1: 2012/06/10(日) 12:01:29.53 ID:IszDZkRu0
デ~デデッ♪ デデデ~♪ デ~デデッ♪ デデデ~♪

テケテンッ♪

盗賊「待ぁてぇ! さあ持ってる食糧、全部よこしやがれ!」

ヨシヒコ「性懲りもなくまた出たな……、魔王に心を侵された者め」

ダンジョー「ひとりで襲ってくるとはいい度胸だ。この戦士、ダンジョーが相手をしてやろうッ!」

盗賊「ふふ、ひとりではない! 出てこい! 息子よ!」

子盗賊「……」ホジホジ

メレブ「……あぁー……、もう明らかにやる気ないのが出てきたな……」

子盗賊「とーちゃん、オレ、帰って遊びたいんだけど」ホジホジ

盗賊「お前は一流の盗賊、プロ中のプロになるのだ! この父の戦いを見て学べ! いいな!」

子盗賊「はーい(棒)」


2:◆k6VgDYkyGI 2012/06/10(日) 12:02:41.23 ID:IszDZkRu0
盗賊「というわけで、お前らにはー、実践教育の犠牲になってもらうッ! 氏ねェッ!」ダッ

ダンジョー「来るぞヨシヒコォッ!」

ヨシヒコ「ッ!」

ガッ! キィン! ガキィン!

盗賊「せいッ!」

キィン!

子盗賊「……」ウロウロウロ

メレブ「あ、子どもがヒマをもてあまし始めたーなー、アレは」

盗賊「ぐっ、でやっ!」

カキィンッ! キン! キィン!

子盗賊「……」ズー

メレブ「んー、剣でまっすぐな線を地面に引いてー……、
    今度は、あー、剣で……バット回りを始めー、た」


4: 2012/06/10(日) 12:04:16.90 ID:IszDZkRu0
子盗賊「……」クルクルクルクルクルクル

メレブ「回って回って回ってー、あ、行った! あ、すっごい、すっごいフラフラしてる」

子盗賊「……」フラフラフラ…

メレブ「してるけれどもー……、まっすぐ……あ、いった! まっすぐ歩けた! で……ゴール!
    おっしゃ! ガッツポーズ!」

盗賊「何やっとんじゃー!」

バキィ

子盗賊「み゛ゅっ!」

メレブ「おぉ、ウェスタンラリアットぉー」

ムラサキ「モロ入ったな今……」


6: 2012/06/10(日) 12:05:20.16 ID:IszDZkRu0
盗賊「お前なんでバット回りしてんだよ!」

子盗賊「いてーなー」

盗賊「父さん、頑張って戦ってるだろ!?」

子盗賊「だってさー、メンドクセーんだもん見てるの」

盗賊「何度も言うが、お前は世界一の盗賊になるのだ! そのための勉強! 分かるか?」

子盗賊「うん」ホジホジ

盗賊「よし……。では、そこでしかと目に焼きつけておけ! この父の勇士を!」ダッ

メレブ「また、また来るぞ、ヨシヒコ! ダンジョー!」

ダンジョー「!」

ガキィンッ!

ヨシヒコ「ぐっ!」

キィン! ガッ! ギンッ!


7: 2012/06/10(日) 12:06:24.46 ID:IszDZkRu0
盗賊「はぁッ!」

ガキンッ!

子盗賊「……」カチャカチャ…

ムラサキ「ねえ……、あの子またなんか始めたんだけど……」

メレブ「今度はー……、あ! ナイフ!? ナイフをー……1、2、3、4本取り出し、た……!
    ナ、ナイフを投げて父親を助ける気か!」

子盗賊「……」ヒョイ、ヒョイヒョイヒョイヒョイヒョイヒョイ

ムラサキ「す、すごい、ナイフでジャグリングしだしたよあの子!」

盗賊「ボケナスー!」

ドゴッ

子盗賊「べぶっ!」

メレブ「おー、ドロップキックいったー。プロレス好きだなおい」

盗賊「あのな、ちゃんと勉強しないと立派な盗賊になれないって、父さんいつも言ってるだろ!
   てか、どこでジャクリング覚えたのお前!?」

子盗賊「ばーちゃんが教えてくれた」

盗賊「ばーちゃんも昔、盗賊だったからね、うん。それはいい、それはいいよ。ただな……」

9: 2012/06/10(日) 12:07:28.90 ID:IszDZkRu0
メレブ「あー、説教始めたなあ」

ヨシヒコ「こういうときは……ど、どうしたらいいんでしょう……」

ムラサキ「斬っちゃえば?」

ヨシヒコ「いや、いくらなんでもそれは……」

メレブ「見てみ、あの子の顔」

子盗賊「……」ホジホジ

ダンジョー「まったく説教を聞いてないな……。
      むしろ、『帰ったら何して遊ぼうかな』と全力で考えている顔だ……」

ムラサキ「ヨシヒコー、もう今のうちに、『いざないの剣《つるぎ》』で眠らせちゃいなよ。
     このままだと、あのお父さんとの戦い、いつ終わるか分かんないよ?」

ヨシヒコ「そ、そうですね……」ヒュッ

ザシュッ

盗賊「ぐわっー!」

子盗賊「あ、とーちゃん」

ヨシヒコ「心配しないで。眠らせただけだよ」

盗賊「ぐー……すぴー……」zzz...

10: 2012/06/10(日) 12:08:35.95 ID:IszDZkRu0
子盗賊「……」

メレブ「あ、これはさすがにショックだったかなぁー……」

子盗賊「よっしゃぁ! 帰ってDQのつづきやろーっと!」タタタタタタタッ

メレブ「――と思いきやそんなことはまったくなかったぁー!」

盗賊「ぐがー……」zzz...

ヨシヒコ「ふぅ……」

メレブ「しかし、さすが、いざないの剣だ。これでもか!と言わんばかりにぐっすり眠ってるなー」

ダンジョー「ヨシヒコ、今、少し動きがよくなかったように思うが……体調でも優れないのか?」

ムラサキ「えっ、そうなの?」

ヨシヒコ「……気づいていたんですか」

ダンジョー「何せ俺は、百戦錬磨の戦士だからな! ハハッ!」

メレブ「……どこが悪いのだ、ヨシヒコよ」

ヨシヒコ「少し……」

ムラサキ「少し?」

ヨシヒコ「チンポジが悪くて」

12: 2012/06/10(日) 12:09:39.08 ID:IszDZkRu0
ムラサキ「またチンポジかよ! いい加減にしろよ!」

メレブ「んー、まあ、こればっかりはなあ」

ムラサキ「父ヤシマルの仇!」

ザシュッ

ヨシヒコ「痛っ! ツッコミ代わりにお父さんの名前出して刺すのはやめ……て下さ……」

バタッ

ダンジョー「ヨ……ヨシヒコ……? どうした?」

ムラサキ「ん?」

ヨシヒコ「……か、体が……」

14: 2012/06/10(日) 12:10:40.91 ID:IszDZkRu0

ムラサキ「ヨ、ヨシヒコ?」

メレブ「お、おいムラサキ、その武器……」

ダンジョー「いつもの引っ込むやつじゃ、ないだと……?」

ムラサキ「あ、これ? 前の村で売ってたやつ。かわいいっしょ」

メレブ「お、おま、そ、それアレじゃね? 刺すとマヒする毒があるやつ!
   『毒蛾のナイフ』とかいう……」

ムラサキ「へっ!?」

ヨシヒコ「……」ピクピク…

ダンジョー「ィヨォシヒコォーッ!」

OP: http://www.youtube.com/watch?v=ZySOJkAawNU

16: 2012/06/10(日) 12:11:42.96 ID:IszDZkRu0
~ナモナキ村の宿屋・夜~

ヨシヒコ「氏ぬかと思いました」

メレブ「んー、まあ、けっこう近いところまで行ったよな」

ムラサキ「ごめんヨシヒコ」

ヨシヒコ「気にするな、ムラサキ」

ダンジョー「さすがは伝説の勇者だ! 懐が広いなァ!」

メレブ「つーかさ、ムラサキって基本役立たないよな~」

ムラサキ「ああん? お前の魔法の方が使えねーだろ。なんだよ『ハナブー』って」

メレブ「職業が『素人の女』に言われたくありませぇーんー」

ムラサキ「変なホクロしやがって」

メレブ「オイ!? また言ったなオイ! コラ! ホクロ馬鹿にすんなつってんだろぉ!!」

ヨシヒコ「そんなにムラサキを責めないでください、メレブさん」

ムラサキ「……ヨシヒコ……」

メレブ「ヨシヒコ……」

ヨシヒコ「ただ、少し胸が無いだけですから」

17: 2012/06/10(日) 12:12:47.01 ID:IszDZkRu0
ムラサキ「!?」

メレブ「!」

ダンジョー「!」

ダンジョー「ヨ……、ヨシh」

ヨシヒコ「乳が貧しくとも関係ありません」

メレブ「うん、分かったヨシヒコ。もう充分みんなアンダスタンというか、分かったから、
     うん、そこまでにしておこう」

ヨシヒコ「洗濯板でもまな板でもペチャパイでも立て板に水でも……、
     ムラサキは私たちの立派な仲間です」ニコッ

ムラサキ「……」

ヨシヒコ「そうだろう? ムラサk」

ムラサキ「うるせーっ!」

ばちこーん

ヨシヒコ「ぶべらっ」

ドサッ

メレブ「あ」

18: 2012/06/10(日) 12:13:53.15 ID:IszDZkRu0
ヨシヒコ「……」シーン…

ムラサキ「……あっ、またやっちゃった」

メレブ「えーっと……、うん、まあ、言葉、悪かったね、ヨシヒコもね」

ダンジョー「今の攻撃は、『会心』って感じだった、な……」

ヨシヒコ「……」シーン

ムラサキ「あー、ど、どうしよう……、ヨシヒコ倒しちゃったよ……。
      首が変な方向にまがってるし……」

メレブ「案ずるなムラサキ」

ダンジョー「何か策があるのか、メレブ?」

メレブ「実は、わたくしー、今ヨシヒコを倒した経験値で、新しい呪文を覚えました」

ムラサキ「……」

ダンジョー「喜んでいいのかよく分からんが、ともかくその呪文を使えば、
       ヨシヒコは目を覚ますんだな?」

メレブ「うむ。……多分」

ムラサキ「多分てなんだよ」

20: 2012/06/10(日) 12:15:14.01 ID:IszDZkRu0
メレブ「きっと」

ムラサキ「きっとじゃねーよ」

メレブ「その可能性もなきにしもあらず」

ムラサキ「だんだんハードル下げるなよ」

メレブ「実を言うとこの呪文……、オレにも何が起るか分からない」

ムラサキ「はぁ?」

メレブ「というか、正確には、『何が起るか分からない呪文』……。
    名付けて――『パノレプンテ』」

ムラサキ「パルプ――?」

メレブ「待てムラサキ。『パ ノ レ プ ン テ』だ。間違えるな」

ダンジョー「つまり、何が起るか分からないだけに、運が良ければヨシヒコを
      復活させることもできるということか」

メレブ「うむ」

ムラサキ「……失敗したら、どんなことが起きんの」

メレブ「んー、えっと、声だけーが響くーとか、あー、寝グセーが?すぐー直ったりっ……とか、
    胴回りが2.5センチ太ったり、とか? ボリュームアップ的な?
    夕ご飯がカレーからお寿司になったりするー……とかもあるかもしれないかな、うん」

21: 2012/06/10(日) 12:16:18.52 ID:IszDZkRu0
ダンジョー「す、凄い呪文だな。他には」

ムラサキ「いや、全然すごくねーだろバカかよ」

メレブ「ん~……、とてつもないものを呼び出して敵が全部逃げ出……す……?
    まあ、とにかく他にも色々あるよ多分」

ダンジョー「とてつもないもの、だと……!」

ムラサキ「相変わらずテキトーだな。そんな呪文で都合よくヨシヒコを回復できるのかよ」

メレブ「主人公補正というものがある」ピキィーン

ムラサキ「んぁ?」

メレブ「ではさっそく。『パノレプンテ』!」テレレレレン・*:.。..。.:*・゜

ヨシヒコ「……」シーン…

ダンジョー「……」

ムラサキ「……」

ヨシヒコ「……はっ!」ガバッ

ムラサキ&ダンジョー「ヨシヒコ!」

ヨシヒコ「わ、私は……、一体……」

ダンジョー「ほ、本当に回復した……!」

23: 2012/06/10(日) 12:17:21.42 ID:IszDZkRu0
メレブ「……」ドヤァ…

ムラサキ「その顔が腹立つけど、たまにはやるじゃん!」

メレブ「『たまに』は余計だよ?」

ヨシヒコ「どうしたんですか、皆さん」

メレブ「一部はしょると、オレの呪文でヨシヒコが復活したんだよ」

ムラサキ「はしょったなオイ」

ヨシヒコ「す……すごいッ! どんな呪文なんですかッ!?」

ダンジョー「なんでも、何かがランダムで起こる不思議な呪文らしい」

メレブ「あ、それオレのセリフ……」

ヨシヒコ「メレブさん! ぜひ、私にその呪文をかけてくださいッ!」

メレブ「ん~、ヨシヒコに効果があるかどうかは分かんないんだけどねー……、ランダムだから。
    まあいいか。『パノレプンテ』!」テレレレレン・*:.。..。.:*・゜

ヨシヒコ「……」

ムラサキ「……ん?」ザワ…

メレブ「……」

ダンジョー「……。何も、起こらない、な……」

24: 2012/06/10(日) 12:18:23.11 ID:IszDZkRu0
メレブ「何も起こらないのが悔しいのでもう一回『パノレプンテ』!!」テレレレレン・*:.。..。.:*・゜

ボッ

ヨシヒコ「……やっぱり、……何も起こりませんね」メラメラ

ムラサキ「ヨ、ヨシヒコ!?」

ヨシヒコ「どうかしたのか、ムラサキ」メラメラ

ムラサキ「ヨシヒコ、頭、頭!」

ヨシヒコ「頭……?」メラメラ

メレブ「め、めっちゃ燃えてる!」

ヨシヒコ「はは、何言ってるんですか、二人とも」メラメラ

ムラサキ「頭燃えてるよ!」

ヨシヒコ「ふっ、そんなわけが……熱ァ!?」メラメラ

メレブ「ちょ、どうしよ!? どうする!?」

ヨシヒコ「あッ、熱ッぅぅぁぁあああああああああッ!?」メラメラ

ムラサキ「お、お前なんとかしろよメレブ!」

ヨシヒコ「うおおおおおおおッ! 頭がぁぁぁああッ!」メラメラ

26: 2012/06/10(日) 12:19:24.72 ID:IszDZkRu0
メレブ「いやオレ、水とか出せないし!」

ヨシヒコ「燃えるぅぅぅううううッ!」メラメラ

バシャッ

ジュー

ムラサキ&メレブ「!?」

ダンジョー「ふぅ……」

ヨシヒコ「……」クタッ

ダンジョー「大丈夫か、ヨシヒコ」

ヨシヒコ「ぁ……は、はい……、熱かっ……っ、です……」

メレブ「お、おっさんスゲー」

ムラサキ「その水、どっから出した?」

ダンジョー「昼間、魔物から『聖水』を手に入れたのを思い出してな」

ヨシヒコ「さすが百戦錬磨の戦士です、ダンジョーさん……」

ダンジョー「ふっ……、まあな……」キリッ

ムラサキ「けっこう珍しくね? おっさんが活躍するの」

27: 2012/06/10(日) 12:20:27.17 ID:IszDZkRu0
ダンジョー「せめて、おじさん、と呼べ。――しかし、今回の呪文は、少しばかり
      ハイリスクハイリターンだな。気軽には唱えられんだろう」

ムラサキ「今回はヨシヒコの頭に点火しただけで済んだけど、もっとヤバいこと起きそうだもんね」

メレブ「んー……、私としましては、もう少し唱えたいようなー……、
    そんな気持ちもなきにしもあらずー……というような感じではあるんですが」

ムラサキ「ンなこと言ってまた危ないこと起きたらどーすんだよ」

ヨシヒコ「私は構いません」

ムラサキ「構えよ! つーか、お前だけの問題じゃねーんだよ」

ダンジョー「まあ、今日はもう遅い。この件は明日にでもゆっくり考えよう」

チャーラララッ チャララ~♪

30: 2012/06/10(日) 12:21:29.31 ID:IszDZkRu0
~翌朝~

*「昨晩はお楽しみでしたね」

メレブ「あー……、まあ、ある意味そうだった、ね」

ヨシヒコ「ご主人、お世話様でした」

ガラッ

ムラサキ「ん?」

ヨシヒコ「どうした、ムラサキ」

ムラサキ「いや、なんか外、変じゃない?」

ヨシヒコ「変?」

ダンジョー「何が変なんだ、ムラサキ。俺にはよく分からんが」

ムラサキ「うん……、うまく言えないんだけど……、空気が……気持ち悪い……ってか」

メレブ「気のせいじゃねーのー」

ムラサキ「……うーん……、胸がざわつくんだよなあ……」

メレブ「それより、次の目的地、さっさと仏に聞こうぜ」

ヨシヒコ「そうですね」

32: 2012/06/10(日) 12:22:31.50 ID:IszDZkRu0
ダンジョー「仏ーッ!」

ヨシヒコ「仏様ぁー!」

……シーン……

メレブ「おい仏!」

ムラサキ「さっさと出てこーい!」

……シーン……

ダンジョー「変だな」

メレブ「また飯とか食ってんじゃねーの?」

ダンジョー「おいムラサキ、また、ちょっと可愛い感じで呼んでみてくれ」

ムラサキ「……。仏様ぁ、お願いニャ、出てきてニャ♪」

……シーン……

メレブ「出てこんなぁ」

ダンジョー「どういうことだ……」

ヨシヒコ「……妙ですね……」

ムラサキ「いつもは、なんやかんやで必ず呼んだら出てきたもんな……」

33: 2012/06/10(日) 12:23:52.35 ID:IszDZkRu0
メレブ「まあ、風呂にでもー入ってるのだろう」

ムラサキ「基本いい加減だしなアイツ」

ダンジョー「そうとなれば仕方ない。この周辺で魔物でも退治して回るとするか。
       懐具合も寒くなってきたことだしな」

ヨシヒコ「……」

メレブ「……ヨシヒコ?」

ヨシヒコ「……あ、ああ、そうですね」

ダンジョー「では、行くとするか!」

ザッザッザッザッ

34: 2012/06/10(日) 12:24:54.34 ID:IszDZkRu0
~フィールドマップ~

ダンジョー「妙だな、盗賊がまったく出てこない……」

メレブ「いつもは尺的にー、大体このタイミングで出てくるのになあ」

ムラサキ「尺ってなんだよ。でも、たしかに、やっぱり変だよね」

ヨシヒコ「……」

ムラサキ「ヨシヒコ……?」

ヨシヒコ「……」ブツブツ

ダンジョー「ヨシヒコ!? おい!」

ヨシヒコ「……だからネコ派だと言っている……何度言わせたら……」

ダンジョー「また歩きながら寝ている……!」

メレブ「昨日頭が焼けたショックで寝れなかったんだろう。もういいから、そのままにしとこうぜ」

ダンジョー「……さすがは天命をさずかりし伝説の勇者……!」

ムラサキ「……」

テレレレレレレレッ!! レ~レ~レ~ッ!!

