654: 2010/03/27(土) 16:25:54 ID:LzBJsHch
時期は関係ないけど初投下。
「501からの手紙」後の、みっちゃん視点です。
夏。
芳佳ちゃんが戻ってきて、1年目の夏。
おじいちゃんからもらったスイカを担ぎながら、私はウィッチ養成所に走っていた。
大事に育ててきた、今日の収穫の中でも飛びきり大きなスイカ。
芳佳ちゃんは扶桑の食べ物なら何でも好きだけど、スイカは特に好きみたいで
いつも「みっちゃん家のスイカって本当においしいね」と言ってくれる。
芳佳ちゃんが戻ってきたときはもう秋で、収穫は終わっていた。
だから、芳佳ちゃんとまた一緒にスイカを食べるのが待ち遠しくて。
「501からの手紙」後の、みっちゃん視点です。
夏。
芳佳ちゃんが戻ってきて、1年目の夏。
おじいちゃんからもらったスイカを担ぎながら、私はウィッチ養成所に走っていた。
大事に育ててきた、今日の収穫の中でも飛びきり大きなスイカ。
芳佳ちゃんは扶桑の食べ物なら何でも好きだけど、スイカは特に好きみたいで
いつも「みっちゃん家のスイカって本当においしいね」と言ってくれる。
芳佳ちゃんが戻ってきたときはもう秋で、収穫は終わっていた。
だから、芳佳ちゃんとまた一緒にスイカを食べるのが待ち遠しくて。
655: 2010/03/27(土) 16:27:22 ID:LzBJsHch
「芳佳ちゃん!スイカ持って来たよ、今年もすっごく大きいのが――」
ドアの隙間から見えた、その光景を見て、聞いて、理解して…
その途端、手に持ったスイカが落ちて、鈍い音を立てた。
「よ…芳佳、ちゃんっ…!」
「リーネちゃん……可愛いよ…っ…!」
私は動けなかった。
なに…これ。これは…夢?
芳佳ちゃんとリネットさんが、使い魔の耳と尻尾を生やして、ベッドの上で口付け合っている。
…リネットさん。芳佳ちゃんがブリタニアで出会った、一番の友達。
さっき、芳佳ちゃんにそう紹介されていた。けど、それは本当についさっきの話だ。
今朝、ガリアの船が港に到着して…芳佳ちゃんとリネットさんは、ほぼ1年ぶりに再会した。
そして、一緒に迎えに行った私に、リネットさん(と、名前忘れたけど金髪のお姉さん)を交互に紹介してくれた。
ウィッチ養成所の近くの宿舎まで案内した後、4人で色々な話をした。
扶桑とブリタニアは、違っているところも多いけど、似ているところもたくさんあって、とても面白かった。
金髪お姉さんが献金の手続きがあると言って出て行った後も、話題は尽きなかったけど
今日は真夏日で、喉もカラカラだったから「今スイカ収穫してるから、持ってくるね」と残して、家から戻ってきた直後だった。
656: 2010/03/27(土) 16:28:45 ID:LzBJsHch
絡み合う舌。口元から痛々しいほどに漏れる、興奮した吐息。
芳佳ちゃんの目は、獲物を捕らえた獣のように輝き…両手はその獲物の胸を押さえて離さない。
リネットさんのほうも、まるでそれを喜んでいるかのように、必氏に絡み付き、応えている。
「…私…ずっと会いたかった…リーネちゃんに…ずっとずっと会いたかったの…!」
「うん…うんっ…!わた、しも…ずっと芳佳ちゃんのこと…いつも…考えてたんだよ…!」
スイカが床に落ちても、私が大きく息を飲んでも、2人は全く気づくことなく
ベッドでお互いを激しく求めあい、絡み合っていた。
それはまるで、たった今まで離れ離れだった分を取り戻そうとしているかのようで。
そう考えると…これまで2人が築いてきた関係がどれほどのものか、何となく分かってしまった。
『ブリタニアで一番仲が良かった友達が、明日来るんだよ』
昨日、芳佳ちゃんは満面の笑顔でそう言っていた。
ガリア復興のための献金で、扶桑に来ることになったらしい。
『そうなんだ。ふふっ、よかったね芳佳ちゃん』
芳佳ちゃんはすごく嬉しそうで、つられて私まで嬉しくなる。
その時私は、また友達が増えたんだ、と思ったぐらいで
どのぐらい仲がよかったのかとか…私よりよかったのかとか、そんなこと考えることもなかったけど。
芳佳ちゃんはブリタニアで友達どころか、かけがえのない大切な人を見つけていた。
何よりも…誰よりも大切な人。
…私よりも?
