1: 2014/08/31(日) 00:46:49 ID:jsQOsgLg

魔王「余の術を頭にくらってなお、立ちあがるか」

勇者「この程度でやられるわけないだろうが」

姫「いえ、思いっきりやられてます」

勇者「え?」

姫「髪の毛を、ごっそりと」

2: 2014/08/31(日) 00:53:20 ID:jsQOsgLg

勇者「オレの髪が消えた、だと……!?」

魔王「いや、あるにはあるぞ。しぶとく頭にくらいついてる髪が」

姫「だけど……」

魔王「ああ。吹けば消えること確実。風前の灯のようだ」

姫「わ、わたくしをかばったせいで……」

勇者「あ、あああぁぁ……」



勇者(今思えば、オレの人生はこの瞬間に狂ったんだと思う)

3: 2014/08/31(日) 00:55:17 ID:jsQOsgLg

◆一ヶ月後


僧侶「わたしたちは、どうして地下牢に幽閉されたのでしょうか?」

勇者「オレが聞きたいよ」

僧侶「では、僭越ながらわたしの予想を言わせていただきます」

勇者「どうぞ」

僧侶「勇者さまがハゲてるから」

勇者「……」

4: 2014/08/31(日) 00:56:33 ID:jsQOsgLg

勇者「……たしかにハゲてるよ、オレは。ええ、ハゲてますよ?」

勇者「でもこれは名誉のハゲなんだぞ!」

僧侶「たしかに。身をていして姫様をかばった結果ですからね」

勇者「なのに、この村の連中ときたらっ!」

勇者「勇者って名乗った瞬間、手錠かけて地下牢にブチこむなんて……!」

僧侶「牢屋に入れるまでの流れがあざやかで、驚きましたね」

5: 2014/08/31(日) 01:00:36 ID:jsQOsgLg

勇者「アレか!? 勇者なのにハゲてるからか!?」

勇者「ハゲって罪か!?」

勇者「だからオレをこんな場所にぶちこんだのか!?」

勇者「だったらもう一度言うぞ! オレのハゲは名誉のハゲだ!」


僧侶「結局、姫様はさらわれましたけどね」

勇者「……まあ、そのとおりなんだけど」

僧侶「とりあえず落ち着いてくださいまし」

僧侶「下手に騒いでストレスをためると、残っている髪まで抜けますよ?」

勇者「……うい」

6: 2014/08/31(日) 01:03:20 ID:jsQOsgLg

勇者「そうだな。今はハゲのことを気にしても仕方ない」

僧侶「さすが勇者様。いい意味で開き直るのが早い」

勇者「あったぼうよ」

勇者「それに戦士と魔法使いは、村の連中を上手にまいたんだ」

勇者「いずれはアイツらが助けにくるだろ」

僧侶「ええ。脱出の好機は、一時間もしないうちに訪れるでしょう」

僧侶「せっかくなので、今のうちに勇者様に聞いておきたいことが」

勇者「なんだよ?」

僧侶「頭に回復系の魔術、使わなかったんですか?」

勇者「……………使ったよ」

僧侶「使ったんですか」

7: 2014/08/31(日) 01:06:38 ID:jsQOsgLg

勇者「ありったけの魔術をふりかけてもらったんすよ」

僧侶「どなたに?」

勇者「国直属の賢者」


僧侶「賢者の回復魔術をあびた人間は」

僧侶「天へとのぼる階段から、転げ落ちるとさえ言われてますけど」


勇者「オレの頭には効かなかったよ」

僧侶「まあ、ハゲって言ってみれば毛根が氏んでる状態ですからね」

僧侶「どんな魔術を駆使しても、死は覆らないってことですね」

勇者「言っとくが。まだオレはあきらめてないぞ」

9: 2014/08/31(日) 01:15:43 ID:jsQOsgLg

勇者「オレはこの旅で、必ず髪の毛を取り戻す手段を見つけ出す」

僧侶「魔王をたおすという、本来の目的。忘れないでくださいね」




15: 2014/08/31(日) 02:55:29 ID:EDVU6F1w
ハゲ乙

17: 2014/09/10(水) 01:06:04 ID:cPzJdtUY
闇堕ち待ったなし

引用: 勇者「勇者なのにハゲてしまった」