1: 2007/03/03(土) 16:12:22.47 ID:IxOTAe2x0

2: 2007/03/03(土) 16:12:58.19 ID:IxOTAe2x0
地球は回る。
誰が決めたわけでもなくただ、回る。
そしてその回転は地球に住むもの全てに朝と夜の訪れを届ける。
これは……そんな話。

( ^ω^)「ここは VIPの村ですお」
(;^ω^)(地の文嘘つくなお!そんな良くわからない題材で話なんか進められるわけないお)

うるさい。

(;^ω^)(ちょwwwww)
牧場物語 再会のミネラルタウン BEST PRICE - Switch

3: 2007/03/03(土) 16:14:14.72 ID:IxOTAe2x0
昨日バーボンハウスから帰ってきた彼は久しぶりに床についた。
よく考えれば寝るのは2日ぶりだ。
なんせ一昨日は話を聞いているうちに朝が訪れ、休む間もなく業務時間になってしまったのだから。
しかし、彼が熟睡できたかというとそれはNOである。
何故なら昨日帰ってきた時間も既に明け方近くなっていたからだ。
それでも彼はめげずに仕事を続ける。

( ^ω^)「ここは VIPの村ですお」

4: 2007/03/03(土) 16:14:43.89 ID:IxOTAe2x0
( ^ω^)(ドクオに昨日の『機能の設定』について聞かなきゃだお……ん?昨日の機能とかオヤジギャグktkrwwwww)

彼が1人で勝手に騒いでいる間にも、尋ね人は絶えずやってくる。

( ^ω^)「ここは VIPの村ですお」
( ^ω^)(またスルーされたお)

当たり前だ。
なんせ彼は居ても居なくても良いような存在の薄い完璧な脇役なのだから。

(;^ω^)(今日はなんか明らかに扱いがひどいお)

5: 2007/03/03(土) 16:15:15.74 ID:IxOTAe2x0
彼は小さい頃からの友人の元へ行くことを望んでいた。
今は自分の物ではないその足に目的地へ行くよう命令をする。
ドクオの所へ行け。行け。行け。行け。行け!
しかし彼の脳から発せられた電波信号はその足へ届くことはなかった。
設定がその伝達命令を阻んでいるから。

( ^ω^)「ここは VIPの村ですお」

彼に残された道はただ1つ。
業務中に偶然この足が自分の望む場所へと運んでくれて、ドクオの元へと行くことを願うのみだ。
つまり、ただ待つのみ。

7: 2007/03/03(土) 16:16:02.33 ID:IxOTAe2x0
( ^ω^)「ここは VIPの村ですお」

( ^ω^)「ここは VIPの村ですお」

( ^ω^)「ここは VIPの村ですお」

( ^ω^)「ここは VIPの村ですお」

( ^ω^)「ここは VIPの村ですお」

( ^ω^)「ここは VIPの村ですお」

8: 2007/03/03(土) 16:16:44.40 ID:IxOTAe2x0
……来ない。
仕事開始からかなりの時間が経ったが一向に自分の足は望む場所へと運ぼうとしてくれない。
これにはさすがのブーンも苦笑い。

( ^ω^)「ここは VIPの村ですお」
( °ω°)(アババババババwwwwww)

遂に焦りから来る心の不安定な揺れに負けて狂い始めるブーン。
すると、設定も彼の狂気がキモくて見ていられなかったのだろうか。
建物の影からドクオが姿を現せてこっちの方へ向かって歩いてきたのだ。

10: 2007/03/03(土) 16:18:28.54 ID:IxOTAe2x0
ブーンの元へとランダムに歩いてきた友達は、彼の狂気が漂わす空気に気付いた。

('A`)「武器や防具は 装備しないと 意味がないよ」
('A`)(よぉブーン。そんな笑い方してどうしたんだ?)

