562: 2013/08/29(木) 12:59:11.08 ID:Su1Q6nnC0
今日は4月1日。 エイプリルフール。

去年に引き続き、あたしは京介を騙そうと少し前から計画していた。

今は朝、京介はまだ寝ている。

黒猫にも沙織にも、話は事前にしてあるし、完璧完璧!

で、あたしは京介の上に跨り、いつもの様に起こす。

ぱちん、という軽快な音が鳴り響き、京介は驚いて目を開ける。



563: 2013/08/29(木) 12:59:37.90 ID:Su1Q6nnC0
桐乃「京介、人生相談」

京介「……この流れは久し振りだな」

あたしは京介の隣に座り、京介は眠そうにしながらも起き上がる。

よし、ここからが本番。

桐乃「……あのさ」

桐乃「あたし、喜べばいいのか分からないんだケドね」

564: 2013/08/29(木) 13:00:03.76 ID:Su1Q6nnC0
京介「ちょ、ちょっと待て桐乃。 なんでそんな神妙な空気を出してるんだよ? 今回の人生相談って、そんなヤバイ物なのか……?」

桐乃「……うん。 大事なこと」

京介は唾を飲み込み、あたしの言葉を待つ。

……良い感じじゃん。 京介すっかり空気に飲まれてるっぽいし。

桐乃「……子供が出来たの」

565: 2013/08/29(木) 13:00:31.04 ID:Su1Q6nnC0
京介「は、はぁ!? 子供って……お前、子猫……のこと?」

桐乃「ち、違うって!」

京介「じゃあ……子犬、とか?」

桐乃「そうじゃないっての! ほんとのほんとに子供。 その……京介とあたしの」

京介「だってそういうことはしてねえじゃんか!? そりゃ……それに近いのはあったかもしれないけどさ」

桐乃「ゆうなッ!! で……どうすればいいのか分からなくて」

566: 2013/08/29(木) 13:00:57.63 ID:Su1Q6nnC0
京介「……マジかよ」

京介は頭を抱え、困惑した表情。

桐乃「嬉しくないの?」

京介「嬉しいけどな! 嬉しいけど……」

京介「正直言って、俺もどうすりゃ良いのか……って感じだよ」

桐乃「……そか」

567: 2013/08/29(木) 13:01:25.22 ID:Su1Q6nnC0
桐乃「……く、ふひっ」

京介「ど、どした? 急に笑い出して」

ダメダメ。 さすがに可哀想に思えてしまう。 そろそろネタバラシしておこう。

桐乃「二年連続ー! エイプリルフールでしたぁ!」

桐乃「ふひひ。 きりりん大勝利ー!!」

京介「お、お前ッ!! 嘘だったのか!?」

568: 2013/08/29(木) 13:01:52.61 ID:Su1Q6nnC0
桐乃「だってしてないのに出来るワケ無いじゃん。 マジ顔で心配してくれてありがとね~。 ひひ」

京介「て……てめえ……」

あれ。 京介の目が怖い。

京介「覚悟しろ桐乃ぉ!!」

京介は言うと、あたしに飛び掛る。

当然あたしは後ろに倒れて、京介はその上に馬乗り。 で、両手は頭の上で京介の左手に抑えられてる。

桐乃「あ、あんたなにしてんの!? ま、まさか本当に子供を……」

569: 2013/08/29(木) 13:02:24.16 ID:Su1Q6nnC0
京介「作らねーよ!!」

桐乃「……作らないの?」

京介「いや、そうじゃなくて……今はまだ」

京介は言うと、若干恥ずかしそうにあたしから顔を逸らす。

いやいや、あたしもかなり恥ずかしいんですケド。

京介「じゃねえ! 今はそういう話じゃねえっての!」

570: 2013/08/29(木) 13:02:52.90 ID:Su1Q6nnC0
桐乃「じゃ、じゃあなによ? 妹の上に馬乗りで乗って、両手拘束して、何する気?」

京介「へへへ。 お前、脇腹弱点だったよな」

……それはマズイから! てか、京介に触られると本当にヤバイんだって!