  スライムが あらわれた!

35: 2012/06/10(日) 12:25:56.07 ID:IszDZkRu0
ダンジョー「なっ!?」

メレブ「魔物!?」

ムラサキ「なにこれぇ!?」

スライム「ピキー!」

ダンジョー「な、なんだこいつはッ!? 魔物……か!?」

メレブ「な、なんか、い、いつもの手作り感あふれるやつ(※)と違くね!?」



ムラサキ「うわぁー、ぷにぷにしててイヤにリアルぅー」

ヨシヒコ「……犬よりネコだ……え……、AIBO……? なんだそれは……」

ダンジョー「起きろヨシヒコォーッ!」

ヨシヒコ「……はッ!?」ビクッ

ダンジョー「はい起きたー」

ヨシヒコ「……! ……な、なんだこのゼリーみたいな敵は! いつもの魔物と違う……ッ!?」

36: 2012/06/10(日) 12:26:57.76 ID:IszDZkRu0
スライム「ピキー!」

  スライムのこうげき! ヨシヒコは 5の ダメージを うけた!

ヨシヒコ「ぐっ!? な、なんだ、頭の中にメッセージが……」

ダンジョー「でぁッ!」ザンッ

  ダンジョーのこうげき! スライムに 76の ダメージ!

  スライムをやっつけた!

  それぞれ
  1の けいけんちを かくとく!
  1ゴールドを てにいれた!

ヨシヒコ「なんだったんだ……、今のメッセージは……」

ダンジョー「ヨシヒコもか……! 頭に……誰かが語りかけてくるような感じだった……」

メレブ「オレもオレも。なんゴールド手に入れました、とか解説したした」

ムラサキ「でも、なんで急にこんな……」

ドドーン! ピシャーン!

メレブ「あ」

ムラサキ「これ、仏じゃん?」

37: 2012/06/10(日) 12:27:59.61 ID:IszDZkRu0
ヨシヒコ「メレブさん、メガネ、メガネを」

メレブ「ん」

仏「ヨォー↑シィー↓ヒィー↑コォー↓」

ヨシヒコ「仏様」

メレブ「変な抑揚とかつけなくていいから。つーか、なんでさっき出てこなかったの」

仏「ごめん寝てた」

メレブ「なんだよその、すぐメールの返信しなかったときの言い訳みたいなのは」

仏「ちょっ……と、明け方までネトゲしてたら寝落ちしちゃった。ヒーラーだったんだけどね」

ムラサキ「ちゃんと仕事しろよ。お前仏だろ」

仏「うん、ごめん。でもまあそんなことはどうでもいいっ!
  今、世界は大変なことになっているのだ、ヨシヒコォッ!!」

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
http://up4.viploader.net/tv/src/vltv010203.jpg
仏(演 - 佐藤二朗):
仏。ヨシヒコたちにお告げを与える。仏としてあるまじき言動・行動を取ることがある。

38: 2012/06/10(日) 12:29:02.83 ID:IszDZkRu0
ヨシヒコ「大変なこと……ッ!?」

ムラサキ「勢いでごまかしたな」

仏「うるせーっ! だまれこの……! えーっと、このぉ……、えー……」

メレブ「思いつかないなら言うなよー」

ヨシヒコ「大変なこととはなんですか、仏様」

仏「ヨシヒコ、お前はホント素直な質問を投げてくるな、うん。いいと思う。
  で! 大変なこと、というのは――」

ヨシヒコ「大変なことというのは……!?」

仏「ん~、言っちゃおうかな~、どうしよっかな~。言っちゃおっか言ーわないか考え中♪
  はぁ~、言っちゃおうか言ーわないか考え中♪ ポゥ!」

ムラサキ「うっざ」

メレブ「多分これ知らないパターンだな」

ムラサキ「だな」

メレブ「行こーぜ」

ヨシヒコ「いや、でも仏様が」

仏「ちょっ、ごめん、ホントごめんなさい。すみません。
  えーっとね……、この世界が異世界とつながってしまったのだァ! だー、だー、だー……」

39: 2012/06/10(日) 12:30:05.14 ID:IszDZkRu0
ダンジョー「異世界、だと?」

メレブ「なーにー? 異世界ってー」

仏「セルフエコーは無視かい! 無視かいっ! まあいいや。
  うむ、元あったお前たちの世界が、パ○リ先、もとい別の世界と混ざりあってしまったのだ!」

ムラサキ「はぁ?」

ダンジョー「にわかには信じられんな……」

ヨシヒコ「じゃあ、さっきの頭に聞こえてきたメッセージも……」

仏「しかも! 私たちとー別の世界にも、魔王が存在していぃーる!」

ムラサキ「……ってことは、今ここには、私たちの世界の魔王と、別の世界の魔王、
     二匹の魔王がいるってこと!?」

仏「うむ。しかも、世界が強引に重なったせいで、魔物も見た目がバージョンアップ。
  ハリウッドでVFXを使ったみたいになっているのだ。通称『モンスター』だっ!」

ダンジョー「よく意味が分からんのだが……」

仏「まあ、見た目、生々しくなりました?みたいな感じ?」

ヨシヒコ「じゃあ、それにともなって強さも……」

仏「あ、それは変わってないね」

メレブ「あー、そこはー変わらないんだ」

40: 2012/06/10(日) 12:31:06.88 ID:IszDZkRu0
ムラサキ「んで、どうすれば元に戻んの?」

仏「メレブ、お前ぇー、昨日『パノレプンレ』?だっけ? そんな名前のーあれ、感じの呪文使ったろ」

メレブ「うん」

ダンジョー「それが何か関係があるのか?」

仏「あれ、256分の1の確率で、異世界とつながる大変な呪文なんだぜオイ」

メレブ「ぇえー……ウっソぉー……」

仏「……え? 何? あー……、うん、F? え、もう一回」

ムラサキ「誰としゃべってんだよ」

仏「ムラサキ、お前ちょっと黙れ。……、はぁ、ああ、なるほど、うん、え!?」

ダンジョー「しかし……、256分の1なら、運がよければ元に戻せそうだな」

ヨシヒコ「そうですね」

メレブ「なんかー、ごめんな、オレのせいで……」

ヨシヒコ「大丈夫ですよ、メレブさん」

ムラサキ「はったメーワクな呪文だよなー」

仏「あ、うん、OK。……ヨシヒコ、間違えた。65,535分の1だって」

41: 2012/06/10(日) 12:32:08.60 ID:IszDZkRu0

メレブ「!?」

ダンジョー「!?」

ヨシヒコ「6万――」 ムラサキ「5千!?」

仏「うん。なんかね、最近はデータ量が多いんだって」

メレブ「ぇー……」

ムラサキ「……無理じゃね……」

ダンジョー「どうすればいいんだ、仏。とても6万回も唱えられる呪文じゃないぞ」

仏「うん、とりあえず、南に向かえばいいと思うよ、まあ、まあうん」ポリポリ

ムラサキ「そのザックリした指示、いい加減なんとかならないのかよ」

ダンジョー「ダメな上司の典型、だな」

仏「うるせーっ! いいから向かえよ! お前ら……バカーッ! バーカ!」スゥ…

ムラサキ「あ、消えた」

ダンジョー「……何があるか分からんが、ともかく南へ向かうしかなさそうだな……」

ムラサキ「だな」

42: 2012/06/10(日) 12:33:10.61 ID:IszDZkRu0
メレブ「……」

ヨシヒコ「メレブさん、落ちこまないでください」

メレブ「ヨシヒコ……」

ヨシヒコ「世界を破滅に追いやるような危険な呪文を唱えただけですから。
     それに、魔王も二匹になってかなり絶望的ですが、諦めることはありませんよ」

メレブ「うわー……出たー……正しすぎるがゆえに傷口をえぐる言葉ぁー……」

ダンジョー「悪意はないんだがな……」

ヨシヒコ「さあ、向かいましょう、南へ!」

43: 2012/06/10(日) 12:34:12.36 ID:IszDZkRu0
~オラクルベリー~

ムラサキ「ふ~、やっと着いた~。髪が洗える~♪」

ダンジョー「なんだこの町は……、ずいぶんデーハーだな」

メレブ「言い方古いな」

ヨシヒコ「あの、すみません、そこの方。この町はどういう町なんですか?」

*「ここは、誰もが夢を抱きやってくるオラクルベリーの都だ」

ヨシヒコ「オラクル……ベリー……」

メレブ「仏の言うとおり南にずーっと来たら、この町があった。
    ……ということは、この町に何かあるということか」

ムラサキ「あ、見て見てアレ!」

ヨシヒコ「カシノ……?」

ダンジョー「ヨシヒコ、『カジノ』だ」

ヨシヒコ「カジノ……? なんですか、それは」

メレブ「賭博場をかっこよく言った感じだな。賭け事をする場所だ」

ムラサキ「あたし、行ってみたい! こう見えても、けっこう勝負運強いんだよ?」

ダンジョー「遊びに来たんじゃないんだぞ、ムラサキ」

45: 2012/06/10(日) 12:35:50.16 ID:IszDZkRu0
ムラサキ「少しくらいいいじゃん。それに、何か手がかりがあるかもしれないっしょ?」

メレブ「まあ、店で売ってないアイテムがあることもあるし、行ってみてもいいかもなあ」

ムラサキ「ねえ、ヨシヒコはどうする?」

ヨシヒコ「たしかに、何かあるかもしれない。行ってみましょう」

ムラサキ「よっしゃ!」

ダンジョー「あくまで探索が目的だぞ、忘れるなよ三人とも、ハハッ」

ムラサキ「分かってるって」

ヨシヒコ「……」

メレブ「とっとと手がかり探してさっさと戻ろうぜー」

46: 2012/06/10(日) 12:36:51.81 ID:IszDZkRu0
~オラクルベリー・カジノ スライムレース場~

『レースけっか
 ただいまの レースは 1-2に きまりました』

ダンジョー「くそっ! 1-2か!」

*「残念! 予想ははずれだっ!」

ダンジョー「後半に追い上げられたかーッ!!」パシィッ

*「つづけて次のレースにもコインをかけるかい?」

ダンジョー「オヤジ、もう一回!」

*「じゃあ、レースのはじまりだ! バンバンかけておくれよ!
  ……そこのお嬢ちゃんたちもどうだい?」

*「わ、私ですか……? お兄ちゃん、スライムレースやってもいい?」

*「うん! いっしょに予想しよう!」

47: 2012/06/10(日) 12:37:53.45 ID:IszDZkRu0
~スロット場~

『おめでとうございます!
 60まいの コインが あたりました!』

ムラサキ「よっしゃぁ! [BAR]3列並んだ! 60コインゲーットォッ!」

『もういちど スロットを やりますか?』

ムラサキ「もちろんやる!」



~すごろく場~

メレブ「えーっと、3マス進めるから、こっち……、ええと、あ、あっち進もうあっち」

『サイコロの のこり回数が もう ありません。
 残念ですが ここまでです』

*「では、またどうぞ」

メレブ「なん……だと……?」

48: 2012/06/10(日) 12:38:54.80 ID:IszDZkRu0
~中央ステージ~

*「ララララ~♪ かざらない 愛こそが~ 人の心を うつもの~」

ヨシヒコ「……」

  ヨシヒコは ステージのおどりこを じっとながめている! ▽

*「ララララ~♪ プリーズ プリーズ アイ ウォント ユ~」

  ヨシヒコは ステージのおどりこを じっとながめている! ▽

テレレレレレレレッ!! レ~レ~レ~ッ!!

  なにものかが あらわれた!

ヨシヒコ「!?」

  なにものかは ヨシヒコが みがまえるまえに おそいかかってきた!

  なにものかの アイアンクロー!

  ヨシヒコは 28の ダメージを うけた!

*「こんなところで何、油売ってんのよ」ギリギリギリ

ヨシヒコ「痛い痛い痛い痛い! やめ、やめてください!」

*「まったく……。どこに行ったのかと思ったら、踊り子のお尻を追いかけてるなんてね。
  この私をほっぽらかして、いい度胸だわ」パッ

50: 2012/06/10(日) 12:39:56.24 ID:IszDZkRu0
ドサッ

ヨシヒコ「あ、頭が割れるかと思ったー……、あなた、誰ですか……?」

*「主人の顔も忘れたの? とんだ鳥頭ね」

  めのまえで とてもうつくしいじょせいが におうだちしている ▽

ヨシヒコ「……ひ、人違い、してませんか……?」

*「この私が人違いなんてするはずないでしょ。記憶喪失にでもなったの、トンヌラ?」

ヨシヒコ「トンヌラ……? 私の名前はヨシヒコ、勇者ヨシヒコです」

*「……へ?」

ヨシヒコ「あなたは……?」

*「あなた、本当にトンヌラじゃないの?」

ヨシヒコ「はい」

*「たしかに……、うり二つだけど、よくよく見れば少し違うわね。
  まあ、トンヌラじゃないならどうでもいいわ。さようなら
  ――まったく、どこに行ったのかしらあの馬鹿」

  なぞのじょせいは ハイヒールを カツカツならしながら さっていった ▽

ヨシヒコ(そういえば、ダンジョーさんたちはどこへ行ったんだろう……。
     カシノは少し寄るだけと言っていた。きっと外にいるに違いない)

52: 2012/06/10(日) 12:40:58.05 ID:IszDZkRu0
~一方、その頃 スライムレース場~

ダンジョー「必勝法……?」

*「まあ、これでスライムレースは9割勝てるね」

ダンジョー「おお! ぜひ教えてくれ!」

*「タダで、とはいかねぇなあ」

ダンジョー「仕方ない、いくらだ」

*「3000ゴールド」

ダンジョー「高い! もっと安くならんのか!」

*「まあ、あんた男前だから、300ゴールドで特別に教えてやるよ」

ダンジョー「おお! ありがたい!」

*「いいか……、よーく、聞けよ。まず、格闘技場で遊ぶんだ。ただし、一回だけ、一回だけだぞ?
  それからすぐに、スライムレースに行く。そしたら、10倍の1-2に賭けるんだ」

ダンジョー「たったそれだけでいいのか」

*「まあやってみろ、保証するぜ」

ダンジョー「よし! これで負けた分も取り返せるな! ハッハッハ!」

54: 2012/06/10(日) 12:42:01.47 ID:IszDZkRu0
~スロット場~

ムラサキ「……」ゴクリ…

*「こちらは当店じまんの100コインスロットですわ」

ムラサキ「スロットでためにためた2万コイン。いざ、勝負ッ!」

    ざわ・・・
              ざわ・・・

*「お兄ちゃん、100コインスロットしてる人がいるよ! 女の人!」

*「うわあ、ボクもやってみたいな」

*「かってにやって、お母さんに怒られないかな?」

*「きっと、たくさんコインを出せば大丈夫だよ、タバサ」

55: 2012/06/10(日) 12:43:03.64 ID:IszDZkRu0
~すごろく場~

メレブ「もー! 落とし穴とかやめろよなマジでー! このすごろく作ったヤツ絶対性格悪い絶対」

*「もしもし、そこの御仁」

メレブ「え? ん、オレ?」

*「よろしければ、このすごろく場の必勝法を教えてしんぜよう」

メレブ「ほう、必勝法……。それは是非、教えていただきたい」

*「それはずばり! 『ひとしこのみ』ぢゃ!」

メレブ「ひとしこのみ……?」

*「『ひのきのぼう』、『とがったホネ』『しあわせのぼうし』『こんぼう』『のこぎりがたな』、
  そして『みかわしのふく』“だけ”を、“いっさい装備せずこの順番で持ったまま”、
  すごろく場に入るのぢゃ! さすれば、必ずゴールまでたどりつけよう!」

メレブ「Oh、ワンダホー……ワァンダホォー……」

56: 2012/06/10(日) 12:44:05.22 ID:IszDZkRu0
~オラクルベリー・カジノ外~

ヨシヒコ(一向に見つからないが、ダンジョーさんたちは一体どこに行ったのだろう)

ドンッ

*「うわっ!」

ヨシヒコ「!?」

*「いてて……」

ヨシヒコ「すみません、大丈夫です……か……」

*「はい、こちらこそすまなかっ……ん……?」

ヨシヒコ「……」

*「……」

ヨシヒコ「……私……?」

*「……俺がいる……?」

ヨシヒコ「な、何者だ!?」

*「俺はトンヌラ、魔物使いだ。あなたの方は」

ヨシヒコ「私はヨシヒコ、勇者ヨシヒコだ」

57: 2012/06/10(日) 12:45:07.23 ID:IszDZkRu0
トンヌラ「勇者……?」

ヨシヒコ「なぜ私と同じ格好をしている!」

トンヌラ「うん、少し待ってくれ」ゴソゴソ

  トンヌラは ふくろから ラーのかがみを とりだした ▽

ヨシヒコ「な、なんだその鏡は!」ガチャッ!