( ^ω^)「ここは VIPの村ですお」
( ^ω^)(フヒヒッwww……ってドクオ!聞きたいことがあったんだお)

唐突に村人Aから発せられた言葉は村人Bに届く。
脳がいきなりの質問にすぐ対応できなかったのか、彼はワンテンポ遅れて返事をした。

('A`)「武器や防具は 装備しないと 意味がないよ」
('A`)(えっ?あぁ、聞きたい事ってなんだよ?)

11: 2007/03/03(土) 16:19:24.11 ID:IxOTAe2x0
( ^ω^)「ここは VIPの村ですお」
( ^ω^)(『機能の設定』について教えてくれお。
       昨日ショボンさんに聞いたんだけど、『ドクオの方が良い』って最後まで教えてくれなかったんだお)

前振りもなく質問をしてきた村人Aにも疑問を持ったが、その質問内容もまた彼に疑問を与えた。

('A`)「武器や防具は 装備しないと 意味がないよ」
('A`)(なんでまた急に『機能の設定』?……まぁ良いや。教えてやるよ)

しかし彼の適当な性格で考えた結果、その疑問は流されることに決まった。

( ^ω^)「ここは VIPの村ですお」
( ^ω^)(きゃーどっくんかっこいー)

('A`)「武器や防具は 装備しないと 意味がないよ」
(;'A`)(超棒読み……絶対本心じゃないな)

12: 2007/03/03(土) 16:20:25.60 ID:IxOTAe2x0
('A`)「武器や防具は 装備しないと 意味がないよ」
('A`)(で、昨日はどこまで教えてもらったんだ?)

( ^ω^)「ここは VIPの村ですお」
( ^ω^)(『機能の設定』の姿の見方を教わっただけだお)

('A`)「武器や防具は 装備しないと 意味がないよ」
('A`)(見られるようになってるのか。じゃあ話は早い。今ちょっと見てみろよ)

( ^ω^)「ここは VIPの村ですお」
( ^ω^)(今仕事中wwwでも把握したお)

13: 2007/03/03(土) 16:21:02.63 ID:IxOTAe2x0
彼は瞼を下ろして目を瞑った。
最初はただの真っ暗な闇。
しかし、しばらく待つと昨日と同じように長方形がうっすらと浮かんできた。
最初はその形も書かれているであろう文字もぼやけていて、よく見えない。
だけれども時間が経てば経つほどにハッキリとした輪郭を保つようになってくる。

14: 2007/03/03(土) 16:21:34.81 ID:IxOTAe2x0
( -ω-)「ここは VIPの村ですお」
( -ω-)(四角いのが見えてきたお)

('A`)「武器や防具は 装備しないと 意味がないよ」
('A`)(昨日見方を教わったって言うんなら当然カーソルの動かし方はわかってるよな)

( -ω-)「ここは VIPの村ですお」
( -ω-)(当然だおバーローwwww)

('A`)「武器や防具は 装備しないと 意味がないよ」
('A`)(ぶち頃すぞ)

( -ω-)「ここは VIPの村ですお」
(;-ω-)(サーセンwwwwwww)

15: 2007/03/03(土) 16:23:16.74 ID:IxOTAe2x0
半ばこの作品ではマンネリ化した流れを一通りやった後に村人Bによって本題に戻ることになる。

('A`)「武器や防具は 装備しないと 意味がないよ」
('A`)(じゃあまずはカーソルを『セーブ』って書いてある所へ持って行ってくれ)

( -ω-)「ここは VIPの村ですお」
( -ω-)(把握したお)

昨日と同じように念じる。
下がれ。『セーブ』の所まで下りるんだ。
右向きに傾いている三角形は彼の念通りに動く。
そして『セーブ』の所まで下りた時、その三角は文字の羅列の中を下るのを止めた。

16: 2007/03/03(土) 16:23:50.62 ID:IxOTAe2x0
ピピッ

また昨日と同じような電子音が彼の耳の奥に響いた。
その音に反応するように、長方形の表面に新しい文字が浮かび上がってくる。

【このデータは既に存在しています。上書きしますか?】

( -ω-)「ここは VIPの村ですお」
( -ω-)(上書き?何のことだお?)