だけど言えない! あんたに触られると、とか恥ずかしすぎだっての!

京介「……お前なんか嬉しそうだな」

桐乃「は、はぁ!? あたしのどこが嬉しそうに見えるワケ!? チョーキモイんですケドぉ!」

571: 2013/08/29(木) 13:03:19.83 ID:Su1Q6nnC0
京介「顔にやにやしてんぞ。 自分で分かってないの?」

ま、マジ? そりゃ当然京介にべたべたされるのは嬉しい……もう本当にめちゃくちゃ嬉しいけどね。 だけどそんな顔をあたしがしてるって?

無い無い無い無い! 絶対無い!

桐乃「ほ、本当に?」

京介「いやエイプリルフールだけどな」

572: 2013/08/29(木) 13:03:46.94 ID:Su1Q6nnC0
桐乃「~~ッ! このバカ! サイアク!」

京介「言っとくけど、最初に仕掛けてきたのはお前だからな。 って訳で覚悟しやがれ」

そう言うと、京介はあたしのお腹を片手で弄る。

……てか、直接服の中に手入れてきてない!? 氏ぬって! それは氏ぬって京介!

573: 2013/08/29(木) 13:04:12.43 ID:Su1Q6nnC0
桐乃「……ひい……ひい」

京介「楽しそうだな、桐乃さんよー」

桐乃「ぜ……全然楽しくない……」

京介「そうか」

京介は言い、あたしのお腹に指で触れる。

桐乃「ふ、ふひひ……」

574: 2013/08/29(木) 13:04:38.73 ID:Su1Q6nnC0
京介「……楽しそうだな?」

桐乃「……ちょ、ちょっとだけね」

京介「はは、そうかよ」

言いながらあたしの顔を撫でる。 そんなことをしながら、あたしの顔を京介はじーっと見つめてくる。

……超恥ずかしいんですケド。

桐乃「な、なんだっての」

575: 2013/08/29(木) 13:05:19.22 ID:Su1Q6nnC0
京介「……一応、騙された俺の負けだしさ。 お前にプレゼントあげようかなって思ってたんだ」

桐乃「マジで!? なにくれるの!?」

京介「そ、そこまで期待の眼差しを向けられる様な物でも無いぞ……? 先に言っておくが」

桐乃「大丈夫だって! 京介がくれる物ならなんでも嬉しいから!」

京介「……そっか。 ありがとよ」

い、勢いに任せてヘンなことを言ってしまった気がする。

576: 2013/08/29(木) 13:05:47.64 ID:Su1Q6nnC0
……落ち着け! 落ち着けあたし! そ、そうだ。 いいこと思いついた。

今日ってエイプリルフールじゃん? だから、あたしがこうやって考えていることも全部嘘。 そういうことにしちゃおう。

ついでに、さっき言った「京介がくれる物ならなんでも嬉しい」ってのも嘘ってことにしよう。 うん。

桐乃「で、なにくれんの!?」

京介「……実はさ、今日アキバでメルルのイベントがあるんだよ。 知らなかったろ?」

桐乃「メルルのイベント? うーん……確かに知らなかったかも」

577: 2013/08/29(木) 13:06:15.03 ID:Su1Q6nnC0
京介「ふっふっふ。 俺の極秘ルートで入手した情報だからな。 お前が知らないのも無理はねえか。 ははは」

桐乃「沙織から?」

京介「……まあ、そんなとこ」

かっこわる! うーん、でもあたしの為に調べてくれたのは格好良い!

うんうん。 京介チョー格好良い! チョー惚れるって!

勿論、全部嘘ね。 嘘嘘。

578: 2013/08/29(木) 13:06:42.58 ID:Su1Q6nnC0
桐乃「で、連れて行ってくれるの?」

京介「当たり前だろ。 俺はお前の何だよ?」

桐乃「う~ん。 奴隷?」

京介「……へいへい」

よし! 京介とデートきたぁああああああ!!

メルルもそりゃ嬉しいよ。 だけど京介と二人っきりで出掛けられるだけでもう充分すぎなんですケド!

