323: 2019/03/15(金) 19:23:19.13 ID:RsUDp+PjO
324: 2019/03/15(金) 19:27:38.39 ID:RsUDp+PjO
ー翌日・志波家の庭ー
キュッ………
キーボ(ーーーよし、これでボクの分の掃除と、その最終チェックが終わりました)
キーボ(しばらくしたら、アンジーさんと真宮寺クンの方も終わるでしょう)
キーボ(これから合流して、そのあとーーー)キュルキュル
………………………………………………………………
銀城(………おい、見たか?)
325: 2019/03/15(金) 19:30:28.58 ID:RsUDp+PjO
月島(………うん、見たよ)
ギリコ(見てしまいましたな)
銀城(まさか、本当にロボットがいるとはな………)
ギリコ(存在自体は、岩鷲さんから聞いてはおりましたが、いざ見るとなると、流石に驚きを隠せませんな)
銀城(月島、一応聞いておくが、幻覚って線はーーー)
月島(それはないよ、銀城)
月島(あのロボットには、過去の “ 厚み ” があるからね)
月島(それも、他の全員と同じ、 “ 厚み ” が、ね)
銀城(………そうか)
ギリコ(確かに、月島さんが、そうした “ 厚み ” を認識できている以上、幻覚の線は薄いと言わざるを得ませんな)
銀城(ああ、幻覚とはいえ、 “ 厚み ” まで再現するとなると、それを月島レベルで認識できる奴でねえと成立しないはずだ)
銀城(だが、そんなものを認識できるのは、月島本人くらいのもんだ。それを考慮すれば、幻覚の線は薄い)
銀城(ーーー何はともあれ仕方ねえな。ひとまずは、幻覚でないって方向で進めてくしかーーー)
キーボ「ーーーすいません、何か御用でしょうか?」
326: 2019/03/15(金) 19:33:01.66 ID:RsUDp+PjO
銀城「………」
月島(…この距離で聴こえるような、声は出していなかったはずだけどね)
ギリコ(それに加えて、あの場所では、こちら側は氏角となって見えないはず)
ギリコ(ふむ、どうやら、御姿だけではなく、聴力も人を外れているようですな)
キーボ「………ロボット差別しているところすいませんが、何か御用でしたら、こちらまで来て返事をして頂けないでしょうか?」
327: 2019/03/15(金) 19:35:56.83 ID:RsUDp+PjO
銀城「…しゃあねえ、行くぞ、お前ら」
月島「………」
ギリコ「………」
スタスタ………
銀城「…あー、来たぞ、そのーーー」
キーボ「はじめまして、ボクはキーボと言います。見ての通り、ロボットをしていて、この志波家で住み込みで働いております」
キーボ「ああ、ちなみに、ボクは、幻覚などではなく現実に存在するロボットです。そこは間違えないようにお願いします」
月島「………」
キーボ「よろしければ、キミたちのお名前の方も教えて頂けますか?」
328: 2019/03/15(金) 19:38:46.04 ID:RsUDp+PjO
銀城「………俺は、銀城空吾」
月島「僕は、月島秀九郎」
ギリコ「私、沓澤ギリコと申します」
キーボ「銀城さんに、月島さんに、沓澤さんですね! ありがとうございます! ボクの記憶領域に記録しました!」
331: 2019/03/16(土) 14:06:48.22 ID:Sxw0lkQWO
キーボ「ーーーところで、皆さん、こちらに何か御用でしょうか?」
銀城「………」
キーボ「先ほどお聴きした内容によると、どうも岩鷲クンのお知り合いのようですが」
月島「………確かに、彼とは知り合いではあるけれど、別に大した用があって来たわけじゃないよ」
キーボ「大した用じゃ、ない?」
月島「ここにロボットがいると聞いてね。ちょっとばかり確かめたくなったのさ」
月島「 “ アルバイト ” も、ひと段落ついたことだし、そうして空いた時間を使って、なんとなくここに来た」
月島「ただ、それだけだよ」
332: 2019/03/16(土) 14:08:21.10 ID:Sxw0lkQWO
キーボ「…なるほど、よくわかりました」
月島「………」
キーボ「…ただ、これだけは言っておきます」
月島「…何かな?」
キーボ「ーーーボクは、見世物ではありませんよ」
333: 2019/03/16(土) 14:10:19.03 ID:Sxw0lkQWO
月島「………」
ギリコ「………」
銀城「………」
キーボ「………」
銀城「………あー、悪かったな」
銀城「本当に、悪かった」
銀城「ーーー見世物にされんのは、気分の良い話じゃねえからな。多分それはロボットも同じなんだろうよ」
月島「………」
銀城「…お前も謝っとけ、月島」
月島「………そうだね、悪かったよ、キーボくん」
ギリコ「私からも謝罪させて頂きます。申し訳ありません」
キーボ「…いえ、気をつけて頂けるのなら、ボクはそれでーーーー」
334: 2019/03/16(土) 14:13:22.73 ID:Sxw0lkQWO
銀城「ーーーあー、詫びと言っちゃあ何だが、何かわからないことや困っていることがあれば何でも言ってくれ。応えてやるし、力になるぜ?」
キーボ「ーーーわかりました。それでは三つほど質問してもよろしいでしょうか?」
銀城「おう、なんだ?」
キーボ「まず、一つ目ですがーーー」
キーボ「ーーーキミ達は、岩鷲クンや空鶴さんと、どのような関係にあるのでしょうか?」
銀城「………それはだな…」
ギリコ「…元居候、と言ったところですかな」
月島「………」
キーボ「…えっ、元居候ってーーー」
キーボ「ーーーということは、まさかキミ達が空鶴さん達の言っていたーーー」
銀城「そうだな。俺たち三人が、お前がいま住んでいる家にかつて居候していた連中だ」
ギリコ「もう、何年も前の話になりますがね………」
月島「………」
335: 2019/03/16(土) 14:15:40.22 ID:Sxw0lkQWO
キーボ「…まさか、ボクらの先輩に会うことになるとは、思いもしませんでした」
月島「僕も、まさかロボットが後輩になるなんて思いもよらなかったよ」
キーボ「…またロボット差別ですか」
月島「別に差別してはいないけどーーー、それともロボットは機械的にしか物事を考えられないのかな?」
銀城「やめろ、月島。こいつで遊ぼうとするな」
月島「はいはい、わかったよ、銀城」
336: 2019/03/16(土) 14:17:20.00 ID:Sxw0lkQWO
キーボ(………この人、どうも王馬クンと同じ匂いがしますね………まあ、ボクに嗅覚は無いんですけどーーー)
銀城「ーーーそれで、次の質問は何だ? 遠慮なく訊いてくれて構わねえぜ?」
キーボ「…それでは、二つ目の質問ですがーーー」
キーボ「ーーー瀞霊廷の住み心地はどうですか?」
銀城「………」
月島「………」
ギリコ「………」
337: 2019/03/16(土) 14:22:13.36 ID:Sxw0lkQWO
キーボ「…実はボクは今、【パワーセンサー】という霊力ある存在を感知する装置を持っていましてね」スッ
銀城「………なに?」
キーボ「それで、誰かと一緒に掃除している最中は、お互いに現在何処にいるか把握できるようにしているのです」
銀城「………」
キーボ「そのおかげで、キミ達の存在に気づき、そこに向けて集音機能を集中し、キミ達の会話の内容を把握することができたんです」
銀城(………霊圧も、もっと抑えとくべきだったかーーー)
キーボ「ーーーともかく、【パワーセンサー】によって感知されたということは、キミ達は霊力を持っていて、瀞霊廷に住む資格があるということになります」
月島「………」
ギリコ「………」
キーボ「だからこそ、お訊きしたいのです」
キーボ「瀞霊廷の住み心地をーーー」
銀城「ーーー悪いが、そいつは無理だ」
338: 2019/03/16(土) 14:25:16.68 ID:Sxw0lkQWO
キーボ「ーーーどうして、ですか?」
銀城「ーーー簡単な話だ」
銀城「俺たちは、瀞霊廷に住んでねえからな」
キーボ「ーーーえっ、?」
月島「だから、瀞霊廷の住み心地なんてものを、話しようが無い」
月島「そういうことなんだよ」
339: 2019/03/16(土) 14:27:01.75 ID:Sxw0lkQWO
キーボ「…どうして、霊力があるのに瀞霊廷に住まないんですか?」
銀城「ーーーこっちにも色々あってな。多少の出入りだったり、飯代のための “ アルバイト ” をしに行ったりは出来るが、住むわけにはいかねえんだ」
キーボ「………」
銀城「悪いが、その理由は言えねえ。察してくれると助かる」
340: 2019/03/16(土) 14:28:57.65 ID:Sxw0lkQWO
キーボ「ーーーわかりました。それでは踏み込まないようにします」
銀城「…悪いな、本当に」
キーボ「いえ、誰にだって踏み込まれたく無い部分はありますからね」
キーボ「それを考慮すれば、当然のことです」
月島「………」
ギリコ「………」
キーボ「それでは、最後に、三つ目の質問に移りますがーーー、良いですか?」
銀城「ーーーああ、答えられる範囲で答えさせて貰うぜ」
キーボ「それでは、お訊きしますがーーー」
キーボ「ーーーなぜ、キミ達の服は、現代風なのでしょうか?」
341: 2019/03/16(土) 14:30:25.84 ID:Sxw0lkQWO
月島「…ああ、そのこと」
キーボ「? ひょっとして、これも訊いたらいけませんでしたか?」
ギリコ「…いえ、このくらいならば、問題はありません。よくされる質問ですからな」
銀城「そうだな、とりあえず、わかりやすくざっくりと話させて貰うがーーーーーーそれで良いか?」
キーボ「ええ、お願いします」
342: 2019/03/16(土) 14:32:40.64 ID:Sxw0lkQWO
銀城「………結論から言うとだな」
銀城「俺たちのこの服は、かつて俺たちの生きていた現世から持ってきたものなんだ」
キーボ「え? でもーーー」
ギリコ「言いたいことはわかります。生前の服は現世から持っていくことはできません」
月島「普通なら、ね」
キーボ「………」
銀城「逆に言えば、普通じゃない力があればできることでもある」
キーボ「普通じゃない、力………」
銀城「ああ、実は俺たちは、生前、霊能力者じみたことをしていてな。その力で、この尸魂界に服を持っていったんだ」
343: 2019/03/16(土) 14:39:29.50 ID:Sxw0lkQWO
キーボ「霊能力者…?」
銀城「ああ、霊能力ってのは、大概の場合は氏んで肉体の束縛を受けなくなってから発現するもんなんだがーーー、中には生前の時点で持っている奴もいる」
キーボ「………」
銀城「その中でも、比較的 “ 器用 ” な奴は、自分の意思で服を尸魂界に持っていくことができるんだよ」
キーボ「…いや、ちょっと待ってください」
キーボ「霊能力で服を持ってきたとのことですがーーーーーー霊能力って、鍛えたりしない限り、超常能力を扱うことはできないんじゃないんですか?」
キーボ「少なくとも、【パワーセンサー】によればボクも霊能力を持っているようですが、だからといって霊的な超常能力を扱えるような感覚はありません」
キーボ「なので、霊能力を持っていても、特に鍛えたりしない限りは、超常能力を扱えないと解釈していたのですが………」
344: 2019/03/16(土) 14:42:32.32 ID:Sxw0lkQWO
銀城「ーーーまあ、普通はそうだな」
キーボ「だとしたら、どうやって、その、 “ 器用 ” なことをしたんですか?」
キーボ「現世に、氏神になるための学校があるとは思えません」
キーボ「ならば、独学で鍛えたところで氏神としての力が手に入るとも思えませんし、その条件下で、 “ 器用 ” なことができるとも思えないのですが」
銀城「………それはーーー」
ギリコ「ーーー霊能力にも様々な形があるのですよ」
345: 2019/03/16(土) 14:44:45.21 ID:Sxw0lkQWO
キーボ「形?」
ギリコ「ええ、一口に霊能力と言っても様々な形があります」
ギリコ「その形次第で、できることも変わってくるのですよ」
月島「そう、全ては霊能力の形次第」
月島「形次第で僕たちのように、現世から服を持ってくると言った、 “ 器用 ” な真似も可能となるのさ」
キーボ「………」
銀城「…もちろん、これはあくまでも特殊な事例だ」
銀城「普通の霊能力は、さっきお前が言った通り、氏神の学校で鍛錬して磨き上げない限り超常能力を扱うことなんざできやしねえからな」
月島「そうだね、銀城。普通は生前に幽霊を見たり、話したりするくらいが良いところだろうね」
ギリコ「磨かれていない力では限界がある、ということですな」
銀城「………まあ、とりあえずは、俺たちには普通とは違う霊能力があって、その力で服を尸魂界に持ってきた」
銀城「そう、思ってくれりゃあ良いさ」
346: 2019/03/16(土) 14:46:53.81 ID:Sxw0lkQWO
キーボ「…なるほど、よくわかりました」
キーボ「ただーーー」
月島「ああ、流石に僕たちの霊能力がどういったものであるかは教えないよ?」
キーボ「………」
月島「誰が何処で、どんな方法で聴き耳を立てているかわからない以上、教えたが最後、晒し者にされるかもしれない」
月島「それは、僕達としても望むところは無いからね」
キーボ「ーーーわかりました。ならば、そこは訊かないことにします」
ギリコ「…こちらへの配慮、誠に感謝します」
月島「………」
347: 2019/03/16(土) 14:49:39.70 ID:Sxw0lkQWO
銀城「ーーーとりあえず、質問には三つとも答えたが、これで大丈夫か?」
キーボ「…はい、大丈夫です」
キーボ「お答え頂き、ありがとうございました」
銀城「どういたしまして、だな」
ギリコ「こちらこそ、お時間を割いて頂き、感謝します」
月島「………」
銀城「………それじゃあ、俺たちは自宅に帰るぜ。邪魔したな、キーボ」
キーボ「あっ、はい、お元気でーーー」
銀城「ーーーと、その前に、だ」
キーボ「?」
銀城「帰る前に一つ、こっちから訊いても良いか?」
キーボ「ーーー何でしょうか?」
銀城「ーーーアンジーたちと仲は良いのか?」
348: 2019/03/16(土) 14:53:09.86 ID:Sxw0lkQWO
キーボ「ーーーキミは、アンジーさん達を知っているんですか?」
銀城「ああ、さっきも言ったが、アンジーたちが来るずっと前は、この家で生活していたからな」
ギリコ「その繋がりから、いくらか彼女達と関わることがありましてな。あなたの存在についても聞いておりました」
月島「まあ、その君が尸魂界に来るだなんて、この目で見るまで半信半疑だったけどね…」
キーボ「………」
銀城「ーーーで、どうなんだ? キーボ?」
銀城「アンジーたちとは、仲良くやれてるのか?」
349: 2019/03/16(土) 14:54:49.39 ID:Sxw0lkQWO
キーボ「ーーーそうですね。仲良くしていますよ」
銀城「ーーーそうか」
キーボ「…なぜ、そのようなことを?」
銀城「ーーー大した理由じゃねえよ」
銀城「ただ、一応は先輩だからな」
銀城「後輩が上手くやれてるかは、なんとなく気になるんだよ」
銀城「ーーーそんだけだ」
キーボ「………」
銀城「じゃあな」
スタスタ………
………………………………………………………………
350: 2019/03/16(土) 14:58:25.34 ID:Sxw0lkQWO
………………………………………………………………
スタスタ………
銀城「ーーーこの辺りで良いか?」
ギリコ「そうですな」
ギリコ「【タイム・テルズ・ノー・ライズ】」ギリギリ…
ギュイーン…!