('A`)「武器や防具は 装備しないと 意味がないよ」
('A`)(見えたか。それじゃ『はい』を選らんどいてくれ)

( -ω-)「ここは VIPの村ですお」
( -ω-)(こういうのは大体『いいえ』の所にデフォでカーソルが置いてあるから面倒くさいお)

('A`)「武器や防具は 装備しないと 意味がないよ」
('A`)(あるあるwwww)

18: 2007/03/03(土) 16:24:28.13 ID:IxOTAe2x0
などとどうでも良い雑談を交わしながらもカーソルを『はい』に合わす。
そして操作が完了したことを知らす機械音が耳の奥で響いた。

( -ω-)「ここは VIPの村ですお」
( -ω-)(一体これは何だったんだお?)

('A`)「武器や防具は 装備しないと 意味がないよ」
('A`)(今のは一種の記録装置みたいなもんかな。
     こいつが勝手にデータを記録しておいてくれるから、セーブ前に教えてもらったことを忘れるなんてことはなくなるんだ)

( -ω-)「ここは VIPの村ですお」
( -ω-)(そいつは記憶力凄いってレベルじゃねーお)

('A`)「武器や防…… 装……ないと 意味がな……」
('A`)(他に…色々あ……だぞww…w)

19: 2007/03/03(土) 16:24:55.75 ID:IxOTAe2x0
村人Bの声がだんだんと遠くなっていくのが目を瞑っている村人Aにもわかった。
やはり彼の足も今は彼の物ではない。
ドクオの意志を無視して今彼はランダムに動いているんだろう。

('A`)「武………具は …備し……と 意味………よ」
('A`)(まだ話………はあ……んだ…ど、そ…じゃ……なw)

そして彼の声が完全に途切れてしまった。

( -ω-)「ここは VIPの村ですお」
(;-ω-)(最後の方あんまり聞き取れなかったお……とりあえず『キャンセル』しておくかお)

20: 2007/03/03(土) 16:25:43.33 ID:IxOTAe2x0
カーソルの操作法の要領を昨日とさっきの『セーブ』で完全に得た彼は、すぐに『キャンセル』を選ぶことが出来た。

ピピッ

( ^ω^)「ここは VIPの村ですお」
( ^ω^)(やっぱりドクオはいなくなっちゃったお)

ふとここで彼の心に小さな思いが芽生えた。

(;^ω^)(『セーブ』だけならショボンさんも昨日教えてくれれば良かったのに……)

やはりショボンも人間である。
脳があるかどうかも怪しいものに物事を教えるのは相当面倒くさかったんだろう。

(;^ω^)(……)

21: 2007/03/03(土) 16:26:35.70 ID:IxOTAe2x0
兎にも角にも仕事が終わらないと何も出来ない。
夜の間だけの仮初めの自由だとしても、今のブーンにはそれが必要だった。

( ^ω^)「ここは VIPの村ですお」
( ^ω^)(夜はやっぱり凶暴な魔物が増えるかもだお。やっぱり『あれ』を持って行った方が良いお)

既に思考回路は仕事後のことだ。
しかし今現在は同じセリフしか喋れない村人A。
時間は思い通りに動いてくれる物ではなかった。

( ^ω^)「ここは VIPの村ですお」
( ^ω^)「ここは VIPの村ですお」
( ^ω^)「ここは VIPの村ですお」

夜は、遠い。

23: 2007/03/03(土) 16:27:58.22 ID:IxOTAe2x0
ここで第6話投下終了です。

物語の流れはもう決まっているんだけど、ちょっと練りきれなかったんで今回は展開がほとんどない結果になりました。
申し訳ない……

69: 2007/03/04(日) 00:54:31.13 ID:rAE2DaST0
闇。
門の中に音が隠れるようにして書かれている漢字。
まさしくそれは字の如く、静寂を意味していた。
そんな闇が空から地にかけて広がる夜。
普段なら忌み嫌われるであろう対象のそれを、ブーンは待ち侘びていた。