ふひひ。 そうと決まれば準備しないと。 メルルのイベント終わっても色々回りたいしね!

579: 2013/08/29(木) 13:07:12.63 ID:Su1Q6nnC0
そして、京介とそれから布団の上でお喋りをして、あたしたちは秋葉原へ。 まずはお昼~。

京介「お前、なんか食いたい物とかあるか?」

……優しいなぁ。 些細なことでもあたしのことを優先してくれるとか、チョー嬉しい。

桐乃「特に無いかな。 どこでもいいよ、どこでも」

言いながら、あたしは京介の腕に絡みつく。

……ふひひ。

580: 2013/08/29(木) 13:07:39.22 ID:Su1Q6nnC0
京介「な、なんだよ急に」

桐乃「なに? デートでしょ? 文句あんの?」

京介「ねえって……ちょっと驚いただけだ」

出来ることなら抱き締めて欲しいけど、場所が場所だしね。

家に帰ってからやってもらおっと。

そうして、そのまま少し歩いて近くの喫茶店へ。

メイド喫茶とかじゃなくて、普通の喫茶店。

581: 2013/08/29(木) 13:08:09.70 ID:Su1Q6nnC0
京介「あーそだ……桐乃、後でちょっと大事な話あるから、聞いてくれ」

桐乃「今じゃダメなの?」

京介「で、出来れば飯を食い終わった後が良い」

桐乃「ふうん? ベツに良いケド」

京介「おう、サンキュー」

そんな会話をしている内にご飯が運ばれてくる。

582: 2013/08/29(木) 13:08:35.16 ID:Su1Q6nnC0
桐乃「……」

京介「いただきます……って、どうした? 桐乃」

桐乃「へ? な、なんでも無い! いただきます!」

あたしが京介に「あーん」ってしようと思ってたなんて言えないっつーの! バカップルみたいじゃん!

京介「そうか」

と、京介は言うとフォークでスパゲッティをくるくると巻く。 それは少し控えめな量で、京介ってそんなちまちまと食べるんだっけ? なんてあたしは思っていた。

583: 2013/08/29(木) 13:09:02.92 ID:Su1Q6nnC0
京介「ほら、あーん」

桐乃「な、なななななな!? は、はぁ!? なに!?」

京介「なにって……そうしたそうな顔をしてたからだけど。 口開けろって」

桐乃「そんな顔はしてない!! ヘンな勘違いすんなッ!」

桐乃「……あーん」

京介「……お前なんか面白いな」

584: 2013/08/29(木) 13:09:33.83 ID:Su1Q6nnC0
ニヤニヤしながら見ないでよ! むっかつくむっかつく!!

そりゃあ、だって京介が折角やってくれたんだし……断るのはあれじゃん。 だからこれはあたしの優しさだっての。 ふん。

……あ、今日はエイプリルフールなんだ。

京介優しいって! あたしが思ってることちゃんと汲み取ってくれるし……もう毎日惚れ直しちゃうんだケド! マジで!

桐乃「……うっさい。 言っとくケド、あたしもあんたに今のやるから」

585: 2013/08/29(木) 13:10:07.28 ID:Su1Q6nnC0
京介「へいへい」

京介は言い、あたしの顔をじっと見つめる。

……なんか、今日は先手を取られてばかりな気がするよね。

桐乃「……あーん」

京介「あ、あーん」

桐乃「おいし?」

京介「……まあ」

586: 2013/08/29(木) 13:10:40.77 ID:Su1Q6nnC0
桐乃「あたしが食べさせてあげたのに「まあ」ってなに?」

京介「……超美味い。 氏んでも良いかもしれない」

桐乃「……ふひひ~」

あー恥ずかしい。 でも、外だしこの辺にしておかないとマズイよね。

……家に帰ったら甘えちゃおうかな。

そんなムズムズとした感情を抱きながら、昼食を終える。

587: 2013/08/29(木) 13:11:07.89 ID:Su1Q6nnC0
桐乃「あ、そーだ。 さっき言ってた話ってなに?」

ご飯を食べ終わり、一息。

紅茶を飲みながら、京介に先ほどのことを聞く。 やっぱり気になっちゃうし。

京介「ん、あー。 あれか」

京介「……実はだな、桐乃」

京介はゆっくり、続けた。

588: 2013/08/29(木) 13:11:38.28 ID:Su1Q6nnC0
京介「今日のイベント、女性はコスプレしないといけないんだよ。 会場に入るには……な」