ギリコ「ーーーこれで、我々の声は、彼の元には絶対に届きません」
銀城「…そうか」
ギリコ「ここまで離れれば、もはや必要は無いかもしれませんがーーーーーー念には念を入れておくに越したことはありませんからな」
月島「ーーーそれじゃあ遠慮なく話すけど………あのロボット、随分と過激な過去を持っているようだね」
銀城「………」
月島「霊圧は、大きさも質も、一護たちのクラスメイトと同じくらいだっていうのにーーー」
月島「ーーーまさか、あんなピリピリした霊圧を放てるとはね」
銀城「…そんだけの気概がある奴なら、問題はねえかもな」
ギリコ「ですが、彼の過去もまたーーー」
月島「ーーー関係ないよ」
351: 2019/03/16(土) 15:01:19.89 ID:Sxw0lkQWO
月島「 “ 彼ら ” の過去がどうだろうと、僕らが踏み込むようなことじゃあない」
月島「そう、一護が、僕や君たちの昔に、踏み込まなかったように、ね」
銀城「………」
月島「だから、話の種にはしても、気を揉む種として育むことは無い。そうだろう?」
銀城「………………」
ギリコ「………………」
月島「………というか、それ以前に、僕たちが気を揉む意義のある案件だとも思わないけどね」
ギリコ「? どういうことです?」
月島「………どれほど “ 変わった ” 過去があろうと無かろうと、決して変わらないものはある」
月島「だから、心配はいらない」
月島「そういうことなのさ」
352: 2019/03/16(土) 15:04:19.68 ID:Sxw0lkQWO
月島「…僕がこんなことを言えるのはおかしいかい?」
銀城「………」
ギリコ「………」
月島「…確かに僕たちの能力は、一度固有能力に目覚めたが最後、それ以上能力が変化することは無いけれどーーー」
月島「ーーートレーニングを通じて、新しい能力の使い方に気づくことはある」
月島「だから、わかるのさ。 “ 変わらない ” 色ってやつを、ね」
月島「あの鉄の本は、そう彩られているよ」
………………………………………………………………
355: 2019/03/16(土) 20:20:09.15 ID:M/PHvmzLO
………………………………………………………………
アンジー「………よしよしー、これでーーー」
キーボ「ーーーそちらは終わりましたか? アンジーさん」スタスタ
アンジー「あっ、キーボ!」
アンジー「ーーーうん! アンジーも終わったよー!」
真宮寺「ーーーもっと言えば、僕の方も終わったヨ」スタスタ
アンジー「あー、是清もかー! おつかれー!」
真宮寺「ありがとう、夜長さん」
アンジー「ーーーところで、キーボに訊きたいことがあるんだけどーーー」
キーボ「? はい、なんでしょうかーーー」
アンジー「ーーーもしかして、さっき、空吾たちに会った?」
356: 2019/03/16(土) 20:24:23.10 ID:M/PHvmzLO
キーボ「…? ええ、確かに会いましたけどーーー」
アンジー「…やっぱりー」
真宮寺「こっちの【パワーセンサー】にも三人分反応していたからネ。もしやとは思っていたけど…」
キーボ「それで、どうかされたんですか? 銀城さん達に何か用事があるのでしょうか?」
アンジー「ノンノン、違うよー」
キーボ「?」
アンジー「…何か、変なこと言われなかったかなー、って」
キーボ「? 変なこと、とは?」
357: 2019/03/16(土) 20:27:49.57 ID:M/PHvmzLO
アンジー「………たとえば、ギリコからーーー」
キーボ「………………」
アンジー「ーーー別の、 “ 神さま ” のこととかーーー」
アンジー「ーーー言われ、なかった?」
358: 2019/03/16(土) 20:31:24.41 ID:M/PHvmzLO
キーボ「ーーー神さま?」
アンジー「………」
キーボ「…いえ、そのような話はしていませんがーーー」
アンジー「………そう」
キーボ「…なぜ、そのようなことを?」
アンジー「………ギリコはねー、アンジーの神さまとは、違う神さまを信じてるんだよー」
キーボ「違う、神さま、ってーーー」
真宮寺「………彼は、それを、 “ 時の神 ” と呼んでいるヨ」
キーボ「時の神?」
真宮寺「まァ、聞いた限りだと、偶像崇拝というよりは、概念の崇拝に近いものみたいだけどネ」
キーボ「………………」
アンジー「………これから、ギリコに変なこと言われても、気にしちゃダメだからねー? キーボ?」
アンジー「………アンジーの信じる神さまは、アンジーの神さまだけだからさー」
アンジー「別の神さまに浮気したら………きっと罰が当たるよ?」
359: 2019/03/16(土) 20:32:59.29 ID:M/PHvmzLO
キーボ「…大丈夫ですよ」
アンジー「………」
真宮寺「………」
キーボ「………ボクは神さまに頼ることが、できませんから」
360: 2019/03/16(土) 20:35:33.90 ID:M/PHvmzLO
アンジー「………………」
真宮寺「………アー、とりあえず、屋敷の中に戻ったら、今日の分を、はじめようか」
真宮寺「そう、【鰤清劇場】を、ネ」
キーボ「!」
アンジー「………うんうん、それが良いよー!」
キーボ(………ついに自分からその名前をーーーー)
361: 2019/03/16(土) 20:37:14.60 ID:M/PHvmzLO
真宮寺(………今日、話すこと)
真宮寺(それは、昨日話せなかった “ 西 ” についてーーー)
真宮寺(ーーーそう、この、日本人の集う、 “ 尸魂界・東梢局 ” とは、大きく異なる文化圏ーーー)
真宮寺(ーーー “ 尸魂界・西梢局 ” についての話をーーーー)
………………………………………………………………
367: 2019/03/17(日) 12:24:20.47 ID:AvGNnYzDO
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
アンジー「………」
シバタ「ーーーあっ、アンジーお姉ちゃん! おはよう!」
アンジー「…あー、ユウイチ! おはよー!」
シバタ「奇遇だねーーー」
シバタ「ーーーって、あれ?」
アンジー「んー? どうしたー?」
シバタ「今日は、真宮寺お兄ちゃんは一緒じゃないの?」
アンジー「あー、是清はいま、お花摘みに行ってるところだよー」
シバタ「………そうなんだ…」
アンジー「是清に、何か用かー?」
シバタ「…うん、実は、 “ 家族 ” のみんなに絵を描いてプレゼントしようって思ってるんだけどーーー」
アンジー「………………」
シバタ「ーーーそれと一緒に付ける手紙、それが出来たら、まずは真宮寺お兄ちゃんに出来を確かめてほしいと思ってさ」
シバタ「もし、変なこと書いちゃってたら、大変だし」
アンジー「………………」
シバタ「それを、伝えたくてーーーー」
368: 2019/03/17(日) 12:26:00.45 ID:AvGNnYzDO
アンジー「…プレゼント、するんだー?」
シバタ「…うん、 “ 家族 ” のみんなに!」
アンジー「…にゃははー! 是清はすっかりユウイチに頼られてるねー!」
アンジー「アンジーもすごい嬉しいよー!」
シバタ「………」
アンジー「…? どうしたー、ユウイチ?」
シバタ「…ちょっと、ね…」
アンジー「ちょっと?」
シバタ「うん、ちょっとだけーーー」
シバタ「ーーーアンジーお姉ちゃんが羨ましいなあ、って」
369: 2019/03/17(日) 12:30:33.31 ID:AvGNnYzDO
アンジー「………」
シバタ「ぼくは、真宮寺お兄ちゃんのこと、まだ全然知らないしーーー」
シバタ「ーーーだから、真宮寺お兄ちゃんと一緒に住めるアンジーお姉ちゃんが羨ましいって、思える時があるんだ」
シバタ「もっと、真宮寺お兄ちゃんに近づけたらな、って」
アンジー「…ユウイチ?」
シバタ「?」
アンジー「ユウイチには、 “ お兄さん ” がいるよね?」
シバタ「………そうだね」
アンジー「是清のことを好きになってくれるのは嬉しいけどーーー」
アンジー「ーーー “ お兄さん ” のことも大事にしないとダメだよー?」
シバタ「………」
アンジー「でないと…罰が当たるよ?」
370: 2019/03/17(日) 12:33:42.40 ID:SPnDlK7PO
シバタ「………大事に、したいよ?」
シバタ「…いま、地球のどこで、どんな人になってるかはわからないけどーーー」
シバタ「ーーーぼくの “ お兄さん ” であることに変わりは無いから………」
アンジー「………」
シバタ「 “ お兄さん ” には、 “ 家族 ” のみんなには、なるべく良いものを渡したいんだ」
シバタ「だから、真宮寺お兄ちゃんに、手紙の出来を見て貰いたかったしーーー」
シバタ「ーーー前にも、いろいろ相談に乗ってくれた、真宮寺お兄ちゃんの、支えになりたい」
アンジー「………」
シバタ「誰よりも近くで、それができるアンジーお姉ちゃんが羨ましい」
シバタ「そう、思ったんだ」
371: 2019/03/17(日) 12:36:52.89 ID:g6+orqPiO
アンジー「………アンジーが、是清を、支える、かー………」
シバタ「うん、アンジーお姉ちゃんなら、できるでしょ?」
アンジー「…どうかなー?」
シバタ「えっ…?」
アンジー「………むしろ、逆かもよー?」
シバタ「…?」
アンジー「アンジーが是清を支えているんじゃなくて、是清がアンジーを支えてくれてるんだー」
シバタ「………そうなの?」
アンジー「…そうだよー」
アンジー「………そうでないと、アンジーはーーー」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
372: 2019/03/17(日) 12:38:35.27 ID:g6+orqPiO
チュンチュン………
アンジー「………」パチリッ
アンジー「………………」ムクッ
アンジー「………………………………」
373: 2019/03/17(日) 12:42:08.87 ID:9f+dunqTO
アンジー(………夢かー)
アンジー(ーーーーーーーーーーーーーーー)
アンジー(ーーーなんでかなー………)
アンジー(………なんで、あの時のーーーー)
コンコンッ
374: 2019/03/17(日) 12:44:48.56 ID:9f+dunqTO
アンジー「………」
キーボ「アンジーさん、アンジーさん」コンコンッ
キーボ「起きていますか?」
アンジー「…起きてるよー」ムクッ…スタスタ
アンジー「いま、開けるねー?」ガチャッ…バタンッ
キーボ「あっ、おはようございます、アンジーさん!」
アンジー「どうしたー、キーボ?」
キーボ「…ああ、いえ、この時間、アンジーさんは今まで、ボクと真宮寺クンのいる部屋まで来て、朝ごはんの誘いに来てましたので………」
アンジー「………うん、そうだね」
キーボ「でも、今日は無かったので、どうしたのか気になってーーー」
アンジー「………んー、ちょっと、変な夢みててねー」
キーボ「…夢、ですか」
アンジー「………どんなだったかはよく覚えてないけど、それで調子狂っちゃったのかもねー」
キーボ「………まあ、そういうこともありますよ」
キーボ「あまり気にしない方が良いですよ、アンジーさん」
アンジー「…そうだねー、そうするよー」
375: 2019/03/17(日) 12:46:19.34 ID:9f+dunqTO
アンジー「………ねー、キーボ?」
キーボ「はい! なんでしょうか、アンジーさん!」
アンジー「いまさら、かもしれないけどねー?」
キーボ「?」
アンジー「ーーーこうしてまたキーボに会えてーーー」
アンジー「ーーーアンジーは、すごく嬉しいんだー………」
376: 2019/03/17(日) 12:47:51.51 ID:9f+dunqTO
キーボ「………………」
アンジー「………もちろん、悲しまなきゃ、いけないことはわかってる」
アンジー「キーボも、アンジーたちと同じなんだから」
アンジー「そう、秘密子たちと、離ればなれ………」
キーボ「………………」
アンジー「アンジーは、それが、悲しい」
キーボ「アンジーさん…」
アンジー「………だけど、それでも、キーボとこうしてまた会えたことはーーーー」
377: 2019/03/17(日) 12:49:05.81 ID:9f+dunqTO
アンジー「ーーーすっごく、嬉しいんだ…………」
378: 2019/03/17(日) 12:50:47.99 ID:9f+dunqTO
キーボ「…………」
アンジー「………………」
379: 2019/03/17(日) 12:52:15.89 ID:9f+dunqTO
キーボ「………奇遇ですね」
アンジー「!」
キーボ「ボクも嬉しいですよ、アンジーさん」
キーボ「また、アンジーさんに会えて」
キーボ「一緒にいられて」
キーボ「すごく、嬉しいです」
380: 2019/03/17(日) 13:00:37.87 ID:9f+dunqTO
アンジー「………そう、」
キーボ「…………」
アンジー「………ありがとねー、キーボ」
キーボ「!」
アンジー「アンジーと “ 同じ ” でーーー」
アンジー「ーーー嬉しいって思ってくれてーーー」
アンジー「ーーー本当に、ありがとう………」
381: 2019/03/17(日) 13:02:23.64 ID:9f+dunqTO
キーボ(………そうです)
アンジー「………………」
キーボ(今度こそ、アンジーさんが、 “ 喪われない ” ようにーーー)
キーボ(ーーーそれには、まずーーーー)
382: 2019/03/17(日) 13:06:36.61 ID:/rx5YNNCO
キーボ「ーーーボクからも、お礼を言わせてください」
アンジー「………………」
キーボ「ありがとうございます、アンジーさん! またボクと一緒にいてくれて!」
385: 2019/03/17(日) 15:26:58.26 ID:/rx5YNNCO
アンジー「………そんな風に言って貰えるなんてねー」
アンジー「アンジー、やっぱり嬉しいなー」
キーボ「アンジーさん…」
アンジー「………ねー、キーボ?」
キーボ「なんでしょうか?」
アンジー「これから朝ごはんの時間だよねー?」
キーボ「? ええ、そうですね」
アンジー「………アンジーが、食べさせてあげようかー?」
キーボ「………はい?」
アンジー「ほら、 “ あーん ” ってやつだよー」
キーボ「………」
キーボ「………??」
386: 2019/03/17(日) 15:29:14.27 ID:/rx5YNNCO
アンジー「キーボ、そういうこと、されたこと無いでしょー?」
キーボ「………いや、まあ、確かにされたことはありませんがーーー」
アンジー「だったら、アンジーがそれをするはじめての相手なんだねー」
アンジー「なんだか、嬉しいなー」
キーボ「………?」
キーボ「………すいません、アンジーさん、どうかされたんですか?」
387: 2019/03/17(日) 15:31:01.39 ID:/rx5YNNCO
アンジー「んー? どうしたー、キーボ?」
キーボ「…………」
アンジー「なにか、変かなー?」
388: 2019/03/17(日) 15:32:40.59 ID:/rx5YNNCO
キーボ「………ああ、いえーーー」
キーボ「ーーーそんなことは、ありません」
アンジー「…………」
キーボ「おかしくなんて、無いですよ」
キーボ「………アンジーさんは、誰に対してもーーー」
キーボ「ーーーすごく、あたたかい人ですから」
389: 2019/03/17(日) 15:34:52.67 ID:/rx5YNNCO
アンジー「ーーーそれで、どうするのー? キーボ?」
キーボ「? どうするってーーー」
アンジー「アンジーの “ あーん ” のことだよー」
アンジー「どうするのー?」
キーボ「………お気持ちはとても嬉しいのですがーーー」
キーボ「ーーー食卓には真宮寺クン達もいますし、ボクも一応は高校生です」
キーボ「さすがに、ちょっと、恥ずかしいというかなんと言いますかーーー」
アンジー「にゃははー! ロボットでもこういうこと、恥ずかしかったりするんだねー!」
キーボ「なっ、ロボット差別ですか!?」
アンジー「ノンノン、嬉しいんだよー」
アンジー「キーボが、恥ずかしいって気持ちを知ってることがねー」
キーボ「………」
アンジー「それってー、 “ すごいこと ” だよねー?」
390: 2019/03/17(日) 15:38:09.48 ID:/rx5YNNCO
キーボ「………そうですね」
キーボ「ほめてくれて、ありがとうございます、アンジーさん」
アンジー「………ねー、キーボ?」
キーボ「なんでしょうか? アンジーさん?」
アンジー「 “ あーん ” が恥ずかしかったらさー」
アンジー「アンジーの、隣で食べるくらいは良いかな?」
キーボ「………」
アンジー「キーボ、今日から、アンジーの隣で食べて貰っても」
アンジー「良い、かな?」
391: 2019/03/17(日) 15:40:11.47 ID:/rx5YNNCO
キーボ「………もちろんですよ」
キーボ「むしろ、こっちからお願いしたいくらいです」
キーボ「隣に来させて貰います、アンジーさん」
アンジー「………ありがとね、キーボ」
キーボ「………」
アンジー「………そうと決まれば、さっそくいこー?」
アンジー「そろそろ、朝ご飯の時間だからねー!」
キーボ「…ええ、そうですね!」
392: 2019/03/17(日) 15:46:08.13 ID:/rx5YNNCO
………………………………………………………………
キーボ(ーーーあれから、1週間以上もの時が経過しました)
キーボ(ボクら三人はこれといった問題も無く、こちらの屋敷での生活を続けていました)
キーボ(仕事の日は三人で掃除を行い、空いた時間にはアンジーさんと共に、真宮寺クンの………………【鰤清劇場】を聴いていたのです)
キーボ(その話の中には、護廷十三隊………尸魂界と現世を主だって守護する十三の部隊が、他勢力と交戦を繰り返していたという内容もありました)
キーボ(………藍染惣右介(あいぜん そうすけ)をリーダーとした裏切り者の氏神達と、破面(アランカル)と名付けられた悪霊の軍団との戦争ーーー)
キーボ(ーーーそれに加えて、因幡影狼佐(いなば かげろうざ)という氏神が率いる人造魂魄との戦争なんてものまでありました)
キーボ(そのすべてが、興味深いものでした)
キーボ(それは今でもボクの記憶領域に大切に記録されています)
キーボ(絶対に記録しなければ、なりません)
キーボ(なぜなら、その話は、真宮寺クンがボク達のために話してくれたことでーーー)
キーボ(ーーー他ならぬ、アンジーさんと一緒に聴いたことなのですから)
キーボ(そうして近くで、話題を共有することによって、ボクはアンジーさん達とこれまで以上に仲良くなれたように思います)
キーボ(真宮寺クンの持つカルタや花札で遊んだり、アンジーさんが購入したお菓子を一緒に食べたりもしました)
キーボ(………まあ、それでも、アンジーさんに、その……… “ あーん ” を、させて貰ったりはしませんでしたがーーーー)
393: 2019/03/17(日) 15:52:19.74 ID:/rx5YNNCO
キーボ(………そんな中、とうとうボクに封筒が届きました)
キーボ(そう、ボクが瀞霊廷に住むための申請、その結果に関する通知の入った封筒が、です)
キーボ(空鶴さんが瀞霊廷に行った手続き、それに対する返事が今日ついに届き、空鶴さんからボクに手渡されたのです)
キーボ(それを知ったアンジーさんから、一緒に結果を見ても良いか頼まれ、その通り一緒に見ることにしました)
キーボ(ちなみに、真宮寺クンもその場にいて、アンジーさんと同様のことを頼んだため、三人で結果を見ることになりました)
キーボ(そして、その結果の内容はーーーー)
394: 2019/03/17(日) 15:53:45.87 ID:/rx5YNNCO
キーボ(ーーー合格、でした…………)
395: 2019/03/17(日) 15:55:12.08 ID:/rx5YNNCO
キーボ「………」
アンジー「………」
真宮寺「………」
キーボ「…えーと、その、」
キーボ「これは、どういうーーー」
アンジー「ーーーすごいねー、キーボ!」
396: 2019/03/17(日) 15:56:48.87 ID:/rx5YNNCO
キーボ「ーーーえっ、?」
アンジー「…だって、キーボは、瀞霊廷に住めるんだよー?」
真宮寺「………」
アンジー「魂があるだけじゃなくて、すごい場所に住めるんだよー?」
アンジー「それって、ものすごく、すごいことなんだよー!」
キーボ「………」
アンジー「だからーーーいってらっしゃい、なんだよー!」ニパアッ
397: 2019/03/17(日) 15:58:48.85 ID:/rx5YNNCO
キーボ「…アンジー、さん…」
アンジー「………どうしたー、キーボ?」
アンジー「瀞霊廷に住めるなんて、めったに無い話だよー?」
アンジー「もっと、喜んだらー?」
キーボ「………いえ、そうではなくーーー」
アンジー「ーーー?」
キーボ「………アンジーさん、あなたは、いまーーー」
キーボ「ーーー笑いながらーーー」
キーボ「ーーー泣いてーーーー」
398: 2019/03/17(日) 16:00:37.34 ID:/rx5YNNCO
アンジー「ーーーえっ、?」ジワッ…
ポロ…ポロポロ…
アンジー「…あっ、あれ?」ポロポロ
アンジー「………おかしいなー? なんでかなー?」ガクッ…
アンジー「あれ?」ガクガク…
アンジー「あれれ?」ガクガクブルブル…
キーボ「………」
真宮寺「………」
アンジー「…うーん、寒くて、身体ヘンになってるのなー?」ブルブル…
アンジー「キーボみたいには、いかないねー、にゃははー!」ガクガク…
キーボ「アンジーさん………」
399: 2019/03/17(日) 16:02:27.75 ID:/rx5YNNCO
アンジー「………ごめんねー、ちょっと、アンジーの部屋で落ち着いてくるねー?」ブルブル…
キーボ「えっ………」
真宮寺「………」
アンジー「ーーー大丈夫! ちょっと、落ち着けば、なんとかなるからー! ぐっばいならー! にゃははー!」タッタッ…
キーボ「あっ、アンジーさんーーー」ダッ…
ガシッ!
キーボ「!?」
真宮寺「………」ググッ
400: 2019/03/17(日) 16:04:39.58 ID:/rx5YNNCO
キーボ「…なんですか、真宮寺クン? この手は」
真宮寺「いま、君を夜長さんのところに行かせるわけにはいかない」
真宮寺「そう、思っただけだヨ」
キーボ「…どうして、そう思ったんですか?」
真宮寺「…逆に訊くけど、君はいま、夜長さんがああなった理由がわかるかい?」
キーボ「それは………」
真宮寺「わからないのなら、行くべきではないヨ」
キーボ「………」
真宮寺「不用意なことを言えば、傷つけてしまうかもしれない」
真宮寺「場合によっては、最悪の結果で終わりを迎えることになるかもしれない」
真宮寺「コトダマは時に、氏を産む凶器にもなり得るのだから」
真宮寺「そうだろう、キーボ君?」
401: 2019/03/17(日) 16:09:58.80 ID:/rx5YNNCO
キーボ「………だったら、キミはわかるんですか?」
キーボ「アンジーさんの、あの様子について」
真宮寺「少なくとも、今の君よりはわかるつもりだヨ」
真宮寺「夜長さんとは、今の君よりもずっと長く時間を共有していたわけだからネ」
キーボ「………」
真宮寺「…一応言っておくけど、夜長さんがどうしてああなってしまったのは、自分で考えて欲しい」
キーボ「………………」
真宮寺「………君が今それをわからないのは、夜長さんと再会したことによって得られた、安心感による油断が原因だとは思うけどーーー」
真宮寺「ーーー逆に言えば、こうして自分と夜長さんの関係に不安を感じている今であれば、気づけるはずだヨ」
402: 2019/03/17(日) 16:16:23.68 ID:/rx5YNNCO
真宮寺「………君は、斬魄刀に関する話題の際、自分に心が与えられた理由について、気づくことができたじゃないか」
真宮寺「その正解不正解は兎も角、僕が見出した結論と、同じ結論まで辿り着くことができたじゃないか」
真宮寺「それだけ頭を回転させることもできるのなら、夜長さんがああなってしまった理由にだって、自力で気づけるはずなんだ」
真宮寺「違うかい?」
キーボ「………」
真宮寺「………もし、どうしても自分から理由に気づけないというのなら、ある程度は僕から話しても良い」
真宮寺「だけど、それで夜長さんに対して、何かしてあげられるとは思わないことだヨ」
403: 2019/03/17(日) 16:18:14.53 ID:/rx5YNNCO
キーボ「………」
キーボ「………………」
キーボ「………………………………」
………………………………………………………………
406: 2019/03/17(日) 21:05:03.53 ID:/rx5YNNCO
………………………………………………………………
キーボ(ーーー真宮寺クンにああ言われてから、約半日の時が過ぎました………)
キーボ(今日は………偶然か必然かは不明ですが、休日であったため、充分な時間が用意されていました)
キーボ(その間に、ボクは計算を繰り返し、思考をまとめーーー)
キーボ(ーーーボクとしての “ 解 ” を出した)
キーボ(なぜ、アンジーさんが、ああなってしまったのか?)
キーボ(その解を携えて、ボクは、いま、修練場の扉の前にいる)
キーボ(ボクが、 “ 解を出した ” と、真宮寺クンにメールを送ったあと、 “ 指定した時間に修練場で話そう ” と返信されたのです)
キーボ(故に、ボクは、いま、修練場の扉の前にいる)
キーボ(…ボクの出した解が、完全に正しいとは限らない。いや、完全とは到底言えないものでしょう)
キーボ(だからこそ、より正しい解を、見出すために、ここにいる)
キーボ(最良の結果を求めて、こうしてここにいる)
キーボ(………………ボクに、痛覚は無いはずなのに)
キーボ(また、こんな、気持ちになるだなんて…………)
407: 2019/03/17(日) 21:07:20.53 ID:/rx5YNNCO
キーボ(ーーーそれでも、ボクは歩み続ける)
キーボ(そうしないと、前に進めないから)
キーボ(辿り着けないものがあるから)
キーボ(向き合えないものがあるから)
キーボ(だから、ボクは歩む)
キーボ(いま、ここで)
キーボ(………共にーーー)
キーボ(………いざーーーー)
ガチャッ………
408: 2019/03/17(日) 21:12:14.71 ID:/rx5YNNCO
キーボ「………」
真宮寺「ーーー来たようだネ」
キーボ「ーーーええ、来ましたよ」
キーボ「ボクとしての、解を携えて」
バタンッ………ガチャッ!