( ^ω^)「ここは VIPの村ですお」
( ^ω^)(もうそろそろ時間かお)

そう、その時間帯のみが彼の得られる限られた自由時間だから。

71: 2007/03/04(日) 00:55:08.80 ID:rAE2DaST0
そして彼は業務中にも小さな脳を休めることはしなかった。
『セーブ』によって記録された情報を整理していたのだ。

( ^ω^)「ここは VIPの村ですお」
( ^ω^)(あの怖そうな人の住所は確か村を出てちょっと行ったところの草原のど真ん中にあったお。
       でもなんであんな魔物がうじゃうじゃいるところに……)

朝にショボンから見せてもらったメモの内容を思い出している。
セーブ機能は確かに彼に物凄く役立っているようだ。

72: 2007/03/04(日) 00:55:34.17 ID:rAE2DaST0
そして遂に時間が来た。
昼の間は地に光を注ぎ続けていた太陽が、名残惜しそうに一筋の光を残して沈んでいったのだ。
それはつまり夜の訪れを表す。
空には陽の象徴であった太陽の代わりに、陰の象徴でもある月が浮かんでいる。
その月に流れてきた雲が傘を掛けた。

( ^ω^)「やっと仕事の時間が終わったお。でもこれからが大変なんだお。だから休んでる暇なんて無いんだお」

彼は自分に言い聞かす。
些か説明口調ではあるが、疲れている身体に少しでも元気が戻れば良い。
自分の気力を奮い立たせる為の言葉であった。

73: 2007/03/04(日) 00:56:17.69 ID:rAE2DaST0
( ^ω^)「よし!まずはあれを取りにいくお」

自分の意志通りに動かせるようになった足で力一杯地を蹴って走り出す。
向かう先は、家。
これから夜のフィールドに出るのだ。
護身用の道具くらい持って行きたい。
そう考えるのは自然なことであった。

(;^ω^)「でもあれに自分の命を任せるのはちょっと不安だお」

そう言いつつも彼は両親の想いが詰まった形見である『あれ』を取りに来たのだ。

74: 2007/03/04(日) 00:56:41.02 ID:rAE2DaST0
ドアを開ける。
今日も無法者が来て荒らされた形跡は無し。
机を見る。
ジョンがいた空間に小さな穴が剥き出しで見える。
穴を見る。
マイケルが隠してくれていた鍵が刺さりっぱなしで放置してある。
彼はその鍵に手を当て、穴の奥深くへと更に差し込んだ。

75: 2007/03/04(日) 00:57:55.78 ID:rAE2DaST0
カチッ

小さく穴の奥から音がしたかと思うと机の下には穴が出現する。
幼少の頃には良くこの仕掛け扉の向こう側の部屋で遊んだものだ。
道端に落ちていた工口本の保管庫にもしてたっけ。
あぁ、そういえばカーチャンがそれを見つけて何も言わずに机の上に置いて放置していた時は気まずかったなぁ。

76: 2007/03/04(日) 00:58:40.47 ID:rAE2DaST0
感傷に浸りながらもブーンは口を開けて待っている穴の中へと下りていく。
ちなみに何故前はあんなに鍵と鍵穴を隠していた彼が、今は隠すこともなく鍵を刺しっぱなしにしていたのか?
答えは簡単である。
鍵と言っても誰もが予想するような一般的な形の鍵ではない。
材質こそは貴金属のようでひどく頑丈だが、形はむしろ爪楊枝のように細長い形状のものだ。
そんなものが机に刺さっているのを見て、変に思う者はいるかもしれないが仕掛けが隠されていると思う者はいないだろう。
彼なりにそう考えた上での結論であった。
普通に考えたらわかるようなことだったが、頭の弱い彼は必氏に友達を利用して隠していたのだ。