……。

桐乃「あたし、男で通るかな?」

京介「いや絶対無理だと思う」

桐乃「く……」

桐乃「で、でもそんな衣装持ってきて無いし! 無理だって!」

589: 2013/08/29(木) 13:12:04.67 ID:Su1Q6nnC0
京介「それは心配いらないぜ。 そんなこともあろうかと、俺はお前のネコ耳ネコ尻尾メイド服を持ってきているからなぁ!」

そう言うと、京介はカバンからそれを取り出す。

桐乃「あ、あたしの引き出し漁ったっての!? 何してんの!?」

京介「……お前って、結構工口い下着履いてるんだな」

桐乃「へ、変O!! さすがに変Oすぎ!!」

京介「ば、馬鹿。 声がでけーよ。 冗談に決まってんだろ……出来る限り見ないようにはしておいたから」

590: 2013/08/29(木) 13:12:36.90 ID:Su1Q6nnC0
……ヤバイ。 恥ずかしい。 顔が熱い。

京介「で、どうすんの?」

桐乃「……ここまで来て、引くワケにはいかないっしょ」

もう、決意を無理やり固めるしかなかった。

591: 2013/08/29(木) 13:14:00.30 ID:Su1Q6nnC0
京介「……やっぱ、お前超可愛い」

桐乃「う、うっさい! てか、ちゃんとあたしの服持っててよ。 無くしたらこのままの格好で地元とか……氏ねる」

京介「任せとけって。 つうか、さっきからお前が超寄り添ってくる所為で歩き辛いんだけど」

桐乃「仕方ないでしょ! こんな格好で……いくらアキバって言っても、恥ずかしいんだっての」

いちお、メイド服を着た人は結構居るには居るけど。

こんなネコ耳とか尻尾とか、マジで氏にたくなってきた。

592: 2013/08/29(木) 13:14:26.19 ID:Su1Q6nnC0
京介「……もうちょっとだから、な?」

京介は言いながら、あたしを隠すように腕を回す。

……はぁ、全身の力抜けちゃいそうなんだけど。 もし本当にそうなったらどうしてくれるっての。

もう、なんでこんなずっと心臓ばっくばくなってるワケ? 明らかに寿命縮んでるでしょ、これ。

桐乃「……うん」

あたしは京介の服を掴み、顔を隠すように埋めて、一緒に目的地まで歩いて行った。

593: 2013/08/29(木) 13:15:29.48 ID:Su1Q6nnC0
京介「よし、着いたぜ」

桐乃「着いたって……レンタルルーム?」

京介「おう。 ここの一室で、やってるらしい」

桐乃「……ヘンなイベントじゃないよね? その、エOチな」

京介「ちげえよ! もしそうだったら俺が守ってやるっての」

桐乃「……ありがと」

今日、もう何回ドキってしたか数え切れないほどなんだけど。

594: 2013/08/29(木) 13:15:56.85 ID:Su1Q6nnC0
京介「ほら、行くぞ桐乃。 楽しもうぜ」

桐乃「ひひ……うん!」

そして、ひとつの部屋の中へと入る。

中は真っ暗で、部屋の壁に掛けてあるスクリーンからの光りだけが照らしていた。

京介「ここ、椅子あるから座ろうぜ」

桐乃「う、うん」

595: 2013/08/29(木) 13:17:28.54 ID:Su1Q6nnC0
京介「……怖いか?」

桐乃「……ちょっと」

京介「んじゃ、ほら」

京介はそう言い、あたしの両手を両手で掴む。 しっかりと、離さない様に。

ヤベー! このシチュやばくない!?

