU0
翌日
窓越しに聞こえる雨の音に起こされた俺は、予定時間より早起きしてしまったことを嘆いていた
しかし、覚めてしまったものは仕方なく、もう一度寝るのも忍びない、というかもう一度寝るほどの時間もない
…と、それは言い訳か
実際は昨日の出来事を思い出した頭の中がお花畑でチーパッパなのだ
―涼宮ハルヒと付き合うという事実
その喜びが、無尽蔵に押し寄せて実は昨夜もなかなか眠れなかった
思わず、今日の朝も早起きしてしまった、ということだ
まぁ気を取り直して、外は雨…部室か
ちゃっちゃと着替えて早めに行ってみようか
ハルヒに少しでも早く会えるかもしれない
とかそんなことを考え、心とは裏腹に降りしきる雨なんか気にも止めなかったのだが、今思えば
―雨はすべてを物語っていたのかもしれない
そして浮き浮きしながらも淡々と準備を終わらせた俺はとっとと家を出る
久しぶりに登る坂道を越え、文芸部室に到着した
部屋に入れば…なんと誰もいない、もちろんハルヒもいない。残念
大きな期待が裏切られた時というのはその分落胆も大きいもので無気力にイスに座る
しばらく何をするでもなく暇を持て余していると最初の登場人物
俺はハルヒを期待したのだが古泉だった
最大級の裏切りだ
「おはようございます、あなたが最初なんて珍しいですね」
諸事情で早起きしてな
「おやおや、遠足前の小学生みたいですね、そんなに涼宮さんにあえるのがうれしいんですか?」
昨日も会ってるだろうが、おまえはどこまで知っているんだ?
「どこまで…とは?涼宮さんと何かあったんですか?ぜひお聞かせ願いたいですね」
…しまった、つい口が滑った
気分が浮かれたいたのをいいわけにさせてくれ
「それよりも古泉、おまえはハルヒのスペシャリストじゃなかったのか?」
この言葉で話題をそらせれば御の字だ
「昨夜から妙に浮かれている、ぐらいしか僕にはわかりませんよ。それが負の感情じゃないから、こうやってあなたをいじれるんじゃないですか」
いじるとか言うな、気分が悪い
さて、どうやってごまかそうか、そんなことを考えていたのだが
「あ、おはようございますぅ」
とわが麗しの…
ハルヒと付き合うことになっても可愛いものは可愛い、そうだろ?
改めて、麗しの朝比奈さんのご登場である
「あ、そういえばキョンくんおめでとう、だよね?」
ちょっと待ってください朝比奈さん
あなたは未来人であってこの古泉のように超能力者ではないはずなのに、いや古泉も超能力で心が読めるわけではないですが、どうして俺の心を読んでしまうのです?
そんなに今の俺はわかりやすい顔をしていますか、そうですか
「いえ、そうじゃなくてこれは…」
とまで言って朝比奈さんは言葉をつまらせた
そして
「ごめんなさい、禁則事項みたいです」
と続けた
いったい何が禁則に当てはまったのか?
ハルヒと俺が付き合うのはこの時間平面上の必然だったのだろうか?
まあ、何でもいいか
朝比奈さんはこれから着替えるだろう、そう思って古泉を伴い、部屋を出ようとしたのだが、朝比奈さんに袖を捉まれる
なんだ、どういうことだ?
「キョン君ごめんなさい、ちょっとだけ…ね?」
と、首を傾けた朝比奈さんはとても可愛かった
…ハルヒに聞かれたらどうなるか、果てしなく恐怖だ
その仕草に気をとられそうになるが、朝比奈さんが時計を気にした一瞬を見逃さなかった
この感じは前にハカセ君を助けたとき…
また、前みたいなことがあるのか?
でも、未来人の直接干渉はタブーって言ってなかったですか?朝比奈さん
「あ、朝比奈さん?」
とりあえず何かを読み取ってしまった俺だが何をするのかまではわからない
中途半端な状況で俺の声は戸惑っていた
その声で俺の心境を読み取ったか、朝比奈さんは堂々と時計を見始めた
「ごめんなさい、キョン君、強制コードなの」
嗚呼、そんな潤んだ眼で上目遣いを…
「それはどういう―」
俺の言葉は途中で止められた
なんと朝比奈さんが俺に…
心の準備はいいか?