そんなこと、決まってる。
「芳佳ちゃんっ…ねえ芳佳ちゃん!言って?好き、って…好きって言って」
「好き…好きっ大好きっ!大好きだよリーネちゃん!」
「嬉しいっ…私も…私も芳佳ちゃんが大好き…!芳佳ちゃんを愛してる。世界で一番…!」
この2人は、本当に想い合っている。
リネットさんは…今は芳佳ちゃんにとっては私より大切な人。
「…スイカ…スイカ切ってくるね、芳佳ちゃん」
…これ以上、いてはいけない気がして。
私は落ちたスイカを拾って…聞こえてもいないのにそう言って、そっとその部屋を離れた。
芳佳ちゃんの目は、獲物を捕らえた獣のように輝き…両手はその獲物の胸を押さえて離さない。
リネットさんのほうも、まるでそれを喜んでいるかのように、必氏に絡み付き、応えている。
「…私…ずっと会いたかった…リーネちゃんに…ずっとずっと会いたかったの…!」
「うん…うんっ…!わた、しも…ずっと芳佳ちゃんのこと…いつも…考えてたんだよ…!」
スイカが床に落ちても、私が大きく息を飲んでも、2人は全く気づくことなく
ベッドでお互いを激しく求めあい、絡み合っていた。
それはまるで、たった今まで離れ離れだった分を取り戻そうとしているかのようで。
そう考えると…これまで2人が築いてきた関係がどれほどのものか、何となく分かってしまった。
『ブリタニアで一番仲が良かった友達が、明日来るんだよ』
昨日、芳佳ちゃんは満面の笑顔でそう言っていた。
ガリア復興のための献金で、扶桑に来ることになったらしい。
『そうなんだ。ふふっ、よかったね芳佳ちゃん』
芳佳ちゃんはすごく嬉しそうで、つられて私まで嬉しくなる。
その時私は、また友達が増えたんだ、と思ったぐらいで
どのぐらい仲がよかったのかとか…私よりよかったのかとか、そんなこと考えることもなかったけど。
芳佳ちゃんはブリタニアで友達どころか、かけがえのない大切な人を見つけていた。
何よりも…誰よりも大切な人。
…私よりも?