  トンヌラは ラーのかがみを のぞきこんだ! ▽

  ラーのかがみには ヨシヒコのすがたが うつっている…… ▽

トンヌラ「勇者ヨシヒコ……? お前は一体……」

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
トンヌラ:
『ドラゴンクエストⅤ 天空の花嫁』の主人公。魔物の邪心を取り除き仲間にする不思議な力がある。
なぜかヨシヒコと瓜二つの姿をしている。

58: 2012/06/10(日) 12:46:08.96 ID:IszDZkRu0
~一方その頃 カジノ内バー~

仏「いや、もうホント大変なのさ、仏もさー」

*「そうなんですか」

仏「しゃーったらぁ、うぇぁー! 勇者がさぁー、3Dメガネでしか俺見えないって変だろーよー。
いっつも文句ばっかり言いやがってよーあいつらよー! オヤジ、もう一杯!」

*「少し飲みすぎですよ、お客さん」

仏「うるせーっ! 仏ビームだすぞ仏ビーーーームっ! ――と思いきや今は出さない~♪」

*「……次は何にしますか?」

仏「とりまナマ中、それから黒豆のえだ豆ぇー!」

*「申し訳ありませんが、トリマナマチューとクロマメノエダマメというのは置いてないんですよ」

*「いやいやいやいや、いやいやいーやいやいやいーや、なんでないのかなぁー?
  ふつう置いてあるでしょうよぉー」

*(めんどくさい客だな……)

59: 2012/06/10(日) 12:47:38.12 ID:IszDZkRu0
~オラクルベリー・カジノ外~

トンヌラ「そういうことか……。二つの世界がひとつに……。
     なるほど、この辺りの地形が急に激変したのは、そのせいだったのか……。
     それから、その姿――おそらく、ヨシヒコは別の世界の俺なんだなうな」

ヨシヒコ「トンヌラさんは、トンヌラさんの世界の魔王を倒そうと旅をしていたんですね。
     ……でも、どうしてカシノなんかに……?」

トンヌラ「あ、ああ……。まあ、少し事情があってな」

ヨシヒコ「よければ……、聞かせてもらえますか?」

トンヌラ「……魔界に行く前に手に入れたいアイテムがあって、それは手に入れたんだが……。
     妻が、手当たり次第道具を売って、カジノのコインに換えてしまったんだ」
     それだけならいいんだが、その中に、大事なものがあってな」

ヨシヒコ「か、かなり豪快なー……奥さん、ですね」

トンヌラ「一応、買い戻すゴールドは稼いだんだが、取り戻そうにも、なかなか相手が譲らない。
     それで、どう取り戻すか考えながら歩いていたら、ヨシヒコとぶつかったというわけさ」

ヨシヒコ「そうですか……。では、その人から、その大事なものを取り立てればいいんですか?」

トンヌラ「取り立て? まあ、言い方を変えれば、そうなのかな……?」

ヨシヒコ「……それなら私に任せてください」フッ

トンヌラ「ヨ、ヨシヒコ……?」

60: 2012/06/10(日) 12:48:31.88 ID:IszDZkRu0
ヨシヒコ「そういうことは得意なんです」

トンヌラ「……し、しかし、とてもそんな感じには見えないが……」

ヨシヒコ「実は私……、こう見えても少し前のニックネームは――『闇金ウシジマくん』」

トンヌラ「よ、よく分からないが……すごく怖そうなニックネームだ……」

ヨシヒコ「その債権者はどこにいるんですか?」

トンヌラ「債権者?」



~3分後~

ヨシヒコ「回収して来ました」

トンヌラ「早ッ! 早いよ! しかも、相手、ゴロツキだったよね……?」

ヨシヒコ「あと、代金を半分にしてもらって、余ったゴールドを10日5割《トゴ》で
     貸し付けたので、また返済日に回収しに来ます」

トンヌラ「……」

ムラサキ「ヨシヒコ……」フラッ

トンヌラ「こ、今度はなんだ……?」

ヨシヒコ「ムラ、ムラ……サキ……?」

61: 2012/06/10(日) 12:49:03.75 ID:IszDZkRu0
トンヌラ「知り合い……?」

ヨシヒコ「仲間です」

ムラサキ「ヨ!? ヨシヒコが二人いる!?」

ヨシヒコ「この人はトンヌラさん。別の世界の私だ」

ムラサキ「別の世界のヨシヒコ……?」

トンヌラ「よ、よろしく、ムラサキさん」

ムラサキ「あ、はい」ペコリ

ヨシヒコ「そんなことより……、すごく顔が青いぞ、ムラサキ」

ムラサキ「実はさ、ヨシヒコ……。あたしね……」

  ムラサキは じぶんが 100コインスロットで

  スッカラカンになったことを ヨシヒコに せつめいした ▽

ムラサキ「一度は10万コインまでいったんだけど、それから当たりがなくてさ……。
     もう一回、もう一回やれば大勝ちできると思うんだよね」

ダンジョー「ムラサキ……、それはギャンブルで失敗する奴の典型的なセリフだ……」

ヨシヒコ「ダン、ダンジョーさん!? いつの間に……!」

トンヌラ「この人も……?」

62: 2012/06/10(日) 12:49:35.32 ID:IszDZkRu0
ヨシヒコ「な、仲間です」

ダンジョー「実はなヨシヒコ……、ヨ!? ヨシヒコが二人いるだと……!?」

ヨシヒコ「そのネタはもうやりました。何があったのか先に話してください」

ダンジョー「ん? あ、ああ、分かった……」

  ダンジョーは じぶんが スライムレースで まけたこと

  そして にせ じょうほうに みごとだまされ

  スッカラカンになったことを ヨシヒコに せつめいした ▽

ダンジョー「本っ当にすまん! 勝負事には熱くなるタイプでな……」

ムラサキ「おっさんも人のこと言えねーだろ」

ダンジョー「ん……まあ、な……」

メレブ「お、ヨシヒコ。ダンジョーとムラサキもいるじゃーん。ん? 何? この重い空気?」

トンヌラ「……仲間……?」

ヨシヒコ「は、はい……」

ムラサキ「おめーメレブ、どこ行こうとしてるんだよ」

メレブ「うむ、よくぞ聞いてくれた。実は、すごろく場の必勝アイテムをそろえに行こうと思ってな」

63: 2012/06/10(日) 12:50:06.90 ID:IszDZkRu0
ヨシヒコ「はっ?」

  メレブは すごろくじょうの ひっしょうほうを ヨシヒコに せつめいした ▽

トンヌラ「……それ、十数年前の話ですよ。しかも、すごろく場にまったく関係ない裏技で……」

メレブ「……何を言うヨシヒコ……、って、ヨシヒコ!? ヨシヒコが二人いるよぉ!?」

ダンジョー「異世界のヨシヒコだ。トンヌラさんというらしい」

トンヌラ「初めまして」

メレブ「初めまして……って、おおっと~……、これはオレ、騙された流れかなぁー……?」ハハハハ

ムラサキ「みんなカジノで大負けしたってことか……」

*「あ! さっき100コインスロットで負けてた胸が平らなお姉ちゃんだ!」

ムラサキ「ああん!?」

*「スライムレースで燃えつきてたおじさんもいるよ、お兄ちゃん! この人はお父さんそっくり!
  ……お父さん、この人たちお父さんの知り合いですか?」

ヨシヒコ「トンヌラさん、この子たちは……?」

トンヌラ「レックスとタバサ、俺たちの子どもだよ。――レックス、タバサ、あいさつしなさい」

レックス「レックスです! 勇者ですっ!」

タバサ「タバサです! ゆっ、勇者の妹ですっ!」

64: 2012/06/10(日) 12:50:44.58 ID:IszDZkRu0
ヨシヒコ「ゆ、勇者!?」

メレブ「別世界の勇者かぁ~、意外と子どもだなぁー、いくつ?」

レックス&タバサ「10歳だよ!」「10歳です!」

ダンジョー「これが、仏が『南に行け』と言った理由か」

トンヌラ「ホトケ?」

メレブ「まあ、オレたちの世界の神様みたいなもん……かな。極めて頼りない、が」

トンヌラ「なるほど……。察するに、異世界の『勇者』二人の力を合わせろということか。
     しかし、まだ状況がよく分からないな。世界全体が正確にはどう変わっているのか……。
     そもそも、どうして二つの世界が重なってしまったのか……」

レックス「二つの世界が……」

タバサ「重なった?」

ムラサキ「あ、それコイツのせい」

トンヌラ「えっ」

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
レックス:
トンヌラの双子の息子。まだ幼いながら、勇者として父とともに戦う勇敢な少年。

タバサ:
トンヌラの双子の娘。トンヌラの血を受け継ぎ、魔物や幽霊の気持ちを汲む心優しい少女。

65: 2012/06/10(日) 12:51:46.07 ID:IszDZkRu0
メレブ「あーどうもーメレブですー、好きなものは、んぅー……オムライス?」ハハッ

トンヌラ「メレブさんのせいというのは……どういう……」

ムラサキ「こいつがワケ分かんない呪文を唱えたせいで、別の世界同士がくっついちゃったみたいで」

トンヌラ「はっ?」

メレブ「ん、まあ『パノレプンテ』っていう魔法なんですけども、
    何がー……んー……、起こるか分からないという感じ?で。はい。
    今回は、二つの世界がひとつになったというかー、まあ、そんなぁ状況ですね」

トンヌラ「……」

タバサ「お兄ちゃん、お兄ちゃんも魔法使いなの?」クイックイッ

メレブ「うむ。他にも、『ハナブー』といった呪文や、『スイーおぶッ!?」

  なにものかの こうげき!  メレブは 36の ダメージを うけた!

*「なるほど、こいつが元凶なのね。やっておしまい、ピエール!」

ピエール「……」

*「トンヌラの言うことは素直に聞くのに、私の命令は聞かないとはいい度胸ね」ゴキッゴキッ

ピエール「しゅっしゅっ!」

  ピエールの こうげき!  メレブは 45の ダメージを うけた!

67: 2012/06/10(日) 12:52:17.69 ID:IszDZkRu0
メレブ「あ痛い、痛い痛い痛いっ! なんでモンスターがここにいんの!? 痛いって!」

トンヌラ「デボラ、いつからそこにいたんだ?」

デボラ「この黄ばんだスライム野郎のせいで世界が大変なことになってるってあたりからよ」

ムラサキ「ンっとに、エリザベス御輿みたいな頭しやがって」

デボラ「……」

ムラサキ「……」

デボラ「なにかしら……この娘……」

ムラサキ「じ、自分と似たものを感じる……」

トンヌラ「みんな、紹介するよ、妻のデボラだ」

ヨシヒコ「トンヌラさん、お、奥さんの選択を間違えたんですか?
     ぅ、うっかり、移植するときの新要素に釣られた、とか……」

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
デボラ:
『ドラゴンクエストⅤ 天空の花嫁』のヒロインでレックスとタバサの母親。傲慢でキツい性格。

ピエール(スライムナイト):
スライムにまたがった騎士の姿をした魔物。仲間モンスターの中でも、トップクラスに頼りになる。

68: 2012/06/10(日) 12:52:51.03 ID:IszDZkRu0
トンヌラ「うん……」

デボラ「へぇ……」ゴゴゴゴゴゴ…

  デボラは いかりをためている! ▽

トンヌラ「間違えてません」

デボラ「もちろんよ」

ダンジョー「……」ジー

デボラ「トンヌラの主人のデボラよ。……あら、見とれてるの? 私の美しさに」

ダンジョー「ええ……、世界中探しても、貴女ほどの美貌を持つ薔薇には出会えないでしょう」

ムラサキ「なに人妻口説いてンだよ」

メレブ「うわー不潔ぅー、ミドルぜんぜんナイスミドルじゃないよぉー」

デボラ「あら、なかなか上手いじゃない。あなた、名前は?」

ダンジョー「私はダン、ジョー。戦士ダンジョー。その可憐な胸の内に名を留めてほしい」

デボラ「ふふ、薔薇のトゲにあなたの名刺を刺しておくわ」

ダンジョー「はははははっ、これは参った」

タバサ「お兄ちゃん、みんなナニ言ってるの?」

69: 2012/06/10(日) 12:53:24.30 ID:IszDZkRu0
レックス「え? ごめん、ピエールと遊んでたから聞いてなかったや」

トンヌラ「……みんな、少しいいか」

一同「?」

トンヌラ「少し状況が混沌としてきたから、情報を整理しようと思う。
     というか、雑談してる場合じゃないだろう」

メレブ「たしかに……、まったく悠長なことしてる状況じゃないですね、はい。すみません」

トンヌラ「まず、この世界は今、二つの異なる世界が重なってしまった状態にある。
     原因は、メレブさんの呪文。……ここまではいいな?」

ヨシヒコ「はい、そのとおりです」

トンヌラ「そして、もうメレブさんの呪文では事態を打開できない。
     だからホトケ様は俺たちに会うよう、ヨシヒコたちに指示した」

ヨシヒコ「そ、そのとおりです」

ムラサキ「ちょ、すごー」

デボラ「まあ、私のしもべだから当然よ。――それにしても、少し変ね……」ウーム

ムラサキ「しもべ!?」

70: 2012/06/10(日) 12:54:09.03 ID:IszDZkRu0
トンヌラ「もうひとつ。こんなことはあってほしくないんだが……。
     ヨシヒコの世界に勇者がいて、ヨシヒコがここにいる。
     だったら、同じように、ヨシヒコの世界に魔王か、魔王なみに邪悪な奴がいて、
     そいつもここにいる……」

ダンジョー「残念だが、そのとおりだ、トンヌラ殿」

レックス「本当!?」

タバサ「他の魔王も来たの?」

トンヌラ「つまり、今、この世界には二人の『勇者』と二匹の『魔王』がいるということだ。
     ヨシヒコ、ヨシヒコの世界の魔王のゆくえは分からないのか?」

ヨシヒコ「ええ。私たちの世界でも、どこにいるのかは分かりませんでした」

トンヌラ「ホトケ様は他に何か言ってなかったか?」

ヨシヒコ「メレブさんの呪文のせいで二つの世界がひとつになったこと、
     魔王が二匹いること、それから『南へ向かえ』と」

トンヌラ「ああ、それはさっき聞いた。別の指示を聞きたいんだ。
     例えば、世界を元に戻すためには、二人の勇者の魔力を合わせて何かするとか……」

ヨシヒコ「い、いえ何も」

トンヌラ「えっ」

73: 2012/06/10(日) 13:00:05.15 ID:IszDZkRu0
ヨシヒコ「それだけしか、言われてないです」

トンヌラ「……けっこう、ざっくりしてる、ね……ホトケ様……。
     ヨシヒコの世界の魔王のこととかも聞きたかったんだけど……」

メレブ「多分ー、知ってても、ふわっとしか知らないんじゃないかなぁー……。
    毎回、一応お告げ言うんだけど、聞く感じいつもふわっとしてるよね」

ムラサキ「そもそも、あいつがマジに仏だってところからしてあたし信じてないですね」

トンヌラ「うーむ……」

デボラ(……やっぱり妙ね……)

レックス「どうするの、お父さん?」クイクイ

トンヌラ「ホトケ様の助けが使えないとなると、自分たちでなんとかするしかないな。
     ――とりあえず、世界を一通り見て回ろう。どんな影響が出ているのか確認したいし、
     世界を元に戻すヒントが見つかるかもしれない」

デボラ「トンヌラにしては妥当な選択ね」

トンヌラ「そのために、グループを4つに分けよう。
     まず、ルーラで移動する組。俺とヨシヒコ、それからタバサとメレブさん」

ヨシヒコ「ルーラ?」

タバサ「移動呪文です! メレブさん、よろしくお願いしますっ!」ペコリ

メレブ「うむ。どこへなりとも行こうぞ、マッシュルーム仲間タバサよ」

74: 2012/06/10(日) 13:05:21.83 ID:IszDZkRu0
トンヌラ「マスタードラゴンに乗る組はデボラとムラサキ。上空から地形を見てくれ。
     特に、海の神殿周辺は念入りに」

ムラサキ「マスター……ドラゴン?」

デボラ「しょーもないおっさんよ」

ムラサキ「おs、おっさん……? あたし、おっさんに乗る……の……?」

トンヌラ「ダンジョーさんはレックスと天空城を使ってください。空に浮かぶ城です。
     城まではタバサのルーラで飛んでください」

ダンジョー「ああ、分かった、トンヌラ殿」

トンヌラ「それから、ロッキーはデボラ組、スラりんはレックス組、ピエールはタバサ組に付け」

ロッキー「ゴロゴロゴロ……」

スラりん「ピキー!」

ピエール「しゅっしゅっ」


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
ロッキー(ばくだんいわ):
自爆魔法「メガンテ」の代名詞。余談だが、DS版メガンテは大ダメージを与える効果もある。

スラりん(スライム):
最近、肉まんになった。

77: 2012/06/10(日) 13:10:43.31 ID:IszDZkRu0
トンヌラ「いいか、あくまで目的は現状の把握だ。絶対に危険は犯すな」

レックス「うん」  タバサ「はい」  デボラ「当たり前よ」

ヨシヒコ「分かりました」  ムラサキ「う、うす」  ダンジョー「了解だ」  メレブ「うむ」

トンヌラ「――それじゃあ、各自、散開!」

タバサ「いきますよ!」テレレレレン・*:.。..。.:*・゜

  タバサは ルーラを となえた!