朝比奈さんが俺にキスをしてきたのである
…そこ、嫉妬していいぞ
ちょっとこんなとこハルヒにみられたら…
その時、俺は本当にこう思ったのか思わなかったのか
それほど、ぴったりのタイミングでドアが轟音をたてたのだ
「ヤッホー!み…」
轟音の先にいた人物、要するにハルヒだが
ハルヒは言葉途中で絶句していた
当然か、俺が入ってきたときにハルヒが古泉とキスしてたら俺も絶句する
やばいな、これは死んだかもしれん
美少女に
振り回されて
オチはこれ
―俺、辞世の句
なんてやってる俺の予想を裏切り…
ハルヒは目に涙を目一杯ため、駆け出して行ってしまった
しかし、あの朝比奈さん(大)の言っていた「ちゅーまでなら許す」っていうのがいやはや、規定事項だったとはね
…いや、落ち着いている場合じゃない
「ハルヒっ!!!!」
俺は走りだしていた
一番大切な人の笑顔を守るために
部室を出る時に朝比奈さんが「ウフフ、うまくいきそうです」といっていたのが聞こえた気がする
散々誰もいない学校を走り回ってやっと中庭で座り込んで雨の中泣いているハルヒをみつけた
やばい、可愛いすぎて理性が吹っ飛びそうだ
「ハルヒ!!!」
俺は無我夢中で駆け寄った
ハルヒは俺の声に気付いたのか、顔をあげると眉を釣り上げこう叫んだ
「キョンのバカッ!あっち行け!」
泣いたり怒ったり大変だなハルヒ
…と俺のせいか
しかし、あれだけのことをしたというのに頭ん中はやけに冷静だ
まぁ、それもそうか
あれは浮気ではなく事故なのだから
雨に濡れているのも原因の一つかね
「ホントは前からみくるちゃんと付き合ってて、あたしを弄んだだけなんでしょ!」
冷静な思考回路を巡らしてる間にハルヒがまくしたてていた
うーん…人間って不思議なもので、心が冷静でも体が勝手に動くことがあるんだな
ハルヒを抱き締めていた
「離せ!バカ!!」
叫びながらハルヒは俺のボディーに的確なブローを叩き込んでくる
世界を狙う気かお前は
ここで俺が保証する、難なく獲れるよ、世界
なんて言っている場合ではなく、ブラックアウトしそうになる意識をなんとか保ちながら、痛みに耐えていた
今は耐えるんだ、耐えて耐えて耐え抜けば、そのうち痛みに慣れる
だが、このままだと慣れる前にお星様が見える
仕方ない弁解を開始しようか
「ハルヒ、あれは事故なんだ」
言ってから俺はバカなことを言ったと思った
どうしたら事故であんなことになる?
「…事故?」
俺の腕の中でハルヒが涙目の上目遣いという究極のコンボで俺を見る
…って信じたのか?ハルヒは
とりあえず、続きを話させてくれるようだ
「ああ、何を思ったか、朝比奈さんが急にキスしてきたんだ、何が起きたか認識できなくてな、その瞬間にお前が入ってきた、というわけだ」
事実をありのままに語った以上、これを華麗にスルーされたら俺は言葉を失ってしまう
「…え?…なんで…みくるちゃんが…?」
それは禁則事項らしい
なので俺にわかるわけもなく、このキスが何をもたらすのか全然わからない
「さぁな、全然わからん」
古泉がいつもやるように肩をすくめてみせた
ハルヒも少し落ち着いてきたし、ちょっとぐらいユーモアを入れてもいいだろう
「…?」
謎である旨を伝えるとハルヒは考えだした
考えて出てくるのならフロイト先生もびっくりだ
しばらくハルヒはうんうんうなっていたが、なぞなぞの答えを聞いたときのような顔をして、こう話した
「なんだ、やっぱりキョンのせいじゃない」
ホワイ??なぜに??
何か俺、朝比奈さんにしたのか??
そんな疑問が顔にでていたのだろうか、ハルヒがしたり顔で続けた
「と、とにかくあんたが悪いんだから罰ゲームよ」
やれやれ、自分が悪い理由を知らないまま罰ゲームとはね
まぁ、それでハルヒの機嫌が治るならやすいものか
「何をすればいいんだ?」
できるだけ穏やかな、優しい笑顔で話し掛けた
俺だって早く仲直りしたい
「あ、あたしとキスしなさい」
顔を真っ赤にしたハルヒがそこにいた
「は?」
罰ゲームらしからぬ罰ゲームに思わず聞き返してしまった
「な、何よ、みくるちゃんとはキスしてあたしとはキスできないっていうの?」
そう言ったハルヒの顔にはいくばくかの焦燥が浮かんでいた
言っておくが俺は朝比奈さんとキスしたんじゃない
朝比奈さんにキスされたんだ
「ハルヒ、悪いが、罰ゲームは別のにしてくれ」
何で俺がこんなことを言ったかって?