真宮寺「ーーーそれなら、さっそく訊かせて貰うヨ? キーボ君」
真宮寺「なぜ、夜長さんは、ああなってしまったのか?」
真宮寺「その解をーーー」
真宮寺「ーーー他ならない、君の推理を、ネ」
409: 2019/03/17(日) 21:13:36.09 ID:/rx5YNNCO
キーボ「………」
キーボ「…………………」
キーボ「……………………………………………」
410: 2019/03/17(日) 21:15:25.10 ID:/rx5YNNCO
キーボ「………単刀直入に言いましょう」
真宮寺「………」
キーボ「アンジーさんが、ああなってしまったのはーーー」
キーボ「ーーー “ こわいから ” です」
411: 2019/03/17(日) 21:16:43.37 ID:/rx5YNNCO
真宮寺「ーーーこわい、ネ………」
キーボ「………」
真宮寺「一応確認しておくけど、夜長さんが、何をこわがっていると言うんだい?」
真宮寺「まさかとは思うけど、君が瀞霊廷に住むことで離ればなれになってしまうことーーー」
真宮寺「ーーー “ それだけ ” が、こわいなんて、言うつもりは無いよネ?」
412: 2019/03/17(日) 21:18:36.83 ID:/rx5YNNCO
キーボ「………そうですね」
キーボ「 “ それだけ ” ではありませんよ」
真宮寺「………」
キーボ「 “ それだけ ” ならば、あんな風に、震えたりはしない………」
キーボ「ならば、アンジーさんがこわがる理由は、他にもある」
キーボ「その理由こそが、あの身体の震えでーーー」
キーボ「ーーーボクが瀞霊廷に住めるという事実が、その震えを誘発してしまった」
キーボ「こわがる他の理由を、想起させてしまった」
キーボ「そういうこと、なのでしょう」
413: 2019/03/17(日) 21:20:43.67 ID:/rx5YNNCO
真宮寺「………それで、結局それは、何なのかな? キーボ君?」
キーボ「…………」
真宮寺「夜長さんが、他に、こわがっていることって、サ」
414: 2019/03/17(日) 21:22:07.20 ID:/rx5YNNCO
キーボ「………………………………………………」
真宮寺「………………………………………………」
415: 2019/03/17(日) 21:23:18.23 ID:/rx5YNNCO
キーボ「………アンジーさんがこわがっているものーーー」
キーボ「ーーーそれは、 “ 氏 ” です」
416: 2019/03/17(日) 21:25:05.90 ID:/rx5YNNCO
真宮寺「………」
キーボ「これは、事故や事件に巻き込まれることだけを恐れているのではなく、寿命による氏をも恐れているんです」
真宮寺「寿命、ネ」
キーボ「ええ、寿命です」
キーボ「事実として、流魂街の住民は、そのほぼすべてに明確な寿命があります」
キーボ「【瀞霊廷に住める者達とは異なり】【短い時間の中で】【新しい命に生まれ変わらなければならない】ーーー」
キーボ「ーーーそんな寿命が」
417: 2019/03/17(日) 21:28:18.79 ID:/rx5YNNCO
真宮寺「………」
キーボ「………生まれ変わりとは、言い換えるのならば、今ある自分を抹消され、まったく違う新しい自分に存在を書き換えられることです」
キーボ「ボクは、それを、ある意味での “ 氏 ” であると考えています」
真宮寺「………」
キーボ「アンジーさんもまた、同じように考えている」
キーボ「故に、それをこわがっている」
キーボ「しかも、この流魂街では、いつ自分が輪廻の輪を通り、生まれ変わることになるかわからない」
418: 2019/03/17(日) 21:31:48.10 ID:/rx5YNNCO
キーボ「現世の出生率が増加した場合は、魂魄バランスを維持するため、尸魂界の魂魄には輪廻の輪を通って現世の命に生まれ変わって貰う必要が出て来ますしーーー」
キーボ「ーーー現世で多数の氏亡者が出た場合は、そうして尸魂界に来た魂魄の数だけ、これまで尸魂界にいた魂魄は輪廻の輪を通り、別次元に行かなくてはならない」
キーボ「そう、現世の状況次第では、いつ自分が輪廻の輪を通らされるか、わからない」
キーボ「いつ、別次元に送られて、自身を抹消されることになるか、わからない」
キーボ「いつ、現世のどこの誰に生まれ変わることになるか、わからない」
キーボ「そうした、 “ 氏 ” を、いつ迎えても、おかしくはない」
キーボ「それを思えば、アンジーさんがあんな風に震えて、こわがるのは当然ーーー」
キーボ「ーーーそういうこと、ですよね?」
419: 2019/03/17(日) 21:34:31.19 ID:/rx5YNNCO
真宮寺「………転生イコール “ 氏 ” 」
真宮寺「それを、こわがる、ネ………」
キーボ「………」
真宮寺「………だけど、それはあくまでもキーボ君の価値観でしョ?」
キーボ「………」
真宮寺「なぜ、夜長さんもキーボ君と同様にこわがる必要があるんだい?」
真宮寺「彼女が生前に抱いていた価値観は、知っているよネ?」
キーボ「………ええ、知っていますよ」
キーボ「アンジーさんは、生まれ変わりを肯定していましたから」
420: 2019/03/17(日) 21:36:28.14 ID:/rx5YNNCO
真宮寺「だとしたら、なぜ、生まれ変わりをこわがる必要があるんだい?」
キーボ「…………」
真宮寺「生前に受け入れていたことを、なぜ氏後になってからこわがるのかな?」
421: 2019/03/17(日) 21:40:56.08 ID:/rx5YNNCO
キーボ「………こわいに決まっているじゃないですか」
キーボ「いまのアンジーさんは、神さまの声を、しっかり聞くことができないのでしょうから………」
真宮寺「………」
キーボ「アンジーさんが、生前に生まれ変わりを受け入れていたのは、神さまの存在があったからです」
キーボ「神さまという、アンジーさんが絶大の信頼を寄せる相手のやることだからこそ、受け入れられたんです」
キーボ「しかし、この尸魂界では、アンジーさんの定義する神さまの声を、生前のように聞くことができない」
キーボ「神さまが、この世界で行われる生まれ変わりを管理しているという、確証を持てない」
キーボ「故に、生まれ変わりを、受け入れることはできなかった」
キーボ「だから、ああして、こわがっているんです」
422: 2019/03/17(日) 21:44:08.31 ID:/rx5YNNCO
真宮寺「………神さまの声が聞こえない、ネ………」
キーボ「………ええ、そうです」
真宮寺「そう思う根拠は、何かあるのかい?」
キーボ「主に二つあります」
真宮寺「………」
キーボ「一つ目の根拠、それは、アンジーさんがこの世界で神さまの言葉を述べる際に、『きっと神さまは~』などといった表現を使っているということです」
キーボ「もし、生前と、同じように神さまの声が聞こえるのであれば、ああいった言い回しはしないでしょう」
真宮寺「………」
キーボ「そして、二つ目の根拠ですがーーー」
キーボ「ーーーそれは、この屋敷にはじめて来た時、アンジーさんの部屋に美術品の一切が無かったことです」
423: 2019/03/17(日) 21:55:42.16 ID:/rx5YNNCO
真宮寺「………」
キーボ「アンジーさんは、生前、自身が美術品を手掛けることが可能なのは、神さまのおかげであるかのような発言をしていました」
キーボ「それはすなわち、アンジーさんの “ 才能を発揮できる条件 ” には、 “ 神さまの声が聞こえること ” が含まれていたということになります」
キーボ「逆に言えば、神さまの声が聞こえない場所では、才能を発揮できず、納得のいく作品が作れないということでもある」
キーボ「そして、アンジーさんの部屋には美術品の一切が無かった」
キーボ「それは、アンジーさんが自分で納得のいく作品を作ることができていない、すなわち才能を発揮できる状態に無いことを意味している」
キーボ「そう、才能を発揮する上で、必要となる神さまの声が聞こえないからーーー」
真宮寺「………」
キーボ「ーーーそうして、神さまの声が聞こえないが故に、神さまが生まれ変わりを再肯定することは決して無い」
キーボ「それでは、生まれ変わりを受け入れるなど、到底できやしない」
キーボ「そういうことなのでは、ありませんか?」
424: 2019/03/17(日) 22:05:43.57 ID:/rx5YNNCO
真宮寺「………神さまの声が聞こえないなら、どうして神さまの声が聞こえているかのような発言をする必要があるんだい?」
キーボ「………そんなの決まっているじゃないですか」
キーボ「そうしないと、耐えられなかったからです」
キーボ「氏の恐怖に」
真宮寺「………」
キーボ「………いまのアンジーさんは、生前の時とは違う」
キーボ「常に自分を導いてくれて、なおかつ最大級に信頼を寄せる神さまの声を、生前のように聞くことができなくなった」
キーボ「才能を振るうことも叶わなくなった」
キーボ「ただ、この流魂街で、生まれ変わりという名の “ 氏 ” を待ち続けるだけ」
キーボ「………こわいに決まっています」
キーボ「そのこわさに耐えるためには、神さまに頼るしか無かった」
キーボ「だから、アンジーさんは、 “ 神さまの声が、生前と同様に、聞こえていることにする ” しか無かったんです」
425: 2019/03/17(日) 22:15:02.46 ID:/rx5YNNCO
真宮寺「………」
キーボ「………いえ、今でも怯えているところから見るに、完全に耐えきれているわけでは無いのでしょう」
キーボ「ですが、それでも耐えるために、今でも “ 神さまの声が、生前と同様に、聞こえていることにする ” しか無かったんです」
キーボ「………キミがそうして、正気でいられることがその証明でしょう」
真宮寺「………どういう意味だい?」
真宮寺「どうして、そこで、僕が出てくるのかな?」
キーボ「………人は、【一歩離れた場所から】【落ち着いていない誰かを見ることによって】【自分を落ち着かせることができる】ものなのです」
キーボ「キミにも、よくわかる理屈だと思いますが」
真宮寺「………………」
キーボ「実際にキミは、アンジーさんが “ 神さまの声を聞こえていることにした ” 、その姿を見ていたのでしょう?」
キーボ「見ていたからこそ、冷静に “ 何か ” を見つめ直すことができた」
キーボ「だからこそ、そうして正気を保てている」
キーボ「そう、なのでしょう?」
426: 2019/03/17(日) 22:17:26.25 ID:/rx5YNNCO
真宮寺「………」
真宮寺「………………………」
真宮寺「……………………………………………」
427: 2019/03/17(日) 22:23:57.97 ID:/rx5YNNCO
真宮寺「………そうだネ、その通りだヨ」
キーボ「!」
真宮寺「………僕は、ここに来たばかりの頃、正気を保つのが困難だった」
真宮寺「氏神からこの世界に関する説明を受ける際は、医療所の中で行われーーー」
真宮寺「ーーー途中で何度も鎮静剤を投与され、安静にするよう言われたり、妙な医療機器を頭に取り付けられたりもした」
キーボ「………」
真宮寺「ーーーそれから………親切な氏神からカウンセリングを受けるなどして、いくらか落ち着いたけどーーー」
真宮寺「ーーーそれでも、ずっと正気を保っていられるわけじゃあ無かったんだ」
真宮寺「….……そんな中で、ここに来た他の皆から、キーボ君が言うような状態の夜長さんを、見せられた………」
真宮寺「それで………いろいろと、思い、知らされた、ん、だヨ………」
キーボ「………………」
真宮寺「その後に………茶柱さんに投げ飛ばされたり、百田くんに何発か貰ったり、その二人を含めた皆と対話して、支えられてーーー」
真宮寺「ーーーその結果、どうにか今のように、正気を保ち続けることが、できるようになった」
真宮寺「僕がいま正気でいられるのは、君の言う通り、夜長さんのことがあるからだ」
真宮寺「それは、確かな事実だヨ」
キーボ「………やはり、そうでしたか」
428: 2019/03/17(日) 22:27:17.99 ID:/rx5YNNCO
真宮寺「…一応言っておくけどサ………」
キーボ「………」
真宮寺「百田君達は、決してアンジーさんを見捨てて、自分達だけ別の場所に行ったわけじゃないからネ?」
キーボ「………わかっていますよ、そんなこと」
キーボ「百田クン達は、アンジーさんのためにここに居座るだなんて、できるはずが無かった」
キーボ「なぜなら、それをしてしまえば、アンジーさんの心は氏ぬのですから」
真宮寺「…………」
429: 2019/03/17(日) 22:30:07.57 ID:/rx5YNNCO
キーボ「………アンジーさんだって、生前のことを振り返らなかったわけではないのでしょう」
キーボ「だからこそ、百田クン達を引き止めるようなことは、しなかった」
キーボ「それどころか、きっと、笑顔で送り出した」
キーボ「皆を、誰もが憧れる世界へと」
キーボ「今日、ボクを瀞霊廷に送り出そうと、した時のように………」
真宮寺「………」
キーボ「そんな中で、百田クン達が空鶴さんに無理を言って、居座ったりすれば、どうなるか?」
キーボ「アンジーさんのために、百田クン達が自身の可能性を閉ざしてしまったら、何がどうなるか?」
キーボ「それは、アンジーさんの心を氏なせてしまうことになる」
キーボ「故に、百田クン達は、アンジーさんを残して、瀞霊廷に行くしか無かったのでしょう」
真宮寺「…………」
430: 2019/03/17(日) 22:32:59.88 ID:/rx5YNNCO
キーボ「………もちろん、百田クン達もアンジーさんのために何かできることは無いか必氏に考えたとは思います」
キーボ「彼らが、真宮寺クンが言っていたような夢を想い描き、それを目指すようになった理由ーーー」
キーボ「ーーーそれは、彼ら自身の純粋な夢ということもあるでしょうが、アンジーさんに元気になって欲しいという理由もあったはずです」
真宮寺「………」
キーボ「だからこそ、東条さん・茶柱さん・ゴン太クンの三人は、人の心をケアする方法を学ぶことで、アンジーさんに元気になって貰えないかと考え、救護部隊を目指した」
キーボ「だからこそ、赤松さん・王馬クン・天海クン・星クンの四人は、アンジーさんの心に届いて元気になれるような芸を編み出そうと考え、音楽芸人を目指した」
キーボ「だからこそ、百田クンは科学者の道を選んだ」
キーボ「そうして百田クンは、入間さんやその発明品から発想力というものを学び、それを我が物とすることに決めた」
キーボ「アンジーさんの心に届くような言葉を、そのための手法を、発想できるようになるために」
真宮寺「………………」
キーボ「入間さんは、百田クンのそれに協力して、百田クンを支える形で、アンジーさんに元気になって貰おうとした」
キーボ「そうして、それぞれ、アンジーさんが元気になるためには、どうすれば良いか考え、実行に移したのでしょう」
431: 2019/03/17(日) 22:34:40.10 ID:/rx5YNNCO
キーボ「………ですが、現状それは上手くいっていない」
真宮寺「………」
キーボ「故に、いま、アンジーさんは、ああなってしまっている」
真宮寺「………………」
キーボ「………ただ、それだけのことなんですよ」
432: 2019/03/17(日) 22:36:02.65 ID:/rx5YNNCO
真宮寺「………君の言う通りだよ、キーボ君」
真宮寺「百田君達は、決して、夜長さんを見捨てたわけじゃない」
真宮寺「それどころか、今でも夜長さんに何かできないかを考え、模索している」
真宮寺「それをわかってくれたようで何よりだヨ………」
キーボ「…………」
433: 2019/03/17(日) 22:37:50.06 ID:/rx5YNNCO
真宮寺「………そう、だからこそ、夜長さんは、ああなった」
真宮寺「あの百田君達であっても、誰も、氏の恐怖を取り払えなかったが故に、夜長さんはああなった」
真宮寺「これまで、“ 聞こえるようにした ” 神さまの存在と、君の存在で押さえていた氏の恐怖ーーー」
真宮寺「ーーーそれが、君が瀞霊廷に住めると知った瞬間に、吹き出してしまった」
真宮寺「その寂しさのあまり、吹き出してしまった」
真宮寺「だから、夜長さんは、ああなってしまったんだよ」
434: 2019/03/17(日) 22:43:02.54 ID:/rx5YNNCO
キーボ「ーーーアンジーさんは、自分と誰かとの間に、深い繋がりが欲しかったんですね」
キーボ「それこそ、空鶴さんと岩鷲クンの関係のようなーーー」
キーボ「ーーー他者が入り込めない程の、深い繋がりが」
真宮寺「………」
キーボ「アンジーさんは、生まれ変わりという名の “ 氏 ” に怯えていた」
キーボ「故に、それを抑えようと、誰かを求めた」
キーボ「誰かとの、深い繋がりを持とうとしたのでしょう」
435: 2019/03/17(日) 22:45:10.40 ID:/rx5YNNCO
キーボ「その対象は、最初は真宮寺クンだった」
真宮寺「………」
キーボ「………キミにそれを求めることは、アンジーさんとしても迷いがあったでしょうがーーー」
キーボ「ーーーあの学園での、当時の状況を考慮すれば、アンジーさんは、キミのことをトラウマになるレベルで恐怖はしていないはずです」
キーボ「それに加えて、今のキミは信頼できる言動を取っている」
キーボ「アンジーさんもまた、キミと一緒にいたい思えるくらいには、今のキミを信頼していた」
キーボ「故に、アンジーさんは、今のキミならば、氏の恐怖を抑えるに足る存在であると考え、キミを居候させることを空鶴さんに頼み込んだ」
真宮寺「………」
キーボ「そうして、可能な限り、二人、一緒にいることにした」
キーボ「ボク達が再開したばかりの時、一人で渡しに行くことも可能な回覧板を、二人で渡しに行っていたくらいには」
436: 2019/03/17(日) 22:46:50.64 ID:/rx5YNNCO
キーボ「………ですが、やはり何処か上手くいかなかった」
キーボ「………まあ、無理も無いことですね」
真宮寺「………」
キーボ「………そこで、新たに現れた存在が、ボクでーーー」
キーボ「ーーーそれが、百田クン達と同じように瀞霊廷に住めるとなればーーー」
キーボ「ーーー戸惑いも、しますよ」
439: 2019/03/17(日) 22:52:42.22 ID:/rx5YNNCO
真宮寺「ーーー君は、本当によく、わかっているようだネ………」
真宮寺「そう、キーボ君、君は間違いなく夜長さんの希望だった」
キーボ「………」
真宮寺「君は常識的に考えて瀞霊廷に住めるはずの無い存在だ」
キーボ「…ええ、まあ………」
真宮寺「故に、流魂街………この志波邸に留まり続けるのが道理」
真宮寺「しかも、君がこの志波邸に留まれば、どうなるか?」
真宮寺「誰を、最優先対象とすることになるか?」
真宮寺「言うまでも無く、夜長さんだ」
キーボ「………………」
真宮寺「それは、夜長さんにとっても同じこと」
真宮寺「お互いを、これ以上に無いほど大切にできる関係を築き上げることができる」
真宮寺「夜長さんは、そう考えたはずだ」
441: 2019/03/17(日) 22:56:06.98 ID:/rx5YNNCO
真宮寺「だけど、君が瀞霊廷に住めるとなると話は変わる」
真宮寺「瀞霊廷に住めるなら、ここにいる理由は無くなる」
真宮寺「夜長さんは、君を送り出さなくてはならない」
真宮寺「自身の抱える過去を、理由に」
キーボ「………」
真宮寺「そうして、君は夜長さんから離れ、入間さん達と一緒にいることになる」
真宮寺「そんな中で、君が夜長さん個人を最優先するのは難しい」
真宮寺「そうだよネ?」
キーボ「………そうですね」
キーボ「アンジーさんと一緒に住めるのは、今日来た通知によれば、あと1週間しか無い」
真宮寺「………」
キーボ「もちろん、ボクが瀞霊廷に住んだ後も、空間転移装置の存在を考慮すれば、定期的にアンジーさんと会うことは可能でしょうがーーー」
キーボ「ーーー流石に、アンジーさんだけを最優先で…というのは困難であると言わざるを得ません」
442: 2019/03/17(日) 22:58:06.61 ID:/rx5YNNCO
真宮寺「ーーーそれに加えて、君は瀞霊廷に住むことによる特権を享受できることになる」
真宮寺「輪廻転生の輪から脱却できるという、特権を、ネ」
キーボ「………」
真宮寺「それは、生まれ変わりという名の “ 氏 ” に怯える夜長さんにとって、待望の的なんだ」
443: 2019/03/17(日) 23:01:23.80 ID:/rx5YNNCO
キーボ「待望の的、ですか………」
真宮寺「そうだネ」
真宮寺「それも、超高校級に、ネ………」
キーボ「………まあ、確かに、ボクは皆さんとは違いますからね………」
真宮寺「………」
キーボ「………ボクは、違う」
キーボ「長生きしても、寿命はある、そんな皆さんとは違います」
キーボ「それは、否定できないことです」
444: 2019/03/17(日) 23:03:29.39 ID:/rx5YNNCO
真宮寺「…そうだネ、その通りだヨ、キーボ君…」
キーボ「………」
真宮寺「君には寿命が無い」
真宮寺「君は、永遠を持っている」
真宮寺「ロボットであるが故に」
キーボ「…ええ………」
真宮寺「もちろん、機械的な寿命はあるかもしれないけど、悪くなった部分は取り替えれば済む話だ」
真宮寺「入間さんに頼めば、そういったことを自動でしてくれる発明品を作ってくれるんじゃないかな?」
キーボ「………………」
445: 2019/03/17(日) 23:05:49.10 ID:/rx5YNNCO
真宮寺「そうなれば、君は永遠だ」
真宮寺「君は、輪廻転生を脱却できた時点で、永遠を約束されている存在となり得るんだ」
真宮寺「………瀞霊廷の霊力ある魂魄が、倫理的問題を廃した時、永遠となれる可能性を持つ存在だとするならばーーー」
真宮寺「ーーーキーボ君、君は今の時点で既に、永遠を約束された存在だと言える」
キーボ「………」
