232: 2009/06/30(火) 20:52:05 ID:.CyxjwjY

「エイ…ラ……」
「大丈夫だよサーニャ…力、抜いて?」


ベッドに仰向けになった私の視界にうつるのは、軍服とシャツの前をはだけたエイラと
彼女の部屋の天井…
カーテンの隙間から入る月明かりに照らされた髪と肌はあまりにも綺麗で
小さい頃に見た絵本に登場する女神様みたいだった。
ボタンを外す音が部屋に響く。
エイラの手が私のシャツのボタンをゆっくりと外していく。
瞳は私に向けられ、まっすぐすぎる熱い眼差しに思わず視線を反らす。


「サーニャ、私を見てくれ。私だけを見てくれ…愛してる」


耳元で囁かれ思わず体が縮こまる。エイラの唇はそのまま下に移動して、吐息が首にかかった。
ボタンは最後まで外され、細い指がついにズボンにかかり………
 


コンコンッ
 


「っ!!!」
「サーニャちゃーん、時間大丈夫?」


ノックの音と芳佳ちゃんの声で私は目を覚ました。見えるのは見慣れた自分の部屋の天井で、エイラはどこにもいない。
……今の…夢…?わ、私…なんて夢見てるの…!!
一気に顔と体が熱くなった。時計を見ると、夜間哨戒に出なければいけない時間だ。
さっきのエイラの事があってから今までの記憶がない…正確には、その記憶の部分には
さっきまでの夢が入り込んでしまっている。
……多分、エイラが慌てて部屋から飛び出した後、私は告白を聞かれていた事にびっくりし過ぎて意識を手放したのだろう。
わからなかったとはいえ、どれだけ私がエイラを好きかを告白し続け、
キスまでした後のあの夢は刺激が強すぎるよぉ…


「お邪魔しまーす。サーニャちゃん具合悪いの?哨戒代わろうか?」


いつまでも返事をしない私を心配して芳佳ちゃんが遠慮がちにドアを開ける。
「顔が赤い」っておでこに手をあててくれる芳佳ちゃんには悪いけど…赤いのは熱があるからじゃないと思う。
哨戒には自分が出ると伝えて、部屋から去ろうとする背中に思わず声をかける。


「芳佳ちゃん、あの…エイラは?」


名前を出すだけで顔が熱い…また心配させないように、顔を見られないよう俯き気味に聞いてみた。


「多分ハルトマンさんのところじゃないかな?さっきすごい剣幕で
『あの悪魔はどこダ!!』って聞かれたよ?なんか今日はよく誰かの居場所聞かれるなー、何かあったの?」


やっぱりハルトマンさんなんだ…
私も正確に説明出来ないからしどろもどろになりながらごまかして
エイラに会うこともなく夜の空に向かった。

233: 2009/06/30(火) 20:52:32 ID:.CyxjwjY
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サーニャが飛び立ったその頃…


「ハーールーートーーマーーン!!!!!!!」


勢い等ではなく、本当にドアを蹴り破ってエイラがハルトマンの部屋に乗り込んでいた。
ただでさえ汚い部屋に倒れたドアは埃を撒き散らし、さらにめちゃくちゃになる。


「やっほーエイラー、元に戻ってんじゃん。やっぱり一日もたなかったか」
「この鬼!悪魔!!サーニャに嫌われただろーガ!どーしてくれんだよオマエー!」


サーニャからの告白もキスもすっかり忘れ、むしろそのあとの自分が押し倒したような
あの状態の方がこのヘタレのエイラにとっては重要らしい。
嫌われるも何もすぐに逃げ出したくせにエイラはハルトマンにつかみ掛かる。


「そんな叫ばないでようるさいなー、じゃあほらこれ。
これを飲めば今日一日の記憶はすっかり真っ白何事もありませんでしたーってなるよ」
「信じるわけないだろーがこのバカー!!二度と引っ掛かるカー!」


差し出されたビンを取り上げ、叩き割ろうと壁に振りかぶったエイラの耳にぽつりと


「いいのかなー?」


ハルトマンの落ち着いた呟きが聞こえた。
その声に少し冷静になったエイラは動きを止める。怒りたっぷりの視線を向けると、
ハルトマンはいつもと代わらない笑顔だった。


「考えてもみなよ、人をぬいぐるみにするなんて有り得ない飲み物を作るハルトマン一家だよ?
記憶をなくす飲み物作れたって普通じゃん、実際ぬいぐるみになったエイラが
そのビン割っちゃっていいのー?」


エイラは言葉に詰まった。
本人が思い込んでいるだけだが、今のエイラにとって1番重要なのは嫌われたサーニャと仲直りする事。
このままではなんと言って仲直りすればいいかわからない…あまりに胡散臭いが
この飲み物は本当に記憶を無くしてくれるかもしれない、さっきのは確かに自分をぬいぐるみにしたのだ。
サーニャでいっぱいの頭には冷静な判断力というものはなかった。
そうだ、最初から何もなかった事にすればいい…エイラは体をハルトマンに向け、真面目な口調で聞いた。


「……本当なんだナ?」
「私は嘘はつかないよ。サーニャの分とほら、二人分。今までと同じに戻れるよ」


二つのビンを見つめ、決意を固めたエイラはビンを開けた。
先にサーニャが飲んで何か起きてはならないので、エイラは一気に中身を飲んだ。

234: 2009/06/30(火) 20:52:54 ID:.CyxjwjY
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日も昇りはじめた早朝、哨戒も終わって基地が見えて来た。


