595: 2006/08/21(月) 12:17:53.97 ID:EeqBSzNm0
#ハルヒとキョンは付き合っているという設定です。
#バイさるにひっかかったら、回線つなぎ直すので、IDは変わる恐れがあります。
いつものメンツで昼飯を食べているところから、この話は始まる。
「このまえナンパした彼女とどこまでいったの?」国木田がいう。
「ああ?まだ手も繋いでねえよ。」谷口はやや不機嫌そうにいった。
「ほう、まだ続いていたのか。」俺はエビフライを口に運びながらいう。
「おまえはどうなんだよ、涼宮と。」谷口は箸で俺をさした。
いくとこまでいったさ、というと谷口が狂いかねない。エビフライを咀嚼しながら、なんと言うか考える。言い訳を考えるのは慣れている。
「手も繋いでないさ。」エビフライを飲み込んでから答えた。事実であり、ウソではない。もう一匹のエビフライを口に運ぶ。
「手は繋いでないってだけって聞こえるけどね。」国木田がボソッっとつぶやいた。
国木田の鋭いつっこみにエビフライを吹きそうになるが、辛うじて耐えた。
「ま、キョンも大変だなぁ。」谷口は俺の言葉を真に受けたようだ。いい奴だな。おまえは。「ま、お互いガンバろうぜ。」
5時限目の授業が始まった。
昼食後でもありうつらうつらしながら考える。
どうも順番を間違えてしまったようだ。
愛を確かめ合う前に手を繋ぐのが、脈々と受け継がれた伝統的順番であろう。
繋いだ手をおかずに使うという、いささか変O的伝統行事もあるというしな。
しかしハルヒがことあるごとに俺の手首をつかむため、手をつなぐという行為を無意識の内にスキップしていた。慣れというのは恐ろしい。
しかし、いまさら手を繋ごうともいえない。というか、その瞬間ハルヒは手首をつかんでこういうだろう。「これでいいじゃない。」と。
まあ確かにそれで問題はないのだが、なんというかこう男女交際の醍醐味というか、わくわくする部分が欲しいんだよな、俺は。贅沢なのか、俺?
そんなことを授業中、ずっと考えていた
#バイさるにひっかかったら、回線つなぎ直すので、IDは変わる恐れがあります。
いつものメンツで昼飯を食べているところから、この話は始まる。
「このまえナンパした彼女とどこまでいったの?」国木田がいう。
「ああ?まだ手も繋いでねえよ。」谷口はやや不機嫌そうにいった。
「ほう、まだ続いていたのか。」俺はエビフライを口に運びながらいう。
「おまえはどうなんだよ、涼宮と。」谷口は箸で俺をさした。
いくとこまでいったさ、というと谷口が狂いかねない。エビフライを咀嚼しながら、なんと言うか考える。言い訳を考えるのは慣れている。
「手も繋いでないさ。」エビフライを飲み込んでから答えた。事実であり、ウソではない。もう一匹のエビフライを口に運ぶ。
「手は繋いでないってだけって聞こえるけどね。」国木田がボソッっとつぶやいた。
国木田の鋭いつっこみにエビフライを吹きそうになるが、辛うじて耐えた。
「ま、キョンも大変だなぁ。」谷口は俺の言葉を真に受けたようだ。いい奴だな。おまえは。「ま、お互いガンバろうぜ。」
5時限目の授業が始まった。
昼食後でもありうつらうつらしながら考える。
どうも順番を間違えてしまったようだ。
愛を確かめ合う前に手を繋ぐのが、脈々と受け継がれた伝統的順番であろう。
繋いだ手をおかずに使うという、いささか変O的伝統行事もあるというしな。
しかしハルヒがことあるごとに俺の手首をつかむため、手をつなぐという行為を無意識の内にスキップしていた。慣れというのは恐ろしい。
しかし、いまさら手を繋ごうともいえない。というか、その瞬間ハルヒは手首をつかんでこういうだろう。「これでいいじゃない。」と。
まあ確かにそれで問題はないのだが、なんというかこう男女交際の醍醐味というか、わくわくする部分が欲しいんだよな、俺は。贅沢なのか、俺?
