740: 2013/09/01(日) 13:08:26.26 ID:xyeEAHJt0
月曜日。 一週間の始まり。 私にとっては多分、幸せな日。

学校に行けば桐乃が居て、加奈子もまぁ居て。

三人で楽しくお喋りしたり、お弁当を食べたり、勉強したり、仕事の話とかもしたりして。

そんな、楽しい毎日が始まる日だからこそ、私は月曜日が楽しみなのだろう。

そうは言っても、つまらない日だって当然ある。 それは桐乃が学校に来ない日だったり。

……帰り道で、お兄さんに会った日だったり。

先週の金曜日は最悪だった。 少し、そんな最悪な日を思い出してみよう。
俺の妹がこんなに可愛いわけがないTRUEROUTE

741: 2013/09/01(日) 13:10:00.30 ID:xyeEAHJt0
京介「おうあやせ、偶然だな」

あやせ「そんなこと言って、また私に付き纏っているんじゃ無いんですか?」

京介「ちげーって……あれか、もしかしたら俺とお前ってそういう風に偶然出会いまくる運命なんじゃ」

あやせ「今の録音しましたから。 今度の月曜日、桐乃に聞かせます」

京介「すいませんでしたぁ!!」

勢い良くそう言いながら土下座するお兄さん。 道端で何をやっているんだろう、この人は。

742: 2013/09/01(日) 13:10:57.73 ID:xyeEAHJt0
あやせ「分かりましたよ……仕方ないですね」

京介「お、おお! さすがはあやせ!」

……あくまでも、私が分かったと言ったのはお兄さんの謝罪について。 桐乃に聞かせることには変わり無いってところは言わない方が良さそう。

だって、桐乃が嫉妬して「くうう」って顔をするのはすごく可愛いし!

あやせ「もう、褒めても何も出ませんよ? それよりこんなところで私と話していて良いんですか?」

京介「……ん、ああ。 そうだった。 桐乃の奴からお使い頼まれてるんだった」

743: 2013/09/01(日) 13:12:01.44 ID:xyeEAHJt0
あやせ「でしたら道草を食っている場合じゃないじゃないですか。 ぶち頃しますよ」

京介「それで殺されてたら命がいくつあっても足らないっての……まあ、またな。 あやせ」

あやせ「さようなら」

京介「……またね?」

あやせ「さ、よ、う、な、ら」

京介「……さようなら」

744: 2013/09/01(日) 13:13:40.04 ID:xyeEAHJt0
良かった。 うまくやっているみたいで。

正直に言うと、最初の頃は心配で心配で堪らなかった。 桐乃のことも、お兄さんのことも。

これからどうするつもりなんだろうとか、私には全く関係無いのに悩んでしまって。

それからお兄さんと話す機会があって、すっきりして。

この人なら大丈夫だと、思えた。

745: 2013/09/01(日) 13:14:54.09 ID:xyeEAHJt0
あやせ「って違う! それじゃあやっぱり良い日だったみたいに思えちゃう!」

桐乃「きゅ、急にどしたの? あやせ」

あやせ「へ、へ? あ、あはは。 何でも無いよー? あはは」

桐乃「そ、そう? なら良いケド」

でもやっぱり、先週の金曜日に比べたら今日はとっても良い日。

だって、登校中に桐乃に会えたから。

加奈子「おーっす。 お前ら何仲良く登校してんの? もしかしてデキた?」

……ランクダウン。

746: 2013/09/01(日) 13:15:19.66 ID:xyeEAHJt0
加奈子「……さすがの加奈子でもそこまで露骨に嫌そうな顔されると傷付くんだけど、あやせ」