すぐにわかるさ
「…え?」
ハルヒの顔に浮かんでいた焦燥が悲哀に変わる
かまわず俺は続ける
「俺は今からハルヒにキスをする、それは俺がハルヒにキスしたいからであって罰ゲームだから仕方なく、ではないんだ」
言いながらハルヒの濡れた髪を撫でる
それを聞いたハルヒは滴る雫など吹き飛ばすような太陽の笑顔になった
「キョン、そこまで言ったからには生半可なキスじゃ許せないわよ」
俺は真っすぐ俺を見据えるハルヒの瞳に吸い込まれそうだった、いや吸い込まれていた
次の瞬間には俺の口唇はハルヒの口唇と重なり合っていた
お互いの存在を確かめ合うような永い、深いキス
閉鎖空間を入れると2回目だが、お互いの気持ちが重なり合い、お互いの口唇を重ね合う、現実世界でのファーストキスだ
雨の中のキスなんてドラマティックこの上ない
そんな自分とハルヒに酔い痴れながらそっと口唇を離した
ハルヒはものたりなさそうな顔で、それでいて恥ずかしそうな顔をしていた
正直な話、俺も少し物足りないのだが、今は優先すべき事柄がある
「ハルヒ、部室に戻ろう」
そうなのだ、なんだかんだいろんなものを投げっぱなしにしてハルヒを追い掛けたからいつまでもここにいるわけにはいかない
ハルヒは不満そうな顔をしていたが、俺が手を差し出すとそれを握り黙ってついてきた
部室への道程は二人とも無言だった
だが居心地の悪さは感じない
お互いがお互いの存在を確かめるための無言なのだ
幸せいっぱいの俺たちだったが、ハルヒのまわりを彩る‘不思議’の固まり達が、そしてハルヒ自身が平穏な幸せを提供してくれるとは思えない
やれやれ、これ以上の厄介はさすがに勘弁だが、ハルヒとなら乗り越えられる気がするな
窓越しに聞こえる雨の音に起こされた俺は、予定時間より早起きしてしまったことを嘆いていた
しかし、覚めてしまったものは仕方なく、もう一度寝るのも忍びない、というかもう一度寝るほどの時間もない
…と、それは言い訳か
実際は昨日の出来事を思い出した頭の中がお花畑でチーパッパなのだ
―涼宮ハルヒと付き合うという事実
その喜びが、無尽蔵に押し寄せて実は昨夜もなかなか眠れなかった
思わず、今日の朝も早起きしてしまった、ということだ
まぁ気を取り直して、外は雨…部室か
ちゃっちゃと着替えて早めに行ってみようか
ハルヒに少しでも早く会えるかもしれない
とかそんなことを考え、心とは裏腹に降りしきる雨なんか気にも止めなかったのだが、今思えば
―雨はすべてを物語っていたのかもしれない
そして浮き浮きしながらも淡々と準備を終わらせた俺はとっとと家を出る
久しぶりに登る坂道を越え、文芸部室に到着した
部屋に入れば…なんと誰もいない、もちろんハルヒもいない。残念
大きな期待が裏切られた時というのはその分落胆も大きいもので無気力にイスに座る
しばらく何をするでもなく暇を持て余していると最初の登場人物
俺はハルヒを期待したのだが古泉だった
最大級の裏切りだ
「おはようございます、あなたが最初なんて珍しいですね」
諸事情で早起きしてな
「おやおや、遠足前の小学生みたいですね、そんなに涼宮さんにあえるのがうれしいんですか?」
昨日も会ってるだろうが、おまえはどこまで知っているんだ?
「どこまで…とは?涼宮さんと何かあったんですか?ぜひお聞かせ願いたいですね」
…しまった、つい口が滑った
気分が浮かれたいたのをいいわけにさせてくれ
「それよりも古泉、おまえはハルヒのスペシャリストじゃなかったのか?」
この言葉で話題をそらせれば御の字だ
「昨夜から妙に浮かれている、ぐらいしか僕にはわかりませんよ。それが負の感情じゃないから、こうやってあなたをいじれるんじゃないですか」
いじるとか言うな、気分が悪い
さて、どうやってごまかそうか、そんなことを考えていたのだが
「あ、おはようございますぅ」
とわが麗しの…
ハルヒと付き合うことになっても可愛いものは可愛い、そうだろ?
改めて、麗しの朝比奈さんのご登場である
「あ、そういえばキョンくんおめでとう、だよね?」
ちょっと待ってください朝比奈さん
あなたは未来人であってこの古泉のように超能力者ではないはずなのに、いや古泉も超能力で心が読めるわけではないですが、どうして俺の心を読んでしまうのです?