ビョイーンビョイーン

デボラ「相変わらずいい飛びっぷりだわ」

トンヌラ「それじゃあ、俺たちも行くか、ヨシヒコ」

ヨシヒコ「その前に、トンヌラさん、これを」

トンヌラ「ん?」

  ヨシヒコは シルクのヴェールを トンヌラにてわたした! ▽

テテテテテン♪

  トンヌラは シルクのヴェールを てにいれた! ▽

ヨシヒコ「さっきの債権者から取り戻したものです」

79: 2012/06/10(日) 13:16:08.00 ID:IszDZkRu0
トンヌラ「おお! すっかり忘れてたよ。ありがとう、ヨシヒコ!」

デボラ「何よこれ、コインに換えるために私が売ったやつじゃない」

トンヌラ「大切なものだからな。取り戻したかったんだ」

デボラ「……」

ヨシヒコ「ええっと……、これは、そもそも何なんですか……?」

トンヌラ「デボラと結婚したときの記念品」

ヨシヒコ「!」

デボラ「馬鹿ね。あなたは今の私だけを見てればいいの」

トンヌラ「分かってるよ」

ヨシヒコ「……そんな……! こんなっ! こんなのおかしいですよ、デボラさん!」

デボラ「は?」

ヨシヒコ「せっかく、旦那さんが結婚の記念品を取り返してくれたんですよ!?
     それなのに! どうして感謝の一言もないんですか!」

デボラ「……」

トンヌラ「ヨシヒコ、まあまあ、落ち着いて」

80: 2012/06/10(日) 13:21:10.36 ID:IszDZkRu0
ヨシヒコ「これが落ち着いていられますか! ……なんですか?
     私は間違ったことを言っていますか?」

ムラサキ「珍しくマトモなこと言ってるな」

デボラ「うるさいバッタモンね。いい? 私がしていることはすべて正しいの。
    踊り子のお尻を見てばかりのスOベニンゲンに、とやかく言われる筋合いはないわ」

ヨシヒコ「見ていたのは胸の方だッ!」カッ

デボラ「馬鹿なの?」  ムラサキ「バカかよ」

ヨシヒコ「トンヌラさん、トンヌラさんはこれでいいんですか!?」

トンヌラ「まあ、な」

デボラ「トンヌラ、ロッキーはトンヌラが連れて行きなさい。邪魔よ」

トンヌラ「ああ、分かった。ロッキー、来い」

ロッキー「……」ゴロゴロゴロゴロ

  トンヌラは ルーラを となえた!

ヨシヒコ「トンヌラさ――」

ビョイーンビョイーン

81: 2012/06/10(日) 13:26:24.14 ID:IszDZkRu0
~天空城~

タバサ「とーちゃくー!」スタッ

ダンジョー「ここが天空城……」

メレブ「っていっても、見た目、ふつうの城とあんま変わんないぜー?」

レックス「ちょっと待ってて!」シュタタタタ…

タバサ「メレブさん、城が飛ぶのみたいですか?」

メレブ「ああ、うん、見たい見たい! 城とか、フツー浮かないからね、予算とかの関係で」

タバサ「ヨサン……?」

ピエール「しゅっしゅっ」

タバサ「あ、そろそろかな?」

ゴゴゴゴゴ……

ダンジョー「!?」

メレブ「おお揺れてる!? すごい揺れてる!?
    そして~……、あ、浮かび……上がったぁー……。スイーっていう感じね、スイーって」

ダンジョー「これは凄いな……。こんな大きな建物が空に浮かぶとは……」

82: 2012/06/10(日) 13:31:32.31 ID:IszDZkRu0
レックス「どう?」ハァ、ハァ、ハァ

メレブ「速ッ! 足速ッ! もう帰ってきたよ!」

ダンジョー「これなら空から地上の様子がよく分かる。……レックスの世界はとんでもないな」

レックス「えへへ」

ダンジョー「それに、勇者が少年というのも意外だ。
      てっきり、トンヌラ殿が勇者かと思っていたがなあ」

レックス「ボクは勇者だけど、お父さんはボクよりもずっと強いんだ!」

ダンジョー「そうか……、では勇者レックスよ、
      もっと強くなってお父さんを助けたいとは思わんか?」

レックス「思う!」

ダンジョー「ふっ……、それでは世界を見て回る前に、
      この戦士、ダンジョーが勇者に稽古を!つけてやろう!」

メレブ「おっさん、子どもとはいえ勇者だぜ? わざわざおっさんにそんなこt」

レックス「お願いします!」

メレブ「おおっとぉ? 素直だー……すごく素直だったレックス君……」

ダンジョー「では、これで剣術の練習だ」ポイッ

レックス「これは……ひのきのぼう?」

83: 2012/06/10(日) 13:36:41.52 ID:IszDZkRu0
ダンジョー「間違ってケガをさせては、トンヌラ殿に申し訳が立たないからな、ハッハッハ」

レックス「使うの、久しぶりだなあ……」シュッシュッシュッ!

ダンジョー「じゃあレックス、まずは思いっっっきりかかってこい!」

レックス「うん! ……はぁぁぁ……ッ!」

ズォォォォ……

ダンジョー「……ん?」

レックス「でやぁあああああッ!」

ズギャアアアアアアアアアアッッ!!

ダンジョー「……」

レックス「あれ? いっつも剣だから狙いが外れちゃった」

メレブ「これはー……ん~……あれ、かな? むしろケガ、させられちゃう……、
    っていうか、みごと返り討ちにあうパターンきたな」

ダンジョー「……レ……レックス……」

レックス「え?」

ダンジョー「力は……、入れないでおこう」

レックス「なんで?」

84: 2012/06/10(日) 13:41:49.82 ID:IszDZkRu0
ダンジョー「……おー、お前はー、力よりも技を磨かなければならんッ!
      力と魔法に頼っていては、真の強さは身につかんのだッ! いいな? な?」

メレブ「出た……。プライドと威厳を守りつつ、
    自分の安全を確保しにゆく汚い大人の姿が、ここにあった……」

レックス「うん! 分かった! さすが戦士のおっさん!」

ダンジョー「ダンジョーだ。あとそれから、せめて、おじさん、と呼べ」

レックス「わかった、ダンジョーおじさん」

ダンジョー「まずは、『打ち落とし』からだ。
      その棒で突いてこい……ゆっくり、ゆっくりだぞ?」

レックス「はっ!」ザッ

ガッ ヒュッ

ダンジョー「……」ドヤァ…

レックス「攻撃が……外された……?」

ダンジョー「これが『打ち落とし』だ。ふつうはここから反撃する」

レックス「おお!」キラキラキラ

ピエール「……」キラキラキラ

85: 2012/06/10(日) 13:47:00.74 ID:IszDZkRu0
ダンジョー「なあに、お前ならすぐマスターできる」

レックス「うん! よろしくおねがいしますっ!」

タバサ「あのー……メレブおじさん」

メレブ「ん? あ、ああ、そろそろ行くとするか」

ピエール「……」

タバサ「ピエール……? え? ここに、残りたい、の? うん、うん……」

メレブ「どしたの?」

タバサ「ピエール、お兄ちゃんと剣術の練習したいみたい」

スラりん「ピキー!」

タバサ「……うん、そうだね。じゃあ、わたしたちはスラりんと行こう」

ピエール「しゅっしゅっ!」

メレブ「おっさん……、亡骸は拾ってやるぞ……」

タバサ「『ルーラ』!」テレレレレン・*:.。..。.:*・゜

  タバサは ルーラを となえた!

ビョイーンビョイーン

88: 2012/06/10(日) 14:00:10.75 ID:IszDZkRu0
~アルカパ(マーニャ村)近く~

スラりん「ピキー!」

メレブ「『ハナブー』!」テレレレレン・*:.。..。.:*・゜

タバサ「ん? ……あははっ、おもしろーい。
    わたしの鼻がブタになっちゃった。おじさんすごいんですね!」

メレブ「ふははっ、そうだろうそうだろう。
    タバサよ、すごいと思ったら私のホクロをほめたたえるのだ。
    『メレブおじさんのホクロすごいでするぅー』。
    ――はい」

タバサ「メレブおじさんのホクロすごいでするぅー」

メレブ「こ、こうやって指を指しながら。
    まるで……、えぇー……、暗黒物質《ダークマター》でするぅー」

タバサ「だ、だーくまたー?でするぅー」

メレブ「ほー、ホクロコダイルー、ホクロコダイル・ダンディーでするぅー」

タバサ「ホクロコダイル・ダンディーでするぅー」

メレブ「えい」テレレレレン・*:.。..。.:*・゜

タバサ「あ、鼻が戻っちゃった」

メレブ「タバサは何か呪文を使えるのか?」

90: 2012/06/10(日) 14:06:43.43 ID:IszDZkRu0
タバサ「はい、使えるよ」

メレブ「ほう。では何か魔法を見せてみよ、タバサよ」

タバサ「んん~、どれにしよっかな♪」

メレブ「お前の好きなものでいいぞ」

タバサ「じゃあ、花火とか好きですか?」

メレブ「うむ。悪くないな」

タバサ「よーし! ……はぁぁぁ……ッ! 『イオラ』!」テレレレレン・*:.。..。.:*・゜

シュゥゥゥ…… ドゴォッ ドガァッ ドグワァアアアアッ!!

メレブ「( ゚д゚ )…… 」

タバサ「きれいな花火でしょ♪」

メレブ「……」

タバサ「遊んで使うとお母さんに怒られるから、あんまり使っちゃいけないんだけど……」

メレブ「……これあのー、えー……、何ですか?」

タバサ「え? イオラです」

92: 2012/06/10(日) 14:12:52.09 ID:IszDZkRu0
メレブ「花火……って……いうか、あの、爆発ぅー……だよね?
    すっごいバァーン爆発したよね今!?」

  メレブは こんらんしている!

スラりん「ピキー!」テレレレレン・*:.。..。.:*・

  スラりんは メダパニを となえた!

  メレブは ますます こんらんした!

メレブ「タンタンタタンタンタタンタンタタン……『いっかくうさぎを いつかくう』……ブハッ、ハハハハ面白くない!
    ハッケイヨイハッケヨイハッケヨイ……『そんなことキメラには きめられない』ノコッタァノコッタノコッタ!!
    ウィナー…、アイムウィナー…」

タバサ「メ、メレブおじさんが、ただのバカになっちゃった……」

メレブ「カッタヨ!! カッタヨ!! ポンポンポポンポンポポンポンポポン……ハーイ!

スラりん「けっこう面白いな」

93: 2012/06/10(日) 14:19:01.54 ID:IszDZkRu0
タバサ「そんなこと言ってる場合じゃないよ、スラりん!」

メレブ「呪文!ハーイ!! 唱えるよ呪文!」

タバサ「!」

メレブ「『パノレプ――』」

タバサ「だ、だめえええええええええっ!」テレレレレン・*:.。..。.:*・゜

  タバサは マヒャドを となえた!

バギィンッ!!

メレブ「うぎゃああああああああああああああッ!!」

  メレブに 104の ダメージ!

タバサ「あっ」

94: 2012/06/10(日) 14:25:11.81 ID:IszDZkRu0
~マスタードラゴン上~

ムラサキ「デボラさんは――」

デボラ「デボラでいいわよ。年も近いんだし、タメ口で話しましょ」

ムラサキ「デボラ……は、結婚って楽しい?」

デボラ「あははははっ、突然変なこと聞くのね」

ムラサキ「前のあたしたちの世界で、奥さんの尻にしかれてた盗賊がいてさ」

デボラ「うちと同じじゃない」

ムラサキ「結婚って大変だなとか思ったんだけど」

デボラ「うちは楽ちんよ。トンヌラが全部やってくれるから」

ムラサキ「……うっわぁ……」

デボラ「ふふっ、冗談よ、冗談。――まあ、トンヌラに色々やらせてるのは本当だけどね。
    結婚は楽しいわ」

ムラサキ「どこが?」

デボラ「その前に、ムラサキ。約束なさい」

ムラサキ「は?」

95: 2012/06/10(日) 14:31:35.87 ID:IszDZkRu0
デボラ「これは『女の話』よ、分かるわね」

ムラサキ「……う、うん。分かった。誰にも言わない」

デボラ「おっさんも分かってるわね」ポンポン

マスタードラゴン「私、一応、神なんだが……」

デボラ「それなら尚のこと沈黙を守れるはずよね? カミサマ」

マスタードラゴン「まあ、うん……」

ムラサキ(仏に似てる……)

デボラ「さて。本題に戻りましょうか」

ムラサキ「……」コクリ

97: 2012/06/10(日) 14:37:42.37 ID:IszDZkRu0
デボラ「……トンヌラは私のしもべよ。で、私はご主人様。
    でも、だからこそ、トンヌラのために氏ねと言われたら、私はためらわず命を捨てるわ。
    しもべを見捨てるご主人様はいないの。絶対にね」

ムラサキ「……でも……、やっぱり、しもべって、ちょっとヒドくない?
     おまけに、結婚記念品売っぱらったりさー」

デボラ「本当に一生そばにいたい人に、軽々しくおきまりのセリフを使うヤツの方が信用ならないわ。
    ――例えば、そう、『愛してる』なんてね」

ムラサキ「ヒネくれてんなーお嬢様」

デボラ「お互い様でしょ、ムラサキ」

ムラサキ「ふふっ、それもそーだね」

デボラ「記念品を売ったのは、まあ、言ってしまえば『あえて』よ」

ムラサキ「え!? わ、わざと売ったの!? なんでっ!?」

デボラ「あの人が過去に囚われてるからよ」

ムラサキ「へ……?」

デボラ「トンヌラは辛くて苦しい経験をたくさんしてるわ。
    どんな良い思い出も、辛い思い出と繋がってる。人の過去って、そういうものよ。
    だから、『今』と『これから』だけを見るべき……なんて思ったら、
    思い出のシルクのヴェールがカジノのコインに変わっていた……それだけ」

ムラサキ「デボラ……」

99: 2012/06/10(日) 14:43:47.66 ID:IszDZkRu0
デボラ「まあ、そんなとこね。それに、世界一高い宝石より大事な子どもたちもいるから、
    文句はあっても私は……少なくとも不幸ではないわ」

ムラサキ「そっか。なんかー、深イイ話聞いちゃったな~」

デボラ「この私が話すんだから、どんな話でもイイ話なのよ」

ムラサキ「ふふ。……あ、そうだ!」

デボラ「うん?」

ムラサキ「デボラ、せっかくだし、もうちょっと雰囲気いい感じにしない?」

デボラ「はあ?」

ムラサキ「いつもツンツンしすぎだからさ。代わりに、こんな感じで――てへぺろ(・ω<)」

デボラ「……マヌケな顔ね」

ムラサキ「……ははーん……」

デボラ「何よ」

ムラサキ「さてはー、恥ずかしいんでしょ?」

デボラ「まさか。この私が、そんな媚びた真似なんてすると思う? ありえないわ」

ムラサキ「いいじゃんテレなくてもー」ウリウリ

100: 2012/06/10(日) 14:49:54.34 ID:IszDZkRu0
デボラ「私は今のままが一番きらびやかで美しいのよ。
    ――それよりムラサキ、あのヨシヒコとかいうスOベニンゲンとは
    どこまでいってるのかしら?」

ムラサキ「へっ?」

デボラ「ホレてるんでしょ」

ムラサキ「……い、いや~、まぁ、そんなこともないっていうかあるっていうか……」モジモジ

デボラ「ムラサキにその気がないなら、私のしもべに加えようかしら」

ムラサキ「ちょちょちょーい! デボラ!」

デボラ「うふふ、あはははははっ、ウソよ、ウ、ソ」

102: 2012/06/10(日) 14:55:56.52 ID:IszDZkRu0
~サラボナ(パゴラ村)近く~

ヨシヒコ「ぶえーくしょぉい!」

トンヌラ「!? どうした、ヨシヒコ。大丈夫か?」

ヨシヒコ「は、はい、平気です。きっと……、きっと誰かが私の話でもしてるんでしょう。
     ……それはともかく、デボラさんが、そんなことまで考えてたなんて……。
     すみません、トンヌラさん。私は、見当違いなことを……」

トンヌラ「あいつ、不器用極まりないからな……。まあ、俺も俺だから、あいこさ」

ヨシヒコ「トンヌぶへっ!」

トンヌラ「……ヨシヒコ、風邪か?」

ヨシヒコ「きっと誰かが激しく私の噂をしているだけです。心配しないでください」

トンヌラ「いや、疲れが溜まってるのかもしれない。ここいらで少し休んでいこう。
     今のところ、多少の混乱があるだけで、実害はほとんどないみたいだしな」

ヨシヒコ「お気づかい、すみません」

トンヌラ「実は、この近くに、知ってるいい温泉があるんだ」

ヨシヒコ「へぇ、それはいいですね」

104: 2012/06/10(日) 15:00:05.96 ID:IszDZkRu0
トンヌラ「……混浴の」( ̄ー ̄)ニヤリ

ヨシヒコ「――トンヌラさんッ!! どこですかそれはッッ!!!
     どこにあるんですかァッッ!!!!」

トンヌラ「……『山奥の村』という名もない村にある……。
     そこで、露天風呂で開放的になった子たちと、裸のつきあい……」

ヨシヒコ「開放的……! 全裸コミュニケーション……!」ブルブルブルブル

トンヌラ「うん、今かなり飛躍したけどな。どうだ?」

ヨシヒコ「行きます! 行かせてください!」

トンヌラ「ははっ、なんだかヘンリーといた頃を思い出すな」

ヨシヒコ「ヘンリー?」

トンヌラ「ああ、子どもの頃からの友人、というか悪友だな――と、それは追い追い」

ヨシヒコ「あ、でも、デボラさんにバレたりしない、ですかね……?
     気づかれたら、た、ただじゃすまないんじゃ……」

トンヌラ「大丈夫大丈夫。いくらデボラでも、こちらの動きを読んでたりするわけじゃないし。
     ただ、温泉がある『山奥の村』には俺の幼なじみがいるから、
     見つからないようにこっそりな」

105: 2012/06/10(日) 15:06:42.39 ID:IszDZkRu0
ヨシヒコ「ゆ、湯上がりの火照りとかは……?」

トンヌラ「ヨシヒコ、お前はこういう話になると、いやに鋭いな……。
     ……体の火照りは、イエッタ(イエティ)の『冷たい息』で冷まそう。
     セッケンの臭いはスミス(くさったしたい)の腐った臭いで誤魔化す。
     二匹ともモンスターじいさんのところに預けてあるから、帰りに寄れば問題ない」

ヨシヒコ「か、完璧だ……。さすがトンヌラさん……!」

トンヌラ「今は観光シーズン。開放的な気分になったピチピチギャルたちが、常に浴場にいる!」

ヨシヒコ「私も欲情してきましたァ……ッ!」

トンヌラ「あはは、誰がうまいこと言えって言った。
     それに欲情するのが早すぎだろ。もう股間から懐刀《ふところがたな》が突き出てるし」

ヨシヒコ「そうと決まればさっそく……!」

ゴロゴロゴロ…

トンヌラ「いざゆかん桃源郷!」ビシィ!