あやせ「え、えー? そんなことないってばぁー。 どうしてくれようかなんて、思って無いよ?」

加奈子「……桐乃、あたし消えた方が良い様な気がしてきたんだけど。 命の危険を感じる」

桐乃「えぇー? 加奈子も一緒に行った方があたしは楽しいのに」

あやせ「だ、だよね? 私も丁度そう思ったところだったんだぁ~」

加奈子「……うそくせー」

747: 2013/09/01(日) 13:16:00.34 ID:xyeEAHJt0
あやせ「何か言った?」

加奈子「……あ、何でも無いッス」

やっぱ桐乃は優しいなぁ。 こんな加奈子相手でも、楽しいって言えるんだから。

加奈子はもっと桐乃に感謝するべきだよね。 全くもう。

でも、なんかこうしてやり取りをしているのにも、幸せを感じる私だった。

748: 2013/09/01(日) 13:16:33.31 ID:xyeEAHJt0
そして、お昼の時間。

あやせ「きーりの! 一緒にご飯食べよ」

桐乃「うん。 良いよ。 あはは」

机を合わせ、桐乃と向かい合う。

加奈子「なんかさ、あたしの存在忘れてね?」

あやせ「や、やだなぁ。 忘れてるわけ無いでしょ? 加奈子ったらー」

加奈子「……」

いつもの感じ。 この空気が、私はとても好き。

皆で机をくっ付けて。 お弁当を広げて。

749: 2013/09/01(日) 13:17:23.46 ID:xyeEAHJt0
広げて。

桐乃「そーいえばさ、ちょっと聞いてよ二人とも」

……始まった、と思った。

それは多分、加奈子も一緒。

だって、桐乃がこう言った瞬間に私も加奈子も顔を見合わせたから。 お互いに思っていることは一緒のはず。

この時間、私と加奈子は毎日桐乃の話を聞かされる。 その時の桐乃の顔はモデルをやっている時のしっかりした顔付きとは違って、普段の優しそうな顔付きとも違う。

私や加奈子にもあまり見せない、砕けた表情。 へらへら笑っているという感じ。

でも、幸せそうだなとは思う。

750: 2013/09/01(日) 13:19:46.98 ID:xyeEAHJt0
桐乃「昨日さぁ。 肉じゃが作ってあげたんだ、あいつに」

桐乃「あ、いちお毎日あたしがご飯作ってるのね。 土下座して頼まれちゃって仕方なくなんだケドぉ」

桐乃「それで! あいつなんて言ったと思う? あたしの手料理食べて」

あいつが誰かなんて、聞く必要は無い。 もうこの様な話は週に五回はされているから。

つまり、学校がある日は毎日ということ。

で、何々。 お兄さんが桐乃の手料理を食べて何て言ったか……かぁ。

ううーん。 お兄さんだったら、そうだなぁ。

751: 2013/09/01(日) 13:21:11.55 ID:xyeEAHJt0
あやせ「桐乃、お前の手料理を食べられるなんて俺はなんて幸せ者なんだ。 とか?」

加奈子「ちっげーよ。 京介だったらこう言う。 桐乃、そんなことより早く布団行こうぜ。 だろぉ?」

桐乃「ち、が、う!! あやせも加奈子もあいつのこと分かってないッ!」

机をバンッと音がする勢いで叩く桐乃。 あ、加奈子のお弁当落ちそうになっちゃってる。

それにしても怖いよ、桐乃。 当てられないとこうやってちょっと怒って、当てたら当てたで「……ふうん」って不機嫌になるんだよね、いっつも。

面倒臭いよ!  正直に言って面倒臭いよ桐乃! でもそこがまた、可愛いんだけどね。

752: 2013/09/01(日) 13:21:53.38 ID:xyeEAHJt0
桐乃「あいつ、こう言ったの」

桐乃「また肉じゃがか? って」

桐乃「ありえなくない!? あたしが折角作ってあげたのに「また」とかチョー意味が分からないんですケドぉ!」

あやせ「き、桐乃落ち着いて。 声が大きいよ」

桐乃「あ、あ……ごめん」

桐乃「で、でも酷くない? 普通、そうゆうこと言う?」

加奈子「まあ頻度に寄るんじゃね? それで連続何日目なんだよ?」

753: 2013/09/01(日) 13:22:20.50 ID:xyeEAHJt0
桐乃「二日目」

あやせ「桐乃、加奈子。 お兄さんを頃しに行こう」

加奈子「よっしゃ行くか!」

たった二日で!? たった二日で「また」だなんて、どの口が言っているのだろう!?