そんなこと、決まってる。
「芳佳ちゃんっ…ねえ芳佳ちゃん!言って?好き、って…好きって言って」
「好き…好きっ大好きっ!大好きだよリーネちゃん!」
「嬉しいっ…私も…私も芳佳ちゃんが大好き…!芳佳ちゃんを愛してる。世界で一番…!」
この2人は、本当に想い合っている。
リネットさんは…今は芳佳ちゃんにとっては私より大切な人。
「…スイカ…スイカ切ってくるね、芳佳ちゃん」
…これ以上、いてはいけない気がして。
私は落ちたスイカを拾って…聞こえてもいないのにそう言って、そっとその部屋を離れた。
657: 2010/03/27(土) 16:30:01 ID:LzBJsHch
俯いていたせいで、すぐに誰かとぶつかる。
「わっ…」
「お…っと。すまない、大丈夫か?」
「い、いえ、こちらこそすみませ…」
顔をあげると、眼帯を付けた見覚えのある女性が私を見下ろしていた。
「坂元…さん」
「お、確か…山川と言ったか。どうした?宮藤の部屋ならこっちじゃない、反対側だぞ?」
「いえ、違います。その…スイカを切りたいんですけど…台所が分からなくって…」
「ほぉ、スイカか!扶桑の夏といえばスイカだな。あぁ、台所なら…」
そこまで言うと、不意に坂本さんの声が途切れて…私をじっと見つめてきた。
「山川…どうした?泣いているぞ」
「えっ!あ…これは、ちが…何でも、ない、ですっ…あれ」
慌てて眼を拭ったけど…湿り気は全然感じられない。私は泣いてなんかいなかった。
けど、もう遅かった。坂本さんには全部お見通しだったみたい。
お見通し…そういえば、芳佳ちゃんから聞いてたっけ。
坂本さんは、魔力で何でも見通せるって…。
「…何か、あったんだな…宮藤と」
…喉が苦しくなる。
今度こそ本当に、涙が溢れてくるのが分かった。
「…さ…坂本、さ…あ…うっ…く…ごめ…なさ…うぅっ…あぁぁっ…!」
「そうか…辛かったな、山川」
「…はい」
私と坂本さんは、宿舎の台所でスイカを食べていた。
もちろん、芳佳ちゃんとリネットさんの分を、部屋の前に置いて。
あの後―坂本さんの胸で散々泣き喚いた後…2人の馴れ初めを聞いた。
芳佳ちゃんが、ストライカーユニットを装備してからすぐに飛べたこと。
強大な魔力で、大きなシールドを展開できたこと。
プレッシャーでうまく活躍できなかったリネットさんが、最初は芳佳ちゃんに距離を置いていたこと。
共同で初戦果を挙げて以降、2人が自他ともに認める親友になったこと。
そして…
「わっ…」
「お…っと。すまない、大丈夫か?」
「い、いえ、こちらこそすみませ…」
顔をあげると、眼帯を付けた見覚えのある女性が私を見下ろしていた。
「坂元…さん」
「お、確か…山川と言ったか。どうした?宮藤の部屋ならこっちじゃない、反対側だぞ?」
「いえ、違います。その…スイカを切りたいんですけど…台所が分からなくって…」
「ほぉ、スイカか!扶桑の夏といえばスイカだな。あぁ、台所なら…」
そこまで言うと、不意に坂本さんの声が途切れて…私をじっと見つめてきた。
「山川…どうした?泣いているぞ」
「えっ!あ…これは、ちが…何でも、ない、ですっ…あれ」
慌てて眼を拭ったけど…湿り気は全然感じられない。私は泣いてなんかいなかった。
けど、もう遅かった。坂本さんには全部お見通しだったみたい。
お見通し…そういえば、芳佳ちゃんから聞いてたっけ。
坂本さんは、魔力で何でも見通せるって…。
「…何か、あったんだな…宮藤と」
…喉が苦しくなる。
今度こそ本当に、涙が溢れてくるのが分かった。
「…さ…坂本、さ…あ…うっ…く…ごめ…なさ…うぅっ…あぁぁっ…!」
「そうか…辛かったな、山川」
「…はい」
私と坂本さんは、宿舎の台所でスイカを食べていた。
もちろん、芳佳ちゃんとリネットさんの分を、部屋の前に置いて。
あの後―坂本さんの胸で散々泣き喚いた後…2人の馴れ初めを聞いた。
芳佳ちゃんが、ストライカーユニットを装備してからすぐに飛べたこと。