ヨシヒコ「はい!」

ゴロゴロゴロゴロ……ピタッ

トンヌラ「ん?」

106: 2012/06/10(日) 15:12:44.89 ID:IszDZkRu0
ロッキー「……」

トンヌラ「ロッキー……、どうした……?」

ロッキー「……」

トンヌラ「ん? なんだこの張り紙」

『妻《め》がいても ピチピチギャルと 火遊びする愚《ぐ》
 メガンテもちて 爆ぜて散らさむ
                    デボラ    』

ヨシヒコ「!!」

ロッキー「……」テレレレレン・*:.。..。.:*・゜

トンヌラ「デ、デボ――」

カッ

ドッグワアアアアアアアアアアアアアンッッ!!!

モクモクモク……

107: 2012/06/10(日) 15:18:49.53 ID:IszDZkRu0
~山奥の村~

*「どうしたんだ? 外なんか眺めて」

*「ううん、トンヌラの断末魔が聞こえたような気がして……」

*「まさか! 気のせいだろう。きっと丈夫でやってるさ」

*(トンヌラ、昔からちょっとオッチョコチョイだから、
  ろくでもないことでケガしてたりしてないといいんだけど……)

*「心配するな。トンヌラならちゃんと魔王を倒して帰ってくるよ、ビアンカ」

108: 2012/06/10(日) 15:24:44.92 ID:IszDZkRu0
~グランバニア~

トンヌラ「なるほど、みんなの話を総合すると――

     ・世界の地形はかなり変わっている
     ・ヨシヒコと俺たちの世界の、村、町、城や洞窟はすべて存在している
     ・人々は急な変化に驚いているが、今のところ大きな被害は出ていない
     ・モンスターが特別強くなっているということはない模様
     ・海の神殿への道は問題なく、魔界への穴も空いている
     ・ヨシヒコの世界の盗賊たちは俺たちの世界のモンスターにやられているらしい
     ・ヨシヒコの世界の『魔王の城』はモンスターが入りこんで大混乱
     ・ヨシヒコの世界の魔王の所在は不明。動きも確認できず
     ・ロッキーには、①ヨシヒコと俺が興奮したら、②近くでメガンテという指示をしていた

     重要なのはこんなところか……」

メレブ「最後のは何……?」

ムラサキ「あの、ちょっといいですか?」

トンヌラ「ん?」

ムラサキ「なんで、みんなボロ雑巾みたいになってんの?」

トンヌラ「モ、モンスターが……」

ヨシヒコ「強くて……」

デボラ「へぇ、モンスターが、ねぇ」

109: 2012/06/10(日) 15:30:50.91 ID:IszDZkRu0
メレブ「うん、モンスター、強かったね」

タバサ「……ごめんなさい、おじさん」ボソボソ

  タバサは くうきをよむことを おぼえた!

  タバサは おとなへの かいだんを いっぽあがった! ▽

ムラサキ「ホントかよ……。おっさんは? なんでそんな瀕氏なんだよ」

ダンジョー「ま、まあ、訓練の成果ー……だな」

レックス「ダンジョーおじさん、色んな技を教えてくれたんだよっ!」パァァァ…

ピエール「しゅっしゅっ!」パァァァ…

ムラサキ「むしろやられてるだろ! 教えてる方がケガだらけでどーすんだよ」

トンヌラ「――というわけで、現在の状態を踏まえて、今後の方針を考えてみました」

ムラサキ「あ、流された」

ヨシヒコ「はい、ぜひ聞かせてください」

メレブ「どうするのだ、トンヌラ殿」

トンヌラ「まず、ミルドラースを倒します」

タバサ「ミルドラースを……?」

110: 2012/06/10(日) 15:36:54.32 ID:IszDZkRu0
ムラサキ「ミルドラース?」

レックス「いちばん悪いヤツだよ!」

メレブ「ということはー……、トンヌラ殿の世界の魔王、か」

トンヌラ「今、もっとも危険なのは、魔王が二匹いるという状況です。
     万が一、手を組まれたらかなり厄介なことになる」

デボラ「奴らが都合よく争ってくれる保証もないし、トンヌラにしては悪くない案ね」

ダンジョー「最悪の場合を考えて、まず片方を先につぶす、というわけか」

トンヌラ「そのとおりです。さらに、ヨシヒコの世界の魔王のゆくえは未だ分からない。
     しかし、私たちの世界の魔王なら――」

レックス「魔界にいるもんね!」

トンヌラ「もう魔界への扉は開いています。私たちの世界を元に戻す確実な方法は、
     ミルドラースを倒してから探した方がいいと思います」

ダンジョー「メレブの『パノレプンテ』は6万分の1の確率。仏はあまり頼りにならんしな……」

ムラサキ「あ……」

ダンジョー「どうした、ムラサキ」

ムラサキ「思いついちゃったんだけど、もう魔王が魔界に行っちゃってるって、ないかな……」

デボラ「可能性はなくはないけれど、少なくともまだミルドラースと手を組んだりはしてないわ」

111: 2012/06/10(日) 15:42:56.80 ID:IszDZkRu0
ムラサキ「なんで?」

デボラ「ミルドラースの目的は、封印を解いて魔界からこちらの世界にやってくること。
    もし、二匹の魔王が手を組んでいたら、封印はとっくに破られているはずよ」

ムラサキ「なるほど。今は戦力がバラバラなんだ」

デボラ「もちろん、あなたたちの魔王に漁夫の利を取られる危険はあるけどね」

ダンジョー「いずれにせよ、今は先手を取らなければならないというわけだな」

メレブ「うむ。そういうことだ」

ムラサキ「お前、何ちゃっかり話に便乗してんだよ。元はと言えばお前のインチキ魔法のせいだろ」

メレブ「サーセン……」

ムラサキ「お、珍しく凹んだ」

タバサ「そんなに落ちこまないで、ホクロコダイル・ダンディー」

メレブ「……タバサ、すまんな」ポン

タバサ「えへ」

トンヌラ「ヨシヒコ」

ヨシヒコ「はい」

トンヌラ「来るか?」

112: 2012/06/10(日) 15:48:58.64 ID:IszDZkRu0
ヨシヒコ「……え?」

デボラ「! トンヌラ! こんな足手まといを連れて行くのはやめなさい。これは命令よ!」

トンヌラ「デボラ……、ヨシヒコたちが心配な気持ちは分かる。
     たしかに、ミルドラースの力はあまりにも強大だ。
     ヨシヒコたちの力がどこまで通じるかは分からない。……生きて帰れるかさえ」

デボラ「……」

トンヌラ「だけど、『勇者』は魔王を倒す者だ。
     異世界の人間だろうと、勇者である以上、ヨシヒコはミルドラースを見逃せない……。
     違うか、ヨシヒコ」

ヨシヒコ「……私は『勇者』です。どこにいても、それは変わらない。
     ――倒します、魔王を」

メレブ「いいのかー、ヨシヒコ、まだ魔王を倒すためのアイテムそろってないぞー」

ムラサキ「危ないよ、やめようよー、ヨシヒコ」

ヨシヒコ「もしかしたら……、私たちはこちらの世界に留まって、
     私たちの魔王を倒すアイテムを探す方がいいのかもしれません。
     しかし、勇者が魔王を見過ごしていいんですか。
     そんなの勇者じゃない! 私は、ミルドラースを倒しに行きます!」

ダンジョー「分かった……、ヨシヒコ。俺も行こう。
      勇者ひとりを危険に放りこんだとあっては、戦士・ダンジョーの名がすたるからな!」

113: 2012/06/10(日) 15:55:01.39 ID:IszDZkRu0
ヨシヒコ「ダンジョーさん……」

ムラサキ「……しょうがないな、あたしもついていく!」

メレブ「うむ、そうとなれば私も行かないわけにはいくまい。参ろうぞ、魔界へ」

ヨシヒコ「ムラサキ、メレブさん……」

トンヌラ「デボラ」

デボラ「……ふん、バッタモンにしてはずいぶん威勢がいいのね。
    いいわ、特別に仲間になることを許してあげる。光栄に思いなさい」

レックス「ヨシヒコお兄ちゃんも仲間になるの? やったー!」

トンヌラ「よし、じゃあ世界の城主たちに協力を仰ごう。
     今度は、ルーラを使える俺とタバサが――」

ヨシヒコ「……」

メレブ「……あのー、すみません」

トンヌラ「ん?」

ヨシヒコ「……」ガクガクガクガク

メレブ「ちょっとこの子ー、魔界へ行く恐怖で腰が抜けちゃって、
    生まれたての子鹿みたいになっちゃったんで、ちょーっと待ってもらっていいですかね?」

115: 2012/06/10(日) 16:00:03.41 ID:IszDZkRu0
ヨシヒコ「……」ガクガクガクガク

ムラサキ「あーあ、歩けてない歩けてない」

トンヌラ「……まあ、みんなボロボロだから出発は明日だし、いいと思うよ……」

デボラ「レックス、ああなってはダメよ」

レックス「……う、うん……」

メレブ「は、反面教師にされたっ!」

ムラサキ「ほんっと、相変わらずだな……。ん?」

ピエール「?」

ムラサキ「ピエール……だっけ……? んー……」ジー

タバサ「どうしたのムラサキお姉ちゃん?」

ムラサキ「あー、えっと、こいつって、上と下、どっちが本体なの?」

タバサ「え? そ、そういえば……どっちだろ」

ムラサキ「……」ジー…

ピエール「……」///

117: 2012/06/10(日) 16:07:08.35 ID:IszDZkRu0
ムラサキ「……て、テレて、るの……コレ?」

タバサ「あは、ピエール、お姉ちゃんのこと好きだって」

ムラサキ「へぇっ!?」

ピエール「……」///

タバサ「目が魔物《ビッグアイ》なみに大きいところがいいって」

ムラサキ「……素直に喜べないんだけど……。ってか、タバサちゃんって、魔物と会話できるの?」

タバサ「はい。お父さんみたいに自由にお話はできないけど、言ってることはちょっとだけ。
    お母さんは、むりやり少し命令できるみたいだけど……」

ピエール「ッ!」クルッ

ムラサキ「ん?」

ピエール「……」

タバサ「? どうしたのピエール?」

ピエール「……」

タバサ「え? 『何かイヤな感じがする』……?」

デボラ「大丈夫よタバサ、何があってもお母さんが守ってあげる」ギュッ

タバサ「あ、お母さん!」

118: 2012/06/10(日) 16:13:16.60 ID:IszDZkRu0
デボラ「お父さんもお兄ちゃんもついてるわ。心配しないで」

タバサ「うん!」

メレブ「……こうして見ると、パッと見はー、いいお母さんだよなあ」

ダンジョー「うむ」

ムラサキ「うわっ! 二人とも突然出てこないでよ、びっくりするじゃん」

ダンジョー「母親と妻というのは、違うからな」

ムラサキ「おっとここでまた出た? ナイスミドル発言?」

ヨシヒコ「どう違うんですか?」

ムラサキ「お前いつの間に復活したんだよ」

119: 2012/06/10(日) 16:19:18.75 ID:IszDZkRu0
~海の神殿~

ムラサキ「へぇ~……、ここが……神殿……。――あ! あれが『魔界の穴』ってやつ!?」

  こくうに なぞのあなが ぽっかりと あいている…… ▽

ダンジョー「たしかに、メッチャ空いてるな……。すごーく空いてる」

ムラサキ「あの3つの石像の力で穴が空いてるのかあ……」

ヨシヒコ「では皆さん、さっそく魔界へ向かいましょう」

レックス「ヨシヒコお兄ちゃん、もう平気?」

ヨシヒコ「何を言っているんだ。私は初めから平気だよ」ポン

レックス「えっ」

メレブ「レックスよ、いいんだ」

レックス「え、でも」

メレブ「……もう、いいんだ……」

レックス「う、うん」

  レックスは おとのなの じじょうを すこし りかいした

  レックスは おとなへの かいだんを いっぽのぼった! ▽

120: 2012/06/10(日) 16:25:20.42 ID:IszDZkRu0
トンヌラ「――さて、とりあえず、最後に確認しておく。
     魔界に行くメンバーは、俺、デボラ、レックス、タバサ、それからピエールとゲレゲレ。
     最優先事項は、ミルドラースの討伐」

ゲレゲレ「ぐるるる……」

ヨシヒコ「ゲロ……?」

トンヌラ「あはは、ヨシヒコ、ゲレゲレだ。あまり間違えると、その内がっぷりやられるぞ?」

ヨシヒコ「平気ですよ、この魔物はネコ系。そして、私はネコ派ですから」

ゲレゲレ「……」ピクッ

メレブ「なんだかーブレンダーを思い出すなあ」

ムラサキ「でも、ブレンダーはかわいかったけど、このゲレゲレはけっこう獰猛そうだよね……」

デボラ「キラーパンサー……『地獄の頃し屋』の異名を持つ魔獣よ。ゲレゲレは人は襲わないけど、
    それでもトンヌラにしかなつかないの。私の命令すら一切聞かないわ」

トンヌラ「どうしても付いてきたいって聞かなくてな。こいつとは、幼なじみみたいなものだし……。
     ――とまあ、それはいい。さっき言ったメンバーに、
     ヨシヒコ、ダンジョーさん、メレブさん、ムラサキさんが加わる。
     計8人と2匹。これが突入メンバーだ」

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
ゲレゲレ(キラーパンサー):
トンヌラがまだ少年だった頃、あるきっかけでいっしょに旅をしていた魔獣。
ひととき別れるものの、青年に育ったトンヌラと再開、仲間になる。

121: 2012/06/10(日) 16:31:22.75 ID:IszDZkRu0
ダンジョー「トンヌラ殿、決してトンヌラ殿の力を疑うわけではないが……、
      本当に、魔界でモンスターを仲間にできるものなのか?」

トンヌラ「2匹分馬車に余裕を持たせたのは、その自信があるからです。信じてください」

タバサ「サンチョおじさんとかついてきてほしかったなあ……。おじさんおもしろいし」

トンヌラ「魔王ガリアスの動向が確認できない現状では、最悪の事態を見越して、
     こちらの世界にある程度戦力を残しておかなければ危険だ。
     サンチョ、ピピン、それから他の仲間モンスターたちには、
     俺たちがミルドラースを倒すまでこちらの守備をしてもらう」

レックス「ヘンリーおじさんも協力してくれるんだよね!」

トンヌラ「ラインハットを初め、テルパドール、ポートセルミ等の主要都市にも状況は伝えてある。
     ルドマンさん、妖精の女王、ポワン女王、アイシス女王、エルヘブンの御長老……。
     ルラフェンのベネットさんも『パノレプンテ』の研究を始めてくれた。
     今、ヘンリーが陣頭指揮を執って、世界中のみんなが相互に連絡を取っているはずだ」

ムラサキ「すご……」

デボラ「アイテムは問題ないわね」

トンヌラ「ああ、昨日、オラクルベリーで重要なものは手に入れた」

ムラサキ「トンヌラさん、ほんっと頼りになるなあ」

メレブ「うむ。むしろ、トンヌラさん以外誰も頼りにならないからな」

ムラサキ「自信満々に言うことじゃねーだろ。ってか、お前少し頼りになれよボケ」

123: 2012/06/10(日) 16:37:24.26 ID:IszDZkRu0
メレブ「うぇい!」

ムラサキ「カァス!」

メレブ「うぃー!」

ムラサキ「クズ!」

メレブ「ウェヒッ!」

ムラサキ「ったく、ヨシヒコからもなんか言って……あれ、ヨシ……ヒコ……?」

トンヌラ「ん? どうした、ヨシヒk」

ゲレゲレ「がじがじがじがじ」

ヨシヒコ「……」グッタリ

メレブ「食われてる! ヨシヒコが食われてるぞッ!!」

ムラサキ「頭が口ん中に入っちゃってるよーっ!」

トンヌラ「ゲレゲレ! やめろ!」

ゲレゲレ「ぺっ」

ヨシヒコ「……」ドサッ

125: 2012/06/10(日) 16:43:25.67 ID:IszDZkRu0
レックス「だ、大丈夫? ヨシヒコお兄ちゃん!?」テレレレレン・*:.。..。.:*・

  レックスは ベホマを となえた!  ヨシヒコの きずが かいふくした! ▽

ヨシヒコ「……s……氏ぬかと思いました……」

トンヌラ「昔、子ネコ扱いされていじめられてた経験があるから、頭にきたみたいだ。
     ――とそれはいいとして、ヨシヒコ」

ヨシヒコ「あ、あまりよくない気もしますが、はい」

トンヌラ「これを」ガチャッ

  トンヌラは きせきのつるぎを ヨシヒコに てわたした ▽

ヨシヒコ「これは……?」

トンヌラ「『奇跡の剣』。相手にダメージを与えると、自分の体力も回復する剣だ」

メレブ「おい! ヨシヒコ! 奇跡の剣っつったら、けっこうレアな武器だぞおいッ!」

ヨシヒコ「この輝き……とても強そうだ……。
     しかし、こんな貴重な武器をいただいてもいいんですか?」

トンヌラ「ああ。今持っている剣では、これから心もとないだろうしな」

ヨシヒコ「トンヌラさん……」

  ヨシヒコは きせきのつるぎを そうびした! ▽

126: 2012/06/10(日) 16:49:27.73 ID:IszDZkRu0
トンヌラ「それから、ムラサキさん」

ムラサキ「え? あたし?」

トンヌラ「いざとなったら、使ってください」

ムラサキ「これはー……杖?」

  トンヌラは ドラゴンのつえを ムラサキに てわたした ▽

トンヌラ「『ドラゴンの杖』。使えば、竜に変身できる」

ムラサキ「マジで!? すごーい! すごいよヨシヒコ!」

トンヌラ「ダンジョーさんには、これを」ガチャッ

  トンヌラは ドラゴンキラーを ダンジョーに てわたした ▽

ダンジョー「いいのか、トンヌラ殿。たしか、これはドラゴンを倒すために作られた武具……」

トンヌラ「ええ、私たちは、違う世界にこそあれ、同じ目的のために旅を共にしているんですから」

ダンジョー「トンヌラ殿……。かたじけない」

  ダンジョーは ドラゴンキラーを そうびした! ▽

127: 2012/06/10(日) 16:55:29.56 ID:IszDZkRu0
トンヌラ「それから、メレブさん。……護身用にしかなりませんが……」

  トンヌラは りりょくのつえを メレブに てわたした ▽

メレブ「えー……、こんなんもらっちゃっていいのオレェ?
    自慢じゃないけども、オレ、マジでなんの役にも立たないぜー?」

ムラサキ「ホントに自慢になってないな……」

トンヌラ「パーティーにいれば、どんな人でも戦力です」

メレブ「Oh... リアルにうれしいよぉ」

  メレブは りりょくのつえを そうびした! ▽

トンヌラ「デボラは『祝福の杖』、タバサは『力の盾』……持ってるな、よし。
     ピエール、『世界樹の雫』はお前に預ける。『星降る腕輪』は必ず装備しておけ。
     それから、あとはこの『世界樹の葉』3枚を誰に渡すか、か……。
     このまま袋に入れておくべきじゃないしな……」

ムラサキ「世界樹の葉?」

トンヌラ「味方ひとりを生き返す道具です。
     俺たちがオラクルベリーにいたのは、カジノでこれを手に入れたかったからなんです。
     あらかじめ袋から出しておかないと戦闘中に使えないので、誰に渡すか考え中」ウーム

ムラサキ「んー、なるほど。あたしはドラゴンに変身しちゃうからダメか……」

ピエール「……ッ!」クルッ

128: 2012/06/10(日) 17:01:31.35 ID:IszDZkRu0
ムラサキ「?」

ゲレゲレ「グァルルルル!」

タバサ「ッ!?」

トンヌラ「どうした、タバサ?」

タバサ「お父さん、何か……何か来る!」

ピシャーン! ガラガラガラッ!