お兄さんには一度、躾が必要かも。

桐乃「あ、あはは。 そこまであたしも怒って無いって」

あやせ「で、でも酷いって! 桐乃が折角作ってあげたのに……」

754: 2013/09/01(日) 13:23:20.74 ID:xyeEAHJt0
桐乃「でしょ~? 飽きない様に、味付け変えてるのに……」

桐乃「だから、あたしは言ったの。 京介に「なに、文句あるワケ?」って」

あやせ「もっと言って良いよ。 私が許すから」

加奈子「加奈子もさんせー。 で、京介はなんて言ったの?」

桐乃「ふ、ふひひ……それがね、あいつ「ある訳無いだろ? お前の作ったのなら同じ物でも毎日超美味しく食えるぜ」って言ったの!」

……そういうことですか。 桐乃。

755: 2013/09/01(日) 13:23:49.40 ID:xyeEAHJt0
桐乃「チョーキモくない!? 同じ物でも毎日食べられるって~。 ふひひ。 どんだけあたしのこと大好きなのぉ!?」

桐乃「しかもあたしの頭撫でながらゆうんだよ!? ぺたぺた触ってさぁ! ふひひひ」

あやせ「……良かったね、桐乃」

桐乃「何にも良く無いってぇ! あたしチョー大変なんだってばぁ! 家に帰ったら毎日あいつ居るしぃ!」

この表情を見たら、百人中百人は「幸せそう」と表現するんだろうなぁ……。

なんて、飛びっきりの笑顔であたしと加奈子に話す桐乃を見てそう思う。

756: 2013/09/01(日) 13:24:45.28 ID:xyeEAHJt0
加奈子「……」

ふと、加奈子の方に視線を向けると、既に加奈子は食事モード。

こう話し出すと、桐乃はしばらく止まらない。 私も加奈子に習い、食事モードへと入ることにした。

桐乃「でさ、でさ。 その後は「桐乃、あーん」とか言ってやってくんの! マジ、どんだけシスコンなワケ!?」

桐乃「そんでぇ、あたしがお返しに「あーん」ってやってあげたら、あいつ超嬉しそうに笑うんだよ? き、キモすぎ! ふひひ~」

嬉しそうだね、桐乃。

757: 2013/09/01(日) 13:25:33.01 ID:xyeEAHJt0
火曜日。

今日は桐乃とも加奈子とも会えず、一人で登校。

何でも今日は寄って行く場所があるらしく、いつもの時間より少しだけ遅れるとのこと。

別に待ち合わせをしている訳でも、一緒に行こうと約束している訳でも無いのに、桐乃はそういう時にしっかりと連絡してくれる。

私はそれが、少しだけ嬉しかったり。

加奈子は……寝坊でもしているのかな。 多分。

あやせ「……今日は一人かぁ」

758: 2013/09/01(日) 13:26:00.32 ID:xyeEAHJt0
学校に行けば会えるけど、それでも寂しい。

そういえば、この前もそうだったかな。 桐乃が進路のことで呼び出されて、学校に残って、私が一人で帰って居た時。

……あの時はお兄さんと会った。 あれからたまに桐乃の写真が送られてくる。

桐乃も笑ってピースとかしているから、送ることに承諾しているのだろう。

そんなことを思っている中、私は見慣れた人影を見つけた。 それも二人。

あやせ「お兄さんに……桐乃?」

仲が良さそうに手を繋いで歩いている。 桐乃、凄く楽しそうだなぁ。

759: 2013/09/01(日) 13:27:05.46 ID:xyeEAHJt0
でも、お兄さんって結構大人っぽいし、見ようによっては女子高生に手を出している変Oに見えなくも無い……かな?