そんなに今の俺はわかりやすい顔をしていますか、そうですか
「いえ、そうじゃなくてこれは…」
とまで言って朝比奈さんは言葉をつまらせた
そして
「ごめんなさい、禁則事項みたいです」
と続けた
いったい何が禁則に当てはまったのか?
ハルヒと俺が付き合うのはこの時間平面上の必然だったのだろうか?
まあ、何でもいいか
朝比奈さんはこれから着替えるだろう、そう思って古泉を伴い、部屋を出ようとしたのだが、朝比奈さんに袖を捉まれる
なんだ、どういうことだ?
「キョン君ごめんなさい、ちょっとだけ…ね?」
と、首を傾けた朝比奈さんはとても可愛かった
…ハルヒに聞かれたらどうなるか、果てしなく恐怖だ
その仕草に気をとられそうになるが、朝比奈さんが時計を気にした一瞬を見逃さなかった
この感じは前にハカセ君を助けたとき…
また、前みたいなことがあるのか?
でも、未来人の直接干渉はタブーって言ってなかったですか?朝比奈さん
「あ、朝比奈さん?」
とりあえず何かを読み取ってしまった俺だが何をするのかまではわからない
中途半端な状況で俺の声は戸惑っていた
その声で俺の心境を読み取ったか、朝比奈さんは堂々と時計を見始めた
「ごめんなさい、キョン君、強制コードなの」
嗚呼、そんな潤んだ眼で上目遣いを…
「それはどういう―」
俺の言葉は途中で止められた
なんと朝比奈さんが俺に…
心の準備はいいか?
朝比奈さんが俺にキスをしてきたのである
…そこ、嫉妬していいぞ
ちょっとこんなとこハルヒにみられたら…
その時、俺は本当にこう思ったのか思わなかったのか
それほど、ぴったりのタイミングでドアが轟音をたてたのだ
「ヤッホー!み…」
轟音の先にいた人物、要するにハルヒだが
ハルヒは言葉途中で絶句していた
当然か、俺が入ってきたときにハルヒが古泉とキスしてたら俺も絶句する
やばいな、これは死んだかもしれん
美少女に
振り回されて
オチはこれ
―俺、辞世の句
なんてやってる俺の予想を裏切り…
ハルヒは目に涙を目一杯ため、駆け出して行ってしまった
しかし、あの朝比奈さん(大)の言っていた「ちゅーまでなら許す」っていうのがいやはや、規定事項だったとはね
…いや、落ち着いている場合じゃない
「ハルヒっ!!!!」
俺は走りだしていた
一番大切な人の笑顔を守るために
部室を出る時に朝比奈さんが「ウフフ、うまくいきそうです」といっていたのが聞こえた気がする
散々誰もいない学校を走り回ってやっと中庭で座り込んで雨の中泣いているハルヒをみつけた
やばい、可愛いすぎて理性が吹っ飛びそうだ
「ハルヒ!!!」
俺は無我夢中で駆け寄った
ハルヒは俺の声に気付いたのか、顔をあげると眉を釣り上げこう叫んだ
「キョンのバカッ!あっち行け!」
泣いたり怒ったり大変だなハルヒ
…と俺のせいか
しかし、あれだけのことをしたというのに頭ん中はやけに冷静だ
まぁ、それもそうか
あれは浮気ではなく事故なのだから
雨に濡れているのも原因の一つかね
「ホントは前からみくるちゃんと付き合ってて、あたしを弄んだだけなんでしょ!」
冷静な思考回路を巡らしてる間にハルヒがまくしたてていた
うーん…人間って不思議なもので、心が冷静でも体が勝手に動くことがあるんだな
ハルヒを抱き締めていた
「離せ!バカ!!」
叫びながらハルヒは俺のボディーに的確なブローを叩き込んでくる
世界を狙う気かお前は
ここで俺が保証する、難なく獲れるよ、世界
なんて言っている場合ではなく、ブラックアウトしそうになる意識をなんとか保ちながら、痛みに耐えていた
今は耐えるんだ、耐えて耐えて耐え抜けば、そのうち痛みに慣れる
だが、このままだと慣れる前にお星様が見える
仕方ない弁解を開始しようか
「ハルヒ、あれは事故なんだ」
言ってから俺はバカなことを言ったと思った
どうしたら事故であんなことになる?