そんなことを授業中、ずっと考えていた
596: 2006/08/21(月) 12:18:53.94 ID:EeqBSzNm0
放課後、部室にハルヒと一緒に行く。これまたこの半年以上脈々と受け継がれた伝統行事である。
もっとも駄々をこねようがむりやりにでも部室につれていかれること自明であり、であれば無駄な抵抗は損だった。これまでは、な。
「なんか考え事してんの?」やたらと鋭いハルヒの直感はいつでも健在か。
「ちょっと。たいしたことじゃないんだが。」
「ふーん、そう。」
「まあどうしようもなくなる前に相談するよ。」
「そうなさい、あんた一人で考えるのもいい経験だし。」
「ああ。」
「ま、あたしがいるんだから、ね。」ハルヒはやさしい目で言う。「困ったことがあるなら、あたしも力になるから。」
思わず抱き締めてしまいそうになるが、ここは学校でありどこで見られるかわからない。特に長門や、長門とか、長門に。
あいつは、おれとハルヒの交際を非常に楽しんで観察しているように見える。
最近は干渉まで始めるほどになってきた。
どうやら性格まで変わっているようだ。これは由々しき事態に思える。
もっとも駄々をこねようがむりやりにでも部室につれていかれること自明であり、であれば無駄な抵抗は損だった。これまでは、な。
「なんか考え事してんの?」やたらと鋭いハルヒの直感はいつでも健在か。
「ちょっと。たいしたことじゃないんだが。」
「ふーん、そう。」
「まあどうしようもなくなる前に相談するよ。」
「そうなさい、あんた一人で考えるのもいい経験だし。」
「ああ。」
「ま、あたしがいるんだから、ね。」ハルヒはやさしい目で言う。「困ったことがあるなら、あたしも力になるから。」
思わず抱き締めてしまいそうになるが、ここは学校でありどこで見られるかわからない。特に長門や、長門とか、長門に。
あいつは、おれとハルヒの交際を非常に楽しんで観察しているように見える。
最近は干渉まで始めるほどになってきた。
どうやら性格まで変わっているようだ。これは由々しき事態に思える。
597: 2006/08/21(月) 12:20:28.61 ID:EeqBSzNm0
部室に入ると、長門しかいなかった。とすれば、多分朝比奈さんや古泉は掃除当番なのだろう。ま、おっつけくるだろう。
長門は初めてのデジタル一眼なる本を読んでいた。カメラに興味をもつとはどういう風の吹き回しか。長門にカメラなど不要なはずだが。
「へえ、有希、写真始めたの?」
「そう。」長門は本から顔を上げずに言った。
「いい写真撮れたら、見せてね。」
長門はうなずくだけだった。ハルヒは気にすることもなく、団長席に陣取った。
最近は普通に椅子に座っている。以前のようにあぐらをかくようなまねをしない。
「キョン、お茶ちょーだい。」さきほどまでの優しい目はどこへ隠したんだろう?
「ああ」朝比奈さんがいないので、自分でお茶をいれるしかない。
ハルヒと自分、そして長門、ぞれぞれのコップにお茶を注ぐ。ハルヒ、長門に配膳した後で自分の席に座った。
さて古泉がいないとなると、ゲームの相手もいない。さて、どうするかな?
「ねえ、キョン、ちょっときて。」ハルヒに呼ばれた。
「ここなんてどうかしら?I画面に表示されたのは、臨海公園であった。「なんか不思議とかありそう?」
んーそこにある不思議といえば、夕方になるとカップルが等間隔で座っている不思議ぐらいしかなさそうだが。
「なくはないな。」そう答えておく。
「じゃあ、土曜日はここにいきましょう。」
遅れて朝比奈さんや古泉もやってきて、いつものSOS団に戻った。
長門は初めてのデジタル一眼なる本を読んでいた。カメラに興味をもつとはどういう風の吹き回しか。長門にカメラなど不要なはずだが。
「へえ、有希、写真始めたの?」
「そう。」長門は本から顔を上げずに言った。
「いい写真撮れたら、見せてね。」
長門はうなずくだけだった。ハルヒは気にすることもなく、団長席に陣取った。
最近は普通に椅子に座っている。以前のようにあぐらをかくようなまねをしない。
「キョン、お茶ちょーだい。」さきほどまでの優しい目はどこへ隠したんだろう?
「ああ」朝比奈さんがいないので、自分でお茶をいれるしかない。
ハルヒと自分、そして長門、ぞれぞれのコップにお茶を注ぐ。ハルヒ、長門に配膳した後で自分の席に座った。
さて古泉がいないとなると、ゲームの相手もいない。さて、どうするかな?
