134:買い物ツアー 2006/08/13(日) 22:27:01.30 ID:3LL6pV190
#ハルヒとキョンの買い物ツアーSSです。
#単にハルヒとキョンが買い物にいくだけの話です。
#作者基準では甘さ控えめとなっております。

冬も近くなった秋の金曜日。
少しだけ夜更かししていると、ハルヒから携帯に電話が掛かって来た。
「やほー」ハルヒはささやくように言う。「あたし」
「どした。またおもしろくない映画でも見たのか?」
「今日はそうでもなかったわ。ところであしたのパトロールなんだけど、古泉くんも有希もみくるちゃんも来れないっていうのよね。」
「へえ。珍しいな。」
「別にあしたはパトロールなしでもいいんだけど、あんたはどうする?」
俺の意見を聞くこともあるのか。それも珍しい。
「不思議パトロールなしなら、買い物がしたいな。」
「ふうん。・・・あたしも珍しくそういう気分なのよね。」
そういってハルヒは黙り込んだ。吐息しか聞こえない。心地よい沈黙なんてものがあったとは知らなかったな。夢の世界からだれかに呼ばれているようで・・・
「なんか、いいなさいよ。」ハルヒがすこしだけ声を大きくした。「だから、あしたどうするのよ?」
「だから、買い物にいきたいと言ってるんだが。」
「・・・あたしもそういう気分だっていってるのよ。」いまに始まったことじゃないが、どうも話がかみあわない。
「だから、おれも買い物、おまえも買い物がしたいんだから、明日はパトロールじゃなくて、買い物ツアーにすればいいじゃないか。」
「それならそう最初からいいなさいよ。キョンのバカ」
「最初からそういうつもりだが、なに怒ってるんだ?」
「知らないっ・・・時間はいつもの時間でいい?」
「店開いてないだろうし、10時でいいんじゃねえか?」
「そうね、あとパトロールじゃないから、待ち合わせ場所は変えましょう。」
なぜかハルヒがごねて、待ち合わせ場所は駅近くの銀行前になった。

135: 2006/08/13(日) 22:30:24.00 ID:3LL6pV190
翌朝。ママチャリを飛ばして9時半には待ち合わせ場所に到着。
30分前につくという快挙を成し遂げることができた。
ハルヒはそれから5分後にやってきた。ちょっと驚いた表情を浮かべたハルヒに手を小さく振った。
「あたしより早く来てるとは思わなかったわ」
「たまにはな。」
「まずはお茶しない?まだ早いし」
「そうするか。」いつもの喫茶店に歩きだそうとすると、ハルヒに手首を掴まれた。
「今日は違うところにしましょう。」なぜかこわばった笑顔を浮かべている。

ハルヒに手を引かれるように、ハンバーガーショップに入る。
ハルヒも俺も服が欲しいという点で一致していた。
「それ終わったら、なにする?」
「そうだな・・・」思いつかないが、考えている振りはしなければならない。
「た、たまにはさ、映画でも見ない?」
「映画か」この辺にはろくな映画館がないから、街にでるしかないな。
「映画見終わったら、なにする?」
「それこそ時間次第だろ? 夜遅ければ帰るし。なんだったら飯食って帰ってもいいし。」

街に出るために、ハルヒを伴って電車に乗る。
なぜかハルヒは落ち着かない。しかし、機嫌が悪いようには見えないし、体調が悪そうにも見えないのだが。
「どうかしたのか?」
「あたしは絶好調よ」なぜかハルヒの笑顔が堅い。
「ならいいんだが・・・」
駅で買った情報誌を広げる。映画ページを開いて、ハルヒに見たい映画を聞く。
「えーと、強いて言えばこれね。」
超能力者同士が敵味方に別れて戦うという映画だった。好きだねえ、こういうの。たまにはラブロマンス映画なんてのもいいんじゃないのか?
「そういうのでもいいけど、そんなのやってる?」
いや、言ってみただけだが、しかし、映画ならなんでもいいのか?