ううん。 お兄さんは紛れも無い変Oだけど。

……普段はしない。 普段の私だったら。

でも今日は、なんだか違った気分。 少し、いたずら心を突付かれた様な気分。

あやせ「……つ、付いて行って見ようかな」

お兄さんが変な所に桐乃を連れ込もうとしたら助けないと行けないし!

そう。 だからこれはストーカーとか、そういうのじゃない。

760: 2013/09/01(日) 13:27:31.51 ID:xyeEAHJt0
桐乃「でさ~」

京介「はは、マジかよ」

途切れ途切れに聞こえて来る会話からは、仲の良さが窺える。

桐乃から話されることって言うのは、大体が惚気話で、こういう日常的な話ってあまり聞かないんだよね。

……いや、でもその惚気話が日常的な話だとしたら?

お兄さん、今度お話しましょうね。

私がそう思いながら二人の姿を見ていると、お兄さんが突然振り向く。

慌てて物陰に隠れ、見つからない様に。

761: 2013/09/01(日) 13:28:06.85 ID:xyeEAHJt0
桐乃「……どしたの?」

京介「いや……なんか殺気を感じた」

殺気!? わ、私が殺気を出していたって言うんですか!? ぶち頃しますよ!?

……全くもう。 お兄さんは失礼です。 私が送っていたのは暖かい眼差しだというのに。

京介「ううむ。 ま、良いか。 行こうぜ」

桐乃「うんっ」

そして、また手を繋いで歩き出す二人。

762: 2013/09/01(日) 13:28:37.33 ID:xyeEAHJt0
なんか、近寄りがたいオーラを出している様な気がする。

だって、手なんて恋人繋ぎだし……桐乃ったら、お兄さんの体にぴったりくっ付いているし。

これで桐乃は良く「あいつマジキモイ」とか言えるよね……。

二人っきりの時は、これだけ桐乃も素直なのに。

あやせ「……私、何しているんだろ」

このままだと二人の邪魔をしてしまいそうで、私は来た道を引き返す。

学校、行かないと。

763: 2013/09/01(日) 13:29:15.26 ID:xyeEAHJt0
水曜日。

今日は学校帰りに仕事。 桐乃も一緒。

私と一緒に仕事の時は、二人で一緒に行って、二人で一緒に帰っている。

桐乃だけが仕事の時は、お兄さんが送り迎えをしているみたい。 最近車の免許を取ったようで、たまに学校の近くに止まったりしている。

……前に警察の人に職務質問をされていたのを見かけた時は、さすがに可哀想になって声を掛けたけど。

まぁ、高校の目の前に車を止めていたら怪しいよね。 最近、そういうので事件になるパターンもあるみたいだし。

私は当然「止めるならもう少し離れた場所にしましょうよ」と言った。 お兄さんはその時、こう返してきたけど。

764: 2013/09/01(日) 13:29:42.40 ID:xyeEAHJt0
京介「だって、そうしたら出てくる桐乃が見れないじゃん……。 あいつ、俺を見つけたときにすっげー笑顔になるから、それが楽しみなんだよ……」

あやせ「とんだ変Oですね……今日も放っておけば良かったです」

京介「じゃあ、逆の立場になってみろよ。 あやせが桐乃を送り迎えするとして、お前はどうする?」

わ、私が桐乃を送り迎え……?

そ、そんなのはもう。

あやせ「……教室まで迎えに行きますね」

京介「だろ!? だったら俺がここで待ってるのは、自制してのことなんだよ。 納得してくれたか?」

765: 2013/09/01(日) 13:30:08.89 ID:xyeEAHJt0
あやせ「でも、今日みたいに警察の方に見られたらどうするんですか……。 桐乃に悪い評判でも付いたら、ぶち頃しますよ?」