「ねえ、キョン、ちょっときて。」ハルヒに呼ばれた。
「ここなんてどうかしら?I画面に表示されたのは、臨海公園であった。「なんか不思議とかありそう?」
んーそこにある不思議といえば、夕方になるとカップルが等間隔で座っている不思議ぐらいしかなさそうだが。
「なくはないな。」そう答えておく。
「じゃあ、土曜日はここにいきましょう。」
遅れて朝比奈さんや古泉もやってきて、いつものSOS団に戻った。
598: 2006/08/21(月) 12:21:07.39 ID:EeqBSzNm0
早いものでもう土曜日である。
ハルヒはご機嫌のようだ。白いワンピースにボレロなんぞ羽織っている。黄色いカチューシャと合っていないようで合っているようにも見えて、判断に困るな。
「じゃあ、いきましょう。」ハルヒは俺の手首をつかむと歩きだした。
うーん、これがいかんのだよ、これが。手を繋ぐ事ができないのはこれが原因なんだ。かといって振りほどくほどの勇気の持ち合わせはない。それは蛮勇と呼ばれるべきものだろうしな。
「風が気持ちいいわねえ」ハルヒははしゃいだ笑顔を見せる。
二人で砂浜におりた。人工砂浜なのだが、別に気にもならないね。
波打ち際を二人で走ったり、靴を脱いでしばし波と戯れてみる。やわらかな日差しと穏やかな潮風が、楽しさに拍車をかけてくれる。
ハルヒはきらきらした笑顔を振り撒きながら、純粋に楽しんでいるようだ。ホント宇宙的未来的超能力的な力をもっているようにみえないな。
遊びつかれてお腹がすいた。
砂浜から上がる。うろうろしていると、移動販売車を見つけた。
サンドイッチと飲み物を多めに買う。当然のように俺が払うのは何故だ。
パラソルの下のベンチを見つけた。二人で腰掛ける。
デート代の話になった。行くとこにもよるが、2000円から1万円というところか。
特に食費代がかかる。そんな話をした。
「あとでカンパしたげるよ。」ハルヒはサンドイッチの包装を解きながら言う。
波の音、そして潮風。カモメの鳴き声が遠くに聞こえる。かすんではっきりみえないのだが、大きなタンカーだか貨物船らしき陰が遠くに見えた。
ああ、海はいい。心が癒されるよ。
サンドイッチはあっと言う間になくなった。ほとんどハルヒが食べてしまった。
これだから食費がかかるのだが、本人にはちょっと言えない。
ハルヒはご機嫌のようだ。白いワンピースにボレロなんぞ羽織っている。黄色いカチューシャと合っていないようで合っているようにも見えて、判断に困るな。
「じゃあ、いきましょう。」ハルヒは俺の手首をつかむと歩きだした。
うーん、これがいかんのだよ、これが。手を繋ぐ事ができないのはこれが原因なんだ。かといって振りほどくほどの勇気の持ち合わせはない。それは蛮勇と呼ばれるべきものだろうしな。
「風が気持ちいいわねえ」ハルヒははしゃいだ笑顔を見せる。
二人で砂浜におりた。人工砂浜なのだが、別に気にもならないね。
波打ち際を二人で走ったり、靴を脱いでしばし波と戯れてみる。やわらかな日差しと穏やかな潮風が、楽しさに拍車をかけてくれる。
ハルヒはきらきらした笑顔を振り撒きながら、純粋に楽しんでいるようだ。ホント宇宙的未来的超能力的な力をもっているようにみえないな。
遊びつかれてお腹がすいた。
砂浜から上がる。うろうろしていると、移動販売車を見つけた。
サンドイッチと飲み物を多めに買う。当然のように俺が払うのは何故だ。
パラソルの下のベンチを見つけた。二人で腰掛ける。
デート代の話になった。行くとこにもよるが、2000円から1万円というところか。
特に食費代がかかる。そんな話をした。
「あとでカンパしたげるよ。」ハルヒはサンドイッチの包装を解きながら言う。
波の音、そして潮風。カモメの鳴き声が遠くに聞こえる。かすんではっきりみえないのだが、大きなタンカーだか貨物船らしき陰が遠くに見えた。
ああ、海はいい。心が癒されるよ。
サンドイッチはあっと言う間になくなった。ほとんどハルヒが食べてしまった。
これだから食費がかかるのだが、本人にはちょっと言えない。
599: 2006/08/21(月) 12:22:14.02 ID:EeqBSzNm0
「また、散歩しましょう。」ハルヒは立ち上がると腰に手をあてて宣言した。
俺はゴミを片付けるのに忙しい。ひとまとめにしてごみ箱にたたき込む。
「早く行こうよ」ハルヒが手首をつかもうとする瞬間を見逃さず、さっと手を繋いぐことに成功した。まるで握手みたいな握り方になったが、これはこれでいい。
ハルヒを見ると、顔が真っ赤になっている。そんなに恥ずかしいのか?