「………はぁ……」


いつもなら欠伸が出るポイントで出たのはため息。
なんてエイラに言おう…おもいっきり告白してしまい、それから時間が随分たってしまったから
どんな顔をしていいかわからない、なんて言えばいいかわからない。


「今日はエイラの部屋いけないよね…自分の部屋で寝よう」


酷く後ろ向きな考えだとはわかっているけど、自分からエイラの所に行く勇気はなかった。


ストライカーを外し、自分の部屋に向かう途中でどうしても通るエイラの部屋…
なんとなくドアプレートを見ないようにそっと通りすぎようとした時、カチャっとドアが開いた。


「さーにゃ!おかえりー」
「エ、エイラ!?なんで起きてるの!?」
「なんでって…さーにゃをまってたからにきまってんダろー?サ、ねよねよ」
「えっ?ちょ……」


強引にエイラに腕を掴まれ、そのまま部屋に引きずりこまれた。
特に変わった様子はなく、それどころがとても機嫌がよさそう。その上…


「よいしょ…っト」
「きゃ…っ!」


ドアをしめた途端、魔力を介抱したエイラにお姫様だっこをされてそのままベッドに運ばれる。
私を離さないでベッドに腰掛けたエイラは、そのままぎゅーっと私を抱きしめてくる。


「んー…さーにゃかわいい…いいにおいだしあったかいんだナー」
「な…っ、エイ……、えぇっ…?」


もう何がなんだかわからない、私の口からは言葉になっていない音が途切れ途切れに出るだけ。
ずっとずっと夢にまで見た状態なのに、突然過ぎて受け入れられない…
失礼だけど、エイラが尻尾をぱたぱた降りながらいきなりこんな事してくれる訳……ん…?

235: 2009/06/30(火) 20:53:17 ID:.CyxjwjY
「さーにゃー?なんでくんくんしてるんダー?
ワタシはブルーベリーでもシュールストレミングでもないゾー」
「……エイラ…お酒飲んだ?」
「おさけはのんでないー…」


そんなはずない、エイラの軍服の襟の小さなシミから強いアルコールの匂いがする。
……エイラってお酒弱かったんだ、飲んでるところなんて見た事ないから知らなかった。
酔ってるとわかるとなんか全てが納得できた…エイラは普段こんな事しないもんね


「どうしてお酒なんか…いっぱい飲んじゃったの?すごく酔ってる」
「だからおさけはのんでないってバ、のんだのはジュースだヨ」
「ジュース?どんなの飲んだの?」
「ハルトマンからもらったきれーなビン…うまかった…さーにゃのもあるゾ」


そう言ってエイラは私に綺麗なビンをくれた。開けて香りを確かめてみると…やっぱりお酒みたい。
何があったかわからないけど、ぬいぐるみにされた直後にお酒飲まされるなんて…
私を抱きしめながらほお擦りする様子もあって、ちょっと……あの…
…おばかさんに見える…ごめんね、エイラ


「エイラもう寝よう?私、お水とってくるから」
「やだー、さーにゃといるー、このままねるゾー」


体を離そうとした私をぎゅーっと抱きしめ、エイラはいやいやと首を振る。
う、うわぁ…可愛い…こんなに緩んだ表情見れるなんてちょっとラッキーかも。
寝るなら大丈夫かな?と思い、私はどこにもいかないからとエイラにベッドに入るように促す。


「えへへー、さぁにゃー…ぎゅってしてねていいかー?」
「う、うん…は、早く寝よう!?」


エイラに抱きしめられて寝るなんて幸せすぎてどーにかなりそう…
…たまにお酒飲ませてもいいかな?
エイラは軍服とシャツのボタンを外し、眠る準備をしている。
私も服を脱ごうとベルトを外してシャツに手をかけると、遮るように前からエイラの手がボタンを外し出す。


「え、えいらっ!?」
「てつだうゾ、はやくぬいではやくねよう」


自分はまだボタンを外しただけなのに、エイラは私の服を脱がし始めた。
寝ぼけてる時に服を着せてもらった事はあるけど、脱がされるのははじめてで
一瞬で今朝の夢を思い出した私は思わず体をひいてしまい
シャツを掴んでいたエイラと一緒にベッドに背中から倒れた


「………っ!!」


私にエイラのような未来予知の力はないのに、目の前の光景は今朝の夢と何一つかわらない。


ベッドに仰向けになった私の視界にうつるのは、軍服とシャツの前をはだけたエイラと
彼女の部屋の天井…
カーテンの隙間から入る光は夢と違って朝日だが、照らされた髪と肌はあまりにも綺麗で
小さい頃に見た絵本に登場する女神様みたいだった。


(夢と……同じ…)


ボタンを外す音が部屋に響く。
エイラの手が私のシャツのボタンをゆっくりと外していく…
その後はなんだった?エイラの口から出た言葉はなんだった?
エイラの顔が私に近づき、耳元で囁かれるであろう言葉を待つのに思わず体が縮こまる。
聞こえた言葉は……


「………………くー………」


寝息だった。


「~~~~~~っ!!!!!」


声にならない叫びと共に、私はエイラの下から抜け出して枕を掴み、幸せそうな寝顔に力の限りたたき付けた。
 


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翌日のエイラは二日酔いで頭が痛い、昨日の朝から夜までの事をまったくと覚えていないと首を傾げていた。
………エイラなんかもう知らないっ!!
 


おしまい

236: 2009/06/30(火) 20:55:36 ID:.CyxjwjY
終わりです、酔ったサーニャはいくつか見た事あるのですが、エイラはあまりないかなと
思って書いたら続き物になってました。
読んでくださった方ありがとうございます。
P/zSb9mc

引用: ストライクウィッチーズでレズ百合萌え 避難所3