136: 2006/08/13(日) 22:33:20.33 ID:3LL6pV190
目的の駅についた。まずは映画館を目指して歩く。
どうせ映画を見るなら、全席指定のところでチケットを先に買っておいた方がいい。
夕方4時からのチケット、学生2枚。それで映画館とは一旦おさらばだ。

いろんなショップが集まっている通りに出た。人通りは土曜日だけあって多い。
さて、どのお店にいこうかなと一歩踏み出した瞬間、ハルヒに手首をつかまれた。
「あそこにいきましょ」ハルヒにいい笑顔が戻ってきてなぜかホッとする。
ただ手首をつかんでひっぱっていかないで欲しいものだ。みんな見てるし。

ハルヒは吟味に吟味をかさねること30分。いま俺は試着室の前で待っている。
「おまたせ。こんなのどう?」デニムのフリルスカートを試着したハルヒが明るい笑顔で聞いた。
「似合ってるぞ」すらりと伸びた足がまぶしい。「可愛い。」
「えOち。どこみてんのよ。」カーテンが威勢よく閉められた。
またごそごそと着替えが始まる。
「こんなのはどう?」今度はシフォンのレーススカートだった。甘い感じで可愛いのだが・・・
「それはハルヒじゃなくて朝比奈さん向きだな」ハルヒはアヒル口をつくってカーテンを勢いよく閉める。
しまった、つい正直に言ってしまった。しかし怒っているというほどではない。
まだごそごそやっている。
その後はシンプルな白いレーススカート、ひざ丈の白いワンピースなどを試着するハルヒをとりあえず褒めることに徹した。
ウソはついてない。ちゃんと似合っているのだから、やましいことはなにもない。
ハルヒはレーススカート以外をレジに運んだ。それ全部買うのか?
「そうよ。」ハルヒはすっきりした顔でいう。「めったにないんだけどね。」
荷物を俺に押し付け、ハルヒはこう宣言した。
「次はあんたの番ね。」

俺の番というが、ハルヒにことごとくダメ出しされてしまい、結局買えたのはTシャツ一枚だけであった。レジで並んでいると、なぜかハルヒも手に何かをもって並びはじめる。
「家で着る分買ったの。」ハルヒはなぜか口をとがらせている。
それは勝手に買ってくれてかまわないぞ。

137: 2006/08/13(日) 22:36:23.64 ID:3LL6pV190
結局ハルヒの荷物持ちで午前中が終わった。昼はうどん屋に入る。
ほうとうセット(3人前)が比較的安かったのでそれにした。
しかし、量が足りなかった。ほうとう争奪戦が勃発したためだ。
リアルファイトを回避するため、さらにほうとうセット(2人前)を追加し、お互いの食欲が満たされた。しかし、ハルヒの食欲は異常だね。

これまでの荷物をコインロッカーに押し込み、身軽になった俺はハルヒをゲームショップに誘う。本日発売のソフトを買うためだ。
しかしそのソフトの発売は2週間延期になったという。ちくしょうめ。
また来ればいいんじゃないとハルヒに言われた。が、近所でも買えるぜというと、一瞬不服そうな表情を見せた。
「あんたはこういうのはしないの?」ハルヒは女の子がパッケージで微笑むゲームを指さした。
「そういうのには興味がないな。」俺が欲しかったのは地球人と宇宙人がロボットで戦うゲームだ。・・・そこ、笑うな。
ハルヒはそのゲームが気になるらしく、パッケージを手にとり、裏面の説明を読み始めた。
「ね、ツンデレってなに?」小首をかしげながらハルヒがいう。
「さあ?」
「ツンデレシステム搭載とか書いてあるけど、なんのことかしら?」
「しらん。」
「あんたこれやってみなさいよ。」ハルヒがパッケージを押し付けてきた。
「どんなゲームだか興味があるわ。そんであたしに報告すること、いいわね?」
興味のないゲームに金を出す気にはならないね。
「しょうがないわね・・・あたしが買ったげるわよ。そのかわり、来週までには終わらせるのよ?」ハルヒはおれの手を払うと、宣言するようにいった。
「分かった分かった。」
荷物に興味のないゲームソフトが一本加わった。あーやりたくねえ。

138: 2006/08/13(日) 22:38:31.94 ID:3LL6pV190
次はインテリアショップ。おされな電気スタンドの前でハルヒは腕組を始める。
それはかさ張るから持って帰るなどというのは言語道断だぞと言ってみるが、聞いちゃいねえ。ハルヒはデザインは気に入ったが、値段が気に食わないらしい。
なら、買うなという声を聞かず、ハルヒは店員を呼び止め、価格交渉を始めた。
結局送料無料で配送ということで落ち着く。
洒落た白いダイニングテーブルをみてハルヒはため息をつく。
「んーいいわね、結婚したらあーゆーのが欲しいわ。」
「結構大きいから、部屋選ぶんじゃないのか?」
「ま、始めは賃貸でもしょうがないけど、あれぐらい置けるマイホーム買うのは当然のことよ。」わかった?という目をしながらハルヒがいう。
ハルヒと結婚する奴は大変だね。マイホーム購入が必須らしいぞ。
そんな付き合いのいいやつがそうそういるとは思えないけどな。