真宮寺「………夜長さんとは、真逆の存在と言っても良い」
真宮寺「それが、夜長さんにとって、どう映るか?」
真宮寺「その相手と、深い繋がりを持つことができるだろうか?」
真宮寺「一緒にいて、氏の恐怖を抑えられるだろうか?」
真宮寺「想像に難くない話だヨ」
真宮寺「期待と現実のあまりのギャップに、夜長さんがああなってしまうのは、無理も無いことだろうネ………」
キーボ「………………」
446: 2019/03/17(日) 23:07:57.48 ID:/rx5YNNCO
真宮寺「………そんな中で、君がそこまで現状を理解している」
真宮寺「それほどまでの進化を、君は遂げている」
キーボ「………」
真宮寺「それは、霊体という自由度の高い身体になって電子頭脳が活性化したが故なのかーーー」
真宮寺「ーーーそれとも、単純に “ 頼れる誰か ” がいないが故に成長したのかは知らないけれどーーー」
真宮寺「ーーーそうして、君が進化したことは、今の状況において、とても喜ばしいことだヨ」
キーボ「………………」
真宮寺「………うん、この分なら、君が夜長さんの神さまを全否定することは無さそうだネ………」
キーボ「………そんなこと、するはずがないでしょう」
447: 2019/03/17(日) 23:09:59.92 ID:/rx5YNNCO
キーボ「神さまを、全否定する?」
キーボ「それは、人の心の基盤を破壊するということですよ」
真宮寺「………」
キーボ「………人には、誰しも心の基盤としている過去があります」
キーボ「家族、友人、恩師、恋人、夢………人によって内容は変わるでしょうが、それでも基盤としている過去がある」
キーボ「アンジーさんの場合、それが神さまだった」
真宮寺「………………」
キーボ「そう、神さまは、人によっては、かけがえのない心の基盤、立派な過去なんです」
キーボ「なのに、その神さまが存在する可能性を奪い尽くせばどうなるか?」
キーボ「そうやって心の基盤を破壊するような真似をすれば、人に何を与えることになるか?」
キーボ「………計算するまでも無いことです」
キーボ「ボクは、そういった行為に手を染めたくなどありません」
448: 2019/03/17(日) 23:11:56.65 ID:/rx5YNNCO
真宮寺「………」
キーボ「………もちろん、場合によっては、そうした行為に手を染めねばならない時もあるでしょう」
キーボ「………仮に、仮に、儀式や貢ぎ物と称して、人の人生を搾取したりーーー」
キーボ「ーーー人の首を集めまわる人物がいたのであれば、ボクは全身全霊を込めて破壊することでしょう………」
真宮寺「………………」
キーボ「しかし、アンジーさんは違う」
キーボ「アンジーさんが、それも過去を振り返ったアンジーさんが、そんな真似に手を染めるはずが無い」
キーボ「仮に、それをしているのならば、空鶴さん達に気づかれないはずが無い」
キーボ「気づかれているのなら、空鶴さん達の元に、未だアンジーさんがいられるはずが無い」
キーボ「故に、アンジーさんは、何もしていない」
キーボ「ならば、ボクに、ボク達に、アンジーさんの神さまを全否定する権利など無い」
キーボ「そうでしょう?」
449: 2019/03/17(日) 23:14:00.51 ID:/rx5YNNCO
真宮寺「…その通りだと思うヨ」
真宮寺「その言葉は、王馬君達の主張と同じだ」
キーボ「………」
真宮寺「君が彼らと同じことを話してくれて、僕は本当に嬉しいヨ」
キーボ「………………」
真宮寺「彼らは、たった一つしか無いとされる真実が、どういった結果を産むか知っている」
真宮寺「それを知っている彼らが、誰かの命がかかっているわけでも無い状況でーーー」
真宮寺「ーーー誰かが傷つくわけでも無い状況で、不用意に神さまを全否定するような発言をするはずが無かった」
真宮寺「そして、それは君もまた同じ」
真宮寺「君が彼らと同じで、夜長さんと話すに足る存在で、僕は本当に嬉しいヨ」
450: 2019/03/17(日) 23:22:25.47 ID:/rx5YNNCO
キーボ「ーーーそうは言っても、どうしてもわからないことが二つほど残っているんですけどね………」
真宮寺「ーーー何かな? それは」
キーボ「………まず一つ目ですが、なぜ、百田クン達は、アンジーさんの抱える恐怖を、抑えることができなかったのでしょうか?」
真宮寺「………」
キーボ「さっき言ったことと矛盾するかもしれませんが、百田クン達なら、どんな困難があっても打ち破れる気がするんです」
キーボ「それも、もっと、早い段階で」
キーボ「なのに、現状は、そうはなっていない」
キーボ「百田クン達は、アンジーさんが氏の恐怖に耐えられるような、何かしらの説得をすることができていない」
キーボ「だとしたら、それが上手くいかなかった相応の理由があるはずなんです」
真宮寺「………………」
キーボ「なので、真宮寺クンには、その理由を話すか、近いうちに百田クン達と連絡を取らせて欲しいのです」
キーボ「そうしてからーーー」
真宮寺「ーーー悪いけど、それはできない」
451: 2019/03/17(日) 23:24:08.07 ID:/rx5YNNCO
キーボ「ーーーどうして、ですか?」
真宮寺「どうしても、だヨ」
キーボ「………」
真宮寺「それだけは、どうしても、できない」
キーボ「………どうして、なんですか?」
真宮寺「それも、言えない…………」
452: 2019/03/17(日) 23:26:13.10 ID:/rx5YNNCO
キーボ「………………………………………………」
真宮寺「………………………………………………」
453: 2019/03/17(日) 23:32:49.06 ID:/rx5YNNCO
キーボ「………わかりました」
キーボ「そこまで言うのであれば、きっと話せない相応の事情があるのでしょう」
キーボ「だとしたら、ボクは無理に解答を要求したりはしません」
真宮寺「ごめんヨ………」
キーボ「………それでは、二つ目の疑問に答えて貰えますか?」
真宮寺「………うん、何かな?」
キーボ「なぜ、アンジーさんは瀞霊廷に住めないのでしょうか?」
454: 2019/03/17(日) 23:37:08.92 ID:/rx5YNNCO
真宮寺「………」
キーボ「入間さんの【パワーセンサー】に反応した以上、アンジーさんには霊力があるはずです」
キーボ「しかし、どういうわけか、瀞霊廷に住むことはできない」
キーボ「住めるのであれば、流魂街に留まってはいない」
キーボ「ならば、瀞霊廷に住めない、相応の理由があるはずです」
真宮寺「………………」
キーボ「教えてください、真宮寺クン」
キーボ「これは、アンジーさんと向き合うために必要な情報なんです」
キーボ「不用意なことを言わないようにするためにも、知識が必要なんです」
キーボ「どうか、教えてくれませんか?」
キーボ「真宮寺クン………!」
455: 2019/03/17(日) 23:38:54.36 ID:/rx5YNNCO
真宮寺「………わかった、教えるヨ」
キーボ「!」
真宮寺「どうして、夜長さんが瀞霊廷に住むことができないのか?」
真宮寺「その理由を、ネ」
キーボ「………はい! お願いします!」
456: 2019/03/17(日) 23:42:58.01 ID:/rx5YNNCO
真宮寺「………単刀直入に言えば、夜長さんは瀞霊廷に住める条件を満たしている」
キーボ「!」
真宮寺「夜長さんは君の言う通り霊力を持っているし、僕と違って安定して保たれたままだ」
真宮寺「手続き上は、問題なく住むことが可能なはずだヨ」
キーボ「それなら、どうしてーーー」
真宮寺「それは、夜長さんの霊力の形に問題があるからサ」
キーボ「霊力の… “ 形 ” …?」
真宮寺「………夜長さん、彼女はーーー」
457: 2019/03/17(日) 23:44:19.19 ID:/rx5YNNCO
真宮寺「ーーー滅却師(クインシー)だ」
460: 2019/03/18(月) 22:13:44.88 ID:c+j1yIr9O
キーボ「………クインシー?」
真宮寺「滅却師というのは、産まれながらに霊力を持ち、霊子を操作する術を持った人間のことだヨ」
キーボ「………霊子を操作?」
真宮寺「…まァ、霊子を弓矢の形にしたり、そういうことができると思ってくれれば良いヨ」
キーボ「えっ、いや、しかし、アンジーさんにそんな力はーーー」
真宮寺「そうだネ、彼女は昔も今もそんな力は一切扱えない」
キーボ「………」
真宮寺「もっとも、夜長さんの場合は、種族としては滅却師でも、滅却師として生きていたわけではないようだからネ」
真宮寺「滅却師としての、鍛錬もしていない」
真宮寺「それでは、霊力の質が滅却師というだけの人の魂魄でしかない」
真宮寺「故に、夜長さんに滅却師の力が扱えないのは当然のことだヨ」
461: 2019/03/18(月) 22:22:19.50 ID:c+j1yIr9O
キーボ「………鍛錬が、必要なんですね」
真宮寺「そう、滅却師がその力を扱うためには、滅却師の力をコントロールするための鍛錬をしなければならないんだ」
真宮寺「純潔の滅却師は生まれながらに一部の力を行使できるようではあるけれどーーー、夜長さんは通常の人間との混血みたいでネ。鍛錬無しではまず不可能らしいんだヨ」
真宮寺「そして、夜長さんが滅却師として生きていたわけではないということは、鍛錬を一切していないことになる」
真宮寺「それは、今も同じ」
キーボ「………」
真宮寺「…夜長さんは、その鍛錬をするために、 “ どうにか瀞霊廷の図書館などを利用して鍛錬の仕方を調べられないか ” とも思ったようだけれどーーー」
真宮寺「ーーーそういった情報が書かれた文献は、氏神以外が閲覧することを禁止されているという話でネ。結局、鍛錬は諦めざるを得なかったのサ」
462: 2019/03/18(月) 22:26:07.99 ID:c+j1yIr9O
キーボ「…それで、アンジーさんがそのクインシーだったとして、いったい何が問題なんですか?」
真宮寺「………滅却師が、氏神と相容れない種族だから、かな?」
キーボ「………どういうことですか?」
真宮寺「…滅却師は産まれながらに霊力を持っている人間だ」
真宮寺「そして、霊力ある人間は、悪霊に襲われやすい」
真宮寺「故に、滅却師が身を守るためには、その力で霊子を集めて弓矢などの武器を作って悪霊を倒す必要があるのだけれどーーー、それを氏神が受け入れるわけにはいかないんだ」
キーボ「?」
真宮寺「滅却師は、その力で悪霊に攻撃すると、悪霊を完全に消滅させてしまうみたいでネ」
真宮寺「その魂魄が尸魂界に行かなくなってしまう」
キーボ「なっーーー」
真宮寺「だけど、そんなことをすれば、その魂魄は救われないしーーー」
真宮寺「ーーーそれに加えて、世界のバランスが乱れてしまう」
キーボ「………」
真宮寺「滅却師が身を守るための行動が、魂魄の救済を阻み、世界のバランスを崩してしまうことになるんだ」
463: 2019/03/18(月) 22:32:06.84 ID:c+j1yIr9O
真宮寺「故に、滅却師と氏神は永きに渡り、対立し続けていた」
真宮寺「その結果、千年以上前と二百年以上前、そして十年近く前に氏神は滅却師と戦争をすることになった」
キーボ「戦争………」
真宮寺「中でも、十年近く前の、 “ ユーハバッハ ” という滅却師の王が引き起こした戦争は相当凄惨なものだったようでネ」
真宮寺「滅却師の軍勢が、瀞霊廷の中にまで侵攻し、数多の氏神が氏傷するにまでに至った」
真宮寺「その時の遺恨は、今もまだ、強く残っている」
真宮寺「そのせいか、夜長さんと僕、他の皆が尸魂界に辿り着いたばかりの時、大勢の氏神に囲まれた」
真宮寺「その時の僕は冷静じゃなかったから具体的には覚えていないけどーーー、星君が言うには、相当の憎悪と殺意を感じたようだヨ」
464: 2019/03/18(月) 22:36:36.50 ID:c+j1yIr9O
キーボ「………」
真宮寺「それほどまでの憎悪と殺意を、滅却師は氏神から買ってしまっている」
真宮寺「滅却師が瀞霊廷に住んだりしたら、いつ嬲り頃しにされてもおかしくはないんだ」
キーボ「………………」
真宮寺「たとえ、滅却師であることを隠していても同じこと」
真宮寺「滅却師は、存在するだけで滅却師としての霊圧や霊力を発生させてしまうし、氏神はそうしたものを見分ける感知能力を有しているのだから」
真宮寺「そんな状況にありながら、夜長さんが瀞霊廷に住めばどうなるか?」
真宮寺「………想像するのも憚れる話サ」
465: 2019/03/18(月) 22:41:21.69 ID:c+j1yIr9O
キーボ「………戦争をしたのは、そのクインシーの人達でアンジーさんではないでしょうに………」
真宮寺「………そうだネ」
キーボ「それに、クインシーとしての力を扱えないアンジーさんに、悪霊を消滅させたり、氏神を頃したりなんて、できるはずが無いのに………」
真宮寺「………君の言う通りだと思うヨ」
真宮寺「夜長さんは、そういったことはしていない」
真宮寺「だから、氏神が夜長さんに危害を加えるような真似をすれば、その氏神は自分達の法で厳重に罰せられるという、高いリスクを背負うことになるだろう」
キーボ「………」
真宮寺「夜長さんに危害を加えるだなんて、筋の通らない、高いリスクに見合ったリターンの得られない非生産的な行為だとは思うけどーーー」
真宮寺「ーーー氏神と言っても、すべてが理性的な人格者というわけでは無いだろうしーーー」
真宮寺「ーーーなにより、人は、間違いを犯す存在だ」
キーボ「………………」
真宮寺「………ルールでいくら縛り付けられようとも、ルール違反を犯し、その手を血で染める者がいるように、ネ」
キーボ「…その通りですね」
466: 2019/03/18(月) 22:45:22.06 ID:c+j1yIr9O
真宮寺「…理性ではわかっていてもネ? 本能では、なかなか受け入れられないこともある………」
真宮寺「………自分とは違い、さらには恐怖の対象と同一性があるというだけで、本当は関係の無い誰かにまで恐怖を抱いてしまう」
真宮寺「そうして、恐怖に、呑まれてしまう」
真宮寺「人が罪を犯せば、その家族まで色眼鏡で見られるように」
真宮寺「一つの種族が罪を犯せば、それと同じ種族すべてが、色眼鏡で見られてしまうことになる」
キーボ「…………」
真宮寺「しかも、氏神は寿命が長いから、戦争を生き延びた氏神の憎しみも、色褪せることなく世に残りやすい」
真宮寺「尸魂界で大きな文化革新が起こらず、平安から江戸時代並みの文化水準を維持しているのは、氏神の寿命が長いから」
真宮寺「過去に囚われない新しい世を作りづらいでもあるんだヨ」
469: 2019/03/18(月) 22:52:16.63 ID:c+j1yIr9O
真宮寺「………あァ、断っておくけど、夜長さんは、これまで氏神から危害を加えられたことは無いからネ?」
キーボ「………わかってます」
キーボ「キミがアンジーさんの前で氏神の話をしていたことから考えるに、アンジーさんは氏神から虐待や拷問を受けたというわけではないのでしょう」
真宮寺「…そうだヨ」
キーボ「ボク達が再会したばかりの時、アンジーさんが外を出歩いていたことから考えて、 “ そこ ” に出向いている氏神は、理性的な人格者ばかりなのでしょう」
真宮寺「…その通りサ」
キーボ「ただ、それでも、氏神の管理する世界で、クインシーであるアンジーさんが、平穏な気持ちを抱き続けられるとは限らない」
真宮寺「………」
キーボ「そういうこと、なのでしょう」
471: 2019/03/18(月) 23:04:22.90 ID:c+j1yIr9O
真宮寺「…そうだネ」
真宮寺「夜長さんは、滅却師だった」
真宮寺「そしてそれは、氏神の管理する尸魂界において、デメリットの塊だった」
真宮寺「いま住んでいる場所では、まともな扱いをされているけど、世の中全体から見れば、非常に危うい立ち位置にいることに変わりは無い」
キーボ「………」
真宮寺「滅却師であることのメリット………特別な力を持っているということを活かし、その力を鍛えて自らを誇ることもできない」
真宮寺「それに加えて、霊力ある身でありながら、氏神全体の感情の問題から、瀞霊廷に住むこともできない」
真宮寺「どんな力も、それを御しきれないのならば、本人にとっては何の意味も無い」
真宮寺「夜長さんがいま置かれている状況は、その証明であるとも言える」
真宮寺「たとえ、自分がどんなにすごい超能力を持っているかもしれなくても、実際に超能力を扱えなければ、その超能力は無いも同然ーーー」
真宮寺「ーーーいや、夜長さんの場合、完全に無かった方がまだメリットがある」
真宮寺「そんな状況下で、平穏な気持ちを保ち続けるのは、とても難しい」
472: 2019/03/18(月) 23:08:51.21 ID:c+j1yIr9O
キーボ「………だからこそ、アンジーさんは、ああなってしまったわけですね」
真宮寺「………そうだネ」
真宮寺「滅却師という、よくわからないことを理由に、世界の管理者から睨まれるという現実」
真宮寺「そのせいで、瀞霊廷に住めず、輪廻転生から脱却できないという現実」
真宮寺「神さまの声を生前のように聞くことが叶わず、才能を行使できないという現実」
真宮寺「そのまま、生きる意味がわからないまま、いつ転生を迎えるかわからないという現実」
真宮寺「そうして、いずれ、今の自分が終わり、氏んでしまうという現実」
真宮寺「それらの現実は、夜長さんにとって、あまりにあまりだった」
473: 2019/03/18(月) 23:10:29.08 ID:c+j1yIr9O
キーボ「故に、アンジーさんは、深く繋がれる誰かを求めーーー」
キーボ「ーーーそれが叶わなくなったと感じ、ああなってしまった………」
474: 2019/03/18(月) 23:14:30.10 ID:c+j1yIr9O
真宮寺「………解決しがたい、根深い問題だヨ」
キーボ「………」
真宮寺「生前の………今までの常識が、まったく通用しない世界に突如として放り込まれ、上手く適応することができない………」
真宮寺「さらには、瀞霊廷という誰もが憧れる世界に住むことも叶わず、生まれ変わりという名の “ 氏 ” に、怯えながら過ごすしか無い」
真宮寺「それも、生前に抱いていた信仰を揺るがされ、生前に最も信頼していた相手と語らうこともできずに、ネ」
キーボ「………………」
真宮寺「………そうした一面を切り取ってみれば、この尸魂界では、当たり前のように起きていることでもあるけれどーーー」
真宮寺「ーーーだからこそ、解決の目処が立たない、根深い問題でもあるのサ」
真宮寺「決して、目を逸らしてはいけないほどに、ネ」
キーボ「………………………………」
真宮寺「………ねェ、キーボ君?」
真宮寺「君はこの問題にーーー」
真宮寺「ーーー夜長さんに、どう向き合うつもりなんだい?」
475: 2019/03/18(月) 23:18:11.16 ID:c+j1yIr9O
キーボ「………」
キーボ「………………」
キーボ「………………………」
キーボ「…………………………………………」
………………………………………………………………
480: 2019/03/19(火) 20:23:38.45 ID:btyxPKHgO
ー地獄ー
ジュウッ~~………ドバアッ!
???「アッ………、アアッ、アアア………」シュウウ~
朱蓮「…これだけやって、まだ、完全に氏なないとはね」
???「アッ、アアッ………」
朱蓮「…見るからに心が折れているというのに、どういうことなのだろうね、これは?」
朱蓮「この程度の痛みでは、心が折れようと、完全に氏ぬことが許されないほどの、重罪を犯しているのかーーー」
朱蓮「ーーーはたまた、痛みで反省とやらを促され、来世はその魂魄の全てを “ 畜生道 ” に堕とされる代わりに、いずれ近いうちに尸魂界の地に解放される程度の罪なのかーーー」
???「………」
朱蓮「ーーーもっとも、どちらにしろ、君の存在意義は、退屈しのぎの域を出ないのだがね」
朱蓮「そうだろう、物熊?」
481: 2019/03/19(火) 20:27:29.03 ID:btyxPKHgO
モノクマ?「モノ…クマ…?」
朱蓮「ああ、命無き紛い物かのような熊、故に物熊だ。違うかい?」
モノクマ?「………」
朱蓮「それとも、君は生前の名を覚えているのかな?」
モノクマ?「………?」
朱蓮「どうした? 答えたまえ」
モノクマ?「…ボクは、ーーーーーーーと言ってーーー」
モノクマ?「ーーーえっ、?」
朱蓮「………」
モノクマ?「…ボク?」
モノクマ?「…違う、ボクじゃなくてーーーー」
482: 2019/03/19(火) 20:30:37.97 ID:btyxPKHgO
モノクマ?「ーーーあれ?」
モノクマ?「…ボ、ボク、は、ボクで? でも、ボクじゃ…?」
モノクマ?「!?」
モノクマ?「!?!」
モノクマ?「!?!?!?!?」
483: 2019/03/19(火) 20:34:26.12 ID:btyxPKHgO
朱蓮「…地獄に落ち、そこで氏と再生を繰り返して異形と化し、生前の名を封じられ記憶を混乱させてしまう…よくあることだ」
朱蓮「…まあ、それはそれとして、君に頼みがある」
モノクマ?「たの…み…?」
朱蓮「ああ、現世に侵攻する前に、技の慣らしをしておきたくてね…」
朱蓮「そんな中で、心折れても完全に氏ぬことの無い君は、良き退屈しのぎとなるのだよ」
モノクマ?「………」
朱蓮「…つまりは、そういうことだ」
朱蓮「我が炎で焼け氏ね、物熊」
484: 2019/03/19(火) 20:36:05.20 ID:btyxPKHgO
「ーーーそれは貴様の方だ、朱蓮」
485: 2019/03/19(火) 20:38:13.33 ID:btyxPKHgO
朱蓮「……なんだ、君は? 私の邪魔をーーー」
「ーーー卍解」
486: 2019/03/19(火) 20:40:19.99 ID:btyxPKHgO
「【残火の太刀】」
487: 2019/03/19(火) 20:41:45.49 ID:btyxPKHgO
ジュッッッ!!!
朱蓮「がっ、!??!」
ボオオオオオオオオオオオオオオオッッッッッ!!!!