「そ、そういえば手繋ぐってなかったね。」ハルヒの笑顔がこわばっている。
「ああ、これはこれでいいだろう?」
「そ、そうね。」こわばった笑顔のままハルヒが言う。「いいわね。」
砂浜の横にある歩道を二人で歩いて行く。すると、遊覧船乗り場への看板を見つけた。そんなに高くないし、ここは乗るべきだろう。
「乗って見るか、あれに。」俺は看板を指さした。
「そ、そうね。」ハルヒはうつむきぎみに言う。「いいね。」
なんだか挙動不審なハルヒの手をひいて、遊覧船乗り場へと向かう。幸いなことに次の便に乗れそうだ。チケットを二人分買って、行列に並んだ。
「どうかしたのか?」ハルヒはまだうつむき気味にしている。
「え、あ、なんでもないわよ。大丈夫だから。」
「調子悪くなったのか?」
「そんなことないし、大丈夫。」
うーん、日射病になったとかそういうわけではなさそうだが。
「あのさ、手繋ぐのってなんか恥ずかしいのよ。」ハルヒが小さな声でいった。「なんか、みんなに見られてるみたいでさ。」
「なるほどね。じゃあ手を放すか?」
ハルヒはものすごい勢いで首を横にふったかと思えば、俺をにらみつけて言い放つ。「バカ、だれが手を放したいなんていったのよ。」
「ああ、すまん。逆にみんな見てるぞ。」
「しばらくすれば慣れるからいいの。」ハルヒは首をすくませて言う。「だから、気にしないで。」
俺はゴミを片付けるのに忙しい。ひとまとめにしてごみ箱にたたき込む。
「早く行こうよ」ハルヒが手首をつかもうとする瞬間を見逃さず、さっと手を繋いぐことに成功した。まるで握手みたいな握り方になったが、これはこれでいい。
ハルヒを見ると、顔が真っ赤になっている。そんなに恥ずかしいのか?
「そ、そういえば手繋ぐってなかったね。」ハルヒの笑顔がこわばっている。
「ああ、これはこれでいいだろう?」
「そ、そうね。」こわばった笑顔のままハルヒが言う。「いいわね。」
砂浜の横にある歩道を二人で歩いて行く。すると、遊覧船乗り場への看板を見つけた。そんなに高くないし、ここは乗るべきだろう。
「乗って見るか、あれに。」俺は看板を指さした。
「そ、そうね。」ハルヒはうつむきぎみに言う。「いいね。」
なんだか挙動不審なハルヒの手をひいて、遊覧船乗り場へと向かう。幸いなことに次の便に乗れそうだ。チケットを二人分買って、行列に並んだ。
「どうかしたのか?」ハルヒはまだうつむき気味にしている。
「え、あ、なんでもないわよ。大丈夫だから。」
「調子悪くなったのか?」
「そんなことないし、大丈夫。」
うーん、日射病になったとかそういうわけではなさそうだが。
「あのさ、手繋ぐのってなんか恥ずかしいのよ。」ハルヒが小さな声でいった。「なんか、みんなに見られてるみたいでさ。」
「なるほどね。じゃあ手を放すか?」
ハルヒはものすごい勢いで首を横にふったかと思えば、俺をにらみつけて言い放つ。「バカ、だれが手を放したいなんていったのよ。」
「ああ、すまん。逆にみんな見てるぞ。」
「しばらくすれば慣れるからいいの。」ハルヒは首をすくませて言う。「だから、気にしないで。」
600: 2006/08/21(月) 12:23:54.15 ID:EeqBSzNm0
確かに遊覧船に乗ってしばらくするとハルヒも恥ずかしさが消えたようだ。
いつものハルヒに戻っていた。船を探検すると言い出したときも手首をつかむのではなくて、手を繋ぐようになった。カップルみたいだな。これは。
船は湾内を小一時間かけてゆっくりと回って行く。ああ、いいね。潮風ときらきら光る波がとても心地よい。
ひょっとしておれの前世は鯨かなんかかね。機会があったら、長門に聞いて見よう。
二人で右舷側のベンチに腰掛けた。ハルヒは腰掛けても手を放さない。
どういう心境の変化だろうか。口に出すとハルヒが暴れだしそうで黙っているのだが。
「気持ちいいわねえ。」ハルヒが目を細めて言った。