ハルヒはふらりと電気屋に入った。そういえばDVDがもうない。DVテープもない。
ハルヒがネットで拾った画像やソフトをDVDに落としまくったり、俺がシャミセンの観察記録でDVテープを使うからだ。
俺が激安DVDやDVテープを探していると、ハルヒに肩を叩かれた。
「みてよ、あのTV。すごく大きい」ハルヒが指差す方には60インチ液晶TVであった。
いやはや大きい。圧倒されるね。
「やっぱさぁ、結婚したらああゆうTVも必須よね。」
「うーん、あんな大きなTVだとかえって邪魔じゃないか?」
「だから考え方を変えるのよ。あのTVが邪魔に感じないマイホームを買えばいいのよ。」分かった?という目をするハルヒ。
なにか説得されているような気がするが、気のせいだろうということにする。
激安DVD-R10枚セットとDVテープ3本セットを荷物に加えて電気屋を後にした。

139: 2006/08/13(日) 22:40:13.33 ID:3LL6pV190
そうこうしているうちに映画の時間となる。ハルヒをせかして映画館に急いだ。
実際には急ぐするほどでもなかった。特大ポップコーンと特大コーラをお供に席につく。
映画は結構おもしろかった。所狭しと超能力者同士の激しいバトルが繰り広げられる。
うん、こういう分かりやすいのはいい。単純に楽しめる。
特大ポップコーンの争奪戦もおとなしいものだったし。

映画館を出るとまだ明るさは残っているものの、夜といってもいい。
「もう暗くなってんのね」またハルヒの様子がおかしい。なぜかさみしそうだ。
「もうすぐ冬だからなぁ」
そろそろ帰るかという言葉を飲み込んで、代りに飯食うかといってみる。
腹も減ったし、なんか食べてから帰ろうぜ。
ハルヒも腹が減っていたのだろう。二つ返事で賛成した。

食べ放題の焼き肉屋に入った。一瞬で肉が乗った大皿が消える。
「野菜も食べなきゃね」そういって野菜が乗った大皿1枚が消えた。
「またお肉たべようか。」それで肉が乗った大皿がまた1枚消えた。
「さすがに肉はもういいわね。」そういってハルヒは冷麺、俺はクッパを完食する。
さすがにもう食えねえ。

食事を済ませた我々は、コインロッカーから荷物を引き取り、帰途に就いた。
帰りにすこしだけ寄った公園ではちょっとした出来事があったが、それは語るまでもないだろう。
いや、まあ我々も健康な高校生だし、な。

140: 2006/08/13(日) 22:41:40.15 ID:3LL6pV190
#さっきのが6/7でした。すみません。
月曜日。ハルヒは掃除当番なので、部活に来るのは遅い。
「土曜日はなんかあったのか?」オセロを並べる古泉に聞いてみた。
「いえ、なにも。・・・涼宮さんが土曜日に用があると金曜日の夜に電話してきたので、僕は平穏な土曜日を満喫していましたよ。」
「え?」あっけにとられた。「俺が聞いたのは土曜日にお前らが急用で来れないという話だったぞ。しょうがないから二人で・・・」

その瞬間すべてが理解できた。
ハルヒは3人にウソをついたのだ。だから待ち合わせ場所を変えた。移動途中は不安で落ち着かなかったのだ。映画は街に出るための言い訳でしかない。だから、なんでも良かったのだ。
「二人でどこか行ったんですか?」朝比奈さんがお茶を運びながらいう。「ひょっとして涼宮さんとキョン君デートしてたの?」なんてこというんですか、あなたは。
「あなたと涼宮さんが過ごした土曜日を聞きたいですね。」古泉が面白そうに言う。「今後の参考にもなろうかと。」
「涼宮ハルヒの力が増大した。」長門は芒洋とした顔を崩さずいう。「情報統合思念体も興味を抱いている。」
「なんのことだか、さっぱ・・・」
6つの目がそれぞれに好奇心の炎を燃やし始めた。背筋に冷や汗が流れる。
ハルヒ、早くきてくれ。俺だけでは持ちこたえられそうにない。

おしまい

引用: ハルヒ「ちょっとキョン!あたしのプリン食べたでしょ!?」