強大な魔力で、大きなシールドを展開できたこと。
プレッシャーでうまく活躍できなかったリネットさんが、最初は芳佳ちゃんに距離を置いていたこと。
共同で初戦果を挙げて以降、2人が自他ともに認める親友になったこと。
そして…
658: 2010/03/27(土) 16:31:18 ID:LzBJsHch
「リーネが宮藤を、そして宮藤がリーネを意識するようになったのは、おそらくその時からだろう」
「…分かります。私も、芳佳ちゃんとずっと一緒だったから。…あの日まで」
「私が扶桑に戻るまで…だな。すまない、お前から宮藤を奪う形になってしまったな…」
「あ、いえっ、責めてるわけじゃないし、奪われたって気持ちもありません。
ただ、その…せっかく戻ってきてくれたけど、寂しくなるなって」
今までずっと芳佳ちゃんと一緒で。
私は無意識のうちに、芳佳ちゃんが自分だけのものだと思っていたかもしれない。
けど、今の芳佳ちゃんは、もう私だけの芳佳ちゃんじゃない。
私以外の、心から大切だと思える人がいる。
だから…私は芳佳ちゃんを手放さなければいけない。
芳佳ちゃんを送り出さなきゃいけないんだ。
「…坂本さん。私、何があっても芳佳ちゃんの親友でいたいんです。
だから…おめでとうって、2人に言いに行きます」
「そうか。…うん、いい目だ。扶桑の撫子らしいぞ、山川」
今はもう、芳佳ちゃんにとっての一番じゃないかもしれないけど。
今も昔も、私は芳佳ちゃんの親友。それ以上でも以下でもない。
それはずっと変わらないし、それで何も不足はしていない。
だから、私はきっと笑顔で言える。
…おめでとう。大好きな芳佳ちゃん…と。
---おまけ
「だが待て山川。リーネ達は、あくまでも献金のために扶桑へ来たんだ」
「…?」
「だから、3日後にはガリアへ戻る。つまり、お前には再び宮藤を寝取るチャンスがだな」
「っ!?そ、そんなことは…というか寝取ってなんかいませ…!」
「はっはっはっ、臆することはない。女は度胸!それでこそ、真の扶桑の撫子というものだ!」
(…も、もしかして、芳佳ちゃんがあんなに積極的になったのって…この人のせいだったりして…)
おわり
「…分かります。私も、芳佳ちゃんとずっと一緒だったから。…あの日まで」
「私が扶桑に戻るまで…だな。すまない、お前から宮藤を奪う形になってしまったな…」
「あ、いえっ、責めてるわけじゃないし、奪われたって気持ちもありません。
ただ、その…せっかく戻ってきてくれたけど、寂しくなるなって」
今までずっと芳佳ちゃんと一緒で。
私は無意識のうちに、芳佳ちゃんが自分だけのものだと思っていたかもしれない。
けど、今の芳佳ちゃんは、もう私だけの芳佳ちゃんじゃない。
私以外の、心から大切だと思える人がいる。
だから…私は芳佳ちゃんを手放さなければいけない。
芳佳ちゃんを送り出さなきゃいけないんだ。
「…坂本さん。私、何があっても芳佳ちゃんの親友でいたいんです。
だから…おめでとうって、2人に言いに行きます」
「そうか。…うん、いい目だ。扶桑の撫子らしいぞ、山川」
今はもう、芳佳ちゃんにとっての一番じゃないかもしれないけど。
今も昔も、私は芳佳ちゃんの親友。それ以上でも以下でもない。
それはずっと変わらないし、それで何も不足はしていない。
だから、私はきっと笑顔で言える。
…おめでとう。大好きな芳佳ちゃん…と。
---おまけ
「だが待て山川。リーネ達は、あくまでも献金のために扶桑へ来たんだ」
「…?」
「だから、3日後にはガリアへ戻る。つまり、お前には再び宮藤を寝取るチャンスがだな」
「っ!?そ、そんなことは…というか寝取ってなんかいませ…!」
「はっはっはっ、臆することはない。女は度胸!それでこそ、真の扶桑の撫子というものだ!」
(…も、もしかして、芳佳ちゃんがあんなに積極的になったのって…この人のせいだったりして…)
おわり
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