「ああ、いい気持ちだ。」
「きてよかった。」そしてちょこんと頭を俺の方に当てる。「ありがと、キョン」
なぜかあと10年は戦えるようなエネルギーが注入されたような気がした。
遊覧船から降りると夕方になっていた。そろそろカップルが等間隔に並んで座っている不思議を見にいこうとハルヒを誘う。
さっきからずっと握手みたいな手の繋ぎ方をしている。これはこれで悪くないのだが、指をからめるように手を繋いでみることにしよう。
ハルヒの目が大きく見開かれた。顔が赤く染まる。
「ちょ、ちょっと。」
「ん?どした?」
「これ、なんかやらしいよ」
「だめか?」
「だめじゃないけど…すごく恥ずかしい。」
ま、なんかよくわからんが、だめでもないようなので、そのままハルヒを連れてその不思議な場所まで歩いて行く。
いつものハルヒに戻っていた。船を探検すると言い出したときも手首をつかむのではなくて、手を繋ぐようになった。カップルみたいだな。これは。
船は湾内を小一時間かけてゆっくりと回って行く。ああ、いいね。潮風ときらきら光る波がとても心地よい。
ひょっとしておれの前世は鯨かなんかかね。機会があったら、長門に聞いて見よう。
二人で右舷側のベンチに腰掛けた。ハルヒは腰掛けても手を放さない。
どういう心境の変化だろうか。口に出すとハルヒが暴れだしそうで黙っているのだが。
「気持ちいいわねえ。」ハルヒが目を細めて言った。
「ああ、いい気持ちだ。」
「きてよかった。」そしてちょこんと頭を俺の方に当てる。「ありがと、キョン」
なぜかあと10年は戦えるようなエネルギーが注入されたような気がした。
遊覧船から降りると夕方になっていた。そろそろカップルが等間隔に並んで座っている不思議を見にいこうとハルヒを誘う。
さっきからずっと握手みたいな手の繋ぎ方をしている。これはこれで悪くないのだが、指をからめるように手を繋いでみることにしよう。
ハルヒの目が大きく見開かれた。顔が赤く染まる。
「ちょ、ちょっと。」
「ん?どした?」
「これ、なんかやらしいよ」
「だめか?」
「だめじゃないけど…すごく恥ずかしい。」
ま、なんかよくわからんが、だめでもないようなので、そのままハルヒを連れてその不思議な場所まで歩いて行く。
601: 2006/08/21(月) 12:25:00.61 ID:EeqBSzNm0
その場所は、子供をつれてきたら大人が説明に困ること請け合いだった。うちの妹などを連れてきた日には大変な騒ぎになりそうに思う。
「本当に等間隔で並んでるのねえ。」ハルヒは感心したようにいう。
「ま、こういう不思議もあるってことだな。」
「あたしたちも座りましょうよ。」
そして俺達二人も不思議の一部になった。
「夕日がきれい…」ハルヒの横顔が夕日に照らされて金色に輝く。
「ホント、キレイだなぁ。」
ゆっくりと金色が赤く染まり、紫色へ変化していく。その変化がなぜか寂しいのだけれども、ハルヒと繋いだ手が暖かくて、くすぐったくもある。
「どんどん夜になってくねえ・・・」ハルヒの頭が肩口に乗せられる。「なんかふわふわした気分・・・」
「なんか、寂しくもあり、暖かくもあり・・・変な気分だな・・・」
「ん、あたしはずっと側にいたげるよ・・・」ハルヒの手に力が入った。「だから寂しくなんかならないはずよ。」
「おまえがいてくれるから寂しさを感じるんだよ。一人だときっと感じない。」
「二人でいるのに寂しくなるの?」
「二人でいるから寂しさと向き合える。一人だと寂しさから目を背けるから。」
「そういうこと」
ふっと俺を見上げたハルヒの目に無数のきらめきを見つけた。
その目に吸い込まれるように、口づけを交わした。何度も、何度も。
「本当に等間隔で並んでるのねえ。」ハルヒは感心したようにいう。
「ま、こういう不思議もあるってことだな。」
「あたしたちも座りましょうよ。」
そして俺達二人も不思議の一部になった。