77: 2007/03/04(日) 00:59:10.75 ID:rAE2DaST0
( ^ω^)「あったお」

そこには確かに両親の想いが詰まった物があった。
決して明るくはないひっそりとした部屋の中で自分の役目が訪れるのを待っていたかのように。

(;^ω^)「でもやっぱりこれじゃ不安だお。でも今僕が持っている道具なんて他にないから仕方ないんだお」

そして彼は『あれ』を手にした。
それは太くて、固くて、黒っぽい焦げ茶色で。

どう考えてもチOコです。本当にありがとうございました。

84: 2007/03/04(日) 01:03:18.67 ID:rAE2DaST0
そして彼は『あれ』を手にした。
それは太くて、固くて、黒っぽい焦げ茶色で。

そう、棍棒だ。
RPGなどでも金のない初期の勇者が村で購入したり、比較的弱めの魔物を倒すとよく落とすあれだ。
攻撃力などはあまり期待できる物でもなく、攻撃のシーンもショボいなかなか不人気な武器。
何故彼の両親がそんな物をブーンに残したのか。

85: 2007/03/04(日) 01:03:51.77 ID:rAE2DaST0
その理由はこうである。
一介の村人が剣や槍などの高価な武器を買えるはずなんかない。
しかし今後自立した我が子に身の危険があるような事態が起きたら、何も持たない村人である我が子では自分1人で対処できないだろう。
しかも彼は頭が弱い。その心配は当然のことだった。
そう考えた両親は身を守るための道具が我が子には必要なんだと悟った。
我が子のために両親は村人業で蓄えた貯金を下ろして棍棒を購入し、彼が立派な村人として自立した時の餞別として渡すつもりであった。

86: 2007/03/04(日) 01:04:21.74 ID:rAE2DaST0
だがその時が来る前に我が子に危険が訪れてしまった。
我が子の命は守ることが出来たが、自分達は今後この子を守り続けることが出来ないだろう。
氏に際の朦朧とした意識でそう判断した彼らは息も絶え絶えに我が子に遺言を残した。

『もうこれからは誰に引っ張られるわけでもなく、自分の足で自分の人生を歩みなさい』

『トーチャン……?何を言ってるんだお?』

『ごめんね。これから1人で寂しいだろうけどカーチャンもうダメみたいだからごめんね』

『カーチャン……?今ここで氏んだら僕は絶対に許さないお!』

87: 2007/03/04(日) 01:04:50.10 ID:rAE2DaST0
『そうだ、お前にプレゼントがあったんだった』

『そんなことより氏んじゃダメなんだお!』

『良いから……聞いてくれ』



我が子への餞別の隠し場所を教えるとほぼ同時に彼らは息を引き取った。
そしてブーンは涙を枯れ尽きさせるほどに流し、泣き疲れた後にその隠し場所へと向かった。
そこにはまだ新品同様の棍棒があった。

『ありがとう』

そう声に出して、また彼の視界は涙でぼやけ始めたのであった。

88: 2007/03/04(日) 01:05:10.29 ID:rAE2DaST0
(;^ω^)「それからずっと宝物のように隠してきたけど、今冷静に考えると棍棒ってなかなか身を守るには不安だお」

しかし彼には棍棒しか身を守る道具は残っていない。
ずっしりとした質感を持つ棍棒を握りしめて決意する。

( ^ω^)「数子、これから僕を守ってくれお」

彼の目にはもうさっきまでのおふざけムードはない。
そんな空気が数子(棍棒)にも伝わったのか、冷たかった表面が一瞬だけ暖かくなった気がした。

90: 2007/03/04(日) 01:06:22.18 ID:rAE2DaST0
数子を取るために下りてきた穴を彼は今上っている。
穴から上りきると、今度は机に刺さっている鍵を軽く持ち上げる。
すると先ほどまで人を迎え入れる為に開いていた穴が塞がっていく。
数秒後には完璧に床の一部となった隠し扉があった。