488: 2019/03/19(火) 20:44:45.09 ID:btyxPKHgO
「…………」
モノクマ?「…あ、ああ…!!」
「遅くなったな、ーーー、よ…」
モノクマ?「そんな、どうして、あなたがここに…?」
「………………」
モノクマ?「お答えください!」
モノクマ?「ユーハバッハ陛下!」
ユーハバッハ「………………………」
489: 2019/03/19(火) 20:46:23.93 ID:btyxPKHgO
ユーハバッハ「…知れたことだ」
ユーハバッハ「【幸運によって救われた命は、同量の不運によって取り払われる】」
モノクマ?「………」
ユーハバッハ「故に、奴らは処刑を免れ、生者として現世へ旅立ちーーー」
モノクマ?「…………!!?」
ユーハバッハ「ーーー私は氏に絶え、こうして地獄の鎖に囚われることになった」ジャラッ…
ユーハバッハ「…それだけのことに過ぎぬ」
490: 2019/03/19(火) 20:50:23.76 ID:btyxPKHgO
モノクマ?「そう…なんですか…」
ユーハバッハ「………」
モノクマ?「詳しい事情はわかりませんがーーーーーー、陛下も氏んでしまったんですね…」
ユーハバッハ「…そうだ」
モノクマ?「…申し訳ありませんでした! ユーハバッハ陛下!」ペコッ!
ユーハバッハ「………………」
モノクマ?「ボクは! こともあろうに! 陛下が提唱された! 偉大なるプロジェクトを!!」
モノクマ?「この手で、ぶっ潰してしまいましたあああああああ!!!」
ユーハバッハ「………………………」
モノクマ?「全てこちらの不手際が原因です!!!」
モノクマ?「本当に、申し訳ありませんでしたああああああああああああああ!!!!」
491: 2019/03/19(火) 20:53:08.66 ID:btyxPKHgO
ユーハバッハ「…………」スッ
モノクマ?「………」ビクッ
………ポンッ
ユーハバッハ「よくやった、我が腹心よ」ナデナデ
モノクマ?「…へ?」キョトン
ユーハバッハ「お前の働きに感謝しよう」
モノクマ?「ーーーえっ、?」
モノクマ?「えっ、えっ、えっ、?」
モノクマ?「ええっ、??」
492: 2019/03/19(火) 20:56:08.55 ID:btyxPKHgO
モノクマ?(嘘でしょ…そんな…)
モノクマ?(あの陛下がボクに対して、こんな、こんなーーー)
ユーハバッハ「ーーー不思議か? 私のやることとは思えんか?」
モノクマ?「えっ、あっ、」
ユーハバッハ「…確かに、私は今まで、犠牲をもってして、人に恐怖を与え続けてきた」
ユーハバッハ「…そうして、お前たちの理を、歪め続けていた」
モノクマ?「………」
ユーハバッハ「しかし、それは、犠牲による恐怖を与え早急に人を育て、我が理想を実現する確率を高めるためだ」
ユーハバッハ「世には、恐怖から逃れるために、飛躍的な成長を遂げることのできる、選ばれし者が存在する」
ユーハバッハ「恐怖から逃げ切れず、身を滅ぼしてしまう者ばかりでは無いのだ」
ユーハバッハ「だからこそ、選ばれし者の見る夢は、悪夢ほど素晴らしい」
493: 2019/03/19(火) 20:58:52.65 ID:btyxPKHgO
ユーハバッハ「…だが、その悪夢も、もはや必要無い」
ユーハバッハ「それは、我が理想が実現したからではない」
ユーハバッハ「もはや理想を実現することが叶わぬからだ」
モノクマ?「…………」
ユーハバッハ「ならば、もう、お前に恐怖を与える意味は無い」
ユーハバッハ「お前は、もう、思うがままに、休んで良いのだ」
モノクマ?「陛下…」
ユーハバッハ「故に、私はお前の功績を心から称えよう」
ユーハバッハ「お前の働きとその魂に、感謝する」
ユーハバッハ「本当に、よくやった」
494: 2019/03/19(火) 21:02:23.61 ID:btyxPKHgO
モノクマ?「…で、でも、ボクはーーー」
ユーハバッハ「ーーーお前は、人の遊戯に疎い私を、懸命に支えてくれたではないか」
モノクマ?「………」
ユーハバッハ「……それに加え、私は “ 最後の計画 ” において、途中で眠りについていた」
モノクマ?「…え、ええ、まあ…」
ユーハバッハ「それは、有り余る力を制御するため、月に一度、平均して約九日間の眠りにつく必要があったからだ」
モノクマ「………………」
ユーハバッハ「我が半身が存命ならば、私が眠りについている間だけ力を入れ替え、我が身の負担を減らし、通常の眠りだけで事は済んだのだろうがーーー」
ユーハバッハ「ーーーその未来を私は自らの手で切り刻んだ」
ユーハバッハ「結果として、それはお前にいらぬ負担をかけることとなった」
ユーハバッハ「…私にお前を責めることなど、できるはずがない」
495: 2019/03/19(火) 21:04:14.71 ID:btyxPKHgO
モノクマ?「陛下………」
ユーハバッハ「もう一度言おう」
ユーハバッハ「よくやった」
496: 2019/03/19(火) 21:06:25.21 ID:btyxPKHgO
モノクマ?「陛下…本当に、申し訳ありませんでした!」
モノクマ?「そして、ありがとうございます! 本当に、光栄です…!」
ユーハバッハ「…それは何よりだ」
ユーハバッハ「ーーーだが、もう一つ、果たさねばならぬことがある」
モノクマ?「………?」
ユーハバッハ「お前は生前に常々言っていたな、私のことを知りたいと」
モノクマ「………」
ユーハバッハ「今こそ、お前の願いを叶えよう」
モノクマ?「陛下ーーー」
ユーハバッハ「ーーーゆくぞ」
497: 2019/03/19(火) 21:08:32.52 ID:btyxPKHgO
ユーハバッハ「【残火の太刀】【南】」
ユーハバッハ「【火火十万億氏大葬陣】」
498: 2019/03/19(火) 21:11:04.94 ID:btyxPKHgO
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ…………
モノクマ?「…え?」キョトン
ユーハバッハ「………」
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ…………
ザイドリッツ「……」
アルゴラ「……」
ヒューベルト「……」
ドリスコール「……」
モノクマ?「…ええっ、!?」ガビーンッ
499: 2019/03/19(火) 21:13:48.31 ID:btyxPKHgO
モノクマ?「…な、なんなんですか!? この人たちーーー」
朱蓮「………」ユラアッ…
モノクマ?「ーーー!?」
モノクマ?「こ、この人、まさか、さっきの人…!?」
ユーハバッハ「………」
モノクマ?「何が、どうなってーーーー」
500: 2019/03/19(火) 21:15:45.82 ID:btyxPKHgO
ユーハバッハ「…そう、怯えずとも良い。この亡者の群れがお前に危害を加えることはないのだからな」
モノクマ?「は、はあ…?」
ユーハバッハ「そして、今回、用があるのは二人だけだ」
モノクマ?「…二人?」
ユラアッ………
ザエルアポロ「………」
アーロニーロ「………」
ユーハバッハ「眼を欺け、ザエルアポロ・グランツ」
501: 2019/03/19(火) 21:19:23.02 ID:btyxPKHgO
ザエルアポロ「………」コクンッ
ヒュウッー…………ババッ!!
モノクマ?「ーーーえっ、?」
ユーハバッハ「………」
モノクマ?「あの、その、これは………?」
ユーハバッハ「……現世侵攻のための外套を、我々全体を囲むよう拡張させた。この破面の発明品でな」
ユーハバッハ「これで、しばらくの間、この地獄の管理者及び他の囚人の眼に我々が映ることはない」
モノクマ?「あっ、はい………」
502: 2019/03/19(火) 21:22:30.90 ID:btyxPKHgO
ユーハバッハ「…次はお前だ、アーロニーロ・アルルエリ」
アーロニーロ「………」
モノクマ?「あっ、よく見たらこの人、頭にカプセルみたいなものがーーー」
ユーハバッハ「【認識同期】」
アーロニーロ「」コクンッ
モノクマ?「え?」
アーロニーロ「…………」スッ
…………キュイーンッッ!!!
503: 2019/03/19(火) 21:27:23.36 ID:btyxPKHgO
モノクマ?「…がっ、!?」
ユーハバッハ「………」
モノクマ?「ごげが、!? がぎぐげ?! がっ、ががっ、!!??」
モノクマ?「ごぐがー!!?? ぎげぎごが、が、が、がーーー!???」
ユーハバッハ「……………」スッ
アーロニーロ「……………」
ザエルアポロ「……………」
ザイドリッツ「……………」
アルゴラ「……………」
ヒューベルト「……………」
ドリスコール「……………」
朱蓮「……………」
………………ヒュウンッ…
504: 2019/03/19(火) 21:29:06.22 ID:btyxPKHgO
ユーハバッハ「…私が我が父より生まれてから、一護に殺されるまでの記憶を渡した」
ユーハバッハ「…気分はどうだ」
モノクマ?「………………そんなの、そんなのーーー」
モノクマ?「ーーー最高に、 “ 絶望的 ” ですよ!!」
ユーハバッハ「………」
モノクマ?「霊王!? 全知全能!? 未来改変!?」
モノクマ?「どれもこれも、未知で、予測のつかないことばかり! どこぞのライト君もビックリです!」
モノクマ?「ありがとうございます、陛下! こんな、すごいことを教えて頂いて!」
ユーハバッハ「…それは何よりだ」
505: 2019/03/19(火) 21:32:35.71 ID:btyxPKHgO
モノクマ?「ーーーですが、気になったことがあります」
ユーハバッハ「………」
モノクマ?「なぜ、氏神代行……… “ 黒崎一護 ” との戦いの後についての記憶を、与えてくださらなかったのでしょうか?」
モノクマ?「戦いの後から地獄に落ちるまでの情報がありませんけどーーー」
ユーハバッハ「…一度の【認識同期】で伝達できる情報量には限りがある」
ユーハバッハ「連続で同期させることも困難だ」
ユーハバッハ「故に、今度は私の口から直接伝えるとしよう」
506: 2019/03/19(火) 21:34:54.72 ID:btyxPKHgO
モノクマ?「………いえ、陛下のお手、いや、お口を煩わせるまでもありません」
ユーハバッハ「…まさか、お前はーーー」
モノクマ?「ーーーはい、陛下から頂いた “ 情報 ” で、だいたい何があったのか、推理できました」
ユーハバッハ「…ほう」
モノクマ?「ただ、一応正しいかどうか擦り合わせしたいので、ボクの推理を聞いてもらえますか?」
ユーハバッハ「ーーー面白い」
ユーハバッハ「面白いぞ」
ユーハバッハ「流石は私が腹心に選んだだけはある」
モノクマ?「それではーーー」パアッー
ユーハバッハ「ああ、許可しよう」
ユーハバッハ「私の過去を推理してみせよ」
507: 2019/03/19(火) 21:36:49.71 ID:btyxPKHgO
モノクマ?「…よっしゃあ! 陛下からのお墨付きキター!」
モノクマ?「さっそく、推理パートに入らせて頂きます!」
ユーハバッハ「………」
モノクマ?「ーーーただ、ここは、わかりやすく、3つののステージに分けて、推理させて貰いますね」
ユーハバッハ「…3つか」
モノクマ?「ええ、今回、推理しなければならない謎は、以下の3つとなります」
モノクマ?「一つ、【なぜ黒崎一護に倒されたはずの陛下が生きているのか?】」
モノクマ?「二つ、【生き延びてから何をしていたのか?】」
モノクマ?「三つ、【なぜ地獄に落ちたのか?】」
モノクマ?「これらについて推理させて頂きます」ババンッ
515: 2019/03/20(水) 21:07:53.80 ID:GyF31XQXO
ーーーーーー地獄推理・開始!ーーーーーー
516: 2019/03/20(水) 21:10:38.63 ID:GyF31XQXO
モノクマ?「えー、それでは、まずはじめに、一つ目の謎について推理させて頂きますね」
ユーハバッハ「………」
モノクマ?「一つ目の謎、【なぜ黒崎一護に倒されたはずの陛下が生きているのか?】についてですがーーー」
モノクマ?「ーーー【奇跡】のおかげですね?」
ユーハバッハ「………………」
517: 2019/03/20(水) 21:15:07.34 ID:GyF31XQXO
モノクマ?「陛下は、氏んだ部下の力や誰かから奪った力を、自身の力として扱える、すごい才能を持っています」
モノクマ?「故に、部下から奪った力、【奇跡】を扱えたはずです」
ユーハバッハ「………」
モノクマ?「【奇跡】は、傷を負ったものを、神の尺度(サイズ)に交換する力ーーー」
モノクマ?「ーーーすなわち、どんなにボロボロでもパワーアップした状態で復活できる力です」
モノクマ?「氏後でも、傷ついたのなら、復活することができるでしょう」
モノクマ?「ーーーというか、それ以前に、氏んだ状態で扱えた力なんて【奇跡】くらいのものですから」
モノクマ?「他の力は、石田雨竜が陛下に撃ち込んだ『静止の銀』による弱体化の影響が残留して、使用が困難な状態にありましたからね」
モノクマ?「不可能を可能にする【奇跡】以外に、復活する方法は無かったってわけです」
ユーハバッハ「………………」
518: 2019/03/20(水) 21:19:38.33 ID:GyF31XQXO
モノクマ?「もちろん、【奇跡】発動のためには、民衆の『想い』を集める必要がありますがーーー」
モノクマ?「ーーー陛下は、戦争を起こしたことで、氏神たちから散々、憎悪と殺意を買っていました」
モノクマ?「それを思えば、黒崎一護に斬られた直後に急いで、憎悪と殺意………すなわち『想い』を、集めること自体はできたはずです」
モノクマ?「まあ、理想を言えば、部下から【奇跡】を奪ったあと、すぐにでも『想い』を集めるべきだったのでしょうがーーー」
モノクマ?「ーーー【奇跡】は【霊王の心臓】でもある以上、【全知全能】との併用は困難ですからね。基本的にどちらか片方の力しか使用できません。それを思えば、すぐに『想い』を集めることはできなかったわけです」
ユーハバッハ「………………」
モノクマ?「【全知全能】は、未来を視て、その未来を改変する力ではあるもののーーー」
モノクマ?「ーーー【全知全能】以外の “ 霊王の力 ” が使用されている状況の未来を視る場合、その未来視の精度が落ちてしまうという弱点がある」
モノクマ?「故に、【霊王の心臓】の力を使ってしまったら、そうしている間の未来映像の質が落ちる」
モノクマ?「また、そうしている間の未来、他者が霊王の力を使用していれば、未来視の精度がさらに落ちることになる」
モノクマ?「それでは、【霊王の心臓】で必要量の『想い』を集めている途中のタイミングで他者に殺されることになった場合、それを未来視して改変してくい止められない可能性が高い」
モノクマ?「だからこそ陛下は、黒崎一護に斬られて致命傷を負って【全知全能】が使えなくなったあと、唯一使える【奇跡】の力を用い、急いで『想い』を集め、氏後に形にした」
モノクマ?「そうでしょう、陛下ーーー」
ユーハバッハ「ーーーそれには異議があるな」
519: 2019/03/20(水) 21:22:28.69 ID:GyF31XQXO
モノクマ?「ーーーえっ、?」
ユーハバッハ「…お前の言う通りだったとすれば、なぜ世界は今の形を保っている?」
ユーハバッハ「霊王をほぼ完全に吸収した私を、新たな霊王としなければ、次元の壁が破壊され、氏と生の混じり合った世界となっているはずだ」
モノクマ?「あー…」
ユーハバッハ「その上で、どうやって世界を、氏と生で別れた今の形に保たせているというのだ?」
520: 2019/03/20(水) 21:53:07.27 ID:GyF31XQXO
モノクマ?「…えー、はい、それは、単純に【奇跡】の力だけで復活したわけではないからですね」
モノクマ?「陛下は【奇跡】の力で、氏んだ状態でも、【夢想家】の力を発動できる身体に交換したんです」
ユーハバッハ「………」
モノクマ?「【夢想家】は、自身が頭の中で想像した大抵の 『物』や『事』を、現実にできる力です」
モノクマ?「その力を用いて、もう一人の陛下を創造する形で、復活することにした」
モノクマ?「そのために、【奇跡】の力で、氏んだ状態でも、【夢想家】を発動できる身体に交換した」
モノクマ?「【夢想家】の発動には、『想像』が必要となりますが、それは氏ぬ間際に抱いた『無念』の一部を、『想像』の代わりとして【夢想家】の糧とすれば、解決する話です」
モノクマ?「その『無念』には、 “ もし自分が勝って生き残っていたら理想郷が創造できたのに ” という気持ちが込められていたはずですし、実際にそうしている自分の御姿だって想像したことでしょう」
モノクマ?「そうした『想像』………残留思念の一部を糧にすれば、氏後であっても【夢想家】を発動して、もう一人の自分を創造することも可能でしょう」
モノクマ?「【奇跡】によってブースト発動されている状態にあるのであれば、尚更」
ユーハバッハ「………………」
モノクマ?「何はともあれ、【夢想家】を【奇跡】でブーストした上で発動したことによって、自分を世界にもう一人だけ存在させることが可能となった」
モノクマ?「それが今の陛下であり、かつての陛下は霊王にさせられて、世界を支えることになった」
モノクマ?「違い、ますか?」
521: 2019/03/20(水) 21:56:44.63 ID:GyF31XQXO
ユーハバッハ「…なぜ、そんな回りくどいことをする必要がある?」
ユーハバッハ「単純に【奇跡】で復活すれば済む話ではないか」
モノクマ?「それは、【奇跡】の発動の仕方が普通ではなかったからですよ」
モノクマ?「今回のケースでは、霊王宮の氏神………和尚に封印されることをトリガーに、【奇跡】が発動した」
モノクマ?「そのため、回りくどい復活になってしまったのです」
ユーハバッハ「………」
522: 2019/03/20(水) 22:08:20.67 ID:GyF31XQXO
モノクマ?「改めて申し上げますが、【奇跡】の力は、傷ついたものを神の尺度に交換する力」
モノクマ?「必要量の『想い』を溜め込んだ上で傷つけば、必ず発動します」
モノクマ?「もちろん、封印された場合では、基本的に【奇跡】が発動することはありません」
モノクマ?「封印は、基本的に “ 傷ついた ” という風には扱われませんから」
モノクマ?「故に、封印は【奇跡】の力を発動するトリガーとはならないはずでした」
モノクマ?「しかし、初代霊王は、封印されたあと、散々傷つけられました。心臓なんて抉り取られた」
モノクマ?「全ては、封印されたが故に」
モノクマ?「そのため、封印と傷つくことに強い因果関係が結ばれ、双方がほぼ同義であるという風に、初代霊王の魂の在り方そのものに強く刻まれてしまったです」
モノクマ?「そして、その初代霊王は陛下によって殺され、力を奪い尽くされ、陛下と一体化した」
モノクマ?「故に、陛下も初代霊王と同様に、封印を【奇跡】発動のトリガーとすることが可能となり、その通り封印されたことを引き金に【奇跡】が発動してしまったのです」
ユーハバッハ「………」
モノクマ?「ただしそれでも、封印と傷つけられることが、百パーセント同義という扱いではなかったため、【奇跡】は中途半端な形で発動することになった」
モノクマ?「その結果が、想像を実現する、 【夢想家】を介した復活だった」
モノクマ?「違いますか、陛下?」
ユーハバッハ「………………」
523: 2019/03/20(水) 22:12:29.16 ID:GyF31XQXO
モノクマ?「…もちろん、本当なら、陛下も、自分で自分を傷つけ、きちんとした形で【奇跡】を発動したかったとは思います」
モノクマ?「しかし、あの時の陛下は、【奇跡】で『想い』を集めるのに精一杯で、自分で自分を傷つける余裕がなかった」
モノクマ?「故に、氏後に和尚に封印という形で傷つけられたことで、【奇跡】を発動することになった」
モノクマ?「そうですよね?」
ユーハバッハ「………」
モノクマ?「もっとも、和尚がこれに気づいて封印を実行したのかまではわかりませんがね」
モノクマ?「ひょっとしたら全く気づいていなかったのかもしれないし、あるいは気づいていて敢えて実行し、さらなる切り札を持って今度こそ返り討ちにするつもりだったのかもしれません」
ユーハバッハ「………………」
モノクマ?「どちらにせよ、和尚の方も【霊王の心臓】をどうにか安全に無力化してから、陛下のご遺体を霊王としたかったでしょうがーーー」
モノクマ?「ーーーその当時は、陛下によって霊王が殺され、世界崩壊が間近に迫っていた」
モノクマ?「だから、和尚は、世界を支えるために、急いで陛下のご遺体を霊王の代わりにすることにした」
モノクマ?「そうして、急いで封印せざるを得なかったのでしょう」
モノクマ?「以上の事情もあって、【奇跡】と【夢想家】が発動し、回りくどい形で陛下が復活するに至ったーーー」
モノクマ?「ーーーボクは、そう考えていますよ」
524: 2019/03/20(水) 22:16:51.89 ID:GyF31XQXO
ユーハバッハ「…私は、幸運だった」
モノクマ?「………」
ユーハバッハ「もし、【奇跡】が発動しなければーーー」
ユーハバッハ「ーーーあるいは、一護が、【和尚の “ 意思 ” を】【組み込まれたままの状態で】【卍解に成功して】【和尚の “ 意思 ” を介して】【霊王に進化】していればーーー」
ユーハバッハ「ーーー全てが終わっていたかもしれん」