*「貴様等の思い通りになどさせぬわ……!」

トンヌラ「敵だとッ!?」ガチャッ!

デボラ「嘘でしょ? ここにはモンスターは近寄れないはず――!」

*「我が名は魔王ガリアス……、世界を治める存在なり……!」

レックス「ガリアス……?」

トンヌラ「ヨシヒコの世界の魔王か!」

ヨシヒコ「ええ! 多分!」

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
魔王ガリアス(声 - 中尾隆聖):
ヨシヒコたちの世界を支配する魔王。邪悪な気で人や魔物を操る強大な力を持つ。

129: 2012/06/10(日) 17:07:33.77 ID:IszDZkRu0
トンヌラ「……多分!?」

ムラサキ「そういえば……、いっつも『魔王』としか言ってなかったな」

ダンジョー「いや、間違いない! こいつが俺たちの世界の魔王だ!」

ガリアス「くくく……、愚かな『勇者』達よ! 貴様等を葬り去り! 
     より広大になったこの世界を、全て我が手中に収めてくれるッ!」

レックス「やれるもんならやってみろ!」

ガリアス「ほう、異界の『勇者』か……、丁度いい」

メレブ「何が丁度いいんだよ!」

ガリアス「私が今まで何もせずにいたと思っているのか? 馬鹿め!
     ――出でよ、魔界の底に眠りし、地獄の帝王!」

ゴゴゴゴゴゴゴゴ……

*「誰だ? 我が眠りを妨げる者は?」

ムラサキ「うわ~、なんかゴツいのきたぁ……」

トンヌラ「!」

*「我が名はエスターク……。今はそれしか思い出せぬ……」

トンヌラ「――こいつ……並の魔物じゃない!!」

131: 2012/06/10(日) 17:13:35.83 ID:IszDZkRu0
エスターク「果たして自分が善なのか悪なのか……、それすらも分からぬのだ……。
      その私に何用だ?」

ガリアス「そいつらはお前を滅ぼす者どもだ、エスタークよ」

レックス「なっ!?」

トンヌラ(くそッ! 甘かった……ッ! ヨシヒコの世界の魔王が、
     まさかここまでの力を持っているとは――!)

エスターク「……ならば仕方がないな。私は滅ぼされる訳にはいかぬ……。
      さあ、来るがよい!」

デン! デン! デン! デン! デデデデデンッ!!

  エスタークが あらわれた!

ガリアス「万が一あの『仏』の力でお前達が復活したとしても、
     その石像を壊してしまえば魔界へは辿り着けまい?
     さあ! 地獄の帝王の力に恐怖しながら氏ぬが良い! フハハハハハ……」スゥ…

ヨシヒコ「消えた……!」

トンヌラ「ヨシヒコ! ガリアスは放っておけ!」

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
エスターク:
古代の魔族の王。不老不氏の究極生物だが、記憶をなくし眠りについていた。

133: 2012/06/10(日) 17:19:38.28 ID:IszDZkRu0
ダンジョー「いいのか、トンヌラ殿!?」

トンヌラ「デボラ、俺が時間をかせぐ! 子どもたちを連れて逃げろ! ヨシヒコたちもだ!
     俺たちが敵う相手じゃない!」

デボラ「――あんた、どこまでもマヌケなのね、トンヌラ」

エスターク「グルァアアアアアアッ!!」

レックス「来るよ!」

  エスタークは メラゾーマを となえた!  デボラは 89の ダメージを うけた!

  エスタークの こうげき!  ヨシヒコは 179の ダメージを うけた!

デボラ「ぐぅッ!」

ヨシヒコ「がはァッ!」

トンヌラ「デボラ! ヨシヒコ!」

タバサ「お母さん!」

デボラ「……ゲホッ……、トンヌラ……、分かってないわね……。
    私たちは家族でしょ……! レックスも……タバサも……、私も……、
    あんたを置いて逃げるなんてこと……すると思ってるの……?」

ヨシヒコ「そうですよ……、トンヌラさん……。ォエ゛ッ!」ビシャッ

ムラサキ「ヨシヒコ! 血……、血が……」

134: 2012/06/10(日) 17:25:39.82 ID:IszDZkRu0
ヨシヒコ「私は……私は勇者だ……。はぁ、はぁ、はぁ……。
     こんな怪物を放っておくなんてできない……!」

レックス「ボクだって勇者だよ! それに、お父さんの子だもん! ぜったい逃げたりしない!」

トンヌラ「俺は……俺はもう、大切な人を目の前で失いたくは……!」

  ダンジョーのこうげき!  エスタークに 41の ダメージ!

ダンジョー「男なら、駄目だと分かっていても引けないときがある……。
      俺でも、奴の注意を引きつけるくらいの役はできるはずだ……
      その隙を叩けェッ!」

メレブ「うむ、そうだな。私も囮になろう――頼んだぞ、二人の勇者よ」

  ゲレゲレは おおきく いきを すいこんだ!

ゲレゲレ「ガルルルルゥ……ッ!」

ピエール「……」テレレレレン・*:.。..。.:*・

  ピエールは ベホマを となえた!  ヨシヒコの きずが かいふくした!

  ヨシヒコの こうげき!  エスタークに 35の ダメージ!
  ヨシヒコの きずが かいふくした!

ヨシヒコ「私たちで、こいつを倒します!」

135: 2012/06/10(日) 17:31:41.23 ID:IszDZkRu0
  レックスは ベホマを となえた!  デボラの きずが かいふくした!

レックス「だから、お父さん、心配しないで!」

  タバサは バイキルトを となえた!  トンヌラの こうげきりょくが 2ばいになった!

タバサ「負けません! 絶対に!」

ムラサキ「怖いけど……やるっきゃないな」

  ムラサキは ドラゴンのつえを ふりかざした!
  ムラサキは おおきな りゅうに すがたをかえた!

トンヌラ「みんな……」

デボラ「ボサっとしてないで、来るわよ!」

エスターク「ヴオ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛ッ!!」

  エスタークは しゃくねつのほのおを はいた!

  トンヌラは 120の ダメージを うけた!  デボラは 155の ダメージを うけた!
  レックスは 116の ダメージを うけた!  タバサは 109の ダメージを うけた!
  ヨシヒコは 178の ダメージを うけた!  ダンジョーは 165の ダメージを うけた!
  ミス! ムラサキは ダメージを うけない!  メレブは 182の ダメージを うけた!
  ピエールは 51の ダメージを うけた!  ゲレゲレは 128の ダメージを うけた!  

  エスタークの こうげき!

メレブ「!」

136: 2012/06/10(日) 17:37:42.76 ID:IszDZkRu0
  メレブは タバサをかばった!  メレブは 221の ダメージを うけた!

メレブ「フッ、ケガはないか……? タバ……サ……」ドサッ

  メレブは ちからつきた!

タバサ「メ……メレブおじさああああああああああんッ!!」

ヨシヒコ「メレブさん!」

レックス「回復するよ、みんな!」テレレレレン・*:.。..。.:*・

  レックスは ベホマラーを となえた!

  トンヌラの きずが かいふくした!  デボラの きずが かいふくした!
  レックスの きずが かいふくした!  タバサの きずが かいふくした!
  ヨシヒコの きずが かいふくした!  ダンジョーの きずが かいふくした!
  ムラサキの きずが かいふくした!  ピエールの きずが かいふくした!
  ゲレゲレの きずが かいふくした!

デボラ「こンのおおおおおおおおおおおッ!!」

  デボラの こうげき!

  かいしんの いちげき!  エスタークに 224の ダメージ!

138: 2012/06/10(日) 17:43:44.05 ID:IszDZkRu0
ムラサキ「グォァアアアアアアアアッ!!」

  ムラサキは するどいつめで エスタークを きりさいた!

  エスタークに 81の ダメージ!

ダンジョー「ヨシヒコ、いくぞ!」

ヨシヒコ「はい!」

  ダンジョーの こうげき! エスタークに 40の ダメージ!

  ヨシヒコの こうげき! エスタークに 36の ダメージ!
  ヨシヒコの きずが かいふくした!

タバサ「うぅ……メレブおじさん……」

ピエール「……」 (o・_・)ノ”(ノ_<。)

タバサ「うん……。そうだよね……。分かった、わたし、もう泣かない……!」

ピエール「……」コクリ

タバサ「いくよ! ピエールッ!」テレレレレン・*:.。..。.:*・

  タバサは バイキルトを となえた!  ピエールの こうげきりょくが 2ばいになった!

ピエール「しゅっ!」

  ピエールの こうげき!  エスタークに 121の ダメージ!

139: 2012/06/10(日) 17:49:45.14 ID:IszDZkRu0
トンヌラ「いくぞ、ゲレゲレッ!」

ゲレゲレ「グァヴッ!」

  トンヌラの こうげき!  エスタークに 158の ダメージ!

  ゲレゲレの こうげき!  エスタークに 98の ダメージ!

トンヌラ(タフであってくれるなよ……!)

エスターク「ガァァァアアアアアアッ!」

  エスタークの こうげき!  レックスは 151の ダメージを うけた!

レックス「ぐぅッ!」

  エスタークの こうげき!  レックスは 164の ダメージを うけた!

トンヌラ「レックス!!」

  レックスは ちからつきた!

ダンジョー「なんてことだッ! くそッ!!」

タバサ「お、お兄ちゃん……、お兄ちゃんが……」

デボラ「タバサ! しっかりしなさい!」

タバサ「お母さ……ん、お兄ちゃんが……」

140: 2012/06/10(日) 17:55:47.41 ID:IszDZkRu0
デボラ「お母さんの目を見なさい……、そう、そのまま聞きなさい。
    いい? レックスはお父さんが生き返らせてくれるわ。
    そのためには、あなたの力が必要なの、タバサ!」

タバサ「はい……、お母さん……!」

ダンジョー「よくもぉぉおおおおおおおッ!」

  ダンジョーの こうげき!

  かいしんの いちげき!  エスタークに 189の ダメージ!

デボラ「タバサ、今のうちに、私たちは回復するわよ!」

  デボラは しゅくふくのつえを ふりかざした!  トンヌラの きずが かいふくした!

タバサ「はい!」

  タバサは ちからのたてを てんにかざした! タバサの きずが かいふくした!

トンヌラ「ピエール! もし俺の呪文が失敗したらデボラを回復しろ!」テレレレレン・*:.。..。.:*・

  トンヌラは ザオラルを となえた!

  レックスは いきかえらなかった!

トンヌラ「くッ!」

142: 2012/06/10(日) 18:00:22.70 ID:IszDZkRu0
ピエール「……!」テレレレレン・*:.。..。.:*・

  ピエールは ベホマを となえた!  デボラの きずが かいふくした!

  ゲレゲレの こうげき!  エスタークに 41の ダメージ!

  ヨシヒコの こうげき!

  エスタークは ひらりと みをかわした!

ヨシヒコ「――なっ!? 外れた!?」

  エスタークの ゆびから いてつく はどうが ほとばしる!

  トンヌラたちに かかっている すべての じゅもんの ききめが なくなった!

ムラサキ「? あれ……? あたし、なんで元の姿に……」

エスターク「グガォオオオオオアッ!」

  エスタークの こうげき!

ダンジョー「ムラ――」

ムラサキ「えっ?」

  ムラサキは 223の ダメージを うけた!

  ムラサキは ちからつきた!

144: 2012/06/10(日) 18:06:42.54 ID:IszDZkRu0
ヨシヒコ「ムラサキィィイイイイイイイイイッ!!!」

デボラ「ムラサキ!」

トンヌラ(どうする!? どうしたらいい!? このままじゃ――)テレレレレン・*:.。..。.:*・

  トンヌラは ザオラルを となえた!

  レックスは いきかえらなかった!

トンヌラ「――くそォッ!」

  デボラは しゅくふくのつえを ふりかざした!  ヨシヒコの きずが かいふくした!

ピエール「……」テレレレレン・*:.。..。.:*・

  ピエールは ベホマを となえた! トンヌラの きずが かいふくした!

トンヌラ「ピエール……!? 何を――」

ダンジョー「ぬんッ!」ドガッ

ヨシヒコ「うわっ!」

  ダンジョーは ヨシヒコを ばしゃのなかに つきとばした!

ヨシヒコ「ダンジョーさん!?」

145: 2012/06/10(日) 18:12:43.36 ID:IszDZkRu0
ダンジョー「そこにいろ! ヨシヒコ! 次の一撃は回避できる!
      ……気休めにしかならんが、少しでも……生きながえて考えろ……
      こいつを倒す方法を!」

ヨシヒコ「ダンジョーさんッ!」ドンドン

  しかし ダンジョーは ばしゃのとびらを しめている!

エスターク「グォァァアアアアアアアッ!!」

  エスタークは かがやくいきを はいた!

  トンヌラは 76の ダメージを うけた!  デボラは 113の ダメージを うけた!
  タバサは  89の ダメージを うけた!  ダンジョーは 168の ダメージを うけた!
  ピエールは 132の ダメージを うけた!  ゲレゲレは 124の ダメージを うけた!

ダンジョー「ヨ……ヨシヒコ……、俺は……ここまで……らしい……。
      頼むぞ……勇……者……」

  ダンジョーは ちからつきた!

  ヨシヒコが ばしゃから とびだした!

ヨシヒコ「ダ……ダンジョーさあああああああんッ!」

エスターク「ヴグォォオオオオオッ!」

  エスタークの こうげき!

デボラ「ッ!」

146: 2012/06/10(日) 18:18:44.91 ID:IszDZkRu0
  デボラは タバサをかばった!  デボラは 190の ダメージを うけた!

タバサ「! ――お母さん!!」

デボラ「言ったでしょ……? お母さんが……守ってあげるって……」

タバサ「お母さん、ねえお母さん、やだよ!! 氏んじゃやだぁ……っ!」

デボラ「トンヌ……」フラッ

トンヌラ「デボラ!」ガシッ

デボラ「……」チュッ

トンヌラ「!?」

デボラ「命令……よ……、次は……あんたの……キスで…………を……」ズルッ…

  デボラは ちからつきた!

トンヌラ「デボラアアアアアアアアアアアアッ!!」

タバサ「……」グスッ

トンヌラ「畜生! また失うのか! 俺はッ!!」

148: 2012/06/10(日) 18:24:46.61 ID:IszDZkRu0
ヨシヒコ「ダンジョーさん……、デボラさんまで……」

ゲレゲレ「ぐるるぅ……」ゼェー…ゼェー…

ピエール「……」(`・ω・′)σチョンチョン

トンヌラ「ピエール……? ……。……そうか、だからお前さっき……」

ピエール「……」

トンヌラ「……ピエール……、ありがとう。お前を仲間にして、本当によかったよ。
     ……みんなを頼むぞ……」

ピエール「……」コクリ

タバサ「だめ!」

トンヌラ「タバサ……?」

タバサ「お父さん、あの呪文を使う気でしょ? やだよ! わたし、もう人が氏ぬのはイヤ!」

トンヌラ「俺なら……教会で生き返らせてくれればいい」

タバサ「そうじゃない、そうじゃないよ、お父さん!
    わたしは、お父さんも……大切な人たちが動かなくなるのを見るのは――もうやなの!!」

トンヌラ「タバサ……」

ピエール「……」

150: 2012/06/10(日) 18:30:48.64 ID:IszDZkRu0
ヨシヒコ「……トンヌラさん、私に考えがあります」

トンヌラ「ヨシヒコ……?」

ヨシヒコ「一瞬でいい、奴に隙を作ってもらえませんか」

トンヌラ「……ヨシヒコ、俺が呪文を唱えれば、みんな生き返る……。
     そしたら、エスタークをふりきって、ここから逃げるんだ」

ヨシヒコ「トンヌラさん、私は! 私はもう誰も氏なせません……ッ!
     最後のチャンスを私にください……!」

タバサ「ヨシヒコ……お兄ちゃん……」

ヨシヒコ「約束します、トンヌラさん。オラクルベリーでしたときと同じように」

トンヌラ「……」

ヨシヒコ「トンヌラさん……!」

151: 2012/06/10(日) 18:36:49.81 ID:IszDZkRu0
トンヌラ「……分かった……、すべてお前に賭ける。
     二人同時だ。俺が攻撃して、エスタークがひるんだ一瞬を狙え!」

ガチャッ

ヨシヒコ「はいッ!」

トンヌラ「――いくぞ、勇者ヨシヒコ!」ダッ

  トンヌラの こうげき!