( ^ω^)「よし、行くお」

数子を右手に、彼は我が家を出た。
村から出るのは何年ぶりだっけ?
最後に出たのは変なイベントで気付いたら移動していた洞窟の中で勇者を待ち続けてた時かなぁ。
あの勇者は良い人だったなぁ。

92: 2007/03/04(日) 01:06:49.05 ID:rAE2DaST0
昔のことを思い出していると『勇者』の言葉に反応して友達の仇が浮かび上がった。

【( ・∀・)】

( ^ω^)「そういえばあの犯罪勇者は今どうしてるのかお」

ふとした疑問が生まれたが、今の目的はそいつじゃない。
設定に関する情報収集だ。
そう割り切ったブーンは闇に支配され、危険が漂う夜のフィールド上へと飛び出していった。
何が待ち受けているのかも知らずに……

94: 2007/03/04(日) 01:07:51.53 ID:rAE2DaST0
以上で第7話終了です。
区切り良くするために短めになっちゃいました

158: 2007/03/04(日) 21:30:10.94 ID:akmXOAUP0
暗闇の中に人間が入ると、その人は必ず恐怖心を抱く。
人によってその物の大小は変わってくるだろうが、ほぼ確実に恐怖心という物は湧き出てくる物だ。
では何故恐怖心を抱いてしまうのか?
それは視覚的に得られる情報量の多大なる欠如が原因だろう。

光によって判別できていた情報が闇によってその姿を隠してしまうのだ。
そうなると人間は本能的な直感から脳に危険信号が送り出される。
何処に何がいるのかわからない。
何時誰に襲われるかわからない。
そんな不安を生み出す闇が嫌われてきたのは至極当然のことだろう。
その闇の中に、ブーンはいた。

159: 2007/03/04(日) 21:30:37.22 ID:akmXOAUP0
(;^ω^)「いや、これは怖すぎるお」

彼もまた暗闇の中で本能的に怯えていた。
無理もない。
ここは既に安全な村の中ではなく、いつ魔物に出会うかわからない闇の中なのだから。
足は震え、数子を握る手の内は汗でびっしょりだ。
もちろん彼の汗で数子も汗だくになっている。

……想像もしたくない映像だが。

160: 2007/03/04(日) 21:31:22.03 ID:akmXOAUP0
魔物A「がおー」

突然闇の中から魔物が姿を現した。
人間の姿とは掛け離れていて、異形の姿。

(;゚ω゚)「ひぎぃ!」

その突然の来訪者に思わず悲鳴を上げるブーン。
元々幼少の頃の体験で魔物がトラウマになっているのだ。
そんな魔物が闇から突然出てくるのだから平常心を保てる方がおかしい。

161: 2007/03/04(日) 21:31:54.39 ID:akmXOAUP0
(;゚ω゚)「くぁwせdrftgyふじこlp;」

魔物に出会う事はわかっていた。
そんなこと承知で村を出た。
しかし、イメージしていたのと現実で会うのとではその恐怖心の大きさは雲泥の差だ。
実際に今のブーンは意味不明な言葉を叫きつつ、戦うべきその手を振り回している。
すると汗で滑りやすくなっていた数子が彼女の所有者の手からすっぽ抜けて飛んでいってしまった。

162: 2007/03/04(日) 21:32:28.85 ID:akmXOAUP0
魔物A「ひでぶっ!」

なんと宙に放たれた数子は狙い澄まされたかのように魔物の奇妙な形をした頭部に命中した。
頭蓋骨が叩き割れたかのような音がしたかと思うと、そのまま美しい軌道を描いて吹っ飛んでいく魔物A。