「…事故?」
俺の腕の中でハルヒが涙目の上目遣いという究極のコンボで俺を見る
…って信じたのか?ハルヒは
とりあえず、続きを話させてくれるようだ
「ああ、何を思ったか、朝比奈さんが急にキスしてきたんだ、何が起きたか認識できなくてな、その瞬間にお前が入ってきた、というわけだ」
事実をありのままに語った以上、これを華麗にスルーされたら俺は言葉を失ってしまう
「…え?…なんで…みくるちゃんが…?」
それは禁則事項らしい
なので俺にわかるわけもなく、このキスが何をもたらすのか全然わからない
「さぁな、全然わからん」
古泉がいつもやるように肩をすくめてみせた
ハルヒも少し落ち着いてきたし、ちょっとぐらいユーモアを入れてもいいだろう
「…?」
謎である旨を伝えるとハルヒは考えだした
考えて出てくるのならフロイト先生もびっくりだ
しばらくハルヒはうんうんうなっていたが、なぞなぞの答えを聞いたときのような顔をして、こう話した
「なんだ、やっぱりキョンのせいじゃない」
ホワイ??なぜに??
何か俺、朝比奈さんにしたのか??
そんな疑問が顔にでていたのだろうか、ハルヒがしたり顔で続けた
「と、とにかくあんたが悪いんだから罰ゲームよ」
やれやれ、自分が悪い理由を知らないまま罰ゲームとはね
まぁ、それでハルヒの機嫌が治るならやすいものか
「何をすればいいんだ?」
できるだけ穏やかな、優しい笑顔で話し掛けた
俺だって早く仲直りしたい
「あ、あたしとキスしなさい」
顔を真っ赤にしたハルヒがそこにいた
「は?」
罰ゲームらしからぬ罰ゲームに思わず聞き返してしまった
「な、何よ、みくるちゃんとはキスしてあたしとはキスできないっていうの?」
そう言ったハルヒの顔にはいくばくかの焦燥が浮かんでいた
言っておくが俺は朝比奈さんとキスしたんじゃない
朝比奈さんにキスされたんだ
「ハルヒ、悪いが、罰ゲームは別のにしてくれ」
何で俺がこんなことを言ったかって?
すぐにわかるさ
「…え?」
ハルヒの顔に浮かんでいた焦燥が悲哀に変わる
かまわず俺は続ける
「俺は今からハルヒにキスをする、それは俺がハルヒにキスしたいからであって罰ゲームだから仕方なく、ではないんだ」
言いながらハルヒの濡れた髪を撫でる
それを聞いたハルヒは滴る雫など吹き飛ばすような太陽の笑顔になった
「キョン、そこまで言ったからには生半可なキスじゃ許せないわよ」
俺は真っすぐ俺を見据えるハルヒの瞳に吸い込まれそうだった、いや吸い込まれていた
次の瞬間には俺の口唇はハルヒの口唇と重なり合っていた
お互いの存在を確かめ合うような永い、深いキス
閉鎖空間を入れると2回目だが、お互いの気持ちが重なり合い、お互いの口唇を重ね合う、現実世界でのファーストキスだ
雨の中のキスなんてドラマティックこの上ない
そんな自分とハルヒに酔い痴れながらそっと口唇を離した
ハルヒはものたりなさそうな顔で、それでいて恥ずかしそうな顔をしていた
正直な話、俺も少し物足りないのだが、今は優先すべき事柄がある
「ハルヒ、部室に戻ろう」
そうなのだ、なんだかんだいろんなものを投げっぱなしにしてハルヒを追い掛けたからいつまでもここにいるわけにはいかない
ハルヒは不満そうな顔をしていたが、俺が手を差し出すとそれを握り黙ってついてきた
部室への道程は二人とも無言だった
だが居心地の悪さは感じない
お互いがお互いの存在を確かめるための無言なのだ
幸せいっぱいの俺たちだったが、ハルヒのまわりを彩る‘不思議’の固まり達が、そしてハルヒ自身が平穏な幸せを提供してくれるとは思えない
やれやれ、これ以上の厄介はさすがに勘弁だが、ハルヒとなら乗り越えられる気がするな
161: 2006/08/02(水) 18:38:52.82 ID:b/FYlfu0O
ゆっくりと扉を開けて俺たちは部室に戻ってきた
中ではそれぞれがそれぞれの指定席に座り、…朝比奈さんは立っているのが指定に近い感じがするのだが
いつもどおりの、古泉は微笑、長門は無表情、朝比奈さんは怯えた表情をしていた
…あれ?いつもどおりじゃない人間が一人いるな、たまになら見るが、朝比奈さんは何に怯えているんだ?
…あぁそうか、そうだよな
朝比奈さんは俺にキスしたんだった
そりゃ、ハルヒに何されるかわかったもんじゃない
ま、予想どおりといったところだろうか、ハルヒが朝比奈さんの方を向いて話し掛けた
「みくるちゃん」
それは普段のハルヒからは想像しがたい優しい声だった
まるで母親が自分の子供をあやすような
それでも朝比奈さんはびくっとしていたがな
「ありがとう、ね」
いったい、何がありがとうなんだ?