京介「笑顔のままそういう台詞を言わないでくれ! 警察も俺みたいな奴より、お前を取り締まるべきだっての……」

あやせ「……それはどういう意味ですか。 お、に、い、さ、ん」

京介「や、やめてぇえええええええええ!!」

そのお兄さんの叫び声で、また警察の方が来るのでした。

お兄さん、制服を着ている私、車。

勘違いさせるのには十分だった様で、私もお兄さんも顔を真っ赤にして否定。

これはお兄さんと私のお話。 桐乃には内緒の。

766: 2013/09/01(日) 13:30:41.10 ID:xyeEAHJt0
木曜日。

今日は雨。 朝からしとしとと降り続ける雨は、止む気配が無い。

桐乃「雨、止まないね」

教室の窓から外を見ながら、桐乃は言う。

あやせ「予報だと、帰る頃には止むはずだったのにね」

授業が終わって帰る頃になっても、依然雨は降り続けている。

桐乃「うーん。 折り畳み傘も持ってないし。 サイアク」

767: 2013/09/01(日) 13:31:14.23 ID:xyeEAHJt0
あやせ「濡れるのは嫌だよね、やっぱり」

あやせ「でも、桐乃は大丈夫だって。 お兄さんに持ってきて貰えば」

桐乃「あいつ、今ちょっと風邪気味っぽいんだって。 だから無理言って持ってきて貰うのも悪いし」

あやせ「心配なんだね。 お兄さんのことが」

桐乃「そ、そんなんじゃないっての! あたしの所為で悪くなったら、あたしの気分が悪くなるだけで……だから……」

あやせ「はいはい。 あはは」

桐乃「も、もう。 あやせのばか」

768: 2013/09/01(日) 13:31:41.62 ID:xyeEAHJt0
あやせ「へえ~? あ~あ。 折角私の傘に入れてあげようと思ったのに、そんなこと桐乃は言うんだぁ?」