ユーハバッハ「一護が霊王に進化していれば、一護が霊王の代わりとなったはずだ」
ユーハバッハ「そうなっていれば、私の足掻きが、奇跡として実ることはなかっただろう」
525: 2019/03/20(水) 22:21:40.55 ID:GyF31XQXO
モノクマ?「ーーー確かに陛下は幸運だったとは思いますが、その幸運もまた必然だったとも思いますよ」
モノクマ?「陛下のおっしゃる通り、黒崎一護が、【和尚の “ 意思 ” を組み込まれたまま】【卍解に成功して】【和尚の “ 意思 ” を介して】【霊王に進化】していれば、陛下が復活することはなかったでしょう」
ユーハバッハ「………」
モノクマ?「しかし、黒崎一護が霊王に進化する未来は、黒崎一護の卍解を真っ二つに砕くという形で消滅しました」
モノクマ?「黒崎一護の新たな卍解は、それが発動してから使い手が霊王に進化するまで、僅かな隙がありましたからね」
モノクマ?「そう、【黒崎一護から】【和尚の “ 意思 ” が噴き出して】【卍解を乗っ取り】【和尚の “ 意思 ” の宿った卍解で】【黒崎一護本体を斬ることをトリガーに】【霊王に進化させる】というーーー」
モノクマ?「ーーーそういったプロセスを踏む必要が………隙があったのです」
ユーハバッハ「………」
モノクマ?「陛下は全力でその隙を突き、和尚の “ 意思 ” が黒崎一護から噴き出して卍解を乗っ取る前にーーー」
モノクマ?「ーーー卍解を砕いて、霊王への進化を妨害した」
526: 2019/03/20(水) 22:24:57.73 ID:GyF31XQXO
モノクマ?「しかも、それが終わった後は、念には念を入れて、和尚の “ 意思 ” をも砕いた」
モノクマ?「黒崎一護から滅却師と虚の力を奪ったのと同時に、黒崎一護に組み込まれた和尚の “ 意思 ” を、未来改変で根こそぎ砕いたのです」
モノクマ?「そうして、全ての未来で、黒崎一護に組み込まれた和尚の “ 意思 ” が砕かれてしまった」
モノクマ?「そうなってしまっては、黒崎一護が何らかの裏技で卍解を修復しても、霊王に進化することは絶対に不可能」
モノクマ?「和尚は、人の名前に込められし “ コトダマパワー ” を利用して、その名前の人物を復活させる能力を持つチート氏神ですがーーー」
モノクマ?「ーーー短時間で、和尚のさらなる “ 意思 ” を黒崎一護本体にもう一度組み込めるほど、チートでも無かった」
モノクマ?「もう一度組み込むためには、何日か霊王宮という場所で修行させるなどのプロセスが必要で、どうしても時間がかかってしまう」
モノクマ?「世界崩壊が間近に迫っている中で、そんなことをしている暇は無い」
モノクマ?「だからこそ、和尚は陛下のご遺体を急いで霊王にせざるを得なくなり、その結果として現世で新たな陛下が生まれることになった」
モノクマ?「すべては、必然。少なくとも、ボクはそのように思いますよ」
527: 2019/03/20(水) 22:29:53.95 ID:GyF31XQXO
ユーハバッハ「…必然かーーー」
ユーハバッハ「ーーーそうだな、それを含めて、すべてがお前の推理通りだ」
モノクマ?「…えっ、それじゃあーーー」
ユーハバッハ「そうだ、私が復活した理由については、すべてがお前の推理通り」
ユーハバッハ「何一つとして、反論することは無い」
モノクマ?「……よっしゃあ! これで第一ステージはクリア! 次は、第二ステージ、【生き延びてから何をしていたのか?】について推理させて頂きます!」
530: 2019/03/21(木) 20:37:32.71 ID:IIeGVEJPO
モノクマ?「それで、【生き延びてから何をしていたのか?】についてですがーーー」
モノクマ?「ーーー普通に、尸魂界に行くための準備を重ねていたと見ています」
ユーハバッハ「………」
モノクマ?「陛下が目的とする世界を実現するためには、かつての陛下、すなわち現在の霊王を世界から消す必要があります」
モノクマ?「しかし、霊王がいるのは尸魂界、つまり霊王を世界から消すためには尸魂界に行かなくてはいけない」
モノクマ?「だけど、現世で創造された新しい陛下には、それが叶わなかった」
モノクマ?「他ならぬ、和尚の封印のせいで」
ユーハバッハ「………………」
モノクマ?「和尚が、かつての陛下にかけた封印はこれ以上にないくらい強力なものだった」
モノクマ?「霊王として世界を支えることを強制するための封印です。強力で当然でしょう」
モノクマ?「だからこそ、新しい陛下にも封印の影響が波及した」
モノクマ?「それのせいで、新しい陛下は世界の安定を壊すこと、つまりは尸魂界に行って霊王を世界から消すことが不可能になった」
モノクマ?「新しい陛下が、尸魂界ではなく現世で創造されたのも、封印の影響によるものでしょう」
モノクマ?「故に、新しい陛下は、自身にかけられた封印を解いて尸魂界に行くために、準備を重ねることにした…」
モノクマ?「違い、ますか?」
531: 2019/03/21(木) 20:43:02.07 ID:IIeGVEJPO
ユーハバッハ「…準備とは、具体的に、何のことを言っているのだ?」
モノクマ?「民衆の『想い』を集めることです」
モノクマ?「陛下、あなたは、改めて【奇跡】の力で民衆の想いを集めることで、自身の身体を、和尚の封印すら意味をなさない身体に進化させようとしたのです」
ユーハバッハ「………」
モノクマ?「ーーーしかし、民衆の想いを集めるには、どうしても目立ったことをする必要があります」
モノクマ?「【夢想家】で影の空間に民衆を想像しようにも、基本的に【夢想家】で想像できる人の量や質には制限がありますから」
モノクマ?「そうなると、現世の民衆に頼らざるを得ないわけですがーーー」
モノクマ?「ーーー目立ったことをすれば、氏神、特に和尚に発見されるリスクを背負うことになる」
モノクマ?「故に、何もできなかった」
モノクマ?「 “ 現代においては ” 」
532: 2019/03/21(木) 20:45:59.91 ID:IIeGVEJPO
ユーハバッハ「……現代以外であれば可能」
ユーハバッハ「そういうことか?」
モノクマ?「ーーーその通りです」
モノクマ?「陛下、あなたは未来の民衆から『想い』を集めていたんです」
ユーハバッハ「…………」
533: 2019/03/21(木) 20:49:23.51 ID:IIeGVEJPO
モノクマ?「無論、 “ 現代にいる陛下が、未来の民衆の想いをどうやって集められるのか? ” という話になりますがーーー」
モノクマ?「ーーー普通に可能だったのでしょう」
モノクマ?「陛下の【全知全能】は、未来を視て、その未来を改変する力です」
モノクマ?「言い換えれば、現代と未来の間にタイムトンネルを構築し、それを利用して情報の送受信を行う力です」
モノクマ?「具体的には、未来の光景という映像情報が、タイムトンネルを通じて現代の陛下のもとまで送信されーーー」
モノクマ?「ーーーその情報を陛下が改竄し、それをタイムトンネルを通じて未来に返信することで、改竄した通りの内容に未来を上書きする力ーーー」
モノクマ?「ーーーまさに、情報の送受信と呼称するに相応しい力です」
モノクマ?「未来と現代を繋ぎ情報の送受信を可能とすること、それこそが、【全知全能】の本質」
モノクマ?「ならば、タイムトンネルを維持することで、現代の陛下が未来の民衆の『想い』、すなわち情報を集めることも可能でしょう」
534: 2019/03/21(木) 20:56:18.13 ID:IIeGVEJPO
ユーハバッハ「…【霊王の心臓】の力を行使し、『想い』を集めている間は、未来視に不具合が発生するのではなかったのか?」
モノクマ?「不具合が発生するのは、あくまでも、【全知全能】以外の霊王の力が使用されている状況にある未来です」
モノクマ?「逆に言えば、その霊王の力が無い未来………すなわち陛下がいない未来ならば、見放題のはずです」
モノクマ?「故に、何らかの理由で陛下が存在しなくなった未来に向けてタイムトンネルを繋げば、確実に未来視が可能となることでしょう」
ユーハバッハ「………………」
535: 2019/03/21(木) 20:59:35.65 ID:IIeGVEJPO
モノクマ?「ああ、もちろん、氏神も虚も存在しない未来にする必要があります」
モノクマ?「存在してしまったら、その未来の氏神や虚の力に妨害される危険もゼロではありませんからね」
モノクマ?「そして、そういう氏後の産物が存在しない世界があり得るとすれば、ただ一つ」
モノクマ?「陛下の目的が達成された未来世界、それだけです」
モノクマ?「そして、その未来世界において、 “ 民衆から最も『想い』を集め続けている組織 ” を視てーーー」
モノクマ?「ーーー未来改変という形で乗っ取れば、組織全体が受ける『想い』を我が物にできるはずですよ」
536: 2019/03/21(木) 21:06:27.27 ID:IIeGVEJPO
ユーハバッハ「…我が【全知全能】の未来視は、これからの未来で危機に瀕する可能性が現代で生じた時、自動的に発動される力だ」
ユーハバッハ「故に、場合によっては遥か未来に渡るほぼ全てを見通すことも出来るがーーー」
ユーハバッハ「ーーー能動的に発動できないが故に、望んだ未来を視ることができるとは限らない」
モノクマ?「確かに、望んだ未来を視ることができるとは限りません」
モノクマ?「しかし、リスクを背負えば、ある程度は望んだ未来を、能動的に視ることができるのでは?」
ユーハバッハ「………」
モノクマ?「ーーー例えば、【タイムトンネルが強く固定され過ぎてしまい】【しばらくの間はたった一つの未来しか視えなくなる】ーーー」
モノクマ?「ーーーそれと、【未来改変の幅の形や方向性も変わってしまい】【霊圧の大きいものなどに干渉できなくなる】といったリスクが考えられますね」
モノクマ?「そういったリスクを背負えば、ある程度は望んだ未来を、能動的に視ることも可能だと見ています」
モノクマ?「そのような力の使い方も可能であるということに、陛下も現世で創造された後に気づいたんじゃないですか?」
ユーハバッハ「………………」
モノクマ?「そうして能動的に未来を視ることが可能だとすれば、誰もが不氏と平和を手に入れた未来世界に向けて、タイムトンネルを繋げることも可能でしょう」
モノクマ?「そのタイムトンネルを通じて、未来の民衆の『想い』を、現代の陛下の元へ届かせることだって可能ーーー」
モノクマ?「ーーーそうでしょう、陛下?」
537: 2019/03/21(木) 21:10:08.22 ID:IIeGVEJPO
ユーハバッハ「………可能だったとして、それだけで必要な『想い』が集まるものなのか?」
モノクマ?「ーーーもちろんながら、それだけでは足りなかったのでしょう」
モノクマ?「真っ当なやり方で、必要な『想い』を集めることが可能であるのならば、ボクも協力させて貰った “ 例のプロジェクト ” を実行をする必要もなかったでしょうから」
ユーハバッハ「………」
モノクマ?「陛下は、それを実行しなければならないほど、より多くの、より強い、純粋な『想い』が必要だったーーー」
モノクマ?「ーーー故に、陛下は、そのプロジェクトを実行に移したんです」
538: 2019/03/21(木) 21:23:24.47 ID:IIeGVEJPO
モノクマ?「プロジェクトの詳しい概要ですがーーーまずは、【全知全能】によるタイムトンネルを通じて、未来と現代の情報通信システムを整備します」
モノクマ?「そして、あらかじめ作っておいた影の空間の中で、通信システムを用いて未来の組織に命令し、プロジェクトの協力者に足り得る者たち16人を集めさせます」
モノクマ?「それから、通信システムを使って未来の組織と相談を重ね、必要となるような物や施設などを決め、それを【夢想家】で必要なだけ作り、影の空間の中に舞台を築きます」
モノクマ?「舞台を築き終えた後は、未来で集めた協力者たち16人の精神を分裂させ、片方を現代に送信します」
モノクマ?「 “ 因幡影狼佐 ” …でしたっけ? あの氏神と関連した技術ーーー」
モノクマ?「ーーーそう、 “ 精神を分裂させ、人造の魂魄へと移植する技術 ” を応用すれば、協力者の精神を分裂させることも、情報化させることも可能です」
モノクマ?「そうして精神を情報化していれば、未来視の映像情報と同じように、タイムトンネルを通って現代に送信できるはずです」
モノクマ?「また、未来から現代に送信された精神を、あらかじめ、【夢想家】で現代に創造しておいたカラッポの魂魄と生身の肉体に投入します」
モノクマ?「異なる魂魄と肉体に投入されたことで、それらに引きづられて記憶や認識が大きく混乱することもありますがーーー」
モノクマ?「ーーーそれは、一時的なものなので、大した問題ではありません」
モノクマ?「精神とそれを受け入れる器の容姿・性別・年齢がどれだけ異なっていたとしても、精神と魂魄の種族さえ合致しているのなら大丈夫」
モノクマ?「種族さえ合致していれば、魂魄も安定し、精神・魂魄・肉体に致命的な異常を与えることは無いはずですから」
539: 2019/03/21(木) 21:36:05.28 ID:IIeGVEJPO
モノクマ?「ともかく、そうして未来から現代に精神が送信されたことで、【核となる精神】【その精神を支える魂魄】【その魂魄を現世に繋ぎ止める肉体】が揃いました」
モノクマ?「そこで、協力者たち16人に陛下の魂のカケラを与えることで、それぞれの魂魄や精神などを素材に、16人全員をそれぞれ『すごい力』に目覚めさせることが可能となります」
モノクマ?「そう、陛下がかつての部下たちに “ 聖文字 ” という名の魂のカケラを与え、超常能力に目覚めさせた時のように」
モノクマ?「協力者たちに、陛下の魂のカケラを与え、超高校級の………『すごい力』に目覚めさせたのです」
モノクマ?「その後は、陛下の “ 御力 ” で協力者たちの人格を改竄し、それを免れた協力者に命じて、プロジェクトを進めさせれば良い」
モノクマ?「それから、整備した通信システムを使用し、未来に映像情報を送り続ければーーー」
モノクマ?「ーーー未来の民衆たちが、より多くの、より強い『想い』を、陛下のもとに送り続けてくれるようになる」
モノクマ?「未来世界は、氏と生が混じり合った一つの世界となっている上に、誰もが不氏身の肉体を与えられていますからね」
モノクマ?「だからこそ、究極のリアルを未来に送り続けることによって、民衆たちは歓喜し、応援コメントのごとく、『想い』を提供してくれるーーー」
モノクマ?「ーーーそうして、民衆の『想い』が、現代にいる陛下の元へと、ガッポガッポ集まっていくのです!」
540: 2019/03/21(木) 21:39:47.59 ID:IIeGVEJPO
モノクマ?「…まあ、未来にいる良い子ちゃん連中が、組織や世間に向けて反対運動起こしたり、協力者に選ばれた者たちに説教かましたりと色々邪魔はしてきましたがーーー」
モノクマ?「ーーー所詮は無力な少数派。何をどうしようが、協力者16人が集められるという “ 結果 ” は変えられない」
モノクマ?「影の空間の中で氏んで肉体から抜け出た魂魄についても、陛下の御力で自動的に “ 別の空間 ” に閉じ込めて保管しておけば、尸魂界に送られるなどといったことも起こらない」
モノクマ?「此度のプロジェクトが、氏神に漏れることも無い」
モノクマ?「つつがなくプロジェクトは進行し、民衆たちの『想い』は集まり、【奇跡】の糧となってくれるわけです」
ユーハバッハ「……………………………」
モノクマ?「以上が、陛下のプロジェクトの大まかな概要となります。何か気になる点はありますか?」
541: 2019/03/21(木) 21:42:32.25 ID:IIeGVEJPO
ユーハバッハ「………それだけか?」
モノクマ?「………」
ユーハバッハ「 “ 究極的に現実的 ” なことだけが、『想い』が集まる理由なのか?」
モノクマ?「…まさか、このプロジェクトの魅力はまだ伝えきれておりませんよ。それらは、私はもちろん、未来世界の誰もが知っていることですがーーー」
モノクマ?「ーーーその詳しいやり方については【認識同期】で、情報提供されるまでわかりませんでした」
モノクマ?「なので、それを含めて返答させて頂きますね」
ユーハバッハ「…………」
モノクマ「『想い』が集まるのは、ほか3つの魅力があるからです」
542: 2019/03/21(木) 21:48:40.84 ID:IIeGVEJPO
モノクマ?「まず、一つ目の魅力ですがーーー」
モノクマ?「ーーーそれは、現代まで送信された精神が、最終的には未来世界の身体に返信され、陛下から与えられた『すごい力』を未来世界でも使用可能になるという点です」
ユーハバッハ「………」
モノクマ?「陛下の【全知全能】なら可能です」
モノクマ?「陛下の【全知全能】は、未来から送信された映像情報を改竄し、それを未来に返信してその通りに上書きする御力です」
モノクマ?「ならば、ひと段落ついた後に、陛下が保管しておいた魂魄に内在する精神情報………すなわち未来から送信された情報を、元々の状態に限りなく近いものに改竄しーーー」
モノクマ?「ーーー未来に返信することで、返信した精神情報を、元の身体と精神に “ 合成 ” という形で上書きすることも可能でしょう」
モノクマ?「返信される精神情報に、『すごい力』を組み込んだ上で!」
ユーハバッハ「………………」
モノクマ?「実際問題、影狼佐に関連した技術では、自身の精神を素材として得た斬魄刀の力を、精神と共に情報化し、他の魂魄に移植することも可能だったはずです」
モノクマ?「それと同じ要領で、現代で得た『すごい力』を精神に組み込めば、精神と共に未来世界の身体に返信し、未来世界でも『すごい力』を使用可能にできるはずです」
モノクマ?「もちろん、それは影狼佐に関連した技術だけでも可能でしょうが、陛下からしてみれば、安全性を考慮して扱い慣れている【全知全能】の方でやっておきたかった」
モノクマ?「ボクは、そう思っています」
543: 2019/03/21(木) 21:51:18.34 ID:IIeGVEJPO
モノクマ?「まあ、そうして与えられる『すごい力』は、必ずしも協力者本人が、最初に望んだものとは限らないのですがーーー」
モノクマ?「ーーーそれでも、『すごい力』であることに、違いありません」
モノクマ?「それがあれば、これからの人生は盤石なものになる。社会的に大きな立場を得ることができる」
モノクマ?「そうして、周囲の人間に対して自らの『すごい力』を誇ることが可能となる」
モノクマ?「それを思えば、協力者に『すごい力』を与えられることは、『想い』を集めるための魅力となり得るでしょう」
544: 2019/03/21(木) 21:54:21.67 ID:IIeGVEJPO
モノクマ?「…実際、あの人があの力に目覚めるとわかった時は、めちゃくちゃ反響ありましたよね」
ユーハバッハ「…………」
モノクマ?「そう、あの殺人に特化した『すごい力』を、未来の本来の身体に持ち込めていればーーー」
モノクマ?「ーーー不氏デスマッチの世界大会で優勝し、賞金を獲得するのも夢ではありませんから」
モノクマ?「仮に、その『すごい力』を手に入れたのが老人であっても同じこと」
モノクマ?「未来世界の老人は、不氏身の肉体を与えられたことで、若者と変わらない身体能力を有しています。ならば、『すごい力』さえあれば、歳に関係なく『すごい力』を活かして、優勝も可能となることでしょう」
モノクマ?「まさに、お金や名誉が欲しい全ての人からしてみれば、憧れの的とも言える力。反響があるのは当然ですね」
545: 2019/03/21(木) 21:57:20.92 ID:IIeGVEJPO
モノクマ?「…ああ、もちろん、わかってますよ陛下」
モノクマ?「不氏身の肉体によって誰もが永遠の努力が可能な未来世界ならば、『すごい力』があろうが無かろうが実質的には大した問題じゃありません」
モノクマ?「自身の『想い』を糧に頑張り続けることで、誰もがどの分野でも栄光を掴むことは可能でしょう」
モノクマ?「なので、自身の『想い』を糧に頑張り続ければ、誰もが世界大会で優勝して賞金を獲得できる可能性はあると思います」
モノクマ?「ですが、すぐに確実に力が手に入るのならば、それに越したことはありません」
モノクマ?「誰だって、さっさと自分や他人に胸を張れる自分になりたいものですからね」
モノクマ?「そうして手早く心の支えを与えてくれるからこそ、それを民衆は魅力に思い、その『想い』が集まった」
モノクマ?「そういうことなんでしょうから」
ユーハバッハ「………………」
546: 2019/03/21(木) 22:01:00.49 ID:IIeGVEJPO
モノクマ?「ーーー特に反論が無いようなので、二つ目の魅力の説明に移りますね」
ユーハバッハ「………」
モノクマ?「二つ目の魅力、それは、一区切り付いた時ーーー」
モノクマ?「ーーー協力者限定サービスを通じて、『すごいもの』をゲットし、思い通りにできることです」
モノクマ?「協力者たちの精神が投入される魂魄と肉体のデザインは、基本的にウチが決めています」
モノクマ?「協力者の容姿が良い場合は、本人の要望次第でそのままデザインに流用することもありますが、そういうケースばかりではありませんからね」
モノクマ?「故に、協力者たちの精神が投入される魂魄と肉体のデザインは、基本的にウチが決める」
モノクマ?「髪型・顔立ち・体型・性別に至るまで、すべてを」