ここでキスされたら、あたし多分、気を失う自信がある。

暗くて良かった。 今の顔、相当だらしないことになってそうだし……ね。

596: 2013/08/29(木) 13:18:05.94 ID:Su1Q6nnC0
京介「……桐乃」

京介が突然、優しい声であたしに囁く。 耳元で、息が当たるくらいの近くで。

桐乃「ど、どしたの?」

京介「……好きだ」

桐乃「……うはぁ」

思わずヘンな声が出ちゃった。 いやもうそんなのすらどうでも良い。 もう無理無理! 我慢できない! 京介大好き! 超好き!!

は、早くキスしてよ!! これ以上焦らされたら、泣きそうなんだけど!!

597: 2013/08/29(木) 13:19:19.61 ID:Su1Q6nnC0
そう思ったとき、部屋が明るくなる。

桐乃「へ、へ?」

部屋の中には人影が1……2……。

あたしと京介を合わせて、4人。

メルルのコスプレをした黒猫と、あるちゃんの格好をした沙織。

桐乃「な、え? ……ん?」

598: 2013/08/29(木) 13:20:54.24 ID:Su1Q6nnC0
あたしが何が起きているのか分からずにヘンな声を出している間にも、事は進む。

まず、スクリーンにビデオカメラで撮ったような映像が流れ始める。 多分、メルルのPVをパロった物。

メルルの格好をした黒猫と、あるちゃんの格好をした沙織と、何故か漆黒の格好をした京介。

あるちゃん巨人すぎでしょ。 いやいや、そうじゃなくて、あれ?

あたしが状況を飲み込めずにいても、映像はどんどんと進む。

599: 2013/08/29(木) 13:22:40.25 ID:Su1Q6nnC0
やがて本人たち的には激しい戦いを繰り広げた後、メルルが泣きながら漆黒を杖で突き刺した。 いやいやなにコレ。

ていうか、黒猫マジ泣きじゃん! そんな漆黒を倒すの嫌だったらなんであんたその役やってんの!?

京介「つうわけで桐乃、今日はエイプリルフールだ」

桐乃「……は、ははははははは」

黒猫「……壊れた?」

沙織「壊れましたな……」

600: 2013/08/29(木) 13:23:07.02 ID:Su1Q6nnC0
京介「これに懲りたら、俺を騙すのはやめるんだな! はっはっは!」

だ、騙されたぁああ!? て、ってことはだよ、今あたしがしてるこの恥ずかしい格好も。

桐乃「こ、この服って」

京介「そりゃ、そっちの方がお前の可愛い顔が見れるしな」

桐乃「……メルルのイベントって」

京介「このことだよ。 一応、イベントだろ?」

601: 2013/08/29(木) 13:23:34.87 ID:Su1Q6nnC0
桐乃「あ、あんたら……!!」

あ、ありえない!! あたしが超嬉しそうにしてたのも、京介は内心ニヤニヤしながら見てたっての!?

……このなんとも言えない感情。 今すぐ時間を巻き戻したい。 てゆうか、今日のあたし恥ずかしすぎる。

黒猫「それより桐乃。 とりあえずその垂れているよだれを拭いた方がいいわよ」

桐乃「な、な……」

なんでそうなってるの? と言おうとしたけど、うまく言葉に出ない。

沙織「それはきりりん氏が大好きな方に、耳元で愛を囁かれてしまっては……仕方ありませぬ」

602: 2013/08/29(木) 13:24:01.49 ID:Su1Q6nnC0
……くおおおお!! 顔から火が出そうってこんなことを言うの!?