誰か俺に説明してくれ
…あとで古泉にでも聞くか
それを受けた朝比奈さんは溢れんばかりの満面の笑みで元気よく
「はい!」
とだけ言った
そのあとだが、恐らく今回は大体を知っていたであろう未来人・朝比奈さんが持っていたバスタオルで体を拭いたあとハルヒは朝比奈さんの、俺は古泉の持ってきていた着替えに着替え、団活を開始した
この準備の良さをみると、古泉も知ってやがったな
八つ当りとは言わないが、いつもどおり、俺は古泉とのボードゲームに連勝し、長門は本を読みふけ、朝比奈さんは給仕にいそしみ、ハルヒはネットサーフィンに興じている
対戦中、何度かハルヒと目が合ったのは心にしまっておこう
やはり、いつもどおり長門が本を閉じる音で部活が終わる
なんかいつもどおりの一日だったな、確かに世界は急に色を変えないよな
それが変わっていたら8割方ハルヒのせいだ
部室をでたあとハルヒが手を握ってきた
俺は少し慌てたがもう3人とも知っているんだろうな、と考えそのままにした
5人で歩く帰り道、いつもは先頭にいるハルヒは一番後ろの俺の横で少しはにかみながら歩いている
代わりに先頭を行くのはハードカバーを文庫本に持ちかえ、それを読みながら歩いている長門で、その後ろで古泉と朝比奈さんが談笑しながら歩いている
幸いにも雨は止み、控えめに赤い太陽が顔を出している
横を見れば顔を朱に染めたハルヒがちゃんといる
俺はハルヒに耳打ちしていた
「そっと抜け出さないか?二人で」
ハルヒは一瞬驚いたような顔をしたが、すぐに100Wの笑顔に戻すと大きく頷いた
長門にはバレていただろうが、いやもしかしたら全員にバレていたかもしれない
前の3人に気付かれないよう、こっそり脇道にそれた
そのまま歩いて辿り着いたのは、この春休みに思い出深い、花見と、ハルヒの告白と…長門のマンションの近くの公園
桜達は、すでに花びらを落とし、早くも来たるべき夏に向けて準備をしていた
しかし、抜け出してきたのはいいが、いったい何をしたらいいんだろうな
とりあえず、ラブラブしたらいいんだろうが、そんな経験がない俺には何をもってラブラブというのかわからん
「おっ!キョン君にハルにゃんじゃないかっ!!」
突如後ろから聞き慣れた元気な声が聞こえる
振りむけばやはりというか鶴屋さんだった
「手なんかつないじゃって、ラブラブだね!お姉さん少し羨ましいにょろよ?」
ハルヒは照れている
顔が真っ赤だ
恐らく、冷静に観察してる俺も真っ赤だろう
「ええ、付き合うことになったんです」
それでも俺は某3倍早いMSのように赤いであろう顔に押さえ込まれないよう、できるだけ冷静を保って言葉を出す
しかし、それも無駄な努力だったようで鶴屋さんは腹を抱えて大笑いしていた
「あっはっはっは!…そんな真っ赤な顔で…ぷぷ…真面目に言われてもねぇ…はっはっは…まぁ末長くお幸せに!これは鶴にゃんからの贈り物っさ!」
鶴屋さんはそう言って何かを俺の手に握らせる
「ハルにゃんを泣かせたらあたしが承知しないよ~!」
走りさりながら手を振る鶴屋さんを見送ったあと俺は手の中のものを確認した
それを見た俺は苦笑する以外に選択肢はなく、覗き込んできたハルヒは顔をさらに赤くしていた
鶴屋さんはなぜ、こんなものを持ち歩いてあるのだろうか
俺はその0.03㎜の贈り物を使う日がいつ来るか考えていた
中ではそれぞれがそれぞれの指定席に座り、…朝比奈さんは立っているのが指定に近い感じがするのだが
いつもどおりの、古泉は微笑、長門は無表情、朝比奈さんは怯えた表情をしていた
…あれ?いつもどおりじゃない人間が一人いるな、たまになら見るが、朝比奈さんは何に怯えているんだ?
…あぁそうか、そうだよな
朝比奈さんは俺にキスしたんだった
そりゃ、ハルヒに何されるかわかったもんじゃない
ま、予想どおりといったところだろうか、ハルヒが朝比奈さんの方を向いて話し掛けた
「みくるちゃん」
それは普段のハルヒからは想像しがたい優しい声だった
まるで母親が自分の子供をあやすような
それでも朝比奈さんはびくっとしていたがな
「ありがとう、ね」
いったい、何がありがとうなんだ?