からかうように、私は言う。

桐乃「か、傘持ってるの!? あやせぇ~。 一緒に帰ろうよぉ~。 お願ぁい?」

か、可愛い。 この「お願ぁい」で、お兄さんは一体何回落とされたのだろう。

私だったら多分、言われる度に落とされていると思う。

あやせ「わ、分かったよ。 桐乃、一緒にかえろ?」

桐乃「マジ!? ありがと、あやせ! 大好き!」

言いながら、私に飛びついてくる桐乃。

……お兄さんが桐乃にデッレデレな理由が、少し分かった気がする。

769: 2013/09/01(日) 13:33:11.80 ID:xyeEAHJt0
桐乃「あやせ、本当にありがとね」

あやせ「良いって良いって。 気にしないで」

桐乃「だけど、途中までで良いよ? 雨もちょっと弱くなってきたし」

あやせ「もう。 そんなの考えなくて良いんだって。 私が桐乃を家まで送って行きたいから、じゃあ駄目?」

桐乃「……えへへ。 ありがと」

あやせ「あはは。 それじゃあ今度、一緒に喫茶店いこ?」

この前は確か、私が出したんだっけかな? 手錠の一件での埋め合わせで。

桐乃もその意味が分かったのか、笑いながら言う。

770: 2013/09/01(日) 13:34:07.92 ID:xyeEAHJt0
桐乃「おっけ! じゃあさ、週末に一緒に行く? 遊んでから」

あやせ「良いの? 桐乃が良いなら、私はそれで良いよ」

桐乃「たまにはね。 ひひ」

そんな風に楽しそうに話している時、後ろから声が掛かった。

「お前、学校に居るんじゃなかったのかよ。 つか、それなら俺が持ってくる必要無かったな」

その声を聞いて、私は安心した。

あやせ「駄目じゃないですか。 お兄さん、風邪気味って聞きましたよ」

771: 2013/09/01(日) 13:34:58.23 ID:xyeEAHJt0
京介「あー。 もう治った……ってことで良いか?」

あやせ「それは、私ではなくて桐乃に聞いてください」

桐乃「……ばーか」

桐乃はお兄さんの方を見ながら、そう言った。

その言葉は多分、飛びっきりの嬉しさを表しているのだろう。

あやせ「それじゃ、私は帰りますね。 桐乃の彼氏さんも来た様ですし」

桐乃「……なんか悪いし、家寄ってく? お茶くらいなら出すよ?」

あやせ「良いって良いって。 今度遊ぶ時の為に取って置くよ。 あはは」

772: 2013/09/01(日) 13:36:13.06 ID:xyeEAHJt0
桐乃「でも……」

申し訳無さそうな顔をする桐乃を見て、私はひとつ思い出す。

あやせ「……あ、そうだ」

あやせ「私が急に家に帰りたくなったから、じゃあ駄目かな? 桐乃」

私が言うと、桐乃は笑って言った。

桐乃「ううん。 大丈夫。 あやせ」

桐乃「ありがとね」

私は笑顔で返事をして、お兄さんに頭を一度下げ、帰る。

こんな些細なことでも、毎日が楽しかった。

773: 2013/09/01(日) 13:38:23.30 ID:xyeEAHJt0
金曜日。

桐乃「あ、あやせ! ちょっとこれ見てくんない!?」

桐乃がお昼になった瞬間、わたしの席まで飛んできて、開口一番そう言った。

あやせ「な、なに? どうしたの? そんなに慌てて」

桐乃「さっき見たんだけど、これ!」

桐乃は言いながら、私に携帯を見せる。

そこに写っているのは、加奈子?

桐乃「アイドルの卵大特集! だって!」

774: 2013/09/01(日) 13:40:24.47 ID:xyeEAHJt0
桐乃「特集サイトが出来ててさ、そこに加奈子が出てるの! 凄くない!?」

あやせ「ほんとだ。 加奈子、頑張ってるんだね」

桐乃「このまま加奈子が頑張れば……あたしもその友達としてメルルのイベントに招待とか……」

桐乃、本音が出てるよ!

加奈子「ったくよー。 そんくらいで騒ぐなっての。 ちっさいサイトの記事だろぉ?」

あやせ「かーなーこー。 折角取り上げてくれているんだから、素直に感謝しないと駄目だよ?」

加奈子「へーへー」

桐乃「でも……すごいよね。 加奈子」

775: 2013/09/01(日) 13:41:36.82 ID:xyeEAHJt0
加奈子「な、なんだっての。 桐乃なんか変じゃね?」

桐乃「そんなことないって! 加奈子のこと、応援してるから」

加奈子「お、おう……サンキュー」

桐乃は最後に、こう付け加えた。

桐乃「だから、加奈子が出てるイベントも応援に行くからね。 チケットお願い」

……桐乃、目がちょっと怖いよー。

だけど加奈子もしっかり、自分の道を歩いているんだね。

776: 2013/09/01(日) 13:43:22.51 ID:xyeEAHJt0
私は、私は……どうだろう。

こんな感じで、私の一週間は終わる。

明日は休み、明後日も。

だけど、また月曜日になれば皆に会える。 桐乃が居て、加奈子が居て。

お昼には桐乃の惚気話を聞かされて。

朝はたまに一人の時もあるけれど。

学校から出たら、警察に話を聞かれている不審者さんが居たりして。

雨が降ったら、仲良く一緒に帰って。

そして、将来の話なんかもしたりして。

777: 2013/09/01(日) 13:44:53.93 ID:xyeEAHJt0
楽しそうに話す私の友人たち。

……うん。 大丈夫だ。 私もしっかり、歩けている。

あやせ「ね、二人とも」

桐乃「んー? どしたの、あやせ」

加奈子「今、加奈子の話してたところじゃねーかよぉ。 なに?」

あやせ「帰りにどこか寄って行かない? たまには、ちょっと寄り道したいな」

私の言葉に、桐乃と加奈子は顔を見合わせ、私の方を向いて、頷いた。

これが私の、私だけの、一週間。


歩く道 終

778: 2013/09/01(日) 13:50:21.65 ID:RONaqD8G0

引用: 桐乃「行ってきます」