  エスタークに 82の ダメージ!

トンヌラ「今だ! やれ、ヨシヒコォッ!」

ヨシヒコ「おおおおおおおおおおおおおおおッ!!」

  ヨシヒコの こうげき!

152: 2012/06/10(日) 18:42:49.85 ID:IszDZkRu0
~一方その頃 オラクルベリー・カジノ内バー~

仏「……zzz……だぁーかぁーらぁー……、『JIN -仁-』とかそういうこと言うなバァーカ……
  オレは(スケジュールを)縫わないって言ってるだろ……むにゃむにゃ……」zzz...

*「マスター、この人もう二日ここにいるんだけど」

*「ああ」

*「いいの?」

*「まあ、ひとりでクダまいてるだけだから、放っておいてるんだよ」

*「相変わらずマスターは甘いねえ」

*「それが仕事だからな」

*「それにしても、このヒト変わった格好してるなあ……」

*「ホトケっていう名前らしい」

*「名前も変わってるのね……」

*「何でも、おでこのポッチからはホトケビームが出るそうだ」

*「ホ、ホトケビーム? ポッチ……? これかな? てりゃりゃりゃりゃりゃりゃ!」

ポチポチポチポチポチポチポチポチポチポチポチポチ

仏「あっ」///

153: 2012/06/10(日) 18:48:51.27 ID:IszDZkRu0
*「うわっ、顔赤らめた! キモ!」

仏「…………もっと……触ってー……むにゃむにゃ……」

*「……」

*「……」

*「……触ってあげれば?」

*「……」

ポチッ

仏「仏ビーーーーーーーーーーーーームッ!」

ピカーッ!

*「うわあっ!?」

154: 2012/06/10(日) 18:54:52.70 ID:IszDZkRu0
~同刻 海の神殿~

  ヨシヒコの こうげき!

  エスタークに 1の ダメージ!

トンヌラ「くっ! 駄目か……ッ!」

  エスタークを ねむらせた!

トンヌラ「なっ!?」

ピエール「!」

ヨシヒコ「……」スチャッ

  エスタークは ねむっている!

タバサ「あ……、ヨシヒコお兄ちゃん、その剣……」

ヨシヒコ「この剣は、私がもともと持っていた『いざないの剣』です。
     ……平和の神が作った、不殺の武器。
     ダメージをほとんど与えない代わりに、斬った相手を眠らせることができる……」

トンヌラ「でも、なぜエスタークが……」

ヨシヒコ「エスタークはガリアスに呼び出されるまで、地の底で眠っていました。
     それなら、この剣で斬れば……」

タバサ「また眠っちゃうんだ……! や、やったぁーっ!」

156: 2012/06/10(日) 19:00:53.67 ID:IszDZkRu0
ヨシヒコ「……ダンジョーさんのおかげです……。
     あのとき、馬車に押しこめられていなかったら……、
     『倒す方法を考えろ』と励まされていなかったら……、
     ――私は、この方法には辿りつけませんでした」

トンヌラ「ヨシヒコ……」

エスターク「zzz...」

  エスタークは ねむっている!

ヨシヒコ「それより、トンヌラさんたちは今のうちに逃げてください!」

トンヌラ「何言ってるヨシヒコ、お前も来い!」

ヨシヒコ「……エスタークがまたいつ目を覚ますか分かりません。私はここに残ります」

トンヌラ「ヨシヒコ……」

ヨシヒコ「さあ、早く!」

ピシャーン! ゴゴゴゴゴゴゴゴ……!

ガリアス「……まさか、地獄の帝王を戦闘不能にするとはな……」

ヨシヒコ&トンヌラ「――ガリアスッ!!」

ガリアス「『勇者』達が無様に氏にゆく様を見ているのも一興かと考えたが、無駄だったか……。
     よかろう、今度は私自らが、貴様等を皆頃しにしてくれる!」

157: 2012/06/10(日) 19:06:54.67 ID:IszDZkRu0
ピカーーーーーーー!!

ガリアス「!? な、なんだこの光は!? ぐ、ぐああああああああっ!」

トンヌラ「何が起きてるんだ!?」

タバサ「まぶし……!」

ヨシヒコ「この光は……」

ガリアス「まさか、また仏の仕業か!? いちいち邪魔立てしおって!!
     忌々しい奴めェッ!! ええい、くそぉぉおおおおおおおおおおおおッ!」

カッ!

バシュウウウウウウゥゥゥ……

トンヌラ「……エ、エスタークとガリアスが……」

タバサ「二匹とも消えちゃった!」

ヨシヒコ「仏様……」アリガタヤー

トンヌラ「これがヨシヒコの世界の神様なのか……。すごい力だ」

ヨシヒコ「立派な方です」

タバサ「会ってみたいなあ」

159: 2012/06/10(日) 19:12:56.22 ID:IszDZkRu0
ピエール「……」(´・ω・`)σチョンチョン

トンヌラ「ん? ……。ああ、そうだな、早くみんなを生き返らせよう!」テレレレレン・*:.。..。.:*・

  トンヌラは ザオラルを となえた!

  なんと レックスが いきかえった! ▽

レックス「……あ……あれ……お父……さん……? はッ!?」ガバッ!

タバサ「お兄ちゃん!」ダキッ

レックス「タバ……!?」

トンヌラ「心配するな、エスタークはヨシヒコのおかげで撃退できた。
     安心はできないが、しばらくは大丈夫だろう」

レックス「本当!? ……すごいや、ヨシヒコお兄ちゃん!」

トンヌラ「ヨシヒコの機転がなかったら、みんなやられていた」

レックス「……ごめんなさい、ボク、ヨシヒコお兄ちゃんは弱虫だって思ってた……」

ヨシヒコ「誰にでも間違いはあること。気にする必要はないよ」ポン

レックス「うん!」パァァァ…

トンヌラ「レックス、お母さんは俺が生き返らせる。他の人たちを」

160: 2012/06/10(日) 19:18:57.36 ID:IszDZkRu0
レックス「うん! てやっ」テレレレレン・*:.。..。.:*・

  レックスは ザオリクを となえた!  なんと ダンジョーが いきかえった!
  レックスは ザオリクを となえた!  なんと メレブが いきかえった!
  レックスは ザオリクを となえた!  なんと ムラサキが いきかえった! ▽

レックス「あ、もう魔力がなくなっちゃった」

ヨシヒコ「皆さん……!」

  ヨシヒコは エスタークを げきたいしたことを ぜんいんに つげた ▽

トンヌラ「デボラ……」テレレレレン・*:.。..。.:*・

  トンヌラは ザオラルを となえた!  なんと デボラが いきかえった!

  トンヌラは しずかに デボラに くちづけをした…… ▽

デボラ「ん……」パチ…

ムラサキ「わあ……、素敵……」///

ダンジョー「『茨《いばら》姫』――“眠れる森の美女”、か。ロマンチックだな」

メレブ「うむ。すばらしい夫婦愛だ」

ヨシヒコ「トンヌラさん……、デボラさん……、よかった」

161: 2012/06/10(日) 19:24:58.83 ID:IszDZkRu0
デボラ「ッ! な、何してるのよこのスOベーッ!」

ばちこーん

トンヌラ「ひでぶ!」

  かいしんの いちげき!  トンヌラに 185の ダメージ!

一同「……」

デボラ「わ、私が動けないと思って、どさくさまぎれにキスするなんて、し、氏にたいの!?」

トンヌラ「……」シーン…

メレブ「あー、これは気絶してるなあー……。チン(アゴ)いったからね今、モロ」

ムラサキ「恥ずかしかったのは分かるんだけどさぁ……、
     もうちょっと、なんとかならなかったかなー……」

デボラ「恥ずかしい? ふん! しもべが勝手な振る舞いをしたからおしおきをしたまでよ!」

ヨシヒコ「デボラさん、顔が赤くないですか? もしかして、まだ体力が――」

デボラ「……」キッ

  デボラのめが あやしくひかる!

  ヨシヒコは すくみあがった!

163: 2012/06/10(日) 19:31:00.13 ID:IszDZkRu0
ダンジョー「レックスとタバサはどうやって作ったんだ……」

メレブ「幸せ家族計画とはほど遠いなぁー」

レックス「お父さん!」ユサユサ  タバサ「お父さん!」ユサユサ

トンヌラ「ん……、ああ……、レックスとタバサか……。
     なんだか、『キスで起こしてくれ』と言われたはずのデボラに
     逆に全力のビンタをくらった夢を見てたよ」

メレブ「うう……悲しいよぉ……」

ダンジョー「ト、トンヌラ殿、デボラさんはー、俺たちが生き返した」

トンヌラ「そうか……、世界樹の葉を使ったのか? まあいい、これで一安心だ……」

デボラ「……ふん」

ダンジョー「これから、どうするのだ、トンヌラ殿」

トンヌラ「……ひとまず、エルヘブンに戻って体力を回復させましょう。
     魔界突入は明日に延期。少し作戦を練り直します」

ダンジョー「しかし……、魔界にエスターク以上の難敵がいるかもしれないとなると、
      少しためらうな……」

メレブ「オレとかほぼ即氏だったしね」ハハハ

ムラサキ「自慢することじゃねーだろハゲ」

164: 2012/06/10(日) 19:37:01.03 ID:IszDZkRu0
メレブ「ははっ、馬鹿かムラサキ馬鹿。このキューティクルな髪の毛を見てみろ」ファサッ

ヨシヒコ「たしかに……。今回は、いざないの剣が効く相手だからなんとかなりましたが……。
     これ以上強い魔物がいるとなると、今のままのパーティーでは……」

トンヌラ「それは――」

レックス「それはないんじゃないかな……」ウーム

ダンジョー「なぜだ、レックス」

レックス「あのね、わかんないんだけど、エスタークのすぐあとに、ガリアスが出てきたんでしょ?
     ということは、ガリアスにはもう、切り札がなかったってことだよね」

トンヌラ(……大きくなったな、レックス……)

レックス「もし、ボクたちより強い魔物がいるんなら、
     ガリアスは魔界からそいつを召喚したはずでしょ?
     『地獄の帝王』まで召喚できたんだから、きっとそうしたはずだよ。
     それがなかったってことは……」

メレブ「魔界にはもうオレたちを圧倒できる魔物はいない……。うむ、たしかに一理あるな」

ムラサキ「時間がなくて他に仲間を作れなかった……ってのは?」

タバサ「それなら、エスタークが倒されたあとにささっと逃げればいいと思います……。
    でも、ガリアスはそれができなかった……。
    もう使える魔物《カード》がないことがわかってたから……」

165: 2012/06/10(日) 19:43:01.75 ID:IszDZkRu0
デボラ(さすが私の子だわ。――とはいえ、子どもの成長ってびっくりするくらい早いのね。
    私が言うまでもなくそこに気づくなんて)

デボラ「よく気づいたわね、レックス、タバサ。これで魔界の戦力をある程度推測できるわ」

レックス&タバサ「えへへ」///

ピエール「……?」

メレブ「あのー……、お取り込み中のところ失礼します恐れ入ります」

レックス「なに?」ニコッ

ゲレゲレ「がじがじがじがじ」

ヨシヒコ「……」グッタリ

メレブ「またヨシヒコがゲレゲレに食われてます」

ダンジョー「ィヨォシヒコォーッ!」

  トンヌラは ベホマを となえた!  ヨシヒコの きずが かいふくした!

ゲレゲレ「がるぅ……」

トンヌラ「どうもヨシヒコ頭の歯ごたえがよかったらしい」ハハハ

ヨシヒコ「人を、犬が噛むオモチャみたいにかじらないよう言ってください……」

166: 2012/06/10(日) 19:49:02.61 ID:IszDZkRu0
トンヌラ「ああ、もうかじりつかないように、キツく言っておくよ」ポン

ゲレゲレ「くぅーん……」スリスリ

ムラサキ「態度違いすぎだろ」

ピエール「!」

ムラサキ「ヨシヒコ、ネコ派やめたら?」

ヨシヒコ「いいや、私はネコ派だッ!」

メレブ「あくまでそこは変わらないんだ……。変なところで強情だなおい」

ピエール「……」(´・ω・`)σチョンチョン

トンヌラ「ん? どうした、ピエール」

レックス「ピエール、さっきから辺りをしらべてるけど、なにかあったの?」

ピエール「……」

トンヌラ「え? 何……? 『石像の指輪が間違ってる』? どういうことだ?」

ムラサキ「石像の指輪?」

デボラ「あの3つの石像に、それぞれ『水のリング』、『炎のリング』、
     それから『命のリング』をはめると、魔界への穴が空くのよ」

167: 2012/06/10(日) 19:55:03.40 ID:IszDZkRu0
タバサ「水のリングと炎のリングは、お父さんとお母さんの結婚指輪なんだよね!」

ムラサキ「へぇー、なんだか運命感じるー!」

デボラ「これが『間違ってる』ですって……?
    ……水のリング、炎のリング、それから――」

ピエール「……」-=≡ヘ(; -_-)ノササッ

  ピエールは にげだした! ▽

デボラ「……」

トンヌラ「……ピエール? デボラ……?」

デボラ「レックス、タバサ」

レックス&タバサ「?」

デボラ「あっちで、ムラサキとダンジョーに遊んでもらってきなさい」

レックス「なんで?」

デボラ「少しお父さんと大事なお話があるの」

レックス「うん、わかった。タバサ、いこ」

タバサ「うん、お兄ちゃん」

168: 2012/06/10(日) 20:01:04.27 ID:IszDZkRu0
デボラ「ムラサキ、ダンジョー、お願い」

ムラサキ「……? うん」

ダンジョー「ん、ああ。俺は構わんぞ」

タッタッタッタ……

トンヌラ「デボラ、一体どうし――」

  デボラのこうげき!

  デボラは いきりたって トンヌラのあたまを わしづかみにした!

  トンヌラに 89の ダメージ!

トンヌラ「痛い痛い痛い痛い痛いッ!」

デボラ「たしかに形は似てるわね、指輪だから。
    でも、『命のリング』と『いのりのゆびわ』を間違えるオッチョコチョイはそうはいないわ」

トンヌラ「!?」

ヨシヒコ「ど、どういうこと、ですか……?」

デボラ「おそらくこれが、二つの世界がつながった本当の原因よ」

ヨシヒコ「????」

170: 2012/06/10(日) 20:07:05.59 ID:IszDZkRu0
デボラ「初め、トンヌラの話を聞いたとき、変だと思ったわ。
    こんなうさんくさい、腐ったミカンみたいな頭をしたへんてこ魔法使いが、
    二つの世界をつなげてしまうほどの大魔法が使えるなんて」

メレブ「わぁ~、スコスコに言われてるオレ~、しかし概ね合ってるので反論はできないぃ~」ハハハ

デボラ「本当なら、この最後の石像には『命のリング』をはめて、
    ちゃんと魔の世界への穴を空けなければならなかった。
    でも、どこかのおマヌケさんが、間違えて『いのりのゆびわ』をはめてしまった……」

ギリギリギリギリ……

トンヌラ「割れる割れる割れてしまいます」

デボラ「結果、中途半端にわけの分からないモノをはめられた石像は暴走、
    『穴』から、まったく別の世界を取り込んでしまった」

ヨシヒコ「し、しかし、仏様は『パノレプンテ』が原因だ、と……」

デボラ「あなたたち自身が何度も言ってたじゃない。『頼りない』とか『インチキ』とか。
    多分、勘違いでもしたんじゃないかしら?」

メレブ「そういや、最初説明したとき、仏もよく分かってなかったな……。
    いつものことだから、あまり気にしなかったけど」

ヨシヒコ「すると、この石像に『命のリング』をはめれば、世界は元に……?」

デボラ「おそらくね。まったく、あきれたしもべだわ」

171: 2012/06/10(日) 20:13:07.18 ID:IszDZkRu0
ゲレゲレ「……」

メレブ「あっ、ゲレゲレがあきれた顔をしている、あのゲレゲレが!」

パッ

ドサッ

トンヌラ「氏ぬかと思った……」

デボラ「本当に、いっぺん氏んでみる?」ニコッ

トンヌラ「申し訳ありませんでした」

メレブ「あの頼りがいのあったトンヌラさんはどこ行っちゃったんだよぉー……」

デボラ「はぁ……仕方ないわね……。昨日、頑張って指示や対策をしていたから、
    『私は』許してあげるわ、特例よ。
    ヘンリーたちには、あとで謝るとして……。
    まず、さんざん迷惑をかけたヨシヒコたちに許してもらいなさい」

トンヌラ「ああ、分かってる」

  トンヌラは ダンジョーとムラサキをよび じじょうを せつめいした ▽

173: 2012/06/10(日) 20:19:07.85 ID:IszDZkRu0
ヨシヒコ「大丈夫です、トンヌラさん」

ムラサキ「んー、結局、盗賊がモンスターにやられて、魔王の城内が混乱したんだから、
     むしろよかったんじゃない、これ? 人々もぜんぜん被害うけてないんでしょ?」