誰か俺に説明してくれ
…あとで古泉にでも聞くか
それを受けた朝比奈さんは溢れんばかりの満面の笑みで元気よく
「はい!」
とだけ言った
そのあとだが、恐らく今回は大体を知っていたであろう未来人・朝比奈さんが持っていたバスタオルで体を拭いたあとハルヒは朝比奈さんの、俺は古泉の持ってきていた着替えに着替え、団活を開始した
この準備の良さをみると、古泉も知ってやがったな
八つ当りとは言わないが、いつもどおり、俺は古泉とのボードゲームに連勝し、長門は本を読みふけ、朝比奈さんは給仕にいそしみ、ハルヒはネットサーフィンに興じている
対戦中、何度かハルヒと目が合ったのは心にしまっておこう
やはり、いつもどおり長門が本を閉じる音で部活が終わる
なんかいつもどおりの一日だったな、確かに世界は急に色を変えないよな
それが変わっていたら8割方ハルヒのせいだ
部室をでたあとハルヒが手を握ってきた
俺は少し慌てたがもう3人とも知っているんだろうな、と考えそのままにした
5人で歩く帰り道、いつもは先頭にいるハルヒは一番後ろの俺の横で少しはにかみながら歩いている
代わりに先頭を行くのはハードカバーを文庫本に持ちかえ、それを読みながら歩いている長門で、その後ろで古泉と朝比奈さんが談笑しながら歩いている
幸いにも雨は止み、控えめに赤い太陽が顔を出している
横を見れば顔を朱に染めたハルヒがちゃんといる
俺はハルヒに耳打ちしていた
「そっと抜け出さないか?二人で」
ハルヒは一瞬驚いたような顔をしたが、すぐに100Wの笑顔に戻すと大きく頷いた
長門にはバレていただろうが、いやもしかしたら全員にバレていたかもしれない
前の3人に気付かれないよう、こっそり脇道にそれた
そのまま歩いて辿り着いたのは、この春休みに思い出深い、花見と、ハルヒの告白と…長門のマンションの近くの公園
桜達は、すでに花びらを落とし、早くも来たるべき夏に向けて準備をしていた
しかし、抜け出してきたのはいいが、いったい何をしたらいいんだろうな
とりあえず、ラブラブしたらいいんだろうが、そんな経験がない俺には何をもってラブラブというのかわからん
「おっ!キョン君にハルにゃんじゃないかっ!!」
突如後ろから聞き慣れた元気な声が聞こえる
振りむけばやはりというか鶴屋さんだった
「手なんかつないじゃって、ラブラブだね!お姉さん少し羨ましいにょろよ?」
ハルヒは照れている
顔が真っ赤だ
恐らく、冷静に観察してる俺も真っ赤だろう
「ええ、付き合うことになったんです」
それでも俺は某3倍早いMSのように赤いであろう顔に押さえ込まれないよう、できるだけ冷静を保って言葉を出す
しかし、それも無駄な努力だったようで鶴屋さんは腹を抱えて大笑いしていた
「あっはっはっは!…そんな真っ赤な顔で…ぷぷ…真面目に言われてもねぇ…はっはっは…まぁ末長くお幸せに!これは鶴にゃんからの贈り物っさ!」
鶴屋さんはそう言って何かを俺の手に握らせる
「ハルにゃんを泣かせたらあたしが承知しないよ~!」
走りさりながら手を振る鶴屋さんを見送ったあと俺は手の中のものを確認した
それを見た俺は苦笑する以外に選択肢はなく、覗き込んできたハルヒは顔をさらに赤くしていた
鶴屋さんはなぜ、こんなものを持ち歩いてあるのだろうか
俺はその0.03㎜の贈り物を使う日がいつ来るか考えていた
162: 2006/08/02(水) 18:40:09.02 ID:oNVEt+Zw0
「ただの人間でも構いません!この中に宇宙人、未来人、異世界人、超能力者に興味のある人がいたらあたしのところに来なさい!以上!」
これはハルヒの新学期の自己紹介の台詞だ
それを俺が聞くことができたのはハルヒと同じクラスになれたからに他ならない
ハルヒが泣いてまで危惧していたクラス替えだったが俺は相変わらずハルヒの席の前でハルヒにシャーペンでつつかれたり、その太陽のような笑顔を眺めたりしている
どうやら理系と文系は丁度いい数字で分かれるようなことはなく、クラス替えであぶれた奴らがこの2年5組に半々ぐらいで所属していた
教室移動で離れることもあるが、大半の時間をハルヒと過ごすことができる
これもハルヒの力によるところなのか定かではないが、この状況が幸せなのでそんなことはどちらでもよかった
「キョン!部室にいくわよ!」
放課後俺はハルヒと手を繋いで部室に向かう