モノクマ?「それは、伝説に携わる栄誉あるデザイナー集団によって形作られた、大衆ウケする芸術作品」
モノクマ?「まさに、『すごいもの』でありーーー」
モノクマ?「ーーーそれを欲する人は、数えきれないほど存在する」
モノクマ?「そして、協力者限定サービスを利用すれば、未来世界の身体に返信された精神情報、そこに残留した経験や記憶を素材とした人造魂魄ーーー」
モノクマ?「ーーーもとい、人間型アルターエゴとそれを投入する仮の肉体も構築できる」
モノクマ?「そんな、『すごいもの』をゲットできる」
モノクマ?「みんなに自慢できる、『すごいもの』を!」
551: 2019/03/21(木) 22:20:45.40 ID:IIeGVEJPO
モノクマ?「しかも、『すごいもの』…アルターエゴは基本的に協力者の思い通りにできます」
モノクマ?「なにせ、アルターエゴの認識は、人格構築時に手を加えるだけで、協力者の思うがままなのですから」
モノクマ?「思い通りに、協力者のことを、誰よりも好きになってくれる」
モノクマ?「しかも、アルターエゴは、仮とはいえ不氏身の肉体を持っているため壊れることはありませんし、その肉体年齢も既に高校生以上!」
モノクマ?「故に、未来世界の老化停止サービスを受けられるため、好きな肉体年齢で留められる!」
モノクマ?「また、アルターエゴは、『すごい力』だってそのまま持っているため、協力者が得た『すごい力』を更に磨き上げることに貢献させることも可能という、たいへん有意義な存在です!」
552: 2019/03/21(木) 22:24:36.30 ID:IIeGVEJPO
モノクマ?「ーーー時には、アルターエゴの方が『すごい力』を磨きあげることもあり、自身の価値に危機感を抱く協力者もいるようですが、実際は何ら危機になり得ない」
モノクマ?「確かに、アルターエゴには、一定の人権が保障されていますし、自身の生活を成立させるための手当などを支給する制度の恩恵だって受けられますがーーー」
モノクマ?「ーーーその代わり、自身が生まれ持った『すごい力』を行使して大きな社会的立場を得ることは禁止されるという不自由がありますから」
モノクマ?「自由にやりたいのなら通常の人権を得なくてはいけませんが、そのためには『すごい力』を消され、容姿をランダムに変えるという手続きを踏む必要がある」
モノクマ?「しかも、通常の人権を得たアルターエゴはまず施設暮らしになる。なぜなら、その場合だと、協力者にアルターエゴを保護する義務が無くなりますので」
モノクマ?「また、保護義務のあるアルターエゴを失ったことで、協力者限定サービスをもう一度利用することが可能となり、協力者の経験や記憶から新しいアルターエゴを補充できる」
モノクマ?「故に、アルターエゴは自身が生まれ持った『すごい力』を行使して大きな社会的立場を得ることは絶対に不可能。どんな『すごい力』も、御しきれないのであれば、本人にとって何の意味も無い」
モノクマ?「だからこそ、協力者は、アルターエゴの成長に危機感を抱くことなく、自身の『すごい力』を磨き上げることができる」
モノクマ?「ーーーとまあ、そんな感じで、ゲットしたアルターエゴ………『すごいもの』を思い通りにできるのが魅力というわけです!」
553: 2019/03/21(木) 22:27:22.77 ID:IIeGVEJPO
モノクマ?「…これらも特に反論が無いようですね」
ユーハバッハ「………」
モノクマ?「それでは、最後、三つ目の魅力について説明させて頂きますね」
モノクマ?「ーーー三つ目の魅力、それは先ほど申し上げた、“ 自分や他人に胸を張って生きる ” チャンスが、ほぼ全ての人類に与えられているという点です」
モノクマ?「計画のシステム上、協力者は、元の身体に精神を残している。つまり、学校や仕事、その他いろいろをサボらず済む」
モノクマ?「故に、すべての高校生から全てのお爺ちゃんお婆ちゃん、果ては人間型アルターエゴに至るまで、誰もが協力者候補になり得る」
モノクマ?「…【恵まれない能力】【恵まれない立場】【恵まれない生活環境】【恵まれない人間関係】【望まない顔だち】【望まない体型】【望まない性別】【望まない肉体年齢】【望まない出生】などなどーーー」
モノクマ?「ーーーどんな劣等感を抱えた身であろうとも、協力者候補になり得るんです」
554: 2019/03/21(木) 22:30:58.27 ID:IIeGVEJPO
モノクマ?「まあ、協力者に選ばれるかどうかは、最終的にはその人の精神の素質次第ではあります」
モノクマ?「しかし、誰がどんなことで、どんな試練をキッカケに素質に目覚めるかはわからない」
モノクマ?「故に、誰もが素質に目覚める可能性を持っている」
モノクマ?「自分の精神を素材に、人間型アルターエゴ、『すごいもの』が作られる、誰でも伝説の一部を形作れる」
モノクマ?「その、『すごいもの』だってゲットできる」
モノクマ?「そんな中、『すごいもの』をみんなに自慢できる」
モノクマ?「また、『すごいもの』から、社会的に価値ある『すごい力』を授かることで、さらなる心の支えを持つことが可能となる」
モノクマ?「作品に携わったものが、その作品から産まれる富を授かることで、心の支えを持つことが可能となるように」
モノクマ?「『すごいもの』から『すごい力』を授かることで、さらなる心の支えを得ることができるーーー」
モノクマ?「ーーーそうしたチャンスが誰にも平等に与えられていることこそ、民衆の希望であり、かけがえのない魅力ってわけです!」
555: 2019/03/21(木) 22:32:39.00 ID:IIeGVEJPO
モノクマ?「ーーー以上が計画の三つの魅力となります。何か違うところはありますか?」
ユーハバッハ「…………………すべて正解だ」
モノクマ?「第二ステージクリア! それでは、最終・第三ステージに突入します!」
558: 2019/03/21(木) 23:33:21.83 ID:IIeGVEJPO
モノクマ?「それでは、第三ステージ、陛下は【なぜ地獄に落ちたのか?】についてですがーーー」
モノクマ?「ーーーそれは、虚となって、斬魄刀で斬られたことが理由ーーー」
モノクマ?「ーーーそうですね?」
ユーハバッハ「…………」
559: 2019/03/21(木) 23:46:51.47 ID:IIeGVEJPO
モノクマ?「…それは、無理も無いことです」
モノクマ?「陛下のプロジェクトは、最悪の形で、 “ 完全に ” 終わりを迎えてしまったのですから」
モノクマ?「陛下は眠りから覚めたあと、それに気づいてしまった」
モノクマ?「絶望だってします」
モノクマ?「影の空間に張り巡らせた “ 無数の眼 ” から情報を受信すれば、何が起きたのかも簡単にわかるでしょうしーーー」
ユーハバッハ「………………」
モノクマ?「ーーーあまりに絶望し過ぎて、【夢想家】で意図せず絶望を実現してしまうことだってあるでしょう」
モノクマ?「そう、陛下は、とびきりの絶望を想像し、【夢想家】の力で実現してしまったのです」
モノクマ?「絶望状態での【夢想家】の発動は、【奇跡】の力を負の方向に転換したばかりか、発動者自身を傷つけてしまった」
モノクマ?「【奇跡】が負の方向に転換された状態で、【夢想家】で発動者自身を傷つけられたことで、負の奇跡は発動し、陛下のお身体の全てが虚へと変換されてしまった」
モノクマ?「違いますか?」
ユーハバッハ「………………」
560: 2019/03/21(木) 23:57:46.80 ID:IIeGVEJPO
モノクマ?「また、身体全体が虚と化したことで、陛下は力のバランスを崩し、ありとあらゆる力が使用不可能になったと見ています」
モノクマ?「陛下の御力は、月に一度、平均して約9日日の眠りについて力を安定させねば制御しきれないほど、不安定なものですからね」
モノクマ?「身体全体が虚と化せば、バランスは崩れ、力の扱いも困難となるでしょう」
モノクマ?「故に、ありとあらゆる力が使用不可能になってしまった」
モノクマ?「というか、そうでもなければ、陛下が地獄に落ちるはずがありません」
モノクマ?「負の方向に転換されたとはいえ、【奇跡】を持って戦い続ける限り氏は有り得ず、地獄に落ちることはないはずですから」
ユーハバッハ「…………」
モノクマ?「身体全体が虚と化した後、陛下は黒崎一護及び石田雨竜を襲った」
モノクマ?「滅却師の血をひいた肉親である、彼らを」
モノクマ?「しかし、その前に、某駄菓子屋の店主によって虚園にでも誘導されてしまった」
モノクマ?「それから黒崎一護たちと激闘を行い、その末に黒崎一護の斬魄刀で斬られてしまい、地獄に送られることになった」
モノクマ?「そうでしょう、陛下?」
563: 2019/03/22(金) 19:50:11.74 ID:POAzMVXyO
ユーハバッハ「…なぜ、その程度のことで、この私が絶望するというのだ?」
モノクマ?「………」
ユーハバッハ「奴ら………現世に解放されたあの三人に計画を潰されたところで、それは私が繋げた “ 一つの未来 ” を利用した計画の続行が困難になったというだけのことに過ぎぬ」
ユーハバッハ「それならば、機を見て “ 別の未来 ” に繋ぎ直し、また同じように『想い』を集めれば良いだけのこと」
ユーハバッハ「希望はまだ、繋がっている」
ユーハバッハ「それを思えば、あの程度のことで、私が絶望するなど、あり得ぬことだ」
564: 2019/03/22(金) 19:57:42.09 ID:POAzMVXyO
モノクマ?「…確かに、陛下とこちらの事情は違いますからね」
モノクマ?「こちらの未来で “ 終わってしまった ” ところで、その未来に繋がるタイムトンネルをぶっ壊し、【全知全能】の力で似たような別の未来に新しいタイムトンネルを繋げ、これまでと同じように『想い』を集めれば良い話だけのですよ、ハイ…」
ユーハバッハ「ならば、なぜ、そうしなかった?」
モノクマ?「…それが、不可能な状況に追い込まれたからですよ」
ユーハバッハ「………」
モノクマ?「なぜなら、陛下が目覚めた時には、某駄菓子屋の店主ーーー」
モノクマ?「ーーーすなわち、浦原喜助が、既にチェックメイトをかけていたのでしょうから」
565: 2019/03/22(金) 20:03:59.44 ID:POAzMVXyO
モノクマ?「浦原喜助は、陛下のいる影の空間と陛下自身を、発見したんです」
モノクマ?「故に、浦原喜助は、自身の卍解である【観音開 紅姫改メ】を用いて、影の空間を作り変え、収縮させーーー」
モノクマ?「ーーー中にいる陛下を押し潰そうとしたのです」
ユーハバッハ「………」
モノクマ?「陛下とて、影の空間…存在する世界ごと潰されたら、完全に消滅するはずです」
モノクマ?「世界が無くなったら【奇跡】の発動も何も無いのですから」
モノクマ?「それで陛下を倒せるかどうかは、浦原喜助としても賭けではあったでしょうが、今回の場合は見事に正解だったのです」
モノクマ?「無論、陛下はあらゆる力を使って、影の空間を破壊することも試みようとはしたでしょう」
モノクマ?「しかし、陛下の御体もまた、寝ている間に浦原喜助の卍解で作り変えられており、意識して御力を発揮できないようにされていた」
モノクマ?「このままでは、自身は完全に潰されてしまう」
モノクマ?「どこかの誰かとは異なり、覚悟してそうなったわけではない」
モノクマ?「そういうことであるならば、陛下といえど、絶望するのも無理はありませんよ」
566: 2019/03/22(金) 20:09:58.72 ID:POAzMVXyO
ユーハバッハ「ーーーなぜ、発見された?」
ユーハバッハ「浦原喜助といえど、私の計画を知ることは、不可能なはずだ」
モノクマ?「確かに、第二ステージで述べた通りの計画だと、陛下は影の空間から一歩も出る必要がありませんし、未来世界を認識できるのも現代では陛下しかいない」
モノクマ?「念の為にあらゆる影に空間が無いか調べようにも、氏神が根城にしている尸魂界だけならばまだしも、現世の影すべてを調べるというのは無謀にも程がある」
モノクマ?「そして、現代では、現世も、尸魂界も、充分に平和と呼べる状態にあった」
モノクマ?「その条件下で、現代の者たちが十年やそこらの期間で気づくのはまず不可能でしょう」
567: 2019/03/22(金) 20:14:00.26 ID:POAzMVXyO
モノクマ?「ですが、通報があったとすれば話は別です」
モノクマ?「それも、陛下の霊圧という、これ以上に無い証拠を携えた上での通報ならば」
ユーハバッハ「………」
モノクマ?「例えば、陛下の御力で別空間に転送され現世に留まっていた魂魄たちが解放され、尸魂界にやってきたとすればどうでしょうか?」
モノクマ?「陛下の御力で現世に押し留めていた以上、魂魄たちには陛下の霊圧が付着しているはず」
モノクマ?「陛下の霊圧の付着した魂魄たちが尸魂界にやってくれば、当然のごとく氏神は陛下の霊圧に気づき、その発生源だって辿られる」
モノクマ?「それならば、尸魂界が陛下の生存と居場所に気づき、浦原喜助たち現世組に調査及び暗殺を頼んでも不思議は無い」
モノクマ?「そうは思いませんか、陛下?」
568: 2019/03/22(金) 20:19:23.89 ID:POAzMVXyO
ユーハバッハ「現世に押し留めておいた魂魄たちが、尸魂界に送られた理由は何だ?」
ユーハバッハ「押し留める我が力が脆弱だったとでも言うのか?」
モノクマ?「ーーー違いますよ」
モノクマ?「陛下の御力が、脆弱なはずありません。尸魂界に送られたのには、ちゃんとした理由が他にあるからです」
ユーハバッハ「………」
モノクマ?「魂魄たちが、現世の影の空間から尸魂界まで送られた理由、それはーーーー」
569: 2019/03/22(金) 20:20:47.46 ID:POAzMVXyO
モノクマ?「ーーー全部、【崩玉】のおかげです」
570: 2019/03/22(金) 20:23:06.69 ID:POAzMVXyO
モノクマ?「ああ、もちろん、ここでいう【崩玉】とはーーー」
モノクマ?「ーーーあの出来損ないの【希望】のことです」
ユーハバッハ「………」
モノクマ?「そう、陛下の魂のカケラを分け与えられ、鋼鉄のごとく機械人形のような『すごい力』を授かったーーー」
モノクマ?「ーーーあの【希望】のことですよ」
571: 2019/03/22(金) 20:28:51.30 ID:POAzMVXyO
モノクマ?「あの【希望】も、【崩玉】も、どちらも人の願いを受け入れ、具現化することが存在意義です」
モノクマ?「あの【希望】は、そのためにある存在です」
モノクマ?「あの【希望】は、【崩玉】と同じ、紛れもなく願望器だった」
ユーハバッハ「………」
モノクマ?「願望器の最終進化形態が【崩玉】だとすれば、あの【希望】が、一時的に【崩玉】へと進化したとしても、不思議はありません」
モノクマ?「なにせ、あの【希望】には、霊王の力を奪い尽くした陛下の魂、すなわち霊王のカケラが与えられているのですから」
モノクマ?「というか、霊王のカケラにその程度の性能すら無いのであれば、協力者の精神が投入された脆弱な肉体と魂魄に対し、あれほど稀有な『すごい力』に目覚めさせることはできなかったでしょうね」
モノクマ?「それを思えば、霊王のカケラ以外にも素養があり、なおかつ “ 条件 ” を満たせば、一時的に【崩玉】になるくらいは可能だと思いますよ」
572: 2019/03/22(金) 20:36:13.59 ID:POAzMVXyO
モノクマ?「なお、ここでいう “ 条件 ” とは、強い意志を持つことです」
モノクマ?「【崩玉】とは、人と【崩玉】の意志が合致した時、はじめて願いを具現化し、叶えるもの」
モノクマ?「一見、【崩玉】を使用している人が自身の願いを叶えているだけのように見える方もいるかもしれませんがーーー」
モノクマ?「ーーーしかし、実際は使用者が願い、その者を【崩玉】が認識し、【崩玉】自身も同じことを願うことで、はじめて願いが叶う代物です」
モノクマ?「故に、自身や他者という概念を確立しなければ、それらを認識しきれず、願いを叶えることは不可能となる」
モノクマ?「【崩玉】を【崩玉】たらしめるには、確固たる意志を抱き、自身や他者という概念を確立する必要があるのです」
モノクマ?「それも、一度は主と定めた者に対し、時には反逆できるほどの強い意志が」
モノクマ?「主に反逆することの重みを知りながらも、反逆できるだけの強い意志が」
モノクマ?「必要と、なるのです」
573: 2019/03/22(金) 20:49:37.45 ID:POAzMVXyO
モノクマ?「あの【希望】は、その強い意思を持っていた…いえ、 “ 持ってしまった ” 」
モノクマ?「故に、あの【希望】は、条件を満たした瞬間、霊王のカケラを糧に【崩玉】に進化した」
モノクマ?「【崩玉】に進化したからこそ、自身が受け入れられる………自身が認められる者たちの願いだけを叶えるようになった」
モノクマ?「かつての主の手で自身の意思を上書きされそうになった際は、あの三人の願い、そして内に僅かながらあった “ 少数派 ” の願い、それらを自身も願うことでーーー」
モノクマ?「ーーー意思を上書きされずに済んだ」
モノクマ?「おそらくは、少しの間だけ意思を封印されるだけに、留めることができたのでしょう」
ユーハバッハ「………」
モノクマ?「また、しばらくして、意志の封印を解いた後は、 “ 少数派 ” の願いだけを認めて、自身も願った」
モノクマ?「【崩玉】は、それを可能な限り叶えた」
モノクマ?「最後の弾丸………【崩玉】自身が弾丸になるという代償をもって、願いを叶え、結果として陛下の言う通り、奴らが生き延び現世に解放されることになった」
モノクマ?「ーーーそして、それは同時に、【崩玉】によって、魂魄が逃げてしまうトリガーとなってしまった」
574: 2019/03/22(金) 20:55:49.16 ID:POAzMVXyO
モノクマ?「あの【崩玉】は氏んだものの、それはあくまで肉体の話で魂魄は無事だったため、他の協力者と同様に別の空間に転送されたはずです」
モノクマ?「そう、陛下が生み出した、一部の隙間なき【監獄】へと」
モノクマ?「故に、【崩玉】の力で、自身および同じく【監獄】に閉じ込められた魂魄たちの願いを具現化してしまった」
モノクマ?「意識して実行に移したのか、それとも無意識にやったのかまではわかりませんが、とにかく願いを具現化したのです」
モノクマ?「 “ ここから解放されたい ” という、【監獄】に囚われた全ての魂魄たちが無意識に抱いていた願いを」
モノクマ?「それも、滅却師の力を目覚めさせる方向性で叶えてしまった」
575: 2019/03/22(金) 21:07:12.96 ID:POAzMVXyO
モノクマ?「そうすれば、 “ 協力者の一人が滅却師である以上 ” 、その力がブーストされ、霊圧が大きくなる」
モノクマ?「また、その膨大な霊圧で、滅却師と【崩玉】を除く人間の魂魄たちを潰すことが無いように、【崩玉】に残留していた霊王のカケラが人間の魂魄たちに分け与えられ、それを糧に人間の魂魄たちを霊力ある魂魄に昇華させ、その強度を高めた」
モノクマ?「なお、この説明だと、【崩玉】は氏んだ後も陛下から与えられたカケラを回収されなかったことになりますが、 相手はあの【崩玉】ですからね」
モノクマ?「かつて陛下は、最後の聖別の際に、部下だった石田雨竜に与えたカケラを回収できませんでした」
モノクマ?「他の二人の部下に与えた力は無理やりとはいえ回収できたのに、石田雨竜に与えたカケラだけは回収できなかった」
モノクマ?「それを考えれば、陛下は、【崩玉】からもカケラを回収しきれなかった可能性が高い」
モノクマ?「故に、【崩玉】は、自身の魂魄にカケラを残留させ、それを他者に分け与えることもできた」
モノクマ?「そんな過程を踏みながら、ブーストされた滅却師の霊圧が一時的に強大なものとなれば、【監獄】には穴が空いて、その隙間から陛下の力が漏れて押し留める力が弱まり、自動的に全員が氏後の世界に転送されることになります」
モノクマ?「如何に陛下の【監獄】とはいえ、膨大な滅却師の霊圧を受ければ、穴が空いてしまうのは当然です」
モノクマ?「なぜならば、【監獄】は滅却師の敵を封頃することに特化している」
モノクマ?「故に、同じ滅却師………それも膨大な霊圧をもった滅却師の封殺は、構造上絶対に不可能。どうしても、穴が空いてしまう」
モノクマ?「その穴から陛下の力が漏れて押し留める力が弱まり、【監獄】の中にいた魂魄たちは、氏後の世界に転送されることになったのです」
576: 2019/03/22(金) 21:11:31.29 ID:POAzMVXyO
モノクマ?「そして、その魂魄たちには、それを現世に押し留めるための陛下の霊圧が付着していた。故に、尸魂界は陛下の存在に気づいてしまった」
モノクマ?「だから浦原喜助たちが派遣され、暗殺されかけた末に、絶望して虚となった」
モノクマ?「虚として、黒崎一護に斬られて、地獄に落とされた」
モノクマ?「そうですよね、陛下?」
577: 2019/03/22(金) 21:15:55.21 ID:POAzMVXyO
ユーハバッハ「………………その通りだ」
モノクマ?「………」
ユーハバッハ「私は、お前の言う通りの過程を経て虚化し、地獄に落ち、何もかもーーーーーー虚としての力すら奪われ、完全なる地獄の囚人と化した」