「伸身の新月面が描く放物線は、栄光への架け橋かぁぁぁああ!」

その飛び様はこの名ゼリフが聞こえてくるかのようだった。
そして、数子に飛ばされた可哀想な被害者はそのまま二度と動くことはなくなった。

163: 2007/03/04(日) 21:33:29.28 ID:akmXOAUP0
( ^ω^)「お?数子がやってくれたのかお?」

魔物が頭部を砕かれた音と地面に叩き付けられた音。
この2つの音を聞いてブーンは平常心を取り戻した。

( ^ω^)「数子は想像以上に強いんだお……正直なめててすまんかった」

両親の我が子を守ろうとする強い思いからか、数子という名を持つ者の運命なのか。
確かに数子の破壊力は凄まじかった。

>>89『棍棒ってけっこうつおいんだぜ』

今は亡き>>89の言葉がブーンの脳に浮かんでくる。

164: 2007/03/04(日) 21:34:02.71 ID:akmXOAUP0
( ^ω^)「数子がいるならもうCHA-LA HEAD-CHA-LAだお」

数子がいる安心感からか、ブーンはパワーウルトラZな歌を軽く口ずさみながら歩き出した。
もちろんその歌声が酷く音痴で、すぐに不快な気分を味わった魔物達に襲われたことは言うまでもない。

魔物B「がおー」
魔物C「がおー」
魔物D「がおー」

(;^ω^)「ちょwwwこっちくんなwwww」

165: 2007/03/04(日) 21:34:33.09 ID:akmXOAUP0
しかし平常心を取り戻したブーンと最強の棍棒の数子とのコンビはなかなか強力であった。
村人に戦うスキルはほぼ無に等しいはずなのに、ブーンは的確に数子で魔物を殴り倒していく。
そんな数子の暴力に魔物達は平伏すしかなかった。

( ^ω^)「あたたたたたた……ほわたぁ!」

魔物B「あべし!」

( ^ω^)「ほぉ~……ぅわちゃぁ!」

魔物C「うわらば!」

( ^ω^)「そぉい!」

魔物D「ぎゃー」

それにしてもこの魔物達、ノリノリである。

166: 2007/03/04(日) 21:35:13.17 ID:akmXOAUP0
( ^ω^)「数子強すぎワロタwwww」

そんな展開を2~3回程繰り返した頃、闇夜の下に小さな明かりを見つけた。
その明かりは闇の中に長く置かれて緊張状態だった村人に安心感を与える。

( ^ω^)「あそこに何かあるお……お、そういえばメモの住所はここら辺だったはずだお」

ブーンは頭の中でセーブによって記録された住所と地図を見比べてみた。
確かに遠くに見える明かりと住所は一致している。
遂に彼は目的地に辿り着いたのだ。

167: 2007/03/04(日) 21:35:50.14 ID:akmXOAUP0
( ^ω^)「ktkr!やっと到着だお」

仕事の疲れ、闇の中の緊張感、魔物に対する恐怖、あと作者の期末試験が間近に控えていること。
様々な事を忘れて走り出すブーン。
地面が見えないため何度か躓き、転びそうになったが特に何事もなく明かりの元へと到達した。
そこには木造で少し古めの、こぢんまりとした小屋が建っていた。

( ^ω^)「夜分遅くすいませんお!とある話が聞きたいんですお!怪しい者じゃないから開けて欲しいお!」

扉の隣にチャイムがあることに気付かず、扉を叩きながら大声で叫びまくるブーン。
そんな彼の言葉には何一つ説得力など無かった。

168: 2007/03/04(日) 21:36:23.07 ID:akmXOAUP0
ξ゚⊿゚)ξ「こんな夜にうるさい!用があるならチャイムを押しなさいよ!」

変質者の叫きが本当にウザかったのだろうか。
その家の住人が軽くキレながら扉を開いた。

(;^ω^)「お?」

顔を見せた住人に不審者は焦った。
金髪で緩いウェーブが掛かった髪。
髪の下には絹のように白く繊細な肌。
それらを持ち合わす西洋人形のように整った綺麗な顔立ち。
住人は明らかに不審者の探し求める【(,,゚Д゚)】ではなかった。