やれやれ、こんな幸せでいいのかね
「いやはや、やっと肩の荷が降りましたよ、これで涼宮さんの精神も安定するでしょう」
放課後の文芸部室で囲碁の真っ最中、見事なウッテガエシを決めた俺に対し、にやけ面が盤面の状況など興味ないと言いたげに口を開く
認めたくはないが、今回の出来事の発端としての発言をしたのはこいつだ
図らずともこいつの言ったようにことが動いていて癪に触る
ちなみにハルヒは長門、朝比奈さんを連れて新入生に勧誘のビラ配りをしている
長門と朝比奈さんはそれぞれ、去年の文化祭で着たウェイトレスと魔法使いの格好でだ
また問題にならなければいいが
「末長くお幸せに」
古泉の含み笑い3割、いつもの微笑1割、谷口が今朝俺に対して見せたニヤニヤが6割のムカツク面にどんな嫌味や皮肉を言ってやろうかと考えているといつかのデジャヴのようにドアが勢い良く開いた
「いやぁー!ビラ全部はけたわよ!やっぱりSOS団の一年間の活動は無駄じゃなかったわね!!」
相乗効果で100万Wにも1億Wにもなりそうな笑顔でハルヒが部室に戻ってきた
無駄じゃなかった…か、そうだな、俺もそう思うよ…もちろんいろんな意味でな
「ハルヒ」
俺の呼び掛けにその笑顔のまま俺の方を向く
この笑顔がずっと俺のものだなんてまだ実感がわかないな
「これからもよろしくな」
その俺の一言に笑顔に少し赤みがかる
そして最高にうれしそうな笑顔で
「当ったり前じゃないの!あたしを幸せにしなかったら死刑なんだからね!!」
びしっと差した指は真っすぐ俺に向けられている
いつか俺とハルヒが結婚した時にでも俺はジョン・スミスの正体とSOS団の連中の肩書きでも話してやろうかな、と思った
FIN
これはハルヒの新学期の自己紹介の台詞だ
それを俺が聞くことができたのはハルヒと同じクラスになれたからに他ならない
ハルヒが泣いてまで危惧していたクラス替えだったが俺は相変わらずハルヒの席の前でハルヒにシャーペンでつつかれたり、その太陽のような笑顔を眺めたりしている
どうやら理系と文系は丁度いい数字で分かれるようなことはなく、クラス替えであぶれた奴らがこの2年5組に半々ぐらいで所属していた
教室移動で離れることもあるが、大半の時間をハルヒと過ごすことができる
これもハルヒの力によるところなのか定かではないが、この状況が幸せなのでそんなことはどちらでもよかった
「キョン!部室にいくわよ!」
放課後俺はハルヒと手を繋いで部室に向かう
やれやれ、こんな幸せでいいのかね
「いやはや、やっと肩の荷が降りましたよ、これで涼宮さんの精神も安定するでしょう」
放課後の文芸部室で囲碁の真っ最中、見事なウッテガエシを決めた俺に対し、にやけ面が盤面の状況など興味ないと言いたげに口を開く
認めたくはないが、今回の出来事の発端としての発言をしたのはこいつだ
図らずともこいつの言ったようにことが動いていて癪に触る
ちなみにハルヒは長門、朝比奈さんを連れて新入生に勧誘のビラ配りをしている
長門と朝比奈さんはそれぞれ、去年の文化祭で着たウェイトレスと魔法使いの格好でだ
また問題にならなければいいが
「末長くお幸せに」
古泉の含み笑い3割、いつもの微笑1割、谷口が今朝俺に対して見せたニヤニヤが6割のムカツク面にどんな嫌味や皮肉を言ってやろうかと考えているといつかのデジャヴのようにドアが勢い良く開いた
「いやぁー!ビラ全部はけたわよ!やっぱりSOS団の一年間の活動は無駄じゃなかったわね!!」
相乗効果で100万Wにも1億Wにもなりそうな笑顔でハルヒが部室に戻ってきた
無駄じゃなかった…か、そうだな、俺もそう思うよ…もちろんいろんな意味でな
「ハルヒ」
俺の呼び掛けにその笑顔のまま俺の方を向く
この笑顔がずっと俺のものだなんてまだ実感がわかないな
「これからもよろしくな」
その俺の一言に笑顔に少し赤みがかる
そして最高にうれしそうな笑顔で
「当ったり前じゃないの!あたしを幸せにしなかったら死刑なんだからね!!」
びしっと差した指は真っすぐ俺に向けられている
いつか俺とハルヒが結婚した時にでも俺はジョン・スミスの正体とSOS団の連中の肩書きでも話してやろうかな、と思った
FIN
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