「夕日がきれい…」ハルヒの横顔が夕日に照らされて金色に輝く。
「ホント、キレイだなぁ。」
ゆっくりと金色が赤く染まり、紫色へ変化していく。その変化がなぜか寂しいのだけれども、ハルヒと繋いだ手が暖かくて、くすぐったくもある。
「どんどん夜になってくねえ・・・」ハルヒの頭が肩口に乗せられる。「なんかふわふわした気分・・・」
「なんか、寂しくもあり、暖かくもあり・・・変な気分だな・・・」
「ん、あたしはずっと側にいたげるよ・・・」ハルヒの手に力が入った。「だから寂しくなんかならないはずよ。」
「おまえがいてくれるから寂しさを感じるんだよ。一人だときっと感じない。」
「二人でいるのに寂しくなるの?」
「二人でいるから寂しさと向き合える。一人だと寂しさから目を背けるから。」
「そういうこと」
ふっと俺を見上げたハルヒの目に無数のきらめきを見つけた。
その目に吸い込まれるように、口づけを交わした。何度も、何度も。
602: 2006/08/21(月) 12:26:00.58 ID:EeqBSzNm0
月曜日。ハルヒと共に、部室に向かう。
部室にはすでに長門がいる。ルーペを手に写真を眺めている。
「よう、長門。なに見てんだ?」
「土曜日に臨海公園に写真を撮りに行った。いい写真だと思う。」そういいながら、長門はハルヒに写真を渡した。おれもそれをのぞき込んだ。
写真には俺とハルヒがしっかり収まっている。砂浜で遊ぶ俺とハルヒ、ベンチでサンドイッチをほうばる俺とハルヒ、手を繋いでいる俺とハルヒ。あの不思議な場所で寄り添う俺とハルヒ・・・・・・・。決定的写真はなかったが、全部俺とハルヒの写真だ。
「有希、つけてたの?」ハルヒは目をくるくるさせながら聞いた。「あたしたちを」
「偶然。すべては偶然で説明できる事象。」長門の口元が微妙に震えているように見える。ひょっとして笑いをこらえてる表情か、それは?
「いい被写体をみつけたと思ったら、なぜかあなたたちがフレームに収まっていただけ。このような偶然はよく発生する。今回は100%その偶然が働いた。」
「全然気づかなかった・・・・・・・」ハルヒはがくりとテーブルに手をついた。
「いい写真が撮れたら見せるという約束。」長門は無機質にも見える瞳をハルヒに向けて言う。「気に入ったのがあれば教えて。プリントは1枚5円。」
写真だけじゃなく、金までとる気か、長門。
おしまい
部室にはすでに長門がいる。ルーペを手に写真を眺めている。
「よう、長門。なに見てんだ?」
「土曜日に臨海公園に写真を撮りに行った。いい写真だと思う。」そういいながら、長門はハルヒに写真を渡した。おれもそれをのぞき込んだ。
写真には俺とハルヒがしっかり収まっている。砂浜で遊ぶ俺とハルヒ、ベンチでサンドイッチをほうばる俺とハルヒ、手を繋いでいる俺とハルヒ。あの不思議な場所で寄り添う俺とハルヒ・・・・・・・。決定的写真はなかったが、全部俺とハルヒの写真だ。
「有希、つけてたの?」ハルヒは目をくるくるさせながら聞いた。「あたしたちを」
「偶然。すべては偶然で説明できる事象。」長門の口元が微妙に震えているように見える。ひょっとして笑いをこらえてる表情か、それは?
「いい被写体をみつけたと思ったら、なぜかあなたたちがフレームに収まっていただけ。このような偶然はよく発生する。今回は100%その偶然が働いた。」
「全然気づかなかった・・・・・・・」ハルヒはがくりとテーブルに手をついた。
「いい写真が撮れたら見せるという約束。」長門は無機質にも見える瞳をハルヒに向けて言う。「気に入ったのがあれば教えて。プリントは1枚5円。」
写真だけじゃなく、金までとる気か、長門。
おしまい
コメントは節度を持った内容でお願いします、 荒らし行為や過度な暴言、NG避けを行った場合はBAN 悪質な場合はIPホストの開示、さらにプロバイダに通報する事もあります