ダンジョー「そういえばそうだな。雨降って地固まるだ! ハハッ」

メレブ「使い方は間違ってるけど、ニュアンス的には、まあー……そんな、うん、そうね」

ヨシヒコ「誰も、迷惑だなんて少しも思ってませんよ」

ムラサキ「まあ、けっこー危ないとこもあったけど……、結果よければ、ってね。楽しかったし!」

ダンジョー「そのとおり! 格好いいところも見せられたしな! 見せ場とか! ガハハハハッ!」

メレブ「おっさん見せ場って、それ誰に見せてるのぉー……。
    ともかく、まあ、そうだな、私も『外の世界が見たい』と言って村を出た身。
    今回の経験は、とても貴重だったぞよ」

トンヌラ「みんな……、ありがとう……」

174: 2012/06/10(日) 20:25:08.64 ID:IszDZkRu0
~一方その頃 オラクルベリー・バー~

*「へぇ、オクイシ(?)をねぇ」

仏「一回、胃潰瘍で倒れたのよ。でも未来から来た凄腕の医者のおかげで助かってさ。
  今は奧医師(漢方医)やめて、仏やってんだ」

*「そうなんですか」

仏「まあ、あの頃も大変だったねー。何せのせ、幕末だったから」

*「バクマツ……?」

仏「激動の時代だったわけよー。みんな必氏に生きてたり、生きるのに必氏だったりね、うん。
  だけど、そんな必氏さってさ、今は笑われるじゃんさあ。
  でも、ヨシヒコたちはちょっとアレー……、アレ、アレだよ、アレだけど、
  すごい必氏に魔王を倒そうとしてるわけよ?」

*「そのヨシヒコ、とかいう人を助けなくていいわけ?」

仏「いいのいいの、あいつら、けっこうなんとかするから、自分たちで」

*(いるよなー、放置プレイが得意な上司……)

仏「そういう必氏さって、親から子へ脈々と受継がれてる、大事だなものだと、仏思うなぁー……、
  あっ! イイこと言っちゃった! うわっ、恥ずかしっ!
  いい年したオッサンがこんなこと言って、恥ずかしっ」///

*(本当にめんどくさい客だな……)

175: 2012/06/10(日) 20:31:09.70 ID:IszDZkRu0
~同刻 海の神殿~

タバサ「メレブおじさん……」ダキッ

メレブ「タバサ……」

タバサ「ありがとう、楽しかったです」グスッ、ズー

メレブ「これ以上抱きつかれると何かいけないものに目覚める5秒前っ!」
   (私がいなくなっても立派な魔法使いになるのだぞタバサよ)

ダンジョー「思考と本音が逆になってるぞ、メレブ……」

ムラサキ「うわっ! 口リコンかよキメー!」

メレブ「キモイとか言うなよおい。傷つくだろー」

デボラ「私の娘だから、あの年でも男をトリコにするのは仕方ないわ」

ムラサキ「オッケーなのかい!」

レックス「ダンジョーおじさん」

ダンジョー「レックス、頑張ってミルドラースを倒すんだぞ!」ワシャワシャ

レックス「うん! あ、あのね……」

ダンジョー「ん? どうした」

レックス「ボクも、大きくなったら、おじさんみたいなナイスミドルになるよ!」

176: 2012/06/10(日) 20:37:12.98 ID:IszDZkRu0
ピエール「しゅっしゅっ!」

ムラサキ「おい、おっさん。子どもに悪影響与えてんじゃねえかよ」

デボラ「レックスは、もうナイスローだから心配ないわ」

ムラサキ「いいのかい! ってか、どういうローだよ」

ヨシヒコ「トンヌラさん……」

トンヌラ「ヨシヒコ……」

ヨシヒコ「……ゲレゲレがすごく物欲しそうな顔で私を見ているんですが……」

ゲレゲレ「……」ジュルリ…

トンヌラ「……」スコーン!

ゲレゲレ「きゃんっ」

トンヌラ「……これでよし。それよりもヨシヒコ、迷惑をかけたな、本当に、色々と」

ヨシヒコ「いいえ。私はこの世界で……、トンヌラさんや、トンヌラさんの家族と会って……、
     ほんの二日間でしたが、いっしょに世界中を冒険して、
     何か、大事なものを得た気がします。
     きっと、言葉にすると薄っぺらくなってしまうような、そんな大切な、何かを……」

177: 2012/06/10(日) 20:43:13.66 ID:IszDZkRu0
トンヌラ「俺もだ、ヨシヒコ……いや――別世界の俺」スッ

ガシッ

ヨシヒコ「ありがとうございました――別世界の私」

トンヌラ「じゃあ、お別れだ……」

スッ

ヨシヒコ「はい」

トンヌラ「みんな、『命のリング』を石像にはめるぞ。心の準備はいいな」

ヨシヒコ「……」コクリ

ムラサキ「うん」

ダンジョー「ああ、やってくれ」

メレブ「うむ」

カチン

ヒュゥゥウウウウ……

178: 2012/06/10(日) 20:49:14.92 ID:IszDZkRu0
バシュゥウウウウウウウウッ!!

ヨシヒコ「!」

メレブ「う、うわああああああああああ?」

ダンジョー「あ、穴に、吸いこまれ――」

デボラ「ムラサキ!」

ムラサキ「?」

デボラ「……」

ムラサキ「なによーッ!」

デボラ「てへぺろ(・ω<)」

ムラサキ「……」ニコッ

シュバァッ!

179: 2012/06/10(日) 20:55:15.57 ID:IszDZkRu0
~ナモナキ村の宿屋 夜~

ヨシヒコ「ハッ!」

ダンジョー「も、元に戻った……のか……!?」

メレブ「ここはー、俺たちが最初に泊まった宿屋だな……」

ムラサキ「……うーむ……。そうか!」ピコーン

ダンジョー「どうした、何をひとりで納得してるんだ、ムラサキ」

ムラサキ「きっと、トンヌラさんが『命のリング』と間違えて『いのりのゆびわ』をはめたのが、
     この時間だったんだよ! メレブが『パノレプンテ』を唱えた、すぐあと!」

ヨシヒコ「なるほど、その時間に帰ってきたというのか……。
     ――そうだ! 仏様に事情を聞きに行きましょう!」ダッ

ダンジョー「おお、そうだな!」

ガラッ

ダンジョー「暗いな……」

メレブ「まあ、夜だからね」

ムラサキ「そういや、アイツ夜に出てきたことないよね」

ヨシヒコ「仏様ーッ!」

180: 2012/06/10(日) 21:00:00.71 ID:IszDZkRu0
ダンジョー「仏ー!」

……シーン……

メレブ「仏ーッ!!」

ムラサキ「仏ー、出てこーい」

……シーン……

ダンジョー「出てこんな……」

ヨシヒコ「もしかして、トンヌラさんの世界に取り残されたとか……」

ムラサキ「さすがにそれはないっしょ」

メレブ「とはいえ仏は出てこない、何があったの、か」

ドドーン! ピシャーン!

メレブ「あ、出た! また時間差で来た!」

仏「るっせーな……、こちとら二日酔いでこれから寝ようってーのによー。お前らアレだぜ?
  仏を宅配ピザのごとく簡単に呼ぶとバチが当たるぜホント」

ムラサキ「バチはお前が与える側だろ、何言ってんだよ」

メレブ「おいおいおいおいー……、白Tシャツって……、本当に寝ようとしてたんだな……。
    あ、目をこすって……、どこかから目薬をー出した。そして、目薬をさし……あっ、
    うまく入らないー……、目をこすってもう一回、っと今度はうまくさせた、よしオッケー」

181: 2012/06/10(日) 21:06:03.95 ID:IszDZkRu0
ヨシヒコ「仏様、世界を元に戻して来ました」

仏「うむ、ご苦労、ヨシヒコ。じゃ、また明日」

ムラサキ「ねえ、なんだか妙にあっさりしてるけど、世界を元に戻したんだよ?」

ダンジョー「もう少し、ねぎらいの言葉はないのか。こっちは命がけで戦ってきたんだ。
      仏もそのことは知っているだろう」

仏「えっ、命がけって、ナニ?」

ヨシヒコ「あ……え、ええっと……、魔王ガリアスと、それから、とてつもなく強い地獄の帝王と
     戦って……きたんですけど……」

ムラサキ「つか、お前の仏ビームで二匹の魔物消滅させただろ、覚えてねーのかよ」

仏「えっ、仏知らないよ? 何を言ってるのだい?」ポリポリ

メレブ「あー……、これあれだな……、多分、異世界に来たのをいいことに、
    どっかのバーで調子にのって宴会芸みたいに出した仏ビームが、
    たまたまガリアスに当たったとか、そういう感じだなこれは……」

ムラサキ「まさかー、そんな都合のいいことあるわけないじゃん」

仏「……そ、そんなこと、オメー、あるわけ、ねーだろ、お前おい」

メレブ「うわあ、目が、目がすっごい泳いでる、というかもう左右に高速移動している」

ダンジョー「仏よ……、一体、何をしていたのだ」

183: 2012/06/10(日) 21:12:04.75 ID:IszDZkRu0
仏「怒らない?」

ムラサキ「うん」

仏「絶対?」

メレブ「あん」

仏「仏ねぇー……、実は、バーで飲みあかしてた♪ それでぇ、バニーちゃんがここのね、
  ここのポッチを触ってくるから、ポチポチしてたら、興奮してつい仏ビームが出てもうてん♪」

プチッ

ムラサキ「おいテメェこのクソ仏がゴラァ! うちら命がけで戦っとるときに何しとんねん!」

仏「お、怒んないって言ったじゃーん……」

ダンジョー「ム、ムラサキが完全にキレている……」

メレブ「まあ、『絶対に怒らない』と言った時点で氏亡フラグがもう立ってたよね、うん。
    突き立ててた」

ムラサキ「お前、はよ下りてこいや! [ピー]から手ェ突っこんで奥歯ガタガタいわしたるわ!」

仏「で、でもさ、結果だけ見るとさ、ピンチ救ったみたいだから、許して♪」テヘッ

ムラサキ「……」ゴゴゴゴゴゴ…

184: 2012/06/10(日) 21:18:08.14 ID:IszDZkRu0
ヨシヒコ「ムラサキ、もういいだろう」

ムラサキ「ヨシヒコ……! だってあの仏、あたしたちに間違った情報与えて、
     あたしたちが世界飛び回ってるときに酒飲んで、
     エスタークと戦って全滅しそうなときにバニーといちゃついてたんだよ!」

ダンジョー「改めてまとめるてみると、かなり最低だな」

メレブ「うむ。これはなかなか、オレでもかなわない」

ダンジョー「張り合うところじゃないぞ、メレブ」

ヨシヒコ「ムラサキ……、ムラサキ自身が言ってただろう『終わりよければすべてよし』。
     それに、偶然とはいえ、仏様の力で私たちが救われたのは、まぎれもない事実だ」

ムラサキ「ヨシヒコ……」

メレブ「相変わらず、甘いヤツだ」

ダンジョー「フッ、ヨシヒコらしいな」

仏「ヨシヒコ、ホントありがとう、仏、涙出てきちゃった、ぐすっ……」

メレブ「おーい、見えてる見えてる、さっき使った目薬が見えてるって」

仏「あれ? バレちゃった? 嘘泣きバレちゃった? えへ♪」

ムラサキ「おま……」ゴゴゴゴゴゴゴ…

ダンジョー「仏……、またムラサキがキレるぞ……」

186: 2012/06/10(日) 21:24:09.46 ID:IszDZkRu0
ヨシヒコ「それより仏様」

仏「ん、なんだいヨシヒコ」

ヨシヒコ「最初に使った、パノレプンテの、本当の効果はなんだったんですか?」

メレブ「あ、オレもそれ知りたい」

ダンジョー「そういえばそうだな。結局、異世界をつなげる効果ではなかったんだろう?」

仏「あれ? あれあれあれれ? そうなんだ? ちょ、ちょっと待ってて」ポチポチポチポチ…トゥルルルルルルル…

メレブ「どこに電話かけてんだよ」

仏「あ、いつもお世話になってますー」

ヨシヒコ「仏様は一体何を……?」

メレブ「まあ、深く追求するなヨシヒコ」

仏「ああ……、ええ……、はいはい、分かりました、はーい、どうもー」ポチッ

メレブ「で、なんて?」

仏「ムラサキのトップが2.5cm減ったって」

ムラサキ「!?」

187: 2012/06/10(日) 21:30:10.27 ID:IszDZkRu0
ヨシヒコ「トップ……?」

ダンジョー「トップというのは、バストサイズのことだ。要するに、おぉっぱいの大きさだな」

ムラサキ(あのときの違和感はこれか……)プルプルプルプル

ヨシヒコ「じゃ、じゃあムラサキの胸は……」

メレブ「また小さくなっブゴォッ!」ギュルルルルルッ

ムラサキ「なんてことしてくれたのよ! このバカーっ!」

ダンジョー「見事な右ストレートだ……」

ムラサキ「(バストアップ体操をしていた)努力が無になったじゃないのー!」

バキッ バキッ バキッ バキッ

メレブ「おぶっ、げぶっ、ふごっ、あばっ」

ダンジョー「完全にマウントポジションを取ったな……」

ヨシヒコ「ダ、ダンジョーさん、このままだと、メ、メレブさんが氏、氏にます!」

ムラサキ「氏ねこのーっ!」

仏「うむ、ほほえましい、光景だなあ……」

メレブ「いや、ほほえましくはゴフッ!」

188: 2012/06/10(日) 21:36:11.17 ID:IszDZkRu0
ムラサキ「あたしのおっOいを――」

ザシュッ

ムラサキ「お、おっOいを返……せ……」

バタッ

ムラサキ「すー……すー……」zzz...

ヨシヒコ「ふぅ……」

ダンジョー「いざないの剣を使ったか、ナイス判断だ、ヨシヒ――」

メレブ「……」ピクピクピク…

ダンジョー「……ちょっとだけ、遅かった、な……」

チャーラララッ チャララ~♪

189: 2012/06/10(日) 21:42:12.32 ID:IszDZkRu0
~翌朝~

ダンジョー「もう辺りに、変な雰囲気は感じはしないか、ムラサキ」

ムラサキ「う? うん、昨日?とは違うと思う」

メレブ「すべてが元に戻ったか……。これでよかったのだろうが、少し寂しくもあるな。
    そしてアゴがまだ痛いオレ」

ヨシヒコ「……」

ダンジョー「どうしたヨシヒコ、お前も寂しいか」

ヨシヒコ「いえ……。それもありますが……、昨日?会った盗賊のことを考えていました」

ムラサキ「あの子連れの盗賊のこと?」

ヨシヒコ「あの子もいつか、親の意志を継いで、立派な盗賊になるんだ、と……。
     トンヌラさんの意志を継ぐ、レックス君やタバサちゃんのように……」

ダンジョー「世代を越え受継がれる意志、か。俺もなんだか、子どもがほしくなってきたな!」

メレブ「いやぁー、あの子は違うんじゃないかなぁー……。
    というか、一見いいこと言ってるようにみえるけど、盗賊だからね? 悪い人だからね?
    それに、なまじ立派な盗賊になって襲ってきたりしても困っちんぐだぜ?」

ムラサキ「そのときは返り討ちにすればいい! ――でしょ? ヨシヒコ」

ヨシヒコ「そのとおりだ、ムラサキ」

190: 2012/06/10(日) 21:48:13.10 ID:IszDZkRu0
ダンジョー「ふはははっ! それでこそ伝説の勇者だ!」

メレブ「なんかー……んー……、なんか違う気がする。でも、ま、いいかな、うん」

ダンジョー「さあ、魔王を倒す旅を続けるとするか、ヨシヒコ!」

ヨシヒコ「はい」

ムラサキ「とりあえず、また仏でも呼ぶ?」

メレブ「……うむ、そうするのがよいだろう」

ダンジョー「次の目的地を教えてもらわねばな。今度こそ、魔王打倒だ!」

ヨシヒコ「仏様ーッ!」

ドドーン! ピシャーン!

仏「どぉーこの誰かは知らないけれどぅー♪ どこの誰もが知っている~♪ どうも、仏です」

ヨシヒコ「仏様、私たちは次はどこへ行けばいいのでしょうか――」

192: 2012/06/10(日) 21:54:14.68 ID:IszDZkRu0
~木陰~

ヒサ「兄《あに》様……、兄様が無事に世界を元に戻せて、ヒサは安心しました……」ソッ

ピザ「オウフwww、ヒサ殿ぉwwwwwwwwここにいたでござるかwwwwwww
   ささ、あっちで拙者とーwwwメタフィジカルかつプラトニックな関係を築こうではwwww
   ありませぬかwwwwwドゥフフフフゥwwwwコポォ」

ヒサ「はい……」

194: 2012/06/10(日) 21:59:55.63 ID:IszDZkRu0
ヨシヒコ(こうして、私たちのひとつの冒険が終わった。
     しかし、魔王を倒す旅はまだ終わったわけではない。私たちの冒険はまだまだ続く……
     もしかすると、魔王ガリアスを倒したそのあとも、きっと……。

     ――というようなことを言ったら二期が製作されるかもしれないので、
     とりあえず言ってみた私だ。
     
     ――が、こんな風にモノローグを言って〆ようと考えていたら、
     本当に二期が製作発表されたので、何も言うことがなくなってしまった、そんな私だ)



               ━━END━━

195: 2012/06/10(日) 22:00:19.97 ID:IszDZkRu0
『勇者ヨシヒコと魔王の城』×『ドラゴンクエストⅤ 天空の花嫁』クロスオーバーSS
『勇者ヨシヒコと天空の花嫁』をご読了いただきましてありがとうございました。
また長編の中、お時間を割いてご支援下さった方々に心よりお礼を申し上げます。
お陰様で無事完走することができました。

蛇足にはなりますが、このSSの製作裏話・解説をツイッター(noname@globetazk)上で
公開しています。粗末な小話ですが、もしご興味がありましたらご一見下さい。

それでは失礼致します。

196: 2012/06/10(日) 22:01:16.96 ID:wvtmeRDi0
おつ

引用: 勇者ヨシヒコ「ドラゴンクエスト……?」