桐乃「あ、ああああああ……」

顔を隠すあたし、そんなあたしを京介はゆっくり抱き寄せた。

京介「……わり、そこまでするつもりじゃなかったんだけど……お前のこと見てたら、つい言いたくなってさ」

そんなことを言い、あたしの頭を撫でる。

……うへへ。

これはこれでありかもしれない……。

603: 2013/08/29(木) 13:24:41.96 ID:Su1Q6nnC0
京介「沙織、黒猫。 ちょっと席外すな、悪い」

黒猫「構わないわ。 その間に、わたしたちは着替えておくから」

沙織「ええ。 問題無いでござる」

京介「ほら、桐乃。 行くぞ」

言うと、京介はあたしを引っ張り部屋の外へと連れ出す。

桐乃「い、行くって?」

京介「お前、ちょっと落ち着いた方が良いだろ。 それに……ちゃんと謝りたいし、こんなことしておいてあれだけど」

桐乃「……分かった」

604: 2013/08/29(木) 13:25:38.78 ID:Su1Q6nnC0
桐乃「そ、それで。 どうしてくれんの!?」

部屋の外へ行き、少し人気が無い場所へ移動。 それから会話。

京介「言っとくが、お前の嘘だってひっでえからな!? 妊娠したとか俺ぶっ倒れててもおかしくねえぞ!?」

桐乃「ふ、ふん……」

京介「でもまあ、俺もちょっとやり過ぎたかもな……だけど、恥ずかしがるお前すっげえ可愛かったぞ」

605: 2013/08/29(木) 13:26:05.89 ID:Su1Q6nnC0
桐乃「そ、そんなことは聞いて無いッ!!」

ありがと! ありがと京介大好き! 出来ればもっと言って欲しい!!

京介「ごめんごめん。 ああ、そうだ」

京介「桐乃」

京介は言い、一歩二歩、あたしに近づく。

桐乃「な、なに?」

606: 2013/08/29(木) 13:26:44.54 ID:Su1Q6nnC0
京介「ここなら人目ねえし、黒猫にも沙織にもばれないから」

言うと、京介はあたしを抱き寄せ、あたしの唇を奪った。

……悔い無し。

桐乃「ふ、ふひひひひひ。 きょ、京介ぇ」

京介「お、おい? お前どうしたの……?」

積み重なりすぎて、我慢できない! もうさすがに無理だって!

607: 2013/08/29(木) 13:27:11.45 ID:Su1Q6nnC0
桐乃「もっかい、もっかいチューして。 えへへ」

京介「わ、分かったよ……」

桐乃「ふひひ」

京介は再度あたしに近づいて、キス。

あたしはそんな京介の首へと腕を回し、絶対に離さないようにしっかりとホールド。

ああ、頭おかしくなっちゃいそう。

608: 2013/08/29(木) 13:27:38.60 ID:Su1Q6nnC0
京介「……んー!?」

あたしがいつまでも離さないので、京介は少し慌てた様子。 いやもうこのまま一生過ごそう。 ね、京介。

ずっと、ずーっと京介とキスをしたまま、あたしは京介を抱き締める。

こうして一緒に居るだけで、頭はどんどんふわふわとして、ぼーっとしてきてしまう。

5分ほどそうした後、ようやくあたしは唇を離す。

京介「ぷはっ! お、お前さすがなげえよ!!」

609: 2013/08/29(木) 13:28:07.09 ID:Su1Q6nnC0
桐乃「あたしまだ満足して無い。 じゅーでんして」

京介「ま、またか……?」

桐乃「うん。 早く。 んー」

京介の顔が段々と赤くなっているのに気付いた。 ひひ。 それでもしっかりあたしのこと、抱き寄せてるじゃん。

610: 2013/08/29(木) 13:29:03.69 ID:Su1Q6nnC0
こうして、今年のエイプリルフールは終わる。

去年よりも多分、幸せな一日だっただろう。

いや、でも京介と一緒ってだけで幸せ度数的には最高値だから、比べられないかもしれないけどね。

ちなみに、この後キスを何回も何回もして、あたしと京介が正気に戻ったのは三十分後。 探しに来た黒猫と沙織に見つかるまでだった。


全部嘘だかんね 終

611: 2013/08/29(木) 13:30:09.78 ID:Su1Q6nnC0
以上で本日の投下終わりです。
乙、感想ありがとうございます。

明日の短編、今日のお話の京介視点からの物となります。

引用: 桐乃「行ってきます」