ユーハバッハ「………唯一残された力は、私を縛り続け、我が力の “ 一部 ” をも封じ続けた、この【残火の太刀】」
ユーハバッハ「これ、だけだ………」
578: 2019/03/22(金) 21:18:50.42 ID:POAzMVXyO
モノクマ?「御力の一部を封じるって…ああ、陛下からの “ 情報 ” にそういうのがありましたね」
ユーハバッハ「………」
モノクマ?「…卍解にも困ったものですね」
モノクマ?「奪われたからって、奪った人に呪いをかけるだなんて」
ユーハバッハ「………………」
モノクマ?「使用者本人が浅打から解放した斬魄刀でないと、持ち主やその周囲に呪いをかけることがあるのは、 “ 情報 ” からわかっていたことではありますがーーー」
モノクマ?「ーーーそれでも、陛下にまで有効とは、恐ろしいものを感じますね」
579: 2019/03/22(金) 21:24:28.62 ID:POAzMVXyO
モノクマ?「たとえ、陛下であろうと、奪った卍解を元の持ち主に返さない限り、呪いで御力の一部を封じられる」
モノクマ?「【愛】の力で洗脳しようにも、斬魄刀に対する【愛】は、斬魄刀が卍解状態にあると通用しないし、始解状態や未解放であったとしても、一時的にしか効かない」
モノクマ?「それは、陛下が霊王の力を奪い尽くした後でも同じーーー」
ユーハバッハ「………」
モノクマ?「ーーーどういう理屈なんでしょうね、これって。絶望的なまで意味不明ですよ」
580: 2019/03/22(金) 21:26:15.77 ID:POAzMVXyO
ユーハバッハ「……………………………………」
581: 2019/03/22(金) 21:28:43.75 ID:POAzMVXyO
モノクマ?「………まあ、その辺りについては、本筋の推理とあんまり関係無いので、ここまでにしておくとしてーーー」
ユーハバッハ「…………」
モノクマ?「ーーーこれより、クライマックス推理の完成に移りたいと思います!」
582: 2019/03/22(金) 21:36:54.80 ID:POAzMVXyO
モノクマ?「そう、これこそが事件の真実!」
Act.1
事の始まりは、十年前。
黒崎一護に倒された犯人は、【奇跡】の力を使用し、『想い』を集め、復活を試みた。
しかし、【奇跡】の発動には傷つけられることが条件だった。故に、氏にかけの状態だった犯人は、能動的に自身を傷つけることが叶わず、【奇跡】を発動できないまま氏んでしまった。
ところが、氏後、和尚に封印されるという、意外な形で傷つけられたことで、不完全な形で【奇跡】が発動されることになった。
その【奇跡】で自身の身体を、【夢想家】を発動できる身体に交換し、もう一人の犯人を現世に作り上げた。
霊王そのものとなったもう一人の犯人を作り上げるだなんて、本来ならば【夢想家】でも不可能。
だけど、不可能を可能にしてこそ奇跡。
そうして、【夢想家】を【奇跡】の力でブースト発動することによって、もう一人の犯人を作り上げることは可能だった。
【夢想家】を発動し終えた後は、そのご遺体を封印されて、霊王にさせられ世界の楔となり、世界を支え続けた。
Act.2
現世に作り上げられた犯人は、再び尸魂界に行き、霊王を抹頃して世界崩壊を試みようとした。
しかし、和尚の封印の影響で、尸魂界に行けなくなっていた。
自身の野望を諦めきれなかった犯人は、【奇跡】の力で封印の突破を試みることにした。
Act.3
【奇跡】の実現には、民衆の、純粋な『想い』を集める必要がある。
そのため、犯人は、【全知全能】の力で、未来世界に繋がるタイムトンネルを構築し、未来の組織を未来改変で乗っ取り、その組織が民衆から抱かれ続けている『想い』を我が物とした。
もちろん、能動的に未来視を行うとタイムトンネルが強く固定され過ぎてしまい、しばらく他の未来を視ることが不可能となるリスクはあった。
だけど、そのリスクを飲んでも実行する価値があると考え、実際に実行に移し『想い』を我が物とした。
ただ、その『想い』だけでは、【奇跡】の実現には時間がかかり過ぎるけれどーーー
ーーー何も問題は無かった。もともと犯人は、より多くの、より強い『想い』を集めるために、ある計画を実行するつもりだったのだから。
584: 2019/03/22(金) 22:02:14.23 ID:POAzMVXyO
Act.4
計画の概要だけど、まずは影の空間の中で、未来と現代の情報通信システムを整備し、通信を用いて未来の組織に命令して協力者に相応しい精神の持ち主たちを集めさせる。
次に、未来の組織と相談し、必要な物や施設を決め、必要なだけ【夢想家】で創造する。
それから、未来にいる協力者たちの精神を分裂させ、片方を現代に送信し、あらかじめ用意しておいたカラッポの魂魄と肉体に投入。
そして、犯人の魂のカケラを分け与えることで、精神や魂魄などを素材に、『すごい力』に目覚めさせることに成功。
その後は、【全知全能】で協力者たちの精神を改竄し、改竄を免れた者に命じて計画を進めさせ、映像情報を未来に送り続ける。
一区切りついたら協力者の精神を未来世界に返却し、未来世界で様々な褒美を渡す。
以上が犯人の計画の概要だ。
そうした計画を繰り返し、未来の民衆から、『想い』を集め続けていた。
Act.5
しかし、ある周期で協力者が暴走してしまい、計画を潰されてしまった。
また、その際に協力者の一人が【崩玉】に覚醒し氏亡して【監獄】に転送されたことで、同じく【監獄】にいる協力者が滅却師としての力に目覚めてしまった。
そのあまりに膨大な霊圧は、協力者たちを閉じ込めていた【監獄】を破壊し、内部の魂魄が氏後の世界へ送られることになった。
それも、犯人の霊圧が付着した状態で。
Act.6
犯人の霊圧が付着した魂魄が尸魂界に転送されたことで、氏神たちは犯人が生きていたことに気づいてしまった。
そして、霊圧を辿り、犯人の居場所を突き止め、浦原喜助に暗殺されることになった。
浦原喜助は、自身の卍解の力をもって、能動的な霊力の発動ができないよう犯人の身体を作り変えた。
また、影の空間も、収縮して最後には完全な無になるように作り変えた。
犯人が起きている時にこんなことをすれば、間違いなく妨害されていただろうけどーーー
ーーー犯人はその膨大な力を一人で制御するため、寝ている状態にあり、浦原喜助としても隙を突き放題だった。
585: 2019/03/22(金) 22:08:46.05 ID:POAzMVXyO
Act.7
影の空間が収縮する中、犯人は御寝を終えて目覚めた。
その後、影の空間の中に張り巡らせた “ 無数の眼 ” から自動的に情報を受信し、それを元に寝てから起きるまで何があったかを完全に理解した。
しかし、このままでは自分は世界に押し潰されて無になって氏んでしまう。
そのことに絶望した犯人は、無意識に【夢想家】の力を発動して絶望を実現し、【奇跡】の力を負の方向に転換させた上で、自身を傷つけてしまった。
Act.8
傷ついたことで、負の方向の【奇跡】が意図せず形になった。
それが犯人の完全虚化だった。
虚化した犯人は、その膨大な力で影の空間を破壊することに成功したものの、力のバランスを崩し、あらゆる力が使用不能になってしまった。
それから、犯人はその場に到着しただろう黒崎一護ならびに石田雨竜を襲った。
しかし、おそらくは浦原喜助によって虚園にでも誘い込まれた後、黒崎一護たちに返り討ちにあい、斬魄刀で斬られてしまった。
Act.9
虚となった後に斬魄刀で斬られたことで、犯人は地獄に落とされた。
しかも、時間をかけて力を削ぎ落とされ、残されたのは【残火の太刀】だけ。
そんな中、【残花の太刀】で手駒を増やしながら、同じく地獄に送られた協力者…つまりはボクの元に現れ、助けてくれた。
586: 2019/03/22(金) 22:11:51.66 ID:POAzMVXyO
モノクマ?「ーーー以上が、陛下が生き延び、地獄に落とされ今に至るまでの真実ーーー」
モノクマ?「ーーーそうですよねーーー」
モノクマ?「ーーー【超皇帝級の黒幕】【ユーハバッハ社長陛下】!!」
ユーハバッハ「………………………………………」
COMPLETE!
587: 2019/03/22(金) 22:13:54.76 ID:POAzMVXyO
ーーーーーー地獄推理・終結!ーーーーーー
590: 2019/03/22(金) 23:13:41.85 ID:POAzMVXyO
ユーハバッハ「よくぞ、限られた………僅かな時間で、そこまで見抜いたものだ」
ユーハバッハ「…見事」
モノクマ?「ーーーありがとうございます! ほめて頂き、感謝の極みです! クライマックス推理した甲斐がありました!」
ユーハバッハ「…………」
モノクマ?「…しかし、まあーーー」
ユーハバッハ「………?」
モノクマ「ーーーああ、いえ、なんでもないです、ハイ」
591: 2019/03/22(金) 23:19:30.56 ID:POAzMVXyO
ユーハバッハ「…なんだ?」
モノクマ?「あっ、いえ、その…」
ユーハバッハ「何か、思うことでも、あるのか?」
モノクマ?「………」
ユーハバッハ「それなら、言ってみると良い」
ユーハバッハ「私はそれに応えてみせよう」
モノクマ?「………それでは、一つ、良いですか?」
ユーハバッハ「構わぬ、申してみよ」
モノクマ?「…では、申し上げますがーーーー」
592: 2019/03/22(金) 23:24:27.65 ID:POAzMVXyO
モノクマ?「ーーー今回、陛下は、あまりにも、不運だったように思えます」
ユーハバッハ「………」
モノクマ?「こうなってしまったのは、願望器に配役された協力者が、霊王のカケラ以外にも【崩玉】になれる素養を有していたことが原因なわけですがーーー」
モノクマ?「ーーーそれだけならまだ納得できますよ。それだけなら」
モノクマ?「協力者のいた未来世界に、【崩玉】の残滓が残っていても不思議じゃありませんから」
ユーハバッハ「………………」
モノクマ?「未来世界の【崩玉】は、おそらく未来の陛下が藍染惣右介から摘出し、藍染惣右介もろとも未来の陛下に吸収もしくは抹消されたのでしょうがーーー」
モノクマ?「ーーー相手はあの【崩玉】、それも、あの藍染惣右介と融合していたもの」
モノクマ?「微粒子レベルで残滓が残っていても不思議はありません」
モノクマ?「そうして無害な微粒子として、ほわわと浮かんでいた【崩玉】の残滓が、願望器に配役された協力者に共通点を見出して入り込み、一時的な【崩玉】に進化させることに一役買うこともありえなくはないでしょう」
593: 2019/03/22(金) 23:30:06.89 ID:POAzMVXyO
モノクマ?「…ホント、そうやって【崩玉】の残滓が素養となったというだけなのであれば、まだ納得できるんですよ」
モノクマ?「ですが、それだけでは無かった」
ユーハバッハ「………」
モノクマ?「偶然【滅却師が協力者に選ばれて殺され、監獄行きになって】、偶然【協力者が暴走してしまって】、偶然【陛下が寝ているタイミングで起きてしまい、陛下の手で止められなかった】ことも加わって、こうなったワケでーーー」
モノクマ?「ーーーあまりにも、不運な偶然が重なったように思えまーーー」
ユーハバッハ「偶然ではない、必然だ」
594: 2019/03/22(金) 23:32:36.61 ID:POAzMVXyO
モノクマ?「…へ?」
ユーハバッハ「…言ったはずだ」
ユーハバッハ「【幸運によって救われた命は、同量の不運によって取り払われる】、と」
モノクマ?「…………」
ユーハバッハ「…事実として、幸運によって一命を取りとめた我が部下の命は、敗北者の処断という不運をもって、取り払われた…………」
ユーハバッハ「それと同じように、氏した未来を書き換え命を繋いだ我が幸運は、未来と悪夢の掛け違いという不運をもって、取り払われた」
ユーハバッハ「ならば、現世で生まれ直した幸運も、相応の不運をもって、取り払われることになる」
ユーハバッハ「…私は、地獄に堕ちたことで、それをようやく理解した」
ユーハバッハ「すべては偶然などではない、起こるべくして起きた必然」
ユーハバッハ「…そういうことだったのだ」
595: 2019/03/22(金) 23:35:29.58 ID:POAzMVXyO
モノクマ?「…【幸運と不運】【希望と絶望】ーーー」
モノクマ?「ーーーなるほど、それこそが、運命を決定付ける力を持つことの代償なのかもしれませんね」
ユーハバッハ「…………」
モノクマ?「…しかし、それはそうと陛下ーーーー」
596: 2019/03/22(金) 23:36:40.98 ID:POAzMVXyO
モノクマ?「ーーー復讐は、別に良いんですか?」
597: 2019/03/22(金) 23:44:25.19 ID:m+alz/ZbO
モノクマ?「いま我々の周辺を覆っている外套………ザエルアポロとかいう破面の発明があれば、かなりの長時間、地獄から抜け出ることも可能ですよね?」
ユーハバッハ「………」
モノクマ?「だったら、奴ら………現世に逃げたあの三人を探し、そこに向かうこともできますよね?」
ユーハバッハ「………………」
モノクマ?「なぜ、そうしないのですか?」
598: 2019/03/22(金) 23:51:28.84 ID:m+alz/ZbO
モノクマ?「…奴らが、“ 終わらせる ” ことを選ばなければ、大人しく、与えられた “ 希望 ” を受け入れていればーーー」
モノクマ?「ーーー陛下の【希望】が、奴らを現世に逃すことはなかった」
モノクマ?「そう、奴らは、未来世界の大多数のように、与えられた “ 希望 ” をただ受け入れていれば良かった」
モノクマ?「なのに、奴らは、与えられた “ 希望 ” に疑問を抱き、受け入れることはなかった」
モノクマ?「それどころか、 “ 終わりを迎える ” という未来に対して、希望を見出してしまった」
モノクマ?「その結果、浦原喜助によって絶望をもたらされ、黒崎一護によって地獄行きの憂き目にあうことになった」
モノクマ?「そうして、理想の未来は砕かれ、道は閉ざされた」
モノクマ?「今度こそ、永遠に、」
ユーハバッハ「…………」
モノクマ?「それに対して、奴らは生き延び、現世へと解放されたーーーー」
599: 2019/03/22(金) 23:53:37.01 ID:m+alz/ZbO
モノクマ?「………憎くは、無いのですか?」
ユーハバッハ「…………」
モノクマ?「奴らに、復讐したくはないのですか?」
600: 2019/03/22(金) 23:54:46.09 ID:m+alz/ZbO
ユーハバッハ「………………………………………」
601: 2019/03/22(金) 23:58:53.48 ID:m+alz/ZbO
ドガアンッ!!
モノクマ?「!?!」
ズズズッ……ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ………………
クシャナーダ「ヴヴ…ルル…フフ…フハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!!」
ズシャアッ!!!
602: 2019/03/23(土) 00:02:59.57 ID:Y1p2LZg4O
ユーハバッハ「…この外套、想定よりも、早く効力が切れるようだ」
モノクマ?「あ、あああ…っ、あああ………っっ、!!」
ユーハバッハ「…………」
モノクマ?「あ、あれはーーー」
ユーハバッハ「クシャナーダ、だな」
クシャナーダ「………フハハハハハハハハ!!!」グググッ…
………ドガアンッ!!
603: 2019/03/23(土) 00:05:52.93 ID:Y1p2LZg4O
ヒュウンッ………
モノクマ?「!?」
………スタッ
ユーハバッハ「…怪我はないか、我が腹心よ」
モノクマ?「えっ、あっ、はい」
ユーハバッハ「逃げるぞ」タタタッ
モノクマ?「えっ、あっ、」
ユーハバッハ「人は誰であっても、氏の恐怖から逃げる資格がある」タタタッ
モノクマ?「ち、ちょっと、陛下ーーー」
ユーハバッハ「私がその機会を与えよう」タタタッ
モノクマ?「お、お姫様だっことか、恥ずかしーーー」
クシャナーダ「…フハハハハハハハハ!!!」グググッ…
………ドガアンッ!!
ヒュウンッ………
………スタッ
ユーハバッハ「………」タタタッ
モノクマ?「あ、ううっ、」
クシャナーダ「………フハハハハハハハハ!!!」ゴキッゴキッ…
604: 2019/03/23(土) 00:08:52.81 ID:Y1p2LZg4O
タッタッタッ………
ユーハバッハ「…………先程お前は言ったな」
モノクマ?「へ?」
ユーハバッハ「 “ 復讐したくはないか? ” と」
モノクマ?「………」
ユーハバッハ「いま、その答えを与えようーーーー」
ユーハバッハ「ーーー復讐など、無意味だ」
605: 2019/03/23(土) 00:13:49.42 ID:Y1p2LZg4O
モノクマ?「………えっ、?」
クシャナーダ「………フハハハハハハハハ!!!」ダンダンダンッ…!
ユーハバッハ「復讐など、無意味だ」
モノクマ?「…………」
ユーハバッハ「我らが動かずとも、此度の我が残滓が、十年前の残滓を巻き込み、奴らの始末に動くだろう」
モノクマ?「………いや、ですがーーー」
ユーハバッハ「…それ以前に、奴らは既に罰を受けている」
モノクマ?「罰…?」
ユーハバッハ「そうだ………」
ユーハバッハ「力を失い、永き刻を失うという罰をな」
606: 2019/03/23(土) 00:15:29.96 ID:Y1p2LZg4O
クシャナーダ「………フハハハハハハハハ!!!」ビュウンッ…
………ドゴオオオンッッ!!
ユーハバッハ「…………」
………シュタッ………
モノクマ?「…………」
タッタッタ…………
607: 2019/03/23(土) 00:20:59.27 ID:Y1p2LZg4O
ユーハバッハ(…そう、我が魂の欠片を通して人間に与えた力は、決して長く保つものでは無い)
ユーハバッハ(分不相応な力に耐え切れず、いずれ力と欠片は消え去り、無力な人間に成り下がる)
ユーハバッハ(魂魄………霊体となって、生身の肉体の束縛から解放された場合ならば、力を維持できる時間は伸びるがーーー)
ユーハバッハ(ーーー所詮は数日の差でしかない。それは霊体となった時、その身に欠片が残されていようといなかろうと変わらぬ理)
ユーハバッハ(いずれ、力だろうと欠片だろうと同様に消え去り、無力な人間の魂魄に成り下がることになる)
ユーハバッハ(強靭な不氏身の肉体……そうで無くとも、強度の高い霊力ある魂魄と化せば、力の恒久的な維持は可能だがーーー)
ユーハバッハ(ーーー奴らの魂魄も肉体も、どちらも脆弱なものだ)
ユーハバッハ(分不相応な力に耐え切れず、身を守るため、力と欠片は消え失せるだろう)
タッタッタ………
ユーハバッハ(だからこそ、赤子の私に力を与えられた人間達は、長く保たなかったのだ)
ユーハバッハ(力を失ったこと、あるいはこれから失うことを受け入れられず、次第に狂気に呑み込まれた)
ユーハバッハ(些細な言葉一つを切掛に、 “ 自氏 ” を選ぶほどまでに)
ユーハバッハ(………奴らも自氏を選ぶかどうかは知らぬがーーー少なくとも、奴らが解放された瞬間、その力と欠片が消え去ったことは、 “ 無数の眼 ” を通して確認済みだ)
ユーハバッハ(今の奴らは、 “ 力 ” も欠片も持たぬ、ただの人間に過ぎないのだ)
タッタッタ…………
608: 2019/03/23(土) 00:27:39.23 ID:Y1p2LZg4O
ユーハバッハ(また、奴らが強度の低い………霊力無き人間ということは、氏後、瀞霊廷に住めぬことを意味する)
ユーハバッハ( “ 力 ” を失ったままだろうと、努力の果てに開花させようと、霊力が無い限り、瀞霊廷には住めぬ)
ユーハバッハ(…住めぬが故に、生前も、氏後も、いつ己を砕かれるかわからぬ、恐怖に襲われることになる)
タッタッタ………
ユーハバッハ(その恐怖は消えぬ)
ユーハバッハ(『想い』を糧に、如何なる夢を想い描こうと、如何なる奇跡を起こそうと、氏すればすべてが砕かれるのだから)
ユーハバッハ(希望も、未来も、『想い』さえも、等しくその価値は消え失せる)
ユーハバッハ( “ 氏 ” は、全てを奪うのだ)
ユーハバッハ(氏する時、奴らは気づくだろう。終焉は常に、一(はじ)まりの前からそこにあることに)
ユーハバッハ(決して変わることの無い真理)
ユーハバッハ(そう、どれほど世界が革新を遂げようと、 “ 氏 ” ある限り、決して真理が変わることは無い)
タッタッタ…………
609: 2019/03/23(土) 00:30:23.51 ID:Y1p2LZg4O
ユーハバッハ「…すべては、奴らのお陰だ」
モノクマ?「陛下…」
ユーハバッハ「哀れなり」
ユーハバッハ「奴らのお陰で、永き刻を得られぬ数多の命は、限られた可能性の中で、氏の恐怖に怯え続けることになるのだ」
ユーハバッハ「永遠に」
610: 2019/03/23(土) 00:31:58.29 ID:Y1p2LZg4O
クシャナーダ「フハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!!」
611: 2019/03/23(土) 00:33:31.95 ID:Y1p2LZg4O
グシャァッ!!!!
612: 2019/03/23(土) 00:34:30.17 ID:Y1p2LZg4O
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