169: 2007/03/04(日) 21:37:07.66 ID:akmXOAUP0
ξ゚⊿゚)ξ「で、何の用?用件があるならさっさと言ってちょうだい」

顔に似合わず少しトゲのある喋り方だ。
それに面食らったブーンは少し考えて、素直に謝ることにした。

(;^ω^)「ゴメン。人違いだったお」

ξ゚⊿゚)ξ「はぁ?人違いとか有り得ない!散々人ん家のドア叩いたくせに何それ?」

凄い勢いで責め立てる住人。
しかし言っていることは当然のことである。

170: 2007/03/04(日) 21:38:19.01 ID:akmXOAUP0
(;´ω`)「本当に悪かったお……実は僕、ある人を探してて……」

ξ゚⊿゚)ξ「こんな夜にふざけないでよ!……まぁ良いわ。どんな人か言ってみなさいよ」

どうやら彼女は不審者の言葉に興味を示したらしい。
言葉遣いとは裏腹に少々お節介な性格なのかもしれない。

( ^ω^)「こんな人だお」

彼は昨夜にショボンから渡され、ポケットの中にしまっておいた似顔絵を取り出した。

【(,,゚Д゚)】

174: 2007/03/04(日) 21:39:38.35 ID:akmXOAUP0
( ^ω^)「正直怖そうな人で会うのが軽く嫌だけど、僕はこの人に会って聞きたいことがあるんだお」

今の状況を説明しながら似顔絵を手渡す。
似顔絵を受け取り、描かれている絵を見た少女はその大きな目を更に大きく広げて驚いた素振りを見せた。

ξ゚⊿゚)ξ「これってパパじゃない!」

(;^ω^)「……ほわっと?」

衝撃的な言葉を聞き、元々大して働いていない脳みそが一瞬停止するブーン。
どうやら目的地は間違ってなかったようだ。

175: 2007/03/04(日) 21:40:25.96 ID:akmXOAUP0
ξ゚⊿゚)ξ「パパに用があるなんて珍しいわね。でもちょっと前に『勇者が来た』って言って城に行っちゃったからまだしばらく帰らないわよ」

(;^ω^)(城……?何のことだお?)

ブーンが不意に浮かんだ疑問に思考を巡らしていると、続けて少女が話し出す。

ξ゚⊿゚)ξ「しょうがないから家に入れてあげる。別にあんたの為じゃないわよ。
    家の前が魔物にやられてグチャグチャになった氏骸で汚されるのが嫌なだけなんだから!」

( ^ω^)「こいつは酷いツンデレだおwwwでもそうしてもらえるとありがたいんだお」

176: 2007/03/04(日) 21:41:02.06 ID:akmXOAUP0
家の中に男と女が2人っきり。
こんなシチュエーションは一瞬で童Oの脳の中を淫らな妄想でいっぱいにした。

(*^ω^)(こいつはもしかしたら工口ゲのような展開が待ち受けているかもだお。選択肢を間違えないように気をつけるんだお)

そんな童Oの心を読んだのか、少女の漂わす空気が変わる。

ξ゚⊿゚)ξ「何か変な事しようとしたら本気で頃すからね」

彼女の周りにどす黒いオーラが見えた。
直感でわかる。これは殺気だ。

(;^ω^)「把握したお」

177: 2007/03/04(日) 21:42:14.04 ID:akmXOAUP0
冷や汗を流しながらブーンは怯えていた。

(;^ω^)(娘がこんなに怖いんなら父親の方は一体どんだけ怖いんだお)

しかしこれは彼が望んだ出会いだ。
決して設定が決めつけた出会いではない。
そのことを思うと下降気味だった気分が少し上昇した。
少女の父親が帰ってくるまでに、少女に何度も言葉責めされてすぐに気分がどん底まで落ちたのは余談だが。

( ´ω`)「ウツダシノウ……」

こうして少女と2人きりの時間は過ぎていった。

178: 2007/03/04(日) 21:43:00.54 ID:akmXOAUP0
以上で第8話投下終了です。
( ^ω^)は村人Aのようです【その3】

引用: ( ^ω^)は村人Aのようです